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( ^ω^)がゾンビに囲まれてグチャグチャのようです

37 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:22:17 ID:MJ7PhEt.0
銃声?まさか警官か?
そう思いツンデレは走ろうとするが、内藤が服を掴んでそれを阻止する。

( ^ω^)「様子を見るお」

音はかなり近く、この広い改札口周辺に現れそうな気配を感じた。
二人は男子トイレの中に隠れて様子を見る。

コツ・・・コツ・・・と階段を下りる音が聞こえる。

音からして革靴だろうか?
警官だと思いたいが・・・


違った。


( ´∀`)「There's a man goin' 'round takin' names,
       (ブラックリストを作るためにあちこち歩き回っている男がいる)」

奇妙だった。
異常事態でありながら、紳士のような外見のその人物は
能天気に洋楽を口ずさみながら、楽しそうに歩いていた。

38 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:22:58 ID:MJ7PhEt.0
ξ゚⊿゚)ξ「警官?」
( ^ω^)「どう見たらそれに見えるんだお」

確かに、明らかに警官ではない。
しかしその腕には拳銃が握られている。

漆黒のコートを身に着けており、まるで米国の紳士のようだった。

もう片方の腕にはアタッシュケースが握られており・・・


( ´∀`)「And he decides who to free and who to blame.
       (そして彼は誰を救い誰に罪を負わせるのか決めている)」


直後

「ヨウジョノエロガゾウハヨ!」

改札口の脇に倒れていた警備員が起き上がり、悪魔のような表情でその男性を睨み付ける。

( ^ω^)「・・・」

39 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:23:53 ID:MJ7PhEt.0
( ´∀`)「Everybody won't be treated all the same,
       (全ての人間を同等には扱えない)」

警備員は瞬時に男性に襲い掛かる。
だが・・・

( ´∀`)「There'll be a golden ladder reachin' down.
       (黄金のハシゴが天から地上へ)
       When the man comes around.
       (主が光臨される時には)」
「グボッ!」

それより早く男性の回し蹴りがヒットし、警備員は倒れこむ。
男は慣れた動きで化け物の胸を踏み、銃口を顔面に向ける。

( ^ω^)「・・・」

この人物は明らかに何らかの体術を極めていた。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・」

化け物がどれ程凶悪であるかを知っているが故に、衝撃的だった。
まるでスーパーヒーローを見ているかのような気分だった。

40 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:24:35 ID:MJ7PhEt.0
ダァンッ!

警備の後頭部からピンク色の脳みそが大量に噴出す。
男性はその化け物の首を楽しそうに、何度も何度も何度も踏み潰す。

そして警備の首の骨がゴキリと折れる。

( ´∀`)「Hear the trumpets hear the pipers.
       (トランペットと笛の音を聞け)」

男は天使のように爽やかな笑顔で天井を見上げた。

( ´∀`)「One hundred million angels singin'.
       (数え切れないほどの天使たちが歌っている)」

「チュウニビョウオツ」


それでも化け物は起き上がった。


ジャムおじさんのように膨張した顔で
ピンク色の脳みそで顔に散らかしながら、笑顔で男性を睨み付ける。

41 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:25:46 ID:MJ7PhEt.0
ξ゚⊿゚)ξ「・・・」

異常なまでの生命力。
ツンデレは先ほどの一件で全てを心得ていた。

化け物は獣のごとく口をただっぴろげた。

しかし

( ´∀`)「Multitudes are marchin' to the big kettledrum.
       (群集が大きなケトルドラムの音に合わせて行進している)」

男は空手でもやっているのか、素早い蹴りで化け物の脛を蹴り飛ばした。
そして倒れた化け物の腹を駄目押しに蹴り始めた。

( ´∀`)「Voices callin', voices cryin'.
      (叫んでいる声や泣いている声が聞こえる)
      Some are born and some are dyin'.
      (生まれたばかりの者もいれば死に入る者もいる)

      It's alpha and omega's kingdom come,
      (最初で最後のこの世の終わりなのだ)」

42 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:26:28 ID:MJ7PhEt.0
「ウゲェッ!」
「ウベェッ!」

腹部を蹴る度に化け物が声を出す。

( ´∀`)「And I heard a voice in the midst of the four beasts.
       (そして俺は4匹の馬の間から声を聞いた)」

「ウゲェ!」

化け物は口から内臓と嘔吐物と血を噴水のように吹き出し
ビクビクと痙攣し始める。

( ´∀`)「And I looked,
       (だから俺は見た)
      and behold a pale horse,
       (見よ! 青白い馬を)


      and his name that sat on him was Death,
       (馬に乗っていた彼の名前は“死”だ)


      and hell followed with him.
       (そして地獄が彼の後をついて来たのだ)」

化け物がグッタリし、動かなくなる。

43 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:27:34 ID:MJ7PhEt.0
( ^ω^)「・・・」
ξ゚⊿゚)ξ「・・・」

何だこいつ
確かに身体能力は凄いが、何というか・・・異常だった。

その後も男性は鼻歌を歌いながら化け物の懐を漁った。
取り出した財布から金になりそうなものを片っ端から奪い取り、アタッシュケースを開いた。

( ´∀`)「これで2億4万3千500円・・・後は」

男は強引に改札口の横の窓口から職員用の部屋へと入り、金品を片っ端から探し始める。


ξ゚⊿゚)ξ「何あれ・・・」

( ^ω^)「火事場泥棒なんじゃないのかお」

二人はトイレの隙間から覗きながら、そうボソボソと会話する。

ξ゚⊿゚)ξ「火事場泥棒って言っても今更こんな事して何になると言うのよ
      金品以前に自分自身の命が瀬戸際なのに
      ・・・それにあれだけ強いんだよ?
      もしかしたら政府の役員とか特殊部隊とか、そういうのじゃ」

44 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:28:54 ID:MJ7PhEt.0
( ^ω^)「政府の役員や特殊部隊が金品を強奪するとは思えないお」

ξ゚⊿゚)ξ「・・・で、でも相手は人間よ!?こんな時はお互い様じゃないの
      もしかしたらあの行動には何か理由があるのかもしれない
      一応声だけでも・・・」

ツンデレは覚悟を決めて男に近づこうとするが、内藤は手を強引に掴む。


( ^ω^)「やめとけお」


緊迫した表情で内藤はそう忠告した。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・何よ、怖いの?
      あんな人間より怖い化け物を見てきたでしょ!?
      元よりたかが学生二人じゃこんな状況心もとなさすぎるのよ!
      それとも何!?あんたはあの男より強くて頼れるっていうの!?」

( ^ω^)「そういう問題じゃないお」

内藤は冷や汗をかきながらそう告げる。
彼の脳裏には、先ほど脳天をかち割られて死亡していた会社員の姿が浮かんでいた。

45 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:30:04 ID:MJ7PhEt.0
ξ゚⊿゚)ξ「・・・じゃあ何なのよ
      学校じゃ陰気でオタク仲間ばっかりのあんたが、私に何を決めつける権利があるの?」

( ^ω^)「違う・・・本当に怖いのは化け物ではないお」

直後


「待て!生存者か!私は見た通り駅員だ!
 一緒に行動しよう!警察は駄目だ!連絡が繋がらない!
 一人で行動するのは心もとない!協力しよう!
 ナイスだ!ナイスチャンスだ!互いに運がいい!
 君は誰だ?一般市民か?」


ξ゚⊿゚)ξ「・・・ん?」

駅員の部屋から声が聞こえる。
恐らくは潜伏していた生存者か・・・
ツンデレと同じ発想に至り、仲間を作ろうとしている

「待て・・・何を考えてる。
 私を撃ったところで・・・待て!やめてくれ!
 金ならいくらでもある!やめろ!考え直」

ダァンッ

46 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:31:50 ID:MJ7PhEt.0
ここからわずかに見える窓口が一面真紅の血で染まる。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・もし、行ってたら」

ツンデレは顔が青ざめる。
男は一通り金品を集めたのか、早々にその場を立ち去る。

( ^ω^)「世の中にはいるんだお。きっと
      こういう時・・・ほとんどの人間がパニックで逃げる事しか頭にない中


      そのほんの一握りにそういうヤカラがいるという事


      誰でよりも世渡り上手で、自分への利益しか考えず・・・
      殺せる時代が来たと否や、まるで情の一欠けらもなく殺害する事ができる人間」


ξ゚⊿゚)ξ「・・・殺人鬼?」

( ^ω^)「そうだお」

47 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:33:03 ID:MJ7PhEt.0
( ^ω^)「君が近づいていたならあるいは・・・
      どう見たって殺るのを楽しんでいたじゃないかお
      経緯はどうであれ、あいつとは金輪際会わないようにしないと」

