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( ^ω^)時計の国とラノベ祭のようです

1 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 18:51:20 ID:ksyKNxfAO
ラノベ祭参加作品

全部の絵を使うつもり
挿し絵的な使い方になるので、申し訳ないが希望タイトルや希望ジャンルは大体無視する形になりそう
一回使った絵をまた別のシーンで使ったりするかもしれない

長くなりそうので4つか5つくらいに分ける

2 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 18:52:48 ID:I8oOV45UO
ついに来たか全使用

3 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 18:53:53 ID:ksyKNxfAO

 寂しがりの魔法使いが、ある日、魔法の国を飛び出していってしまいました。

 しかし、よその国に行こうにも、魔法使いは世界中の嫌われ者。
 ひっそり森の中で暮らすことにしました。

 けれどもこの魔法使いは寂しがりでしたので、やがて孤独に耐えきれなくなり、
 人を招くため、森の西側に大きな建物を作りました。

 はてさて、どうしたら人が来てくれるでしょうか。
 温かい飲み物を飲みながら、魔法使いは考えます。

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/143.jpg】

 黒い飲み物(コーヒーというそうです)にミルクを入れると、黒は茶色へ変わりました。
 ミルクを入れれば入れるほど、茶色は柔らかな色へ。
 それを見つめ、思いました。

('、`*川(絵の具みたい)

 魔法使いは絵を集めるのが大好きでした。
 とりあえず、たくさんの絵画を建物の中に飾ってみます。

 そうすると、まるで美術館のようになりましたから、
 魔法使いは展覧会を開くことにいたしました。
 これなら人が来てくれます。

4 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 18:55:59 ID:ksyKNxfAO

 しかし美術館と呼ぶには、絵が足りません。
 魔法使いは自分で絵を描き、それを飾っていきました。

('、`*川「これならきっと、たくさんの人が楽しんでくれる。
     そうだ、お茶とお菓子も用意しないと」

 そうして魔法使いは、自分が魔法使いであることを隠し、美術館を開きました。

 一日目は、屋敷の中がいっぱいになるくらいのお客様が来てくれました。
 お茶とお菓子を振る舞い、魔法使いはにこにことお客様を眺めます。


「何だ、気持ち悪い絵だなあ」
「このお茶、紫色だ。捨ててしまおう」
「お菓子も真っ青。食べたくないわ」


 絵もお茶もお菓子も、魔法の国では普通のものでしたが、
 この国の人々には合いませんでした。

5 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 18:57:24 ID:ksyKNxfAO


 二日目、三日目、一週間、一月。
 日に日にお客様は減っていき、やがて、誰も美術館に来なくなりました。

('ー`*川「明日は来てくれるかなあ。もっと美味しいお菓子を用意しておこう」

 にこにこ、魔法使いはお客様を待ち続けます。
 みんなに気持ち悪がられているなんて、これっぽっちも知りませんでした。



    「明日は来てくれるかなあ。明日は──」



# # #

6 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 18:58:40 ID:ksyKNxfAO


 この世はあまりにも虚しい。


('A`)「……縄は、これで大丈夫だな」

 街の外れの、今や人の出入りがないビルの中。
 そこで、彼はぽつりと呟いた。

('A`)「うっし。……吊るか」

 椅子の上に立ち、目の前にぶら下がっている、縄の輪を見つめる。
 これに首を引っ掛けて椅子を蹴り倒せば、それで終わる。
 後は惨めに揺れるだけ。

 縄を見たまま、ぼうっと、過去の記憶を巡らせる。

 関わってきた人々の顔。
 住んでいた家。
 成功したこと。失敗したこと。

('A`)

 脳内で繰り広げられていた映像が崩れる。
 風景が歪み、境界線が曖昧になり、空は欠け、色が失せていく。
 大して仲も良くなかった人間の顔が崩れて、黒目が液体になって流れ落ちた。

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/46.jpg】

7 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 18:59:51 ID:UGQr2aY60
え……まじすか!?

8 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:00:30 ID:ksyKNxfAO

 身震いする。

('A`)(早く死のう)

 別に、死なねばならぬ程の事態に追い詰められたわけでもない。

 ただ彼は、人より陰気な性格をしていた。
 ちょっとしたことで気が滅入ってしまう。

 仕事が無くなったのも、家賃が払えないために家を追い出されたのも、
 その気になれば、いくらでも挽回出来ることだった。
 しかし彼は、いつものネガティブさを存分に発揮して、あっさり死を決意したのであった。

 帽子を深く被り、視界を狭める。
 一度深呼吸をし、彼は縄を掴むと首元へ輪を掛けた。
 椅子を蹴る。

 喉を襲う圧迫感。
 苦しいのか苦しくないのかは分からなかった。
 頭の中で思考が駆け回っていたような気がするし、何も思い浮かんでいなかったような気もする。

 何も分からない。
 ただ、生暖かい感触が頬をなぞっていったので、涙が出たのだということは感覚的に悟っていた。

9 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:01:59 ID:ksyKNxfAO

(;A;)(ああ──)

 意識が切れそうになった──その瞬間だった。

 急に圧迫感が消えた。
 体が持ち上がる。
 わけが分からぬまま、後方に体を引かれて。

 ずるり、帽子が外れ、視界が開けた。

(;A;)「……え?」


川 ゚ -゚)「犬を探しに来てみれば、とんでもないものを拾ってしまったな」


 事態を理解するのに、1分は掛かっただろうか。

 立て直されたのであろう椅子の上で、彼は、見知らぬ女性に横抱きにされていた。
 自殺は失敗したのだ。


【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/68.jpg】

10 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:04:37 ID:ksyKNxfAO

(;A;)「あ、あう、」

川 ゚ -゚)「まったく……私が来ていなければどうなっていたか」

      「クー! わんこ捕まえたお!」

川 ゚ -゚)「そうか、今行く!」

 別の部屋から男の声がした。
 女性は声に答えて慎重に椅子を下りる。
 そっと彼を床に座らせて、息をついた。

川 ゚ -゚)「何があったかは知らんが、悩みでもあるなら、死ぬより先に相談してみたらどうだ」

(;A;)「相談……」

川 ゚ -゚)「ああ」

 彼女の口元が、ゆるりと動く。

川 ゚ー゚)「我ら、『ツンちゃんのお悩み相談室』。是非とも御利用くださいませ」


 さて。
 彼は前述したように、ちょっとしたことで気が滅入ってしまう人間である。

 それでいて──ちょっとしたことですぐに元気を取り戻す人間でもあった。

11 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:05:23 ID:ksyKNxfAO

(;A;)

 一度はモノクロになった世界が、まるで、天才画家に着色されたかのように色を取り戻す。

(;∀;)

 彼は思う。

 「こんなに綺麗な人は初めて見た!」。
 「人生まだまだ捨てたもんじゃねえや!」。
 「世界って何て素晴らしいんだ!」。

川 ゚ー゚)「分かったか?」

(;∀;)「はい!!」

 こうして彼は死ぬのをやめた。
 もはや笑い話である。





# # #

12 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:06:16 ID:ksyKNxfAO





 今日も世界には4つの国があって。

 今日も4つの国は世界を共有する。





( ^ω^)時計の国とラノベ祭のようです


.

13 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:06:28 ID:AzUIyUiwO
これはwktkせざるえない

14 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:08:30 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「──んがっ」

 ブーンは目を覚まし、しばし、身じろぎせずに辺りを確認した。
 暗い。
 鉄の匂い。

 息苦しい。
 体のあちこちが痛い。
 重い。

 状況を理解し、ブーンは顔の上に乗っているガラクタをどかした。
 がらがらがしゃがしゃ、けたたましい音をたてながらガラクタが落ちていく。

 ようやく視界が開けた。
 晴天。太陽はてっぺんに。

( ^ω^)「ドクオ」

 ひょこりと上半身を起こす。
 左下の方で、少年が「おう」と声をあげた。
 少年の手には、おもちゃのような、奇妙なものがあった。

('A`)「起きたか」

( ^ω^)「君は良くない。本当に良くない」

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/4.png】

15 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:10:48 ID:ksyKNxfAO

('A`)「いやあ、ブーン君がゴミ山で気持ち良さそうに昼寝してるもんだからねえ、
    人がいくら声をかけても起きないもんだからねえ、
    こりゃあブーン君ったらもうゴミと一体化したんだなあと思ったもんだからねえ、
    ならいっそゴミに埋もれさせてあげようと、こう、ね」

 手に持った「奇妙なもの」──筒に手足を付けたような──を顔の前で動かしながら、
 少年は嫌みたらしい声色で言った。

 彼はドクオという。ブーンよりも10歳上、35歳だ。
 今は2人とも10代半ばほどの姿になっているが。
 詳しくは後程。

( ^ω^)「それは何だお。その、小さなドラム缶みたいな」

('∀`)「よくぞ訊いてくれました! ドクオお手製、『歯車王』!
    お前が起きるのを待つ間、そこら辺のガラクタで作ってみた」

|::━◎┥

( ^ω^)「相変わらず器用でいらっしゃって……」

('∀`)「はっはー。
    ……ま、この年齢の手は、ちと未熟だからな。本来の力の8割しか出せねえや」

 ブーンはゴミの山から飛び下りて、服を払った。
 すっかり汚れてしまった。座ったままのドクオを睨む。

16 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:10:57 ID:/Trtq2VI0
全使用とかスゲ!wktk!支援!

17 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:12:44 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「で、僕に何ぞ用でもあるのかお?」

('A`)「おうよ。ツンに、ブーン呼んでこいって言われてな。
    やっと見付けたかと思えば、お前はすやすやと──」

( ^ω^)「ああはいはい、分かりましたお」

 「歯車王」とやらを爪先で小突いてからブーンは歩き出した。
 後ろでドクオが嫌味を言うのが聞こえたが、無視する。

 歩きながら左へ視線をやった。
 遠目に、建物が密集しているのが見える。

 その中でひときわ目立つ建造物があった。
 時計塔だ。

 てっぺんの時計部分は正面を向いている。
 12時を指した瞬間、鐘が鳴った。

( ^ω^)「相変わらず大きいおー。さすが『時計の国』……」

 しばらく立ち止まったまま時計塔を眺め、秒針が一周した頃、再び足を前へ出した。



# # #

18 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:14:46 ID:ksyKNxfAO


( ^ω^)「はあい、ツンちゃん──何だ、今日は年増かお」

ξ#゚⊿゚)ξ「やって来て早々失礼な奴ね。
      10代のどこが年増なわけ?」

( ^ω^)「11歳以上は年増だお」

 「ツンちゃんのお悩み相談室」。
 高層マンションの20階に、この部屋はある。

 ここは、ブーンの目の前で仁王立ちしている少女──ツンの職場兼、住まいだ。
 居間や応接室、寝室に書斎、ツンの私室に加えて、同居人達の部屋が2つほど。
 ブーンが住む家より、よっぽど部屋数が多い。

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、来なさい」

 ツンがブーンの頬を引っ張る。
 そのまま歩き出すので、ブーンは転ばぬように気を付けながら続いた。

 玄関から廊下に靴を履いたまま上がり、応接間に入る。
 ツンの仕事は主にこの部屋で行われていた。
 仕事と言っても、要は何でも屋で、客の悩みを解決するだけである。

19 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:16:05 ID:ksyKNxfAO

ζ(゚ー゚*ζ「ブーン君、こんにちは」

( ^ω^)「やあデレ……ああ、デレも今日は年増……」

 応接間には既に人がいた。
 ソファに座り、お茶を飲んでいる少女。
 ツンやブーンと同じ年頃に見える。

 彼女はデレ。
 相談室の職員にしてツンの姉、同居人その1である。

 デレは腰を上げると、食器が収まっている戸棚へ歩いていった。
 ブーンにもお茶を入れてくれようとしたのだろう。
 ブーンは赤いソファに腰掛け、デレに声をかけた。

( ^ω^)「お腹が空いたお」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、じゃあ、ご飯持ってこようか? ちょっと時間かかるけど」

( ^ω^)「ぜひ」

20 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:16:41 ID:.vVrH9Wk0
まじかすげえな支援

21 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:18:36 ID:ksyKNxfAO

ξ;-⊿-)ξ「図々しいったらないわね」

 ツンに後ろから頭を叩かれた。
 文句を言おうと振り返り、ふと気付く。

( ^ω^)「君達、今日はお揃いの服だね」

ξ゚ー゚)ξ「あ、分かった?
      制服よ。『ニューソク』では、10代の子達が学校に行くときに着るんですって」

( ^ω^)「10代ねえ……君達、20代だろうがお」

ζ(゚ー゚*ζ「今日の体は10代だもの」

 ツンとデレは、ピンク色の上着に赤いスカートという出で立ちだった。
 東の国「ニューソク」からわざわざ取り寄せたのだという。
 よく見れば、靴までお揃いだ。

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/125.jpg】

22 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:20:06 ID:ksyKNxfAO

ξ*゚⊿゚)ξ「色々種類があって、これはブレザー。
      他にもセーラー服っていうのがあってね……次にまた10代の姿になったら着るわ」

( ^ω^)「今度は制服にハマったのかお。この間はドレスにハマっていたけれど」

 ツン達から視線を外し、ブーンは室内をぐるりと見渡した。
 こざっぱりした部屋だ。
 応接用のソファ、テーブル、戸棚にティーセット。

 隅の机にはツン達の写真がいくつか飾られている。
 写っている彼女達の年齢はどれもばらばらだが、それらは全て、ごく最近撮られたものである。

 向かいのソファにツンが座った。
 デレがブーンとツンの前にティーカップを置いてから、部屋を出ていく。

( ^ω^)「で、何の用だお」

 こうしてツンに呼び出されるのは、いつものことだ。
 ブーンは定職に就いていないので「お悩み相談」の手伝いをちょくちょくやらされる。

23 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:21:29 ID:ksyKNxfAO

ξ゚⊿゚)ξ「そろそろ、お祭りがあるでしょ」

( ^ω^)「ラノベ祭?」

ξ゚⊿゚)ξ「それ」

 ツンはどこからか取り出した地図をテーブルの上に広げた。

 世界地図。
 中央に大陸が一つ。
 大陸の真ん中に巨大な森があり、それを囲むような形で4つの国が隣接している。

 東の国は「ニューソク」、南が「ヴィップ」、
 西は「ソウサク」。
 そして、北の国には「シタラバニア」と記されていた。

 シタラバニアは国境にまで森が食い込んでおり、
 他の国に比べると、国土が非常に小さかった。

 ツンが、西の国「ソウサク」を指差す。
 今ブーン達が住んでいる国こそが、このソウサクだ。

24 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:23:16 ID:ksyKNxfAO

ξ゚⊿゚)ξ「今年のラノベ祭は、うちの国でやるじゃない」

( ^ω^)「そうだおね。国王様も張り切っていらっしゃる」

 ラノベ祭とは、年に一度、ソウサク、ヴィップ、ニューソクの3ヵ国が合同で行う大きな祭である。
 具体的な目的はなく、ただ国民同士で一緒に騒いで仲良くやりましょう、というものだ。

 開催地となる国は毎年違う。
 去年はヴィップ、一昨年はニューソク、その前はヴィップ、さらにその前はニューソク、そのまた前がソウサク。
 ヴィップやニューソクに比べると、ソウサクで開かれる頻度は低い。

 そのため、5年ぶりに主催に選ばれたということで、ソウサク全体が熱気に包まれていた。

ξ゚⊿゚)ξ「5年ぶりってことで、かなり力を入れると思うのよ。
      来場者の数も前年より増える見込みだわ。
      それはいいことなんだけど、ただ、そうなると──」

( ^ω^)「警備面での不安が生じる」

ξ゚⊿゚)ξ「その通り」

 ツンはブレザーとやらのポケットから、一枚の紙を出した。
 その紙に書かれたデータを読み上げる。

25 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:25:15 ID:.96CoTM.0
読みやすい
期待&支援

26 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:25:55 ID:ksyKNxfAO

ξ゚⊿゚)ξ「去年、ラノベ祭の最中に行方不明になったソウサク人は3人。一昨年は2人。一昨昨年も2人……。
      ──全員、『反時計症』を患ってたらしいわ。
      十中八九、人攫いの仕業ね」

( ^ω^)「そりゃあ恐ろしい話で」

ξ゚⊿゚)ξ「このままだと、今年は更に被害者が増えると思うの。
      反時計症の人間はかなり高値で取引されるからね、
      今年の祭は、そういう輩にとってはチャンスだわ」

( ^ω^)「健康で可愛い女の子を買うってのは分かるけど……反時計症ねえ」

ξ゚⊿゚)ξ「他国の人間には珍しいのよ」


 ──反時計症。

 この国特有の風土病のようなものだ。
 国民の3分の1が患っていると聞く。

27 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:27:13 ID:ksyKNxfAO

 簡単に言うなれば、「日によって年齢が変わってしまう」という症状である。
 たとえば実年齢は20歳の人が、昨日は15歳の姿になり、今日は5歳になり、明日は10歳になるような。

 実年齢より上の姿にはならない。
 変わるのは体だけで、記憶などはそのまま。
 まるで体の時間だけが巻き戻るかのよう。だから、反時計。

 病気と言うよりかは、「そういう体質の人間がたまに生まれる」というのが大体の国民の認識であった。

( ^ω^)「じゃあツンも気を付けないと」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたもね」

 何を隠そう、ブーンとツンも反時計症を患っている。
 今日は互いに10代の姿になっているが、彼らの実年齢は25歳。
 昨日の内藤は10歳かそこらだった。

 先のデレは本当は27歳だし、ドクオは35歳だ。

 それと──


川 ゚ -゚)「おいツン、お前ノーパンでブーンの相手してるのか」


 ──いきなり下着姿で部屋に飛び込んできた、この女だって、反時計症患者である。

28 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:29:02 ID:ksyKNxfAO

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっ」

( ^ω^)「こんにちは、クー」

川 ゚ -゚)「やあ、ブーン」

 青い下着を身につけ、左手でパンツを振り回している女。
 クール。彼女の名前だが、ほとんどの者は「クー」と呼ぶ。
 ツンの同居人その2。

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/111.jpg】

 ブーンはクールをまじまじと眺めてから、ツンに顔を向けた。

( ^ω^)「僕が来るまで何してたんだお。何っていうか、ナニっていうか」

ξ;///)ξ「いやっ、クーが一緒にお風呂に入ろうって言ってきただけなの!!
      私は朝にシャワー浴びたから入らないって言ったのに、クーが無理矢理脱がしてきてっ、」

川 ゚ -゚)「生憎、パンツを下ろしたところでブーンが来たんだよ。
     君が来るといつもツンは私を放り出してしまう。悲しいな」

 ぺしゃり、ツンの顔面にパンツが投げつけられる。
 ツンは慌ててソファの裏に回り、ごそごそと、恐らくパンツを穿き直した。

 ブーンには興味をそそられない光景なので、再びクールへ振り返る。

29 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:29:10 ID:AzUIyUiwO
面白い設定だな
支援

30 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:32:11 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「クー、今日は20歳くらいかお?」

川 ゚ -゚)「そうだな。実年齢と大差ない」

 クールは20歳で、この「お悩み相談室」の中では最年少ということになる。
 だが、誰よりも仕事は出来る。

 以前、ブーンと一緒に迷い犬の捜索に駆り出されたときは逸早く犬の逃走先を特定したし、
 そこで自殺しようとしていたドクオを発見し、助けた。
 そのままドクオを職員として連れ帰ったほどの仕事ぶりである。

 これで女好きでなければ、どこに出しても恥ずかしくない人間なのだが。

( ^ω^)「君達が10歳以下の姿でべたべたしてるのは、見てて楽しいんだけどね。
       その姿だと非生産極まるお」

川 ゚ -゚)「小さい女の子にしか興味を持てない君には言われたくないな」

ξ;*///)ξ「とにかく!!」

( ^ω^)「あ、穿き終わったかお」

川 ゚ -゚)「穿き終わったな」

ξ;*///)ξ「来週のラノベ祭!! 私達も会場で不審者の出入りを監視することになったから、
      あんたも手伝って!」

31 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:33:07 ID:ksyKNxfAO

 ソファの背もたれを飛び越えたツンが、そのままソファの上に立ち、
 ブーンへと手紙を突きつけた。

 白地に銀糸の装飾。
 国王直々に送られてくる手紙だ。

 今どき手紙など滅多に見かけないが、
 ツンが「まずは手紙をもらわないことには話を聞く気もしない」という妙なポリシーを持っているので仕方がない。

( ^ω^)「お金は?」

ξ;*゚⊿゚)ξ「は、払うわよ。規模が規模だからね、上からの報酬もかなりのものよ」

 ならば断る理由はない。
 ブーンは満足げに笑って、頷いた。



# # #

32 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:35:27 ID:zCzOsaNA0
>全部の絵を使うつもり

な、なんだってー!

33 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:36:16 ID:ksyKNxfAO


ミセ*゚ー゚)リ 〜♪

 ミセリは、絵の具のチューブを手に取った。
 赤い絵の具をパレットに乗せて、筆で水を含ませる。
 絵描きをやっているだけあって、その動きは流れるようだった。

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/37.jpg】

ミセ*゚ー゚)リ「もうちょっとかなあ」

 完成間近の絵を見下ろし、微笑む。
 まだまだ描きたい絵はたくさんある。早く次の絵にも取り掛かりたい。

 ──今年のラノベ祭のテーマは「絵」。
 世界中の画家達に、多くの仕事が与えられている。
 ミセリもその一人であった。

ミセ*^ー^)リ「ふふ……みんな、見てくれるかな」



# # #

34 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:38:25 ID:ksyKNxfAO


 熱で、ぼうっとしていた。
 普段からぼうっとしてはいるのだが、その日は特別ふわふわしていた。

川 ゚ 々゚)「んーんーふ……」

 祭までには治るだろうか。
 こんなタイミングで風邪を引くなんて、ついてない。
 せっかく今年の祭にはミセリの絵が出展されるのに。

 額に貼ったシートに触れる。
 ニューソク国から買った、解熱効果のある「薬」だそうだ。
 貼ったばかりはひんやりして気持ち良かったが、もう、ぬるくなってしまった。

 しかし、貼り替えるためだけに母や召し使いを呼び付けるのは面倒臭い。
 握ったままのクレヨンを床に擦り付ける。

 将来は画家になりたい。
 ミセリという画家のように、綺麗な絵を描きたい。

 ミセリの絵は、赤色が綺麗なのだ。

 たとえば彼女が描く、夕焼けの絵。
 目の前に出されて、何の色が使われているかと問われれば、「赤色」と一言で答えられる。
 それでもその実、彼女の絵には何色もの「赤色」がある。

 複雑なものが単純な美しさを生み出す奇跡。
 その色が、目を、心を引き付けて止まない。

35 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:39:32 ID:ksyKNxfAO

川*゚ 々゚)「ふふふー」

 どうしてあんなに綺麗なのか、ずっと考えていた。
 最近、やっと気付いた。

 彼女の赤は、血に似ている。

川*^ 々^)

 赤いクレヨンを転がす。
 壁にぶら下げている人形達の中から目についたものを取り、
 ぐしゃぐしゃに塗りたくられた赤色の上に、人形を置いた。
 さらに人形に電車の模型を乗せる。

川 ゚ 々゚)「……ちがうなあ」

 ああ、駄目だ。
 これは、ただの赤色だ。
 血の色ではない。

 後ろの本棚に向き直る。
 ここに収まっている本には、血が映った写真や絵がたくさん載っている。
 参考にして描き直そう。

36 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:41:44 ID:ksyKNxfAO

川 ゚ 々゚)「……?」

 ふと。
 一番下の真ん中に、黒い本を見付けた。
 『呪い』と『愛とは』の本に挟まれているそれには、タイトルがない。

 買ってもらった覚えのない本だ。
 具合を悪くしている自分のために、父か誰かが買ってきて、こっそり置いていってくれたのだろうか。

 本を抜き取り、そっと開く。

 すると、もやもや、黒い影のようなものがページの中から現れた。
 それは徐々に人の形になって、


【+  】ゞ゚)「──こんにちは、風邪引きのお嬢さん」

川 ゚ 々゚)「ふあ」

【+  】ゞ゚)「お名前は?」

37 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:42:24 ID:ksyKNxfAO

 ──熱で、ぼうっとしていた。
 普段からぼうっとしてはいるのだが、その日は特別ふわふわしていた。

 だから、笑って、答えた。


川*^ 々^)「くるう」



【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/168.jpg】



 ソウサク国の王家が住まう屋敷の、子供部屋でのことだった。



# # #

38 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:44:59 ID:ksyKNxfAO


 死ねばいい。
 自分など死ねばいい。
 死ね、死ね。

( ^ν^)「……はあ」

 やっぱり死にたくない。

 ニュッはぐったりと机に伏せて、溜め息をついた。

 世界地図で言えば東、「料理の国」ニューソク。
 国内の首都郊外にある安普請のアパートに、彼は住んでいた。

( ^ν^)「だりい」

 誰へ向けるでもなく呟く。
 参った。

 たしかに金が欲しいとは言った。
 言ったが──

( ^ν^)(……誘拐ってなあ)

 まさか、誘拐に加担する羽目になろうとは。

39 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:48:33 ID:ksyKNxfAO

 ニュッは机上の紙に手を伸ばした。
 ずりずり、眼前へと引き寄せる。
 今回の計画のメモ。うんざりしながら、改めて読み直す。

 実行は一週間後。
 場所はソウサク国。
 ニューソクとは正反対の、西に位置する国だ。

 誘拐の対象は反時計症のソウサク国民。
 目的は──言うまでもなく、「売買」である。


 ソウサクの人間だけが発症する反時計症。

 感染はしない。
 日によって外見年齢が変化することさえ除けば、普通と変わらぬ健康体。
 つまり、「飼う」上で危惧すべき問題はない。

 反時計症の人間が他国に移住すると
 土地の問題か何なのか、平均して5年ほどで死んでしまうらしいが──
 まあ、結局、飼い主側には危険なことはないわけで。

40 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:50:02 ID:ksyKNxfAO

( ^ν^)(寿命が縮むおかげで買い替えのサイクルが早いし。
       祭や仕事以外でソウサク民が他国に来ることは稀で、滞在も殆どしない。
       それゆえに国民自体の物珍しさから、需要も高い……)

