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( ^ω^)サイキック・ハードボイルドのようです('A`)
1
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:14:56 ID:qZhKxK4o0
ξ ⊿ )ξ「どんなに力があっても…人間は無力なの…」
ξ;⊿;)ξ「何も変わらないのに…どうして人を殺めてしまうのよ…」
理想を語る少女は涙を湛えていた。
だが彼女の理想など意に介さぬとでも言うように、残酷な現実は風のように吹き抜けていく。
そしていつしか風は嵐となり、何もかもを平等に吹き飛ばしていくのだ。
2
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:15:49 ID:qZhKxK4o0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
( ^^)「ですからお客様、そのような恰好で入場していただく訳にはございません」
<#ヽ`∀´>「ふざけるな!いったい私の格好のどこに問題があると!」
( ;^^)「失礼ですが、そちらのような程度の低いブランドだと…」
海に面した高い崖の上にある高級リゾートホテル。
今日はここでとあるパーティが開かれている。
煌びやかな恰好をした大勢の富裕層が中に入っていく中、ふさわしい「格」ではないと判断された者は
多くの侮蔑の視線を背に受けながら引き返さなければならない。
その関所を通れるのは一握りの勝ち組のみだ。
ホテルの中へ進む二人の男。
その恰好は不潔でこそないが、他の富裕層に比べ服装に掛かっている額が明らかに三桁ほど少ない。
だが意外にも門番たる係員は彼らを引き留める事はしなかった。
( ^^)「…」
まるで吹き抜ける風など意に介さぬとでもいうように。
3
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:16:35 ID:qZhKxK4o0
何事もなく中へ入っていく二人は、互いに近寄る事も口を動かす事も無いまま言葉を交わす。
('A`)『もう一度確認するぜ、俺たちは何だ?』
( ^ω^)『某国のスパイだお』
('A`)『目的は?』
( ^ω^)『論文を国に持ち帰る事だお』
('A`)『よし、入るぞ』
開け放たれた重厚かつ絢爛な外観の扉の中は、外に出たかと見紛う広さのパーティーホールだった。
天井には輝かしいシャンデリアが光を放ち、等間隔で置かれたテーブルには贅の限りを尽くした料理が並び、
入口で見たような高価な衣服や装飾品で着飾った大勢の富裕層がひしめき合っている。
ホールに入り二手に分かれた二人は人の森を縫うように奥へ奥へと進んでいく。
集まった富裕層は誰も彼らの存在に気づく事は無く、ただホールの中央に設けられたステージの上を見つめている。
そのホールの中央に設けられたステージの上では、二人の国籍の違う男性が、多くのSPに囲まれながら握手を交わしていた。
4
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:17:34 ID:qZhKxK4o0
( ^_L^ )
( ^∋^)
( ^ω^)『確認したお』
( ^ω^)『元研究所長のフィレンクト、相手はクックルで間違いないお』
『海の向こうの「開発局長」か…黒と見て間違いなさそうだな』
必要な情報を確認するや否や、二人は行動を起こした。
( ^_L^ )「私の技術と研究成果で、多くの人を救うのが夢でした。」
( ^∋^)「彼の素晴らしい夢を我々が全力でサポートします。」
壇上の二人がカメラマンに向けて笑いかけた瞬間、
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
富裕層の一人が悲鳴を上げた。
全員が悲鳴の先を見やると、いつからそこにいたのか、見覚えのない男が手に持った拳銃を天井へ向けていた。
5
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:18:37 ID:qZhKxK4o0
('A`)「(タァン!)」
そのまま引き金を引き、一発。
パニックを起こし男から離れようと逃げ惑う人々。
その波に逆らうように、ステージの上から弾丸のような速さで十人のSPの内の五人が一斉に男に襲い掛かる。
