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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ
162
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:11:17 ID:x6g1yXaQ0
ツンの声だ。
彼女の声は今、抑揚が少ない。
感情を押し殺しているようにも思える。
通常、このような話し方をする人間はよほど感情表現が苦手なのではないかと心配になる。
でも、もちろんツンは違う。
今の彼女は感情をさらけ出すわけにいかないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「配達員の話によるとね、確かに部屋番号は同じだったって。
でも良く考えたら棟のアルファベットを見間違えていたらしいのよ」
頬を汗が伝うのを感じる。
お皿の上に、落下し、破裂した。
(゚A゚* )「へえ、それじゃ別の棟にいってたんだね。
どこかわかったの?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ、でももう検討はついているの。
だって、私のところに来ていた荷物は男物だったんですもの」
ミ*゚∀゚彡「なるほど! 男性用のAからFの棟のどこかってことね!」
(゚A゚* )「全部探すのに最大6往復か……もし手伝えそうなら手伝うよ!」
死刑台に送られる気分で、その会話を聞いていた。
今自分は13階段を上っているんだ。
163
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:12:18 ID:x6g1yXaQ0
ミ*゚∀゚彡「3人で探せば2回で済むね!」
6から2
13階段が4.33段に
ξ゚⊿゚)ξ「あら……ありがとうみんな」
(゚A゚* )「これからずっと過ごすわけだし」
ミ*゚∀゚彡「これくらい協力してあげるって!」
ξ*゚⊿゚)ξ「それじゃ一番近いF棟から探してみましょ」
階段が爆発した。
☆ ☆ ☆
164
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:13:17 ID:x6g1yXaQ0
(;゚ω゚)「はああ……うっ、うぉおあおああ……」
食堂を脱兎のごとく駆け出して、数分。
F棟の、自分の部屋。
廊下で膝を抑えて息を切らす。
呼吸がうまくまとまらない。
吐き気を堪えて顔を前に向けた。
様子がおかしい。
扉が開いている。
そういえば鍵を閉め忘れていた。
でも、どうして開いているんだろう。
不安を感じ、急いで中に入った。
そして、人影を見た。
(;^ω^)「だ、誰だお!!」
返事はない。
その人影は窓のサックに足をかけていた。
南に面した大きな窓。今は開いており、人一人くらい簡単に飛びだせる。
(;^ω^)「おい、ま」
165
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:14:36 ID:x6g1yXaQ0
言い切る前に、人影は身体を窓の外へ動かした。
サックにかけていた足がピンと伸ばされる。
窓の向こう側にある木の枝へ向けて。
ブーンは走って窓辺まで移動した。
そこから片手をサックにのせ、もう片方の手を前へ。
人影を追う。
だけど、その手は空を切る。
人影はさっさと枝を渡り、林の方へと進んで行ってしまった。
虚しく見送るブーンの目が、唯一捉えたのは
人影の脇に抱えられたあの手作りの地球儀だった。
目を白黒させて佇むブーン。
だけど、そうもしていられないことに気付く。
急がないと彼女たちが来てしまう。
166
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:15:32 ID:x6g1yXaQ0
ブーンは我に返った。
ここにいては危ない。
そう思い、振り返ったとき。
ξ゚⊿゚)ξ
もっとも会いたくない顔が目に入った。
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとお伺いしたいことがあるんですけど」
167
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:16:17 ID:x6g1yXaQ0
ツンは異様に冷静な声で話をする。
(;^ω^)「じょ、女性は出入りできないはずじゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「緊急時だと説明したら大丈夫でした」
(;^ω^)ボソ「ざるだお」
ξ゚⊿゚)ξ「何か言いました?」
( ^ω^)「い、いいえ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、で、いいでしょうか?」
威圧される。
ここは頷くしかない。
ξ゚⊿゚)ξ「あなたはこの部屋の住人ですか?」
ブーンはその言葉の中に光を見つけた。
彼女は自分の姿を初めて見たはず。
だったらこの場を上手く切り抜ければ、まだ生存できるはず。
ツンはブーンに対して疑いをかけきれていないのだから。
168
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:17:19 ID:x6g1yXaQ0
咳払いして呼吸を整える。
( ^ω^)「いいえ、違いますお。
僕はただこの部屋の扉が開いていたのが気になって入っただけですお」
すると、ツンは素直に「そう……」と言った。
このまま乗り切れれば……
ξ゚⊿゚)ξ「……それで、何かありましたか?」
(;^ω^)「え、あ、ああ。
実は、窓に人影がいたんですお!
それでそいつを捕まえようとしたら、逃げられましたお」
ξ゚⊿゚)ξ「なんで捕まえようとしたの?」
(;^ω^)「そ、そりゃあ、人の部屋に勝手に入っている人なんか気持ち悪いですお」
ξ゚⊿゚)ξ「もしかしたらその人が住人かもしれないのに?」
(;^ω^)「住人だったら窓から出入りなんてしないお!」
169
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:18:19 ID:x6g1yXaQ0
ツンからの言い返しはない。
上手く対応できたのでは、とブーンは期待した。
ツンは何事かを考えあぐねている。
このまま付き合ってはいられない気がする。
そのうちぼろを出してしまう前に、逃げなくては。
(;^ω^)「僕はもう何も用が無いですし、帰りますお」
余計なことは言わない。
この場にたまたま居合わせたまったく関係ない人、それが自分。
ブーンはそう自分に言い聞かせた。
ツンの横を通り、外へ出る。
扉の周りにはほかの女性たちもいない。
今頃他の棟を探しているのだろう。
せいぜい頑張ればいいさ。
170
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:19:18 ID:x6g1yXaQ0
ξ゚⊿゚)ξ「最後に一つ聞きたいことがあるんですけど」
ツンの声が背後からする。
答えが思いつけばすぐ切り替えそう。
思いつかなければ、観念しよう。
ξ゚⊿゚)ξ「荷物の中に写真がありましたよ? ブーンさん?」
考えるだけ徒労だった。
思いつく前に身体が動いていた。
ツンを背に、前へ、走り抜けていく。
背後から迫る声も、叫びも、怒鳴りも聞えない。
殺気だけ伝わってくるが、今は堪える。
逃げなくては。
ブーンの頭はその文字だけで埋まっていった。
171
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:20:18 ID:x6g1yXaQ0
足を止めないまま、外へ飛び出し、そして気付いた。
さっきツンは質問までに時間をかけた。
もし本当に写真を持っていたのならば、
最初に見た時点で自分がブーンだとわかったはず。
なのにそれを聞かなかった。
回りくどい質問を何度もかけてブーンの正体を詮索した。
そう考えると不自然だ。
ひょっとしたらあれはかまをかけたんじゃないか。
写真という言葉に反応すれば黒、無反応なら白。
少しでも身に覚えがあれば反応してしまう。
あれはその反応を調べるテストなのだ。
172
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:21:20 ID:x6g1yXaQ0
そして僕は今でこそ理屈で理解しているものの
あの瞬間、自分の臆病さゆえにびびり
今もまだ熱心に足を前へと運んでしまっているのである。
まことに残念なことであるが、後悔後に立たず。
ブーンはもはや歴然とした黒だ。
こうなれば、もう棟には戻れまい。
今のうちに地球儀を奪われた問題だけでも解決せねば。
必要以上にツンの怒りを買うのを避けるためにだ。
ブーンは頭の中で問題提起する。
あの人影は何者なのか。
173
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:22:21 ID:x6g1yXaQ0
人影は林に逃げた。
林の中に本拠地があるのか。
自分に関わりのある人物だろうか。
もしそうなら、自分は今ここに来たばかり。
誰かと知り合う機会なんて、何も。
( ^ω^)「あ」
そこで、思いついた。
先程見た顔。
( ゚∀゚)
そういえば彼には部屋番号を教えた。
確かに、ひょっとしたら後で部屋に乗り込まれるかもしれないとは思った。
だが、彼はもっとやっかいなことをしてくれたのではないか。
174
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:23:19 ID:x6g1yXaQ0
食べ物を吹き付けてしまった怒り。
その程度のことで因果は巡り、僕は命を狙われている。
いや、きっとあの快活そうな少年からしたら
腹癒せに僕の荷物を一つ盗んだというくらいなのだ。
たまたまその荷物と思ったものが、厄介な他人のものだっただけ。
( ^ω^)「!!」
林の中。
すでにかなり深くまで入り込んできていたとき。
ブーンは走りを止めて身をかがめた。
声がする。
( ゚∀゚)「おー、よーやってくれたわ」
あの少年の声だ。
まだ幼げのある声。たぶん自分と同期だろう。
背の低い木々の隙間から、ブーンは彼の顔を見る。
( ゚∀゚)「ん? これ良く見たら手作りじゃね?
