[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
( ^ω^)時計の国とラノベ祭のようです
1
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 18:51:20 ID:ksyKNxfAO
ラノベ祭参加作品
全部の絵を使うつもり
挿し絵的な使い方になるので、申し訳ないが希望タイトルや希望ジャンルは大体無視する形になりそう
一回使った絵をまた別のシーンで使ったりするかもしれない
長くなりそうので4つか5つくらいに分ける
79
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 20:55:03 ID:ksyKNxfAO
_
( ゚∀゚)「何か武器とか持たされてねえの? いざってときは射殺OK! みたいな」
(;'A`)「本職の奴らは持ってるだろうが、俺らは無理だ」
_
( ゚∀゚)「ふうん。銃とかレーザーってゲームでしか持ったことねえから、興味あったんだけどな」
まあ頑張れよ。
そう言って、ジョルジュはブースを離れていった。
('A`)「……あいつは本当にゲーム好きだな」
( ^ω^)「ちょっと物騒なゲームばっかだけど」
向こうでジョルジュがくしゃみをする。
2人は互いを見交わし、苦笑した。
# # #
80
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 20:57:24 ID:ksyKNxfAO
『ブーン、時計塔前の広場に移動して。私達が南通りに行くから。
広場の東通り近く、お願いね』
( ^ω^)「はいはいおー」
3時間ほど経った頃、ツンの指示が入った。
本部に連絡してから、通りを抜け、広場へ移動する。
広場は一層賑やかだ。
東と北の通りから、料理の香りが漂ってくる。
今年も屋台の人気投票をやるならば、例年通り、ニューソクが1位を持っていくだろう。
('A`)「最終日はここで流石一座の公演がある。
多分、来客はその日が一番多いだろうな」
( ^ω^)「流石一座! 去年は凄かったおねえ」
昨年、ヴィップで行われたラノベ祭の締めを飾った、流石一座の公演を思い出す。
舞台がヴィップということもあり、からくりをふんだんに利用した豪華な演目だった。
81
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 20:57:29 ID:vfswNC6A0
支援!
応援してる!
82
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 20:58:46 ID:AIUivWPc0
エンタメ感が楽しい
支援支援ー
83
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 20:59:06 ID:ksyKNxfAO
( ^ω^)「サーカスに売られた姉妹がスターにのし上がってく、ミュージカル仕立てのドラマで」
(*'A`)「団長役の兄者達の演技が小憎たらしいったらなかったな。
そんで、また、姉者さんの綺麗なこと綺麗なこと。姉者さんのファンなんだよ俺。
まあクー様には敵わんが」
(*^ω^)「僕は妹者ちゃん派だお。
あのときはツンとデレも脇役として出演したけど、反時計症の影響で2人共小さくて可愛くて!!
ありゃ堪んねえお本当ずっと小さければいいのに」
【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/83.jpg】
(*'A`)「流石一座の映像ディスク、去年の公演のが一番売れたそうだ」
(*^ω^)「そりゃ、あんだけ可愛い女の子が出てりゃ──」
(´・ω・`)「あれ、ブーン達じゃないか」
(*^ω^)「──お」
後ろから掛けられた声に振り向けば、そこには友人が立っていた。
時計塔の近くにある居酒屋、「呑み所 庶煩」の店主であるショボン。
ニューソクで修行しただけあって、人気は高い。
ブーンとドクオは咳払いをし、ショボンへ向き直った。
84
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:00:47 ID:AzUIyUiwO
おー、ここでこれが来るのか!
85
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:00:53 ID:ksyKNxfAO
( ^ω^)「屋台はどうしたんだお」
(´・ω・`)「盛況すぎてね。居酒屋に材料を取りに戻るところさ。
2人共、今年は警備やらされるんだって? 頑張ってね」
( ^ω^)「頑張るおー」
('A`)「正直、ほぼ機械頼りだけどな」
(´・ω・`)「まあヴィップの技術があればそうなるか。
そういや時計塔の飾り付けも手伝ったそうだね」
( ^ω^)「おかげで碌に寝てないお」
3人は同時に時計塔を見上げた。
花やリボン、針金細工に彩られた時計塔を見る度、
昨夜から朝方までの苦労が蘇る。
86
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:01:27 ID:ksyKNxfAO
(´・ω・`)「その甲斐あって、時計塔がますます立派になったじゃないか」
('A`)「そう言われりゃ救われるや」
( ^ω^)「ほんとに。
……ったく、ショボンと話してると酒が飲みたくなって仕方ないお」
(´・ω・`)「残念、今年は日中に屋台で酒を出すのは禁止されてるんだ。
ニューソクには20歳未満は飲酒禁止って法律があるからね。
だから、屋台で酒が出されるのは夜になってから日付が変わるまでだよ」
( ^ω^)「それは残念なことで。
ああ、早く夜にならないかお……」
その言葉が落ちた瞬間。
ぎぎ、と、重く、不快な音が響き渡った。
87
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:02:36 ID:ksyKNxfAO
音は止むことなく鳴り続け、反対に人々の喧噪は徐々に収まり、
皆、不安げな表情で互いに顔を見合わせている。
('A`)「──上だ」
ドクオが言うまでもなく、全ての人の目が上へ向かっていた。
その先は──時計塔。
( ^ω^)「は」
時計塔の針が、有り得ない速さで回っている。
秒針が回り、長針が回り、短針が動く。
3時を示していた時計は、4時を指し、5時を指し、6時を指し──
それに合わせて、日が落ちていく。
88
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:02:41 ID:UGQr2aY60
おもしろいぜええ
支援
89
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:05:12 ID:ksyKNxfAO
やがて時計は、9時を指して止まった。
秒針も長針も短針も、全てがぴったりと。
そして辺りは真っ暗になっていた。
突然のことに、誰も動けない。
たっぷりと間をあけてから、街灯やステージの電飾に明かりが灯される。
そこかしこに設置されているスピーカーから、運営のアナウンスが流れた。
『──皆様! 速やかに近くの建物へお入りください!
