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( ・∀・)探偵モララーは信じているようです
161
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:19:12 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「おかげで面白いものが見れたよ。
それでな、ワゴン車に詰められてここまで運ばれたんだ。
教団専用の地下牢がある場所さ」
从 ゚∀从「場所は知っていたから、あたしは夜になって探そうと思った。
そしてそのまま時間が経って、隙を見てあたしがここに来た。
ここまでで質問あるか?」
モララーは首を横に振る。
( ・∀・)「なるほど、俺が今ここでこうして捕まっている理由はわかった。
で、俺をわざわざここに呼んだ理由もあるんだろ?」
こんなめんどくさい手を使って、この場所にモララーを連れてきた理由。
从 ゚∀从「あんたもよく来てくれたもんだよな」
ハインがありがたくない賞賛をしてくれた。
从 ゚∀从「保険みたいなもんだよ。
こいつらを一網打尽にするための味方が、私以外にもう一人できた」
( ・∀・)「……教団を一網打尽に?」
162
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:20:42 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「そう。
教団の黒い部分を一気に世間に知らしめる方法があるんだ。
それにこれからもちょっと、見せたいものがある」
ハインは一息ついた。
从 ゚∀从「次の話題は、どうする? 選択肢だそうか?」
( ・∀・)「なんだよそれ」
ハインは相変わらず楽しげだ。
場の空気にそぐわないくらい。
从 ゚∀从「じゃあ、私の昔話からしようか。
むかしむかし、あるところに貧しい家がありました」
( ・∀・)「普通でいいよ」
从 ゚∀从「ありがと」
言ってから、ハインは咄嗟に出た自分の感謝の言葉に気づいたらしく、笑った。
モララーは笑えなかった。
163
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:22:12 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「というより、昔の話は神父さんから聞いた」
从 ゚∀从「神父って、M市の教会の?」
( ・∀・)「ああ」
从 ゚∀从「なんだ、そんなところまで調べていたのか」
( ・∀・)「どこまで調べればいいのかわからなかったもんでな」
从 ゚∀从「あんたを放っておくとプライバシーが酷い目にあいそうな奴だな。
それで、あたしのお話を聞いて聞きたくなったことはある?」
ハインは少しだけ首を傾げて、モララーの答えを促した。
純粋に、話すことを楽しんでいる素振りだ。
( ・∀・)「いったいお前は何を目指しているんだ?」
从 ゚∀从「……ゆっくり話していこう。
昔話にも触れるけど、さらっと流すからさ」
ハインは目を閉じて大きくうなずく。
164
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:23:42 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「あたしの両親はどうしようもない人たちだった。
そのあとも小学校の先生とか、いろいろあったのは知ってるんだな?
そういう経験を通してあたしが思ったのは、どうしてあたしがこんな目に会うのかってことだった」
从 ゚∀从「怒りのぶつけようは無かった。だって、人の性格とかそういうのは変えようがないもの。
しばらくの間、あたしはぼんやりと無気力で過ごしていた。
何をしても無駄だろうとか考えて、何もする気にならなくて、ただ世の中に嫌気がさしていた」
モララーは口を挟まず、神父が見せてくれた写真を思い返していた。
笑わないハインの写真。
从 ゚∀从「ある日、神父さんがL教団の話をしてくれた。
裏で麻薬を扱っていたり、他にもいろいろと悪事に手を出している連中。
その愚痴みたいなものを聞いたとき、思いついたものがあった」
从 ゚∀从「思えばあたしの家族にとどめを指したのも麻薬だった。
いや、あたしの両親が手を出していた賭博も、先生が行っていた脅迫も
そうした犯罪が積み重なってあたしの人生をめちゃめちゃにしてくれたことに気付いたんだ」
165
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:25:12 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「そう思ったとき、胸の奥がざわついた。
神父さんの話してくれた教団が、まるでそうした犯罪を体現したもののように感じた。
この教団がある限り、あたしみたいな人はたくさん出てくるだろうと思ったんだ。
現実として神父さんも困っていた。人を困らせるものがそこにあった」
从 ゚∀从「だからそれを無くしたいと思った。
あたしはそれから、必死に勉強した。無気力だったときの遅れを取り戻すために。
そして警察になって、思いっきりそういう奴らに鉄槌を下したくなったんだ」
从 ゚∀从「気付いていた?」
モララーは素直にうなずいた。
教会の人や、ショボンと話したときから、思い浮かべたことと大差ない。
( ・∀・)「まあ、なんとなくだけど」
从 ゚∀从「それでもありがたい話だね。
そう、あたしはここを潰したいと思ってるんだ」
ハインは思いっきり腕を広げて、上を仰ぎ見た。
L教団全体を指して言っているのだろう。
( ・∀・)「それで、潰すために何かをたくらんだのか。
さっき言っていた一網打尽ってやつ」
从 ゚∀从「そう、その通り。話の続きから進めていこう。
それから勉強して、警察官になった。その頃にはもう、教会には戻れないって思ったね。
こんなに真っ黒な心もったままじゃ、神様の前には出れないよ」
166
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:26:42 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「それでL教団についての情報も少しずつ集めていった。
教団の方も大きな組織へと成長してきていたから、思いのほか早く情報が集まってきた」
从 ゚∀从「だけど限界もあった。警察は事件が起きないと動けない。
怪しい動きがあろうとも、そう簡単に潜入調査なんてできやしない。
あるとき、あたしはL教団がとある大学の教授と接触しているのを知った」
从 ゚∀从「それがK大学だった。
あたしはそこで大学を調べることを提案した。
でもそれは憲法違反、警察官の身分としては不可能だ」
从 ゚∀从「もちろん個人的に捜査はできる。でも仕事をしつつ片手間では厳しい。
あたしは悩んだ末、警察の身分を捨てることにした。
自分の好きなように捜査を進めるために」
从 ゚∀从「それが今年の初めの話。
やがてあたしは、あんたに会ったんだ。モララー」
ハインの目がモララーに向けられた。
柔らかい目だ。
167
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:28:12 ID:EjYAGugM0
モララーはその目を見つめた。
捉えて離さなかった。
( ・∀・)「俺と、どうして会っていた?
