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( ´_ゝ`)流石兄弟は探偵ではないようです(´<_`;)

1名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:09:45 ID:ZblOxX220
a

14名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:47:30 ID:ZblOxX220

二人はお茶を飲み、一息入れた。

( ´_ゝ`)「やはり本国で飲む茶はうまいな」

(´<_` )「…本当に軍艦に乗ってたんだな。すると、二年間も何してたんだ?」

( ´_ゝ`)「何って…この世界は、自然科学にとっては驚異に満ちた宝箱なんだ。
だから、もし一人の有能なる研究者が、それらすべてを巡って見て回るような機会に恵まれれば、
とにかく一も二もなく飛びつきたくなるものなんだ」

(´<_` )「有能な研究者、ねえ」

( ´_ゝ`)「それで、新造された最新鋭の蒸気船軍艦シュルーズベリー号が世界周航の旅に出ると聞いた時、
私はあらゆるつてを辿って、その艦の軍医助手として乗り組む、便乗の権利を手に入れたんだ」

(´<_` )「軍医助手だって? でも、兄者は医者じゃないだろ?」

( ´_ゝ`)「博物学者は動物の体の構造に精通しているのだ」

(´<_` )「…だけど、医者としての経験は無かっただろ? 手術の経験だって」

( ´_ゝ`)「ああ大丈夫、今はあるし」

と、いうことは。

弟者は、シュルーズベリー号で兄者の手にかかった不運な患者のことを思い、心の中で十字を切った。

15名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:49:38 ID:ZblOxX220

( ´_ゝ`)「世界周航! すばらしい響きじゃないか。パラオ、ボルネオ、マダガスカル、ガラパゴス、オーストラリア…。
これら全てを、石炭と蒸気の力で巡るんだ。わかるか弟者、石炭と蒸気! 
これこそが、これからの時代の、世界の支配者だよ」

兄者のポケットから一匹のトカゲが顔を出したが、
トントンと指先で頭をたたいてやると、すぐにまたポケットの中に引っ込んだ。

(´<_`;)「お、おい! ヘビとサルだけじゃなくて、トカゲまでいるのか!?」

( ´_ゝ`)「イグアナとカメもいるよ。ここには連れてきてないけどね。
あ、このトカゲはヨウガントカゲだ。こいつもすごいんだぞ、どこで見つけたと思う?」

兄者がポケットに指を指しこむと、それを伝ってトカゲが這い出してきた。
鮮やかな赤色が口回りを覆っている、いかにも熱帯といった雰囲気を持つトカゲだ。

てらてらと光る赤い舌を突き出すそいつの姿に、弟者はおもわず身を反らせた。

( ´_ゝ`)「ほら、ここ。この発達した後足の筋肉を見たまえ。これはこのトカゲの…」

(´<_`;)「いや産地はいいからさ、とりあえずしまってくれよ、それ」

( ´_ゝ`)「なんだ、トカゲが苦手なのか?」

兄者はトカゲをつまもうとしたが、その爬虫類はすばしっこく動き、
ひざの上に置かれていたバイオリンの胴の中に逃げ込んだ。

(´<_`;)「…あとでちゃんと出しとけよ」

( ´_ゝ`)「大丈夫、こいつの扱いはわかってる。こいつの研究は既に船内で済んでいるんだ」

16名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:51:24 ID:ZblOxX220

( ´_ゝ`)「とにかくだ、石炭と蒸気だ。これからの機械はこれだ。
旧来のすべての機械は、新しい科学の力の前にひれ伏すのだ」

(´<_` )「何だ、ずいぶんと蒸気機関に感銘を受けたようだな」

( ´_ゝ`)「わずか二年間の航海で、世界の全ての大陸を回り、各地を探検することができたんだぞ。
風と人力のみを頼りにした従来の機械でなし得る技じゃないさ」

(´<_` )「そうかな? それは従来の機械を過小評価しすぎていると思うよ。
たとえばそう、プリマス大学の大時計は知ってるかい?」

( ´_ゝ`)「プリマス大学? ああ、郊外に建設中のあれね。
たしかにその敷地のただっ広さは認めるが…こら! しっ!」

兄者が連れてきた手足の長いサルが、退屈したのか、事務所じゅうを駆け回り始めていた。
サルは兄者に叱責されても、おかまい無しに椅子の上に昇り、本棚にぶら下がり、楽しそうな声を上げていた。

