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( ^ω^) 剣と魔法と大五郎のようです
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懐かしい夢を見た。
体も心もまだ幼くて、それでも、だからこそ幸せだった頃の記憶。
ξ゚⊿゚)ξ (……)
薄暗闇の中、天井に手を翳す。
思えば遠くに来た。
それは、物理的な距離ではなくて。
ξ゚⊿゚)ξ (……)
体のいたるところに出来た傷跡を、死んでしまった両親が見たらどう思うだろうか。
きっと怒るのだろう。そして、悲しむのだろう。
傷を作ったことでは無くて、傷を作るに至った理由を。
ξ゚ー゚)ξ (……ふふ)
いつもそうだった。
二人の心配を無視して怪我をして、母親の手痛い拳骨を貰ったものだ。
よくよく考えれば、きっとあの頃から成長なんてしていない。
ξ ⊿)ξ =3
脳裏にちらつくあらゆる感情を息と共に吐き出して、硬く目を閉じる。
迂闊にあの頃を思ったりしないように。
幸せな夢を、もう見てしまわないように。
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_,. -- - 、
/  ̄`Y´  ̄丶.
, ' -‐ ー_  ̄丶丶
///  ̄'´ ゙; ヽ
〃, ' / ,' ヽ. ミ!
| !. ,.' ノ ,ィ 、ヽ ゙. |
ト、|. ! / /! ,./ ヽlヽ、! | ィォ
| ノ!|_l/:::::::|/i!::::::リ::::::! l!汐
刈从!゙:::::::::::::::::::::::::::::::| /!介
,ミ人i!:::o:::::::::::::::::::::::::::::'!うトヽ、
ぐ'、 ヾ、 ' ,チ'´ ゞ,く
ソ _>: ..´__`...,.<__ `ヽ)
,r'i ̄| |::ゝヽ.。ノノ::::l |゙i ̄!ヽ
| ヽ.i| ヽ:`::TT:´:::,.' lリ !,.' }
l ヽ /! ヽ、:!:|::/ !V ,'
∧. ,' ヽ-‐t=fλー‐‐'' {. ∧
ヽ_;_! _,/ノ゙' i_/_ノ
ィァォ. ´ ´| |ェム
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|::i!:: .. !::.......:.:.:: ,!::l
|/.!.:.:. :.. ,'. ' ,'l::!
/| !.:.:.:.: / : .': |:| 剣と魔法と大五郎のようです
/.,' !:.:.: ,' : ,:. リ Second thread.
/ ; :l:. /.: : ,:. l゙、
_. -...::''´, ' .l:. |: ,:. . ,:. | ト、
,r' ..:.:.:::.: ノ. | ..:l /:. ,:.: ! ヽヽ * * *
, ' _,.. ' ! !,':. ,:. |:. ヽ ヽ
{ _ - ' , ' ! .:.|:. ,:. !:. 丶 ヽ
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支援
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( ^ω^) (ねぇねぇドッグ)
('A`) 『ん?』
( ^ω^) (サロンって、こんな物騒なトコだったっけ?)
( ゚'μ゚) 「でぇい!!」
その男は、武器も構えず棒立ちのブーンに対し剣を振り上げた。
隆々とした筋肉。
握られた剣は刃こぼれが多いものの、肉厚の刀身が破壊力の高さを伺わせる。
高い位置からの、力強い振り下ろし。
重さを感じさせ無い、風切る一撃である。
しかし、ブーンはこれを男の脇をすり抜ける形であっさりと回避した。
地面に打ち付けられた剣は激しい金属音をまき散らし、土を大きく抉る。
男は体勢を大きく崩すことなく、すぐさま剣を引き構えた。
重い武器を使うだけあって流石の足腰だ。
( ゚'μ゚) 「ぬぅっはぁーァッ!!!俺の一撃を躱すとはなかなかやるな貴様ァッ!!」
('A`) 『俺、こういう脳筋っぽいの嫌い』
( ^ω^) (ドッグの魔法の使い方も脳筋だと思うけど)
('A`) 『うるせえやい』
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男が再び剣を振り上げる。
単調な攻撃だが、この男のポテンシャルには非常に見合っていた。
圧倒的な破壊力と間合いの広さは、同時に反撃の困難さの証明。
理解しやすい一撃必殺は受ける側に必要以上の警戒心と恐怖心を抱かせる。
その上、男の筋力は攻撃の威力のみならず、武器の取り回しにも反映されていた。
攻撃後の隙が、思いのほか小さく、機敏。
反撃に対し反撃を合わせることも可能だろう。
これならば下手な小技を多用するよりも、一気に叩き潰した方が効率的だ。
純粋に強い力は、ちょっとした方向性を与えるだけで十分に武力足りうる。
( ゚'μ゚) 「ぶるぁあ!!」
しかし。
( ^ω^) 「―――杉浦双刀流、無刀の型」
それはあくまで、相手が同程度以下の武力しか持たない場合の話。
( ^ω^) 「『陽炎送り』」
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( ゚'μ゚) 「?!ッ」
大剣は一撃目と同様に地面を斬った。
違ったのは、ブーンがその刃を避けなかったということ。
( ゚'μ゚) 「素手で……ッ!?」
分厚い刃が頭を砕くその寸前、ブーンは空の右手を振るった。
男の剣に向けて、男の剣よりも速く、男の剣に添うように、流す。
交差し、刹那に満ちぬその時間に剣閃はブーンの体を大きく逸れる。
勢いづいた剣は男の制御を振り切り、より深く地面へ。
伝わる衝撃は掌を痺れさせる。
( ゚'μ゚) 「!」
驚愕し平静を失った男の目の前、ブーンは一気に間合いを詰めた。
男は反射的に後退。
しかし地面にしっかりと食い込んだ剣がその動作を妨げる。
打撃の破壊力を持ったまま、ブーンの左手が男の顔面を鷲掴みにした。
鼻の潰れる感触。
その流れを殺さず、左の踵で男の軸足を掬い上げる。
地面を離れる男の体。
ブーンは全身の力を籠めて、掴んだ男の頭を地面に叩き付けた。
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( ゙'μ゙) 「ッカァ!?」
男は目を剥き、唾液と鼻水を吹き出す。
受け身を取らない地面との衝突。
彼の脳みそが意識の支配から切り離されるのは、必然であった。
( ^ω^) 「さて」
男の戦闘不能と、とりあえず死亡していないことを確認し、ブーンは懐からスキットルを取り出す。
中身はもちろん大五郎(焼酎。不美味)。
キャップを片手で外し、大きく一口呷った。
('A`) 『何者だろうな、って、何となくわかるけどよ』
( ^ω^) 「たぶん、禁酒党かその類だと思うけれど」
男は、ブーンが大五郎を補充しているのを見て迷いなく勝負を挑んできた。
酒類根絶法がどうのこうのと本人すら理解していないような口上を述べていたので、禁酒党の同類で間違いないだろう。
( ^ω^) (僕らがちょっと外してるうちに、随分急変しちゃったみたいだおね)
(;'A`) 『……ああ。問答無用だったもんな』
サロンシティに戻ってまだ間もない内に襲われたことを考えると、各地でこれに似た事態が頻発している恐れがある。
現に以前の穏やかな雰囲気とは異なる、不穏な臭いが風に乗ってブーンの鼻に届いていた。
鉄錆に似た、血の臭い。
戦場には遠く及ばないが、平常では感じない程度の濃度がある。
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( ^ω^) (どうする、ドッグ?)
