[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ
652
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:10:03 ID:.J/zgTc.0
( ^ω^)「あ……」
ブーンはほっとする。
見知った顔だったからだ。
なんだ、びっくりしてしまった。
( ^ω^)「どうしたんだお、ジョルジュ」
首を傾げて問いかける。
相手は肩をすくめた。
( ゚∀゚)「いや、なあに。大変かなと思ってさ」
ジョルジュは軽快な足取りでブーンに近づいた。
( ^ω^)「大変?」
言葉が気になったので、ブーンは繰り返した。
653
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:12:10 ID:.J/zgTc.0
( ^ω^)「大変ってどういうことだお?」
( ゚∀゚)「そりゃ、単純に、お仕事がよ」
ジョルジュはそう言って笑う。
なんで笑っているのかわからなかったが、
ジョルジュはいつでもにやけているしそんなものかとブーンは思った。
( ^ω^)「まあ今夜はいろいろあったんだお。
ちょっと大変な面もあったお。
というか、レジスタンスの方はどうなったんだお」
( ゚∀゚)「ああ、ちょっとお前にも言いたいことがあってさ。
大丈夫。あいつらきっと上手く言ってるさ」
( ^ω^)「そうかお?
まあ、そう失敗する人たちじゃなさそうだおね。
あ、言いたいことと言えば僕もあるんだお!」
そう言って、ブーンは自分の手元に目をやる。
日記帳。
( ^ω^)「これをちょっとだけだけど、読んだんだお。
少ししか読んでいないけど……でも……」
654
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:14:02 ID:.J/zgTc.0
日記を持つ手に力が入る。
自分の考えを整理するブーン。
どうしても、この内容だけはちゃんと伝えなくては。
今後の自分の行動に関わる大切なことなんだから。
( ^ω^)「ひょっとしたら僕は、とんでもない間違いを――」
話しながら顔を上げた。
輝いていた目。
それが、急速に光を失う。
目の前に、矢があった。
ジョルジュの構えるクロスボウの矢。
(;^ω^)「…………は?」
思考が追いついていなかった。
655
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:16:01 ID:.J/zgTc.0
どうして自分に敵意が向けられているのかもわからなかった。
(;^ω^)「なんの冗談だお、ジョルジュ」
ブーンはおどけた調子で言う。
ジョルジュがいつものままなら、それにのっかって笑い飛ばしてくれるはず。
だけど、予想していた笑い声は聞こえてこない。
ジョルジュはただ、まっすぐな瞳でブーンを見つめてきていた。
☆ ☆ ☆
656
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:18:03 ID:.J/zgTc.0
国王の部屋
外を強風が吹き付けた。
ガラスが揺れる。
だけど、それは一瞬のこと。
すぐに部屋はもとの静寂に包まれる。
その部屋に突然
高笑いが響き渡った。
ロマネスクの高笑いだ。
彼は剣をくるくるとまわしていた。
その顔には満面の笑み。
不気味な細い目が光る。
( ФωФ)「すまないが、本気を出させてもらった」
ロマネスクの腕が振るわれる。
ルビーの剣が空気を切り裂く。
鋭い音がする。
657
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:20:02 ID:.J/zgTc.0
( ФωФ)「話す暇さえ与えなくてすまなかったな」
ロマネスクはそう言って、鼻を鳴らした。
( ФωФ)「しかし、万が一のことを考えてここを守っていて正解だった。
とんだ賊がいたものだ。こんなところまでご苦労なことよ」
ロマネスクはそう言って、身を捻った。
剣の鞘もまた飾られていたのだ。
その鞘を手に取り、ルビーの剣をおさめようとする。
綺麗な刀身。
それが、するりとおさまる。
( ФωФ)「おっと、まだだ」
そう言って、ロマネスクは腕を突きだした。
( ФωФ)「まだ少し、やらなきゃならないことはある」
そう言って、ロマネスクは歩きだした。
扉の方へ向けて。
☆ ☆ ☆
658
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:22:02 ID:.J/zgTc.0
王女の部屋
( ゚∀゚)「冗談じゃない、割と真剣だぜ?」
ジョルジュはそう言って、クロスボウの持ち手を握りなおす。
片手で引ける小型のクロスボウ。
( ゚∀゚)「ブーン、はっきりさせてくれ。
お前は敵か味方か、どっちなんだってな」
それははっきりとした宣告。
敵か味方か、その二者択一。
659
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:24:03 ID:.J/zgTc.0
どうして、ジョルジュがその質問をするんだろう。
なんで自分が心の中で自問して、結局は封印した内容をこの男が追求してくるんだ。
ブーンは瞳を揺らした。
( ^ω^)「…………何か、疑われるようなことしたかお?」
( ゚∀゚)「林の中でな」
ブーンの背筋が凍る。
それははっきり顔に表れていた。
だからジョルジュも顔をゆがめる。
( ゚∀゚)「心当たりはあるんだな」
(;^ω^)「あ……」
( ゚∀゚)「そうさ。お前があのウサギの耳の女の子と一緒にいたのを俺は見たんだ。
あの子は魔人の子なんだろ?」
660
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:26:06 ID:.J/zgTc.0
( ゚∀゚)「そしてお前はこうも言っていた。
その魔人の敵にはならないってな。
じゃあ、お前の立場は今どうなっているんだろうな」
(;^ω^)「て、敵じゃないお!
