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( ^ω^)は嘘をついていたようです
451
:
名も無きAAのようです
:2013/02/15(金) 15:46:21 ID:jjyz0Mh.0
俺の中では2012年ナンバーワンだ、今年中にくるかな?
452
:
名も無きAAのようです
:2013/03/18(月) 22:47:07 ID:xpo/I0No0
乙乙
人間関係が思わぬところでつながっていておもしろかった
453
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:46:25 ID:kxRdfcGY0
トリップが変わっているかもしれませんが、時間があいたので忘れてしまったためです。
続編を投下します。
454
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:49:36 ID:kxRdfcGY0
私は弱かった。
正直を言えば、死ぬことは恐怖だ。
だが、信じていることのために
生きなければ
何の価値があるだろう。
〜( ・∀・)探偵モララーは信じているようです〜
455
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:52:23 ID:kxRdfcGY0
K大学は某県の南にある、木々に囲まれていた大学だ。
森の中と言っても差し支えないかもしれない。
敷地内にいる分には、周りの雑音もシャットダウンできるし、空気も澄んでいる。
1994年。
徐々に地球温暖化が騒がれてきていた時代だ。
この国特有のじめじめした気候の中で
生活をいくらか過ごしやすいものにしてくれる木々は、貴重なものであった。
K大学は東西に分断されており、中心を学生通りが伸びている。
通りの名前は正式名称ではない。学生と地域住民がそう呼んでいるだけだ。
大学と駅を結ぶその道では、主な通行人は学生であり、立ち並ぶお店も学生のためのものであった。
景観を重視したその通りは、整えられた街路樹を自慢としており、時折メディアにも取り上げられる。
「21、22、23……」
お前と彼女はよくその道を歩いていた。
一緒にいたのは、春から夏の間だけ。
「34、35、36っと」
「両側にしたら倍だな」
「じゃあ、72!」
賑やかな商店街に影響されていたのか、その声は快活だった。
もっとも、普段がどんな声なのかをはっきり知っていたわけではない。
「それとロータリーの真ん中にもう3本」
「よくもまあ、そんなに植えたことで」
456
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:53:35 ID:kxRdfcGY0
この会話が交わされた時は、おそらく初夏だ。
梅雨の空気も切れ切れになり、ようやく日差しの強さを実感できたころ。
陽光は彼女を照らしていた。
从 ゚∀从
高岡ハイン。
髪はやや長く、明るい。
季節のこともあり、薄い柔らかそうな服をよく着ていた。
そして会うときはいつも、銀のロザリオを首から提げていた。
从 ゚∀从「どうしたのかな、探偵さん。
難しそうな顔をして」
「難しい?」
从 ゚∀从「遠いところを見てるみたいな」
「ずいぶん詩的な表現だなあ」
その言葉を受けて、ハインはカラカラと笑っていた。
屈託のない、その顔をお前はよく覚えていた。
今なら言える。
お前は遠くを見ていたんだ。
遠い将来まで、その笑顔が見えることを、心のどこかで思っていたんだ。
457
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:55:15 ID:kxRdfcGY0
彼女にはお気に入りの場所があった。
学生通りから少し外れたところにある、小さなカフェだ。
学生ばかりな道沿いのカフェよりも、外れた方が落ち着けるというのがその理由だった。
彼女が学生ではないという意味でもあるし、また、彼女が大学を出ていなかったという意味でもある。
そのカフェで、彼女はホットモカを頼む。
いくら外が暖かくなっても、彼女はホットであることを譲らなかった。
从 ゚∀从「だって、コーヒーは温めて飲むものなんだよ」
理由を聞いても、彼女はそればっかりだった。
从 ゚∀从「アイスコーヒーなんて頼んだら、ブラジル人がびっくりするよ」
「いいよ、ブラジル人に会う予定は今のところないし」
そう言って、お前は自分で頼んだアイスコーヒーにマドラーを差し込んだ。
200円の安いコーヒー。
ホットモカならもう50円高くなる。
それでも、落ち着いた店内の様子を踏まえたら、十分良好な値段だった。
458
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:56:21 ID:kxRdfcGY0
落ち着いた時間、お前はよく話した。
会ったばかりの頃は、真面目な話をしていた気がする。
だけどいつの間にか他愛ない話をするようになった。
そしてその方が長く、楽しく会話することができた。
彼女の仕事の愚痴が一段落したところで、有線から音楽が流れてくる。
ポップな曲調、だけどどこかに陰を感じる、不思議な雰囲気を感じる。
从 ゚∀从「あ、あたしこの曲好きなんだよね」
そういうと彼女は眼を閉じて、曲を追うのに集中し始めた。
店内は静かな方だし、聴き取りやすいことだろう。
「スピッツって言ったっけ」
从 ゚∀从「そう。もっと売れてもいいと思うんだけどな」
『空も飛べるはず』というのがその曲のタイトルだった。
彼女の呟いた通り、数年後にドラマの主題歌となり、息の長いヒットとなる。
459
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 15:58:11 ID:kxRdfcGY0
お前と彼女は人ごみが嫌いだった。
さすがに、この世界をごみできらめくだとか、そんな風には評価はしないけど。
『ずっとそばで 笑って いてほしい』
そのフレーズを聴き、胸の奥がざわついたのを覚えている。
あえて言えば、そのざわつきがきっかけだったのかもしれない。
从 ゚∀从「モララー、コーヒー無くなってるよ」
言われてようやく、お前は気付く。
( ・∀・)「あれ、ぼーっとしてた」
从 ゚∀从「さっきから大丈夫か?」
日付も思い出せない、よくある夏の一日。
ハインはいつものように笑っていて、お前はそれをただ見ていた。
そして「いつも」が積み重なって、お前は彼女を好きになった。
460
:
序章
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 16:02:06 ID:kxRdfcGY0
その不思議な会合は春から夏の間行われていた。
そして一年間、お前はハインを追い求めた。
これは1994年の話。
お前の話。
今でも忘れられない話。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第一章 邂逅 へ続く。
461
:
名も無きAAのようです
:2013/07/07(日) 16:06:19 ID:8mpVoKYg0
おお!続編きたか!
スレはここのままなのか?
462
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 16:09:54 ID:kxRdfcGY0
本日の投下は以上です。
前作、「ブーンは嘘をついていたようです」を支援していただきありがとうございました。
今回の作品はその中の登場人物、モララーの過去に焦点を絞ります。
ブーンたちは全く関係しません。前作未読者用の説明も加えてあるので、気軽に読んでいただければ幸いです。
次回はできれば次の土日に行いたいと思います。
前回のような毎日投下はできません。一週間に1,2回だと思います。
全体では残り15回になる予定です。
書き忘れましたが、冒頭の文はキング牧師の言葉です。
それでは。
463
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 16:11:03 ID:kxRdfcGY0
>>462
せっかく余っているのにもったいないので、ここを再利用します。
いっぱいになりましたら次スレを立てようと思います。
464
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/07(日) 16:11:58 ID:kxRdfcGY0
>>461
安価ミスです。すいません。
465
:
名も無きAAのようです
:2013/07/07(日) 16:20:55 ID:8mpVoKYg0
前作とほとんど接点ないんだったら次スレ立ててもいいと思うんだけど、まあそのつもりなら。
週一だろうと投下が見込まれるなら大歓迎だわ。とりあえず乙
466
:
名も無きAAのようです
:2013/07/07(日) 16:29:38 ID:pWOOfn8s0
続編待ってた
乙
467
:
名も無きAAのようです
:2013/07/07(日) 20:21:02 ID:BevsE2b6O
やっと戻って来たか、待ってたよ
それと同時に俺以外の書きこみが多いのに驚いたよ
468
:
名も無きAAのようです
:2013/07/08(月) 00:04:35 ID:y1fdLk8c0
今全部読んで面白すぎすごい…
週一とかはやいほうだろ楽しみにしてる!おつ!
469
:
名も無きAAのようです
:2013/07/08(月) 00:36:19 ID:g/7m87nw0
待ってたよ!乙!
これからの楽しみが増えた!
470
:
名も無きAAのようです
:2013/07/08(月) 03:11:07 ID:K.j1q/8.O
ω・)いまごろキターwww
471
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/08(月) 13:59:04 ID:pKdTLMKc0
投下はまだですが、ご報告を。
Boon Roman様がさっそく今作もまとめてくださいました。
どうやら前作もまとめられていたようで、当時は気付かなくてすいません。
本当にありがとうございます。今回もよろしくお願いします。
472
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:30:50 ID:nB57iS0A0
投下始めます。
473
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:32:44 ID:nB57iS0A0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
【備考】
K大学在籍中。
从 ゚∀从……高岡ハイン
【備考】
474
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:34:21 ID:nB57iS0A0
1993年 12月15日――
冬の夜の冷え込みは日に日に強くなってきていた。
ましてや海辺なんて、この寒さで気軽に出歩くような場所では無い。
空気は澄んでいて、夜の闇が港を包む。
月明かりはよわよわしい。しかししばらく暗闇を歩いていれば、物を識別するのは容易になった。
モララーの目には今、二人の黒服の男が映っている。
一人は背の低く弱弱しそうな男、見た目はごく普通のサラリーマンだ。
背が高くずんぐりした、おそらく、男。こちらのスーツは強めのストライプが入っており、只者ではない雰囲気がある。
本来、モララーは背の低い方の男を尾行していた。それが彼の仕事だった。
背の低い男がへこへこと頭を下げている。
ストライプの男はそれに応えもせず、ただゆっくりと、その片手にもった鞄を掲げ、何事かを話した。
声のトーンからして、やはり男で間違いないようだ。それも多分、この国の人間ではない。
これはいよいよ怪しい現場に遭遇してしまったようだ、モララーはそう思った。
475
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:35:37 ID:nB57iS0A0
モララーはとある事情から探偵のようなことをしている。
今回、モララーはある女性からの依頼を受けて行動している。その女性とは、背の低い男の妻である。
その女性が言うには、最近夫の挙動がどうも怪しいとのことで、何をしているのか気になるから調べてほしいというものだった。
浮気調査とは言わなかった。夫はそんなことする人ではないとその女性がはっきり言っていたからだ。
だからこそ、挙動不審さが目立ったのだとか。
モララーはとりあえずその夫の素行を調べることにし、その結果が今暗がりの中で展開されている。
怪しい場所で、怪しい異国の大男と、怪しげな取引をしている。
モララーは段々と落ち着きを取り戻してきていた。
そもそもこの光景を見た瞬間にショックを受け過ぎたのだ。
冷静に考えた。怪しい取引を目の当たりにしている自分。
身体はほとんどコンテナの陰に隠れているが、それでも危険な状況には変わりない。
そう、自分は危険な状況にある。
きっとこのまま深入りすれば碌な目に合わない。
476
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:36:49 ID:nB57iS0A0
結論が出たとたんに、モララーはどっと汗をかいた。
逃げなくてはならない。
仕事はもうすんでいる。お宅の夫はこれこれこういう怪しいことをやっていました。あとはご家庭の問題ですと奥さんに伝えればそれでいい。
わざわざ事件に首を突っ込む必要もない。
モララーは音をたてないように慎重に、ゆっくりと、身体を180度回転させた。
頭の中は、この港に置かれたコンテナ群をどう走り抜けるかでいっぱいだった。
しかし余計なことを考えすぎていたためか、自分と誰かの目が合っていることに気づくまでに時間が掛かってしまった。
顔は良く見えないが、雰囲気でわかる。
この男はあのストライプの男の仲間だ。
顔が見えないのはフードを被っているせいもある。寒いからだろうか、それにしても目深にかぶりすぎだ。
唯一見える耳元と鼻に、銀のピアスがある。
モララーが走り出すのと、その銀ピアスの男が叫ぶのはほとんど同時だった。
モララーは男を突き飛ばして、コンテナ群を駆けぬけた。
477
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:38:44 ID:nB57iS0A0
走り抜けるルートは想定したとおりにはいかなかった。
人影が見えるたびに、モララーは走る道を変えた。
そのたびに聞き慣れない叫び声をきいたが、それがどこの国の言語かも確認している暇などなかった。
付き合ってられるか、こんなの。モララーは口にも出してそう言い続けた。
とにかく逃げる。遅れてしまえばつかまってしまうだろう。そうなったらどんなことになるか。
想像している暇すらない。
相変わらず叫び声が聞こえてくる。
確かにかなりの人影を目撃している。たまに至近距離で遭遇してしまい、慌てて突き飛ばすこともある。
無抵抗のままですんでいるのは運が良かったからだろう。
全力で暗闇を走ってくる男相手に、対処できる人間などそうそういなかった。
それにしても、果たしてこんなに叫び声が聞こえるほどに人と出会っただろうか。
疑問を浮かべたのとほとんど同じ頃合いで、モララーはとうとう足を止めた。
目の前に赤々とパトランプの光が届いている。
もう数メートル先に、パトカーが数台停まっていた。
478
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:39:48 ID:nB57iS0A0
何故パトカーがそこに来ているのか。自分は呼んだ憶えなどない。
だがそんなことはどうでもいい。自分が助かる可能性が目の前に転がっている。
すぐにでも助けを請わねばならない。立ち止まっている暇などない。
安堵から動きをやめていた足をもう一度奮い立たせ、モララーはまた力強く足を踏み出す。
しかしその足がしっかり地面に定着する前のことだ。
横のコンビナートが鋭い音を響かせる。
こんなのテレビドラマの中でしかきいたことがない。
銃声だった。
耳にやかましい声も後ろから聞こえてくる。
たとえ言葉はわからなくても、そこに声に乗せられた意味はよくわかった。
動いてほしくないのだろう、わかってる、動きたくもない、モララーは顔をひきつらせた。
後ろから足音がする。どうも背後にいる人物が近付いてきているようだ。
彼はなるべく意識を後ろから遠ざけた。
目線は前のパトカーに集中する。
中に誰も乗っていないのだろうか。銃声が響いた時も何の動きも無かった。
目を凝らしたいが、暗闇に馴れた目にパトランプの明滅はきつく、識別しにくい。
だがどうにも人の気配はしない。
パトカーに乗り込んでいた警察の方々は、この非常事態にどこへ行ってしまったのだろう。
479
:
名も無きAAのようです
:2013/07/13(土) 15:41:22 ID:2IbjZVMs0
今boonroman 見て気づいた、、、お帰りーまってたよー
480
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:41:57 ID:nB57iS0A0
彼はいくつか非難の言葉を思いついたが、冷静さをもたせるためには効果が薄かった。
何せ足音は段々と大きくなってきているので、意識の反らしようがなくなってきていたのである。