( ^ν^)(上手くいけば、かなりの大金が手に入る)

 とは、言っても。
 やっぱり躊躇う。

 ニュッは口も性格も悪いが、悪事に手を染めたことはない。
 度胸がないからだ。

(;^ν^)「……ううっ、くそっ」

 メモを握り潰し、ごみ箱に放り投げた。
 真面目に働いていれば良かった。
 そうすれば、生活に困って誘拐を企てるようなこともなかったのに。

 いっそ死ねば良かった。
 いや、やっぱり。それはちょっと。嫌だ。

 ニュッは頭を抱え、無意味に唸り声をあげた。



# # #

41 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:52:11 ID:ksyKNxfAO


(#´_ゝ`)「だーかーら! 今年は魔法だ、魔法をテーマにするぞ!」

∬#´_ゝ`)「馬ッ鹿、そんなもんテーマにしたらブーイングの嵐になるわよ!
      アクションにしなさい! 前に格闘技をテーマにしたときが一番盛り上がったでしょう!?」

 ソウサク国の、ある家の中。
 テーブルを挟んで向かい合い、口角泡を飛ばす男女が2人。

 男は兄者、女は姉者。姉弟である。
 共に20代半ばをとうに越えているが、兄者の方は反時計症により、いくらか若返っている。

 彼らが何を言い合っているのかというと、
 今度の祭で披露する出し物について。

42 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:53:26 ID:UGQr2aY60
支援じゃわっしょい

43 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:53:45 ID:ksyKNxfAO

(´<_` )「落ち着け2人共。白熱するのはいいが、議論が全然進んでないぞ」

l从・∀・ノ!リ人「うるさいうるさいなのじゃ。ねー、末者」

(´<_` )「うるさいのりゃー」

 兄者の隣の席、冷めた目で2人を宥める少年、弟者。
 兄者より10歳近くも若いのだが、前述の通り兄者が若返っているので、今は双子のように見える。

 その対面で耳を塞ぐような素振りをした少女は、妹者という名前だ。
 それに賛同した3歳ほどの子供は末者。妹者の膝の上に座っている。

 妹者も末者も反時計症患者だが、元から幼いため、実年齢との差は少ない。

(#´_ゝ`)「俺は話し合いを進めたいんだがな。如何せん姉者が話を聞いてくれない」

∬#´_ゝ`)「それはこっちの台詞よ! 大体、」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「──あんたたちね、祭まであと一週間なんだよ」

 さらに言い合いを続けようとした2人は、どっしりと威厳に溢れた声を聞き、口を噤んだ。
 恐々、少し離れた場所に座っている大柄な女性を見遣る。

 母者。5人の母親。
 茶を飲みつつ、彼女は兄者と姉者を睨みつけた。

44 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:56:21 ID:vwaIg/TI0
wktk

45 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 19:56:22 ID:ksyKNxfAO

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「私にはセンスってものがない。
      だから我ら流石一座の企画や構成は、毎回あんたらに頼ってばかりだ」

(;´_ゝ`)「ま……まあ、そうだけど……」

∬;´_ゝ`)「それは適材適所で……」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「母親として情けないのは分かってるが、それでも、
      毎回毎回あんた達が素晴らしい台本を作ってくれる度に、任せて良かったと思えるんだよ」

(;´_ゝ`)「……あ、」

∬;´_ゝ`)「ありがとうございます……」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「今回も期待してるからね。
      台本が間に合わず断念、なんてのは勘弁しとくれよ」

 その言葉を最後に、母者は口を閉じた。
 兄者と姉者は顔を見合わせ、ばつが悪そうに視線を逸らす。

 直後、それまで黙っていた中年の男性が苦笑いしながら両手を胸の前で揺らした。
 母者の夫であり兄者達の父親、父者だ。

46 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:01:32 ID:ksyKNxfAO

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「とりあえず、2人のやりたいことを順番に話してみてよ。
       時間もないしさ」

 ──彼ら7人は「流石一座」のメンバーである。
 芝居や演芸など、一家での興行活動を生業としている。

 兄者や妹者達が反時計症を発症する2年前までは、
 不定期に各国を巡って公演を行っていた。
 滞在期間が一番長かったのは、ニューソクでの丸一年だったか。

 今は兄者達の体を考えて本拠地をソウサクに固めているが、
 世界的に根強い人気があるため、たまに他国へ数日ほど出張することもある。
 医者いわく、他国に一年以上滞在するのでない限り、特に差し障りはないそうだ。

 なので開催国がどこであれ、ラノベ祭での公演依頼を断った年はない。
 今年も御多分に漏れず。

47 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:03:54 ID:ksyKNxfAO

 大変名誉なことであるのは、皆、充分に分かっている。
 分かっているが──今年は、祭を一週間後に控えた現在になっても、
 未だ演目が決まってすらいなかった。

 今年の祭のテーマが「絵」なのでメインはそれで決定したが、
 サブテーマに関して、兄者と姉者の意見が対立しているのだ。

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「はい、まず、姉者の案は?」

∬´_ゝ`)「私は、武器を持った演舞がいいわ。
      巨大なキャンバスの前に、色付きの水が入った風船をたくさん置くの。
      それで、私達がアクションを交えながら風船を割っていって──」

l从・∀・*ノ!リ人「最後に絵が完成するのじゃな! 格好いいのじゃ、妹者それがいい!」

∬*´_ゝ`)「でしょう? 風船の配置や水の量を調節して、
      後は割り方や順番さえ気を付ければ上手くいく筈よ」

48 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:05:09 ID:ksyKNxfAO

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「なるほど……。次、兄者はどんな演目にしたい?」

( ´_ゝ`)「俺は魔法をテーマにしたい。
       知ってるか? 魔法使いってな、ほうきで空を飛べるんだ。
       こう、ほうきに跨がるらしい」

(*´_ゝ`)「それを真似て、俺らもほうきに跨がって空を飛ぼう!
       ほうきって筆に似てるよな?
       ほうきの先に絵の具を付けて、でっかいキャンバスに絵を描いていくんだ!」

(*´_ゝ`)「父者は舞台に立ったまま魔法の本を持って、
       あたかも俺達を自在に操縦しているかのように舞う!
       そうだ、へんてこな生き物のぬいぐるみを作って、それも動かそうじゃないか!」

(´<_` )「ぬいぐるみを動かすのはヴィップの技術を借りれば何とかなるが、
       どうやって空を飛ぶんだ?」

(*´_ゝ`)「そりゃ、末者の力を使って」

 兄者が嬉々とした顔で末者を見る。
 末者は「たぶん出来る」と頷いた。

 流石一座の面々が持つ身体能力の高さは、生半可なものではない。
 しかし末者に限っては、どこか逸脱していた。

49 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:06:51 ID:ksyKNxfAO

 手を触れることなく物を浮遊させたり、自身も浮かぶことが出来たり。
 それは魔法に似ていて、しかし魔法とは違う。

 魔法使いはゼロの状態から物を生み出すことが出来るが、
 末者は既に存在しているものにしか干渉出来ない。
 そういう、魔法に似て非なる力を、南のヴィップ国は「超能力」と呼んでいる。

 末者のように超能力を持つ者は、極々稀に生まれてくるらしい。
 科学の国ヴィップの研究で、超能力は遺伝子の突然変異が原因の──
 一種の、「身体障害」だと判明している。

 世の中の超能力者の大多数は、自分の力を隠したがる。
 魔法に似ているということで、世間からは侮蔑の対象とされているからだ。
 人買いすら、超能力者を扱うのを嫌がる。

 流石一座も末者の力を世間に隠してはいるが、しかしその実、舞台では大いに活用していた。
 からくりも無しに物を自由に動かせるなんて、彼らのような職業には打って付けだ。金もかからないし。
 末者も、幼さゆえに舞台に上がれない分、裏から完璧なサポートを見せてくれる。

50 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:08:04 ID:ksyKNxfAO

(*´_ゝ`)「これなら成功する!」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「うーん……。……うん、とりあえず今の段階で票を取ろう。
       姉者の案がいい人ー」

∬´_ゝ`)「はーい」

l从・∀・*ノ!リ人「はい!」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)∩ スッ

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「兄者の案の方がいい人」

(*´_ゝ`)「はいはい」

(´<_` )「はい」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)∩「……男女で分かれたね」

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/27.jpg】

51 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:10:05 ID:ksyKNxfAO

l从・ε・ノ!リ人「ぶーぶーぶー。末者はー?」

(´<_` )「どっちも楽しそうなのりゃ……」

(*´_ゝ`)「おお……前までは俺の意見など一刀両断していた末者が!」

(´<_` )「前は完全に末者にナメられてたよな、兄者。
       今も多少ナメられてるが」

 末者は頭がいいので、赤ん坊の時分に家族のランク付けを(正確に)行った結果、
 最下位になった兄者を馬鹿にする傾向があった。今はちゃんと仲良くやっている。
 ちなみにランク1位は当然のごとく母者だった。

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「多数決は無理か……。
       魔法、いいと思うんだけどなあ」

∬´_ゝ`)「……そりゃ、私だって面白そうだとは思うわよ」

 ぽつりと呟いた姉者。
 皆、意外そうな目を向けた。
 先程まで兄者の案を真っ向から否定していたのだから、無理もあるまい。

 姉者は、兄者の後ろの壁に貼ってある大きな世界地図を見た。
 これまで公演を行ってきた土地に印がついている。
 その中で、北の国シタラバニアにだけ、一つも印がない。

52 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:11:12 ID:ksyKNxfAO

∬´_ゝ`)「でも『魔法』って、この世のタブーなのよ。
      魔法使いなんて世界中の嫌われ者だわ。
      そんなものをテーマにしたら、どうなるか分からないじゃない」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`)「……祭を台無しにしかねないしねえ」

∬;´_ゝ`)「そう! そうなのよ!
      5年ぶりにソウサクで祭が行われるからみんな張り切ってるっていうのに、
      それを台無しにしてしまったら、私達、国民に顔向け出来ないわ」

( ´_ゝ`)「敢えてタブーに触れることも、ときには必要じゃないか、姉者」

∬;´_ゝ`)「それを、このラノベ祭っていう大きな舞台で実行する必要はどこにあるのよ!」

(#´_ゝ`)「姉者は慎重すぎる! 有無を言わさぬ演出で盛り上げれば──」

(´<_` )「また口喧嘩に逆戻りか」

l从-∀-ノ!リ人「話が進まないのう……」

(´<_` )「進まないのー」

 父者は額に手を押し当て、深々と溜め息をついた。



# # #

53 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:12:36 ID:ksyKNxfAO


川 ゚ -゚)「今年もシタラバニアは祭に参加出来ないか」

 夕方。「ツンちゃんのお悩み相談室」のリビング。

 キッチンを向く形で設置されたカウンターテーブルの前で、
 椅子に座っているクールが、新聞を眺めながら呟いた。
 紙面は間近に迫るラノベ祭一色だ。

ζ(゚ー゚*ζ「そりゃ、『魔法の国』はねえ。
      みんな嫌がっちゃうし」

 隣で、デレが答えた。
 彼女の手には例の、がらくたで出来た「歯車王」があった。

54 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:13:47 ID:ksyKNxfAO

ζ(゚ー゚*ζ「あ、ドクオさん、オレンジジュースください」

('A`)「俺は雑用かよ」

川 ゚ -゚)「私も飲みたいな」

(*'∀`)「かしこまりましたー!!」

ζ(゚、゚;ζ「扱いが違う!」

('A`)「お前は敵だ。いつもクー様といちゃいちゃしやがって」

ζ(゚、゚;ζ「いちゃいちゃしてないですよクーちゃんが勝手にくっ付いてくるだけですよ」

 すぐ目の前で夕食を作っていたドクオは火を一旦止めて、
 手早く2人分のオレンジジュースを用意し、カウンターの上に置いた。
 料理を再開させる。

 ツンがニューソクから制服を取り寄せたついでに購入したという、ニューソク鶏のソテー。
 ニューソク産の胡椒が肉の香ばしさを後押しし、焼ける音はじゅわじゅわと心地いい。
 さすが「料理の国」ご自慢の食材。

 こんな風に、キッチンで炊事をする者と対面しながら会話が出来るのは、悪くない。
 参考になるし、漂う香りが食欲を刺激する。

55 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:16:26 ID:ksyKNxfAO

川 ゚ -゚)「手伝おうか」

(*'∀`)「いやっ! どうぞクー様はお座りになって!」

ζ(゚ー゚*ζ「ねえねえドクオさん、この歯車王って、何か出来ないんですか? 勝手に歩いたりとか」

('A`)「あ? まあ、物さえ揃えば何でも出来るようになるな。
    後で適当な部品ぶち込むつもりだが」

川 ゚ -゚)「ほう。ドクオは本当に器用だな。
     さすが、ヴィップのロボット会社に引き抜かれそうになっただけある」

(*'∀`)「クー様! ありがたきお言葉!!」

 元々、ドクオは機械を扱う会社に勤めていたそうだ。
 主にロボット関係の製造に携わっており、その腕は誰からも認められていたらしい。
 やがて機械産業のメッカ、「機械の国」ヴィップの巨大会社から引き抜きの声が掛かった。

 このままエリート街道へ乗るかと思われたが──間の悪いことに、
 彼は反時計症を発症してしまった。

 反時計症の人間は他国の会社になど勤められない。文字通り命取りとなるのだから。
 また、幼くなればなるほど、大きな工具を満足に扱えなくなる。
 打たれ弱いドクオは、転落する一方だった。

56 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:18:14 ID:ksyKNxfAO

 そして自殺しようとしたところを、たまたま居合わせたクールが助けたというわけだ。
 以来、気持ち悪いくらい懐かれている。

 ドクオは下の階に住んでいるのだが、クールのためとさえ言えば
 料理も掃除もしてくれるので、まあ便利と言えなくもない。

川 ゚ -゚)「ツン達はまだ話してるのか」

ζ(゚ー゚*ζ「そうみたいだね」

 クールは応接間のある方向へ視線を投げた。
 ブーンとツンは、祭における警備の配置や持ち回りの話し合いをしている。

 新聞を畳み、クールは腰を上げた。
 ジュースを一気に飲み干して、空いたグラスをドクオに手渡す。

 そのまま、ベランダへ出た。

57 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:20:30 ID:ksyKNxfAO

川 ゚ -゚)「……真っ赤だ」

 夕焼け。
 空が赤い。

 クールは、この時間帯にベランダから街を見下ろすのが好きだ。
 文具店や飲食店の看板、デパートの宣伝バルーン、商店街の入口。
 たくさんの人々が行き来している。

 「呑み所」だの「らぁめん」だのと書かれた看板達は、ニューソクの流れを汲んだ店のもの。
 商店街やデパートといった形態は、ヴィップ独自のもの。
 ソウサクには他国の文化が多く存在している。

 そんな街の中で最も人々の目を引くのは、ソウサクの象徴とも言える時計塔だった。


【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/108.jpg】


 科学技術の最先端を行くヴィップでは数字だけが表示される型(デジタルと呼ばれているる)の時計が主流だそうだが、
 ここ、ソウサクが誇る時計の技術は、ヴィップに引けを取らない。

 ニューソクではソウサクが作る時計の方が人気だと聞く。
 ただ数字を見るだけより、一秒一秒、時を刻む針の趣を楽しもうということだろうか。

58 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:23:02 ID:ksyKNxfAO

川 ゚ -゚)(いつ見ても壮観だな)

 時計の下には、大きな扉がある。

 あの中には時計を動かすための仕掛けや、
 国民の暮らしに必要な装置が詰め込まれている。
 一般人が入れることは、滅多にない。

川 ゚ -゚)(……綺麗だ)

 夕日の色に染まる時計。
 秒針の動きにつれて、だんだん暗くなっていくようで。
 クールは、口元を緩めた。



# # #

59 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:24:48 ID:AIUivWPc0
腹減る…

60 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:25:56 ID:ksyKNxfAO


ξ゚⊿゚)ξ「あと、祭の前日に、あの時計塔の飾り付けを手伝わなきゃいけないから」

( ^ω^)「えー。マジかお」

ξ゚⊿゚)ξ「マジ」

 応接間。
 警備の話も終わったのでさて帰ろうかというときに、とても嫌なことを聞いてしまった。

( ^ω^)「手作業で? ヴィップのロボットにでもやらせればいいじゃないかお」

ξ゚⊿゚)ξ「あんまりヴィップに頼りすぎると、主催国としての面目が立たないでしょ」

( ^ω^)「警備の段階でヴィップやニューソクに頼りまくりのくせに」

ξ;゚⊿゚)ξ「私に文句言わないでよ」

 あんな巨大なものを、手作業で飾り付けねばならないとは。

 梯子を登って、重たい布や花を貼りつけることになるだろう。
 面倒臭い。
 考えるだけで、とんでもない労力だ。

61 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:28:06 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「魔法が使えたらどんなに便利だろうかお……。
       それなら材料費もかからないし……」

 思わず呟いていた。
 ツンが顔を顰める。

ξ゚⊿゚)ξ「それ、外に出て大声で言ってごらんなさいよ。
      たちまち石を投げられるわよ」

( ^ω^)「分かってるお、ただ言っただけじゃないかお。ちょっとした思い付き」

ξ゚⊿゚)ξ「思い付きでも、滅多なこと言うもんじゃないわ」

62 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:28:52 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「……でもねツン、僕は、たまにシタラバニアの人が可哀想になるんだお。
       いくら魔法使いが恐ろしいとはいえ、祭にも参加させてもらえないなんて」

 ツンは呆れ顔だ。
 ブーンだって、自分の発言が愚かなことは分かっている。


 シタラバニア。
 魔法の国。
 魔法使いが住む国。

 世界中から嫌われている国。

.

63 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:32:24 ID:ksyKNxfAO

 大昔はどの国も仲が良かったらしい。
 いや、仲がいいというか、互いに認め合っていた。

 しかしヴィップの技術をもってしても、「魔法」というものが解明されることはなく。
 そのせいで、シタラバニア以外の国民は徐々に、シタラバニアを恐れるようになった。

 誰だって、自分の理解が及ばないものへは恐怖と嫌悪を抱く。
 それに、魔法が使えれば、ソウサクの時計もヴィップの機械もニューソクの料理も、
 人間さえも、どうにだって出来るのだ。あまりにも恐ろしい。

 だからソウサクとヴィップ、ニューソクの三国は、シタラバニアとの交流を絶ったのだという。
 現在、シタラバニアの周りには高い壁が置かれている。
 魔法の力を通さない、特殊な鉱物で出来ているそうだ。

 今もなお没交渉は続いている。
 その環境がますます、人々の中のシタラバニアに対する感情を煽っているのだろうとは思う。
 思うが、ブーン1人がどうこう出来る問題でもないし、どうこうするつもりはない。

ξ゚⊿゚)ξ「国王様に直訴する?」

( ^ω^)「まさか」

 ブーンは肩を竦めてみせた。
 そんなことを直訴するより、時計塔の飾り付けの辞退を申し出たい。



# # #

64 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:33:22 ID:TQ7dum1oO
お題300の次は挿絵201か……もちろん支援だ

65 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:33:34 ID:ksyKNxfAO



 そうして迎えた一週間後。

 正午を知らせる鐘の音と共に、ラノベ祭が開催された。


.

66 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:34:21 ID:AzUIyUiwO
始まったか……

67 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:38:44 ID:ksyKNxfAO


『──これより7日間に渡りますお祭りを、皆々様、どうぞ心ゆくまで──』

 アナウンスが日程を繰り返す。
 1日目は正午から夜9時まで。
 2日目から6日目までは朝10時から夜9時、最終日は朝10時から日付が変わるまで。

 それを聞きながら、ブーンは感嘆の息をついた。

( ^ω^)「すごいお、人ばっかり」

('A`)「そりゃあな」

 ブーンとドクオは時計塔の中にいた。
 四方も頭上も馬鹿みたいに広い。
 祭の期間中、警備本部はここに置かれるらしい。

 中心に並べられた数十台にも及ぶモニターには、祭の会場や路地に至るまで、
 監視カメラの映像が隈無く表示されている。

 会場を映すモニターのどれもが、人の姿でいっぱいだった。
 あらゆるところで出し物が披露され、屋台には列が出来ていて、実に賑々しい。

 「警備」は、何もブーン達のように外を見回ることだけを指すのではない。
 これらの映像を確認する者達だって、立派な警備員の1人だ。

68 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:40:53 ID:ksyKNxfAO

(,,゚Д゚)「カメラは、追跡も可能だ」

 モニターの前で男が口を開いた。
 彼はヴィップの人間で、ギコ、というのだったか。
 このモニターやカメラもヴィップから持ち込まれたものである。

 ギコはとあるモニターを指差すと、そこに映る1人の女性に指先で触れた。
 続けて手元の、よく分からないボタンが大量に付いた装置を操作する。

 途端、映像が揺れた。
 女性が歩いているにも関わらず、モニターは一定の距離を保ったまま彼女を映し続けている。

( ^ω^)「おー」

('A`)「カメラが自動で対象を追ってるわけか。飛行距離は?」

(,,゚Д゚)「この国内であれば、どこまででも。バッテリーは3日程度だがな。
     で、ここにある赤いボタンを押せば、持ち場に戻る」

( ^ω^)「とにかく不審者を見付けたら、追跡させりゃいいんですかお」

(,,゚Д゚)「ああ……とはいえ、あちこちにカメラが設置されてるからな。
     死角に入りそうなときだけ追跡させればいいんだ。
     そうでないときは、対象をモニター越しにタッチするだけで充分。後は各カメラで監視してくれる」

69 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:42:29 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「ははあ。でも、こんだけのモニターから不審者を見付けるのも大変でしょうお」

(‘_L’)「勿論、全て自分で見付けろというわけじゃない」

 今度は、ギコの隣に座っていた男が答えた。
 フィレンクト。ギコの上司で、彼もまたヴィップ人だ。

(‘_L’)「これらは、映っている人間の表情や口の動き、動作等から状況を選定し、
      揉め事や犯罪行為が起きている可能性があれば、近くにいる警備員と警備ロボットに信号を送ってくれる」

(‘_L’)「私達は、機械には無い、人間の『勘』で仕事をすればいい」

('A`)「勘ねえ」

 食い入るようにモニターを見つめていたせいで、目が痛む。
 親指と人差し指で目頭を押しながら、ブーンは頭上を見た。

 機械やコードで埋め尽くされた壁。
 そこに取り付けられた梯子。一定の高さごとに、壁に添うように設置された、幅の狭い足場。

 途中から梯子は消え、これまた壁に添う形で階段がある。
 きっと一番上の時計にまで通じているのだろうが
 到達点が見えないほど高い。

 その中央にぶら下がる振り子が、左右に揺れている。
 あれが落ちてきたらモニターも自分達も潰されるだろうな、と不穏なことを思う。

70 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:43:31 ID:ksyKNxfAO

('A`)「ブーン、そろそろ行くぞ」

( ^ω^)「んあ、分かったお。それじゃあ皆さん、また後で」

 近くにいたソウサク人とニューソク人にも声をかけてから、
 2人は外の警備のために時計塔を出た。


.

