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|
( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ
1
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/21(水) 12:08:05 ID:xaL22uFs0
―――― 予告 ――――
.
671
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:48:03 ID:.J/zgTc.0
急いで彼を促す。
二人は窓辺へ移動する。
ロープは相変わらずだらりと階下のバルコニーに垂れさがっていた。
( ^ω^)「これを使って下へ逃げて、隙を見て逃げてくれお」
( ゚∀゚)「おおう、結構難易度高そうだな」
ジョルジュはそうぼやく。
しかしその顔は笑っている。
彼はそういう人なんだとブーンは思う。
楽しいこと、興味があることをする、そうしているうちは目いっぱい笑う。
自分を助けてくれるのも興味があるからだ。何かをしてくれるという期待。
そうして偏見もなく、立場も推してまっすぐに意見を聞いてくれる。
寄宿舎で会ったときとは全然違う。
よほどモララーさんに絞られたんだろうなと思い、ブーンはくすりと笑った。
672
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:50:08 ID:.J/zgTc.0
( ゚∀゚)「何笑ってんだよ」
(;^ω^)「お、お前に言われたくないお!」
言い返そうとするジョルジュだったが、部屋の扉がものすごい勢いで叩かれたために中断する。
( ゚∀゚)「じゃ、いくわ。
もしテーベに行く機会があったらこれを持っていきな」
ジョルジュは胸ポケットから一枚の紙切れを出し、ブーンに渡した。
それは何かと追求する前に、とっととジョルジュは降りてしまう。
いつも通りの勝手な奴。
しかたなしに、紙をポケットにしまい込む。
「おい、ブーン! いるんだな!」
扉の向こう側から声がする。
673
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:52:14 ID:.J/zgTc.0
聞いたことのない声。きっとお城を警備していた衛兵だ。
とにかく急いで対応しようと思い、ブーンは近づく。
「お前に聞きたいことがある。王女のことだ」
ドアのノブに手をかける直前、そう言われた。
ブーンの手が止まる。
王女はどこへいったのか。
何かあったのだろうか。
嫌な汗が流れる。
674
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:54:04 ID:.J/zgTc.0
(;^ω^)「い、今開けますお!」
慌ててそう言い、ノブを捻る。
それが王女の部屋で起こったお話。
☆ ☆ ☆
675
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:56:22 ID:.J/zgTc.0
('A`)「…………」
ドクオは黙っていた。
ロマネスクを見据える。
後ろのヒートにしていたって同じことだ。
彼らの目は、ロマネスクの突きだした手に集中している。
そこには、スケッチブックが握られていた。
素朴な読みやすい字が見える。
頭の中で、何度もその文章を読んでいた。
その通りにしていた。
だから、黙っているのである。
それは、次の文章だった。
676
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:58:03 ID:.J/zgTc.0
『 無駄話をするな!
全部聞かれているぞ! 』
.
677
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:00:13 ID:.J/zgTc.0
( ФωФ)「すまないが、長くなってしまうだろうな。
そもそも君らのことも知らないし、少し場所を移してゆっくり話そうではないか」
('A`)「……俺らを殺そうとする可能性は」
( ФωФ)「ない……とは言い切れないな。
ただ、よほどのことが無い限り私はお前たちに危害は加えんよ。
何分複雑な事情を抱えているのでな」
('A`)「じゃあ、一つだけ先に教えてくれ。
あんたはその剣をどうして手に入れようとしていたんだ?」
ドクオの指先が、ルビーの剣に伸びていく。
今もまだロマネスクの手中にある。
( ФωФ)「ああこれか。大したことではない。
王女がどうしても傍に置いておきたいと言っていたんだ。
あの……モララー殿の形見をな」
懐かしそうに目を細めるロマネスク。
その目に敵意が無いことは、ドクオたちの目にも明らかであった。
それが国王の部屋で起きたお話。
☆ ☆ ☆
678
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:02:10 ID:.J/zgTc.0
7時50分頃
ラスティア城敷地内
南にある大木の裏
彼女がここにいう理由を簡単に説明する必要がある。
まず、彼女は落とし穴にはまった。
落下に身を任せ、自らの発明品でその衝撃を受け流しているうちに
気がついたらお城の外へと吐きだされてしまっていたのである。
そのまま、しばらくは身を潜めていた。
すぐに助けはくるかなとタカをくくっていた。
しかし、いくら待っても誰もこない。
てっきりジョルジュあたりが駆り出されてくると思ったのに、薄情な奴らだと彼女は思った。
とはいえ、愚痴っている場合でもない。
下手にうろついていたら衛兵に見つかってしょっ引かれてしまう。
彼女にできることは、外で仲間が出てくるのを待つことだけだ。
679
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:04:03 ID:.J/zgTc.0
そのため、静かに大木の裏で息を潜めていた。
そこは茂みが近く、いざとなれば隠れられる。
門からも近い。仲間が助けに来なければ、寝ぼけている衛兵を吹きとばしてでも脱出しよう。
心の中で算段を決めていた頃
lw;´- _-ノv「……なんだ、あれは」
彼女が見たのは、人影。
お城の前をこそこそと歩いている。
その人の衣服がドレスなので、シュールはもしやと思った。
あれは王女なのではないか。
興味が湧いた。
なんで王女が自分の住んでいるお城でこそこそするのだろう。
680
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:06:02 ID:.J/zgTc.0
あとはその好奇心に従った。
彼女は小屋が立ち並ぶ場所へと向かっていった。
シュールもそれの後を追う。見つからないように気をつけながら。
必要以上に近づくわけにはいかない。
だからやや遠いところから見ているしかない。
くぐもった声だけ聞えていた。
王女が何事かを話しているのか。
いったい誰と話しているんだろう。
先程の魔人だろうか。
lw´‐ _‐ノv「……!!」
尖った叫びを聞いた。
恐ろしい声。
lw;´‐ _‐ノv「…………え?」
彼女の顔が強張る。
お城から、植えこみから、あらゆる場所に人影が現れたのが見えた。
681
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:08:04 ID:.J/zgTc.0
それも、いつの間にか。
一人、二人、どんどん増えていく。
しかもそのほとんど全てに耳がついていた。
それはどう見ても魔人だった。
王女の下に寄ってきているのか。
lw;´‐ _‐ノv「これは……まずいな」
そう呟き、振り返る。
間に合わなくなる前に逃げなくては。
だけど、その目の先で真っ赤な目の輝きがいくつも光っていた。
lw;´‐ _‐ノv「ああ……あうとー」
ふらふらした声が伸びていく。
682
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:10:03 ID:.J/zgTc.0
このお城には、すでに安全な場所は無かったんだな。
そう悟って、力なく微笑んだ。
新嘗祭の花火の音がする。
祭は盛況のようだ。
その祭が
ラスティア国の最後の祭事となった。
683
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:12:05 ID:.J/zgTc.0
―― 第五話 新嘗祭とラスティア城 おわり ――
―― 第六話 王女デレと勇者モララー へ続く ――
.
