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( ^ω^) ブーンが雪国の聖杯戦争に挑むようです

1名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:47:16 ID:U5Z4bAHs0

潮の香る港に、日本人とはかけ離れた二人の男が降り立った。

ここ、小樽の港には日本人以外にも出稼ぎにきたロシア人も多く、
外国人はそう珍しいものでもなかったのだが、
二人の異色は際立っている。

( ´_ゝ`) 「いやー気持ち悪かったなー。揺れる揺れる。
       船旅ってのはどうにもすかんね、俺は」

2月末とはいえ雪のまだ積もるこの土地で、
極彩色の派手なアロハシャツを羽織り、麦わら帽子を被った短パンの男と、

(´<_` ) 「アニジャ、静かにしろ。任務中だ。目立つ様な真似はするな」

対照的に、どこに売っているのかもわからない、
足首まで丈がある、フード付きの真っ青なローブをきた男の二人組。

( ´_ゝ`) 「はいはーい、わかってますよオトジャくん。
       そんじゃ、粛々と静かーに会話もなく黙々と目的地目指しますか」

アニジャ、と呼ばれたアロハ男は軽く手を振るだけで、
なんら悪びれもせずに歩き出す。

その背をオトジャというローブの男が追い、

(´<_` ) 「分かったのなら行動で示してくれ」

愛想の無い口調でそうたしなめた。
目を引く二人ではあるが、港を少し離れていくと車道を走る車ばかりで、
人通りは少なくなっていき、彼らを気に掛けるものはいなくなった。

2名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:48:55 ID:U5Z4bAHs0

( ´_ゝ`) 「なぁ、もう口開いていい?」

(´<_` ) 「あぁ、ここらへんでいいだろう」

倉庫や工場に挟まれた路地に辿りつくと、二人は立ち止まる。
座る場所はなどないが、アニジャは地面の汚さに構わず座り込む。

( ´_ゝ`) 「あー雪がひんやりして気持ちいい。
       なんだか目覚めちゃいそう」

(´<_` ) 「勝手に目覚めて貰っても構わんがもう少し緊張しろ。
       聖杯戦争は、これから始まるんだぞ」

( ´_ゝ`) 「まーまー、肩の力抜けよ。今のとこ俺達が一番乗りだ」

( ´_ゝ`) 「聖杯戦争に参加するであろう内藤も津出も、
       まだサーヴァントを召喚したとの報告は受けていない。
       始まってもいないのに殺し合うメリットなんて無いだろ?」

(´<_` ) 「楽観的すぎるんだ、アニジャは。どこに"アサシン"がいるのかもわからないんだぞ?」

( ´_ゝ`) 「だから、サーヴァントは召喚されていないって。
       気配遮断スキルを持つとはいっても、召喚されればわかるようになってんの」

(´<_` ) 「違う、そいつじゃない。だからアニジャは楽観的だと言ったんだ」

3名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:51:39 ID:U5Z4bAHs0

( ´_ゝ`) 「……あぁ、"あいつ"か。"あいつ"のことか」

"あいつ"、と口にした途端、アニジャは表情を変えた。
憎しみにも近い、嫌悪感を隠しもしない口振りで、

( ´_ゝ`) 「例え"あいつ"が出てきたとしても"双璧の全属性"が相手だ。
       あんな畜生なんぞに負けるはずはあるまいよ。
       俺の炎と風、オトジャの水と地の魔術、そして互いの空があれば奴が敵うはずはないんだ」

(´<_` ) 「で、あればいいんだがな。"あいつ"の為に一体どれほどの魔術師が犠牲になったかしれん。
       用心しておくことだ、アニジャ。だからこそ、俺達が魔術協会から選ばれたんだからな」