71 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:45:04 ID:ksyKNxfAO


( ^ω^)「モニターで見たのも凄かったけど、現場は更に人の山だおねー」

 喧噪の中を歩き、伸びをしながら言った。
 ふうと息をついて、自身の両手を見る。

 今日は実年齢の25歳──本来の姿だ。誤差があるとしても1歳程度。
 最後にこれくらいの年齢になったのは10日前だから、随分と懐かしい心持ちになる。

('A`)「みんな笑ってやがる。
    こんな中で悪いことする奴もいるのが現実なんだよな……」

 対してドクオの方は、ブーンよりもいくらか若い。
 実年齢で言えばブーンの方が年下なので、何だかあべこべだ。

('A`)「っつうか、みんな祭を楽しんでる中で、俺は警備の仕事……不公平だ……鬱だ……」

( ^ω^)「あー、もしもしー」

 ブーンは襟元に締めたネクタイ(ニューソク発祥だと聞く)に付いたタイピンを口の傍まで持ち上げた。
 ヴィップから支給された、警備用の小型通信機である。
 裏のボタンで番号を指定すれば、対象の通信機に声が届くようになっている。

72 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:46:01 ID:AV3YAVpA0
見てるぞ支援

73 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:46:02 ID:ksyKNxfAO

『何よ、仕事サボってないでしょうね』

 右耳のイヤホンからツンの声がした。
 ノイズも無く、快適。

( ^ω^)「やあツンちゃん。
       ドクオが鬱陶しいから、クーからドクオに無線飛ばすように言ってくれお」

『クーに直接言いなさいよ』

( ^ω^)「ツンの声が聞きたくなったから」

『……どうせ、私の番号とクーの番号打ち間違えたんでしょ』

( ^ω^)「バレた」

『下らないことやってないで、ちゃんと見回りしてよね。
 あんたのせいで私の信用落とすようなことがあったら、報酬は出さないわよ』

 通信が切れる。
 ブーンがタイピンを元の位置に戻すと同時に、ドクオが歓喜の声をあげた。

(*'∀`)「はい! はいクー様! クー様のために頑張ります!!」

( ^ω^)(何て単純な人間なんだろう……)

 恐らくクールから何か通信が入ったのだろう。
 たちまち機嫌を良くしたドクオは、しゃきっと背筋を伸ばし、足取りを軽くさせた。

74 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:48:19 ID:ksyKNxfAO

(*'∀`)「さあ見回り見回りィ! 頑張るぞ! オー!!」

( ^ω^)「おー」

 広場を離れ、南の通りを行く。

 こちらは、出し物の中でも比較的小規模なものが集まっている。
 それでもやはり人は多い。

 人込みに酔いそうになって、ブーンは視線を上へと滑らせた。
 建物の屋上同士で繋いだロープに下げられた、有名画家達の巨大な絵。
 今回の祭のためだけに描かれた絵は、それぞれに違った趣がある。

('A`)「いやはや、時計の国っていうか、芸術の国と言ってもいいかもしれないな、ソウサクは。
    有名な画家はソウサク出身が多いとも聞くし」

( ^ω^)「お」

 ブーンの視線の先に気付いたらしいドクオが、不意にそう言った。
 ブーンは首を傾げる。

75 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:49:15 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「でもヴィップが作る機械のデザインやフォルムだって芸術的だし、
       ニューソクの料理だって見た目にこだわったものは凄く綺麗だお」

('A`)「……ま、それもそうだが」

( ^ω^)「この間ドクオが作ってた歯車王は芸術性の欠片もなかったけど」

(#'A`)「ああん? 言ったな? あのなあ、歯車王はデザインより機能性を重視して──」

 ドクオの反論は、前方からの歓声に掻き消された。
 そちらを見てみれば、かなりの人集りが出来ている。

( ^ω^)「何だお?」

('A`)「あそこはヴィップの……たしか、ユトリ社のブースだったな」

( ^ω^)「ゲーム会社かお」

 なるほど、大人だけでなく子供の見物人も多い。
 2人は警備の仕事より好奇心を優先させた。
 人込みを掻き分け、ようやく前列へと出る。

76 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:50:47 ID:ksyKNxfAO

 中心には1人の男が立っていた。
 左腕に、妙な装甲をつけている。

(;'A`)「ジョルジュか? 何だよあれ」

 見覚えのある男だった。
 ジョルジュという、ブーン達の知り合いである。

 ただ──彼は、傷だらけでそこに立っていた。

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/116.png】
 _
(;゚∀゚)「ぐっ……」

 ジョルジュの前には、プロジェクターで映し出されたゲーム画面のようなものがあった。
 画面の中には廃村らしき映像。
 どうやらプレイヤー視点のようだ。

 突然、廃墟の陰からモンスターが飛び出した。
 ジョルジュの反応が遅れ、モンスターは画面に迫る。
 モンスターが噛みつくような動きを見せた途端、ジョルジュの右腕の皮膚が裂け、血が吹き出した。

77 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:52:52 ID:ksyKNxfAO
 _
(; ∀ )「ぐああっ!!」

( ^ω^)「うわ」

(;'A`)「おいおいおい、ブースの管理者はどこだ!?」

 ドクオが辺りを見回している内に、ジョルジュは体勢を立て直して左手を振りかぶった。
 装甲に付いている目玉が赤く染まり、がちゃりと音を鳴らす。
  _
(#゚∀゚)「うおおおお!! 喰らえぇえええええ!!」

 咆哮。
 ジョルジュの左手が宙を殴り、画面のモンスターが吹っ飛んだ。

 数秒おいて、画面が緑色になる。
 そこに次々とタイムやヒット数などのスコアが表示された。

 「ランクA」。
 最後にその文字が出るや、再び歓声が上がる。

 途端、ジョルジュの体から傷が消え失せた。
 彼のもとへ駆け寄った女性が装甲を外し、
 ジョルジュが両手を上げると、観客は一層沸いた。

78 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:54:03 ID:ksyKNxfAO

 女性が右手に装甲、左手にマイクを持って口を開く。

从 ゚∀从「──と、このように、新作ゲームでは更なる臨場感を楽しんでいただくために
     完全体感システムを搭載しており──」
  _
( ゚∀゚)「あーあ、Sランクは出なかったか。……ん、何だ、ブーンとドクオじゃねえの」

(;'A`)「よ、よう」

 観客の方へと歩いてきたジョルジュは、2人に気付くと、へらへら笑いながら声をかけてきた。
 今のは一体何なのかというブーンの問いに、ジョルジュが楽しげに答える。
  _
(*゚∀゚)「ユトリ社の新作。敵に攻撃されると、実際に血が出るんだ。ホログラムだけどな。
     おまけに負傷した箇所が、ぴりっと痺れる。少しだけだから痛くない。
     面白いぞ。デモプレイさせてもらえるし、お前らもやってみろよ」

('A`)「へえ。そりゃすげえ。でも生憎、仕事中なんだ」
  _
( ゚∀゚)「仕事? ……ああ、そっか、警備手伝わされてんだっけか」

( ^ω^)「だお」

79 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:55:03 ID:ksyKNxfAO
  _
( ゚∀゚)「何か武器とか持たされてねえの? いざってときは射殺OK! みたいな」

(;'A`)「本職の奴らは持ってるだろうが、俺らは無理だ」
  _
( ゚∀゚)「ふうん。銃とかレーザーってゲームでしか持ったことねえから、興味あったんだけどな」

 まあ頑張れよ。
 そう言って、ジョルジュはブースを離れていった。

('A`)「……あいつは本当にゲーム好きだな」

( ^ω^)「ちょっと物騒なゲームばっかだけど」

 向こうでジョルジュがくしゃみをする。
 2人は互いを見交わし、苦笑した。



# # #

80 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:57:24 ID:ksyKNxfAO


『ブーン、時計塔前の広場に移動して。私達が南通りに行くから。
 広場の東通り近く、お願いね』

( ^ω^)「はいはいおー」

 3時間ほど経った頃、ツンの指示が入った。
 本部に連絡してから、通りを抜け、広場へ移動する。

 広場は一層賑やかだ。
 東と北の通りから、料理の香りが漂ってくる。
 今年も屋台の人気投票をやるならば、例年通り、ニューソクが1位を持っていくだろう。

('A`)「最終日はここで流石一座の公演がある。
    多分、来客はその日が一番多いだろうな」

( ^ω^)「流石一座! 去年は凄かったおねえ」

 昨年、ヴィップで行われたラノベ祭の締めを飾った、流石一座の公演を思い出す。
 舞台がヴィップということもあり、からくりをふんだんに利用した豪華な演目だった。

81 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:57:29 ID:vfswNC6A0
支援!
応援してる!

82 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:58:46 ID:AIUivWPc0
エンタメ感が楽しい
支援支援ー

83 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 20:59:06 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「サーカスに売られた姉妹がスターにのし上がってく、ミュージカル仕立てのドラマで」

(*'A`)「団長役の兄者達の演技が小憎たらしいったらなかったな。
    そんで、また、姉者さんの綺麗なこと綺麗なこと。姉者さんのファンなんだよ俺。
    まあクー様には敵わんが」

(*^ω^)「僕は妹者ちゃん派だお。
       あのときはツンとデレも脇役として出演したけど、反時計症の影響で2人共小さくて可愛くて!!
       ありゃ堪んねえお本当ずっと小さければいいのに」

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/83.jpg】

(*'A`)「流石一座の映像ディスク、去年の公演のが一番売れたそうだ」

(*^ω^)「そりゃ、あんだけ可愛い女の子が出てりゃ──」

(´・ω・`)「あれ、ブーン達じゃないか」

(*^ω^)「──お」

 後ろから掛けられた声に振り向けば、そこには友人が立っていた。
 時計塔の近くにある居酒屋、「呑み所 庶煩」の店主であるショボン。
 ニューソクで修行しただけあって、人気は高い。

 ブーンとドクオは咳払いをし、ショボンへ向き直った。

84 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:00:47 ID:AzUIyUiwO
おー、ここでこれが来るのか!

85 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:00:53 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「屋台はどうしたんだお」

(´・ω・`)「盛況すぎてね。居酒屋に材料を取りに戻るところさ。
      2人共、今年は警備やらされるんだって? 頑張ってね」

( ^ω^)「頑張るおー」

('A`)「正直、ほぼ機械頼りだけどな」

(´・ω・`)「まあヴィップの技術があればそうなるか。
      そういや時計塔の飾り付けも手伝ったそうだね」

( ^ω^)「おかげで碌に寝てないお」

 3人は同時に時計塔を見上げた。
 花やリボン、針金細工に彩られた時計塔を見る度、
 昨夜から朝方までの苦労が蘇る。

86 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:01:27 ID:ksyKNxfAO

(´・ω・`)「その甲斐あって、時計塔がますます立派になったじゃないか」

('A`)「そう言われりゃ救われるや」

( ^ω^)「ほんとに。
       ……ったく、ショボンと話してると酒が飲みたくなって仕方ないお」

(´・ω・`)「残念、今年は日中に屋台で酒を出すのは禁止されてるんだ。
      ニューソクには20歳未満は飲酒禁止って法律があるからね。
      だから、屋台で酒が出されるのは夜になってから日付が変わるまでだよ」

( ^ω^)「それは残念なことで。
       ああ、早く夜にならないかお……」



 その言葉が落ちた瞬間。

 ぎぎ、と、重く、不快な音が響き渡った。

87 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:02:36 ID:ksyKNxfAO

 音は止むことなく鳴り続け、反対に人々の喧噪は徐々に収まり、
 皆、不安げな表情で互いに顔を見合わせている。

('A`)「──上だ」

 ドクオが言うまでもなく、全ての人の目が上へ向かっていた。

 その先は──時計塔。

( ^ω^)「は」


 時計塔の針が、有り得ない速さで回っている。

 秒針が回り、長針が回り、短針が動く。

 3時を示していた時計は、4時を指し、5時を指し、6時を指し──
 それに合わせて、日が落ちていく。

88 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:02:41 ID:UGQr2aY60
おもしろいぜええ
支援

89 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:05:12 ID:ksyKNxfAO

 やがて時計は、9時を指して止まった。
 秒針も長針も短針も、全てがぴったりと。

 そして辺りは真っ暗になっていた。

 突然のことに、誰も動けない。
 たっぷりと間をあけてから、街灯やステージの電飾に明かりが灯される。

 そこかしこに設置されているスピーカーから、運営のアナウンスが流れた。


『──皆様! 速やかに近くの建物へお入りください!
 決して1人にならず、子供を優先させて──』


 ぶつり、アナウンスが途切れる。
 先程ついたばかりの明かりが次々に消えていき。


 何もかもが完全に沈黙した。


 ブーンが、停止した思考を無理矢理に動かし始める。
 何かのイベントか? 聞いていない。これほどの規模なら、警備員にはあらかじめ通達される筈。
 そもそも。

 こんなこと、どの国の技術でも──無理だ。

90 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:08:13 ID:TQ7dum1oO
あらチーさんじゃなかったのか、誰だか知らんが楽しみにしてるから頑張ってください!

91 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:08:13 ID:ksyKNxfAO

 ついに1人の声が上がる。
 それは誰もが到達する答え。

「──魔法だ」

 この場を恐慌状態に叩き落とすには、充分すぎるほどの。


「魔法だ! ──魔法使いが来たんだ!!」


 一斉に人の波が動いた。

 流れに巻き込まれ、ブーンの足が浮かぶ。

 そのまま押し出されるようにして、彼は倒れた。
 幾人もの足に蹴られて、踏まれて。



 意識が、闇に塗り潰された。



# # #

92 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:08:14 ID:LY.4fvhg0
何だ何だどうなるんだ…がんばれ支援

93 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:08:47 ID:E42B9ikM0
全部の絵ってすげえな
応援しつつ支援する

94 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:09:21 ID:ksyKNxfAO


( ‐ω‐)

( ‐ω^)

( ‐ω‐)

( ^ω^)

 ブーンは身を起こした。
 全身が痛み、気を失う寸前に散々蹴られたのを思い出した。

 依然として暗い。広場に人気は無し。
 辺りの建物から、ざわざわと物音や話し声が聞こえる。
 全員、避難は済んだようだ。

(;-A-)「うう……」

( ^ω^)「あらやだ」

 ドクオが横にいた。
 ブーンと同じ目に遭ったらしい。

 とりあえずドクオを叩き起こし、状況を確認した。

95 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:10:26 ID:ksyKNxfAO

(;'A`)「いてて……おい、無線は使えるか?」

( ^ω^)「あー……無理だお」

(;'A`)「マジかよ。クー様が心配だな……」

( ^ω^)「多分、避難した人達と一緒にいると思うけど。
       ……その辺の店に入るかお、僕達も。
       本当に魔法使いが出たなら危険かもしれんお」

('A`)「だな。ったく、魔法って何でもアリだな」

 腰を上げる。
 服を払うドクオに、ふと、ブーンは訊ねた。

( ^ω^)「ドクオ、知ってるかお?
       『シタラバニアの夜』」

('A`)「いいや」

96 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:12:15 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「ニューソクにある童謡だお。前にショボンから聞いたんだけど。
       『シタラバニアの夜は恐い恐い。もしも人間が出歩けば、
       おばけに見付かり食べられる』」

( ^ω^)「これが一番。二番以降は知らんお」

('A`)「ふうん。……おばけって何だ? 動物?」

( ^ω^)「死んだ人間の魂とか、怪物を総称して『おばけ』と呼ぶらしいお。
       ニューソクではよく聞く話だとか何とか」

('A`)「死んだ人間? 生き物は死んだら魂も無くなって終わりだろ?
    怪物だって想像上のもんだし。それが出てくるって、どういうことだ?」

( ^ω^)「『どういうことか』が分からないのがミソなんだお。
       有り得ないものが実は居るかもしれない、って考えて怖がるのを楽しむんだろうお」

('A`)「なるほどね」

( ^ω^)「魔法のせいでここが夜になったんなら、これもシタラバニアの夜ってことで
       おばけが出るかもしれないおね」

 2人とも、存外余裕があった。
 どうでもいい話をしながら、どの建物に入ろうか見渡して──

97 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:14:11 ID:ksyKNxfAO


川д川


 突如、目の前に髪の長い女が現れる。
 ブーンもドクオも、反応出来ずに固まった。

( ^ω^)('A`)

 本当に突然だった。
 先程まで見落としていたとか、そういうことでなく。
 本当に突然、ぱっと現れた。

 お互い、動かない。
 睨み合い──女の髪が長すぎて、目が見えないのだが──と、
 沈黙に耐え切れなくなったのはブーンだった。

( ^ω^)「……どちら様ですかお」

 返答次第では保護する。
 返答次第では逃げる。

川д川

 女が首を傾げた。
 下方へ髪が下がり、片目が露になる。
 その目は、ブーンとドクオを交互に見て、それからブーンに落ち着いた。

98 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:14:57 ID:ksyKNxfAO



川д゚川「……私のこと、好き……?」



 示し合わせるまでもなく、男2人は駆け出していた。



# # #

99 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:15:41 ID:ksyKNxfAO


(;^ω^) ゼーハーゼーハー

(;'A`) ゼヒューゼヒュー

 約3分後。
 2人は、東通りの端でへたり込んでいた。
 先の女はいない。撒けただろうか。

(;^ω^)「さっきの何」

(;'A`)「俺が、し、知るかよ……っ、げほっ」

 そうは言いつつ、互いに互いの思考は大体読めた。

 魔法使い。
 それしか考えられない。

(;^ω^)「……どうするお」

(;'A`)「さっきのに見付かんねえように、どっかの建物に入る。とか」

 汗を拭う。
 月明かりの中、無人の屋台が連なっている。
 空っぽの容器が風で転がり、からからと音を立てた。

100 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:16:43 ID:ksyKNxfAO

 ──不意に、ブーンは振り返った。

( ^ω^)「声がするお」

(;'A`)「あ?」

( ^ω^)「女の子が泣く声」

 押し殺したような泣き声が聞こえる。
 ブーンはドクオの制止を無視し、そろそろと声の方向へ歩いていった。

 声は、ある屋台の中からしていた。
 ニューソクの名物の、とあるお菓子の屋台だった。
 手で持つと硬いのに、口に入れた途端にとろりと蕩ける、クリーム味の飴。

( ^ω^)「……お嬢さん」

*( ;;)*「……あう」

 大量に散らばった飴の傍に、彼女はいた。

 幼い女の子。
 ブーンを見るや逃げようとしたが、そっと涙を拭ってやると大人しくなった。
 屈み込み、少女の顔を覗き込む。

101 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:17:57 ID:ksyKNxfAO

( ^ω^)「こんなところで、どうしたんだお」

*(。‘‘)*「……お母さんと逸れて、いっぱい人が走って、ヘリカル転んじゃって、それで、怖くて、」

( ^ω^)「ヘリカルちゃんっていうのかお?
       ヘリカルちゃん、どこの国の子だお」

*(。‘‘)*「ニューソク……」

( ^ω^)「何歳だお?」

*(。‘‘)*「8歳」

(*^ω^)「おっふ……それはそれは……」

(;'A`)「お、おい、そいつ、さっきの奴の仲間じゃねえだろうな」

( ^ω^)「ドクオ。何てこと言うんだお。ヘリカルちゃんに失礼だお」

(;'A`)「でもよお」

( ^ω^)「それに、たとえヘリカルちゃんが魔法使いでも、
       こんなに可愛いんだったら僕はもうどうなってもいいお」

(;'A`)「わーい! 1人でくたばれ馬鹿!!」

102 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:19:54 ID:ksyKNxfAO

 さて、さっさと逃げなかったのが悪いのか、ドクオが大きな声を出したのが悪いのか。

川д川「みいつけたあ……」

( ^ω^)('A`)*(‘‘)*


 先程の女が、屋台の上からブーン達を見下ろしてきた。


 2度目の遭遇ともなれば、対処も早い。
 ブーンはヘリカルを小脇に抱え、ドクオはブーンの襟を引っ張って立ち上がらせ。
 そうして、同時に走り出したのであった。

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/9.jpg】

(;^ω^)「あーもう嫌んなっちゃう!!」

(;'A`)「うおっ、追っかけてきてんぞ!!」

*(;‘‘)*「あ、あの、あれ誰ですか」

 「こっちが訊きたい!」。
 ブーンとドクオの声が重なった。



# # #

103 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:22:48 ID:ksyKNxfAO


 面倒なことになった。

 ある店舗の中、ぎゅうぎゅうに詰められた人、人、人。
 ニュッは何度目ともつかない溜め息を吐き出した。

(;^ν^)(シナー達はどこ行ったんだよ)

 南通りで反時計症の人間がいないか探していた最中に
 いきなり暗くなって、アナウンスが流れて、アナウンスが切れて、
 魔法使いがどうたらこうたらと騒ぎになって、近くにあった店にみんな逃げ込んで。
 今に至る。

 見た限り、ニュッに誘拐の話を持ち掛けた「共犯者」達はここにいない。
 これからどうしたらいいのか分からなかった。

 困っているのはニュッだけではない。
 明かりがつかない上に、ありとあらゆる連絡手段が途絶えているため
 誰も身動きがとれないでいた。

 この状況も長くは持つまい。
 何が何だか分からぬまま、みんながみんな、じっとしていられるわけがないのだ。

「──おい! 外はどうなってるんだ!」

 そら、来た。

104 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:24:22 ID:ksyKNxfAO

「いつまでここに居ればいいんだ?」
「私が分かるわけないじゃない!」
「一旦、外の様子を見に行くしかないんじゃないか」

ζ(゚ー゚;ζ「あの! 落ち着いてください!!」

 そこへ、少女の一喝が響いた。
 しんと静まり返る。

ζ(゚ー゚;ζ「もう少し時間が経てば、国王直属の警備部隊が動く筈です。
      だから、どうか、しばしの辛抱を」

 月光の差す窓辺に、少女が2人立っていた。

 黒髪の少女と癖毛の少女。
 癖毛の方は、セーラー服を身につけていた。ニューソクの人間だろうか。

105 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:26:21 ID:ksyKNxfAO

川 ゚ -゚)「それに、いざとなれば私達が外の様子を見てくる。
     君達に勝手に動かれる方が危険だし、迷惑だ」

ζ(゚、゚;ζ「あ、その言い方は良くない」

 納得した者はいないだろう。
 だが、文句を言う者もいなかった。
 不安に震える人間よりも、きっぱりと指示を出せる人間の方がよっぽど強い。

 ニュッは壁に凭れ掛かり、ぼんやりと彼女達を眺めた。
 どちらも15歳くらい。
 癖毛の少女が、黒髪の少女に顔を向けた。

ζ(゚、゚*ζ「……ツンちゃん、どこ行ったかな」

川 ゚ -゚)「あいつのことだから、逃げ遅れた人間がいないかどうか確認してるかもな」

ζ(-、-;ζ「うう、姉として誇らしいやら心配やら……」



# # #

106 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:30:06 ID:ksyKNxfAO



ξ;゚⊿゚)ξ「──要するに、あれが何なのか分かんないわけね。
      魔法使い説が一番有力だけど」

(;^ω^)「うん! ツンちゃん助けて!」

(;'A`)「ひいっ、ひいっ、ひいっ」

 逃走者が増えた。

 というのも先程、角を曲がったところでツンと鉢合わせたのである。

 子供を抱えて走るブーン、既に体力の限界を迎えて死にそうなドクオ、追ってくる女──とくれば、
 ツンも、どうするべきかは分かる。

 そんなわけで、仲良く3人(とヘリカル)で並んで逃げることになったのであった。
 時計塔の件から今に至るまで、逃げながら一通り説明はした。

107 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:31:32 ID:ksyKNxfAO

川д川「待ってよう、ねえ、ねえ、ねえ……」

*(;‘‘)*「まだ追ってきてます……」

ξ;゚⊿゚)ξ「言われなくても分かってるっつうの!」

( ^ω^)+「ツン! せっかくヘリカルちゃんが教えてくれたのに、何て言い草だお」キリッ

ξ;゚⊿゚)ξ「黙れ!」

 ヘリカルを抱えている分、ブーンは全力で走れない。
 ツンは頼りになるので、何か解決策を思いついてくれるかもしれない。
 ドクオはもう足が覚束ない。

 結論は一つ。

( ^ω^)「ドクオ!」

(;'A`)「ああ!?」

( ^ω^)「短い付き合いだったけど、さようなら!」

(;'A`)「は?」


 ブーンは、ドクオの足を蹴飛ばした。

108 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:33:54 ID:ksyKNxfAO

(;゚A゚)「はぁあああああああ!!?」

 ドクオが転ぶ。
 慌てた様子で上半身を起こしたが、あの疲れようでは立ち上がれないだろう。

ξ;゚⊿゚)ξ「あんた何してんの!?」

( ^ω^)「いやドクオが『囮になりたい』って言うから。僕は反対したんだけど」

*(;‘‘)*「言ってないですよ!?」

( ^ω^)「ありがとうドクオ! もしも本当に、おばけという存在がいるのなら
       是非ともおばけになって僕らに再び顔を見せておくれ!」

(;゚A゚)「ふざけんなぁあああ!!!!!」

109 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:34:04 ID:T7OndOeM0
ちょwwwひでぇwww

110 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:35:33 ID:ksyKNxfAO

 ドクオが遠くなる。
 ブーンは一仕事終えたときの爽やかな笑顔で走りながら、
 友人の最期を見届けようとした。

 が。

( ^ω^)「お?」

*(;‘‘)*「あ」

(;゚A゚)「うわあああああ来るなぁああああああああああ……ああ……あ?」


    ヒュバッ
(;'A`) ≡≡≡川 д川


 ──女は、ドクオを素通りした。

 そのままブーン達を追ってくる。
 完全に油断して速度を緩めていたブーンは、舌打ちしてから前へ向き直った。

111 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:37:07 ID:AzUIyUiwO
ドクオwww

112 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:38:09 ID:ksyKNxfAO

(;^ω^)「ううむ、ドクオの相手はしたくないのかお。それとも僕を御所望か」

ξ゚⊿゚)ξ「……『おばけ』……」

(;^ω^)「ツンちゃん、ぼうっとしてたら捕まるお! ほらスピードアップ!」

ξ゚⊿゚)ξ「……ねえ」

(;^ω^)「何だお?」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたじゃなくて。ええと、ヘリカルちゃん。
      あなた、ニューソクの子なんですっけ?」

*(;‘‘)*「は、はいっ」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ『シタラバニアの夜』って知ってる? おばけの歌」

*(;‘‘)*「……知ってます」

ξ゚⊿゚)ξ「私ね、一番までしか知らないの。ヘリカルちゃん、二番は分かるかしら」

*(;‘‘)*「分かります……お母さんがよく歌ってたから」

ξ゚⊿゚)ξ「教えてちょうだい」

 こんなときに何を言っているのだ。
 ブーンは横目でツンを睨んだが、ツンは至って真剣な顔をしている。

113 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:41:14 ID:ksyKNxfAO

*(;‘‘)*「えっと……『シタラバニアの夜は恐い恐い。もしも人間が出歩けば、
       おばけに見付かり食べられる』……」

*(;‘‘)*「『シタラバニアの夜は恐い恐い。生き物以外の世界では、
       人間なんて食べられる』」

(*^ω^)「いよっ、天使の歌声! アンコール!」

*(;‘‘)*「ええっ」

 ブーンを無視し、ツンは眉を顰めて考え込む。
 思考すること5秒。
 次にツンがブーンを見たときには、彼女の表情は自信に溢れていた。

ξ゚⊿゚)ξ「あれは魔法使いじゃないわ。
      魔法使いなら、こんな風に追ってこなくたって、私達ごとき簡単に捕まえられると思うし」

(;^ω^)「じゃあ何なんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「おばけかしらね」

 おばけ、とツンの言葉を繰り返して、ブーンの腕の中でヘリカルが青ざめた。

 ニューソクには、子供の躾として「いい子にしないとおばけに食べられる」という決まり文句があるのだと、
 いつだったかショボンが話していた。
 ソウサクで言うところの「いい子にしないと人攫いが来る」に似たようなものだ。

114 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:42:44 ID:ksyKNxfAO

*(;‘‘)*「へ、ヘリカル、食べられちゃうですか……?」

( ^ω^)+「君は僕が守る」

*(。‘‘)*「ヘリカル、お母さんと手、ちゃんと繋いでなかったから……
      悪い子だから、食べられちゃうですか……?」

 ついにヘリカルにまで無視されてきたが、変態はめげない。気にしない。

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫。何とかなるかもしれないわ」

*(。‘‘)*「え……」

ξ゚⊿゚)ξ「『生き物以外の世界』。
      つまり夜はおばけの世界ってわけだから、
      さっさと夜を終わらせちゃいましょう」

(;^ω^)「どうやって」

ξ゚⊿゚)ξ「……あんたの話が本当なら、
      時計塔の針が進んで夜になって、そのまま9時に固定されたのよね」

ξ゚ー゚)ξ「なら簡単よ」

 路地に入る。
 ツンはブーンを立ち止まらせると、跳ねるようにブーンの肩に乗り、
 そこから左の屋根に飛び移った。

115 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:43:30 ID:AIUivWPc0
ヘリカルくっそかわいいな

116 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:43:55 ID:ksyKNxfAO

ξ゚ー゚)ξ「時計を進めればいいんだわ」

(;^ω^)「ツンさん? どこ行く気だお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオを時計塔に連れてく。
      ……理由は分からないけど、おばけの目的はあんたみたいだから、
      せいぜい夜明けまで頑張ってね」

 軽やかな身のこなしで、ツンがブーンの視界から消える。
 ブーンはしばらく呆然としていたが、女の足音が近付いてきたので
 泣く泣く足を動かした。



# # #

117 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:46:18 ID:ksyKNxfAO



( <●><●>)「駄目です。
       時計塔の時計機械室は、ごく一部の者しか入れないことになっています」

 時計塔内部。
 ドクオとツンは、ソウサクの警備指揮責任者、ワカッテマスと対峙していた。
 対峙とは言っても、電気が通っていない今、この暗闇では相手の顔も見えないが。

ξ;゚⊿゚)ξ「別に壊すわけじゃないんだし、針を動かすくらい構わないでしょう!?」

( <●><●>)「しかし……決まりは決まりですから。針を動かすなら、専門家を呼ぶ必要があります」

ξ;゚⊿゚)ξ「その専門家はどこにいるんですか!」

( <●><●>)「……恐らく、王家の屋敷に。
       今は警備部隊が国王様を屋敷にお連れしているところですから、
       彼らを追いかけて、話をつければ……」

ξ;゚⊿゚)ξ「時間が掛かりすぎるわ! 急がないといけないの!」

(;'A`)(……ああ、面倒くせえ)

 ドクオは、げんなりしながら頭を掻いた。

 いきなり時計塔に引っ張ってこられて、ツンに「時計を動かせ」と言われたかと思えば
 ワカッテマスに「駄目だ」と言われて。
 どうすればいいのだ。

118 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:47:54 ID:vwaIg/TI0
支援支援!

