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( ・∀・)エゴイスティックベイビーのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 00:16:01 ID:6VWmNokc0
ξ ⊿ )ξ「ねえ、モララー」
ξ ⊿ )ξ「別れましょう」
ξ ⊿ )ξ「わたしたち、もうおしまいよ」
( ・∀・)「え?」
コップに伸ばそうとしていた手が途中で止まった。
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことをいうのだろう。
2
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 00:18:38 ID:6VWmNokc0
( ・∀・)「ごめん……きみの言っていることがさっぱり理解できないよ」
理解したくはない。理解なんてできるはずがない。だって考えてもみて欲しい。
僕たちはついさっきまで、二人手を取り合って、薄暗い寒空の下を散歩していたというのに。
その途中で今年のクリスマスはどうやって過ごすか、なんて甘酸っぱい会話を繰り広げていたというのに。
今だってそうだ。ツンの華奢で小柄な体は僕の腕の中に包まれている。
僕たちはこんなにも近くにいるというのに。
なのに――
( ・∀・)「冗談、だよね?」
ξ ⊿ )ξ「…………」
ツンは何も答えない。
その瞳は所在なげに机の上のマグカップを覗き込んでいた。
まるで父親に悪戯を咎められた子どものように。
3
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 00:20:23 ID:6VWmNokc0
(#・∀・)「……ざけるなよ」
(#・∀・)「どうしてだよ!なんで、突然そんなことをっ!!」
一切の沈黙を破らないツンに対して、とうとう堪忍袋の緒が切れた。
指輪を買うために今まで貯金だってコツコツと溜めてきた。
プロポーズの言葉だってちゃんと考えてきた。
そのあとは、向こうのご両親にだって挨拶する予定だ。
だが、その見返りがこの結果なのだと思うと、いつもは温厚な僕も黙ってはいられなかった。
着実に積み上げてきたものが目の前で思いっきり踏みにじられる気分だった。
ξ ⊿ )ξ「…………」
氷のように冷たい静寂がリビングいっぱいに広がる。
ツンの目線の高さは先ほどよりも、ぐっと下げられていた。
体の震えが僕にまで伝わってくる。今までの経験から推測すると、こういう場合は大抵泣き出す直前のはずだ。
(#・∀・)「…………」
だけど、今の僕の中には情け容赦の気持ちなどほんの少しもなかった。
ツンの口から言葉を発せられるまで絶対に口を開くものか!
柄にも無く、僕は意固地になってしまっていた。
4
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 00:22:14 ID:6VWmNokc0
ξ ⊿ )ξ「…………」
ξ ⊿ )ξ「あの、ね……」
極度の緊張についに耐えられなくなったのだろうか。
ツンは震えた声でたどたどしくも、ゆっくりと、言葉を紡いでいった。
ξ ⊿ )ξ「わたし……」
ξ ⊿ )ξ「好きな人が、できたの」
(#・∀・)「…………」
今の時刻は夜の9時35分。
場所はタイガーズマンション405号室のリビングの中央に位置するクリーム色のソファーの上。
耳をすませば、聞こえてくるのはジングルベルの鐘の音。
それはクリスマスの三日前の出来事だった――
5
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 00:24:18 ID:6VWmNokc0
(#・∀・)「くそっ……!」
僕の手の中には冷たくて硬い物が握られている。
それをヤケクソに放り投げると、ガチャンと何かが砕ける耳障りな音が聞こえた。
この様子から分かるように、今の僕は相当に荒れきっていた。
( ・∀・)「…………」
(;・∀・)「あ」
嫌な予感がする……
しまった、と思った時には既に手遅れだった。
投げつけた合鍵が写真立ての中央に深々と突き刺さっている。
一拍遅れて、それはパタリと倒れた。
(;・∀・)「あちゃー……」
急いでそばに駆け寄って確認してみると、ひどい有り様だった。
砕け散った細かいガラス片がパラパラとあたりに散らばっている。
これは後始末が大変になりそうだ……
だが、今の僕にはそんな些細なことよりも先に確認すべきことがある。
6
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 00:26:27 ID:6VWmNokc0
(;・∀・)「しゃ、写真は……!」