('A`) 『面倒だし、リッヒの家で荷物引き取ったら、さっさと出ていきたいところだが……』
( ^ω^) (一応、街中の様子だけ見てみるかお?)
('A`) 『そうだな。酷いようなら』
( ^ω^) (手を出す?)
(;'A`) 『その後の厄介を招かない程度にな』
基本的には、ブーンたちは酒類根絶法と大五郎の対決には首を突っ込まないようにしてきた。
他人の揉め事よりも優先するべき事柄が、彼らにはあるからだ。
一度手を出してしまえばその渦中に巻き込まれることになってしまう。
それは、望ましいことでは無い。
('A`) 『行くか』
( ^ω^) (あ、ちょっと待って)
馬車や家畜に轢かれて絶命するというあんまりな事態を避けるため、伸した男を道の端に寄せる。
地面に食い込んだ剣も引き抜いてその傍へ。
目覚めてすぐに振り回すことが出来ないよう、落ちていた家畜の糞を柄に塗っておいた。
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キター支援
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('A`) 『……ふーむ』
足早に訪れた市街地。
予想に反し戦闘が起きている場面は少ない。
ただし、その一歩手前はいくらでもある。
武器をちらつかせ、睨みあう大五郎と根絶法側の兵士。
中には口汚く罵り合う者もおり、緊張感のある空気が漂っていた。
長閑な農の街サロンの姿はどこへやら。
ブーンは筋骨隆々な男たちを見て、小さくため息を吐く。
有象無象の半端者ばかり出なく、中には相当の実力を感じさせる者もいた。
( ^ω^) (おーん、あの鉄腕甲の男、どっかで……)
('A`) 『しっかし、なんで支店から遠いこんな中心地に大五郎の兵士がいるんだ?多すぎだろ』
( ^ω^) (お?ああ、確かに)
疑問は路地を一つ曲がって、すぐに解消された。
二人はでかでかと『大五郎』の看板を掲げている店を発見する。
以前どんな所だったか記憶は少々虚ろだが、間違いなく大五郎の支店では無かったはずだ。
( ^ω^) (うーん、完全に禁酒委に喧嘩吹っ掛けてるおね)
大五郎酒造の販売する『大五郎』は比喩抜きでブーンたちの命の水である。
故にどちらかに加勢せねば収まらない状況に立ち会ったならば、大五郎側にすると決めていた。
しかし、これを見てしまうとその気持ちが揺らぐ。
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まるで、自ら諍いを起こすことを目的にしているようだ。
市街地に店を出せば、闘争が激化することは予想できたはずである。
それでも強行したということは、つまり街の治安よりも自社の利益を優先したということ。
('A`) 『ツンはいねえのかな』
( ^ω^) (臭いは少しするけど、沢山人がいる上、なんか別の臭いのせいで把握できないお)
(;'A`) 『あいつ、また変なのに絡まれて大怪我してないだろうな……)
( ^ω^) (ありそうで困る)
(;'A`) 『な』
( ^ω^) (なんていうか、危険を呼び寄せる才能みたいなのがあるおね)
(;'A`) 『半分は自分から首突っ込んでる気がするけどな』
( ^ω^) (油被って火事場に飛び込むタイプ)
(;'A`) 『せめて水にしてほしい』
周囲を見渡すが、知った顔は居ないようだった。
適当な相手に話を聞こうとも考えたが、全員が警戒心丸出しの顔でこちらを見ている。
ブーンが腰に剣を差していることを見抜いて、敵か否かを判断しようとしているのだ。
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( ^ω^) (どうしよ。あんまりうろついてるとまた襲われそう)
('A`) 『とりあえず、店に入ってみるか。酒も補充できるときにしときたいしな』
( ^ω^) (おっおー)
ブーンは再びスキットルを取り出し、一口呷った。
目の前で酒を飲むことで、「自分は敵でない」ということを手っ取り早くアピールしたのだ。
兵士達の警戒が少々弛んだところで、ブーンは店に入る。
両開きの木の扉。
金具が新しいようで、音も無くスムーズに開いた。
ξ゚⊿゚)ξ 「いらっしゃいま……」
入って一歩目。
入口に背を向けてテーブルを拭いていた少女が声をあげた。
目が合って、彼女とブーンは、動きを止める。
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( ^ω^) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
( ^ω^) 「……そんな格好もするんだおね」
ξ;゚⊿゚)ξ 「……うっさいわね」
テーブルを拭いていたのは、紛れも無く流れの傭兵、ツン=ディレートリ。
一目で彼女であると分からなかったのは、店に漂うアルコールの香りと、彼女の身に着けている衣服のせいであった。
( ^ω^) 「一瞬気付かなかったお」
ξ;゚⊿゚)ξ 「ええい五月蠅い。似合ってないのは自分が一番分かってるっての!」
( ^ω^) 「いやいや、似合ってる似合ってる。別に変では無いお」
ξ;゚⊿゚)ξ 「ぐむぬ……」
憮然とした顔のツン。
白いブラウスとロングのスカートを身に纏い、その上からエプロンをしている。
普段は高い位置できつく結われていた髪も、今は低い位置で、ゆるくまとめられているだけ。
少し見ただけでは、そこいらにいる町娘のようだった。
初対面であれば関係者の娘が手伝いに来ているような印象を受けただろう。
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(’e’) 「つんちゃ〜ん、お客さん?」
ξ゚⊿゚)ξ 「あ、えっと」
やや低い位置から、ツンの目がブーンを伺った。
小さく頷いて返す。
ξ゚⊿゚)ξ 「そうらしいです」
(’e’) 「いらっしゃいませ〜。ごゆっくりどうぞ〜」
補充用の大五郎を買って出てゆくつもりだったが、カウンター席に案内される。
ツンに聞きたいこともいくつかあったため、大人しく従っておいた。
店内に客は一人。
恰幅のいい農夫がソーダ割りを飲んでいる。
ξ゚⊿゚)ξ 「注文は?」
( ^ω^) 「とりあえず、ロックで。あと適当につまめるものを」
ξ゚⊿゚)ξ 「レモンかライム」
( ^ω^) 「どちらも無しで」
ξ゚⊿゚)ξ 「はいはーい。お客いなくて暇だからすぐに出せると思う。ね、ジョーンズさん」
(’e’) 「店員の言葉がストレートで辛い」
-
(’e’) 「はい、こちら焼酎のロックで〜す」
( ^ω^) 「おっおー」
言葉の通り、品はすぐに提供された。
店長、ジョーンズの手さばきに無駄が無く、一連の動作が流れるよう。
このがら空きの店がもったいない速さだ。
(’e’) 「こちら〜ナッツの盛り合わせです〜」
木の器に盛り付けられたナッツを、一つまみ。
塩気の利いたいい味だ。
口の中に残る香りと仄かな甘みを大五郎でつぅっと流す。
( *^ω^) 「ふ〜」
美味い。
体質上大五郎の補給は脱水時の水分補給に近い感覚があるが、こうして味わうのもまた良いものだ。
確かに質のいいものでは無く、酒としての個性は薄いがその分適応力が高い。
果汁で割って飲むのも良いだろう。
肴によっては、本来以上の奥深さを生み出すことは十分に可能だ。
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( *^ω^) 「ふぃ〜。五臓六腑に沁みるお〜」
ξ゚⊿゚)ξ 「相変わらず美味しそうに飲むよね」
( *´ω`) 「命の水だお〜」
ξ;゚⊿゚)ξ 「酔っ払いの戯言じゃないのが恐いところだわ」
( ^ω^) 「ツンも飲むかお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「いい。仕事中だしそもそも飲めないし」
( ^ω^) 「おー、もったいないおー」
(’e’) 「怪我して無かったら、飲ませちゃうんだけどね〜」
口調だけ残念そうに、ジョーンズがカウンターにソーダ水を置いた。