決して1人にならず、子供を優先させて──』
ぶつり、アナウンスが途切れる。
先程ついたばかりの明かりが次々に消えていき。
何もかもが完全に沈黙した。
ブーンが、停止した思考を無理矢理に動かし始める。
何かのイベントか? 聞いていない。これほどの規模なら、警備員にはあらかじめ通達される筈。
そもそも。
こんなこと、どの国の技術でも──無理だ。
90
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:08:13 ID:TQ7dum1oO
あらチーさんじゃなかったのか、誰だか知らんが楽しみにしてるから頑張ってください!
91
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:08:13 ID:ksyKNxfAO
ついに1人の声が上がる。
それは誰もが到達する答え。
「──魔法だ」
この場を恐慌状態に叩き落とすには、充分すぎるほどの。
「魔法だ! ──魔法使いが来たんだ!!」
一斉に人の波が動いた。
流れに巻き込まれ、ブーンの足が浮かぶ。
そのまま押し出されるようにして、彼は倒れた。
幾人もの足に蹴られて、踏まれて。
意識が、闇に塗り潰された。
# # #
92
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:08:14 ID:LY.4fvhg0
何だ何だどうなるんだ…がんばれ支援
93
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:08:47 ID:E42B9ikM0
全部の絵ってすげえな
応援しつつ支援する
94
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:09:21 ID:ksyKNxfAO
( ‐ω‐)
( ‐ω^)
( ‐ω‐)
( ^ω^)
ブーンは身を起こした。
全身が痛み、気を失う寸前に散々蹴られたのを思い出した。
依然として暗い。広場に人気は無し。
辺りの建物から、ざわざわと物音や話し声が聞こえる。
全員、避難は済んだようだ。
(;-A-)「うう……」
( ^ω^)「あらやだ」
ドクオが横にいた。
ブーンと同じ目に遭ったらしい。
とりあえずドクオを叩き起こし、状況を確認した。
95
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:10:26 ID:ksyKNxfAO
(;'A`)「いてて……おい、無線は使えるか?」
( ^ω^)「あー……無理だお」
(;'A`)「マジかよ。クー様が心配だな……」
( ^ω^)「多分、避難した人達と一緒にいると思うけど。
……その辺の店に入るかお、僕達も。
本当に魔法使いが出たなら危険かもしれんお」
('A`)「だな。ったく、魔法って何でもアリだな」
腰を上げる。
服を払うドクオに、ふと、ブーンは訊ねた。
( ^ω^)「ドクオ、知ってるかお?
『シタラバニアの夜』」
('A`)「いいや」
96
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:12:15 ID:ksyKNxfAO
( ^ω^)「ニューソクにある童謡だお。前にショボンから聞いたんだけど。
『シタラバニアの夜は恐い恐い。もしも人間が出歩けば、
おばけに見付かり食べられる』」
( ^ω^)「これが一番。二番以降は知らんお」
('A`)「ふうん。……おばけって何だ? 動物?」
( ^ω^)「死んだ人間の魂とか、怪物を総称して『おばけ』と呼ぶらしいお。
ニューソクではよく聞く話だとか何とか」
('A`)「死んだ人間? 生き物は死んだら魂も無くなって終わりだろ?
怪物だって想像上のもんだし。それが出てくるって、どういうことだ?」
( ^ω^)「『どういうことか』が分からないのがミソなんだお。
有り得ないものが実は居るかもしれない、って考えて怖がるのを楽しむんだろうお」
('A`)「なるほどね」
( ^ω^)「魔法のせいでここが夜になったんなら、これもシタラバニアの夜ってことで
おばけが出るかもしれないおね」
2人とも、存外余裕があった。
どうでもいい話をしながら、どの建物に入ろうか見渡して──
97
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:14:11 ID:ksyKNxfAO
川д川
突如、目の前に髪の長い女が現れる。
ブーンもドクオも、反応出来ずに固まった。
( ^ω^)('A`)
本当に突然だった。
先程まで見落としていたとか、そういうことでなく。
本当に突然、ぱっと現れた。
お互い、動かない。
睨み合い──女の髪が長すぎて、目が見えないのだが──と、
沈黙に耐え切れなくなったのはブーンだった。
( ^ω^)「……どちら様ですかお」
返答次第では保護する。
返答次第では逃げる。
川д川
女が首を傾げた。
下方へ髪が下がり、片目が露になる。
その目は、ブーンとドクオを交互に見て、それからブーンに落ち着いた。
98
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:14:57 ID:ksyKNxfAO
川д゚川「……私のこと、好き……?」
示し合わせるまでもなく、男2人は駆け出していた。
# # #
99
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:15:41 ID:ksyKNxfAO
(;^ω^) ゼーハーゼーハー
(;'A`) ゼヒューゼヒュー
約3分後。
2人は、東通りの端でへたり込んでいた。
先の女はいない。撒けただろうか。
(;^ω^)「さっきの何」
(;'A`)「俺が、し、知るかよ……っ、げほっ」
そうは言いつつ、互いに互いの思考は大体読めた。
魔法使い。
それしか考えられない。
(;^ω^)「……どうするお」
(;'A`)「さっきのに見付かんねえように、どっかの建物に入る。とか」
汗を拭う。
月明かりの中、無人の屋台が連なっている。
空っぽの容器が風で転がり、からからと音を立てた。
100
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:16:43 ID:ksyKNxfAO
──不意に、ブーンは振り返った。
( ^ω^)「声がするお」
(;'A`)「あ?」
( ^ω^)「女の子が泣く声」
押し殺したような泣き声が聞こえる。
ブーンはドクオの制止を無視し、そろそろと声の方向へ歩いていった。
声は、ある屋台の中からしていた。
ニューソクの名物の、とあるお菓子の屋台だった。
手で持つと硬いのに、口に入れた途端にとろりと蕩ける、クリーム味の飴。
( ^ω^)「……お嬢さん」
*( ;;)*「……あう」
大量に散らばった飴の傍に、彼女はいた。
幼い女の子。
ブーンを見るや逃げようとしたが、そっと涙を拭ってやると大人しくなった。
屈み込み、少女の顔を覗き込む。
101
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:17:57 ID:ksyKNxfAO
( ^ω^)「こんなところで、どうしたんだお」
*(。‘‘)*「……お母さんと逸れて、いっぱい人が走って、ヘリカル転んじゃって、それで、怖くて、」
( ^ω^)「ヘリカルちゃんっていうのかお?
