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【祝福祭り】ブーン系創作板クリスマス・短編投稿祭
1
:
◆6jiCjk8pbE
:2013/12/10(火) 22:27:15 ID:a.TRkVsQ0
クリスマスを創作板で過ごすあなたに、祝福を
クリスマスシーズンの短編祭を開催します。
鬱祭なんて忘れろ!今年は祝福だ!
【祭テーマ】
祝福
【特設サイト】
ビッグ・ホール(
https://sites.google.com/site/bigguhoru/home)
【タイムテーブル】
『宣伝』 予告期間(〜12/22 12:00)
『本祭』 作品投稿期間(12/22 19:00〜12/25 23:00)
『後夜祭』 感想投稿期間(12/26 0:00〜12/27 23:00)
企画詳細に関しては特設サイトをご参照ください。
不明な点がありましたら主催者までメールでご連絡ください。アドレスはサイトに掲載しております。
※12月10日より主催様から◆6jiCjk8pbEへ祭り進行及びサイト管理が譲渡されました。
お間違いないの無いように周知お願いします。
一応の前スレ(削除依頼済)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1384173121/
112
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:20:32 ID:1cXiWiWo0
川 ゚ -゚)「は?」
o川*;゚ー゚)o「うわわ、ちょっとあんまり怖い顔しないでよう……。
えっと、あれだよ、幸せ、とか不幸、ってさ、そんなにずーっとつづいていくわけじゃないじゃん?」
o川*゚ー゚)o「いいことがあって、わるいことがあって、それでふつうのこともいっぱいあって……、
ていう感じの意味のことわざ? みたいのがあったような……」
o川;*゚ー゚)o「……なんだっけ、えーと、たしかうまがどーとか……、なわがどーたら……」
川 ゚ -゚)「……『人間万事塞翁が馬』と、『禍福は糾える縄の如し』、か?」
o川*゚ー゚)o「あーそうそう、そんな感じの、『バンジーの縄は猛々しい』ってやつ」
川 ゚ -゚)「言ったそばから全然違うんだが」
o川*゚ー゚)o「いや、まあ、話はそれちゃったけど、よーするに、おねえちゃんにはこれからいっぱいいいことあるよ!!
……ってことが言いたかった」
川 ゚ -゚)「慰め文句がありがちすぎるな」
o川*;゚ー゚)o「む、むう……だってそうとしかいいようがないんだもん……。
おねえちゃんと仲良くなりたいって思ってるひと、実は結構いるんだよ……?」
川 ゚ -゚)「……む」
川*゚ -゚)「……いや」
川*゚ -゚)「それが良いこととは……限らない、だろう」
o川*゚ー゚)o「いやもうおねえちゃん笑っちゃってるもん、ごまかせてないもん」
私は、自分の頬に触る。
川 ゚ -゚)「……私は、笑えていたのか?」
o川*゚ー゚)o「え?あー……うん、さっきは」
川 ゚ -゚)「ふむ、そうか、ではさっさと戻ろう」
.
113
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:21:17 ID:1cXiWiWo0
o川*゚ー゚)o「え?
……もどる?」
川 ゚ -゚)「……?
いや、そのままの意味だが……目的は達成したんでな、さっさと戻ろう」
o川*;゚ー゚)o「え?! いやちょっと待ってよまさか……笑う? おねえちゃん、笑いたかったの?」
川 ゚ -゚)「全くもってその通りだが」
o川*;゚ー゚)o「いやいやおねえちゃん別に普段全然笑わないとかじゃないし、
なんか笑ってたじゃん最初の方」
川 ゚ -゚)「ああ……いや、もし繋がりを斬ってゆく中で笑えたら、もうちょっと頑張ろうと思っていたんだ。
あと最初のあれは私であって私じゃない、記憶の中の私みたいなそんな感じ」
o川*;゚ー゚)o「急にあいまいだよう……おねえちゃん、めんどくさくなってきてない?」
私であって私でない。
ふむ、我ながらなかなか良い言い回しではないか。
そうすると、最初私がキュートの姿をとっていたのは、『繋がりを斬る』ということを、
他の誰でもない、私の妹自身にやってもらいたかった、という願望の現れか。
o川*゚ー゚)o「ていうかそもそも、どうやって帰るつもりなの」
川 ゚ -゚)「むー……あー、いや、夢は夢らしく頬をつねるとか……。
ん?」
o川*゚ー゚)o「え、どうしたの?」
川 ゚ -゚)「いや、なんだか急に冷えだしたなと思ってな」
o川*゚ー゚)o「あー、それもそうだね……。
あ、もしかして」
川 ゚ -゚)「?」
o川*゚ー゚)o「いや、おねえちゃん、ちょっとカーテン開けてみなよ」
.
114
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:22:08 ID:1cXiWiWo0
* *
ξ゚⊿゚)ξ「全く…、ホワイトクリスマスに式を挙げることになるなんて」
( ^ω^)「おっおっ、ロマンチックで素敵だおー」
ξ゚⊿゚)ξ「キュートちゃんはいいけど、あいつがロマンチック、ねぇ」
<ガシャーン
<ウ、ウワーカガミガー!!
<アアモウ、シンロウサマハソコデジットシテテクダサイ……
ξ;゚⊿゚)ξ「……あーもう」
( ;^ω^)「早速やらかしてるお」
<ガチャ
(^ω^ )「おっ?」
( ;´_ゝ`)「あーひどい目にあった……」
ξ゚⊿゚)ξ「ひどい目もくそも、どうせあんたのせいでしょうに」
( ´_ゝ`)「ギクゥ」
( ^ω^)「口で言うなお」
ξ゚⊿゚)ξ「キュートちゃんはまだ中なの?」
( *´_ゝ`)「そうだぞーもう反則的なまでにきれいかわいいんだからなー覚悟しとけー」
( ^ω^)「いやーそれにしても、兄者があのキュートちゃんとゴールインするなんて、びっくりだお」
ξ゚⊿゚)ξ「ホントよ全く、こんなのどこがいいのかしらねぇ」
( ´_ゝ`)「おまいさんそれを言うならこのピザ男くんと結婚したあなたも大概ですぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「は? ブーンとあんた一緒にしないでくれる? ブーンは世界一素敵な私の旦那よ」
( //ω//)「おっおっ……ツンやめるおーてれるおー」
( ´_ゝ`)「のろけめ」
.
115
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:22:55 ID:1cXiWiWo0
o川*゚ー゚)o「あれ? もうふたりとも来てたの?」
( *^ω^)「おーキュートちゃんだおー、ドレスきれいだおー」
ξ*゚⊿゚)ξ「うわー……やっぱり素敵ね」
o川*゚ー゚)o「ふふふー、ありがとー」
( *´_ゝ`)「そうであろうそうであろう、なんてったって俺の嫁さんは世界一だからな!!」
o川*゚ー゚)o「ところでわたし、こないだのデパ地下のマカロン、また食べたいなあ……一ダースくらい」
( *´_ゝ`)「おう、もういくらでも買ってくるぞ!!」
o川*゚ー゚)o「ついでにさっき壊れた姿見の請求書もあげる」
( *´_ゝ`)「構わん構わん、どんときやがれ!」
ξ;゚⊿゚)ξ(恋は盲目……)
ξ゚⊿゚)ξ「……ん?」
川 ゚ -|┬┴┬┴
ξ゚⊿゚)ξ(誰かしら…すごいこっちみてる)
o川*゚ー゚)o「あ、おねえちゃん!」
ビクゥΣ川;゚ -|┬┴┬┴
川;゚ -゚))))) |┬┴┬┴ ススス
( ^ω^)「あ、もしかして、例のキュートちゃんの双子のお姉さんかお?」
川;゚ -゚) ア、ハイ……ドウモ……
( *´_ゝ`)「クーちゃん久しぶりー、ご挨拶に行ったとき以来だね」
( ^ω^)「僕らははじめましてだおー」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、はじめまして。私がツンで、こっちがブーン」
.
116
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:23:44 ID:1cXiWiWo0
( ´_ゝ`)「いやー双子なのにおねえちゃんと呼んでもらえるなんて羨ましい限り……
俺の双子の弟なんてもう生意気生意気」
( ^ω^)「それでも、『おにいちゃん』なんて呼ばれた日には?」
( ´_ゝ`)「全力で殴る、気持ち悪い」
( ^ω^)「ですおねー」
<ソロソロフタリトモ、ジュンビオネガイシマース
o川*゚ー゚)o「あ、もうこんな時間?」
( ^ω^)「僕らもそろそろ行くおー」
( ´_ゝ`)「だなー……って、お? クーちゃん、どうした?」
川;゚ -゚)「エ、えーっと、あの……」
川 ゚ -゚)「……兄者さん、キュートのこと、宜しくお願いします」
川*゚ -゚)「私の大事な、自慢の妹なんです」
o川*゚ー゚)o(……)
( *´_ゝ`)「おうっ、任しとけ!」
川*゚ -゚)「……ありがとう、ございます」
<スミマセーン!ジカンオシテマース!!
( ;´_ゝ`)「うぉっと、そろそろやばいな」
o川*゚ー゚)o「……。
ごめん、ちょっと三人とも先行っててくれる?」
( ;´_ゝ`)「え、あーまあ良いけどなるべく早くねー!」タタタ……
川 ゚ -゚)「……すまんな、遅れてしまって」
o川*゚ー゚)o「なーにやってたのよー」
川 ゚ -゚)「……絵を、描こうと思って」
o川*゚ー゚)o「絵?」
.
117
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:24:32 ID:1cXiWiWo0
川 ゚ -゚)「そう、絵だ
夢の、目覚める直前の雪景色が、とても綺麗だったから……忘れないうちにちょっと描いておいた」
o川*゚ー゚)o「おねえちゃんの絵かー……懐かしいなー、小学校以来?」
川 ゚ -゚)「む、中学の頃はたまに描いていたんだがな、なんとなく疎遠になってしまっていてな」
o川*゚ー゚)o「わたしおねえちゃんの絵、大好きだったんだよ!