684
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:16:29 ID:.J/zgTc.0
―― コラム⑤ 世界地図 ――
うpロダお借りしました。
ちゃんとできているでしょうか。
ttp://u3.getuploader.com/boonnews/download/49/%E5%84%AA%E3%81%97%E3%81%84%E8%A1%9B%E5%85%B5%E3%81%A8%E5%86%B7%E3%81%9F%E3%81%84%E7%8E%8B%E5%A5%B3.jpg
絵などは描けませぬ。
場所も特別に想定はしていません。
685
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:18:30 ID:.J/zgTc.0
はい。
今日の投下は以上です。
次回はいわば謎解き回です。
城下町でのお話も、次回でおしまい。
最初のうちはAA乱れてすいません。
それでは。
686
:
名も無きAAのようです
:2013/09/06(金) 23:18:53 ID:yDbP2bLY0
状況が一気に動いて衝撃の嵐だよおい面白いよおつ
地図ちゃんと見れた。樹海に走っている人がいるんですがそれは
687
:
名も無きAAのようです
:2013/09/07(土) 00:31:16 ID:1CmE/4U2O
さすがに次は少し待つ覚悟は出来てるんだからね
688
:
名も無きAAのようです
:2013/09/07(土) 02:39:17 ID:vNH/BBHE0
おつ
689
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/10(火) 00:00:21 ID:bamZPyCA0
―― 予告 ――
.
690
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/10(火) 00:01:41 ID:bamZPyCA0
305年 11月17日
私はこの声の主を、『魔王』と呼ぶことにしました。
.
691
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/10(火) 00:03:33 ID:bamZPyCA0
―― 第六話 ――
―― 王女デレと勇者モララー ――
12日木曜日9時から前半
13日金曜日9時から後半を投下します。
692
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 00:30:51 ID:wugBzvVg0
どんなペースよ
693
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 00:52:26 ID:xUcAIp96O
ホントにペース早いな
694
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 04:38:07 ID:cvczrJEU0
あああああああああどんどん気になる
695
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 10:13:22 ID:tabyqJ3c0
無理しないでくれよ
と言いつつすごく楽しみにしてる
696
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 20:41:07 ID:Cf7eUUhA0
ペース早くて読むのが追いつかないからまとめて読むの楽しみ
697
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 20:59:19 ID:eEgCKf9U0
そろそろ投下ですね。
698
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:00:34 ID:eEgCKf9U0
( ^ω^)「…………」
( ^ω^)「酷い目にあったお」
( ^ω^)「しばらく出られそうにないおね」
( ^ω^)「…………持ち物はあるお」
( ^ω^)「王女の日記も。しかし分厚いお」
( ^ω^)「暇だから最初から読むお」
☆ ☆ ☆
699
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:01:31 ID:eEgCKf9U0
304年 12月10日
今日は私の12歳の誕生日です。たまにはいいことがあるものです。
何か新しいことを始めようと思ったので、日記をつけることにしました。
毎日書くのは大変そうでも、頑張って出来事を記していきたいと思います。
今日、誕生日プレゼントということで白馬を頂きました。
とっても大きなマルティア国の国王様が私にくださったんだそうです。
私に白馬を見せるとき、父は苦笑いをしていました。
きっと父は、本当はあんまり他の国と関わりたくないと思っているのです。
母が亡くなったときからずっとそう。
でも大きな国からの、そういう良いものは受け取らないと後で嫌な顔をされてしまいます。
だから受け取らなきゃならない。そんな複雑な意味合いがあの苦笑いには含まれていたのだと思います。
父はむすっとしていて、いつも何かを抱え込んでいる人なので
これからもあの白馬に乗せたりして、楽しませてあげられればいいな。
そうしたら、いつか私もこのお城の外に出ることができるのかな。
出たいなあ。
700
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:02:46 ID:eEgCKf9U0
305年 1月1日
新しい年が始まりました。
お城の中でお祝いがありました。町の人たちを呼んでのです。
相変わらず父は私を外に出そうとしてくれません。
どうしてあんなに強情なのでしょうか。
出たいといくらいっても、危ないからとしかいいません。
父は私をそんなに弱い存在だと思っているのでしょうか。
私には父がよくわからないです。
・
・
・
305年 1月13日
今日は衛兵見習いの中でも成績優秀な方々とお会いしてきました。
遅めの新年会のようなものです。
彼らからしてみたら、私に会えることは光栄なことらしいです。
それは私があまり皆さんの前に顔を出さないからでしょうか。
ただ外に出られないものだから悔しくて
外にいらっしゃる皆さんとはお会いしにくいだけなのに
なんだか勝手な話だなと思いました。
でも一人カッコいい人がいたな……
701
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:03:27 ID:eEgCKf9U0
・
・
・
305年 4月16日
父はやっぱり嫌いです。
私は鳥籠の中の鳥なのでしょう。
・
・
・
305年7月24日
変わり映えのしない毎日です。
・
・
・
305年 8月15日
毎日、誰かが私に手を差し伸べてくれないかと考えています。
そんな方が現れれば、喜んでついていきますのに。
702
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:04:26 ID:eEgCKf9U0
305年 9月23日
声が聞えました。
どうやら魔人らしいのです。
私を出してくれるために、父とお話をすると言っていました。
あのお方が父を変えてくれるのでしょうか。
もしそうでしたら、私は本当にうれしくて……
☆ ☆ ☆
703
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:05:25 ID:eEgCKf9U0
|
第
六
話
|
―― 王女デレと勇者モララー ――
.
