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( ・∀・)探偵モララーは信じているようです
60
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:12:06 ID:d3t9MV8U0
川 ゚ -゚)「そこで今年になってから何か新しいことがあったかなと自分なりに考えたのですが、なかなか決定打が無くて」
クーは残念そうに首を横に振る。
川 ゚ -゚)「ハインさんとの繋がりも、まだよくわからないです」
モララーは少しだけ時間を空ける。
別の角度から問題を精査しようと考えていた。
( ・∀・)「……あのさ、猫と宗教が関わることってないのかな」
すると、クーが目を瞬いた。
川 ゚ -゚)「宗教、ですか」
クーが首を傾げる。
モララーはハインを追う中で、L教団という宗教団体とのかかわりを見つけたことを説明した。
そこから、自分の考えを述べる。
( ・∀・)「ハインの部屋にはL教団の広報誌もあったんだ。
だから猫とこの教団、ひいては宗教についても何か関わりがあるんじゃないかとも思ったんだけど」
クーは髪を弄って、考えに耽る。
ややあって、口を開いた。
川 ゚ -゚)「……宗教と猫の関係が端的に表れる事例といえば、魔女狩りの話ではないでしょうか」
61
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:15:02 ID:d3t9MV8U0
( ・∀・)「魔女狩りって、中世の?」
すごく曖昧な認識しか持ちえていなかったが、その歴史上の行いについては知っている。
魔女を恐れたキリスト教の信者たちが、怪しい一般人を片っ端から捕まえて処刑した話。
川 ゚ -゚)「はい。猫はキリスト教によれば悪魔の使いと呼ばれていたんです。
それで魔女狩りの際も、たくさんの女性と一緒に、それ以上のたくさんの猫が処刑されたんです。
猫を殺し過ぎたせいでネズミが生き残り、ペストを流行させたとも言われているんですよ」
( ・∀・)「それほど、猫とキリスト教は仲が悪かったと」
川 ゚ -゚)「集団心理みたいなものですよ。力を持っていたのがたまたま教会で、それらが言うものをみんなが信じた。
でもさすがにこの現代で、魔女の化身だといって猫を捕まえたりなんてする人たちはいないんじゃないですかね」
もちろんだろうとモララーは頷いた。
( ・∀・)「確かにそれそのものは現実的ではないけど、ヒントにはなるかもしれない。
教団のことについてはマスに頼んであるんだ。だから後で一応話してみるよ」
川 ゚ -゚)「宗教と言えば、モララーさん、大学の傍にある教会、いったことあります?」
クーはふと思い出したように言う。あのハインとダイオードとで話した公園のそばの教会のことだろう。
( ・∀・)「あの、ちょっと歩いたところの? あるけど、どうしたんだ急に」
62
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:17:01 ID:d3t9MV8U0
川 ゚ -゚)「あのですね、あそこによくボランティアにいく友達から聞いたんですけど。
どうも今年からあそこの管理者が変わったらしいんですよ。
同じ宗派の中でもちょっと、怖いところというか」
( ・∀・)「……カルト?」
つい最近聞いたワードが自然と飛び出してきた。
川 ゚ -゚)「そうそう、それらしいんです。
それでなんだか怖くなってボランティアやめちゃっていたんですけど。
この話、役に立ちそうですか?」
モララーの頭の中では、先日M市であった神父の話が思い起こされていた。
L教団が教会を乗っ取ろうとした話。
それと同じことが、あの大学の傍の教会でも起こったのだろうか。
L教団が何か悪事を働くために他の教会をのっとるのだとすれば、それはおのずとハインとも繋がるはず。
ハインはそれを追っていたのだから。
( ・∀・)「ありがとう、調べてみる価値はありそうだ」
モララーはクーに礼を言う。
あの教会のことを知るにはぴったりの人物がいる。あの人にも話を聞いてみなくては。
63
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:18:15 ID:d3t9MV8U0
クーはモララーの言葉を聞いて、胸をなでおろしていた。
川 ゚ -゚)「どうやら、私でもモララーさんのお役に立てそうですね」
唐突にしおらしいことを言うな、とモララーは思った。
( ・∀・)「どうしたんだ急に」
クーはまた髪を弄って、言葉を選んでいるふうであった。
川 ゚ -゚)「だって、いつもいつも、モララーさんは一人で勝手に調査しちゃいますから。
一度くらいは手伝いたいって思っていたんですよ」
( ・∀・)「手伝うって、いつも情報くれているじゃないか。
それで十分助かってるよ」
モララーは何をいまさらというふうに言ったが、どうもクーを満足させるには至らなかったらしい。
クーはただ小さく笑って首を横に振るだけだ。
川 ゚ -゚)「あの、モララーさん。
そろそろ次の授業に行かないと」
( ・∀・)「ああ、そうか。
ごめんな、時間を使わせて」
64
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:20:25 ID:d3t9MV8U0
川 ゚ -゚)「いえ、その……」
やや黙って、それから言葉が続く。
川 ゚ -゚)「モララーさん、私は多分猫探しのことが解決していようとしてなかろうと、モララーさんたちに協力していたと思います」
( ・∀・)「……え?」
川 ゚ -゚)「そういうことです。
とにかく、今は頑張って下さい。
やっぱりモララーさんには探偵が一番似合っています」
モララーが何かを返す前に、クーはそそくさと行ってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
65
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:22:04 ID:d3t9MV8U0
モララーは学生通りにある書店にたどりついた。
ダイオードのお店である。
ダイオードは足腰の調子が悪いと伺っていたが、書店は開いていたし、ダイオードも確かにそこにいた。
大学に通っていれば、ダイオードがいまだに元気であることには気付いたのだろう。
モララーは久しぶりに書店に入った。
個人書店独特の本のにおいが鼻をつく。
/ ゚、。 /「やあ、久しぶりだな」
ダイオードが手を挙げて言う。
( ・∀・)「元気だったんですね」
/ ゚、。 /「あたりまえじゃないか、何を物騒なことを言ってるんだ」
歯切れのいい言い返しに、モララーはおかしくなる。
( ・∀・)「足腰が悪いって聞きましたよ」
/ ゚、。 /「ああ、確かに夏ごろちょっとうずいていたがな、ここに座るくらいはできる。
この話どこでしたんだっけな」
66
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:23:48 ID:d3t9MV8U0
( ・∀・)「いや、教会から聞いたんですよ」
すると、ダイオードは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
モララーはさっそく金脈を見つけた気分になった。ちょっと不謹慎。
( ・∀・)「何かあったんですか?」
/ ゚、。 /「ああ」
( ・∀・)「それはちょうどいいや」
/ ゚、。 /「ん? 何がだ?」
( ・∀・)「ちょうど教会に何があったのか聞こうと思ってたんです。
ダイオードさんが当事者ならば、よくわかるでしょう」
モララーはわくわくしながら返答を待った。
周りに人がいたら十分に聞きとれたであろうほどの大きな溜息をダイオードがつく。
/ ゚、。 /「お前本当に食えない奴だな」
ダイオードは敬意を込めたしかめつらをしてくれた。
67
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:25:07 ID:d3t9MV8U0
モララーは教会の事務職員が言ってくれたことを、しかと伝えた。
ダイオードは頭を抱える。
/ ゚、。 /「彼らはそんなこと言っていたのか」
嘆息をもらして言う。
その態度からして、教会の発言に問題点があることは明らかだ。
モララーははやる気持ちを抑えて質問を始めた。
( ・∀・)「ダイオードさんの体調が悪くなったから、読み聞かせはやめたって。
教会の言っていることは違うんですか?」
すると、ダイオードは手を軽く動かして否定を表した。
/ ゚、。 /「違うわけではない。確かに体調は悪かったさ。
ちょうど夏ごろは痛くて、通院もしていた。診断書もあるぞ。
しかし、私が教会に出入りしなくなったのはそれだけじゃない」
モララーは目つきを鋭くさせた。
( ・∀・)「どういうことです?」
68
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:26:32 ID:d3t9MV8U0
/ ゚、。 /「まず、教会の責任者が今年の三月から変わったんだ。少しその、教義に厳格になった。
それで、九月頃かな、あの教会で読みきかせを開いたときだ。
読んでいた本が教会の教義にそぐわないとして、とても嫌な顔をされた」
「まあ」とダイオードは話を続ける。
/ ゚、。 /「それだけのことなんだがね、口で言ってしまえば大したことのないように聞える。
しかし、あのときから教会のことが妙に怖くなってしまった。
まるで私そのものを否定されたような、そんな気がしてしまったんだよ」
モララーは小さく頷き、そして黙って聞いていた。
ダイオードが何かしら人間関係のトラブルに巻き込まれていたことは推測していた。
そんなダイオードからすれば、他者に否定されるというのはよほど怖いことなのだろう。
本人が大したことないと思っていないのは、口調からもわかった。
話は続く。
/ ゚、。 /「私はそんなわけで教会によりづらくなってね。
ちょうど足腰の具合も悪くなったのでお休みを頂くことにしたんだ。
とはいえ元々ボランティアだし、もう二度と行かないかもしれないが」
ダイオードは一気に話して疲れたらしく、重たい溜息をついた。
モララーは目を閉じて、情報を整理する。間を空けてから再び目を開けた。
( ・∀・)「そんな事情があったのですか……
教会に聞いたときは何も、わからなかったものですから」
69
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:30:30 ID:d3t9MV8U0
/ ゚、。 /「私も何も言ってないからな。わからないのも無理はない。
自分の気持ちなんてほいほい人に伝えるものじゃないさ。とくに嫌いとか苦手とか、そういうのはな。
ま、別にかまわないんだ。もういいことさ。
少し休んだら別の場所で、別のボランティアを始めるよ」
ダイオードは見る限り健康だ。現に書店のカウンターに座っている。
足腰の痛みも一時的なものだろう。
( ・∀・)「きっとすぐ、できるようになりますよ」
/ ゚、。 /「はは、ありがとう」
ダイオードは歯を見せて笑ってくれた。
本心から笑わないと、歯がみえることはない。そんな言葉を昔酒の席で聞いたっけ。
( ・∀・)「物語を教えることは私の一番の楽しみだからね」
ダイオードの顔は、笑みが溢れていた。
好きなことをしている人の顔。この前球場でも似たような顔を見た。
そしてそれは、ハインとは違う。
モララーは頭に浮かんだ顔を振り払うように、急いで話題を変えた。
70
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:33:02 ID:d3t9MV8U0
( ・∀・)「そういえば、いったいどんな本を読んで怒られたのですか?」
/ ゚、。 /「ああ、ある猫のお話でね……」
そうか、猫か。
またここでも出てくることになるとは、想定外だった。
となれば気になるのは教会との関係だ。
もう少し情報は得られないだろうかと質問する。
( ・∀・)「それで、その教会の管理者、いったいどんな人たちだったかわかりますか。
というよりも、ひょっとしてこの人たちじゃないですか」
モララーはあらかじめ用意しておいた、例の広報誌を鞄から取り出す。
準備しておくにこしたことはなかったと安堵した。
ダイオードは眉根を寄せてそれを見た。
/ ゚、。 /「あいにくあの人らの詳しい話は聞いてないんだが」
