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( ^ω^)戦国を歩いたギタリストのようです

28名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:33:55 ID:71GE3tJQO
 
 思い出せ。
 天野家が敗れ、訪れようとした平和をすぐに壊した連中を。

 1499年。八尾井山焼き討ち。

 
(;^ω^)「吹連……」

(;´メω・`)「え…?」

(;^ω^)「吹連久斗尚!それが主謀者ですお」

(;´メω・`)「!!」

ζ(゚ー゚;ζ「うそ…」

 
 1499年、吹連久斗尚、八尾井山焼き討ち。
 そうだ。年表暗記で何度も繰り返したから間違いない。

 
(´メω・`)「奴め…まだ懲りずに…」

ζ(゚ー゚;ζ「光世真宗は二茶根留家との関わりも強いわ。ひょっとしたら…」

(´メω・`)「ああ、まだ二茶根留を狙っているはずだ」

29名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:35:01 ID:71GE3tJQO
 
(´メω・`)「だが、それがわかれば話は早い。ブーン、お前がまたこの時代に飛ばされたのもきっとそれだ」

(;^ω^)「はい?」

(´メω・`)「二茶根留が落とされる…出麗に危険が迫っているからだ」

ζ(゚ー゚;ζ「……」

(;^ω^)「は、はあ…」

 
 出麗に危険が迫っているから。
 …と言われても、それがタイムスリップの理由に繋がる意味がよくわからない。

 まあ、タイムスリップの理由は良いとして。
 これからどうすればいいのだろう。
 

(´メω・`)「恐らく、出麗の命に影響があれば、未来への影響も強いのだろう」

(´メω・`)「なれば、話は簡単だ。我々で八尾井山を守ればいい」

(;^ω^)「は…?」

30名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:36:04 ID:71GE3tJQO
 
 渚本介はブーンの方を向き、にやけるように笑った。

 いや、ちょっと待て。
 何やら不穏なその案に、まさか僕も加える気ではないですよね?

 
(´メω・`)「ブーン、俺2人で吹連久斗尚を食い止めるぞ」

(;^ω^)「いや、いやいや、ちょっと待ってくださいお」

(;^ω^)「こういう時って、もっとほら、兵力勝負とかで行くもんじゃ…?」

(´メω・`)「それだと危険が強くなる。我々が内密に吹連久斗尚のもとへと潜入し、直接食い止めるほうが効率がいい」

(´メω・`)「出麗は巳留那殿にそれを告げ、万が一のために兵を用意させるよう言ってくれ」

ζ(゚ー゚;ζ「は、はい!」

 
 渚本介のリードで、話がとんとん拍子に進む。

 ちょっと待ってくれ。この流れは絶対におかしい。
 そう言いたいが、何故か強く抵抗できない自分もいる。

31名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:36:28 ID:A67oIitc0
支援
これ好きだった

32名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:36:55 ID:hUYFa91s0
続編キター!!!
昨日まとめ読んでよかった支援

33名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:37:13 ID:71GE3tJQO
 
 不安が顔に出ていたのか。
 渚本介はブーンに優しく笑いかけた。

 
(´メω・`)「はは、心配するな。八尾井山も、吹連が籠もっている具麗芭(ぐれば)城も、目鼻の先だ。以前のように何ヶ月も旅をするわけじゃない」

(;^ω^)「何ヶ月も旅してたんですかお…」

( ^ω^)「あれ?じゃあもしかして」

 
 ふと、日本史の記憶が頭に蘇る。
 授業ではあまり取り上げられなかったが、資料集に載っていたあまりにも奇怪な一文は未だに覚えている。

 
( ^ω^)「じゃあ、太田渚本介と旅してた、楽器を背負った南蛮人って…」

(´メω・`)「お前のことだな。まごうことなく」

(;^ω^)「まじかお…」

 
 いつの間にか、歴史の1ページに僕は刻まれていたようです。
 

──

34名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:38:44 ID:71GE3tJQO
 
──

 

 渚本介のリードは完璧で、3日後にはブーンと渚本介の旅の用意ができた。

 この3日間、ブーンは馬に乗る練習をさせられていた。
 急いで処理すべき問題だからという、渚本介の計らいからだ。

 だが。

 
( ^ω^)「ハァッ!」

▼・ェ・▼ ヒヒーン

( ゚ω゚)「ぬぅふ!」

 
 何度やっても、振り落とされる。
 馬に乗った経験といえば、小さい頃に山梨県の乗馬体験でインストラクターと一緒に乗ったくらいだ。

 
(;^ω^)「クソ、なんでこんな子犬みたいな馬に振り落とされるんだお…」

▼・ェ・▼ ヒヒーン(笑)

(;^ω^)「うわーすごい腹立つ」

(´メω・`)「ははは、馬は慣れだ。まずはその馬と心を通わせるんだな」

35名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:40:41 ID:71GE3tJQO
 
 渚本介の教えで、馬の練習を繰り返した3日目の夕刻。
 出発の時が来た。

 久斗尚が籠城する具麗芭城に潜入し、久斗尚を捕らえる。
 内密の任務となる故に、出発の見送りはなかった。
 出麗は二茶根留巳留那とともに"万が一"の準備をしているらしい。

 
(´メω・`)「準備は大丈夫か?」

( ^ω^)「大丈夫ですお。つっても、特に持ち物もないけど…」

(´メω・`)「はは、何を言ってるんだ。ほら」

( ^ω^)「お?」

 
 渚本介が、大きな荷物を差し出した。

 あまり綺麗じゃない、布地の荷袋。
 それは、ちょうどギターが収まる大きさで、リュックのように背負える作りだった。

 
( ^ω^)「おお、こりゃ便利ですお!」

(´メω・`)「ははは。三年前の旅で、お前がずっと背負っていたぎたーの荷袋だ」

36名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:41:35 ID:71GE3tJQO
 
 三年前。
 自分の記憶の外で、タイムスリップして渚本介と旅をしていた時。

 ブーンは不思議な落ち着きを感じていた。
 いや、ブーンを落ち着かせる何かが、渚本介にはあった。

 
(´メω・`)「さ、自分の馬に乗るんだ。馬はいざという時の強力な武器となる」

( ^ω^)「はいですお。…よいしょ!」

▼・ェ・▼ ヒヒーン^^

( ゚ω゚)「ぬぅふ!」

 
 馬に跨った途端、またしても振り落とされた。
 しかも、振り落とされながら煽られたような気がした。

 とっくに自分の馬に跨った渚本介が、「優しく乗るんだ」と声をかける。
 言われた通り、ブーンは優しさを込めて馬に跨った。

37名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:42:49 ID:71GE3tJQO
 
(´メω・`)「時間がない。出発だ」

( ^ω^)「はいですお」

 
 渚本介が先に走り、ブーンがその後を追いかける。
 振り落とされずに一度走ってしまえば、あとは楽だった。

 
( ^ω^)「なあ、馬。お前にぴったりな名前を考えたお」

▼・ェ・▼ ?