119 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:48:36 ID:ksyKNxfAO

(,,゚Д゚)「なあ」

('A`)「ん?」

 すぐ後ろから、ギコの囁きかける声が聞こえた。
 暗くて見えもしないが、そちらを振り向く。

(,,゚Д゚)「正直、外で何が起きてたのか、よく分かんねえんだけどよ。
     時計をどうにかすればいいのか?」

('A`)「……俺もよく分かんねえよ。ただ、可能性に賭けたいってだけだろうさ」

(,,゚Д゚)「時計を動かせれば何とかなる『可能性』があるわけだな。
     あんた時計職人か?」

('A`)「いや。機械いじるのが少し得意なだけだ」

 小声で会話を交わす。
 そのとき、ギコとは反対の方向からドクオの腕に何かが当たった。

('A`)「?」

(‘_L’)「携帯用の工具箱だ。腰に付けられる」

 フィレンクトの声。
 押し付けられるがままに、ドクオは工具箱を受け取った。

120 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:49:54 ID:ksyKNxfAO

(;'A`)「工具箱?」

(‘_L’)「大きな声は出さずに。
      ……なるべく気配を消して、梯子を登るんだ」

(;'A`)「何を……まさか機械室まで行けってか!?」

(‘_L’)「ツンさんは『急いでいる』と言う割に、さっきから進まない話をずっと続けている。
      恐らく、彼の意識を自分にだけ向けたいのだろう」

(;'A`)「……俺が機械室に行くのを邪魔されないために?」

(‘_L’)「多分。少なくとも私ならそうする」

(,,゚Д゚)「この暗さなら、音にさえ気を付ければ見付かることはないしな」

(;'A`)「……」

121 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:51:01 ID:AV3YAVpA0
支援!

122 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:52:05 ID:ksyKNxfAO

(,,゚Д゚)「行ってこい。専門家だの何だの、そんなもん呼ぶのに時間が掛かるぐらいなら
     この場にいる『出来そうな奴』に任せた方が、よっぽどいい」

(;'A`)「なかなか思い切りがいいな」

(,,゚Д゚)「ヴィップ人の気質なもんでな」

(;'A`)「ヴィップ人なら俺より機械に詳しいだろ。あんたらが行ったらどうだ」

(‘_L’)「私達はあくまで警備として機械を扱うことが多いだけで、技術屋ではない。
      君に頼るしかないんだ」

 断れる雰囲気ではない。
 ツンとワカッテマスの怒鳴り合いを聞きながら、
 大体の位置を把握しているというフィレンクトにより、梯子のもとまで案内された。

(‘_L’)「頑張ってくれ。途中で落ちないように」

(;'A`)「言うなよ」

(‘_L’)「10個目の足場まで来たら、今度は左に階段がある。
      そこから階段を上り終えたところの頭上に、時計機械室に通じるハッチがあった筈だ。
      時計塔に入る際に説明を受けた」

 工具箱を腰に付けて嘆息すると、ドクオは梯子を掴んだ。


.

123 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:54:24 ID:ksyKNxfAO


 そうして数分。

 どれほど登ったか分からない。ツン達の声は、だいぶ遠くなった。
 手が痺れる。
 恐怖で足が震える。

(;'A`)(あーあ、引き受けなきゃ良かった)

 どうして自分が任されねばならないのだろう。
 これで上手く行かなかったら、どうなる。

 反時計症を患う前の記憶が蘇る。
 あのときも、たくさん期待された。
 期待されて、反時計症を発症して、終わった。

124 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:55:06 ID:ksyKNxfAO

('A`)(くそ……)

 いっそ手を離して落ちてしまおうか。
 全ての責任を放棄して。

 でも。

('A`)(……そしたら、もう、クー様に会えなくなるよなあ)

 クールに会えなくなるし。
 流石一座の公演を見られなくなるし。
 自分を囮にしたブーンをぶん殴れなくなる。

 嫌だ。

 ドクオの手に力が籠る。
 体を持ち上げ、一段、また一段。

 梯子が途切れ、足場に着いた。
 これで10個目。次は左の階段へ。

.

125 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 21:58:59 ID:ksyKNxfAO


 それから、さらに数分。
 数えるのも億劫になるなるほどの階段を上り終えた。
 フィレンクトに言われた通り、頭上に取っ手の感触。

 押し上げてみると、すんなり開いた。

('A`)(……鍵は掛けてないのか?)

 梯子を登る直前に、フィレンクトからは「鍵があれば壊してしまえ」と言われた。
 ドクオもそれを覚悟していたのに。
 しかし考えても仕方ない。工具箱を確認し、時計機械室に入る。

 上部の小窓から月明かりが入り込んでいるのか、
 物の輪郭がうっすらと分かる程度の視覚情報は得られた。

 目を凝らしつつ、手探りで部品を確かめる。
 扱ったことのない大きな歯車から、小さな歯車まで。
 数はそこまで多くない。

126 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:01:16 ID:ksyKNxfAO

('A`)(この大きさで……この位置なら)

 推測でしかないが、全体図を脳裏に描く。
 どの部品がどの働きをするかを脳内の設計図から探っていく。
 合間合間があやふやで、大変心許なくはあるが。

('A`)「……お、あった」

 部品を辿っていき、針を回すための装置を見付け出す。
 この時計塔の時間がずれることはそうそう無いので、滅多に使われないだろう。

 このハンドルを回すだけで済めば、簡単な話なのだけれど。

(;'A`)「ふっ……! く……!」

 案の定動かない。
 ぎちぎちと僅かに揺れる感触はあるのだが、しっかりとした手応えが来ない。

 油を差してみようか。しかし油が無いのだ。
 どうしたものか──

127 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:02:49 ID:ksyKNxfAO

(;'A`)「……ん?」

 顔を上げる。
 音に気付いた。

 もう一度、装置をいじってみる。

 ぐしゃり。
 何かが擦れるような音。
 近い。

 音を確かめながら方向を探る。
 すると、真ん中の歯車と歯車の間に、機械とは違う感触があった。

(;'A`)(歯車が何か噛んでやがる)

 「それ」の端っこを掴むと、ドクオの手の中で、くしゃくしゃと形を変えた。
 引っ張る。しっかり巻き込まれているようで、抜き取れない。
 さらに力を込めると、びり、と一部が裂けるような音がした。

128 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:04:39 ID:ksyKNxfAO

(;'A`)(丸めた紙?)

 腰の箱からドライバーを取り出し、隙間に突っ込んで
 紙をぐいぐいと押していく。

 工具の先端で圧迫すれば、その分、紙はへこむ。
 じっくりと、紙の形を変えながら、徐々にずらしていく。

 やがて──


(;'A`)「抜けた!!」


 紙が、歯車の間から抜け落ちた。

129 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:05:23 ID:ksyKNxfAO

 ぎりぎり、あちこちの歯車から音が鳴る。
 動き出した。

 急いで装置のもとに戻った。
 ハンドルを捻れば、ぐるりと回る。

 針が動かせる。


(;'∀`)「……はは」

 何だか、清々しい気分だ。



# # #

130 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:07:39 ID:ksyKNxfAO



 広場に出たところで躓いた。
 ヘリカルを庇うように倒れたおかげで、彼女に怪我を負わせることはなかった。

*(;‘‘)*「だっ、大丈夫ですか!?」

(;^ω^)「だい、じょうぶ、……じゃ、ないおね……」

 上半身は起こせたが、立ち上がれない。
 隠れたり走ったり、ブーンも、もう限界だった。

 ひたひた、近付く足音。
 こちらが動けないのを知って、敢えてゆっくり歩いているような嫌らしさ。

川д川

 ほんの指一本分の距離をあけて、女が立ち止まる。
 ブーンはヘリカルを背に隠し、女を睨みつけた。
 ヘリカルに「逃げろ」と囁いたが、残念なことに、腰を抜かしてしまったようだ。

131 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:09:10 ID:ksyKNxfAO

(;^ω^)「……あのう、お姉さん。
       僕、別に悪いことしてませんお。小さい女の子に手を出したこともないし。
       僕ってこれでも、いい子な方だし。だから、あの、……見逃してください!」

*(;‘‘)*「さ、さっき、お友達を蹴って……」

(;^ω^)「ヘリカルちゃん、ちょっと静かにしよう!!」

川д川

川д川「……私のこと、好き?」

(;^ω^)「……は、い?」

 女がしゃがみ込む。
 気のせいだろうか。青白い肌が、ほんのりと赤く色付いているように感じる。

 女の手が、ブーンの頬を優しくなぞった。

132 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:10:43 ID:ksyKNxfAO

川*д川「……好き……?」

 悪意は感じられなかった。
 寧ろ、彼女の指先からは、恋する乙女のような純粋さと恥じらいが伝わってきた。

 ブーンには異性からモテた経験など無いが、かといって、その方面に鈍いわけでもない。
 そんな仕草で「自分が好きか」と訊ねるのは、もはや告白にも似ていて。

 ここで、お前は何を言っているのだと問うほど不粋なこともない。
 ひとまずは彼女のために答えるべきだ。
 そう考え、ブーンは口を開いた。



( ^ω^)「いや。僕、10歳以下の女の子にしか興味ないんで」



 空気が読めないと言うなかれ。

 彼はただ、自分自身に正直なだけなのだ。

133 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:12:05 ID:ksyKNxfAO

川д川

( ^ω^)

川д川

( ^ω^)「ガチで」

川д川

( ^ω^)


 いちおう駄目押しもしておく。
 ブーンの顔は誇らしげだった。

134 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:12:40 ID:vwaIg/TI0
このロリコンブーンぶれないな

135 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:14:30 ID:ksyKNxfAO

川д川「ころす」

 ぽつりと落ちた呟きは、不穏すぎるくらい不穏な。

 ブーンはようやく危機を悟った。
 しまった、と思ったときにはもう遅い。

川#゚д川「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅうううああああああああああ!!!!!!!!!!」

(;^ω^)「うべっ」

 女がブーンに飛び掛かる。
 その勢いのままブーンは倒れ、傍らでヘリカルが悲鳴をあげた。

 馬乗りになった女に、首を絞められる。
 ブーンが本気で抵抗しても彼女の手は一向に外れない。

 ヘリカルは、かたかたと震えながら叫ぶばかりだ。
 這ってでも逃げようという発想が出てこないほどパニックに陥っているらしい。

136 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:15:43 ID:ksyKNxfAO

 このままブーンが殺されたら、次はヘリカルが狙われるだろうか。
 それは困る。
 しかし対策も浮かばない。

 目の前がちかちかする。
 苦しい。

   ξ゚⊿゚)ξ『せいぜい夜明けまで頑張ってね』

 ツンの顔と言葉が脳裏に浮かんだ。
 ずいぶん簡単に言ってくれたものだ。
 死んだら、おばけになってツンの前に出て、泣かせてやる。

137 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:16:24 ID:ksyKNxfAO





 ふっ、と。

 呼吸が楽になった。

138 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:16:34 ID:iYl4p9to0
全部の絵が使われると聞いて

139 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:17:55 ID:ksyKNxfAO

(;^ω^)「おっ……」

川#゚д川「──!?」

 跨がる女の重みも消える。
 首に伸ばされた腕を払うと、今度は振りほどけた。

 そのとき、自分の手が小さくなっているのを見た。

(;^ω^)「あっ」

*(;‘‘)*「え……」

 服が一気に大きくなったような感覚。
 唖然としている女の下から這い出る。
 落ちてしまいそうなシャツを手で押さえつつ、転がるようにヘリカルの隣へ逃げた。


 ──いつの間にか、子供になっていた。

 それも、ヘリカルより幼いくらいの。

140 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:19:41 ID:ksyKNxfAO

 時計塔へ顔を向ける。
 進んだ針は、12時を越えていた。

(;^ω^)「……!!」

 体の疲労が消えている。
 ブーンはヘリカルの手を引いて立ち上がらせると、
 ずるずるとシャツを引きずりながら、女との距離をとった。

 我に返ったのか、女がブーン達を睨む。。
 彼女が今すぐにでも3歩進んで手を伸ばせば、捕まってしまう。

141 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:20:47 ID:ksyKNxfAO

 1時。
 2時。
 3時。時計の針は、どんどん回る。

 4時。空が白み始める。
 5時。朝日が顔を覗かせた。


川;д川「──ひっ」


 女の喉から、引き攣ったような声が漏れる。
 ブーンに向けた手を引っ込め、自身の顔を覆って。

川;д川「ああっ、眩しいっ、眩しい……──!!」


 ──陽光に照らされた瞬間、女は消えた。

.

142 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:24:17 ID:ksyKNxfAO

 広場が完全に明るくなり、時計の針はいつも通りの速さに戻る。
 力が抜けた。その場に座り込む。

 広場を囲む建物の窓から、避難していた人々が顔を出す。
 その中にいたショボンが、ブーンに手を振っていた。
 ぶかぶかの袖で振り返す。

*(;‘‘)*「お兄さん、ちっちゃくなっちゃった……」

(;^ω^)「……日付が変わったからね」

 投げやりに答え、ブーンは、肺一杯に吸い込んだ空気を吐き出した。

 もう何が何だか。

143 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:25:07 ID:ksyKNxfAO



 ラノベ祭。残すところ、あと6日。

 とてもじゃないが、無事に終わってくれそうにない。



# # #

144 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:27:44 ID:ksyKNxfAO


ζ(゚、゚;ζ「夜を越えて、日付が変わった……ってことでいいのかな?」

川 ゚ -゚)「多分な」

 ──例の少女2人が、お互いの顔を見交わしている。
 いや。もう、少女と呼ぶには相応しくない。

 周りの人間は外が明るくなったことに気を取られているが、
 ニュッだけはあの2人から目を離さずにいた。

 今し方。明るくなる直前、彼女達は急に成長した。
 黒髪の方が、ニュッの目測、プラス5歳前後。もう片方がプラス10歳ほど。
 癖毛の方は、適齢を越えた自身のセーラー服姿に少々の羞恥心を抱いているようだった。

【ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/56.jpg】

ζ(゚ー゚;ζ「あはは、ちょっとキツい……。
      ……あっ、髪の紐切れたっ。やっぱ伸びる素材の方が良かったかな……。
      もうっ、こんなことなら普通の服にしとくんだったよ」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ、20代半ばの制服姿もなかなかそそるものがある」

ζ(゚、゚;ζ「何が大丈夫なの? 何のフォローなの?」

145 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:29:35 ID:ksyKNxfAO

( ^ν^)(──……反時計症)

 反時計症は、日付の変更と共に年齢が変わる。
 あの女2人。反時計症の人間だ。

 周囲のざわめきが鬱陶しい。
 こっそりと2人に近付き、耳を澄ませる。

ζ(゚、゚;ζ「あっ、皆さん! まだ外に出ないでください!
      今、私達が確認します!」

川 ゚ -゚)「どれどれ」

 黒髪の女が、ピンのようなものを口元まで持ち上げた。
 警備員はあれで連絡を取り合う。祭が始まってすぐの頃に共犯者が仕入れた情報。

川 ゚ -゚)「……お、通じるようになったな。やあツン、私だ。クール。
     無事か? そうか」

 クール。黒髪の名前。

川 ゚ -゚)「今は南通りの文具店の中だ。デレも一緒にいる。誰も怪我はしてない」

 デレ。癖毛の名前。

146 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:30:56 ID:ksyKNxfAO

『クー様!!』

川 ゚ -゚)「うお」

 黒髪──クールが顔を顰め、右耳からイヤホンらしきものを引っこ抜いた。
 そこから、微かに男の声。

『クー様! 俺! 俺が頑張った! 褒めてください!!』

『作戦考えたのは私よ!?』

『実行したのは俺だろうが!!』

『だからってあんた1人の手柄にされたくないわ! そもそも──』

ζ(゚ー゚;ζ「……元気そうで何より」

川 ゚ -゚)「うん、まあ、後で聞くから落ち着け。
     とりあえず、私達はどうすればいいだろうか」



# # #

147 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:31:59 ID:ksyKNxfAO





 今日も誰も来てくれませんでした。
 いくつのお菓子が無駄になったでしょう。
 何杯のお茶が無駄になったでしょう。

('、`*川「……みんな、忙しいのかなあ」

 近々、お祭りがあると聞きました。
 その準備に忙しいのかもしれません。

 きっと明日は来てくれる。
 きっと誰かが来てくれる。

 魔法使いはそう信じて、今夜も眠りました。



# # #

148 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:34:47 ID:ksyKNxfAO
今回はここまで
書き溜め終わらなかったから、せめてこの一話だけでも祭参加ってことにしたくて急いで投下した
なるべく全部書き溜めてから投下したいので、次回は来月になる。ごめん5歳

プロットとか何それおいしいの状態の行き当たりばったりだから、後で矛盾とか出たら書き直すかもしれない
たぶん強行するけど

というわけで読んでいただきありがとうございました!
イラスト使わせていただきありがとうございました!
総合で国名の案くれた方ありがとうございました!
そしてNo.125の絵で左をζ(゚ー゚*ζにしていいって書いてあったんでお言葉に甘えました

149 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:37:21 ID:ksyKNxfAO
>>148
ごめん5歳って何だよ……
正しくは「ごめんなさい」でしたすいません。携帯が悪い


今回使った絵
No.143
No.46
No.68
No.4
No.125
No.111
No.39
No.168
No.27
No.108
No.116
No.83
No.9
No.56
ありがとうございましたー

150 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:37:36 ID:LY.4fvhg0
やっぱ総合の人か!
超乙、続き楽しみにして待ってる
しかし全部の絵をきちんとまとめるの大変だろうになあ…
がんばって欲しいが、身体壊さんようにな

151 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:39:35 ID:AV3YAVpA0
乙乙乙
壮大になりそうだな!楽しみだ

152 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:42:17 ID:vwaIg/TI0
話に引き込まれる…続き気になる…
全部の絵を使うと聞いてどうなるのかと思ったけどこれは良作の予感
超応援してる乙乙!

153 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 22:42:22 ID:UGQr2aY60
今気づいたけどこれ携帯かよすげぇ
乙乙!設定面白い期待してる!!

154 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 23:00:21 ID:iYl4p9to0
乙!続きが楽しみ!
あと、しょっぱなに絵が使われててびっくりしたw
ありがとうございます

155 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 23:00:45 ID:E42B9ikM0
誰も使ってくれないだろうなと半ば諦めかけてたから描いた絵使ってもらえるのは嬉しいわ・・・全部とかすごいな
全身全霊かけて乙

156 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 23:04:35 ID:8A.MhRGk0
ガラクタの絵使ってくれてありがとう!
続きが楽しみだ。乙

157 名も無きAAのようです :2012/11/21(水) 23:38:39 ID:iMZ7RPcM0
乙〜
これは是非にがんばってほしい

158 名も無きAAのようです :2012/11/22(木) 00:52:20 ID:E1Z8J8N2O
来月まで待ってます!乙!

159 名も無きAAのようです :2012/11/22(木) 02:17:40 ID:3lF0DzzM0


160 名も無きAAのようです :2012/11/22(木) 03:03:13 ID:zR7Qmg7.0
使われるまで全裸待機してます
お疲れさまでした

161 名も無きAAのようです :2012/11/22(木) 09:43:57 ID:UhDZp8Dw0
乙!

162 名も無きAAのようです :2012/11/22(木) 10:17:21 ID:6JsZb7.Q0
ぜんぶとかすごいな!
貞子の絵を描いたんだけどコミカルに自然に使ってくれて嬉しい
頑張ってください

お疲れ様!

