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ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです

1 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:05:29 ID:0tlWAR460
夢と言われれば、ただの夢。

それなりの疲労を溜め込んだ体をベッドに投げ出し、全身の力を抜いたその瞬間

浅い眠りに吸い込まれるとそこには、彼女が今生きる現実とは違う世界が広がっていた。


ただ、『それだけ』のこと―――。



ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
.

2 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:07:09 ID:0tlWAR460
すまぬ地の文多め

3 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:10:24 ID:0tlWAR460
◆第1話◆

XX12年 X月

ζ(゚ー゚*ζ「………」

この窓から眺める桜も、もう三度目である。

四季の流れを肌で感じることができない少女の唯一の退屈凌ぎが、その風景の移り変わりを眺めることだったのだが、それにもだんだん飽きてきた。


『デレちゃん、お薬飲んだ?』

『ご飯は食べれた?』

『何かあったらすぐ言ってね』


遊び盛りとも言える、年端もいかない彼女がこの空間に閉ざされてから三年が経とうとしてる。

学校やら友達やらの話題を出しかねてる看護婦も母親も、もはや同じようなことしか言わなくなった。

4 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:11:44 ID:0tlWAR460
学校に通ってた頃から車椅子で登校してたデレは、確かに校内でも目立つ存在だった。

好奇の目で見るものがほとんどだったかもしれないが、もともと本人の人当たりも悪くないので、困った時に助けてくれる同級生も中にはいたはずだが、一緒に遊び回れもしないデレは、同級生にとっては『友達』といえる存在ではなかった。

現に、小学生の足でも来れる程度のそう遠くないこの病院にわざわざ見舞いに来るものは最初のうち数人程度で、三年間のトータルも片手で数えられるほどだった。

5 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:13:07 ID:0tlWAR460
ζ(゚ー゚*ζ「………」

べつに絶望はしなかった。
他人なんてそんなものだと思うしかなかった。

人見知りもしない、あえて壁も作らない。でも同時に、過度な期待はしなくなっていった。

裏切られたとも思わない。
人間不信や対人恐怖というほど人を拒絶するわけでもない。

ひっくるめてそれが自分の気質だと、驕りもせず卑屈にもならず、ただ『そういうもの』として理解していた。

6 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:15:04 ID:0tlWAR460
小学生にしては、すれてるかもしれない。

でもそんなデレだって、年相応に外で遊び回り、時にはぶつかり合いながら理解を深め、最終的には笑い合う。
そうやって当たり前に友達関係を築く同級生が羨ましいと思うのも事実だ。


入院したての頃こそ、足が治ったら、走り回れるようになったら、と思い描いた理想はあった。

しかし、いざ完治して自由に歩き回れるようになったとしても


誰と?どこに?


その疑問に答えてくれる存在を作りそびれたのが致命的だった。


結局今となっては、外への関心も以前ほどはなくなり、室内での一人遊びで事足りるという安心感に身を委ねてるだけだ。

7 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:16:37 ID:0tlWAR460
ζ(゚ー゚*ζ(できた。お城)

パズル、ブロック、プラモデルなど一人で適当に時間を潰せる遊び方を覚え、手先ばかり器用になり


『お熱計ろうねー』

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

パターン化された会話に適当に頷き


『ほら、焦らないでー』

ζ(゚ー゚;ζ「……っ」

『ゆっくりでいいよー。一歩ずつねー』

ζ(゚ー゚;ζ「………っ!!」

ζ(゚ー゚ζ「」フラ…

バタン!!

『あっ!大丈夫かい!?』

ζ(ーζ「……うん」

時々歩行訓練に励み、健常者に一歩近づく。


それが、今のデレの日常だった。

8 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:17:59 ID:0tlWAR460
泣きもせず嫌がりもしないデレを、大人たちは素直で聞き分けのいい子と見てるかもしれない。

デレ自身、健常者である同級生や家族に対するコンプレックスや羨望を抑圧してるという明確な自覚はなかったが、常に前向きでひたむきな姿勢でいるわけでもない。

ただ言葉にしないだけ。あまり顔に出ないだけ。
自分に課せられた目の前の日常を消化しようとしてるだけなのだ。

9 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:19:40 ID:0tlWAR460
ζ(゚ー゚*ζ「………」

本意でもなく、不本意でもなく。
逃げもせず、抗いもせず。





ζ(゚ー゚*ζ「………」

『そんなものだ』と自己暗示でもかけるように胸に刻みながら。


.

10 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:20:41 ID:0tlWAR460
ガラッ

ζ(゚ー゚*ζ「………」

突然、病室の扉が開いた。

個室であるこの部屋に用があるとしたら、デレを訪ねてきてるに間違いはないだろう。

べつに珍しいことではない。


ζ(゚ー゚*ζ「……?」

来客が、母親か看護婦や医者であれば。



ξ゚⊿゚)ξ



.

11 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:22:32 ID:0tlWAR460
第1話おわり

12名も無きAAのようです:2013/08/12(月) 17:46:32 ID:2PMLTX3sO
おい、第二話早く

13 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:54:24 ID:0tlWAR460
第2話書けちゃったので投下

14 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:57:23 ID:0tlWAR460
◆第2話◆

XX12年 X月

その見覚えのない客人に、デレは一瞬訝しげな表情を浮かべた。

普段は人見知りをしないデレにしては珍しい、露骨に警戒するような表情だった。


ξ゚⊿゚)ξ「こんにちは」


若い女性だ。
デレの警戒を解こうと試みるような柔らかい声色だった。

〃ζ(゚ー゚*ζ「………」

その声には聞き覚えがあるようなないような、不思議な感覚だったがとりあえずデレは黙って会釈した。

15 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:58:58 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「足、まだ痛むの?」


この人は、デレの足が悪いことを知っている。

何故だかは一向にわからない。
この女性を認識する要素を、デレは何も持ち合わせてないのだ。

無意識のうちに何か手がかりを探すように、目の前の女性を不躾なまでに凝視する。

16 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:00:06 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ

20代くらいだろうか、よくこの部屋を出入りする看護婦なんかと年は近そうだが、看護婦たちよりも化粧は濃いめらしい。

しかし原型がわからないほどでもなく、もともとそれなりに彫りもあり、顔立ちの整った美人さんに見える。

にも関わらず、バッチリ化粧をした顔とは不揃いなほどラフな軽装である。

薄手のロングTシャツにタオルのような素材の軽そうなショートパンツ。それに裸足でクロックスといった出で立ち。

家から出たら徒歩15分圏内しか歩けなさそうな、完全なる部屋着である。


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