今なら答えてくれるだろ?」
ハインはその文章をしかと受け止めてくれたようだ。
从 ゚∀从「……大した理由じゃないよ。さっき言ったように保険という意味もある。
それに初めて会ったとき、見ず知らずの男の冤罪を晴らしていただろ。
それで、こんなやつもいるんだなーって思って、話しかけた」
从 ゚∀从「話してると、なんだか自分も大学生になれた気が……いや、違うな。
自分も、まともな人になれた気がした。
だから会いたくなった。もちろんK大学に行く用事を作るためでもあったんだけど」
( ・∀・)「お前はまともだよ」
モララーは思わず口に出した。
从 ゚∀从「ありがとう」
ハインは微笑む。
从 ゚∀从「そういうところが大好きだ」
168
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:29:43 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「ハイン」
モララーが声をかける。
( ・∀・)「もう警察には戻らないのか?」
ハインは手のひらを顔の前でひらひらさせた。
从 ゚∀从「仕事をするつもりはもうないよ」
( ・∀・)「じゃあ、どこかに帰るのか」
すると、ハインは一段と大きく笑った。
从 ゚∀从「あたしに帰る場所なんて必要ないよ。
あたしには両親もいない。
そういえば祖父母のことも聞いたと思うけど、
あの人たちがあたしを引き取ったのもただ世間体のためだったんだ」
从 ゚∀从「あたしの生活があまりにも可哀想だから助けてあげただけ。
あたしが仕事についたら、もう構ってくれなくなったよ。
そんなわけで、帰る場所は無い」
169
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:31:12 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「そんな、他にいるだろ、例えば神父さんとか」
ハインは手のひらを、さっきよりも大げさにぱたぱたさせた。
从 ゚∀从「この教団を倒すまでは、あの人は安心できない。
それから先は、まあ、考えてないけど。
決心に余計な水をさすものじゃないよ」
ハインの顔は怖かった。
それが純粋な感想だった。
ハインはモララーから目線を外し、時計を見た。
从 ゚∀从「時間は、まだ大丈夫だな」
ハインは時計を確認する。
今の時刻は、正確にはモララーにはわからない。
从 ゚∀从「……さて、探偵さん」
改まった口調で、ハインがモララーに向き合う。
从 ゚∀从「ここから脱出しよう。
あんたが必ず生き残って、この教団を糾弾するんだ」
170
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:32:42 ID:EjYAGugM0
ハインは時計を再度確認した。
从 ゚∀从「頃合いだ」
そう言って、モララーをさらに手招きする。
右手をコートの中に入れ、取り出す。するとナイフが握られていた。
折りたたみ式の小型のナイフだ。
モララーは縛られた手を鉄格子にあてる。
ハインは手際よくその縄を解いた。
続けて足も解放される。モララーは晴れて動ける体となった。
モララーはしびれる手足をゆっくりと動かしてみる。
血が長らく滞っていたため、感覚は非常に鈍い。
从 ゚∀从「どうだ?」
ハインが確認してくる。
モララーはやっとのことで立ち上がり、腕と足をぶらぶらと振ってみる。
徐々に感覚を取り戻す。
( ・∀・)「行ける」
从 ゚∀从「よし」
171
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:34:12 ID:EjYAGugM0
ハインもまた立ちあがった。
そのコートから鍵を取り出す。
まるで秘密のポケットのようなコートだ。
( ・∀・)「それで、この地下牢をそのまま出ればいいんだっけ?」
从 ゚∀从「まあ、まて。まずもう少し状況を説明する。
まず、ここは本部の地下から数キロメートル先だ」
(;・∀・)「そんなに?」
単位を間違えているのではないかと疑ったくらいだ。
从 ゚∀从「驚くのは早い。
この地下牢は地下道と繋がっている。
そしてその地下道が本部と繋がっているんだ」
(;・∀・)「と、東京の地下にそんなものがあるってのか」
从 ゚∀从「その点については、歩きながら説明した方がいい。見た方が早い。
そう、出るまでにはしばらく歩かなきゃならない。
なに、出口はほんの数百メートルだよ」
172
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:35:42 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「地下道の出口がどこかに繋がっているってことか。
その出口の方へ、俺たちは向かうと」
从 ゚∀从「その通り。入った時とは違うところだから、たぶん見つからない。
教団の連中は事情があってこっちにはこれないから、手薄になっているはず」
( ・∀・)「事情って?」
从 ゚∀从「今にわかる」
ハインはそういうと持ち上げ、時計を見せてくれた。
十時五秒前。
四、三、二――
从 ゚∀从「くるぞ」
針が順調に進んでいく。
〇――
モララーは揺れを感じた。
173
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:37:12 ID:EjYAGugM0
はるか遠くで、何かが動いている。
その動きとともに、地下全体が揺れているのか。
从 ゚∀从「もういいだろう」
ハインは牢の扉を開けた。
金属の触れ合う鈍い音がする。
モララーは開放された。
( ・∀・)「なあ、この振動はなんなんだ」
出てすぐにモララーは質問した。
今も揺れは続いている。
断続的に、周期的に、大きくなり、小さくなり、途絶えて、また響くのを繰り返している。
从 ゚∀从「掘削機。
地下道はまだまだ伸びているのさ」
174
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:38:42 ID:EjYAGugM0
二人は歩き始めた。
地下牢を出て階段を上るとすぐに鉄の扉があった。
ハインはそれを開ける。
道が現れた。人が五人は横に並べる大きな地下道だ。
高さは二メートル少しであり、頭こそこすれないものの、圧迫感はある。
地下牢の扉から見て、地下道は左右に続いていた。
从 ゚∀从「こっちな」
ハインは左を指さす。
从 ゚∀从「こっちが北なんだ。出口の方。南へ行くと本部へ続く予定なんだ。
掘削機は今は本部への道を開けようとしているんだよ。
まだ一キロかそこらしか続いていないけど、今も元気に稼働中だ」
ハインが指した方向へと足を進める。
175
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:40:13 ID:EjYAGugM0
地下道には小さな電球がところどころについている。
オレンジ色の小さな光が発せられていた。
きっと掘削作業のときだけつくということなのだろう。
しかしそれでも、暗い。
むき出しの土の壁が空気を籠らせ、一層気持ちを沈ませた。
歩くと思考が少しずつ整理された。
身体の節々は痛かったが、それでも動かすことで痛みを忘れられたようだ。
( ・∀・)「L教団は、この地下道で何をしようとしているんだ」
从 ゚∀从「……あたしらが初めてあった時を覚えているか?」
( ・∀・)「ああ、港だろ」
从 ゚∀从「そう。あの事件にL教団が絡んでいるのは知ってる?」
( ・∀・)「ああ。L教団の人間がいるのを見たから」
从 ゚∀从「そこまでわかっていたら話は早いや。
あの事件についてはもう軽く説明しておいたけどな」
176
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:41:42 ID:EjYAGugM0
そういえば最初のうちは港の取引について話していた。
モララーは思い出した。
最初のうちだけ。
( ・∀・)「麻薬、か」
从 ゚∀从「そうだ、教団は裏で麻薬の売買をしている。
金目のものにはどんどん手を出す主義なんだ。教祖がそういうの得意でね。
お金稼ぎには相当鼻が利く人間なんだよ」
( ・∀・)「で、麻薬と地下道とどう関わりが?」
从 ゚∀从「いわゆる麻薬トンネルだよ。
この場所も含めて、麻薬の栽培場所と本部、いくつかの支部が地下で繋がっているんだ」
(;・∀・)「おいまてよ、その栽培場所ってまさか」
モララーの頭の中で、パズルのピースが重なっていく。
ハインは殊更満足そうな表情を向けてきた。
从 ゚∀从「K大学の林の中だよ」
177
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:43:13 ID:EjYAGugM0
モララーはあの夏の日のことを思い出した。
K大学の教授が死に、そして林で火事が起きて温室が一つなくなった。
そして最近気になるニュースがあった。
(;・∀・)「穴か」
モララーは連想したものをそのまま口に出した。
先日クーが電話で教えてくれたこと。
農学部棟の跡地から、大きな穴が見つかったこと。
さらに、連想は続く。
( ・∀・)「掘削機は、春から稼働しているのか」
从 ゚∀从「そうだよ。なんでわかるんだ?」
( ・∀・)「振動が伝わっていたよ。
K大学の農学部棟へ伝わって、夜毎にぎしぎし音が鳴ってた。
学生たちの間で、春から夏にかけて何事かと噂になっていたんだ」
農学部棟での夜。クーと一緒にいたとき。
きっかり十時にラップ現象が始まった。
周期的にきしみが生じ、心霊現象として語り継がれていた。
178
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:44:43 ID:EjYAGugM0
あの現象の原因は農学部棟ではなかったのか。
この穴の掘削機の振動が、遠く農学部棟の共鳴を促していたのだ。
从 ゚∀从「ああ、あそこか」
ハインが言う。
まるで以前から知っていたかのような口調。
そこから、モララーはあの夜のことまで連想した。
あそこで教授を見つける前。
廊下で見かけた黒い影。
( ・∀・)「K大学の教授が死んだ時、
農学部棟にいたのはやっぱりお前だったのか。
そして、そうか。穴を使って地下道へ逃げていたのか」
思えばあのとき守衛もいるのに、黒い影の正体はわからずじまいだった。
それも、この地下道があれば説明がつく。
从 ゚∀从「ああ」
ハインは若干顔を俯かせた。
179
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:46:12 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「そうだ、それはあたし。
まさか自殺しちゃうとは思わなかったけどな。
少し強気で責めすぎた」
モララーは胸の奥がざわついた。
違和感というか、不穏な感じと言うか。
その気持ちに内心首をかしげながら、話を続ける。
(;・∀・)「それじゃ、まさかあの自殺そのものにも関係していたのか」
从 ゚∀从「教授はL教団と繋がりがあったんだよ。
そもそも、麻薬の栽培をしていたのが教授だったんだ。
L教団はそれを嗅ぎつけ、利用しようとした」
从 ゚∀从「それが去年の話。
教授の栽培した麻薬を利用して、その頃から実験的取引が多少は行われていた。
小さな会社を隠れ蓑にした取引さ。あのとき港で行われていたのもその一種。
ただ警察に嗅ぎつけられてからはやめたけどね」
从 ゚∀从「そういやあの港の事件のとき盛大にあたしが疑われたんだった。
警察関係者だからって、秘密をばらしたんじゃないかとかさ。
あたしが警察の身分を捨てたのはこういう事情もあった」
180
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:47:42 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「それで計画をもっと練ることにした。
そして教団は、この地下道の建設を思いついた。
まずはK大学となるべく近い支部を繋げる。掘削機を支部から入れて、穴を掘り続けた」
从 ゚∀从「それが発展して今の状態にある。
もうあの大学の周辺から、東京の端っこまでなら穴が続いているよ。
他の支部からも掘削機を入れて協力して作っているみたいだ。まるで蟻の巣さ」
从 ゚∀从「教授は死んだけど、計画自体は死んでいない。
そもそも教授が栽培していたのは特殊な大麻でね。
繁殖力が強いから簡単に別の場所でも栽培できた。
だからこうして今もせっせと穴を掘っている」
(;・∀・)「……教授はどうして死んだんだ」
モララーは話題を元へと戻した。
自分の気になった事柄へと。
そもそもその点について考えていて、あまりハインの話を聴いていなかった。
ハインは特に疑問を抱いた様子もなかった。
柔軟に、モララーの話題に対応してくる。
181
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:49:15 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「言ったろ、あたしが責めすぎたんだ。
あたしがなんであんなに学校に出入りしていたと思う?