ξ゚⊿゚)ξ「・・・うん」

ツンデレは申し訳なさそうに顔を真っ赤にし、内藤を凝視してそう告げる。


ξ゚⊿゚)ξ「さっきはごめんね」


( ^ω^)「・・・何が?」

ξ゚⊿゚)ξ「陰気なオタクばっかりだとか・・・まるであんたを見下すような事言って」

( ^ω^)「そんな事言ったけ?」

ξ゚⊿゚)ξ「・・・ま、まぁ別に気にしてないならいいわよ
      行きましょう、とにかく警察か・・・実家に」

48 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:34:24 ID:MJ7PhEt.0
( ^ω^)「警察は信用しない方がいいかもしれないお
       電話は繋がらない時点で期待はできない
       こんな状況じゃあ・・・ね」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ実家に行きましょうよ」

( ^ω^)「いいお。近いほうからがいい
       ツンデレさんは何丁目?」

ξ゚⊿゚)ξ「同期なんだからさん付けしないでよ」

( ^ω^)「じゃあツンデレ、何丁目?」

ξ゚⊿゚)ξ「・・・」

ツンデレは顔を真っ赤にし、少々嬉しそうな表情になる。

( ^ω^)「?」

ξ゚⊿゚)ξ「ご、5丁目よ。そんなまじまじと見ないで」

49 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:35:48 ID:MJ7PhEt.0
( ^ω^)「・・・俺は隣町から来てるお」

ξ゚⊿゚)ξ「マジで?
      なんでわざわざ・・・」

( ^ω^)「実は定期代が一駅違うだけでけっこう跳ね上がるんだお
      まぁ・・・チャリで行けるし割と近いからって理由だけど」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私の家から行っていい?」

( ^ω^)「いいお」

内藤は朗らかな笑顔でそう告げた。

ξ゚⊿゚)ξ「・・・どうやって?
      歩いて行くの?」

ツンデレは窓から絶望的な景色を眺めながらそう聞いた。
内藤はアゴを手を当てて考え込む。

( ^ω^)「できるだけ人気の少ない道を選んで行くお
      何でもいいから武器は所持した方がいいと思う」

50 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:36:43 ID:MJ7PhEt.0
ツンデレは笑顔でうなずく。
内藤もまたそれを笑顔で返した。

だが二人とも手首から先はプールからあがったように濡れていた。

内藤も強がって冷静に喋っていただけだった。
ツンデレも恐怖の最中、内藤だけに希望を持って笑顔になっていた。


そんな拙い二人が進んでいくには、あまりに遠い道。


儚く、未来など何も見えない。
誰も助けてはくれない。
強くもない、賢さも、技術さえもない。

・・・歩むしかなかった。

やがて死を分かつ事もあるかもしれない。
彼女を殺さなければならない状況さえ、あるのかもしれない。

51 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:41:59 ID:MJ7PhEt.0
それでも二人は歩き始めた。
家族に会うため、安息を得るため・・・

パキィンッ!

ξ゚⊿゚)ξ「!?」
( ^ω^)「!?」

突如


「ニコチュウハキエサレ」


窓口を叩き割り、駅員が奇声を発しながら姿を現した。
額から噴水のように血液を噴出しながら、目を真っ赤に充血させ口を大きく広げて二人を睨み付けた。



午前9時50分


太陽と広大な青空は依然変わる事はなく。
ただ・・・無慈悲に荒れ果てた地上を照らしていた。

夜までは長い。

52 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:46:53 ID:MJ7PhEt.0
午前8時00分。


「8時のニュースです。
本日、近郊にて元陸上自衛隊第1師団長モナー氏35才が同職者数人を殺害し逃走しました。
関係者の話によるとモナー氏は配属当時から・・・」
 

「番組の途中ですが臨時ニュースをお伝えします。
本日世界保健機関WHOは正式にフェイズ 6パンデミックを正式発表。
えー国内の各行政機関にて臨時会議を行い、政府は本日全ての市民に
『緊急自宅待機命令』を発令しました」


「繰り返します。日本政府は本日全ての市民に 『緊急自宅待機命令』を発令しました。
これにより日本国民は上記の発令が解除されるまでの間、自宅待機をしてください
また現在外にいる方々は一刻も早く帰宅し、今後TVで報道される適切な治療法に従ってください」

「現在WHOは本件が世界規模の未曾有のアウトブレイクである事を公表していますが、まだ詳しい病状は不明です。
政府が正式発表し次第、追って報道致します。
なお、目の充血や口を大きく開ける等の異常行動を現す人間には絶対に近寄らないでください。
やむおえず対処しなければならない場合は必ず二人以上で傷をつけられないよう分厚い服を着て拘束してください。
絶対にパニックにならないでください、冷静に対処できれば自分が感染する事はありません。
また、できる限りは自宅にいる事が一番安全です。外出は可能な限り控えてください」


('A`)「こりゃマジで世界崩壊フラグが立っちまったな」

胸毛ボーボーのパンツ一丁の男がカップラーメンを貪りながらそう呟く。



第二話『俺は雷鳴を聞いた』

To Be Continued…

53 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/29(日) 03:58:19 ID:uz0PNUH60
第一話『馬に乗っていた彼の名前は“死”だ』

以上で終了です。
読んで頂いた皆様、どうもありがとうございました。
次は第二話『俺は雷鳴を聞いた』です。
こちらもほぼ完成済みですので、近々投下する予定です。

54名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 10:48:27 ID:23obRVdM0
クソ面白い……ゾンビ大好きな俺には最高

乙乙乙!!

55名も無きAAのようです:2012/07/29(日) 20:18:09 ID:Pj0wJHOsC
乙、ゾンビの喋りに笑っちまって緊張感がイマイチないw

56名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 10:56:02 ID:2AXwCv9Y0
・・・より……のほうがいいと思う

57名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 12:10:16 ID:1syQz1fYO
ゾンビ好きとしては好物な話だけど、ゾンビが話す必要はないのんじゃないかな……
緊迫感が削がれて萎えるお

58名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 13:04:09 ID:STfrPGW20
喋るゾンビがいても、三点リーダじゃなくてもいいじゃない
全部含めて俺は好きだよ

59名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 19:54:51 ID:V8KgFunE0
wktkがとまんねぇ!

60 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/30(月) 21:40:05 ID:matbZRxI0
ありがとうございますw
こんなにたくさんの方に感想を頂けるとは思わなかったので、非常に嬉しい限りですw
ただいま2話がほぼ完成済みで、調整が終了次第投下予定ですが
確かにゾンビの喋り方については酷いギャグと存じておりますw
現在皆さんの意見を取り入れつつ検討中ですので、もうしばらくお待ちください

61名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 21:48:54 ID:V8KgFunE0
ゾンビが生前の記憶を持ってるって設定はなんかの漫画でありますたね。

62名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 21:51:30 ID:/4gTxvls0
個人的にゾンビのこの半角仮名の喋り方結構好きだけどな
緊張感の中に笑いどころがある作品は好きだけど、まぁ作者の思うようにすればいいさ
2話待ってる

63名も無きAAのようです:2012/07/30(月) 21:53:38 ID:R.o1Xj7c0
悪い点というより、この作品の味だしな

64名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 08:58:23 ID:/ywuWGy20
おもしろいな つづきまってるよ

65名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 12:34:30 ID:JXmiD/lg0
ツヅキ…ワクテカ…

66名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 14:19:32 ID:1z4ncxNU0
Tさん出るかwww?

67名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 15:31:06 ID:F75Kd4K6O
wktk

68名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 19:37:03 ID:Qz73tQgo0
マダー...ワクテカワクテカ......