( ^ω^)「マルフォイだお」

▼・ェ・▼ …?

(;´メω・`)(馬と会話してる…?)

 
 駆ける二騎は、人気のない山道へと進んでいく。

 未来を変える力を、その体に秘めながら。

 

 
 第一話 終

38名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:44:32 ID:kpLScN8.0
乙乙
まさか続編くるとはな
おかえり

39名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 23:45:40 ID:71GE3tJQO
以上です。ご支援・コメントありがとうございます!
酉無しですみません。前作の作者です

40名も無きAAのようです:2013/02/13(水) 00:01:14 ID:TiVUfLZs0

いやあこれでまた楽しみが増えてしまった
作者おかえり

41名も無きAAのようです:2013/02/13(水) 00:01:22 ID:q4i.vFzU0

まさかの続編に僕、満足!

42名も無きAAのようです:2013/02/13(水) 00:18:51 ID:9jNzq/cc0
ヤック・デカルチャー!



43名も無きAAのようです:2013/02/13(水) 01:04:05 ID:WDapfFJ20

頑張れ

44名も無きAAのようです:2013/02/13(水) 01:49:02 ID:4fZMgr3I0


45名も無きAAのようです:2013/02/13(水) 11:27:49 ID:bUM4bBZs0
ギタリストの続編ktkr!!!
吹蓮まだ諦めて無かったのか

46名も無きAAのようです:2013/02/13(水) 14:53:22 ID:Lr0YeZWw0

丸見え
wwwono ←検索(yahoo Google)

47名も無きAAのようです:2013/02/13(水) 18:09:20 ID:Q6xe/7Ww0
乙だ

48名も無きAAのようです:2013/02/14(木) 11:57:51 ID:My/4T5Tc0
前作見てきた
期待して待つよ

49名も無きAAのようです:2013/02/14(木) 11:59:14 ID:yxCsoeYAO
乙!
前作好きだったから続編とか嬉しい限り

50名も無きAAのようです:2013/02/14(木) 21:37:40 ID:5frVaaCo0
乙!
期待してます

51名も無きAAのようです:2013/02/14(木) 22:47:11 ID:3I03eJ2Y0
前作も好きだったから超嬉しい
これからの展開を楽しみにしてるよ乙

52名も無きAAのようです:2013/02/15(金) 00:29:56 ID:CropchTY0
おつ

53名も無きAAのようです:2013/02/15(金) 01:23:50 ID:wCsLJXaM0
え?続編?

うぎゃあああああ嬉しいいいいいいいいいいいい
超期待なんだぜ

54名も無きAAのようです:2013/02/15(金) 02:20:19 ID:VtVBA6Mg0
おおおマジか
楽しみにしてんよ

55名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:15:33 ID:wZZ3IsMkO
わー皆さんありがとうございます!覚えててくれてるなんて!

第二話投下します

56名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:16:20 ID:wZZ3IsMkO
 

──

 

(‘_L’)「…そなたらも聞いておろう」

 

 夜。
 山中にある具麗芭城は、月明かりに照らされて妖しく輝いている。

 その一室で、城主の吹連久斗尚は、対面する二人に話を続けた。

 
(‘_L’)「光世真宗が動き始めた。八尾井山で兵を募っている」

(‘_L’)「奴らの狙いも天下統一だ。そして、奴らが最初に潰しにかかるのは」

 
 一呼吸、間に入れる。
 この緊張は、どうにも晴れなかった。

 
(‘_L’)「…恐らく、我々吹連であろう」

57名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:17:05 ID:wZZ3IsMkO
 
(‘_L’)「根十城攻めに敗れた我々は、最初に狙いやすいというのもあるやも知れん。だが、我らにも勝算はある」

(‘_L’)「先に我々が潰すのだ。八尾井山をな」

(‘_L’)「光世真宗が敗れれば、二茶根留にとっても痛手の筈。光世真宗は戦力補充の頼り先故にな」

 
 対面する二人は、久斗尚の目をまっすぐ見つめたまま動かない。
 そこには、別々の意思を含みながら。

 
(‘_L’)「戦の準備だ。八尾井山焼き討ちを決定する」

 
 そして、二人のうち片方が、太くくぐもった声を響かせた。

 
「御意に」

 

──

58名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:17:57 ID:wZZ3IsMkO
 
第二話
「勇気と矛盾の寝床」

 

──

 

 二茶根留領から出ると、いかにも日本の内陸地らしく、大きな山がいくつも続いていた。
 その途中にある小さな宿場町で、ブーンと渚本介は馬を下りた。

 
(´メω・`)「今日はここで宿を借りよう。旅にはうってつけの宿場町だ」

( ^ω^)「了解ですお。マルフォイもここで休むんだお」

▼・ェ・▼ ブルル

( ^ω^)「スリザリン寮ならロンドンにあると思うお(笑)」

▼・ェ・▼ ヒヒーン

( #)ω゚)「ぬぅふ!」

(;´メω・`)「何やってるんだ…早く来るんだ」

(;^ω^)「はいですお…」

59名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:19:08 ID:wZZ3IsMkO
 
 山間の宿場町、百合(ユリ)。
 様々な国の境場にあるため、常に人で賑わっている。
 商人や武士が入り組む小さな町は、明るい声が飛び交うほどの活気を持っていた。

 だが、その中でもブーンは異質な存在であるらしい。
 渚本介とブーンが通ると、町の人間達は一旦話を止め、見知らぬ「南蛮人」に目を奪われていた。

 
(;^ω^)(な、なんか恥ずかしいお…)

(´メω・`)「……」

 
 恥ずかしそうにコソコソ歩くブーンに対し、渚本介は逆に町の人間達を見つめながら歩く。
 その目には、ある違和感と警戒を秘めていた。

 
(´メω・`)(……何か、変だ)

(;^ω^)「しょ、渚本介さん、いつまで歩くんですかお」

(´メω・`)「ん?ああ、すまない。宿はここにしよう」

60名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:20:12 ID:wZZ3IsMkO
 
 適当な宿屋に入り、勘定を済ませる。
 その間、中にいる人間達は皆ブーンを執拗に見ていた。

 
(;^ω^)(うわー…初レコーディングの時のドクオさんより視線がきついお…)

(;^ω^)(ここは目を逸らさなきゃ…ん?)

 
 ふと、目を逸らした先。
 何やら黄色の紙が、天井に貼ってあるのが見えた。

( ^ω^)(お札かお…?)

 よく見れば、あちこちの柱にも同じような黄色の紙が貼ってある。
 札のような形のそれには、何やら文字が書いてあったが、ブーンには全く読めなかった。

 
(´メω・`)「上がるぞ、ブーン」

( ^ω^)「あ、了解ですお」

 
 あちこちに貼られてある札に、一種の不気味さを感じながら。
 ブーンと渚本介は、二階の部屋まで上がった。

61名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:21:13 ID:wZZ3IsMkO
 
 二階の部屋で、荷物を下ろす。
 窓から町並みを見ると、やはり活気の良さが伺える。
 だが、先程の札や周りの態度から、この町に対する違和感は拭えなかった。

 さらに下、表通りを見下ろしてみる。
 すると、まだ10歳前後であろう子供達が、何かを囲っているのが見えた。

 
(;^ω^)(あれは…イジメかお?)