ヘリカルちゃん、どこの国の子だお」
*(。‘‘)*「ニューソク……」
( ^ω^)「何歳だお?」
*(。‘‘)*「8歳」
(*^ω^)「おっふ……それはそれは……」
(;'A`)「お、おい、そいつ、さっきの奴の仲間じゃねえだろうな」
( ^ω^)「ドクオ。何てこと言うんだお。ヘリカルちゃんに失礼だお」
(;'A`)「でもよお」
( ^ω^)「それに、たとえヘリカルちゃんが魔法使いでも、
こんなに可愛いんだったら僕はもうどうなってもいいお」
(;'A`)「わーい! 1人でくたばれ馬鹿!!」
102
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:19:54 ID:ksyKNxfAO
さて、さっさと逃げなかったのが悪いのか、ドクオが大きな声を出したのが悪いのか。
川д川「みいつけたあ……」
( ^ω^)('A`)*(‘‘)*
先程の女が、屋台の上からブーン達を見下ろしてきた。
2度目の遭遇ともなれば、対処も早い。
ブーンはヘリカルを小脇に抱え、ドクオはブーンの襟を引っ張って立ち上がらせ。
そうして、同時に走り出したのであった。
【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/9.jpg】
(;^ω^)「あーもう嫌んなっちゃう!!」
(;'A`)「うおっ、追っかけてきてんぞ!!」
*(;‘‘)*「あ、あの、あれ誰ですか」
「こっちが訊きたい!」。
ブーンとドクオの声が重なった。
# # #
103
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:22:48 ID:ksyKNxfAO
面倒なことになった。
ある店舗の中、ぎゅうぎゅうに詰められた人、人、人。
ニュッは何度目ともつかない溜め息を吐き出した。
(;^ν^)(シナー達はどこ行ったんだよ)
南通りで反時計症の人間がいないか探していた最中に
いきなり暗くなって、アナウンスが流れて、アナウンスが切れて、
魔法使いがどうたらこうたらと騒ぎになって、近くにあった店にみんな逃げ込んで。
今に至る。
見た限り、ニュッに誘拐の話を持ち掛けた「共犯者」達はここにいない。
これからどうしたらいいのか分からなかった。
困っているのはニュッだけではない。
明かりがつかない上に、ありとあらゆる連絡手段が途絶えているため
誰も身動きがとれないでいた。
この状況も長くは持つまい。
何が何だか分からぬまま、みんながみんな、じっとしていられるわけがないのだ。
「──おい! 外はどうなってるんだ!」
そら、来た。
104
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:24:22 ID:ksyKNxfAO
「いつまでここに居ればいいんだ?」
「私が分かるわけないじゃない!」
「一旦、外の様子を見に行くしかないんじゃないか」
ζ(゚ー゚;ζ「あの! 落ち着いてください!!」
そこへ、少女の一喝が響いた。
しんと静まり返る。
ζ(゚ー゚;ζ「もう少し時間が経てば、国王直属の警備部隊が動く筈です。
だから、どうか、しばしの辛抱を」
月光の差す窓辺に、少女が2人立っていた。
黒髪の少女と癖毛の少女。
癖毛の方は、セーラー服を身につけていた。ニューソクの人間だろうか。
105
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:26:21 ID:ksyKNxfAO
川 ゚ -゚)「それに、いざとなれば私達が外の様子を見てくる。
君達に勝手に動かれる方が危険だし、迷惑だ」
ζ(゚、゚;ζ「あ、その言い方は良くない」
納得した者はいないだろう。
だが、文句を言う者もいなかった。
不安に震える人間よりも、きっぱりと指示を出せる人間の方がよっぽど強い。
ニュッは壁に凭れ掛かり、ぼんやりと彼女達を眺めた。
どちらも15歳くらい。
癖毛の少女が、黒髪の少女に顔を向けた。
ζ(゚、゚*ζ「……ツンちゃん、どこ行ったかな」
川 ゚ -゚)「あいつのことだから、逃げ遅れた人間がいないかどうか確認してるかもな」
ζ(-、-;ζ「うう、姉として誇らしいやら心配やら……」
# # #
106
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:30:06 ID:ksyKNxfAO
ξ;゚⊿゚)ξ「──要するに、あれが何なのか分かんないわけね。
魔法使い説が一番有力だけど」
(;^ω^)「うん! ツンちゃん助けて!」
(;'A`)「ひいっ、ひいっ、ひいっ」
逃走者が増えた。
というのも先程、角を曲がったところでツンと鉢合わせたのである。
子供を抱えて走るブーン、既に体力の限界を迎えて死にそうなドクオ、追ってくる女──とくれば、
ツンも、どうするべきかは分かる。
そんなわけで、仲良く3人(とヘリカル)で並んで逃げることになったのであった。
時計塔の件から今に至るまで、逃げながら一通り説明はした。
107
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:31:32 ID:ksyKNxfAO
川д川「待ってよう、ねえ、ねえ、ねえ……」
*(;‘‘)*「まだ追ってきてます……」
ξ;゚⊿゚)ξ「言われなくても分かってるっつうの!」
( ^ω^)+「ツン! せっかくヘリカルちゃんが教えてくれたのに、何て言い草だお」キリッ
ξ;゚⊿゚)ξ「黙れ!」
ヘリカルを抱えている分、ブーンは全力で走れない。
ツンは頼りになるので、何か解決策を思いついてくれるかもしれない。
ドクオはもう足が覚束ない。
結論は一つ。
( ^ω^)「ドクオ!」
(;'A`)「ああ!?」
( ^ω^)「短い付き合いだったけど、さようなら!」
(;'A`)「は?」
ブーンは、ドクオの足を蹴飛ばした。
108
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:33:54 ID:ksyKNxfAO
(;゚A゚)「はぁあああああああ!!?」
ドクオが転ぶ。
慌てた様子で上半身を起こしたが、あの疲れようでは立ち上がれないだろう。
ξ;゚⊿゚)ξ「あんた何してんの!?」
( ^ω^)「いやドクオが『囮になりたい』って言うから。僕は反対したんだけど」
*(;‘‘)*「言ってないですよ!?」
( ^ω^)「ありがとうドクオ! もしも本当に、おばけという存在がいるのなら
是非ともおばけになって僕らに再び顔を見せておくれ!」
(;゚A゚)「ふざけんなぁあああ!!!!!」
109
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:34:04 ID:T7OndOeM0
ちょwwwひでぇwww
110
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:35:33 ID:ksyKNxfAO