もちろんレジスタンスとも。じゃないと協力はしないお!」
ブーンは冷や汗をかきながらも訴えかけた。
その足がすくむ。
( ゚∀゚)「確かに、今日もこうして手伝ってくれているしな。
お前はレジスタンスに敵対するつもりはないんだろ」
ブーンは一旦、息を吐く。
とにかく落ちつこうとした。
まだジョルジュは自分を敵とみなしたわけではない。
クロスボウで狙われているものの、落ち着いて話せば理解してもらえるはず。
661
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:28:05 ID:.J/zgTc.0
(;^ω^)「すごく……微妙な立場なのはわかっているお」
ブーンは最初にそう付け加えた。
(;^ω^)「モララーさんのことを知っていたから、あの人の描いた理想の世界に興味が湧いて
それで君らと協力していたお。それはそれで、確かに楽しかったんだお」
(; ω )「でも、身近に魔人の友達がいることがわかって……
その子からもレジスタンスの活動には協力しないでくれと懇願されていて」
(; ω )「確かに魔人と仲良くすることはレジスタンスの考え方と反してしまうお。
だけど僕は……正直なところ彼女と、ツンとは真っ向から対立できないお。
そこまでして魔人を恨むつもりは無かったんだお。ただ、モララーさんの後を追っかけていただけで」
(; ω )「だから、それでレジスタンスに迷惑がかかるなら
僕はもう君らに近づかないお。協力する資格なんてないんだから……」
ブーンの頭が垂れる。
今まで、レジスタンスと共に活動してきた。
ほんのひと月のこと。
それでもブーンの心には残っている。
662
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:30:09 ID:.J/zgTc.0
だけど、どこまでもその組織についていけるわけじゃない。
特にツンからの告白を受けてからそう強く思うようになった。
いつかは抜けなくちゃならない。
この作戦が終わったら考えようとしていた。
それが、今こうしてジョルジュに問われている。
先延ばしにしてきた結論を言わなければならない。
だから思いのほかすらすらと、ブーンは自分の考えを伸びた。
すでに考えは固まっていたのだろう。
ブーンは自分の発言を客観視した。
それがここまで言えなかったのは
レジスタンスと一緒にいた日々が楽しかったから。
モララーさんが亡くなってから彼らと過ごして、笑うことを取り戻した。
仲間という存在ができた。
自分でも気がつかないうちに、それが大きな支えになっていた。
前を向く力になっていたのである。
663
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:32:03 ID:.J/zgTc.0
それをこうして、自分の手で手放さなきゃならない。
せっかくの支えをまた無くす。
ブーンの腹の底に寂しさがあった。
暗い渦巻のように、全てを掻き乱す。
耐えきろうとして、歯を強く噛んでいた。
目もぎゅっと閉じる。
もし緩めれば、涙が流れてしまいそうだった。
( ゚∀゚)「つまり、敵でも味方でもないってことだな」
ジョルジュの声が耳に届いてくる。
その発言の真意は測りかねた。
中途半端すぎただろうか。
結局味方でないのだからと、自分は射抜かれてしまうのだろうか。
それとも自分の優柔不断を笑い飛ばされるだろうか。
664
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:34:04 ID:.J/zgTc.0
不安がこみあげてくる。
心臓が早鐘を打ち始めた。
苦しい。
自分の考えを述べることはこんなに辛かったんだ。
久しく忘れていた恐怖心がよみがえってくる。
どうかこの時間をすぐに終わらせてくれ。
頭の中で、そう念じた。
誰に対してでもなく。
やがて、何かのこすれる音がした。
それを引き金にして、ふっと目が開く。
665
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:36:01 ID:.J/zgTc.0
( ^ω^)「……?」
まだ撃たれてはいない。
恐る恐る、顔を上げる。
( ゚∀゚)「そう言うと思ったさ」
ジョルジュが武器を降ろしていた。
顔にはいつものような、不敵な笑み。
( ^ω^)「……え?」
クエスチョンマークが浮かんでくる。
( ゚∀゚)「あの林の中で、俺は二つの可能性を考えた」
ジョルジュが愉快そうに話し始めた。
666
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:38:05 ID:.J/zgTc.0
指を一本突き立てる。
( ゚∀゚)「お前が魔人と通じて俺らの邪魔をする可能性が一つ。
もしこれだったら、ここまで来る間にお前に対してこれを撃っていた。
少しでも怪しいことをすれば、な」
( ゚∀゚)「睨みは効かせていたけど、結局何も起きなかったし安心したぜ」
ジョルジュはそう言って歯を出し、にやりとする。
腕はすっかりだらけていて、後頭部を抑えている。
そして、二本目の指が突き立てられた。
( ゚∀゚)「もう一つは、お前が単純に板挟み状態な可能性。
もしこれならお前は悩んでいるんだろうなって思っていた。
俺たちも、そのツンっていう女の子のことも裏切れない性格だろうしな」
「え」と、思わずブーンの口から声が漏れる。
(;^ω^)「じゃあ何かお。
ここに来た時点で僕は君らの敵にはならないってわかっていたのかお?」
667
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:40:04 ID:.J/zgTc.0
( ゚∀゚)「確率はだいぶ低いと思っていたよ」
(;^ω^)「じゃ、なんでそんな物騒なもん僕に向けたんだお!?」
( ゚∀゚)「だってお前、これくらいしないと自分の考えなんか言わないじゃん。
それに他のレジスタンスの仲間がいた場合も、きっとみんなに気を使って本音を隠すだろうし」
ブーンは口をポカンと開けた。
(;^ω^)「え……ええ、えええ??」
目を瞬いて、頭を抑える。
(;^ω^)「僕はどれだけ気弱に思われているんだお……」
( ゚∀゚)「ま、敵でないってはっきりするのはいいことさ。
そして俺も、お前の敵にはならん」
ジョルジュのあっけらかんとした発言を耳にして、ブーンは小首を傾げた。
668
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:42:04 ID:.J/zgTc.0
( ^ω^)「いいのかお?
僕はレジスタンスには協力できないってはっきり言っちゃったけど」
( ゚∀゚)「ああ、でも個人としては別さ。
お前はモララーさんも認めた奴なんだし、俺だって気にいってる。
きっと将来的に何かでかいことをしでかすと期待しているんだ」
期待、と聞いてつい萎縮してしまった。
(;^ω^)「うう……そうかお?」
( ゚∀゚)「ああ。だから困ったことがあったら言ってくれ。
きっと役に立つはずさ」
ジョルジュが手を伸ばしてくる。
握手。
669
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:44:04 ID:.J/zgTc.0
ブーンは溜息をついた。
腹の底の渦巻が消えていく。
平和な凪いだ海。
( ^ω^)「ありがとうだお、ジョルジュ」
手を握るブーン。
それを見て、ジョルジュは小さく頷き、それから言葉をつづけた。
( ゚∀゚)「それに、俺もそろそろレジスタンスを離れようと思っていたころなんだ」
唐突な発言だった。
手を離して、ブーンは目を見開く。
(;^ω^)「なんでだお?」
( ゚∀゚)「そろそろ国に帰らなきゃいけないみたいなんだよね」
670
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:46:04 ID:.J/zgTc.0
ジョルジュはちらりと窓の外を見た。
城下町の方。
なんでそちらを見たのだろう?
( ^ω^)「テーベ国にかお……それは残n――」
言葉が途切れてしまったのは、気配を感じたからだ。
音が聞えてくる。
ばたばたとした音。
(;^ω^)「誰かここにくるみたいだお!」
(;゚∀゚)「え、まじで?」
もしかして王女が帰ってきたのだろうか。
それとも別の警備の、魔人や衛兵だろうか。
どちらにしろ今この場でジョルジュを見つけられてしまうのはまずい。
(;^ω^)「ジョルジュ、窓だお窓!
脱出できるロープがあるんだお!」
671
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:48:03 ID:.J/zgTc.0
急いで彼を促す。
二人は窓辺へ移動する。
ロープは相変わらずだらりと階下のバルコニーに垂れさがっていた。
( ^ω^)「これを使って下へ逃げて、隙を見て逃げてくれお」
( ゚∀゚)「おおう、結構難易度高そうだな」
ジョルジュはそうぼやく。
しかしその顔は笑っている。
彼はそういう人なんだとブーンは思う。
楽しいこと、興味があることをする、そうしているうちは目いっぱい笑う。
自分を助けてくれるのも興味があるからだ。何かをしてくれるという期待。
そうして偏見もなく、立場も推してまっすぐに意見を聞いてくれる。
寄宿舎で会ったときとは全然違う。
よほどモララーさんに絞られたんだろうなと思い、ブーンはくすりと笑った。
672
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:50:08 ID:.J/zgTc.0
( ゚∀゚)「何笑ってんだよ」
(;^ω^)「お、お前に言われたくないお!」
言い返そうとするジョルジュだったが、部屋の扉がものすごい勢いで叩かれたために中断する。
( ゚∀゚)「じゃ、いくわ。
もしテーベに行く機会があったらこれを持っていきな」
ジョルジュは胸ポケットから一枚の紙切れを出し、ブーンに渡した。
それは何かと追求する前に、とっととジョルジュは降りてしまう。
いつも通りの勝手な奴。
しかたなしに、紙をポケットにしまい込む。
「おい、ブーン! いるんだな!」
扉の向こう側から声がする。
673
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:52:14 ID:.J/zgTc.0
聞いたことのない声。きっとお城を警備していた衛兵だ。
とにかく急いで対応しようと思い、ブーンは近づく。
「お前に聞きたいことがある。王女のことだ」
ドアのノブに手をかける直前、そう言われた。
ブーンの手が止まる。
王女はどこへいったのか。
何かあったのだろうか。
嫌な汗が流れる。
674
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:54:04 ID:.J/zgTc.0
(;^ω^)「い、今開けますお!」
慌ててそう言い、ノブを捻る。
それが王女の部屋で起こったお話。
☆ ☆ ☆
675
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:56:22 ID:.J/zgTc.0
('A`)「…………」
ドクオは黙っていた。
ロマネスクを見据える。
後ろのヒートにしていたって同じことだ。
彼らの目は、ロマネスクの突きだした手に集中している。
そこには、スケッチブックが握られていた。
素朴な読みやすい字が見える。
頭の中で、何度もその文章を読んでいた。
その通りにしていた。
だから、黙っているのである。
それは、次の文章だった。
676
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 22:58:03 ID:.J/zgTc.0
『 無駄話をするな!