売れそうにないなあ、飾っておくしかないか」
175
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:24:36 ID:x6g1yXaQ0
少年はしげしげと手作り地球儀を眺めていた。
(,,゚Д゚)「なんだジョルジュ、もっと別のを取ってくればよかったか?」
もう一人の男が言う。
体格がよく、厳めしい表情の少年だ。
へらへらしているジョルジュとは正反対。
歳はよくわからない。
(,,゚Д゚)「どんくさそうな奴だったし、奴のものならもう2、3個は取って来れそうだが」
( ゚∀゚)「いやいいよギコ。ちょっとムカついてやっちゃっただけだし」
ジョルジュがけらけらと笑う。
先程みた人影は、どうやらギコと呼ばれた男のほうらしい。
あの身のこなしから相当な筋力を持っていることが予想される。
176
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:25:20 ID:x6g1yXaQ0
ブーンは頭を抱えた。
こんな奴らから地球儀を取りかえさなければならないのかと思うと気が滅入る。
接触したら絶対良いことにはならないだろう。
思えば今地球儀を手にしているのはこのジョルジュたちなのだ。
そのことを正直に話せば、しかるべき判断はツンがしてくれるだろう。
僕には平穏が訪れるはず。
そう思いついたので、ブーンは踵を変えた。
くるりと180度、再度寄宿舎の方角へ。
( ゚∀゚)「しかしほんと、字が汚いなあ」
ブーンはつい、足を動かすのをやめてしまった。
字が汚いのは確かだ。
あの字はきっとツンが幼いころに書いたものなのだろう。
地球儀は球体だし、ぶれて当然。読み取りにくくてもしかたないじゃないか。
そんな反論を心の中で言う。
だけど、それでも自分とは関係ない。
ブーンはもう一度考え直す。
安全に、平穏に、今の自分に一番大事なことを。
( ゚∀゚)「いいこと思いついた。
これ壊して返してあげようぜ」
177
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:26:17 ID:x6g1yXaQ0
(,,゚Д゚)「ん? いいのか?」
( ゚∀゚)「ああ、その方が面白そう。
どうせこんなの売れないし、きっと壊した方があいつもこたえるだろ」
(,,゚Д゚)「なんだかもったいないな」
( ゚∀゚)「そうか? じゃあお前がもらっておく?」
(,,゚Д゚)「いや、ジョルジュが望むならば」
ジョルジュの手から、ギコの手へ。
地球儀が渡っていく。
ギコがその地球儀を片手にのせる。
大きな手だ。
地球儀が包まれてしまっている。
それを、ブーンは見ていた。
目で。
なぜなら、身体が再度、180度回転していたから。
その回転の勢いのせいでもあるが
彼は立ちあがった。
178
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:27:20 ID:x6g1yXaQ0
(;゚∀゚)「……え?」
ジョルジュの顔が戸惑っているのがよくわかる。
一方のギコはとくに顔色を変えていない。
(;^ω^)「や、やめるんだお」
それが自分の言葉とは、ブーンにはにわかに信じ難かった。
自分のもつ臆病な気持ちはこの歳ですでに理解していた。
それが自分の性格だとも熟知していた。
でも、どうしてか、今はその臆病さを押し込めてしまっていた。
(;^ω^)「やめてくれお。その地球儀、別の人のなんだお」
震える声でブーンは訴えかけた。
一歩、ジョルジュの前に出る。
( ゚∀゚)「……お前の知り合い?」
ジョルジュが聞く。
ブーンは首を横に振った。
すると、ジョルジュは笑いだした。
( ゚∀゚)「じゃあなんで邪魔すんだよ」
179
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:28:34 ID:x6g1yXaQ0
そんなこと言われても、答えられない。
それが率直な感想だった。
邪魔したくなったのは、邪魔したくなったから。
それで納得するとは思えない。
( ゚∀゚)「……よし、わかった」
そう言うと、手を合わせてジョルジュはギコの方を向く。
( ゚∀゚)「壊すのはあいつ自身にしよう」
(,,゚Д゚)「いいのか? 人だぞ」
( ゚∀゚)「その手加減はまかせるよ。
ちょっと痛い目に合わせればいいだけだから。な?」
ジョルジュが手を合わせる。それに対し、ギコはやれやれといった風に息を吐いた。
(,,゚Д゚)「お前はいつも調子がいいな。
とはいえ、そうだな。聞き入れよう」
そういって、ギコはブーンに向かい合う。
180
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:29:38 ID:x6g1yXaQ0
ブーンはそれまでギコを誤解していた。
少しがたいのいい少年で、ジョルジュよりは冷静に見えたから
きっと大人びた少年なのだろうと思っていた。
本質では自分たちと変わらないと信じていた。
ギコが目を閉じて、力を込め始めている。
変化はすぐにわかった。
グググ
(,,゚Д゚)
その頭部が盛り上がる。
まるで植物が土の中から生えるように。
髪の中から、塊が浮き上がる。
ブーンは目を見張ってその様子を眺めていた。
実際に見たことはあるものの、このような場所で見かけるとは思いもよらなかった。
仮にもお城の敷地の中、しかも衛兵の寄宿舎の裏で。
.∧∧ ピンッ
(,,゚Д゚)
勢いよく、ピンと筋を張ったのは、耳だった。
魔人特有の獣の耳。
181
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:30:39 ID:x6g1yXaQ0
魔人とは、300年前に突然この世界に現れたもう一つの人種である。
彼らがどこから現れたのかは、少なくとも人間は誰も知らない。
初めてこの世に現れた魔人たちは、頑としてこの世界にきた経緯を語ろうとはしなかった。
.∧∧
(,,゚Д゚)「そろそろ動いていいかな」
ブーンはようやく、彼が大人びて見える理由がわかった。
ギコの身体が自分よりもはるかに発達していたからだ。
魔人は人間とほとんど変わらない(しかし同年代と比べれば発達した)身体と、獣の部位を持っていた。
個体によって違いがあり、多くの場合は獣の耳として現れている。
そしてそのことと関連してか、魔人の多くは人間よりも高い身体能力を有していた。
このことから人間の学者の間には、魔人を猿以外の哺乳類から進化した生物と捉える者もいた。
魔人が自分の話をしたがらない以上、それは憶測の域を出ない説でしかなかったが。
(;^ω^)「君は、ジョルジュと契約したのかお?」
.∧∧
(,,゚Д゚)「というよりは、こいつの家との契約だ。
俺は親の代からこいつの家に取り憑いているからな」
182
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:31:39 ID:x6g1yXaQ0
魔人は人間に取り憑く。
より詳しくいえば、彼らは人間と交わした約束は忠実に守り、目標の達成に協力する。
それが彼らの生業であるらしかった。
ときには家族そのものに取り憑いて、その下で働く魔人もいた。
便利な召使のようなものである。
町に現れる魔人のほとんどはこの性質から人に取り憑いた者であった。
現状は人間の方が数が多いため、魔人に取り憑かれていない人もいるが
魔人の人口のゆるやかな増加に伴って、
そのうち世界中の人間全てが魔人を使役する日が来るのではないかと言われている。
.∧∧
(,,゚Д゚)「ただ、俺は不思議な力を使うのは苦手なんだ。
あまりぱっとしたものじゃないんで、がっかりしないでくれよ」
そういって、ギコは両手を胸の前でクロスさせる。
息をゆっくりと吐きだしていく。気合を溜めているようである。
ブーンは身構えた。何か来る。
しっかりギコを見なければならない。
少しでも動きがあればすぐに横に逃げなければ。
183
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:32:39 ID:x6g1yXaQ0
ギコの足が、動く。
右足を軸にして、身体の左半身を前へ。
土が蹴られて跳ねる。
それしか見えなかった。
(;^ω^)「!!」
見ている暇も無かったのだ。
反射的に、ブーンは身体を左へと弾けさせた。
土煙を上げながら倒れ込む。
先程まで自分の身体があった位置に一陣の風が通り抜けた。
背後で衝突音がする。見れば、木に激突しているギコの姿があった。
みしみしと嫌な軋みが聞えてくる。