 囲っているのは、一人の小さな男の子だった。
 どうやら、周りの子供はこの男の子に向かって色々と罵倒しているらしい。
 聞こえたのは、「悪霊」や「貧乏」といった単語だけだった。
 だが、その状況を詳しく察知するには充分な材料だった。

 
(´メω・`)「ブーン、何を見て…」

(;^ω^)「ちょっとあの子達を止めてきますお!」

(;´メω・`)「えっ」

62名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:22:08 ID:wZZ3IsMkO
 
 宿屋を飛び出し、子供達の方へと駆け寄る。

 
(#^ω^)「こら君たち!イジメはダメだって道徳の時間に習わなかったのかお!」

(`A´;)「うわ、なんだこの南蛮人!」

(;゚ヽ゚)「こいつの味方だ!悪霊だ!逃げろー!」

(#^ω^)「誰が悪霊じゃこら!!お前らなんか今年大殺界に堕るがいいお!」

 
 あっけなく逃げる子供達。
 そして、そこには砂まみれになった男の子だけが残った。

 
(・∀ ・メ)「……」

( ^ω^)「キミ、大丈夫かお?あんな奴らとはもう関わらないほうがいいお」

(・∀ ・#)「う、うるさい!!」

63名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:23:06 ID:wZZ3IsMkO
 
 優しく差し伸ばした手は、勢いよく弾かれた。
 唖然とするブーンに、男の子は更に声を上げる。

 
(・∀ ・#)「お前らなんか、みんな死んじまえばいいんだ!!人間も、仏様も、みんな死んじまえ!!」

(;^ω^)「ちょっ…!」

 
 ブーンだけでなく、周りの野次馬達にも吠えるような言葉。
 それだけを残し、男の子はブーンに背を向けて走り出した。

 
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待てお!話を…!」

(<´-`)「あー、やめときな南蛮人」

 
 驚いて振り向く。
 そこには、荷台を引いた商人らしき男が、無邪気な顔で立っていた。

64名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:23:58 ID:wZZ3IsMkO
 
(<´-`)「ありゃ紛れもなく悪霊が憑いとるんだ」

(;^ω^)「は?」

(<´-`)「あの子は持ってねぇんだよ。光世札をよ」

(;^ω^)「こうせ…ふだ?」

 
 思い当たる節はある。
 恐らく、先の宿屋で見たあの札のことだろう。

 しかし、あの札を持っていないから「悪霊が憑いている」というのは、あまりにも短絡すぎる。

 
(<´-`)「ま、あんたみてぇな南蛮人には考えらんねぇかもしらんけどよ。でも、あの子の態度を見りゃわかるだろう。悪霊がいなきゃ、人間はあそこまで汚くならねえ」

(;^ω^)「そ、そんな勝手な…」

(<´-`)「少なくとも、光世札を持ってなきゃこの町では生きてらんねぇ。あんたも早いとこ手に入れな」

65名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:24:56 ID:wZZ3IsMkO
 
(;^ω^)「はあ…ありがとうございますお」

 
 いまいち言ってる意味が掴めなかったが、とりあえずこういうことだろう。

 この町では、「光世札」を持っていない者は悪霊に憑かれている、とされる。
 光世札とは光世真宗に関わるものだろうか。
 だとすれば、光世真宗は想像以上に強い影響力を持っている。

 それにしても、この現状ではあまり良い影響とは言えない。

 
(;^ω^)(光世真宗って、本当は良くない宗教なのかお…?)

 
 光世真宗を守る旅だというのに、これでは気分が落ち込んでしまう。
 とぼとぼと宿屋に戻るその姿を、町の人間達は睨むように見つめていた。

 

──

66名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:25:50 ID:wZZ3IsMkO
──

 

(´メω・`)「光世札…」

 
 宿屋に戻り、事の顛末を渚本介に話したブーン。

 疑問と警戒が、更に絡まったような。
 難しい顔のまま、渚本介は黙り込んでしまった。

 
(;^ω^)「渚本介さん、光世札って一体何なんですかお?」

(´メω・`)「うむ…」

 
 まだあまり状況が理解できていないブーンが、渚本介に尋ねる。
 聞いた話だが、という前置きの後に渚本介が語った。

 
(´メω・`)「光世札が光世真宗に則った、所謂魔除けの為の札であるということは間違いない。ただ…」

( ^ω^)「ただ?」

67名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:26:48 ID:wZZ3IsMkO
 
 出かけた言葉を戻しながら、渚本介が溜め息をついた。

 
(´メω・`)「…いや、まだ確証がないな。俺が知ってるのは光世札という存在だけだ」

( ^ω^)「光世真宗の信者はみんな持ってるんですかお?」

(´メω・`)「否、恐らくこの町に流行しているだけだ。他ではあまり知られていないからな」

 
 余計に理解が追いつかない。
 数多い光世真宗の信者達の中で、この百合町にだけ流行する光世札が、先程の子供達のようなイジメを作っているということか。

 「この町にだけ流行」する、「光世札」…

 
(´メω・`)「…いずれにせよ」

 
 深く考え込んだブーンを、渚本介が現実に引き戻す。

68名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:28:59 ID:wZZ3IsMkO
 
(´メω・`)「光世札による悪しき慣習が広がっては、今後の問題となりうる。できれば原因を突き止めたいのだが…」

 
 渚本介が、ちらりと窓を見た。
 外の賑やかな声は、もはや悪意のざわめきのように感じてしまう。

 
(´メω・`)「…少し、外に出てみるか」

 

──

69名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:30:52 ID:wZZ3IsMkO
──

 