ドクオが遠くなる。
ブーンは一仕事終えたときの爽やかな笑顔で走りながら、
友人の最期を見届けようとした。
が。
( ^ω^)「お?」
*(;‘‘)*「あ」
(;゚A゚)「うわあああああ来るなぁああああああああああ……ああ……あ?」
ヒュバッ
(;'A`) ≡≡≡川 д川
──女は、ドクオを素通りした。
そのままブーン達を追ってくる。
完全に油断して速度を緩めていたブーンは、舌打ちしてから前へ向き直った。
111
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:37:07 ID:AzUIyUiwO
ドクオwww
112
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:38:09 ID:ksyKNxfAO
(;^ω^)「ううむ、ドクオの相手はしたくないのかお。それとも僕を御所望か」
ξ゚⊿゚)ξ「……『おばけ』……」
(;^ω^)「ツンちゃん、ぼうっとしてたら捕まるお! ほらスピードアップ!」
ξ゚⊿゚)ξ「……ねえ」
(;^ω^)「何だお?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたじゃなくて。ええと、ヘリカルちゃん。
あなた、ニューソクの子なんですっけ?」
*(;‘‘)*「は、はいっ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ『シタラバニアの夜』って知ってる? おばけの歌」
*(;‘‘)*「……知ってます」
ξ゚⊿゚)ξ「私ね、一番までしか知らないの。ヘリカルちゃん、二番は分かるかしら」
*(;‘‘)*「分かります……お母さんがよく歌ってたから」
ξ゚⊿゚)ξ「教えてちょうだい」
こんなときに何を言っているのだ。
ブーンは横目でツンを睨んだが、ツンは至って真剣な顔をしている。
113
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:41:14 ID:ksyKNxfAO
*(;‘‘)*「えっと……『シタラバニアの夜は恐い恐い。もしも人間が出歩けば、
おばけに見付かり食べられる』……」
*(;‘‘)*「『シタラバニアの夜は恐い恐い。生き物以外の世界では、
人間なんて食べられる』」
(*^ω^)「いよっ、天使の歌声! アンコール!」
*(;‘‘)*「ええっ」
ブーンを無視し、ツンは眉を顰めて考え込む。
思考すること5秒。
次にツンがブーンを見たときには、彼女の表情は自信に溢れていた。
ξ゚⊿゚)ξ「あれは魔法使いじゃないわ。
魔法使いなら、こんな風に追ってこなくたって、私達ごとき簡単に捕まえられると思うし」
(;^ω^)「じゃあ何なんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「おばけかしらね」
おばけ、とツンの言葉を繰り返して、ブーンの腕の中でヘリカルが青ざめた。
ニューソクには、子供の躾として「いい子にしないとおばけに食べられる」という決まり文句があるのだと、
いつだったかショボンが話していた。
ソウサクで言うところの「いい子にしないと人攫いが来る」に似たようなものだ。
114
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:42:44 ID:ksyKNxfAO
*(;‘‘)*「へ、ヘリカル、食べられちゃうですか……?」
( ^ω^)+「君は僕が守る」
*(。‘‘)*「ヘリカル、お母さんと手、ちゃんと繋いでなかったから……
悪い子だから、食べられちゃうですか……?」
ついにヘリカルにまで無視されてきたが、変態はめげない。気にしない。
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫。何とかなるかもしれないわ」
*(。‘‘)*「え……」
ξ゚⊿゚)ξ「『生き物以外の世界』。
つまり夜はおばけの世界ってわけだから、
さっさと夜を終わらせちゃいましょう」
(;^ω^)「どうやって」
ξ゚⊿゚)ξ「……あんたの話が本当なら、
時計塔の針が進んで夜になって、そのまま9時に固定されたのよね」
ξ゚ー゚)ξ「なら簡単よ」
路地に入る。
ツンはブーンを立ち止まらせると、跳ねるようにブーンの肩に乗り、
そこから左の屋根に飛び移った。
115
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:43:30 ID:AIUivWPc0
ヘリカルくっそかわいいな
116
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:43:55 ID:ksyKNxfAO
ξ゚ー゚)ξ「時計を進めればいいんだわ」
(;^ω^)「ツンさん? どこ行く気だお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオを時計塔に連れてく。
……理由は分からないけど、おばけの目的はあんたみたいだから、
せいぜい夜明けまで頑張ってね」
軽やかな身のこなしで、ツンがブーンの視界から消える。
ブーンはしばらく呆然としていたが、女の足音が近付いてきたので
泣く泣く足を動かした。
# # #
117
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:46:18 ID:ksyKNxfAO
( <●><●>)「駄目です。
時計塔の時計機械室は、ごく一部の者しか入れないことになっています」
時計塔内部。
ドクオとツンは、ソウサクの警備指揮責任者、ワカッテマスと対峙していた。
対峙とは言っても、電気が通っていない今、この暗闇では相手の顔も見えないが。
ξ;゚⊿゚)ξ「別に壊すわけじゃないんだし、針を動かすくらい構わないでしょう!?」
( <●><●>)「しかし……決まりは決まりですから。針を動かすなら、専門家を呼ぶ必要があります」
ξ;゚⊿゚)ξ「その専門家はどこにいるんですか!」
( <●><●>)「……恐らく、王家の屋敷に。
今は警備部隊が国王様を屋敷にお連れしているところですから、
彼らを追いかけて、話をつければ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「時間が掛かりすぎるわ! 急がないといけないの!」
(;'A`)(……ああ、面倒くせえ)
ドクオは、げんなりしながら頭を掻いた。
いきなり時計塔に引っ張ってこられて、ツンに「時計を動かせ」と言われたかと思えば
ワカッテマスに「駄目だ」と言われて。
どうすればいいのだ。
118
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:47:54 ID:vwaIg/TI0
支援支援!