そばにはレモンとガムシロップ。
(’e’) 「はい、ツンちゃんもきゅうけ〜い」
ξ゚⊿゚)ξ 「いいんですか?」
(’e’) 「せっかくお知り合いも来てるならゆっくりしなよ〜」
ξ゚⊿゚)ξ 「んー、じゃ、お言葉に甘えて」
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ツンがブーンの隣へ。
グラスのソーダにレモンを絞り、シロップを垂らしてマドラーでかき混ぜる。
柑橘の刺激的で爽やかな香りが鼻を抜けた。
( ^ω^) 「そういえば」
改めてのあいさつ代わりに、グラスの腹を軽くぶつけ合った。
殺風景な店の中にいつも通りの音色が響く。
( ^ω^) 「傭兵の仕事はお休みかお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「……ちょっとね」
( ^ω^) 「血と薬の臭いがするけど」
ξ;゚⊿゚)ξ 「あんたの鼻、本当に怖いわ」
ツンがソーダを一口。
気泡が弾け、グラスから音と共に小さな水滴が途切れなく飛び上がっている。
ξ゚⊿゚)ξ 「ちょっとへまして、結構深い傷作っちゃったから、とりあえず予備人員として待機中」
( ^ω^) 「ああ、やっぱり……」
ξ゚⊿゚)ξ 「……自覚はしてるけど、不満だわその反応」
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( ^ω^) 「動いてて平気なのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「ん?ああ、一応リッヒに塞いでもらったし。ほら」
ツンがブラウスの襟をはだけさせる。
隙間から見えた傷は、痛々しさこそまだ残しているもののしっかりと塞がれていた。
目を凝らせば、魔力の糸が上下の皮膚を行き来しているのがわかる。
ξ゚⊿゚)ξ 「痛みどめももらってるし、正直休む必要なんてないんだけど」
( ^ω^) 「もうちょっと、怪我しないように戦わないと」
ξ゚⊿゚)ξ 「それ、真っ向から言い返そうか?」
( ^ω^) 「おーん、返す言葉が無いお」
ξ゚⊿゚)ξ 「それに、未熟者が戦うんだから、怪我ぐらい当然でしょ」
( ^ω^) 「……リッヒには怒られなかったのかお?」
ξ。゚⊿゚)ξ 「めっちゃ怒られた。縫合麻酔なしだった」
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待ってたわ
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ξ゚⊿゚)ξ 「そう言えば、そっちはどうだったの?魔女を追って出てったって聞いてたけど」
( ^ω^) 「おー、魔女自体は、空振りだったお」
具体的にどんな状況だったかは口にしなかった。
酒を飲みながらするような話でも無い。
思い返すだけで鼻に蘇ってきた生臭さを、大五郎で流す。
ξ゚⊿゚)ξ 「それにしては、随分長居してきたのね」
( ^ω^) 「ちょっとね。ドッグの故郷で、色々」
ξ゚⊿゚)ξ 「ふーん。修行とか?」
( ^ω^) 「そんなところ」
( ^ω^) 「……と、」
グラスをカウンターに置く。
( ^ω^) 「今サロンってどうなってるんだお?来た途端に襲われたんだけど」
ξ;゚⊿゚)ξ 「え、マジ?」
( ^ω^) 「マジ。手に余るような相手ではなかったけど、ちょっとびっくりしたお」
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ξ゚⊿゚)ξ 「……うーんま、ここに店があることを考えれば、大まかには何が起こってるかわかると思うんだけど」
こういうことは苦手だ、と顔に出しながらツンもグラスを下した。
頭を指で掻き、しばし思案する様子を見せる。
ξ゚⊿゚)ξ 「……今、サロンには支店襲撃のために根絶法支持団体の主力級がいくつか集まってる」
( ^ω^) 「ほう」
ξ゚⊿゚)ξ 「禁酒党副頭領の一人、ニダー。山幻旅団フォックス。“サイボーグ”ヨコホリ」
ξ゚⊿゚)ξ 「この三人のそれぞれが、本来一つの都市を担当するだけの実力者なのね」
( ^ω^) 「……随分と力が入ってるんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ 「でも、実際はそれほど激しい襲撃にはなって無いの」
( ^ω^) 「……ああ、なるほど」
ξ゚⊿゚)ξ 「ドクオ?」
( ^ω^) 「うん。つまり、名だたる将で大五郎の警戒を引き揚げさせて、消耗を狙ってるってことなんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ 「そう。時々本気で潰しに来る部隊もいるから、ただの脅しじゃないのが厄介なところなわけ」
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ブーンの目はツンの胸元へ。
別にやましい気持ちとかでは無い。やましい気持ちを覚えるほどでもないし。
注目するのは、胸元を大きく裂いた傷の後。
確かにツンはまだ未熟な、もとい少々思慮の足りない部分はあるが、一人の戦士としては優秀な部類に入る。
それがこれだけの傷を作ったということから、相手の力量は推し量れた。
ξ゚⊿゚)ξ 「その上、禁酒委員会も目を光らせているから、大五郎側から討伐に打って出ることはできない」
( ^ω^) 「なるほど、キツイ状況なのはわかったお」
ξ゚⊿゚)ξ 「ほんと、こんな状態じゃなきゃ呑気にドリンクなんか啜ってないわよ」
(’e’) 「僕はツンちゃんと一緒に居られてうれしいよ〜」
ξ゚⊿゚)ξ 「私は外回りの方がうれしい」
(’e’) 「恋が一方通行で辛い」
ツンが残っていたドリンクを一気に飲み下した。
服装が女らしくなっても、男っぽさは衰えをしらない。
( ^ω^) 「そう言えば、なんでその恰好?」
ξ゚⊿゚)ξ 「治療の副作用で部屋に戻られなかったから、パートの人の服を借りたの」
(’e’) 「今の状態で一人で歩かせるのは怖いし〜、接客ならこっちの方が合うしね〜」
( ^ω^) 「なるほど」
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ξ゚⊿゚)ξ 「さて、休憩終わり!」
(’e’) 「もう少しゆっくりしててもいいのに〜」
ξ゚⊿゚)ξ 「大人しくしてるの性に合わなくて」
背伸びをするツンのエプロンの内側にナイフを見つけた。
何かしらの武器を仕込んでいるのだろう。よく見るとスカートにも歪な膨らみがあった。
靴もいつもの魔道具のブーツだ。
恐らくは、というか予測はできていたが、この娘全く安静にする気が無い。
油被って火事場に飛び込むどころか、火だるまになってから火事場に飛び込んでいくタイプである。
わかっていたけれどバカである。
( ^ω^) (……リッヒに会ったら労いの言葉をかけよう)
('A`) 『苦労のあまり泣いちゃうかもな』
ξ゚⊿゚)ξ 「……なによ」
( ^ω^) 「なんでも。傷は痛まないのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ 「今は痛み止めが効いてるから、平気」
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支援
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>やましい気持ちを覚えるほどでもないし
さりげなくひでえ
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自分が使ったグラスを持ち、ツンが席を立つ。
カウンターの奥にある洗い場に引っ込んだ。
ブーンは自分のグラスに目を落とす。
話しながらも口をつけていたので、酒は大分減っていた。
このままもう一杯頼むか、足早に立ち去るか。
状況は何となく把握できたし、できれば早々に立ち去りたいところだが。
( ^ω^) (……)
('A`) 『もう少し残るか』
( ^ω^) (いいのかお?)