( ・∀・)「じゃあ、見覚えのあるものがあったら言ってください」
モララーはぱらぱらと広報誌を広げ始めた。
71
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:35:08 ID:d3t9MV8U0
ページには教団内部の連絡事項が連なっていた。
どこの支部がこんな活動をしたとか、こんなイベントがありますよとか。
協力してくれる人を集めたりしているので、きっと支部の中でも人が入れ替わっているのだろう。
そしてときには別の教会に介入して、その拠点を奪い取る。
まるで国取りゲームだ。
宗教は金になるとマスは言っていたし、ビジネスライクな側面もあるということなのだろう。
/ ゚、。 /「あ」
ダイオードが声を出し、モララーはページをめくる手を止める。
/ ゚、。 /「これ」
ダイオードはさっと指さす。
( ・∀・)「ああ、これは」
銀のロザリオが移されている。
そのページ全体が銀細工の紹介となっていた。
どうも教団の中でアクセサリーを作る部署があるらしく、その中の製品の紹介をしているらしい。
/ ゚、。 /「これはあのときのお嬢さんがつけていたものじゃなかったか」
そうか、ダイオードにはまだ教団とハインの繋がりを話していなかった、とモララーは今更にように思い出した。
モララーが何かを答える前に、ダイオードが顔をあげてモララーを睨む。
72
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:37:01 ID:d3t9MV8U0
/ ゚、。 /「さてはあのお嬢さんとこの質問攻めにはかかわりがあるんだな?」
(;・∀・)「さすが、鋭い」
素直に感心する。
/ ゚、。 /「なんだい、隠さなくてもいいだろうに」
(;・∀・)「話してもしかたないかなって思ったんだよ。
下手に巻き込んでもよくないだろうし」
/ ゚、。 /「てっきり普通に私のことが心配で来たのかと思ったのに」
ダイオードは渋い顔をして遠くを見て言った。
(;・∀・)「なんだよ、急にすねるなよ」
/ ゚、。 /「人を頼ることを知らんからだ。
まったく、その気になればこの街の仲間を募って協力してやってもいいんだぞ。
いつかの猫探しのときのようにな」
(;・∀・)「猫探しと人探しは違うよ」
/ ゚、。 /「ほう、それじゃやっぱり探しているんだな」
ああ、またか。
(;・∀・)「……なんか最近みんなこういうの上手くなってない?」
73
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:38:44 ID:d3t9MV8U0
/ ゚、。 /「何の話だ。
それより、この銀細工、実はあの教会でも見かけたぞ」
それを聞いて、モララーの思考はまた教会の方へと戻る。
( ・∀・)「じゃあやっぱり、大学の傍の教会もL教団がのっとった?」
/ ゚、。 /「これだけで判断するのは厳しいが、可能性としてはありうるな。
教会の人たちが急に変わって、私もかなり驚かされた。
この怪しい教団が乗り込んできたというのなら話はわかる」
ダイオードは広報誌の表紙を睨んだ。
/ ゚、。 /「L教団か、こういう団体など怪しいところばかりだ」
モララーは広報誌をしまう。
( ・∀・)「ありがとう、ダイオードさん。
ハインを探す手掛かりにはなりそうだ」
/ ゚、。 /「本当か?」
( ・∀・)「まだはっきりとはしないけど、情報は集まってきた。
後でいろいろと整理すれば何か見えてくるかもしれない」
74
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:40:22 ID:d3t9MV8U0
/ ゚、。 /「そうか。とはいえ、無茶はするなよ」
( ・∀・)「……なんか最近やたらと心配されている気がする」
/ ゚、。 /「顔が死んでいるという話はよく聞いている」
( ・∀・)「狭い世の中だなあ」
ダイオードに頭を下げた。
店を後にすると、学生通りが見えた。
まだ学生のあまり通っていないお昼過ぎ。もう少ししたら授業が終わってごった返す。
すっかり葉っぱの散り落ちた街路樹が列をなしている様は、寂寥感そのものであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
75
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:41:17 ID:d3t9MV8U0
( ・∀・)「マス、報告会だ」
その日の夜、マスは帰ってくると同時にモララーは告げた。
( <●><●>)「僕もちょうどそう考えていたところです」
( ・∀・)「何か有力な情報はあったのか?」
( <●><●>)「ええ、L教団について、パソコンも使ったし、実際足を使っても調べてみました」
( ・∀・)「そうか、忙しい中すまないな」
( <●><●>)「いえいえ、こういうのは好きですよ」
マスはそういって、座布団に座り、鞄を脇においた。
それから鞄を開いて中をまさぐった。
( <●><●>)「では私から報告させてもらいますね。
L教団は東京を中心に活動している宗教団体です。
新興宗教としての日は意外と長く、二十年以上前からこの国で活動しているみたいです」
76
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:42:27 ID:d3t9MV8U0
( ・∀・)「外国からきたのか?」
( <●><●>)「いえ、創設したのは日本人でした。信者に外国人が多いのは、海外の団体を吸収しているからみたいです。
海外のカルトが新興宗教の皮を被って乗り込んでくるのは決して少ない話じゃないんです」
( <●><●>)「彼らの主な活動は勧誘と講和、それから街の美化活動や育児などの福祉面と、一般的といえるんです。
ただ外から見えるのはそこまでです。中でいったい何をしているのやら、かなりの秘密主義がかされています。
とはいえ人に危害を加えるようなものならばどこかで事件になっているでしょうし、あからさまに怪しいことはできないとは思いますが」
( <●><●>)「それと、一度彼らの勧誘現場にも言ってみました」
モララーは目を見開く。
( ・∀・)「危なくなかったのか?」
( <●><●>)「外から見ればただの熱心な宗教家ですからね。大丈夫です。ただ何も知らなければ関わりたくないなとは思いました。
全員が黒いフードをかぶっていたので、不気味ではありましたし。
そういえばこれ、もらってきたんですよ」
そういって、マスは鞄から銀のロザリオを取りだした。
( ・∀・)「しかしほいほい配るな」
77
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:43:25 ID:d3t9MV8U0
( <●><●>)「でも配ってた人から言わせると、これはレプリカなんだそうです。当然本物の銀でもありませんし。
この十字のクロスしているところにダイヤがついて本物になるらしいですよ」
モララーはマスの手に煌めくロザリオをしげしげと眺めた。
そういえばあの広報誌の銀細工のページにも同じことが書いてあった。
( ・∀・)「これはやっぱりL教団が独自で作っているものなんだな」
( <●><●>)「そうですね。しかしあのように配ってしまっているところをみると、所有者も結構いるみたいです」
( ・∀・)「これがあるから関係者、とも言えないってわけね」
( <●><●>)「とはいえハインさんの場合はこれしか手掛かりが無かったわけですし、無関係とは言えなさそうです」
( ・∀・)「それは言えてる。実際過去を当たってもL教団に関係していることがわかったんだ。
やっぱりハインは意図的にロザリオを俺に記憶させていたんだろう」
それから、マスは鞄をごそごそとあさった。
( <●><●>)「それで、そう、写真も撮っておいたんです」
78
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:44:55 ID:d3t9MV8U0
( ・∀・)「L教団の?」
( <●><●>)「ええ、なんだか警察と少しトラブルになっていたみたいなんです。
その際に構成員の顔が見えたものがあったんで、プリントアウトしてきました」
テーブルの上に、マスが10枚ほど紙を並べる。
パソコンに移したデータを拡大印刷したものだ。
団体よ人たちは全員黒いフードを被っている。
目深に被っているので、顔ははっきりとはわからない。
しかし一枚だけ、フードが捲れている画像があった。
警察と揉み合いになり、高揚してフードをはらった、そんなところだろう。
( <●><●>)「どうでしょう、見覚えはありますか」
フードを外したその男は、スキンヘッドだ。異国の顔立ちをしている。
そして……
一瞬、言葉を忘れそうになった。
79
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:46:21 ID:d3t9MV8U0
(;・∀・)「知ってる……」
言葉は震えていた。
様々な感情が折り重なる震えであった。
大口を開けて、警官相手に何事かを怒鳴っている様子の男。
その鼻と耳には銀のピアスがあった。
(;・∀・)「俺はこの男に会ったことがある」
80
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:47:27 ID:d3t9MV8U0
モララーはありありと、あのときの恐怖を思い出していた。
たしかに、あの日コンテナにまみれて揉み合った男だ。
こんなところでお目にかかるなんて、思ってもみなかった。
そして奇しくもその男に会った日は、ハインと初めてあった日でもあった。
(;・∀・)「一年前、港で俺はこの男の顔を見たんだ」
マスが息をのむのがはっきりとわかった。
(;<●><●>)「一年前って、ひょっとして君がクスリの取引に巻き込まれたっていうあの」
(;・∀・)「ああ、でもどうしてそいつがここに」
(;<●><●>)「どういうことですか……その事件のときからすでにL教団は絡んでいたということですか」
モララーとマスはお互いの顔を見た。
いったいどこからがハインの誘導なのか、すでにわからなくなってきている。
ハインは、あのクスリの取引と、最初から関わりがあったということなのだろうか。
81
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:48:49 ID:d3t9MV8U0
その日モララーは自分の調査を報告し、マスとも検討し合った。
まだ情報は集め始めたばかり。
全体像は見えてこない。
それでも。
モララーは広報誌にあった日付を思い出す。
十二月二十四日の集会。
この日にきっと何かが起こる。わざわざ折り目がついていたのはそういうことなのだろう。
だからそれまでに調査を進めなければならない。
わかる範囲で。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
82
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:50:47 ID:d3t9MV8U0
十二月になった。
一気に気温は下がり、冬が早足でやってきた。
湿度も高く、ところによっては雪がちらつく日々だった。
吐く息は白い。
モララーはマフラーをしっかりと首に巻いていた。
十二月半ばの土曜日、K大学のそばの神社のベンチ。
思えば神社もあり、教会もあり、よく共存ができるなとモララーはふと思った。
モララーは人を待っていた。
自分の調査について報告するためである。
この場所を選んだのは、なるべく教会関係者から離れたかったからだ。
別にキリスト教徒はおみくじ買うなとか、そういうことはないだろうけど。いや、よくは知らない。
とはいえ、十一月末のあのときから、実は大して進んでいない。
L教団については個人的にチェックしていたものの、事件もなにも無い状況では限界があった。
83
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:51:48 ID:d3t9MV8U0
足音が聞えたので、モララーは顔を上げた。
暖かそうなコートを着た男が一人。
(#・∀・)「おせえよ」
モララーは思わずつぶやいた。
(´・ω・`)「時間は正しかったはずだが」
ショボンがのうのうと言ってのける。
モララーは首を横に振る。
(#・∀・)「全体的にだよ!