119
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:48:36 ID:ksyKNxfAO
(,,゚Д゚)「なあ」
('A`)「ん?」
すぐ後ろから、ギコの囁きかける声が聞こえた。
暗くて見えもしないが、そちらを振り向く。
(,,゚Д゚)「正直、外で何が起きてたのか、よく分かんねえんだけどよ。
時計をどうにかすればいいのか?」
('A`)「……俺もよく分かんねえよ。ただ、可能性に賭けたいってだけだろうさ」
(,,゚Д゚)「時計を動かせれば何とかなる『可能性』があるわけだな。
あんた時計職人か?」
('A`)「いや。機械いじるのが少し得意なだけだ」
小声で会話を交わす。
そのとき、ギコとは反対の方向からドクオの腕に何かが当たった。
('A`)「?」
(‘_L’)「携帯用の工具箱だ。腰に付けられる」
フィレンクトの声。
押し付けられるがままに、ドクオは工具箱を受け取った。
120
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:49:54 ID:ksyKNxfAO
(;'A`)「工具箱?」
(‘_L’)「大きな声は出さずに。
……なるべく気配を消して、梯子を登るんだ」
(;'A`)「何を……まさか機械室まで行けってか!?」
(‘_L’)「ツンさんは『急いでいる』と言う割に、さっきから進まない話をずっと続けている。
恐らく、彼の意識を自分にだけ向けたいのだろう」
(;'A`)「……俺が機械室に行くのを邪魔されないために?」
(‘_L’)「多分。少なくとも私ならそうする」
(,,゚Д゚)「この暗さなら、音にさえ気を付ければ見付かることはないしな」
(;'A`)「……」
121
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:51:01 ID:AV3YAVpA0
支援!
122
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:52:05 ID:ksyKNxfAO
(,,゚Д゚)「行ってこい。専門家だの何だの、そんなもん呼ぶのに時間が掛かるぐらいなら
この場にいる『出来そうな奴』に任せた方が、よっぽどいい」
(;'A`)「なかなか思い切りがいいな」
(,,゚Д゚)「ヴィップ人の気質なもんでな」
(;'A`)「ヴィップ人なら俺より機械に詳しいだろ。あんたらが行ったらどうだ」
(‘_L’)「私達はあくまで警備として機械を扱うことが多いだけで、技術屋ではない。
君に頼るしかないんだ」
断れる雰囲気ではない。
ツンとワカッテマスの怒鳴り合いを聞きながら、
大体の位置を把握しているというフィレンクトにより、梯子のもとまで案内された。
(‘_L’)「頑張ってくれ。途中で落ちないように」
(;'A`)「言うなよ」
(‘_L’)「10個目の足場まで来たら、今度は左に階段がある。
そこから階段を上り終えたところの頭上に、時計機械室に通じるハッチがあった筈だ。
時計塔に入る際に説明を受けた」
工具箱を腰に付けて嘆息すると、ドクオは梯子を掴んだ。
.
123
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:54:24 ID:ksyKNxfAO
そうして数分。
どれほど登ったか分からない。ツン達の声は、だいぶ遠くなった。
手が痺れる。
恐怖で足が震える。
(;'A`)(あーあ、引き受けなきゃ良かった)
どうして自分が任されねばならないのだろう。
これで上手く行かなかったら、どうなる。
反時計症を患う前の記憶が蘇る。
あのときも、たくさん期待された。
期待されて、反時計症を発症して、終わった。
124
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:55:06 ID:ksyKNxfAO
('A`)(くそ……)
いっそ手を離して落ちてしまおうか。
全ての責任を放棄して。
でも。
('A`)(……そしたら、もう、クー様に会えなくなるよなあ)
クールに会えなくなるし。
流石一座の公演を見られなくなるし。
自分を囮にしたブーンをぶん殴れなくなる。
嫌だ。
ドクオの手に力が籠る。
体を持ち上げ、一段、また一段。
梯子が途切れ、足場に着いた。
これで10個目。次は左の階段へ。
.
125
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 21:58:59 ID:ksyKNxfAO
それから、さらに数分。
数えるのも億劫になるなるほどの階段を上り終えた。
フィレンクトに言われた通り、頭上に取っ手の感触。
押し上げてみると、すんなり開いた。
('A`)(……鍵は掛けてないのか?)
梯子を登る直前に、フィレンクトからは「鍵があれば壊してしまえ」と言われた。
ドクオもそれを覚悟していたのに。
しかし考えても仕方ない。工具箱を確認し、時計機械室に入る。
上部の小窓から月明かりが入り込んでいるのか、
物の輪郭がうっすらと分かる程度の視覚情報は得られた。
目を凝らしつつ、手探りで部品を確かめる。
扱ったことのない大きな歯車から、小さな歯車まで。
数はそこまで多くない。
126
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:01:16 ID:ksyKNxfAO
('A`)(この大きさで……この位置なら)
推測でしかないが、全体図を脳裏に描く。
どの部品がどの働きをするかを脳内の設計図から探っていく。
合間合間があやふやで、大変心許なくはあるが。
('A`)「……お、あった」
部品を辿っていき、針を回すための装置を見付け出す。
この時計塔の時間がずれることはそうそう無いので、滅多に使われないだろう。
このハンドルを回すだけで済めば、簡単な話なのだけれど。
(;'A`)「ふっ……! く……!」
案の定動かない。
ぎちぎちと僅かに揺れる感触はあるのだが、しっかりとした手応えが来ない。
油を差してみようか。しかし油が無いのだ。
どうしたものか──
127
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:02:49 ID:ksyKNxfAO
(;'A`)「……ん?」
顔を上げる。
音に気付いた。
もう一度、装置をいじってみる。
ぐしゃり。
何かが擦れるような音。
近い。
音を確かめながら方向を探る。
すると、真ん中の歯車と歯車の間に、機械とは違う感触があった。
(;'A`)(歯車が何か噛んでやがる)
「それ」の端っこを掴むと、ドクオの手の中で、くしゃくしゃと形を変えた。
引っ張る。しっかり巻き込まれているようで、抜き取れない。
さらに力を込めると、びり、と一部が裂けるような音がした。
128
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:04:39 ID:ksyKNxfAO
(;'A`)(丸めた紙?)