出来上がったら見せてねー」
川 ゚ -゚)「もちろんだ」
川 ゚ -゚)「……あのさ、キュート」
o川*゚ー゚)o「?」
川 ゚ -゚)「キュートは昔から、元気で皆の人気者だったけどさ、
やっぱりどっか無理してるのかなって、思うことが結構あったんだ
……でも、兄者さんの前のキュートは、なんか……」
川;゚ -゚)「こう、うまく言えないんだけどな……、
ありのままっていうか、私が知ってるそのままの、私の一番好きなキュートなんだ、だから」
川 ゚ー゚)「彼ならお前を幸せにしてくれるよ、絶対」
川 - )「なあ、キュート」
川 ;ー;)「結婚、おめでとう」
o川*゚ー゚)o「……」
o川* ー )o「ありがとう、おねえちゃん」
o川*゚ー゚)o「おねえちゃんも」
o川*^ー^)o「おめでとう」
o川* ー )o「い、ままでほんとうに……グスッ」
o川*:ー;)o「ありがとう……」
川 ; -;)「……このバカ、泣くのは、早すぎるぞ……」
o川*;ー;)o「おねえちゃんだって、泣いてるくせにぃ……」
.
118
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:25:14 ID:1cXiWiWo0
川う -゚)「む、さすがにそろそろいかないとだめだな」
o川*;゚ー゚)o「うわほんとだ、式までいくらもない、じゃあ、またあとでね!」
o川*゚ー゚)o「……」テクテク
o川*゚ー゚)o(おねえちゃん、わたしが結婚のこと伝えてからずっと上の空だったから、元気になってよかった…….。
それにしても、サンタさんとはねぇ……やっぱり双子って考えも似るもんなのかな)
o川*;゚ー゚)o(言えないよねぇ……わたしもサンタさんに、『おねえちゃんが元気になってほしい』、ってお願いしたなんて)
* *
( ´_ゝ`)「あ、やっときたきた」
o川*゚ー゚)o「おまたせー」
o川*゚ー゚)o「ところで、そっちのスピーチってドクオくんだっけ? こっちは予定通りおねえちゃんだけど」
( ´_ゝ`)「そうそう、いやーブーンがツンちゃんと結婚したときはどっちが最後に残るかヒヤヒヤだったんだが……。
結局三人の中でドクオが最後になっちまったんだなー」
( ´_ゝ`)「あーそーいえば、クーちゃんって、キュートちゃんとは二卵性の双子なんだっけ?」
o川*゚ー゚)o「そーだよ、あんまり似てないねって、よく言われるけど」
( ´_ゝ`)「そう? さっき笑ったところなんて、そっくりだったよ?」
o川*゚ー゚)o「……」
( ´_ゝ`)「まあ、二卵性だとしても姉妹なんだし」
( ;´_ゝ`)「似てるのも当然っちゃー当然……
って何なにどーしたの急に、あんまりぎゅっとするとドレスにシワついちゃうよ?!」
o川* ー )o「しるかばーかーばーか今度ゴデバのチョコドリンクおごりやがればーか」
( ;´_ゝ`)「いやもうそりゃあ喜んでおごらせていただきますが」
( ´_ゝ`)「……あ、そーだった忘れてたんだけど」
o川*゚ー゚)o「んえ?」
( ´_ゝ`)「いや、ドクオの、スピーチのことなんだけどね……」
.
119
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:25:59 ID:1cXiWiWo0
…
……
………
o川*;゚ー゚)o
( ´_ゝ`)「って」
o川*;゚ー゚)o「……いや……えーっと……」
o川*゚ー゚)o「……もう、なんかいいか……おもしろそうだし……。
ただしお前は式が終わり次第クリスマス限定ゴデバ買ってこい」
( ´_ゝ`)「えっ」
o川*゚ー゚)o「一番高いやつな」
* *
川;゚ -゚)(スピーチの練習も死ぬほどしたし……大丈夫だ私、頑張れ私)
川 ゚ -゚)(……えーっと、席は)
ξ゚⊿゚)ξ ( ^ω^)ノシ
ドンッ('A`)川 ゚ -゚)(……あそこか)
川;゚ -゚)「って、お?」
|(;'A`)「あ」
|(;'A`) ス、スミマセン……ブツカッチャッテ
|'A`;)彡ピャッ
川;゚ -゚)(行ってしまった……私、そんなに怖い顔してたか……?)
ξ゚⊿゚)ξ「クーさーん? 式始まっちゃうわよー」
川;゚ -゚)「あ、すみませんすぐ行きます」
.
120
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:26:44 ID:1cXiWiWo0
* *
川 ゚ -゚)「……これで、ご挨拶とさせていただきます」
パチパチパチパチパチ……
川;゚ -゚)(やりきった……無事に終わった……よかった……)
ξ゚⊿゚)ξ「お疲れ様」
( ^ω^)「すごくよかったおー」
川*゚ -゚)「ありがとうございます」
スピーチまでの短い時間で、私は内藤夫妻とかなり打ち解けることができた。
この二人が、夢でキュートが言っていた『私と仲良くなりたい』という人たちだったのだろうか。
だとしたら、私をこの二人と相席にしたのは。
川 ゚ー゚)(全く…出来の良い妹をもって、私は幸せ者だ)
( ^ω^)「お、次はドクオのスピーチだおー」
((( 'A`)
川 ゚ -゚)(……あ)
先ほど二人が話していたドクオという旧友は、私にぶつかった彼のことだったのか。
.
121
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:27:43 ID:1cXiWiWo0
* *
('A`)「そしたら、こいつが言ったんですよ」
('∀`)「『それを言うならヒメマルカツオブシムシの再来だろ』ってね」
\ドッ/ \ハハハハ/
彼らの友人時代の笑える出来事を語るドクオ君のスピーチは、とても面白く、引き込まれた。
川;゚ -゚)(むう、なんだか今になって自分のスピーチがすごく恥ずかしくなってきた……)
('A`)「さて、長々と話してしまいましたが」
('A`)「本日は、二人とも本当におめでとうございます」
('A`)「お二人の幸せを心からお祈り申し上げ、ご挨拶とさせていただきます」
沸き起こる拍手。
もちろん私もそれに加わる。
('A`)「と、その前に」
('A`)「最後に、もう一つ言わせてください、私事なのですが」
('A`)「今日からピッタリ三か月前のことです、僕が兄者とキュートさんと、キュートさんの家の近くで話していたとき」
('A`)「とある方がキュートさんに忘れ物を届けに来ました」
('A`)「バカバカしい話だとは思いますが」
('A`)「その時、僕はその方に一目惚れをしてしまったのです」
('A`)「その方とは」
('A`)「ついさっき、スピーチをしていらした」
('A`)「新婦の、双子の姉」
('A`)「素直クールさん、です」
.
122
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:28:38 ID:1cXiWiWo0
('A`)「素直クールさん、」
( A )「どうか、この僕と」
( A )「結婚を前提にした、お付き合いを、して、いただけないでしょうか」
川;゚ -゚)
無数の視線が私に注がれるのを感じ、とっさに俯く。
人の結婚式のスピーチでこんなことを告げるなど、馬鹿げている、非常識だ。
こんなの受け入れるなんて、頭がおかしい。
わかっている、しかし、わけのわからない夢のせいで寝不足の頭では、思考が追いつかない。
:;o川* 、 )o;:
なんだよキュート、笑いをこらえて。
知ってたのかお前は。
ばか。
川 ー )
下を向いた顔に、なぜかにやけ面が浮かぶのを感じた。
ついに頭が変になったのか、妹の結婚式だから、クリスマスイブだから、気持ちが昂っているのか。
それとも、嬉しいのだろうか。
これは夢じゃないのかとも思ったが、今度ばかりは、雪景色を見ても覚めそうにない。
川 ゚ー )
いいだろう、受けて立とうじゃないか。
私は、顔を上げ、ドクオとやらに向かって、声を張り上げた。
《おしまい》
.
123
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:29:51 ID:1cXiWiWo0
投下終わりです。
みなさんも祝福されますように.。
124
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 19:34:34 ID:WJjVCr5.O
乙!