弟者は再び頭を振って、続けた。

(´<_` )「建設中だったのは兄者が失踪する前の話だ。あそこはとっくに建設が終わって、去年から開校しているよ。
あの中央講堂時計台に作られた大時計は、するとまだ見ていないんだな。
蒸気機関万能説を語る前に、あの大時計の機械は見ておいたほうがいい。
旧来の錘とバネとテンプ、歯車だけで作られた機械が、
いかに精巧に、いかにパワフルに仕事をすることか、兄者は気づくことになるよ」

( ´_ゝ`)「ほう?」

(´<_` )「時計の直径は15フィートはある。人間の身長を優に超える長さの鉄製の二本の時針を、
その機械は古い自然法則だけを使って、正確に確実に動かし続けているんだ。
それに、時計塔自体の壮麗さにも言及しておこう。
中央講堂と合わせてじつにすばらしい建築だよ。壮麗にして壮大。時計塔の高さは、うん、150フィートはある!」

17名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:53:10 ID:ZblOxX220

( ´_ゝ`)「150フィート? ふむ? 
だけど僕の乗ったシュルーズベリー号のメインマストは、高さが180フィートだったよ」

(´<_` )「あいかわらず口の減らないやつだな。180フィートか。
で、その高いメインマストには、兄者は登ったことがあるのかい?」

(;´_ゝ`)「も、も、もちろんあるとも」

(´<_` )「フーン。すると兄者の高所恐怖症は、船旅の二年間のあいだに治ったってことかな?」

(;´_ゝ`)「ま、まあそれはともかくだね。そういうことなら好都合だ。
というのも僕はこれから、そのプリマス大学を訪問しようと思っていたんだ」

(´<_` )「何だ? 高い高いメインマストを登ったときの話は聞かせてくれないのか?」

(;´_ゝ`)「そ、それはまた後日ということにしよう。
今日のところは、僕はこれを、プリマス大学のある人に届けねばならんのだ」

兄者は大きな旅行用鞄の中から、防水布でくるんだ書類束を取り出した。

18名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:54:00 ID:ZblOxX220

(´<_` )「それは何だい?」

( ´_ゝ`)「こいつだよ。こいつ」

兄者は、部屋の隅の書き物机の上に乗ってタイプライターのキーをいじっている、例の手足の長いサルを指差した。

(´<_` )「…サル?」

( ´_ゝ`)「テナガザルの一種だ。たぶん新種だと思う。僕はこいつに関する論文を書いたんだ。
これを物の分かる紳士に見せに行こうと思う。
弟者、僕の帽子とステッキを取ってくれ。
あ、旅行鞄はいい、ちょっとここに置かせておいてもらうよ」

19名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:55:30 ID:ZblOxX220
2.