 町に出て改めて見てみると、確かに光世札は至るところに貼られてあった。

 あらゆる建物の壁、柱。
 携帯している者も少なくない。

 
(´メω・`)「流行…なんてものじゃないな、これは」

 
 渚本介が思わず呟いてしまうほど、それはもはや日常の一部だった。

 黄色の札が散在する町を歩く二人。
 その一角。小さな男の子が、ぽつんと座っているのが見えた。

 
(・∀ ・)「……」

(;^ω^)「あ、さっきの!」

(・∀ ・;)「!?」

 
 光世札を持っていないという、男の子。
 ブーンの姿を発見した途端、慌てて逃げ出した。

70名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:31:36 ID:wZZ3IsMkO
 
(;^ω^)「ちょ、待てお!なんで逃げるんだお!」

(;´メω・`)「ブーン!?」

(;^ω^)「さっきのいじめられてた子ですお!追いかけますお!」

(・∀ ・;)「!」

 
 人混みを掻き分けて逃げる子供と、それを追いかける奇怪な南蛮人と武士。
 人混みを抜け、ようやく自由に走れるようになると、男の子はすぐに捕まえられた。

 
(;^ω^)「つ、捕まえたお…久しぶりに走った…」

(・∀ ・;)「離しやがれ南蛮人!悪霊め!」

(;^ω^)「人間じゃボケ!いいから話を聞けお!」

(・∀ ・;)「うるせえ!お前が……」

 
 憎しみの籠もった目を、ブーンに向ける。
 そして、全く理解できない台詞が、ブーンを襲った。

 
(・∀ ・#)「お前のせいで、こうなったんだ!」

71名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:32:56 ID:wZZ3IsMkO
 
(;^ω^)「え…?」

 
 言ってる意味が、わからない。
 この子とはもちろん初対面だ。この町も初めて来た。
 そもそも、この時代に来てまだ間もないのに。

 
(´メω・`)「…どういうことなのか、話を聞かせてくれないか」

 
 男の子の横に、渚本介がしゃがみこむ。
 渚本介には何の敵意も持っていない様子で、男の子は静かに俯いた。

 
(´メω・`)「俺達は、光世札の悪習を止めに来たんだ」

(・∀ ・;)「!」

 
 男の子の驚いた顔が、渚本介の方へ跳ね上がる。
 しかし、またすぐに俯いてしまった。

 
(・∀ ・;)「……無理だよ」

72名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:33:50 ID:wZZ3IsMkO
 
 聞き返す間もなく、男の子が続ける。

 
(・∀ ・;)「もう無理だよ…町のみんなは光世札を信じ込んじまってる。よくわかんねえけど、光世札を持ってたら救われるんだってよ」

(・∀ ・;)「うちは貧乏だからさ…光世札なんて大層なもん、買えなかった。光世札が買えなくて町から追い出された奴もいっぱいいる」

( ∀  ;)「おいらが小さいときは、町のみんなはこうじゃなかったのに……みんな…仲良く暮らしてたのに…」

( ^ω^)「……」

(´メω・`)「……」

 
 小さな体が、更に小さくなり、震えている。
 ブーンが慰めの言葉をかけようとしたのを、渚本介が制した。

 
(´メω・`)「安心しろ。俺達が絶対に止める」

(;∀ ;)「……」

73名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:34:46 ID:wZZ3IsMkO
 
(´メω・`)「だから、最後にもう少しだけ教えてくれないか」

 
 優しく尋ねる渚本介に対し、男の子は乱暴に頬を拭いて向き直った。

 
(´メω・`)「光世札を"買えない"と言ったな。光世札とは、売り物なのか?」

(・∀ ・)「…うん」

(´メω・`)「どこに売ってるんだ」

(・∀ ・)「商人が荷台を引いて売ってる。顔の骨が出た、目の細い奴だ」

(;^ω^)「!」

(´メω・`)「そうか…ありがとう」

 
 男の子の手を引き、立ち上がる渚本介。
 小さな体にまとわる着物の砂を払い、頭を撫でた。

 
(´メω・`)「お前、名は?」

(・∀ ・)「…斎藤又武貴(またんき)」

(´メω・`)「そうか。強く生きろよ、又武貴」

74名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:36:21 ID:wZZ3IsMkO
 
(・∀ ・)「…うん!」

 
 嬉しそうに頷き、走り去る又武貴。
 その姿は、何ら普通の子供だった。

 
(´メω・`)「…さて、必要な情報は得られたな」

(;^ω^)「渚本介さん、又武貴くんが言ってたその商人、覚えがありますお」

 
 最初に又武貴に逃げられ、話しかけてきた男。
 その男の顔が、又武貴の言っていた特徴と合致する。

 
(´メω・`)「よし、その男を探すぞ」

( ^ω^)「了解ですお」

 
 疑問と警戒が、一つの線となって結びついていく。
 ブーンと渚本介は、人混みの中へと戻っていった。

 

──

75名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:37:15 ID:wZZ3IsMkO
──

 

(<´-`)「…百合町における、殿の光世札の計…」

 
 夕方。
 商人の男は、誰もいない小さな部屋の中で、ひたすらに文を綴っていた。

 
(<´-`)「潤滑に、進行し候…」

 
 書が完成し、それを丸める。
 窓から差し込む夕陽と、夕陽に照らされる百合の町。

 
(< - )「……もう…」

 
 小さな声が、男の口から洩れる。

 
(< - )「耐えられねぇよ…こんなの……」

 

 その声は、小さな夕陽の光に吸い取られていった。

 

──

76名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:38:06 ID:wZZ3IsMkO
──

 