情景のきれいな話だった
素敵な景色をありがとう
125
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 20:05:40 ID:/jLQ7pTs0
乙!良い姉妹だなー
ヒメマルカツオブシムシが気になってぐぐったら害虫なのか
126
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 20:46:37 ID:CIV7CEVw0
読み返すとあったかい
おつ
127
:
名も無きAAのようです
:2013/12/23(月) 22:42:06 ID:rPnKGEPw0
ζ( ー *ζ花言葉は神の祝福のようです
奇跡なんか必要ない。
私はただ、友達がほしかった。
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1433.jpg
青い薔薇の花言葉に神の祝福があるそうなので、あのゲームをもとネタに
祝福祝福
128
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 00:05:06 ID:EjL7w.5o0
>>127
色合いとかデザインとかすごく素敵
祝福乙です
129
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 01:55:27 ID:bgPs8I7s0
投下します
130
:
从 ゚∀从5分間の祝福のようです
:2013/12/24(火) 01:56:12 ID:bgPs8I7s0
从 ゚∀从「お……雪降ってる」
トポポ…
カタン
从 ゚∀从「今年のひとり誕生日パーティーはベランダでやりますか」
从 ゚∀从 テクテク
ガラッ
从 ゚∀从「ベランダさっむ」
从 ゚∀从「完全防寒しないとな」
http://imepic.jp/20131224/059500
从 ゚∀从「ブーツブーツ」
从 ゚∀从「どっこいせ」
131
:
从 ゚∀从5分間の祝福のようです
:2013/12/24(火) 01:57:05 ID:bgPs8I7s0
从 ゚∀从っ[スマホ] ス…
[スマホ]<…〜♪
从 ゚∀从「はっぴばーすでーとぅーみー」
从 ゚∀从「はっぴばーすでーとぅーみー」
[スマホ]<〜♪〜♪
从 ゚∀从「はっぴばーすでーでぃあハインー」
从 ゚∀从「はっぴばーすでーとぅーみー」
从 ゚∀从「かんぱーい」
ゴク
132
:
从 ゚∀从5分間の祝福のようです
:2013/12/24(火) 01:57:53 ID:bgPs8I7s0
从 ゚∀从「んあー」
ポカポカ
http://imepic.jp/20131224/060250
ゴク
从 ゚∀从「ひとりで飲む酒は美味い」
从 ゚∀从「あったまったし、寝るか」
ポカポカ
从 ゚∀从「どっこいせ」
ガラ
ピシャッ
<ライネンハ、カレシツクルゾー
終わり
133
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 01:58:42 ID:bgPs8I7s0
投下終わり
もともとは総合絵題用に描いたやつなので、イラストがメインです
お題は「毛糸」と「ホットウイスキー」でした
134
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 02:13:42 ID:OW.cb7y.0
やだハインちゃん可愛い…祝福乙
135
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 02:17:15 ID:bu6.6tIo0
祝福乙 ハイン可愛い。温かくていい絵だな。
136
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 07:59:37 ID:tH6JbSZk0
祝福乙!かわいい!
137
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 11:32:29 ID:Y38iZVLs0
のんびり感がいいね 祝福乙!
138
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:46:01 ID:W4HgW3rA0
投下します。
139
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:47:14 ID:W4HgW3rA0
( ∀ )「あ――…いってえな……くそっ」
悪態をつきながら街を歩く。
傷だらけの体を嘲笑うように、あちこちでイルミネーションが輝いていた。
どうやら今日はクリスマスだったらしい。
まあ、俺には欠片も関係のない話だが。
( ∀ )「死ぬんじゃねえのか、これ」
自嘲混じりの言葉も、カップルの愛の囁きの合間に埋もれていく。
( ゚∀゚)聖夜に彼らは出会うようです
.
140
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:48:49 ID:W4HgW3rA0
煌びやかなイルミネーション。
それを見ながら体を寄せ合うカップル。
幸せそうな笑顔。
忌々しい。何もかも、忌々しい。
幸せそうな空気の中、ずたぼろの体を引きずって歩く俺に目を向ける奴は滅多にいない。
たまに視線を感じるが、それもすぐに消える。
幸せの最中に、わざわざ面倒事に関わりたくないのだろう。至極当然のことだ。
.
141
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:49:57 ID:W4HgW3rA0
( ゚∀゚)「はあ……」
体を動かすのが億劫になった時、目の前に巨大な建物が見えた。
風を凌ぐのにもちょうどいいと思い、壁に寄って腰を下ろす。
( -∀-)「……寒いな」
風は凌げたが、いかんせん寒い。
時期が時期だから当たり前だとは思うが。
どこからか聞こえる軽やかなメロディをBGMに、先程までの記憶を回想する。
俺は、喧嘩に負けたのだ。
.
142
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:50:57 ID:W4HgW3rA0
俺はあちこちをふらふらする根なし草だ。
特別珍しいことじゃない。この辺りはそんな奴で溢れかえっている。
だから俺達にとって、喧嘩に負けることは自分の居場所を奪われるということだ。
ショバ。いや、縄張り、か。
そして俺は負けた。
元々、滅法喧嘩が強いわけではない。
そんな奴が多勢に囲まれて勝てるわけがなかった。
――――いや、敗因など今更どうでもいい。
重要なのは、俺はこれからどこに行けばいいのかということだ。
.
143
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:52:15 ID:W4HgW3rA0
( -∀゚)「……」
痛む顔を撫でる。思いきり腫れていた。
殴られたせいか血を流したせいか、多分両方だろうが、頭がうまく働かない。
( -∀゚)「(俺、死ぬのかもな)」
それもいい気がした。
どうせ帰る場所などないのだ。それならここで凍え死んだ方がいい気がする。
そんな自虐的な思考に身を任せていると、ふと濃い陰が落ちた。
ξ;゚⊿゚)ξ「あんた、大丈夫?」
心配そうな顔をした女が、俺を見下ろしていた。
.
144
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:53:14 ID:W4HgW3rA0
ξ;゚⊿゚)ξ「怪我してるじゃない、大丈夫なの?」
( ゚∀゚)「……何だよ、お前」
正直面喰った。好き好んで声をかけてくる奴がいるとは。
女は俺のまとっているそれと対照的な、白い毛皮のコートを着ていた。
これから恋人とデートですとでも言いだしそうなほど、綺麗な服と顔をしている。
ξ;゚⊿゚)ξ「私の家ここから近いから行きましょう。手当てしてあげる」
(;゚∀゚)「はぁ!? てめっ、触るな!」
差しのべられた手を、触れられる直前で振り払う。
女は「きゃっ」と小さく悲鳴を上げて腕を引っ込めた――――と思いきや、鬼のような顔で俺を睨む。
ξ#゚⊿゚)ξ「あったまきた! 意地でも手当てしてやるんだから! 来なさい!」
(;゚∀゚)「うお、ちょ、待ってって、おま――――」
.
145
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:53:58 ID:W4HgW3rA0
引きずられるような形で、俺は女の家に連れ込まれた。
救急箱からガーゼだの消毒液だのを取り出す女の背中をぼんやりと眺める。
さっきまで着ていたコートは既に脱いでいた。
こいつ、あんなめかしこんで、どこかに行く予定じゃなかったのか?
ξ゚⊿゚)ξ「じっとしてなさい」
言うや否や、乱暴に消毒液をぶっかけられた。しみる。
殴られた時の痛みには到底及ばないが、しみるものはしみる。思わず顔を顰めた。
( ゚∀゚)「なんつー乱暴な女だ」
ξ゚⊿゚)ξ「我慢してよ。化膿するよりましでしょ」
.
146
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:55:48 ID:W4HgW3rA0
ξ゚⊿゚)ξ「あんた、こんな傷どこでつけたのよ」
俺の腕に包帯を巻きながら、女は溜息交じりに言った。
ま、私には関係ないけど、と続け、余った包帯を切り取る。
ξ-⊿-)ξ「はあーあ、変な怪我人は拾っちゃうわ、彼氏にはふられるわ、ついてないわね」
( ゚∀゚)「ふられた……って、お前」
包帯を片づけながら、女は俺に向かって笑った。
ξ゚⊿゚)ξ「クリスマスも仕事だっていわれたのよ。でも、一目会いたくてさ。仕事が終わる時間を見計らって家に行ったわけ」
( ゚∀゚)「……」
ξ゚ー゚)ξ「そしたら、他の女と腕組んだあいつと鉢合わせしちゃったの。その場でふられちゃった。ばかよね、ほんと――――」
ばかみたいに張り切ってお洒落してさ、と女がハンガーにかけたコートを見る。
その目からぽろりと水が滴った。
.
147
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:57:37 ID:W4HgW3rA0
ξ;⊿;)ξ「うう、う"……うううう……」
(;゚∀゚)「お、おい」
ξ;⊿;)ξ「なによ……ばかあ……何もこんな日に、ふること、う"う"う"っ」
堰を切ったように女は泣きはじめた。
派手な色をしたスカートに暗い色の染みが広がっていく。
女がふられようがなんだろうが俺には全く関係のない話だが、このまま放置するわけにもいくまい。
とりあえずそっと女の手に触れる。と、びくりと目の前の体が震えた。
ξ;⊿;)ξ「あ、あんた、それ、慰めてるつもり……?」
(;゚∀゚)「あー……いや、その、なんていうか……」
.
148
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:58:35 ID:W4HgW3rA0
どうすりゃいいんだ。
恋愛なんかとは無縁の世界と生きていた俺は、女の慰め方なんて知らない。
とりあえず女の体を何度かポンポンと優しく叩く。これじゃ幼児扱いだ。
ξ;⊿;)ξ「ふう"う"う"っ……」
(;゚∀゚)「あーと、その、なんだ、男なんざ星の数ほどいるんだからよ」
ξつ⊿;)ξ「うう"う"う"う……」
(;゚∀゚)「その……美人なのに、泣いたら……、ああもう! どうしろってんだ!」
俺が大声を上げると、女は今俺の存在に気付いたかのように、視線を俺に向けた。
スンスンと鼻を鳴らしながら、乱暴に涙を拭く。目が真っ赤になっていた。
ξ;ー;)ξ「ふふっ、ふふふ」
(;゚∀゚)「な、なんだよ急に笑い出して」
ξ;ー;)ξ「あんたが急に変な声出すから、思わず笑っちゃった」
.
149
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 20:59:28 ID:W4HgW3rA0
ξう⊿゚)ξ「はあ、泣いたら少しすっきりしたわ」
( ゚∀゚)「そりゃよかったな」
我に返ると、手当てはとっくに終わっていた。
俺に帰る場所なんてないが、いつまでもここに居座るわけにはいかない。
無視できる程度におさまった傷みを抱えて立ち上がる。
ξ゚⊿゚)ξ「え?ちょっと、どこに行く気!?」
( ゚∀゚)「もう用はねえだろ。邪魔したな」
ξ゚⊿゚)ξ「待ちなさいよ!」
女は慌てたように俺を引っ掴んだ。
体のどこからかグキリという音が聞こえた。本当に乱暴な女だ。
.