ああ、どうしてこんなことになっていしまったのか。
あの依頼のせいにしてもいいだろうか。依頼を受けたのは先週のこと、ここまで男の素行を調べるのに時間をかけた。
男は至って平凡な人生で、事実今日までのほとんどの時間は仕事と家と、通勤とにつかっていた。他には何もない。
今日何かあると思ったのは、明らかに今日の彼がいつもと違ったからだ。
いつも以上にそわそわしていた。しきりに時計を確認し、何度もメモ帳を確認していた。
貧乏ゆすりもいつもの倍の頻度で行われていたし、目線は常に泳いでいた。
そして、何より、何故か彼は今日だけいつもと違う鞄を持っていた。
そう、先程の現場で大柄な男が持っていた鞄、あれは小柄な男が渡したものだ。
その鞄はとても怪しかった。何故ならば――
思考は、再び乾いた破裂音で途切れた。
しかも一度だけでは無い、三発ほど連続して発射音が聞こえて来た。
481
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:44:41 ID:nB57iS0A0
なにが起こった……
どうも彼が固まって今日一日の反芻をしているうちに、背後の状況が激変したらしい。
足音はもう聞こえない。大丈夫だろうか、振り向いてもいいのだろうか。
その疑問に答えるように、ひとつ聞き慣れない声が聞こえてきた。
「いいぞー、もう動いても」
金縛りが解けたような感じをモララーは受けた。
押し出すようにして溜息をつき、肩を落とした。
思った以上に自分の心臓が早鐘を打っていることにモララーは気付いた。
身体というものは正直にできているようだ。
呼吸を整えてから、モララーは振り返った。
目に映ったのは、にやりと笑った女性だった。
歯を剥き出しにした獰猛そうな笑顔。
そしてその服は確かに、警察のものだった。
482
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:45:54 ID:nB57iS0A0
从 ゚∀从「逃亡お疲れ様。もう安心していいぞ。
あんたを追ってきていた奴らは全員、のしておいたから」
のしておくなんて、随分と簡単な言葉を使うものだ。
彼はそう思ったが、ふと彼女の背後に目をやると、もののみごとにのされている男たちが目に入った。
ぴったり三人、先程の銃声と同じ。
( ・∀・)「お、おいあんたそこの奴ら……」
从 ゚∀从「ん? あー、大丈夫。死んじゃいないよ。
銃で脅したら勝手に慌ててたから、ちょっと痛い目に合わせただけさ。
あんたには平気で銃を向けてたのにな、自分らに向けられるのは苦手だったんだろ」
何がおかしいのか、彼女は高らかに笑いだす。
モララーはどうしていいかわからず、顔を引きつらせるしかない。
483
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:46:51 ID:nB57iS0A0
从 ゚∀从「さてと、ちょっと来てもらってもいいかな」
( ・∀・)「へ?」
なんだかすごく間抜けな声を出してしまったと、心の片隅で彼は思った。
从 ゚∀从「現場検証だ」
( ・∀・)「い、いや自分関係ないんで」
从 ゚∀从「んー? 助けてやったろー?」
彼女の笑みは止まらない。
それどころか先程よりもさらに口の端がつり上がっているようだ。
まるで悪魔のように。
( ・∀・)「……はぁ」
从 ゚∀从「よし、来い!」
気の抜けた声を肯定と判断したらしい、彼女は彼の腕をしっかりとつかむ。
得体の知れない力強さだ。とてもじゃないがふりほどけそうにない。
観念するしかない。モララーはたどたどしく彼女について行くしかなかった。
484
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:48:42 ID:nB57iS0A0
現場、例の二人の男が話しあっていた場所だ。
警察の方々はどうやら人知れずコンテナ群に紛れ込んでいたらしい。
現場にも数名のがっしりした頼れる方々がいた。
ストライプの男は、隅の方で座っている。
顔に大きな痣が出来ているので、派手に抵抗したのだろう。
今は手錠をかけられて、おまけに何人かの警察官にしっかりと監視されている。
もはや逃げることはできないようだ。
そして小さい男は、倉庫の壁にもたれかかっていた。
从 ゚∀从「状況教えてくれる?」
彼を引っ張ってきた彼女が、近くにいた警官に声をかける。
警官と彼女が話し込んでいる間、彼は小柄の男を観察した。
尾行はしていたが、こんなに間近で見るのは初めてだ。
近寄ればはっきりと、その弱弱しさがわかる。
今はさらに元気を無くし、まるで枯れ木のように壁に背中を当てて呆然としていた。
485
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:49:45 ID:nB57iS0A0
この弱弱しい男に奥さんの話をしてもいいのだろうか、唐突に彼は不安を感じた。
まさか奥さんに疑われていて、彼が尾行していたなんて、今の男に伝えたらどれだけショックを受けることだろう。
とてもその衝撃に耐えられるとは思えない。精神的によくないだろう。
( "ゞ)「……しが……」
不意に何事かを呟く。
( ・∀・)「え?」
彼は少しだけ顔を近づける。
警官と、先ほどの笑顔の彼女の声も止んだ。男が何かを言っているのに気付いたのだろう。
( "ゞ)「私が……やりました」
やった、とは、取引のことだろうか。
男の細々とした口から、再び同じ言葉が繰り返された。
( "ゞ)「私が、やりました。
私がこの取引の首謀者です」
486
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:51:17 ID:nB57iS0A0
从 ゚∀从「んーと、あんたがこの取引をもちかけたってことでいいんだな」
彼女が覗き込むような形で男を見る。
男は一瞬びくっとして、それから慌てるように首を縦に振った。
肯定である。
モララーは違和感を感じた。
何を言っているのだ、この人は。
从 ゚∀从「そうかそうか。いろいろ気になるとこはあるけど、詳しいことは警部補のとこできくよ。
よし、とりあえずこの人を署に連れて行こう」
彼女は傍にいた警官に声をかけた。
咄嗟に、モララーは声を出す。
( ・∀・)「ちょっと待ってください!」
彼女たちが動作を中断するのを横目に、モララーはその弱弱しい男をじっと見る。
男は目をそむけた。反射的に目を反らしたようだ。
487
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:52:06 ID:nB57iS0A0
( ・∀・)「なあ、あんた一つ聞かせてくれよ」
从 ゚∀从「おいおい、何を始めてくれているのかな」
( ・∀・)「気になることがあるんですよ」
さっきまでは気押されていたのだが、今では不思議とあらがえる。
気になることがあると途端に強気になるのが、彼の性分だった。
彼女もそんなモララーの変化に気付いたのか、やや不満げだが抵抗はしなかった。
从 ゚∀从「気になることって?
そういえばまだあんたのことも詳しく聴いていなかったね」
( ・∀・)「ええ、俺は分手モララ―。K大学の学生です」
すると、急に彼女の目が輝いた。
好奇心に駆られた目という表現がぴったりだった。
从 ゚∀从「学生がこんなところで探偵のまねごと?」
( ・∀・)「いえ、探偵というか、活動というか」
モララーは言い淀んだ。
実際なかなか説明しにくかったからだ。
488
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:53:21 ID:nB57iS0A0
( ・∀・)「僕はこの男の奥さんに頼まれて、今日一日この男をつけていました」
モララーは軽く経緯を説明する。
彼女は実にすんなりと聞く側になってくれた。それも真剣な顔つきで。
( ・∀・)「この男は、いつの間にか鞄を持っていたんです」
从 ゚∀从「そこの大きな野郎がもっていたやつか?」
モララ―は頷く。
小柄な男の顔が青ざめるのが見て取れた。わかりやすい反応だ。
从 ゚∀从「いつの間にか……どこで手に入れたかわからないのか?」
彼女は質問をする。
( ・∀・)「はっきりと持った瞬間は見なかったってことです。
彼はおそらく、会社の中であの鞄を手にした。朝の通勤のときに見た鞄と、帰る時に色が変わっていたんです。
だから俺は気になったんです」
どうも敬語に馴れない……心の中でモララーは思った。
彼女の接し方のせいでもある。
彼女の年齢はわからないが、警察官なのでモララーと同じかそれ以上の歳ではあるはずだ。
その彼女は初対面の自分ともかなり近しい距離感で話していた。
489
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:54:07 ID:nB57iS0A0
彼女は暫く考え、それから軽く頷いた。
モララーは彼女を見つめていたことにようやく気付き、少しだけ身を引いた。
从 ゚∀从「もうちょっと言いたいことがあるんだろ?」
もちろん、とモララーはこたえた。
( ・∀・)「この人はここ最近ずっと挙動不審でした。奥さんが怪しんで私みたいな学生に調査してもらうくらいに。
奥さんが言うにはこの人はとても気弱で、浮気さえもできないような人だということです。
そんな彼が今日、このような怪しい場所で怪しい取引をしていた」
( ・∀・)「取引に使われたのはその鞄ですが、それは彼が途中で手に入れたもの。
初めからもっていたのならもちろん彼が首謀者である可能性は高い。しかし彼は会社でそれを手に入れた。
もし会社に隠していたのであれば、ちょっと不自然です」
( ・∀・)「だって、もしそれが大事なものであれば、なるべく自分から離れたところに置かないはずだ。
たとえ離れていても、誰の目にも触れないような安全な場所に置くでしょう。会社だとその危険は大きい。
彼が会社に隠していたというより、彼が会社で誰かから受け取ったと考える方が自然でしょう」
(;"ゞ)「いや、首謀者は私だ」
小柄な男は遮るように言った。言葉の端はしが震え切っている。
490
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:55:21 ID:nB57iS0A0
(;"ゞ)「そ、その鞄は私が友人にあ、預けておいてもらったんだ。
だから会社で受け取ったんだ。それで何の問題もないはず」
( ・∀・)「ちょっと待ってくださいよ」
モララーは首を横に振る。
( ・∀・)「まあ、もし違っていたら僕の恥なんですけどね。
ただあなたの発言が嘘かどうかなんてすぐにわかりますよ。
もしその証言を他の警察に話したら、きっと警察は会社を調査しますよ。いや、その前にあなたを尋問するでしょう。
いったいその相手とは誰だって」
( ・∀・)「その相手を適当にでっち上げたとしても、もちろん会社に聞けばすぐにわかってしまう。
嘘がばれた場合、どうなるんですかね。警察に怒られる? もちろんそれだけじゃないんでしょう?」
モララーはじっと小柄な男を見据えた。
ひとつの確信が生まれていた。
奥さんから気弱な人と言われている男。見た目からして、それは正しいようだ。
今もまだ顔を蒼くさせ、震えている。
そんな彼が気丈にも自分の犯行だと言い張る理由。
( ・∀・)「あなたは恐らく家族を庇っているんだ。違うかな?」
491
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:56:39 ID:nB57iS0A0
言葉を聞くと、小柄な男は目を見開いた。
口をあいたり閉じたり、どうも言葉がすぐに出て来ないようなので、モララーは語りつづける。
( ・∀・)「もし取引の相手にこの失敗がばれたら、家族に危害が及ぶとあなたは考えている。
順番を変えてみよう。もしこの取引の首謀者があなたなら、どうなるか。
犯行はあなたが考えた者となる。あなたに協力した人などおらず、あなたと、そこの大柄な男が裁かれるだけ」
( ・∀・)「でも実際は違う。あなたには必ず協力者がいた。首謀者と言っていいだろう。そしてそいつこそがその鞄を与えたんだ。
あなたはきっとその首謀者から、もし捕まった場合自供するように教わっていたんだ。
さもなければ家族が危険な目に遭うぞ、とでも脅されていたんだろう」
( ・∀・)「でもな、よく考えてみよう。そんなことしても警察はきっとすぐ真実に気づくはず。
そんな脅しに実効性は無い。第一、メリットが無い。殺人だのなんだのはそんな軽くできるもんじゃない。
その脅しは、本当はこの取引の成功率を高めるためだったのさ。そう脅せば、あなたはとにかく成功させようと頑張る、そうだろ?」
小柄な男は微かに呻いていた。
彼が挙動不審だった理由、それはどうしてもこの取引を成功させなければならないというプレッシャーから来ていたのだ。
男の小刻みな頷きが、それに応えていた。
492
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 15:57:44 ID:nB57iS0A0
( ・∀・)「ていうわけです」
モララーは彼女を向き直る。
( ・∀・)「急いでこの男の家族を保護してください。
万が一ってこともありますし。
それからそこのストライプの男とその仲間は絶対逃がさないようにしないといけません」
从 ゚∀从「随分急に喋りが達者になったな」
彼女はにやっとしてモララーを見た。
モララーも確かに、と思って顔を緩める。
从 ゚∀从「もちろん言われたとおりにするさ
あんた、なかなか面白い奴だ」
彼女はそう言って、他の警官に指示を出した。
493
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:00:45 ID:nB57iS0A0
程なくして、現場の状況は把握された。
コンテナ群に潜んでいた連中はやはり異国の人間だったらしい。
あの場にいた全員を確保できたわけではないそうだ。
それでも事件は一段落した。
警察の初動の早さについても深いことは教えてもらえなかった。
ただ、以前より目をつけていたような意味合いのことだけ聞かされた。
何の取引かについても当然、モララーには教えてもらえなかった。
民間人を巻き込むのはさすがに不味かったのだろう。
モララーからわかることは、少しだけ現実離れした世界に入っていたということだけ。
494
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:03:01 ID:nB57iS0A0
モララーは警察署まで同行した。
事情聴取をする必要があったからだ。
大したことは教えてくれないくせに、なんでこんなにと思うほどこってりと絞られた。
彼を絞ったのは彼女とは違い、恰幅の良い警部補だった。
見た目はかなり老けていたが、聴いてみたところモララーと10しか離れていなかった。
(´・ω・`)「ふむ、これくらいか」
警部補がそう呟いたときには、もう夜も更け、朝が目前にせまっていた。
どうもこの人は気に食わない、モララーは疲れで霞む目で警部補を睨んでいた。
从 ゚∀从「ショボンさーん、終わりましたか?」
突然取調室の扉が開いた。ノックすらもない。
ショボンはやや非難めいた眼付で彼女を睨んだ。
(´・ω・`)「ああ、終わったよ」
从 ゚∀从「そいつはよかった。じゃあこの探偵さんはあたしが送っておきますね」
そういうと、彼女はモララーの襟を掴んだ。
495
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:03:46 ID:nB57iS0A0
なんでこんなに急いでいるのか、モララーにはわからなかった。
とにかく彼女はそそくさと取調室を後にする。
モララーが去り際にちらっと見たショボンの顔は、明らかに不機嫌そうだった。
署の出口で、彼女はようやく立ち止まる。
从 ゚∀从「探偵さん、名前、モララーだっけ」
( ・∀・)「え? ええ、そうです」
ようやく首が自由になって、モララーは目を瞬いた。
从 ゚∀从「あたしは高岡ハイン。きっとまた会うと思うから、そのときはよろしくな」
ハインはそう言って、手を差し出した。
握手のようだ。モララーは少し遅れてからそれに応えた。
496
:
第一章 邂逅
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:05:41 ID:nB57iS0A0
( ・∀・)「またって?」
从 ゚∀从「ああ、また」
ハインはにやっとしてそれだけ答えた。
それっきり、後は追いだすようにモララーを外に出した。
急に寒空のもとに押し出されてはたまったものではない。
モララーは非難しようと振り返ったが、すでにハインは引っ込んでしまっていた。
……なんなんだ今日は。
モララーはあまりにも疑問が多くて固まっていたが、寒い北風を感じて身をふるわせた後、素直に帰ることにした。
それが、モララーとハインの出会いだった。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第二章 再開 へ続く。
497
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/13(土) 16:09:10 ID:nB57iS0A0
本日の投下は終了です。
明日の夕方か夜に第三章投下できると思います。
それでは。
498
:
名も無きAAのようです
:2013/07/13(土) 17:40:33 ID:ULUai2Q.0
面白すぎてここまで一気に読んでしまった!