なんで俺たちが十一月に調べていたことを、十二月になってから報告しなきゃならねえんだ」
(´・ω・`)「仕方ないだろう、休みが取れなかったんだから。
僕は君のような暇人とは違うんだ、社会人なんだよ、わかるか」
相変わらず、どうも好きになれそうにない男だとモララーは思った。
84
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:53:26 ID:d3t9MV8U0
(´・ω・`)「それで、調査結果は」
( ・∀・)「……ハインはM市で暮らしていた」
それから、ハインの家の事情や、教会での話、L教団についてまで一気に話した。
(´・ω・`)「そうか、そんな事情があったのか」
さすがにこれらの内容はショボンを驚かせたようだった。
家の事情をさらけ出す人などそうはいない、特にハインのような複雑な事情ならなおさらだ。
ショボンは何かを思い出すかのように顎をさすっていた。
(´・ω・`)「彼女が警察官になるために必死で勉強していたことは知っていた。
ただ、その事情までは私は踏み込んで聞いたことはなかった。
彼女は彼女なりに、何かを感じて、決意したのだろうな」
( ・∀・)「それで、どうして警察官をやめてしまったんですかね」
(´・ω・`)「身分を捨てる理由か。
その身分であることが何か不都合を引き起こしていたというのが、真っ先に思いつくな」
85
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:54:30 ID:d3t9MV8U0
( ・∀・)「でも、警察官であることの不都合って、なんですか。
L教団が本当に悪事を働いていたとしても、仕事とプライベートは別物でしょう」
(´・ω・`)「それはもちろんそうだろう。
警察官お断りなどという決まりごとでもあれば、それこそ怪しい団体だと公表していることになる。
ハインは教団の構成員になってずいぶん経っていたのだろう?」
( ・∀・)「おそらくは。
あの広報誌も教団関係者に配られるものでした。
それに、ハインはずっと銀のロザリオをつけていた。
少なくとも春にはすでにL教団と接触していたはずです」
(´・ω・`)「そして春には警察をやめていた。
もちろん警察の側としても、宗教関係者に不利益を被らせるような理由は無いはずだ。
個人の思想については、いかに公務員であろうとも私情である限り自由だからな」
(´・ω・`)「客観的な理由は存在しそうにない。
ならばハインの心情の面から推察するべきじゃないか?」
( ・∀・)「心情と言いますと?」
(´・ω・`)「何をするにしても二足の草鞋はつらいものだ。
本気になってものごとに取り組みたいときは、人は必要な行動だけを取捨選択する。
ハインは警察という仕事以外の、教団にまつわることに集中しようとしたんじゃないか」
86
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:55:26 ID:d3t9MV8U0
( ・∀・)「仕事を捨ててまで、教団に入った……」
モララーは以前ハインが語っていた仕事についての考えを思い出した。
あの時ハインは何としても警察の仕事をしたいと意気込んでいたはずだ。
思えばあのとき既にハインは警察をやめていたのだろうが、それでもあの話が嘘だったとは信じられない。
( ・∀・)「ハインは警察という身分にとらわれずにL教団について調べようとしたんじゃないでしょうか」
(´・ω・`)「というと、警察のままでは限界があったということか」
( ・∀・)「ええ。例えば警察なら事件が起きないと捜査はできませんよね。
あるいはその前触れとか。とにかく、悪いことしそうな連中ってだけで捜査はできないはずです」
(´・ω・`)「疑わしきは罰せず。
日本の刑事訴訟法上の原則だ。もっともマスコミをはじめとして、一般に理解されているとは言い難いが。
そのためにハインは警察をやめて、独自で捜査し始めたということか」
( ・∀・)「俺と会っていた理由もそこにあるはずだ。
きっと、あの日々の中で、教団に関係する事実があったはず」
87
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:56:26 ID:d3t9MV8U0
モララーは真剣に、あの日々を思い起こそうとした。
イメージとして浮かぶものはいくつもある。
でも、それらを結び付けることは思いのほか難しい。
会っていた期間はほんの数カ月。漫然と過ごした日々だ。
L教団と多少結び付くかもしれないといえば、K大学のそばの教会くらいだ。
ダイオードからの話の中にあったように、教会の管理者がL教団に変わった。
でもだからなんだというのだろう。
次に思い浮かべたのは先日のクーの話だ。
猫について。猫が減っている。猫は悪魔の使い。
ハインの部屋にいた猫の死骸。
ショボンがまた黙ってしまったので、モララーは目線を足元に向けた。
ちょうど枯れ葉が風になびき、飛ばされるところだった。
88
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:57:27 ID:d3t9MV8U0
枯れ葉は宙を舞い、そして境内の出口の方へと流れるように飛んでいく。
やがて一対の狛犬の一方にぶつかり、止まった。
狛犬、そういえばいつかハインはあの狛犬をかわいいと言っていたっけ。
そして犬はいい、とも。
( ・∀・)「ショボンさん。
ハインが猫嫌いだった、なんてことないですかね」
犬が好きで猫が嫌い、なんて安直な話もないだろうが、ハインのしぐさから連想してモララーは質問した。
(´・ω・`)「どうしてそんなことをきくんだ?」
( ・∀・)「実は、ハインのいた部屋で猫の死骸が見つかったんです」
あの匂いの無い死骸。
あれのおかげで自分はハインが十月初旬まであそこで暮らしていたことに気付いた。
広報誌が改めて差し込まれたものであることも。
(´・ω・`)「……そんなことはなかった。
むしろ彼女は猫を、自分に似ていると言っていたよ」
自分に似ている?
( ・∀・)「そんな話、したんですか?」
89
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:58:27 ID:d3t9MV8U0
モララーはショボンの方を向いた。
ショボンはモララーを一瞥し、境内へと目線を戻す。
(´・ω・`)「いつのことか忘れたが、一緒に仕事をしていたときだ。
ある街で猫を見かけてな、そのときにハインがそう言っていた。
『かわいそうにな』とも言っていたが」
( ・∀・)「かわいそう……」
(´・ω・`)「そのときは聞き流したのだが、いったいどういう意味だったのだろうな」
( ・∀・)「ハインの部屋に、猫の死骸があったんです」
モララーはショボンの反応を伺った。
(´・ω・`)「死骸? そんなものが転がっていたのか」
( ・∀・)「ええ」
(´・ω・`)「自分の部屋で飼っていたのか? その猫は」
( ・∀・)「いえ、あのアパートはペット禁止だったので、持ち込んだだけみたいでした。
鳴き声も聞こえなかったようですし、死にかけているのを持ちこんだのかなと」
(´・ω・`)「死にかけ、か。
猫に同情して持ち込んだ、だけどすぐ死んでしまった、とでもいうのだろうか」
ショボンは質問というよりも、ただそう呟いた。
( ・∀・)「ショボンさん、他にもききたいことはあります」
90
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 00:59:27 ID:d3t9MV8U0
モララーは猫から連想した。
クーの話についてより掘り下げれば、何か得られるかもしれない。
( ・∀・)「最近猫に関する事件はありましたか?
