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Ammo→Re!!のようです

1名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:44:33 ID:cwrc78lw0
いつまでたっても規制が解除されないのでこちらで


纏めてくださっているサイト様

文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/ammore/ammore.htm

ローテクなブーン系小説まとめサイトさん
ttp://lowtechboon.web.fc2.com/ammore/ammore.html

2名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:45:15 ID:cwrc78lw0





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Very rarely, the strong emotions cause unexpected results.
ごく稀に、強い感情は予期しない結果を招くことがある。

Angry, sadness, scare, delight and something else are included in the emotions which cause changing everything.
怒り、悲しみ、恐れ、喜びやそれに準じる物が全てを変える感情に含まれている。

If you think emotions are not important thing, you should change your mind ASAP.
だからもし、感情など取るに足らないものだと考えているのであれば、すぐにでもその考えを変えた方がいい。

The emotions are able to beyond your forecast easily.
感情は予測を簡単に上回ることができるのだから。

      著 カテリーナ・“C”・シャナハン【潜在的能力と感情がもたらす可能性】 P37より抜粋
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3名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:45:53 ID:8zj.SCjQ0
まじか

4名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:45:55 ID:cwrc78lw0
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‥…━━ August 3rd PM13:59 ━━…‥
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オープン・ウォーターが始まってから、一時間半以上が経過していた。
左足を庇うように歩く一人の青年は、腕時計からニクラメンの見事な街並みにその鳶色の細い目を向け、嘆息する。
乱反射をするコバルトブルーのビル群は、その建物の表面に敷き詰められた太陽光発電装置の色彩が作り出す一つの芸術だ。
ニクラメンのような海上都市には多く見られる設計で、他にも、交差点の中央に聳える風力発電装置は樹木の様に堂々としている。

その景色を見て、クルーカットの青年は薄らと笑む。
行き交う人の中、彼の浮かべた非憎げな笑みに気付いた人間は、一人もいない。
気付いたところで、誰も気にしない。
彼はあまりにも上手く周囲に溶け込んでいたし、彼の周りには仲間が大勢いた。

ここで言う仲間、とは姿格好の事を指し示す。
若く、そして若者の間で流行している服装――半袖のパーカーにジーンズ――が、彼を自然な存在に変えていた。
不意に、甲高いクラクションが鳴り響いた。
視線を三百フィート先の風力発電装置の根元に向け、そこに三台の大型トラックを見出す。

トラックは交差点の真ん中で軽度の正面衝突を起こし、それを避けようとした後続のトラックがハンドル操作を誤って歩道の街灯にぶつかったようだ。
街の交差点で起こったこの事故は、人命救助と車両移動が行われるまで、ニクラメンの交通を鈍らせるだろう。
ここに警察組織は介入していないので、動くのは海兵隊だ。
多くの人間がオープン・ウォーターの警備に向かっているだろうから、到着までしばらくかかりそうだ。

5名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:46:35 ID:cwrc78lw0
海兵隊が到着するまでの間、この場を諌めるのは雇われた外部の人間。
さて、この不慣れな環境下で人間がどう動くのか、楽しみではある。
運転手達は責任の押し付け合いをして、交通を完全に妨害している。
彼等はそれを気にすることなく、口論を続ける。

青年は現場に近づき、その口論の内容に耳を傾ける。

「お前がよそ見してるからこうなったんだ、その平ってぇ顔なら前がよく見えるだろうが!!」

「んだと手前、ぶっ殺されてぇか!!」

古汚れたスポーツキャップを目深に被った男が、唾を飛ばしながら罵声を上げる。
しかし奇妙なやり取りだ。
言い争いはするが、互いに手出しをしない動きと立ち回りをしているのだ。
それに、口調もどこか芝居がかっている。

トラックを傷つけられたのなら、もっと感情的になるのが普通。
けれども、三人の動きはその怒りの様子を周囲にアピールするかのようだ。
形だけの怒り。
見せ掛けだけの憤りだと、注意深く観察すればすぐに気付く。

なるほど、指示なくして動けない三下の彼らにぴったりの役回り、演出だ。
青年はくつくつと笑いながら、更に三人に近づく。
さて、この三問芝居にどのように介入すべきか。
どのように介入すれば面白く、そして劇的に己の存在を示せるか。