(▼-▼)「(…!)」
だが、男の元へたどり着いたのは一人だけだった。
残りの四人は遥か後方で宙を舞い、落下して動かなくなり、あっという間に避難を妨害する路上の石と化した。
(▼-▼)「(…作戦変更)」
SPは五人で一人を確実に取り押さえる作戦から、一人で強引に取り押さえる作戦に迷いなく切り替える。
男の拳銃は天井ではなくSPの方を向いており、既に銃弾は放たれていた。
だが、人間が絶対に回避できないタイミングで放たれた筈だった一発は、彼が人ならざる速さで横に体をずらした事で頬を掠めるに留まった。
次弾の装填まで0.5秒。
6
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:19:26 ID:qZhKxK4o0
その間に人を二回殺せる禁断の技をSPは持っていた。
頬を掠めた銃弾が床に穴を穿つよりも早く、振り上げた右足による鎌のような上段蹴りを男の首目がけ繰り出す。
だが、人間なら確実に首を刎ねる事が出来た筈のその技は、男の体を浮かすに留まった。
男は蹴りが当たると同時に全身の力を抜き、人ならざる筋力で首への衝撃を耐え、
その勢いを利用し、首で鉄棒の逆上がりをするように一回転した。
(;▼-▼)「(…受け流しただと!)」
そんな予想外の事態にも思考を追いつかせるSPだが、体はその速さに追いつく事が出来なかった。
男が回転し、SPの広がった股の間を通過する際、軸にしていた足にナイフを突き刺していたのだ。
SPがバランスを崩し倒れる隙は、男が体勢を立て直し彼を路上の石へ変えるのに十分だった。
7
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:20:33 ID:qZhKxK4o0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(;‘_L’)「どういうことだ…これは…」
男が天井に銃弾を放ってから十秒と経っていない。
その間に十人居たSPの内の半分がやられた。
( ;゚∋゚)「い…いったいどうなっているんだこれは!責任はどうなるんだ責任は!」
混乱し喚き散らすクックルに苛立つ余裕もない。
(;▼Д▼)「早くこちらへ!」
下を向くと、ステージの真下に用意されていた緊急用の脱出口がSPの手によって開かれていた。
そして彼は見た。
我先にと避難しようとするクックルの腕を銀色の光が掠めていく瞬間を。
血が吹き出し、痛みによって開かれた手から、「論文」が記録されたUSBが落ちる瞬間を。
一陣の風が吹き抜け、USBを掠め取っていく瞬間を。
(‘_L’; )三「(バッ…!)」
視界の隅に映ったUSBが消えていった方向を見やると、意外にも風がその正体を現した。
( ^ω^)「貰ったお」
(;‘_L’)「…!!!!!」
まるでいなかったはずの男が突然そこに現れた。
先ほどの男と似通った恰好から察するに共犯とみて間違いないだろう。
服装から察するに、西の大陸からの刺客だろうか。
周りを見ると、クックルは既に脱出口の中へ姿を消しており、
SP達は突如現れた男に対応すべくアイコンタクトをとっていた。
(‘_L’)「まて」
そんなSP達を制止するフィレンクトは笑みを浮かべ、服の袖の内側に仕込まれたスイッチを押した。
(;‘_L’)「乗ってやろうじゃないか…」
8
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:21:34 ID:qZhKxK4o0
次の瞬間、爆音と赤い炎がホールの中を照らす。
フィレンクトとSPが脱出し、脱出口が閉鎖されたステージの上に、天井に吊り下げられていたシャンデリアが落下する。
そのシャンデリアの上には人影があり、落下の衝撃など無かったように平然と佇んでいた。
( ;^ω^)「やっぱり…用意してやがったかお…」
(//‰ ゚)「…!……!!!」
黒い拘束具のような物を着た男の顔は仮面で覆われ詳細を知る事は出来ない。
ただ一つ理解できるのは、この惨状は爆薬などではなく、彼一人の能力によって引き起こされたという事だ。
『ブーン!無事か!』
( ^ω^)『ドクオ、やっぱり居やがったお!』
ブーンと呼ばれた男はどこか遠くから語りかけてくるドクオという男に返答する。
『ああ、証拠は撮った!後は足を運んでくるから、一分持たせられるか?』