('A`) 『キュートの居場所にあてがあるわけじゃねえし、こんな状況じゃ、ツンだけじゃなくリッヒも心配だしな』
面倒事を避けるといいつつも、親交のある人間が危険にさらされるかもしれない状況を見過ごしてゆくわけにもいかない。
ツンもハインリッヒも、他人と言い切るには幾分世話になりすぎた。
せめて新たな魔女の手がかりを見つけるまでは、この街で荒事を収める役を買ってもいいのかもしれない。
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きたきたきたきた!!
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( ^ω^) 「さてっと」
ξ゚⊿゚)ξ 「行くの?」
( ^ω^) 「うんお。もう少しサロンには残ろうと思うけれど、とりあえずリッヒ探しにいくお」
ξ゚⊿゚)ξ 「あんたのことだから心配ないとは思うけれど、気を付けて」
( ^ω^) 「おっおー。服が変わると言うことも違うおね」
ξ;゚⊿゚)ξ 「うっさいわ」
懐を弄り金を収めた麻袋を取り出し中身を確認する。
ブーンとドクオ、二人分の所持金を合わせて持っていたが、流石に心元なくなってきていた。
手元にある分の他に、信頼に足る人物にいくらか預かってもらってるとはいえ、少々問題である。
食事や寝床は何とか狩りや野宿で凌げるにしても。問題は魔女に埋め込まれた呪縛、「大五郎」の確保。
こればかりは金が無くては何ともならない。
('A`) 『禁恨党のフリして荷馬車襲撃するか』
( ^ω^) (おーん。悪くは無いけど。それは最終手段で)
ξ゚⊿゚)ξ 「……どしたの?」
( ^ω^) 「ちょっと悪巧み」
ξ゚⊿゚)ξ 「……?」
* * *
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( ,,^Д^) 「ちょっとニョロ。大人しくしてくれにゃ」
サロンの市街地から外れた小高い丘の中腹。
大五郎の傭兵、タカラ=イッコモンは首に巻き付いた蛇と格闘しながら農道を歩いていた。
蛇は、イタチと合成され、全身に柔らかな体毛を生やしたキメラである。
本来はタカラのものでは無く、同僚の少女の相棒であるが、出歩けない彼女の代わりにタカラが世話を買って出ていた。
現在大五郎の新サロン支店で給仕の真似事をしている彼女が首に獣を撒くのは流石に問題があったのだ。
なつっこい性格なので世話に苦労は無いが、暇つぶしに耳を甘噛みされると本気で痛いのでやめてほしい。
( ,,^Д^) 「……お」
ニョロと格闘しながら歩を進めたどり着いたのは、治療魔法の使い手、ハインリッヒの家である。
ハインリッヒは庭に立ち、草臥れた白衣のポケットに手を入れたままタカラのことを待っていた。
从 ゚∀从 「……よう、悪いな、態々来てもらって」
( ,,^Д^) 「気にすんニャ。半分我が家みたいなもんだし」
从 ゚∀从 「冗談になって無いからな、それ」
ハインリッヒに招かれ、家の中へ。
家主本人とは異なり清潔に保たれた屋内は、ほんの少し薬品の臭いが漂う。
リビングを抜けてそのまま診療室へ向かった。
-
从 ゚∀从 「……さて、ここ数日の様子は、どうだった?」
( ,,^Д^) 「正味な話、調子自体はすこぶるいいニャ。不調を一切感じニャい」
从 ゚∀从 「……それは、よくねえな」
ため息と共に、ハインリッヒが自らの銀髪を掻き上げる。
白い肌の眉間に、深い皺が寄っていた。
从 ゚∀从 「……とりあえず、状態を見せてくれ」
( ,,^Д^) 「おう」
指示通りタカラは服を脱いだ。ニョロは傍の診察用ベッドに乗せる。
山村に生まれ、狩人として生き、傭兵となった彼の体は無駄なく引き締まっている。
歳と共に少々脂肪も乗ってきていたのだが、最近は激務続きで元の状態へ近づいていた。
从 ゚∀从 「……また、怪我をしたのか」
( ,,^Д^) 「まあ、荒事ばかりだからニャ」
体を見て、ハインリッヒはさらに顔をゆがめる。
タカラも自身に視線を落とすが、確かに気分のいい光景では無かった。
-
从 ゚∀从 「診るぞ」
ハインリッヒの手が淡く光る。
そのままタカラの肩に触れ、ハインリッヒは目を閉じた。
体の中に冷たい感触が広がってゆく。
今までと比べても、最も長い診察。
途中何度か呪文を呟き魔法を組み換えた。
ハインリッヒの額には汗が浮かび、かなりの負担がかかっていることを物語っている。
从 ゚∀从 「……終わったぞ」
( ,,^Д^) 「どうにゃ?」
从 ゚∀从 「……もう一度、聞くが、本当に不調は無いんだな?」
( ,,^Д^) 「まったく」
从 ゚∀从 「……わかった。状態はかなりよくない」
( ,,^Д^) 「……そうか」
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从 ゚∀从 「進行の速度に変化が無ければ、平穏に暮らすという条件付きで一年くらいはまあ、問題ないだろう」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「あくまで、俺の治療を受け続けての話ではあるけどな」
( ,,^Д^) 「……そうか」
从 ゚∀从 「もしも、今までみたいに怪我をすりゃあ、倍以上の進行度になると思え」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「あと、頭だけは本気で守れ。頭が無事なら、せめて人格は保てるはずだ」
( ,,^Д^) 「わかったニャ」
从 ゚∀从 「で、だ」
やや早口に言葉を終え、ハインリッヒが一息つく。
診察中の汗はそのまま。
心なしか呼吸を乱れている。
从 ゚∀从 「傭兵をやめるつもりはないのか」
-
( ,,^Д^) 「……難しいにゃあ。俺、弓を引くしか能ないから」
从 ゚∀从 「戦闘にかかわる場所にいれば、必然的に危険性は増す」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「弓を置かないにしろ、せめて、残りの時間、家族の傍にいてやることはできないのか?」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「大五郎がダメなら、VIPの知り合いに紹介する。傭兵よりは、安全な仕事のはずだ」
( ,,^Д^) 「……」
从 ゚∀从 「……家族を大事にしねえと、罰が当たるぞ」
( ,,^Д^) 「……そうだ、にゃあ」
从 ゚∀从 「……」
( ,,^Д^) 「……今の仕事が一段落したら、それもいいにゃ」
从 ‐∀从 =3
-
( ,,^Д^) 「じゃ、仕事の途中だし、帰るにゃ」
処置は、それほど時間を取らずに終了した。
もともとできることは少ないから、とハインリッヒは苦々しく呟く。
この男らしい反応だ。患者本人よりも、患者の体に気を遣っている。
从 ゚∀从 「……すまない」