全部聞かれているぞ! 』
.
677
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:00:13 ID:.J/zgTc.0
( ФωФ)「すまないが、長くなってしまうだろうな。
そもそも君らのことも知らないし、少し場所を移してゆっくり話そうではないか」
('A`)「……俺らを殺そうとする可能性は」
( ФωФ)「ない……とは言い切れないな。
ただ、よほどのことが無い限り私はお前たちに危害は加えんよ。
何分複雑な事情を抱えているのでな」
('A`)「じゃあ、一つだけ先に教えてくれ。
あんたはその剣をどうして手に入れようとしていたんだ?」
ドクオの指先が、ルビーの剣に伸びていく。
今もまだロマネスクの手中にある。
( ФωФ)「ああこれか。大したことではない。
王女がどうしても傍に置いておきたいと言っていたんだ。
あの……モララー殿の形見をな」
懐かしそうに目を細めるロマネスク。
その目に敵意が無いことは、ドクオたちの目にも明らかであった。
それが国王の部屋で起きたお話。
☆ ☆ ☆
678
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:02:10 ID:.J/zgTc.0
7時50分頃
ラスティア城敷地内
南にある大木の裏
彼女がここにいう理由を簡単に説明する必要がある。
まず、彼女は落とし穴にはまった。
落下に身を任せ、自らの発明品でその衝撃を受け流しているうちに
気がついたらお城の外へと吐きだされてしまっていたのである。
そのまま、しばらくは身を潜めていた。
すぐに助けはくるかなとタカをくくっていた。
しかし、いくら待っても誰もこない。
てっきりジョルジュあたりが駆り出されてくると思ったのに、薄情な奴らだと彼女は思った。
とはいえ、愚痴っている場合でもない。
下手にうろついていたら衛兵に見つかってしょっ引かれてしまう。
彼女にできることは、外で仲間が出てくるのを待つことだけだ。
679
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:04:03 ID:.J/zgTc.0
そのため、静かに大木の裏で息を潜めていた。
そこは茂みが近く、いざとなれば隠れられる。
門からも近い。仲間が助けに来なければ、寝ぼけている衛兵を吹きとばしてでも脱出しよう。
心の中で算段を決めていた頃
lw;´- _-ノv「……なんだ、あれは」
彼女が見たのは、人影。
お城の前をこそこそと歩いている。
その人の衣服がドレスなので、シュールはもしやと思った。
あれは王女なのではないか。
興味が湧いた。
なんで王女が自分の住んでいるお城でこそこそするのだろう。
680
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:06:02 ID:.J/zgTc.0
あとはその好奇心に従った。
彼女は小屋が立ち並ぶ場所へと向かっていった。
シュールもそれの後を追う。見つからないように気をつけながら。
必要以上に近づくわけにはいかない。
だからやや遠いところから見ているしかない。
くぐもった声だけ聞えていた。
王女が何事かを話しているのか。
いったい誰と話しているんだろう。
先程の魔人だろうか。
lw´‐ _‐ノv「……!!」
尖った叫びを聞いた。
恐ろしい声。
lw;´‐ _‐ノv「…………え?」
彼女の顔が強張る。
お城から、植えこみから、あらゆる場所に人影が現れたのが見えた。
681
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:08:04 ID:.J/zgTc.0
それも、いつの間にか。
一人、二人、どんどん増えていく。
しかもそのほとんど全てに耳がついていた。
それはどう見ても魔人だった。
王女の下に寄ってきているのか。
lw;´‐ _‐ノv「これは……まずいな」
そう呟き、振り返る。
間に合わなくなる前に逃げなくては。
だけど、その目の先で真っ赤な目の輝きがいくつも光っていた。
lw;´‐ _‐ノv「ああ……あうとー」
ふらふらした声が伸びていく。
682
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:10:03 ID:.J/zgTc.0
このお城には、すでに安全な場所は無かったんだな。
そう悟って、力なく微笑んだ。
新嘗祭の花火の音がする。
祭は盛況のようだ。
その祭が
ラスティア国の最後の祭事となった。
683
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:12:05 ID:.J/zgTc.0
―― 第五話 新嘗祭とラスティア城 おわり ――
―― 第六話 王女デレと勇者モララー へ続く ――
.
684
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:16:29 ID:.J/zgTc.0
―― コラム⑤ 世界地図 ――
うpロダお借りしました。
ちゃんとできているでしょうか。
ttp://u3.getuploader.com/boonnews/download/49/%E5%84%AA%E3%81%97%E3%81%84%E8%A1%9B%E5%85%B5%E3%81%A8%E5%86%B7%E3%81%9F%E3%81%84%E7%8E%8B%E5%A5%B3.jpg
絵などは描けませぬ。
場所も特別に想定はしていません。
685
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/06(金) 23:18:30 ID:.J/zgTc.0
はい。
今日の投下は以上です。
次回はいわば謎解き回です。
城下町でのお話も、次回でおしまい。
最初のうちはAA乱れてすいません。
それでは。
686
:
名も無きAAのようです
:2013/09/06(金) 23:18:53 ID:yDbP2bLY0
状況が一気に動いて衝撃の嵐だよおい面白いよおつ
地図ちゃんと見れた。樹海に走っている人がいるんですがそれは
687
:
名も無きAAのようです
:2013/09/07(土) 00:31:16 ID:1CmE/4U2O
さすがに次は少し待つ覚悟は出来てるんだからね
688
:
名も無きAAのようです
:2013/09/07(土) 02:39:17 ID:vNH/BBHE0
おつ
689
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/10(火) 00:00:21 ID:bamZPyCA0
―― 予告 ――
.
690
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/10(火) 00:01:41 ID:bamZPyCA0
305年 11月17日
私はこの声の主を、『魔王』と呼ぶことにしました。
.
