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crossing of blessing のようです

1 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 19:03:23 ID:n3xO70qA0
ブーン系創作板クリスマス・短編投稿祭参加作品

141 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:35:59 ID:n3xO70qA0
老人の歪んだ顔についた二つの目が、狂気に満ちているのに気付き、モララーの背筋に悪寒が走った。
しかし、すぐに首を横に振り、それから足に力を込める。

(;・∀・)「そんなわからずやな言い分、通らせるもんか!」

モララーが飛びかかる。
そしてその動きが、スカルチノフを捕まえるのに十分ではない速さだということも理解できた。

だけど、止めたい。その思いだけはひたすらにまっすぐだった。

スカルチノフはクリスマスツリーを向き直る。
モララーが叫ぶ。とにかく、大きな声で。
寒空に音が響き渡った。

142 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:37:00 ID:n3xO70qA0
19.




从 ;∀从ヒック,ヒック

(´・ω・`)「…………そうか」

泣いているハインを説得して、ショボンはなんとか事情を知ることができた。
彼女の友人や、父親がやってきたこと。
友人は彼女を説得しに来て、父親にも説得を試みて、それで取っ組み合いになったこと。

(´・ω・`)「なんというか、親子そろって不器用ですね」

从 ;∀从「んなこと、わかってるよお」

鼻をすすりながら、ハインが言う。

从 ;∀从「わかってたって、できねえことはあんだよ。
      許したくても許せねえんだ、そう思っちまうんだ。あいつと向き合うと」

(´・ω・`)「……」

143 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:37:59 ID:n3xO70qA0
泣いているハインは初めて見た。
いつもいつも、彼女は強気で、常に他の人を貶していた。

彼女は泣きたくなかったのだろうと、ショボンは思った。
泣きたくない、弱みを見せたくない、だから他者を貶し続ける。
それが、口の汚さとなって現れる。

だとしたら、自分に対して柔らかい物腰になったのは、心を開いてくれたからだろうか。
そんなことまで考え出して、ショボンの頬がまた熱くなる。
これではどうしようもないので、ショボンは軽く首を横に振って雑念を取り払った。

ハインの心にぽっかりと空いた穴、ここに来ると言ってくれたときに、ショボンが感じた穴は、きっとこの悲しみだったのだ。
そして自分はそれを埋めてやりたい。助けてやりたい。
自分の寂しさを紛らわせてくれたこの人に、何らかの恩を返したい。

そう考えた時、ショボンはようやく、まともにハインと向き合うことができるようになった。

(´・ω・`)「ハインさん。僕がいたら、お父さんと話せますか」

144 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:39:00 ID:n3xO70qA0
从 ;∀从?

ハインは不思議そうに首を傾げる。
すっかり元の面影はない。一人の女の子がそこにいた。

(´・ω・`)「僕が見ています。だから、お父さんとお話しして、許しあってください。
      それがきっとあなたにとって一番いいことです」

从 ゚∀从「…………あ」

ハインの顔が、急に、普通の顔に戻る。
ショボンはきょとんとして、その様子を眺めていた。

(´・ω・`)「え?」

从 ゚∀从「いや、やっぱりそうだなって。やっぱり、似ているなって」

145 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:40:00 ID:n3xO70qA0
(´・ω・`)?

从 ゚∀从「いやいや、こっちの話だよ」

そう言いながら、ハインは殊更面白そうに顔をほころばせる。

(´・ω・`)「はあ、なんだかわかんないけど」

从 ゚∀从「それにしてもなー、ショボンちゃんに言われちゃうとなー」

えへへーと笑って、ハインがショボンに手を伸ばしてくる。
それが頭にかかる前に、ショボンはさっと身をひるがえす。

今頭をなでられたら間違いなく赤面する。
だから素早くそこから逃げた。

(;´・ω・`)「ぼ、僕みんなを呼んでくるね!」

ハインのぼやきが聞えるが、気にせず、玄関へと向かっていく。
客人たちが待っている外へ。

146 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:42:06 ID:n3xO70qA0
20.




爪'ー`)y‐「……なあ、探偵さん。あんた結婚とかしていないのかい」

(´・_ゝ・`)「独り身ですね」

爪'ー`)y‐「そうかい。あれはめんどくさいものだよ」

(´・_ゝ・`)「そのようですね」

爪'ー`)y‐「特に子どもまでいると……な」

(´・_ゝ・`)「身にしみました」

爪'ー`)y‐「……」

从'ー'从「お二人とも、傘要りますか」

(´・_ゝ・`)「いや、いいよ。三人でさすにはさすがに狭いし、ワタナベさんが持ってて」

爪'ー`)y‐「お嬢さん、いつ傘を持ったんだ」

从'ー'从「鞄持ったまま追い出されましたからね〜」

147 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:43:06 ID:n3xO70qA0
寒空の下で、三人は立ち尽くしていた。
ワタナベだけが傘をさし、男二人は震えながらも手ぶらのまま。
雪はますます多くなってきている。明日は相当積もるのではないだろうか。