教授に会うためだよ」
从 ゚∀从「最初のうちは教団の一員として教授に接した。
そして教授の前では教団に忍び込んだ警察官のふりをして教授を脅した」
从 ゚∀从「計画を中止にしないと、容赦はしないってな。
教授はそれを真に受けて、それでも教団にばれたら酷い目にあうからって、
八方ふさがりになったんだ」
从 ゚∀从「それであの夏の夜、あたしがいつものように教団の報告をしようとした。
そしたら自殺しているのを見つけたから、あたしは急いで逃げた」
(;・∀・)「……」
从 ゚∀从「納得いかない? ああそうか。
あんたはあたしが、あんたに会いにきていると思っていたんだもんな。
さっきも言ったようにあんたに会ってた理由も一応あったけど、
別の理由もあったなんて言われたら。そりゃあ、納得できないか」
182
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:50:43 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「でもさ、別にあんたを仲間にするんだったら
あんなに頻繁に会う必要もなかっただろ?
しかも学校に忍び込んで仲をつくるなんて、普通じゃないって思わなかった?
それでも納得できない?」
モララーは急いで反論した。
(;・∀・)「いや、納得はできる」
それでもモララーはハインから目をそむけていた。
わかっていたことだとしても、ハインを直視できなかった。
なんでハインはこんなことを言ってくるのだろう。
わざわざ気持ちを逆なでするようなことを、どうして。
ハインはしばらくモララーに顔を向けていたが、やがて前に顔を向けた。
モララーの横に並んでおり、顔はわからない。
地下道は分岐点についた。
二人は南から歩いてきた。
目の前には北への道と、北東への道がある。
183
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:52:12 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「北東へいけばK大学だよ」
ハインが説明する。
从 ゚∀从「北の方が近いから、そっちへ」
そういってハインはモララーを先導した。
しばらく歩いて、ハインは別の話題を提供した。
从 ゚∀从「教団が行っていた悪事はそれだけじゃない。
どんなことかわかる?」
( ・∀・)「……ひょっとして、猫が関係するのかな」
それもまた、この数カ月で集めたヒントから、絞り出したもの。
ハインは拍手してくれた。
184
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:53:42 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「あんたは本当に、凄いな」
( ・∀・)「ペットの悪質な売買が進んでいるのを聞いた。
組織犯罪めいたものも増えているらしいな」
从 ゚∀从「ショボンさんからでも聞いたの?」
( ・∀・)「ああ」
从 ゚∀从「へえ、仲良くやってるんだ。意外」
そこでようやくまたハインを見ることができた。
非常ににこやかにしてくれている。
とはいえその内容に、モララーとしては肯定しきる自信はなかった。
( ・∀・)「うーん、まあ。
それで、教団は何を?
猫を捕まえて売りさばいたりとかしているとか?」
185
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:55:15 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「それも一つだ。
教団の教義、覚えているか?
悪いものには触れちゃいけない、なるべく近寄らない方がいい」
从 ゚∀从「信者の中には当然、今までペットを飼っていた人はいたはずだ。
敬虔な信者になったとき、猫から遠ざかりたいと思った。
でも処分するわけにもいかない人は大勢いた。そこに教団が声をかけるんだ」
从 ゚∀从「ペットの処分をお受けしますってね。
それから、街にいる野良猫なんかも信者の人たちが集めてくるようにもしていたらしい。
街にはびこる悪魔の使者を捕まえるとかなんとかいってな」
从 ゚∀从「そうして自然と猫がL教団に集まった。
もちろんそんな可哀想な猫たちは処分されず、どこかの富豪や海外へと渡されていった。
そこから先はわからない。
ペットとして暮らす猫もいれば、剥製とか、材料とか、いろいろだろ」
从 ゚∀从「……でもな、最近はもっとすごいことを始めたんだ」
186
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:56:43 ID:EjYAGugM0
声のトーンが変わった。
ハインは明らかに顔色を悪くしていた。
それは純粋な感情を露わにしているようだった。
( ・∀・)「そんなに話したくない内容なのか」
モララーは心配して声をかける。
すると、ハインは目をつぶる。
从;-∀从「あたしにだって、嫌なことくらいあるさ。
お金儲けとはいえね、猫は好きだったから」
( ・∀・)「……なんで好きなの?」
从;-∀从「猫は自分のことしか考えていないから」
それからハインはため息をついた。
話すための前振りのようだ。
目が開かれる。
从 ゚∀从「骨を集めているんだ」
187
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:58:13 ID:EjYAGugM0
何事か、すぐには理解できなかった。
(;・∀・)「骨って、猫の骨?」
从 ゚∀从「それも含めて、動物の骨。
まあ教団は猫が一番集めやすいから、結果的に猫の骨が多くなる」
从 ゚∀从「でな。教祖の友人にアメリカの科学者がいるんだ。
合成ダイヤモンドの製造に携わっている。
合成ダイヤモンドっていうのは、炭素の構造に手を加えてダイヤモンドを作る技術」
从 ゚∀从「すでに研究自体は五十年近く前から進んでいる。
それがようやく最近になって技術進歩のために、
現実的に利用できるようになってきたんだ。
教祖はそこにビジネスチャンスを見つけたんだろう」
(;・∀・)「はー、ずいぶんとワールドワイドな視点を持っているんだな、教祖は」
从 ゚∀从「もともとそっちの畑の人だからな。
顔は広いし、あくどい」
ハインはそう簡単に評価して、話を続ける。
188
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 21:59:44 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「遺灰からダイヤモンドを作ることも可能らしい。
あたしにはとても、理解できないけど。
亡くなった人やペットの思い出を綺麗な石にしたい人は大勢いるだろうと。
それでその感情を利用してビジネスをしようと教祖は企んでいる」
从 ゚∀从「平たく言ってしまえば骨を使っての人工ダイヤモンドの独自開発。
この地下道のどこかに研究所を設けるつもりなんだ。
それでこの前、その前段階として大量の猫が処分された」
ハインはここまで話し終えてから、一息ついた。
モララーには思い当ることがあった。
( ・∀・)「お前の部屋にいた猫は、そのときの?」
从 ゚∀从「ああ。毒のせいで虫の息で、なんだか同情しちゃってさ。
それであの部屋に連れてきた。そしてそこで死んだ。
片付けておくべきだったんだけど、教団のやつらにすぐ見つかっちゃってさ。
それから戒めとして本部の近くで暮らすことになっちゃって、猫の遺骸はそのままにしちゃったんだ」
ひどく淡々とした口調のように、モララーには思えた。
たとえ猫といえども命であるのに、ハインの話し方からは、そのことに関する重みがまるで感じられなかった。
まるで生きるか死ぬかなどどうでもいいとでも言うように。
189
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:01:13 ID:EjYAGugM0
モララーはまた嫌な気持ちが湧いてきた。
どうもさっきから、ハインがなんだかおかしい。
ハインの話し方から察する。
どこかしら投げやりな雰囲気。
不安定な言動。
( ・∀・)「ハイン」
モララーは声をかけた。
やや遅れてから、ハインが「うん?」と答えた。
( ・∀・)「どこか休めるところは無いのか」
从 ゚∀从「ちょうど、いいところだよ」
ハインは前を指さした。
モララーは顔を前に向ける。
いつの間にか、道が終わろうとしていた。
鉄の扉が見える。
190
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:02:43 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「あそこが、さっき言った、最初に大学とつながった支部の地下なんだ。
話している間にたどりついたんだよ」
そう言って、ハインは扉を開いて中に入る。
モララーも足を進めていった。
一際大きな空間だった。
大学の大きな教室ほどの広さがある。
空間全体が照明によりオレンジ色の光に満たされていた。
まず目に映ったのは、北に面した壁にある巨大な十字架だった。
あの集会のときに目にしたような、簡素なものじゃない。
石で彫られた精巧な十字架であり、その交差された部分にはキリストを模した人型があった。
十字架の奥の壁は細密な装飾が施されている。
モララーは思わず、その十字架を見上げて感嘆した。
( ・∀・)「こりゃあすごいや。よくもまあこんなものを作ったな」
从 ゚∀从「ちゃんとした教会の一部だからさ」
ハインが前に出て、両手を上に伸ばして広げる。
191
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:04:14 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「ここは、地下講堂なんだ」
ハインが説明する。
从 ゚∀从「ここは、あそこだよ。
K大学のそばにあった教会の地下。
一緒に傍までいったじゃないか」
从 ゚∀从「あそこにはこんな立派な広間があったんだ。知ってたか?」
もちろん、知らなかった。
日々教会に通いつめていれば知る機会もあったのだろうか。
十字架に向かい合うように、長椅子が配置されていた。
長椅子は石造りであり、今の時期は冷え切っているかとも思った。
けれど地下講堂はしっかりと換気されていた。
そのことを疑問に思い、人が来るのかという不安を口にした。
だけどハインはすぐに否定した。
从 ゚∀从「換気されているのは、そのうちここを掘削機の連中が使うからだよ。
掘削は力作業だから、二時間ごとに人が交代する必要がある。
今の時間は十時半。おそらくあと三十分ほどしたら次の連中がここにつく。
だから今のうちに、ここを出ようと考えていたんだ」
192
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:05:45 ID:EjYAGugM0