猫が盗まれたとか、いなくなったとか、そういうので」
ショボンは一層小難しいことを考えている人のように唸った。
(´・ω・`)「私はそういうのどかな仕事をする部署の人ではないんだがな。
強いて言うなら、最近は悪質なブローカーが増えている」
( ・∀・)「ブローカーというと、つまり猫を売ったり、ですか」
すると、ショボンは肯定した。
(´・ω・`)「そうだ、他人の飼い猫や飼い犬、それに野良の生物を盗んで海外へ売りさばく。
そこから先は何に使われているかはわからん、国によっては食用したり、薬用にしたり、いろいろだ。
悪質というのは、それこそ組織的にこと犯罪を行っている連中が増えてきているということだ」
( ・∀・)「……そんなことが」
(´・ω・`)「海外から出張して、日本のペットをかっさらい、持って行ってしまうなんて話もある。
あるいは日本ですでに加工してしまったり、おぞましい話だがね。
ブローカーはどんどん進化している。手口も巧妙化しているんだ」
(´・ω・`)「空港等窓口の警戒意識もまだザルだからね。止めたくても止め切れない。
野良犬や野良猫のための制度ができあがるにはまだしばらく時間がかかるだろうな。
バブルがはじけて以降、この国はまだ、国民に現実さえつきつけ切れていないのだから」
ショボンはふうっと溜息をついて、ポケットを探る。
91
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:00:28 ID:d3t9MV8U0
(´・ω・`)「煙草、いいかな」
モララーは構わないという代わりに頷いた。
ショボンは、「失礼」と言ってライターを取りだす。
煙が広がる。
ショボンの話は貴重だった。
ブローカーが組織的に行われているならば、なんらかの団体がその組織の役割となることも考えられる。
表向きは宗教団体で、裏ではブローカーというのもありうるのではないか。
( ・∀・)「そういえば」
モララーはまた別の内容を思い出した。
先日マスが見せてくれた画像に映っていた男。
( ・∀・)「ショボンさん、一年前の東京湾での事件、覚えていますか」
(´・ω・`)「東京湾?」
( ・∀・)「ええ、まだハインが警察をやっていたときの事件です。
ハインから話を聞いていたんですが、麻薬の取引をやっていて、俺も巻き込まれたあの」
(´・ω・`)「ああ、そういえばあのとき君と初めてあったんだったな。もう一年も前か。
私たちが警視庁の捜査に協力していたときだ」
( ・∀・)「あの事件、L教団が絡んでいませんでした?」
92
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:01:26 ID:d3t9MV8U0
途端に、ショボンの顔が暗くなる。
(;´・ω・`)「どうしてそう思う?」
この男が動揺する姿を見るのは初めてかもしれない。
モララーはようやく手ごたえを感じた。
( ・∀・)「あのとき港であった黒服のピアスをした男が、L教団にいたんです」
(;´・ω・`)「なんだと……そんな男がいたのか」
知らないのか、と言いそうになったが、やめた。
思えば警察に捕まっていないからこそピアスの男は今も元気で教団で活動しているわけだ。
モララーは頷いた。
( ・∀・)「同居しているマスが写真を撮ってくれて、そこに映っていたんです。
ひょっとしたらあの取引にもハインは関係していたのかもしれません」
ショボンは顔を顰めている。
モララーは返事を待ったが、また沈黙が続いてしまう気がしたので、自分から切り出すことにした。
( ・∀・)「ショボンさん、あの事件、いったいどんな事件だったのですか?
警察の捜査はほとんど進展しなかったと聞いていますが。あ、これはハインから聞いた話です」
(´・ω・`)「そうか、そんなことまで」
ショボンは苦々しげな顔をして、大きな煙を吐いた。
93
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:02:26 ID:d3t9MV8U0
(´・ω・`)「海外の麻薬密売組織が絡んでいたんだ」
ショボンは重く言葉を紡ぐ。
(´・ω・`)「日本の中だけじゃ限界があった。
関係していた外国人も身分を偽装していた。帰国でもされていればもはや警察は手を出せないんだ。
捜査が進まなかった理由はそれだ。取引までこぎつけたのも運が良かったんだがな」
( ・∀・)「……L教団にも外国人はたくさんいます。
L教団がその組織にも関与していた可能性も」
(´・ω・`)「だとしたら、これは組織犯罪だ」
ショボンは一層の厳しい顔をモララーに向けた。
(´・ω・`)「なあ、モララー」
真剣な表情で、ショボンは声をかけてきた。
(´・ω・`)「まだ捜査は続けるつもりなのか?」
どうしてそんなことを聞いてくるのか、モララーはショボンの真意をはかりかねた。
答える代わりに、訝しむ表情をショボンに向ける。
(´・ω・`)「組織犯罪ともなれば、危険度は跳ね上がる。
個人の手にはおえない。ハインを追っていれば、君は大きな事件に巻き込まれることになる。
私としては、一般人である君をなるべく危険から遠ざけたいと思うのだが」
94
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:03:26 ID:d3t9MV8U0
(#・∀・)「そんなこと、できるわけないでしょう」
考える前に声が出てしまった。
モララーは憤慨した。
(#・∀・)「ハインは俺をここまで導いてきているんだ。
あいつは何かしらたくらんでいる。そして俺はそのたくらみに必要なんだ。
だったら行って、あいつが何を考えているのか確かめたいんだ」
(´・ω・`)「たとえ騙されていたとしても構わないというのか」
いつかのフレーズを再び使ってきた。
意図的にではないだろう。
モララーはせせら笑う。
( ・∀・)「前にも答えたとおりな」
ショボンは不思議な目でモララーを見つめた。
憐れみのようにも、怒りのようにも見えた。
モララーはショボンをじっと睨みつけていた。
誰に言われようとも、自分は自分の捜査をやめるつもりはない。
ショボンだってそれはわかっているはずなのに、なんでこんな話をするのだろう。
95
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:04:26 ID:d3t9MV8U0
ショボンはモララーを向くのをやめ、煙草をくわえた。
言葉が交わされないまま、その口からまた煙の塊が吐き出される。
煙はゆらゆらと宙をさまよっていった。
(´・ω・`)「ハインはなんでお前を巻き込んだのだろうな」
ショボンが呟く。
もちろんモララーだってそれは知らない。
( ・∀・)「……それも、確かめたい」
煙が空気に溶けていく。
ショボンは身体に悪そうなものを追い出すかのように、「はあ」とはっきり聞き取れる声を出して溜息をついた。
(´・ω・`)「言っておくが、我々としてもL教団はマークしておくつもりだ。
くれぐれも警察の邪魔はするなよ」
ショボンは再び鋭い視線をモララーにぶつけてきた。
モララーは嫌な気分になる。自分が邪魔になる可能性があるとでもいうのか。
一般人だから必ず邪魔になるとでもいうような口ぶりだった。
やはりこの男は好きになれない。
( ・∀・)「何かわかったりしたら連絡しますよ」
96
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:05:26 ID:d3t9MV8U0
きっとショボンの方からはL教団についての情報は何も教えてくれないだろう。
さっきもショボンが言っていた通り、一般人は事件に巻き込みたくないはずだ。
しかしモララーとしては情報がほしいし、いざというときに協力してほしい。
せめて情報提供という貸しを作っておかなければならない。
今日会ったのもその一端だ。ショボンたちの捜査に少なからず貢献できた。
こうしておけばショボンだって、いざというときはモララーに協力せざるを得ないだろう。
自分ひとりでの調査には限界がある。
それでも、いずれはハインと自分で向き合って話がしたい、それがモララーの願いだった。
だから集会の件についても伝えてはいない。一人で乗り込むと腹を決めていたからだ。
少しL教団について調べれば集会のことはわかるだろうし、大した問題でもないだろう。
冬の風が神社に流れた。
ショボンは律儀に火を消した煙草を自分で回収した。
そのまま言葉少なめに二人は別れた。
97
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:06:31 ID:d3t9MV8U0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日の晩、クーから突然連絡がきた。
川*゚ -゚)「モララーさん、今日友達から聞いたのですけどね!」
クーが珍しく興奮している。
電話越しからもその様子がよくわかった。
アパートの部屋の中には誰もいなかったが、モララーは思わず耳を押さえてあたりを見回した。
(∩・∀・)「ちょっと、声がうるさいかなー」
川*゚ -゚)「すいません!」
どこかできいたやり取りだなと、頭の片隅で思い返す。
嫌な気分になったから話に戻った。
( ・∀・)「なんだ、どうした?」
川 ゚ -゚)「農学部棟が取り壊し工事していたのは見ましたよね?」
モララーは先日見た白い壁を思い出した。
( ・∀・)「ああ、ある」
川 ゚ -゚)「今日友達が噂していたんですけど、あそこから穴が見つかったらしいんですよ」
98
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:07:26 ID:d3t9MV8U0
(;・∀・)「あ、穴?」
川 ゚ -゚)「はい、工事現場の外の校舎から見えたらしいんですけどね。
農学部棟がとうとう全体的に解体されまして、地面が露わになっていたらしいんです。
それで一部にブルーシートが敷かれていて、穴があるのが見えたらしいんですよ」
( ・∀・)「えっと、それは結構大きい穴だったのか?」
川 ゚ -゚)「人が五人くらい通れるくらいですかね。
工事をしていた人たちも何人かその穴によって、中の様子を見たりしていたとかで」
( ・∀・)「じゃあ、それがどこかに通じていたり?」
川 ゚ -゚)「どうなんでしょうね。穴に入っていった人もなんだかすぐに戻ってきたりしたようです。
ひょっとしたら埋められているのかもしれません。
でも、私気になったことがあるんです」
川 ゚ -゚)「あのときラップ現象は振動で起きるって言っていたじゃないですか。
あの穴を伝って振動が伝わったってことは、考えられますかね」
( ・∀・)「……ありうる」
返事は速かった。
むしろ状況を聞きながら、そのことばかりが頭の中にあった。
99
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:08:25 ID:d3t9MV8U0
穴が見つかった。
埋められているかもしれないとしても、どこかに繋がっていたものを後から埋めたことも考えられる。
いつ埋めたのか、自殺が発覚してからでも埋められたのではないか。
農学部棟の教授が穴を使って何かをしていたとしたら?
もしその穴がどこかの組織によって作られたとしたら?
頭の中で、ピースが重なっていく。
ラップ現象が始まったのが、今年の初め。
教会の管理者が変わったのも今年の初め。
街の猫がいなくなったのも今年の初め。
農学部棟の教授がいなくなったのが今年の夏。
教会の管理者であるL教団と関わりのあるハインがいなくなったのも同じころ。
ハインがいなくなったアパートの一室には、L教団の広報誌と猫の死骸。
猫を欲する組織が存在するというショボンの示唆。
これは偶然の一致か?
100
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:09:36 ID:d3t9MV8U0
証拠はまだない。
だけど、手掛かりはまだ残されている。
あの広報誌にあった日付。
十二月二十四日。
ハインが残したメッセージ。
集会に行けば何かがわかるのではないか。
モララーの気持ちは昂ぶった。
川 ゚ -゚)「ちなみにあの音、しだいに小さくなっていってたみたいですよーって、モララーさん、聞えてますか!」
クーがほとんど叫ぶように言うので、モララーはようやく我に返った。
Σ( ・∀・)「あ、ああ、悪い!」
川 ゚ -゚)「モララーさん、何度も言ってますけど、絶対無茶はしないでください」
クーは大きな声で忠告してくれる。
(;・∀・)「……まあできたら」
101
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:11:20 ID:d3t9MV8U0
「はあ」という音がはっきりと拾われてくる。
電話越しで聞えるなんてそうとう大きい音なのではないかと思った。
川#゚ -゚)「できたらって、なんですか!