(´・_ゝ・`)「……結婚さえしていない身で恐縮なんですけどね。
       あなたがたの場合は正直どっちもどっちという印象がします」

爪'ー`)y‐「……聞かせてくれ」

すっかり丸くなったフォックスは、小さく、それでいて期待を求める声をデミタスに向けていた。

(´・_ゝ・`)「お互いがお互いに、自分のことを優先させていたから、反りが合わなくなったんじゃないでしょうか。
       意地を張りすぎなんですよ。親子そろって」

依頼なんてもうないようなものだったので、デミタスはフォックスに謙る必要がなくなり、思ったことを率直に口にしていた。

爪'ー`)y‐「意地っ張りかね、私たちは」

(´・_ゝ・`)「外から見ていて、よく似ているなと思います」

爪'ー`)y‐「はは、まいったね。そりゃ。
      余計なところばっかりあいつに引き継がせちまった。どうすりゃいいんだかね」

148 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:44:06 ID:n3xO70qA0
フォックスの呟きは、誰にも拾われることなく、宙をあてもなく漂っていた。

遠くから、鐘の音が聞えてきた。
あの街外れの教会から発せられているのだろう。

(´・_ゝ・`)「謝り続けるしかないんじゃないですか。罪を贖う、みたいな」

爪'ー`)y‐「……まるでキリストだな」

(´・_ゝ・`)「あの人は他人の分まで背負い込んでますけどね。変わりものですよ」

爪'ー`)y‐「……そしてもう、そんな変わりものはこの世にいない、か」

そう言って、フォックスは煙草を雪の上に落とし、足で潰した。
煙が細く棚引いて、すぐにかき消える。

キリストはもういない。
だから、自分の罪は自分で贖うしかない。

そんな事実が、フォックスの頭の中で、じわじわと深く刻み込まれつつあった。

149 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:45:05 ID:n3xO70qA0
从'ー'从「クリスマス、お祝いしましょうよ」

やや間を置いてから、ワタナベがそう話題を提供した。

从'ー'从「明日も教会はやってますし、私も行ってあげますから」

爪'ー`)「ハインと一緒に?」

その返しに、ワタナベはきょとんとして、それから顔を顰めた。

从'ー'从「あたりまえですよ! まったくもう」

それから、顰めた顔がゆるやかに、笑顔に変わり、笑い声があがった。

ショボンの家の扉が開かれたのは、そのすぐ後だった。
三人の視線がショボンに向かい、ショボンはまた萎縮した様子だったが、咳払いをして言葉を発した。

(´・ω・`)「中に入ってください。なんとか、ハインさんは説得しましたから」

150 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:46:05 ID:n3xO70qA0
21.




鉄棒が、スカルチノフの手から飛び出し、地面の上にカラカラと音を立てて叩きつけられた。
スカルチノフはわけがわからないまま、腕を抑えつけられてしまう。

老人を捉えたのは、一人の細身の青年であり、体力がありそうには見えなかったが
相手がスカルチノフだからこそ、押さえつけるのに上手くいっている、そんな印象だった。



('A`)「おお、上手くいった!」



青年、ドクオはスカルチノフの後ろに回ってそう一声、勝ち誇ったように言った。
未だに頭の中の整理がついていないが、妙に苛ついたので、スカルチノフは口を挟んだ。

151 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:47:09 ID:n3xO70qA0
/ ,' 3「なにがじゃい」

('A`)「震える手で持つ得物はたたき落としやすいとかなんとか、聞いたんすよね」

スカルチノフはすでに暴れることを諦めていた。
もとより敵うはずもないからだ。

/ ,' 3「誰がそんな、偉そうなことを」

('A`)「デミタスっていう探偵さんです」

/ ,' 3「またあいつか! おのれわしの邪魔ばかりしおって」

スカルチノフの捉えどころのない怒りは、ひとまず一人の男に向けられることで落ちついた。

('A`)「じいさん、誰だか知らねえけどさ。あんたの腕、遠目から見てもめちゃくちゃ震えていたぜ。
    ちょっとつついただけで、簡単に鉄棒が飛んでいっちゃったしな」

152 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:48:07 ID:n3xO70qA0
そんな感想が、スカルチノフの耳に刺さってきた。
自分はそんなに、震えていたのか。恐れていたというのだろうか。
本当に捕まって、牢屋に入れられて、モララーと離れてしまうのを。

/ ,' 3「わしは、そんなに人間らしいことをする奴じゃったかな」

('A`)「何言ってんだい。どこからどう見ても人間じゃねえか」

ドクオの非常に軽い言葉が、今のスカルチノフには心地よかった。

そうしてやりとりしているうちにモララーが辿りつき、スカルチノフの前に立った。

(;・∀・)「ドクオさん、どうしてここに?」

('A`)「いや……ほとんど偶然みたいなもんだよ」

ドクオは頭をかいて、説明する。

153 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:49:06 ID:n3xO70qA0
('A`)「喫茶店出たら、なんとなく寂しくなってさ。
    それで俺、繁華街の方散歩していたわけよ。テラスの件で疲れきってたからさ」