( ´_ゝ`) 「わかっているよ、オトジャ。七騎のサーヴァントが揃う前に死んだとなれば、末代までのお笑い草だ」

(´<_` ) 「気をつけてくれればいいんだ。頼んだぞ、アニジャ」

言いつつ、弟者は長いローブの袖を巻くって腕時計を見た。
時刻は9時を示しており、予定通りにことは運んでいるようで、
弟者は薄っすらと笑みを浮かべると、

(´<_` ) 「そろそろ迎えが来る頃だな。兄者、手筈通り札幌には一人で向かうんだぞ。
       俺も全サーヴァントが召喚され次第向かう。
       令呪がお互いに現われて、敵同士になってはかなわんからな」

遅刻すんなよ、とアニジャはからかおうとしたが、
それよりも速く車が二人の前に停車し、言葉を止めた。

4名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:53:03 ID:U5Z4bAHs0

从・∀・ノ!リ人 「おっきい兄者、ちっちゃい兄者、迎えにきたのじゃ」

(´<_` ) 「イモジャはかしこいなぁ。時間ばっちりだ」

後部座席が自動で開くと、アニジャは乗り込んでいく。

( ´_ゝ`) 「お前も、遅刻するなよ。
       サスガファミリー総がかりでも、サーヴァントで襲われては刃が立たん」

そこで、ようやくからかうタイミングが出来て、
麦わら帽子を手に取ったアニジャは満足げな表情で弟者を見た。

(´<_` ) 「アニジャが言うなよ」

( ´_ゝ`) 「……この帽子をお前に預ける。
       俺の大切な帽子だ、いつかきっと返しに来い。立派な魔術師になってな」

その帽子を、オトジャに被せるとアニジャはそのままドアを閉める。
苦笑いを浮かべ、弟者は二人の乗った車が発進していくのを見送り……。

まず感じた物は音だった。聴覚を殴りつける轟音。
次いで、身を吹き飛ばす熱風と衝撃波。
それらをオトジャが感じたのは一瞬のことだ。

車の下部に取り付けられたプラスチック爆薬から引き起こされた炎は、
ガソリンに引火すると酸素を次から次へと求めて大炎上となり、
恐るべきその運動は爆発と爆風となって二人を飲み込み、オトジャを弾き飛ばした。

5名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:54:11 ID:U5Z4bAHs0

( <_ メ;) 「―――――」

アスファルトの上を10メートル近く転がったオトジャは、
声を出すが、肺を焼かれてしまった為にそれは言葉にはならなかった。

考える間も無い、あまりにも唐突で残酷な出来ごとに、
思考が追いつかずパニックに陥ることも出来ない。

そんな中で彼が取った行動は本能的なもので、うつ伏せになった身を返し、
損傷した臓器への負担を軽減して苦痛を和らげるというものだ。
仰向けになると青い空が見えた。空気は乾燥していて、寒い風が吹いてはいるものの太陽は眩しい。

( <_ メ;) 「……?」

(  )

冷静に、落ちついて事態を把握しようとしていたオトジャの目に、太陽を遮る物が現れる。

人だった。
顔はフードを被っていてわからないが、
濃緑色のモッズコートに身を包む、170cm程の小柄な男だ。

小柄、とは言っても弟者の住む国からすれば、という意味で、
この国の平均的な体格ではあり、コートの上からでもわかる鍛え抜かれた肉体が、
一口に小柄とは言い切れない逞しさを放っている。

6名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:56:46 ID:U5Z4bAHs0

( <_ メ;) 「……ッ! ギザ……マ……!!」

フードの奥にある顔に目を凝らせば、見覚えのある顔をしていた。
多くの魔術師達を暗殺し、魔術協会と真っ向から敵対する、
魔術師界隈では指名手配をされ、オトジャが危険視していた男の顔である。

その男が、その"魔術師"こそが……。

(  ) 「聖杯は俺を選んだ。この土地に着いてから、すぐさま令呪が俺には刻まれた」

この惨事の中でも淡々とした口調で語れることからも、
この男がアニジャとイモジャの二人の命を奪ったことは明白であった。

そして彼はこれから、オトジャの命をも奪う。

魔術師達が嫌う近代科学によって生み出された、
ハンドガンの9mmパラベラム弾に眉間を撃ち抜かれることで。

銃声はグロック26の銃口から伸びる、サプレッサーによって減少され、
肉と頭蓋を穿つ生々しい音が響くのみであった。
魔術師と言えども人間であり、頭を撃たれれば血と脳を地面にこぼして死んでしまう。