なにがぱっとしないだ、冗談じゃない。
人間を圧倒するには十分すぎる能力じゃないか。
傾きを増していく木を眺めながら、ブーンは悪態をついた。
184
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:33:38 ID:x6g1yXaQ0
願いをかなえるという場合において、魔人は不思議な力を発揮する。
人間の目標を達成するために、常識外れの現象を引き起こすのだ。
その能力は魔人によって違う。
ギコのように自分の身体能力を高めて限界を超えるだけの場合がほとんどだったが
稀に自然現象を引き起こす者、超能力を駆使する者などもいた。
木が倒れ込むのと同時に、ギコが立ちあがる。
.∧∧
(,,゚Д゚)「はずしたか……」
低く、だけど確かにブーンに届く声でギコが呟く。
こうしてはいられない。
止まっていたら今度こそやられる。
そう思い、ブーンも立ち上がる。
そして急いでジョルジュの元へ走った。
(;゚∀゚)「え? あ、おい!」
慌てふためくジョルジュを無視して、その右手に握られた地球儀を掴む。
自分はこれさえあればいいのだ。わざわざ魔人相手に戦闘する義理はない。
それにここにいれば、魔人は攻撃できないはず。
185
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:34:38 ID:x6g1yXaQ0
(;゚∀゚)「おい、やめろよ! ギコがお前に突進できないだろ!」
魔人は宿り主に不利益を引き起こせないからだ。
不可抗力や遠い因果関係による不運、価値観の変化などの不利益は避けられないが
目に見えての怪我や暴力を浴びせることはできない。
(;^ω^)「だから盾にするんだお!」
地球儀を掴みながらジョルジュの背後に回った。
このまま地球儀を抜き取れれば完璧なシナリオだ。
でも自分の非力という現実が突き付けられた。
いくら力を込めても、ジョルジュが離れてくれない。
それどころかお互いに力むために、地球儀の形がゆがみ始めていた。
もともと簡素な造りの地球儀なので、耐久力には期待できそうもない。
このままでは破けてしまうかもしれない。
186
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:35:53 ID:x6g1yXaQ0
(;^ω^)「いいかげんに諦めるお!」
(;゚∀゚)「はあ? やだよ、お前こそなんでそんなにむきになるんだよ。ただのおもちゃだろ!」
(;^ω^)「おもちゃじゃないお!」
(;゚∀゚)「は?」
(;^ω^)「とにかくそれが戻らないと僕は死ぬお!」
(;゚∀゚)「いや、わけわからんて」
ジョルジュの左足がブーンの顔に伸び、靴の裏が突き付けられる。
無理やりにでも地球儀から引き離そうというのだろう。
ブーンは歯軋りをして堪えた。
徐々に身体が押されていく。
やはり根本的に力が足りない。
足を踏ん張ろうにも、痛みが顔面に広がって集中が乱される。
(;゚∀゚)「ギコ! これくらい離れれば俺に当たらずこいつにぶつかれるだろ?」
187
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:36:47 ID:x6g1yXaQ0
.∧∧
(,,゚Д゚)「かするくらいならな」
(;゚∀゚)「こいつにはそれくらいでいいさ!」
二人が不穏な会話をしている。
あいにく今のブーンにはジョルジュの靴の裏と、その必死そうな顔しか見えなかった。
ジョルジュもむきになっているのだろう。
こんなに地球儀を欲しがるのは、別にそれが貴重だからじゃない。
ただブーンを困らせたいだけ。
呼吸音がする。
深い深い吐息。
ギコが先程のように集中を高めているのだろう。
.∧∧
(,,゚Д゚)「いくぞ」
最後の宣告。
次の瞬間、大きな雄叫びと共に
一陣の風を感じた。
188
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:37:41 ID:x6g1yXaQ0
(#・∀・)「おらあああああああああああああああ!!!」
それは知らない人の雄叫びだった。
ジョルジュの靴が緩んだので、顔を一気に捻ってギコを見る。
自分へ向かう一直線上の間で、上から降る何者かに襲われていた。
木刀を振りかざして何度もギコを殴りつけている。
(#・∀・)「魔人はここに入るなよ!!」
青年が攻撃を終える。
肩で息をする栗毛の青年と、地面に倒れ込むギコ。
(;゚∀゚)「ギコ!!」
ジョルジュが駆けよっていく。
その途中で、青年はジョルジュの襟首をつまんだ。
( ・∀・)「はい、お前」
(;゚∀゚)「はい?」
189
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:38:39 ID:x6g1yXaQ0
( ・∀・)「お前が宿り主なんだな?」
(;゚∀゚)「ま、まあそうですけど」
( ・∀・)「今すぐこいつを森へ返せ。衛兵には魔人は不要だ」
(;゚∀゚)「今すぐですか?」
( ・∀・)「契約破棄を唱えるんだ。面と向かってな。そうすりゃ魔人は返る」
(;゚∀゚)「でも……そいつうちに取り憑いているんで、父じゃないと……」
(#・∀・)「だったら家に帰すだけでもしろ!」
(;゚∀゚)「は、はいいいいいい」
190
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:39:38 ID:x6g1yXaQ0
魔人との契約は全て口頭で行われる。
機械的な処理ではなく、ちゃんと文脈を判断した上での正確な契約だ。
さらに、宿り主は自由に契約の更新と契約の破棄を行える。
契約の更新とは、本来の契約に上乗せして新たに契約を課すこと。
大きな契約に関連して、小さな仕事を任せる場合などで使われる。
魔人としては従事することそのものに意義があるらしく、仕事を面倒がらず、むしろ増えると喜んだりもする。
契約の破棄とは、文字通り契約の取り止めだ。
口頭で目を見て破棄を伝える。そうすれば契約は止まる。
魔人は不思議な力を出せなくなり、自然へと返っていく。
ギコはジョルジュに取り憑くというよりもジョルジュの世話を任されていたのだろう。
ジョルジュの言うことを聞くように、とでも。
ジョルジュはギコの傍に跪く。
(;゚∀゚)「……家に帰ってくれ」
.∧∧
(,メ,゚Д゚)「……」
シュンッ
(,メ,゚Д゚)「了解した。元気でな」
ギコはそういうと、その場で立ちあがる。
しかしダメージが溜まっていたのか、ふらついた。
191
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:40:43 ID:x6g1yXaQ0
(,メ,゚Д゚)「やれやれ、歩いて帰らなきゃか」
( ・∀・)「城下町を南へ出れば森がある。魔人がいくらかそこに住んでいるはずだ。
しばらくはその森で休養していればいいさ」
ぶっきらぼうな答え方だ。
この人は魔人が嫌いなのかな、とブーンは思った。
(,メ,゚Д゚)「そりゃどうも」
モララーの態度を察したからなのか
ギコもまた素っ気なく礼を言って、よろよろとその場を去った。
後に残ったのは、跪くジョルジュだけ。
ギコの背中を眺めながら、何か言おうとして、結局何も思いつかないままなようだ。
( ゚∀゚)「……やろう、俺に何も言わないでとっとと行きやがった」
( ・∀・)「お前、実は嫌われていたのかもな」
192
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:41:58 ID:x6g1yXaQ0
ふざけた調子で言う青年にたいして、ジョルジュは舌打ちで返した。
そのまますぐに立ちあがる。
(#゚∀゚)「何が嫌いだよ、魔人のくせに!
後で手紙で父に頼んでクビにしてやる」
(#゚∀゚)「お前らもきっとただじゃおかないからな!」
モララーとブーンに捨て台詞を吐いて、ジョルジュは寄宿舎の方へと歩んでいった。
ちなみに、彼が衛兵見習いをやめたという話をブーンが聞くのはまだ少し先のことだった。
モララーはふふんと楽しそうににやけている。
( ・∀・)「賭けてもいいけど、ただじゃ済まないのはあいつのほうだよ」
モララーがそう言ってブーンに顔を向けた。
咄嗟のことに、いや、実は先程からずっとブーンは放心していた。
モララーはそのブーンを見て、首を傾げる。
193
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:42:40 ID:x6g1yXaQ0
( ・∀・)「ああ、ひょっとして自己紹介がまだだったからかな?