150
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:00:25 ID:W4HgW3rA0
ξ゚⊿゚)ξ「まだ私お礼言ってなかったわ。ありがとね」
( ゚∀゚)「なんだそれ。逆だろ」
怪我の手当てをした奴がお礼を言うなんて聞いたことがない。変な女だ、と思った。
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、あんた行くところあるの?」
( ゚∀゚)「……お前に関係ねえだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「なさそうね」
無視か。だが事実なので黙る。
女は先程までとうってかわった弾んだ声で「それじゃあさ」と続けた。
.
151
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:01:21 ID:W4HgW3rA0
ξ*゚⊿゚)ξ「私の家にいなさいよ!」
(;゚∀゚)「はあ!?」
ξ*゚⊿゚)ξ「ほら、私元々一人暮らしだし、これから彼氏もいないしさ。寂しいじゃない」
(;゚∀゚)「知らねえよ! 何言ってんだいきなり!」
ξ*゚⊿゚)ξ「いいじゃないいいじゃない、聖夜の出会い。ロマンチックじゃない!」
(;゚∀゚)「話聞けアホ!」
変なスイッチが入ったのか、女は鼻歌まで歌いだした。
音程のずれたジングルベルを聞いて、俺はこの女が音痴だということを知った。物凄くどうでもいい情報だ。
.
152
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:02:14 ID:W4HgW3rA0
ξ゚⊿゚)ξ「せっかくのクリスマスに家にこもるっていうのは不健全ね。
そうだ、イルミネーション見に行きましょうか。二人でカップル共を蹴散らしてやりましょう」
( ゚∀゚)「本当にやったら警察沙汰だな。というか俺がここに住むのは決定なのか」
まさかこんなことになるなんて、数時間前の俺に予想できただろうか。
初対面の女の家に連れ込まれ、手当てされ、泣かれ、慰め、ほぼ強引だが住処が決まった。
一番驚きなのが、あんな荒くれた生活をしていた俺が
「この女と暮らすのも悪くないかもしれない」と思っていることだ。
本当に、なんてこった。
.
153
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:03:48 ID:W4HgW3rA0
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃ行くわよ! えーっと……ジョルジュ!」
( ゚∀゚)「なんだそれ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの名前よ。私からのクリスマスプレゼント、ありがたく受け取りなさい」
( ゚∀゚)「……まあ、嫌いじゃねえな」
ξ゚ー゚)ξ「うっし! じゃあカップル共を血祭りにあげるわよ!」
女の腕に抱かれた黒猫は、少し恥ずかしげに「にゃあ」と鳴いた。
おしまい
.
154
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:04:54 ID:W4HgW3rA0
投下終了です。
皆様に祝福あれ。
155
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:08:36 ID:VwM.k4rM0
祝福乙です
最後の最後で意表をつかれたわ、また読み直してほっこりした
156
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:10:49 ID:wNZE8Bfg0
祝福乙
ところで黒猫どこから現れたんだ……?
なんにせよツンもジョルジュも末永く爆発しろ
157
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:14:50 ID:FJVHTGoU0
祝福乙ー
ジョルジュはいったん病院連れてって病気持ってないか確認してこないとな
158
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:29:22 ID:fWilX0bEO
投下します
159
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:31:23 ID:fWilX0bEO
ξ*゚⊿゚)ξ「私ね、ブーンと付き合うことになったの!」
川 ゚ -゚)「ん……?」
目の前で頬を染めている巻き髪の女は津田ツン、私のクラスメイトである。
高校に入学して最初の席が隣だったことからぎこちない会話をしたのが、彼女との最初の思い出だ。
ちなみに初対面の彼女に対する印象といえば何だこの巻きグソ女というものだったが、
それを本人に言ったことはないしこれからも言う気はない。
だって、言ったらたぶん私の命はないだろうから。
ツンとはなんだかんだで気が合った。
そんなわけで一年と八ヶ月ちょっと、つるんでいるわけである。
今では親友ともいえる間柄だろう。
ツンは面倒な女だ。
しかし親しくなるにつれてそれは照れ隠しのきつい態度なのだと知れたし、そこも魅力のうちなのだと思う。
今のツンは私に対してはわりといい女だ。
160
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:32:55 ID:fWilX0bEO
ところでツンが名前を出したのが本名内藤ホライゾンなのにあだ名はブーンというおかしな男である。
入学して最初の席で彼は私の斜め後ろ、ツンの真後ろの席であった。
素直、津田、内藤、私達は二年の最初の席でも同じ位置関係からスタートした。
今のブーンの席はというと窓際の一番後ろという特等席である。
彼はそれを存分に満喫し、よくその時々の担当教師に叱られている。
実に羨ましい。
そんな彼はそんな生活に見合った相応の成績であるし、本人もそれを笑いの種にしている。
ブーンの魅力はひとえに彼の朗らかな人柄なのだ。
で、目の前のツンは頬を染めながら何と言ったのだろうか。
川 ゚ -゚)「……ワンモアプリーズ」
ξ*゚⊿゚)ξ「し、しょうがないわね! 特別なんだからね」
そう前置きをして、ツンは言った。
「私、ブーンと付き合うことになったの」と。
川 ゚ -゚)始まっていないし、終わらないようです
.
161
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:33:57 ID:fWilX0bEO
川 ゚ -゚)「……というわけでな、どうやらねーちゃんは失恋したようだ。慰めろ」
ノパ⊿゚)「いきなりそんなこといわれてもどうしたらいいんだ……」
川 ゚ -゚)「手始めに私の大好物のチョコミントアイスをおごってくれ」
ノハ;゚⊿゚)「中学生の妹にたかるなよ!?」
ツンからの告白は帰路で行われた。
私は自転車、彼女は電車を使っての通学で、学校から駅までの僅かな距離の中で私は爆弾を投げ付けられたのだ。
帰宅してすぐ、私は着替えもせずにリビングに出したばかりのこたつに陣取った。
そして、先に帰宅していたジャージ姿というなんともいけてない格好の妹にお使いを頼んだのだった。
川 ゚ -゚)「いいだろ、ヒート。私は今傷心中なんだよ……」
ノパ⊿゚)「……ねーちゃん、そのツンって人のことそんなに好きだったの?」
川#゚ -゚)「私が好きだったっぽいのはブーンだ! なぜかよくレズに間違われるんだが、まさか妹にやられるとは思わなかった!!」
ノハ;゚⊿゚)「ご、ごめん……。というか『っぽい』って何?」
川 ゚ -゚)「自分でも確信がないんだ」
162
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:35:22 ID:fWilX0bEO
そう、私は自分のブーンへの気持ちが恋愛感情なのだと言い切ることができない。
というのも、これが私の(おそらく)初恋だからである。
振り返ってみれば男友達はそれなりにいた。
中学まで一緒だった仲良しの幼なじみも男だ。
しかし、彼らは私にとって女友達と変わらない存在だった。
ブーンも最初はそうだった。
しかしいつからか、私は彼に特別を感じていた。
ブーンは絵に描いたような善良な男なのだ。
普段は友人らと悪ふざけもする。
だけど本当の頑張りどころで輝く。
川 ゚ -゚)「いいやつなんだ。誰にでも平等で、嫌味もなくて。他人のために命を懸けられる人間というものを、私は初めて見たんだ」
ノパ⊿゚)「命を、懸ける……?」
川 ゚ -゚)「ああ」
今年の夏休みあけすぐの出来事だった。
私の通う学校の近くには小学校もあるから、朝は狭い歩道が人で埋まるというのも見慣れた光景だ。
暑い、とても暑い日だった。
その日も私はいつも通りに登校した。
人が多く、いつものようにサドルからは降りて、押して歩いていた。
だらだらと流れる汗を拭っていた私は、誰かの叫び声がするまで気付かなかった。
163
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:36:29 ID:fWilX0bEO
キキーッ、という甲高い音。
何かが思い切りぶつかったような大きな音。
そして一瞬、すべての音が消えたのだ。
私は生まれて初めて交通事故の現場に遭遇した。
はっとして音のした方に目を向けた。
私は驚いた。
それはもう、声も出ない程に。
私の視線の先には、電柱に激突した乗用車があった。
ノハ;゚⊿゚)「そーいや、ねーちゃん言ってたなぁ。二学期早々やなもん見ちゃったって」
川 ゚ -゚)「そう、それだ。本当に怖かったんだぞ」
ノパ⊿゚)「私は見たくないなぁ……」
ヒートはしみじみと言った。
事故現場は悲惨だった。
車の前の方は電柱に激突した衝撃でぐちゃぐちゃだった。
ガラスの破片が大量に散っていたのをよく覚えている。
その近くには人が転がっていた。
そこはちょうど横断歩道の上だった。
次の瞬間には私は走りだしていた。
164
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:37:32 ID:fWilX0bEO
ブーン!
そう叫びながら私は駆け寄った。
川 ゚ -゚)「知ってるやつが倒れてたんだ。私は自転車の存在なんて忘れていた」
ノパ⊿゚)「あ、だから自転車のフレーム歪んでたんだ…」
川 ゚ -゚)「手を話したときに思い切りガードレールと電柱に叩きつけてしまったらしい。
あの時後ろを歩いてた友達が後から報告してくれたよ」
ノハ;゚⊿゚)「そりゃあ、あんなひどい状態だったら私だってねーちゃんに報告するぞ……」
自転車の修理にはそれなりの費用がかかった。
本来なら事故を起こした迷惑な運転手に請求してやりたかったが、それはさすがに無理だった。
とにかく、私はそれほど必死だったのだろう。
ブーンに一目散に駆け寄った私は、まず彼の怪我を確認した。
目に見える傷は大きくないように見えた。
川 ゚ -゚)「しかし、誰かが呼んだ救急車で病院についていったらな、脚を骨折してた」
それ以降、私はブーンの登下校の世話をやくようになった。
彼の家は学校の近くだから、私は朝早く彼の家まで迎えに行って荷物を自転車にのせてやった。
ブーンが松葉杖を使わなくなるまでの間だったが、その間に私は彼のいろんなことを知った。
趣味は料理で意外と家庭的であることとか。
休日は近所のファストフードでアルバイトをしているとか。
もっともっと、たくさん知った。
学校で話すよりもいろんなことを知った。
165
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:38:40 ID:fWilX0bEO
ノパ⊿゚)「そういや事故の方はどうだったの? ブーンさん以外の話とかさ」
川 ゚ -゚)「ああ、ブーンがかばった小学生は擦り傷だけだったよ。
車の方はスクラップだが、運転手もぶつかった衝撃で気絶したくらいでたいした怪我もなかったらしい」
ノハ;゚⊿゚)「ってことは、一番の重傷が……」
川 ゚ -゚)「無関係のブーンだったわけだな。本当に悪運の強いやつだ」
私はヒートが文句をいいながらも持ってきてくれたアイスを食べる。
冷たくておいしかった。
ノパ⊿゚)「結局、ねーちゃんは二人のことどう思ってるの?