( ^ω^)『…確か「乙種能力」まで使用許可が下りてるんだったおね、ならそんなに急がなくていいお!』
二人の会話は爆音と爆風によって中断された。
(//‰ ゚)「…!!」
男が手を向けた先…ブーンが居た場所は爆発の衝撃によって、地下の様子までうかがい知ることが出来る程に大きな穴が穿たれていた。
( ^ω^)「…教えてやるお」
9
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:22:30 ID:qZhKxK4o0
その時既にブーンは宙を舞っていた、おおよそ人間の脚力では到達できない高度まで。
その事に拘束具の男が気づいた時には、既にブーンはそこに居なかった。
( ^ω^)「『能力』に対峙した時の基本、それはまず『当たらない事』だお」
空中から下目がけ急加速し、生ゴミと化した料理が散乱したテーブルの淵を蹴り上へ、更にシャンデリアを蹴り壁へ。
広いホールをピンボールのように縦横無尽に駆け巡るブーンを追うように、彼が居た所を片っ端から吹き飛ばしていく拘束具の男。
( ^ω^)「そしてもう一つが、「観察する事」だお!」
爆発から逃げながら徐々に距離を詰め、僅かに無事に残っていた床に着地する。
( ^ω^)「(頃合いだお…)」
その瞬間に一気に距離を詰めるブーン。
地面を滑るように低空で直線的に接近するブーン目がけ、男は能力を行使する。
(//‰ ゚)「!!」
男の手の平から、透明な空気の塊のようなものが放たれた。
これこそが爆発の正体であり、透明なために高速で放たれることで不可視となり、
あたかも手を伸ばした先が爆発するように見えたのだ。
10
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:23:23 ID:qZhKxK4o0
その事を、ブーンは見抜いていた。
『不可視の爆弾』はブーンに直撃する事無く、彼の前方で爆発した。
(//‰ ゚)「!!!!!!!」
( ^ω^)「意趣返しって奴だお」
ブーンは不可視の爆弾が放たれるより前に、
既に自分の前方に『不可視のナイフ』を投擲していたのだ。
ブーンとドクオがホテルに侵入する時に使用した姿を透明にする技を、
投擲するナイフにあらかじめかけておいたのだ。
そのまま前方の爆風を貫ぬくように抜けたブーンは、炎の先に宙に浮く拘束具の男の姿を見る。
男は爆発によってダメージを受けた床が崩落したことで、下の階に投げ出されていた。
こうなる事も、ブーンは織り込み済みだった。
( ^ω^)「『地形を理解する』のも基本中の基本だお、覚えておくんだおッ!!」
ブーンの貧相に見える足から繰り出されたかかと落としが、男の頭に直撃する。
そんな外観の印象に反して男は物凄い勢いで回転しながら落下し、下の階の床すらも突き破った。
11
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:24:08 ID:qZhKxK4o0
( ^ω^)「おおおおおおおおおッ!」
ブーンはそのまま空中で急加速すると、破壊された壁の穴から勢いよく飛び出した。
そこに広がっていたのは絶景と静寂だった。
元々高所にあったホテルだったからか、満天の澄んだ星空に、地平線まで続く蒼い海が目に飛び込んでくる。
( ^ω^)「ああーっ!気持ちがいいお!!」
高揚感に包まれたブーンは空高く浮遊しながら、どこかに居るはずのドクオに話しかける。
( ^ω^)『こちらブーン、ミッションコンプリートだお』
『了解したブーン、いま海岸線の道路に車を走らせてる、こっちまで飛んでこれるか?』
ブーンがドクオが言ったように海岸線の道路を見やると、ライトを点滅させる一台の車が見えた。
( ^ω^)『確認したお!今すぐ飛んでくお!』
『早くしろよ、今日は久しぶりに飲みに行こうぜ』
ブーンは流星の如く車へ急降下した。
12
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:25:51 ID:qZhKxK4o0
( ^ω^)「この車どうしたんだお?」
('∀`)「奇跡的に一台だけ鍵が開いてた車があったんだよ」
('∀`)「ピッキングの時間も惜しかったから、本当良かったよ」
( ^ω^)「超能力使えば一発なんだけど、まあする気ないんだおね」
('∀`)「まーな、喧嘩にまで頭使いたくないんだよ」