三人はプリマス市街の、日のあたる街路を歩いていた。
九月のほどよい涼しさの中、石畳の道にのんびりと歩を進める。

ミセ*゚ー゚)リ「それで、プリマス大学でお会いする方はどんな方なんですか? ミスタ・アーネム?」

( ´_ゝ`)「ドクター。私はドクター・アーネムだ」

ミセ*゚ー゚)リ「あっ。失礼しました、ドクター」

(´<_`;)「いやミスターでいいよ、ミセリ君。
おい兄者、あんたドクターと呼ばれるような称号は持ってないだろ! 認定論文も学位も、なにも!」

( ´_ゝ`)「何を言う。僕は医者だ」

(´<_` )「船で二年間の見習いをやっただけだし、何より軍医では外科しか担当してないだろう!
ったく…」

ミセ*゚ー゚)リ「いいじゃないですか。外科医だって、医者は医者ですよ」

( ´_ゝ`)「おっ、そのとおりだ! わかってるじゃないか、お嬢さん」

ミセ*゚ー゚)リ「そうですね。
でも、ドクターって呼ばれる資格があるのは、たしか内科医だけですよね。ミスタ・アーネム?」

(;´_ゝ`)「……おい弟者。そんなに楽しそうに大笑いするな」

20名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:56:56 ID:ZblOxX220

弟者はひとしきり笑った後、言った。

(´<_` )「だけど兄者、この後はどうするんだ。仕事をさ。
船ではインチキでも医者で通ったかもしれんが、陸ではそんな乱暴なことをするわけにいかないぞ」

( ´_ゝ`)「それはまあ、元に戻るさ」

ミセ*゚ー゚)リ「元? アーネムさんは、元は何をされてたんですか?」

( ´_ゝ`)「学者だよ。僕は自然科学の研究…」

(´<_` )「要するに、無職だ!」

弟者が横から割って入った。
抗弁しようとする兄者に口を挟む隙を与えず、弟者はさらに続けた。

(´<_` )「ずっと言ってるだろ、兄者は教壇に立っているわけでも本を書いているわけでもない。
銅貨一枚収入のないような状態は、職業とは言わないって!」

( ´_ゝ`)「論文なら書いてるよ。現に今もこうやって…」

(´<_` )「一本でも世間に認められたものがあったか!? 兄者の名前は科学の世界で知られているのか?!
だいたいその今日持っていくって論文だって一体何が書かれているかわかったものじゃうわあああああああだからそのトカゲを出すなって!!」

( ´_ゝ`)「大声を出すな弟者。僕が出したんじゃない、トカゲが勝手に出てくるんだ」

21名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 14:58:12 ID:ZblOxX220

(´<_` )「なあ兄者、いいかげんもっとマシな仕事についてくれよ。俺たちタンブルストン家は、代々続く貴族なんだぞ。
兄者がちょっとでもマシな仕事をしてくれていれば、ドクターなんかじゃない、サーの称号で呼ばれることだってできるんだ」

( ´_ゝ`)「そいつはすごいね、サー・オットー・タンブルストン君。君は訴訟弁護士だから、サーと呼ばれる資格は十分にある。
だけど僕は科学者なんだ。サー・アーネム・タンブルストンなんて呼ばれるより、博士(ドクター)と呼ばれるほうが好きなんだ」

(´<_` )「何だよそれ…だから兄者はドクターじゃないだろ!って…ああもう!」

弟者は両手で頭を抱えた。
後ろから行儀よく着いてきていたミセリが、弟者に微笑みかけた。

ミセ*゚ー゚)リ「なるほど。突然お出かけになろうとしていた訳が、私にもわかりはじめてきましたよ」

弟者はミセリを振り返って、小声で言った。

(´<_` )「…理解できたかね。それはおめでとう。だが、これで全てだとは思わないことだ。
君は知ることになるよ、今日のことは、終わりの始まりだったんだな、ってね」


二人の会話を知ってかしらずか、先頭に立つ兄者は石畳の街路に、悠然と歩を運び続けていた。

22名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:00:53 ID:ZblOxX220
3.


プリマス大学は、市郊外の閑静な地域にあった。

大きな施設だった。
数棟の講義棟に寮、それに大きな中庭。

その中庭に面した大聖堂の前に、いま三人は立っていた。


(´<_` )「どうだ、立派なものだろう」

兄者は腕組みをして、その高い時計塔を持った聖堂を見上げていた。

実際、立派なものだった。
壮麗で重厚な、多くの尖塔を備えたゴシック様式。

兄者が唸るばかりで何も言わないのは、その物にケチのつけようがないからだ。
それを知っている弟者は、得意げにさらに先を続けた。

(´<_` )「広い講堂だ。このカレッジの人間全員を収容できる広さがあるからな。
それにあの高い時計台。見ろ兄者、あれが150フィートの…」

いいかけて弟者は、兄者が上を見ながら、少し震えていることに気づいた。

(´<_` )「…もしかして、もう上を見ているだけで怖いのか?」

(;´_ゝ`)「ばばばばバカなことを。わわ私が上を見ただけで怖いということがああ…」

ミセリが失笑したのを、弟者は見逃さなかった。

(;´_ゝ`)「さ、さて私は急がねば。ワカッテマス教授との約束に遅れてしまう」

兄者はそう言って、足早にその場を歩み去った。

23名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:01:46 ID:ZblOxX220

ワカッテマス教授の部屋は、いかにも学者然とした落ち着いた調度で整えられていた。

兄者は部屋に入るなり、まるで旧友に迎えられるように、ワカッテマス教授に暖かく迎え入れられた。
どうやら二人は以前からの知り合いのようだ。

( ´_ゝ`)「教授、お借りしていた二重奏の楽譜、お返しします」

( <●><●>)「おお、これは、わざわざどうも」

( ´_ゝ`)「海では助かりましたよ。退屈で単調な長旅の中で、これが何度も慰めになりました。
それから、これ」

兄者はポケットから例のトカゲを取り出した。
ミセリと弟者が、小さく悲鳴を上げて脇に飛び退いた。

だがワカッテマス教授は、ただでさえ大きな目をさらに見開いて、兄者の手に乗っているトカゲを凝視した。

( <●><●>)「ま、まさか、これは…」

( ´_ゝ`)「そうですよ。ガラパゴスヨウガントカゲ」

( <●><●>)「またの名をサラマンダー。ガラパゴス諸島にしか生息しないと言われる、極めて貴重な種ではありませんか。
これをお持ちであるということは、やはりあなたは、あの、自然界の奇跡、博物学の宝物庫…」