俺のことはモララーって呼んでくれ。今期新衛兵のうちで首席だったんだ。
きっと君らの衛兵見習い歓迎式でもしゃべるよ。あの馬鹿の顔が楽しみだ。何してやろ」
モララーは寄宿舎の方を顎で指した。
それでもブーンの反応が鈍いので、再度ブーンに質問した。
( ・∀・)「どうした? まだ何かききたいか?」
( ^ω^)「いや……あの……」
胸の奥に熱いものがこみ上げて来ていた。
今しがたの光景、魔人を一瞬で片付けてしまった力。
ブーンはすっかり圧倒されてしまっていた。
だから、少年心ながらに、素直に感動していたのである。
(*^ω^)「かっこよかったですお……」
194
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:43:39 ID:x6g1yXaQ0
それから、ジョルジュに狙われたら危ないという名目で
ブーンとモララーの付き合いが始まった。
なお、このときまだブーンは、自分の足元に潰れた地球儀があることに気付いていなかった。
☆ ☆ ☆
195
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:44:39 ID:x6g1yXaQ0
現在、9月
午後2時
ラスティア城政務室
「入ってよい」
重々しい呼びかけによって、ブーンは立ちあがった。
いつものブーンなら、こんな場面に遭遇すれば緊張してしまっていただろう。
ただ、今はそんな緊張もあまりない。
その代わり気分が重すぎて、前に進むのも嫌だった。
「……まだか?」
静かな催促。
観念するしかない。
ブーンはゆっくりと一歩踏み出した。
ドアのノブに手を取り、回す。
なめらかな感触。手入れが行き届いている。
ブラウンの扉が奥へと押され、中の様子が見えた。
( ´W`)「事情を説明してくれるかな」
真っ白な髭を蓄えた政務官が待ち構えていた。
196
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:45:38 ID:x6g1yXaQ0
ブーンはありのままに話した。
あの秘密の任務で起きたことを、順を追って。
あれからすでに2日経っていた。
ブーンの傷も癒えた。元々そこまで大きな怪我はしていなかった。
だからこうして証言するだけの体力はあった。
白い靄に包まれた話をしたところで、一旦口が止まった。
( ´W`)「どうしたのです?」
政務官が急かす。
ブーンは迷っていた。
王女のことを話したらどうなるか。
良くないことになる予感がした。
あのロマネスクの話し方からして、王女はあのお戯れを何回かしていたのだろう。
そんなことを僕ら庶民は知らない。
たとえ知ったとして、どう考えても好意的には受け取れないだろう。
あれはお城の秘密なのだ。
では、今この場でその秘密に触れればどうなるか。
結果は明らかだ。
197
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:46:40 ID:x6g1yXaQ0
( ^ω^)「……靄につつまれて、魔人に襲われましたお。
それでモララーは……殺されましたお」
( ´W`)「その魔人、野生の魔人ですか?」
( ^ω^)「……はい」
( ´W`)「誰にも取り憑いていない?」
( ^ω^)「……たぶん」
そう言わざるを得ない。
自分は眠らされていたことになっていた。
その前の段階で、襲われて、自分は何も覚えていないことになっている。
なんで意識があったのかはわからない。比較的早く目覚めることができたのだろうか。
とにかくここで違うというわけにもいかないし、断言しても怪しまれる。
ぼかすしかない。
( ´W`)「なるほど、わかりました」
198
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:47:37 ID:x6g1yXaQ0
政務官が手持ちのメモ帳をチェックしながら言う。
あのメモ帳に書いてある内容にそぐわないことを言ったら僕は殺されるのではないか。
ブーンはそんな不安で心中が荒れに荒れていた。
( ´W`)「疲れたでしょう。しばらく休みなさい」
政務官は優しく言葉をかけてくれた。
ブーンは少しだけ緊張が解れ、息を吐く。
( ^ω^)「あ、ありがとうございますお」
( ´W`)「夜には寄宿舎に戻るように。あと、城下町から外へはでないでくださいね。
町でも歩いていれば気分は紛れるでしょう」
( ^ω^)「……はい」
果たしてそう簡単に紛れさせることはできるだろうか。
それはとても難しい命令のように思えた。
( ´W`)「そういえば、いなくなったドクオについて何か心当たりはありませんか?」
199
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:48:54 ID:x6g1yXaQ0
( ^ω^)「え、いなくなったんですかお?」
( ´W`)「現場には君しか倒れていなかったのです。
ドクオからも事情を伺いたいが、大したことは聞けそうにないですね」
政務官は唸ったが、それから仕方ないというふうに頭を振った。
( ´W`)「とりあえず今日のところはここまでです。
君に落ち度はありませんゆえ、安心してください。
また、ドクオが現れたら私たちのところへ連絡をください」
ブーンは政務官に頭を下げ、その場を後にした。
ただ、廊下を歩きながらも
頭の中ではドクオの行方がどこだろうかと考えていた。
☆ ☆ ☆
200
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:49:39 ID:x6g1yXaQ0
寄宿舎F棟368号室
もう住みなれた部屋だ。
無気力で歩いてきたのに、自然と足はここへ辿りついた。
部屋の様子はほとんど変わっていない。
衛兵の訓練は忙しく、町を散策する機会もあまりなかった。
だから無駄なものもあまり買わず、閑散とした室内になっていた。
本来ならこのたびの休暇はラッキーだった。
日ごろの訓練を正式にさぼれる。疲れないし、楽しい。
でも、今回はその代償は大きい。
むしろ、足らない。
休暇なんていくら積んでも足らない。
どうしてモララー先輩がいなくならなきゃならない。
部屋のベッドの上に腰掛けて
ブーンはあの人と会ってからの日々を思い返した。
201
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:51:01 ID:x6g1yXaQ0
寄宿舎の裏の林で魔人を撃退するモララーを見てから、付き合いが始まった。
まずはブーンの体力をつけるために
それから技術力を磨くために
ブーンはモララーの弟子として訓練を願ったのである。
モララーは衛兵になって、見習いよりもさらに忙しい身分となっていたが
ブーンというなかなか教えがいのある後輩に接することは楽しそうでもあった。
ブーンはといえば、必死になって憧れのモララーの姿に追いつこうとした。
ひと月もすれば、モララーの成績はすぐに見習い中に知れ渡っていた。
モララーの入隊した年の新衛兵ではトップ、その後も活躍を続けていた。
噂ではモララーはその見習い時代に王女を野生の魔人から助けたこともあったそうだ。
ただ、お城の中ではその話題は公にはもみ消されているし
モララーはそのことについてほとんど語ろうとはしなかったが。
ブーンは今更その噂話を思い出していた。
ひょっとしたら、あの講堂で話していた内容はその噂のことだったのかもしれない。
この任務をこなせば昇格間違いなしって。
202
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:51:51 ID:x6g1yXaQ0
そう思って、ブーンは力なく笑う。
モララーさんは違う、と思った。
あの人は別に昇格にこだわったわけではないのだろう。
もし噂が正しいのならば、だけど。
たとえ王女を助ける機会があったとしても、それを昇格のチャンスとしては利用しなかっただろう。
あの人は魔人が大嫌いだった。
結局その理由についてブーンは知らないままだったが、嫌いという事実だけは知っていた。
そして、モララーがまったく昇格に興味を示していなかったことも知っていた。
そう言う人じゃないのだ。あの人にとって名誉など関係ない。
自分のしたいことをし、したいことをするために力を得る。
そういう人だったんだ。
だからきっとあの講堂での言葉は、ブーンを安心させるために言ったに違いない。
お前だってこれで昇格できるかもって。
湖でもそうだろう。
ドクオと話していたとき、モララーは突然ドクオを呼んだ。
それからドクオが行ってしまって、しばらくしたらデレが来た。
203
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:52:38 ID:x6g1yXaQ0
あれはモララーがデレと自分を近づかせたのだろう、とブーンは考え至っていた。
デレに自分を印象付けさせ、昇格しやすくするために。
あるいは単純に、自分がデレと知り合いになれるために。
自分がデレに好意を抱いていたのは明らかだったのだから。
あの人間に対する心配りばかりをして生きていたようなモララーがやりそうなことだ。
あんなに良い人は他に居ないだろう。
こんなとこで死んでいい人じゃなかったんだ。
ブーンはその言葉を何度も頭の中でもう一度繰り返した。
( ^ω^)「モララー先輩」
言葉は空中に佇む。
誰にも届かず。
ブーンは頭を抱えた。
顔を真下へ。
ベッドと自分の足、そして床だけが見える。
204
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:53:55 ID:x6g1yXaQ0
どうしてこうなったんだろう。
あの任務のせいか。
デレ王女の姿が浮かんだ。
彼女は裏切り者なのだろうか。
あのとき薄目で見た光景は、もはや魔女そのものだった。
普通に考えれば、彼女が魔人を使役してモララーを襲ったことになる。
一度彼女を救ったと言われている、モララーを。
そんなことができるほどに冷酷な女性なのか。
でも、ブーンには彼女を悪と断定できなかった。
いくら断定しようとしても、なぜかデレの表情が浮かんで邪魔をする。
湖で見せてくれた笑顔。
南の山の麓で見た無表情。
どうしてだろう、どうしてそんなものばかり思い浮かぶんだ。
確かにデレは綺麗だったけれども。
まさか綺麗な人だからって、モララーを殺されたのを許せるわけじゃない。
なのにどうして自分は答えを出せずにいるんだろう。
これは酷いことじゃないのか。
205
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:54:38 ID:x6g1yXaQ0
「ブーン?」
扉の向こう側から声がして、ブーンははっと現実に戻ってきた。