( ^ω^)「言ってろおww」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
拳銃は超能力の一般化により以前ほどの脅威ではなくなった。
この事からわかるように、超能力が一般化された事により、弱者と強者の壁が大きくなった。
弱者が自分を救う最後の手段として、刃物や拳銃で強者に対抗する…というようなことが不可能になったのだ。
現在では、金と権力の大きさと物理的な力の大きさは比例するといってもいい。
国民に対するパフォーマンスとして、首相がSPを一切つけていない国も存在している程だ。
だからこそ、弱い能力しか扱えない者の代わりに強い能力を扱える者が、対価と引き換えに依頼を遂行するビジネスが流行している。
その一つが探偵である。
(著・シャーミン松中『弱肉強食』より抜粋)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
13
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:41:31 ID:ovIKqgSo0
( ^ω^)「しかしこれでしばらく飯には困らねーお」
('∀`)「それぐらいじゃないと割に合わねーよ。まったくジョルジュのオッサンにとんだ厄ネタ押し付けられちまった」
( ^ω^)「どっかの国のスパイの振りして派手に暴れろだなんて探偵の仕事じゃねーおwww」
( ^ω^)「まあ俺たちは元々…」
('A`)「どこで誰が聞いてるかわかんねーんだぞ」
( ;^ω^)「…すまんお」
14
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:42:26 ID:ovIKqgSo0
('A`;)「(重くなっちまったな…話題を変えるか)」
('A`)「しかし今日は何だって助手席なんだよ」
( ^ω^)「お?」
('A`)「いつもは仕事が終わったら後部座席で寝転がってるじゃねえか」
( ^ω^)「いやデカい荷物があったからだけど…ドクオが持ち出したモノじゃないのかお」
ξ ⊿ )ξ「…よかった」
ξ;⊿;)ξ「…あなた達、探偵だったのね…」
('A`;)「な」
( ;^ω^)「え」
サイキック・ハードボイルドのようです。
prologue・了
15
:
◆6DQ83JaUMI
:2013/05/18(土) 22:43:47 ID:ovIKqgSo0
※11と12の間に挟む予定だったものです
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
人間の脳には、「超能力」を扱う器官が存在する。
超能力とは、「五体」と「五感」の延長であり、
手が届かない物を持ったり、持ち上げられない物を持ち上げたり、
歩けない場所を歩いたり、普通感じる事が出来ない事を感じるといった事が可能となる。
だが人間の生活や社会を大きく乱す恐れがある「超能力」は、現在では厳しい管理の下、運用がされている。
国民には、超能力を扱う器官の働きを抑制するナノマシンの投与が義務付けられ、許可されていない超能力の使用を禁じている。
超能力は危険性に応じて「丙種」「乙種」「甲種」に分類され、認定資格や職業による能力特権を持たない者が超能力を使用する事は出来ない。
(『超能力とは』globalwikiより抜粋)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
16
:
名も無きAAのようです
:2013/05/18(土) 23:16:53 ID:HMvIXtbMO
ふむ。期待。
17
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 00:10:03 ID:Vd7KdN/E0
文章はさておきまぁまぁ面白い
乙
18
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 08:09:04 ID:e14IdkNwO
擬音を喋るなよ。笑っちまうじゃないか
19
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 11:15:36 ID:qcktAf2MO
ドクオの発砲音は超能力かと思ったけどどうやら違ったようだな…
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