('A`)「そしたらあんたら見かけたから、
    なんだろなって思って追いかけて。そしたらこんなことになっちゃってたわけよ」

( ・∀・)「……僕、事情とか話していたっけ」

('A`)「全然、知らん。でもまあ、危なそうな気はしたよ。見てて」

(;・∀・)「な、なるほど」

(;'A`)「あ、あとはその……さっき酷いことしちゃったから、その反省、みたいな」

( ・∀・)「……ありがとう」

('A`)「ああ、うん」

154 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:50:10 ID:n3xO70qA0
/ ,' 3「ふむ、ずいぶん交友が広いようじゃの。モララーや」

( ・∀・)「いや、この人一時間前にあったばっかりですよ」

('A`)「殺し損ねたんすよね、実は」

/ ,' 3「!?」

( ・∀・)「とにかく……」

モララーはそういうと、スカルチノフの腕を掴んだ。

/ ,' 3「な、なんじゃ今度は」

( ・∀・)「止められたんだから、もう思い残すことはないですよね?」

/ ,' 3「そりゃ……まあ、な」

155 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:51:04 ID:n3xO70qA0
スカルチノフはちらりとクリスマスツリーを見上げた。
何も起こらなかったので、変わらずそこに立ち、輝きを放っている。
それを壊したいという望みは、熱い狂気は、失敗したためにすっかり消え失せてしまっていた。

( ・∀・)「それじゃうちに帰りましょうよ!」

/ ,' 3「ま、待て待て!」

消えたとは言っても、すぐに気持ちが切り替わるわけではない。
モララーと一緒に帰るには、まだ心の準備ができておらず、すぐには肯定できなかった。

それを、訝しそうにモララーが見てくるので、スカルチノフはなんとか、まだ帰れない言いわけを考えようとした。
そして、ひとつ、思い浮かんだ。

/ ,' 3「ちょっとな、行く末の気になることがあるんじゃよ。その結果を知りたいんじゃ」

( ・∀・)「なんですか、それ」

/ ,' 3「今から場所を教える。ドクオくん、もう放してくれないか」

156 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:53:25 ID:n3xO70qA0
('A`)「暴れない?」

/ ,' 3「もうそんな体力は無い」

恐る恐る、ドクオはスカルチノフの腕を解放した。
スカルチノフは一旦腕をぐるりと回し、「ほっほ」と笑う。

/ ,' 3「それじゃ、ついてこい」

スカルチノフは、小さな歩幅でとぼとぼと歩いていく。
ドクオとモララーは一度、顔を合わせ、それからその小さな背中の後を追うことにした。

スカルチノフはすでに、別の興味に執心していた。すでに、死にたいという思いすら消えて。
頭の中に浮かんでいたのは、例の大金持ちで意地っ張りな男のすかした顔つきと、
話を聞く限りそれによく似ている生意気な娘の姿だった。

157 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:54:23 ID:n3xO70qA0
22.




少女、ハインは戦いていた。
この世の全てが彼女の存在を煙たがる、いつの頃からかそう感じるようになっていた。
その原因はもう三年も昔、今更蒸し返すなんて本当に、野暮な話だ。

フォックス含めた三人が入って来たとき、ハインはリビングで正座していた。
さっきまでの暴れていた姿とは、すっかり変わって、おとなしくなっている。
しかし、人々が入ってくるやいなや、その目線でフォックスを捉え、睨みつけてきていた。

爪'ー`)「……」

フォックスとて、良い思いはしていないのだろう。
ためらいがちな瞳が泳いでいる。

ハインだってそれはわかっていた。

(´・ω・`)「フォックスさん、ハインさんが、そこに座ってほしいとのことです」

ショボンが示したのは、ハインと相対する位置だった。

爪'ー`)「……わかったよ」

ぼそりと答え、フォックスがしずしずと移動する。
ハインと、他の三人の視線が彼に向く。

フォックスはハインを見下ろす形になり、それから片膝を床につける。
結びついた視線を、一時も緩めないまま、もう片方の膝も付け、その場に正座する形となった。

158 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:55:18 ID:n3xO70qA0
口を閉じて、向かい合う。
ハインとフォックス、お互いの気持ちはわからないまま。

いつかはこんな日がやってくるとハインは思っていた。
自分がやっていることが、どんなに馬鹿馬鹿しく、弱々しく、女々しいことなのか。
そんなこともわかっていた。だけど、やめることはできなかった。

自分はこの男に、自分の父親に知らしめてやらなきゃならない。
母を無碍にする父を見て、自分がどれほど傷ついたのか。
お金と地位ばかりを追い求めるとしてあなたを見て、蔑み妬んでいることを知ってほしかった。