691
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/10(火) 00:03:33 ID:bamZPyCA0
―― 第六話 ――
―― 王女デレと勇者モララー ――
12日木曜日9時から前半
13日金曜日9時から後半を投下します。
692
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 00:30:51 ID:wugBzvVg0
どんなペースよ
693
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 00:52:26 ID:xUcAIp96O
ホントにペース早いな
694
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 04:38:07 ID:cvczrJEU0
あああああああああどんどん気になる
695
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 10:13:22 ID:tabyqJ3c0
無理しないでくれよ
と言いつつすごく楽しみにしてる
696
:
名も無きAAのようです
:2013/09/10(火) 20:41:07 ID:Cf7eUUhA0
ペース早くて読むのが追いつかないからまとめて読むの楽しみ
697
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 20:59:19 ID:eEgCKf9U0
そろそろ投下ですね。
698
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:00:34 ID:eEgCKf9U0
( ^ω^)「…………」
( ^ω^)「酷い目にあったお」
( ^ω^)「しばらく出られそうにないおね」
( ^ω^)「…………持ち物はあるお」
( ^ω^)「王女の日記も。しかし分厚いお」
( ^ω^)「暇だから最初から読むお」
☆ ☆ ☆
699
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:01:31 ID:eEgCKf9U0
304年 12月10日
今日は私の12歳の誕生日です。たまにはいいことがあるものです。
何か新しいことを始めようと思ったので、日記をつけることにしました。
毎日書くのは大変そうでも、頑張って出来事を記していきたいと思います。
今日、誕生日プレゼントということで白馬を頂きました。
とっても大きなマルティア国の国王様が私にくださったんだそうです。
私に白馬を見せるとき、父は苦笑いをしていました。
きっと父は、本当はあんまり他の国と関わりたくないと思っているのです。
母が亡くなったときからずっとそう。
でも大きな国からの、そういう良いものは受け取らないと後で嫌な顔をされてしまいます。
だから受け取らなきゃならない。そんな複雑な意味合いがあの苦笑いには含まれていたのだと思います。
父はむすっとしていて、いつも何かを抱え込んでいる人なので
これからもあの白馬に乗せたりして、楽しませてあげられればいいな。
そうしたら、いつか私もこのお城の外に出ることができるのかな。
出たいなあ。
700
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:02:46 ID:eEgCKf9U0
305年 1月1日
新しい年が始まりました。
お城の中でお祝いがありました。町の人たちを呼んでのです。
相変わらず父は私を外に出そうとしてくれません。
どうしてあんなに強情なのでしょうか。
出たいといくらいっても、危ないからとしかいいません。
父は私をそんなに弱い存在だと思っているのでしょうか。
私には父がよくわからないです。
・
・
・
305年 1月13日
今日は衛兵見習いの中でも成績優秀な方々とお会いしてきました。
遅めの新年会のようなものです。
彼らからしてみたら、私に会えることは光栄なことらしいです。
それは私があまり皆さんの前に顔を出さないからでしょうか。
ただ外に出られないものだから悔しくて
外にいらっしゃる皆さんとはお会いしにくいだけなのに
なんだか勝手な話だなと思いました。
でも一人カッコいい人がいたな……
701
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:03:27 ID:eEgCKf9U0
・
・
・
305年 4月16日
父はやっぱり嫌いです。
私は鳥籠の中の鳥なのでしょう。
・
・
・
305年7月24日
変わり映えのしない毎日です。
・
・
・
305年 8月15日
毎日、誰かが私に手を差し伸べてくれないかと考えています。
そんな方が現れれば、喜んでついていきますのに。
702
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:04:26 ID:eEgCKf9U0
305年 9月23日
声が聞えました。
どうやら魔人らしいのです。
私を出してくれるために、父とお話をすると言っていました。
あのお方が父を変えてくれるのでしょうか。
もしそうでしたら、私は本当にうれしくて……
☆ ☆ ☆
703
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:05:25 ID:eEgCKf9U0
|
第
六
話
|
―― 王女デレと勇者モララー ――
.
704
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:06:25 ID:eEgCKf9U0
305年 9月25日
(´・ω・`)「魔人をお城の中に招き入れようと思うんだ」
夜の会食のときに、ショボンは突然口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「え? どうして?」
(´・ω・`)「うん。ちょっと、気が変わってね」
フォークをいじりながら、ショボンは顔をあげてデレを向いた。
(´・ω・`)「魔人は不確かな面が多くて、私も今まで避けていた。
私が国王になってからすでに十数年、ずっと。妻が亡くなってからはなおさらだ」
(´・ω・`)「だから、このお城と城下町はなるべく魔人から遠ざけた。
距離がある町や村だと魔人を使っているらしいが、それは大目に見た。
少なくとも私の目の届く範囲では避けたんだ。彼らを元々の居住区である森に籠らせておいてね」
(´・ω・`)「だけど彼らが有用なのは事実だ。
私情で彼らを避けていれば、いずれこの国は他国よりも後進国になってしまう。
そんなことになってしまっては国民を守れない」
705
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:07:25 ID:eEgCKf9U0
(´・ω・`)「だから、そろそろ意識を変えなきゃいけないと思ったんだ。
魔人を受け入れて、一緒に働き、平和な国を築く」
(´・ω・`)「それが理想だと先日気付いたんだ。
長々話してすまなかったね。大丈夫かい?」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、もちろん」
デレは大きく頷いた。
ζ(゚ー゚*ζ「とても素敵な考え方だと思います」
言いながら、内心では昨日聞いた声のことを思い出していた。
きっとあの魔人さんが上手く交渉したんだ、国王相手にそんなことできるなんてすごいなあ、と
純粋な気持ちで、デレは心の中で声の魔人を称えていた。
(´・ω・`)「……そうだ、来週ちょっと外へ出てみないか」
ζ(゚ー゚*ζ「え!?」
706
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:08:25 ID:eEgCKf9U0
いきなりの提案に、デレは思わず大きな声を出してしまった。
手を口で覆うデレを見ながら、ショボンが微笑む。
(´・ω・`)「外交しようと思って、急いで手紙を送ったんだ。
前々から交渉しようと言ってきていた国でね。
先程言ったように後進国にならないためにも、これからは積極的に外交していきたいんだ」
(´・ω・`)「それで、そのついでになるけど
デレも一緒に来てくれるかな、と思ったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「行きます!」
デレは二つ返事する。
ζ(゚ー゚*ζ「行きますわ! お父様。ああ、本当に、嬉しい……」
口を両手で押さえながら、デレが感嘆を漏らす。
油断すれば涙がこぼれそうになる。
さすがにそこまでしたらショボンを驚かせてしまうので、なんとか堪えていた。
それにしても、こうまでして自分の願いを叶えてしまうとは
あの声の魔人は本当にすごい魔人だったのだな、とデレは再びの賛辞を送った。
707
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:09:25 ID:eEgCKf9U0
その日の晩
ζ(゚ー゚*ζ「魔人さん、いらっしゃる?」
自分の部屋で魔人に話しかけた。
相手は姿が見えないので、話すときは厄介なのだが
部屋で声をかければ返事をしてくれた。
「……なんだい?」
やや遅れた返答。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたにとっても感謝しているの!」
デレは諸手を挙げて喜びを表した。
声の反応はない。
仕方なく口で説明する。
ζ(゚ー゚*ζ「お父様が魔人をここに受け入れるって。
それと、私も外交に連れて行ってもらえることになったのよ!」
「ああ、すごいじゃないか!」
魔人もまた嬉しそうに言う。
その日は魔人に対して、デレはひたすらに、いかに自分が嬉しいかを説明して聞かせていた。