私は好きな人できたら突っ走るタイプだから、ねーちゃんの考えてることがわかんないんだよ」
川 ゚ -゚)「私はブーンとツンを……」
ブーンには、うまい表現はできないものの特別な感情を抱いている。
これは否定しようのない事実である。
しかしツンは私の大切な友人だ。
彼女の幸せそうな顔を見ていたら私の気持ちも温かくなったのも事実なのだ。
川 ゚ -゚)「なあ、ヒート、大切な親友と好きな人が恋人になった時、人は必ずしも祝福できないものなのだろうか」
ノパ⊿゚)「へ?」
166
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:39:59 ID:fWilX0bEO
川 ゚ -゚)「私はな、思うんだ。
この世界の全ての恋が、少女漫画や恋愛小説のような激しいものばかりではないんじゃないかって」
好きな人を取られたことが殺意に繋がることは実際あるのかもしれない。
しかし実際、この国で起きる殺人事件のほとんどは身内によるものだ。
つまりフィクションの世界では普通のことも、現実ではそう起こりえないことなのだろう。
そもそも私の気持ちは、ついさっき気付いた程度の淡いものだ。
私にとってはきっと、天秤にかける余地もない。
ノパ⊿゚)「あのー……ねーちゃん?」
川 ゚ -゚)「なんだ、ヒート」
ノハ;゚⊿゚)「ねーちゃんってさ、すごく偏った恋愛ものばっか見てきたんじゃない?」
ヒートは気まずそうに言った。
ノパ⊿゚)「少女漫画だってさ、中には親友のために好きな人を諦める女の子はいるよ。
みんながみんな恋愛しか考えてないわけじゃないし……」
川 ゚ -゚)「そうなのか……?」
ノハ;゚⊿゚)「そうだよ! 初恋だって甘酸っぱい思い出に変わるんだよ!?」
ここで私は、改めて自分の嗜好を振り返ってみた。
私は実はわりて高齢の女性向けの「嫁姑、血なまぐさい女のバトル!」みたいな漫画が好きである
ついでに正真正銘の恋愛小説は読んだことがない。
恋愛要素のあるサスペンスが好きなのだ。
川 ゚ -゚)「そうか……どうやら私の認識は間違っていたようだ……」
ノパ⊿゚)「ねーちゃんの恋愛観こえーよ」
とにもかくにも、こうして私は自分の思いを整理し区切りをつけることができたのだった。
ヒートにはただ感謝するばかりである。
今度彼女の大好物のハンバーグを作ってやるとしよう。
167
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:41:15 ID:fWilX0bEO
数日後、私とツンはいつものように帰り道を歩いていた。
ξ゚⊿゚)ξ「でね、クリスマスだし家で集まってケーキでも、って思ってるんだけど」
川 ゚ -゚)「私はいいが……ブーンと過ごさなくていいのか? 付き合い初めて初めてのクリスマスだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、あいつ、お人好しだから……。クリスマスは人手不足だからってバイトのシフト入れられちゃったんだって」
その場面はすぐに頭の中に思い浮べられた。
ツンというものがありながら要領の悪い男だ。
川 ゚ -゚)「なら、せっかくだからツンのお祝いにしよう。しぃたちも呼ぶんだったら丁度いいだろ」
ξ;*゚⊿゚)ξ「な、そういうのいいから! 恥ずかしいし!!」
川 ゚ー゚)「照れるなって。私たちが気合い入れて二人の仲を祝福してやる」
ξ;*゚⊿゚)ξ「いらない! ホントにいらないから!」
口では反対しながらも顔には嬉しさを隠し切れていない。
ブーンとの仲は二人の友人には知れ渡っている。
今さら茶化す者もいないだろう。
なんとなく、私は二人はこれからもずっと続いていくんじゃないかと予感している。
女の勘というやつだろうか。
あいにく、今までそんなもの働いたことはないが。
168
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:42:01 ID:fWilX0bEO
ともかく、私が言いたいことはひとつ、とてもシンプルだ。
川 ゚ー゚)「おめでとう、ツン」
友人らのこれからを、心の底から祝福しよう。
だって、私の恋は始まりさえしなかったし、友情はずっと終わらないのだから。
.
169
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:44:18 ID:fWilX0bEO
以上です
イブにこれを読んでるそこのあなたにも祝福あれ!
170
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 21:45:45 ID:a84s10Uk0
乙
なんだか暖かくなれたよ
171
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 22:00:13 ID:3S8cCBs60
乙
クーの趣味www
172
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 23:06:33 ID:a3pYs.kIO
乙!
よし、私も投下させて頂こう
173
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 23:07:38 ID:a3pYs.kIO
ミセ*゚ー゚)リ「……結局、トソンちゃんはクリスマスパーティ来なかったなあ」
ミセ*゚ー゚)リ「用事でもあったのかな。残念だけど仕方ないよね、そろそろ寝よっと」
「おやすみー」ミセ*-ー-)リ(゚、゚トソン「おやすみなさい」
ミセ;゚ー゚)リ「ひぎにゃあああああああぁぁぁ!?」
(゚、゚トソン「どうしたのですか、こんな夜更けにうるさいですよ。クリスマスとはいえ、はしゃぎ過ぎです」
ミセ;>ー<)リ「ト、トソンちゃん!? なんで私のベッドの中で、裸で縛られてるの!? 事件なの!?」
(゚、゚トソン「落ち着いてください。これは『私がプレゼント』というネタをやったら、リボンが絡まってしまった女の成れの果てです」
ミセ;゚ー゚)リ「友人のそんな成れの果ては見たくなかったな、私は! 大丈夫なのそれ?」
(゚、゚トソン「大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば、そろそろ腕の感触がなくなってきました」
ミセ;゚ー゚)リ「早くほどかないと!」
(゚、゚トソン「待ってください!」
ミセ*゚ー゚)リ「どうしたの、こんなときに」
(゚、゚トソン「私を辱しめたり、撮影したりするなら今がチャンスですよ!」
ミセ;゚ー゚)リ「そんなチャンスはいらないっ!」
174
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 23:08:15 ID:a3pYs.kIO
(゚、゚トソンケーキより甘い友情に祝福をのようです
.