 夜、小さな小屋。
 ブーンと渚本介は、その扉の前に立った。

 
(´メω・`)「ここだな。町人達が言っていたのは」

( ^ω^)「ごめんくださいおー」

(<;´-`)「!?」

 
 突然の来客に、飛び上がる商人。

 この声には聞き覚えがある。昼間の南蛮人だ。
 短刀を手にとり、扉を開ける。

 
(<;´-`)「…どちらさん」

(´メω・`)「話を聞きたい。上がらせてもらうぞ」

(;^ω^)「あっ僕も…おじゃましますお」

77名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:38:51 ID:wZZ3IsMkO
 
 警戒を面に出した武士と、昼間の南蛮人。
 用件はすぐに察した。
 

(<;´-`)「……」

(´メω・`)「早速で悪いが、お前にはちゃんと話を聞かなければならない」

(<;´-`)「…何の用だよ」

(´メω・`)「光世札を売る唯一の商人とは、お前のことだな?」

(<;´-`)「!?」

 
 予想通り、目の前の二人は光世札のことを問いただしに来たようだ。
 臆する様子を隠し、商人が応える。

 
(<;´-`)「…そうだ」

(;^ω^)「……」

(´メω・`)「それでは問う。お前は、光世真宗の使いなのか?」

78名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:39:50 ID:wZZ3IsMkO
 
(<;´-`)「………」

 
 開きかけた口を、必死に抑える。

 言ってはならない。それを答えてはならない。
 言ってしまえば、全てが台無しになる。
 
(<;´-`)「……」

(;^ω^)「……」

 
 痺れを切らした渚本介が、ゆっくりを膝を立てた。
 その目に、いつもの優しさはない。
 

(´メω・`)「……答えろ。さもなくば」

(;^ω^)「渚本介さん!?」

 
 自らの刀に手をかける渚本介。
 その瞬間、ブーンが飛び込んで渚本介の手を止めた。

 だが、ブーンはすぐに手をどけた。

79名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:40:41 ID:wZZ3IsMkO
 
(;^ω^)「……」

(´メω・`)「……」

 
 渚本介の腕には、全く力が入っていなかった。
 刀を出すつもりなど、元からないのだろう。

 ブーンが安心したのも束の間、商人が静かに呟いた。

 
(<; - )「……斬れよ」

(´メω・`)「!」

(;^ω^)「え…」

 
 心に貯まった感情が、溢れ出るように。
 商人はゆっくりと呟いていく。
 

(<; - )「……斬れよ。俺なんて、さっさと殺してくれよ」

(;^ω^)「ちょ…」

(´メω・`)「…どういうことだか、話してくれないか」

 
 又武貴のときと同じように、優しく尋ねる渚本介。
 商人は、消え入るような声で続けた。

80名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:41:40 ID:wZZ3IsMkO
 
(<; - )「俺はこの町の商人なんかじゃねえ。俺の名は山田竜兵衛」

(<; - )「…吹連家家臣だ」

(;^ω^)「!!」
 

 二人の中に、衝撃が走る。
 吹連家なら、光世真宗とは敵対しているはずだ。
 

(´メω・`)「なれば、光世札とは…」

(<; - )「ああ、光世真宗はこんなもん作っちゃいねえ。全ては殿、吹連久斗尚様の計らいだ」
 

 そうとわかれば、話は見えてくる。

 つまり、吹連久斗尚は光世真宗を弱体化させる為、光世札を作って流布した。
 その結果、光世札が流行した地域では、光世真宗を巡って対立することになる。

 そう、あの又武貴のように。
 光世札を持っているか否か、ただそれだけで。

81名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:42:42 ID:wZZ3IsMkO
 
(<; - )「殿の命で光世札を持ってこの地に降りた俺は、八尾井山が近く光世真宗が浸透したこの町で、ありもしない話をでっち上げた」

(<; - )「南蛮人が悪霊を連れ込んだ。天野が滅んだのも悪霊のせいだ。救われたくば光世札を買うがいい、と」

(;^ω^)「!」

 
 又武貴に突然嫌われたのも、町の人間達がブーンを睨みつけていたのも、これで納得がいく。

 全ては作り話だったのだ。
 光世札を流行させる為に。
 光世真宗を弱らせる為に。

 
(<; - )「我ながら、馬鹿みてえなおとぎ話だと思ったよ。でも、町の人間は思いの外それを信じた。光世札は売れに売れた」

(<; - )「でもよ、それは同時に、貧乏人達を淘汰しちまう結果になった…予想してたとはいえ、俺は…」

 
 深く、深く、その頭は下がっていく。
 悪い人間ではないことは、その様子でわかる。

82名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:43:43 ID:wZZ3IsMkO
 
(<; - )「…俺はよ、女房と娘を戦で亡くしてるんだ。天野の仕業さ」

(;^ω^)「!」

(´メω・`)「……」

(<; - )「だから、戦は嫌いなんだ。できれば刀も矢も見たくねえ」

(<; - )「だが、殿が光世真宗と戦う気でいることはわかってた。それでも俺は、戦だけは避けたかったんだ。だから…」

(´メω・`)「…だから、光世札で結果を残すことに専念したのか」

(<; - )「………」

 
 兵と兵がぶつかり合う戦なんて、絶対に嫌だった。
 戦が何も生み出さないことは、よくわかっていた。

 だから、この男、竜兵衛は光世札を売りに売ったのだ。
 戦をするまでもないほどに、光世真宗を弱らせることが目的だった。
 そうすれば、もう誰も死ぬことなんてないのだから。

83名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:44:44 ID:wZZ3IsMkO
 
(<; - )「だがよ…光世札を売れば売るほど、罪のない人間達が苦しんでいくんだ。それに、殿は八尾井山焼き討ちを計ってる」

(<; - )「とんだお笑い草さ。もう、どうして生きていいのかわかんねえよ」

(<; - )「……だから、斬ってくれ。殺してくれよ。俺はもう疲れたんだ…」

(;^ω^)「……」

(´メω・`)「……」

 
 あまりにも、哀れな男だ。
 戦を忌み嫌う者が、また別の戦を生み出している。

 恐らく、この男は強烈な自己矛盾と闘ってきたのだろう。
 誰にも真相を語れずに。
 たった一人で、家族を失った心を抑えながら。

84名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:45:37 ID:wZZ3IsMkO
 
( ^ω^)「竜兵衛さん…」

 
 ブーンが、竜兵衛の横に座る。
 溢れる気持ちをまだ抑えようとするその横顔に、ブーンは静かに語りかけた。

 

( ^ω^)「竜兵衛さんは悪くないですお。戦を無くす為に、戦から人を救う為に闘ってきた竜兵衛さんは、誰よりも強い男ですお」

( ^ω^)「だから、顔を上げてくださいお。天にいる家族に顔を向けてくださいお」

( ^ω^)「竜兵衛さんは、よく頑張ってきましたお」

(<;-;)「……」

 
 少しだけ上げた顔に、涙が流れる。

 泣くわけにはいかなかった。
 光世札を売るために、この町では明るい商人を演じなければならなかった。

 これまで抑えていた感情が、勢いよく溢れ出る。

85名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:46:29 ID:wZZ3IsMkO
 
(<;-;)「俺は……俺はどうすりゃいいんだよ…」

(´メω・`)「…俺達に任せるがいい、山田竜兵衛。お前の勇気は、俺達が必ず成就させる」

(<;-;)「………」

(´メω・`)「……ブーン」

 
 二人と向かい合う位置に座りながら、渚本介がブーンに話しかける。
 

(´メω・`)「ぎたーを弾いてくれ。曲は任せる」

( ^ω^)「……」

 
 不思議と、違和感なくギターを用意する。
 ブーン自身、何故かギターを弾かなければならないと感じていた。

 不思議そうにその様子を見つめる竜兵衛と、静かに座る渚本介に向かって、ブーンはギターを構えた。

86名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:47:18 ID:wZZ3IsMkO
 
( ^ω^)「…いきますお」

 
 指を弦に置き、ゆっくりと演奏を始める。

 曲は、Secret Gardenの「you raise me up」のソロギターバージョン。
 力強い愛の旋律が、小さな室内を響き渡る。

 
(<;-;)「…あ……あぁ…」

(´メω・`)「……」

 
 一人で続ける戦いが、一体どれほど重いのか。
 一体どれほど苦しいことか。

 ブーンにはよくわからなかったが、この男を前にして、初めて理解した。
 人間は、たった一人では闘えない、ということに。

 自分の心と戦い続けた勇敢な男、山田竜兵衛。
 その嗚咽は、夜の世界でいつまでも響いていった。

 

──

87名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:48:22 ID:wZZ3IsMkO
 
──

 

 翌朝。
 これまでにないほど大量の光世札を荷台に詰め、竜兵衛は表に出た。

 
(<;´-`)「ほ、本当にこれで大丈夫なのか…?」

(´メω・`)「大丈夫さ。ブーンが言うんだから間違いない」

( ^ω^)「間違いないですお。だから、思いっきり町中に光世札をバラまいてくださいお」

 
 光世札の解決策は、ブーンの提案が採用された。

 それは、「光世札を大量に消費すること」だ。
 つまり、大量消費によって物の価値を極端に下げる、資本主義的な方法だ。

 高校のとき、社会科の何らかの授業で、そういった話を聞いたことがあった。
 例えば、ダイヤモンドは希少で一定の価値を持つから特別なものであって、もしダイヤモンドが「誰もが持ってて当たり前の物」になると、その価値や興味は完全に薄まる。