( ,,^Д^) 「なにがだにゃ?」
从 ゚∀从 「毒の治療の時に、俺がもっと入念に診察していれば、対処のしようはあったかもしれない」
( ,,^Д^) 「……俺はあの時一回死んだようなもんだにゃ」
从 ゚∀从 「……」
( ,,^Д^) 「リッヒには、感謝しても恨むことなんかできねえにゃ」
从 ゚∀从 「……すまん」
ぱたりと、扉を閉める。
頭を掻いて、欠伸をひとつ。
外に出れたのがうれしいのか、ニョロが頭を遊ばせて周囲を見渡している。
( ,,^Д^) 「さて、帰るかにゃ」
呟いて再び欠伸をひとつ。
空気の割れるような爆発音が遠くから響いてきたのは、そのすぐ後だった。
* * *
-
〈::゚−゚〉 「……中々似合っているじゃないか」
ミ´・w・ン 「ね。なんか違和感あるけど可愛いっすよね」
ィシの反応は、大よそ他の知り合い共と同じだった。
少し驚いて、上から下、下から上へと視線を動かして、短く考えたあと、一応誉める。
不満だ。
そんなにスカートが珍しいかと。
なんか芋虫を初めて食った人が「意外と美味いな」と言って居るのと同じ反応で、なんかムカつく。
確かにツン自身慣れずに戸惑っているけれども。
ξ゚⊿゚)ξ 「……この間の、返事をしに来た」
遅番で出勤したベルと入れ替わり、ツンは支店を出ていた。
ジョーンズが怪我の療養のためにも早く戻れと言っていたので大人しく甘えさせてもらった。
ミンクスを付き添いに借り、来たところは禁恨党の拠点なのだけれど。
〈::゚−゚〉 「……ああ、聞かせてもらおう」
場所は、サロン近郊の牧場の物置小屋。
小屋といってもかなり広く、設備さえ整えれば居住することも可能そうだ。
現にいくつか、寝床に使用しているらしい藁の塊が見えた。一つにはシーンが胡坐をかいている。
ξ゚⊿゚)ξ 「私も、禁恨党に入ろうと、思う」
ミ´・w・ン 「おっ」
-
椅子に座り、ィシと対面する構図。
出入り口傍の壁に寄りかかっていたミンクスがいかにも嬉しそうな声をあげる。
しかしイシは大きな反応を見せず、ツンの目をまっすぐ見つめていた。
この先に続く言葉があることを、見抜いている。
ツンは少し息を吸い直して、ィシの視線に答えた。
ξ゚⊿゚)ξ 「でも、条件がある」
〈::゚−゚〉 「条件とは?」
ξ゚⊿゚)ξ 「私自身の敵討ちが終わるまで、一緒に行動することは、待ってほしい」
〈::゚−゚〉 「……」
ミ;´・w・ン 「いや、それじゃ意味ないんじゃ」
〈::゚−゚〉 「ミンクス」
ミ;´・w・ン 「あ、ハーイ、大人しくしてマース」
ξ゚⊿゚)ξ 「禁酒党や、根絶法支持のテロから関係ない人たちを守る。私も、その一員になりたいと思う」
ξ゚⊿゚)ξ 「でも。私には、自分の力でやらなきゃいけないことが、あるの」
-
小屋の中が、沈黙に包まれる。
ィシ、シーン、ミンクスの他にも三人の禁恨党員がいたが、誰も口を開かなかった。
意外だ、と思う。
ツンの言っていることは、ただのわがままだ。
禁恨党側からの誘いとはいえ、条件を付けるほどの対等な力関係でないことは自覚している。
それなのに、禁恨党側からは「ふざけるな糞アマ」に類する発言は一切ない。
何かしら呆れたり批判されるなりの反応を予想していたツンとしては、すこし拍子抜けだ。
〈::゚−゚〉 「……仇が誰か、わかっているのか?」
ξ‐⊿‐)ξ゙
首を横に振った。
大五郎にあった記録をツンの両親が殺された時期まで遡って見たものの、それらしいものは見つからなかった。
そもそも、襲撃が多すぎたのだ。
当時二月程度の襲撃記録だけで、百科事典に並ぶ厚さがあった。
しかも、それでもすべての襲撃事件を網羅していたわけでは無い。
あれを見れば、この国から大五郎以外の酒造や酒店がほぼ消えたのが納得行く。
まともな神経、思想のもとに行われたものとは思えなかった。
〈::゚−゚〉 「……そうか」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「禁恨党でも、何か知らない?九年前の、秋ごろなんだけど」
〈::゚−゚〉 「……いや、我々も自分の敵を明確に把握していないものがほとんどだ」
ξ゚⊿゚)ξ 「……そっか」
〈::゚−゚〉 「もしも、だ」
ィシの声のトーンが僅かに変わる。
シーンの眉が動いた。
〈::゚−゚〉 「君が追う仇が、既に死んでいたら、どうする」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
〈::゚−゚〉 「あり得ない話では無い。九年前といえば、酒造連盟と根絶法支持側との抗争が佳境を迎えていたころだ」
〈::゚−゚〉 「その中で死んだ、ということも十分にあり得る」
ξ゚⊿゚)ξ 「……考えたことが、無かったわけじゃないけど」
木の軋みがギイとなった。激しくも濁った風の音が聞こえる。
吊るされランタンの光が、ゆらりと影を揺すった。
風が吹き、小屋全体が揺れているらしい。
-
ξ゚⊿゚)ξ 「なんでか、生きているような気がする。確信は、無いけど」
〈::゚−゚〉 「優秀な傭兵だった君の父上と母上を屠った相手だからか」
ξ゚⊿゚)ξ 「……そう、なのかな。でも、私は話に聞いてただけで、戦っているのを見たことはほとんどなかったし」
〈::゚−゚〉 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「家で何かもめごとがあっても、大抵は見回りの傭兵さんたちが何とかしてくれていたし」
ξ゚⊿゚)ξ 「強いんだって思ってはいたけれど、目で見て実感したことはなかったから」
〈::゚−゚〉 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「ただ、殺せる状態でいてほしいっていう希望的な勘なのかもしれない」
憎き相手に生きていてほしい希望とは滑稽だな、と思った。
しかし、それは紛れも無い本心で。
どうせ誰かの手で殺されるならば、その手は自分のものであってほしい。
否、そうでなければ、そうしなければ、ツンの腹の底でとぐろを巻いているこれは、決していなくなりはしないだろうから。
-
ξ゚⊿゚)ξ 「あの」
〈::゚−゚〉 「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ 「ィシさんは、誰を誰に?」
〈::゚−゚〉 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「答えたくないなら、いいんだけど」
〈::゚−゚〉 「夫だ。酒造連盟に雇われ、酒場の警備を任されていた」
ξ゚⊿゚)ξ 「相手は、やっぱり……」
〈::゚−゚〉 「ああ。『サイボーグ』、ヨコホリ=エレキブラン」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
〈::゚−゚〉 「奴は長いからな。うちに居るメンツのいくらかは、奴に家族や友人を奪われている」