それから二人は少し休んだ。
長椅子に座って、隣り合って。
ハインはぼんやりと十字架を眺めていた。
从 ゚∀从「キリスト教は地下で育ったんだ」
ハインが語り始めた。
从 ゚∀从「遠い昔、まだキリスト教が認められなかった頃。
迫害を恐れた信者たちは、必死になって地下に教会を作った。
そしてそこで神へ祈りを捧げた」
从 ゚∀从「当時キリスト教は悪者だった。だから地下にいた。
そして悪者じゃなくなったから外に出た。
それだけのこと」
ハインは誰に向けてというのでもなく、平坦に話していた。
眠い時のうわごとのように、掴みどころのない話し方だった。
193
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:07:13 ID:EjYAGugM0
「罪人は地下に潜るんだ」
モララーは再び胸の奥がざわつくのを感じた。
とめどない、不安な感情。
ハインを見る。
顔を俯かせている。
髪で、その表情はうかがい知れない。
ハインの身体がとても小さく見えた。
光の加減のせいなのだろうか。
( ・∀・)「ハイン?」
返事は無い。
ただ静かに首を横に振るだけ。
194
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:08:43 ID:EjYAGugM0
「休めたかい、モララー」
ハインはか細い声でそう言った。
「休めたなら、早くいかないと、なあ」
ひどく間延びした声。
モララーは動かなかった。
頭の中で推測を立てていた。
ずっと抱いていた疑問。
それをもう言うべきだと、モララーは感じていた。
自分の中の不安な気持ちの正体を暴くために。
195
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:10:13 ID:EjYAGugM0
「ん? どうした、モララー」
返事をしなかったからだろう。ハインが問う。
モララーは意を決した。
( ・∀・)「ハイン」
「んー?」
ハインのは顔をあげて、モララーを見た。
軽く首を傾けて。
モララーの言葉を待つ前に、その顔をゆっくりと動かしてしまう。
ハインの目線はまた十字架へと向けられた。
何かを求めるようでもあり、それでいてとても虚ろな目線。
( ・∀・)「お前さ」
モララーは、ハインの目線を必死に辿ろうとしていた。
それはここ半年間の自分の捜査と同じことであった。
彼女の目線は何も捉えていない。
ゆえに彼女の前にも何もない。
( ・∀・)「生きる気が無いんだろ?」
196
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:11:49 ID:EjYAGugM0
ハインは動かない。
从 ゚∀从「どうしてそう思う?」
ハインはモララーを見ずに、前傾姿勢になる。
手を交差して、前の長いすにのっける。
顔がその手に埋められた。
( ・∀・)「証拠と言えるほどのものがあるわけじゃない。
強いて言うなら警察をやめたこととか、かな。
自分から生活を営む術を失うなんて尋常じゃないから。
それほどに強くこの教団を叩くことに意気込んでいるのはわかる」
( ・∀・)「だけど、そこから先で何をしたいのかいまいちわからない。
さっきから話を聞いてても、その点はさっぱりだった。
まるで全身全霊を掛けてこの計画の成功に向かっている」
( ・∀・)「それが、怖い」
ハインが鼻で笑った。
从 ゚∀从「怖いって?」
( ・∀・)「言葉のままだ」
197
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:13:13 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「それが結論?
なんだかぼんやりした言葉だね」
ハインはそう言って、手をどけた。
そのままコートの中に入れる。
( ・∀・)「まだある。
さっき地下牢で、お前は『あんたが必ず生き残って』と言った」
( ・∀・)「なんで最初から俺だけなんだ。
お前も助かる予定なら、そんな限定はしないはずだ。
助かる気持ちが少しでもあったなら」
ハインの口元が微笑んでいるのがわかる。
でも、目は変わっていた。
モララーに向けられたその目は、まさしくぎらぎらしたあの目だった。
198
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:14:43 ID:EjYAGugM0
ハインはコートの中から、小型の箱を取り出した。
一見すると何の変哲もない、小さな四角い黒い箱。
ちょうど、首から下げる銀のロザリオと同じくらいの大きさ。
从 ゚∀从「爆弾だよ。威力はさほどでもないけど、煙がたっぷりとでるんだ」
ハインはこともなげに言う。
从 ゚∀从「スイッチはまた別にあたしが持っている。
もしここでこいつを爆発させたら、どうなると思う?
まず爆発の衝撃で地下道にもダメージが及ぶだろう。
ひょっとしたらどこかしら崩壊してくれるかな」
从 ゚∀从「それ以外にも、たとえ地下道が無事でも、煙は充満する。
その煙が穴を伝って出口へ着く。
ここからならK大学の傍の教会から出ていくことだろう。
他の場所へも自然と煙は伝わり、連中の支部がすぐわかるってわけ」
199
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:16:14 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「でもこの爆弾はある程度近い場所にいないと作動してくれない。
この講堂の端っこに設置して、反対側の出口へと移動して、スイッチを押す。
それくらいギリギリでないと爆発してくれないんだ。だからここにいなくちゃならない」
从 ゚∀从「そう、あたしはスイッチを押す。
生きていられる保証は無い。
それまでにモララー、あんたは逃げておく。
そうすれば教団の目から逃げられる」
从 ゚∀从「煙とあんたの証言が相まって、掘削機とか研究施設もみんなばれる。
結果としてL教団の計画は全て潰れる。
今までのような小さな手柄では収まらない、大成功さ」
ハインは平然と自分のたくらみを明かしていった。
モララーはじっとしていた。
なるべくなら、ハインが満足に話し終えるのを待っていたかった。
200
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:19:04 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「さてと、ごめんな、モララー。
あたしは最後まであんたを利用しようとしているんだ。
それでも気を悪くしないというなら、協力してほしいんだ」
ハインが、さっとモララーに近づいた。
あまりにも自然な動きに、モララーは反応が鈍った。
髪が踊る。
ハインの顔が見えなくなる。
モララーの背中に手が回った。
ハインがモララーに抱擁したのである。
顔はちょうどモララーの横にある。
耳元で、声がする。
「あたしはどうせ教団に目をつけられているんだ。逃げられやしない。
それにもう生きている意欲も失っている。この世は疲れることばかりさ。
だから最期のお願い聞いてほしいんだ」
「あたしのこと、好きなんだろう? 探偵さん」
201
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:20:52 ID:EjYAGugM0
それは疲れるものだろう。
モララーは心の中で答えた。
ハインには信じられるものが無いんだ。
両親にも先生からも騙されていたハインは、すでに誰も信じられなくなっていた。
そこで芽生えたのは教団への強い恨みだけ。
それだけがハインを突き動かしていた。
だから自分との関わりも、その恨みから作り上げたものだと言いたいのだろう。
その恨みが晴らされれば、もうハインに生きる意味は無い。
ハインが言いたいのは、そういうことだ。
モララーは思考を整理した。
ずっと、心にあった不安。
ハインと触れ合う中で気付いた、誰にも言わなかった違和感。
それが、とても強固な見えない壁を作り上げていた。
202
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:22:20 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「嘘だ」
不安を超えた頭脳の奥底にて、
その壁を打ち砕くための論理は、すでに出来上がっていた。
( ・∀・)「生きる気が無くても、死にたいわけじゃないんだ」
203
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:24:20 ID:EjYAGugM0
ハインは動かない。石のようにじっとしたまま。
( ・∀・)「初めに、疑問を抱いたのは、農学部棟でのことだ」
モララーは、今まで誰にも話さなかった自分なりの推理を語りだした。
思いついたときから封印していたのである。
傍から見れば独りよがりの推理であったから。
( ・∀・)「エレベーターが移動していた。
あれのおかげで俺は、誰かがあの棟にいることがわかった。
でも、後になって考えてみた。
一体なんでエレベーターを動かす必要があるんだって」
( ・∀・)「エレベーターは一階にあった。
もちろん時間が経てば戻るというものでもない。
守衛の話によれば、あのとき俺のあとに棟に入った者はいなかった」
( ・∀・)「さっきの話の通りなら、あの夜農学部棟に忍び込んでいたハインだけが
あのエレベーターを一階に動かせたことになる」
( ・∀・)「なんでわざわざ動かしたか。効果はなんだ。
あんなことしなくても、俺以外の誰かがいずれ教授の死体を見つけるだろう。
あれを俺に見せた意味はなんだって、ずっと不思議に思ってた」
204
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:26:21 ID:EjYAGugM0
ハインからの返事は無かった。
モララーは話を続けることにする。
( ・∀・)「まだある。
俺と会っていたこと、そのものだ」
( ・∀・)「確かに教授に会う理由でK大学にくるのはわかる。
でも、どうして俺に会う必要がある。
傍から見て怪しまれないようにするためか? それならおかしい」
( ・∀・)「だって、俺とずっと会っていたからこそハインは目立ったんだから。
学校の外部の女性が、大学生と会いにきているって、噂が立った。
( ・∀・)「初めは警察の職務とばれないようにかとも思った。
でもそもそもハインは警察をやめていたから、この線は無い」
( ・∀・)「年齢だって俺らと大差ないんだ。
大学生のふりでもした方がよっぽど安全だ。
この行動の結果として残ったのは、俺と会っていたということだけ。
もっと言えば、俺を巻き込んだという事実だけ」
( ・∀・)「じゃあなんで俺を巻き込んだ?