彼らに用意された台本通りに進むだけでは、あまりにもつまらない。
ここから先はアドリブで参加させてもらうとしよう。
面倒くさいが、まぁ、いいだろう。
これもまた一興。

6名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:48:03 ID:cwrc78lw0
下で祭りがあるのに、ここで祭りがないのは少々寂しい。
もうすぐ、この海上街でも祭りが始まる。
それに乗り遅れないように、精々、気の利いた台詞と気の利いた立ち回りを考えておこう。
青年は、事故を離れた場所から見ている野次馬の群れに紛れ、腕を組んで静観することを選んだ。

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‥…━━ August 3rd PM14:00 ━━…‥
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爆音と振動が同時に訪れ、悲鳴は遅れてやってきた。
青年は騒然とする周囲とは対照的に、驚くほど冷静に、そして、恐ろしいほどに暖かな笑みを浮かべていた。
満面の笑みだった。
だが、高鳴る鼓動と衝動に駆られながらも、青年はまだ動かない。

橋に背を向け、まだ、風力発電装置の根元の事故現場に注目している。
彼だけではない。
注意して周囲を観察すれば、他に、十人の男が同様の動きをしていることに気が付くだろう。
そして、彼らの足がゆっくりと、山中で獣の背から近づくのと同じように、トラックに向かっていることに。

もっとも、一般人にとって今はそれどころではない。
自分の命が危険に晒されていると察するや否や、ニクラメンと地上とを繋ぐ橋と、船着き場に向かって一斉に走り出した。
この段階で可能な限り早く助かるには、確かにその二つの道しかない。
彼らの選択は間違いではないが、過ちだ。

7名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:48:44 ID:cwrc78lw0
高鳴る気持ちを抑え、冷静に事態を見守る。
すると海の向こうから、爆音にも似た音が近づく。
それは徐々に大きさを増し、姿を現した。

「ヘ、ヘリ?!」

ニクラメンは電動ヘリコプターを所有していない。
最寄りのクロジングも、ましてやフォレスタにもそれはない。
人々を救助に来たヘリコプターでもない。
あれがこの世界にとっての重役を迎えに来たどの都市にも属さないヘリコプターだと知るのは、青年を含む数名だけ。

ヘリコプターは彼らの頭上を越え、一ブロック先の通りに降り立つ。
一分もしない内にヘリコプターは空に浮かび、水平線にその姿を消した。
つまり、重役はしっかりとこの街から撤退したということ。
計画に狂いはなく、万事スムーズに事が運んでいるのだと青年は理解した。

予定通りだ。
時間。
タイミング。
そして、配置。

全てが予定通りに進行している。
西川・ツンディエレ・ホライゾンから受けた指令は、ニクラメンの全てを海に沈めること。
ニクラメンは、もう、この世界の地図上に必要ないのだ。
そして、それを実行するのは彼一人ではない。

『夢と希望が我らの糧。我ら、正義と平和の大樹也!!』

注意が爆音とヘリコプターに注がれていた隙にトラックのコンテナに乗り込んでいた男達が、そこに積載されていた棺桶を装着し、戦闘準備に入る。
トラックの事故はあくまでも予定。
海兵隊の到着を遅らせ、一人でも多くの人間をこの場に釘付けにするための作戦。
そして作戦に基づいた行動がこれから始まる。

〔欒゚[::|::]゚〕

ヘルメットに描かれた黄金の大樹。
そして、複合装甲の放つ重々しい輝き。
これが、力無き彼らの力の化身。
独自のカラーリングとマーキングを施したジョン・ドゥが現れ、手にした軽機関銃のコッキングレバーを引く。

8名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:50:02 ID:cwrc78lw0
誰もが、この突拍子もない展開に目を点にしていた。
あるいは、彼らが救いに来たのかもと淡い期待を抱いた者もいたかもしれない。
しかし、それは違う。
救いに来たのではない。

終わらせに来たのだ。

〔欒゚[::|::]゚〕『死ね、薄汚い豚どもが!!』

爆裂と言い換えても差し支えのない銃声が、人でごったがえす交差点に響き渡った。
悲鳴など、彼らには聞こえない。
彼らの耳に聞こえるのは、豚の鳴き声とその行為に向けて送られる割れんばかりの拍手だ。
いつの間にか人混みをすり抜け、牽引されてきたコンテナの中に乗り込んでいた青年は、その悲鳴を決して快く思っていなかった。