明日の投下が楽しみだー
499
:
名も無きAAのようです
:2013/07/14(日) 00:54:37 ID:HxO5g3Q.O
スレタイは嘘つきだが作者は嘘つきじゃなかった
明日の続き待ってる
500
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:26:45 ID:HwtNlSEU0
感想等のレス、感謝します。
投下します。
501
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:28:50 ID:HwtNlSEU0
と、その前に
第二章のタイトルが誤りです。
×再開
○再会
502
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:29:45 ID:HwtNlSEU0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
【備考】
K大学在籍中。
从 ゚∀从……高岡ハイン
【備考】
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進しないとまずい。
503
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:30:29 ID:HwtNlSEU0
分手モララーには記憶が無い。
彼は1987年の夏に川を流れているところを、分手夫妻に拾われた。
夫妻は元々厭世として山で暮らしていた。
彼らは後にこっそりとモララーの両親と会い、モララーを養子に授かった。
もっとも子どもの頃のモララーはそのことを知らなかった。大学に入った頃からどうもおかしいとは感じていたが。
モララーは某県の南にあるK大学に、兄弟分である分手マスと共に進学した。
分手マスは元々学業優秀であり、加えて彼には経営、物理、工学等様々な分野に対する関心がかなりあった。
モララーはそんな聡明な兄弟分からの指導もあって、県内の有名校に進学することができた。
K大学はキャンパスの中に自然がある。
山で暮らした記憶しかないモララーは都会の喧騒を嫌っていたので、この環境は大いに満足していた。
504
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:32:14 ID:HwtNlSEU0
季節は冬。あの年末の大取り物についてはもう騒がれていない。
いや、実はあの事件は本当に最初から全く騒がれていなかった。
モララーが確認した限りだと、新聞にもほとんどとりあげられず、わずかにニュースキャスターが多少の喧騒があったと紹介しただけだった。
あの発砲や叫び声を喧騒ですましていいものかとモララーは憤り、その時は警察に再度訴えかけようかとも思った。
しかしすぐに、警察から決して広めるなと念を押されたことを思い出した。
だいたい自分でも広めちゃいけないと言っていたのだ。モララーは憤りを誰にもぶつけずにいた。
ただ一人、同居している分手マスにだけは事の次第を話していた。
同居人だから、というのもあったし、彼に限って言えば絶対に知らないところで広められてしまう恐れは無い。
マスに対する信頼は大きかった。
マスはモララーが巻き込まれた事件に対し、疑問を呈していた。
人が危ない目にあったというのに、と文句を言うモララーをよそに、マスは興味ありげに感想を述べた。
その取引は妙に脆弱な気がする。
( ・∀・)「それは確かに俺も思うよ」
モララーも同意見だった。
505
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:33:00 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「なんでわざわざあんなひょろひょろのおっさん捕まえて取引につかったのか。
本当に大事な取引だったら、あんなトリッキーな方法は使わない。確実に物が相手に届く補償なんてない。
まあ、あの取引の詳しい事情も何も俺には全く教えてくれなかったけどなー」
( <●><●>)「首を突っ込むのも憚られるんですね」
そう言って、マスは溜息をついていた。
そうして、何事もないまま年が明けた。
大学の無駄に多い休みが一旦終わり、まるでテストのためだけのように空いた授業期間が始まった。
このテストが終われば今度は春休みである。
モララーはテスト前の最後の熱の入った授業を流し聴きしていた。
そもそも本当は、モララーはすべての単位を取り終えている。
真剣に聞く必要はないので、モララーは軽い気持ちで授業に臨んでいた。
そして頭の中では、やはり事件のことが渦巻いている。
ちょっと日常から離れた世界、なんて表現したら大げさだろうか。
でもそれに憧れてしまうのは人間の性分な気がする、などどモララーは自分なりに納得していた。
506
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:34:14 ID:HwtNlSEU0
彼が探偵に興味を抱き始めたのは、マスの影響が大きかった。
マスと彼が暮らした分手夫妻の山の家には、たくさんの本があり、とりわけ推理小説がやまほどあった。
それらの小説を買い集めたのは分手夫妻であり、元々マスがそれを読み耽っていた。
マスは推理小説に大いに傾倒し、それを新しい家族であるモララーにこれでもかと進めていた。
モララーもそれを必死に読み耽っていた。
記憶が無いという寂しさを埋めるかのようにも見えた。
モララーが探偵業に興味を抱くのにそう時間はかからなかった。
無論、彼は現実の探偵が小説の中のとは違うものだというのはわかっている。
彼は別に小説の中の人物のように活躍したいわけではなかった。
探偵という職業がもつ特徴、それは相手の過去を、真意を探ることだとモララーは思った。
自分の知らないものがどんどんわかってくる。見えていなかったものが見えてくる。
モララーが惹かれたのは、小説の中に描かれるそうした側面であった。
記憶を失った彼が、記憶を紡ぐ仕事に興味を持ったのは、ある意味繋がっていることなのだ。
授業が終わり、知り合いを何人かあしらった。
この時期はモララーのところによく相談が舞い込んでくる。もちろんテストのことだ。
モララーのヤマは当たるともっぱらの評判だった。
情報は金になる。
モララーはこのために授業に出席していた。
507
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:34:58 ID:HwtNlSEU0
人を捌き切ったのち、モララーは満足顔で教室を出た。
从 ゚∀从「やー、大人気なんだなーさすがさすが」
途端に満足げな顔は、衝撃を受けて真顔になる。
声はすぐ隣で聞こえて来た。入口の前で誰かが待っていたのか。
聞き覚えのある声だ。モララーはすぐに振り向いた。
从 ゚∀从「やっほー」
彼女、ハインがそこにいた。
( ・∀・)「……え?」
从 ゚∀从「またって言ったじゃん」
久しぶりにみるにやっとした笑みをみて、モララーはかつて彼女と会った日のことを思い出した。
この一見すると不気味な笑みが、彼女のトレードマークだった。
以前会ったような制服姿ではない。
おそらく私服なのだろう。控え目な色遣いの、まるで大学生のような姿だ。
そしてその胸には、銀のロザリオが煌めいていた。
从 ゚∀从「少し歩くぞー」
508
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:35:39 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「何か話すんですかい?」
从 ゚∀从「ああ、それも人にはあんまり聞いてほしくない話」
( ・∀・)「あんまり怪しいのには巻き込まれたくないなあ」
モララーは率直な感想を述べて、目線を反らす。
それでもハインからは逃げられそうにないことは、なんとなくモララーにはわかっていた。
从 ゚∀从「そうかな、ちょっとは気になるネタを持って来たんだけどな。
あの取引の話とか、聴いてみたいとは思わないかい?」
さすが、彼女はもう俺の特徴に気づいているんだ、モララーはそう思った。
学校の外に出た。
冬の日差しはとても弱いが、幸い風は無かったので歩くのに辛いことはない。
从 ゚∀从「ずいぶんたくさん木があるんだなーここは」
大学の中を、ハインは物珍しそうに観察する。
( ・∀・)「大学の中にしては、珍しいですよね」
从 ゚∀从「まんざらでもない顔だな。あんたも気に入ってるのか」
( ・∀・)「ええ、まあ」
509
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:36:42 ID:HwtNlSEU0
どことなくぎこちないのはモララーにもわかっていた。
正直なところ、どこまで気持ちを緩めていいのかわかっていない。
あの事件の話をするというのなら、それなりに緊張感があって然るべきだ。
しかし、相手のハインには全くそんな小難しい話をしようという気概が感じられない。
从 ゚∀从「枯れ木なのが寂しいね」
きょろきょろと目線を動かしていくハイン。
寒々とした広葉樹の姿を見て、何を考えているのか、モララーにはつかめなかった。
あるいは純粋に景色を楽しんでいるのか。
从 ゚∀从「あの鞄の中身な、クスリだったんだ」
クスリという言葉が、一般的なものではなくことは、語調から伝わってきた。
( ・∀・)「クスリ、麻薬ですか」
从 ゚∀从「細かいことは調査中だけどな。なかなか大きな組織が絡んでいるみたいだ。
あの男の人は気付かないうちに密売人になっていたわけだ」
( ・∀・)「いったい誰がそんなことを」
从 ゚∀从「誰だろうな。会社にもそれなりに影響力があったのかもしれない。
それか、まったく別の誰かが、たまたま会社を舞台として取引を行っていた」
( ・∀・)「目星は付いているんですか?」
从 ゚∀从「いや、別に」
510
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:37:27 ID:HwtNlSEU0
二人はゆっくりと学校を周っていった。
大学の裏には、小高い丘がある。
ほとんど学校に隣接する形で、やや雑多な林がある。
丘はその林に囲まれていた。とはいえ鬱蒼としているわけでもない。
林の中にあるものは外からでもはっきりみえる。小さな神社だ。
そもそも神社の方が先にこの土地にあった。
何十年も前に大学は表れ、神社はまるで押しやられるようにその陰になってしまった。
近代化の波にのまれた、なんて文章は聊か壮大過ぎるだろうか。
モララーはその神社もまた好きだった。
学内の木は、その神社から移したものも多い。よそ者に寛容な神社なのだ。
林の深さは浅いが、都会の騒ぎを遮るには十分だった。
鳥居を潜ると、一対の狛犬が待ち構えている。
ハインはまたもや急にはしゃいで狛犬を眺めに行ってしまった。
从 ゚∀从「はー、犬はかわいいなあ」
狛犬を犬と呼ぶのはちょっとおおざっぱ過ぎる気もした。
511
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:38:22 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「ここを知っていたんですか?」
从 ゚∀从「来る前に外から眺めてたんだ」
そんなに準備して大学に乗り込んできたんだろうか。
俺と事件の話をするために?
腑に落ちない感じがした。
从 ゚∀从「あの取引はな、きっとクスリを完全に届けることが目的じゃなかったんだよ」
ハインがそう言う。
それを聞いて、モララーはマスが先日抱いていた疑問を思い出した。
あの取引は脆弱すぎる。
( ・∀・)「どういうことなんですか?」
从 ゚∀从「予測だけどな、練習じゃないのかなと」
( ・∀・)「取引がちゃんといきわたるかの?」
从 ゚∀从「そうそう、あれだけ届ける主体が変わる方法は相当めんどくさい。
あの方法が本当に成功するかを試しただけだったんじゃないかって、思うんだ」
512
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:40:27 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「……今までも何かしら取引はあった。
だけど新しい方法を使う必要が出てきた。
だから今回の取引で実験をしてみた、そういうことですか?」
从 ゚∀从「おそらく。
あのめんどくさい方法、何がメリットだと思う?」
( ・∀・)「それは、関係者のかかわりあいが薄くなる分、首謀者が分かりづらくなるのかな」
从 ゚∀从「そうだな。責任の分散だ。
果たして、どうしてそんなことをする必要があるのかねえ」
从 ゚∀从「で、興味は湧いてきた?」
突然話が自分のことになって、モララーは返答に窮した。
なにせ図星だった。モララーはまたも目を反らす。
見透かされている感覚もまた同じ。
513
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:41:09 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「何か協力するようなことでも?」
気取っているが、その言葉には大きな期待が隠れていた。
隠し切れていないのが、言った傍から本人にわかっていたから、始末が悪い。
从 ゚∀从「おうおう、ずいぶん嬉しそうだね」
堪え切れなくなって、モララーは噴き出してしまう。
( ・∀・)「そんな顔に出てますか」
なんとかそう応えたが、嫌に震えているため情けないことこの上ない。
从 ゚∀从「おー、わかるわかる」
そう応えるハインの顔も、相当嬉しそうであった。
そのまま、二人は神社を後にする。
寒々とした風が二人を見送った。
514
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:41:53 ID:HwtNlSEU0
場所は学校の傍の喫茶店に移された。
太陽も下降を始め、気温が下がっていく。
外をうろつく人はあまりいなくなってきていた。
从 ゚∀从「実際協力とか、そういう要るかははっきりわかんないよ」
ハインは簡潔に述べた。
从 ゚∀从「ただなんとなく、あんたが知りたそうにしていたから、言ってみた」
( ・∀・)「……えらいあっさりですね」
从 ゚∀从「直感だ直感」
( ・∀・)「うーん……」
从 ゚∀从「刑事の勘」
( ・∀・)「いや、言葉を変えればいいってもんじゃないですよ」
とはいえ本当にハインには理由がなさそうにみえた。
そう繕っているのか、どうか、わかりにくいだけのようでもあった。
515
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:46:09 ID:HwtNlSEU0
日常とちょっと離れた世界。
この世の隠された真実。
陳腐な言い回ししかぱっと思いつかないのがモララーはちょっと悔しかった。
でも、そういう隠れた真実の香りを味わうのが楽しいのもまた事実だった。
それが自分の特性、そうモララーは思っていた。
理解した上で、それでもその欲求を満たしたい。
モララーが探偵のまねごとをやっている理由の根底にも通ずるものだ。
ハインはそれを理解している。
理解して、試そうとしている、モララーにはそう思えた。
もっとも、ハインの真意など本当に読めない。
ハインのことを、自分を操るちょっと性の悪い女と評価するにはまだ早すぎた。
モララーとて最初からそんな疑心暗鬼で生きていたくもない。
あくまでそういう可能性もある、として想定をしたまでだ。
从 ゚∀从「探偵さん、とにかくね、あたしはお前に情報を与えてみるんだ。
それがきっと良い結果に繋がる、そんな予感がしたんだ」
516
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:46:58 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「情報、ですか」
从 ゚∀从「そう。それだけ。
将来的にあたしがあんたと協力するか、あるいは利用するか、それはわからない」
モララーは少し驚いた。
モララーを利用する可能性についても、ハインがあっさりと言及したからだ。
普通相手と協力したいときは、なるべく相手の機嫌を損ねたくない。
だから操るなんていう不穏な言葉は出てくるはずがない。
しかしハインは隠さなかった。
そのことが逆説的に、ハインに悪意が無いことを示していた。
( ・∀・)「本当に賭けなんですね」
思ったことがそのまま口をついて出た。
言いながら、ハインに対する疑いが薄くなるのも感じていた。
ハインはそれを見てとったのかはわからない。でもちょっとだけ満足そうな笑みを浮かべていた。
いろんな種類の笑い方をする女だ。
モララーはだんだんと余裕を感じてきていた。
自分にとって害がない人ならば、仲良くなってもよさそうだ。
どことなく相手を自分の手中に収める感覚を感じ、モララーは心の隅でにやけていた。
人の謎を追求するときは、多かれ少なかれこういう感情を伴う。
モララーはそれをわかっていたし、あまり良い感情でもないことは理解していたが、止めることはできなかった。
そう、思っていた。
517
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:47:49 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「探偵さん、率直に言ってあたしはあんたを碌でもない奴だと思ってるよ」
( ・∀・)「え?」
虚を突かれて、モララーは目を瞬かせる。
今まで止めることができないと思っていたものが、急にとまる。
从 ゚∀从「あたしはごまかせないよー」
そのとき、注文していたコーヒーが運ばれてくる。
ホットコーヒーの深い香りが、徐々に空間を満たしていく。
モララーがコーヒーを飲むようになったのはつい最近のことで、だからその香りもまだまだ馴れていない。
从 ゚∀从「あんたはまだ子どもだよ」
モララーは一瞬、何を言われているのかわからなかった。
咎めるようなコーヒーの香りと相まって、見えない壁をハインに感じた。
途端に、ハインの笑みが別のものに見えてきた。
意図的に変えたそぶりはない。
それでも、さっきよりもずっと不気味なものにモララーは思えた。
さっきまで抱いていた親近感は急速に遠ざかっていく。
518
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:48:30 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「どうも上から目線というか、大人ぶっているというか、そんな印象を受けるんだよな」
警戒心と羞恥心の入り混じった感情が湧きあがってきた。
複雑な感情を表現できるほどに、顔の筋肉は自由じゃない。
結果としてモララーは、顔を引きつらせることしかできなかった。
( ・∀・)「そ、そんな風に見えましたかね〜」
从 ゚∀从「うん」
元気の良い返事が返ってくる。
从 ゚∀从「ひねくれてるな」
さらにハインはモララーに畳み掛けてくる。
( ・∀・)「……」
从 ゚∀从「なんというか、あれだ。
世界は自分を中心に回っているって思ってそう」
モララーは何も言えなかった。
顔が紅潮しているのが自分でも感じ取れた。
実際、自分の抱いている感情をしっかりと分析したことはなかった。
でもこうして他人に指摘されて、こうして反応しているということは
自分でもどこかしら、自分だけが特別だという気持ちを抱いていることの証明ではないだろうか。