163 名も無きAAのようです :2012/11/22(木) 23:46:45 ID:X4rMOCFk0
おもしろいじゃないか!続きまている

164 名も無きAAのようです :2012/11/23(金) 03:20:05 ID:ToTp39p60
アメリカンな色のお菓子食べてみたいっす
どう絵消化をしていくのか楽しみです
ttp://imepic.jp/20121123/111750

165 名も無きAAのようです :2012/11/23(金) 13:09:26 ID:3HZ3/uC.O
>>164
うおお、ありがとうございます!!
色々と芸が細かい!
お菓子が毒々しくて綺麗だ

166 名も無きAAのようです :2012/11/24(土) 00:56:05 ID:MY8E72FkO
誰か特定した(ほとんどの人がわかってると思うが) 
ちょっと一時期離れてた期間があったので 
こんなにはまって書いてくれるなんて 
はい、俺ーの答え合わせ楽しみにしてるよ

167 ◆c9sFVHJv2E :2012/11/26(月) 00:55:15 ID:Tri.pNioO
祭期間終わったからひっそりひっそりはい俺ー

もしこのレスに気付いて興味を持ってくれた方がいらっしゃいましたら、是非とも酉で検索してみて、
そのままの勢いで作品読んじゃったりして、余力があれば素知らぬ顔で感想スレなどに行ってステマという名のオススメしてみてください
すると不思議なことに、クリスマスまでに恋人が出来ます。出来ない人もいます


来月投下と言いつつ、遅筆だししばらく来れないので下手すりゃ再来月投下になるかもしれない
話の流れは思いついたしかならず完結させるので見捨てないでください。どうか、どうか

168 名も無きAAのようです :2012/11/26(月) 14:49:15 ID:ernJHB9U0
いつまでも待ってるぞ

169 名も無きAAのようです :2012/11/27(火) 01:05:47 ID:IJ0F1vew0
期待

170 名も無きAAのようです :2013/01/06(日) 13:44:56 ID:MqoOH8KI0
まだかなー

171 名も無きAAのようです :2013/01/06(日) 15:36:04 ID:hGVXbwQUO
再来月ということは今月ということになるな

172 ◆c9sFVHJv2E :2013/01/11(金) 13:31:09 ID:rwjcZOMI0
年明けちゃった

書き溜めは順調です。リアルの方が色々不調です
長々と待たせてしまって申し訳ありませんが、いつ投下できるようになるか、まだ分かりません
逃亡しないってことしか約束できません。それでも許してくださるなら、ビンタしてください。許さないならビンタしてください
何だったら往復ビンタしてください。本当にすみませんでした

173 名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 23:33:02 ID:sLRYBE4s0
パンパンパーン
  ∧_∧ ∩
 ( ・∀・)彡☆
   ⊂彡☆))Д´)

174 名も無きAAのようです :2013/01/16(水) 20:07:06 ID:2GBJFlyI0

あけおめビンタ!
     ∩))
(*´・ω・`)彡  パンパンパンパン
  ((⊂彡☆∩))
  ((⊂((⌒⌒ (*´д`)
      `ヽ_つ ⊂ノ
いつまでもまってるよー

175 名も無きAAのようです :2013/01/25(金) 15:18:05 ID:urv66dGE0
( ^ω^)づ待ってるよー

176 名も無きAAのようです :2013/01/28(月) 00:50:27 ID:KH8ql7W.0
パンパンパーン
  ∧_∧ ∩
 ( ・∀・)彡☆
   ⊂彡☆))Д´)

まってるからな

177 名も無きAAのようです :2013/06/19(水) 00:14:18 ID:Sbm21ib.0
これ凄く好きだから続き読みたいな

178 名も無きAAのようです :2014/02/18(火) 05:53:56 ID:ipZG/6hI0
まぁだかなー

パンパンパーン
  ∧_∧ ∩
 ( ・∀・)彡☆
   ⊂彡☆))Д´)

179 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:30:39 ID:TW803YTwO

 今日もお客様は1人も来てくれません。

('、`*川「もっと美味しいお茶を入れないと」

 故郷の国から持ってきたお茶とお菓子は、まだまだたくさんあります。
 入れ方や組み合わせを工夫して、一番美味しく感じられるように頑張りました。

 それでもやっぱり、ひとりぼっちの日々。

 どうして誰も来てくれないのでしょう。
 美術館を開いたばかりのときは、あんなにたくさん来てくれたのに。
 お茶を入れたカップも、お菓子を乗せたお皿も、みんなすっかり空にしてくれたのに。


 ついに魔法使いは、ぽろぽろと泣き出してしまいました。

(;、;*川

 さみしいよう、さみしいよう。

 魔法使いの声が美術館の中に響いて、淡く溶けていきました。



# # #

180 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:31:45 ID:TW803YTwO


ξ゚⊿゚)ξ「祭は続行するみたいね」

( ^ω^)「『せざるを得ない』と言うべきか」

 ブーンとツンは顔を突き合わせ、一枚の紙を見下ろしていた。
 右上に「号外」と記されたその紙には、昨夜の事件と現状について説明が為されている。


 号外いわく。
 昨夜の出来事は、十中八九、魔法が関わっている。
 怪我人・行方不明者はゼロ。

 そして国王や警備部隊のもとに、何者かから手紙が届いていたというのだ。

 「このまま祭を続けなければ、恐ろしいことになる」──と。


ξ゚⊿゚)ξ「脅迫よね」

( ^ω^)「要求が祭の続行っていうのは、何とも奇妙だけど」

181 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:32:35 ID:TW803YTwO

 号外には続きがある。

 どうも、ソウサク国の外に出ることができないらしいのだ。

 ちょうど国境の辺りから、まるで見えない壁があるかのように、
 出入りが不可能になっている。とか。

 脅迫文はそこにも触れ、
 祭をきちんと完遂すれば、その壁も消してやる──と告げているらしい。


 とにかく、祭を続けるという決定は覆りそうにない。
 こんな状態で楽しめる者がいるかどうかは別にして。

ξ゚⊿゚)ξ「本当、参ったもんだわ……」

 真剣な表情で、ツンは号外を見つめる。
 ブーンはそんなツンをじっと見つめた。
 ふと視線が絡み、ツンの頬にうっすら赤みが差す。

182 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:34:09 ID:TW803YTwO

ξ*゚⊿゚)ξ「な、何よ」

( ^ω^)「ツンは肌が白くて、髪もきらきらして、目が大きくて、唇が赤くて、可愛くて綺麗だお」

ξ;///)ξ「かっ、顔がっ、近、」

( ^ω^)「ツン……」

 ブーンがツンの肩を抱き寄せた。
 2人の顔がぴったりくっつくまで、あと少し。

 ──というところで、ひょいと後ろから抱え上げられた。


/ ゚、。 /「さ、お昼ご飯の時間ですよ」

( ^ω^)「あー、もうちょっとだったのに」

ξ;*゚⊿゚)ξ「だっ、ダイオードさん」


 2人を抱えたのは、背の高い女性だった。
 彼女の名はダイオード。
 数年前にニューソク国からソウサクに移住し、ここ「ソウサク第5保育園」で働くようになった保育士である。

 保育園。そう。保育園。
 今、ブーンとツンは、保育園にいた。

 何故なら2人共、今日は5、6歳の幼児の姿になってしまったから。

183 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:35:04 ID:TW803YTwO

/ ゚、。 /「ツンさんは脱走の常習犯ですからね。
      私がちゃんと見張っててあげます」

( ^ω^)「やーい」

ξ;゚⊿゚)ξ「だ、だってお仕事とかあるし……」

 ──反時計症を発症した者で、独り暮らしをしていたり独身だったりする人間は、
 体の一部に小さなチップを埋め込まれる。(強制ではないが)

 そのチップは、誰が今どこに居るか、という情報を「反時計症対策所」に送る役割を持つ。
 ただしそれは非常時の際に発信されるだけであって、
 プライバシー保護のため、普段は何の信号も送っていない。

 ではその「非常時」とはいつか。

 簡単な話だ。
 反時計症により、その者が平均的な6歳程度、あるいはそれ以下の体躯になってしまったときである。

184 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:36:41 ID:TW803YTwO

/ ゚、。 /「子供の仕事は、ご飯を食べて、遊んで、寝ることです」

ξ;゚⊿゚)ξ「いや、私は25歳だし……」

/ ゚、。 /「今は子供でしょう」

 たとえ本人が20代だろうと30代だろうと、体が幼児になってしまえば、
 出来ないことや身の回りの危機は増える。

 だから、反時計症患者が6歳以下の姿になった際には、チップが対策所に信号を送る。
 対策所から保育園に連絡が行き、保育士達は患者を保護して、施設で一日面倒を見るのだ。

 ブーンとツンも、あの奇妙な夜が明けてから一時間後には保護されてしまった。

185 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:37:16 ID:TW803YTwO

(;・∀・)「ねえ、もうご飯の時間だからさ、園の中に戻ってよ」

ミセ*゚ー゚)リ「駄目! まだモララー君の絵を描き終わってないの! 動くな!
      助手、モララー君を押さえろ!」

(゚、゚トソン「分かりました先生」

(;・∀・)「行ーけーよー! 俺が怒られるんだってば!」

ミセ*゚ -゚)リ「やだねえ、芸術に理解がない人って。食事より絵を優先させたい気持ちが分からないんだから」

(゚、゚トソン「ですね」

(*^ω^)「おっおっ、ミセリとトソンがいるお。彼女らも小さいと本当に可愛らしい」

 ダイオードに抱えられながら、ブーンは園庭を見渡した。
 他の保育士や反時計症患者が、ばたばたと動き回っている。

 ブーンは保育園が嫌いではない。
 心置きなく幼女が見られるから。

186 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:38:20 ID:TW803YTwO
  _
( ゚∀゚)「よう、ブーンにツン」

( ^ω^)「あ、ジョルジュ」

 昨日も会った知り合いが、ブーン達の前を駆けていった。
 ジョルジュも今日は幼児になってしまったらしい。

 彼の後を、保育士のエプロンをつけた女が追いかけていく。

o川#゚ー゚)o「こらー! 待てこのスケベ!」
  _
( ゚∀゚)「子供がおっぱい触ったぐらいで怒んなよな!」

o川#゚ー゚)o「中身は20代じゃろがい!!」

ξ゚⊿゚)ξ「キュートはいつも元気ねえ」

( ^ω^)「あの人、クーの妹さんだっけ」

/ ゚、。 /「ジョルジュが保育園に来ると、あの2人、毎回追いかけっこしてますよ」

 ダイオードは口を閉じ、彼らを眺めた。
 それがやけに憂いのある目付きで、ブーンは首を傾げる。

 ふと、ダイオードが視線を下ろした。
 つられてブーンとツンがそちらを見ると、少女がダイオードに手を伸ばしていた。

187 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:39:48 ID:TW803YTwO

lw´‐ _‐ノv「ダイ先生、私も抱っこして……」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、シューさんじゃないの」

(*^ω^)「シュール! やあやあやあ、今日は素敵な子がたくさんいるじゃあないか!」

 どこかぼんやりした顔つきの彼女は、シュール。
 先程の保育士──キュートがクールの妹なら、このシュールはクールの姉だ。
 ブーン達より1つか2つ歳上で、デレと同じ頃だった筈。

/ ゚、。 /「抱っこですか」

lw´‐ _‐ノv「背の高いダイ先生に肩車してみてほしい……」

/ ゚、。 /「ご飯を食べて、お昼寝して、起きたらしてあげますよ」

(*^ω^)「シュール、僕とお昼寝しよう!
       君は普段から寝ているような顔をしているから、本当の寝顔が気になるお」

lw´‐ _‐ノv「ダイ先生、ブーンがセクハラする……」

( ^ω^)「まだ何もしてないじゃないかお」

ξ゚⊿゚)ξ「『まだ』って何よ」

188 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:42:38 ID:TW803YTwO

/ ゚、。 /「さ、皆さんご飯ご飯」

ξ;゚⊿゚)ξ「だから仕事がー!」

( ^ω^)「ツン、君みたいなのをワーカホリックと言うんだお。
       これだけ小さくなってしまった今、どうせ僕らは大した役に立たないんだから
       おとなしく休んでる方が得になるお?」

ξ;>⊿<)ξ「やーだー!」

/ ゚、。;/「遊び疲れればお腹空きますかね……ほら、可愛いぬいぐるみですよー」

ξ*゚⊿゚)ξっ(・(エ)・)「わーいクマちゃんだー」

(*^ω^)っ▼・ェ・▼「わんちゃん可愛いおー」

/ `、、*/ ホノボノ

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/192.png


⊂ξ#゚⊿゚)ξ「ってなるかー!!」
 /  ノ∪
 し-J |l| |
      人ペシッ!!
  (・(エ)・)▼・ェ・▼

(;^ω^)「わんちゃんクマちゃーん!!」

189 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:44:19 ID:TW803YTwO

ξ#゚⊿゚)ξ「中身25だっつってんだろうが!!」

/ ゚、。;/「す、すみません、どうしても見た目のイメージが……」オロオロ

((( lw´*‐ _‐ノvっ(・(エ)・)▼・ェ・▼「おお可哀想なクマと犬は私がもらっていこう。動物可愛い可愛い」

ξ#゚⊿゚)ξ「ブーン行くわよ!」

( ^ω^)「もう、何でそんなに一生懸命……」

ξ゚⊿゚)ξ「だって働けば働いた分だけお金もらえるのよ」

( ^ω^)「君は仕事とお金、どっちが好きなんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「圧倒的にお金」

( ^ω^)「僕が言うのも何だけど、この国は真人間が少ないおねえ」


.

190 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:45:24 ID:TW803YTwO


川 ゚ -゚)「──とりあえずたくさん撮っておけ。
     幼女の写真を用意しておけば、ブーンが仕事の手伝いを嫌がっても
     言うことを聞かせることが出来る」

(*'∀`)「クー様の頼みとあらば!」

 保育園の門に、カメラを構えた男女が張りついていた。
 クールとドクオ。

 反時計症患者が園に保護されても、成人の血縁者や知り合いが引き取りに来れば、
 帰してもらえる決まりになっている。

 なので彼らもブーンとツンを引き取りに来たのだが、
 「今の内に幼女を撮り溜めておこう」というクールの発案により、現状と相成った。

川*゚ -゚)「……お、あそこに綺麗な保母さんが……」

ζ(゚ー゚;ζ「……お祭始まるから、早く2人を連れていこうよう」

 一歩下がったところで立ち尽くしていたデレは、聞こえていないであろう声をかけ、溜め息をついた。
 塀に寄り掛かる。

191 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:47:14 ID:TW803YTwO

 ポケットから折り畳まれた紙を引っ張り出し、広げる。

ζ(゚、゚*ζ(何なんだろ)

 ──ドクオが時計塔の針を動かした際、歯車の間から取り出したという紙。

 それには、絵が描かれていた。

 左上から右下に向かって、区切るように直線が引かれている。
 線から右側には森らしき風景が描かれていて、不自然に白くなっている部分があった。
 人の形にくり抜かれたような。

 左側には男が描かれてある。
 笑顔で手を振る男。どことなくブーンに似ている。

 どうしてこの絵が歯車に巻き込まれていたのだろう。
 首を傾げ、デレは紙をポケットへ戻した。


.

192 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:48:38 ID:TW803YTwO


从 ゚∀从「──あれ皆、反時計症の人なんだな?
     見たところ、3歳から6歳くらいまでか。赤ん坊はいないのか?」

 保育園の職員室。
 前髪で片目を隠した女が、窓辺から園庭を眺めている。

 女──ハインリッヒは、後ろに立つ男に振り返った。

(`・ω・´)「ええ。赤ん坊の姿には、滅多にならないようです。
      ごく稀に、なることはあるそうですが……」

从 ゚∀从「なるほど。大抵は、自力で自由に行動出来る程度の年齢に留まってるのか」

 ハインリッヒは男に微笑み、再び園庭に向き直った。

 男はシャキンといって、この保育園の園長をやっているそうだ。

从 ゚∀从(子供……。……反時計症を題材にしたゲームはまだまだ少ない。
     やっぱ狙い目か。RPGがいいかね)

 ハインリッヒはヴィップ国有数のゲーム会社、ユトリ社の社員である。
 彼女はゲームが好きだ。
 だから、ゲーム開発への熱意も強い。

 今回はラノベ祭がソウサクで開かれるということで、
 次回作の着想のために、反時計症について調べるつもりで来ていた。

193 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:49:20 ID:TW803YTwO

从*゚∀从(しっかし、昨日の事件……スリリングで良かったな。
     ……ああ、何か、こう、インスピレーションが)

川 ゚ 々゚)「ん」

从 ゚∀从「ん?」

川 ゚ 々゚)「あげる」

 不意に、窓の外から声をかけられた。
 見れば、少女がハインリッヒに赤い花を差し出している。

从 ゚∀从「おう、ありがとうな」

川*゚ 々゚)「んー」

 少女はぱたぱたと駆けていき、花壇から赤い花を千切ると、今度は近くにいた保育士に手渡していた。
 何だか可愛らしくて、ハインリッヒの頬が緩む。

 しかし、はたと首を傾げた。
 子供っぽい振る舞いに和んでしまったが、考えてみれば、今の少女だって反時計症患者なわけで。
 実際の年齢はもっと上であろう。

 下手をすればハインリッヒより歳上なのかもしれないのだ。
 すっかり子供扱いしてしまった自分に、ハインリッヒは苦笑した。

194 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:50:05 ID:TW803YTwO

(;`・ω・´)「あ、今の方は……」

从 ゚∀从「ん?」

(;`・ω・´)「ああ、いえ、何でもありません」

 口ごもるシャキンにハインリッヒは怪訝な目をしたが、外から聞こえた音に、はっと顔を上げた。
 空に小さな飛行船が飛び、花火が弾ける。

 時計塔の針は12時を示し、昼を知らせる鐘の音が響いていた。

 本来よりも2時間ほど遅れてしまったが、ラノベ祭の2日目が始まった。


http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/34.jpg



# # #

195 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:51:59 ID:TW803YTwO


(;´∀`)「お嬢様! お嬢様ー!?」

 ──ソウサク国、王家の屋敷。

 やたらと広い廊下を歩く、小さな小さな少年がいた。
 モナー。国王の娘──くるうの世話役である。
 例によって反時計症のせいで小さくなっているが、実際は30を越えている。

(;´∀`)「ったく……病み上がりの身で、一体どこに──」

|゚ノ ^∀^)「お嬢様なら第5保育園ですよー」

(;´∀`)「……レモナ」

 後ろから掛かった声に振り返り、モナーは息をついた。

 にっこりと笑う女性が1人。
 レモナという名の彼女は、モナーと同じく、くるうの世話を任された使用人だ。

 何故だか真っ赤な林檎を嬉しそうに撫でている。

196 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:52:47 ID:TW803YTwO

(;´∀`)「またお前が保育園に連れてったモナ? ……その林檎はどこから」

|゚ノ ^∀^)「お嬢様が行きたいって言うから保育園にお連れしたら、ご褒美として林檎をくれましたの。
       赤いもの好きですよねえ、お嬢様」

(;´∀`)「昨夜のことを忘れたモナ!? この状況で外に行かせる馬鹿がどこに居るモナ!」

|゚ノ ^∀^)「でもねえ……ミセリ先生が第5保育園にいるって知った途端、
       自分も行くって大騒ぎするんですもの。
       赤いもの以上にミセリ先生が好きですよね」

 モナーは額を押さえ、嘆くように天を仰いだ。
 しばしその体勢で固まっていたが、やがて、溜め息を吐き出しながら顔を下ろす。

197 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:53:42 ID:TW803YTwO

( ´∀`)「お嬢様に何かあったらどうするモナ」

|゚ノ ^∀^)「どうしようかしら?」

 小首を傾げるレモナ。
 ──決して、くるうに対する忠誠心だとか、敬意がないわけではない。

 寧ろ彼女の持つ愛情は深い。
 くるうが赤ん坊の頃から見てきたということもあり、それは、ほとんど母性愛に近い。

 故に──どこか、放任めいたところがある。
 子の自主性を尊重したがる親のような。

|゚ノ ^∀^)「まあ、大丈夫ですよ」

(;´∀`)「わ」

 レモナがモナーを抱え上げる。
 今のモナーの小ささでは、レモナの腕にすっぽり収まってしまう。

|゚ノ ^∀^)「いざとなったら、私とモナー君で何とか出来るでしょう?」

 慈愛を湛えた笑みは、まるで女神。──は、言い過ぎか。
 ともかく微笑を浮かべ、彼女は右手の林檎を齧った。

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/90.jpg



# # #

198 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:55:06 ID:TW803YTwO


( <●><●>)「ゆっくり休んでるんですよ」

(*‘ω‘ *)「でも、お祭り参加したいっぽ」

( <●><●>)「駄目です。あんな人込みの中を歩き回るなんて、危険すぎます」

 ある家のリビングで、男女が向かい合っていた。

 男の方は、ソウサク国ラノベ祭における警備指揮責任者、ワカッテマス。
 女は、ワカッテマスの幼馴染みのちんぽっぽ。
 彼女の腹は、緩やかに膨らんでいる。

( <●><●>)「あなたは、お腹の子と一緒に祭の声と雰囲気を味わっていてください。
       画家の描いた素敵な絵も、窓からなら楽しめるでしょう」

(*‘ω‘ *)「ワカの生真面目」

 ちんぽっぽが口を尖らせる。
 ワカッテマスが小さく溜め息を吐き出したところへ、別の声が飛んできた。

199 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:55:49 ID:TW803YTwO

(*><)「ぽぽちゃん! 指輪見付けてきたんです!」

(#<●><●>)「ビロード!」

(;><)「うひゃあ!!」

(#<●><●>)「そもそも! あなたが! ぽぽちゃんをしっかり見ていないといけないんですよ!!
       それを昨日は、2人して会場を回っていたなんて──
       ぽぽちゃんの体に何かあったらどうするつもりだったんです!」

(;><)「あ、あうあう、だってぽぽちゃんが屋台見たいって……
      それに我慢するのはぽぽちゃんにも子供にも悪いかなって思って、僕、」

(#<●><●>)「昨日の騒ぎを思い出してください。
       とんでもない数の人間がパニックになったんでしょう。
       ぽぽちゃんが人波に巻き込まれたら、どんな恐ろしいことになるか……」

(;><)「……ごめんなさいなんです……。
      ……あっ、あっ、そうだ、ぽぽちゃん、指輪!」

 もう1人の幼馴染み、ビロード。
 詰め寄るワカッテマスから逃れ、彼はちんぽっぽへ駆け寄った。

200 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:56:31 ID:TW803YTwO

(*><)「はい! 広場に落ちてたのを、ショボン君が見付けてくれたんです」

(*‘ω‘ *)「ありがとうっぽ。……大事な指輪なのに、落としてごめんっぽ」

(*><)「いいんですよ」

 ビロードは、きらきらと輝く指輪を彼女の左手の薬指に嵌めてやった。
 2人が微笑み合う。
 そしてもう片方の手を取ると、ビロードが口を開いた。

(*><)「窓辺の椅子に座りましょう。
      今日は、ここからミセリ先生の朝焼けの絵が見られるんですよ」

(*‘ω‘ *)「分かったっぽ!」

 歩きながら、ちんぽっぽはワカッテマスへ振り返った。

(*‘ω‘ *)「ワカも、心配してくれてありがとうっぽ」

( <●><●>)「……心配というほどのものではありません。当たり前の注意をしているだけです」

201 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:57:41 ID:TW803YTwO

(*‘ω‘ *)「2人共優しくて大好きだっぽ。
       ──お腹の子、双子らしいっぽ。
       ビロードとワカみたいに優しく育ったらいいなあ……」

 お腹を撫で、ちんぽっぽは幸せそうに笑う。
 その言葉に、ビロードもはにかんでいた。
 ワカッテマスの顔や体が、妙にむずむずする。嫌な感覚ではないが、何となく気恥ずかしい。

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/138.jpg

( <●><●>)「……今日はちゃんとおとなしくしててくださいよ。
       お邪魔しましたね」

 ビロードとちんぽっぽの愛の巣とも言える家を出る。

 もう、祭が始まる。
 警備員の集合時間は過ぎていた。時計塔に急がなければ。

 足を早めながら、ワカッテマスは、ビロード達の顔を思い浮かべた。
 最近の彼らは、とても幸せそうだ。

202 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:58:33 ID:TW803YTwO

( <●><●>)(……昔からは想像もつきませんね)

 過去の記憶が脳裏を過ぎる。

 ──彼ら3人は、幼少の頃、孤児院で出会った。
 それぞれの理由により両親は存在していなかった。

 施設の環境は悪辣極まりない。
 国の調査団体がやって来るまでの日々は、あまりに酷く。


     『お前は──だから、──、──ね……──』
     『ビロー……──、耳──、──つぶして──』
     『やかましい口は──、……──……一生──』


http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/154.jpg


(;<●><●>)「、」

 頭が痛む。
 過去のことを思い出すと、未だに胸が苦しくなる。

 足を止めて深呼吸をし、再び歩き出した。

203 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 16:58:59 ID:TW803YTwO


 ──ビロード達は、幸せにならなければいけない。
 子供のときに辛い思いをした分、目一杯。


 ワカッテマスはその大きな瞳で、時計塔を見つめた。



# # #

204 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:00:13 ID:TW803YTwO


(,,゚Д゚)「よう、昨日の『ヒーロー』様」

 時計塔、内部。

 ギコがドクオの肩を叩くと、他の警備員達もドクオに向けて拍手した。
 ドクオのおかげで「夜」が明けたのだということは、大々的には知らされていないが
 警備の関係者の間では充分に広まっていた。

(*'∀`)「ヒーローなんてそんな……」

( ^ω^)「一躍救世主だお、ドクオ」

('A`)「うるせえおまえ大人の姿に戻ったら覚えてろよ」

 昨夜、囮として蹴飛ばしたのをまだ根に持たれているらしい。

 ブーンはドクオから顔を逸らし、幼児向けのネクタイを締め、
 通信機であるタイピンを留めた。

 保育園でゆっくり昼寝するのも良かった(というか、そうしたかった)が、
 仕事のためにと迎えに来られてしまっては仕方がない。

205 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:01:16 ID:TW803YTwO

( <●><●>)「ドクオさん」

( ^ω^)「お」

('A`)「はい──あ、昨日はすんませんでした」

 責任者、ワカッテマスに呼びかけられ、ブーンとドクオは彼のもとへ近付いた。
 ブーンがツンから聞いたことには、彼の命令を無視する形で時計を動かしたのだとか。
 ならば怒っているのではないかと思ったが、それらしい表情は浮かべていなかった。

 監視モニターに繋がれていたヘッドホンを弄びつつ、彼は首を振る。

( <●><●>)「いえ、結果的に何とかなりましたし──私も感謝はしています」

('A`)「ならいいんですけど」

( <●><●>)「ですが、機械室で見付けたもの等については、あまり触れ回らないでくださいね。
       下手に情報が流れて、皆を混乱させてしまっては危険です。
       ……『絵』が関わっていただなんて、今回の祭の性質上、どんな見方をされてしまうか分かりません」

 ドクオの腕を掴み、ワカッテマスが声を潜める。
 語調がキツい。気圧された様子で、ドクオが頷いた。

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/120.jpg

206 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:02:55 ID:TW803YTwO

 時計塔の歯車に挟まっていたという、一枚の絵。
 それが時計の針の動きを妨害していた──と、ブーンはドクオから聞いた。

 今回の祭のテーマは「絵」。
 それが昨夜の変事に関わっていたなどと世間に知られては、いらぬ勘繰りをされてしまいかねない。

('A`)「俺の身内には話しちまったが、他には言ってません。夜明けの直後はばたばたしてたんで」

( ^ω^)「知ってるのは、僕とツン、クーとデレだけですお。
       みんな口は堅い方なのでご心配なく」

( <●><●>)「それならいいのですが。
       その絵は今どこにありますか? 王家の警備隊に渡さなければいけません」

('A`)「今は──デレかツンが持ってるかと」

( <●><●>)「そうですか……後で声をかけておきましょう。
       ──では、昨日以上に警戒して、警備をお願いしますね」

('A`)「うぃっす」

( ^ω^)「頑張りますおー」

 ワカッテマスが去っていく。
 2人は顔を見合わせ、時計塔を後にすると、持ち場へ向かった。


.