腰の箱からドライバーを取り出し、隙間に突っ込んで
紙をぐいぐいと押していく。
工具の先端で圧迫すれば、その分、紙はへこむ。
じっくりと、紙の形を変えながら、徐々にずらしていく。
やがて──
(;'A`)「抜けた!!」
紙が、歯車の間から抜け落ちた。
129
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:05:23 ID:ksyKNxfAO
ぎりぎり、あちこちの歯車から音が鳴る。
動き出した。
急いで装置のもとに戻った。
ハンドルを捻れば、ぐるりと回る。
針が動かせる。
(;'∀`)「……はは」
何だか、清々しい気分だ。
# # #
130
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:07:39 ID:ksyKNxfAO
広場に出たところで躓いた。
ヘリカルを庇うように倒れたおかげで、彼女に怪我を負わせることはなかった。
*(;‘‘)*「だっ、大丈夫ですか!?」
(;^ω^)「だい、じょうぶ、……じゃ、ないおね……」
上半身は起こせたが、立ち上がれない。
隠れたり走ったり、ブーンも、もう限界だった。
ひたひた、近付く足音。
こちらが動けないのを知って、敢えてゆっくり歩いているような嫌らしさ。
川д川
ほんの指一本分の距離をあけて、女が立ち止まる。
ブーンはヘリカルを背に隠し、女を睨みつけた。
ヘリカルに「逃げろ」と囁いたが、残念なことに、腰を抜かしてしまったようだ。
131
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:09:10 ID:ksyKNxfAO
(;^ω^)「……あのう、お姉さん。
僕、別に悪いことしてませんお。小さい女の子に手を出したこともないし。
僕ってこれでも、いい子な方だし。だから、あの、……見逃してください!」
*(;‘‘)*「さ、さっき、お友達を蹴って……」
(;^ω^)「ヘリカルちゃん、ちょっと静かにしよう!!」
川д川
川д川「……私のこと、好き?」
(;^ω^)「……は、い?」
女がしゃがみ込む。
気のせいだろうか。青白い肌が、ほんのりと赤く色付いているように感じる。
女の手が、ブーンの頬を優しくなぞった。
132
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:10:43 ID:ksyKNxfAO
川*д川「……好き……?」
悪意は感じられなかった。
寧ろ、彼女の指先からは、恋する乙女のような純粋さと恥じらいが伝わってきた。
ブーンには異性からモテた経験など無いが、かといって、その方面に鈍いわけでもない。
そんな仕草で「自分が好きか」と訊ねるのは、もはや告白にも似ていて。
ここで、お前は何を言っているのだと問うほど不粋なこともない。
ひとまずは彼女のために答えるべきだ。
そう考え、ブーンは口を開いた。
( ^ω^)「いや。僕、10歳以下の女の子にしか興味ないんで」
空気が読めないと言うなかれ。
彼はただ、自分自身に正直なだけなのだ。
133
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:12:05 ID:ksyKNxfAO
川д川
( ^ω^)
川д川
( ^ω^)「ガチで」
川д川
( ^ω^)
いちおう駄目押しもしておく。
ブーンの顔は誇らしげだった。
134
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:12:40 ID:vwaIg/TI0
このロリコンブーンぶれないな
135
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:14:30 ID:ksyKNxfAO
川д川「ころす」
ぽつりと落ちた呟きは、不穏すぎるくらい不穏な。
ブーンはようやく危機を悟った。
しまった、と思ったときにはもう遅い。
川#゚д川「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅうううああああああああああ!!!!!!!!!!」
(;^ω^)「うべっ」
女がブーンに飛び掛かる。
その勢いのままブーンは倒れ、傍らでヘリカルが悲鳴をあげた。
馬乗りになった女に、首を絞められる。
ブーンが本気で抵抗しても彼女の手は一向に外れない。
ヘリカルは、かたかたと震えながら叫ぶばかりだ。
這ってでも逃げようという発想が出てこないほどパニックに陥っているらしい。
136
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:15:43 ID:ksyKNxfAO
このままブーンが殺されたら、次はヘリカルが狙われるだろうか。
それは困る。
しかし対策も浮かばない。
目の前がちかちかする。
苦しい。
ξ゚⊿゚)ξ『せいぜい夜明けまで頑張ってね』
ツンの顔と言葉が脳裏に浮かんだ。
ずいぶん簡単に言ってくれたものだ。
死んだら、おばけになってツンの前に出て、泣かせてやる。
137
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:16:24 ID:ksyKNxfAO
ふっ、と。
呼吸が楽になった。
138
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:16:34 ID:iYl4p9to0
全部の絵が使われると聞いて
139
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:17:55 ID:ksyKNxfAO
(;^ω^)「おっ……」
川#゚д川「──!?」
跨がる女の重みも消える。
首に伸ばされた腕を払うと、今度は振りほどけた。
そのとき、自分の手が小さくなっているのを見た。
(;^ω^)「あっ」
*(;‘‘)*「え……」
服が一気に大きくなったような感覚。
唖然としている女の下から這い出る。
落ちてしまいそうなシャツを手で押さえつつ、転がるようにヘリカルの隣へ逃げた。
──いつの間にか、子供になっていた。
それも、ヘリカルより幼いくらいの。
140
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:19:41 ID:ksyKNxfAO
時計塔へ顔を向ける。
進んだ針は、12時を越えていた。
(;^ω^)「……!!」
体の疲労が消えている。
ブーンはヘリカルの手を引いて立ち上がらせると、
ずるずるとシャツを引きずりながら、女との距離をとった。
我に返ったのか、女がブーン達を睨む。。
彼女が今すぐにでも3歩進んで手を伸ばせば、捕まってしまう。
141
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:20:47 ID:ksyKNxfAO
1時。
2時。
3時。時計の針は、どんどん回る。
4時。空が白み始める。
5時。朝日が顔を覗かせた。
川;д川「──ひっ」
女の喉から、引き攣ったような声が漏れる。
ブーンに向けた手を引っ込め、自身の顔を覆って。
川;д川「ああっ、眩しいっ、眩しい……──!!」
──陽光に照らされた瞬間、女は消えた。
.