69 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:02:26 ID:7bizQ4DQ0
これより第二話『俺は雷鳴を聞いた』を投下します
ゾンビのセリフを修正しましたが、恐らくあまり変わっていないかもしれませんw
どうしても萎えて嫌だなぁって方用にゾンビのセリフ無し版の投下も検討中です。

70 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:03:17 ID:7bizQ4DQ0
かつて友達はこう言った。

( ^ω^)「家でこもってばっかりじゃ飽きてこないかお?」

かつて友達はこう言った。

( ^ω^)「一緒に山に行こうお!カブト虫も採れるし楽しいお!」

俺がいた高校には数人のオタクグループがいた。
どうしようもないクズばかり集めたグループで、その集団のムードメーカーは内藤ホライゾンという生徒だった。

だけど俺は引きこもる事を選んだ。

学校は中退し、親の視線などおかまいなしに自宅警備員を務める事を望んだ。
親には怒鳴りつけられたが、自分の人生だと言い張り頑なに己の主張を通した。
就職……結婚……そんなものはどうでも良かった。
今が大事だという自分の理屈に従ったまでの事だった。

家にこもっていた方が平穏で当たり障りがなく、嫌いな奴にも顔を合わせなくて済む。
2ちゃんねるという同士がいる世界は、どの世界よりも心地よかった。

だけどその代償に、今の自分には夢も希望もなかった。
学歴社会、風評、社会的地位。
今の自分はクズ中のクズ

だが、転機はふと訪れた。


第二話『俺は雷鳴を聞いた』

71 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:04:12 ID:7bizQ4DQ0
午前8時05分


その同時時刻、内藤ホライゾンのいる駅より数キロ先の一軒家。
その二階にはパンツ一丁の引きこもりがいた。


J( 'ー`)し「ドクオー!政府が『緊急自宅待機命令』を出してるわよ!
     絶対に家から出たら駄目よ!今お父さんに連絡とってるから!」


下の階から母親の呼び声が聞こえる。

('A`)「うるせぇ!俺がここから出るタマに見えるか!?」

溜まりに溜まったゴミの山。
ショーウィンドウに並べられた無数のフィギュア。
腐臭漂う汚い部屋に、パンツ一丁のボサボサ頭の男がいた。

ドクオという名のその男は窓からコッソリと外を覗いた。

パキィンッ

「救急車!誰か救急車!」
「通り魔です!助けてください!通り魔です!」
「嫌ぁああああああああ!」

72 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:04:54 ID:7bizQ4DQ0
狂気の沙汰だった。

向かいの家では親が娘の首を絞め、肩にかぶりつこうとしていた。
下の路地では必死に数人の市民が走り回っていた。

('A`)「……!?」


それを不気味な走り方の人間が、尋常ではない速さで追いかけていた。


('A`)「……んだよあれ」

遠くでよく見えないが、明らかに動きが人間のものじゃない。
ドクオは青ざめた表情でそれを凝視する。
直後

ドタンッ

('A`)「うおっ!?」

窓にカラスの死体がベットリと貼りつき、ドクオは思わず心臓が止まりそうになる。

カラスの死体は全身がついばまれ、羽毛がむしり取られていた。
空中を飛ぶこの生物が人間にあえてこんな真似をされるとは思えない。
恐らくはカラス同士の抗争か何かだろうか……

73 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:05:52 ID:7bizQ4DQ0
ドクオは雨戸を閉め、徹底的に対策を始めた。
部屋が暗くなっために照明をつけようとするがまったくつかない。
仕方ないので物置から大量の蝋燭を頂戴した。

('A`)「……」

まるで百物語でも始めるかのような雰囲気になった。
江戸時代以前の人間はずっとこんな生活をしていたかと思うとちょっとかわいそうに思う。
電気が当たり前のように使えた、ほんの一日前が恋しい……

('A`)「おかん!ちゃんと鍵閉めてんのか!?」

J( 'ー`)し「当然でしょ!」

('A`)「……ふむ」


一番の問題点はパソコンができないという事だった。


これでは2ちゃんの住民共のやりとりを閲覧できない。
絶対祭りになってるだろうに……

恐らくは発電所がやられて電力が無くなってしまったのだろう。
もしかしたら2ちゃんねるもサーバーがやられて消滅しているかもしれない。
水も多分駄目だ。

74 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:06:33 ID:7bizQ4DQ0
地獄だ……


リア充ざまぁwwwとか、実はちょっとはしゃいでた自分が情けない。
緊急の食料で、何とか数日をやり過ごすしかないようだった。

J( 'ー`)し「ドクオ!お父さん帰ってきたよ!」

下の階からおかんの声が聞こえる。

J( 'ー`)し「今開けるからね!」

カチャッ


J( 'ー`)し「大丈夫?肩から血が出てるみたいだけど」


「頭のおかしい奴に噛まれてしまった。
 そいつは他の連中へ向かったから助かったが……
 すまないが処置してくれないか?」

J( 'ー`)し「でも良かったわ……今外は凄い事になってるんでしょう?」

「まぁな。本当に地獄だった」

('A`)「……良かった」

ドクオは何も言わずモンハンをやっていたが、何気に下の階の声を聞いていた。
そしてさり気なく口は笑顔になっていた。

75 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:07:29 ID:7bizQ4DQ0
J( 'ー`)し「あとは素直クール(姉)だけね。
      あの子は自衛官だから、しばらくは帰って来ないかもしれないわね」

「あいつが選んだ道だ、とやかくは言わんさ」

J( 'ー`)し「……しかし、その噛み付いた人は凄いアゴの力ね
      骨が見えてるわよ、ビックリした」

「ああ……凄く痛い
 聞けば感染症らしいな、私も感染シテシマウカモシレン」


J( 'ー`)し「……え?」


「ビョウイン・・・ハ・・・混んで・・・ル・・・ハ・・・・キ・・・」

('A`)「!?」

ドクオは緊迫した表情になる。

J( 'ー`)し「どうしたの?目が充血してるわよ」


「カユ・・・ウマ・・・」


〝目の充血や口を大きく開ける等の異常行動を現す人間には絶対に近寄らないでください。〟

76 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:08:14 ID:7bizQ4DQ0
ドクオは必然的にあのニュースを思い出した。
触れてはいけない禁止事項に父親は該当しており
まさか……

ドクオはどうしようもない危機感を感じた。
今動かなければ、間違いなく取り返しのつかない何かが起こると感じた。


('A`)「おかん駄目だぁあああああ!」


ドクオは3DSを投げ捨て、転げ落ちそうな勢いで階段を下り始めた。
一階では……

J( 'ー`)し「ど、どうしたのよ」

父親は両腕を掴み、口をパッカリと広げた。
充血し、人が違ったように睨み付けた。
その様を見て母親は顔が真っ青になった。

77 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:09:17 ID:7bizQ4DQ0
このままでは母親すらも失う結果になる。
それだけは嫌だ!……それだけは!
直後

「ウベェ」


父親はドクオの後ろ蹴りで後方へ吹き飛んだ。


('A`)「・・・ハァ・・・ハァ」

その飛び様にドクオはちょっとだけ驚いた。
思えば自身の体重が80kg近くあった事を今思い出した。

J( 'ー`)し「ちょっとドクオ!あんた何してんの!」

('A`)「うるせぇ!とっとと逃げろよ!
   よく見ろよ!あれどう見ても感染者だろ!?
   気づけよ!あと少しで噛まれてたぞ!」

J( 'ー`)し「だからってねぇ……お父さんを」

('A`)「!!」
J( 'ー`)し「!!」


父親は再び、ゆっくりと起き上がった。

78 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:10:32 ID:7bizQ4DQ0
何の支えもなしに、父親はヌルリと不気味に立ち上がった。
その表情に意思は感じられず、かつての親父の面影などなかった。

「ムネアツ……ムネアツ……」

顔の表面は青色と赤色の血管で覆われ、人間からほど遠い外見となり
そして糸を引きながら口を大きく広げた。

('A`)「……」

蹴られておきながら、凡そ僅かなダメージすらも感じられない。
……人間の外見を残して起きながら、それは人間と呼べる存在とは異なっていた。

J( 'ー`)し「な、何してんの?やめなさい」

母親は動揺しながら父親にそう告げるが……

('A`)「目ぇ覚ませおかん!
   あれがどう見たら普通の人間に見えんだよ!」

ドクオは恐怖を覚えていた。
あまりの事態に顔が紅潮していたが、それでも使命感を感じていた。


今頑張らねば今度は母親が殺されると……

79 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:11:16 ID:7bizQ4DQ0
わからない。
この人生でこれ程の気分になるのは生まれて初めてだった。
たかが毎日怠惰した自宅警備員生活ばかりやっていた自分がまさか……

('A`)「おかん!裏口か二階に行け!」

ドクオは箒を手に取りそう告げる。
母親は素直に言う事を聞き、裏口の方へ向かう。

ドクオは心配していた。
やはり肉親というものは感触が違う。
先ほど蹴り飛ばした時でさえ、彼は妙な不快感を感じていた。

「ドォシッテ? ドォシッテ? ドォシッテ? ドォシッテ?」

化け物は小刻みに顔を動かしながらそう呟く。

直後……
ドクオは先ほど路地で見た奇妙な奴を思い出した。


速い!


何というか、向こうもこちらを貪りたいために必死なのか
奇妙な緩急をつけてこちらを襲いかかってくる。

('A`)「御免!」

ドクオは箒を親父の顔面に向かって全力フルスイングする。
だが

80 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:11:58 ID:7bizQ4DQ0
あまりに速く中腰でこちらへ襲い掛かってきたためか、箒は綺麗に真上をすかした。

('A`)「やべ!」

ところが奇跡が起きた。
父親はたまたま床にあった救急セットに足を引っ掛け、その場に倒れこんだ。

('A`)「え……あ」

ドクオは一瞬死を覚悟し、現状を理解するのに数秒かかったが
すぐさま玄関の方へ走り始めた。
そして鍵を外し扉を開け、外側に移動した。

「プフフフ……ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒーヒーッヒッヒ」

親父は素早く立ち上がりドクオを追いかける。



ドスンッ


ドクオは素早く、開いたドアの扉の内側に潜みそれを避け、そして外の方へ蹴飛ばす。
父親は路地に転がり、ドクオは素早く家に入り扉を閉め鍵を閉めた。

81 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:12:42 ID:7bizQ4DQ0
ガタンッ!!!
ガタガタガタガタガタガタ

('A`)「糞……ゥウッ!」

扉は凄まじい勢いで激しく揺れる。
ドクオは必死に扉を押さえる。

これを破壊されれば終わる!