合鍵を抜き取って、写真立てから慎重に一枚の写真を取り出す。
そして、じっくりと目を凝らした。
(;・∀・)「…………」
(;-∀-)「よ、よかったあ……」
写真には特に目立った傷は見当たらなかったので安心した。
それは3年前の海水浴の時のものだった。
( ・∀・)「ははは」
( ・∀・)「そういや、こんなこともあったよなあ……」
波打ち際に立つ四人組の男女の姿。
左端には意地悪そうな笑みを浮かべた女。
右端には優しそうに微笑む小太りの男。
それぞれ僕たちにとっては親友にあたる人物だった。
7
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 00:28:21 ID:6VWmNokc0
( ∀ )「…………」
( ∀ )「ツン……」
写真の中の僕の隣にはツンがいた。
照りつける太陽の日差しに向かって、まぶしそうに目を細めるツンがいた。
そこには、はにかむツンの笑顔があった。
( ∀ )「…………」
写真から目を離し、近くのイスに腰をかけると、ぎしっと軋むような音がした。
頭の中で鮮明に蘇ってくる過去の思い出の数々。
それは今の僕の荒んだ心を固くて冷たい鋼鉄の鎖で締め上げる。
ただただ、苦しいだけだった。
( ∀ )「そういえば、あの頃からだったな」
僕たちの、馴れ初めは――
8
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 00:30:13 ID:6VWmNokc0
一旦投下終わりです
短編の予定です
9
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 01:46:52 ID:6VWmNokc0
(;-∀-)「好きだっ!一億と二千年前から愛してる!!」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「……へ?」
ツンはポカーンとした表情でこちらを見つめ返してくる。
いつもは控えめな口元も、この時ばかりはあんぐりと開いたままだった。
そこは講義終了後の誰もいない静まり返った教室。
僕たちは木製の長いテーブルに腰掛けていた。ツルツルとした表面が肌に冷たくて気持ちいい。
窓から見える茜色の夕焼けは煌々と光輝いている。
遠くの方からカラスのどこか気の抜けた鳴き声が聞こえてきた。
時刻は5時を少しだけ回っている。
思い立ったが吉日。気がつけば僕は、ツンを空き教室に呼び出し、一世一代の告白をしていた。
(;・∀・)「あうあうあー……」
この時、僕は失敗を確信した。
どうして、もっとシンプルに「好きだ」の一言が言えないのだろうか。
「愛してる」はいくらなんでも重すぎるだろ。
何事も凝り過ぎてしまうのは僕の悪い癖だった。
10
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 01:47:47 ID:6VWmNokc0
だが、予想ははずれたらしい――
ξ* ⊿ )ξ「えへへ」
ツンの頬は見る見るうちに真っ赤に染まっていく。
恥ずかしそうに自慢の縦ロールを指でクルクルといじくっている。
ξ///)ξ「うれしいな……」
(;・∀・)「…………」
(;・∀・)「……へ?」
そして、そんなこっちまで嬉しくなるようなことを言ってくれた。
どうやら今度は僕が口をあんぐりと開ける番のようだ。
11
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 01:57:04 ID:6VWmNokc0
ξ///)ξ「わ、わたしも」
ξ///)ξ「わたしも、モララーのことが、ずっと好きだったの……」
(*・∀・)「…………」
(*・∀・)「ツン……」
目の前のツンがたまらなく愛しかった。
そして、本当の意味で自分の物にしたくなった。変わらない愛の形が欲しくなった。
ツンの心臓に自分という文字を深く刻みこみたい。
そんな考えが頭をもたげる。
いつの間にか僕はツンの柔らかくてひんやりとした頬っぺたにそっと触れていた。
そして、ゆっくりと顔を近づけていく。
僕らの頬が真っ赤に染まっていたのは恐らく夕焼けのせいだけではないのだろう。
12
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 02:12:56 ID:6VWmNokc0
「モララー。ツーン。どこだーーー」
(;・∀・)「ぶーーーーーーッ!!」
そんな時だった。
入り口の方から声とともに誰かの靴音がやってきたのは。
ξ゚ぺ)ξ「モララー、きちゃない……」
(;・∀・)「ん?ああ」
ツンは不機嫌そうに口をへの字に曲げている。
吹き出してしまったことがもちろん原因の一つではあるのだけれど、ただそれだけではない。
驚いた反動でツンの体を強く突き飛ばしてしまったのだ。