175
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 23:09:11 ID:a3pYs.kIO
ミセ*゚ー゚)リ「えっと、こっちを引っ張るとここがほどけて」
(////トソン「ぃやん、そこ違っ……! あっ、やめないで、続けてください」
ミセ;-ー-)リ「なんで私クリスマスにこんなことしてるんだろ……」
(゚、゚トソン「ふう、助かりました。しかしミセリも私にエロいことができてWin-Winでしたね」
ミセ*゚ー゚)リ「今年最大のLose-Winだったよ」
(゚、゚トソン「隣りの部屋から楽しげな声が聞こえてきて、一人で三時間もなにをやっているんだろうと三回ほど泣きましたが、結果オーライです」
ミセ;゚ー゚)リ「Lose-Loseだった!」
(゚、゚トソン「しかし、Win-Winってカタカナでウィンウィンって書くと動作音みたいですよね」
ミセ*゚ー゚)リ「なんの動作音かは絶対に聞かないからね」
176
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 23:10:07 ID:a3pYs.kIO
(゚、゚トソン「後れ馳せながら、メリークリスマスです、ミセリ」
ミセ*゚ー゚)リ「うん、その前に服を着ようよ、トソンちゃん」
(゚、゚トソン「私は裸族ですのでお構いなく」
ミセ;゚ー゚)リ「お構うよ! 自分の家で友人が全裸だったらお構うよ! 裸族のポリシーはせめてトソンちゃんの家でだけ貫いてよ!」
(゚、゚トソン「他人の家でのみ裸族ですので」
ミセ;>ー<)リ「それはただの変質者だよ!」
(゚、゚トソン「間違えました。ミセリの家でのみ裸族です」
ミセ;゚ー゚)リ「変質性には一部の変化もないから!」
(゚、゚トソン「ミセリ以外には肌をさらすつもりはないってことですよ。言わせないでください、恥ずかしい」
ミセ*-ー-)リ「……なんで友人の私に、いつも好感度メーター振り切れてるのか甚だ疑問なんだけど」
177
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 23:11:21 ID:a3pYs.kIO
(゚、゚トソン「それでですね」
ミセ*>ー<)リ「あの、トソンちゃん。さっきから胸が私の腕に当たってるんだけど」
(゚、゚トソン「当ててるんですよ」
ミセ*゚ー゚)リ「…………」
(゚、゚トソン「それで一時間半ほど前に、隣りで連想ゲームとやらが盛り上がっていたじゃないですか」
ミセ*^ー^)リ「うん、デレちゃんが提案したんだよ」
(-、-トソン「……チッ、あの泥棒猫め」
ミセ;゚ー゚)リ「聞こえないように言おうね、そういうのは」
(゚、゚トソン「それで私も、そのなんちゃらゲームとやらに興味を持ちまして」
ミセ;゚ー゚)リ「連想の部分なくなったらゲームしか残らなかったね! 確実にあんまり興味ないよね!」
(゚、゚トソン「やってみたいと思うわけですよ。例えばクリスマスといえば、ミセリはなにを連想しますか?」
ミセ*゚ー゚)リ「まあいいけど強引に話を進めたね、まあいいけど。私はクリスマスといえばサンタさん!」
(゚、゚トソン「では二文字隠してクリ○○スと言えばなにを連想しますか」
ミセ;゚ー゚)リ「そういうゲームじゃないからこれ! 次に連想するのサンタさんからだからっ!」
(゚、゚トソン「正解はクリト――」
ミセ;゚ー゚)リ「聞きたくないし言わせないよ!? しかも正解ってなに!?」
178
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 23:13:23 ID:a3pYs.kIO
ミセ*^ー^)リ「トソンちゃん、はいこれ。クリスマスプレゼント」
(゚、゚トソン「これは」
ミセ*^ー^)リ「前に小説の『吸血鬼カーミラ』が欲しいって言ってたよね。だから、ね」
(゚、゚トソン「これはプロポーズと受け取っても?」
ミセ*゚ー゚)リ「そういう意図は一ミリグラムも含まれておりません」
(゚、゚トソン「ともあれ、ありがとうございます。今ので私の好感度が上昇し、恋人の関係になりました」
ミセ*゚ー゚)リ「なってないなってない」
(゚、゚トソン「本当は嬉しいくせに、ミセリは照れ屋ですね。しかし、困りました」
ミセ*゚ー゚)リ「どうしたの?」
(゚、゚トソン「クリスマスプレゼント用のラッピングを外した今、私がプレゼントというわけにはいかないじゃないですか」
ミセ*゚ー゚)リ「ラッピングしててもそういうわけにはいかないと思うよ」
(-、-トソン「ミセリの友情に応えるには、後は処女を捧げるぐらいしか」
ミセ;゚ー゚)リ「友情が重いよ、トソンちゃん! 私がプレゼントとなにが違うのかわからないよ!」
(゚、゚トソン「では、二人きりで過ごせるこの一夜こそが、私からのプレゼントということで」
ミセ*゚ー゚)リ「……もしかして、泊まっていくつもりだったりする?」
(゚、゚*トソン「あー! たった今、終電が発車してしまいました! 残念、これは残念ながら泊まっていくしかなさそうです! ではちょっとエッチぃネグリジェに着替えますね!」
ミセ;゚ー゚)リ「全然残念じゃなさそうだよ! 顔が輝いてるよ!」
(゚、゚*トソン「ベッドは一つしかありませんし、残念ながらこれは一緒に寝るしかありませんね!」
この後、ミセリの貞操をかけた白熱の攻防が繰り広げられたのだが、それはまた別の話。
179
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 23:14:34 ID:a3pYs.kIO
投下終了です
トソンちゃんもなぜかよくレズに間違われるそうです
180
:
名も無きAAのようです
:2013/12/24(火) 23:26:41 ID:3S8cCBs60
祝福乙
この二人は可愛いなあ
間違わ…れる…?
181
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:06:23 ID:hoUaDYb60
祝福乙
楽しいやりとりだった
でもトソンって間違いなく…
182
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:14:18 ID:p8J1fFIE0
トソンかわいいです
艦これサーバークソ重いしクリスマス始まったし投下します
183
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:17:43 ID:p8J1fFIE0
誰もがクリスマスを待ち望んでいるわけではない
コインに表裏があるように、幸福の裏には必ず、不幸や嫉妬などの負の感情があるのだ
その感情は、まるで水蒸気のように人々から立ち昇り
まるで雷雲のように、形を成して
今宵、最も望まれている存在に、襲い掛かってくる
そう、子供たちに夢と幸せを運ぶ、『サンタクロース』に
グリーンランド国際サンタクロース協会は、その負の塊を『SHIT』と名付け、対策を取る事にした
人員を増強し、配達サンタ一人につき『護衛サンタ』を六名配置
SHITからの妨害を阻止する役割を果たす
護衛サンタには、負のエネルギーを打ち消す『祝福の加護』を施した武器を支給
状況に応じて、多種多様な戦いが出来るように一年かけて訓練を積む
全ては、幸せな聖夜を守るために
そして今夜も
命がけのプレゼント配達が始まるのであった
『弾丸に祝福をのようです』
.
184
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:18:56 ID:p8J1fFIE0
( ´∀`)「…今年もこの場所にやってきたモナ」
日本で最もSHITの襲来が激しい街『VIP』
華やかなイルミネーションの輝きを、上空から見下ろす彼らにしか見えないおびただしい数の『黒い影』が遮っていた
( ゚∀゚)「ひえー、おっかねえなぁ。タマが冷えるぜ」
( ´_ゝ`)「それはお前がしっかり防寒していないからだ」
トナカイが引くソリに乗る白髭のサンタを中心に
スノーボードやスケートで空を飛ぶ若い六人のサンタが空に浮いていた
川 ゚ -゚)「噛み千切られんように気をつけるんだな。毎年この場所だけは格が違う」
(;'A`)「やめてくれよ姐さん。股間が竦みあがっちまうぜ」
(´^ω^`)「信じて送り出した護衛サンタがSHITに堕とされて帰ってきた…薄い本が厚くなるな!!」
( ^ω^)「やだこの子サンタの癖に穢れきってるわ…」
配達サンタの不安も余所に、護衛サンタは軽口を叩く
いつしか、プレゼント配達は命がけの仕事になってしまった
彼を護衛していたサンタの殆どは、この街で再起不能になってしまう
今宵もそんな惨劇を目にしなければならないのか。彼の気はとても重かった
( ´∀`)「…行くモナよ」
しかし、クリスマスにサンタの身など二の次だ
彼らには、子供たちに幸せを運ぶという使命があるのだ
トナカイに鞭を走らせ、黒い影に向かって降下を始めた
185
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:20:26 ID:p8J1fFIE0
しかし、今年ばかりは事情が違った
( ゚∀゚)「そんじゃ、露払いはこの俺が」
(;´∀`)そ「モナッ!?」
今までは『護る』スタイルを推し進めてきたが
彼らは『攻める』姿勢を見せた
( ゚∀゚)「一番手、ジョルジュ!!推して参るぜ!!」
彼が背負った袋から取り出したのは、『火炎放射器』
shit
( ゚∀゚)「『汚物』は…」
( ゚∀゚)「消毒だァァァーッ!!」
星屑が混ざった灼熱の炎が、目の前の影をなぎ払う
灼かれた影は悲鳴のような音を立て、蒸発する
夥しい数の影に、ぽっかりと穴が開いた
( ゚∀゚)「ハハッ!!さぁ突っ込むぜ爺さんよぉ!!」
(;´∀`)「ハァッ!!」
その穴に向かって、トナカイを全力で走らせる
影は穴を埋めようと迫るが、一寸遅かった
(;´∀`)「ぬ、抜けた!!」
影の層を抜け、街へと突入
しかし、上空と地上、そして左右と
四方から影が迫ってきていた
186
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:20:33 ID:NN5WuG560
vsサンタか 面白そう
187
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:22:11 ID:p8J1fFIE0
( ゚∀゚)「さぁさぁ、おいでなすったぜ野郎共!!」
川 ゚ -゚)「見れば分かる」
('A`)「やれやれだぜ」
( ^ω^)「素敵なパーティしましょ!!」
ジョルジュは背後に火炎放射器を向ける
前方からの影に対しては
川 ゚ -゚)「莫迦共が、『糞』の分際で…」
川 ゚ -゚)「このクールの前を遮るんじゃあないッ!!」
FN ミニミを構えたクールが対応する
女性が扱うには余りにも大きな機関銃だが、手馴れたようにコックレバーを引き
トリガーを引き絞り、掃射する
銃口から火を纏い発射された5.56x45mm NATO弾が着弾と同時に弾け飛ぶ
油にに洗剤を落とすかのように、影はその姿を霧中に消していった
('A`)「ドクオくんも参りますよっと」
連射式散弾銃MPS AA-12を取り出し、右翼から襲い来る影に向かって連続して発砲
錐のような形状で襲い掛かってきた影が、数百発の散弾で粉々に飛び散った
もちろん一撃では終わらず、着弾する度に影はその姿形を失っていく
( ^ω^)「ブーン、イクのぉ!!」
無数のM136 AT-4ロケットランチャーを自分の周りに滞空させ、次々と放つ