化け物がどの程度の力を持っているのかわからないが
これだけは守らなければ・・・ッ!


これだけはッ!


……やがて沈黙が訪れた。
ドクオは扉の穴から外の様子を確認する。

「キャアッ!」

「アナタトガッタイシタイ!」

路地を走っていた女の子を見つけ、そちらの方へ全力疾走していった。

82 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:13:25 ID:7bizQ4DQ0
('A`)「……」
('A`)「……あ……ああ」

しばらくしてドクオは落ち着き、その場にゆっくりと座り込んだ。
そしてなんだか涙が出てきた。


思えばあの化け物は自分の父親だった。


今こそニート故にのけ者にされていたが、幼い頃はよく遊園地に連れてもらっていた。
メリーゴーランドで自分が馬から倒れ驚かしてしまった事もあった。
その時は親父も血相を変えて自分を助けてくれた。

中学の時初恋したあの時も、親父はそれを察してエールを送ってくれた。
成就はしなかったがそれを気遣って飯屋に連れて行ってくれた時もあった。

いい親だった。

虐待や夫婦喧嘩なんてまるでなかった。
殺し合いや殴り合い、そういった殺伐なものとは無縁の家族だった。

('A`)「……」

何故こうなった。

83 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:14:10 ID:7bizQ4DQ0
たった一日で全てが変わった。
信じられない……まるで世界が滅びのカウントを始めたようだった。

だけど……
ドクオは救急セットを見つめた。


家の物は何時だって自分の味方をしてくれた。


こんな状況の中で、この家だけは自分の身を案じてくれていた。
生後から居続けるこの家に、自然と感謝の気持ちが沸き起こる。

('A`)「は!」

ドクオは血相を変えて立ち上がる。


('A`)「カーチャン!」


ドクオは裏口に向かって全力疾走し始めた。
これ以上家族を失いたくない!
何としてでも!

84 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:15:23 ID:7bizQ4DQ0
J( 'ー`)し「どうドクオ?お父さんどうなった?」

母親は風呂場に隠れていた。
その様を見てドクオはほっとする。

('A`)「何とか正気を取り戻したよ
   ……だからその、さ食料取りにコンビニに」


母親は嘘をつくなと言いたげな表情で、ドクオの二の腕を掴む。


('A`)「……」
J( 'ー`)し「……」

家族だからこそ、その表情の奥深さがわかった。
母親は悲しくも真剣でこれ以上とない、わが子を見守るような母親らしい顔でドクオを見ていた。

('A`)「……ごめん。俺には殺す事なんてできなかった
   歩行者を見つけてそっちに行っちゃったよ」


J( 'ー`)し「よく頑張ったわね
      ありがとう」


('A`)「……」

ドクオは子供のように頬が赤くなりつつも、悲しげな表情で母を見る。

85 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:16:08 ID:7bizQ4DQ0
J( 'ー`)し「……その件についてはまた考えましょう
     今度はもっと気をつけないと駄目ね
     とにかく今は自宅で待ちましょう」

母親は一層真剣な表情でそう告げる。
直後……

J( 'ー`)し「?」
('A`)「?」


パチンッという音と共に、電気がついた。


J( 'ー`)し「電力会社の非常電源がついたのかしら」
('A`)「……テレビ」

「速報です。自衛隊の活動により、各地の避難施設の……」

居間のテレビがつく。
二人は急いでそこへ向かい、画面に釘付けになる。

「確保が完了しました。損壊及び汚染の危険性が少ない各地の公共機関が対象になります。
厚さ1mの臨時バリケードを設置し、自衛隊員による厳密な感染チェックを行います。
非感染者のみが避難施設への隔離を許可されますが、感染者は強制退去して頂きます」

86 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:17:35 ID:7bizQ4DQ0
「えー……避難施設は非常用の設備です。
自宅が最も安全地帯であり、あくまで避難施設は諸事情で自宅に避難不可能
自宅より避難施設の方が近い……などの場合に、こちらにご避難ください。
人気の多い場所が最も危険です、くれぐれも言いますがまずは自宅に避難してください」

キャスターの表情は危機迫っており、TV局内部でも一悶着あった事を伺えた。

('A`)「……」
J( 'ー`)し「……」

確かに家に隠れていれば死に直面する確率は減るかもしれない。
しかし……


('A`)「……嘘だよ」


ドクオは緊迫した表情でそう告げる。

('A`)「自宅が一番安全なわけない」

87 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:18:30 ID:7bizQ4DQ0
('A`)「だって確かに外より安全であるにしろ
   ……こうやって」

パリィンッ

向こうの部屋から窓ガラスが割れる音が鳴り響く。

('A`)「車に乗って行こう!
   あれなら感染する心配ないって」

J( 'ー`)し「キー!……キー!」
('A`)「急げおかん!」

二人は最低限の荷物を手に取り、急ぎ足で家を裏口から出て行こうとする。
……扉を開ける時、ふとドクオが立ち止まる。

('A`)「なぁおかん」

J( 'ー`)し「何!急ぎなさい!」


('A`)「俺達が無事に避難所につけたらどうする?」

88 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:19:29 ID:7bizQ4DQ0
J( 'ー`)し「……」

ドクオの背中には哀愁が漂っていた。
当然だった、目の前で変貌した父親を目撃したのだから……


J( 'ー`)し「おいしいものでも食べましょうよ」


('A`)「だよな……そうだよな
   じゃあオムライス作ってよ、あれはマジで美味いからさ」

J( 'ー`)し「当然じゃない!だから今は逃げましょう!早く!」

二人は荷物を背負い、裏口から急いで走っていく。
その時……母親は最後の光景になるかもしれない『台所の時計』を目撃する。


午前9:25分


二人は化け物に襲われる前に、素早く駐車場へ向かった。

89 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:20:30 ID:7bizQ4DQ0
午前10:31分


霧と無数の化け物がたむろする大通りの奥にその警察署はあった。
正面入り口は無数のバリケードで張り巡らされ、警官の死体が雑巾のように転がっている。

「メシウマ……」
「……メシウマ……メシウマ」

それを何十体もの化け物が死体を樹液に集る虫のように貪る。
地獄という言葉が今程、相応しいと思える光景はない。

その建物の駐車場には一台の軍用装甲車の姿があった。

表面には化け物と対峙したのか無数の傷跡がついており・・・
パンクした車体が斜めになっていた。


( ^ω^)「ここでも一波乱あったみたいだお」

ξ゚⊿゚)ξ「……そうね」


そこにはツンデレと内藤の姿があった。
手には先端の尖った鉄パイプが握られており、それには無数の血痕が付着していた。

内藤が攻撃専門で動いていた一方、ツンデレは内藤の死角を援護。
二人はできるだけ人気の少ない小道を選んでここへ来た。
だがその際にも数体の化け物に遭遇した。

不思議な事には内藤は、自分がこの状況に慣れ始めている事に気づいていた。

90 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:21:43 ID:7bizQ4DQ0
ムクッ

ふと一体の警官の死体が立ち上がる。
真紅の糸を引いた口を大きく広げ、ツンデレをにらみ付ける。

ξ゚⊿゚)ξ「……」

緊迫した表情で、チラ見して背後を確認しながら後退する。

「ジェッタシー……」

警官は気持ち悪い動きでツンデレに向かって全力疾走する。

ξ゚⊿゚)ξ「ああもう怖い!気持ち悪い!内藤!早くやって!」

ツンデレは怯えながら身を屈めてそう訴える。
直後……


警官の胸から血が噴出し、中から鉄パイプが突き出る。


「カノジョハイカレタピストル……ニギリ」

警官は歯軋りをしながらその場にゆっくりと倒れこむ。

91 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:22:28 ID:7bizQ4DQ0
ξ゚⊿゚)ξ「……もぉ!何よ!何で毎回毎回私がこんな事しなきゃ駄目なの!?
      心臓に悪すぎるのよ!」

ツンデレは涙目になって内藤を幾度も引っぱたく。

( ^ω^)「し、仕方ない事だお!
      君の力じゃ突き刺せないし、必ず一人はおとりが必要になる
      連中は貪る以外に知能がないから避ける事を覚えない
      だから簡単に殺せるお!」