目的はそうだったんだ。
でも、目的はいつまでも達成されず、その強い毒性だけを強めていった。

やがて、自分はその目的を果たすための行為をするだけで満足感を得るようになっていた。

ショボンと出会ったとき、自分はただ楽しむために交流を続けているのだと感じていた。
でも、今日、ワタナベと出会い、そしてその目を見たとき、改めて思ったことがある。
自分は止めてほしかったんだ。暴走する自分の話を真摯に聞き、止めてくれる聖者を求めていたんだ、と。

159 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:56:08 ID:n3xO70qA0
今なら言える。
ハインがずっと言いたくて、言えなかったこと。
目的のために封印してきた、一歩踏み出すための言葉。

気付けば、ハインの目は閉じられていた。
両の腕が開き、床に触れる。
それを支えにして、頭を一気に振り下ろした。




「「ごめんなさい」」




言ってのけてから、ハインは、奇妙な余韻に気付いた。
まったく同じ言葉が二つ重なって響くからこそ発生する響きだ。

160 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:57:07 ID:n3xO70qA0
目を開いて、顔を上げる。
フォックスの顔が、目の前にあって、きょとんとした表情を向けてきていた。
自分が全く同じ表情をしていることに、ハイン自身は気付いてはいなかった。

从;゚∀从「い、今なんて……」

爪;'ー`)「え! いや、お前こそ」

从 ゚∀从「私はいいんだよ、あんたなんて言ったんだよ」

爪'ー`)「いやいや、私こそいいんだ。それよりほら、さっき何か言ったろ」

从#゚∀从「なんだよてめえ、もう一度言うくらいいいだろこら」

爪#'ー`)「同じ言葉をそっくりそのまま返してやるよこのやろう」



从;'ー'从「ああ、また言いあってる」

(;´・_ゝ・`)「あれはもう放っておいた方がいいんじゃないかな」

161 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:58:09 ID:n3xO70qA0
それから、その場の緊張はいっきに解れた。
ハインも、フォックスも、もうお互いの目を、睨むこともなく見ることができた。
この三年間で一度も叶わなかったことが、ようやくできるようになったのである。

ただ、二人とも、それを表だって喜ぶような性格ではなかった。
それだけのことだった。

从 ゚∀从「ショボンくん! お菓子あんだろお菓子! 広げようよ!」

(;´・ω・`)「な、何をする気」

从 ゚∀从「パーティだよパーティ」

从'ー'从「クリスマスパーティだね!」

(´・_ゝ・`)「よし、コーヒーを用意しなきゃだな」

(´;ω;`)「……僕の家が、物が、うう」




爪'ー`)「……あれ、何か忘れてないか」

162 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 21:59:05 ID:n3xO70qA0
その声で、その場に静けさが舞い降り、
それを打ち破るかのように叫んだのは、デミタスだった。

(;´・_ゝ・`)「あああああああ!! 爆弾!」

デミタスはショボンを指さした。

(´・ω・`)「な、何?」

(;´・_ゝ・`)「傘だよ傘。お前の傘どこだ」

(´・ω・`)「え、確か振りまわしていたあと、そのへんに」

ショボンの視線は、床に転がった折りたたみ傘に向けられた。
見たところ黒く、小さく、あの例のものと同じように見える。

(´・_ゝ・`)「よっし、やっと見つけた!」

デミタスはすぐさまその傘を手に取り、観察し始める。

163 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:00:05 ID:n3xO70qA0
(´・ω・`)「あ、あの。それがいったいどうしたんですか」

(´・_ゝ・`)「俺の持っていた傘が、爆弾だったんだ」

(´・ω・`)「……は?」

(´・_ゝ・`)「それで、君の持っていた傘と入れ違っている可能性がある。
        だから私はここまで来て、傘を取り戻しに来ていたのだ」

(´・ω・`)「いやいや、何バカなこと言ってるんですか」

爪'ー`)「残念ながら本当だ。私が彼に持たせたのだ」

(;´・ω・`)「ええ?」

ショボンの動揺は目に見えて明らかだったが、そんなものに構わず、傘を観察した。

そして、やがて驚くべきものを見つけた。

(;´・_ゝ・`)「…………」

それを見つめ、デミタスは言葉を失った。

値札である。

164 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:01:11 ID:n3xO70qA0
(´・ω・`)「何の事だか、よくはわかりませんけど。
      あなたとの傘と、教会で入れ違ったというなら、その傘は違いますよ。
      それ、来る途中で買ったものですから」

デミタスの震える手のひらの上で、傘から飛び出している値札がぽつんと佇んでいた。

(;´・_ゝ・`)「で、でも君は確かにあの教会で傘を持っていたはずじゃ」

(´・ω・`)「帰る途中、知り合いに出会ったんです。
     それで、ちょうど別れるときに雪が降ってきて、僕は傘を持っていたけど、彼は持っていなくて。
     それで僕が傘を貸してあげたんですよ。彼の方が家は遠かったし、僕は途中でコンビニに寄るからそのとき買えばよかったし」