708
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:10:25 ID:eEgCKf9U0
10月1日
デレはマルティア国にいた。
マルティア国の差し向けた鳥型魔人の牽く飛行船に乗ってである。
ショボンの説明により、マルティアが魔人受入れの先進国であるということをデレも知っていた。
今回はその先進国に、魔人受入れについてのアドバイス等を求めに来たのだそうだ。
ただし、デレは話し合いの中心には参加せず
マルティアの従者たちに連れられてお城の周囲を回っていた。
ラスティアの北にあり、さらに山の上にあるマルティア。
10月にしてすでに肌寒く、山の上には雪が張っていた。
国の北東に一際巨大な山脈が見えた。
300年前に魔人が初めて現れたと言われている場所だ。
その荘厳な峰も、上部が雪をかぶっている。
ζ(゚ー゚*ζ「綺麗……」
壮大な光景に、ただただデレは感動していた。
709
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:11:25 ID:eEgCKf9U0
10月2日
ラスティア城から手紙が届いた。
プレゼントとしてマルティアからもらいうけた白馬の容態が悪い、との知らせた。
ζ(゚ー゚*;ζ「お父様、大変!」
手紙を持ってデレは急いで父のもとへ急いだ。
デレは父に泣きつき、帰国したいと懇願した。
あの白馬は、お城に閉じ込められているデレにとって、唯一純粋に接することができる存在であった。
唯一の友達とも言える。
だからこそ、白馬の具合が悪くなったことにデレは心を痛めたのである。
本当なら上手くはいかない懇願だろう。
しかし、交渉相手がその白馬の送り主であるマルティア国王であったため
特別に許しをもらえた。
デレとショボンは自国へと急いだ。
交渉はまた後日、ということになった。
710
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:12:26 ID:eEgCKf9U0
夜にはラスティア城に辿りついた。
デレは白馬の元へ駆けつける。
その小屋の中でぐったりしているその姿を見て、息をのんだ。
それから、その首筋に抱きついた。
(√;゚ー゚)「王女様、あまり近寄られては……」
デレのいない代わりに白馬の世話をしていた衛兵たちが止めようとする。
(√;゚ー゚)「もしも何かの病気ならば、感染する危険もあります」
そう言われても、デレは必死に首を横に振った。
ζ(゚ー゚*;ζ「一緒にいたいの! お願い!」
(√;゚ー゚)「しかし……」
711
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:13:26 ID:eEgCKf9U0
衛兵の返答は尻すぼみになる。
大きな音に遮られた。
白馬が一声、嘶いたからだ。
首を持ち上げて反らす白馬。
それからデレに視線を向ける、
ζ(゚ー゚*ζ「……元気になったの?」
まるで人の言葉がわかるかのように、馬はまたひとつ嘶く。
デレは笑って、一層強くその背中に身を寄せた。
獣医が来てから診察したものの、病気の兆候はみられず
どうもデレがいなくて寂しいだけだった、と結論を下した。
その日からデレは、もし外交に行くとなれば
必ずその白馬を伴っていこうと誓ったのだった。
712
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:14:30 ID:eEgCKf9U0
10月15日
朝起きてすぐに、ショックを受けた。
ζ(゚ー゚*;ζ「え、やめるのですか?」
彼女の専属だったメイドが今月いっぱいで辞めることになっていた。
そのときはしかたなく、その老齢のメイドにねぎらいの言葉をかけるしかなかった。
しかし、徐々にデレは異変に気付き始めた。
お城を試しに数分歩いてみた。
人とは会う。貴族を含め、お城で働く人々の姿。
元々そこまで交流はしていなかった。
向こうとしても、王女と気軽に遊んだりするわけにはいかなかったのだろう。
だけど、ぱっと見ても、お城の大半の人が入れ替わっていることがわかった。
デレは嫌な予感がしたので、急いで父の所へ急いだ。
713
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:15:26 ID:eEgCKf9U0
(´・ω・`)「なんだいデレ。今忙しいんだよ」
素っ気ない態度でかわされてしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「そうなの……そんなに大変?」
(´・ω・`)「ああ、人事面でいろいろ忙しくてね」
ζ(゚ー゚*ζ「そのことで少し話したいことが」
(´・ω・`)「悪いが、人事については僕にまかせてくれ」
あまりにもきっぱりと断られ、デレも口をつぐんでしまう。
父が何を考えているのかわからなくない。
一時は良くなったと思ったのに。
以前抱いていた苛立ちを、デレはこの頃からまた抱き始めた。
714
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:16:25 ID:eEgCKf9U0
10月26日
|゚ノ ^∀^)「デレちゃんこんにちは〜」
ショボンの従妹、レモナが子どもを連れてきた。
彼女のように、お城に入ってくる貴族は近頃増えていた。
ショボンの気が変わったところに付け込んだのだろうとデレは推測した。
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、レモナさんこんにちは」
|゚ノ ^∀^)「ずっと昔に会ったのよ? 覚えてるかしら」
ζ(゚ー゚*ζ「微かには……」
|゚ノ ^∀^)「私の息子とも一緒に遊んだりして、ああ懐かしいわあ」
その時はたまたま、彼女の息子であるヒッキーとは会わなかった。
715
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:17:24 ID:eEgCKf9U0
|゚ノ ^∀^)「ショボンちゃん、お城の手伝いならしてあげるからね」
(´・ω・`)「ああ、レモナは文章が得意なんだっけ」
|゚ノ ^∀^)「ええ、任せて!」
そういって、彼女は強く腕を握る。
とても明るい人だと、傍から見ていたデレも思った。
でも、どうせこのお城の居心地がいいからきただけの人なんだ。
他の人と同じように。
そう思うと、どうしても素直に接することができなくなった。
716
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:18:27 ID:eEgCKf9U0
11月1日
ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは! あたらしいメイドです! ミセリといいます!」
王女の部屋にやたらと黄色い声を出す女性がやってきた。
どうも新しい専属のメイドとして連れてこられたらしい。
確かに、ひそかに次は自分と近い年齢のメイドがいいなとぼやいたこともある。
でもまさかこんなに若そうな人がくるとは。
デレは困惑しつつも、ミセリと握手を交わした。
ミセ*゚ー゚)リ「頑張りますので!」
にっこりと笑う彼女を見て、デレもまた微笑んだ。
ここ最近少しだけ不安があったので、
その朗らかなメイドの存在はデレにとってありがたいものだった。
717
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:19:29 ID:eEgCKf9U0
11月9日
久しぶりにショボンが王女の部屋の扉を叩いた。
デレが招き入れると、見たことのある衛兵が入ってきた。
( ФωФ)「衛兵隊長のロマネスクです」
猫目の男性は深々と頭を下げた。
人間にしては鋭すぎる目に、デレは若干たじろいだ。
(´・ω・`)「デレ、彼を君の護衛役にしたいんだ。
今後、外交が増えると危険も増す。そんなときは誰かに守ってもらわなきゃならない」
( ФωФ)「私からも頼れる人に呼びかけます」
ロマネスクはそう言って胸を叩いた。
( ФωФ)「衛兵見習いにもなかなか骨のある奴がいますゆえ、必ずお役に立ちましょうぞ」
衛兵見習い。
ふっと思い浮かんだのは、あの新年会で出会った若い男性だった。
718
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:20:26 ID:eEgCKf9U0
11月15日
この日は夜が騒がしかった。
お城に働きに来た魔人の中に悪い魔人がいたらしい。
そんな風の噂が流れてきた。
ζ(゚ー゚*ζ「悪い魔人……」
不穏な気持ちが湧きあがった。
このお城はどんどん魔人を受け入れている。
その魔人が全員良い人とは限らない。
ひょっとしたら人間のことを見下している魔人だっているかもしれない。
そういう人が現れるのは、とっても怖いことだ。
なかなか寝付けずに、その怖さばかりを考えていた。
719
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:21:26 ID:eEgCKf9U0
11月16日
ζ(゚ー゚*ζ「昨日の魔人はどうなりましたの?」
朝目覚めて、ミセリと出会いがしらにそう質問した。
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、お城にいた悪い魔人っていう」
ミセ*゚ー゚)リ「なんのことですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「……え?」
その後、お城中の人々に聞いて回った。
昨日の魔人はどうなったのか。
ミセリだけが知らない、という可能性だってある。
でも、誰一人としてまともに答えを教えてくれる者はいなかった。
720