彼にとって人は人であり、人以上でも人以下でもない。
命が消える音は、悲しくなるものだ。
外に比べて少しだけ静けさを保っているコンテナには多くの武器と、一つの兵器が鎮座していた。
ジョン・ドゥとは異なる大きさと形状の、Bクラスの軍用強化外骨格。

ハズレ呼ばわりされた太古の兵器を発掘、復元、改良、そして量産した一品。
長きに渡る綿密な計画。
その一つがこれだ。
その成果がこれだ。

大元はカリメア合衆国の作った“エアベンダー”から始まり、改良と量産化に成功したBクラスの軍用第三世代強化外骨格。
先行量産型“ラスト・エアベンダー”。
その棺桶を前に、青年は昨晩の出来事を思い出す。
己の成した偉大な成果。

あの伝説の魔女を。
あの、イルトリア最強の狙撃手、“魔女”ペニサス・ノースフェイスを兄と協力し、殺したのだ。
伝説を葬り去った感動を思い出すたびに、青年の手は震えた。
震える手で棺桶を背負い、青年――オットー・スコッチグレイン――は、ライフルを手にする。

9名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:51:05 ID:cwrc78lw0
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手に持つのは、百連装ドラムマガジンと高倍率光学照準器を装着し、強化ロングバレルに改造したM4アサルトライフル。
機動力を補うだけの火力がなければ、装甲の薄いラスト・エアベンダーは空飛ぶ的になる。
そこで役立つのが、この徹甲弾を撃てるライフルと云う訳だ。
民間人を殺すだけなら、このライフルだけで十分。

バッテリーと燃料の事を考えて、オットーは棺桶を装着しないまま、硝煙と血の匂いが漂う世界に飛び出した。
コンテナを背にして、その場に膝立ちになる。

(´<_` )「アニー、見ててくれ……
     俺は、一人でもできるから」

魔女に撃たれて森に落ち、そのまま行方不明となった兄に呼びかける。
幼少期から、互いに支え合って生きてきたただ一人の肉親。
貧しい生活を通して深めた兄弟の絆。
日に一つのパンを分け合い、身を寄せ合って暖を確保したあの日々。

力のない中、力を求めて逃げ続けた。
助け合うことこそが、彼らが持ち合わせたただ一つの力だった。
唯一の家族である兄の悲願は、自分が叶える。
叶えて、そして、世界を変えてみせる。

決意を再燃させ、オットーは狩りを始めた。

(´<_` )「……すまない」

最初に照準器に捉えたのは、おさげ髪の子供の背中。
四歳か、それとも、五歳だろうか。
小さな女児の背中はあまりにも無防備。
あまりにも儚げだ。

(´<_` )「せめて、苦しまないように逝かせてあげるからな」

10名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:51:46 ID:cwrc78lw0
そう。
こうして、数キログラムの力を加えて銃爪を引くだけ終わるのだ。
背中――心臓の真上――に醜いバラを咲かせ、倒れる女児。
誰も、彼女を助けない。

所詮は他人。
今は我が身我が命が最重要なのである。
母親でさえ、五歩進んだところでようやく気づき、踵を返すほどなのだ。
溜息を隠せない。

家族のつながりが希薄な時代の証拠だ。
これを正さなければ、世界はいつまでもこのままだ。
せめてもの情けとして、オットーは母親の額を撃ち抜いて――半ば爆ぜるような銃創となった――これ以上悲しむことのないようにした。
倒れた母親の手は、娘の手に届くことはなかった。

光学照準器に浮かぶ十字線に背中を重ね、次々と銃爪を引いて道路を赤黒く染める。
銃弾を掻い潜って橋に向かう人。
いち早く船着き場に向かう人。
その誰もが、生き延びることは出来ない。

ここから先は、誰一人として、このニクラメンから生かして出すわけにはいかない。
黄金の大樹の元に名を連ねる者以外、誰一人として。
――遠くから響いた銃声が、友軍のジョン・ドゥの頭を吹き飛ばした。