(;´・_ゝ・`)「じゃ、じゃあその人のところに爆弾が……
         その人の名前と、住んでいるところは?」

(´・ω・`)「名前はブーンですけど、住んでいるところは……ちょっと」

(;´゚_ゝ゚`)「なんでわからないんだよ!」

(;´゚ω゚`)「だ、だってそんな友達とかそういうのじゃなかったし。
      ただバイト先のお客として知り合いなだけでしたし、それで」

(;´゚_ゝ゚`)「そ、そんな……」

165 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:03:05 ID:n3xO70qA0
こんなに間際になって、打つ手が無いなんて。
デミタスの思考が混乱する。

その時、時計がなり、9時になったことを告げた。
デミタスは必死に頭を巡らし、解決案を探したが、
あと1時間の今からこの街中を探し回り一人の男を見つけることが不可能なことなど明白だった。

(;´・ω・`)「あ、で、でも! バイト先の店長に電話すれば、もしかしたら電話が繋がるかも」

(;´・_ゝ・`)「ほ、本当か!」

(;´・ω・`)「たぶん、ですけど」

(;´・_ゝ・`)「とにかくやれることは全部やろう!」

从;'ー'从「はわわ、どうなるんだろ」

从 ゚∀从「親父、なんで爆弾なんか持ってるんだよ。おっかねえ奴だな」

爪'ー`)「……うん、そうだよね」

(´;_ゝ;`)「あああああ、捕まりたくないよおおおお」



こうして、傘を追う手立ては電話一本に託されたのであった。

166 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:04:06 ID:n3xO70qA0
23.




ブーンが傘を持って家に入ると、クーが不思議そうに顔を向けてきた。

川 ゚ -゚)「あれ、傘持っていたっけ」

( ^ω^)「ああ、これ、借りたんだお。知り合いから」

川 ゚ -゚)「へえ、優しい知り合いがいたんだな」

( ^ω^)「うん。近いうちに返すお」

川 ゚ -゚)「忘れないようにな。ブーンは結構そそっかしいから」

(;^ω^)「気をつけるお」

ブーンが苦笑いしながら、リビングの方へと進んでいった。
クーはその後を追おうとして、急に、言いようのしれない不安に襲われた。
虫の知らせだ。

その原因は何かと考え、やがて視線は、先程のブーンの折りたたみ傘に戻った。

167 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:05:06 ID:n3xO70qA0
川 ゚ -゚)「……」

顔を顰めつつ、クーはその傘を手に持つ。
そして、それからブーンに向かい、大きめの声で語りかけた。

川 ゚ -゚)「なあ、ブーン。先にお風呂に入っていてくれよ。
     私は少し気になることがあるんだ。ひょっとしたら小一時間くらい、手間取るかもしれない」

( ^ω^)「おー、こんなときにかお? また何か、調べ物?」

川 ゚ -゚)「そんなものだな」

( ^ω^)「それじゃ、ケーキの準備して待っているお」

川 ゚ -゚)「ありがとさん」

小気味よく感謝を述べて、それから真顔になり、階段を上った。
自室の前へ辿りつき、扉を開ける。

部屋の中は独特の香りで満ちている。クーにとって、心が落ち着くものだった。

川 ゚ -゚)「よし」

扉を閉め、鍵をかける。
これでブーンに邪魔になることはないだろう。

168 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:06:05 ID:n3xO70qA0
クーは、相方である彼に対する配慮をいつの日も欠かすことはなかった。
彼が驚くべきほどに純粋なのは理解していたし、そんな彼を失望させるわけにもいかないと考えていたからだ。

これはちょうどいい機会だ、とクーは思った。
こんなものが目の前に現れたのは、まさに自分にとっての戒めに他ならない。
ここ数カ月、自分の中で溜まりにたまっていた蟠り。それを取り除く第一歩。

クーの部屋は、少し、普通ではなかった。

折りたたみ傘は、金属質の台座の上に置かれた。
これから作業が始まる。
棚からいくつかの工具を取り出し、台座の上に並べ、座って深呼吸をする。

クーは、散々の観察の末に、それが爆弾であることを見抜いていた。
それがあの玄関にいたときに感じた、不安の原因であった。




なぜそれがわかったかと言えば、彼女こそが、その物騒な発明品の生みの親だったからである。

169 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:08:23 ID:n3xO70qA0
爆弾作りは、クーの、人に言えない趣味だった。

といっても、彼女は別に何かを破壊したいと思っていたわけでもない。
爆弾がもつ、シンプルかつ機能的な構造、そして一瞬にして炸裂し空間を切り裂く破壊力。
それが生まれる前の静の段階こそが、彼女にとって、魅惑の塊だったのである。