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:22:29 ID:eEgCKf9U0
教育係にその話をして、こっぴどく怒られたのち
デレはようやく自分の不安が正しいことを悟った。
魔人の噂をもみけしてしまうなんて。
それほど魔人を守ろうとする人が多いのだろうか。
きっと、同じ魔人は守ろうとするのだろう。
じゃあ、人間に話を聞いてみないと。
あれ
誰が人間なんだっけ。
721
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:23:26 ID:eEgCKf9U0
11月17日
お城中を駆け回った。
この前よりもはるかに真剣に。
たったひと月しかたっていない。
それなのに、もうお城の中は様変わりしていた。
ζ(゚ー゚*;ζ「なんで……みんな代わっているの」
かつて働いていた人たちの姿が見えない。
この数日でそんなにも激しい人事があったのか。
どうしてそんなことを。
少しずつ、人間だけが狙い撃ちされて、追い出されていたのか。
722
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:24:30 ID:eEgCKf9U0
ミセ*゚ー゚)リ「王女様!」
ミセリの声が聞えても、デレは部屋の扉を開けようとしなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「どうして開けてくれないのですか!」
ζ(゚ー゚*;ζ「一人にしてちょうだい!」
ドアノブの握りしめて、叫ぶように懇願した。
ミセリも最初のうちは扉を必死に叩いていた。
困ります、出てきてください、御病気ですか。お悩みですか。
やがて、その声も静まっていった。
ミセリはどこかへ向かったようだ。
ほっとして、デレは扉の前でしゃがみこむ。
723
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:25:27 ID:eEgCKf9U0
「どうしたんだい?」
その声を聞いたのは久しぶりだった。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは……」
724
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:26:26 ID:eEgCKf9U0
「ずいぶん荒れているようだけど」
内容だけ見れば心配してくれているようだった。
でも、その声の軽さはどうやっても拭いきれていなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……お父様に何を言ったの?」
相手の姿が見えないので、しかたなく天井を睨んだ。
「お城で魔人が働けるように。最初にもいったじゃないか」
ζ(゚ー゚*;ζ「でも、まさかみんなが入れ替わっちゃうなんて」
そこで、甲高い笑い声が響いた。
「そうだよ、ようやく気付いたんだね」
嬉しそうな口元が目に浮かぶようであった。
「でも僕は嘘をついていないよ。
何人働かせるかなんて言ってないもの」
725
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:27:25 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「お父様がこの話をしたがらないの」
笑い声を無視して、デレは続ける。
ζ(゚ー゚*;ζ「いったい何を吹き込んだの」
「そんなことお前に教える義理はないよ」
ζ(゚ー゚#ζ「どうしてよ!」
思わず声を荒げる。
「僕らは契約以上のことはしないんだ。
まあ、個人の考え方次第だけど。とりあえず僕はそのルールに従ってるよね」
ζ(゚ー゚#ζ「ルールって……」
「でも……そうだな。言った方が面白いかもしれない」
声は小さく、「なるほど」とか、「うん」とか呟いていた。
726
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:28:24 ID:eEgCKf9U0
「じゃあ特別にルール違反して、教えてあげるよ」
愉快そうに、声は言う。
「とはいっても、簡単なことだけどね。
僕がいつでも娘の傍にいるって、言っただけ。
それでもし僕の要求を拒んだら……後はわかるでしょ?」
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、あなたは……」
恐ろしい考えが、頭の中で渦巻きだした。
ζ(゚ー゚*;ζ「まさか私を人質にして、こんなことを」
「非常に俗っぽい言い方で気に食わないけど、うん、そういうことだよ。
君の命なんて簡単に奪えるからね。
契約している以上、僕は君の居場所がわかるから」
デレは息を吐いて、胸を手で押さえた。
心臓の拍動が伝わってくる。
なんとかしてそれを抑え込もうとする。
この魔人は自分を煽ってくる。
これにのせられちゃだめだ。
727
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:29:25 ID:eEgCKf9U0
落ちついてから、デレは話し始めた。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたは私の願い事を利用したんですね」
「酷い言い方だなあ」
声が茶化してくる。
ζ(゚ー゚*ζ「お城に侵入するために」
「あのさ、君だって僕を利用して外に出ようとしたんだ。
他の魔人は何もしないけど、願い事に対価を求めたっていいだろ?
むしろそれが自然なことじゃないか」
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、契約を破棄します」
魔人との契約は破棄すれば無くなる。
そうすれば、魔人はもう願い事をかなえる義務もなくなる。
そう考えて、提案した。
答えはない。
何も音のない時間が流れる。
728
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:30:26 ID:eEgCKf9U0
最初に、鼻で笑う音がした。
明らかに、あの声の主のもの。
それから、弾けるような笑い声。
これまで聞いたどの甲高い声よりも耳障りなものが、デレの頭の中で暴れまわった。
思わず耳を抑える。
いくらか音は和らいだ。
それでも音量が大きすぎるのか、消しきれない。
ζ(゚ー゚#ζ「なんなんですか!」
必死で喉を震わせた。
ζ(゚ー゚#ζ「何がおかしいんですか! 言って御覧なさいよ!」
「やあ、ごめんごめん」
息切れをしながら、声が謝ってくる。
729
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:31:25 ID:eEgCKf9U0
「あまりにも世間知らずなんだなと思ってさ」
ζ(゚ー゚#ζ「……」
歯を噛みしめて、言い返したくなるのを堪えていた。
「契約を破棄するためには、僕の頭に触れていなくちゃならないんだよ」
声が淡々と述べる。
デレはそれを聞いて、唖然とする。
ζ(゚ー゚*;ζ「そんな……私はあなたが誰なのかも知らないのに」
力が抜け、目の前がぼやけてくる。
それが涙だと気付いて、デレは急いで顔を手で覆った。
こんな姿、絶対に見せたくない。
そう思ったから。
730
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:32:25 ID:eEgCKf9U0
でもどうしたらいいんだろう。
デレは必死に思考を巡らせた。
姿の見えない相手との契約を破棄するなんて。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ」
そこでふと、気付いたことがあった。
首を上げて、口を開く。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、じゃあ契約するときは?」
湧いてきた疑問。
それと同時に見えてくる希望。
ζ(゚ー゚*ζ「あなた、本当に私と契約したの?」
契約しなければ不思議な力は使えない。
それなのに、この魔人は不思議な力を使って自分に話しかけてきていた。
ζ(゚ー゚*ζ「もしそうなら、どうしてあなたは最初からその力を使えたの?」
731
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:33:25 ID:eEgCKf9U0
言葉が次々と出てくる。
自分の予測に乗っかって、質問を浴びせかける。
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、答えてみてよ!」
もしまだ契約していないとしたら
自分は声から逃げることができるんじゃないか。
「いや」
含み笑いもなく、声が言う。
思えばこの魔人の真剣な声を初めて聞いた。
「君とはちゃんと契約しているよ。
でも、そうだね。もっと正確に言えば、あの部屋のときに君と契約したんじゃないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……え?」
732
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:34:26 ID:eEgCKf9U0
「僕は君と、もっと前に会っていたんだよ」
「一度、強い願いを持って魔人と触れればいいんだ。それが契約成立の方法。
君はずっと外に出たいと思っていたんでしょ? だから、僕に触れたときにちゃんと契約した」
「そこからずっと君のことを見ていたんだけど、なかなか本心がわからなくてね。
この前部屋で呟いたのを聞いて、ようやく外に出たいんだってことがはっきりとわかった」
「だから僕は出てきたんだ。この力を使って」
希望が消え、新しい疑問に変わる。
すでに会っていた?