〔欒゚[::|::]゚〕『っ!! 狙撃だ!!』

散開しようと振り返ったジョン・ドゥが、足を撃ち抜かれて派手に転倒する。

〔欒゚[::|::]゚〕『ケニー!!』

助け起こそうとしたジョン・ドゥは、最も面積の広い急所である心臓部を撃ち抜かれた。
あれでは即死だろう。

〔欒゚[::|::]゚〕『遮蔽ぶっ……!!』

11名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:52:30 ID:cwrc78lw0
仲間に指示を出すために開いた口を残し、ジョン・ドゥの頭部が吹き飛んだ。
戦場における、狙撃の常套手段。
ニクラメンの海上街には絶えず強い潮風が吹いており、その中で狙撃を成功させ得る部隊は、ニクラメン海兵隊に二つある。
一つは“真珠頭”パール・ヘッド・ジャック率いる海底街第七連隊。

そしてもう一つ、海上街第三小隊。
率いるのは、パールの同期。
“岩頭”ドレッド・ドトール。

([∴-〓-]『……』

死体が積み重なる道路の先に現れたのは、腕を組み、仁王立ちになってオットー達を見据える士官用ソルダット。
丸みのあるヘルメットと一体になった、覆面装甲型ヘッドマウントディスプレイ。
削り出しの金属のような、武骨な全身装甲。
過酷な環境下での使用を前提とし、単純で量産性に富んだ設計ながらも、耐久性、性能、ともにジョン・ドゥと比較されるほどに高い。

堂々と構えるソルダットの棺桶持ちこそが、ドレッド・ドトールに違いなかった。
オットーは思考を切り替え、自分に有利なように状況を運ぶことにする。
しばらくの間、この場が落ち着くまではトラックのコンテナ内に隠れることにした。
幸い、狙撃手は彼の動きに気付いていなかった。

〔欒゚[::|::]゚〕『……図に乗るなよ、泥人形共が!!』

ジョン・ドゥを身に纏った男達が、雄々しく吠えながら全速力で疾駆した。

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‥…━━ August 3rd PM14:07 ━━…‥
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12名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:53:10 ID:cwrc78lw0
――結論から言えば、彼らが全滅するのに十分も必要なかった。

([∴-〓-]『図に乗るなよ、田舎者が』

倒れ伏したクロジングの同胞の頭を踏みながら、ドレッドは淡々と告げた。
勝利に酔うことなく、虐殺に嘆くこともない。
コンテナに空いた銃創からオットーが見た彼の姿は、経験を積み重ねた海兵隊らしい、威厳に満ちた姿だ。
彼の周りには狙撃装備のジョン・ドゥが五機、標準型ジョン・ドゥが十七機いた。

生存者を探して動く姿は津波の被害を受けた街を歩くボランティアにも似ているが、これは天災ではなく人災だった。
だからこそ、地面に転がるオットーの同胞の死体に向けて発砲し、息の根を確実に止めているのだ。
大型医療車両はすでに通りに停めてあり、その周囲は重軽症者の流す血と悲鳴によって、野戦病院と大差ない光景が広がっていた。
オットーは彼ら海兵隊の手際の良さに感動を覚えるとともに、同胞として招き入れた人間の不甲斐なさに頭を痛めた。

結局のところ、力のない人間がどう足掻こうと喚こうと、何一つ変わりはしないのだ。
だからこそ、オットーは決意したのだ。
この間違った時代を。
この忌々しい理が支配し、蔓延るこの時代を終わらせるために。

意を決し、オットーはラスト・エアベンダーの起動コードを入力した。

(´<_` )『心こそが全ての戦いに勝つ鍵だ』

オットーの体が、棺桶に取り込まれる。
軍用第三世代強化外骨格の通称である棺桶を、オットーは気に入っていた。
皮肉たっぷりの名前だし、何より、最も的確な名前だからだ。
これに入っている限り、戦場で本物の棺桶は不要になるのだから。

運搬用コンテナの中で、強化外骨格が己の体に合わせて装着されていく。
初めての感触ではない。
ジョン・ドゥも、ジェーン・ドゥも試したことがある。
フィンガー・ファイブ社で戦う中で、十種類近くの棺桶を動かしてきた経験がある。