( ^ω^)「あ、ツンかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「そう」
2年間もききなれた声だ。
すぐにわかった。
ツンと出会ったきっかけが、モララーと初めてあったきっかけでもあった。
( ^ω^)「女性はここ、来ていいのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「許可ならもらったわよ」
( ^ω^)「……なんか、ずーっと昔もこんな会話した気がするお」
ξ゚⊿゚)ξ「そう? 確かに比較的よく入れるけど。
F棟の管理人だけが異様に優しいのにね」
( ^ω^)「僕がG棟の方へいったらあっという間に捕まったお」
206
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:55:39 ID:x6g1yXaQ0
そういいながら、ブーンは自分の頬が緩んでくるのを感じた。
さっきまでほとんど動こうとしていなかったのに。
ひょっとしたら、ツンは今の僕の気持ちを和らげてくれるかもしれない。
辛い気持ちを無くしてしまえるかもしれない。
そう期待するのも無理はなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「入っていい?」
幸いなことに、誘いはツンの方からしてくれた。
向こうからまったく見えないのを承知で、ブーンは首を縦に振り落とす。
( ^ω^)「いいお。夜時間までなら」
言ってから、自分の声が震えていることに気付いた。
なんだっていうんだ、ちくしょう。
せっかく気持ちを紛らわそうっていうのに。
207
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:56:38 ID:x6g1yXaQ0
ツンもその震えに気付いたのか、遠慮がちにドアノブをまわした。
ゆっくりと扉が開かれる。
ξ゚⊿゚)ξ「……平気?」
恐る恐るといった表情で、ツンが顔を見せてくれた。
部屋に入って、扉を閉める。
ξ゚⊿゚)ξ「……平気じゃなさそうね」
ツンはブーンの顔を見て断言する。
( ^ω^)「は、はは。まいったお」
ブーンは頭をかいた。
身体が錆びている気分だった。
ξ゚⊿゚)ξ「座るわよ」
ブーンが許可を出す暇さえ与えずに、ツンはさっさとベッドの端に腰かけた。
ブーンとは反対側。
お互いの間は長い距離が空けられている。
208
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:57:53 ID:x6g1yXaQ0
ξ゚⊿゚)ξ「モララーさん、あ、いや……」
出だしでブーンはびくっと反応してしまった。
だからか、ツンはすぐに言葉を訂正した。
ブーンの心の中で、申し訳ない気持ちが炸裂する。
ξ゚⊿゚)ξ「あの……あ、ほら、地球儀」
ツンが指しているのは、あの手作り地球儀のことだろう。
全てのきっかけの。
( ^ω^)「……壊しちゃってごめんだお」
ブーンは何か言わなければならないと思ってついそんなことを言った。
ツンは鼻を鳴らす。
ξ゚⊿゚)ξ「今更すぎて何も言えないわよ。
それに、反省ならあのときさせたでしょ?」
(;^ω^)「……あまり思い出したくないお」
2年前のあの日。
あの後ブーンはモララーと一緒にツンに会った。
そして二人で頭を下げた。
209
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:58:42 ID:x6g1yXaQ0
それからブーンとツンは知り合いになった。
最初のうちは、地球儀を壊した反省として
ブーンはツンにこきつかわれる日々を過ごしていた。
それでも時間がたてば怒りも静まって
普通にツンと会話するようになっていった。
きっかけが悪くても、それは関係ができたということに変わり無くて
馬が合えば人は人と仲良くなれるものだった。
ξ゚⊿゚)ξ「実はね、ブーンに言っていなかったことがあるの」
その言葉を聞いて、ブーンは横を見る。
ξ゚⊿゚)ξ「あの、……モララーさんね、あのあと地球儀復元してくれたんだよ」
若干の言い淀みのあとで、続けた。
どうしてもモララーという単語からは避けられなかったのだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「敗れた紙を貼り合わせて、丁寧に修復してくれたんだ。
結構時間がかかってたけど、去年それを私にくれたの」
ツンはブーンの顔を見ていない。
細長い部屋の灰色の壁を見つめ、両手を動かして地球儀の大きさを表していた。
片手で持てるくらいの小さな手作りの地球儀。
210
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 22:59:36 ID:x6g1yXaQ0
ξ゚⊿゚)ξ「めちゃくちゃにされちゃったけど、
私はちゃんと形になって戻ってきたそれが嬉しかった」
ξ゚⊿゚)ξ「私はいつか世界を回りたかったから、それが小さいころからの夢だったから。
この場所でちゃんと女性としての知識を身につけてからね」
ξ゚⊿゚)ξ「あの地球儀は近所の人と集まって作ったの。
まだ文字を覚えきれていない頃から」
ツンの手が、次第にその動きを小さくしていく。
地球儀がしぼむ。
片手どころか、指でつまめるくらいに。
ξ゚⊿゚)ξ「……思い出はあった。でも壊れたらそれでいいかなって思ってた。
だけど修復されたそれを見たとき、私つい泣いちゃってさ。
どんなに気取っていても、やっぱり大切なものだった。
だから泣いちゃったんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「どんなに忘れようとしても忘れられないものってあるのよ。
私にとっては地球儀がそれだった。
ずっと大切に育ててくれた人々の思い出が……」
ξ゚⊿゚)ξ「……変だな、こんな話しても仕方ないのに。
こんなこと言いにきたわけじゃなかったのに。
なんで自分の話なんか、ごめんね」
211
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:00:55 ID:x6g1yXaQ0
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、ブーン?」
両手を膝の上にのせ、握る。
ツンはようやくブーンを向いた。
でもブーンからの返事はない。
実はもうすでにブーンの目線は、ツンを向いていなかった。
ただブーンは下を向いていた。
顔を手で押さえて、両肩を震わせて。
ξ゚⊿゚)ξ「……何よ、せっかく安心させようと思ったのに」
ξ;⊿;)ξ「そんなに思いっきり泣かれたら、
私だって、つられちゃうじゃない……」
212
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:01:48 ID:x6g1yXaQ0
ブーンは何も答えられなかった。
口を開けようとすれば、酷い声が出てしまうだろう。
言葉を話せず、嗚咽だけが漏れるだろう。
抑えきろうなんて、浅はかな考えだった。
そんなもの聞かせても何もならない。
ツンが悲しむだけだ。
だから何も言わない。
言えない。
ブーンは背中に暖かいものを感じた。
手のひらだ。
目を開ければツンがいるはず。
笑ってはいないだろう。
泣いているのかもしれない。
見れば済む話なのに、どうしてもそれができない。
なんでだろう。
なんで。
できないことばっかりだ。
213
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:02:56 ID:x6g1yXaQ0
疑問は解けず、その形すらも瓦解して
ぐるぐるとした混沌だけが頭の中にあった。
ツンに片手を添えられながら、ブーンは気の済むまでさめざめと泣いていた。
☆ ☆ ☆
214
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:03:52 ID:x6g1yXaQ0
その日の夜、葬儀が行われた。
ラスティア城の北にある、専用の葬儀場。
衛兵の仕事は、たとえ平和な時代といえどもたまに危険なものもある。
殉職してしまう衛兵も当然いた。
でもその衛兵の葬儀を民間で処理してしまったら、町の治安にもよくない。
それにひょっとしたらお城の機密事項も漏れてしまう可能性がある。
だから衛兵の死は慎重に扱わなければならない。
モララーの死も同様だった。
衛兵に通達を出し、来られる人だけが出棺に出席する。
ブーンは参加していた。
本当はあんまり見たくなかったのだけど。
( ^ω^)「……」
モララーは人気者だった。
通達は今朝出されたのに、数十人の人が集合している。
新規の衛兵が入ってくる忙しい時期なのに。
215
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:04:51 ID:x6g1yXaQ0
それは嬉しいことのようにも思えた。
でも素直にはなれない。
そんなことを口に出したら、モララーが死んだことを認めることになってしまう。
棺が台の上に置かれた。
もう顔は見えない。
台座の下に着火剤がある。
そこに、上位の衛兵が数人集まった。
やがて、火がつけられ、彼らは離れる。
燃えるのはあっという間だった。
その場に集まった人々の顔が、オレンジ色に照らされる。
ほとんど全ての人に沈痛な顔が浮かんでいた。
ブーンはそれらを眺め、それから別の方向に顔を向けた。
今まで意図的に避けていた方向へ。
そこには王女がいた。
彼女の顔も火によって明らかになっているはず。
216
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:05:54 ID:x6g1yXaQ0
ζ( *ζ
しかし、顔は手で覆われていた。
やや俯き加減の姿勢のまま。
感情が読みとれない。
彼女は悲しんでいるんだろうか。
ほくそ笑んでいるんだろうか。
あの夜のことを思えば、後者の可能性もある。
そうなれば、酷く悲しい話だ。
でも、正直にいえばデレを疑いきれない自分がいた。
デレ王女の肩は震えているようにもブーンには見えた。
あるいは、そうであってほしかった。
あの夜の彼女の姿は本当なのだろうか。
こんなことを考えてしまう自分は、
優しいを通り越して、愚かなのではないか。
モララーがこのことを知ったら怒るかもしれない。
217
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:06:56 ID:x6g1yXaQ0
自分は優しすぎるらしい。
それは自分の足を引っ張っているんだろうか。
目の前で焔が踊る。
咎めるように。
人は優しいばかりじゃない。
もちろん知っている。
人は嘘もつくし、騙しもする。