207 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:04:56 ID:TW803YTwO


( ^ω^)「あの絵に描いてあった男の人、僕に似てたお」

 南の通りを歩きながら、ブーンは言った。
 ドクオが入手した『絵』の話だ。

('A`)「だな」

( ^ω^)「僕に似たイケメンで」

('A`)「もっとだらしなく間抜けっぽくしたら、まあ、お前だな」

(#^ω^)「どういう意味だお」

 ドクオの足を叩く。
 が、大人のドクオに対して、幼児のブーンではダメージなど碌に与えられない。

208 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:06:31 ID:TW803YTwO

( ^ω^)「……ともかく。あの絵が一体どういう意味を持ってるのか、気になってしょうがないお」

('A`)「俺にゃさっぱり分からんな……──っとと、危ねえな」

 少年が父親らしき男の手を引っ張って、ブーン達のすぐ傍を駆けていった。
 危うくぶつかりかける。

 あんなことがあった翌日でも、祭に参加する人の数はとても多い。

( ^ω^)「今日も盛況だおー。
       昨日の今日だから、もっと静かになるかと思ってたけど」

('A`)「祭は開かなきゃならねえみてえだし……どうせやるなら楽しまなきゃ損ってことだろ。
    自棄になってるのもあるかもな」

( ^ω^)「まあ、他国の人は、自国に帰るにも帰れないようだしね。
       ──そういや宿泊施設はどこも満室らしいけど、寝るところの見付からない人はどうなるかお」

('A`)「今、学校だとか飲食店だとかに布団だのテントだのが運ばれてるらしい。
    他にも、少人数なら自宅で受け入れるっていう一般人がいたり、アパートの空き部屋を提供したり……
    助け合いってのは素晴らしいもんだ」

(*^ω^)「じゃ、じゃあ僕の家に幼女を招き入れて……!!」

('A`)「勿論そういうのを防ぐために警備が一層厳しくなるんだがな」

( ´ω`)

209 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:08:36 ID:TW803YTwO

('A`)「しっかし子供が多いな……──ああ、あれか」

 幾人もの子供が、一ヶ所へ走っていく。
 その方向を見て、ブーンもドクオも納得した。
 昨日もここが特に賑わっていたのだ。

 ゲーム会社、ユトリ社のブース。
 昨日紹介していたのとは違うゲームが展示されているらしい。
 例によって、2人は好奇心からブースへ近付いた。



从 ゚∀从「──今回のホラーゲームは一味違う!
     プレイヤーは『怖がる側』と『怖がらせる側』を選ぶことが出来る!」

 幾分か高いステージの上で、白衣の女性──ハインリッヒという名札が胸にある──が
 マイク越しに熱く弁をふるっている。

 その隣には背の高い男。
 男には見覚えがあったが、見知っている姿とは異なっていて、ブーンもドクオも僅かに困惑した。

210 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:11:36 ID:TW803YTwO

从 ゚∀从「怖がる側は『探検者』、怖がらせる側は『モンスター』となり、仮想世界の中に入り込みます。
     森、屋敷、廃屋、塔、廃校などなど広大なステージを選び放題!」

 彼女が高々と掲げた右手には、二つ折りの赤い機械が握られていた。
 手のひらに収まるサイズ。

 その機械が開かれる。
 上部に画面があり、下部にはいくつかのボタンが付いていた。

( ^ω^)「ありゃ何だお」

('A`)「ガラケーに似てるが……」

( ^ω^)「がらけえ?」

('A`)「昔の携帯電話だ。つっても、ニューソクではまだ結構一般的らしいんだけどな。
    あれはガラケーをモチーフにして作ったゲーム機だろう」

从*゚∀从「モンスターはステージの各地に身を隠し、やって来る探検者を驚かしつつノルマをこなす!
     探検者はモンスターから逃げつつステージごとのクリア条件を目指す!
     とにもかくにも自由度の高さは歴代最高、ゲームを通じて他者とのコミュニケーションも取り放題!
     あ、もちろんオフラインでの1人プレイも可能ですよ」

211 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:13:29 ID:TW803YTwO

从*゚∀从「そしてオマケとして、ホログラム機能で自分がデザインした『モンスター』になりきることも!
     ──例えばこんな、マッドなサイエンティストに造られた怪物のように!」

( ゚_ゝ`)「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

(;'A`)「……兄者だよな?」

( ^ω^)「兄者だお」

 先程から気になっていた、ハインリッヒの隣に立つ男。
 同じく白衣を纏い、ガスマスクや何かしらのプラグを身につけているが──
 どう見ても、流石一座の長男、兄者だった。

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/89.png

212 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:14:30 ID:TW803YTwO

( ゚_ゝ`)「悪い子はいねがー!!!」

 ステージを飛び降り、近くにいた子供へと迫る。
 子供はきゃあきゃあ笑って、兄者の手をぺたぺたと叩いた。

(;゚_ゝ`)「あ、あれー、何で笑う!? ガオー!!」

 いくら凄んでも子供は笑っている。
 すっかり困り果てた様子の兄者に、周囲からも笑いが起こった。
 ステージ上でハインリッヒも吹き出している。

 やがて自棄になったらしい兄者が手当たり次第に子供達を追い回し始め、
 ちょっとした鬼ごっこが繰り広げられることとなった。

 平和だ。

 不意に兄者とブーンの目が合った。
 新たな獲物と見たか、兄者が走り寄ってくる。

( ゚_ゝ`)「ウガー……──って何だ、ブーンじゃないか」

( ^ω^)「久しぶりだお」

213 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:17:20 ID:TW803YTwO

('A`)「お前、最終日の公演に向けて準備とかしなきゃいけないんじゃないのか?」

( ゚_ゝ`)「今は休憩時間でな。ぶらついてたらデモプレイに誘われた。
       お前らは警備係だっけか、頑張れよ」

( ^ω^)「兄者も頑張ってお」

( ゚_ゝ`)「おう、楽しみにしてろ。
       しかし何だな、お前ら、その年齢で並ぶと親子みたいだな」

(;'A`)「んぐ……っ!! 唐突なダメージ……!!」

 けらけら笑って、兄者がまた別の子供を追い掛け始める。

 程々にしとけよ、と声をかけ、ブーンとドクオはその場を離れた。



# # #

214 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:18:31 ID:TW803YTwO


(゚A゚# )「何をサボっとんねん!」

(;^ν^)「──ってえ!!」

 ──東通り、とある屋台。

 地べたに座り込んでいたニュッの頭に、小さな踵が落とされた。
 頭を押さえ、涙目で相手を睨む。

(゚A゚* )「お? 何や、その目は。
     反抗するんならもう知らん。祭が終わるまで外で寝てればええ」

(;^ν^)「や、あの、……、……すんません」

215 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:21:04 ID:TW803YTwO

<ヽ`∀´>「ニュッ君、少なくとも6日間はこの国から出られないニダ……。
      とにかく言うことを聞いておくニダ」

 エラの張った男が、こっそりとニュッに耳打ちする。
 ニダー。──「誘拐計画」の仲間の1人。

 他の仲間(とは言っても、ニュッとニダーの他には1人しかいないが)とも夜明けに合流した。
 今回は諦めて帰ろう──という流れになったのだが、
 あの見えない壁とやらのせいで、それも叶わず。

 早まってホテルの予約を取り消してしまったため、部屋を別の客にとられ、
 さあどうしようと困っているところで、この屋台の店主に声をかけられた。

 「店を手伝ってくれれば寝床くらいは提供してやる」との案を、ニュッとニダーは受け入れた。
 屋根のあるところで寝られるのと、そうでないのとは大違いだ。

 もう1人の仲間はそれを断り、自分で寝床を探しに行ったけれど。

<ヽ`∀´>「シナーはどこ行ったニカ……」

( ^ν^)「さあ」

 その仲間の名を口にし、ニダーが溜め息をつく。
 ニュッも携帯電話で何度か連絡をとろうとしたのだが、無視されてしまっている。
 必要以上の連絡はするな、と言われていたので、それもやむなしか。

216 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:22:35 ID:TW803YTwO

(゚A゚* )「2人揃ってサボんな!」

<;ヽ`∀´>「は、はいはーい! ちょっとお待ちをー!」

 店主の怒声にびくりと肩を跳ねさせ、ニダーが慌てて返事をする。
 恐縮する素振りは一瞬で、すぐに悪どい笑みを浮かべた。

<ヽ`∀´>「……運がいいことに、あの女も『反時計』ニダ。
      今はいい顔して油断させておいて、祭が終わる頃合いに拐っちまえばいいニダ」

( ^ν^)「……おう」

(゚A゚* )「何をこそこそ話しとん」

<;ヽ`∀´>「なっ、何でもないニダ! 何でも!」

 ──店主は、どこからどう見ても10歳前後の少女だった。

 子供が店をやっているのか、と訊ねたところ、
 反時計症なのだという答えがあった。

 寝る場所を得られる上、獲物を近くで狙える。
 一石二鳥だった。

217 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:24:02 ID:TW803YTwO

<ヽ`∀´>「今の内にウリ達をこき使って調子に乗ってればいいニダ……。
      6日後に100倍返しにしてやるニダ! ホルホルホル!!」

(゚A゚# )「だから! はよ! せえ! ボケが!!」

<;ヽ`∀´>「あひいっごめんなさいごめんなさいごめんなさいニダー!!」

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/30.png

 立ち上がり、蒸し器の様子を見ながらニュッは小さく舌打ちした。
 こっそり携帯電話のデータフォルダを開く。


   [川 ゚ -゚)ζ(゚ー゚*ζ]


 夜が明けた際、騒ぎに紛れて撮影した写真。
 反時計症の女2人。
 「クール」と「デレ」。

 ニダーはここの店主に狙いを定めたようだ。
 ならばニュッは、この2人──の、どちらかだけでも拐わなければ。

 1人も捕まえられませんでした、では、シナーから何を言われるか。

218 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:25:31 ID:TW803YTwO

( ^ν^)(どうしたもんか……)

ζ(゚ー゚*ζ「あ、あれ美味しそう! 見た目も可愛い」

川 ゚ -゚)「本当だ可愛い。食べちゃいたいな。な。美味そうだ。食べちゃいたいくらい可愛いな」

ζ(゚ー゚*ζ「何で私を見ながら言うの……」

川 ゚ -゚)「な、ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「こっちに振らないでくれる?」

( ^ν^)(マジでどうすりゃいいの)

 本当にどうしよう。

 警備員だか何だか知らないが、先程から「獲物」が店の前を行ったり来たりしている。

 これはこれで、ちょっと、緊張感というかモチベーションがブレて困る。



# # #

219 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:27:16 ID:TW803YTwO


( `ハ´)

 ニュッからの着信があるのを確認し、シナーは携帯電話をポケットにしまった。
 マナーモードにしていたので気付かなかった。
 まあ大事な用ならまた掛けてくるだろう。

 がさり、左手に提げた袋が揺れた。
 屋台で購入した食べ物がいくつか入っている。

 辺りを見渡す。
 静かだ。祭の喧騒は遠い。
 会場から少ししか離れていないのに、別世界のように静かで、人気もない。

 古臭い廃屋が点在している。

( `ハ´)(ここら辺でいいアル)

 丁度いい。
 祭会場からあまり離れずに済むし、人の目もない。
 1人でゆっくり寝るには充分だ。

 路地を進んでいくと、小さな建物があった。
 倉庫か何か。ここにしよう。

 扉を開ける。
 薄暗い。

220 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:28:38 ID:TW803YTwO

( `ハ´)「!」

 倉庫の奥に、3人程度の男がいた。

 男達はシナーの登場に慌てふためいている。
 彼らが鉄パイプやらナイフやらを掴むのを見て、シナーは片手を挙げた。

( `ハ´)「ここを貸してほしいアル」

「はあ!?」
「今なら見逃してやるから、さっさと出てけ!!」

 武器を構えた男達が、がなりながらじりじりと距離を詰めてくる。
 シナーは動かない。

 やがて至近距離まで近付くと、どうするべきか迷ったのか、男達は視線を交わした。
 シナーが怯えて逃げるのを期待していたのだろう。

221 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:30:40 ID:TW803YTwO

「……もういい、やっちまおう」

 1人の提案を受け、じゃらじゃらとピアスを付けている男が棒切れを振り下ろした。

 シナーは無表情のままそれを避け、まずは一発、男の脇腹に右足の爪先を叩き込む。
 ろくに鍛えていないのだろう、柔らかい肉はガードにもならず、シナーの爪先がめり込んでいく。

 ピアスの男が呻き、よろけた。
 シナーの方へ倒れそうになっていたので、顎を殴り、腹を蹴飛ばして後ろへ倒す。

 一旦、片手に持っていた袋を地面に置いた。
 間違って踏まないように気を付けなければ。

 他2人は反応出来ずにいるのか、僅か2秒、動きが止まっていた。
 シナーは嘆息する。そんな体たらくで、よくまあ先程のように強気に出られたものだなと。

 背の高い男の首を掴み、ナイフを持つ男へ放り投げる。
 まとめて倒れ込んだ2人のもとへ、すぐに近付いた。
 背の高い男の顎を何度か蹴りつけた後に鳩尾に足を乗せ、思いきり体重をかけた。これで少しの間は動かない。

222 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:34:09 ID:TW803YTwO

 その間に、起き上がろうとしていたナイフの男の顔面に
 近くにあった木箱を叩きつけた。
 思いのほか物が詰まっていたようで、男の顔から何かの砕ける音がした。

 すまん、と謝ってはみたが、まあ聞こえてはいないだろう。
 未だナイフを振るおうとするしつこい手も、その木箱の角で何度か殴る。
 顔の潰れた男は、呻くだけになってしまった。

 身悶えしている背の高い男の方へ戻る。
 肩を踏みつけ、腕を捻った。

 ごき、という音と共に男が悲鳴をあげる。
 もう片方の腕も同じようにした。
 シナーが肩を踏む度に叫ぶので、まるで楽器を演奏する気分。

 やりすぎない程度に留めて、最初に蹴倒したピアスの男へ歩み寄る。
 跨ぐようにして立ち、腰を曲げ、顔を覗き込んだ。
 失神していたようだが、頬を叩くと、うっすら目を開いた。

223 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:35:30 ID:TW803YTwO

 むりやり口を開かせる。やはり、舌にもピアスをしていた。
 シナーは不快そうに顔を顰める。
 舌にこんな物を付けて、飯を食うのに邪魔ではないのか。素直に美味いものを楽しめるのか。

 ピアスを引っ張る。
 男がうーうー唸っている。
 引き千切ろうかと手に力を込めると、男の声が大きくなった。

 ピアスを掴んだまま、シナーはしゃがんだ。
 囁きかける。

( `ハ´)「『今なら見逃してやるから、さっさと出てけ』」


.

224 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:36:49 ID:TW803YTwO


 3人組が逃げ出した後。

 シナーは地面に置いていた袋を持ち上げ、倉庫の奥へ歩みを進めた。

 汚れた毛布らしきものがいくつか積まれている。
 上々。これで寒さも凌げる。毛布の質は、このさい気にしない。

 さあ、冷めてしまう前に飯を食おう。
 大きな箱に腰を下ろす。

 ──そこで初めて、シナーは別の人間の存在に気付いた。


(#゚;;-゚)


 少女が繋がれていた。

 腕輪から伸びる鎖が柱に固定され、足枷まで付けられている。
 服はぶかぶかのセーターのみで、いかにも寒そうだ。

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/124.jpg

225 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:37:53 ID:5cpNoqK60
随分久々だな!!
支援

226 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:38:08 ID:TW803YTwO

 拘束は先程の男達によるものだろう。
 と、なると──奴らもシナーの同業だったようだ。
 祭の騒ぎに隠れ、人身売買を行う輩。

 シナーは少女のもとに近付いた。
 見たところ5、6歳。
 顔や体に傷跡があるが、新しいものではないように見える。

 少女は左手にぬいぐるみを大事そうに抱えていた。
 それに触れようとすると身をよじるので、とりあえず諦める。

 右手を持ち、腕輪を調べた。

227 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:39:28 ID:TW803YTwO

( `ハ´)「お前、反時計症アルね」

(#゚;;-゚)"

 少女が頷く。

 ──反時計症の患者の多くは、体内にチップを持っている。
 患者が一定の年齢以下になったら信号を送るための。

 腕輪は、その電波の発信を妨害するための道具だ。
 反時計症の人間を拐うときには欠かせないものだった。

 自身の髭を撫で、シナーは満足げに頷いた。
 寝床の確保に、反時計症の入手。
 今日はツイている。

 少女──実際の年齢は分からないが──は、助けてほしいとか、
 シナーから逃げたいとか、そういった意思は見せなかった。
 ひたすら無言で、ぼんやりとシナーを見つめている。

 助けを期待しているわけでもなさそうだった。

 恐らくは、現時点での己の「所有権」が先程の男達からシナーへ移っただけだと思っているのだろうし、
 事実、それは正しい。

228 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:41:24 ID:TW803YTwO

 上機嫌のシナーは改めてその場に座り、食事を始めた。

 まずはサンドイッチ。
 丸い厚目のパンでシベリア豚のベーコンと目玉焼きを挟んだシンプルなものだが、そこが好みに合う。
 というより、シンプルだろうとそうでなかろうと、美味いなら何でもいい。

 パンの表面はトースターで焼かれていて、ざくりと小気味良い音が鳴る。内部はもっちりと弾力があった。
 かりかりに焼かれたベーコンと、とろとろのチーズ。どちらの塩気も目玉焼きが受け止め、まろやかにしてくれる。
 胡椒の風味も、邪魔にならない程度に仕事をしていて。美味い。

(#゚;;-゚) グゥ

 少女の腹が微かに鳴った。
 シナーは懐からナイフを取り出し、サンドイッチを半分に切ると
 その内の一つを少女に差し出した。

 少女は手を伸ばしたが、シナーのナイフとサンドイッチを交互に見て、困ったように小首を傾げた。
 先の3人組の内の1人が、ナイフを持っていたのを思い出す。

 少女はナイフに怯えているわけでもなく、
 ただ単に、人を刺した刃物で食べ物を切り分けたのではないか、ということが気になっているらしかった。

229 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:42:31 ID:TW803YTwO

( `ハ´)「私はナイフは食事にしか使わないアル」

 そう言ってやると、ようやく少女はサンドイッチを受け取った。

 無視しても良かったのだが、一応「商品」であるし、
 あまり邪険にして言うことを聞かなくなっても困る。
 何より彼女はとても細くて、痩せすぎな気がした。

( `ハ´)「おまえ、名前は何ていうアルか?」

(#゚;;-゚)ノ

 手で空中に文字を書くような仕草をする。
 でぃ、というらしい。

 シナーはサンドイッチを腹に収めると、次にニューソク鶏の焼き鳥を手に取って
 でぃにも一本だけ分けてやった。



# # #

230 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:44:01 ID:TW803YTwO


 意外にも、2日目は何事もなく終わった。

 予定より2時間は早い午後7時に、終了のアナウンスが流れる。

 いくつかの出店は片付けを始め、またいくつかの店は「夜の部」の準備を始める。
 夜の部──要するに酒盛りだ。広場で酒と料理が振る舞われる。

('A`)「ショボンのとこも酒出すんだよな」

( ^ω^)「今日こそは飲みに行ってやるお……。
       魔法とか知るかお、存分に楽しんでやるお」

('A`)「はいブーンちゃんはお酒飲んじゃ駄目よーねんねしようねー」

(#^ω^)「中身は25歳だお!」

('A`)「体は5歳だろ。──何だかんだ、一昨日から大して寝てねえんだから休め。
    俺らは夜間の見回りは任されてねえし」

 ドクオに抱えられ、ブーンは不服そうに頬を膨らませた。
 途中、ドクオが菓子店の売り子に「お父さん、お一ついかがですか」なんて声をかけられて
 へこんでいたので、いくらか溜飲が下がった。

231 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:46:05 ID:TW803YTwO


 時計塔に戻り、各自の報告と明日以降の予定の確認をし、
 夜の業務がない者は解散となった。

 結局、例の「脅迫状」の差出人も最終的な目的も、何も分からないからには
 こちらも如何ともしがたい。
 ただの手伝いでしかないブーン達は、ほとんど通常通りの予定に沿うしかなかった。





ζ(゚ー゚*ζ「──ただいまー、ショボン君のところから色々買ってきたよー」

川 ゚ -゚)「む」

( ^ω^)「帰ってきたかお」

 マンションの20階、「ツンちゃんのお悩み相談室」。

 ドアを開ける音とデレの明るい声に、クールが立ち上がり
 小走りで玄関へと向かっていった。

232 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:47:32 ID:TW803YTwO

川 ゚ -゚)「おかえり、デレ。何買ってきた?」

ζ(゚ー゚*ζ「唐揚げとー、お漬物とー、何だっけ、ご飯丸めてタレ塗って焼いたやつ……」

川*゚ -゚)「焼きおにぎりか。ニューソク料理は美味いものが多くて好きだ」

ζ(゚ー゚*ζ「とりあえずこれで晩御飯にしよっか」

 デレとクールがきゃっきゃと話している声を聞きながら、
 リビングの床に寝そべるブーンは溜め息をついた。

 腹が減ったので、何でもいいから早く持ってきていただきたい。

川 ゚ -゚)「ん? 君は……」

ζ(゚ー゚*ζ「ブーン君にお礼したいんだって。マンションの前にいたから連れてきたの」

*(‘‘)*「こんばんは……」

(*^ω^)「──ヘリカルちゃん!?」

 可愛らしい声に、がばと身を起こす。
 ブーンは喜色満面で玄関へ走った。

233 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:48:27 ID:TW803YTwO

*(‘‘)*「あ、お兄さん」

 玄関に、ヘリカルと、彼女に少し似た大人の女性が立っていた。

 女性はヘリカルの母だという。
 娘がお世話になって、と頭を下げられた。

ζ(゚ー゚*ζ「昨日、迷子になってたっていう……」

川 ゚ -゚)「ああ、ツンから聞いたな。あの子か」

 夜明け、すぐに迷子センターの職員に預けたのだ。
 どうやら無事に母親と会えたらしい。

(*^ω^)「どうなったか心配してたんだおー、良かった良かった」

234 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:51:29 ID:TW803YTwO

*(‘‘)*「あの、えっと、ありがとうございました!」

(*^ω^)「いやいや、僕は何も」

 ぺこりと頭を下げるヘリカルに、ブーンの顔がだらしなく緩んでいく。
 ヘリカルの両手を握って上下に振り、それでは足りなくて軽く抱き締めた。

 今はブーンの方が年下のようになってしまっているので、
 端から見れば子供同士の戯れのようである。

川 ゚ -゚)(今日のブーンが幼児で良かったな……)

ζ(゚ー゚;ζ(大人の姿だったら、色々危険だったね……)

 ヘリカルの母親が、クールに箱を手渡した。
 今回の祭限定で販売されている菓子の詰め合わせらしく、デレがいやに喜んでいた。

235 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:53:24 ID:TW803YTwO

*(‘‘)*「あの、もう一人のお兄さんにもお礼言いたいです。お姉さんにも渡したいものがあるし……」

(*^ω^)「ドクオとツンかお?」

ζ(゚、゚*ζ「あれ、そういえば2人は?」

川 ゚ -゚)「ドクオは風呂、ツンは書斎で手紙を書いている」

( ^ω^)「手紙って……今この状況じゃ、郵便もてんやわんやじゃないかお」

川 ゚ -゚)「優先して届けてもらえる伝手があるから問題ない」

 仕事の依頼は手紙でしか受けないツン。
 同様に、彼女からの連絡方法も手紙が多い。
 もちろん急いでいるときは携帯電話などの通信機器も用いるが、そうでなければ大抵手紙だ。

 手紙というものが好きなのだろう。
 筆不精のブーンには理解できない。

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/72.jpg

236 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:55:30 ID:TW803YTwO

ζ(゚、゚*ζ「お給料の値上げ交渉の手紙だろうねえ」

( ^ω^)「ちゃっかりしてるお……」

川 ゚ -゚)「ともかく、書き終わるまでは部屋から出ないと思うぞ」

*(‘‘)*「そうですか……」

(*^ω^)「僕から伝えておくお」

*(*‘‘)*「お願いしますっ」

(*^ω^)(かわいー……頭下げる度にぴょこぴょこ跳ねるツインテかわいー……)

*(‘‘)*「これ、お姉さんに渡しておいてください!
     『シタラバニアの夜』の、三番です」

 ヘリカルが、可愛らしいメモ紙を差し出してきた。
 幼い字で歌詞が書かれている。

237 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:58:04 ID:TW803YTwO

ζ(゚、゚*ζ「シタラバニアの夜?」

( ^ω^)「ニューソクの童謡だお」

*(‘‘)*「ヘリカル、二番までしか知らなかったですけど
     お母さんから三番もあるって教えてもらって……。
     せっかくだから、お姉さんにも教えてあげようと思ったです」

(*^ω^)「ありがとうおヘリカルちゃん、君はいい子だお。
       もうお母さんと離れちゃ駄目だお?」

*(*‘‘)*「はいっ!」

 ──ヘリカルと母親は、何度も礼を言ってから去っていった。
 元からソウサクに何日か滞在する予定だったらしく、ホテルの部屋をとっているそうだ。

 ブーンはメモ紙に頬擦りをして、ヘリカルの温もりを求めた。


.

238 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 17:59:34 ID:TW803YTwO


ξ>⊿<)ξ「あーっ、疲れたー!」

川 ゚ -゚)「お、ツン。終わったか」

 少しして、ツンが書斎から現れた。
 右手がインクで汚れてしまっている。
 腰に手を当て背中を伸ばす仕草が、見た目にそぐわず親父臭い。

ξ゚ー゚)ξ「うん。さあて、シャワー浴びよっと」

(*^ω^)「じゃあ僕も一緒に」

ξ;*゚⊿゚)ξ「馬鹿か! ……馬鹿か!!」

( ^ω^)+「お互い小さい体じゃお風呂に入るのも大変だお?
        効率を考えて、背中の流しっこをするべきだお」

川 ゚ -゚)「ならば私がブーンの背中を流してやろうか」

( ^ω^)「あ、いいです」

ζ(゚、゚;ζ「っていうか、今はドクオさんがお風呂使ってるから……」

239 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:00:31 ID:TW803YTwO

ξ;゚⊿゚)ξ「えー? あいつ、またうちのお風呂入ってんの?
      すぐ下の階に行きゃあいつの部屋あるのに」

川 ゚ -゚)「私が入った直後の風呂に入りたいんだろう」

( ^ω^)「うわあ、ほんとあいつ気持ち悪いお」

川 ゚ -゚)「お前が言えた義理じゃないと思うんだが……。
     それに私だって本当はツンとデレの後に入りたかった」

ξ゚⊿゚)ξ「あんた達まとめて気持ち悪いわ」


.