さっきお前は言っていたな。俺が少し変わったやつだから近づいてきたって。
でも、本当はもっと根本的な話じゃないか?」
205
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:28:23 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「あの港で、俺は冤罪の人を助けた。事件の真相を暴いた。
お前はあのとき俺がやったことと同じことを望んでいるんじゃないか?
事件の真実を知り、自分のことをよく理解してくれる人が現れるのを」
( ・∀・)「結果として俺はお前の残したヒントを頼りにここまできた。
そんなことをする理由は、果たして協力してもらうだけか?
L教団のことを外に知らせるだけならば手紙や電話でもできたはずだ。
俺はきっと、お前の言葉なら信じただろう」
( ・∀・)「俺を今この場所に呼んだ理由は何か。
今この場でなきゃできないことは何か。
その理由を自分なりに問い詰めていったあとで、ひとつ推測していたんだ」
小さな吐息。
自分の言葉を自信で覆う。
( ・∀・)「お前は俺に止めてもらいたがっているんじゃないかって」
モララーはハインの背中に手をまわさないでおいた。
ハインの肩を手で押す。
しかし動かない。きつく腕がモララーの背中に巻きついている。
206
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:30:25 ID:EjYAGugM0
( ・∀・)「……ハイン、顔を見せてくれ」
今の自分の話には証拠が無かった。
そんなことは百も承知だった。
人の感情についての証拠なんて、そうそうあるものじゃない。
人はほとんどの他人の感情を推測でしか語れない。
それでも人は人と関わらなければならない。
必要になってくるのは、推測を信じるという気持ちだけ。
鼻をすする音が聞えた。
「嫌だ」
絞り出したように、ハインが言った。
今にも消え入りそうな、震えた声。
否定の言葉はそれっきりだった。
207
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:32:21 ID:EjYAGugM0
身体を通して、ハインの動作が伝わってきていた。
震える声も、荒い息遣いも、たったひとつの真実へと繋がっていた。
ハインは今、泣いていた。
それだけで十分だった。
ハインの感情が完全に理解できなくても、構わない。
今この話を聞いて、肩を震わせて泣いている。
その事実が、モララーの推測が正しいことを表していた。
客観的な証明ではない。主観で補ってようやく成り立つ論理である。
そうした主観が探偵に必要であると、いつの日か誰かと語らった。
遠い記憶がちょっとだけ想起された。
モララーはハインを引き離すのを諦めた。
その代わり、今度は力を込めて、ハインの背中に手をまわした。
( ・∀・)「一緒に生きよう」
もう、否定の言葉は続かなかった。
208
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:34:20 ID:EjYAGugM0
大きな音が聞えてきた。
モララーとハインは同時に反応し、顔を上げた。
目線は、先ほど二人が入ってきた扉へ向けられる。
教会のへの出口からは反対側だ。
从;゚∀从「な、なんで」
ハインの声。
顔は見えなくとも、愕然としているのがモララーにもわかる。
扉の外に誰か来ている。
从;゚∀从「まだ帰ってくるには早いはず。どうして人が」
謎を追う暇もない。
モララーはハインの腕を引く。
(;・∀・)「とにかく今は逃げるしかない!」
209
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:36:21 ID:EjYAGugM0
モララーはハインの手を握ろうとした。
でもその手はすでに動いている。
ハインの右手には先ほどの爆弾があった。
今、大きく振りかぶられている。
モララーが制止する暇も無かった。
从;゚∀从「出口へ!」
ハインが思いっきり強く教会側の出口を指す。
呆然としつつも、モララーは立ちあがった。
同時に、ハインは手を振りぬいた。
爆弾が放りあげられる。
やろうとしていることはわかった。
モララーは駆け出す。
ハインもわずかに遅れて駆け出していた。
210
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:38:21 ID:EjYAGugM0
モララーが教会側の扉へたどりつく。
開けて、流れるように二人で入る。
ハインはフードからスイッチを取り出していた。
先ほど言っていた、爆弾のスイッチ。
扉が締め切るその直前に、ボタンが押された。
轟音が鉄の扉でシャットアウトされる。
衝撃はかなり軽減されたが、それでも立っているのは厳しい。
転がりそうになりながら、モララーはしゃがんでやりすごそうとする。
大きな振動がひとつ。
天井から無数の砂が降り注いでくる。
モララーは目を強く閉じた。
どうせ目を開けていても、視界がぶれて立っていられないだろう。
地下道全体を震わせつつ、徐々に落ち着いていく。
天井から落ちてくる砂が少なくなる。
時間の経過とともに、やがて元の静寂が訪れた。
211
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:40:29 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「おお、案外大丈夫なんだな」
ハインは感心したように言う。
モララーはその顔を見て唖然とした。
すっかり目が輝いている。
从 ゚∀从「てっきり死ななきゃならないのかと思いこんでいた」
(;・∀・)「ダメ元だったのかよ!」
从 ゚∀从「捕まるよりましさ」
思いのほか景気のいい返事だ。
モララーは引きつりながら、口の端を上げた。
ハインは元に戻った、と考えていいのだろうか。
それを聞こうとして、身体がふらついた。
バランスが取れない。
从 ゚∀从「探偵さん、立てる?」
212
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:42:06 ID:EjYAGugM0
(;・∀・)「ああ」
答えたものの、体力は相当奪われていた。
考えてみたらすでに地下牢に入れられたときから満身創痍だったのだ。
痛みをこらえて立ちあがる。
(;・∀・)「ちょっと……疲れたみたいだ」
从 ゚∀从「平気か? あとちょっとだから」
(;・∀・)「出口は?」
从 ゚∀从「あそこ」
ハインが前を示す。
階段が見えた。
从 ゚∀从「あそこが教会に繋がっているんだ」
213
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:44:05 ID:EjYAGugM0
今度はハインがモララーを先導した。
モララーの体力を考えて、ゆっくりと二人は歩く。
後ろから追ってきていた連中はどうなったのか。
あの衝撃をまともに食らっているならば立てないだろう。
しばらく追っては来れないはずだ。そうであることを祈りたい。
从 ゚∀从「なんで戻ってきたんだろうな」
ハインがぼやく。
あの聞えてきた足音の話だ。
理由はわからない。
掘削機に何か支障が生じたのだろうか。
振動はすっかり遠ざかっているので、今も稼働しているのかはわからない。
从 ゚∀从「階段、大丈夫か?」
(;・∀・)「そこまでしんどくはないよ」
モララーは笑ってごまかした。
214
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:46:26 ID:EjYAGugM0
ハインの表情を確認する。
ぎらぎらした目もしていない。
穏やかに笑いかけてくれていた。
从 ゚∀从「あれ、探偵さん、ロザリオしてたのか」
ハインがモララーの胸のあたりを指さす。
「え?」と呟いて、モララーは下を向いた。
今更のように、思いだした。
マスがロザリオをくれたことを。
そのロザリオは今日、モララーの首から提げられていた。
(;・∀・)「ああ、兄弟がくれたんだ」
そういえばマスがいろいろといじったと言っていたけど、いったいなんのことだったのだろう。
結局わからずじまいだった。
帰ってから後で聞いてみればいい。あいつのことだから、きっと何か考えてくれたんだ。
215
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:48:03 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「そういえば、兄弟って言うけど、どっちが年上なんだ?」
(;・∀・)「え、ああ」
モララーはちょっと考えて、それからふっと笑った。
(;・∀・)「わかんないや」
从 ゚∀从「え、なんで?」
(;・∀・)「いつか話すよ」
そうだ、まだまだハインには話していないことがたくさんある。
