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君の心に流れる星は

38 ◆azwd/t2EpE:2012/11/25(日) 23:33:49 ID:0PQlAttc0
 政治や経済、刑事事件などに絡まない物語は初めてだった。
 だが確かに、ニュースでも頻りに流星群のことを報道している。
 この一年では最も活発な活動が見られる流星群で、一時間あたり百個の流星が期待できるという。
 
 香椎も、今夜は研究所から空を見上げる予定だった。
 流星群は幼いころに見たきりで、大人になってからは初めてだ。
 できればツンと一緒に見たいが、それは叶わないだろう。
 
 ツンが書いた紙を見つめる。
 今日もツンはすんなりと、香椎の望んだとおりに話を書いてくれた。
 
 しかし、ツンは空を見たことがないのに、晴天のことをイメージできるのだろうか。
 そういった疑問はあったが、些細なことに過ぎない。
 
 流星群の極大は午前三時ごろらしい。
 そのため、今日はツンの部屋に来たのも深夜だった。
 
 早めに書かせることもできるが、時間を指定させずにシンプルな筋書きにしたほうが力を発揮しやすいという。
 故に深夜の仕事だが、もう日付が変わろうかという時間だった。
 この時間でも、ツンが瞼を擦ることはない。
 
 ツンの力はすぐに発揮され、恐らくもう雨は止み始めているだろう。
 流星群を期待している人々が歓喜に湧いているはずだ。
 
ξ゚⊿゚)ξ「香椎さん、また絵を描いてもいいですか?」
 
(*゚ー゚)「あ、うん。いいよ」
 
 ツンが立ち上がり、赤いスカートを揺らしながら壁に近づく。
 鉛筆を向けた先は、やはり内藤の絵だった。
 ここ最近、頻繁に加筆している。完成が近いのだろうか。
 
 その日は十分ほど線を加えたところで筆を止めた。
 ツンから鉛筆を返してもらって、リフトで部屋から出る。
 
 流星群という楽しみで、心が躍っていた。
 研究所からは出られないが、窓から外を見るだけでも今は新鮮だ。
 
 いったん部屋に戻り、紅茶のペットボトルとバタークッキーを持って再び部屋を出た。
 階段を駆け上がる。最上階にあるロビーに、この研究所としては最も大きな窓があるのだ。
 そこで朝まで夜空を観るつもりだった。
 
 しかし。


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