左翼の影は亜音速で迫る対戦車弾に切り裂かれ、爆発で木っ端微塵に砕け散った
バラバラに引き裂かれた影の塊にも容赦なく放っていく
188
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:24:45 ID:p8J1fFIE0
( ´_ゝ`)「っとぉ、この兄者さん、見逃しませんよぉ」
死角であるソリの下から忍び寄ってきた影を、兄者は見逃さなかった
S&W M29の銃口を向け、44マグナム弾を浴びせる
四方に比べて量は少なかったので、直ぐに消し去ることが出来た
( ´_ゝ`)「ん…?」
そして気付いた
|∴∵∴∵∴∵∴(・)∴∴.(・)∴∵∴∵∴∵|
一際大きな影の存在を
189
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:26:28 ID:p8J1fFIE0
( ´_ゝ`)「あらー…デカいっすなー…」
(;´∀`)「なんっ…あれ…」
巨人の姿をしているSHITは、空中を大股で歩き迫ってくる
今までの有象無象とは違い、アレに襲われたらひとたまりも無いだろう
(´^ω^`)「そこでこのショボン様の出番ってわけさーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ショボンの袋が金色に輝き、体を包み込む
質量は増幅し、その材質は金属へと、形状は『巨人』へと変化していく
|::━◎┥「ウオオン!!決戦兵器『ジングル・ベル』!!」
変身が完全に完了すると、ショボンは両の拳を突き合わせた
鐘の音が高らかに鳴り響き、辺りを振るわせる
|∴∵∴∵∴∵∴(・)∴∴.(・)∴∵∴∵∴∵|「tanasinn」
|::━◎┥「メリー・クリスマス!!!死ね!!!!!!!」
不幸が生み出した巨人と、祝福で出来た巨人
対極する二つの巨人が、聖夜の空で激突した―――――
190
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:28:16 ID:p8J1fFIE0
―――――
―――
―
(;´∀`)「終わった…モナ…」
朝日が昇り始めるころ、プレゼント配達は終了し
影の姿も、文字通り『見る影も無く』消え去っていた
川 ゚ -゚)「お疲れ様でした」
(;´∀`)「いや、君達こそ」
護衛サンタも、誰一人失うことなく帰路につく
その顔には『やりきった』という満足感が浮かんでいた
(;´∀`)「それにしても君達…恐ろしく強いモナね」
川 ゚ -゚)「いえ、それほどでも。祝福あってのSHIT退治ですし」
川 ゚ー゚)「それに、これほど『楽しい』ことは他に無いですからね」
(;´∀`)「…ハハ」
そう言って微笑んだ彼女に、乾いた声で笑い返した
不覚にも、来年も襲い来るであろうSHIT達が哀れだと思いながら
おしまい
191
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:31:41 ID:ZZmWwzcI0
祝福乙
みんなかっこよかったぞ
192
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:34:45 ID:p8J1fFIE0
あとがき
本当は嘘予告で済ますはずだったんだけど手が止まらなかった
今は反省している
FN ミニミとM136 AT-4ロケットランチャーはほむほむが使用した銃器です
ミニミのコックレバー引く動作がかっこよすぎます
MPS AA-12はエクスペンダブルズのシーザーが良く使う連射式ショットガン
つい先日3のティザー映像が流れて脳汁だだ漏れまくりです
S&W M29はご存知『ダーティー・ハリー』から
1はマグナムの魅力がたっぷりのシリーズ最高傑作と言っても過言ではないでしょう
193
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 00:35:03 ID:tCUfUVa60
祝福乙
姉妹と百合が豊作で色んなところがワッフルワッフル
194
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:05:06 ID:6xQDs2460
祝福乙。
今さっき書き上がったので投下します
195
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:06:24 ID:6xQDs2460
( ´∀`)「……ですから、これらはあなたが持っていて然るべき品物モナ。お気持ちは分かりますが、それでもあなたは彼の唯一の肉親モナ。それに」
( ><)「受け取りません。あなたには私の気持ちなんか分かんないんです。一切合財あなたに差し上げますから、捨てるなり売るなりどこかに展示するなり、好きにすればいいんです」
( ´∀`)「…………分かりましたモナ。これだけ言ってもお受け取りにならないのであれば、もう何を言っても仕方ないモナね。でも、せめてこれだけは受け取って欲しいモナ。モナが思うには、あなたにはこれを読む義務がありますモナ」
( ><)「いや、いいんです。これも持っていっ( ´∀`) 「それでは、失礼しますモナ」
( ><)「ちょっ……」
196
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:07:23 ID:6xQDs2460
------後の世に『神の手を持つ男』と称されし彫刻家《オーギュスト=ワカッテマス=ローラン》
戦乱の最中に失われ、平和と共に姿を現したとされる彫像
彼の稀代の傑作『天使』に纏わる、知られざる『物語』------
原作:Sound Horizon『Roman』より『天使の彫像』
( <●><●>)天使の彫像のようです
197
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:08:16 ID:6xQDs2460
( ><)「まったく……折角の誕生日なのに嫌になるんです」
物心ついたときには父も母もいなかった。母が病死し、それを受けた父が僕を孤児院に預けたと告げたのは、その孤児院の院長だった。院には当然ながら似たようなやつが沢山いて、彼らのと暮らしの中、会ったこともない母への仄かな悲しみと、父への確かな憎しみは日を増すごとに膨らんでいった。
( ><)「なんでこんな奴の手記なんか……どうせろくなこと書いてないんです」
そうなのだ。僕を捨て、母を殺したような男のことなど知ったことか。後に僕を産ませた男が有名な彫刻家と知ったが、どうせ奴は母に余計な心労をかけたに違いない。だから彼女は病を患うことになってしまったのだ。世間でどれだけ持て囃されようと、そういう男なのだ。僕にとっての奴は。
( ><)「でも……モナーさんのことだからきっと感想か何かを求めて来る気がするんです。それはそれで面倒だし、適当にさわりだけ読んどいて乗り切るんです」
本当は暖炉にでもくべて、モナーさんには紛失したとでも言っておけば良いのだろうが、何故だかそんな気にもなれず、その薄汚れたノートを開いた。
198
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:09:28 ID:6xQDs2460
------
( <●><●>)「………」
世間では、『物言わぬ冷たい石に生命を灯す』などと持て囃されているようですが、それは驕りというものです。ただ、あるものを有るように受け止め、その思いを象っているだけなのですから。目の前の石の塊も、本当は何を語りかけているのか分かっています。あとはそれを如何にして形作るのか……
(*‘ω‘ *)「さっさと部屋から出てくるっぽ!このモヤシ!」
( <●><●>)「……なんですか騒がしい。まだスケッチが終わっていないんですから、静かにしていて欲しいと何度言えば分か(*‘ω‘ *)「んなこと言ってもう何日経ってると思ってるっぽ!ただでさえモヤシなんだからいい加減なんか腹に入れるっぽ!」
( <●><●>)「……分かりました。ではあと30分程したらそちらに行きますよ」
(*‘ω‘ *)「そう言って3日も出てこなかったのはどこのどいつだっぽ!くたばる前にとっととアトリエから出るっぽ!」
作品の構想を練るため自宅を兼ねているアトリエに篭っていると、妻の嵐のような声が飛んできます。この行程を終わらせないにせよ、ある程度切りのいいところまで作業していたいのですが、そうするときっと彼女はアトリエにまで押しかけてくるでしょう。それだけはなんとしても避けたいところですし、今回は折れるとしましょう。
199
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:10:24 ID:6xQDs2460
( <●><●>)「「いただきます」」(*‘ω‘ *)
( <●><●>)「……もう1年になりますか。あなたが押しかけて来てから。いい加減、愛想が尽きてもいい頃合じゃないですか?」
(*‘ω‘ *)「あんふぁがふぉうふぁ( <●><●>)「口の中を空にしてから喋りなさい」
(*‘ω‘ *)「……あんたが創作をやめたら出てってやるっぽ。無愛想だしろくに飯も睡眠もとらないし。あたしはあんたの作品と、それを創ってるときのあんたが好きだから、こうしてできる限りのサポートをしてやりたいだけだっぽ。それにしてもここまで実生活が破綻してたとは思わなかったけど」
彼女の意匠を返すならば、私もまさかここまで強引な女性だとは思いませんでした。もっとも、なんの前触れも無く自宅に押しかけ、私の私生活のサポートをしたいと申し出てきたときに察しておくべきだったのでしょうが。
200
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:11:18 ID:6xQDs2460
(*‘ω‘ *)「で、あんたは寝る間も惜しんで何を創ってるっぽ?」
( <●><●>)「まだ言えませんよ。実を言うと、まだ構想がはっきりかたまっていないんです。そのかわり、出来上がったら真っ先にあなたにお見せしますから、期待していてください。」
(*‘ω‘ *)「ふん。打ち込んでくれるのは嬉しいけど、せめて体には気を使えっぽ。ここでぶっ倒れられたらそりゃあたしだってちったあ悲しいっぽ」
半ば押し切られる形で夫婦という関係になりましたが、今となっては彼女がいないことには食事もままならなくなってしまいましたし、共に暮らしていくうちに、いつしか彼女に対して少なからぬ情愛を抱いている自分がいました。白いキャンパスに、石膏に、彫り出す石に対してすら、彼女の姿が浮かぶ程に。
201
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:12:29 ID:6xQDs2460
------
彼女と共に暮らして、どれだけの時が経ったでしょう。いつものように呼ばれて着いた夕食の席で、彼女から思いもよらない言葉が出てきました。思えば、これが私達の運命の転機だったのでしょう。
(*‘ω‘ *)「……子供が出来たっぽ」
( <●><●>)「……えっ」
(*‘ω‘ *)「だから、子供が出来たっぽ。あんたとあたしの。男の子だっぽよ」
( <●><●>)「ちょ、いや、えっ……えー……」
(*‘ω‘ *)「なんだその反応は。嬉しくないのかっぽ?あんたとあたしとの、愛の結晶だっぽよー?」
( <●><●>)「いや、あなたそんなこと言う人間じゃないでしょう。嬉しいですよそれは。嬉しいんですが、あまりに唐突すぎてどうやって反応すべきか分かりかねてるだけですって」