704
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:06:25 ID:eEgCKf9U0
305年 9月25日
(´・ω・`)「魔人をお城の中に招き入れようと思うんだ」
夜の会食のときに、ショボンは突然口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「え? どうして?」
(´・ω・`)「うん。ちょっと、気が変わってね」
フォークをいじりながら、ショボンは顔をあげてデレを向いた。
(´・ω・`)「魔人は不確かな面が多くて、私も今まで避けていた。
私が国王になってからすでに十数年、ずっと。妻が亡くなってからはなおさらだ」
(´・ω・`)「だから、このお城と城下町はなるべく魔人から遠ざけた。
距離がある町や村だと魔人を使っているらしいが、それは大目に見た。
少なくとも私の目の届く範囲では避けたんだ。彼らを元々の居住区である森に籠らせておいてね」
(´・ω・`)「だけど彼らが有用なのは事実だ。
私情で彼らを避けていれば、いずれこの国は他国よりも後進国になってしまう。
そんなことになってしまっては国民を守れない」
705
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:07:25 ID:eEgCKf9U0
(´・ω・`)「だから、そろそろ意識を変えなきゃいけないと思ったんだ。
魔人を受け入れて、一緒に働き、平和な国を築く」
(´・ω・`)「それが理想だと先日気付いたんだ。
長々話してすまなかったね。大丈夫かい?」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、もちろん」
デレは大きく頷いた。
ζ(゚ー゚*ζ「とても素敵な考え方だと思います」
言いながら、内心では昨日聞いた声のことを思い出していた。
きっとあの魔人さんが上手く交渉したんだ、国王相手にそんなことできるなんてすごいなあ、と
純粋な気持ちで、デレは心の中で声の魔人を称えていた。
(´・ω・`)「……そうだ、来週ちょっと外へ出てみないか」
ζ(゚ー゚*ζ「え!?」
706
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:08:25 ID:eEgCKf9U0
いきなりの提案に、デレは思わず大きな声を出してしまった。
手を口で覆うデレを見ながら、ショボンが微笑む。
(´・ω・`)「外交しようと思って、急いで手紙を送ったんだ。
前々から交渉しようと言ってきていた国でね。
先程言ったように後進国にならないためにも、これからは積極的に外交していきたいんだ」
(´・ω・`)「それで、そのついでになるけど
デレも一緒に来てくれるかな、と思ったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「行きます!」
デレは二つ返事する。
ζ(゚ー゚*ζ「行きますわ! お父様。ああ、本当に、嬉しい……」
口を両手で押さえながら、デレが感嘆を漏らす。
油断すれば涙がこぼれそうになる。
さすがにそこまでしたらショボンを驚かせてしまうので、なんとか堪えていた。
それにしても、こうまでして自分の願いを叶えてしまうとは
あの声の魔人は本当にすごい魔人だったのだな、とデレは再びの賛辞を送った。
707
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:09:25 ID:eEgCKf9U0
その日の晩
ζ(゚ー゚*ζ「魔人さん、いらっしゃる?」
自分の部屋で魔人に話しかけた。
相手は姿が見えないので、話すときは厄介なのだが
部屋で声をかければ返事をしてくれた。
「……なんだい?」
やや遅れた返答。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたにとっても感謝しているの!」
デレは諸手を挙げて喜びを表した。
声の反応はない。
仕方なく口で説明する。
ζ(゚ー゚*ζ「お父様が魔人をここに受け入れるって。
それと、私も外交に連れて行ってもらえることになったのよ!」
「ああ、すごいじゃないか!」
魔人もまた嬉しそうに言う。
その日は魔人に対して、デレはひたすらに、いかに自分が嬉しいかを説明して聞かせていた。
708
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:10:25 ID:eEgCKf9U0
10月1日
デレはマルティア国にいた。
マルティア国の差し向けた鳥型魔人の牽く飛行船に乗ってである。
ショボンの説明により、マルティアが魔人受入れの先進国であるということをデレも知っていた。
今回はその先進国に、魔人受入れについてのアドバイス等を求めに来たのだそうだ。
ただし、デレは話し合いの中心には参加せず
マルティアの従者たちに連れられてお城の周囲を回っていた。
ラスティアの北にあり、さらに山の上にあるマルティア。
10月にしてすでに肌寒く、山の上には雪が張っていた。
国の北東に一際巨大な山脈が見えた。
300年前に魔人が初めて現れたと言われている場所だ。
その荘厳な峰も、上部が雪をかぶっている。
ζ(゚ー゚*ζ「綺麗……」
壮大な光景に、ただただデレは感動していた。
709
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:11:25 ID:eEgCKf9U0
10月2日
ラスティア城から手紙が届いた。
プレゼントとしてマルティアからもらいうけた白馬の容態が悪い、との知らせた。
ζ(゚ー゚*;ζ「お父様、大変!」
手紙を持ってデレは急いで父のもとへ急いだ。
デレは父に泣きつき、帰国したいと懇願した。
あの白馬は、お城に閉じ込められているデレにとって、唯一純粋に接することができる存在であった。
唯一の友達とも言える。
だからこそ、白馬の具合が悪くなったことにデレは心を痛めたのである。
本当なら上手くはいかない懇願だろう。
しかし、交渉相手がその白馬の送り主であるマルティア国王であったため
特別に許しをもらえた。
デレとショボンは自国へと急いだ。
交渉はまた後日、ということになった。
710
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:12:26 ID:eEgCKf9U0
夜にはラスティア城に辿りついた。
デレは白馬の元へ駆けつける。
その小屋の中でぐったりしているその姿を見て、息をのんだ。
それから、その首筋に抱きついた。
(√;゚ー゚)「王女様、あまり近寄られては……」
デレのいない代わりに白馬の世話をしていた衛兵たちが止めようとする。
(√;゚ー゚)「もしも何かの病気ならば、感染する危険もあります」
そう言われても、デレは必死に首を横に振った。
ζ(゚ー゚*;ζ「一緒にいたいの! お願い!」
(√;゚ー゚)「しかし……」
711
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:13:26 ID:eEgCKf9U0
衛兵の返答は尻すぼみになる。
大きな音に遮られた。
白馬が一声、嘶いたからだ。
首を持ち上げて反らす白馬。
それからデレに視線を向ける、
ζ(゚ー゚*ζ「……元気になったの?」
まるで人の言葉がわかるかのように、馬はまたひとつ嘶く。
デレは笑って、一層強くその背中に身を寄せた。
獣医が来てから診察したものの、病気の兆候はみられず
どうもデレがいなくて寂しいだけだった、と結論を下した。
その日からデレは、もし外交に行くとなれば
必ずその白馬を伴っていこうと誓ったのだった。
712
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:14:30 ID:eEgCKf9U0
10月15日
朝起きてすぐに、ショックを受けた。
ζ(゚ー゚*;ζ「え、やめるのですか?」
彼女の専属だったメイドが今月いっぱいで辞めることになっていた。
そのときはしかたなく、その老齢のメイドにねぎらいの言葉をかけるしかなかった。
しかし、徐々にデレは異変に気付き始めた。
お城を試しに数分歩いてみた。
人とは会う。貴族を含め、お城で働く人々の姿。
元々そこまで交流はしていなかった。
向こうとしても、王女と気軽に遊んだりするわけにはいかなかったのだろう。
だけど、ぱっと見ても、お城の大半の人が入れ替わっていることがわかった。
デレは嫌な予感がしたので、急いで父の所へ急いだ。
713
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:15:26 ID:eEgCKf9U0
(´・ω・`)「なんだいデレ。今忙しいんだよ」
素っ気ない態度でかわされてしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「そうなの……そんなに大変?」
(´・ω・`)「ああ、人事面でいろいろ忙しくてね」
ζ(゚ー゚*ζ「そのことで少し話したいことが」
(´・ω・`)「悪いが、人事については僕にまかせてくれ」
あまりにもきっぱりと断られ、デレも口をつぐんでしまう。
父が何を考えているのかわからなくない。
一時は良くなったと思ったのに。
以前抱いていた苛立ちを、デレはこの頃からまた抱き始めた。
714
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:16:25 ID:eEgCKf9U0
10月26日
|゚ノ ^∀^)「デレちゃんこんにちは〜」
ショボンの従妹、レモナが子どもを連れてきた。
彼女のように、お城に入ってくる貴族は近頃増えていた。
ショボンの気が変わったところに付け込んだのだろうとデレは推測した。
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、レモナさんこんにちは」