こうして、せっかくのいいムードが見事にぶち壊しになった。
13
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 02:43:03 ID:6VWmNokc0
川 ゚ -゚)「お前ら、こんなところで何をやっているんだ?」
(;-∀-)「なんだ……クーだったのか」
川 ゚ -゚)「相変わらず失礼なやつだな、お前は」
気がつけば僕たちの目の前には、いぶかしげな目をしたクーが立っていた。
上は白の生地の上に海外のロックバンドのロゴマークがプリントされたTシャツ。
下はストーンウォッシュのジーンズ。
普通は全く色気が感じられないのだが、クーの場合は少しだけ違う。
どんな服を着ても大体は似合ってしまうのだ。
腰まで届きそうな透き通った黒髪。
綺麗によく通った鼻筋。そして、長いまつ毛。
モデルのように高身長でプロポーションも抜群。加えて服の上から押し上げてくる豊かな胸のふくらみ。
通りがかった人が思わず後ろを振り返ってしまうほどの美人だった。
だが、この通りがさつで男みたいな性格の持ち主だ。
はっきりと物を言うものだから大半の連中は怖気づいてしまう。
そんなこともあって、クーがうちの大学では高嶺の花というのは専らの噂だ。
本人ばかりはそのことを嫌がっているらしいが……
14
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 11:44:05 ID:ytYStU/60
川 ゚ -゚)「まあ、今はそんなことはどうでもいい」
クーがそこで一区切り置いた。
川 ゚ -゚)「もういい時間帯だろ?これからみんなで夕食にでも行こうかと思ってな」
川 ゚ -゚)「ブーンも外で待っている」
( ・∀・)「そうだね」
緊張から解放されたせいなのかどうか知らないが、急に空腹感が襲ってきた。
今日は無礼講だ。財布の中身なんて気にしない。勝利の余韻を余すことなく噛みしめるとしよう。
僕とツンとクーとブーン、考えてみれば僕たちは大学一年から今の三年になるまでずっと一緒に過ごしてきた。
出会いのきっかけは政治学という講義だった。
四人組でペアを作って、それぞれの意見をまとめて、みんなの前で発表することを担当教授から言い渡されたのだ。
そして、たまたま同じ机に居合わせたのが僕たちだったというわけだ。
でも、過去を振り返ってみると今とは色々と異なることがあったのだと気づいた。
ツンはどことなくおどおどとした様子で挙動不審だった。
クーは死んだような目でブラックボードをぼんやりと眺めていた。
今となってはまるで想像がつかない。
対照的に僕とブーンは今も昔も大して変わらないのだが……
15
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 11:44:49 ID:ytYStU/60
川 ゚ -゚)「なにをぼんやりとしている。さっさとしろ」
つかの間の思考に耽っていると、クーに急かされた。
テーブルから地面に着地すると、コツンという靴とフローリングがぶつかる小気味のいい音がした。
長時間座っていたせいだろうか。臀部にはジンジンとした鈍い痛みがあった。
(・∀・ )「ツン、行こうか」
僕がツンの方に向き直ったその時。
何かが唸るようなけたたましい音があたりに響いた。
それはまるでライオンが獲物に向かって威嚇をしているかのようだ。
ξ///)ξ「う、うん……」
ツンが居心地悪そうに体をクネクネとさせている。
音の正体がツンの腹の虫だと僕たちが気づいたのは、少し遅れてからのことだった。
16
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 15:31:45 ID:SgmTH8fg0
(;-∀-)「……へくしゅっ!」
(;-∀・)「ぬ、ぬかった……」
温かくて寒いような不思議な感覚が体を襲う。
目の前の光景は霞みがかっていて焦点が安定しない。
どうやら昨日の僕はイスの上でそのまま眠ってしまったらしい。
もちろんタオルケットなんていう気の利いたものはかけられていなかった。
季節は冬。風邪を引くのは至極当然のことだ。
壁時計に目をやると、短針が6時のところを指している。
今日が土曜日で本当によかった、と僕はつくづく思うのだった。
(;-∀・)「これじゃあ、ろくに動けやしないなあ……」
ごそごそとズボンのポケットをあさりながら自嘲気味に呟く。
取り出したのは携帯電話だった。その中でも世間一般的にはガラケーと呼ばれているものだ。
新しい物に代えようと何度も思ったのだが、なかなか行動には移せなかった。
17
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 15:33:25 ID:SgmTH8fg0