なんでそんなに曖昧なんですか!」
今日のクーは良く叫ぶ。
モララーはなんとか言い繕うと思ったが、しばらく考えて止めた。
(;・∀・)「悪い、クー。
正直危険な目にあうかもしれない」
それは直感でもあった。
L教団の集会に行けばなにかがわかる。
でもそれが安全な道だという保証は無い。
( ・∀・)「だけど行かなくちゃならない。
いって、ハインと会って、確かめなくちゃならない」
返事は無かった。
随分と長い沈黙。
クーの表情はいつも以上に余計にわからない。
モララーは、「あれ?」と確認するが、電話が切れたわけではなかった。
102
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:12:27 ID:d3t9MV8U0
川 ゚ -゚)「モララーさん」
妙に抑揚のない声が聞えてきた。
しかし、やっと言葉が聞えて、モララーは素直に安堵した。
川 ゚ -゚)「あなたは本当に、ただの興味だけで相談事務所のお手伝いをする人がいると思っていたんですか」
突然の内容に、モララーは「へ?」と情けない声を出した。
クーからは大きな溜息が聞えてきた。
川 ゚ -゚)「必ず帰ってきて、それでハンカチ返してくださいね」
(;・∀・)「え、は、ハンカチ?」
モララーが返事をしたときにはもう、電話は切れていた。
なんで今更ハンカチの話をしたのだろう。
モララーは心底判りかねるといったふうに、首をかしげた。
103
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:14:13 ID:d3t9MV8U0
( <●><●>)「まったく罪作りな男ですね君は」
あまりにも驚いたので悲鳴を上げて、モララーは振り返った。
(;・∀・)「マス!! いつからそこに! お化けでももっと主張してくるよ」
「さっき帰ってきましたよ。
どれだけ注意散漫になってるんですか君は」
( <●><●>)「クーさん随分大きな声で叫んでましたね。
廊下でも若干聞えましたよ」
( ・∀・)「それは、ちょっと建てつけに問題があるんじゃないかな」
( <●><●>)「いやあ、クーさんをあそこまで叫ばせる君にも問題はあると思いますけどね。
まあ、それはそれで君らしいです」
良く見ればマスはにやにやと笑っている。
モララーはまだいまいち飲み込めていないままだった。
( <●><●>)「そういえば、これを君に渡したかったんです」
104
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:16:23 ID:d3t9MV8U0
マスは鞄に手を突っ込んで、ロザリオを出した。
( <●><●>)「あの日、僕がもらったやつです。おまもりだと思ってください」
マスからそんな言葉が出てくるのを意外に思った。
普段現実主義的な思考をみせているマスからは、あまり神頼みする姿は想像できなかったからだ。
マスはどことなく楽しんでいるようであった。
集会に乗り込むのはモララーだったので、人ごとだとおもって、とモララーは心でぐちった。
そうして、十二月も過ぎていく。
集会が迫る。
モララーはひらすらにハインのことだけを考えていた。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第九章 クリスマスイブ へ続く。
105
:
第八章 猫
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:20:18 ID:d3t9MV8U0
目次
>>2
登場人物
>>3-52
第七章 球場
>>56-104
第八章 猫
日曜日であるうちに第九章は投下します。また夜九時頃になるかなと。
全十章+エピローグとなります。
八月中には終わるでしょう。
それでは。
106
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 01:47:19 ID:fAgmjjd60
乙
これほど毎回続きが気になる話は初めてだ
107
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 01:57:49 ID:Jp1PKhhs0
乙!
108
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 02:24:50 ID:YUx84vHQO
100レス超えてたけど一気に読んでしまったよ
あい変わらす読みやすく、内容の把握もしやすい文章だな
109
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:15:41 ID:d3t9MV8U0
投下します。
110
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:18:15 ID:d3t9MV8U0
十二月二十四日 午後一時
クリスマスイブである。
キリスト教徒はこの習慣をどう思っているのか、モララーは若干気になっていた。
勝手に記念日など作られて当惑しているのではないかと。
しかしこの日に集会を開くとなると、少なくともL教会はうまく折り合いをつけているようだ。
日本全体で見て、普段宗教に関心のない人たちがこぞってキリストの誕生の前祝いをする。
当然それに関連する物品が売れ、イベントが盛況となり、利益がおちる。
それらのお金は穢れのない、善意の塊だ。疑いをかけられる余地も無い。
なるほど、宗教団体を作りたくなる気持ちもわかる。
アパートでモララーは集会へ行くための準備をした。
集会はお昼過ぎから行われる。なので余裕はあった。
マスは仕事を休み、部屋で様子を見ていると約束してくれた。
( <●><●>)「いざとなったら必ず連絡するんです」
( ・∀・)「そっちこそ、俺の帰りがあまりにも遅かったらショボンさんに伝えておいてくれ」
( <●><●>)「何事もないことを祈ります」
( ・∀・)「集会には一般人もたくさんくるみたいだし、そうそう危ないことはできないと思うけど。
万が一ってこともあるしな。よろしく頼む」
そうして、モララーは部屋を後にした。
111
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:19:46 ID:d3t9MV8U0
天気予報は、午後から雪だ。
ひょっとしたら降り積もるかもしれない。
それまでに帰ってこれるかな、とモララーは不安になる。
電車が止まったりするのももちろんだが、
もし事件に巻き込まれたらどうなってしまうのか、考えると恐ろしい。
しかしこれでハインに近づけるなら。
モララーは思い直して力強く足を進めていった。
十二月二十四日 午後二時 東京都渋谷区――
その場所が集会の集合場所に選ばれていた。
といっても、参加者が一同に会すると迷惑になるため、数分ごとに何グループかにわけて引率されることになっていた。
集会への誘いはネットの他、広告や書籍等で行われていた。
また、この集まりを見て興味を抱き、事前に声を掛けられていた人もいるらしい。
場合によっては今日この駅前でうまく勧誘される人もいるようだ。
参加は無料、人数も特に限定されていない。
会場は比較的大きなフォーラムだし、人数が多すぎるということはないと考えているのだろう。
いまだに勧誘している人がいるということから見ても、まだ席に余裕があると考えられる。
112
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:21:54 ID:d3t9MV8U0
この集会の目的は、自分たちのことを多くの人に知ってもらいたい、というところだろうか。
時間も二時間弱、場所も駅から歩いて数分なので、気軽に寄ることができる。
厳しい団体だと聞いていたが、門戸は広いようだ。
むしろある程度ストイックな部分を見せているからこそ、引きつけられる人がいるのかもしれない。
一般書籍や広告でL教団を見かける機会が多くなったと最近モララーは感じていた。
ハインのことを追っている最中に注意がむけられたというのもあるだろうが、客観的に考えても教団は潤っているようだ。
お金ができれば信者ができる、その信者がまたお金を落とす、見事な成功のサイクルができあがっている。
モララーが一人で感心していたところ、突然声をかけられた。
(゚A゚* )「参加者ははがきをみせてください」
例のフードをかぶっている。それが教会の正装なのだろう。
参加者はがきは電話で予約をした三日後に送られてきていた。
これが集会参加者の証明書というわけだろう。
(゚A゚* )「マスさんですね、今日はありがとうございます」
登録にはマスの名前を使わせてもらった。
念のためである。モララーの名前を知っている人物はハインと、ひょっとしたらピアスの男ぐらいであろうが。
もしもモララーの名前が知られているとしたら、名簿に載った時点で危険が伴う。
113
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:23:54 ID:d3t9MV8U0
名簿を持った男はすらすらと名前欄にチェックを入れていた。
(゚A゚* )「素敵な一日をお過ごしください」
果たして素敵な一日を送ることができるのか。
自嘲を喉もとでこらえて、モララーは一礼した。
やがて旗をもった男が声を張り上げてグループを引率した。
先頭こそフードの連中で固められていたが、参加者はほとんど私服だ。
怪しすぎる団体というほどでもないだろう。
歩いている最中も特段変わった様子は無かった。
よくみれば参加者には、敢えて言えばカップルが多い。
この時期のクリスマスイベントなのだからそれは仕方ないのかもしれない。
ただ、何人かは妙に深刻な顔をしている。
その様子からおそらく宗教的意義を見出している参加者なのだろうとモララーは推測した。
そのような方々はばらばらにあるいているので正確な数はわからないが、相当な割合にのぼるのではないか。
宗教に助けてもらいたがっている人はたくさんいるということを、モララーは今この場で見せつけられた。
あんまり暗い人の顔も見たくなかったので、モララーは都会から覗ける空に目をやった。
114
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:25:54 ID:d3t9MV8U0
雲は重厚であるが、雨雲のようにまっ黒というわけではない。
雪を降らせる雲はこんな色をしていた、モララーは山で見た雲を思い出していた。
天気予報は当たるだろう。もう数時間もすれば雨が降るはずだ。
集団が歩みをとめた。
目の前には前衛的な白い建物が見える。
ここが会場らしい。
フォーラムについたら、あとは誘導されるがままだった。
流れるように会場につき、受付を済ませる。
はがきの名前通り、しっかりと分手マスという人物として認識される。