519
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:49:19 ID:HwtNlSEU0
モララーは言い返そうとした。
自分だけが、という気持ちを抱く理由だって、ちゃんとある。
でもどう言葉を紡げばいいかわからない。
从 ゚∀从「まあ、若さだよ若さ」
ふと、ハインが気軽に評してくれた。
あまりにも簡単にまとめられてしまった。あっけない。
そう感じると、モララーの頭の中で散々暴れまわっていた言葉たちが、ふっと消えてしまった。
モララーはため息をつく。
空気が変わった。
ハインは以前のような親しみをもった目でこちらを見ている。
( ・∀・)「若さって……ハインさんそんな離れてないですよね?」
从 ゚∀从「社会人と大学生だ」
( ・∀・)「……はぁ」
結局のところ、社会人に精神的にいじられたという感触だけが残っていた。
520
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:50:13 ID:HwtNlSEU0
警戒心が瓦解すると、僅かばかりの恥じらいが奇妙な感情を醸成する。
格が上の相手に対して抱くものだが、尊敬などと呼ぶのは大げさすぎる。
目上に対する親しみと呼んで、果たして区別がつくだろうか。
さっき潰えたばかりの自分勝手な親近感とは性質を異にする親しみだ。
モララーは次第にハインの顔をちらっと見た。
ハインはモララーを責め立てるのに飽いたのか、コーヒーをくるくるとかき回していた。
なんだか気持ちを張り詰めるのにも疲れてきた。
それに、目の前にいる人はそういう気配りが最も必要でないタイプの人だ。
そう思い、力が抜ける。
( ・∀・)「……俺ね、記憶がないんですよ」
唐突に口から言葉が出てきた。
後から思い返せば、それはつまり、自分がちょっと他人と違うと感じる理由だったのだ。
从 ゚∀从「へえ?」
ハインは手を止めてモララーを見る。
再びその眼に好奇心がやどっているのを、モララーは見てとった。
521
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:51:03 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「高校生までの自分の記憶が、すっぽりと」
モララーは自分の記憶の話を進めていった。
今の記憶になってからの話。
ハインは頷いたり、たまに話を掘り下げたりした。
会話の比率は、やや自分の方が多いくらい。話慣れていない事柄だから、相応の難しさはあった。
それでも、自分の中の、真実を追求したいという思いはどうしても説明したかった。
自分自身の過去が謎であることからくる、その欲求を。
実際会話の中でなんどもそのことに触れた。
モララーなりの自己表現であり、信条だった。
ハインはちゃんと聞いてくれた。
从 ゚∀从「今探偵の真似ごとをしているのも、関係はあるのかな」
( ・∀・)「ええ、この話詳しくするとまた長くなるんですが……」
モララーは首を振ったのち、喋り疲れてコーヒーを飲んだ。
もうほとんど残っていなかった。いつの間にこんなに飲んだのか。熱中し過ぎて気づいていなかった。
从 ゚∀从「ようやくあんたというやつが見えてきた気がするよ」
ハインは言う。
522
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:52:01 ID:HwtNlSEU0
モララーは、ハインのその顔が優しそうなのに驚いた。
ハインの笑顔は何度も見たが、どれも過剰で異様な雰囲気を帯びていた。
その点、今彼女が見せている笑顔は、ある意味で普通の笑顔だった。
モララーは暫し呆然として、それから慌ててまたコーヒーカップを口に向ける。
もう中身は無いことを再確認する。
从 ゚∀从「良い考えだと思うよ。ホント」
ハインは自然と口の端をあげた。
もはやおなじみな笑い方だ。
でも、それもどこか優しさを帯びている、柔らかな笑い方だった。
从 ゚∀从「そうだ、探偵さん」
ハインは閃き顔で提案した。
从 ゚∀从「ちょっと寄りたいところがあったんだ。
探偵さんがいるとなお良いから、ついてきてくれよ。割と近いからさ」
523
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:52:46 ID:HwtNlSEU0
冬の夕暮れは短い。
さっき陽が傾いたと思ったら、もう空の端が紫色に染まりつつある。
二人は外に出て、電車に乗り、数駅と離れた場所に移動した。
街からは離れ、集合住宅が立ち並ぶ地域だ。
そこまで田舎というわけでもない、暮らすだけなら不便はしないだろう。
从 ゚∀从「そうそう、気になってたんだけど、敬語使わなくていいよ」
( ・∀・)「いいんですか?」
从 ゚∀从「その方が話しやすいだろ?」
( ・∀・)「まあ……」
確かに、と口に出しそうになって、そこまで言ったら悪い気がする、と僅かばかりの良心が止めに入った。
とはいえハインがそんなこと気にするとはとても思えなかったが。
从 ゚∀从「あたしも普通の大学生気分を味わいたかったなー、あんたみたいに」
( ・∀・)「……結構異端ですよ?」
从 ゚∀从「あたしが普通の大学生活送れると思う?」
確かに、と喉まで出かかって、また良心が仕事してくれた。
524
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:53:28 ID:HwtNlSEU0
ハインはなんで警察官になったのだろう。
ふとそんな疑問が湧く。
冷静に考えて、自分と同じ年代の警察官をあまり見たことが無かった。
ハインの年は近いのだろう。ほとんどモララーと変わらない。
いったいいくつで刑事になれるのか、その点に関する知識はあいにくモララーには無かった。
大学生活に憧れるということは、高卒なのだろうか。勉強する期間を考え、警察学校にも行かなきゃならない。
それでいて現場では他の人に命令できる立場だった。ハインの人柄という面も無きにしも非ずだが。
もし、ハインがモララーと同じ大学にいたら同じ世代にいたのだろうか。
モララーは考える。
ひょっとしたら、毎度自分のところにノートをせびりに来る人たちに紛れていたのだろうか。
いや、ハインにはそんなもの必要はなさそうな気配がある。
接点は会っただろうか。
それ以上を考えるには、まだモララーは、ハインのことを何も知らなかった。
从 ゚∀从「着いた」
ハインが急に足を止める。
ごく普通のアパートの入口だ。
525
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:55:19 ID:HwtNlSEU0
他のと見比べてみても、かなり似ている。知らなかったら見分けがつかないだろう。
ハインはその中を一度も止まらずに来た。
( ・∀・)「ここ、来たことあるんですか?」
从 ゚∀从「いや、初めてだよ」
( ・∀・)「初めて……よく迷いませんでしたね」
从 ゚∀从「確認はしてたんだ。つか、おい敬語」
自分が無意識に敬語を使っていたことに気付いた。
最初に根付いた距離感を取っ払うのはなかなか難しいようだ。
( ・∀・)「……で、どこに連れていくんだ?」
よしよし、というふうにハインは頷いた。
从 ゚∀从「もうちょい内緒な。会えばすぐわかる」
二人はエレベーターで目的の階まで登っていった。
西日が強い。もうじき最後の輝きを見せて、消えるだろう。
辿り着いた扉の表札を見て、モララーは思い当たる。
526
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:56:07 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「これって……」
从 ゚∀从「思ってる通りだよ」
ハインはそう応えて、呼び鈴を押した。
挨拶の声。やはり聞き覚えがある。
すぐに扉は開いた。
( ‘∀‘) 「……あら、あなた相談事務所の」
女性がモララーを見て、きょとんとした。
彼女こそ、モララーに夫の挙動不審の原因を調べてほしいと頼んだ、奥さんだった。
モララーは軽い会釈をする。
( ‘∀‘) 「どうかしました? お金の方はちゃんと振りこんでおきましたけど」
不安そうな声を出すものだから、モララーは慌てて否定した。
( ・∀・)「いえいえ、それは大丈夫です!
今日はただ、その、寄ってみただけというか……」
527
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:57:04 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「あたしが連れて来たんです。奥さん」
ハインが言う。
奥さんはその姿を見て、あっと驚いた。
( ‘∀‘) 「刑事さん! お久しぶりです。その節は大変ご迷惑を」
深々とお辞儀する奥さん。
ハインもまた深く頭を下げて、「もういいんですよ」と言った。
从 ゚∀从「それよりも、今の生活、不自由ありませんか?」
( ‘∀‘) 「いえ。本当に、警察の方が大変気を配ってくださったものだから。
突然引っ越すことになったのは驚きましたけど」
( ・∀・)「引越し、ですか」
从 ゚∀从「そう、あのまま同じ場所にはいれないだろ」
そうか、警察はそこまで配慮してくれたのか。
確かに、いかに身を守るといっても、相手の正体がつかめないままでは、とどまっているのはまずい。
報復は何度でも来る可能性がある。そうなればまともな暮らしはできないだろう。
場所を移動するのは安全だし、この街なら暮らすのにもそこまで不自由じゃない。
528
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:58:10 ID:HwtNlSEU0
話を聞くと、どうやら夫の方も新しい仕事場に就いたそうだ。
そしてこの新しい居住場所も、怪しいことがあればすぐに警察に連絡が行くシステムになっているらしい。
この夫婦の新しい生活を支えるために、様々な手段がなされていたのだ。
( ‘∀‘)「生活のこと、ずっと不安でした。
子どもにも普通の生活を送ってもらいたいし」
( ・∀・)「お子さん、ですか」
( ‘∀‘)「ええ、まだ小学生になったばかりの。
あれくらいの年齢って、ちょうど世間体もわかりだしてくる頃ですし。
こういう話題に左右されてしまうとすごくかわいそうだったんで……」
( ‘∀‘)「本当は子どもにとってもあんまり動かない方がいいんでしょう。
でも主人のことも考えたら、生活をガラッと変える必要がありましたから。
それであの人が守られるなら、構わないですけどね」
奥さんはふふっと笑う。
そうか、モララーはあの事件の記憶を思い起こしていた。
自分があの小柄な男のことを無実だと思ったのは、この奥さんの態度からだったんだ。
529
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 16:59:02 ID:HwtNlSEU0
自分は直感で無実を前提に考えたからあの男の本当の気持ちに気付いた。
でも、自分が気付いたのはもっと深いものだったのかもしれない。
自分が守ったものは案外大きいのかもしれないと思うと、気持ちが高揚した。
奥さんと別れてから、ハインと一緒に帰路についた。
空はもうとっぷりと黒く、星が遠くに見えている。
寒さは強くなる一方で、帰宅への歩みを速めていた。
今は駅前、モララーはバスを待っている。
ハインはバスに乗る必要はなかったが、そのときまでモララーと一緒にいることにしたらしい。
从 ゚∀从「気に入った?」
ハインが突然、感想を聞いてくる。
( ・∀・)「……まあ、ああして結果どうなったか知って、良かったら、嬉しいな」
たどたどしい応えだったが、ハインは満足したらしい。
530
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:00:21 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「いつもこうなるとは限らないんだろうけどなー」
ハインはそういって、空を見上げていた。
( ・∀・)「どういうことだ?」
从 ゚∀从「へへ、内緒だよ」
反応は速かった。
それだけで何かを推し量るのは無理だ。
ハインはなぜこの場所に俺を連れてきたのだろう。
ふと、モララーは思った。
从 ゚∀从「内緒」
もう一度、ハインが言う。
目線がモララーと合った。
モララーの方が、背が高い、
目線は自然と角度をおび、ハインがやや上目遣い。
でも、その目の力強さは変わらない。
( ・∀・)「そう、か」
内緒か、ならしかたない。
口には出さなかった。
言ってから、少しだけ、頬が熱気を帯びるのを感じた。
531
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:01:18 ID:HwtNlSEU0
モララーは目線をそらし、時計をみた。
もうじきにバスがくる。
从 ゚∀从「まあでも、あんたは本当に良い奴だよ」
ハインの言葉で、またモララーは目を向ける。
今度は相変わらずのハインの笑顔が見えた。
从 ゚∀从「あの現場であの旦那さんを庇った時からそう思った」
( ・∀・)「え? そうなの?」
从 ゚∀从「本当だよ。
でなきゃ、今日一緒に歩いたりしないさ」
( ・∀・)「良い奴ねえ」
急に、ライトが向けられる。
バスが来たらしい。
从 ゚∀从「きっとまた会いにくるよ」
ハインはそう言った。
532
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:02:53 ID:HwtNlSEU0
( ・∀・)「大学また休みに入っちゃうけど」
从 ゚∀从「それでも会うよ」
どきっとした。
突然だった。
なんでハインがこんなことを言ってくるのか。
そして自分の心臓が、なんで急にその存在を主張し始めたのか。
( ・∀・)「なんでさ」
从 ゚∀从「……へへ」
モララーはバスを見ていた。
もう数メートル先。減速をはじめている。
数秒後、あのバスは止まる。
なんでだろう。
できれば、バスに速く来てほしい。
そんな臆病な心が顔をのぞかせる。
533
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:04:04 ID:HwtNlSEU0
从 ゚∀从「モララー」
ハインが呼んだ。
モララーは逆らえるはずもなく、すぐに向いた。
自分でも驚くほどすぐ。
臆病な心のすぐ下で、期待していた自分がいた。
暖かい感触が唇に触れた。
一瞬のことだった。
534
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:05:55 ID:HwtNlSEU0
目を瞬かせて、事態を見つめ直す頃には、もう何も残っていなかった。
从 ゚∀从「会うよ」
ハインがにやっと笑った。
呆然とするモララーは、ゆっくりと、自分の心臓が早鐘をうつのをのをひしひしと感じていた。
そのときのモララーには、ハインのその笑顔の下に何を考えているのか、知る由も無かった。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第三章 図書館、パソコン、カツカレー① へ続く。
535
:
第二章 再会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/14(日) 17:15:58 ID:HwtNlSEU0
本日の投下は終了です。
長くなるので目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
次回はまた次の土日。
二日かけて第三章を投下しきろうと思います。
ご意見ご要望等ありましたらどうぞ。
ただ、作品の内容そのものに関するものは答えられないことも多いです。
それでは。
536
:
名も無きAAのようです
:2013/07/14(日) 18:33:34 ID:GWaKnn7Y0
おつ
ハインいいキャラしてんなー
楽しみにしてる
537
:
名も無きAAのようです
:2013/07/15(月) 08:15:02 ID:Q.JZE.SY0
乙
538
:
名も無きAAのようです
:2013/07/16(火) 00:00:17 ID:T8duNe4kO
続き、はよっ!
539
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:37:26 ID:kef0s2oI0
投下します。
540
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:38:34 ID:kef0s2oI0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。法学部。
探偵の真似ごとをしている。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
モララーに好意を寄せる?
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
541
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:39:26 ID:kef0s2oI0
会場にいる人々の顔はやつれている。
まだ春になったばっかりだというのに、雰囲気はまだまだ冬のようだ。
モララーは周りを観察する。
ここにいる連中はたぶん、ほとんどが自分の一つ下だ。
同い年もまだいるのかもしれない。
でもどんどん数は減っていくだろう。
そもそも数年前ならば、この時期に人が集まること自体、おかしかったのだ。
いつだったか、マスが言っていた言葉を思い出す。
これからは氷河期がくる。
経済は悪化し、何人もが枠から外れる時代がくると。
周りを見回しながら、言いえて妙だと思う。
どいつもこいつも、とても温かみのある表情ではない。
なんで自分がこんな目に、そんな顔をしている。
ここはとある企業の説明会だった。
542
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:40:42 ID:kef0s2oI0
別に企業の名前に重要な意味があるわけでもない。
ちょうど時期が空いていたから来てみただけ。
名前も知らなくていいようなひとつ。
モララーにもそれはわかっていた。
でも、来なくてはならない。
だって、そうしないと不安だったから。
粗方説明が終わり、お昼頃には開放された。
モララーは薄暗いホールから出て、エントランスのソファに座る。
今日は別に待ち合わせはしていなかった。
ただ疲れただけだ。
一時間半も、目を凝らして、しかつめらしい男の顔を見ていた。
話自体があまりにもありきたりだから、聴く意欲もわかなかった。
日本がどういう状況か、この会社は何を目的としているか、どうしてその仕事が素晴らしいのか。
どこだって言うことは同じだ。
まあ、それすら言わなかったら、それはそれで怪しいところなのだけど。
543
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:41:43 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「あの、すいません」
突然声を掛けられて、モララーは振り返る。
はて、だれか知り合いでもいたのかなと思いつつ。
見てみても、やはり知らない人物だった。
少しだけ癖のある髪に、黒い太い縁の眼鏡。
いかにも気弱そうな青年だ。
(-@∀@)「さっき、あそこの説明会にいた人ですよね?