(;-∀・)「えっと……」
かたかたと震える指でボタンをおもむろに押していく。
キーホルダーの音がガチャガチャとうるさい。
そして、やっとの思いで僕は連絡先一覧までたどり着いた。
(;・∀・)「あ」
いつも癖でツンの電話番号を選択しようとしていた僕だったのだが、直前で踏みとどまった。
電話したところで出てくれるかどうかなんて分かりもしないのに。
それに今更どんな顔をして会えばいいって言うんだよ……
ξ;⊿;)ξ「さよう、なら……」
涙でぐちゃぐちゃになったツンの顔。そして、その口から弱弱しく告げられた最後の言葉。
それは見ていて痛々しいほどだった。
もちろん、同情をするつもりなんてこれっぽっちもない。
むしろ、怒り心頭に発していた。「泣きたいのは僕の方だよっ!」って今すぐにでも叫びだしたいほどに。
18
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 15:46:17 ID:6rRBkvwQ0
面白い
19
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 17:44:16 ID:SgmTH8fg0
(;-∀-)「ふううううううう……」
(;-∀-)「何をやっているんだ……僕は」
情けなくなって、ふいにため息が出てしまった。
熱のせいで精神がイカれてしまったのだろうか。ろくな考えが浮かんでこない。
僕はイスに深く腰を掛けなおして、天井を見上げる。
(;-∀-)「もう、終わったことだ……」
そして、その真っ白な天井に向かって言葉ぶつけてみる。
だが、それは何の意味も持たなかった。
なぜなら、そんな言葉とは裏腹に僕の心は未練でいっぱいなのだから。
楽しい日々を送れば、それだけ離れる時になったら辛くなる。
それを身をもって実感する日が来ようだなんて思いもしなかった。
底なし沼に体をずぶずぶと沈めていくような気分だった。
僕はそんな弱い自分を呪った。
20
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 18:00:40 ID:SgmTH8fg0
(;-∀-)「とりあえず、誰かに来てもらわないと……」
今のままじゃ、まともに動けそうにない。
僕は連絡先へと視線を戻すことにした。
そして、ある電話番号を選択したあと、通話ボタンに向けてゆっくりと指を伸ばした。
ある電話番号、それは――
1、クー
2、ブーン
安価
>>21
21
:
名も無きAAのようです
:2013/11/24(日) 18:09:41 ID:YOmX8HPU0
2 ブーン
22
:
名も無きAAのようです
:2013/11/26(火) 03:29:43 ID:.UNJPnaU0
ブーン
23
:
名も無きAAのようです
:2013/11/28(木) 14:16:29 ID:bdntjA0s0
ブーンはダメな気がして怖い…
24
:
名も無きAAのようです
:2013/11/29(金) 20:16:52 ID:QcfYcG.U0
『モララー……?なんだおぉぉぉ……」
数回のコール音のあと、あくび混じりのブーンの声が聞こえてきた。
僕は申し訳なさを装いながら、彼に言った。
(;-∀・)「ごめん、急に熱出しちゃってさ。動けないの」
『それが、どうしたんだお』
(;-∀・)「差し入れを持ってきてくれたら嬉しいかなー?……なんて」
『……ボクには、関係ないお』
いつもより冷たい声音だった。さながら無感情なロボットのように。
ブーンはおっとりとした性格の持ち主だが、朝に限ってはまるで別人格のようだ。
その気持ちもわからないでもない。休日はいつも昼過ぎまで眠っているブーン。
そんな彼が朝の六時に叩き起こされたら、不機嫌になるのは当然のことだろう。
逆の立場だったら僕も同じような対応をするはずだ。
25
:
名も無きAAのようです
:2013/11/29(金) 20:40:47 ID:QcfYcG.U0
(;-∀-)「そ、そこをなんとか頼むよー!僕たち親友だろー?」
僕がブーンに何度も追いすがるのには理由がある。
いわゆる消去法なのだ。クーに看病を頼むのは少し気が引ける。
彼女ががさつものであるというのも一つの理由なのだが、それが主な理由ではない。
問題はクーの性別にある。
いくら親友とはいっても、女を部屋にあげるのは、いささか抵抗があるというものだ。
腐っても僕は彼女持ち(僕自身、まだツンと別れるつもりはない)なのだから。
考えてみて欲しい。成人を迎えた男女が一つの部屋に二人きりなんて、何が起こるかわかったもんじゃない。
いくらなんでも体裁が悪いだろう。
『わかったお』
徹底抗戦の結果、ブーンはついに白旗を振った。
口には出さなかったが、僕は心の中で小さくガッツポーズを決めた。
僕には男友達が少ない。頼りになるのはブーンだけなのだ.