88名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:49:39 ID:wZZ3IsMkO
 
( ^ω^)「誰もが光世札を持ってて当たり前…消耗品みたいになってしまえば、光世札への興味なんてなくなりますお」

( ^ω^)「そうやって町は元通りになっていくはずですお」

(´メω・`)「しかし面白い方法だな。確かに説得力はある」

(<´-`)「…そうと決まりゃ、信じるしかねえな」

 
 幾分か明るい顔になった竜兵衛が、荷台を動かす。
 すると、表通りの一角に、子供達が集まっているのが見えた。

 
(;^ω^)「あ、昨日のガキ共!またイジメを…」

(´メω・`)「待て」

 
 飛び出そうとするブーンを、渚本介が抑える。
 すると、竜兵衛が荷台ごとその子供達に近づいていった。

89名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:51:05 ID:wZZ3IsMkO
 
(<´-`)「うおーい、お前ら!」

(`A´;)「!」

(;゚ヽ゚)「やべ!」

(・∀ ・メ)「!」

 
 仁王立ちの子供達と、砂まみれの又武貴が、驚いて振り向く。
 すると、竜兵衛が笑顔で近づいてきた。

 
(<´-`)「朝からえげつねえもん見せんじゃねえよ!ほら、これ全部やるから帰りな!」

 
 笑いながらそう言うと、竜兵衛は百枚近い光世札を足元に投げた。

 
(`A´;)(;゚ヽ゚)「!?」

(<´-`)「ほら又武貴、お前の分だ」

(・∀ ・;)「!?」

90名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:52:00 ID:wZZ3IsMkO
 
 何百枚という光世札が、足元に広がる。
 固まる子供達に、笑いながら続ける。

 
(<´-`)「手に余るんなら、家族やお隣さんにも分けてやりな!じゃあな!」

 
 そのまま荷台を引いて歩きだす竜兵衛。
 未だ固まる子供達を後目に、竜兵衛は此方を振り向いた。

 
(<´-`)「じゃあな!ブーン、渚本介!あんがとよ!」

(<´-`)「俺、もっとこの町で生きてみるわ!」

 
 元気な商人の姿は、百合町の人混みへと消えていく。

 
( ^ω^)「…強い人ですお、本当に」

(´メω・`)「ああ、そうだな」

91名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:53:15 ID:wZZ3IsMkO
 
 荷物を持ち、各々の馬の元へと戻る。
 

( ^ω^)「でも渚本介さん、あれで良かったのか不安ですお…もし吹連にバレたら…」

(´メω・`)「問題ない。流通しすぎた結果だと言えば、吹連も納得せざるを得ないはずだ」

( ^ω^)「なるほど」
 

 自然と笑顔に戻り、馬に跨る二人。
 吹連領は、もう目の前だ。

 
(´メω・`)「さ、行くぞ」

( ^ω^)「了解ですお。行くおマルフォイ」

▼・ェ・▼ ヒーン

92名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:54:04 ID:wZZ3IsMkO
 
 活気のある宿場町を背に、二人は進む。

 もう二度と訪れることはないだろう。
 だが、この町の動向はいつまでも見守っていたい。
 ブーンは心からそう思った。

 一人の男の闘いが、成就するその時まで。

 

 

─You raise me up... To more than I can be.─

 「あなたが勇気づけてくれるから 私は自分を超えてゆける」

 
  「you raise me up」歌詞より

 

 第二話 終

93名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 21:54:46 ID:wZZ3IsMkO
今回は以上です
ういっす

94名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 22:30:24 ID:cV19wMfU0
やべ、今までで一番好きな話かもしれんww

95名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 23:07:49 ID:KoBFdiLU0
前作読み返したが、前作に負けず劣らずの面白さだ


96名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 23:19:12 ID:M9uMxiRI0
ギター一つで人々を助けていくブーンはかっこいい
次回も楽しみだ

97名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 23:24:30 ID:8Blg/lts0
お、来てた
乙!

98名も無きAAのようです:2013/02/18(月) 18:47:51 ID:i7mMQbf.0

前作読んでみるかな

99名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 12:57:13 ID:WCcdteaw0
おつ

100名も無きAAのようです:2013/03/21(木) 14:27:48 ID:h9X1ASDI0
乙です!

101名も無きAAのようです:2013/03/30(土) 22:13:01 ID:yY0hb4QM0
(´メω・`)「斬ったオイラが悪いのか…斬られたオメエが悪いのか…拙者、ギター侍じゃ 」

って… 言うじゃなーい?

102名も無きAAのようです:2013/04/17(水) 01:55:57 ID:gGUyMa/c0
つづきまだかなー

103名も無きAAのようです:2013/07/07(日) 01:28:40 ID:xl.7qWDs0
期待してたんだが…

104名も無きAAのようです:2013/10/25(金) 14:09:34 ID:OF4TxAaw0
読み返したらやっぱし面白い

105名も無きAAのようです:2013/10/28(月) 16:01:33 ID:p.jFcdGkO
続き見たいな

106名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 12:24:11 ID:FMpnlpkQ0
 
 一つ、理解できないことがあった。

 いや、この時代に飛ばされていること自体がもはや理解の外だが。
 それ以上に、ブーンの心に引っかかることがあった。

 
 渚本介の話によると、前にこの時代に来たときは、尾付出麗の命を救うため──彼女に音楽の人生を与える任務があったという。

 これは、恐らく今回にも当てはまる。
 八尾井山焼き討ちによって、二茶根留領一帯の平和が危ぶまれる。
 それは、出麗の命にも直接関わるのだ。

 
 そこまでは理解できる。
 だが、やはりどうしてもわからないことがある。

 

 どうして、出麗の為に、五百年も先から自分が駆り出されるのか。

 

──

107名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 12:25:37 ID:FMpnlpkQ0
 
第三話
「剛の旋律」

 
──

 

 渚本介の言う通り、八尾井山はかなり近いようだった。
 百合町を抜けて、大きな丘を越えると、それはすぐに見えてきた。

 
(´メω・`)「見ろ、あれが聖地八尾井山だ」

(*^ω^)「おお…!」

 
 光世真宗の修行僧が、何十年も籠もるという山。
 決して高くはない山だが、近隣の山に比べると、横幅は圧倒的に大きい。
 その山頂付近には、下からでもはっきり見えるほどの立派な寺が建てられている。

 
(*^ω^)「こりゃ凄いですお!」

(´メω・`)「さあ、このまま登るぞ。光世真宗の連中に軍隊を用意させなくては」

(*^ω^)「はいですお」

108名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 12:43:51 ID:RFcPCrvQ0
 
 整備が施された山道を登り、光世真宗の本殿へと向かう。

 近くで見るとその威圧感は凄まじいものだった。
 観光客で賑わう現代の寺や神社とは雰囲気がまるで違う。一種の感動が、ブーンの心を震わせた。

 
(*^ω^)「ほんとすごいお…」

(´メω・`)「未来にも寺はあるんじゃないのか?」

(*^ω^)「ありますけど、なんつーか、こんなに神聖じゃないですお」

(´メω・`)「そうなのか」

 
 壮麗な雰囲気を持つ本殿に入ろうとすると、すかさず門番に止められた。
 渚本介が名乗ると、門番は目を丸くし、慌てた様子で境内へと走っていった。

 
(;^ω^)「…渚本介さん、なんかすっげー怖れられてましたけど」

(´メω・`)「ああ、いつものことさ」

109名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 12:55:39 ID:0wUGovVo0
あげ

110名も無きAAのようです:2014/04/02(水) 16:33:11 ID:27iBvjtAC
キテター

111名も無きAAのようです:2014/07/21(月) 09:53:11 ID:cvJjLW/YO
見てますよー!!