だが、このラスト・エアベンダーは別物だ。
あの“魔女”の命を奪った棺桶なのだ。
装着を終え、オットーはコンテナの外に出る。

<0[(:::)|(:::)]>

群青色の装甲は、最早、装甲としての体を成していないほど薄い。
キー・ボーイと同等か、箇所によってはそれ以下だ。
昆虫のような、そう、トンボのような巨大な目を持った棺桶だった。
エアベンダーから更に装甲を削って軽量化を図ったのは、量産化を容易にするため。

そうして出来上がったのが、この先行量産型ラスト・エアベンダーである

<0[(:::)|(:::)]>『……』

13名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:54:05 ID:cwrc78lw0
空中戦闘に割ける時間は、僅か十分間。
その間に敵を全滅させることなど、あまりにも簡単だ。
背負ったジェットエンジンに火を入れ、オットーの体が一瞬で空中に浮かび上がる。
エンジンの音に気付いた海兵隊達がラスト・エアベンダーに視線を向け、次に銃口を向けてきた。

〔Ⅲ゚[::|::]゚〕『っ!! 残党だ!!』

しかしそれでは遅かった。
すでにオットーは機体を地面と水平にして高速移動を開始し、銃弾は一発も掠めない。
ビルの壁に沿ってより上空を目指し、太陽を背にして高度を上げていく。
ある程度の硬度を確保した段階で、オットーは上昇を止め、ライフルを構えた。

如何に経験豊富な海兵隊と言っても、上空の敵を相手にしたことはないだろう。

([∴-〓-]『全員屋内に!!』

文字通りの弾雨が降り注ぐ中、ドレッドは最も適切な指示を下した。
全てが見下ろせる上空から攻撃を受けないためには、視認されない以外の方法はない。
逆に反撃の点で見ても、上空の方が圧倒的に有利だ。
物理法則に逆らって発砲された銃弾は、いずれは重力に引かれて落ちる。

弾の威力も減退し、更には狙いも付けにくいという非優位性がある。
対して、上空から発砲された弾丸は重力の力を借りて威力が増す利点がある。
オットーのライフルは遠距離からの攻撃に特化して改造されているだけでなく、ラスト・エアベンダー自体が演算機能を持っているため、正確な射撃が可能だ。
撃ち負けることはあり得なかった。

<0[(:::)|(:::)]>『逃がすか!!』

土煙と共に、海兵隊達が倒れる。
部下に指示を出していたドレッドも、その銃弾を浴びて膝を突く。
休みなど、決して与えない。
銃爪を引き続け、オットーはドレッドの頭上に集中的に銃弾を浴びせた。

([∴-〓-]『ぐ、ああががっ!!』

14名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:55:21 ID:cwrc78lw0
穴だらけになったソルダットから血が流れ、周りと同じように骸と化す。
残存勢力は不明だが、早々に指揮官を潰せたのは幸先がいい。
僅か二分間で、海上街第三小隊は壊滅状態となった。
これで、オットーの任務は終わったも同然だ。

海兵隊の兵力を減退させ、市民虐殺の邪魔をさせないことがオットーの役割だ。
交差点を担当していた味方が全滅してしまったが、逃げ延びた市民に関しては追う必要はない。
オットーが手を下さずとも、彼等は必ず死ぬのだ。

<0[(:::)|(:::)]>『これで、この街も終わり、か』

高層ビルの屋上に着陸し、見るともなく全体を見渡す。
人の流れはやはり、船着き場に向けて動いているようだ。
橋が落ちたのなら、ニクラメンに残された脱出路は海しかない。
だが、海に飛び込むわけにもいかない。

水面は、落下高度によってはコンクリート並の硬さになるため、ただの投身自殺にしかならない。
恐怖心を拭い去って飛び込むだけの気持ちがあるのならば、冷静に考え直した方がまだ人間らしい死に方が出来る。
安全な方法として最初に考え付くのは、船だ。
オープン・ウォーターの開催に伴い、外地から訪れた大量の船舶がニクラメンの船着き場に停泊している。

しかし、船着き場に通じる道へ辿り着く人間は、誰一人としていない。
理由の第一に、その道には西川・ツンディエレ・ホライゾンの指示によって、三十名以上の棺桶持ちが待機している。
逃げ道を一か所に絞り、そこで殲滅する算段だ。
万が一そこを突破したとしても、問題の船着き場にある全ての船には時限式の高性能爆薬が仕掛けられており、後十分後には海の藻屑と化す。