26
:
名も無きAAのようです
:2013/11/29(金) 21:20:41 ID:QcfYcG.U0
(;-∀・)「お?」
時計の針が8時に差し掛かろうとしたその時、玄関のドアが開け放たれる音がした。
そのすぐあとに、どすんどすんと、大太鼓を鳴らすような足音がこちらに向かってくる。
( 'ω`)「おいすー」
リビングのドアがゆっくりと開けられた。
それと同時に、二日酔いのフクロウのような顔をしたブーンが、ぱんぱんに膨れ上がったレジ袋を片手に現れた。
(;・∀・)「死にそうな顔をしてるけど、だいじょうぶ?」
( 'ω`)「モララーに言われたくないお」
ブーンは大口を開けて、だらしなくあくびした。
そんな様子に思わずため息が出る。
(;-∀-)「おいおい、そんなんじゃ女の子に嫌われるぞ?」
( 'ω`)「女の子の前ではイケメンっぽく振る舞うから大丈夫だお」
(;-∀・)「そういうのは日頃の行いが大事なんだよっ!」
( 'ω`)「おっ」
僕はブーンの手からレジ袋をぶんどった。
上から袋を覗き込むと、果物ゼリーやみかんの缶詰やヨーグルトなどが見えた。
変なものを買ってこないだろうかと心配していたが、どうやら杞憂に終わったようだ。
27
:
名も無きAAのようです
:2013/11/29(金) 22:12:40 ID:sVqRSc2c0
(;-∀・)「サンキュ。これお金」
財布から僕は千円札を3枚ほど抜き取ってブーンに渡そうとしたが、片手で止められた。
そして、目をごしごしと擦ったあとに彼は言った。
( ^ω^)「カルビ丼大盛りだお!」
(;-∀・)「え?」
僕はなんだかひどく戸惑ってしまった。
ここから10分ほど歩いて行ったところに肉どんぶりの人気店がある。
そこの定番メニューがカルビ丼なのだ。一杯が550円で売られている。
それにご飯を大盛りにするとプラス100円。合計で650円というわけだ。
今回ブーンがスーパーで買ってきたものの値段は軽く1000円を超えているはず。
つまり、全然割に合わないというわけだ。
( ^ω^)「モララー、どうしたんだお?」
だが、当の本人はまったく気にする素振りなど見せない。
おそらく自覚がないのだろう。
いろいろな意味でブーンはお人よし過ぎるのだ。
28
:
名も無きAAのようです
:2013/11/29(金) 22:42:34 ID:sVqRSc2c0
( ^ω^)「これで用事も済んだおね?」
僕がベッドの上に寝かされてから30分ほど過ぎただろうか。
イスから立ち上がって大きく伸びをしながらブーンが言った。
(;-∀・)「うん、ありがとう」
( ^ω^)「じゃあ、ボクはもう帰るお!モララー、お大事にだおー」
僕に軽く手を振ったあと、ブーンはくるりと背中を向けた。
そんな時、ある一つの好奇心がわきあがってきた。
自分でも馬鹿な考えだとは思っていたので、言おうかどうかかなり迷った。
だがブーンはすでにドアノブに手をかけて、今にも部屋から抜け出そうとしている。
気がつけば僕はその言葉を口に出してしまっていた。
29
:
名も無きAAのようです
:2013/11/29(金) 22:58:03 ID:sVqRSc2c0
(;-∀・)「ま、待って!」
( ^ω^)「……お?」
僕の制止の声にブーンがドアノブに触れたまま立ち止まっている。
そして、ゆっくりと振り返り、いぶかしげな視線を送ってきた。
砂時計の砂が落ちていくのをじっと眺めるような沈黙が僕らの間に流れる。
僕たちは姿勢を一切崩さずに、石像のように固まったままだった。
だけど、このままではいつまで経っても埒が明かない。
僕は思いっきり歯を喰いしばった。
(;-∀・)「ぶ、ブーン、お前さあ……」
声帯が震えてしまってうまく言葉が紡げない。
ガラスのような緊張が背中をゆっくりと伝っていく。
(;-∀・)「ツンのこと、好きなのか?」
( ^ω^)「…………」
部屋の空気が濁ったような気がした。
ブーンは何も言わない。
僕の眼をくりぬこうとする勢いで、ただじっと見つめてくるだけだった。
30
:
名も無きAAのようです
:2013/11/29(金) 23:50:23 ID:XgpNe//.0
ミスった……
×声帯が震えてしまってうまく言葉が紡げない。
○声が震えてしまってうまく言葉が紡げない。
31
:
名も無きAAのようです
:2013/11/30(土) 01:00:01 ID:hICuLDr.C
なんという直球なんだ
32
:
名も無きAAのようです
:2013/11/30(土) 03:55:48 ID:YAw6Cz.o0
沈黙が怖い
33
:
名も無きAAのようです
:2014/01/01(水) 09:13:51 ID:S6JfkBBU0
おいここで終わんなよおい
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