( <_ メ) 「  」

爆破によって身体機能を著しく低下させられ、
尚且つ冷静な判断力を欠いたオトジャには魔術を使う間もなかった。

魔術師といえども、実際に命を奪い合う戦闘を経験した者は稀である。
それが、それこそがこの男との決定的な力量の差であった。
濃緑色のコートを羽織った男は、ジーンズからケータイを取り出すと発信し、

7名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:58:00 ID:U5Z4bAHs0

(  ) 『作戦完了、これより目標地点へ向かう。
     起爆装置は問題なく作動した。よくやった』

通話相手にそう告げる。
淀みない、機械的なやりとりの中でも、
最後の一言には微かに相手を労う気持ちが込められていた。

    『お疲れ様。みんなお待ちかねよ。船旅はどうだった?』

彼のケータイから聞こえる声は、
落ち着きがある中にも陽気さを感じさせる女の声だ。

(  )『問題は無い。誰も俺に気付きやしなかった』

    『あんた、目立たないもんね。懸賞金も掛けられてるのに、
     今まで生き残ってこられたのはその存在感の薄さのおかげかしら』

(  )『俺の魔術のおかげだ。万が一ということもある。
     無駄話はやめて、作戦に移るぞ』

    『はいはい、了解ですボス。じゃあ開始しましょ』

(  )『あぁ―――聖杯戦争を開始するぞ』

男はケータイを切ると駅へと向かって歩き出す。
フードを外すと隠されていた無表情が露わとなり、涼やかな眼の奥からは切なる願いの火と、
大いなる野望の火が、炎となって燃え盛っているような輝きが放たれていた。

8名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:58:55 ID:U5Z4bAHs0

******

札幌市東区。

中央区よりの位置にある東区役所方面を南下し、
VIP高校へ登校する生徒達は皆、春の近づきを感じながらも、
冬の寒気の入り混じる複雑な気候から身を護る為、それぞれ防寒着で身を固めている。

VIP高の生徒達の中で、垂れ眉のショボクレた顔をした少年、
ショボンは雪溶けで濡れた歩道に眉をひそめながら、
水溜りを避けるようにして歩いていく。

(´・ω・`) 「最近になって雪が溶けてきたね」

( ^ω^) 「暖かくなってきたからだお。
       まだ2月の末だけど、徐々に春は近付いてきてるんだお」

その隣を歩く大柄の少年ブーンは、
雲一つない青空を一度見やると、丸顔をショボンへと向ける。

(´・ω・`) 「暖かいのはいいことだけど、これじゃ靴がビチャビチャになっちゃうよ。
      僕も君みたいに安全靴を履いてくれば良かったかな。見た目は悪いけど」

( ^ω^) 「機能性はいいお。冬でもスニーカーじゃ、濡れちゃうのは当然だおね」

細い、笑みを作ったかのような目でショボンの足元を見て、
染みの出来た白のスニーカーを指して言う。

9名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 21:59:36 ID:U5Z4bAHs0

(´・ω・`) 「僕はスニーカーが好きだからさ」

こんなに暖かいのなら、道がびちゃ濡れになっているのはわかりきっていただろうに。
あえてスニーカーを履くという選択はショボンの洒落っ気ではあったのだが、
機能性を優先するブーンには理解し難い奇行でしかない。

(´・ω・`)σ 「どうやらツンも雪解けに苦戦しているみたいだよ」

ξ;゚⊿゚)ξ

指を差す先には金髪を縦にロールした、
色白の女生徒ツンがおり、水溜りを避けるようにして進む姿から、
どうやら彼女もこの道に苦戦を強いられているようであった。

(* ^ω^) 「おっ! ツン、おはようだお!!」

ξ゚⊿゚)ξ 「あ……おはよう、ブーン……」

(´・ω・`) 「おはよう。元気が無いみたいだけど、水溜まりにでも突っ込んだかい?」

ξ゚⊿゚)ξ 「いえ……別に、何でもないわ」

(; ^ω^) 「大丈夫かお? 体調悪いのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ 「何でも無いって。それより、ブーン。
       今日の放課後、時間を頂けるかしら?」