142
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:24:17 ID:ksyKNxfAO
広場が完全に明るくなり、時計の針はいつも通りの速さに戻る。
力が抜けた。その場に座り込む。
広場を囲む建物の窓から、避難していた人々が顔を出す。
その中にいたショボンが、ブーンに手を振っていた。
ぶかぶかの袖で振り返す。
*(;‘‘)*「お兄さん、ちっちゃくなっちゃった……」
(;^ω^)「……日付が変わったからね」
投げやりに答え、ブーンは、肺一杯に吸い込んだ空気を吐き出した。
もう何が何だか。
143
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:25:07 ID:ksyKNxfAO
ラノベ祭。残すところ、あと6日。
とてもじゃないが、無事に終わってくれそうにない。
# # #
144
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:27:44 ID:ksyKNxfAO
ζ(゚、゚;ζ「夜を越えて、日付が変わった……ってことでいいのかな?」
川 ゚ -゚)「多分な」
──例の少女2人が、お互いの顔を見交わしている。
いや。もう、少女と呼ぶには相応しくない。
周りの人間は外が明るくなったことに気を取られているが、
ニュッだけはあの2人から目を離さずにいた。
今し方。明るくなる直前、彼女達は急に成長した。
黒髪の方が、ニュッの目測、プラス5歳前後。もう片方がプラス10歳ほど。
癖毛の方は、適齢を越えた自身のセーラー服姿に少々の羞恥心を抱いているようだった。
【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/56.jpg】
ζ(゚ー゚;ζ「あはは、ちょっとキツい……。
……あっ、髪の紐切れたっ。やっぱ伸びる素材の方が良かったかな……。
もうっ、こんなことなら普通の服にしとくんだったよ」
川 ゚ -゚)「大丈夫だ、20代半ばの制服姿もなかなかそそるものがある」
ζ(゚、゚;ζ「何が大丈夫なの? 何のフォローなの?」
145
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:29:35 ID:ksyKNxfAO
( ^ν^)(──……反時計症)
反時計症は、日付の変更と共に年齢が変わる。
あの女2人。反時計症の人間だ。
周囲のざわめきが鬱陶しい。
こっそりと2人に近付き、耳を澄ませる。
ζ(゚、゚;ζ「あっ、皆さん! まだ外に出ないでください!
今、私達が確認します!」
川 ゚ -゚)「どれどれ」
黒髪の女が、ピンのようなものを口元まで持ち上げた。
警備員はあれで連絡を取り合う。祭が始まってすぐの頃に共犯者が仕入れた情報。
川 ゚ -゚)「……お、通じるようになったな。やあツン、私だ。クール。
無事か? そうか」
クール。黒髪の名前。
川 ゚ -゚)「今は南通りの文具店の中だ。デレも一緒にいる。誰も怪我はしてない」
デレ。癖毛の名前。
146
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:30:56 ID:ksyKNxfAO
『クー様!!』
川 ゚ -゚)「うお」
黒髪──クールが顔を顰め、右耳からイヤホンらしきものを引っこ抜いた。
そこから、微かに男の声。
『クー様! 俺! 俺が頑張った! 褒めてください!!』
『作戦考えたのは私よ!?』
『実行したのは俺だろうが!!』
『だからってあんた1人の手柄にされたくないわ! そもそも──』
ζ(゚ー゚;ζ「……元気そうで何より」
川 ゚ -゚)「うん、まあ、後で聞くから落ち着け。
とりあえず、私達はどうすればいいだろうか」
# # #
147
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:31:59 ID:ksyKNxfAO
今日も誰も来てくれませんでした。
いくつのお菓子が無駄になったでしょう。
何杯のお茶が無駄になったでしょう。
('、`*川「……みんな、忙しいのかなあ」
近々、お祭りがあると聞きました。
その準備に忙しいのかもしれません。
きっと明日は来てくれる。
きっと誰かが来てくれる。
魔法使いはそう信じて、今夜も眠りました。
# # #
148
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:34:47 ID:ksyKNxfAO
今回はここまで
書き溜め終わらなかったから、せめてこの一話だけでも祭参加ってことにしたくて急いで投下した
なるべく全部書き溜めてから投下したいので、次回は来月になる。ごめん5歳
プロットとか何それおいしいの状態の行き当たりばったりだから、後で矛盾とか出たら書き直すかもしれない
たぶん強行するけど
というわけで読んでいただきありがとうございました!
イラスト使わせていただきありがとうございました!
総合で国名の案くれた方ありがとうございました!
そしてNo.125の絵で左をζ(゚ー゚*ζにしていいって書いてあったんでお言葉に甘えました
149
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:37:21 ID:ksyKNxfAO
>>148
ごめん5歳って何だよ……
正しくは「ごめんなさい」でしたすいません。携帯が悪い
今回使った絵
No.143
No.46
No.68
No.4
No.125
No.111
No.39
No.168
No.27
No.108
No.116
No.83
No.9
No.56
ありがとうございましたー
150
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:37:36 ID:LY.4fvhg0
やっぱ総合の人か!