ξ゚⊿゚)ξ 「だから、優先してあいつを狙ってるのね」
〈::゚−゚〉 「向こうの重要な戦力でもあるからな。被害を増やす前に、潰しておきたいというのもある」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「……私の仇が、あいつってことは?」
顎に手を当て、ツンが呟く。以前からその考えはあった。
ツンの両親が襲われた時と、支店が襲撃された時の手口が似ているのと、
なんかとりあえず不快な人間だ、というそれだけなのだけれど。
ヨコホリの使う風の砲撃は、特別珍しい魔法では無い。
風の魔法自体が(魔法全体で見れば)手軽な上に、直撃であれは即死程度の威力もある。
特に戦闘を生業とする者たちには好まれる魔法だ。
故に、その特徴だけで断定することは出来ずにいた。
ミ´・w・ン 「……」
〈::゚−゚〉 「……可能性はゼロでは無いな」
ξ゚⊿゚)ξ 「だとすると、今から一緒に行動するのも、悪手ではないのかな……」
ヨコホリは常に奇襲する側だ。
ツンが接触しようとしても逃げるか、あしらうかのどちらか(一回色々危なかったけれど)。
その上ィシたちがサロンで活動を始めてからは、姿そのものを見せなくなっていた。
実際に接触できるかはともかく、ただ受けに回る側よりも討ちに向かう禁恨党と共にいた方が気分がいい。
-
ミ´・w・ン 「……でもさあ、仮にヨコホリが怪しいとしてさ、どうやって確かめるの?」
ξ゚⊿゚)ξ 「直接聞く」
ミ´・w・ン 「答えるか分からないし」
ξ゚⊿゚)ξ 「とりあえず殴る」
ミ;´・w・ン 「そもそも星の数ほど殺してるやつだから、忘れてるかもしれないし」
ξ゚⊿゚)ξ 「なんにせよあいつはブッ倒す」
ミ;´・w・ン 「……」
仇かどうかを差し引いても、ヨコホリには少なからず因縁がある。
現状で最も叩き潰して地面に埋めたい敵だ。
それに、いくらか恩のある禁恨党の怨敵となれば、もはや「仇じゃないから」で見逃せる相手では無い。
〈::゚−゚〉 「もし、奴が君の両親の敵だったら?」
ξ゚⊿゚)ξ 「……その時は、悪いけど一人でやらせてもらう。それは譲れない」
〈::゚−゚〉=3
大きなため息。
表情は変わっていないが呆れやその他もろもろの、少なくとも喜びでは無い感情がうっすらと滲んでいる。
-
〈::゚−゚〉 「断言するが、今の君では絶対に勝てんぞ」
ξ゚⊿゚)ξ 「勝てないから諦めるくらいなら、こんなところにいないわ」
〈::゚−゚〉 「……少しは、自分を大切にしろ」
ξ゚⊿゚)ξ 「投げ出すべき時には、投げ出すつもりで生きてきた。それは変えられない」
〈::゚−゚〉 「……」
ミ;´・w・ン 「まあまあ、まだヨコホリが仇ってのは、仮定の……」
剣呑な空気に耐え兼ね、ミンクスが二人をなだめようとしたとき、入口の扉がノックされた。
全員の動きがぴたりと止まる。
突然の来訪者に対する当然の警戒。
ここにいるのは飽くまで、禁恨党という「賊」である。
禁酒委員会のみならず、治安維持のための憲兵ですら遭遇は避けなければならない。
この本来人の寄り付かない小屋の扉をノックした、その人物の正体と目的を全員が推し量っている。
逆に目立つという理由から、見張りの類を立ててはいなかった。
不用心なようではあるが、シーンが常に索敵の魔法を張っているため安全性はそれなりに確保されていたのだが。
〈::゚−゚〉
( ・−・ )゙
ィシの目線にシーンが首を振って応えた。魔法による索敵はできなかったらしい。
緊張が高まる。恐らく一般人の類では無い。
-
コンコン。
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
ツンは腰からナイフに手をかけた。
ィシがそっと、椅子の足に立てかけていた剣を引き抜いたのを見たからだ。
少なくとも彼女は、扉の向こうにいるのが友好的な存在ではないと考えている。
ミ´・w・ン 「はいはい、どちらさん?」
普段通りの間抜けな声でミンクスが返事をした。
全員が息を殺して返答を待つが、一向に来る様子が無い。
壁に張り付き、ミンクスがドアの閂に手を添える。
目で、小屋の中にいた全員に合図を送った。
シーンは静かに魔法式の展開を始め、党員の一人がスリングショットに小石を装填しゴムを引き絞る。
ツンもシーンに倣い身体強化の魔法を展開。
ニョロをタカラに預けっぱなしにしたことを少しだけ後悔する。
ミ´・w・ン 「……」
ミンクスが最後の確認。
閂を指ではじいて外し、そのまま一気に扉を叩き開いた。
蝶番が外れるのではと心配になるほどの勢いで現れた外の景色。
長方形のそこには、何者の姿も存在しなかった。
-
そして、扉とは真逆の壁の向こうに突然現れた、強い魔法の気配。
〈::゚−゚〉 「!!、全員壁から離れろ!!」
ィシがそう叫んだのと同時。
僅かな魔法の気配を二つ先行させて、壁がはじけ飛んだ。
空気の痺れる爆発音に、薄い木材が瓦礫に代わる音。
その中に、血煙と、スリングショットを握る腕をツンは見つける。
一つ目の砲弾が壁を破壊し、二発目が彼の肩口を捕らえた。
肉片になった彼の胴は瓦礫と共に吹き飛び、残っていた対面の壁に張り付いてゆく。
〈::゚−゚〉 「シーン!!」
荒れ狂う木端と埃の中、再び魔法の気配を察知する。
今度は三つ。
壁は完全に破壊されているし、障壁にできるものは存在しない。
ξ゚⊿゚)ξ 「!」
一瞬見えた砲弾が、空気中に解けるように消えた。
それまで組んでいた攻撃魔法を放棄し、シーンが分解したのだ。
相変わらずの速度と精度。
続いてきた数発の魔法攻撃も、一発たりとも炸裂させずに消し去られた。
-
(//‰ ゚) 「グッグッグ……相変わらず面倒な小僧だ」
( ・−・ ) 「……」
ツンは、皆を守るために前に歩み出たシーンの横顔を見て、額に汗を滲ませた。
口数の多い男ではないし(そもそも喋らないし)、何を考えているか分からない男であったが、今だけは彼の胸中が分かった。
怒り。
彼の全身から途端に立ち上った魔力が、まるで炎のように揺らめく。
その波動は制御されることなく、味方であるツンたちの皮膚さえ震えさせた。
〈::゚−゚〉 「……まさか貴様から来るとはな」
(//‰ ゚) 「元々我慢は苦手でなァ……やられる前にやろうと思って来てみたンだが」
ィシが剣を構える逆の腕には、吹き飛ばされた男の腕があった。
もう一方の腕と足、半壊した頭が辛うじてつながっている体は、ミンクスが丁寧に抱き上げ壁によりかけさせる。
ツンは、それをできるだけ見ないよう、ヨコホリを睨みつけた。
死人は苦手だ。
血の臭いを鼻から追い出し、歯をかみしめる。
-
(//‰ ゚) 「できりゃァあんたか、小僧のどっちかをやりたかったンだが。惜しかったなァ」
被弾した男は、ヨコホリとィシを結ぶ射線上にいた。
もし、彼がいなければ、吹き飛ばされていたのはィシだっただろう。
シーンが一歩前に出た。
ヨコホリはたじろぐ様子なく、その鋼鉄の腕を差し出し、狙いを定める。