それからしばらくしてまた引率していた人の声に従い、重い扉の向こうへ入る。
この建物自体は最近できたものだ。
しっかり暖房も行き届いており、扉が開けられた瞬間暖気が集団を包んだ。
一般の、例えば講演会や説明会でも使われる場所だろう。
モララー自身、このフォーラムで就職等の説明会を受けた記憶があった。
そのため建物自体はごく普通のものである。
だから壇上に並べられている宗教的な装飾は、いささか場違いな印象を帯びていた。
115
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:27:54 ID:d3t9MV8U0
白い壁を背景として、壇上には小皿にのせられた蝋燭が一列に並べられている。
全部で十二本。それが月を現すのか、あるいは宗教的に何かを表しているのかはわからなかった。
意義もなにもわからなかったので、その並び立つ姿は、最初のうち特に何の感慨を与えるものでもなかった。
奥の壁には大きな十字架が掲げられている。
教団によって立てかけられているのだろう。倒れないように角がロープで結ばれていた。
とてもシンプルな代物であり、のっぺりとした十字架の姿はとても寂しげに見えた。
十字架の下にはいくつかの果物が供えられている。
参加者は後からも数グループ追加された。
二時になろうかという頃なって、ようやく席が埋まり、落ち着く。
やがて、定刻を告げるチャイムが鳴った。
照明が薄明かりになる。
ざわつきが一層小さくなった。
映画館と似ている。段階的に照明が暗くなり、客は徐々に話すのをやめ、集中し始める。
これから何が始まるのか、期待に胸を膨らませる段階だ。
人によってはそのときが一番の楽しみという考え方もあるだろう。
フードを被った人たちが、ひとつひとつの蝋燭にゆっくりと明かりをともす。
照明は手元が確認できるくらいのほんの薄明かりを残すだけとなった。
壇上に並ぶ小さな炎が煌めくその姿は、ロマンチックに見えなくもない。
ぼやーっとした灯りの中で、いよいよ式が始まった。
116
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:29:55 ID:d3t9MV8U0
始りは講和だった。
壇上に、他の教徒とは違う白いフードをかぶった人物が現れた。
彼が教祖のようだ。
事前にマスによって調べられている。
元々マーケットコンサルの仕事に従事していた彼は、
自分の仕事が本当に人のためになっているのか疑問を抱いていた。
それで答えを知るために聖書を読み、キリストの博愛の精神に深く感化されたという。
その後、聖地巡礼としてフランスへ渡り、泉で天啓を受けた。
日本の迷える人たちに正しさを教え広めようと決意したのである。
帰国した後、新興宗教としてL教団を設立、順調に規模を拡大して今に至るというわけだ。
ちなみにここまでの内容で彼は一冊の著書を書いていた。
お金ももったいないので、モララーは書店で流し読みする程度にとどめておいた。
その人物が講和を進めていく。
灯りと同調するような静かなしゃべり方だ。
命の尊さ、人間の不和への嘆き、神話が伝えていること。
内容自体に問題は無い。むしろ状況によっては身にしみる類のお話だ。
教祖の話し方もうまい。最初は静かにぼそぼそとしゃべるだけだったので、眠くなるかとも思った。
しかし彼の話には、流れに緩急があり、時に静かに、時に情熱的に語りを続ける。
興味がまったくないなら別だが、ある程度集中していれば、気持ちは揺らいだだろう。
117
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:32:00 ID:d3t9MV8U0
時折会場のどこかからすすり泣く声が聞こえてきた。
感化される人も現れ始めたのだろうか。
サクラかもしれないが、暗いので真偽はわからない。
もし本当だとしても、違和感は無い。
先ほど歩いている最中で見かけた、暗い顔の人々を思い浮かべた。
言葉は力を持つというが、状況による影響も大きいのだろう。
話は人間の罪深さに移った。
ここで教祖がより昂ぶりを見せた。
人間は何を認めるべきか、どういう存在で、どうあるべきなのか。
だんだんと厳しい側面が表れてくる。
しかし決して、厳しい面を前面には押し出さない。
聴衆はいわば一般人。
最初から厳しさだけに言及したら引かれてしまうのだろう。
ゆっくりと話していき、核心は敢えてぼかしている。
L教団に対する前知識が備わっていなければ気付かないだろう。
118
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:33:55 ID:d3t9MV8U0
マスが言っていたことを思い出す。
この団体の教義は多少、過激であると。
彼らからすれば、過激さは人間の贖罪のためなのだという。
悪との関係を断ち切ることは相当の重要性を帯びているらしい。
/ ,' 3「悪魔の使いとの関わりを断ち、善なる存在との友好を築く、それが我々の理想とする人間像です」
最終的にはずいぶん攻撃的な思想に帰着したように思える。
しかし話には説得力が備わっていた。論理と言うよりも、雰囲気でである。
流れに乗せられてしまえば、その過激な思想に対して疑問も抱けなくなるかもしれない。
それから小休止があった。
照明は明るさを取り戻し、教祖は裾へと隠れた。
落ち着いた人たちのうち数人は休憩のため席を立った。
モララーはその場で伸びをし、それから周りを観察した。
モララーより前に来ていた人達も、後から人たちも混じり合ってしまっている。
カップルか、暗い顔をした人か、そもそも信者か。
自分のように一人で、とくに深刻に思い悩むこともなく来ている人はあまりみかけない。
119
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:35:55 ID:d3t9MV8U0
ショボンは警察を呼んでいるかなという点が気になっていた。
さすがにまったく連絡しないのもまずいので、マスに頼んで集会のことについては教えておいた。
なのでこの場所にも何人か警察関係者がいるのかもしれないと思っていた。
ひょっとしたらさっき言った一人でいる少数派の中にもいるのかもしれない。
ただ、ぱっとみただけではわからない。
さすがに潜入捜査ともなれば見分けがつかないよう工夫をしているのだろう。
モララーはそう思うことにして、顔を動かすのをやめた。
あらかじめ告げられていた時刻となり、再び照明が弱くなる。
暗さが増し、また雰囲気ががらりと変わる。
講和の内容はクリスマスの意義に移った。
いってみればさっきよりもより親しみやすい話題となった。
先ほどの内容で硬くなった空気を和らげるつもりなのだろう。
そうすれば参加者の好感度もあがるだろう。
ほとんどの人がこちらの講和をメインで聴きたがっていたはずだ。
120
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:37:55 ID:d3t9MV8U0
教祖の話し方も変化していた。
先ほどの強気な姿勢の印象も薄らいで、親しみがわく。そういう話し方だ。
人の気持ちを乗せることに長けている人物なのだろう。
思えばそんな才能があるからこそ教祖に向いているのかもしれない。
だとしたらマスは教祖になれるのではないか、という考えが頭をよぎった。
だがすぐにイメージが崩れる。
あの現実的な才覚が宗教に向くとはとても思えない。
マスだったらこんなまどろっこしいことをしなくても人を動かし、お金も集めるだろう。
教祖が何度か笑いを取って、和やかな雰囲気の中講和が終了した。
最後の礼で、教祖に拍手が送られた。
教祖はにんまりと笑いながら退場していった。
また小休止を挟む。
舞台のセットの準備もあるらしく、フードを被った人たちがせかせかと壇上を歩きまわっていた。
教祖が使っていたマイクスタンドがかたされ、十字架が少しだけ持ち上げられた。
人の目線は自然と十字架を見上げる形となる。
次のプログラムは既に連絡されていた。
講和の簡単な儀式が執り行われることになっていた。
121
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:39:55 ID:d3t9MV8U0
休憩が終わり、照明が三度暗くなる。
壇上だけがオレンジ色に照らされていた。
十二の教徒が蝋燭を手に持ち、祈りを捧げる。
やがて蝋燭の明かりは徐々に消されていく。
/ ,' 3「これは人に想いを伝えるお祈りです。
よき今日を、週を、そして来年を、その相手に伝えるのです」
思わせぶりな教祖のアナウンスが聞えてきた。
完全な闇になったとき、合図が聞こえ、黙祷を捧げる。
静寂が訪れる。参加者は思い思いに願いを込めているのだろう。
きっと周りのカップルたちは、思い思いの理由をつけながらパートナーのことを思っているのだろう。
思い悩んだ人たちは誰に何を伝えるのだろうか。
そこで自分も何か思い浮かべようと思った。
思考はとても正直だ。
モララーが思い浮かぶのは、ハインのことばかりだった。
122
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:41:55 ID:d3t9MV8U0
終わると、すんなりと解散となった。
帰り道への案内もされていたが、一度来た道を戻るだけならば迷うことも無いだろう。
歩きたい人は歩いて帰っていく。
集会が終わってしまった。
モララーは拍子抜けすると同時に、わずかに動揺した。
このままで帰るわけにもいかない。
この集会に参加することばかり考えていたが、今のところハインからのアプローチはない。
L教団の人に少し話を聞いてみようと思った。
ひょっとしたら他に何か手掛かりがあるのかもしれない。
ミ*゚∀゚彡「教団に興味がおありですか?」
( ・∀・)「ええ、まあ」
答えたものの、なんて言い繕おうか迷っていた。
123
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:44:02 ID:d3t9MV8U0
ミ*゚∀゚彡「でしたら、受付担当がいますのでその人とお話しすればいかがでしょう」
女性は丁寧に言う。
( ・∀・)「それってすぐ終わりますかね」
嫌な予感が既にしていた。
ミ*゚∀゚彡「お話となれば多少はお時間を取るかと思います。
どこかの喫茶店とかそういったところならば落ち着いてお話を聞けますよね?」
女性の目が怪しく輝くのがわかった。
モララーは目を反らす。やはりここにいては危険だ。
(;・∀・)「あー、でも長居もできないので」
124
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:45:18 ID:d3t9MV8U0
ミ*゚∀゚彡「それならば教団の成り立ちとか、考えとかがよくわかる書籍などはいかが?