これが終わったら、もっとじっくりとハインと話し合いたい。
また前のように、大学通りの喫茶店にでも入って、ゆったりと時間を使いたい。
階段を一歩一歩踏みしめていく。
出口の扉は、床に敷かれているのだろう。
内側から開けるときは、押す必要がある。
216
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:50:03 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「開けよう」
モララーは前に立ち、扉の取っ手を掴んだ。
鍵はかかっていない。
从 ゚∀从「モララー、あんたを信じて良かった。
あんたはあたしが思った通りのやつだったよ」
ハインが言った。
唐突にも思えた。
从 ゚∀从「あんたはいつでも、あたしのことを信じてくれるだろ」
彼女の顔は、とても輝いて見えた。
从 ゚∀从「たった半年、いや、一年の付き合いだけど。
あんたがそういう奴だってことを、あたしはよく知ってるんだ。
だからあたしは安心できるのさ」
その言葉は真意だろうか。
散々彼女に振り回されたおかげだろうか、モララーは一瞬そんな疑惑を抱いた。
217
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:52:03 ID:EjYAGugM0
でも、すぐにかき消えた。
本当かどうかなんて関係ない。
信じるか信じないかだ。
だめだったらだめになってから考えればいい。
モララーは身体の疲れを感じた。
早く帰ろう。
あのアパートへでもいい。
元の世界へ戻りたい。
それだけ。
扉が開かれた。
とたんに、光が差し込んできた。
218
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:54:05 ID:EjYAGugM0
とても強い光だ。
目を開けているのは厳しかった。
目を閉じた。
声が聞える。
とてもやかましい。
傍で音がした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
219
:
第十章 十字架
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 22:56:26 ID:EjYAGugM0
お前は相当疲れていたんだ。
この後すぐにお前は倒れた。
強いストレスからくるショックで。
でもこの音だけは覚えていたんだってな。
ずっとずっと、忘れられない音として
お前の記憶に刻まれているんだ。
いつまでも。
この十字架はお前に突き刺さっている。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 エピローグ 探偵事務所 へ続く。
220
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/17(土) 23:00:20 ID:EjYAGugM0
目次
>>2
登場人物
>>3-52
第七章 球場
>>56-104
第八章 猫
>>110-143
第九章 クリスマスイブ
>>150-219
第十章 十字架
明日、エピローグを投下します。
着想から一年以上、何度も書き直しを重ねた物語がようやく終わります。
今しばらくお付き合いください。
それでは。
221
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 23:13:21 ID:6U5PX.PU0
乙!!
今回も面白かった
222
:
名も無きAAのようです
:2013/08/17(土) 23:16:28 ID:cm3qmLDA0
乙
とうとう終わりか…
223
:
名も無きAAのようです
:2013/08/18(日) 03:55:58 ID:h3TJnnzEO
そういえばと思って前作見てみたら、4月に次回作草案中って言ってるな
一時期あんまり来ないからもう書くの辞めたのかなと思ったりしたけど
前作もだけどこれくらい凝った作品は2、3ヶ月くらいじゃ書けないだろうな
続きが読めてよかったよ、エピローグ早くまだ色々謎ばかりだ
224
:
名も無きAAのようです
:2013/08/18(日) 20:18:35 ID:h3TJnnzEO
エピローグマダー!
225
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:04:47 ID:t50i03ro0
お、復旧しとる。
それでは投下始めます。
226
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:05:59 ID:t50i03ro0
( <●><●>)「あのロザリオは発信機だったんです」
マスが説明する。
( <●><●>)「僕の知り合いの方々に手伝ってもらって、K大学の傍や県南、東京の方まで受信機を配っていたんです。
そもそもは物理学科の方々の実験だったんですけどね、僕も勉強のために参加させてもらっていたんです。
そしてロザリオにもその仕組みを応用させて、あの集会の日に利用したんです」
( ・∀・)「言ってくれても良かったろうに」
( <●><●>)「もしかしたら役に立つかも、という程度の認識だったんです。
むしろ君があそこまで危ない目にあうなんて思いもしなかったんです。
あのロザリオが無ければどうなっていたことか」
( ・∀・)「無くても助かっていたよ」
( <●><●>)「本当にそう考えているんですか?」
( ・∀・)「ああ」
( <●><●>)「だってあのおかげで、警察の方々は別の場所から地下道に潜入できたんですよ?」
( ・∀・)「……あ」
( <●><●>)「?」
( ・∀・)「そうか、あの地下講堂に来たやつら」
227
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:06:58 ID:t50i03ro0
( <●><●>)「何か思い当る節でも?」
( ・∀・)「地下講堂にいたとき、突然地下道の方から人が来たんだ。
教団の連中だったんだと思うけど。
あれはきっと別の場所から入ってきた警察に追われて逃げてきた連中だったんだな」
( <●><●>)「そんなことがあったんですか……」
( ・∀・)「ちょうど爆弾を爆発させたときだよ」
( <●><●>)「ああ、あの……」
( ・∀・)「うん」
( <●><●>)「……怒ってます?」
( ・∀・)「え?」
( <●><●>)「ロザリオをいじったこと」
228
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:08:06 ID:t50i03ro0
( ・∀・)「そんなことないさ」
モララーはすぐに否定した。
( ・∀・)「そんな傲慢なことはさすがに言えないよ。
ただ、やっぱり理屈では片付けられないものもあるからさ……」
( <●><●>)「……それはわかります」
マスは目を閉じて、うんうんとうなずいてくれた。
( <●><●>)「まあ、いろいろ感じるものはあるんでしょうね。
でも世の中そういうものですよ。価値判断は人それぞれです。
自分が成し遂げようとしていたものが他人にとっては都合の悪いものにもなるんです」
マスが言っていることは何から何まで正しかった。
だからモララーは口答えをしなかった。
感情的になっていたことにも反省してきた。
( ・∀・)「ごめん」
小さく謝罪する。
マスも黙ってしまった。
何を言っても無駄だと思ったのだろう。
モララー自信がそう思っている。今の自分に何を言っても無駄だ。
自分もハインも助かった、だから今こうして生きていられる。
そのことには感謝しなければいけないことなのに、文句を言うなど罰が当たる。
229
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:09:05 ID:t50i03ro0
「分手モララーさん、どうぞ」
呼ばれて、返事をする。
( <●><●>)「じゃあ、僕は外で待っています。久しぶりに僕が料理を作ってあげましょう」
ここ最近忙しかったことを、やはりマスも気にしていたようだ。
モララーは思わず微笑んだ。思った以上にマスは変わっていなかった。
軽く、手を振って、部屋の扉に向き直る。
ここは警視庁
すでに年が明けている。
モララーは取調室に入って行った。
230
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:10:06 ID:t50i03ro0
(´・ω・`)「君か」
見覚えのある顔だ。
( ・∀・)「またあんたか」
(´・ω・`)「お互い様さ。
こういう縁もあるもんだ」
( ・∀・)「異動したばっかりじゃないの?」
(´・ω・`)「そうだけど、一応元からこの教団のことを追っていたからね。
本部に戻っても引き続き調査しているというわけさ」