|゚ノ ^∀^)「ずっと昔に会ったのよ? 覚えてるかしら」
ζ(゚ー゚*ζ「微かには……」
|゚ノ ^∀^)「私の息子とも一緒に遊んだりして、ああ懐かしいわあ」
その時はたまたま、彼女の息子であるヒッキーとは会わなかった。
715
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:17:24 ID:eEgCKf9U0
|゚ノ ^∀^)「ショボンちゃん、お城の手伝いならしてあげるからね」
(´・ω・`)「ああ、レモナは文章が得意なんだっけ」
|゚ノ ^∀^)「ええ、任せて!」
そういって、彼女は強く腕を握る。
とても明るい人だと、傍から見ていたデレも思った。
でも、どうせこのお城の居心地がいいからきただけの人なんだ。
他の人と同じように。
そう思うと、どうしても素直に接することができなくなった。
716
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:18:27 ID:eEgCKf9U0
11月1日
ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは! あたらしいメイドです! ミセリといいます!」
王女の部屋にやたらと黄色い声を出す女性がやってきた。
どうも新しい専属のメイドとして連れてこられたらしい。
確かに、ひそかに次は自分と近い年齢のメイドがいいなとぼやいたこともある。
でもまさかこんなに若そうな人がくるとは。
デレは困惑しつつも、ミセリと握手を交わした。
ミセ*゚ー゚)リ「頑張りますので!」
にっこりと笑う彼女を見て、デレもまた微笑んだ。
ここ最近少しだけ不安があったので、
その朗らかなメイドの存在はデレにとってありがたいものだった。
717
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:19:29 ID:eEgCKf9U0
11月9日
久しぶりにショボンが王女の部屋の扉を叩いた。
デレが招き入れると、見たことのある衛兵が入ってきた。
( ФωФ)「衛兵隊長のロマネスクです」
猫目の男性は深々と頭を下げた。
人間にしては鋭すぎる目に、デレは若干たじろいだ。
(´・ω・`)「デレ、彼を君の護衛役にしたいんだ。
今後、外交が増えると危険も増す。そんなときは誰かに守ってもらわなきゃならない」
( ФωФ)「私からも頼れる人に呼びかけます」
ロマネスクはそう言って胸を叩いた。
( ФωФ)「衛兵見習いにもなかなか骨のある奴がいますゆえ、必ずお役に立ちましょうぞ」
衛兵見習い。
ふっと思い浮かんだのは、あの新年会で出会った若い男性だった。
718
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:20:26 ID:eEgCKf9U0
11月15日
この日は夜が騒がしかった。
お城に働きに来た魔人の中に悪い魔人がいたらしい。
そんな風の噂が流れてきた。
ζ(゚ー゚*ζ「悪い魔人……」
不穏な気持ちが湧きあがった。
このお城はどんどん魔人を受け入れている。
その魔人が全員良い人とは限らない。
ひょっとしたら人間のことを見下している魔人だっているかもしれない。
そういう人が現れるのは、とっても怖いことだ。
なかなか寝付けずに、その怖さばかりを考えていた。
719
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:21:26 ID:eEgCKf9U0
11月16日
ζ(゚ー゚*ζ「昨日の魔人はどうなりましたの?」
朝目覚めて、ミセリと出会いがしらにそう質問した。
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、お城にいた悪い魔人っていう」
ミセ*゚ー゚)リ「なんのことですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「……え?」
その後、お城中の人々に聞いて回った。
昨日の魔人はどうなったのか。
ミセリだけが知らない、という可能性だってある。
でも、誰一人としてまともに答えを教えてくれる者はいなかった。
720
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:22:29 ID:eEgCKf9U0
教育係にその話をして、こっぴどく怒られたのち
デレはようやく自分の不安が正しいことを悟った。
魔人の噂をもみけしてしまうなんて。
それほど魔人を守ろうとする人が多いのだろうか。
きっと、同じ魔人は守ろうとするのだろう。
じゃあ、人間に話を聞いてみないと。
あれ
誰が人間なんだっけ。
721
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:23:26 ID:eEgCKf9U0
11月17日
お城中を駆け回った。
この前よりもはるかに真剣に。
たったひと月しかたっていない。
それなのに、もうお城の中は様変わりしていた。
ζ(゚ー゚*;ζ「なんで……みんな代わっているの」
かつて働いていた人たちの姿が見えない。
この数日でそんなにも激しい人事があったのか。
どうしてそんなことを。
少しずつ、人間だけが狙い撃ちされて、追い出されていたのか。
722
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:24:30 ID:eEgCKf9U0
ミセ*゚ー゚)リ「王女様!」
ミセリの声が聞えても、デレは部屋の扉を開けようとしなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「どうして開けてくれないのですか!」
ζ(゚ー゚*;ζ「一人にしてちょうだい!」
ドアノブの握りしめて、叫ぶように懇願した。
ミセリも最初のうちは扉を必死に叩いていた。
困ります、出てきてください、御病気ですか。お悩みですか。
やがて、その声も静まっていった。
ミセリはどこかへ向かったようだ。
ほっとして、デレは扉の前でしゃがみこむ。
723
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:25:27 ID:eEgCKf9U0
「どうしたんだい?」
その声を聞いたのは久しぶりだった。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは……」
724
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:26:26 ID:eEgCKf9U0
「ずいぶん荒れているようだけど」
内容だけ見れば心配してくれているようだった。
でも、その声の軽さはどうやっても拭いきれていなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……お父様に何を言ったの?」
相手の姿が見えないので、しかたなく天井を睨んだ。
「お城で魔人が働けるように。最初にもいったじゃないか」
ζ(゚ー゚*;ζ「でも、まさかみんなが入れ替わっちゃうなんて」
そこで、甲高い笑い声が響いた。
「そうだよ、ようやく気付いたんだね」
嬉しそうな口元が目に浮かぶようであった。
「でも僕は嘘をついていないよ。
何人働かせるかなんて言ってないもの」
725
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:27:25 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「お父様がこの話をしたがらないの」
笑い声を無視して、デレは続ける。
ζ(゚ー゚*;ζ「いったい何を吹き込んだの」
「そんなことお前に教える義理はないよ」
ζ(゚ー゚#ζ「どうしてよ!」
思わず声を荒げる。
「僕らは契約以上のことはしないんだ。
まあ、個人の考え方次第だけど。とりあえず僕はそのルールに従ってるよね」
ζ(゚ー゚#ζ「ルールって……」
「でも……そうだな。言った方が面白いかもしれない」
声は小さく、「なるほど」とか、「うん」とか呟いていた。
726
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:28:24 ID:eEgCKf9U0
「じゃあ特別にルール違反して、教えてあげるよ」
愉快そうに、声は言う。
「とはいっても、簡単なことだけどね。
僕がいつでも娘の傍にいるって、言っただけ。
それでもし僕の要求を拒んだら……後はわかるでしょ?」
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、あなたは……」
恐ろしい考えが、頭の中で渦巻きだした。
ζ(゚ー゚*;ζ「まさか私を人質にして、こんなことを」
「非常に俗っぽい言い方で気に食わないけど、うん、そういうことだよ。
君の命なんて簡単に奪えるからね。
契約している以上、僕は君の居場所がわかるから」
デレは息を吐いて、胸を手で押さえた。
心臓の拍動が伝わってくる。
なんとかしてそれを抑え込もうとする。
この魔人は自分を煽ってくる。
これにのせられちゃだめだ。
727
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:29:25 ID:eEgCKf9U0
落ちついてから、デレは話し始めた。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは私の願い事を利用したんですね」
「酷い言い方だなあ」
声が茶化してくる。
ζ(゚ー゚*ζ「お城に侵入するために」
「あのさ、君だって僕を利用して外に出ようとしたんだ。
他の魔人は何もしないけど、願い事に対価を求めたっていいだろ?