240 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:01:40 ID:TW803YTwO


('A`)「──っっっおぶしっ!!」

 盛大にくしゃみを一つ。
 浴室の壁に反響して、わんわんと余韻が漂う。

 クールが噂してるのかな、なんて考えてにやつき、ドクオは頭の上にタオルを乗せた。
 湯船の湯に肩まで浸かる。

('A`)「あー……クー様が入った後のお湯あったかいよお……」

 残念なことに、彼は正気である。本気でもある。
 クールの名残を感じ取ろうとするかのように、お湯を掬って顔へかけた。

(*'∀`)「さ、100数えたら出るかー」

 いーち、にーい、さーん。
 陽気な声で数えていく。

 65、まで来たところで──


≡川д川 ニュッ    ('∀`*)


 女が、正面の壁から飛び出してきた。

241 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:03:29 ID:TW803YTwO

 長い髪。白い服。
 その姿は、記憶に新しい。

川д川「見ィ付けt……」

 昨夜の女だった。

 にたりと笑って、何かを言いかける。

 壁から体の半分を生やした女は、ぽかんとした様子でドクオを見つめた。
 ドクオもまた呆然と見つめ返す。

 彼も混乱していたのだろう。
 頭の中では依然として数をかぞえていた。

 当初の目的である、100へ到達する。
 それと同時に、両者は動いた。

 女は顔を赤らめ、ドクオは体を揺らし。


川;*д川「ひえっ」

(;゚A゚)「でっ」

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/18.png


(;゚A゚)「出たぁあああああ!!!!!」


.

242 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:04:13 ID:TW803YTwO


ξ*゚⊿゚)ξ「唐揚げ美味しい!」

(*^ω^)「はあー、口一杯に頬張る幼女ツンちゃんマジ天使」

ζ(゚ー゚*ζ「お茶淹れてきたよー」

川*゚ -゚)「ありがとう。……この焼きおにぎり美味いな。甘じょっぱさが丁度いい比率だし焦げ目も香ばしい」

 リビングでは、ブーン達が夕飯を口にしていた。

 今日も疲れたねえ、昨日よりはマシだけど、明日も無事に終わればいいね、などと語り合いながら。

 鶏肉を揚げたニューソク料理に舌鼓を打っていたツンは、
 ブーンが大事そうにメモ紙を握っているのに気付いたようで、それは何かと訊ねてきた。

( ^ω^)「ああ、『手紙』だお。ヘリカルちゃんから、君に」

ξ゚⊿゚)ξ「手紙?」

 ヘリカルから聞いた旨をそのままツンに話し、紙を手渡す。

 食事の手を止めたツンは、さっと文字に目を通した。

243 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:05:12 ID:TW803YTwO

ζ(゚、゚*ζ「童謡ってどんなの?」

( ^ω^)「ええと……シタラバニアの夜は恐い恐い。
       もしも人間が出歩けば、おばけに見付かり食べられる」

( ^ω^)「シタラバニアの夜は恐い恐い。生き物以外の世界では、人間なんて食べられる……」

 続く三番は、メモ紙の中。
 ツンが歌うように読み上げる。

ξ゚⊿゚)ξ「シタラバニアの夜は恐い恐い。食べられなかった人間も、
      やがてはおばけへ変えられる──」

川 ゚ -゚)「何だそれ、食われるかおばけになるかしかないのか。詰んでるな」

244 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:06:21 ID:TW803YTwO

( ^ω^)「おばけに変えられる……」

 ブーンは、ショボンから教わった「おばけ」の特徴を思い出してみた。

 おばけというのは広義の表現であって、細かく分類していけば多種多様なものなのだそうだ。
 だが、大半のニューソク人が「おばけ」と聞いて思い浮かべる、
 代表的と言ってもいい姿があるらしい。

 いわく、白くてふわふわひらひらした感じ。

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/117.jpg

( ^ω^)(……)

( ^ω^)(全然怖くねえ)

 寧ろちょっと可愛い。

 こんなものを怖がるなんて、ニューソク人も変わってるな──と、
 やや冷めた顔をしながらブーンは漬物を齧った。

245 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:10:03 ID:TW803YTwO

ξ゚⊿゚)ξ「ご飯食べながら本読んだら汚れるよ」

川 ゚ -゚)「ん。すまん。気になることがあって」

ζ(゚、゚*ζ「何の本?」

 咎める声で我に返った。
 注意されたのはブーンではなくクール。
 彼女はテーブルの上に厚手の本を置いていた。

川 ゚ -゚)「各国の画家の絵を紹介してる画集だ。昔のから最近のまで、とにかく多い。
     ドクオが歯車から見付けたという絵に見覚えがあったから調べてみた。
     ──そしたら、ドンピシャだ。同じものがあったぞ」

ζ(゚ー゚*ζ「ほんと!?」

ξ゚⊿゚)ξ「どれ? ──……あれ、でもこれって……」

 ツンとデレが覗き込む。
 ブーンも加わろうと腰を上げ──


 直後轟いた絶叫に驚き、持ち上げた腰を落とした。

246 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:11:48 ID:TW803YTwO


(;゚A゚)「出たぁあああああ!!!!! 出た!! 出た!! わああああ!!」

ζ(゚ー゚;ζ「ぎゃあああっ!!?」


 全裸のドクオが風呂場から飛び出してきたのだ。

 全身びしょ濡れのままリビングに駆け込んでくるものだから、
 床に水が落ち、それで自ら足を滑らせ転倒している。

ξ;゚⊿゚)ξ「服! 服!」

ζ(>、<;ζ「きゃー! きゃー!!」

(;゚A゚)「ブーン! 出た! 出たんだよぉお!!」

(;^ω^)「落ち着くんだドクオ、今は君が出してはいけないものを出してるお」

川 ゚ -゚)「見苦しいからしまってくれ」

(;'A`)「あ、ああ、ごめんなさいクー様! ええっと、とりあえずこの布巻いとくか」

ζ(;、;*ζ「私の上着ー!!」

 腰にデレの服を巻き付け、ドクオが一段落つく。
 ブーンが詳しく話を聞こうとした──瞬間。

247 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:16:03 ID:TW803YTwO

 部屋の電気が消えた。

 ぴちゃぴちゃ、水の滴る音が響く。
 きし、と床を踏む音が近付いてくる。


川д川


 ゆらり。女がリビングの入り口に立った。
 濡れ鼠になっていて、服や肌から滴る水が床を打つ。

 ドクオが悲鳴をあげる。
 ブーンは細い目を見開き、咄嗟にドクオの後ろに隠れた。

ζ(゚、゚;ζ「え? 誰?」

ξ;゚⊿゚)ξ「──昨日の……! 消えたんじゃなかったの!?」

川 ゚ -゚)「ブーンを追っていたという『おばけ』か。
     夜になったから出てきたようだな」

 さすがクール、理解が早い。

 ブーンとドクオの前に立ち、食事に使っていたフォークを構える──が。

248 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:18:32 ID:TW803YTwO

川;゚ -゚)「んっ……!?」

(;'A`)「クー様!?」

 そのままの体勢で、クールが唸った。
 体を小刻みに揺らすが、腕や足はその場に留まっている。

川;゚ -゚)「……動かん」

(;'A`)「なっ、……──! お、俺もだ! 体が……!」

 続けてドクオ、ツン、デレも同様に。

 金縛り、というのを聞いたことがある。
 おばけが人の体の自由を奪うとか何とか。

川∀川「ふ……ふふ、ふふ……」

 女が笑っている。

 ブーンは身じろぎした。動く。
 じりじりと後退りをすると、ツンがそれに気付いたのか口を開いた。

249 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:19:32 ID:TW803YTwO

ξ;゚⊿゚)ξ「……ブーン! 逃げて! 昨日の通りなら、あいつの目的はあんただけの筈だわ!」

 言われなくてもそうするつもりである。

 ブーンが頷──こうとした、そのとき。


(;'A`)「いや……! あいつは俺の入浴シーンを覗きに来た……!
    もはや狙いはブーンだけではないのかもしれん!!」

川д川


 ドクオが深刻な声で言い、女のにたにた笑いが消えた。

250 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:20:28 ID:TW803YTwO

ξ;゚⊿゚)ξ「え?」

川;゚ -゚)「そういえばドクオは風呂から飛び出してきたんだったな……
     あの女が現れたからか!」

ζ(゚、゚;ζ「や、ブーン君に会いに来たつもりだったけど間違えたんじゃ……」

(;'A`)「風呂場に現れたとき、あいつは濡れちゃいなかった……!
    なのに今は全身ずぶ濡れ……。間違いねえ!
    俺の残り香を求めて頭から湯船に突っ込んだんだ!」

川;゚ -゚)「こ……この変態め……!!」

川−川

 女は唇を噛み締め、硬直している。
 違う、と一言落としたが、ドクオとクールは聞く耳を持たない。

251 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:22:35 ID:TW803YTwO

(;'A`)「一糸纏わぬ俺の裸体を楽しみやがってぇえ……!」

ζ(゚、゚;ζ「びっくりして湯船に落ちただけじゃないの……?」

川;゚ -゚)「痴女か! 痴女だな!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「あんたがそれ言うの?」

(;'A`)「くそっ、俺達を動けなくさせてどうするつもりだ!」

川;゚ -゚)「まさか……まさか、動けないのをいいことに……!!
     阿婆擦れドスケベめ!!」

川−川

 こういう辺り、ドクオとクールはお似合いな気もするのだが。

 冷静な頭でブーンは思考を横に逸らす。

('A`)「へーんーたい! へーんーたい! へい!」

川 ゚ -゚)「風ッ呂マッニア! 風ッ呂マッニア!!」

 段々2人が調子に乗ってきた。
 頭上で高らかに両手を打ち鳴らし、女へ暴言を浴びせていく。


 ──って。
 金縛りはどこ行った。

252 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:23:42 ID:p5CkgOLU0
支援 画像見れないの俺だけ?

253 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:25:12 ID:TW803YTwO

ξ;゚⊿゚)ξ「……あれ? 動く……」

ζ(゚、゚;ζ「あ、ほんとだ」

川−川

('A`)「男に飢えたケダモノめ!!」

川 ゚ -゚)「そんなに男が欲しいか? それじゃ飽きたらず私までも標的にしたわけか? その意気は認めるぞ?」

 女は、ぐすりと鼻を啜って目元を手の甲で擦った。
 心が折れたようだ。それで金縛りが解けたのだろう。

 そろり、女が顔を上げる。
 手で擦ったせいかぐしゃぐしゃになった前髪の間から、涙に濡れた目が見えた。

 その目が真っ直ぐブーンに向けられている。
 助けを求めている。

 ブーンは真面目くさった顔で、頷いた。


( ^ω^)「大丈夫、変態阿婆擦れドスケベ風呂マニアでも、きっと受け入れてくれる人はいるお」


 人はこれを、「とどめ」と言う。

254 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:28:16 ID:TW803YTwO

 時が凍ったように、沈黙が生まれる。
 女の目から一層激しく涙が溢れた。

川;д;川「わああああああん!!」

 女はクール、ドクオ、ブーンの横を走り、
 窓をすり抜けると、夜の町へ消えた。

 いちいち窓やドアを開ける必要がないのは便利そうだな、と少し思う。

ξ;゚⊿゚)ξ「……あんた、今のわざとでしょ」

( ^ω^)「うん……どうやら彼女、意外と普通の人のようだね。
       いや、『人』ではないだろうけど」

ζ(゚ー゚;ζ(可哀想)

川 ゚ -゚)「痴女が逃げたぞ! 追え!」

('A`)「引っ捕らえろ!!」

 もはや2人はテンションがおかしくなっているらしかった。

 ドクオが脱衣所で服を着直し、クールと共に玄関から外へ飛び出していく。

 放置しておくわけにもいくまい。
 何より「おばけ」が出たということは、また昨夜のような変事が起きている可能性がある。
 残された3人も、すぐにドクオ達の後を追った。



# # #

255 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:29:36 ID:TW803YTwO


 果たして、異変は起きていた。


(;,゚Д゚)「あ、おい! 『ヒーロー』、これ何とかならねえか!?」

 広場にいたギコが、ブーン達を見付けるなり駆け寄ってきた。
 ヒーローはドクオのことだろう。

('A`)「何だこの騒ぎ……」

 広場内は恐慌に陥っていた。

 ──得体の知れぬ生き物が、あちこちにいるのだ。

 生き物、というか、化け物。
 人間の死体が腐ったようなものや、いくつもの動物を混ぜ合わせたようなモンスターが
 そこら中を行き来している。

 普通の姿をした人間の反応は、それらから逃げ回ったり、
 逆に心配そうに話し掛けたりと様々。

 モンスターが人を襲っている、という様子ではなかった。

256 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:30:52 ID:TW803YTwO

(;,゚Д゚)「それがよ……」

 ギコが広場の中心へ目を遣る。

 ステージの上で、1人の女が右往左往していた。

从;゚∀从「あ、あのー! 皆さん落ち着いて! 今すぐ直しますから!」

 白衣の女──たしか、ハインリッヒといったか。
 ハインリッヒの手には、昼間見た赤い機械があった。

('A`)「ありゃあ……」

( ^ω^)「ユトリ社の新作ゲームだおね。
       たしか、『探検者』と『モンスター』に分かれてプレイする……」

(;,゚Д゚)「ああ、それが……」

(*´_ゝ`)∬*´_ゝ`)「説明しよう!!」

(;^ω^)「うわっ」

(*'A`)「姉者さん!」

 出し抜けに知り合いが2人、話に加わってきた。

 流石一座の長男長女、兄者と姉者だ。
 2人とも酒臭い。酒盛りに参加していたのだろう。

257 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:32:21 ID:TW803YTwO

(*´_ゝ`)「酒盛りの余興として、あのゲームのデモプレイをすることになって
       俺と姉者も立候補したんだがー」

∬*´_ゝ`)「とつぜん機械が暴走して、そこらの人間が化け物みたいな見た目に。
      近くにいた私達が無事だったから、多分ランダムで餌食になったのねえ」

 兄者と姉者は笑いながら互いの酒瓶を打ち鳴らし、らっぱ飲みした。
 酔いすぎだし飲みすぎだ。

 姉者のファンだというドクオは、浮かれつつも彼らの話を真剣に聞いていたようで
 なるほどと何度も頷いた。

('A`)「そういや、ホログラムで化け物になりきるオマケ機能があったな」

ξ;゚⊿゚)ξ「ホログラム?」

ζ(゚、゚*ζ「ってことは、本当にモンスターになってるわけじゃないんだね」

258 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:34:38 ID:TW803YTwO

(*´_ゝ`)「ああ……俺の推理が正しければ、あの機械が直れば騒ぎも治まる」

∬*´_ゝ`)「兄者やばいわあ、名探偵名探偵」

( <●><●>)「それは推理ではなく、誰もが分かっている事実です」ブニョン

ξ;゚д゚)ξ「うひゃあああっ!!?」

 ずるり、黒い「何か」が兄者の肩に乗っかった。
 ぶよぶよした、固めのゼリーみたいな。

 そのゼリーには見慣れたギョロ目が付いていた。

(;^ω^)「ワカッテマスさんかお……?」

( <●><●>)「そうですよ。ギコさんと一緒に酒盛り会場の警備をしていたら、こんなことに」ブヨヨ

ξ;゚д゚)ξ「目がいっぱい付いてるぅううう!!」

(*´_ゝ`)「これアレだ、ヴィップ国に伝わる『スライム』ってモンスターだなwwwww」

∬*´_ゝ`)「見た目はゼリーなのに触ると普通に人の形してるwwwwwwwwww」

( <●><●>)「所詮ホログラムですからね。
       あなた方にどう見えてるかは分かりませんが、私は今、兄者さんの肩に手を乗せてるだけです」ブニニン

ξ;゚⊿゚)ξ「ゼリーがまとわりついてるようにしか見えない……」

259 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:36:50 ID:TW803YTwO

川 ゚ -゚)「とにかく、あの機械が直るのを大人しく待てばいいんだろう」

(;,゚Д゚)「そうなんだが──どうも、上手くいってないみたいなんだ。
     あんた、機械いじり得意だろ。手伝ってきてくれないか。
     俺はこの場から人を出さないようにしなきゃいけねえ。モンスター状態で町中歩かれちゃ厄介だ」

 手伝ってこい、とは、また簡単に言ってくれる。
 ドクオの背を叩き、ギコは広場を出ようとする化け物のもとへ駆けていった。

ζ(゚、゚;ζ「あっ……私、手伝ってくる」

 それをデレが追いかける。
 が、途中で戻ってくると、ポケットから出した紙をブーンの手に握らせた。

 何かの役に立ちそうだったら使って、と告げ、今度こそギコの方へ走っていく。

260 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:38:43 ID:TW803YTwO

( <●><●>)「……ブーンさん、それ──」グニ…

(;><)「あーっ! そのギョロ目はワカッテマス君ですね! やっと見付けたんです!」

 ああ、また新たに声をかけてくる者が。

 若い男が駆け寄ってくる。
 彼を見たワカッテマスの全身が、動揺するように震えた。ぐにゃぐにゃゆらゆら。
 ぱっと見、こわい。

(;<●><●>)「ビロード!? 何故ここに!」ブニ!

(;><)「ぽぽちゃんが『庶煩』の焼きおにぎり食べたいって言うから……
      ってウゲエーッ! ギョロ目がいっぱいで普通に恐い! どれが本物の目ですか!?」

 ビロード。ドジな男で、よく物を失くしたり壊したりするため、
 しょっちゅう「ツンちゃんのお悩み相談室」に依頼をしてくる、お得意様である。

 彼には身重の妻がいる筈だが、その人はここに見当たらない。

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/114.jpg

261 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:38:51 ID:DKMT/RJ60
支援!

262 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:39:56 ID:TW803YTwO

(;<●><●>)「ぽぽちゃんは!?」ブニョニョン!?

(;><)「おうちで待ってるんです……。
      早く帰ってぽぽちゃんの無事を確かめたいんですけど、警備の人達に止められて……。
      ワカッテマス君なら何とか出来ないかって探してたんです!」

(;<●><●>)「彼女の傍についていてあげなさいと、あれほど……。
       ……分かりました、あなたは異変がないようですし、通してもらうように話をつけましょう。
       行きますよ」ブッニン

(*><)「ありがとうございます! さすがワカッテマス君なんです!」

 ワカッテマスは、何か言いたげにブーンの握る紙を見遣ったが
 ビロードの方を優先させたらしく、ぶよぶよ揺れながら去っていった。

 モンスターまみれの広場の中、すぐに見えなくなる。

263 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:41:50 ID:TW803YTwO

(*´_ゝ`)「おう、行ってしまわれた」

∬*´_ゝ`)「そろそろ、この騒ぎにも飽きてきたわね……。
      早く何とかしてちょうだいね」

(*'∀`)「はい! 後でサインしてください!!」

∬*´_ゝ`)「これ解決出来たらね」

(*'∀`)「っしゃあ!! 行ってきます!」

ξ;゚⊿゚)ξ「待って、私も行く!」

川 ゚ -゚)「む!」

 ドクオは既に、「おばけ」のことは忘れたようだ。
 ツンを連れ、人混みを掻き分けるようにしてステージへ向かう。

 それに付いていこうかブーンが迷っていると、
 頻りに辺りを見渡していたクールが、一点に視線を定めた。
 ブーンを抱え上げる。

川 ゚ -゚)「いたぞブーン!」

( ^ω^)「何が?」

川 ゚ -゚)「変態おばけだ! あっちに逃げた、追うぞ!」



# # #

264 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:44:24 ID:TW803YTwO



从;゚∀从「──こ、壊すのは嫌だ! 嫌だ!!」

 ステージに上がり、ドクオが自己紹介と共に手助けを申し出たところ。
 予想外にも、ハインリッヒは必死の抵抗を見せた。

 ドクオは直すと言っているのだが、彼女はどうしてだか、それを「壊す」と認識しているらしいのだ。

(;'A`)「壊すんじゃなくてだな、分解してエラーの原因を──」

从;゚∀从「壊さずにバラすなんて無理なんだよ!
     細かい部品が複雑に絡んでるし……」

ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあいっそ、それは壊す覚悟で」

从;゚∀从「駄目だ駄目だ駄目だあ!!
     ……実はこれ試作品で……世の中にこれ一個しかないんだ……。
     本格的な製造は来月から……」

265 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:45:33 ID:TW803YTwO

('A`)「それ壊したら、ホログラムは解除出来なくなるのか?」

从;゚∀从「いや、完全に壊れりゃ解除されるだろうけど」

ξ;゚⊿゚)ξ「ならもう、それには犠牲になってもらって」

从;>∀从「駄目だぁああ!!」

 ゲーム機を抱きかかえ、ハインリッヒが蹲る。
 ドクオとツンは顔を見合わせた。

 この現状を前にして、何故そこまで渋るのだ。

ξ゚⊿゚)ξ「そんなに嫌がるからには、何か理由があるんでしょうね」

 何度も首を縦に振るハインリッヒ。

 やがて彼女は顔を上げ、愛おしそうにゲーム機を撫でて、言った。


从 ゚∀从「……私、ガラケー派なんだ」

ξ;゚д゚)ξ(;'A`)「は?」


 だから何だ、と言うよりほかない。

266 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:47:34 ID:TW803YTwO

从 ゚∀从「携帯はガラケーの方が好きなんだ」

('A`)「……ヴィップ国の奴がガラケー派とは珍しいな。
    ニューソクならともかく、ヴィップじゃガラケーは色々不便なとこがあるんじゃないか?」

 とりあえず、話を聞いてみる。

 ツンはこういった方向には詳しくないようで、
 口を噤んでドクオとハインリッヒの会話を眺めた。

从 ゚∀从「祖父ちゃんがニューソク人でな、ガラケー使ってて。
     私が小さかった頃、初めてガラケーを触らせてもらって……感動したんだ。
     こんなに小さいのに、色んな使い道があってさ」

('A`)「まあ……俺も生で見たことはないが、一時期のガラケーは大小問わず機能がぶち込まれてたらしいな」

从 ゚∀从「私が機械やゲームに興味持ったのは、あのときのガラケーが切っ掛けだった。
     ……私の原点なんだ……」

从 ゚∀从「初めて買った自分の携帯は当然ガラケーだ。
     壊れるまで何年も何年も大事に使い続けた……」

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/123.jpg

267 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:48:32 ID:TW803YTwO

从 ゚∀从「……その携帯が、これだ」

 言って、ハインリッヒはゲーム機を顔の前へ掲げた。

 よく見てみると、表面に小さな傷が付いていたり、塗装が一部薄くなっていたりして、
 たしかに真新しさは感じられなかった。

('A`)「なるほど、自分の携帯をゲーム機に作り替えたのか」

从 ゚∀从「そうだよ……中身ごっそり入れ換えて、ゲームとして使えるように改造して、
     やっと成功したのが3ヵ月前……」

从 ;∀从「──そんな思い出たっぷりのゲーム、壊して堪るかぁああ!!」

 鬼、悪魔、と罵られる。
 ドクオは頬を掻き、困り顔でツンを一瞥した。

ξ゚⊿゚)ξ「……ていうか、こんな状況になってる時点でもう『壊れてる』んじゃ……」

从 ;∀从「ち、違うもん! ちょっと調子悪いだけだもん!!」

('A`)「いいから貸せって、このままにもしておけねえだろ」

从 ;∀从「やだー!!」

(;'A`)「……」

ξ;゚⊿゚)ξ「……」

 ──どうしろと。



# # #

268 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:49:31 ID:TW803YTwO


 広場の片隅。
 騒動に巻き込まれたのか、店主のいない酒売り場。


川 ^ -^)「見ぃいー付ーけたあー」

川;д川 ビクッ

( ^ω^)「お前の方がおばけみたいだお、クー」


 そこに、「おばけ」は隠れていた。

 クールが売り場の台を越え、女の前に降り立つ。
 抱えられたままだったブーンが、ようやく下ろされた。

 女はびくびくと震えていたが、逃げはしなかった。
 完全にクールに怯えている。

269 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:50:48 ID:TW803YTwO

川 ゚ -゚)「よう、痴女。こんなところに逃げてどうしようっていうんだ?」

川;д川「う、ううう……」

( ^ω^)「クー。お前、好みの女の子いじめて楽しんでるだけだろうお」

川 ゚ -゚)「バレたか」

 嘆息し、ブーンは小さい拳でクールの頭を叩いた。
 クールはこの女に対して怒りや憎しみを持っているわけではない。
 からかい、少し追い詰めて、その反応を楽しんでいるだけだ。

川 ゚ -゚)「すまんすまん、話で聞いていたより普通の子だったから、つい」

( ^ω^)「まあ、たしかに昨日ほど恐くはないお」

川;д川 ビクビク

270 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:52:12 ID:TW803YTwO

( ^ω^)「……お嬢さん、ちょっと僕とお話ししないかお?」

 女は震えるばかりで答えない。

 さて、どうしたものか。

 困り果てたブーンは、ふと、デレから渡された紙のことを思い出した。
 広げてみる。

( ^ω^)「──お」

 今朝、ドクオに見せてもらった例の「絵」と同じだった。
 ワカッテマスが受け取るとか言っていたが、結局渡されなかったらしい。

 絵を眺めていると、女が反応を見せた。
 描かれている男性を凝視している。

( ^ω^)「この絵、右側が変に白いおね」

川 ゚ -゚)「ああ、そこには本来、女性が描かれているんだ」

( ^ω^)「女の人が?」

 ならば何故、それが消えているのか──
 ブーンが首を傾げると、クールは一瞬だけ得意気に笑んだ。

271 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:53:41 ID:TW803YTwO


川 ゚ -゚)「そりゃそうだろう、女はこっちにいるんだから」


 クールが目の前で震える女を指差す。

 そういうものか、とブーンが呟く。
 そういうものなんだろ、とクールが返した。

川 ゚ -゚)「画集に載ってたこの絵には、彼女にそっくりな女が描かれていたぞ」

( ^ω^)「なるほど」


 つまり、この女は絵の中から飛び出してきた存在であるわけだ。

 有り得ない、とは思わない。
 そういう段階はとうに過ぎているだろう。

 何より彼女は、絵の男性に、明らかに興味を示している。

272 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:56:47 ID:TW803YTwO

川 ゚ -゚)「『幸せになるようです』──この絵のタイトルだ」

( ^ω^)「幸せに……」

川 ゚ -゚)「作者はニューソクの絵本作家でな。
     ただの一枚絵にも、何かしらの物語を詰め込むのが好きだったらしい。
     この絵も例外ではない」

川 ゚ -゚)「夜にしか活動出来ない『おばけ』──この絵の女だな、
     彼女は、夜明けにおばけの世界へ帰りそびれてしまい、
     困っていたところを人間の男に助けられる。
     昼でも真っ暗な森の中へ連れていってもらったんだ」

川 ゚ -゚)「まあ、惚れるな。当然のように」

( ^ω^)「ラブストーリーだお」

 ブーン達の前にいる女は、クールの話を聞き顔を上げた。
 思いがけない場所で馴染みのあるものに触れたような──そんな表情。

川 ゚ -゚)「何やかんやあって2人は結ばれ、『おばけ』は人間となり、幸せになる……というわけだ」

( ^ω^)「何故おばけが人間になれるんだお」

川 ゚ -゚)「言ったろ、作者は絵本作家だ。愛さえあれば大概どうにでもなるもんさ」

 ブーンは頷きながら絵を下ろした。

 はっとしたように、女がブーンの右手を握った。
 ひどく冷たい。

273 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 18:58:37 ID:TW803YTwO

川д川「……私のこと、好き……?」

 昨夜と同じ質問。
 声からは困惑が感じ取れた。

 昨夜、この問い掛けに素直に答えたらとんでもないことになったのだった。

 それをふまえて。

 ブーンは、真剣な面持ちと声音で答えた。


( ^ω^)「だから僕、10歳以上は興味ないって」

川 ゚ -゚)「お前のブレないところ結構好きだぞ」


 やはりそこは、どうしても譲れなかった。

274 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:01:21 ID:TW803YTwO

川д川

( ^ω^)

川д川「……ころす……」

 そしてやっぱり、こうなった。
 女の手に力が篭る。
 ブーンの右手が軋んだ。

川#д川「殺す! 殺す! 殺す!!」

 クールが動く。が、ブーンは左手でクールを制した。

 それからすぐに、先の絵を女に突きつける。
 力が一瞬和らいだ隙に、彼女の手から自身の右手を抜き取った。

( ^ω^)「おばけさん、よく見るお。
       この絵からは君がいなくなってるお。そりゃそうだおね、君は今ここにいるんだから」

川#д川「……」

( ^ω^)「でも、男の人は絵の中に残ったまま。これも当然だお。
       彼は彼であって、僕ではないんだから」

 そりゃあ多少は似ているけれど、と付け足す。
 再び、女の空気に戸惑いが混じった。

275 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:02:32 ID:TW803YTwO

( ^ω^)「君のことを愛して、幸せにしてくれるのは、僕ではないお。
       この絵の中にいる、彼なんだお」

 女の目が、絵とブーンを行き来する。
 往復するごとに、敵意は弱まっていった。

 彼女は少々強引で怒りやすいところがあるが、それ以外は、普通の乙女なのだ。

川д川「……」

( ^ω^)「どうして絵の中から出てきてしまったのかは分からないけど、
       君がここにいるのは間違いなんだお。
       このままここにいても、僕が君を好きになることはないし、幸せにもしてあげられない」

 完全に大人しくなったと判断したようで、クールが警戒を解いた。

 女の視線は、絵に固定されて、止まった。

276 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:03:36 ID:TW803YTwO


( ^ω^)「──元の場所にお戻り。そしたら、きっと幸せになれるお」


 それが最後。


 瞬きした直後には、もう、目の前に誰もいなかった。


.