いったいいつ?
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、あなたなんて知らない!」
首を思いっきり左右に振る。
この声を断ち切りたくて。
733
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:35:25 ID:eEgCKf9U0
再び天井を睨みつける。
さっきよりもずっと強い目で。
ζ(゚ー゚*;ζ「そ、そうよ、どうせそれもはったりなんでしょ!」
興奮を抑えきれず、声色にありありと乗せる。
ζ(゚ー゚*;ζ「どうせ私を殺せるっていうのもはったりでしょう!
そうやって言っておけば父を脅せるから、だからあなたは――」
言葉は続かなかった。
不意に心臓が跳ね上がり、動作を中断せざるを得なくなった。
呼吸ができない。
理由はわからなかった。
口元を抑えて、デレはその場に膝をついた。
なおも気持ちの悪い感触が、腹の底から湧き出てくる。
苦しくて目も開けていられない。
734
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:36:24 ID:eEgCKf9U0
「わかった?」
声がする。
同時に、胸への圧迫感が消えた。
ウソみたいに苦しみも無くなる。
舌を出して、なんとか呼吸を整えようとした。
答えられる状況じゃない。
胸の鼓動はいまだ速い。
あのまま苦しみが続けば、どうなっていたことか。
わからない。だからこそ恐ろしかった。
「というわけで僕は君を殺せるのです」
嫌に勝ち誇った声が聞えてくる。
735
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:37:24 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「……私に、こんなことするなんて……」
歯を食いしばって吐き気を我慢する。
なんとか絞り出した言葉。
ζ(゚ー゚*;ζ「こんなこと、絶対許さないから」
心臓が落ち着いてくる。
意識して深呼吸をして、言葉を重ねていく。
ζ(゚ー゚#ζ「私はこの国の王女なのよ。
こんな悪いこと、いずれは誰かに見つかって、あなたは」
「君らが本当に、王や王女だって言えるのかな」
声もまた、言い返してくる。
「言っておくけど、僕はそのうち国王だって簡単に殺せるようになるよ。
そうなれば君らは完全に僕の手のひらの上。
そんな状況で果たして君らは王族と呼べるのかな」
736
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:38:24 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「…………」
答えられなかった。
でも、決して彼女は諦めたわけではなかった。
その目の光はまだ失われていなかった。
ζ(゚ー゚*;ζ「見てなさい」
静かにそう告げる。
もう声は何も言ってこなかった。
笑い声さえもない。
聞えなかったのかもしれない。
デレは机へと向かった。
いつも使っていた日記帳。
そこに今日の出来事を書きくわえた。
☆ ☆ ☆
737
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:39:26 ID:eEgCKf9U0
305年 11月17日
私はこの声の主を、『魔王』と呼ぶことにしました。
いずれ必ず倒すべき存在として。
.
738
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:40:24 ID:eEgCKf9U0
☆ ☆ ☆
12月23日
メティス城
デレとショボンはこのラスティアよりはるか西にあるこの国のクリスマスパーティに招待されていた。
国内に巨大な河川と、魔人の住処を抱える国。
人々の生活には余裕が見られる。魔人との調和と言う観点ではマルティアをも凌ぐ国だ。
メティス城にて、パーティが行われていた。
大人たちはお酒を飲み、場の空気がのぼせていく。
その会場の隅で、デレは縮こまっていた。
先程から、こっそりと声に話しかけていた。
でも何も返って来ない。
思えばいつも部屋の中でしか彼と話していない。
739
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:41:26 ID:eEgCKf9U0
もしかしたら、新しい場所では彼の声は届かないのかも。
そう思って、即席の計画を作り立てた。
メティス国に逃亡する計画。
きっと父、そしてラスティアの人々は驚くだろう。
自分の王女という身分は、それだけ人の感心を引き寄せる性質がある。
忌々しいことなのだけど。
そして逃げた後、このメティスの北にあるエウロパの森へ向かう。
世界有数の魔人の住処。
そこへいけば、悪い魔人を退治してくれる魔人だっているかもしれない。
魔王を倒す方法がわかるかもしれない。
以前、魔王に脅された王女は、口に出さないまま
心の内側でで逞しく刃向う術を考えていたのである。
740
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:42:28 ID:eEgCKf9U0
パーティ会場を見まわした。
( ФωФ)
まず、衛兵隊長が目に入った。
貴族の血も含まれているという彼。
もしそれが本当なら、魔人である可能性は低い。
ということは魔王の仲間とは言い切れない。
ただ、あの猫のような目はどうにも気に入らなかった。
ひょっとしたら、猫型の魔人が自分を騙しているのかもしれないと、デレは警戒していた。
次に、視線を移す。
ミセ*゚ー゚)リ(゚、゚トソン
従者が二人ほど見えた
トソンがミセリを引きずって、部屋の外に連れ出している。
また何かしたのだろうか。
彼女たちのうち、ミセリは確実に後から来た人だ。
よって魔人である可能性が高い。
たとえ見た目が間抜けそうでも気を抜いちゃいけない。
ただ、そのために魔王である可能性は低いだろう。
彼女と会う前にデレは魔王と会っていたのだから。
横に居る女性はトソンという。
従者のリーダーらしいが、以前に会ったことはない。
だいたい従者も激しく入れ替わっていた。
だから彼女が後から来た人だと、みんな知らないだけかもしれない。
今のところは怪しいという段階だ。
741
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:43:26 ID:eEgCKf9U0
|゚ノ ^∀^)(-_-)
次に見たのが、このちぐはぐな親子。
彼女たちもまた部屋の外へと出るところだった。
レモナがショボンの従妹というのはどうやら本当らしい。
さすがに従妹の顔を忘れるようなショボンではないだろう。
ただ、その横に居る暗い彼。
その顔は全く見覚えが無かった。
それに、ほとんどしゃべっていない。
声がわからない。これは相当怪しいのではないか。
デレはそう思って、警戒のレベルを高めていた。
( ´W`)
他にも大臣たちが何人か見られる。
彼らとて後から来た人たちだ。
魔人である可能性はもちろん高いと言える。
(´・ω・`)
最後に見たのが、父親。
魔人ではない。もちろん魔王でもない。
脅されているだけの男。
742
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:44:40 ID:eEgCKf9U0
そして
最後
一人、見たことのある青年が混ざっていた。
( ・∀・)
彼は、ロマネスクが連れてきたらしい。
骨のある若者だと言って。
そういう話に目が無いショボンは、喜んでこの若者、モララーを連れてくる許可をだした。
実際成績はトップで、来年にはもう衛兵になるのではないかと噂されていた。
いや、そのような噂はどうでもよかった。