これ、落としましたよ」
青年が差し出したのは、薄い桃色のハンカチ。
少し可愛らしすぎるそれに、モララーには確かに見覚えがあった。
昔ある女性の後輩からもらったものだった。
( ・∀・)「あれ、落としたかな」
そういえば一度トイレで使ったかな、とモララーは思い出す。
それで拭きながら椅子に戻って、うっかりしまいそこねて下へ落ちたか。
544
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:42:38 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「もしかして彼女さんのですか?」
え、とモララーは首をかしげる。
若干口元を緩めている青年を見て、彼が想像していることに気付いた。
そしてもちろん、それは違った。
( ・∀・)「いやいや、違いますよ」
それからは成り行きだった。
お互いの立場は同じなので、話は続いた。
そうして二人は少し食事でもしようということになり、ホールの外に出た。
東京のとあるビジネス街だった。
ここの食事はどこも高い。
少し電車に乗れば繁華街に出られて、安い定食にありつけたが、さすがにそこまで元気ではなかった。
少しくらい奮発してもいたしかたないだろう。
それに、ひどくお腹もすいていた。
545
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:43:29 ID:kef0s2oI0
比較的安く和食を提供してくれるお店にありつけた。
80年代の曲が流れる店内で、二人は席についた。
(-@∀@)「いやあ、今日は疲れましたねー」
彼の名はアサピーと言うらしい。
(-@∀@)「どうです、そちらは上手くいきそうですか?」
彼が指しているのは全般的な就職活動のことだというのは、話の流れから理解できた。
( ・∀・)「いえ、なかなか……」
(-@∀@)「もうじき今年度も終わりますし。こりゃあ来年も頑張らなきゃですかね」
そう力なくアサピーは言う。
(-@∀@)「まあ一留でなんとかなってほしいものですね」
(;・∀・)「いえ、実は俺は……」
(-@∀@)「あれ」
モララーは言い淀んだが、静かにピースサインをする。
546
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:44:31 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「二、ですか」
( ・∀・)「その通り」
(-@∀@)「いや、なれなれしくてすいません」
( ・∀・)「いや別にいいよ」
とはいえその青年、アサピーはどうも普段からやや緊張している性質のようであった。
たとえモララーが同い年でも、きっと敬語は続けていただろう。
(-@∀@)「しかし二留の人を久しぶりにみました。
数年前は、それこそ変わり種の人しか留年してなかったし」
( ・∀・)「時代の流れってやつですよね。
まったく、先輩たちはいい気なもんだ」
二人の就留生は、かすかに笑い、同時にため息をついた。
料理は意外と速く作ってくれた。
味ももちろん、ボリュームも十分にある。
何よりできたての温かさが、今の二人の身にしみた。
547
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:45:32 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「僕はね、話すのすごい苦手なんですよ」
アサピーが味噌汁をすすりつつ、言う。
(-@∀@)「本当は出版業界に行きたかったんですけどね、どこへいっても上手くいかなくて。
向こうからはよく、もっと個性出して、とか好き勝手に言われましたよ」
( ・∀・)「ああ、なんか言われますよね、それ」
(-@∀@)「個性って、何ですかね。
僕、その時一発芸やれなんて言われていたんですよ。
もうほんとに、そんなのやったことないし、何もできなくて」
( ・∀・)「勝手ですよね……あ、鮭おいしい。
ほら、食べてくださいよ。冷めちゃいますよ」
(-@∀@)「気を遣わせてすいません」
( ・∀・)「謝りすぎですって」
(-@∀@)「いや、ほんとに、いただきます。
……ところで、モララーさんはどこか志望はあったんですか?」
過去形なのが、物悲しい。
548
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:46:36 ID:kef0s2oI0
ふと探偵のことが頭をよぎるが、口にはださない。
( ・∀・)「いやあ、あんまり考えていないんですよね」
(-@∀@)「考えていない? 本当はフリーターになりたいとか?」」
( ・∀・)「社会にとらわれない自由人って意味の?」
(-@∀@)「そうそう」
( ・∀・)「そんなんじゃないですよ。
ただやることが見つからないだけです」
(-@∀@)「そうなんですか。フリーター、かっこよさそうなのに」
( ・∀・)「いろいろと面倒な面もあるらしいですよ。
兄弟の受け売りなんですけどね……」
(-@∀@)「やめてくださいよ、そんな、夢も希望もない。
お、これ茶碗蒸しだったんですね」
( ・∀・)「夢も希望も、ねえ」
549
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:47:24 ID:kef0s2oI0
ぼやーっとした言葉だなあと思う。
このぼやーっとしたものに、いつまで翻弄されるのだろうとも思う。
また溜息が重なる。
二人はそれなりに馬が合った。
連絡先の交換を持ち出してきたのはアサピーだ。
なるほど、社交性が無いわけじゃないんだなとモララーは思った。
話しているときも意外と饒舌だったし、個別で付き合うなら良い人なのだろう。
こういう人間は取材をするときかなり有利なのではないか。
少なくとも一発芸が得意なだけの人間よりは、組織に有用な気がした。
550
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:48:27 ID:kef0s2oI0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
春になってからも、ハインとは会っていた。
春休みの間も、大学の新学期が始まってからも。
モララーとハインは一週間に一度、電話で連絡し合っていた。
それで会うのはひと月に二回ほど。
大抵は平日の昼下がり、K大学の周辺だ。
どうして休日じゃないのかハインに聞いたところ、休日の方が休暇が取りづらいのだという。
それ以上の詳しい事情は聞かなかった。
モララーとしても平日に授業があるわけでもなく、大抵はハインの提案した日付で約束をした。
本当は努力しなければならない時期だ、というのはモララーにももちろんわかっていたのだが。
ハインは最初のうち、あの取引の調査状況を教えてくれていた。
しかし捜査は難航しているため、会うたびに情報量が少なくなっていった。
証拠の隠滅等が綿密に図られており、相当計画的に事が行われていたらしい。
割と大きな組織がクスリの密売に絡んでいるように思われた。
551
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:49:32 ID:kef0s2oI0
それで、話題に困ったらハインは別の事件の話もしてくれた。
もちろん警察官として話してよい範囲の中でだ。
モララーもそれは十分承知していたし、実際の仕事の内容は興味深かった。
ただ、ハインは警官になる以前の話をしようとはしなかった。
意図的に話そうとしていないのか、大した話題が無いのかは判断しかねた。
だけど本人が言いださない限り、追及する必要もないだろう、と思い、モララーは触れずにいた。
モララーからは、記憶が無いため自然と大学の話がメインとなった。
後は、取りとめのない世間話もちらほら。
世の中新しいものが次々と現れてくる。新しい音楽、本、機械、出来事。
急速な経済成長は終わったものの、まだまだ賑やかで、話題には事欠かなかった。
モララーは次第に敬語をやめた。
ハインと同年代であることがわかったし、ハイン自身もやめるように何度も言ってくれていたからだ。
接し方はより自然になっていった。
そうして気付いたころには、会うことが習慣になっていた。
552
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:50:19 ID:kef0s2oI0
ある五月の日、モララーとハインは図書館にいた。
K大学から歩いて十数分にある、県立の図書館だ。
その図書館は、蔵書も豊富だったが、それ以上に静かな環境がモララーのお気に入りだった。
おそらくやかましい人たちがたむろする要素がほとんどなかったからこその静かさだと思われる。
施設の中だけでなく、外にある小さな広場にも、落ち着いた雰囲気が漂っていた。
図書館でモララーは、同居人であるマスから頼まれた本を借りた。
マスはどういうわけだが最近理系の本を借りる。
近頃名前を聞くパソコンに多大な興味があることも聞いていた。
借りた電子工学の本を眺めても、マスが何を考えているのかはわからなかった。
昔から、あらゆる方面に興味がわく男であり、計り知れない人間であることはモララーにもわかっていた。
それでも、なんとなく自分からどんどん離れていくような、そんなさみしさも感じられた。
それからハインとモララーは図書館の広場のベンチに腰掛けた。
広場には枝の広い広葉樹が多く、暖かくなってきたこの時期は木陰を多く作っていくれている。
広場には三体の、文学をモチーフにした石造が置かれ、知的な景観を作り出している。
553
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:51:56 ID:kef0s2oI0
二人は一息ついた。
歩いている途中で、ハインは調査内容を粗方話し終わってしまっていた。
もう硬い話は終わり、これからは雑談の時間だ。
二人はだんだんと口数を増やし、会話を進めていった。
从 ゚∀从「サークル?」
( ・∀・)「そう、サークルにつけた相談事務所が、始まりだった」
話題が、探偵の真似ごとの件になったので、モララーは自分がそれを始めたきっかけを説明し始めた。
( ・∀・)「俺とマスは大学に入るまで山で暮らしていたんだ。
そこで街に出て、アパートに暮らすことになって、そこで気付いた。
普通の狭い部屋でどう料理すればいいのか、いまいちわからないって」
从 ゚∀从「山ではそんなに豪快な料理を毎回していたのか」
( ・∀・)「まあ、まったくわからんってわけでもないけど。
煙とかさ、あんまり出すと警報が鳴ったりするわけだ。
そういうのを何度もしちゃうと迷惑だから、どうしようかって話になった」
从 ゚∀从「ああ、わかるわかる」
( ・∀・)「わかるんかい」
从 ゚∀从「で? 続けて続けて」
554
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:53:07 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「いなくなった飼い猫を探してほしいって、相談だった。
料理サークルに入ってきた新入生、当時新入生だから、今は四年生だな、そいつが相談してきた」
从 ゚∀从「ずいぶん可愛らしい相談じゃないかー」
( ・∀・)「ところがだ、なかなか見つからなかったんだ。
それで俺とマスは意地でも見つけたくなって、学校や周りの住民、お店にも聞き込みをした。
できる限りの大捜索を行った、それでも見つからなかった」
( ・∀・)「結局、その事件は今も未解決。
だけど、俺らが必死に捜査している姿は周りの奴らにたくさん見られていた。
それで一気に知名度が上がった。大学だけじゃなくて、周りの人たちにまで」
( ・∀・)「そこからはあっという間だよ。
口コミに俺たちの相談受け付け仕事が広まっていって、知り合いの知り合いから相談を聞くようになった。
そこでマスが面白がって、ちゃんとした体系を立てた。
専用の銀行口座も作るようにして、まるで副業のように稼げるようにした」
( ・∀・)「そうして、その相談受け付け業が、いつの間にか探偵の真似ごとになっていった。
まあ、その間に境目があるものでもないけど、普通に社会人から依頼を受けたりするようにまで拡大していったんだ。
あの冬の日に関わった事件の、奥さんも、そうしている中で知り合った人だったんだよ」
555
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:54:37 ID:kef0s2oI0
ふっと、背後に何かを感じた。
視線のような、何か。
咄嗟に振りかえるモララー。
しかし何も見当たらない。
そもそも茂みが多い。風も多少あり、草木が揺れている。
从 ゚∀从「どうした?」
( ・∀・)「いや、なんか……」
気のせい、だろうか。
モララーは首をかしげたが、ハインに向き直る。
从 ゚∀从「あれ、でも」
ハインが言う。
从 ゚∀从「サークルに入って、三年目に新入生だった子が、今もう四年生。
てことは、モララーは」
556
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:55:56 ID:kef0s2oI0
ああ、やはりその話題になるか。
モララーは顔をこわばらせた。
でも、観念したように首を縦に振る。
(;・∀・)「六年、です」
なぜだか敬語に戻ってしまう。
なかなか言いにくい単語だ。
从 ゚∀从「あれ、そうなのか」
( ・∀・)「就活留年ってやつだよ」
从 ゚∀从「つまり、仕事が見つからない?」
( ・∀・)「タイミングを逃したというか。
そもそも自分のやりたいことってなんだろうって」
从 ゚∀从「なんだろうって、悩んでいたら、六年生」
( ・∀・)「モラトリアム真っ最中です」
モララーは頭をかく。
557
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:57:11 ID:kef0s2oI0
从 ゚∀从「なんで悩んでるんだ?
あれだけ探偵の真似ごとできるんだから、それを仕事にすればいいじゃん」
( ・∀・)「まあ、それもそうなんだけど……
好きなことではあるけど、仕事にするとどうなのかなって」
それがここ数年、モララーを悩ませていることでもあった。
実際探偵稼業には興味があるし、調べてもいる。
だからその稼ぎが大変であることも知っている。
そもそも自営業の一種なので、安定して仕事があるわけではない。
堅実に生きるためには、いささか不安な仕事である。
( ・∀・)「まあ、ギリギリまで自分で考えようと思ってる。
どうせ探偵をやるにしても、いつ始めても言いわけだし、もうしばらく大学生でいようかなと」
ただ、そうのんびりもしていられないのではないか、ともモララーは感じていた。
大学にいる彼の知り合いは、ほとんどすべてが後輩だ。
もう同じように就活留年をしている人間はいないか、いてもどこか遠くに行ってしまっていた。
それこそどこか就職活動のない遠くの国へでも行ってしまったり。
好景気に就職を逃してしまったのが痛い。
その手の話題は最近ニュースでよく耳にする。
次第に雇用情勢が悪化してくる。ニュースでもそうだし、マスだってそう予言していた。
558
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:58:12 ID:kef0s2oI0
从 ゚∀从「ふーん」
ハインは急に、小さく何度かうなずく。
そのまま顔を、わずかにうつむかせた。
別に何かを隠しているわけでもなく、考え事をしているようだ。
目線が再びモララーと会う。
从 ゚∀从「あれだな、目的が無いんだろうな」
ハインが端的に言う。
从 ゚∀从「探偵は好きだけど、それをやって何がしたいのかわからない、そんなところかな」
( ・∀・)「……うまいなあ」
的を射ている、とモララーは素直に感心した。
好きであることが志望動機とならないことは、モララーにも十分理解できる話ではあった。
人間は目的が無ければ、行動を続けていくことはできない。
モララーが今やっていることは、人から問題解決という目的を与えられて、それを解いているに過ぎない。
559
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 16:59:28 ID:kef0s2oI0
謎を解くことが好きだ。でも、それをして何をしたい?
たとえ面接等のない、自営業の話でも、その目的が思いつかないことが足かせとなっていた。
从 ゚∀从「まあ、目的がないこと自体は悪いことでもないよ、うん。
これからでも見つけていけばいいわけだし」
ハインはモララーから目線をずらす。
なんだか言葉以外の意味が込められている、そんな印象を受けた。
でも、それに言及する前に、ハインはさっと笑顔に戻る。
あまりの変わり身の早さに、モララーは眼を瞬かせる。
从 ゚∀从「ところでさー、探偵さんは何か趣味は無いの?」
突然話題を変えたように感じたのは、気のせいだろうか。
でも、モララーは追求する気分ではなかった。
そうする必要も無かった。
だからごく普通に、質問に受け答えした。
( ・∀・)「趣味か、実は野球が好きなんだ」
560
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 17:00:40 ID:kef0s2oI0
从 ゚∀从「そうなのか! スポーツしなさそうだから意外だなー」
( ・∀・)「基本は観戦だよ。
自分でもよくわからないけど、なんか懐かしいというか」
从 ゚∀从「あれだろ、カキーンって金属バットの音鳴らして」
(;・∀・)「いや」
从 ゚∀从「ん?」
(;・∀・)「金属バットは……嫌なんだ。
なんかこう、生理的に無理というか」
从 ゚∀从「なんだそれ」
ハインが不可解そうな顔をしているのを見て、モララーはなんだか安心する。
よかった、いつものハインに戻ってくれた。
561
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 17:01:23 ID:kef0s2oI0
このような経験が、たびたびあった。
ハインの表情が若干曇ると、モララーはなんとかハインに別の話題を振る。
それで会話は十分に弾む。
ハインも元の楽しそうな顔をする。
モララーはそれを見て安心する。
それが、モララーにとっての正常だったから。
その日も会話は続いていった。
いつもと変わらない、春の日。
562
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 17:02:13 ID:kef0s2oI0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お前とハインの会合は、しばらく続いていた。
お前はその関係を壊したくは無かった。
だから会話をつづけていたし、ハインの顔色も窺っていた。
春から夏にかけて、ずっと。
だって、お前は……
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第三章 図書館、パソコン、カツカレー② へ続く。
563
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 17:05:34 ID:kef0s2oI0
いったん終わり。
目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
>>540-562
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
②は今夜の8時か9時頃になると思います。
第三章は長いめなので三分割してあります。
それではー。
564
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:24:11 ID:kef0s2oI0
テンポもゆっくりだし早めに投下してしまおうと思います。
565
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:25:10 ID:kef0s2oI0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。
相談事務所を開き、探偵の真似ごとをしている。
野球が好き、金属バットは嫌い。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
モララーに好意を寄せている?