ショボンはそういって、椅子に座るようモララーを促した。
(´・ω・`)「さて、事件のことについてはだいぶ話した」
モララーは肯定する。
教会爆破と発砲その他、それに付随する教団の悪事の数々。
この数日間で明らかになることはあまりにも多かった。
231
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:11:06 ID:t50i03ro0
すべて、モララーが供述したことだ。
彼は教団にもぐりこんだときのこと、拘禁されたことも含めて
彼は教団内部で何が行われているのかを事細かに告げた。
実際に地下道に潜入した警察も、掘削機を含めて様々な証拠を見つけていた。
あの爆発で負傷した教団の人間からも証言を得られた。
警察の捜査も軌道に乗った。
大組織といえども、あの地下道のような大掛かりな証拠があれば、言い逃れはできない。
そもそも教団による被害者の数も多かった。
そして芋づる式に教団の悪事が暴かれる結果となった。
( ・∀・)「ええ、でも僕は呼び出された」
(´・ω・`)「そうだ。まだ聴きたいことがあるからだ」
モララーは溜息をつく。
( ・∀・)「もったいぶらずに言えばいいじゃないですか」
その件について荒ぶるのにももう疲れた頃だった。
(´・ω・`)「では、聞かせてもらおうか」
(´・ω・`)「高岡ハイン容疑者について」
232
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:12:06 ID:t50i03ro0
ショボンは淡々と事実を述べる。
その話題の人物が昔の同僚だということを微塵も感じさせない口ぶりだ。
もっと気持ちを込めてもいいじゃないか、と素直にモララーは苛立った。
ショボンの態度は完全に公私を別にしていた。
それが当たり前のこととはいえ、気にはなる。
( ・∀・)「どうしてハインは逮捕されたのですか。
詳しく説明してほしいんです」
モララーは冷静にきこえるよう努力して質問した。
(´・ω・`)「聞いてはいなかったのかな」
( ・∀・)「教団の話こそすれ、その中の一人のことなんて
なかなかピンポイントで知ることはできませんでしたから」
(´・ω・`)「そうか……」
ショボンは言葉を選んでいるようであった。
233
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:13:06 ID:t50i03ro0
(´・ω・`)「教団の幹部だったからな。
教団の団員の数人も、彼女の指示により動いたことを話している。
地下で起きた爆発も彼女が起こしたものだろう。残骸から違法な爆発物が検出された」
( ・∀・)「ハインは、教団の悪事を暴くために頑張ったんですよ?」
(´・ω・`)「ああ。でも、そのために悪事を働いた」
ショボンは鼻につくくらい論理的に説明した。
(´・ω・`)「どんな理由であれ、度を過ぎた悪事はしてはならないんだよ。
たとえ正当な目的があったとしてもな、それで大きな被害を及ぼしてはならない。
わかるだろう?」
( ・∀・)「……」
(´・ω・`)「と、私も言っていたんだがね」
( ・∀・)「……?」
モララーは呆然としていたが、ショボンの言葉に急に我に返る。
( ・∀・)「言っていた?」
234
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:14:06 ID:t50i03ro0
(´・ω・`)「ハインは聞く耳をもたなかった」
( ・∀・)「どういうことですか」
モララーは鋭い目をショボンに向けた。
(´・ω・`)「ハインの考えは、知っていたよ」
ショボンは何事でもないように、言う。
(´・ω・`)「実はね、君と神社で会った後にハインから電話が来たんだ。
私はハインがこれから行おうとしていることを知った。
そして彼女はこうも書いていた、あたしの計画の後にこの秘密を公表してくれと」
(´・ω・`)「だから私はハインが計画を遂行するのを待つことにした。
上手くいけば教団の陰謀がすべて暴かれるかもしれない、こr」
すべてを言いきる前に、ショボンの首にモララーの左手が伸びる。
ネクタイを握る手がぎりぎりと閉まる。
頭が一つのことだけに集中していた。
ショボンは全て知っていたというのか。
知っていた上で、この結果を回避しなかったというのか。
右手に力がこもる。
235
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:15:07 ID:t50i03ro0
(´・ω・`)「……それ以上のことをすれば、君を逮捕するぞ」
ショボンは淡々と、説明する。
(´・ω・`)「君もまた独房に入りたいのなら、なるほど性急に対処してやろう。
しかしこれはハインも望んでいないんじゃないのか」
モララーは息を荒げていた。
ショボンを強く睨みつける。
ショボンは睨まず、ただじっと、モララーを見返していた。
モララーは呼吸を整えて、手を離した。
(´・ω・`)「やれやれ、若いね」
ショボンの皮肉にもこたえる余裕は無かった。
(´・ω・`)「言っておくけど、逮捕されたのは彼女の意志だよ。
電話口でも彼女が言ったんだ。今までの罪は償うってね」
236
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:16:07 ID:t50i03ro0
罪人は地下に潜る。
彼女が言っていたセリフを思い出す。
モララーには何も言えなかった。
彼女が自分を罪人と思っていたのなら、モララーからは何もできない。
死ぬことをやめたとしても、彼女は生きて、罪を償う道を選んだ、それだけなのだから。
(´・ω・`)「君はハインといつ頃から知り合ったのだっけ」
そこからは事情の説明がしばらく続いた。
お互い深入りすることなく、モララーは事実だけ述べ、ショボンは事実だけを書き留めた。
先ほどの昂ぶりも憤りも、ひとまずは抑えつけてある。
モララーは余計なことを考えないことにしていた。
考えてしまえば、このどうしようもない憤りがとめどなく溢れてきてしまうだろうから。
(´・ω・`)「ありがとう」
ショボンはそう言って、取り調べを終えた。
237
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:17:05 ID:t50i03ro0
( ・∀・)「……俺は、あんたのことはきっとずっと嫌いだと思う」
モララーは思うがままに述べる。
(´・ω・`)「ほう」
( ・∀・)「俺はハインを助けたいから助けた。
助けたのにこんな仕打ちをされるのは、納得いかない」
(´・ω・`)「彼女が望んだことでもか」
( ・∀・)「そう」
(´・ω・`)「まるで子どもじゃないか」
( ・∀・)「それでもいい」
ショボンは何かを言い返そうとしたが、結局は諦めた。
238
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:18:16 ID:t50i03ro0
(´・ω・`)「何を言っても無駄だろうな。
目を見ればわかるよ」
( ・∀・)「目?」
(´・ω・`)「そうだよ」
ショボンは嘆息を漏らす。
(´・ω・`)「今の君の目は、ぎらぎらしている。
彼女と同じだ。絶対に、他の人の意見など聞き入れない。
自分の信じる道を行く」
信じる、か。
239
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:19:26 ID:t50i03ro0
(´・ω・`)「だいたい、彼女が本当はどう思っているかも君はわかっていないんだろう?
彼女も君のことについてはただ、利用していたとしか発言していないんだ」
モララーにとってそのことは初耳だった。
地下で、モララーはちゃんとしたハインからの答えを聞いたわけではない。
だから、ひょっとしたらハインはモララーのことをなんとも思っていないのかもしれなかった。
(´・ω・`)「それなのに君は彼女を信じるというのか?」
ショボンは目を細めて、モララーの反応を伺っていた。
ハインがそう答えているのは、モララーを巻き込まないという意図もあるように思える。
あるいは本当に最初から利用していたとも。
でも、モララーにはもう、その問いは無意味だった。
モララーはその目線を手で振り払い、微かに笑う。
( ・∀・)「信じているさ」
モララーははっきりという。
( ・∀・)「ハインは悪人なんかじゃない。
これから何年かかってもいい。俺はハインとまた会えるときまであいつを信じ続ける」
そして、そのために
答えはもう決まっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
240
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:20:21 ID:t50i03ro0
お前はそう言って部屋を出ていった。
まったくもって、いけすかない男だ.