しかし、世の中には爆弾を破裂させたいと常に願っている人たちがいる。
クーは趣味で爆弾を作るが、それを売ることを生業としている変わりものがいる。
クーがそんな人と知り合いになったのは大学の工学部に所属していたころであり、以来その人物と交流を重ねていた。


時刻はもうすぐ9時になろうとしていた。


川 ゚ -゚)「やれやれ、これで半分終わったかな」

解体作業は神経を研ぎ澄ませる必要がある。
連続して作業を続ければ、思わぬミスを犯し、誤爆を招く恐れがある。
今宵のクーは、このとき、一旦の休憩を入れることにした。

170 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:09:23 ID:n3xO70qA0
クーは台座を離れ、別の普通の机に向かい、普通の椅子に腰かけた。
そして携帯電話を取り出して、素早く目的の相手と連絡を取ろうとした。




lw´‐ _‐ノv「よう、メリークリスマス」




川 ゚ -゚)「まだイブだ」

lw´‐ _‐ノv「こまけえな」

軽妙に受け答えする、この人物こそ
クーの大学時代の友人、シュールだった。

怪しいブローカーとして、金持ち相手に商売している。
クーは彼女を通して、自らの傑作をいろんな人に売り渡していた。
もっとも、最近はほとんどその活動を停止していたのだが。

川 ゚ -゚)「そんなことより、言いたいことがあるんだよ。
     あんたまた私の爆弾、人に売りつけたろ」

171 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:10:25 ID:n3xO70qA0
lw´‐ _‐ノv「……どれ」

川 ゚ -゚)「折りたたみ傘型の爆弾だよ」

lw´‐ _‐ノv「ああ、あれか。売った売った。めちゃくちゃ高く売れたぜ」

川 ゚ -゚)「困ったやつだなあ、本当に。私はもう関わりたくないって言っただろ」

lw´‐ _‐ノv「だって、高く売れたんだもん。それで、なに、売ったことを怒ってるの」

川 ゚ -゚)「んー、私もよくわからないんだけどさ。
     その傘、巡り巡って、私のところに辿りついたぞ」

lw´‐ _‐ノv「……え、なんで?」

川 ゚ -゚)「こっちが聞きたいよ。びっくりしたわ。いったい誰に売ったんだよ」

lw´‐ _‐ノv「そいつはさすがに言えない。でも、そんなことになるなんてなあ」

172 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:11:22 ID:n3xO70qA0
惚けたような、シュールの声が、電話越しからゆったりと聞えてきた。

クーは重たい溜息をついて、流し眼で例の傘を見た。
細い柄が開かれて、内部構造が明らかになっている。
あれはあれで、かなりの精巧な技術が使われている、クーの自信作だった。

川 ゚ -゚)「あのさ、なんども言うけどさ。
     私、もう結婚しているんだよ。今度子どもも産まれる」

lw´‐ _‐ノv「おめでとう」

川 ゚ -゚)「で、さ。そろそろこんな物騒な趣味とはお別れしたいの」

lw´‐ _‐ノv「……うん」

川 ゚ -゚)「お前とも、これっきり、縁を切る」

lw´‐ _‐ノv「…………」

173 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:12:22 ID:n3xO70qA0
クーは、その一言がなかなか言え出せずにいた。
シュールのことも爆弾のことも、嫌いと言うわけではなかったからだ。
自分から、そういう縁を切っていくというのは、辛いことだ。

でも、爆弾なんて作り出していたら、いつか酷い目に会うかもしれない。
最悪の場合、夫であるブーンにも、産まれてくる我が子にも、酷い仕打ちが待っているだろう。
人の命を奪える物を作ると言うのは、それだけ大きな責任が伴うことなのだ。

川 ゚ -゚)「もちろん、すでに広まってしまった爆弾を放っておくつもりもない。
     私は自分の力で、なるべく多くの爆弾を探し、それを解体するつもりでいる。
     それが、今まで道楽でわがままに過ごしてきた私の贖罪なんだ」

lw´‐ _‐ノv「……ずいぶんなことを言うな。聖書みたいだ」

川 ゚ -゚)「この時期はそんな気分になるのさ」

同じころ、この街の別の場所で、似たような会話が交わされていることを
そしてこの街の方々で、さまざまな人たちが、自らの贖罪のために走り回っていたことを
彼女たちは知る由もなかった。

174 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:13:23 ID:n3xO70qA0
lw´‐ _‐ノv「……あんたは、ずっとそのことを考えていたのか」

川 ゚ -゚)「ああ」

lw´‐ _‐ノv「……どうりで、最近元気が無いわけだよ」

川 ゚ -゚)「え?」

クーの疑問の声をよそに、鼻で笑う声が届いてくる。

lw´‐ _‐ノv「私は私なりに、あんたがどうして最近辛そうなのか、考えていたのさ。
       まさか、その原因が私自身だったなんて、思いもしなかったけどね」