デレはその顔を見たことがあった。
もう一年近く前、まだ魔王の声を聞く前に、彼女は新年会で彼の姿を見た。
わずかに心が躍る。
声には出さないけど、自然と見てしまう。
そんな華やかさを彼は持っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「いけないわ」
首を振って、思考を止める。
何もモララーを見るためにここまで来たわけじゃないのだ。
ちゃんと自分がやるべきことをしなければ。
743
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:45:27 ID:eEgCKf9U0
時刻は夜の8時
ζ(゚ー゚*ζ「すみません、少しお部屋に忘れ物を」
そういって宴会場を抜け出した。
温和なメティス国の人が相手だからこそ、こんなに簡単な嘘が通じたのだろう。
すれ違う人々も、頭を下げればもう追求は無し。
外へでて、大きな三日月を見上げ、デレは一人ほくそ笑んだ。
自分の計画が滞りなく進むことに。
ζ(゚ー゚*ζ「さてと」
移動手段は考えていた。
あの白馬。
もちろん今回の外交にも連れてきている。
貴重な移動手段を、何の疑問も持たれずに連れてこれる。
デレにとっては幸運な状況だ。
あの白馬の寂しがりやな性格があってこそ、この計画は進められるのだ。
744
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:46:25 ID:eEgCKf9U0
白馬は現在、メティス城の厩舎に留められている。
そこへ向けて、進んでいく。
いくら温和な人々といっても、夜に厩舎にすたすたと歩いていけば怪しまれてしまうだろう。
だから、他の人には見つからないように、慎重に。
ζ(゚ー゚*ζ「?」
厩舎の傍で人の声を聞いた。
誰かいるのだろうか。
こっそりと、入口を覗きこむ。
真っ黒な二つの影。
体格からして大柄な男のように見えた。
こんなときになんだろう、とデレは心の内で恨み事を吐く。
その人影えおゆっくりと観察し、その頭を見たとき
ζ(゚ー゚*ζ「!」
耳があるのが確認できた。
745
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:47:29 ID:eEgCKf9U0
魔人がこんなところにいるのだろうか。
さすがに計画どころじゃないとデレは思った。
仮にも王女の白馬のいる厩舎、そんなところでこそこそと謀をする魔人。
どう考えても友好的な存在ではないだろう。
だから踵を返して引き返そうとした。
「誰だ!」
声をかけられて、咄嗟にデレは横に跳んだ。
草むらへ。
ほとんど反射的な動きだった。
勢いのままにしゃがみこむ。
心臓が早鐘を打つ。
草の陰から、厩舎の入口を眺める。
鋭い爪が見えた。
月明かりの下で、艶めかしく輝いている。
746
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:48:33 ID:eEgCKf9U0
デレは目を閉じた。
顔を下げて、腕の内側へと入れる。
「誰だ?」
また一つの声。
さきほどの魔人の声だろう。
「おい」
誰かに呼びかけているようにも思える。
もしかして自分になのだろうか。
もう見つかってる? だとしたら……
混濁する思考の隅で、空気を切り裂く音を聞いた。
叫び声がいくつかあがる。
何が起きているのかはわからなかった。
いくつかそれが続き、やがて静かになる。
747
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:49:39 ID:eEgCKf9U0
危機が去ったのだろうか。
恐る恐る、顔を上げた。
( ・∀・)「行ったか……」
先ほどとは別の意味で、言葉を失った。
宴会場に居たはずの彼が、どうして?
ζ(゚ー゚*ζ「あ、あの……」
立ち上がりざまに声をかけた。
( ・∀・)「あ、よかった」
青年は心底ほっとしたような表情になる。
( ・∀・)「いえね、あなたが宴会場を出ていくのが見えて、
帰って来ないものですから心配になって探し回っていたんです。
あなたを警護するという目的でここに来て連れてこられましたし」
748
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:50:24 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*ζ「探すって言ったって……どうやって」
( ・∀・)「だって、あなたこの国に来たの初めてでしょう?
知っている人も全員宴会場にいるわけだし、それで他に行くとしたら白馬のところかなと」
事もなげに、青年は言ってのける。
デレはぼーっとして、その顔立ちを見ていた。
(;・∀・)「あの、何かついてます?」
モララーが自分の顔をぺたぺたと触りだす。
それでようやくデレは目を瞬いた。
ζ(゚ー゚*;ζ「え、いや、そんなつもりじゃ!」
顔と手を勢いよく振る。
そのあと、モララーに連れられて、デレは父のもとへと向かった。
749
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:51:25 ID:eEgCKf9U0
宴会はまだ続いていた。
( ・∀・)「国王、ちょっと」
その隅で、彼はショボンを呼び出した。
(´・ω・`)「えっと、君は……」
( ・∀・)「モララーです。衛兵見習いですが、このたびロマネスクさんの推薦でこちらにきました。
王女の護衛をするためにです」
(´・ω・`)「ああ、そうだった! 御苦労さまだね。
それで、何かあったのかい?」
( ・∀・)「実は先程、王女が魔人に襲われました」
(;´・ω・`)「「なんだって!?」
途端に大きな声を出すショボン。
宴会場の賑わいが、一瞬静まる。
(;´・ω・`)「あ、ああいや、何でもないですよみなさん。
宴会を続けてください」
慌てふためきながらも、ショボンは手振りを交えて皆にそう伝えた。
止んでしまった話声が、徐々にまた始まっていく。
750
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:52:32 ID:eEgCKf9U0
(;´・ω・`)「続けてくれ」
今度は声を潜めて、ショボンはモララーに言った。
( ・∀・)「王女は少し休憩したくて宴会場の外に出たんです。
そこで怪しい男に声を掛けられ、逃げようとしたところを襲われました。
私がそこを助けました」
淡々とモララーが説明するも、その内容は事実とは異なっていた。
(;´・ω・`)「本当かい、デレ」
困惑した表情で、ショボンが確認してくる。
ζ(゚ー゚*ζ「えっと」
正しく言うべきなのか、判断に困っていた。
ふと、モララーと目があう。
彼はデレを直視して、ゆっくりと頷いた。
751
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/09/12(木) 21:53:20 ID:eEgCKf9U0
ζ(゚ー゚*;ζ「間違いありません」
嘘をつくことにした。
自分が厩舎に赴いたことも何も言わず。
(´・ω・`)「ふむむ……そうか」
ショボンは唸った。
それから顔を再びモララーに向ける。
(´・ω・`)「ありがとう、モララーくん。
君はデレの命を救ってくれた。このことはいずれ、君への褒賞としよう」
(*・∀・)「本当ですか?」
モララーは目を輝かせて言う。
(´・ω・`)「もちろんだとも。君が望むものならなんだってやろう。
私が最も大事にしているデレのために尽くしてくれたのだから」
(*・∀・)「謹んで考えさせていただきます」
にやりと笑って、彼は頭を下げた。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板