人を傷つけ、殺すこともある。
モララーだって殺された。
それなのに、今もデレを疑いきれない。
「優しさだけじゃ生きていけない」
モララーにそう言われることが、ブーンには何度もあった。
懐かしい思い出だ。
218
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:07:54 ID:x6g1yXaQ0
大抵は、ブーンがドジを踏んで、それをモララーが窘める。
初めて会った日から何度も一緒に特訓をした。
ブーンにとってモララーは憧れの存在だったから。
モララーにいくら怒られても、呆れられても、ブーンにはそれが嬉しかった。
少しずつでもモララーに近づければいいと思った。
実技の成績は震わなくても
必死でその背中を追いかけた。
並行して座学の成績が良くなったのは、その向上心があったからかもしれない。
自分にできることを精一杯やってきた。
優しさだって、そのひとつだ。
誇らしくも思っている。
219
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:09:00 ID:x6g1yXaQ0
でも
「優しさだけじゃ生きていけない」
そして
それを言ってくれた人ももういない。
220
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:10:08 ID:x6g1yXaQ0
部屋でツンと会ったときに、涙は枯れたと思ったのに
目の前が霞む。
火が収まり、神父が現れて言葉を残す。
神の名が現れても、人間の情感を切に語っても
耳には何も残らなかった。
解散となる。
人々が帰る。
王女もまた、背中を向けた。
ブーンはその背中を見つめていた。
何も返って来ないことはわかっていながら。
そうして、葬儀は終わった。
☆ ☆ ☆
221
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:10:51 ID:x6g1yXaQ0
数日後、ブーンは城下町へ降りた。
お城の前にある中央広場で、噴水の傍のベンチに座り、人ごみを眺めていた。
町に出れば気がまぎれるとシラヒーゲ政務官は言っていた。
だけど、町にはほとんど知り合いはいない。
適当に歩けば気がまぎれるなんて、そんな都合のいい話はない。
心はただでさえすさんでいるのに、人と会えれば幸せなんて。
そんな愉快な思考ができるような状況ではなかった。
憤りがあっても、所詮何もできないのだけど。
町並みそのものもどことなく沈んでいる。
ブーンの気持ちが暗いからそう見えるだけではない。
新嘗祭が延期になったからだ。
順を追って説明すれば、まず王女による秘密の調査は王女への襲撃に名前を変えた。
また、襲ったのは“野生の”魔人であることが強調された。
人間と暮らしている契約済みの魔人とは別の存在だとも説明された。
だけど、それでも城下町に不安が残った。
レジスタンスのリーダーも顔を出して、ラスティア城政務部を非難するパフォーマンスをしていたそうだ。
最近ではすっかり影になりを潜めていた連中だったが、そのときばかりは喝采だったらしい。
222
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:12:08 ID:x6g1yXaQ0
だから、このまま祭など開いてもお城への非難が集中するだけだと思われた。
祭を機会として暴動が起きるかもしれない。
城下町でそんなことが起きれば、国王一族及び貴族のメンツに関わる。
だから新嘗祭は延期になった。
都合がつけば来月に取り行われる予定だ。
ほとぼりが冷めるのを待ってから。
この場合、町の人々はその悲しみをぶつける相手を見失っていた。
確かに魔人への不安はあるかもしれない。
でもそれを表明したがために新嘗祭が引き延ばされてしまった。
些細なことかもしれないが、新嘗祭だって楽しみのひとつだったのだ。
その楽しみが奪われれば良い気持ちはしない。
だからしょんぼりするしかない。
ここまで考えて、ブーンはこの顛末の示す可能性に気付いた。
この一連の祭延期騒動は全てラスティア城政務部の策略ではないか。
223
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:13:08 ID:x6g1yXaQ0
まずはきっかけとなった事件に対する印象を変える。
さらに祭の延期という別の事件を作り出して民を悲しませる。
こうして価値判断の基準が混じることにより、魔人を一方的には責めにくい状況が作り出される。
この結果何が起こるかと言えば、ほとぼりがとっとと冷めていくことだ。
これこそが魂胆に思える。
その裏にひとりの優秀な衛兵の死があったとしても
簡単に忘却の彼方へと向かってしまうのだ。
と、ここでまた、思考がモララーに戻ってしまった。
ブーンは頭を振る。
あの人のことを考えちゃだめだ。
出口のない迷路が始まってしまう。
町並みに目線を向けた。
無理やりにでも集中できるものを探そうとした。
224
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:14:08 ID:x6g1yXaQ0
やがて、一人の小さな女の子に目が向いた。
从´ヮ`; = ;´ヮ`从ト キョロキョロ
年齢は一桁じゃないだろうか。
足をせわしなく動かして、広場の中央にある噴水に向かっていった。
噴水の前でくるくる。
何をしているのか少し気になった。
周りを見回しても、その子の親らしき姿は見つからない。
もしかして迷子なのではないか、ブーンの頭に疑惑が生まれる。
だとしたら保護しなくちゃならない。
町の治安を守ったり、国民を救済することも衛兵の仕事なのだから。
225
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:14:54 ID:x6g1yXaQ0
だけど
グググ
从´ヮ`从ト
(〆 ヽ) ポコンッ
从´ヮ`从ト
( ^ω^)「あ……」
その子の耳が生えてきて、思いとどまった。
226
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:15:53 ID:x6g1yXaQ0
魔人だ。
まるっこい小さな耳。
タヌキの耳があんな形だったと思った。
魔人が町にいることは珍しいわけではない。
何かに使役されているのだろうか。
でもあんなに小さい魔人がそうそう役に立つとは思えない。
闇市場では愛玩用の魔人が売買されているらしいが、
こちらはあまりに低俗だとして厳しく取り締まられている。
だいたいそれだったら町中を自由に歩き回っていたりはしないだろう。
だとすれば、あの女の子の魔人は
たまたま城下町に来てしまった、魔人の迷子だろう。
(〆 ヽ)
从´ヮ`从ト「こにしかめやも〜」
( ^ω^)「……」
227
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:16:55 ID:x6g1yXaQ0
魔人といえども困ってはいる。
本来なら助けるべきだ。
だけど、身体はそれを拒んだ。
いくら優しいといえども限度はある。
しかたないじゃないか。
モララー先輩はあいつらの仲間に殺されたんだ。
ためらうのは仕方ないだろう。
ブーンは自分に言い聞かせた。
一方で、胸の奥の別の部分が反抗していた。
優しくあろうとする元々の自分の性根が、だ。
魔人でも、ちゃんと頭を持って、感情を持って、生きているんだ。
わかってはいる。
もちろん命は尊い。
差別なんてするつもりは……
ないはずだったのに。
228
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:17:54 ID:x6g1yXaQ0
思考を逡巡させるのに疲れた。
酷い話だ。落ち着こうとしてこんなに気持ちが乱されるなんて。
思わず横を向く。現実から逃げるため。
魔人から目をそむけるため。
('A`)「よっ」
ベンチの横に、人がいるのにようやく気付いた。
( ^ω^)「え?」
(;^ω^)「え、ええええ!? ドクオさん!?」
いなくなっていると聞いたのは、あの政務室でのことだった。
そのドクオが今目の前にいる。
何かの間違いじゃないのかと、ブーンは目をこすった。
ゆっくりと目を開けても、まだドクオはいる。
幻覚じゃない。
( ^ω^)「……本人なんですかお?」
('A`)「あたりまえよ。
なんならさわってみるか?」
( ^ω^)「いや……」
229
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:19:07 ID:x6g1yXaQ0
ブーンは首を振り、ドクオに顔を向ける。
聞きたい話はまだまだある。
( ^ω^)「無事なのならどうしてここにいるんですかお?
早くお城に帰還したことを伝えないと」
('A`)「いや、いいんだ。あそこにはもう戻らん」
ドクオは厳然とした口調で言う。
('A`)「モララーを殺した奴らのところにはな」
( ^ω^)「……見ていたのですかお」
('A`)「ああ。王女と、ロマネスクと、魔人との繋がりをな。
あのとき俺は一足先に攻撃を食らって倒れていた。
でもそのおかげであいつらに発見されずにすんだ」
( ^ω^)「けがとか大丈夫なんですかお?」
230
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:19:53 ID:x6g1yXaQ0
('A`)「まだ痛むけど、そんなに深くはないさ。
あいつらから逃げ切れたくらいだからな」
ドクオはそう言って、腕を組む。
('A`)「モララーの葬儀はあったか?」
( ^ω^)「……先日の晩に」
あの日の赤い炎が脳裏によみがえる。
モララーは確かに送られた。
ふと、デレの手で覆われた顔も思い浮かんだ。
こんなときに何を思い出しているんだと、自分を諌めた。
魔人のことは仕方ないと言って憎んでおきながら
王女は許せるなんて、そんなの都合よすぎる。
('A`)「そうか。それはちょっと行きたかったかな」
( ^ω^)「……僕はあんまり行きたくなかったですお。
一応、顔は出したんですけど」
('A`)「……モララーの死を受け入れられないから?」
( ^ω^)「そういうことですお」
231
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:21:07 ID:x6g1yXaQ0
('A`)「まあ、そうだな。
あんなにあっさり死んじまうなんて、思いもよらないさ」
ドクオはそういって、肩をすくめる。
('A`)「ところで、どうして幼女をじっと見ていたんだ」
突然話が切り替わり、ブーンは焦った。
(;^ω^)「べ、別に幼女だから見ていたってわけじゃ!」
('A`)「じゃあなんでだ?