川 ゚ -゚)「おいまて、別にお前を責めているわけじゃ」

lw´‐ _‐ノv「それくらいわかるよ。あんたが何事もきっぱりさせたい性格だってこととも、な。
       そしてこの件にきっぱりけりをつけるには、私と縁を切ることが必要。
       筋は通っているし、私としてもあんたを傷つけたくはない。だから、これ以上何もいわないよ」

川 ゚ -゚)「…………」

175 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:14:22 ID:n3xO70qA0
クーは口を開いて、何事かを言おうとしたが、かける言葉が見つからなかった。
縁を切るとはっきりいったのは、本心だ。撤回するつもりはない。
だから、自分を擁護する言葉は思いつかない。

lw´‐ _‐ノv「私も、そうしようかな」

代わりに、シュールが口を開いた。

川 ゚ -゚)「え、取引、やめるのか?」

lw´‐ _‐ノv「最近しけてきているからな。
       今一番好意にしているクライアントも、もうやめるとか言っていたし。
       それに、多分、私もそろそろ祝福されたいのさ」

川 ゚ -゚)「祝福?」

lw´‐ _‐ノv「あんたが言ったことと同義だよ。クー。
       キリスト教の教義じゃ、贖罪して、許しを得て、それでようやく祝福されるんだ。
       あんたはきっと、心の中ではとっくに贖罪していたんだ。だからそうして結婚して、子どもも授かっているんだよ」

川 ゚ -゚)「それで、お前も贖罪から始める、と」

176 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:15:22 ID:n3xO70qA0
lw´‐ _‐ノv「あー、そうだよ。祝福くらいもらえりゃ、そろそろ独り身もやめられるだろうよ」

川 ゚ -゚)「なんだお前、結婚したかったのか」

lw´‐ _‐ノv「ああそうだよ。いまちょっと気になってる奴いるんだよ。待ってろよな」

川 ゚ -゚)「それはそれは、頑張ってくれ」

クーが言い終えた時、外から鐘の音が聞えてきた。
9時を伝える鐘の音だ。

lw´‐ _‐ノv「あ、そういえばその爆弾、今夜10時に爆発するぞ」

川;゚ -゚)「は!?」

lw´‐ _‐ノv「じゃ、頑張ってくれー」

そういって、素早くシュールとの通話は切れてしまう。
クーはわずかにかたまったが、呆然としたままでもいられないので、すぐさま作業を再開した。

解体作業をするクーの動きは軽く、悩みの消えた顔つきになっていた。

177 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:16:28 ID:n3xO70qA0
作業を終えたのは、それから20分ほど経ってからだった。
爆弾が無事、部品単位でばらばらになったのを確認すると、満足して部屋を後にした。

リビングにつくと、大きめのケーキが置かれていた。
夜中なのでそこまで食べたくはなかったが、ブーンは対照的によく食べる人だったから、その大きさでちょうど良かった。
その甘い味を想像するだけでも、クーは十分に幸せだった。

川 ゚ -゚)「てか、ブーン?」

リビングには見当たらなかったので、一旦外の廊下に出てブーンを探した。
彼は何かしらの電話をしているようだった。

(;^ω^)「はあ、傘ですか。ええ、ちょっと見てみます」

ブーンはそう言って、見えもしないのにぺこぺこと頭を下げた。
気になる単語があったので、通話が切れたのを見計らって、クーは話しかけた。

178 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:17:21 ID:n3xO70qA0
川 ゚ -゚)「なんだ、知り合いか?」

( ^ω^)「ああ、そうだお。高校生の知り合いなんだお」

川 ゚ -゚)「へえ、意外だな。ブーンにそんな知り合いが」

( ^ω^)「そういえばクー、君が勤めているVIP大学の工学科の、面接試験を受けるって言っていたお。だから見かけるかもしれないお」

川 ゚ -゚)「うーん、どうだろうな。で、そいつがどんな用だったんだ」

( ^ω^)「ああ、なんでも僕が持って帰った傘、その子から借りたものだったんだけど、危険かもしれないって」

クーは、「危険」という言葉に反応し、一瞬目を見張った。

川 ゚ -゚)「……どういうことだ、それは」

(;^ω^)「うーん、僕もよく意味がわかっていないんだお。
       でもいたずら電話をするような子とも思えないし、本当のことなのかも」

179 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:18:22 ID:n3xO70qA0
クーの心臓が、強く脈を打ち始めた。

あの傘が爆弾だと言うことを見抜いた、そんな可能性はないだろうか。
もしそんなことができるとしたら、どれほど才能のある子なのだろう。
爆弾の構造に造詣の深い彼女にとっては、その閃きはただならないことであった。

(;^ω^)「それで、これからその傘を川に捨ててほしいと言っていたんだけど、どうしたらいいんだお」

ブーンは途方に暮れた様子で、クーを見つめてきた。
無理もない、ブーンにとっては心底意味のわからないことだろう。
そして、何事もない結婚生活を送るためには、彼がわからないままに、この件を闇に葬らなければならない。