(//‰ ゚) 「小僧。近づいて、俺の心臓を分解しようとすルのは構わねえがよ」
( ・−・ )
(//‰ ゚) 「俺は、てめえが俺を殺すより先に、てめえを殺すぜ」
( ・−・ )
シーンは、純粋な魔法使いだ。
お世辞を込みにしてもヨコホリと格闘戦をやり合える膂力があるようには見えない。
ヨコホリの「命」を司る魔法を解析、分解するのに最低限詰める必要のある距離は、ヨコホリの格闘攻撃の範囲内。
シーンは、まだ触れたことすらない魔法の解析と分解を、ヨコホリが間を詰め攻撃を行う一瞬の内に行わなければならなくなる。
賭けにしても分が悪い。
恐らく、負けるだろう。
しかし、その賭けをいくらか盛り返すだけの戦力が、この場には存在していた。
-
〈::゚−゚〉 「お前の指一つ、シーンには触れさせんよ」
膝を折り亡骸に腕を返し、ィシは立ち上がった。
剣を捨て、ミンクスが藁の山から引き抜いたハルベルトを受け取りシーンの横に並ぶ。
(//‰ ゚) 「だから嫌なンだよなァてめえらは!」
ィシが前へ。ハルベルトを腰に腰元に引き、刺突の構え。
ヨコホリはすぐさま魔法を放ったが、全て消える。
〈::゚−゚〉 「フンッ!」
(//‰ ゚) 「シィッ!」
金属同士がぶつかり合う残響。
突き出されたハルベルトを鋼鉄の手が掴むように受け止めた。
ィシの勢いはそれでも止まらず、力任せにヨコホリを突き飛ばす。
体勢を調えながら、ヨコホリは魔法を乱射。
全てシーンが分解するが、そのおかげでシーンは他の行動に移られない。
ィシが介在しなければシーンはヨコホリの解析は難しく。
ィシがヨコホリと戦う間は彼女を守るために魔法を分解せねばならない。
少しずつ解析は行っているようだが、精神、脳への負担は非常に多くなるはずだ。
-
おお支援
-
ξ#゚⊿゚)ξ 「……“ビートアップ!!”」
ミ;´・w・ン 「ちょ、ディレートリ!なにしてんの!」
ξ#゚⊿゚)ξ 「援護するに決まってるでしょ!」
ミ;´・w・ン 「ダメだよ!僕らみたいな半端モンが介入したら姉御たちの負担を増やすことになる!」
ξ#゚⊿゚)ξ 「上手くやるわ!」
ミンクスの制止を振り切り、ツンはヨコホリに突っ込む。
身体強化の魔法を活かしィシの頭を飛び越え、ヨコホリの頭部に蹴りを放った。
スカートが多少捲れ上がるが、気にしない。
(//‰ ゚) 「!」
〈::゚−゚〉 「!」
ξ#゚⊿゚)ξ 「ダッシャァ!!」
丁度、ィシが深く踏み込みヨコホリの胴を薙ぎ、ヨコホリがそれを受け止めたタイミングだった。
鋼鉄の腕は、ハルベルトの斧刃を抑えるために塞がっている。
チャンスではあったが、しかしヨコホリが一枚上手。
頭を蹴り抜くかに思えた鉛を仕込みの靴底は、左腕に阻まれた。
-
並ならぬ腕力だ。
慣性を含んだツンの体重を丸々受け止めまるで体幹がぶれない。
ツンはそのままヨコホリを足場にぴょんと跳ねて、背後に回り込む形で飛び降りた。
ィシとツン、挟み撃ちの形にもヨコホリは動揺を見せない。
組み合ったハルベルトを弾き、肩ごしに掌を背後へ。
着地と同時に切りかかろうとしていたツンに対し魔法を放つ。
シーンからは死角。
分解が間に合わず地面が爆ぜる。
元よりシーンに頼るつもりの無かったツンは、大きく横へ転がり回避していた。
この隙に、ィシは弾かれたハルベルトを、そのまま上体ごと大きく振り回す。
左右の手を持ち替え、回転の力を殺さぬまま、逆からヨコホリの首を薙いだ。
ヨコホリは転がって逃げるツンに腕を向けなおして追撃を放ちつつ、ィシの一撃を掻い潜って躱す。
攻撃後の隙だらけのィシの腹へ、姿勢を持ち上げながら半歩踏み込み。
ツンヘ向けていた右腕を引き戻し、掌底の打撃と魔法の同時攻撃を放つ。
ィシの攻撃がかわされた瞬間にシーンは魔法分解の為の魔法式の展開を始めていた。
今までと同じ魔法であれば解析せずとも分解が可能だ。
打撃ばかりはどうしようも無いが、魔法は発動と同時にキャンセルに成功する。
シーンの援護を信頼していたィシは、掌底のダメージを殺すことだけに意識を切り替えた。
回避は絶対に間に合わないが、反撃を合わせることは可能だと本能的に判断。
振り切ったハルベルトの切っ先をくるりと翻し、そのままスコップを掬い上げる要領で振り上げる。
ヨコホリの掌底がィシの脇腹を捉えたのと同時。
矛先がヨコホリのジャケットを、皮膚を、掻っ捌く。
-
(//‰ ゚) 「カァァッ!」
脇腹から胸元にかけて、浅く皮膚を割かれたヨコホリ。
やや姿勢をぶれさせたものの、後退しながらィシに砲撃を行った。
もちろんシーンがすべてキャンセルしたため、当たりはしない。
しかし、威力を多少殺したとはいえ直撃した掌底は、確実にィシの足を鈍らせていた。
砲撃を続けながらもヨコホリは素早くィシへ間合いを詰める。
この状況ならば、攻撃は十分に防御を抜けるだろう。
ξ#゚⊿゚)ξ 「どっ」
が、痛烈な殺気に、ヨコホリは視線を横へ流す。
ξ#゚⊿゚)ξ 「せえええい!!!」
少々体勢を立て直すのに手間取ったが、間に合った。
ブーツの魔法を発動し、二重に強化された脚力でツンが蹴りかかる。
頭部を薙ぎ払う形で放った蹴りにヨコホリは右腕を合わせて防御した。
激しい衝撃。
ツンの足がビリビリと痺れた。
ブーツの加護なしだったら、骨が割れていたかもしれない。
現状でも正直涙が滲むくらいには痛かったが、昂った精神はそれを上手くごまかしてくれた。
着地したツンヘ、ヨコホリは魔法の連射。
大きく後転しこれをやり過ごす。
-
ξ#゚⊿゚)ξ 「シーンさん!私の援護はいいらないから、解析に集中して!」
( ・−・ )bそ
(//‰ ゚) 「グッグッグ、今日は随分愛らしい恰好してるじゃねえか」
ξ#゚⊿゚)ξ 「……」
(//‰ ゚) 「しかしその下着はいただけねえな。色気が無さすぎル」
ξ#゚⊿゚)ξ 「下着じゃなくて、短パンだ!」
着地の姿勢で屈んでいたツンの足元の土が飛び散った。
魔法の補助を受けた蹴りは地面を抉り、ツンの姿は残像を遺すほどの速さで横へ流れる。
このまま一撃ぶちかます。
ヨコホリの体の強度は以前に見て知っているが、対策は考えていた。
ニョロの居ないこの状況、魔法攻撃は諦め、とにかく格闘戦に集中しなければ。
-
(//‰ ゚) 「ヨっと」
ツンを目で追いながら、ヨコホリは右手を左の脇へ。
さりげなくィシに狙いを定め、魔法を放つ。
〈::゚−゚〉 「!」
( ・−・ ) 「!」
態々大きく腕を構えて撃つ動作に慣れてしまっていたため、僅かにだがシーンの反応が遅れた。
ィシが自力で横へ回避するも、避けきれない。
体に直撃する寸前でなんとか分解は間にあったが、二人の額からは大きな汗が流れ落ちる。
(//‰ ゚) 「チィッ」
ξ#゚⊿゚)ξ 「ハァ!」
無視された腹立たしさをそのまま脚力に変え、ツンは真正面からヨコホリへ。
突進の勢いのままナイフを大きく引き、振りかぶる。
(//‰ ゚) 「シィッ!!」
ィシを狙撃したその体勢から、ヨコホリが右腕を振り上げた。