では、船着き場の危険に気付いて泳いで逃げようとした場合は?
その点に関しても、抜かりはなかった。
安全に海に飛び込める場所には大量のクレイモア地雷――無数のベアリングを発射する指向性対人地雷――が設置され、生きてそこに到達できる人間は存在しない。
逃げ道など、残しはしない。

ここでニクラメンは終わるのだ。
半年以上にも渡って周到に準備されたこの計画に、抜かりはない。

<0[(:::)|(:::)]>『……ん?』

15名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:56:32 ID:lF63lSWA0
しえ

16名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:56:44 ID:cwrc78lw0
何かの気配を感じ、オットーは背後を見た。
そこには屋上に通じる扉が一つあるだけで、他には何もない。
危険が去るまでビルの中に隠れていようと思うのなら、それは意味がない。
目標達成後、このニクラメンは海の底に沈む予定となっているのだ。

オットーは不意に、苦痛を与えずに死を与えられるのなら今しかない、と思った。
圧殺されるよりは射殺した方が、まだ、慈悲深いだろう。
自分は殺人狂ではないのだから、わざわざ苦痛を伴った死を与えなくてもいい。
せめて、優しく殺してやろう。

ライフルを腰だめに構え、オットーはその扉に近づいていく。
時折風に乗って聞こえてくる銃声と、風の音以外、何も聞こえてこない。
不自然なほどに、静かな空気が漂っていた。
おかしい。

情況的に有利なのはこちらだ。
どう考えても、自分が危険に晒されることはない。
畏れる必要も、警戒する必要もないはずだ。
そのはずなのだが、オットーはこの空気に胸騒ぎを感じてしまう。

耐えきれずに、オットーは声を発する。

<0[(:::)|(:::)]>『誰かいるのか?
        ちょうどいい、こっちに来てあいつらから逃げる道を探そう』

安心させることを目的に声をかけたオットーだが、返事はない。
気のせいならばいいのだが、扉に近づくたびにオットーは煉獄の炎に近づいているような気分になって行く。
他の同志が、例えばクックル・タンカーブーツでも来ているのか?

<0[(:::)|(:::)]>『なぁ――』

鉄の扉が吹き飛び、オットーの脇に落下した。
厚さ一インチはある扉の一か所は深く陥没し、極めて強い力が一か所に加えられたことを意味している。
扉の向こうには、ジャケットを着たスカイブルーの瞳を持つ一人の男。
浅黒い肌と顔に負った細かな傷、そして白髪交じりの黒髪は鬣のようだった。

その瞳に宿る憤怒の色に気付くことなく、オットーは一際目立つ顎の傷に視線を奪われる。
獣に食いちぎられたような痕だ。

17名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:57:25 ID:cwrc78lw0
<0[(:::)|(:::)]>『――同志……か?』

一応、そう尋ねはするが銃口は向けたまま。
敵にしろ味方にしろ、この男は普通ではない。
出来れば味方であってほしいと願うが、男は返答ではなく質問をしてきた。

(,,゚Д゚)「お前、夢はあるか?」

<0[(:::)|(:::)]>『……あ、あぁ』

(,,゚ー゚)「……そうか。
    それは良かった」

満足そうに頷き、そして、男は静かに宣言する。
宣戦布告と、戦いの始まりを。








(,,゚Д゚)『目には目をではない。貴様らの全てを奪い取る』

18名も無きAAのようです:2013/05/26(日) 19:58:09 ID:cwrc78lw0







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Ammo→Re!!のようです
                     ノへヘ   !     メ个、彡
                    ノイヘ. ー‐― ,イノリ
                    /ハ,i:ヽ,:,:,:,:,/ トハ
                   _,/ / i! :    .: / ヘヽ、
          _...... .-.:::::´::/:::::/  ヘ、    /  l:::::ヽ、、
       ハ´::::::::::::::::::::::::/:::::::l!   /i   /    !::::::::l::::::`::.- ... _
                                          第九章【rage-激情-】
             ‥…━━ August 3rd PM14:15 ━━…‥
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