二人はこの作戦を用いて地獄を生き抜いた。
ツンデレをおとりにさせ、背後から内藤が突きをぶち込む。
どうやら化け物は頭部を損傷しても無事らしい。
原理はわからないが、あの気持ち悪い浮浪者を見て学んだ事だった。


それで思いついたのが心臓だった。


心臓は体の中枢をつかさどる部分だ。
いくら不死身の化け物といえ、ここを突かれてすぐに動ける可能性は低い。

案の定、警官は血を吐き胸を押さえて苦しんでいた。

……いや、常人ならこれでも即死が当たり前だが
だが、とにかく数分の間は襲われる心配はない。

92 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:23:31 ID:7bizQ4DQ0
ξ゚⊿゚)ξ「……」

( ^ω^)「どうしたお」

ξ゚⊿゚)ξ「な、なんでもないわよ!」

ツンデレはツンツンしながらも、そんな内藤の姿を見て敬意を感じていた。
災害以前の内藤のイメージはか弱く、無言で何を考えているのかわからない人間だった。
そしてオタクで気持ち悪くて近寄りがたい人間。

しかし、今の彼のイメージは180度変わっていた。


内藤がいるからこそ、ここまで来れた。


一種の才能とも感じる。
力が強く速い化け物共を彼は合理的に素早く仕留めた。

ξ゚⊿゚)ξ「とにかく中に入りましょうよ
      警官の一人や二人はいるでしょ……最低でも」

( ^ω^)「……どうかな」

二人は駐車場から署内へと入る事にする。

( ^ω^)「……ん?」

内藤は裏口の扉を開けようとするが、鍵がかかっていた。

93 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:24:32 ID:7bizQ4DQ0
ξ゚⊿゚)ξ「し、仕方ないわよね
      別の入り口から……」

パリィンッ

ξ゚⊿゚)ξ「キャアッ!」

突然の大きな音にツンデレは思わず悲鳴をあげる。
どうやら内藤は扉のガラスをコンクリートで叩き割ったようだった。

ξ゚⊿゚)ξ「何してんのよ!」

内藤は割れたガラス窓の内側へと手を突っ込み、鍵を開ける。

ξ゚⊿゚)ξ「不審者と思われたらどうするのよ!」

( ^ω^)「別の入り口を探してる間に化け物に襲われるくらいなら……
      こっちの方がいいお」

ごく普通に扉を開け、中へ入ると……

( ^ω^)「……ふむ」


やはりここもまた悲惨だった。

94 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:25:15 ID:7bizQ4DQ0
裏口から入ると廊下から職員室へ繋がっており、事の全貌を見る事ができた。
机は荒らされたのか、どれも汚く荒れ果てていた。

床には警官の死体が転がっており、もはや当たり前と感じてる自分が怖い。
壁を見ると『未曾有の大災害、守るべき者は我々法の番人』と記されており
警官達は修羅場とも言えるこの状況を全力で立ち向かった形跡があった。


だが誰もいない。


つきっぱなしのクーラーがガリガリと音をたてており、それが妙に耳障りで
血が床に夥しく付着している。

( ^ω^)「困ったお……これからどうする?」

……何故か返事は無い。
直後


パリィンッ


( ^ω^)「……おいツンデレ?」

ふと後ろを見ると、そこにいるはずのツンデレの姿がなかった。
内藤は顔が真っ青になる。

95 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:26:00 ID:7bizQ4DQ0
先ほどまでツンデレの足跡は確かに聞こえていた。
いつからいなくなった!?

( ^ω^)「……!?そんな」

裏口から入るとすぐに廊下に出る事ができた。
その廊下からは職員室とトイレらしき場所が一番近かった。
……まさか


バタンッ


扉を閉める音が鳴り響く。

( ^ω^)「ツンデレ!」

いくら何でも無言でトイレに向かう事はない。
こんな時に

内藤は血相を変えてトイレへと走る。

床には割れたコップが散乱していた。
恐らくは必死に暴れて、それでコップが落ちたのだ。

何故暴れたのか?恐らくそれは……

96 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:27:03 ID:7bizQ4DQ0
( ^ω^)「まさか……」

内藤は男子便所女子便所、ともに扉を開けて確認する。
そして女子便所に入ろうとした瞬間……


ゴンッ


( ^ω^)「うあがぁっ!」

後頭部に鈍い衝撃を感じる。
内藤は強烈な吐き気と共に意識が朦朧となる。

「大人なら内側から鍵でも閉めて窓から逃げ出しただろうが
 ガキならチョロいもんだぜ、逃げるまでもねぇ」


( ^ω^)「……警官?」


内藤はぼやけた景色の中で、警棒を持つ警官らしき人物が目に入る。

「学生のようだが、ここへ何の用かね?」

97 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:27:43 ID:7bizQ4DQ0
「ひょっとして警察に助けてもらいたかったのか?」

警官と思しき人物は警棒を振り回しながら接近してくる。

( ^ω^)「……ツンデレを何処に……やったお」

ξ゚⊿゚)ξ「んーッ!んーっ!」

トイレの個室の奥に誰かが座らせているのが見える。
声からしてツンデレで間違いない。

( ^ω^)「……誰だお!お前……何を」


「俺か?警官さ、ビックリだろ?
 でもこんなもんさ。公務員だろうがつまるところは人間さ」


「同僚はみんな帰ってこねぇ
 ごく一部残っていたが、俺が皆殺しにしてやった。
 ある意味優しい事さ……こんな救いのない絶望の世から救ってやったんだ
 ……だったらよぉ」

「俺はこの余生、やりたかった事をする」

98 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:28:47 ID:7bizQ4DQ0
警官は警棒を振り回しながらツンデレに接近する。

「相手にフェラをさせる時のコツはナイフで脅す事だ
 でなけりゃあ食いちぎられてしまうからなぁ」

ツンデレは青ざめた表情で警官を凝視する。

「誰もいねぇ、誰も救えねぇ……大丈夫だ、イクと同時に殺してやる
 けどそれじゃあ足りねぇから死姦もさせて頂くかな」

( ^ω^)「……」

内藤は頭を抱えながら察する。


コイツは屑の部類!


世の中の秩序が崩れた事によって生まれたサイコパス(精神病質者)!
このままでは殺される!

自分が戦わなければ……誰がこの状況を打破できる!



第三話『全ての人間を同等には扱えない』

To Be Continued……

99名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 23:29:29 ID:fffxmweM0
乙!面白かった!

100名も無きAAのようです:2012/07/31(火) 23:30:41 ID:fffxmweM0
次回に期待!
⊂二二二(  ^ ω ^)二⊃

101 ◆UeK1bAFKBw:2012/07/31(火) 23:30:59 ID:7bizQ4DQ0
第二話『俺は雷鳴を聞いた』

以上で終了です。
読んで頂いた皆様、どうもありがとうございました。
次は第三話『全ての人間を同等には扱えない』です。

102名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 09:18:26 ID:p.SsE6sY0
⊂二二( ´,_ゝ`)二⊃

103名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 17:34:37 ID:nYnf5GdMO
(U#ω゚)オツオツオ

104名も無きAAのようです:2012/08/01(水) 20:46:13 ID:stJ4xLxY0
( ^ω^)おっおっお。

105名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 01:17:45 ID:yfC2AYxcO

そもそもどうしてこうなった…

タイトルからして( ^ω^)が心配

106名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 18:38:50 ID:mJ7hxHYY0
次回の投下予定日がしりたい

107名も無きAAのようです:2012/08/02(木) 19:27:13 ID:aZgUX.uQ0
| イ〇ア(_人_)イ〇ア |

108 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:48:45 ID:GvkKfAHY0
いきなりですが、目処が付きましたので第3話を投下します
コメントのお返事等は投下後に( ^ω^)

109 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:50:49 ID:GvkKfAHY0
「えー本日は生物兵器研究専門家、サイボーグ横掘教授をお招きしました
 今回のウィルス感染者の対策方法、及びに生態に関する解説をお願いします」

(//‰ ゚)「おっほん!……はい、今回のウィルスに関しては未知が多いのです。
     いや、正確には病原体によるものかすら疑わしい
     ありゃWHOの確証のない言い分です。
     私の解釈としては寄生体に近いものであると思いますね。
     ウィルスとは本来人間の体の中で悪さを働く、微生物以下の生命体に過ぎません。
     しかし各地の報告によれば感染者は致命傷を負っていても活動できる。
     首が無くなっても、心臓が無くなっても死なないのです。
     それはもはや病原菌の範疇を超えたものでしょう」

(//‰ ゚)「例としてディクロコエリウムという小型寄生虫が存在します。
     別名槍形吸虫とも言われますが、この生命体は
     ウシ、 カタツムリ 、 アリ 、 ウシの順に寄生を移り変わります。
     その中でもアリからウシへ移る際の行動は、非常に目を見張るものがあります。」