むしろそれが自然なことじゃないか」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、契約を破棄します」
魔人との契約は破棄すれば無くなる。
そうすれば、魔人はもう願い事をかなえる義務もなくなる。
そう考えて、提案した。
答えはない。
何も音のない時間が流れる。
728
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:30:26 ID:eEgCKf9U0
最初に、鼻で笑う音がした。
明らかに、あの声の主のもの。
それから、弾けるような笑い声。
これまで聞いたどの甲高い声よりも耳障りなものが、デレの頭の中で暴れまわった。
思わず耳を抑える。
いくらか音は和らいだ。
それでも音量が大きすぎるのか、消しきれない。
ζ(゚ー゚#ζ「なんなんですか!」
必死で喉を震わせた。
ζ(゚ー゚#ζ「何がおかしいんですか! 言って御覧なさいよ!」
「やあ、ごめんごめん」
息切れをしながら、声が謝ってくる。
729
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:31:25 ID:eEgCKf9U0
「あまりにも世間知らずなんだなと思ってさ」
ζ(゚ー゚#ζ「……」
歯を噛みしめて、言い返したくなるのを堪えていた。
「契約を破棄するためには、僕の頭に触れていなくちゃならないんだよ」
声が淡々と述べる。
デレはそれを聞いて、唖然とする。
ζ(゚ー゚*;ζ「そんな……私はあなたが誰なのかも知らないのに」
力が抜け、目の前がぼやけてくる。
それが涙だと気付いて、デレは急いで顔を手で覆った。
こんな姿、絶対に見せたくない。
そう思ったから。
730
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:32:25 ID:eEgCKf9U0
でもどうしたらいいんだろう。
デレは必死に思考を巡らせた。
姿の見えない相手との契約を破棄するなんて。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ」
そこでふと、気付いたことがあった。
首を上げて、口を開く。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、じゃあ契約するときは?」
湧いてきた疑問。
それと同時に見えてくる希望。
ζ(゚ー゚*ζ「あなた、本当に私と契約したの?」
契約しなければ不思議な力は使えない。
それなのに、この魔人は不思議な力を使って自分に話しかけてきていた。
ζ(゚ー゚*ζ「もしそうなら、どうしてあなたは最初からその力を使えたの?」
731
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:33:25 ID:eEgCKf9U0
言葉が次々と出てくる。
自分の予測に乗っかって、質問を浴びせかける。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、答えてみてよ!」
もしまだ契約していないとしたら
自分は声から逃げることができるんじゃないか。
「いや」
含み笑いもなく、声が言う。
思えばこの魔人の真剣な声を初めて聞いた。
「君とはちゃんと契約しているよ。
でも、そうだね。もっと正確に言えば、あの部屋のときに君と契約したんじゃないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……え?」
732
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:34:26 ID:eEgCKf9U0
「僕は君と、もっと前に会っていたんだよ」
「一度、強い願いを持って魔人と触れればいいんだ。それが契約成立の方法。
君はずっと外に出たいと思っていたんでしょ? だから、僕に触れたときにちゃんと契約した」
「そこからずっと君のことを見ていたんだけど、なかなか本心がわからなくてね。
この前部屋で呟いたのを聞いて、ようやく外に出たいんだってことがはっきりとわかった」
「だから僕は出てきたんだ。この力を使って」
希望が消え、新しい疑問に変わる。
すでに会っていた?
いったいいつ?
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、あなたなんて知らない!」
首を思いっきり左右に振る。
この声を断ち切りたくて。
733
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:35:25 ID:eEgCKf9U0
再び天井を睨みつける。
さっきよりもずっと強い目で。
ζ(゚ー゚*;ζ「そ、そうよ、どうせそれもはったりなんでしょ!」
興奮を抑えきれず、声色にありありと乗せる。
ζ(゚ー゚*;ζ「どうせ私を殺せるっていうのもはったりでしょう!
そうやって言っておけば父を脅せるから、だからあなたは――」
言葉は続かなかった。
不意に心臓が跳ね上がり、動作を中断せざるを得なくなった。
呼吸ができない。
理由はわからなかった。
口元を抑えて、デレはその場に膝をついた。
なおも気持ちの悪い感触が、腹の底から湧き出てくる。
苦しくて目も開けていられない。
734
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:36:24 ID:eEgCKf9U0
「わかった?」
声がする。
同時に、胸への圧迫感が消えた。
ウソみたいに苦しみも無くなる。
舌を出して、なんとか呼吸を整えようとした。
答えられる状況じゃない。
胸の鼓動はいまだ速い。
あのまま苦しみが続けば、どうなっていたことか。
わからない。だからこそ恐ろしかった。
「というわけで僕は君を殺せるのです」
嫌に勝ち誇った声が聞えてくる。
735
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:37:24 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「……私に、こんなことするなんて……」
歯を食いしばって吐き気を我慢する。
なんとか絞り出した言葉。
ζ(゚ー゚*;ζ「こんなこと、絶対許さないから」
心臓が落ち着いてくる。
意識して深呼吸をして、言葉を重ねていく。
ζ(゚ー゚#ζ「私はこの国の王女なのよ。
こんな悪いこと、いずれは誰かに見つかって、あなたは」
「君らが本当に、王や王女だって言えるのかな」
声もまた、言い返してくる。
「言っておくけど、僕はそのうち国王だって簡単に殺せるようになるよ。
そうなれば君らは完全に僕の手のひらの上。
そんな状況で果たして君らは王族と呼べるのかな」
736
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:38:24 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「…………」
答えられなかった。
でも、決して彼女は諦めたわけではなかった。
その目の光はまだ失われていなかった。
ζ(゚ー゚*;ζ「見てなさい」
静かにそう告げる。
もう声は何も言ってこなかった。
笑い声さえもない。
聞えなかったのかもしれない。
デレは机へと向かった。
いつも使っていた日記帳。
そこに今日の出来事を書きくわえた。
☆ ☆ ☆
737
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:39:26 ID:eEgCKf9U0
305年 11月17日
私はこの声の主を、『魔王』と呼ぶことにしました。
いずれ必ず倒すべき存在として。
.