お前の背中を眺めながら、俺はそう思っていたよ。
正直に言うと、俺はお前に不安な気持ちしか抱いていないんだ。
お前はあまりにもハインに似すぎている。
目標のためならば多少の危険は厭わない。
そういうタイプの人間のように私には思えるのだ。
だから、これから先にも備えて私はお前のデータを残しておくことにした。
血液や指紋、この調書のデータも全て残しておくように鑑識に頼んでおいた。
俺はお前を信頼していないんだ。
これが、お前の後ろ姿をこの部屋で見ての、このときの俺の結論だ。
しかし世の中には変わった縁があるものだ。
ハインを信じているお前はハインにまだ会えないのに
お前を信頼していない俺は後にお前に会うのだから。
おかげで、まったくもって碌な目にあわない。
なあ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
241
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:21:06 ID:t50i03ro0
( <●><●>)「探偵事務所をすぐに始める?」
( ・∀・)「そうだ」
唐突に言うものだから、マスは驚く。
( <●><●>)「急にやる気になるものなのですね」
( ・∀・)「なんだかな、やる気に満ちてるんだ」
( <●><●>)「とりあえず、卒業はしましょう」
マスはモララーをなだめる。
モララーも渋々納得した。
( <●><●>)「まったくもう、わかりやすいというか」
マスが呆れたように言う。
242
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:22:05 ID:t50i03ro0
( ・∀・)「え?」
( <●><●>)「どうせハインさんのことでしょう」
(;・∀・)「ああ、まあ……」
( <●><●>)「ほらほら、そういうの。
なんで僕相手に照れるんですか。いつもいつも」
(;・∀・)「い、いや別に」
( <●><●>)「で、探偵事務所を開いて何をするつもりなんです」
( ・∀・)「ああ」
モララーはもう心に決めていた。
( ・∀・)「いろんな事件を解く。
いろんな人を救う。
もう、ハインや、似た境遇の人が悲しまないように」
そしていつかハインに、胸を張って会えるように。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
243
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:23:06 ID:t50i03ro0
春の足音がきこえるような、三月の陽気。
卒業式は、もう少し。
モララーは教会の焼け跡の横にある公園にきていた。
単純に、散歩していて、たまたま通りかかっただけである。
教会の方はいまだに警察によって立入禁止の状態となっていた。
あの地下通路は広大だったし、捜査もすぐ終わるものではないのだろう。
それでも新学期になるころにはおえていないと、子どもたちもボランティアもしばらくお預けとなるだろう。
応援するばかりである。
いつの間にか公園の猫は増えている。
いったいいつの間に戻ってきたというのだろう。
ラップ現象よりもよっぽど不思議な現象だ。
川 ゚ -゚)「モララーさんじゃないですか」
ベンチに座っていたら、クーと出くわした。
まるで手ぶらの状態だ。おそらくクーもただ散歩をしにきたというだけなのだろう。
( ・∀・)「クー、元気そうだな」
一時期塞ぎこんでいたというのが、もう嘘のようだ。
川 ゚ -゚)「猫、好きですから。ここにきていっぱい猫と会って、もう幸せですよ。
それと、飼い猫戻ってきたんですよ!」
244
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:24:08 ID:t50i03ro0
( ・∀・)「え!」
川 ゚ -゚)「なんと、子どもを連れて!
いやあ、どこで育てていたんでしょうね」
そうか、死んでいなかったのか。
地下で教団の悪事をきいたときから、勝手に殺されたり売られたりしたものだと思い込んでいた。
飼い猫にとっては本当に悪いことである。黙っておこう。
骨のことについて口に出そうとしたが、したらしたでクーがショックを受けそうなので、こちらも黙ることにした。
( ・∀・)「はは、よかったじゃないか」
川 ゚ -゚)「まったくですよ」
クーはモララーの隣に座って、一息ついた。
川 ゚ -゚)「ねえねえ、モララーさん」
すぐに、クーが話しかけてくる。
( ・∀・)「ん?」
川 ゚ -゚)「あの、マスさんってまだ学校にいますかね」
245
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:25:04 ID:t50i03ro0
なんだって急にマスの話なのだろう。
その真意は随分後にならないとモララーにはわからなかった。
ちなみにモララーはハンカチを返していないし、クーももう追求してこなかった。
( ・∀・)「ああ、どうだろう。
就職はするみたいだけど。
まだ学校にはくるんじゃないかな」
川 ゚ -゚)「また物理学棟で遊んでいるんですかね」
( ・∀・)「かもなー」
ちょっとだけ話が途切れた。
鳥の囀りがより良く聞える。
眠気が二人を包み込んでいた。
( ・∀・)「しかし、みんな遠くへ行くわけだよなあ」
モララーの嘆息にはいろんな意味合いが込められていた。
すでに大学の卒業式は終わっていて、モララーもクーもここから離れる。
マスはもうすこし院に残っているだろうが、もう社会人になってしまう。
( ・∀・)「なんだか寂しいな。
それが成長ってもんなんだろうけど」
モララーが言う。ほとんど呟きに近い言葉。
クーはそれを聴いて、何とも言えない顔をする。
246
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:26:07 ID:t50i03ro0
でも、すぐに首を横に振った。
川 ゚ -゚)「何を言っているんですか、モララーさん。
猫だってこうしてここに戻ってきたんですよ」
クーは周りを見回して、言う。
川 ゚ -゚)「確かに離れるけど、どこかには生きていて、春がきたり、何かがあればまた会える。
生きている限り、そうでしょう」
モララーは頭の中で一瞬煌めきを感じた。
クーの言ったことが、まさに自分の聞きたかったことのように感じた。
まったくもって、急に核心をつくやつだと、モララーは思う。
思わずクーを見て、つい笑ってしまう。
川;゚ -゚)「な、なに笑ってるんですか? こわいですよ」
( ・∀・)「いやいや、なんでもない」
ふと、猫探しのときもこんなふうにクーに笑われたことを思い出した。
嫌な感情など微塵も無い笑いなのだと、ようやくわかった。
247
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:27:10 ID:t50i03ro0
春が近づく。
猫は戻る。
社会に出るものは出て。
ハインは罪を償いに。
そして、モララーは探偵事務所を開いた。
〜探偵モララーは信じているようです おわり〜
248
:
エピローグ 探偵事務所
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:30:35 ID:t50i03ro0
目次
>>2
登場人物
>>3-52
第七章 球場
>>56-104
第八章 猫
>>110-143
第九章 クリスマスイブ
>>150-219
第十章 十字架
>>226-247
エピローグ 探偵事務所
249
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:33:58 ID:t50i03ro0
>>223
実際に書いていたのは今年の五月頃からです。
一年間は本当に、忙しくて執筆どころじゃなかったので。
構想だけこねくりまわしてなかなか終わりまでできずもやもやしていましたね。
250
:
あとがき
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/18(日) 22:47:56 ID:t50i03ro0
探偵モララーの過去のお話、いかがだったでしょうか。
このお話を思いついたのが去年の三月とか四月頃。
実際に書き始めたのが上にも書いたように今年の五月。
そして八月初旬で大改編しています。
後半はもうほとんど投下ギリギリまで書き直しています。
それこそ血反吐を吐くかと思いました。
なにせ話を盛り上げるのに苦労しましたから。
とはいえ、一番書きたいのは地下道のシーンでした。
そこの描写、第十章だけはほとんど手を加えてありません。
まあ、いろいろ書きすぎました。疲れた。
本当は次回作の予告書きたかったけど時間無かった。残念。
質問等ありましたらどうぞ書いてください。
それでは、お読みいただきありがとうございました。
251
:
名も無きAAのようです
:2013/08/18(日) 23:43:18 ID:h3TJnnzEO
リアルが許せば月一くらいの現行書いてほしい
まあ年一短期完結でもいいんだけども
252
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/19(月) 00:19:38 ID:Yk3KobIk0
>>251
次の作品はそうしたいですね。
なんかこう、次のはもっと気軽な題材で書こうと思うので。
できるだけ努力して、九月末までに一話を投下したいです。
253
:
名も無きAAのようです
:2013/08/19(月) 01:40:29 ID:1/.vVDCw0
おつ
次回作も期待してるよ
254
:
名も無きAAのようです
:2013/08/19(月) 01:50:34 ID:poiPbRUY0
乙!
255
:
名も無きAAのようです
:2013/08/19(月) 03:21:43 ID:Pm0Rcvzo0
乙
モララーの印象めちゃめちゃ変った
熱い男だぜ
256
:
名も無きAAのようです
:2013/08/19(月) 07:39:19 ID:lt22Jj1U0
乙
嘘をついていたようですを読み直してくる
257
:
名も無きAAのようです
:2013/08/20(火) 02:46:34 ID:NUrXVUQo0
内藤事件の時にはハインは40歳か…
258
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/23(金) 00:32:34 ID:UHuBuTEc0
遅くなりましたが、新しい現行を書き始めました。
これまでとかなり違ってファンタジーなので、合わない人もいるでしょうが……
報告をしておきます。
( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1377054485/
259
:
名も無きAAのようです
:2013/08/23(金) 02:04:25 ID:OoLKN7.oO
あれ、あんただったのか一話が長いなとは思っていたけど
260
:
名も無きAAのようです
:2013/08/28(水) 04:45:26 ID:iuBGDzYg0
そっちも楽しませてもらってます
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