今パンフレットがあるの。とってきましょうか?」
だんだんと女性が饒舌になってくる。
(;・∀・)「いえ、時間も無いのでこれで」
モララーは首を横に振って去ろうとした。
しかし振り向いた瞬間、大柄な人が鼻先にいて驚いた。
その男はフードをかぶっているが、距離が近いので顔がよく見える。
(;・∀・)「お、おお、すいません」
モララーは平謝りしつつ、男の顔をチェックした。
まったくもって知らない顔だ。冷たい視線がモララーに注ぐ。
一応ピアスも確認したが、痕も何もなかった。
( ,,^Д^)「……」
モララーはまじまじと見てしまったことに気付き、慌てて顔を伏せる。
125
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:47:25 ID:d3t9MV8U0
(;・∀・)「す、すいません帰ります」
( ,,^Д^)「まあ、待ってください。教団に興味が御有りですか。
確かあなたは参加者のマスさんですよね」
大男はいやに粘着性のある声で、敬語を話した。
マスという名前をどこで知ったのかはわからないが、少なくとも本名とは違う。
そのため少しだけモララーはほっとした。
しかし男はまったく女性と同じ口ぶりだ。
ひょっとしたら信者全体で同じ口調で勧誘する練習を積み重ねているのかもしれない。
相手は自分に何か不信感を抱いているのだろうかと、モララーは不安になる。
しかしそうそう怪しまれる理由は、今のところないはずだ。
(;・∀・)「い、急ぎますので!」
モララーは慌てて立ち去ろうとした。
構っていられない、きっと嫌なことが起こる。
今日の目的はとりあえず教団の存在を確認することだけだった。
「あれ、モララーさんじゃないですか」
126
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:49:24 ID:d3t9MV8U0
突然の言葉が、モララーの思考を停止される。
はっきりと、名前まで添えてある。
いったいどこのどいつがこんな余計なことを言ってのけたんだ。
モララーは反射的に声のする方を向いた。
一人の眼鏡をかけた青年がいた。
(-@∀@)「お久しぶりですモララーさん」
その笑顔は歪んで見えた。
(;・∀・)「あ。アサピー」
うっかり応えてしまった。
その顔を見かけるのは初夏以来だ。
モララーは就職活動など身が入らなくなり、彼とは一切連絡を取っていなかった。
127
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:51:27 ID:d3t9MV8U0
(-@∀@)「やっぱりモララーさんですよね」
もはや名前を三回も呼ばれてしまった。
モララーの思考は混乱していた。
アサピーの眼鏡は分厚く、その眼がどうなっているのかいまいちよくわからない。
しかしその口ぶりから、何か異様な雰囲気をモララーは感じていた。
(-@∀@)「僕、あのあとこの教団のことを知ったんです。
生きるのに迷っていたときに、ここを見つけて」
アサピーは聴いてもいないのに話を始めた。
質問するつもりもなかったが、いつの日かアサピーと会った様子を思い出した。
何もかもが失敗して、落ち込んで、とぼとぼと歩いていた寂しそうな横顔。
いっそ神様にでもすがりたいとか、言っていた。
すがる神様をこんなところで見つけたということなのか。
こんな偶然があっていいのか。
完全に良くないことが起こっている。
モララーは先ほどやりすごそうとした大男を見やった。
128
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:53:24 ID:d3t9MV8U0
不気味なほどに口の端を釣り上げている。
おそらく、モララーの名前を聞いたから。
確かに参加者名簿と名前は違う。
マスと思っていた人が違う名前で呼ばれている。
しかしそれでこれほどまで反応するものだろうか。
誰かが事前にモララーが来ることを伝えていたのではないか。
そんなことをするのは、銀のピアスか、ハインか。
(;・∀・)「悪いアサピー、また」
モララーは言うが早いか駆け出していた。
とにかくこの場所から離れなければ。
しかし後ろから、何事か叫び声がする。
聞きとるひまもなく、手を掴まれた。
(-@∀@)「モララーさん! だめですよ!」
アサピーが尋常じゃない声を出す。
129
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:55:25 ID:d3t9MV8U0
(-@∀@)「お話の中であったでしょう。
人の話の腰を折るのはいけないことなんです。
最後まで心を寄せてきかないと不幸に」
(;・∀・)「やめてくれ!!」
モララーは絶叫した。
そんな講和の内容もさっぱり忘れていた。
人に耳を傾けることをやめれば悪意がどうのこうの。
激しくどうでもいいことだった。
アサピーがここまで変わってしまった理由はなんとなくわかる。
すがる神様により、あの気弱な青年は立場を得て、自信を得たのだろう。
それはそれでめでたい。
でも今はそれに構っている暇は無い。
急いでアサピーの腕をふりほどいた。
彼はいまだに何か不満がありそうだったが、モララーは踵を返す。
モララーは再び駆け出そうとした。
しかしその足はすぐに止まる。
130
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:57:26 ID:d3t9MV8U0
目の前には純白のコートが見えた。
先刻壇上で盛大に講和をしていた姿が目の前に現れていたのである。
(-@∀@)「きょ、教祖様!」
アサピーが声を裏返らせている。
振り返ると、恐れ多いとでもいうように頭を深く下げているところだった。
/ ,' 3「何やら賑やかでしたので、寄ってみました。
お話でもどうですかな。なに、勧誘とかじゃありませんよ」
教祖は柔和な笑みを浮かべて、モララーに語りかけてきていた。
近くで見れば、彼が高齢なのはすぐにわかった。
既に色素のない髭と、しわくちゃの肌が顔にある。
( ・∀・)「勧誘とかじゃないって、どういうことですか」
/ ,' 3「世の中いろんな団体がありますからね。一般人を捕まえてどこかのお店に連れて行き、そのまま入団させる。
私たち教団はそのようなことはしませんよ。安心してください。
それに、あなたに話しかけたのはまた別の理由です」
131
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 21:59:28 ID:d3t9MV8U0
/ ,' 3「あなたに会いたがっている人がいるんですよ。モララーさん」
( ・∀・)「え」
会いたがっている人。
それはまさかハインのことなのではないだろうか。
モララーの唖然とする表情を見て、教祖はなおのこと目じりを下げた。
すでに張りを失っているその顔の肌に、深いしわがますます刻まれていく。
/ ,' 3「いやはや、もしいたらということで言われていたのですが。
名簿に名前が無くて、どうしたものかと思っていたところだったんですよ。
まさか偽名を使っておられたなんて」
モララーは顔を引きつらせて聞いていた。
モララーは周りの状況を確認した。
すでに数々の視線がモララーに向けられている。
教団関係者は一般人を帰し終えたらしい。
132
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:01:25 ID:d3t9MV8U0
もはや逃げられないだろう。モララーは悟った。
巻き込まれる可能性は最初から考えていた。
もとより何もなければまた、ハインから遠ざかってしまう。
だったら、考え方を変えてやる。
( ・∀・)「ぜひ、お話を伺いたいです。
教祖様直々に」
モララーの胸の奥で、強い感情が湧きたってきていた。
ならばいっそのことより深く教団に踏み込んでやる。
それで全てを暴いてやる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
133
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:03:25 ID:d3t9MV8U0
十二月二十四日 午後四時半 東京都練馬区――
モララーは教祖とともにL教団の車に乗せられた。
車の知識は無かったが、それでも外国産の高級車であることはわかった。
落ち着かない心境で椅子に座っていた。潤っているのは本当のことのようだ。
窓の外を眺めていた。
都会を離れ、高いビル等は見えなくなってくる。
より庶民的な雰囲気になっていく。
L教団の本部へと向かっているらしい。
モララーは妙な予感がした。
実はK大学は練馬区に接する街に存在していた。
つまり今、モララーはK大学にも近づいていたのである。
L教団の本部とK大学が近い、これは何を意味するのだろう。
日が傾きだした頃、L教団の本部に到着した。
大きな敷地がベージュ色の塀に囲まれている。二メートルほどの高さがあり、外から中はうかがい知れない。
豪勢な意匠の施された門が、乗車していた他の教団関係者の手により開けられた。
134
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:05:28 ID:d3t9MV8U0
建物自体は大きな平屋であり、一見すると旅館のようでもあった。
特別変わったデザインが施されているわけでもない。玄関の傍に大きな十字架が立て掛けられているだけだ。
何かしらイベントがあればこの建物が信者で満たされるのだろう。
中に入ると、応接室へと案内された。
黒い革のソファと、ガラスのテーブルが見える。
門から建物へと、徐々に宗教色が薄くなるのを感じたが、この部屋はまったくもって宗教らしさは全くない。
いうなればビジネスの香りに満たされていた。
それも決して良くないものだ。
しばらく待つように言われたので、ソファに座った。
冷え切っていたが、埃をかぶっていたりすることはなかった。
今でもよく使われていることがうかがい知れる。
時計もあったので、時間はわかった。
到着してから十五分後、ようやく教祖が現れた。
服装が違うと人の印象は変わる。
教祖は和服を着ていた。
135
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:07:26 ID:d3t9MV8U0
普段和服を着る人間はどういう種類の者か。
和服は異様なほどにこの応接室にマッチしていた。
威圧感が倍増されて表現されている。
モララーはもう気付いていた。
L教団はただの宗教組織ではないのだろうと。
/ ,' 3「モララーさん、ようこそ来てくれました」
教祖は向かいのソファに深く腰をかけて、話しかけてきた。
声はまだ温和であり、同じ人だとわかる。
/ ,' 3「実はあなたと会いたがっている人が教団の幹部にいたのです」
( ・∀・)「幹部……?」
/ ,' 3「ええ、高岡さんという方です」
ハインのことだろう。
教団の関係者であるとは思っていたが、まさか幹部にまでなっていたとは。
136
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:09:28 ID:d3t9MV8U0
幹部というからには相当の期間教団に所属したのだろう。
警察官として仕事をしていたときから信者だったに違いない。
/ ,' 3「あなたは、どこまで私たちのことを知っているんですかね」
( ・∀・)「……ほとんど何も知りません」
モララーは慎重に言葉を選んだ。
下手に教団を疑っていると言ってもどうしようもない。
相手の敷地内にいるのだから敵対しても碌な目にあわないだろう。
/ ,' 3「そうですか。
高岡さんはあなたを捕えるように言っていたんですがね」
あまりのことにモララーは目を見開いた。
そんな物騒な言葉を投げかけられるとは思いもよらなかった。
(;・∀・)「な、なぜですか」
/ ,' 3「あなたが教団にとって脅威になるとのことです」
137
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:10:56 ID:d3t9MV8U0
モララーは何も言わなかった。
いったいハインは俺をどこに連れていく気なのだろうか。
むろん教団に嫌われる謂れも無いはずだ。
(;・∀・)「あいにく捕まる理由がわかりません」
/ ,' 3「本当ですか」
(;・∀・)「ええ」
/ ,' 3「それならば、どうして偽名を使っていたんですか」
なるほど、嫌なところをついてくる。
( ・∀・)「参加を申し込んだのが兄弟だったからです。
その兄弟が参加できなくなったので、俺が来ました。
そもそもあの集会に参加したのはたまたまです。
あなたがたのことを深く知ったこともありませんでした」
138
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:13:15 ID:d3t9MV8U0
/ ,' 3「……じゃあ逆に高岡さんについて、あなたはどう考えますか。
なぜ私たち教団と大して関係のないあなたを捕まえる必要があると思いますか」
教祖の言葉に、モララーは気付かされる。
教団の側はハインの行動に疑問を抱いているのか。
ここで拒否を続ければ、自分はきっと何事も無くこの場所から出ることができる。
しかしそれではだめだ。
自分は捕まらなければならないんだ。
なんとかこの場を取り繕って、教団につかまり、そしてハインと会う。
それがハインの用意したこの場の筋書きなのだろうと思い至った。
モララーは急いで言いわけを考えた。