112名も無きAAのようです:2015/10/03(土) 11:36:26 ID:5Q.cU9LM0
もう来ないのかしら

113名も無きAAのようです:2018/08/25(土) 15:41:19 ID:y4OWW/RE0
 
 本殿に入る。
 案内人の後ろを歩き、長い廊下を歩く。
 外観を正面から見ただけでは分からなかったが、本殿はかなり奥行きのある建物らしく、
 光世真宗の最高指導者――座主(ざす)の居る部屋はその一番奥、ということだった。

 部屋の前に着くと、案内人は驚くほど深く頭を下げ、そそくさとその場を去った。

 
(´メω・`)「さあ、入るぞ」

(;^ω^)「はいですお…」

 何となく、緊張してしまう。
 宗教組織のリーダーだ。それも戦いのできる宗教組織。
 一体どんな怖い奴がそれを統べてるのか、気にはなるが関わりたくない。

 ブーンの緊張を知ってか知らずか、渚本介は何の躊躇いもなく扉を開いた。

 中に居たのは。

 
川 ゚ -゚)「――来たか。待っていたぞ、太田渚本介」

(;^ω^)(女!?)

 
 中に居たのは、30代半ばの女だった。座布団の上に綺麗に座っている。
 かなりの美人だが、眼光が鋭い。
 ブーンの予想外ではあったが、最高指揮者と呼ばれるほどの威厳は何となく感じる。

114名も無きAAのようです:2018/08/25(土) 15:42:54 ID:y4OWW/RE0
 
(´メω・`)「俺が来ることを知ってたのか」

川 ゚ -゚)「吹連が兵を集めてる。天野亡き今、奴らとまともに敵対しているのは、我々光世真宗くらいだ」

川 ゚ -゚)「私から二茶根留に連絡するつもりだったが、既にお前が動いてると私の使者から言伝があってな」

川 ゚ -゚)「お前から来るということは、奴らはやはり我々を攻める気なのだな――して、そこの南蛮人は?」

(;^ω^)「えっ、あっ、はい!」

 
 急に指され、驚くブーン。
 相棒だ。と渚本介が即答する。

(;^ω^)「そ、そうですお。ブーンと呼んでくださいお。へへえ」

(;´メω・`)(へへえってお前…)

川 ゚ー゚)「ブーンだな。そんなに緊張しなくていいぞ」

川 ゚ー゚)「私は光世真宗の座主、素直空流(くうる)だ。よろしくな」

(*;^ω^)「よ、よろしくですお」

 
 空流と名乗った女は、先程の威厳ある雰囲気から打って変わって、優しい笑顔をブーンに向けた。
 その笑顔の柔らかさに、またもブーンは驚いた。
 「怖い奴」というイメージは、この時点で完全に拭われた。

115名も無きAAのようです:2018/08/25(土) 15:44:10 ID:y4OWW/RE0
 
川 ゚ -゚)「それで、ブーン。お前のその荷物は何だ? 楽器のように見えるが」

 空流がブーンの荷物に目を向ける。
 ブーンは慌てて荷袋からギターを取り出した。


( ^ω^)「はい、楽器ですお。ギターといいますお」

川 ゚ -゚)「ぎたー? 随分いびつな楽器だな」

川 ゚ -゚)「そうだ、折角だし弾いてみてくれないか。これから難しい話が始まるからな。まずは心を癒そう」

(´メω・`)「はは。それもそうだ」

 
 渚本介がその場に座る。空流は純粋に興味があるといった目を向けている。
 不慣れなタイミングで演奏を振られたが、それでもブーンはギターを構えた。
 心が静まっていく。
 
 
( ^ω^)「わかりましたお。曲はどうしますかお?」

川 ゚ -゚)「そうだな…戦の前だ。私や兵の士気が上がるような音楽がいい」

116名も無きAAのようです:2018/08/25(土) 15:44:51 ID:y4OWW/RE0
 
( ^ω^)(士気って…)

 士気の上がる音楽。
 即ち、戦を盛り上げるような曲だ。
 そういう曲はいくつも知っている。だが、ブーンはそういった曲を弾くことにあまり気が進まなかった。

 この旅は、戦を止めるのが目的だ。だからブーンはこの時代に飛ばされた。
 吹連のように戦の準備を進める者もいれば、百合町の竜兵衛のように、心を削ってまで戦を止めようとする者もいる。

 その中で、士気を上げるというのは、ブーンのが選びたい選択肢ではないのだ。
 ギター弾く。たかがそれだけの話でもあるのだが。

 
 頭の中に何百とあるレパートリーから、ある曲をみつける。
 「それじゃあ行きますお」と呟くように言うと、ブーンは演奏を始めた。

 

( ^ω^)♪〜♪♪〜

 
川 ゚ -゚)「……」

(´メω・`)「……」

 
 ブーンが選んだのは、ゲーム『メタルギアソリッド』シリーズのメインテーマだった。
 曲名は『metal gear solid main theme』といったところか。
 本来はオーケストラで奏でる曲だが、ブーンはそれをソロギターで表現していく。

 知る人ぞ知る名作ゲームのその曲は、優しい旋律の中に、戦争に関する様々な感情を含んでいる。

117名も無きAAのようです:2018/08/25(土) 15:45:34 ID:y4OWW/RE0
 
 例えば、メタルギアシリーズといえば戦争やテロの中を進むアクションゲームだが、
 監督した小島秀夫は、反戦争・反核兵器という思想を持っている。

 戦は人が死ぬ。人が死ぬと、様々な感情が生まれる。
 様々な感情の中で生きていくことに必要なのは、戦ではない。

 
( ^ω^)♪〜♪♪〜

 名曲と呼ばれたその曲は、ブーンの左手が奏でるビブラートと共に、消え入るように終わった。

 