277 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:05:09 ID:TW803YTwO

 ブーンとクールが視線を合わせる。
 ブーンが絵を自分の方へ引っくり返すと、
 2人は自然と並んで、絵を見下ろした。

川 ゚ -゚)「うん。画集に載ってた通りになった」


 絵には、2人の男女が描かれている。

 頬を染める女。
 にこやかに手を振る男。


 題名通り、これから彼らに幸福が訪れそうな、温かい絵だった。



http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/144.jpg



# # #

278 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:08:19 ID:TW803YTwO


从 ;∀从「絶対やだあ、絶対壊させてやんねえからな……」

 ハインリッヒはまだ粘っていた。
 ドクオとツンがどれだけ説得しても、全く効果がない。

ξ゚⊿゚)ξ「このままじゃ騒ぎが大きくなってくだけだわ……」

 ドクオの腹の底で、苛立ちが湧く。
 早く何とかしないと、姉者からサインをもらえないではないか。とか。

 息を吐き出し、ハインリッヒの肩を叩いた。

('A`)「……あんた、ゲームとガラケー、どっちが大事なんだ」

 ぴくんとハインリッヒの肩が揺れた。
 涙と鼻水で汚れた顔を持ち上げ、ドクオを見る。

从 ;∀从「どっちって……」

279 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:09:45 ID:TW803YTwO

('A`)「ガラケーそのものが好きだってんなら、携帯会社に勤めりゃいい。
    でもゲーム会社に入って、自分の大事な携帯いじくり回してでもゲーム作ったってことは、
    そっちだってかなり好きなんだろ?」

从 ;∀从「あ、当たり前だろっ! でなきゃ何年も開発に命かけねえよ!」

('A`)「その大好きなゲームが今、人様に迷惑かけてんだ。
    早く何とかしねえと、せっかく作った新作ゲームだってお蔵入りになっちまうぞ」

从 ;∀从「……」

 これはだいぶ効いたようだ。
 ハインリッヒの抵抗が収まり、でも、とか、だって、とかいう弱々しい言葉のみが落ちるようになった。

 それでもまだ決心がつかぬらしく、ゲーム機を抱き締めたまま
 涙の滲む瞳でドクオ達を睨みつけてくる。

280 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:12:03 ID:TW803YTwO

 ──どれほどの間、そうしていたか。

 突然、ハインリッヒの表情が緩んだ。
 視線の先にツンがいる。

从 ;∀从「……あんた、昼に第5保育園にいたな」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、わ、私? たしかにいたけど……」

 反時計症。
 ぽつりと呟いたハインリッヒは、逡巡の後、言った。

从 ;∀从「……反時計症について色々教えてくれるなら、ゲーム、渡す」

ξ;゚⊿゚)ξ「え?」

从 ;∀从「次回作のために反時計症を調べたいんだが、患者には直接訊きづらい……。
     ──あんたらが教えてくれるなら、代わりに、私も……このゲーム機、あんたらに渡す」

 ドクオはツンを見下ろした。
 ツンもドクオを見上げる。

 互いに、同じ顔をしていただろう。
 「それぐらいのことでいいのか」、と。

281 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:13:10 ID:TW803YTwO

 ツンはハインリッヒの片手をとり、ぎゅっと両手で握った。

ξ゚⊿゚)ξ「もちろん協力するわ。このドクオも反時計症だし、
      何だって訊いてちょうだい。私達も何だって答えるから」

从 ;∀从

 途端。

从 ゚∀从

 ハインリッヒの目から涙が引っ込み、

从*゚∀从

 薄暗いなかでも分かるほど顔色が明るくなり、

从*^∀从

 実に嬉しそうな笑みへと表情が変わった。

282 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:14:38 ID:TW803YTwO

从*゚∀从「やった! やった! 約束な! はい好きにしていいぞ!」

(;'A`)「えっ!? お、おう!?」

ξ;゚⊿゚)ξ「きゃっ」

 ハインリッヒはゲーム機をドクオに投げつけると
 ツンを抱え、ステージ上をくるくる回り始めた。

 ドクオもツンも、唖然とするしかなかった。

从*^∀从「うっひひひ! 何か急に新しい構想が浮かんできたぞ!!
     やべえよ絶対面白いゲームになる!!」クルクル

ξ;゙⊿゙)ξ「ま、まわる、め、まわる、」

283 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:16:54 ID:TW803YTwO

(;'A`)「お、おい……いいのか、ゲーム機バラして」

从*^∀从「粉々にするんじゃないなら、好きにしろってば!
     やっぱ過去の思い出にしがみついてねえで、前を向かねえとな!
     開発に何年も注ぎ込んだんだ、ゲームが世に出なくなるよか、よっぽどマシさ!」

 ドクオは脱力した。
 何だそれは、必死に説得した20分間を返せと叫びたかった。
 なんなら放り投げて家に帰って寝たかった。

 が、ここまで来て放るわけにもいかない。

 ハインリッヒから工具を借りて、まずはゲーム機を引っくり返し、
 開けられる場所を探した。

 下部のカバーが簡単に外せそうだった。
 ドクオは話でしか知らないが、「ガラケー」は大体ここにバッテリーがあるという。

 ただ、これは既に携帯電話からゲーム機へと変わってしまっている。
 中にあるのはバッテリーではなく、ゲームに必要な部品ばかりだろう。

284 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:18:09 ID:TW803YTwO

 慎重にカバーを外す。

 さあここからが本番だ──と意気込んだドクオ、だったが。

(;'A`)「あ?」

 予想外の光景があった。


(;'A`)「また、紙だ……」


 一瞬、カバーが二重になっているのかと思った。
 違う。
 折り畳まれた紙が、ぽんと置かれていたのだ。

285 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:20:45 ID:TW803YTwO

 昨夜、時計塔の機械室でのことが脳裏を過ぎる。
 あのときも時計の内部に紙──絵──が挟まっていて。
 それが、時計の動きを邪魔していた。

 ゲーム機から紙を取り出す。
 ぱっと見、各部品に異常はない。

 ドクオはカバーを閉め直した。
 ハインリッヒを呼び、ゲーム機を手渡す。

 いくつかボタンを押したかと思えば、彼女がわっと声をあげた。

从*゚∀从「──おお! 動く! 直った! すげえなあんた!!」

 ひとしきりはしゃいだハインリッヒは、マイクを握ると
 ゲーム機が直った旨を伝え、1人ずつホログラムを解除していった。

 広場に歓声が広がる。
 ほとんどの人は、ドクオの手柄であるとは知らないだろう。

 いや、手柄と呼べるかすら怪しい。
 ドクオがやったことは、開けて、取って、閉めただけだ。

286 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:24:26 ID:TW803YTwO

ξ;-⊿゚)ξ「──早かったのね」

 ハインリッヒの回転で目を回したらしきツンが、ふらつきながらドクオのもとへ来て、言った。

 ドクオは今あったことを丸ごと隠さず話し、回収した紙を見せた。
 ツンが紙を広げる。

ξ゚⊿゚)ξ「……絵だわ」

('A`)「やっぱりか」

 紙には、得体の知れぬ生き物と、少女の姿があった。

 4つの耳と角の生えた頭、全てを拒絶するように顔を手で覆う、何者か。
 その生き物に果実を差し出す少女。
 どこか寂しげな絵。

ξ;゚⊿゚)ξ「『嘘のバケモノ』……」

 ツンが目を丸くする。
 彼女の発言は、ドクオには理解が及ばない。

287 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:28:18 ID:TW803YTwO

('A`)「何だそれ?」

ξ゚⊿゚)ξ「絵のタイトル。クーが見てた画集に載ってた。
      あんたが昨日取った絵があるでしょ、あれの隣のページでこの絵が紹介されてたの」

ξ゚⊿゚)ξ「突如化け物になってしまった人間と、
      目が見えないがために、彼を普通の人間と思い優しく接する少女の絵──」

('A`)「……聞き覚えあんな、その話」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ……何年か前に流石一座が演じた話よ。
      あれを描いた絵なの」

ξ゚⊿゚)ξ「だから、『化け物』のモデルは兄者で、少女は妹者ちゃん。
      舞台の人気も相俟って、かなり売れたのよね、この絵」

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/200.jpg

288 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:29:24 ID:TW803YTwO

 唸り、ドクオは頭を掻いた。

 「突如化け物に」。
 今回の騒ぎとほぼ一緒だ。
 ホログラムという「偽物」ではあるが、多くの人がいきなり化け物の姿に変えられてしまった。

 昨夜と今夜。
 どちらも、事件に「絵」が関わっている。



 もしかしたら。
 明日もまた、何かが。


 騒ぎが収束していく広場を見遣り、ツンとドクオは眉根を寄せた。



# # #

289 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:31:38 ID:TW803YTwO


( <●><●>)「……」

 手を見下ろし、ワカッテマスは元通りになったのを確認した。

 広場にいる人々も、次々に人間の姿へ戻っていく。
 ステージ上ではハインリッヒが何度も頭を下げていた。

 携帯電話が鳴る。ビロードからだった。

『無事に帰れたんです、ぽぽちゃんも特に何もなかったみたいでした!
 ワカッテマス君、ありがとうございました!』

( <●><●>)「なら良かったです。……祭の間は、あまり不用意に出歩かない方がいいと思います。
       あなたも今朝の号外を見たでしょう、変わらず祭が続行されるとはいっても──
       何者かが、何かしらの企みをしているようですし」

『でも、ワカッテマス君が警備してくれてるんだから、きっと大丈夫なんです!』

(;<●><●>)「あのねえビロード──」

『ワカッテマス君がいるってだけで、僕もぽぽちゃんも、安心出来るんですよ』

( <●><●>)「、……」

290 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:34:47 ID:TW803YTwO

『あ、でも頑張りすぎるのも駄目ですよ。
 それじゃあワカッテマス君、おやすみなさい』

 おやすみなさいと返すと、通話が切れた。
 ワカッテマスは携帯電話をポケットにしまい、振り返る。

 胸中に渦巻くのは、焦り、苛立ち、──罪悪感。

(;<●><●>)「……くそっ!」

 言い慣れない、乱暴な呟きを漏らす。

(;<●><●>)「昨日といい今日といい──『予定』と大分違うじゃありませんか。
       誰がこんな騒ぎにしろと言ったんです!
       本来の目的から外れてしまってるじゃないか、……畜生!」

 どこへともつかぬ悪態を小声でつき、広場の中を進む。

 ステージの上、ツンが絵を見下ろしているのに気付き、ワカッテマスは舌打ちした。



# # #

291 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:36:50 ID:TW803YTwO


(,,゚Д゚)「おお、今日もあいつが何とかしたか。良かった良かった」

 ホログラムが解除されていく人々と、ステージ上のドクオ達を眺め
 ギコは満足そうに頷いた。

 何が直接の原因だったかは知らないが、昨日に引き続き、無事に解決したようだ。

ζ(゚ー゚;ζ「良かったあ……。あ、私、ツンちゃん達のとこ行ってきます」

(,,゚Д゚)「おう」

 デレが小走りで戻っていく。
 酔っ払いとぶつかっているのを見て、ギコは呆れ気味に笑った。

 ──さすがに、今夜の酒盛りはもう終了だろう。
 あと少しで見回りを交代する時間だったので、自分も一杯引っ掛けたかったのだが。
 致し方あるまい。

292 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:38:18 ID:TW803YTwO

 怪我人が出なかったか確かめるため、人混みの中を進んでいく。

 屋台の並びが途切れたところの、ごみ捨て場。
 そこに若い女性が倒れていた。

(;,゚Д゚)「あ……おい! あんた、大丈夫か!?」

(;* ー )「う……ん……」

 女性の肩が、かたかたと震えている。
 薄着一枚。これでは、ひどく寒かろう。

 ギコは上着を脱ぎ、彼女に着せてやった。
 いくらか暖まったのか、ほう、と息をつく。

(;* ー )「すみません……着の身着のままで病院から抜け出したもので、
     寒さと空腹にやられてしまって……」

(;,゚Д゚)「病院? あんた病人か? 何だってこんなとこに──」

 女性が身を起こす。
 そこで初めて、ギコは彼女の顔をはっきり視認した。

293 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:40:01 ID:TW803YTwO


(,,゚Д゚)(……天使……)


 もちろん比喩である。

 その瞬間のギコの目に映った彼女は、儚くて美しくて──

 つまりは天使と見紛うほどには、彼の好みのタイプだった。

http://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/121.jpg

(;*゚ー゚)「あ……あのっ、女の子を見ませんでしたか!?
     傷だらけの子……!」

 女性がギコの手を握り、詰め寄る。
 近い。天使が近い。
 手のひらの柔らかさと温かさ、顔にかかる吐息にばかり意識が行って、彼女の声はあまり耳に入らなかった。

294 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:40:53 ID:TW803YTwO


(;*゚ー゚)「私と同じ病院にいたんですけど、昨夜の騒ぎのときにいなくなっちゃって──
     その子を探すために病院を抜けてきたんです!
     でぃちゃんっていう子、知りませんか!?」



# # #

295 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:43:08 ID:TW803YTwO


 シナーは目を覚ました。
 真っ暗な倉庫の中、携帯電話のライトがちかちか光っている。
 不在着信の知らせ。

 履歴を見ると、ニダーから何度か電話があった。
 かけ直す。
 3コールで相手が出た。

( `ハ´)「遅い」

『3コールで文句言われるニダ!?
 あと何回かけても電話出なかった奴に言われたくないニダ!』

( `ハ´)「何の用アル」

『や、広場が騒ぎになってたからシナーは大丈夫かと──だいぶ前に治まったみたいだけど。
 そういえば、寝床は見付けたニカ?』

( `ハ´)「いいとこを見付けたアルヨ」

『それは良か──』

 実のある話は期待できそうにない。
 通話を切った。

296 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:45:54 ID:TW803YTwO

 ふと、でぃのことを思い出した。

 ランプを手繰り寄せ、スイッチを入れる。
 彼女が繋がれている柱へ、僅かに光が届いた。

(#゚;;-゚)、

( `ハ´)「……あー……」

 大きくなっていた。
 十代半ばか、そこら辺。
 携帯電話で時間を確認すると、日付が変わって数分経っていた。

 毛布を被っている。どことなく照れ臭そうだ。
 そういえばセーター一枚しか身につけていなかったな、と思い返し、シナーは溜め息をついた。

 夜が明けたら、何か適当な服を買ってこなければ。



# # #

297 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:50:45 ID:TW803YTwO
ここまで
読んでくれた人、まとめのブンツンドーさん、ありがとうございました


新たなラノベ祭が始まって、この話が完全に記憶から消え去りそうな危機を感じたので投下した次第

全部書き終わってから投下したいんだけど、
一度に二つのことが出来ないらしく、別の現行を書きつつこっちも、っていう風にやろうとすると
結果、どっちもノロノロ遅くなってしまう

なので、ちょこちょこと少しずつでも書けた分だけ投下していくべきか、
やっぱり書き溜め終わってから投下するべきか、もうちょっと考えてみます


とにかく大事なことなので何度でも言うけど、必ず完結はさせる
年内に終わればいいや、ぐらいの緩さで待っていてほしい

298 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:53:23 ID:TW803YTwO

前回使った絵
No.4,9,27,39,46,56,68,83,108,111,116,125,143,168

今回使った絵
No.18
No.30
No.34
No.72
No.89
No.90
No.114
No.117
No.120
No.121
No.123
No.124
No.138
No.144
No.154
No.192
No.200


No.34に貞子らしきキャラがいるんですけどAA指定されてないのをいいことに、勝手にくるうにしてます。すいません

299 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:55:32 ID:TW803YTwO
・現段階で判明している反時計症患者

( ^ω^)
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚ー゚*ζ
川 ゚ -゚)

( ´_ゝ`)
l从・∀・ノ!リ人
(´<_` )

川 ゚ 々゚)
ミセ*゚ー゚)リ
(゚、゚トソン
  _
( ゚∀゚)
lw´‐ _‐ノv
(#゚;;-゚)
(゚A゚* )

300 訂正 :2014/03/13(木) 19:57:19 ID:TW803YTwO
・現段階で判明している反時計症患者

( ^ω^)
('A`)
ξ゚?听)ξ
ζ(゚ー゚*ζ
川 ゚ -゚)

( ´_ゝ`)
l从・∀・ノ!リ人
(´<_` )

川 ゚ 々゚)
( ´∀`)
ミセ*゚ー゚)リ
(゚、゚トソン
  _
( ゚∀゚)
lw´‐ _‐ノv
(#゚;;-゚)
(゚A゚* )

301 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 19:59:06 ID:TW803YTwO
・現段階で判明している国籍

西の国「ソウサク」
( ^ω^)('A`)ξ゚?听)ξ川 ゚ -゚)ζ(゚ー゚*ζ ツンちゃんお悩み相談室

( ´_ゝ`)(´<_` )∬´_ゝ`)l从・∀・ノ!リ人(´<_` )@#_、_@ 彡⌒ミ 流石一座

川 ゚ 々゚)( ´∀`)|゚ノ ^∀^) 王家関連

(´・ω・`) 呑み処「庶煩」店主  (゚A゚* ) 飲食店の店主

(`・ω・´)o川*゚ー゚)o( ・∀・) 保育園職員

ミセ*゚ー゚)リ(゚、゚トソン 画家と助手

( <●><●>) 祭の警備責任者
  _
( ゚∀゚)(#゚;;-゚)lw´‐ _‐ノv( ><)(*‘ω‘ *) その他一般人


東の国「ニューソク」
( ^ν^)<ヽ`∀´>( `ハ´) 誘拐計画をあれやこれや

/ ゚、。 / ソウサクに移って保育園職員に

*(‘‘)* 一般人


南の国「ヴィップ」
(‘_L’)(,,゚Д゚) 警備の人

从 ゚∀从 ゲーム会社「ユトリ」社員


北の国「シタラバニア」
('、`*川

302 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 20:01:28 ID:TW803YTwO
あーツンの文字化けが……あー……

とりあえず以上です

303 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 20:12:05 ID:DKMT/RJ60
乙乙

304 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 21:21:56 ID:ix9Or1mMO
今気づいた、まさかの続き来てた今から読む

305 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 23:34:40 ID:.3YLnwEc0

ずっと待ってたぞ

306 名も無きAAのようです :2014/03/13(木) 23:46:49 ID:p5CkgOLU0
乙 完結楽しみにしてる

307 名も無きAAのようです :2014/03/14(金) 00:11:06 ID:/M1XpnUsC
あらすじ忘れてしまってたから一から読んだよ 
続き乙

308 名も無きAAのようです :2014/03/14(金) 07:09:39 ID:X0RLuvUY0
おつ!
待ってた 嬉しい

309 名も無きAAのようです :2014/03/14(金) 10:35:16 ID:cjTXllOo0
帰ってきたのか!すばらしい!!

310 名も無きAAのようです :2014/03/14(金) 23:06:46 ID:wHTC6LUs0
続き待ってるよ

311 名も無きAAのようです :2014/03/16(日) 00:25:13 ID:efTuJG6E0
これでまだ31枚とか気が遠くなるな

312 名も無きAAのようです :2015/10/30(金) 22:52:40 ID:sb2A23960
マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チン チン
スレ立ってから、もうすぐ3年経っちゃうけど逃亡しないんだよね?
あと2、3回は投下あるんだよね?

ttp://imepic.jp/20151030/777590 ※擬人化
ttp://imepic.jp/20151030/778480
※まとめさんへ この絵は2つともまとめないでください

313 ◆c9sFVHJv2E :2015/11/04(水) 08:14:58 ID:4vQv2.2I0
>>312
ありがとうございます!!!!!
ペニサス綺麗だし相関図もすごい。ブーンの説明が身も蓋もなさすぎて吹いた
本当にありがとうございます、相関図ほんと超便利
このスレを覚えてくれてる(さらに絵まで描いてくれる)人がいるなんて思ってなかったから本気で感動している


話の流れは大体決まってるので後は書くだけなんですが
他の現行とか短編とかを優先してしまって、こっちはちょっとずつしか書き進められてません
勿論いずれ完結はさせます。いつになるかは断言できないけれど。必ず。せめて来年には

スレが沈んだままこの絵が流れてしまうのはあまりに勿体ないので、迷惑かもですが一旦ageさせてください。すみません
書き溜め頑張ります

314 名も無きAAのようです :2015/11/04(水) 11:52:20 ID:j2jXbkq60
うォおお!待ってる!頑張って!

315 名も無きAAのようです :2015/11/04(水) 16:42:37 ID:K1hHQ/II0
ファイト!

316 名も無きAAのようです :2015/11/06(金) 00:47:31 ID:Q5WPnUus0
楽しみに続き待ってるよ!

317 名も無きAAのようです :2015/11/12(木) 22:40:20 ID:2w78AFtc0
2013年からブーン系離れてたから1話しか読めてなくて、逃亡か残念と思ってたんだけど
まさか続きが来てたなんて、しかも未だに完結させる意気込みを持ってくれているなんて感動だ
スレがあがってるの今日気づいて1話から一気に読んだけど、やっぱりすごく面白いし沢山の人物がわちゃわちゃしてて楽しい
あと自分の絵使われてて滅茶苦茶嬉しかった!ほんとに、続き楽しみにしてるから頑張ってください

318 名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 15:35:33 ID:0capchw20
201枚のイラストを使って一つの物語が上手く構成されてるのがすごい
絵と年齢や世界観を合わせる為の、反時計症や流石一座の設定も面白くて良いな
続き楽しみwktk

319 名も無きAAのようです :2015/11/14(土) 23:41:10 ID:U4U0Hv/g0
がんばれ
すごいがんばれ

320 名も無きAAのようです :2016/11/21(月) 20:15:51 ID:5arVgwh60
スレ立ってからまるっと4年経った記念カキコ
待ってます

321 名も無きAAのようです :2016/11/25(金) 00:38:42 ID:wdBeA/Lg0
なにこれ面白い。待ってます

322 名も無きAAのようです :2018/03/23(金) 04:21:18 ID:JsFOYiPk0
まだまってるぞ・・・ずっと待ってるぞ・・・


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