(//‰ ゚)「ディクロコエリウムはアリの脳を洗脳し、わざとウシに草と共に食われるよう仕向けるのです」



(//‰ ゚)「寄生虫はそれだけの可能性を持ち合わせています。
     これだけ爆発的な災害が発生する事自体は今だ謎に満ちてはいますが……
     今回の正体が寄生虫であったとしたなら頭や体が無くても活動できる理由にはなるでしょう
     宿主が肉体を欠損しようとも、寄生体ならば脊髄や脳を支配できていれば生存は理屈として可能であるからです」

110 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:51:56 ID:GvkKfAHY0
「という事は、本件はウィルスの生物災害ではなく寄生虫によるもの……と断定して良いのでしょうか?」

(//‰ ゚)「まだそれはできません
     災害のために現時点で十分な研究設備が整っていないのです。
     そしてWHOからの報告が現状として最も最優先されるべき情報でしょう
     権限から言って、たかが一つの大学ではどうしようもありません」

「ありがとうございました。
 それでは感染者対策をご教授願います」

(//‰ ゚)「感染者は非常に力が強くまた足が速い、噛みつかれれば発病する危険性があります。
     まず近づかない事が一番ですが、やむおえない場合は心臓部分をスタンガンや鈍器などで攻撃してください。
     彼らは心臓に強い衝撃を受けると一時的に約3分ほど痙攣を起こし倒れ込む習性があります。
     ただし非常に生命力が強いため、絶命させる事は非常に困難でしょう……ですので
     自動車か自動二輪車に乗って距離をとるのも安全ですが、タイヤに肉片が絡み非常に危険ですのでお勧めできません。
     くれぐれも言いますが、一対一で相手をするのは自殺行為です。
     味方が複数いてもまずは逃げる事を優先しましょう
     ほん少し選択を違えば、その味方全員が感染者となってしまうかもしれないのですから」

「ありがとうございました。
 次に現在自衛隊員が活動中の避難所を発表します。
 ……地方……町……小学校……


 VIP町、2丁目『VIP小学校』」


('A`)「だってよ」

J( 'ー`)し「近いじゃない!」

111 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:52:37 ID:GvkKfAHY0
午前9:35分



ドクオと親は車に乗り、無残な光景と化した大通りを独走していた。
二人はワンセグをつけ、避難情報を確認しながら現地へと向かっていた。

('A`)「おかん!対向車に気をつけてな!」

ドクオの母は運転席に乗り、信号を無視して時速70km程で車をかっ飛ばす。
あまりに速いので外の景色は鮮明に確認できないが、やはり無残な光景だった。

建物に激突した車は多々あり、そこら中の建物から煙が溢れている。
窓から落下する人々もたまにドクオは目撃した。
地面には轢き殺された死体が無数に散乱しており、いつか道路で見た獣の死体と同じようにハエがタカっている。

J( 'ー`)し「VIP小学校って確かアンタが行ってた小学校でしょ!?
     確か商店街に繋がってて車じゃ門まで行けなかったわね!
     途中まで走って行くわよ!」

('A`)「ええ!?
   怖いっての!」

J( 'ー`)し「阿呆!あんた男でしょ!」

とその瞬間!

J( 'ー`)し「!?」
('A`)「!?」


突然人がこちらに全速力で走って来る。


いや、人であるはずはなかった。

ボンッ

112 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:53:37 ID:GvkKfAHY0
化け物は鈍い音と共に姿を消した。
これが人を轢いた時の感触かと考えると、少々背筋が凍りそうになる。
そして車が頑丈な作りであると言われる所以のこの国の車は、それでも平然と走り続ける事ができた。

しかし、何やら鉄の表面にしがみつくような音が聞こえた。

('A`)「嘘だろ」

ドクオは後ろを向き、顔が青ざめた。


手が見えたからだ。


爪が割れ、小指や中指がグニャリとへし折れた手がトランクをガッシリと強く掴み
先ほどの化け物はゆっくりと、リアウインドウ越しにドクオ達に顔を見せた。

笑顔でこちらを見ていた。

顔面はタイヤで踏み潰されたのか黒い踏み跡がついており、踏まれたウンコのように頭が凹んでいた。
アゴはグシャグシャに潰れ振り子のように揺れており
そして片方潰れた瞳でこちらを凝視していた。

('A`)「おかん!左右に振って!」

J( 'ー`)し「!」

母はハンドルを左右に素早く何度も回す。
車体はグラグラと揺れ、慣性が働き二人は頭が激しく揺れて車酔いしそうになる。

113 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:54:23 ID:GvkKfAHY0
J( 'ー`)し「……」

母はバックミラーでトランクを確認する。
やはり化け物はまだ車から離れる気配はなかった。

J( 'ー`)し「もうほっときなさい!
     気持ち悪いけどそいつはガラスを割れる程の力はないでしょ!」

('A`)「……ど、どうかな」


気がつけば化け物はリアウインドウに顔面を擦り付けていた。


物凄く気持ち悪い。
化け物はガラスに引っ付きながら、ひたすらドクオを睨み付けていた。
潰れた瞳がグルグルと回り、見定まらない目でこちらを凝視している。

('A`)「おかんこいつ気持ち悪りぃ!」

J( 'ー`)し「ほっときなさいって!」

車が交差点にさしかかろうとした直後
不運が起きた。

J( 'ー`)し「!」


右前方から大型トラックが姿を現す。

114 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:55:23 ID:GvkKfAHY0
('A`)「!」
J( 'ー`)し「!」

母は瞬時にハンドルを素早く右へ回す。
それが幸いだった。

バンパーはグシャグシャに潰れて後方へと吹き飛んだ。
だが辛うじて車体はトラックへの衝突を免れる事ができた。

そして母はブレーキを豪快に踏む。
二人は反動によって体が前方へと引っ張られ、後方にいた化け物が前方へと吹き飛ぶ様がハッキリと見える。
そして化け物はその大型トラックに衝突し、血しぶきをあげながらぶっ潰れた。


一石二鳥だった。


しかし、車の速度からいって停止は不可能であり右側前方の建物へと向かい始める。

('A`)「おかぁん!!」
J( 'ー`)し「く、糞!」

二人の脳裏に『駄目』の二文字が浮かんだ。


車は豪快に、『不二家』との看板が立ったケーキ屋に衝突した。


全ての方向のガラスが粉々と化したコンクリートの破片に覆われる。
人生で初めて経験する凄まじい衝撃と共に、二人は死を覚悟した。

115 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:56:29 ID:GvkKfAHY0
数分後……

母はエアバッグにもたれかかった体勢で目が覚めた。

J( 'ー`)し「……痛」

額を触ると手のひらに数滴の血がこびりついた。
母は朦朧とした意識の中で、半分割れたバックミラーを見上げる。

J( 'ー`)し「……ドクオ!」

「ハタライタラマケカナト、オモッテル」


今、真にドクオが化け物に襲われる瞬間だった。


ドクオは気絶していた。
そして割れた窓から化け物が入ってきたようだった。

J( 'ー`)し「やめなさい!」

母としての意地だった。
朦朧とした意識の中でひたすら化け物を蹴った。

116 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:57:11 ID:GvkKfAHY0
だが

J( 'ー`)し「!」

足を化け物に捕まれる。

「ウィンウィンウィン ウィンウィン フフフ ウィンウィンウィン」

化け物は嬉しそうに口を大きく広げた。

J( 'ー`)し「この肥溜め野郎!!!」

母はひたすら抵抗するが、化け物は尋常ではない怪力で足を鷲掴みする。


駄目だった。


もはや覚悟するしかなかった。
ほんの一秒でも息子を救えた事が一番の喜びだった。
その瞬間


ダァンッ

117 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:57:56 ID:GvkKfAHY0
J( 'ー`)し「……?」

銃声が響いた。
化け物はふと後ろを向き、凄まじい速さで車から出て行く。


<ヽ`∀´>「逃げなさい!」


男性の声が聞こえた。
誰かはわからないが、今はその恩恵に従うしかなかった。

母はドクオを連れ、急いで車から出る。

J( 'ー`)し「はぁ……はぁ」

母はドクオを背負い、全力で走り始める。
だが所詮は女性の力か、抱えるのがやっとでノロノロとしか走れない。

そして倒れ込んだ。
例えどれほど根性があったとしても、人間は変えようがない限界がある。

母は薄れ行く意識の中で呟く。


J( 'ー`)し「ドクオ……ごめんね」


第三話『全ての人間を同等には扱えない』

118 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:58:37 ID:GvkKfAHY0
午前10:50分