( ´_ゝ`)「そうです。私は、ガラパゴス諸島に上陸しました!」

教授は大きく椅子に座り直し、感嘆の息を漏らした。

( <●><●>)「ぜひ、詳しく話してくれたまえ!!」

24名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:02:44 ID:ZblOxX220

(´<_`;)(なるほど、この二人、同類なんだな)

弟者は一人合点していた。
というのも、兄者とワカッテマス教授はそれからしばらくの間、わけのわからない生物だか何だかの話を、
どれくらいになるのかさっぱりわからないほど長い間、話し続けていたからだ。

( <●><●>)「大胆だね。すると、生物種の固有性は…」

( ´_ゝ`)「たとえば南米沿岸を移動すると、あなたは生物が少しずつ近縁と思われる種に置き換えられていく
様子にきっと驚かされるでしょう。大型の哺乳類化石のいくつかは、現在存在する種であるとは到底思えないものでしたし、
それに、絶海の孤島であるはずのガラパゴス諸島の生物の多くが南米由来と考えざるを得ないほど…」

二人の異常者…もとい、博物学者のやりとりに退屈しきったミセリは、
応接ソファから勝手に立ち上がって、部屋の中のがらくたを見て回っている。

弟者はなんとかしてここから退室する言い訳が立たないものかと、先ほどから頭を巡らせていた。

25名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:03:27 ID:ZblOxX220

だから、部屋の中の誰もが気づかなかった。
部屋の戸口に、一人の女子学生が、もの言いたげにじっと立って待っていたことを。

(*゚ー゚)「あ…あの…」

おずおずと声を出した少女に、部屋の中にいた全員が、一斉に振り返った。
ご丁寧に、トカゲまでもが彼女のほうを向いて、赤い舌をちろりと出した。

(*゚ー゚)「ひっ…」

少女は驚いて戸口を掴み、竦んだ。

( <●><●>)「おや、しぃさんではないですか。どうしました。さ、こっちへ」

(*゚ー゚)「あ…あの…いえ、お忙しいようですので、ま、また…!」

早口にそう言うと、少女は逃げるように足早に立ち去った。

26名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:04:53 ID:O7SYuczY0
面白い
期待支援

27名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:07:21 ID:ZblOxX220

( ´_ゝ`)「学生ですかな」

( <●><●>)「う、うむ…」

兄者の問いに、少し答えを言い淀むワカッテマス教授。
心無しか表情に陰りが見られる。

( ´_ゝ`)「そう、ここの学生でしょうな。それもそう…神学部の。あるんでしょう、神学部?」

( <●><●>)「そう、そのとおりだ! よくわかったね、アーネム君」

( ´_ゝ`)「なに、彼女を見ればわかります。
あの装うことを知らない、野暮ったい白と黒の服装と、決まりきった生活しか経験したことのない者にありがちなおずおずした態度。
その二つを考えあわせれば、彼女は修道女だ。おのずとそう答えが出てきます。
もう一つ付け加えるとすれば、彼女の首にわずかに見えた銀の鎖。
アクセサリーなど身につけそうにない彼女の風貌からして、あの鎖には十字架がついているのでしょうな」

( <●><●>)「ふむ、む! アーネム君、私はいつも君の明晰な論理に驚かされる」

( ´_ゝ`)「で、教授のお顔を見れば、彼女に関して何らかの問題が起きているということも、これまた論理的に明らかと言えるでしょうな」

( <●><●>)「ふむう…お察しの通り。彼女は今、どうやら大きなトラブルの中にいるようなのだ。
アーネム君、ひとつ聞いてもらいたい。
いままで数々の事件を解決してきた君のことだ。ここでもまた、力を貸してくれるのなら有難い」

28名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:13:35 ID:ZblOxX220

ワカッテマス教授の話はこうだった。

彼女の名前はしぃ。神学部に在籍する修道女で、ワカッテマス教授の教え子だ。
だがここ数ヶ月というもの、しぃの様子が明らかにおかしくなっていた。

教授が彼女に声をかけてもいつも上の空だし、
講義の席でも食堂でも、常に思い悩むような表情を見せているのだという。

ミセ*゚ー゚)リ(恋だな)