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
相談事務所に協力している。
(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。
566
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:26:04 ID:kef0s2oI0
六月、モララーは久しぶりにサークルの部屋を訪ねた。
料理サークルの人に、何か荷物が来ているから見てくれと頼まれたからであった。
料理サークルでは見覚えが無い荷物だから、相談事務所の方の荷物ではないかということなのだろう。
元々その部屋には相談事務所窓口が設置されていた。
一般人と交流するようになってからは、あまり使われていなかったが
それでも相談事務所の物置として、部屋の一角が利用されていた。
そして今、サークルの部屋には大きなクリーム色の箱が置かれていた。
( ・∀・)「……パソコン?」
名前は聞いたことがあったが、実際に目の前にするのは初めてだった。
( <●><●>)「そうなんです」
( ・∀・)「お、いたのかマス。
パソコンの奥で見えなかったぞ」
マスはカタカタと、何事かを行っていた。
キーボードを叩いて何かを入力しているのだろうか。
567
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:27:03 ID:kef0s2oI0
マスはモララーに比べて背が低い。
もっとも、モララーとは血縁ではないわけだし、分手背の低い体質だったのだろう。
ともかくマスは、この当時のパソコンと比べると際立って小さく見えた。
少し高めのテーブルの上に置かれれば、隠れてしまうくらいに。
( ・∀・)「それで、これどうしたんだよ?」
モララーはそういって、パソコンを顎で指した。
( <●><●>)「教授が新しいのを買うといってくれたので、お下がりでもらったんですよ」
( ・∀・)「教授って、お前が仲良くしていたあの人?」
( <●><●>)「そう、物理科の教授さんです」
( ・∀・)「まったく、その交友関係はどこで作ってくるんだか」
( <●><●>)「好きな分野を追求していたら、自然とですね」
( ・∀・)「お前らしいや。
しかしまあ、文系なのによく理系の教授と仲良くなれるなあ」
( <●><●>)「学問そのものが好きなんですよ。
それに、パソコンを使うのに理系も文系もありませんよ」
568
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:28:04 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「お前最近やたらとパソコンのこと調べているよな。
いつだったか、電子工学の本も借りていたし」
( <●><●>)「五月頃ですよね、あのときは借りてきてくれてありがとうございました」
( ・∀・)「いやいや。俺には何が何だかわからなかった。
しかし、これからパソコンがどんどん広まっていくのかな。
なんか扱える気がしないな」
( <●><●>)「慣れですよ。
何もこれを最初から作れというわけじゃないです。
ある程度のやり方だけ知っていれば十分使いこなせるんです」
( ・∀・)「そんなもんかな」
( <●><●>)「たとえば、言葉なんて難しいとか特に意識せずに使っているでしょう。それと同じです」
569
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:29:03 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「言葉……でも英語はすらすらとはいかなくないか」
( <●><●>)「それは、気にしすぎているんです」
( ・∀・)「簡単に言ってくれるね」
( <●><●>)「君は英語話せるようになりたいんですか?」
( ・∀・)「なりたいというか、ならなきゃいけない雰囲気を最近感じる」
( <●><●>)「就職で、ですか」
( ・∀・)「まあ、一応な。就留しているわけだし調べはするよ。
世の中どこでもグローバルって使い始めてきている。
日本にとどまっていたら限界だって急に騒ぎ始めている」
( <●><●>)「そのうち世界中を出張で回る日常がやってくるかもしれないですね」
( ・∀・)「やれやれ」
570
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:30:24 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「ところで、その就職は上手くいきそうなんですか?」
( ・∀・)「え? あ、ああ。そろそろ目星つけなきゃなって」
( <●><●>)「つまりまだ決め手はないと」
(;・∀・)「え、ええ」
( <●><●>)「……ちなみに今年おいくつで」
(;・∀・)「24、ですね」
( <●><●>)「就留?」
(;・∀・)「二年目」
( <●><●>)「……」
(;・∀・)「ねえちょっと無言やめて」
571
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:31:09 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「世の中どんどん厳しくなっていくんです」
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「株価がはじけ、地価がはじけ、不動産が軒並み倒産し、この国にはたくさんの不良債権が残りました。
かつて踊り騒いでいた先輩方は、いったいどこへいったのやら。
とりあえず面接に行けば受かるという就職はもうはるか遠い話です」
(;・∀・)「……マス、さん?」
( <●><●>)「日本だけじゃありません。経済の綻びは世界各地で兆しを見せています。
アメリカでもヨーロッパでも20年もしないうちに不景気の波が発生するでしょう。
それに発展途上国が急速に経済成長させている今、
バブルの再来は容易く予想できるんです」
( <●><●>)「就職はきっとさらに厳しくなるでしょう。
かつて栄華を誇っていた企業は競争の波に飲み込まれ、
人材を確保するのにも厳しい選考を課すようになるんです。
理不尽な要求を繰り返し、本当についてこれる人だけを選別する時代がやってくるんです」
( <●><●>)「きっとパソコンも普及すれば、就職に使われるんです。
情報は氾濫し、やがてそれをまとめる企業が現れ、あることないこと噂を流し、学生を翻弄していくんです。
それはやがて社会問題となり、就職が競争と化し、
失敗した事に対する自責の念から自殺を図る人も増え、やがては政府をも動かざるを得なくなり」
572
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:32:02 ID:kef0s2oI0
・∀・)「ちょっと未来を先読みしすぎじゃないですかね」
( <●><●>)「すいません熱くなってしまいました」
( ・∀・)「いえいえ」
( <●><●>)「で、君はいったい何をやっているんでしょうか」
(;・∀・)「……が、頑張って企業を探すところから」
( <●><●>)「いや、問題はそこじゃないです」
(;・∀・)「え?」
( <●><●>)「実はある方から興味深いお話を伺いまして」
( ・∀・)「…………」
573
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:33:09 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「モララーが最近妙に楽しそうだと」
( ・∀・)「は、はあ」
( <●><●>)「それである日尾行してみたと」
Σ(;・∀・)「は!?」
「そしたらなんだか女性と待ち合わせしていたと」
(;・∀・)「おい誰だその尾行したやつ」
( <●><●>)「答えられません」
(;・∀・)「なんで」
( <●><●>)「守秘義務です」
Σ( ・∀・)「……あ」
( <●><●>)「どうしたんです?」
( ・∀・)「いやなんか、この前図書館で人影をみたような」
574
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:34:02 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「ほう、図書館なんてところもいくんですか」
( ・∀・)「あ、いや」
( <●><●>)「お散歩ですか。いいですね」
( ・∀・)「いやいやそんな滅相もない」
( <●><●>)「ぽかぽかしてますものね」
( ・∀・)「えっと、今は梅雨なんすけど」
( <●><●>)「ですよね。梅雨時にそんな遠くまで散歩なんてしないですよね」
(;・∀・)「……ぐ」
( <●><●>)「結構会ってるんですね。春ごろにはもうすでにですか」
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「いいじゃないですか、ははは」
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「何か言い返すことはないんですか?」
(;・∀・)「返す言葉もありませんので」
575
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:35:03 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「それでは話を続けてもいいですか」
(;・∀・)「どうぞ」
( <●><●>)「その前に、つまりは会っていたのは認めるということですね?」
(;・∀・)「ええ」
( <●><●>)「もう鼻の下伸ばしてでれでれと」
(;・∀・)「は、そ、そんなことねえよ」
( <●><●>)「尾行した方の証言です」
(;・∀・)「だから誰なんだよそいつ」
( <●><●>)「写真もありましたよ」
(;・∀・)「え」
( <●><●>)「というか大学構内でも普通に君らのことを見かけていた人はいましたよ」
576
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:36:01 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「あんまり見かけない女の人でしたけど
まあ誰かと会いに来ていたなら、そういうことかと思って気にすることも無かったと」
( <●><●>)「結構な頻度でお会いしていたみたいですねえ。証言を集めててびっくりしました」
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「どうなんですか。楽しくお会いしてましたか」
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「えっと……」
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「話を聞いた限りだと楽しそうですね」
(;・∀・)「うう」
577
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:37:04 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「本当に」
(;・∀・)「そうですか……」
( <●><●>)「ちなみに君と同い歳の人たちはもうとっくに社会人となりました」
(;・∀・)「え……」
( <●><●>)「もう新入社員としての甘い時期が終わったころ合いです。
最初のうちは、みんな希望を胸に入社し、あんなことやこんなことがしたいと語りあったりしていたことでしょう」
( <●><●>)「ところが現実はそうはいかないのです。
会社組織の中で生きるためには、夢ばかり追うわけにはいかないのです。
そのため人々はいったん絶望を感じます。何もできないんじゃないのかという漠然とした不安です」
( <●><●>)「それでも、身を粉にして働けば何か見つかるかもしれないと
きっと自分なりのやりがいが見つかるはずだと思い直し、会社という存在そのものに意義を見出そうと努力し始めます。
それがちょうど今の時期でしょう。
君の同期はそうやって社会に順応していくんです。良い悪いではなく、成長していくんです」
578
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:38:11 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「モララー?」
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「へんじがない ただのしかばねのようだ」
(;・∀・)「生きてる生きてる」
( <●><●>)「僕は直接人を叱ることが苦手なので遠回しな言い方になっちゃいます。すいません」
(;・∀・)「いやもっとすごい技術身につけてると思うけど」
( <●><●>)「黙ってなさい」
(;・∀・)「はい」
( <●><●>)「身の程を知りなさい」
(;・∀・)「はい」
579
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:39:02 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「今僕は君と同じアパートで暮らしているんです」
( ・∀・)「はい」
( <●><●>)「だいたい君と僕のバイトや相談事務所の収入で生きているんです」
( ・∀・)「はい」
( <●><●>)「割合はどれくらいでしょうかね」
(;・∀・)「俺とマスで4:6くらい、すかね」
( <●><●>)「……」
(;・∀・)「3:7かな」
( <●><●>)「2.275:7.725」
( ・∀・)「細かいな」
( <●><●>)「おい」
(;・∀・)「……すみません」
580
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:40:02 ID:kef0s2oI0
(;・∀・)「ていうか今口調変わりました?」
( <●><●>)「ふふふ」
(;・∀・)「へ、へへ」
( <●><●>)「僕は院生だけど、今年である新興企業の法務部に行くことになりました」
(;・∀・)「お、おめでとうございます」
( <●><●>)「で、今年中には出ていきます」
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「アパート」
(;・∀・)「マジでおめでとう」
( <●><●>)「……」
(;・∀・)「で、出ていくんですねーへー」
581
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:41:02 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「言いたいことわかる?」
(;・∀・)「うん」
( <●><●>)「楽しんでる場合じゃないって」
(;・∀・)「はい」
( <●><●>)「じゃあもう言わないでもわかりますね?」
(;・∀・)「イエス」
( <●><●>)「働きましょう」
(;・∀・)「……はい」
( <●><●>)「と、いったところで就留してるときつい面もあります」
( ・∀・)「? おっしゃるとおりで」
582
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:42:18 ID:kef0s2oI0
( <●><●>)「そこでこのパソコンです」
( ・∀・)「え?」
( <●><●>)「これからは情報化の時代です。
このパソコンを譲ります。もしどうしても方策が思いつかなかったら、僕に言ってください。
そうですね、八月が終わるころ、もう君が切羽詰まってどうしようもなくなったら理由を話します。
パソコンを商機につなげる方法を教えます」
そういうと、マスはパソコンの電源を落とした。
( <●><●>)「このパソコンを入れる箱を教授の部屋に忘れていました。
今から取って持ってくるんです。
必ず君が持って帰ってくださいね」
( ・∀・)「え、こんなに大きいのに?」
( <●><●>)「これでも小さくなってきた方なんですよ」
( ・∀・)「この暑さでこれは……」
( <●><●>)「ちなみに値段聞きたいですか?」
(;・∀・)「やめてください」
( <●><●>)「それじゃ」
583
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:43:02 ID:kef0s2oI0
マスがそそくさと部室の外に出ていく。
モララーはしばらく呆然として、気持ちのおきどころに困っていた。
目の前の箱は何も言わない。
モララーは思考を巡らせた。
とりあえずマスにちくったある方とやらを捕まえたいが、どうしたらいいものか。
マスの交友関係は広い。
特に文系理系の隔たりも無く人と接している。
まさかと思うが教授ではなかろうか。
考えはまとまらない。
部室の椅子で一息つく。
584
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:47:41 ID:kef0s2oI0
部室の机の一つが、そこが相談事務所用に使われてる。
こうした場所を作ってくれるのは、このサークルが寛大である証拠だろうか。
それとも昔トラブルを解決した恩義があるからだろうか。
それにしたって、時間が経っている。
結局は風習みたいなものだろう。
窓の外からじめじめした梅雨の終わりを告げる、暑そうな日差しが差し込んできている。
物憂げな六月の雨とやらはどこにいってしまったんだ。
マスに言われたこと、今年中に自分のやりたいことを見つけなければならないことを考えながら
それでも暑さのため、思考は鈍くなる。
将来に不安がないわけじゃないんだ。
モララーは言い訳がましく自分に言い聞かせた。
自分自身のことを考えると、考えがまとまらない。
いつかハインに似たような話をしたことを思い出した。
結局は目的が見つからないんだ。
いくら自分を見つめなおしても、それが見つからない。
どこかから流行りの歌が聞えてくる。どうせ勝手にカセットテープでも流しているのだろう。
mr.myself
そもそもそいつはどこにいるんだ。
585
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:49:07 ID:kef0s2oI0
ぼんやりした愚痴だけが思い浮かぶ。
それだけ。
まどろみの中、考えるのをやめ、早めに土から出てきた蝉の声だけが耳に残った。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第三章 図書館、パソコン、カツカレー③ へ続く。
586
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 20:53:45 ID:kef0s2oI0
いったん終わり。
目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
>>540-562
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
二時間ほどしたら③を投下します。
それでは。
587
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 22:52:15 ID:kef0s2oI0
本日最後の投下です。
588
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 22:53:48 ID:kef0s2oI0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。法学部。
探偵の真似ごとをしている。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
モララーに好意を寄せる?
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。
589
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 22:55:23 ID:kef0s2oI0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
モララーとマスには、クーという後輩がいた。
いろんな協力者がいたものの、彼女ほど熱心に相談事務所に協力してくれる者は他にいなかった。
クーは農学部の三年生であった。
別に農家というわけではなく、食物に興味があって学んでいるんだと話していた。
特にもやしが好きなのだという。
理由はきいてもよくわからない。
彼女とモララーが出会ったのは、料理サークルだ。
そして、探偵事務所が知名度を上げるきっかけとなった、猫探しの相談をしたのが、クーだったのである。
彼女は食べることが好きだったようだ。
話事があれば、必ず食堂か、外のお店に誘ってくる。
そしてまずは真剣にメニューを眺める。
表情には乏しかったので、本当はどれだけ真剣にかわからなかったけど。
「揚げ物が食べたいんですよ」
その日は外の定食屋だった。
まだ昭和の雰囲気が色濃く残る、賑やかなお店の一席。
590
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 22:57:17 ID:kef0s2oI0
「結構揚げ物食べてない?」
「気温にもよって感触が全然違いますね」
「よく食欲あるな。この暑さで」
「だからこそ良い揚げ方をしたのが食べたいんですよ。
ここはそのあたりの塩梅がしっかりしていると調べはついてます」
「食べ歩いてるなー」
「学生街は競争も盛んですし、調べ甲斐がありますよ。
例えばこのところ駅前のファーストフード店の戦いは熾烈を極めています」
「熾烈て」
「食うか食われるかです」
「そりゃあ、食われるんだろうに」
「あ、面白いですね」
「メニューにくぎ付けでそんなこと言われても」
591
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 22:58:10 ID:kef0s2oI0
AA忘れてたので少し置いてからまた投下します。
592
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:10:48 ID:kef0s2oI0
改めまして第三章③投下開始です。
593
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:11:43 ID:kef0s2oI0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。法学部。
探偵の真似ごとをしている。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
モララーに好意を寄せる?