川 ゚ -゚)「……ありがとう。良い演奏だった。私が想像したものと少し違った雰囲気だったが」

 ブーンがぎくりとして空流を見つめると、また優しい笑顔が返ってきた。

川 ゚ー゚)「素晴らしい曲だ。お前の表現力も相まって、いろいろと響いてくるものがあった。」

(;^ω^)「あ、ありがとうございますお…なんかすいません…」

川 ゚ー゚)「渚本介、お前はいつもこの演奏を聴いているのか」

(´メω・`)「ああ。贅沢だろう?」

川 ゚ー゚)「はは、そうだな。お前が相棒にしたくなるのもわかるよ」

 
 さて、と空流が立ち上がり、部屋の奥にある戸棚から書物を取り出した。

 
川 ゚ -゚)「だいぶ頭が冴えたよ。さあ、作戦会議と行こうじゃないか」

118名も無きAAのようです:2018/08/25(土) 15:46:50 ID:y4OWW/RE0
 
 ――

 夜。
 止まっていけという空流の言葉に甘えて、ブーンと渚本介は一晩過ごすことに決めた。
 

 吹連が拠点とする具麗芭城は、この八尾井山からさほど遠くない。
 だからこそ、決まった作戦は、ブーンにとって合理的かつ単純かつ不安なものだった。

 
川 ゚ -゚)「直談判だ」

(;^ω^)「はあ!?」

(´メω・`)「俺もそれがいいと思う。奴には一度命を拾わせた。俺が直接行くとなお話を聞いてくれそうだ」

川 ゚ -゚)「ブーン、何をそんなに驚いてるんだ」

(;^ω^)「え、だって空流さん、なんかさっき戦争する気満々ぽかったから、なんかこう、奇襲とか…」

 
 しばしの沈黙。
 渚本介と空流が顔を見合わせ、少し吹き出した。
 

川 ゚ -゚)「あのなブーン、確かに勘違いされやすいが、我々は最初から武力で争う気はない」

(´メω・`)「交渉も戦だ。勝ち負けがある。結果次第では誰も死なないしな」

(;^ω^)「そうなんですかお…」

119名も無きAAのようです:2018/08/25(土) 15:50:41 ID:y4OWW/RE0
 
 肩すかしを喰らった。そんな気分になった。
 それなら、戦争なんかしなくても、自分がそんなこと気負わなくてもいいのか。
 
 
 
 
 
 
 
 ――後に、その安心が大きな間違いだったと、ブーンは知ることになる

 
 
  第三話 終

120名も無きAAのようです:2018/08/25(土) 17:44:41 ID:RJ1Fb3uc0
まじか乙

121名も無きAAのようです:2018/08/25(土) 20:01:26 ID:mO9QSbtA0
え、まじ?
いろいろ帰ってきてるな

122名も無きAAのようです:2018/08/26(日) 06:05:40 ID:MNeyZtZM0
いつのまに!おかえり待ってました!

123名も無きAAのようです:2018/08/26(日) 17:20:52 ID:L7waZog60
作者です。
まず、本当にごめんなさい。逃亡してました。言い訳はしません。僕のことは煮るなり焼くなり挿れるなりして下さい。

とりあえず物語は続けます。
すべて終了後に、改めて謝罪会見を開きます。

創作版ファイナルの存在は今日知りました。
せっかくなのでこのまま投下します。

124名も無きAAのようです:2018/08/26(日) 17:21:55 ID:L7waZog60
 
 朝。
 馬に跨った二人は、木の生い茂る森の中を進む。

 空流は八尾井山に残った。万が一の攻撃に備えて準備がしたいという。
 彼女の落ち着いた態度は、何となく渚本介に似てると思った。

 ふと、ブーンはあることを思い出した。
 

( ^ω^)「あれ? 渚本介さん」

(´メω・`)「どうした」

( ^ω^)「最初から戦じゃなくて、交渉でいくつもりだったんですおね?」

(´メω・`)「ああ」

( ^ω^)「それなら、どうして二茶根留城で兵の準備なんかさせたんですかお?」

 
 この旅に出る前のことを思い出す。
 渚本介は二茶根留城の巳留那と出麗に、万が一のため兵を集めるよう進言していた。

 
(´メω・`)「空流と同じだ。万が一の攻撃に備えてだな。それに…」

 
 渚本介の眼差しが、少し下がる。

 
(´メω・`)「──少々、思うところがあってな」

 

──

125名も無きAAのようです:2018/08/26(日) 17:23:40 ID:L7waZog60
 
 第四話
 「混沌の渦中」

 
 
 

──

 
 
 
 
 何度か休憩を取り、夕方。
 小高い丘の上に、具麗芭城が見えてきた。

 夜に備えて、既に明かりを灯し始めている。

 
(´メω・`)「さあ、乗り込むぞ」

(;^ω^)「え、正面から堂々と行くんですかお?」

(´メω・`)「当然だ。こそこそ入ってくるような奴と交渉に応じたいと思うか」

(;^ω^)「そりゃそうですけど…」
 

 馬を近くに待機させ、城門へ近づく。
 門番に偽名を名乗り、光世真宗の使いとだけ身分を明かした。

 最大限の警戒を受けた二人は、まず武器を預けるよう指示された。
 渚本介は愛刀の虎恍丸を手渡す。
 ブーンのギターは武器にならないと判断されたのか、没収されずに済んだ。

 前に案内人、後ろに武器を持った数人の兵士。
 挟まれた形で、二人は城内へ入っていく。

126名も無きAAのようです:2018/08/26(日) 17:25:34 ID:L7waZog60

 
 本丸に入り、幾つかの廊下や階段を進む。

 誰も何も話さない。
 横を歩く渚本介は涼しい顔をしているが、ブーンは緊張で汗が止まらなかった。

 案内人が大きな襖の前で立ち止まると、「お連れしました」と合図を送った。

 
(;^ω^)(この襖の向こうに、吹連久斗尚が…)

(´メω・`)「……」
 
 
 ブーンにとっては、日本史の授業でしか知らない男。戦争を始めようとしている男。
 渚本介にとっては、かつて天野が倒れた隙に二茶根留へ攻め込んだ、危険な男。

 
 襖の向こうから返事はない。
 案内人が襖に手を掛けた、その瞬間。

127名も無きAAのようです:2018/08/26(日) 17:28:58 ID:L7waZog60
 
 二人の体に、衝撃が走った。

 
(; ゚ω゚)「あっ!!」

(;´メω・`)「!!」

 
 罠だ。

 渚本介は襖の向こうに突き飛ばされ、バランスを崩しながらその部屋に入ってしまう。
 部屋の中には槍を構えた大勢の兵士。
 咄嗟に左腰に手を回すが、虎恍丸を門番に預けたことを思い出し、すぐに諦めた。

 一方、ブーンの方を振り返ると。
 数人の兵士達に抑えられ、引きずられるように廊下の奥へと連れ去れていくところだった。

 
(; ゚ω゚)「しょ、渚本介さん!!」

(;´メω・`)(…くそ、どういうことだ)

 
 門番には名前も身分もまともに明かしてない。
 なのに、突然襲われている。

 
 考えられる理由は二つ。
 光世真宗の使いは問答無用で捕まえ、必要なら殺し、宣戦布告にでも利用するつもりか。

 或いは──


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