(´<_` )(恋だな)

( ´_ゝ`)「恋ですな」

( <●><●>)「さよう、私もそう思いました。
だから、授業の際やふだんの振る舞いから、さりげなく彼女の様子を探ってみたのです。
すると、意外な事実がわかりました」

恋の相手は、なんと神学部の教員、モララー神父だった。
彼女とは一回りもふた周りも年のはなれた男だったが、
しかし、しぃが彼を見つめる目つきが、彼女の内心を雄弁に物語っていたのだ。

( <●><●>)「まあ、若いうちは、胸に恋の炎が宿ることもあるでしょう。
それだけなら、まだよかったのですが…」

厳格な戒律に縛られて日々を送る修道女にとって、異性との交際は決して許されるものではない。
また、神父も神に仕える身、結婚はできないし、交際などとんでもない。

…そんな、神父と修道女だというのに。

( <●><●>)「二人はどうやら、人目を忍び、密会を重ねているらしいのです」

( ´_ゝ`)「なるほど、それは…」

( <●><●>)「まあ、いい年をしたモララー神父の行状の是非はさておき。
可哀想なのはしぃです。
彼女は修道女だ、世間を知らない。気の迷いで妙な男に心を奪われてしまうこともあるでしょう。
しかし、こんなことが修道会に、まして世間に知れたら、彼女の人生はどうなります。
未来ある若い身だというのに、教会からは破門され、
しぃは生きていく手段も断たれ、破滅していくしかなくなってしまう」

29名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:25:47 ID:ZblOxX220

( ´_ゝ`)「なるほど…。事情はわかりました。
して、私はどのようにお手伝いをすれば良いのですかな?」

( <●><●>)「はっきりいって、しぃ君は騙されておるのだろう。中年男の遊びにな。
私は、馬鹿な真似をやめるよう、彼女を説得したいと思っている。しかしだね…
じつは、彼女とモララー神父、二人がつきあっているというのは、現段階では私の推測に過ぎんのだ。
私はなんとか証拠を得ようとがんばったが、モララーという男は、狡猾で頭の回る人物だ。
密会は誰にも知られぬような場所や時間で行われる。未だ持って、現場を押さえることができておらん。
そんな状態では、二人を呼び出して話をすることもできん」

( ´_ゝ`)「それは、確かに」

( <●><●>)「アーネム君、数々の難事件を解決してきた君にお願いする。モララー神父を探ってもらいたい。
そして二人の交際の証拠がたしかに確認できたなら、私に教えてくれたまえ。
そのときは、私からモララー神父に、そして彼女に、道ならぬ恋を止めるよう、はっきりと伝えようと思う」

( ´_ゝ`)「ええ、いいですよ。少しあたってみることにしましょう。
純真な少女を騙して食い物にする輩は、私としても許せない気持ちですな。
それはそうと教授、恋といえば、鳥類ですが、私がモーリシャスで見た鳥類の繁殖行動に…」

( <●><●>)「ほう、鳥の繁殖…!」

暗く沈んでいたワカッテマス教授の目に、博物学的な話が出て、再び輝きが宿り始めた。

30名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:28:26 ID:ZblOxX220

また話が長くなりそうだ。
そう見て取ったミセリと弟者は先に退室して、部屋の外で兄者を待つことにした。
学者二人の話にはまったくついていけなかったし、ついていく気も無かったからだ。


ミセ*゚ー゚)リ「オットー先生。アーネムさんって、探偵か何かなんですか?」

静かな大学の廊下で、ミセリは弟者に、小声で訪ねた。

(´<_` )「いや?
あいつはただの無職だよ。どうして?」

ミセ*゚ー゚)リ「だってワカッテマス教授が言ってたじゃないですか。
アーネムさんは数々の難事件を解決した、って…」

(´<_` )「ああ、あれね。
兄者ときたら、いい年してぶらぶらしてる暇人なもんだから、厄介ごとを押し付けられることが多いんだ。
それをどういうわけか、あの男はどんな事件でもぱぱっと解決しちゃうもんだから、
今では探偵屋みたいな評判もできちゃってね…」