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。
594
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:12:41 ID:kef0s2oI0
モララーとマスには、クーという後輩がいた。
いろんな協力者がいたものの、彼女ほど熱心に相談事務所に協力してくれる者は他にいなかった。
クーは農学部の三年生であった。
別に農家というわけではなく、食物に興味があって学んでいるんだと話していた。
特にもやしが好きなのだという。
理由はきいてもよくわからない。
彼女とモララーが出会ったのは、料理サークルだ。
そして、探偵事務所が知名度を上げるきっかけとなった、猫探しの相談をしたのが、クーだったのである。
彼女は食べることが好きだったようだ。
話事があれば、必ず食堂か、外のお店に誘ってくる。
そしてまずは真剣にメニューを眺める。
表情には乏しかったので、本当はどれだけ真剣にかわからなかったけど。
川 ゚ -゚)「揚げ物が食べたいんですよ」
その日は外の定食屋だった。
まだ昭和の雰囲気が色濃く残る、賑やかなお店の一席。
595
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:13:51 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「結構揚げ物食べてない?」
川 ゚ -゚)「気温にもよって感触が全然違いますね」
( ・∀・)「よく食欲あるな。この暑さで」
川 ゚ -゚)「だからこそ良い揚げ方をしたのが食べたいんですよ。
ここはそのあたりの塩梅がしっかりしていると調べはついてます」
( ・∀・)「食べ歩いてるなー」
川 ゚ -゚)「学生街は競争も盛んですし、調べ甲斐がありますよ。
例えばこのところ駅前のファーストフード店の戦いは熾烈を極めています」
( ・∀・)「熾烈て」
川 ゚ -゚)「食うか食われるかです」
( ・∀・)「そりゃあ、食われるんだろうに」
川 ゚ -゚)「あ、面白いですね」
( ・∀・)「メニューにくぎ付けでそんなこと言われても」
596
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:14:51 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「よし、カツカレーだな」
( ・∀・)「お前聞いてなかっただろ」
川 ゚ -゚)「モララーさんは?」
( ・∀・)「俺はそばでいいや」
六月も終わりの頃。気温からしてもう季節は夏だと言ってよい。
蝉の声もやかましく、日射しでのんびり歩いていようものなら肌を焼かれる。
オゾン層の破壊だとか紫外線という言葉が出回り始めたころだった。
他愛ない話を軽く交わしたのち、食べ物が運ばれてくる。
( ・∀・)「それで、今日はどんな相談?」
このような質問をするのは、クーが相談事務所の依頼の窓口となっていたからだ。
597
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:15:42 ID:kef0s2oI0
もっとも相談事務所はもともとモララーとマスが勝手に始めていたことだ。
サークルの目的とは違う。本来サークルは和気藹藹と料理を楽しむところだ。
だから、別に協力者を募ったりはしていなかった。
だけど、たまには料理サークルに所属していながら、相談事務所の方の協力をしてくれる不思議な人もいる。
クーもその一人だった。
詳しく聞いたことは無いが、最初の猫探しが未解決ということもあり、その縁もあって協力しているのかもしれない。
クーは何故か顔が広い。
表情は薄いが、裏表があんまりないという意味では接しやすいのだろうか。
とにかく彼女はその顔の広さで、学校中から相談事を集める役回りになっていた。
一般人と交流するようになった今でも、相談の多くはクーが運んで来てくれる。
だからモララーと話すときは、専ら相談事の話だったのである。
川 ゚ -゚)「今日は相談というか、噂話なんですけどね」
( ・∀・)「噂?」
598
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:16:40 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「そうです。
実はですね、農学部の研究棟があるじゃないですか」
( ・∀・)「ああ、あるな」
「あそこにね、出るらしいんですよ」
( ・∀・)「出るって?」
ここで、クーは意味ありげに周りを見回す。
そんな聴かれて困ることでも話すというのだろうか。
クーは手を口元に持ってきて、囁くように言う。
川 ゚ -゚)「幽霊」
( ・∀・)「……」
599
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:17:51 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「きこえなかったんですか?
幽霊ですよ、ゆ・う・れ・い」
( ・∀・)「聞こえてるけど……」
川 ゚ -゚)「農学部生の間で噂になってるんですよ。
夜中に研究で棟に籠っていると、なんだか不穏な気持ちになると」
( ・∀・)「うん」
川 ゚ -゚)「で、突然ラップ現象がおこるんです」
( ・∀・)「ラップ現象?」
川 ゚ -゚)「ガタガタって、壁の奥から音がしたり、なんだりするんですよ」
( ・∀・)「ほおー」
川 ゚ -゚)「そんな噂があるんです」
600
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:18:46 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「老朽化してんじゃないの?」
川 ゚ -゚)「それはそうかもしれませんが」
( ・∀・)「他にも、例えば欠陥工事とか」
川 ゚ -゚)「あー、ありえますね」
( ・∀・)「じゃあ問題はないだろう」
川 ゚ -゚)「いえいえ」
( ・∀・)「ん?」
川 ゚ -゚)「理屈じゃ測れないのが恐怖ってもんですよ」
( ・∀・)「何言ってんだお前」
601
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:19:47 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「とりあえず話を続けます」
( ・∀・)「はいはい」
川 ゚ -゚)「夏休みに泊まりがけで研究しなきゃならなくなりました」
( ・∀・)「……?」
川 ゚ -゚)「私が」
( ・∀・)「……クーが?」
川 ゚ -゚)「そう」
( ・∀・)「ああ、農学部棟へ」
「その通り、さすが飲み込みが早い」
( ・∀・)「ふうん」
602
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:20:47 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「遊びに来ませんか?」
( ・∀・)「は?」
川 ゚ -゚)「研究室へ」
( ・∀・)「あー……怖いというわけ?」
川 ゚ -゚)「はい」
( ・∀・)「怖いから、俺を呼べばとりあえずまぎれるかなと」
川 ゚ -゚)「そうそう」
( ・∀・)「いやでも、他にも人がいるでしょ?」
川 ゚ -゚)「それが、一緒に泊まる予定の子が問題でしてね
寝付きがすごくいいんです」
( ・∀・)「寝付きが?」
603
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:21:35 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「はい。そりゃもう、一部で有名になるくらい凄く寝付きが良いんです」
( ・∀・)「んー、もっと具体的に言って」
川 ゚ -゚)「とあるサークルで合宿に行ったとき、これから花火だーってときにスッと寝ちゃって
てだれの喧しい先輩たちが起こそうとしてもどうにもならず、朝まで起きなかったくらい」
( ・∀・)「ほーう」
川 ゚ -゚)「そんな人と一緒に夜泊まったら
寝てしまって、わたしは一人になる」
( ・∀・)「……」
川 ゚ -゚)「……ヘルプミー」
( ・∀・)「……」
604
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:22:52 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「ミー」
( ・∀・)「すいませーん、水くださーい」
川 ゚ -゚)「……」
( ・∀・)「……どうもー」
川 ゚ -゚)「……ミー」
( ・∀・)「アホか」
川 ゚ -゚)「お、お、こわいんですか?」
( ・∀・)「んなわけあるか」
川 ゚ -゚)「じゃあどうして」
( ・∀・)「めんどくさいだけだよ」
605
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:23:52 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「先輩」
( ・∀・)「うん?」
川 ゚ -゚)「暇でしょう? 夏休み」
(;・∀・)「う」
川 ゚ -゚)「もう友達もみんな社会人ですものね」
(;・∀・)「おう、妙なこと言うんじゃないよ。
つい最近似たようなこと追求されたばかりで」
川 ゚ -゚)「へーそうなんですかー」
( ・∀・)「……」
川 ゚ -゚)「それでも行きたくないなんて、それ以外に何が
……あ。ははあ」
( ・∀・)「なんだよ」
川 ゚ -゚)「さてはまたあの女の人ですか」
606
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:24:50 ID:kef0s2oI0
Σ( ・∀・)「え?」
川 ゚ -゚)「いやね、この前マスさんにモララーがほんとに頑張っているのか調べてほしいと言われまして
尾行したんです」
(;・∀・)「……あっまさかマスが言ってたのって」
川 ゚ -゚)「ふふふ」
(;・∀・)「こいつ……」
川 ゚ -゚)「で、もしかして夏休みの間あの人にずっと会いに行く気なのかなあと。
だから大切な後輩である私を助けにこれないのかなあと、思いまして」
(;・∀・)「さ、さすがにそんな頻繁に会うつもりはねえよ」
川 ゚ -゚)「ほほう、何度かは会うんですね」
(;・∀・)「それくらい……いいだろ」
川 ゚ -゚)「まあ多少はいいんじゃないですかね〜
ちなみにそのことマスさんには?」
607
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:25:47 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「言う必要ないだろう」
川 ゚ -゚)「言えないんじゃないんですか〜」
(;・∀・)「……」
川 ゚ -゚)「就職活動してるって思われなくちゃまずいんじゃないですかねえ」
( ・∀・)「何が言いたい」
川 ゚ -゚)「不利益な情報を流されたくなければ遊びに来てください」
( ・∀・)「……」
川 ゚ -゚)「良い交渉でしょう?」
( ・∀・)「こういうのは交渉じゃない、脅迫というんだ」
川 ゚ -゚)「感性の違いです」
608
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:26:58 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「……1日だけ?」
川 ゚ -゚)「はい、夜に来ていただければ」
( ・∀・)「わかったよ。行ってやるよ」
川 ゚ -゚)「やったーありがとうございます! カツあげますね」
( ・∀・)「いらねえよ」
どうもマスにいろいろ吹き込まれたらしい。。
モララーはクーを見つめながらそう思った。
クーがくれたカツをなんとか胃に収める。
確かに味はしっかりしているし、衣も硬すぎず、サクサクしていておいしい。
クーの食堂調査の精度は正確なようだった。
609
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:27:58 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「モララーさん」
クーがふと、声をかける。
( ・∀・)「ん?」
川 ゚ -゚)「本当にラップ現象って、大したことないんですかね」
( ・∀・)「……さあな。
そういうのが話題になって、調べられたりすると、案外なんでもないってだけだけど」
川 ゚ -゚)「……教授の」
そう言ったところで、クーは急に首を横に振る。
川 ゚ -゚)「いえ、なんでもありません」
( ・∀・)「なんだよ、突然」
川 ゚ -゚)「ちょっと気にしすぎているだけです」
610
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:29:04 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「何を?」
川 ゚ -゚)「心霊現象。
やっぱりそういうのって、よくないこと起こるのかなーっていう目線で語っちゃうでしょ?」
( ・∀・)「そういう現象が起こると、何か良くないことの前触れなのかと思っちゃうってこと?」」
川 ゚ -゚)「そういうことです」
( ・∀・)「んー、そう」
クーの表情は乏しい。
でもどことなく、元気が無い。
モララーも長い付き合いだし、なんとなくクーの機微がわかってきていた。
川 ゚ -゚)「あ」
( ・∀・)「ん?」
611
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:29:53 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「そのハンカチ」
クーがモララーの手を指さした。
モララーはちょうど手をハンカチで拭いていた。
カツの衣とかが軽くついていた気がしたからだ。
薄い桃色のハンカチ。
川 ゚ -゚)「私のあげたのですよね」
( ・∀・)「おう」
川 ゚ -゚)「まだ使ってたんですねー」
( ・∀・)「そりゃあ捨てるわけにもいかないし」
川 ゚ -゚)「猫探しのときに渡したんですから、ずいぶん前ですよ?」
( ・∀・)「何年前だろうと気にしないよ」
612
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:31:07 ID:kef0s2oI0
川 ゚ -゚)「ふふ、モララーさんらしい」
( ・∀・)「え?」
川 ゚ -゚)「何でもないですよー」
( ・∀・)「なんだよ、変な奴」
川 ゚ -゚)「いいんです」
クーが少しだけ明るくなった気がした。
やがて二人は食堂を後にした。
もうすぐ夏が来る。
空には、ややせっかちな気がする入道雲が、高く高く伸びていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
613
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:32:00 ID:kef0s2oI0
バイトはまだ続けていた。
大学一年の時から今まで、アパートの最寄駅の傍の書店で働かせてもらっている。
別に豪勢な書店というわけではない。
どこにでも見かけるチェーン店だ。
六年ともなればもう周りのバイトから随分と慕われている。
若い大学生からすれば存在自体が珍しいのだろう。
おまけに暇なものだから、たくさんシフトを入れることができる。
仕事自体が楽しいわけでもないが、お金は手に入る。
それに本屋という性質上、喧騒が無いのがいい。
夜ともなれば特に。
カウンターの対応をしていたときだ。
本を差し出してきた客を見て驚いた。
( ・∀・)「アサピー?」
(-@∀@)「あれ、モララーさん」
614
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:32:56 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「奇遇だなー」
仕事中なので、会話はほどほどにしておく。
幸いすぐにその日の分の仕事が終わる予定だったので、アサピーには店内で待ってもらうことにした。
七月になりたてだというのに、もう外の気温は暑かった。
それに湿っぽい空気もいやらしい。
外で待たせるのはかわいそうだろう。
やがて今日の分の仕事が済むと、アサピーを見る。
アサピーも気付いたようで、出口へと向かっていく。
モララーはそのあとを追うように外へ出た。
(-@∀@)「住居がこの近くなんですか」
( ・∀・)「ああ、そうだよ。
教えたことは無かったよな」
(-@∀@)「そりゃあまあ、そういうの追求すると変な人みたいですし」
615
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:34:00 ID:kef0s2oI0
アサピーはそういっておどけるが、全体的に覇気が無いのは見て明らかだ。
疲れているのだろうか。
アサピーを駅まで送る。ほんの5分程度の道だ。
モララーにはどこかアサピーから不安定な印象を受けた。
そんなモララーの考えを察したのか、アサピーは真顔になり、そして短く溜息をついた。
(-@∀@)「うまくいってないんですよ、やっぱり」
( ・∀・)「今日もこの近くのビルで説明会だったんです。
でもなんか、もう雰囲気からしてあわなそうというか。
もうそんなこと言ってられる時期じゃないとはわかっているんですけどね」
アサピーはよくしゃべった。
口をあけるたびに、自分がいかにダメなやつかを語る。
よほどひどい目にあったのだろうか。
日ごろのストレスがたまっているのだろうか。
616
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:35:12 ID:kef0s2oI0
(-@∀@)「せっかく必死に勉強したのに、なんなのかなあって、思うんですよ。
ここまで努力してきたのに、たった数年生きた時代が違うだけでこんなに状況が変わるのかって」
( ・∀・)「先輩にでも会ったのか?」
(-@∀@)「ええ、そうです」
そうか、そりゃあ、傷つくだろう。
とは思った。
でもとてもそんなことは口には出せなかった。
(-@∀@)「あまりにも上手くいかないから、どうしたらいいですかねって相談しに行ったんですよ。
そしたら、俺は経験してないからわからんって、あっさり」
(-@∀@)「もうね、不公平だなーって思うんですよ。
言ってもしかたないんですけどね」
アサピーはどこを見つめるでもなく、空中をにらんでいた。
眼鏡が分厚くて、よくはわからなかったが、不安定な印象はますます強くなるばかりだ。
( ・∀・)「アサピー」
(-@∀@)「はい?」
617
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:36:15 ID:kef0s2oI0
( ・∀・)「まさか電車止めたりしないよな」