(* ^ω^) 「わかったお! ツンの為ならいつだって暇にするお!」

ξ゚⊿゚)ξ 「……そう。じゃあ放課後に、ね」

10名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:01:02 ID:U5Z4bAHs0

ξ゚⊿゚)ξノシ

( ^ω^)ノシ


(´・ω・`) 「……なんだ、付き合いの悪い。
      クラスが同じなんだから一緒に登校してもいいのに」

( ^ω^) 「ツンは、やっぱり体調が悪いんだお。
       だから心配させまいと、一人で行っちゃったんだお」

(´・ω・`) 「そうかな? 確かに顔色はあまり良くなかったけど。
       それに、急に呼びだしてなんなんだろうね。
       もしかして、ブーンに告白するとか?」

(;^ω^) 「いやいやいや! それはないお。ツンに限っては、絶対!!」

(´・ω・`) 「幼馴染属性とか羨ましいよ」

(;^ω^) 「エロゲに限る話だお、そういうのは」

(´・ω・`) 「そうかい? もしかしたら、緊張のあまりに体調悪くしてるとか、
      ツンのことだし、あると思うんだけどなー」

( ^ω^) 「うーん……たしかに、何か悩みがあるかもってのは頷けるお」

(´・ω・`) 「……」

( ^ω^) 「うーん……」

11名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:01:49 ID:U5Z4bAHs0

(´・ω・`) 「まさか……」

( ^ω^) 「まさか、なんだお?」

(´・ω・`) 「僕達の関係に気付いたっていうわけじゃ……ないかな」

(;^ω^) 「え……?」

突然、僕達の関係、と言われてブーンは戸惑った。
普通の何一つ変わらない友人との関係の何を気付いたというのか。
ツンは何に合点がいったと言うのか、真剣に思考していくが、

(´・ω・`) 「うん、それなら僕らと登校しないというのも合点がいく。
      二人の邪魔をしちゃあ悪いと、ツンもそう思ったんだろう。
      カップルが二人で登校、というイベントを妨害してはいけないからね」
  _, ,_
( ^ω^) 「は? カップル?」

予想外の答えにブーンは戸惑いを通り越えて呆れた。
ただ、呆れた。呆れ果てた。

(´・ω・`) 「さぁ、手でも繋ごうか、ブーン。
      気を使ってくれたツンにも悪いし……さぁ」

( ^ω^) 「ショボンは、そっち系のエロゲ脳だったかお……勘弁してくれお」

手を繋ぐことを強要してくる友人に、気色悪さを感じたブーンは、
彼を無視して足早に学校へと一人で向かっていった。

12名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 22:02:51 ID:U5Z4bAHs0

******

学校に到着し、ツンに何の用事か問いただしては見たものの、
結局答えては貰えず、幼馴染の勘からいくら聞いても答えてはくれないと、
ブーンは諦めることにした。

ツンの申し出のことが頭に引っかかったまま最後の授業を受けていると、
終業のベルが校内に鳴り響き、ホームルームが始まる。

( ´ー`)「今日は小樽のほうで自動車の爆発事故があったようだ。
      整備不良が原因らしいけど、お前らも駐車している車を見かけたら、
      爆発しないかどうか気をつけながら帰宅しろヨ」

担任のシラネーヨの言葉は生徒の身を気遣っているのだろうが、
どこか冗談めかしたもののような響きを持っている。、
しかし、今のブーンの耳に届いてはいなかった。

( ´ー`)「最近物騒なんだからな〜。寄り道も程ほどにしておけよ〜。
      じゃあ、ホームルーム終わりだーヨ……散!」

     「きりーつ、礼〜」

今度は完全に受けを狙いにいった発言であったが、
日直である女生徒は冷たい目を担任へ突き刺すと、
号令を終えた途端にそそくさと帰っていってしまう。


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