超乙、続き楽しみにして待ってる
しかし全部の絵をきちんとまとめるの大変だろうになあ…
がんばって欲しいが、身体壊さんようにな
151
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:39:35 ID:AV3YAVpA0
乙乙乙
壮大になりそうだな!楽しみだ
152
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:42:17 ID:vwaIg/TI0
話に引き込まれる…続き気になる…
全部の絵を使うと聞いてどうなるのかと思ったけどこれは良作の予感
超応援してる乙乙!
153
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 22:42:22 ID:UGQr2aY60
今気づいたけどこれ携帯かよすげぇ
乙乙!設定面白い期待してる!!
154
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 23:00:21 ID:iYl4p9to0
乙!続きが楽しみ!
あと、しょっぱなに絵が使われててびっくりしたw
ありがとうございます
155
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 23:00:45 ID:E42B9ikM0
誰も使ってくれないだろうなと半ば諦めかけてたから描いた絵使ってもらえるのは嬉しいわ・・・全部とかすごいな
全身全霊かけて乙
156
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 23:04:35 ID:8A.MhRGk0
ガラクタの絵使ってくれてありがとう!
続きが楽しみだ。乙
157
:
名も無きAAのようです
:2012/11/21(水) 23:38:39 ID:iMZ7RPcM0
乙〜
これは是非にがんばってほしい
158
:
名も無きAAのようです
:2012/11/22(木) 00:52:20 ID:E1Z8J8N2O
来月まで待ってます!乙!
159
:
名も無きAAのようです
:2012/11/22(木) 02:17:40 ID:3lF0DzzM0
乙
160
:
名も無きAAのようです
:2012/11/22(木) 03:03:13 ID:zR7Qmg7.0
使われるまで全裸待機してます
お疲れさまでした
161
:
名も無きAAのようです
:2012/11/22(木) 09:43:57 ID:UhDZp8Dw0
乙!
162
:
名も無きAAのようです
:2012/11/22(木) 10:17:21 ID:6JsZb7.Q0
ぜんぶとかすごいな!
貞子の絵を描いたんだけどコミカルに自然に使ってくれて嬉しい
頑張ってください
お疲れ様!
163
:
名も無きAAのようです
:2012/11/22(木) 23:46:45 ID:X4rMOCFk0
おもしろいじゃないか!続きまている
164
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 03:20:05 ID:ToTp39p60
アメリカンな色のお菓子食べてみたいっす
どう絵消化をしていくのか楽しみです
ttp://imepic.jp/20121123/111750
165
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 13:09:26 ID:3HZ3/uC.O
>>164
うおお、ありがとうございます!!
色々と芸が細かい!
お菓子が毒々しくて綺麗だ
166
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:56:05 ID:MY8E72FkO
誰か特定した(ほとんどの人がわかってると思うが)
ちょっと一時期離れてた期間があったので
こんなにはまって書いてくれるなんて
はい、俺ーの答え合わせ楽しみにしてるよ
167
:
◆c9sFVHJv2E
:2012/11/26(月) 00:55:15 ID:Tri.pNioO
祭期間終わったからひっそりひっそりはい俺ー
もしこのレスに気付いて興味を持ってくれた方がいらっしゃいましたら、是非とも酉で検索してみて、
そのままの勢いで作品読んじゃったりして、余力があれば素知らぬ顔で感想スレなどに行ってステマという名のオススメしてみてください
すると不思議なことに、クリスマスまでに恋人が出来ます。出来ない人もいます
来月投下と言いつつ、遅筆だししばらく来れないので下手すりゃ再来月投下になるかもしれない
話の流れは思いついたしかならず完結させるので見捨てないでください。どうか、どうか
168
:
名も無きAAのようです
:2012/11/26(月) 14:49:15 ID:ernJHB9U0
いつまでも待ってるぞ
169
:
名も無きAAのようです
:2012/11/27(火) 01:05:47 ID:IJ0F1vew0
期待
170
:
名も無きAAのようです
:2013/01/06(日) 13:44:56 ID:MqoOH8KI0
まだかなー
171
:
名も無きAAのようです
:2013/01/06(日) 15:36:04 ID:hGVXbwQUO
再来月ということは今月ということになるな
172
:
◆c9sFVHJv2E
:2013/01/11(金) 13:31:09 ID:rwjcZOMI0
年明けちゃった
書き溜めは順調です。リアルの方が色々不調です
長々と待たせてしまって申し訳ありませんが、いつ投下できるようになるか、まだ分かりません
逃亡しないってことしか約束できません。それでも許してくださるなら、ビンタしてください。許さないならビンタしてください
何だったら往復ビンタしてください。本当にすみませんでした
173
:
名も無きAAのようです
:2013/01/15(火) 23:33:02 ID:sLRYBE4s0
パンパンパーン
∧_∧ ∩
( ・∀・)彡☆
⊂彡☆))Д´)
174
:
名も無きAAのようです
:2013/01/16(水) 20:07:06 ID:2GBJFlyI0
あけおめビンタ!
∩))
(*´・ω・`)彡 パンパンパンパン
((⊂彡☆∩))
((⊂((⌒⌒ (*´д`)
`ヽ_つ ⊂ノ
いつまでもまってるよー
175
:
名も無きAAのようです
:2013/01/25(金) 15:18:05 ID:urv66dGE0
( ^ω^)づ待ってるよー
176
:
名も無きAAのようです
:2013/01/28(月) 00:50:27 ID:KH8ql7W.0
パンパンパーン
∧_∧ ∩
( ・∀・)彡☆
⊂彡☆))Д´)
まってるからな
177
:
名も無きAAのようです
:2013/06/19(水) 00:14:18 ID:Sbm21ib.0
これ凄く好きだから続き読みたいな
178
:
名も無きAAのようです
:2014/02/18(火) 05:53:56 ID:ipZG/6hI0
まぁだかなー
パンパンパーン
∧_∧ ∩
( ・∀・)彡☆
⊂彡☆))Д´)
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板