ξ゚⊿゚)ξ「……」


異常すぎる……


ツンデレはさるぐつわを噛まされ、拘束されながらもそう考える。

あまりこの警官は堕ちていた。
とんでもないクズ。
このままでは殺されてしまう。

「一度やってみたかったんだよ、目玉に挿れたら気持ちいいかなぁって
 ……の前に」


ボグッ


( ^ω^)「うぐぅ!!」

内藤の腹部に強烈な蹴りがブチ込まれる。
あまりの激痛に耐えかね、その場で悶絶する。

「そんな鼻くそみてぇな鉄パイプで俺を殺すつもりかよ!
 ナメてんじゃねぇぞ糞ガキ!」

119 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/02(木) 23:59:45 ID:GvkKfAHY0
服の中に忍び込ませていた鉄パイプは遠くへと転がっていく。
正に万事休すだった。

「セックスも未熟なクソガキが!大人をナメるんじゃねぇ!
 下らん浅知恵で俺を殺るつもりだったのか!?
 このクズがッ!ゴミがッ!」

警官は激情し、顔を真っ赤にして内藤をひたすら蹴りまくる。
そして内藤の胸倉を掴む。

「心配すんなよ、テメェも後で殺してやる
 俺はまずこのかわい子ちゃんをよぉ」

警官はツンデレの方に視線を合わせる。
直後だった。

「!」


ふと指に激痛が走った。


「……あ?」

ふと指を見ると小指が裂け、皮一枚でようやく繋がっている状態だった。
血が噴水のように溢れていた。

120 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:00:32 ID:kSJdjVwI0
「……」

警官は額に血管を浮かばせながら背後を見た。



そこには唇に血が付着した、不気味な笑顔でほくそ笑む内藤の姿があった。



( ^ω^)「痛いかお?
      許せないかお?
      大丈夫かお?
      覚悟ができていないというのかお?散々こんな事やっといて」

内藤はマジギレしていた。
怒りのあまりに痛みなど忘れて警官の前で仁王立ちしていた。

ξ゚⊿゚)ξ「……あぐぐ」

ツンデレはトイレの個室の金具に引っ掛け、さるぐつわを強引に外す。
そして必死な表情で内藤に訴えた。

ξ゚⊿゚)ξ「内藤逃げて!
      駄目よ!あんたじゃ勝ち目がない!」

121 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:01:20 ID:kSJdjVwI0
警官は体格180cm代にして巨漢の体格を持ち合わせていた。
一方内藤は170cm代の非力な文化系学生。
極悪人ながら、なおかつ相手は警官なのだ。

そんな相手に内藤が敵うわけがなかった。


しかし今戦わねばツンデレは犯されるだろう。


ハンデが大きすぎた。
ヘビー級のボクサーとライト級のボクサーが戦う事以上に無謀だった。

( ^ω^)「……」

内藤は後ずさりしながらモップを手に取る。
こんなもので立ち向かえるかわからないが、これ以外に有効な武器もない。

「……クックッ
 んだテメェ?闘うつもりか?」


「笑わすんじゃねぇよ!」

122 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:02:16 ID:kSJdjVwI0
内藤は全身全霊を込めてモップで突きを食らわしたが……
警官はいともたやすくそれを片手で掴んだ。

「……クックックックッ」

( ^ω^)「……!」

「ハッハッハッ!!」


ボグゥンッ


直後、内藤は強烈な衝撃と共に後方へ吹き飛んだ。
数本の歯と血が飛び散った。

「テメェは簡単には殺さねぇ!
 全身痣まみれにしてやるぜ畜


(`・ω・´)「動くな」

123 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:03:12 ID:kSJdjVwI0
「……あ?」

( ^ω^)「……!?」


そこには自衛隊員と思しき一人の男性が立っていた。


両手で拳銃を構え、冷静な表情で警官に銃口を向けていた。

(`・ω・´)「警官の身でありながら殺戮と強姦に身を染めた事を悔い改めろ
      お前に法の万人を名乗る資格はない」

20代前半と思しきその若い男は、凛然たる顔つきで警官を凝視していた。

「……ちっ」

(`・ω・´)「警棒をよこせ。地面に伏せて手を上げろ
      先ほどから妙な物音が聞こえてはいたが……まさか貴様のような族とは」

警官は渋々と警棒を渡し、体を伏せる。

ξ゚⊿゚)ξ「……あ、ありがとうございます」
( ^ω^)「ありがとうございます」

(`・ω・´)「礼はいいから紐を持ってきてくれ
      これが俺の仕事だ」

( ^ω^)「は、はい!」

124 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:04:09 ID:kSJdjVwI0
二人は幸運だった。
この絶望的な状況で自衛隊という国内最後の機関に出会えたのだ。

「……こんな真似してどうするつもりだい?
 どうせ世界は終わりなんだぜ?」

(`・ω・´)「だからお前の行為が許される、とでも思っているのか」

警官は先ほどのツンデレと同じ状況にされ、トイレの個室に閉じ込められる。
そして『危険人物留置中』のお札を貼り、扉をガムテープで覆う。

( ^ω^)「……あの、名前は?」

三人は歩きながら会話を始める。


(`・ω・´)「私はシャキン2等陸士だ
      二人とも、随分嬉しそうな顔をしているようだが……」


ξ゚⊿゚)ξ「当然ですよ!
      本当にありがとうございます!」
( ^ω^)「俺も、あなたが来なければ……」

(`・ω・´)「……とは言ったものの、どちらにせよあまり良い状況とは言えんが」

三人は廊下を歩き始める。

( ^ω^)「?」

その最中シャキンは裏口の扉を木の板で覆い、完全に閉鎖してしまう。

125 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:04:51 ID:kSJdjVwI0
化け物対策か、シャキンは素早く木の板に釘を打ちつける。
内藤とツンデレはそれを手伝い素早く済ますと、三人はまた歩き出す。

(`・ω・´)「君達は?……」

( ^ω^)「内藤ホライゾンとツンデレですお
       駅から逃げてきました、ただの学生です」

(`・ω・´)「何処も同じか……我々も他の連中とも連絡がとれなくてね
      十中八九みんな逸れちまった」


(`・ω・´)「期待させて悪いが、こっち(自衛隊)も絶望的だ
      ヘリですぐさま脱出なんてのは無理だよ」


( ^ω^)「……」

それを聞いて内藤はちょっとだけ落ち込む。

(`・ω・´)「仲間が後二人いる」

シャキンがそんな事を言っている間に、三人は第二職員室に到着する。

(´・ω・`)「……」
川 ゚ -゚)「……」

そこには二人の自衛隊員がいた。

126 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:05:53 ID:kSJdjVwI0
(´・ω・`)「……畜生、これからどうすりゃいいんだ……
     もう駄目だ……本隊から逸れちまった……」

一人は身長190cm程の先ほどの警官より体格のいい男だった。
作業着を着ており、ハの字の眉毛が非常に弱気な印象を感じ
頭を抱えて暗い表情でブツブツ何かを呟いている。

川 ゚ -゚)「……」

もう一人は長髪の歳の若い女性自衛隊員だった。
短パンをはいており、最低限のホルスター、防弾チョッキ等を省けば非常にラフな格好をしている。
体格も三人の中では一番小さいが、その割には悠然とした態度で本を読んでいる。


(`・ω・´)「准陸尉、民間人を二人発見しました
      また加害行為を行っていた警官を一人捕縛
      裏口の扉のガラスが割れていたので、木の板でバリケードを作りました」

新米なのか
その中でもこのシャキン2等陸士という男が一番明るく接しやすいキャラだった。

川 ゚ -゚)「……上出来だ、こっちのポンコツ(ショボン)とは随分違う
     大きい音を出されると化け物が反応して集まってくるからな」

女性自衛隊員は本を片付け、冷静な表情で顔で見上げてそう告げる。

( ^ω^)「え!?」

それを聞いて内藤は動揺する。

127 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:07:03 ID:kSJdjVwI0
内藤は治療を受けながらも自衛隊員達の話を聞く。

(`・ω・´)「俺達は市民救助に派遣された大隊の一派だ
      警察の協力をするよう要請されたがこの様さ」


(`・ω・´)「この女性の方は素直クール准陸尉
      この弱気な顔つきの人はショボン整備兵だ」


(´・ω・`)「自己紹介なんざしてる暇があったら本隊と合流する方法を考えろっつの」

川 ゚ -゚)「喋るなショボン」

ショボンが愚痴をこぼしつつも、シャキンは職員用の椅子に座る。
それにつられて二人も空いてる椅子に座る。

(`・ω・´)「裏口の扉が開いていたから多分知ってるだろうが
      俺達は装甲車に乗ってここに来たが、爆発物でも踏んでしまったのか……
      後輪がパンクし走行不可能の状態だ
      予備のタイヤも緊急が故に配備をする余裕がなかった」