ミセ*゚ー゚)リ「へー。あの人がですか。難事件をねぇ」

腑に落ちないといった顔で首をひねるミセリ。

31名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:32:16 ID:ZblOxX220

( ´_ゝ`)「「観察」と「論理」。自然科学者に最も必要な資質だよ」

(´<_`;)「うわっ! い、いたのか!」

いつのまにか教授の部屋から出てきていた兄者が、後ろから二人に声をかけた。
そしてミセリと弟者を追い抜いて、廊下を先に歩いていく。

( ´_ゝ`)「物事のありのままを余さず観察し、それによって得られた資料を基礎として論理を組み立てる。
自然科学も探偵業も、やることは同じなんだ。わかるかねミセリ君。
さあ、まずは「観察」だ。モララー神父に話を聞きにいこう。神学部棟はどこなんだ、弟者?」

(´<_`;)「そ、そんなこと俺が知るかよ! まてよ兄者!」

しゃべりながら先さき歩いていく兄者。
弟者とミセリは、慌ててそのうしろを追いかけて、走っていった。




第一話 ここまで

32名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 15:46:59 ID:PYa915Yg0
アーネムでオットーで貴族でタンブルストンだと……

続き楽しみにしてます乙!!

33名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 16:12:37 ID:AwmdpuhA0
乙!

34名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 17:13:39 ID:NbfkFIPM0
乙でした!
続きを全裸待機!!

35名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 17:14:19 ID:sCS/yL5AO
これは面白そうだ

36名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 18:53:13 ID:BMxdtCV.0
面白い

37名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 19:35:22 ID:gBbrH/42O
クーは探しているようです、の人?
雰囲気いいね
続き楽しみ

38名も無きAAのようです:2012/08/24(金) 09:22:10 ID:ZOg05/fs0
アーネムにダンブルストンだと!!
現時点でwktkが止まらない続き全力待機してます!

39名も無きAAのようです:2012/08/31(金) 11:51:40 ID:ywa3.1mU0
ダンブルドア!

40名も無きAAのようです:2012/09/05(水) 14:52:43 ID:YbunAvtY0
面白い
続き期待してる

41名も無きAAのようです:2012/09/07(金) 23:50:40 ID:Sfc9jxjk0
探しているようです?

42名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 11:47:01 ID:u0flYzts0
ミステリとか俺得
続き待ってる

43名も無きAAのようです:2012/09/21(金) 20:35:24 ID:ig3sVGQk0
時代の雰囲気が伝わってくる文だな、好きだ
続きが楽しみ

44名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 10:12:44 ID:JiDIxnwg0
これ好きだ 待ってるよ

45名も無きAAのようです:2012/09/24(月) 00:45:57 ID:5HiIzZWU0
>>1です
支援と乙、本当に感謝です
凄くモチベ上がりの励みになります

この作品は一話完結型の短編集的なものにする予定でした。
しかし、仕事しながらだとどうしても書く時間がとりにくく、第一話はできたところまでの投下となりました。
このプリマス大学での事件は、プロットでは第三話まで続く予定です。

現在しこしこと第二話を書き溜めてるところです。
もうすこし時間がかかってしまいそうですが投下まで頑張りたいと思います。

46名も無きAAのようです:2012/09/24(月) 01:09:49 ID:9czIMGZE0
無理しないで書いてくれ
気に入ってる作品だしいつまでも待つよ

47名も無きAAのようです:2012/09/24(月) 15:08:12 ID:IPBwzO1.0
待ってるよー

48名も無きAAのようです:2012/09/24(月) 15:36:10 ID:KyVCkRd60
俺もしこしこしながら待ってるぜ

49名も無きAAのようです:2012/09/25(火) 07:46:42 ID:WgIqJeW.0
( ; ´_ゝ`>ヾ(´<_`#)

50名も無きAAのようです:2012/10/31(水) 07:37:28 ID:3vczDjDA0
面白かった
期待して待ってる

51名も無きAAのようです:2013/01/22(火) 03:01:36 ID:ZuJYChVs0
密かに続きを待ってる

52名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 18:02:32 ID:DUWaR6Ew0
いつくるかな

53名も無きAAのようです:2013/03/13(水) 12:31:31 ID:yxK8EVCY0
いつくるかなー

54名も無きAAのようです:2013/04/14(日) 21:18:34 ID:ChKL1m8c0
今読んだ!
たのしみにしてる!

55名も無きAAのようです:2014/08/25(月) 20:27:07 ID:pE7gQGTk0
待ってるぞ

56名も無きAAのようです:2015/03/18(水) 17:38:53 ID:O2G/fwFI0
あと5年は待つ

57名も無きAAのようです:2015/09/03(木) 20:50:24 ID:KbiKJZUI0
期待


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