( ・∀・)「俺が、この教団の悪い噂をたくさん知っているからではないでしょうか」
/ ,' 3「……ほう」
139
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:14:48 ID:d3t9MV8U0
教祖の視線が鋭くなる。
評判と言うのは教団にとって重要なものなのだろう。
( ・∀・)「麻薬組織との関係とか、ペットブローカーとの繋がりとか。
いろいろと個人的に調べたことはありますが、そのことではないでしょうか」
/ ,' 3「……それらが本当にあると考えていますか」
教祖の探るような目線が突き刺さる。
モララーはなるべく真剣な表情で、心のうちを読まれないように言葉をつづけた。
( ・∀・)「個人的にはそう考えているし、後で警察にも相談しようと思っています」
/ ,' 3「しかし、実際に証拠がなければ警察は動きませんよ」
( ・∀・)「今この場に連れてこられたことそのものを訴えることができます」
モララーは捲し立てた。
なるべく相手の気持ちを逆なでするように。
( ・∀・)「この本部にも探りが入ると思います。
そうなれば、何かまずい証拠でも見つかるのではないでしょうかね」
140
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:16:23 ID:d3t9MV8U0
あてずっぽうだが、言ってみるものだ。
教祖の顔が曇る。
かつての柔和な表情はなくなっていた。
雰囲気がどんどん重くなっていく。
これがハインの仕組んだものでなければ、急いで立ち去りたい。
でも、もう信じると決めた。
神社でショボンが言ったことが思い出された。
確かに、ここでハインを疑いにかかれば、大きな不安がのしかかってくるだろう。
ここまで来てしまった以上、不安はあっても先へ進むしかない。
/ ,' 3「少しだけ、移動してもらってもいいでしょうか」
教祖は小さな声で言う。
そのまま、テーブルの隅に置いてある呼び鈴に手を伸ばした。
( ・∀・)「これからですか?」
141
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:18:01 ID:d3t9MV8U0
向こうの表情が変わるのもわかった。
向こうも自分のことを覚えていたのだ。
/ ,' 3「お知り合いですか?」
教祖が男に質問した。
ピアスの男はいやらしい顔で頷く。
モララーは心の奥がざわついた。
客観的には危機的状況だが、今の状況でこれはチャンスだ。
この銀のピアスにとって自分は敵として認識されているに違いない。
/ ,' 3「では、モララーさん。移動しましょう」
このまま身を任せていれば自分はちゃんと捕まえられるだろう。
そうすればハインの思ったように、事が運ぶ。
ようやく、会える。
142
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:19:43 ID:d3t9MV8U0
モララーは顔に出さないように苦慮した。
なるべく不安を感じているように演技をする。
( ・∀・)「どうしてもいかなくちゃいけませんか」
/ ,' 3「ええ、もちろん」
教祖はにっこりと笑う。
向こうは優越感にでも浸っているのだろう。
モララーは内心でほくそ笑んだ。
このままいけばいい。
このまま。
143
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:21:29 ID:d3t9MV8U0
唐突に、衝撃が頭を襲ってきた。
何が起きたかわからない。
これから何が起きるかもわからない。
言葉を出す隙もないまま、混沌が瞬時にモララーを包んだ。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第十章 十字架 へ続く。
144
:
第九章 クリスマスイブ
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 22:23:52 ID:d3t9MV8U0
目次
>>2
登場人物
>>3-52
第七章 球場
>>56-104
第八章 猫
>>110-143
第九章 クリスマスイブ
来週の土曜日から日曜日にかけて第十章を投下します。
それでは。
145
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 22:55:30 ID:Jp1PKhhs0
モララーの頭が心配だ!
乙
146
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 02:05:31 ID:2PMLTX3sO
来週かよ、まあ今から書くんだろうから待つしかないか
147
:
名も無きAAのようです
:2013/08/12(月) 02:06:55 ID:XGK6pf3w0
おつ!
148
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 20:48:06 ID:LZrPa48E0
今日だー
149
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:00:55 ID:EjYAGugM0
投下を始めます。
150
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:02:52 ID:EjYAGugM0
夢を見ていた。
暗い夢だ。
蝋燭の光がある。
並んでいる。
集会で見たような光が、ずらーっと。
十字架の下だけが照らされている。
猫の鳴き声がする。
甲高い、悲鳴のようだ。
猫もそんな声をあげるのか。
蝋燭が消えていく。
あの儀式と同じだ。
これは、夢なのか。
何を表しているのか、教祖が少しだが話していた。
151
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:04:12 ID:EjYAGugM0
蝋燭の光は、罪の光。
神の前に赴くときはその光を消して汚れを浄化しなければならない。
全ての光が消えたとき、初めて神は祈りを聞いてくれる。
しかし、火はいずれ灯る。
たとえ何度光を消そうとも。
いずれ熱を帯び、刺激を受け、引火する。
人間の根元に罪はある。
命果てるまでそれは続く。
それでもなお、罪を消し続ける。
その行いができる。
故に命は尊い。
目の前の光が消えた。
猫の鳴き声は、大きくなる。
152
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:05:42 ID:EjYAGugM0
猫は悪魔の使いだと言う。
人を惑わし、光を再び灯そうとする。
ゆえに猫に近づいてはならない。
めちゃくちゃな理論だ。
モララーはそれを聞いたとき、思った。
信仰が命を絶やすなんて。
人間がそんなことしていいわけがない。
唐突に光が広がる。
目が覚める。
153
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第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:07:12 ID:EjYAGugM0
まず、鉄格子が見えた。
頭が重い。
地下牢だと気づくのに数秒かかった。
記憶が飛んでいる。
モララーは身を捩った。
弾けるような痛みが全身を襲う。
言葉にならない苦悶の音が口から漏れた。
動きが鈍い。
顔が腫れているようだ。
しかしそれだけではない。
自分は縛られている。
芋虫のように動いたが、足も手も縛られているため、何もできない。
154
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第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:08:42 ID:EjYAGugM0
そのうち足音が聞こえてきた。
かつかつ、地下では靴の音がよく反響する。
モララーは出来る限り身構えた。
背を無理矢理立たせて鉄格子を見やる。
いったいどんな人間が顔をだすのか。
じっと、目を凝らしていた。
やがて人影が現れる。
思ったよりもずっと小柄な姿。
「ずいぶん酷い顔をしてるな」
懐かしい声だ。
モララーは目を見開いた。
( ・∀・)「……ハイン」
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第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:10:12 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「久しぶり」
相変わらずの笑みだ。
教祖の笑い方とも、誰とも違う。
教団を示すフードつきのコートを着ていても、その顔は変わらない。
モララーは次の言葉が見つからなかった。
胸に熱いものが支えている。
自分の気持ちをうまくまとめることができない。
从 ゚∀从「こっちこれるか。モララー」
ハインはしゃがんで手招きする。
まるで子どもに話しかけるときのような、優しい声だ。
モララーは無理にでも身を引きずった。
鉄格子に頬が触れ、ようやく安堵する。
从 ゚∀从「よくできた」
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第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:11:42 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「ハイン、どうしてここに」
モララーは言って初めて、自分の声が掠れているのに気付いた。
ここにくるまでにどれほどダメージを負ったのだろうか。
从 ゚∀从「私のことを探していたんだろう?」
ハインは質問には答えず、モララーに逆に質問した。
モララーは躊躇う。
元々探すなという約束だったのだから、答えにくい質問だ。
( ・∀・)「……ああ。だって、探したかった」
从 ゚∀从「お前ならそうすると思った」
ハインはからかうように言う。
モララーはきょとんとして、それから溜め息をつく。
( ・∀・)「なんだよそれ。
俺が探さなかったらどうする気だったんだよ」
从 ゚∀从「そしたら、まあ、それまでだな。
でも、信じてたぜ。探偵さんならきっと探してくれるって」
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第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:13:12 ID:EjYAGugM0
ハインの随分と強気な発言に、モララーは呆れるしかなかった。
( ・∀・)「やっぱりあれは、探せってことだったのか」
从 ゚∀从「探したくなる性分なんだろう?」
そういえば、いつかそんなことも話したな、とモララーは苦笑いする。
( ・∀・)「よく理解してくれたようで」
从 ゚∀从「上手くいって良かった」
これまでの道のり、全てにハインの影があった。
ハインはやはり最初から、モララーがその後を追うことを織り込み済みだったのだ。
それからハインは体育座りになった。
膝の上に腕を交差させて、そこにちょこんと顎を乗せる。
从 ゚∀从「私の話、聞きたい?」
内緒話をするかのように、ひそひそと、言う。
ハインの真意はわからない。
話とはどのことだろう。
考えたが、そもそもハインのことを何も知らないことに気づく。
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第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:14:12 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「聞きたい。
でもその前に手足自由にできないかな」
从 ゚∀从「まだ嫌だよ」
( ・∀・)「なんで?」
从 ゚∀从「まだあいつらに疑われたくないんだ」
ハインはいっそう声を潜めて横を見る。
きっと地下牢の出口の方だ。
( ・∀・)「誰か見てるのか?」
从 ゚∀从「いや。でも降りてくるかもしれない」
それから、ハインは時計を確認する。
从 ゚∀从「まあ、まだ時間じゃないし、大丈夫だろうけど」
時間、その時がきたら誰かがやってくるというのか。
ハインはモララーに向き直る。
从 ゚∀从「さて、何を知りたい? なんでも用意してるぞ」
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第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:16:10 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「なんでもだよ」
モララーは即答した。
从 ゚∀从「俺はお前のこと、何にも知らないんだ」
( ・∀・)「熱いこと言ってくれるじゃないか」
ハインの口振りはとても楽しそうだ。
从 ゚∀从「それじゃ、まずどうしてモララーがここにいるか、から始めよう」
どこまで覚えている?」
( ・∀・)「応接室にいって、男と会ったところまで」
从 ゚∀从「そうか。そのあとな、あんたはすぐに捕まってたよ」
ハインはケラケラと笑う。
別に嘲るわけでもない。
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