(`・ω・´)「しかし君達……徒歩でここまで来たのか?」

( ^ω^)「……まぁ、はい」

(`・ω・´)「どうやって?
      外は化け物だらけだ
      例え裏路地を利用しても危険性は非常に高い
      大通りなど地獄の沙汰だ、車が道を塞ぎ人間を皆殺しにする」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

ツンデレはゆっくりと立ち上がり、何やら怯える真似をする。
それを見た内藤は悟った表情で立ち上がり、鉄パイプでも持ったような手の形で身を潜ませる。

128 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:07:50 ID:kSJdjVwI0
(`・ω・´)「……おとりか?
      なるほどな、賢い」

川 ゚ -゚)「……それじゃあ一体が限界だな」


女性は足を組みながらそう告げる。


( ^ω^)「……」

内藤は素直クールの太ももに視線がいく。
それを見たツンデレが彼のスネに回し蹴りをぶち込む。

川 ゚ -゚)「かなりの幸運だぞ
彼女自身に募るストレスの負担は尋常ではないし、失敗の確立も高い
     まぁ民間人にしては上出来ではあるが……」

女性はペンを振り回しながら、髪の毛をかき上げ機械のように冴えた表情でそう告げる。

川 ゚ -゚)「私達が今行うべき事は移動だ。
     安全に、確実に化け物をなぎ倒しながら、できる限りに民間人を救う事
     君は知ってるか?
     いや……警察署に来たくらいだから知らないだろうな」

( ^ω^)「な、何がだお」


川 ゚ -゚)「ここより数km先のVIP小学校という場所で、避難民の隔離が行われているという事だ」


川 ゚ -゚)「元々警官や民間人を連れてそこへ避難するのが目的だったが……
     装甲車は走行不可能、そして本隊から外れ到着したのが私達だけという事実」

(`・ω・´)「まさかこの警察署にあんな奴が残っていたとは思わなかったよ
      俺達もつい十分程前に正面入り口から来たばかりでね……」

129 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:08:44 ID:kSJdjVwI0
(`・ω・´)「警官も全滅しクズ以外残っていなかったとなると、もうここに残る必要もない
      とは言ったものの……装甲車のタイヤはパンクしてしまっているのが問題でな
      しかし並みの車では、化け物を数回引いただけでお釈迦になってしまうし危険すぎる」

(`・ω・´)「丁度今、我々はそんな事で議論していたんだ」


( ^ω^)「なんでそんなに教えてくれるんだお?」

(`・ω・´)「……生存するのが目的で、なおかつ危険人物でない
      それだけでも救助をし徒党を組むにはメリットがある」


(`・ω・´)「……というのは上っ面の答えで、実は協力をして欲しい」



シャキンは何やら資料のようなものを手に取る。


(`・ω・´)「この警察署の保有車両の一覧だ。
      場合が場合だけに、ほとんどが現在出動しているが……
      どうやら監視カメラを見ると特型警備車だけは一、二台残っているらしい
      恐らくは整備不良や故障などで搭乗できなかったのだろう」

(`・ω・´)「しかしショボン整備兵いわく、この手の特型警備車と装甲車のタイヤの規格はほぼ一致するらしい。
      願ってもみない幸運だ、しかし問題もある」

(`・ω・´)「この車両は地下駐車場にある
      監視カメラには数体の化け物と警官の死体が映っていた
      恐らくは戦場になっていたのだろう
      そこで君達にお願いがある」

シャキンは真剣な表情で二人にスタンガンを渡す。


(`・ω・´)「私とショボンがタイヤを頂いている間、君達は素直クール准陸尉と供に我々を警護してくれ
      連中はスタンガンの耐性だけは人間と同レベルだ。
      それがあれば化け物ともある程度は闘える」

130 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:09:43 ID:kSJdjVwI0
( ^ω^)「は……はぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「……」

(`・ω・´)「くれてやる
      先ほどの奴みたいなクズにぶちかましてやれ」

(`・ω・´)「それで思い出したが……」

シャキンは内藤の唇についた血を見て、ある事を思い出す。
先ほど拘束した警官は小指がちぎられていた。


まるで噛み付かれたかのように


こんな一般学生がそんな獣のような、獰猛で異常な真似をしたというのか
いくら必死になっていたとはいえ……
信じられない事だ。

いや……ここへ来る過程で平和ボケした馬鹿な民間人を数人見たが
それよりはまともだというのか
これでまともだというのか……酷い世の中だ。

(`・ω・´)「……何でもない
      休憩などしている余裕はないぞ」

シャキンは拳銃に弾を充填し、早歩きで駐車場へと向かい始める。

131 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:10:26 ID:kSJdjVwI0
午前11:10分。


ぶっ殺してやる
……絶対にぶっ殺してやる!
あの野郎……ガキの分際で

警察署1F女トイレに閉じ込められた男は憎悪を抱いていた。
己の身を縛るロープを解くためにあらゆる手段を考えた。

だがどうしようもなかった。

流石は戦うためにあらゆる訓練をし尽くしたプロといったところか
ロープは解かれないよう複雑に頑丈に縛られ、個室から抜け出せないよう便器に絡まっている。
引っ掛けれそうな金具の部分全てが破壊されおり、それを利用して解く事もできない。
……しかし

コツ、コツ

歩く音が聞こえてくる。
最初は自衛隊の連中かと思い

「畜生!助けてくれ!
 ガキに食いちぎられた小指の部分の出血が止まらねぇ!」

とにかく手段を選んでいる場合ではない。
警官はひたすらその人物を誘い続けた。

132 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:11:23 ID:kSJdjVwI0
警官は開けた瞬間にそいつを蹴り飛ばし、脅しか何かに利用するつもりでいた。
うまくやれば拳銃の一つや二つは奪えるかもしれない。
今はそれに賭けるしかなかった。

「トイレットペーパーでいい!
 止血用に紙をくれ!
 もうここの紙は全部使っちまったよぉ!(嘘)」

コツ……コツ……
ガチャッ

「!」

どうやら入ってきたようだった。
警官は息を飲んで構えをとる。

「入ってきたのか!
 すまない!紙を少しだけ」

「……?」

この時、警官はある疑問を感じた。
その音はよく聞いてみれば革靴の音だった。

133 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:12:06 ID:kSJdjVwI0
思えば自衛隊の連中は底の分厚い半長靴をはいていた。
そしてあのガキ共もスニーカー程度の安っぽいものだった。


こいつは誰だ?


そういえば一言も喋らない。

「……」

今更になって警官は躊躇し始めた。
直後、個室の扉が軋む音をたてながらゆっくりと開く。



それは宙に浮いた生首だった。



「え?」

警官は唖然となる。
いや、宙に浮いているというよりは誰かに捕まれているといった表現が正しいか
その真上に髪の毛をわし掴みにした黒服の腕が見えたからだ。

134 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:14:55 ID:kSJdjVwI0
「んだよ……何だってんだよ!
 ……いや、これは!」

生首は獅子舞のように無音でカチッカチッとアゴを動かしていた。
首からはボトボトと液体が滴り落ち、餌を見つけたかのような笑顔でこちらを見つめている。
これ間違いなく、あの化け物だった。

警官は顔が青ざめた。

何のためにこんな事をする。
化け物を利用するという根性、無益で非人道的でこの上ない猟奇的。

「やめろ……あんた何者だ!
 何が理由でこんな真似を!」

警官は尻餅をつき、汗だくになり激しくパニック状態になる。

「イカれてる!
 化け物を利用して俺を殺すつもりかよ!
 やめろ!こんな死に方嫌だ!」


( ´∀`)「お前と同じだ。イカれてる」


「うるせぇテメェよりかマシだぁああああ!!!!!」

数秒後、悲鳴と共に血肉が壁一面に飛び散った。


第四話『そして地獄が彼の後をついて来たのだ』

To Be Continued……

135 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:26:13 ID:kSJdjVwI0
第二話第三話『全ての人間を同等には扱えない』

以上で終了です。
読んで頂いた皆様、どうもありがとうございました。
>>128の15行目の素直クール発言が改行ミスです、すみませんw

次は第四話『そして地獄が彼の後をついて来たのだ』です。
かなり長い話となりますので、次回の投下までは時間がかかりそうです
早くても4日か5日以上になりますのでご了承ください( ^ω^)

136 ◆UeK1bAFKBw:2012/08/03(金) 00:48:57 ID:kSJdjVwI0
また書き込みミスww重ね重ねご迷惑をおかけしますw

予想以上に書き込みを頂いてるので嬉しいです
何とか面白い作品に仕上げれるよう頑張っていきたいです

>>66
この作品にもTさん級の強キャラは登場します
>>105
このタイトルはインパクトや、わかりやすさのみを狙ったわけではなく
本編と決して無関係ではない……とだけ


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