738
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:40:24 ID:eEgCKf9U0
☆ ☆ ☆
12月23日
メティス城
デレとショボンはこのラスティアよりはるか西にあるこの国のクリスマスパーティに招待されていた。
国内に巨大な河川と、魔人の住処を抱える国。
人々の生活には余裕が見られる。魔人との調和と言う観点ではマルティアをも凌ぐ国だ。
メティス城にて、パーティが行われていた。
大人たちはお酒を飲み、場の空気がのぼせていく。
その会場の隅で、デレは縮こまっていた。
先程から、こっそりと声に話しかけていた。
でも何も返って来ない。
思えばいつも部屋の中でしか彼と話していない。
739
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:41:26 ID:eEgCKf9U0
もしかしたら、新しい場所では彼の声は届かないのかも。
そう思って、即席の計画を作り立てた。
メティス国に逃亡する計画。
きっと父、そしてラスティアの人々は驚くだろう。
自分の王女という身分は、それだけ人の感心を引き寄せる性質がある。
忌々しいことなのだけど。
そして逃げた後、このメティスの北にあるエウロパの森へ向かう。
世界有数の魔人の住処。
そこへいけば、悪い魔人を退治してくれる魔人だっているかもしれない。
魔王を倒す方法がわかるかもしれない。
以前、魔王に脅された王女は、口に出さないまま
心の内側でで逞しく刃向う術を考えていたのである。
740
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:42:28 ID:eEgCKf9U0
パーティ会場を見まわした。
( ФωФ)
まず、衛兵隊長が目に入った。
貴族の血も含まれているという彼。
もしそれが本当なら、魔人である可能性は低い。
ということは魔王の仲間とは言い切れない。
ただ、あの猫のような目はどうにも気に入らなかった。
ひょっとしたら、猫型の魔人が自分を騙しているのかもしれないと、デレは警戒していた。
次に、視線を移す。
ミセ*゚ー゚)リ(゚、゚トソン
従者が二人ほど見えた
トソンがミセリを引きずって、部屋の外に連れ出している。
また何かしたのだろうか。
彼女たちのうち、ミセリは確実に後から来た人だ。
よって魔人である可能性が高い。
たとえ見た目が間抜けそうでも気を抜いちゃいけない。
ただ、そのために魔王である可能性は低いだろう。
彼女と会う前にデレは魔王と会っていたのだから。
横に居る女性はトソンという。
従者のリーダーらしいが、以前に会ったことはない。
だいたい従者も激しく入れ替わっていた。
だから彼女が後から来た人だと、みんな知らないだけかもしれない。
今のところは怪しいという段階だ。
741
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:43:26 ID:eEgCKf9U0
|゚ノ ^∀^)(-_-)
次に見たのが、このちぐはぐな親子。
彼女たちもまた部屋の外へと出るところだった。
レモナがショボンの従妹というのはどうやら本当らしい。
さすがに従妹の顔を忘れるようなショボンではないだろう。
ただ、その横に居る暗い彼。
その顔は全く見覚えが無かった。
それに、ほとんどしゃべっていない。
声がわからない。これは相当怪しいのではないか。
デレはそう思って、警戒のレベルを高めていた。
( ´W`)
他にも大臣たちが何人か見られる。
彼らとて後から来た人たちだ。
魔人である可能性はもちろん高いと言える。
(´・ω・`)
最後に見たのが、父親。
魔人ではない。もちろん魔王でもない。
脅されているだけの男。
742
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:44:40 ID:eEgCKf9U0
そして
最後
一人、見たことのある青年が混ざっていた。
( ・∀・)
彼は、ロマネスクが連れてきたらしい。
骨のある若者だと言って。
そういう話に目が無いショボンは、喜んでこの若者、モララーを連れてくる許可をだした。
実際成績はトップで、来年にはもう衛兵になるのではないかと噂されていた。
いや、そのような噂はどうでもよかった。
デレはその顔を見たことがあった。
もう一年近く前、まだ魔王の声を聞く前に、彼女は新年会で彼の姿を見た。
わずかに心が躍る。
声には出さないけど、自然と見てしまう。
そんな華やかさを彼は持っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「いけないわ」
首を振って、思考を止める。
何もモララーを見るためにここまで来たわけじゃないのだ。
ちゃんと自分がやるべきことをしなければ。
743
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:45:27 ID:eEgCKf9U0
時刻は夜の8時
ζ(゚ー゚*ζ「すみません、少しお部屋に忘れ物を」
そういって宴会場を抜け出した。
温和なメティス国の人が相手だからこそ、こんなに簡単な嘘が通じたのだろう。
すれ違う人々も、頭を下げればもう追求は無し。
外へでて、大きな三日月を見上げ、デレは一人ほくそ笑んだ。
自分の計画が滞りなく進むことに。
ζ(゚ー゚*ζ「さてと」
移動手段は考えていた。
あの白馬。
もちろん今回の外交にも連れてきている。
貴重な移動手段を、何の疑問も持たれずに連れてこれる。
デレにとっては幸運な状況だ。
あの白馬の寂しがりやな性格があってこそ、この計画は進められるのだ。
744
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:46:25 ID:eEgCKf9U0
白馬は現在、メティス城の厩舎に留められている。
そこへ向けて、進んでいく。
いくら温和な人々といっても、夜に厩舎にすたすたと歩いていけば怪しまれてしまうだろう。
だから、他の人には見つからないように、慎重に。
ζ(゚ー゚*ζ「?」
厩舎の傍で人の声を聞いた。
誰かいるのだろうか。
こっそりと、入口を覗きこむ。
真っ黒な二つの影。
体格からして大柄な男のように見えた。
こんなときになんだろう、とデレは心の内で恨み事を吐く。
その人影えおゆっくりと観察し、その頭を見たとき
ζ(゚ー゚*ζ「!」
耳があるのが確認できた。
745
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:47:29 ID:eEgCKf9U0
魔人がこんなところにいるのだろうか。
さすがに計画どころじゃないとデレは思った。
仮にも王女の白馬のいる厩舎、そんなところでこそこそと謀をする魔人。
どう考えても友好的な存在ではないだろう。
だから踵を返して引き返そうとした。
「誰だ!」
声をかけられて、咄嗟にデレは横に跳んだ。
草むらへ。
ほとんど反射的な動きだった。
勢いのままにしゃがみこむ。
心臓が早鐘を打つ。
草の陰から、厩舎の入口を眺める。
鋭い爪が見えた。
月明かりの下で、艶めかしく輝いている。
746
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:48:33 ID:eEgCKf9U0
デレは目を閉じた。
顔を下げて、腕の内側へと入れる。
「誰だ?」
また一つの声。
さきほどの魔人の声だろう。
「おい」
誰かに呼びかけているようにも思える。
もしかして自分になのだろうか。
もう見つかってる? だとしたら……
混濁する思考の隅で、空気を切り裂く音を聞いた。
叫び声がいくつかあがる。
何が起きているのかはわからなかった。
いくつかそれが続き、やがて静かになる。
747
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:49:39 ID:eEgCKf9U0
危機が去ったのだろうか。
恐る恐る、顔を上げた。
( ・∀・)「行ったか……」
先ほどとは別の意味で、言葉を失った。
宴会場に居たはずの彼が、どうして?