(*‘ω‘ *)「名前詐欺かっぽ。……まあ、それこそあんたも喜んではしゃぎまわるようなキャラじゃないし、嬉しいならそれでよしとしてやるっぽ。……医者の話では、予定日は概ね12月の終わり頃になるそうだっぽ。今の作品に随分手間取ってるようだけど、愛する妻の出産には立ち会えるようにするっぽよ」
( <●><●>)「もちろんですとも。では、食べ終わったらもう少しアトリエに向かいます。あなたもあまり無理をしないように、私に気にせず休めるときに休んでいてください。あなた一人の体ではないんですから」
(*‘ω‘ *)「お互い様だっぽ。ああ、それで、名前だけど、あんたが考えるっぽ。折角だから芸術家先生にハイセンスな名前を付けてもらうっぽ」
( <●><●>)「名前……ですか……では、ワカッテマスの息子ということで、ワカン(*‘ω‘ *)「ざけんなっぽ。DQNネームかっぽ」
( <●><●>)「ふむ……では、ビロードというのは?特に意味は無いのですが……」
(*‘ω‘ *)「意味まで考えてから物を言って欲しいっぽ。まあでも、ビロードね……いい名前だっぽ。こいつの名前はビロードだっぽ!じゃ、さっさと食器を片付けるっぽか。」
( <●><●>)「無理しないでくださいよ……本当に」
202
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:13:34 ID:6xQDs2460
その後も何度も体を休めるように言いましたが、彼女は頑なに私のために働いてくれることを辞めませんでした。
( <●><●>)「ちんぽっぽさんもそろそろ辛い時期でしょう。今夜の食事は私が作りますから待っていて下さい」
(*‘ω‘ *)「どけっぽ。どうせあんたどこに何があるか分かりゃしないんだから初めからあたしがやった方が手っ取り早いっぽ。あんたはいいから働けっぽ!」
( <●><●>)「ああ!危なっかしいですね。私がやっておきますから横になっていなさい」
(*‘ω‘ *)「ちょっとふらっとしただけで大袈裟だっぽ。いきなりんなこと言われるのもキモいしあんたはいつもどおりアトリエにこもってるっぽ」
( <●><●>)「……良いですか。何度も言いますが、あなたのお腹にはビロードがいるんです。少しでも無理をしたらビロードもあなたも参ってしまうでしょう。良いから休んでいなさい」
(*‘ω‘ *)「あーもううるせえっぽ。あたしがくるまでほとんど生活できてなかったあんたに何ができるっぽ。あたしはこの程度じゃくたばらないからさっさと作業にもd」
それどころか、彼女達のために急ピッチで作業を進める私に着いてきてくれた、着いてきてくれてしまったせいで、ただでさえ身重の彼女の体は、ついに限界を迎えてしまいました。
( ;<●><●>)「だから言ったでしょう!あなたに倒れられては元も子もないんです!私のことは何も気にしなくて良いから、あなたは寝ていなさい!」
(*‘ω‘ *)「……んなこと言ったって……あたしがいなきゃあんた食事も睡眠もろくに取らないんだから……」
( ;<●><●>)「つべこべ言わない!街の大きな病院に手配しておきましたから、お産まではそこにいなさい!全部済ませたら私もそっちに行きますから!」
不満気な彼女をむりやり説き伏せ、どうにか病院に入れさせました。
その後、私達にどういう運命が待っているかも知らずに----
203
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:14:31 ID:6xQDs2460
祝福されるべき聖夜。窓の外の吹雪。待ちかねた報せ。受け取るが早いか、ろくに戸締まりを確認せず私は家を飛び出しました。
( ;<●><●>)「ちんぽっぽさん!!」
(*‘ω‘ *)「来たっぽか……随分早いっぽね……仕事はどうしたっぽ……?」
( ;<●><●>)「あなたのお産の方が余程大事ですよ!大丈夫なんですか!?」
(*‘ω‘ *)「大丈夫だと思うなら今すぐ代われっぽ……陣痛で……死にそう……」
可能な限り速く病院まで駆けつけましたが、彼女と語らう時間も無く、最後の言葉を聞き取りきることも出来ないまま、分娩室へと運ばれて行きました。思えば、この時点で彼女はもう、自分の運命に気づいていたのでしょう。
(*‘ω‘ *)「…………あんた……もし……ビロードが生まれたら……どんなことがあってもそれを祝福して欲しいっぽ……この子は……あたしたちのビロードは……確かに望まれて生まれてきたんだっぽ……だから……この言葉だけは……必ず……」
204
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:15:29 ID:6xQDs2460
(*‘ω‘ *)「しあわせに……おなりなさ0102……」
205
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:17:16 ID:6xQDs2460
------
1時間、待ちました。出て来る気配はありませんでした。
2時間、待ちました。扉は冷たく閉ざされたままでした。
3時間、待ちました。心なしか扉の向こうの空気が変わったように思いました。きっとすぐ出てくるでしょう。
4時間、待ちました。出てくる気配は未だありません。
5時間、待ちました……
(-@∀@)「お子様は無事に生まれました。しかし……」
目の前の白衣の男が、よく分からないことを喋っています。
( <●><●>)「いや、そんなことはどうでもいいから早く妻に会わせてくださいよ。そこをどいてください!」
男を押しのけて分娩室へと入りました。愛する妻が横たわっていました。出産は無事に終わったようです。これほどまでに長い時間、ずっと頑張ってきたので、声をかけなければいけません。
( <●><●>)「よく……頑張りましたね……全部、終わりましたよ……」
妻は何も答えてくれません。きっと眠っているのでしょう。温もりが静かに引いていく彼女の体を抱きしめると、何故だか涙が流れてきました。いくら止めようとしても、体が言うことを聞きません。
( <○><○>)「ああ……あああ……ああああああああああああ!!!」
小さく、また私にとって最も愛しい焔は、既に消えていました。
206
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:18:29 ID:6xQDs2460
いったいどこで間違えたのだろうか。彼女を私のところから離したことか。彼女と愛し合ったのが駄目だったのか。私が彼女に世話をさせなければ……それとも、彼女と出会わなければこんなことにはならなかったのだろうか……冷たくなった妻の傍らで、どれだけ自問自答しても答えは出てきません。雑音のように耳をつんざく何かの泣く声が、ただでさえ滅茶苦茶になった私の思考をかき乱します。
泣く声----産声----子供----
そうだ。奴だ。奴がいなければ彼女が死ぬことはなかった。奴が彼女の焔を奪ったのだ。
( <○><○>)「奴さえいなければ……」
憎悪は留まることを知らず、私の心を黒く塗り潰していきます。
( <○><○>)「あれを殺さなければ……あれを殺して取られたものを取り返さなければ」
うわ言のように繰り返し殺意を口にしながら、ふらふらと子供の下へ足を進めます。
( <○><○>)「今、ここでこの両手で……」
207
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:19:12 ID:6xQDs2460
私の手が首に触れたまさにその瞬間、何かを察した子供が激しく泣き出しました。その声は、さきほど愚かな考えを胸に抱くきっかけになったように、私の心からどす黒い感情を吹き飛ばしました。
( <●><●>)「----!!」
( <●><●>)「私は……私はなんということをしてしまったんだ……!」
彼女の生きた証がこの世に小さな輝きを身に宿してから一番最初に受け取ったのは、誕生を祝う『祝福』の言葉ではなく、『憎悪と怨嗟』に塗れた両手でした。それも、よりによって実の父親からの。
きっと愛する前に憎んでしまった愚かな私には、あの子を育てる資格など無いのでしょう。孤児院の前に、私からの唯一のプレゼントであるビロードという名前と共に置き、逃げるようにその場を立ち去りました。
208
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:20:00 ID:6xQDs2460
( <●><●>)「母親の灯を奪ってこの世に灯った小さな焔……その輝きを憎んでしまった愚かな私の、これが最後の悪足掻きです……」
あれ以来、一度も立ち入らなかったせいですっかり埃を被ってしまったアトリエに足を踏み入れ、脳裏にちらつく、彼女ともう生涯会うことの無いであろうビロードの姿を重ね合わせ、形造っていきます。
( <●><●>)「皮肉なものですね。あれほど停滞していたのにどんどん手が進んでいきますよ……あなたが生きていれば、今の私を見て何を言うでしょうね。それでも、これが私の償いなんです……」
黙したまま、何も語らなかった冷たい石は、やがて人のそれに変貌していきます。そして、私の天使が形造られていくにつれ、過労からか私の体にも少しずつ限界が訪れていきました。
209
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:20:45 ID:6xQDs2460
( <●><●>)「まだだ……まだ終わる訳にはいかないんだ……もうすぐで……私の……」
かん。私の体が悲鳴を上げます。
かん。目の前の色が一瞬だけ消えました。
かん。口の中が不自然に濡れています。
かん。タオルで拭ってみると、赤黒い何かが目につきました。
かん。もはや、目で石を見ることも叶いません。
かん。……それでも何故か、誤ったところを彫るといったことは全くありませんでした。
( <●><●>)「いや……これが必然なんだろう……この石には……彼女達が…………」
もはや私を動かしているのは気力だけでした。一挙手一投足に付随する痛みと、今にも遠くなりそうな意識を必死で堪え、目の前の彫刻に私の焔を刻み込みます。そうしなければ私は、あの子、ビロードを祝福することなど出来ないのだから。
------
どれだけの時間が経ったのでしょうか。どこまで彫り進めたのかすら曖昧な程に朦朧とする意識の中、突然に眼前に天使が舞い降りて来ました。その顔は、まるで----
210
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:22:06 ID:6xQDs2460
( <●><●>)「ああ、もう思い残すことはない……やっと……笑っ……て……」
211
:
名も無きAAのようです
:2013/12/25(水) 01:22:49 ID:6xQDs2460
------
僕を捨て、母を殺したような男のことなど知ったことか。僕を産ませた男は有名な彫刻家だったが、どうせ奴は母に余計な心労をかけたに違いない。だから彼女は病を患うことになってしまったのだ。世間でどれだけ持て囃されようと、そういう男なのだ。だから僕は奴を父と認める気も無いし、許すつもりも無い。これまでも、もちろんこれからも。
しかし、彼も彼なりに苦悩懺悔し、贖罪をした。一度は憎んだこの僕を、それでも祝福してくれた。だから……今だけは……1年で一番祝福されるべき日、そして僕の生まれてきた日である今日だけは……
( ><)「もう良いんです……パパ……」
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