あの女の子が魔人だったからか?」
( ^ω^)「それは……」
すぐには答えられなかった。
噴水に目を向ける。
あのタヌキ耳の女の子はすでにいなくなっていた。
自分はあの女の子をどんな目でみていたのだろう。
やっぱり敵としてだろうか。
232
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:21:50 ID:x6g1yXaQ0
('A`)「気持ちはわかる」
('A`)「俺も、なあ。どうしてもそういう気持ちになることはある」
('A`)「俺がこの鼻を抉られたときも」
ドクオはそういって、自分の鼻をかいた。
見た目ではそう不思議ではない。
ただ少しだけ浮き上がって見えるくらいの鼻。
('A`)「俺にはな、魔人の匂いがわかるんだ。
魔人に襲われたときに匂いを覚えたのか、不思議な力の影響なのかはわからなねえ。
とにかく、魔人が近くに居ればわかるし、やろうと思えば身を隠せる」
( ^ω^)「……だから逃げられたんですかお?」
そう聞くと、ドクオはふふっと笑った。
('A`)「そうだな、皮肉な話だ」
('A`)「俺はいまだに嫌な気持ちを抱いているってのに。
だからたとえあんな小さな魔人だとしても、見たときにはつい思い出しちまう」
233
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:22:53 ID:x6g1yXaQ0
( ^ω^)「魔人を憎む気持ちがですかお?」
言いながら、心の隅がちくりとする自分に気付いた。
まだ割り切れない自分がいるのかと腹が立った。
('A`)「そうだ。
今回だって、モララーに手を出したのは魔人。
結局はあの種族の存在が邪魔をしてきたといえる」
ブーンは何も言わずにいた。
矛盾する気持ち。
この世界に存在する違和感。
それらが混ざり、言葉にならずに溶け合う。
しばらく沈黙する二人。
町の賑わいが確かに目の前になる。
でもその音がひどく遠くから聞える。
ずっと遠くの映像としての喧騒。
ただ眺めるためだけのもの。
234
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:23:53 ID:x6g1yXaQ0
('A`)「……なあ。ブーン」
ドクオは目を広場に向けて言う。
('A`)「お前は魔人のことをどう思う」
魔人、という言葉を、ブーンは頭の中で反芻した。
300年前に突然現れた、もう一つの人類。
( ^ω^)「……今の気持ちを度外視すれば、便利な存在だと思いますお」
ブーンは今まで魔人に取り憑かれたことはなかった。
それでも魔人によって利益を得ている人の話は聞いているし、
公共の交通機関、通信、インフラ、製品やサービス等で魔人の恩恵に与る機会はあった。
だから以前から単純に、人間の生活を豊かにする存在として認識してはいた。
おそらくこの世界の大半の人間が持っている共通認識だ。
235
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:25:08 ID:x6g1yXaQ0
('A`)「それはつまり、人間が魔人を使う、という意味で?」
( ^ω^)「ええ……」
('A`)「……そうか」
ドクオは、ふっと息を吐いて、それから頬杖をついた。
('A`)「モララーは、そうは思っていなかったんだ」
( ^ω^)「……え?」
どういうことだろう。
ブーンの疑問の声を受けて、ドクオは話を続ける。
('A`)「魔人が現れてから100年経った頃までは、魔人の軍事利用が検討されていた。
魔人を使っての戦争だ。そのために人間はたくさん魔人と契約した。
いわば人間を使用者側としての最大の使い方だ。最悪な使い方でもあったけどな」
236
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:25:51 ID:x6g1yXaQ0
('A`)「やがて、冷戦が100年目を迎えた時に人間は気付いた。
このままではいけない。魔人の力が暴走すれば何が起こるかわからない。
ひょっとしたらこの世が滅んでしまうかもしれない。魔人の不思議な力は得体がしれないんだから」
('A`)「その疑惑から、あっという間に民間人に反戦論が広まった。
そしてそんな奴らはすぐに軍隊の解体を目指し、あろうことか魔人にまでお願いをした。
お願いを聞きいれた魔人は、不思議な力が行使できるようになってしまった」
('A`)「結果として人間は強大な軍事力を持てなくなった。
あくまでも自衛のためのものしか、な。それ以上は他国の望みに反するから、魔人に壊されてしまう。
もっとも、その頃契約した魔人はすでにこの世にいないだろう」
('A`)「だから、今から軍事力を作ろうとすれば魔人に邪魔されずに作れるかもしれない。
でも、もう現代人にそれだけの気概は無い。
誰も戦争をしないし、魔人とだって争わない。平和に生きていければいい」
('A`)「そうして人間は魔人と共存を始めた。
だけど、それは決して対等ではない。
もちろん間抜けな人間はそれを見抜けず、自分たちが魔人を支配していると思い込んでいる」
('A`)「だけど、そうじゃない人もいる。
魔人と協力した結果として、俺たち人間は発展を放棄した。
人間が数百年かければ生まれたかもしれない便利さを、魔人によって叶えてしまったんだ」
('A`)「それは、果たして幸せなことなんだろうか。
俺たちは300年間、停まっている。魔人がいなければ何もできない生き物になってきている。
それは本当に自由か? 魔人を使っていると本当に言えるのか?」
237
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:26:53 ID:x6g1yXaQ0
そこから、ドクオは一段と声を大きくした。
この後続く言葉こそ、ドクオが一番言いたかったことなのだろうと思った。
ひいては、モララーの一番言いたかったことだ。
('A`)「俺たちはむしろ魔人によってその行動を制約されているんじゃないか?」
('A`)「人間にはもっと可能性がある。
魔人なんていなくても、それと同等のことはできたはずだ。
俺たちは魔人のせいでその可能性を潰してきてしまったんだ」
背筋がぞくっとした。
人間だけによる発展など今まで考えもしなかった。
('A`)「俺たちは便利な力も得られている。
一見すれば何にも縛られていない。幸せそのものだ。
籠の中の鳥と比べれば、俺たちは外に出て羽ばたいている自由な鳥だ」
('A`)「でもその鳥には制約がある。
結局は飼われている鳥さ、飼い主に同情されて籠からたまに出されるとしても、
その首には紐があって、一定の距離を飛んだらいずれ籠に戻されてしまう」
('A`)「それが、果たして自由かな」
238
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:28:07 ID:x6g1yXaQ0
鳥肌が立つのを感じた。
新しい何かを見つけたとき、人はそう反応する。
ドクオの言うことを、ブーンは頭の中で想像した。
人間の可能性について。
人間が魔人の力なしで何十キロも移動したり、空を飛んだり、海の中にもぐったり
そんなことができると言うのか。
だとしたらそれは、完全な自由だ。
('A`)「モララーの憤りはこれだった。
だからあいつは、人間を魔人から解放しようと企んでいた。
魔人を倒して、森にかえすことで」
('A`)「面白い奴じゃないか」
わずかながらに顔を歪ませて、ドクオが笑う。
すぐに真顔にもどり、ブーンの目を見つめてきた。
('A`)「なあ、ブーン。魔人についてどう思う?」
ドクオはさっきと同じ質問を投げかけてきた。
ブーンは答えに詰まる。
239
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:28:51 ID:x6g1yXaQ0
魔人が道具でもないとすれば、何だろう。
人類を損なわせるための生き物なのだろうか。
でも、だったらなんで人間を助けるのだろう。
('A`)「……難しいか」
(;^ω^)「……うまく言葉にまとまらないんですお。
その……すごいことだとは思うんですけども……」
ブーンは申し訳なくて、頭を下げる。
画期的な発想には思えた。
モララーの死に対する憤りを発散できそうにも。
だけど素直に答えられない。
今のところは。
この気持ちを整理するには時間がかかりそうに思えた。
だからブーンは答えられなかった。
すると、ドクオは何事かを考えるように口元を手で覆った。
('A`)「……実はな、モララーはお前が凄い奴だと評価していたんだ」
突然の言葉に、ブーンは首を傾げた。
240
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:29:54 ID:x6g1yXaQ0
( ^ω^)「へ? すごい?」
('A`)「ああ。
あいつはきっと、俺たちにできないことをやってくれるってな」
俺たちにできないこと?