川 ゚ -゚)「ああ、ブーン。頼みがあるんだ。
     もう一度その高校生に電話をしてくれないかな。
     その件はもう大丈夫だ、って」

( ^ω^)「え? 大丈夫なのかお?」

川 ゚ -゚)「そうだ。あと、あの傘、私が返しておくよ。
     その少年と少し会って、話してみたいんだ」

180 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:19:26 ID:n3xO70qA0
( ^ω^)「そうなのかお。電話はしておくけど……
       なんだかわざわざ申し訳ないお」

川 ゚ -゚)「平気だよ。どうせうちの大学とも縁があるかもしれない子なんだ。
     早めに知り合っておくのもいいかもしれないだろ」

( ^ω^)「ふーん、それもそうだおね。それじゃあ、連絡しておくお!」

川 ゚ -゚)「ありがとう」

これでいい、これで、あの傘が爆弾であったことを広めないように告げ口しておけば何も問題ないだろう。
その少年が面接試験を受かるかはわからないが、もし聞かれたな何を言えば良い評価をもらえるかくらい、教えておいてやろう。

それらの事柄を思い浮かべながら、決して口にも、表情にも浮かべずに、クーはブーンに頭を下げてリビングへと戻っていった。

181 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:20:25 ID:n3xO70qA0
24.

ブーンがショボンに再度電話をし、クーが言っていた内容を伝え、リビングに戻ると
クーはすでにテーブルの前で座って待機していた。

川 ゚ -゚)「さ、はやくはやく」

( ^ω^)「おっ、ずいぶんと嬉しそうじゃないかお」

川 ゚ -゚)「当たり前だろ、クリスマスだぞ」

( ^ω^)「お……」

ブーンは、思わず目をぱちくりさせる。

果たして、クーは最近こんなに明るく楽しそうにふるまえていただろうか。

182 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:21:21 ID:n3xO70qA0
もしかしたら、彼女が最近抱いていた、よくわからない暗い気持ちは、
今日のいつの間にかに消えてくれたのかもしれない。

もしそうだとしたら、今日はとても素晴らしい日だ。

( ^ω^)「ちょっと待つお!蝋燭をセットしてくれお。僕は音楽をかけるから」

川 ゚ -゚)「おう」

元気よく返事をするクーを見て、また一段と強い安心を感じる。
それから、ブーンは部屋の隅のスピーカーを操作し、音楽を鳴らす準備を始めた。

お気に入りの、古いクリスマスソングだ。

( ^ω^)「それじゃ、電気を消すおー」

音楽を数秒後に流れるよう、セットして、部屋の電気のリモコンを持ち、クーの元に歩み寄る。
クーの方は、すでに蝋燭をケーキに刺し終えていた。

リモコンのスイッチを押し、電灯が消え、揺らめく小さないくつかの炎が目に移る。
10時の鐘が鳴る。いろいろあって、こんなに遅くになってしまった。

183 ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:22:45 ID:n3xO70qA0
スピーカーからイントロが流れてくる。



いろんなことが起き、いろんな人が救われた。

その遠因が自分であることを、ブーンは当然、知る由もない。


とても静かで、平和で、穏やかな夜。



クーとブーンは身を寄せ合い、それから同時に蝋燭の火を吹き消した。





メリー・クリスマス








〜「crossing of blessing のようです」 おわり〜

184名も無きAAのようです:2013/12/23(月) 22:29:42 ID:CIV7CEVw0
おつ!
色んな人が少しずつ連鎖してく感じ凄く好きだわ

185あとがき ◆MgfCBKfMmo:2013/12/23(月) 22:30:03 ID:n3xO70qA0
久しぶりの地の文なので、好き勝手書きました。
これほどの大人数を書き表したのも初めてなので、ものすごく楽しかったです。
収まり切らず長くなってしまいました。まだまだです。

みなさん素敵なクリスマスをお過ごしください。
それでは、失礼いたします。

186名も無きAAのようです:2013/12/24(火) 08:34:07 ID:EjL7w.5o0
複雑なのに違和感のない展開ですごいなあ
良かったよ、乙

187名も無きAAのようです:2013/12/24(火) 12:18:08 ID:Y38iZVLs0
爆弾一つで、たくさんの出来事が解消されていって、おもしろかった!
乙!

188名も無きAAのようです:2013/12/28(土) 18:16:02 ID:2/6oQ5.U0
面白かった
ブーンたちがどうなるかハラハラしてたが最後にこんな形で絡んでくるとは


189名も無きAAのようです:2013/12/30(月) 01:23:50 ID:v.7JTLrg0
途中ドキドキしちまったぜ
また頑張ってな

190名も無きAAのようです:2013/12/30(月) 12:25:03 ID:xTGShPmcC
誰が主役でもおかしくないくらい各人の重要な役回りしてる 
それを違和感なく人間関係を連鎖させるなんて、あんたすげえよ 
おれ的には( ^ω^)と(´・ω・`)のダブル主役と思って読んでたけどね


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