ζ(゚ー゚*ζ「あ、あの……」
立ち上がりざまに声をかけた。
( ・∀・)「あ、よかった」
青年は心底ほっとしたような表情になる。
( ・∀・)「いえね、あなたが宴会場を出ていくのが見えて、
帰って来ないものですから心配になって探し回っていたんです。
あなたを警護するという目的でここに来て連れてこられましたし」
748
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:50:24 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*ζ「探すって言ったって……どうやって」
( ・∀・)「だって、あなたこの国に来たの初めてでしょう?
知っている人も全員宴会場にいるわけだし、それで他に行くとしたら白馬のところかなと」
事もなげに、青年は言ってのける。
デレはぼーっとして、その顔立ちを見ていた。
(;・∀・)「あの、何かついてます?」
モララーが自分の顔をぺたぺたと触りだす。
それでようやくデレは目を瞬いた。
ζ(゚ー゚*;ζ「え、いや、そんなつもりじゃ!」
顔と手を勢いよく振る。
そのあと、モララーに連れられて、デレは父のもとへと向かった。
749
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:51:25 ID:eEgCKf9U0
宴会はまだ続いていた。
( ・∀・)「国王、ちょっと」
その隅で、彼はショボンを呼び出した。
(´・ω・`)「えっと、君は……」
( ・∀・)「モララーです。衛兵見習いですが、このたびロマネスクさんの推薦でこちらにきました。
王女の護衛をするためにです」
(´・ω・`)「ああ、そうだった! 御苦労さまだね。
それで、何かあったのかい?」
( ・∀・)「実は先程、王女が魔人に襲われました」
(;´・ω・`)「「なんだって!?」
途端に大きな声を出すショボン。
宴会場の賑わいが、一瞬静まる。
(;´・ω・`)「あ、ああいや、何でもないですよみなさん。
宴会を続けてください」
慌てふためきながらも、ショボンは手振りを交えて皆にそう伝えた。
止んでしまった話声が、徐々にまた始まっていく。
750
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:52:32 ID:eEgCKf9U0
(;´・ω・`)「続けてくれ」
今度は声を潜めて、ショボンはモララーに言った。
( ・∀・)「王女は少し休憩したくて宴会場の外に出たんです。
そこで怪しい男に声を掛けられ、逃げようとしたところを襲われました。
私がそこを助けました」
淡々とモララーが説明するも、その内容は事実とは異なっていた。
(;´・ω・`)「本当かい、デレ」
困惑した表情で、ショボンが確認してくる。
ζ(゚ー゚*ζ「えっと」
正しく言うべきなのか、判断に困っていた。
ふと、モララーと目があう。
彼はデレを直視して、ゆっくりと頷いた。
751
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:53:20 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「間違いありません」
嘘をつくことにした。
自分が厩舎に赴いたことも何も言わず。
(´・ω・`)「ふむむ……そうか」
ショボンは唸った。
それから顔を再びモララーに向ける。
(´・ω・`)「ありがとう、モララーくん。
君はデレの命を救ってくれた。このことはいずれ、君への褒賞としよう」
(*・∀・)「本当ですか?」
モララーは目を輝かせて言う。
(´・ω・`)「もちろんだとも。君が望むものならなんだってやろう。
私が最も大事にしているデレのために尽くしてくれたのだから」
(*・∀・)「謹んで考えさせていただきます」
にやりと笑って、彼は頭を下げた。
752
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:54:21 ID:eEgCKf9U0
(´・ω・`)「怖い思いをさせてすまなかった、デレ」
ショボンは悲しそうな顔で、デレを見つめた。
(´・ω・`)「この件はあとでメティス国王に相談しておこう。
せっかくのパーティでこんな目にあわせてしまうなんて」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、いいんですお父様」
首を軽く振る。
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんとこうして優秀な衛兵見習いさんに守ってもらったのだし
何も問題はなかったのですから、いいんです。
宴会だってまだまだ楽しめますわ」
思いのほかすらすらと、デレの口からショボンを慰める言葉が出てきた。
デレ自身がそれに驚いていた。
(´・ω・`)「そうか……ありがとう、デレ。
この件は外交にも響くだろう。大事にならなくてよかった。
もしそんなことになれば、騒ぎが広まって国が荒れただろう」
さらりと恐ろしいことを述べる。
753
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:55:21 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「……」
デレはショボンの言葉に答えず、ただ冷や汗を流していた。
(´・ω・`)「私はメティス国王に話してくるよ」
ショボンがその場を後にする。
宴会の向こう側へ。
後に残ったのは、デレとモララーだけ。
ζ(゚ー゚*;ζ「……良かった」
ショボンの背中を見ながら、デレは思わず呟いた。
もし自分が計画通りに行動していたらどうなっていたのだろうとふと思ってしまい、ぞっとする。
国は乱れ、国民も混乱し、きっとショボンだって今以上に忙しくなったはずだ。
自分がいなくなって、騒ぎが広まったらどうなっていただろう。
ショボンの心労はますます酷いものになっていたに違いない。
そうならなくて良かった、その思いが、思わず口をついてでてきたのだ。
754
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:56:25 ID:eEgCKf9U0
誰にもばれていないことを、ひそかに喜んでいた。
だけど、それは思い込みだった。
( ・∀・)「良かったですね」
いつの間にかデレの横に立っていたモララーが言う。
( ・∀・)「逃げ出そうとしたことがばれなくて」
ζ(゚ー゚*;ζ「え!?」
耳を疑った。
冷や汗を引っ込めるように、首を小さく振る。
ζ(゚ー゚*ζ「な、なんのことだか」
( ・∀・)「だって、あんな夜中に厩舎にいくなんて、それしかないでしょう?」
またもあっけらかんとした口調。
デレは呆然として、それから慌てて首を振る。
ζ(゚ー゚*;ζ「あの……誰にも言わないでくださる?」
755
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:57:22 ID:eEgCKf9U0
( ・∀・)「まあ、いろいろおありなんでしょうね」
モララーはそう言って、笑ってくれた。
( ・∀・)「もちろん、誰にも言うつもりはありません。
私はただ、あなたを護衛する任を果たしただけですから」
そういって、ごく自然なしぐさで、彼は身をかがめた。
その手がデレの腕に伸び、その手の甲に唇を合わせようとする。
ζ(゚ー゚*;ζ「!」
身を強張らせ、ついその腕を振り払ってしまう。
(;・∀・)「あ、ちょっとキザ過ぎましたかね? すいません」
頭をかいて、おどけた表情でモララーは言う。
( ・∀・)「あれ、王女? お酒でも飲みました? 顔が」
756
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:58:21 ID:eEgCKf9U0
ζ(////ζ「飲んでません!」
やや叫び気味に言い、デレはその場を後にした。
モララーを残して。
後ろに残されたモララーは、ただ肩をすくめるばかり。
頬の火照りを感じながら、デレは微かな光を感じていた。
あの聡明さならば、もしかしたら
魔王に対抗できるのではないか。
この胸に抱く淡い心を抜きにしても、試してみる価値はあるのではないか。
それが、王女デレと勇者モララーの出会いだった。
757
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:59:41 ID:eEgCKf9U0
―― 第六話 前半 終わり ――
―― 後半へ続く ――
.