モララーさんにできなくて、僕ができることなんてあるだろうか。
まったく心当たりが無い。
('A`)「あいつがどういう意味で言ったのかはわからない。
でも、そういう言葉がある以上は、お前を試す機会があると思った」
そういって、ドクオは言葉を切る。
胸ポケットに手を突っ込んで、平べったい黄金色のバッジを取りだした。
('A`)「もし興味があれば、ここに来てくれ」
ドクオがバッジを差し出す。
241
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:30:49 ID:x6g1yXaQ0
その横長のバッジに描かれていたのは
各々の剣を突き合わせたカエルたちの絵と、『三匹のカエル』という酒屋の名前
そして『レジスタンス会員証』という文字列だった。
☆ ☆ ☆
242
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:31:53 ID:x6g1yXaQ0
ドクオはその場をすぐに去った。
建前では行方不明だからだろう。
城下町を素早く、影の部分を選びながら駆けていき、人ごみに紛れていしまった。
ブーンは時間をおいてから歩きだした。
三匹のカエルは町の中にもいくつか看板を出していた。
ただ看板の矢印を完全に信じたがために、必要以上に大回りをしてしまった。
ようやく辿り憑いた時、その場所が広場からそう遠くはないことに気付いてブーンはがっかりした。
それでも気を取り直して、看板を確認する。
バッジと同じ絵。
剣を突き合わせた三匹のカエル。
城下町のレジスタンスのマークだ。
どうしてカエルなのかは知らない。
気分かもしれない。
243
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:32:51 ID:x6g1yXaQ0
そして衛兵の中にレジスタンスがいるという話も、ブーンは知らなかった。
お城に刃向う人々が、衛兵の中にいるなどなかなか考えられないことだ。
ドクオの話し方からして、彼はレジスタンスなのだろう。
一体どうしてなのだろう。
先程のモララーの話と関係があるのだろうか。
そういえばモララーも最後に言っていた。
三匹のカエルを覚えておけ。
それはこの酒場のことか。
だとしたら、モララーもまたレジスタンス?
ということは、どういう立場の人だったのか。
お城に味方しながら、お城の敵とも味方する。
なんでそんなことを。
244
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:33:53 ID:x6g1yXaQ0
その事情を知るにはもっと詳しい話を聞く必要がある。
だからブーンはこの場所に来た。
まだレジスタンスに協力するかは考えていない。
とにかく、今自分が知りたいのはモララー先輩のことだ。
ブーンはそう思って、お店の前で頷いた。
ドアノブに手を駆ける。
押すことで中が見えた。
ただ、光の加減で良く見えない。
「はい、いらっしゃい」
気のない声がする。
お店のマスターだろう。
思いのほか若い声だ。
マスターもまたレジスタンスなのだろうか。
このお店は全体としてレジスタンスの集会場となっているとも思える。
とにかく入ってからいろいろと聞きたい。
245
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:34:53 ID:x6g1yXaQ0
ブーンは完全に扉を開けて、中に入り込んだ。
( ^ω^)「こんにちは、です……お」
声が尻すぼみになる。
目が慣れていったために、状況が次第に認識できたからだ。
お店にはお客は一人だけだった。
('A`)「よし、来たな」
ドクオはすでに到着していたのだ。
でも、それを目の端に捉えつつも、ブーンの目はマスターにくぎ付けだった。
(;^ω^)「……は?」
混乱が口を突いて出てくる。
およそ人に向けていい音ではないものが。
246
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:35:54 ID:x6g1yXaQ0
(;゚∀゚)「……は?」
まったく同じ意味合いの音が、ブーンに向けても発せられた。
その若いマスターはどこからどうみても、あのときの少年だ。
手作り地球儀を取りあった少年、ジョルジュ。
247
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:36:59 ID:x6g1yXaQ0
城下町の酒場、『三匹のカエル』にて
ブーンは初めて仲間に遭遇した。
心の隅の奇妙な痛みを今は無視して
ただモララーの後を追いかけていた。
248
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:37:54 ID:x6g1yXaQ0
―― 第二話 終わり ――
―― 第三話へ続く ――
.
249
:
名も無きAAのようです
:2013/08/26(月) 23:38:15 ID:N2LbX6EE0
しかしホントにペース早いな
支援
250
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:39:07 ID:x6g1yXaQ0
―― コラム② 魔人 ――
(,,゚Д゚)
グググ
(,,゚Д゚)
.∧∧ ピンッ
(,,゚Д゚)
.∧∧
(,,゚Д゚)「耳がめんどくさい」
251
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:39:54 ID:x6g1yXaQ0
.∧∧
(,,゚Д゚)「コラムの表題にはなっているが、俺たちについてまだ話せないことは多い。
そもそも俺たち自身が自分たちの存在についてよくわかっていない。
300年前の世代はさすがにもうこの世にいないからな」
.∧∧
(,,゚Д゚)「まず、俺たちの身体には動物の一部がある。
普段は引っ込んでいて、仲間内や、力を使うとき、気分が昂ぶったときも出てきてしまう。
耳以外にもあるやつはいるし、爪とか牙とか、中には出し入れどころか骨格レベルで変わっちゃう奴もいる」
.∧∧
(,,゚Д゚)「俺たちは基本的に自然の中にいる。特に暮らしやすいから森が人気だ。野生でも変わったやつだけ町へ行く。
人間たちは俺たちに頼りたいときは森にやってくる。
それで手頃な力が使えそうな奴を選んで、お願い事をするんだ」
252
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:40:54 ID:x6g1yXaQ0
.∧∧
(,,゚Д゚)「俺たちはそのお願い事が叶えられるように不思議な力を使って頑張る。
まあ簡単な力仕事くらいなら、力なんぞ使わなくても平気なんだがな。
それと、たまに自分の方からお願い事を聞きに行く積極的な奴もいるらしい」
.∧∧
(,,゚Д゚)「不思議な力は何でもありというわけでもない。
作中でも答えたが、大半は肉体強化だ。
そしてたまに自然現象を操ったり、超能力を操る奴が現れる」
.∧∧
(,,゚Д゚)「その力はあくまでも現実にあり得そうな限り発揮できるんだ。
何もないところからは何も生まれない。作中の靄だって、あまりにも空気が乾燥していたら出ない。
個体によってもその度合いは違う」
.∧∧
(,,゚Д゚)「人類は発展をやめたとドクオは言うが、不思議な力を使ってちょっとずつ良い製品が生まれたりしている。
作中では写真がその例だ。ただ、感光材とかは使わずに
紙やガラスに不思議な力によって正確な絵を表すことで写真としている」
.∧∧
(,,゚Д゚)「今後、うっかり18世紀後半になかったものが作中で現れても
きっとそれは不思議な力によるものだ。きっとそうだ。そうに違いない」
253
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:42:08 ID:x6g1yXaQ0
.∧∧
(,,゚Д゚)「不思議な力はこのあたりにして、次の話にしよう。
俺たちの性質について。つまり、願いをかなえたくなるという性質だ」
.∧∧
(,,゚Д゚)「同胞を大別すれば二種類。契約済みか野生か、だ。
野生のは不思議な力を使えない。もし使っていたらそいつは本当は契約済みなんだろうな。
契約が破棄されれば不思議な力は使えなくなる」
.∧∧
(,,゚Д゚)「なんでこんな仕組みなのかと言われたら、そう言いつけられているからとしか言えない。
親の代からの命令なんだ。人間に協力してあげなさいってね。
もちろん心だってちゃんとあるし、普通の人間とほとんど変わりなく暮らしている奴もいる。幸せな奴さ」
254
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/26(月) 23:42:51 ID:x6g1yXaQ0
.∧∧ グググ
(,,゚Д゚)
ヒュン
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「……あえて最後に言わせてもらうとすれば
俺たちのことを“魔人”と呼ぶのは人間だけだ。俺たちは俺たちのことを普通に人だと思っている」
(,,゚Д゚)ノシ「それではまた次回。さすがに今回より時間が空くだろうなあ」
―― コラム② おわり ――
255
:
名も無きAAのようです
:2013/08/26(月) 23:48:24 ID:uIIgNcxg0
乙
ギコの最後のセリフが物語の核になってそうな雰囲気だな
256
:
名も無きAAのようです
:2013/08/27(火) 00:03:15 ID:P42nA1/g0
おつ!
257
:
名も無きAAのようです
:2013/08/27(火) 00:52:25 ID:LDUumxIk0
面白い乙
ここからどう転んでいくのかね
258
:
名も無きAAのようです
:2013/08/27(火) 02:14:40 ID:zgkxYIy20
乙
ここでまさかのジョルジュ…わくわくするぜ
259
:
名も無きAAのようです
:2013/08/27(火) 03:12:50 ID:KZYrO.ywO
読み終わった、予告から察すればここまでは書き終わってたのかな?
260
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/28(水) 15:47:31 ID:DwMEyd4M0
―― 予告 ――
.
261
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/28(水) 15:48:36 ID:DwMEyd4M0
('A`)「……ちゃんとやるんならな」
そういうドクオの表情には、既に諦めの色が浮かんでいた。
そうとは知らず、ジョルジュは「よし!」と気合を入れる。
( ゚∀゚)「じゃ、俺はいくぞ! ブーンも足を引っ張るなよな」
( ^ω^)「……おー」
さっきまでブーンに向けていた怒りはどこへやら
ジョルジュは楽しそうに走っていった。
目標があれば、ひとまずそれにひた走るタイプなのだろう。
どこまでも調子の良い奴だと、その背中を見つめながら思った。
('A`)「で、ブーンは……」
ドクオはブーンの右手に握られたものを指さした。
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