丁度居合抜きの要領。
するどい手刀の斬撃がツンを迎え撃つ。
-
ξ; ー )ξ
ツンはその瞬間、口の端を持ち上げた。
(//‰ ゚) 「?!」
ナイフ如きでは通用しないことも、その安心からヨコホリが反撃に来ることも、ちゃんとわかっていた。
その上であえて飛び込んだのは、もっと確実な目的があったからだ。
上体を、体が軋むほど大きく倒し、手刀を掻い潜った。
耳元で空気が切り裂かれ、甲高い音が鼓膜をしびれさせる。
予測してはいても、当たれば即死級の攻撃には肝が冷えた。
しかし、動きは止めない。
倒した体を起こし、その一連の流れでナイフを肋骨の隙間に向かって突いた。
体勢の開き切っていたヨコホリは、成す術なく身体でナイフを受け止める。
まるで、革張りの盾を突いたようだ。
刃がロクに潜らず、いとも簡単に止まってしまう。
(//‰ ゚) 「良い動きだが、残念。俺の体はまともじゃねえンだ」
ξ゚⊿゚)ξ 「残念、まともじゃないことは知ってるわ」
(//‰ ゚) 「?!」
-
ξ# ⊿ )ξ 「ハァァァァァァッ!!」
(//‰ ゚) 「グッ!」
突き刺したナイフの先端から、ヨコホリの体にありったけの魔力を叩き込んだ。
ヨコホリ=エレキブランは魔女によってゴーレム化している。
体が鉱物で構成されているゴーレムを倒すには、圧倒的な力で破壊するか、原動力の魔力を乱すか。
破壊するためには天叢雲並の魔法が必要だ。
そもそも戦士として各上のヨコホリに、使いこなせない魔法で挑むのはさすがのツンも倦厭する。
だからこその、魔力強制ぶち込み注射である。
本来であればこういった「他者の魔力を乱す」ための手順もあるのだが、面倒なので力技。
無理やり、強引に、自身の魔力を殺気に乗せて、ヨコホリの体に送り込む。
(//‰ ゚) 「ガァッ!」
-
振り切っていた右腕を、ヨコホリは全力で殴り下ろした。
ツンはナイフを引き抜きこれを何とか躱す。
直撃は免れたが、こめかみに掠める。
意識が飛びそうになった。
脳が揺れ、目の前がかすむ。
切り裂かれた瞼の上から血が流れ出、目に入った。
(//‰ ゚) 「ハァーッ、こンな強引な魔力の送り方があルかよ」
ξ ⊿゚)ξ 「……」
(//‰ ゚) 「流石の俺も、こンな方法への対策は練って無かったぜ」
ヨコホリの右腕が、細かに痙攣していた。
意識ははっきりしているようだが、本人の言葉通りいくらかは効果があったらしい。
ξ ⊿゚)ξ 「一つ、聞きたいことがある」
(//‰ ゚) 「良いぜ、ご褒美だ」
ξ ⊿゚)ξ 「……『酒処しそ屋』っていう居酒屋に、覚えは?」
〈::゚−゚〉 「……」
(//‰ ゚) 「ンン?なんだそりゃァ」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「……そう」
ヨコホリの後ろから、ィシが迫るのが見えた。
ツンも手に、足に、打ち込み用の魔力を纏わせる。
(//‰ ゚) 「なンだよ、もっと楽しい質問でもいいンだぜ?」
ヨコホリの右腕が、頭を掻くような気軽さで背後からのハルベルトを防ぐ。
この隙に乗じ再び懐に潜ろうとしたツンの襟首を左腕が掴んだ。
(//‰ ゚) 「ハァッ!」
ツンの体が宙を浮く。無理やり放り投げられ、首が絞めつけられた。
空中で何とか体を捻り着地するが、思いのほか締め付けられた首に、つい噎せる。
ブラウスのまま、襟のボタンを外さなかったのは失策以外の何物でもない。
ヨコホリはィシのハルベルトを弾き、問答無用で魔法を叩き込んでいた。
一発一発の完成度は落ちているようだが、それでも危険な威力には変わらない。
シーンが眉間に皺を寄せながら相殺してゆく。
そのままヨコホリはシーンへ。
目的を切り替えたのだ。
ィシを無視し、強引に天敵を討つ方へ。
-
〈::゚−゚〉 「く!」
ィシが咄嗟に割って入る。
ヨコホリは三発を横に線を引く形で地面へ。
土を舞い上げ視界を潰す。
次いでこの怯みを利用し、ィシを右腕で薙ぎ払った。
ハルベルトの柄が直撃を防ぐも、ィシの体は横へ流される。
ミ;´・w・ン 「ニャロメ!!」
一応ミンクスがシーンの前に立ったが、ものすごい頼りない。
簡単にやられる未来しか見えない。
ごめんほんと頼りない。
ィシの稼いだ僅かな時間に、ツンもヨコホリを追う。
呼吸はいくらか整った。
残り僅かのブーツの魔法を解放し、体を風に変える。
(//‰ ゚) 「カカッ!」
愉快そうに笑いながら、ヨコホリは地面に向かって空弾を乱発する。
弾けて衝撃と共に舞い上がる土くれ。
手から地面への短距離間で分解を行うのは容易くは無く、どうしても漏れが出てしまう。
-
ξ# ⊿゚)ξ 「ダァ!」
蹴りの射程に入り、ツンは跳んだ。
ブーツの魔法はこの瞬間に解けたが、代わりに魔力を集中させる。
躱されない限りは、また無理やり打ち込んでやるのだ。
が。
(//‰ ゚) 「魔力が昂りすぎて、見なくても攻撃がわかルぜ?」
振り向きざま、ヨコホリが右腕でツンの足を掴んだ。
跳び蹴りの勢いを利用したまま振り回し、傍に迫っていたィシに対し放り投げる。
刹那の判断でィシがツンを抱き留めたが、二人そろって絡まりながら地面へ倒れた。
ィシはぶつかり合った衝撃で、ツンはそれに振り回されて頭に血が寄ったダメージを上乗せ。
気合いで立ち上がるも、ふらついてヨコホリを追える状態では無い。
ミ;´・w・ン 「!!」
残るはミンクスと、見かねて入ったもう一人の党員。
バカにするわけでは決してないが、無理だ。
実力うんぬん以前に、二人とも完全に腰が引けている。
-
〈::゚−゚〉 「シーン!!」
( ・−・ ) 「!」
ミ;´・w・ン 「く、くそ!!」
ξ; ⊿゚)ξ (ダメだ!)
剣を構えるミンクス。
魔法を放ちながら接近するヨコホリ。
ツンの脳裏には、ミンクスともう一人が跳ね飛ばされ、シーンが仕留められる映像が、嫌な生々しさを持ってよぎる。
しかし。
(//‰ ゚) 「グッ!?」
ヨコホリとは異なる僅かな魔法の気配。
真横から飛来した青白い矢がヨコホリの首に突き刺さる。
ついで、やや間をおいて鎌鼬の魔法がヨコホリの膝を真一文字に切り裂いた。
どちらも浅いが、足を止めさせるのには十分な威力だ。
-
( ,,^Д^) 「もういっちょ!!」
ツンの視線の先には、弓を携えた男が一人。
大五郎のジャケット。タカラだ。
そうなると、首元でやたらピコピコと動いているひも状のものが。
ξ ⊿゚)ξ 「ニョロ!!」
( ,,^Д^) 「俺は無視かにゃ?!」
言葉と同時に矢が放たれる。
相変わらず青白いそれはやや弧を描き、正確にヨコホリへ飛来。
(//‰ ゚) 「次から次へと!」
ヨコホリは後退しながら矢を腕で払う。
この隙に乗じたのは、ミンクス。
たまたま目の前にがら空きの胴が見えたので。
ミ;´・w・ン 「うぇい!」
剣で突いたら刺さった。
硬い身体に深くは通らないが、ヨコホリの顔が不快に歪む。
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