758
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 22:00:22 ID:eEgCKf9U0
今日はおしまい。
また明日。
759
:
名も無きAAのようです
:2013/09/12(木) 22:21:50 ID:5X/2wQhw0
乙
760
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 02:34:31 ID:Fy0LKOgQO
ζ(゚ー゚*ζは敵なのか味方なのか、過去編では味方っぽいけど
761
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 18:59:12 ID:2tbziXDo0
乙
待ってるぞ
762
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 20:57:42 ID:.nLUMdgE0
そろそろですかね。9時からいきます
763
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:00:02 ID:.nLUMdgE0
306年 1月5日
この日は講堂に行くようにと言われました。
お父様がお触れを出したからです。
それは、モララーさんを衛兵とするとの内容でした。
先日私を助けてくれたことに、お父様がいたく感激したからです。
とはいえ、仮入隊というものらしく
モララーさんはまだしばらくあの寄宿舎で暮らすようですが。
私はお父様の隣で、彼の顔を伺っていました。
彼は努めて冷静に、お父様の言葉を受け止めているようでした。
こうして、彼は私の護衛の任に着くことを認められたのです。
不安渦巻くこのお城で、彼の存在は唯一の安心。
なんと嬉しいことなのでしょうか。
思わずあの講堂で彼に駆け寄りたかったくらい
私の心は踊っておりました。
764
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:00:59 ID:.nLUMdgE0
306年 1月10日
なんと、モララーさんが外防衛とやらに行ってしまわれました。
新人の衛兵に対する洗礼だそうです。
まだ正式じゃないのだから、そっとしておけばいいのに。
いったいあの人はどこまで私を焦らすというのでしょうか。
本当に心苦しい。
ですが負けてばかりもいられません。
幸いなことに、ひと月もすれば帰ってくるそうです。
ここは耐え忍んで、ちゃんと笑顔であの人を迎えられるようにしておかなければ。
ああ、本当に、待ち遠しい。
・
・
・
☆ ☆ ☆
765
:
名も無きAAのようです
:2013/09/13(金) 21:01:20 ID:w2CjkoeI0
わーい!待ってた!
766
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:01:58 ID:.nLUMdgE0
( ^ω^)「…………」
( ^ω^)「ここから日付が連続するお」
( ^ω^)「会いたいとばっかり……」
( ^ω^)「よほどモララー先輩の存在が大きかったんだおね」
☆ ☆ ☆
767
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:02:58 ID:.nLUMdgE0
・
・
・
306年 2月7日
モララーさんが外防衛から帰ってまいりました。
ようやくです。
私はこの日が来るのを待ちわびておりました。
立派な馬に乗って門をくぐりぬけてくる彼の姿。
その姿を見たときの感動を、私はどう表現したらいいものかわかりません。
私はもう、この胸の高鳴りが何のためによるものなのか、理解しております。
きっとお父様にばれたら大騒ぎになるでしょう。
たとえそうなったとしても、私の気持ちは揺るがないでしょうが。
・
・
・
☆ ☆ ☆
768
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:04:00 ID:.nLUMdgE0
デレとモララーが出会って、数か月が経過した頃。
世界情勢に暗雲が立ち込め始めた。
北のマルティア国や西のテーベ国でも、怪しい動きが見られていた。
ラスティア国はその二国と海と砂漠に挟まれた場所なので
その乱れの影響で世界のニュースも届きにくくなっていった。
そんな中、ショボンはますます忙しく働いていたし
デレもその空気は感じていた。
大変な父親を見て辛そうだなとは思っていた。
でも、それを申し訳ないと思いながらも、
デレは隙を見てモララーと出会っていた。
仕事の合間、護衛としての連絡の際
会っていないときでさえも、モララーのことを考えていた。
そうすることで、お城に抱いていた不安が薄れたのだ。
769
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:04:59 ID:.nLUMdgE0
魔王のこともモララーに話した。
部屋にいると聞えてくる声の話。
最初のうち、デレは魔王が人間には感知できない方法でデレのことを監視しているものだと思っていた。
だから、いつでもデレを逃がさないなどと言えるのだと。
それを、モララーは否定した。
( ・∀・)「魔人といったって、なんでもできるわけではない。
彼らの能力は一つの願い事につき一つです。それは契約した時に決まります」
( ・∀・)「その力は魔人の潜在能力で決まりますし、第一現実に起こりうる現象でなければなりません。
声はまだしも、唐突に人間の命を奪える力があるとは思えない」
( ・∀・)「いつも使っているのがその声の力だというなら
あなたを襲った頭痛や吐き気もその応用なのではないですか?」
770
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/13(金) 21:05:59 ID:.nLUMdgE0
ζ(゚ー゚*ζ「……不思議な力について詳しいんですね」
( ・∀・)「昔親を魔人に襲われましてね。それで奴らについてはいろいろ調べたんです」
( ・∀・)「それに契約相手であるあなたを殺したらもう力が使えなくなりますよね?
そんなデメリットがあるのにあなたを攻撃する意味はありません」
( ・∀・)「それなのに攻撃してきたのは。
ただあなたを脅したいだけだったのではないでしょうか」
ζ(゚ー゚*;ζ「確かに……」
魔王ならばありえる、とデレも納得した。
( ・∀・)「一つ実験をしてみましょう。
魔王の能力の限界を探る実験です。
これから言うとおりにしてください」
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