その言葉の真意をやや考えてから、アサピーは噴き出した。
(-@∀@)「さすがにそこまではしないですよ!」
まだ冗談が通じることに、モララーは一安心した。
(-@∀@)「ただ、誰かに救ってほしい気はしますけどね。
神様でも、なんでも」
( ・∀・)「神様、か」
(-@∀@)「この世は平等なんでしょ? 神様とやらが言うことには」
たいそうな言葉を使う。
でもそのフレーズは頭に残る。
そういえばそんなフレーズの入った歌を最近どこかで聴いたと、ふと思い出す。
( ・∀・)「さてと」
駅についた。
618
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:37:19 ID:kef0s2oI0
モララーはアサピーに手を振る。
( ・∀・)「じゃあな、またいつか会おう」
(-@∀@)「今度は良い知らせとともにありたいですね」
アサピーは力なく微笑んで、それからホームへと向かっていった。
幸い、その後特にアサピーがどうなったという連絡もなかった。
とはいえこれからしばらく、アサピーと会うことはなかったが。
世の中は不平等だ。
あの日アサピーが愚痴っていた内容を集約すれば、つまりそういうことだ。
その点、モララーは否定もできない。
619
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:38:50 ID:kef0s2oI0
そしてそのことにみんなが気付き始めている。
だからどことなく、世間は暗くなってきている。
閉塞感といえばいいのだろう。
昔どこかできいた。
欧米人の心には神様がいる。
たとえ一人になっても、最後はその神様を信じて行動すれば良い。
じゃあ無宗教の自分たちはどうなるのだろう。
モララーはその文章を呼んだ時、別になんとも思わなかった。
きっと現代を生きる人はそれぞれ何かを信じて生きている。
むしろそれが神である必要などないだろう、と。
でも、こうも閉塞感のある世の中では
神にすがりたくなる気持ちもわからなくはないと、最近思い始めていた。
620
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:41:24 ID:kef0s2oI0
七月もだんだんと過ぎていく。
時間の経過はぞっとするほど早い。
夏は深まり、蒸し暑い日々が続いた。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第三章 図書館、パソコン、カツカレー③ へ続く。
621
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:42:10 ID:kef0s2oI0
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第四章 教会 へ続く。
でした。ミスった。
622
:
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/20(土) 23:44:37 ID:kef0s2oI0
目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
>>540-562
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
本日の投下は以上です。
明日は第四章を投下します。短めです。
それでは。
623
:
名も無きAAのようです
:2013/07/21(日) 02:20:22 ID:wavxcPNEO
レス数一気に進んだな、まだまだ序盤みたいだけど
624
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:23:45 ID:Yz9fwqUU0
序盤、というか、第六章までが前半です。
それでは、投下します。
625
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:26:02 ID:Yz9fwqUU0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
交友関係は広い。モララーをよく世話している。
(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。
川 ゚ -゚)……素直クー
K大学農学部在籍中。三年生。料理サークルに所属し、相談事務所にも協力。
揚げ物ともやしと猫が好き。
626
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:28:03 ID:Yz9fwqUU0
/ ゚、。 /「おや、モララーじゃないか」
ある昼下がり、声をかけられた。
大学から少し離れた場所にある、教会の前である。
その男性は教会に通っていた。
といっても、敬虔な信者というわけではない。
( ・∀・)「久しぶり、おじさん。
お店の方は元気?」
/ ゚、。 /「どうだかねえ」
彼の本職は古本屋である。
昔から、大学生向けに小さな書店を営んでいた。
書店は大学通り沿いに構えられている。
( ・∀・)「今日もボランティア?」
/ ゚、。 /「そうだ。暇なんでな。
そちらの方は?」
男性はモララーの隣の人を指す。
627
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:30:27 ID:Yz9fwqUU0
こういう聞かれ方をされると、モララーは少し困る。
友達とも言いづらい。
だから言いよどんでしまう。
そんなモララーを見かねて、彼女は切り出す。
从 ゚∀从「高岡ハインと言います。モララーの知り合い、といえばいいかな」
聞いたことのないくらい丁寧な言葉遣いに、モララーは違和感を覚えた。
別に悪いわけではないのだけど。
/ ゚、。 /「これはどうも。私はダイオード。
モララーとは長い付き合いなんだ」
教会の塀の上で、猫が一声、鳴いた。
( ・∀・)「長いといっても、大学生になってからだけどな」
三人は教会の隣にある公園にきていた。
ちょうど木陰に、木質のテーブルと椅子があったのでそこに腰かけた。
初夏であり、木陰に入れば涼しさも感じられる。
628
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:32:39 ID:Yz9fwqUU0
/ ゚、。 /「それでも、もう6年目だ。
全く、最初からよく古本屋に入り浸っていたよ、君は」
( ・∀・)「本が好きだったんだよ」
/ ゚、。 /「人よりもか」
( ・∀・)「人にもよる」
モララーとハインがこの公園に来ていたのは、まったくの偶然だった。
もう大学の周辺にあるお店や、休める場所は大方回ってしまっていた。
そのため新しい場所を探そうと思い、この教会に思い当ったのである。
キリスト教系の教会であり、かなり前からこの場所にあったらしい。
大学とどちらが古いのか、そのあたりの詳しい事情はモララーはよく知らなかった。
なんにせよ、このあたりまでくる大学生はあまりいない。
ほとんどの大学生は駅と学校を往復して帰宅してしまうからだ。
教会に来るのは、本当のクリスチャンか、社会福祉に興味がある人くらいだ。
ダイオードもボランティアで来ているように、教会にはよく無償の奉仕を行う人たちが来ていた。
教会の管理者が寛容な人のようで、市民の活動にも好意的なのだと聞いたことがあった。
629
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:34:35 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「なんだ、今と大差ないじゃないか」
もうハインは元の口調に戻っていた。
丁寧な口調も短命になったものだ。
( ・∀・)「だから人によるって」
/ ゚、。 /「その人も粗方卒業してしまって」
从 ゚∀从「一人寂しく町をさまよう」
(;・∀・)「おいおい」
/ ゚、。 /「お嬢さん、なかなかわかってるね」
从 ゚∀从「もう半年くらい会ってますからね」
(;・∀・)「酷い話だ」
そう、ハインと出会ってもう随分経つ。
初めて会ったのは去年の冬。
頻繁に会うようになったのは、控え目に見積もっても二月ごろから。
もう春はすぎ、夏が訪れていた。
一年の半分を、モララーは彼女と共に過ごしていた。
630
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:36:52 ID:Yz9fwqUU0
公園の遊具で子どもたちが遊んでいる。
高い楽しげな声が遠くから聞こえている。
公園の遊具を撤去するという動きが最近活発になってきている。
ブランコだとかの整備不良による事故や、幼児の誘拐殺害などが目立ってきたためだ。
とはいえ少なくともこの公園はまだ遊び場として機能しているようであった。
子どもと猫が多いのが、この町の特徴だった。
学生街ということもあり、賑やかさもそれなりにある。
もちろん少子化の噂は聞いているし、その影響で年々人が減っているそうではあるが。
/ ゚、。 /「しかしここでモララーを見かけるとは思わなかった」
ダイオードは心底驚いたようだった。
( ・∀・)「そりゃ、だって、縁がないもの」
/ ゚、。 /「お前さんは悩んだりしなさそうだものなあ。
のらりくらり、口が達者で、何からもひょいと逃げて」
( ・∀・)「聞え悪いこと言うなって」
/ ゚、。 /「本当だろう。一年生の頃からよくしっとるぞ」
631
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:39:48 ID:Yz9fwqUU0
ダイオードは、年齢的には壮年だが、おじいちゃんとは言いきれない。
見た目に清潔感があり、肌にも張りがある。
ただ、実際には一度大きな会社を退職するという経験をしていた。
定年ではない。途中で辞めたそうだ。
理由は深く聞いたことはないが、古本屋に籠っているその姿をみる限り、モララーにはなんとなくその理由がわかる気がした。
ダイオードは大きな企業で野望に満ちて働くよりも、身近な世界を大切にしたいと思う人だったのだろう。
教会に通うその姿を見聞きして、モララーはそう感じていた。
だからこそ、モララーはダイオードの書店に良く通ったのかもしれない。
自分に近い雰囲気を感じて。
/ ゚、。 /「私はね、良くこの教会でボランティアをしているんですよ」
ダイオードはハイン相手に会話を進めていた。
自己紹介の一環だ。モララーはしばらくその会話を聞くことにした。
从 ゚∀从「ボランティア?」
/ ゚、。 /「ええ、読み聞かせているんです。
教会にいる子どもたち相手に、毎週ね」
632
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:42:37 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「今日もその読み聞かせを?」
心なしか、ハインの声が明るい気がした。
いつも話を興味津々で聞く人だというのは、モララーにもわかっていた。
でも今回は、もっと純粋に、声が軽い。
/ ゚、。 /「ええ、ちょうど今日も読み聞かせをしてきたところでした」
从 ゚∀从「へえー、始めたきっかけはなんなんですか?」
/ ゚、。 /「なんでしょうね、あんまり深い理由はないんですよ。
しいていうなら、物を聞かせるのが好きだったからですかね」
从 ゚∀从「聞かせるって、本とか、物語とか」
/ ゚、。 /「いや、それ以前に、人と関わりたかったのかもしれない。
本を通して、いろんなことを教える中で」
从 ゚∀从「……人が好きなんですね」
ハインがそういうと、ダイオードはふっと笑みを溢した。
/ ゚、。 /「つまるところそうなのかもしれないですね。
昔いろいろありまして、人を避けてた時期もありましたが。
それでも人は好き。こういうと複雑ですね。そんなつもりはないのですが」
633
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:45:37 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「なるほど」
そういって、ハインはにやっとモララーを見る。
モララーは不意に自分に向けられた視線に、やや首をかしげた。
( ・∀・)「なんだ?」
从 ゚∀从「いやあ、なんとなく」
にやっとするのを見て、言いたいことはだいたいわかった。
どことなくモララーと似ている、そういいたいのだろうとモララーは思った。
事実、自分でもそう思うのだから、嫌な気持ちじゃない。
人ごみは嫌い、人は好き。
その矛盾する感情は自分でもよく理解していた。
この気持ちはこれから何十年先でも抱いていそうな気がした。
634
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:48:40 ID:Yz9fwqUU0
公園で遊んでいるのは教会に通っている子どもたちかもしれない。
教会に通うのは、近所の子どもの場合もある。親が宗教家だったりすれば、小さいうちに通うこともある。
あるいは、身寄りのない子どもが住んでいたり。
从 ゚∀从「私も教会に通った時期がありますよ」
突然のハインの台詞に、モララーは軽く驚いた。
( ・∀・)「え、そうなの?」
从 ゚∀从「ああ、なんか迷っててさ。いろいろ」
/ ゚、。 /「ほう、迷いとは、いったいどんなことですかな?」
ダイオードも興味が湧いたらしい。
もちろん詮索して、噂話の種子に、とかそういう様子ではない。
あくまで人の悩みを聞くように、優しい態度で聞いていた。
ハインにもそれが伝わったらしい。
話の筋を思い浮かべるためなのか、少しの間上を向いていた。
それから、口を開いた。
635
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:51:43 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「私の両親、あんまり私に優しくなかったんです。
自分のことばかり考えている人たちで、家族っていう繋がりも感じられなくて。
それで、まあ寂しかったんでしょうね。いつの間にか近所の教会に通うようになっていました」
さらっと、ハインは言ってのける。
曖昧な言葉でぼかしているが、わざとなのだろう。
その凝縮された言葉の奥に、随分とたくさんの事情が潜んでいるように、モララーは聞いていて思った。
ダイオードはゆっくりと、申し訳なさそうに首を横に振った。
/ ゚、。 /「そうだったのですか……
ご両親は、今はどうしてらっしゃいます?」
すると、ハインはただ否定した。
ダイオードはその様子を見て、目を見開き、それから「すまない」と詫びた。
从 ゚∀从「いえ、別にそれはいいんです。
元々好き勝手に生きてた人たちが、勝手にクスリに手を出して、勝手に死んだ、そんな話ですよ」
636
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:54:55 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「でも、葬儀のときに、もう二度と話せないんだなって気づいちゃって。
そうしたら、なんだか急に悔しくなっちゃって。
今まで気にしたこともない人たちだったのに」
言葉を丁寧に置いていく、そんな話し方だ。
慎重に伝えようとしていることがわかる。
あまり人に言ったことのない話なのだろう。
初めて人に何かを伝えるとき、人は自然と丁寧な口調になる。
今のハインはまさにそれだった。
从 ゚∀从「そのときになって初めて、両親が可哀想って思ったんです」
ハインはそういって、短く自分の気持ちを表した。
可哀想、なんだかハインが言うには幼すぎる言葉のような気がする。
子どもの頃から抱いてきた気持ちだからだろうか。
モララーはハインを眺めていた。
隣に座っていたものの、距離があった。しかし心理的距離はいつもより短いように思えた。
637
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 20:58:15 ID:Yz9fwqUU0
ハインの横顔はいつもと変わらない。
少しだけうつ向いている、ただそれだけだ。
だけど、いつもと違うハインだった。
モララーには、そのときようやくハインの心の一端が見えた、そんな気がした。
だから質問が浮かんだ。
( ・∀・)「それって、ひょっとして警察を目指した理由?」
モララーは思い付いたことを聞いた。
ハインは多少驚いた様子があった。
モララーの質問を受けて、ハインとしても何か感じたのかもしれない。
从 ゚∀从「まあ、理由の一つなのかもな」
ハインはモララーを見て、ぎこちなく微笑んだ。
( ・∀・)「そんな深い事情があるとは知らなかった」
638
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:01:56 ID:Yz9fwqUU0
モララーは率直に述べた。
从 ゚∀从「まあ、言ってもないし。
言っても楽しい話でもないし」
そういって、ハインは「でも」と話を続けた。
从 ゚∀从「ただなんとなく、どんな人でも生きてるんだなって思っただけ。
それを勝手に奪われるのは、どんな事情でも癪だろうなって」
ハインの過去を、モララーは聞いたことがなかった。
だからそういう感想自体も、モララーにとっては新鮮だった。
親近感というほどでもないが、ハインという人間に迫ることができたと思った。
ハインはモララーから目を離した。
そしてその目線はダイオードに向かった。
从 ゚∀从「読み聞かせ、どれくらい続けてるんですか」
次の話題に移行した。
639
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:05:27 ID:Yz9fwqUU0
/ ゚、。 /「実はな、六年前なんだ」
( ・∀・)「あれ、じゃあ……」
/ ゚、。 /「そう、お前が大学に入学した年からだよ。
だからこそ、なおさらお前のことは印象に残っているんだ」
( ・∀・)「はあ、そう考えると、長い付き合いですね」
/ ゚、。 /「最初に言っただろう。長い付き合いって」
自分が大学生になったころ、初めて赴いた古本屋でダイオードに出会った。
そのときにはすでにダイオードは読み聞かせを始めていた。
モララーはつい、ダイオードがずっと昔から読み聞かせをしているものだと思っていた。
それがモララーにとってのダイオードに対する認識だったからだ。
/ ゚、。 /「今ばかりを必死に見ているから、小さな誤解を招くんだ。
たまには過去を振り替えってみなさい。物事を冷静に見返すために」
( ・∀・)「神父みたいなこと言うなよ。
高尚な話をする柄じゃないだろう、あんたは」
/ ゚、。 /「そうか? まあここの教会の人にはよく会っているからなあ。
通っているうちにうつったのかもしれないな」
640
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:08:09 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「毎週ですものね」
/ ゚、。 /「ああ、そうですね。すっかりここの管理をしている人々と仲良くなってしまった」
ダイオードは楽しそうに言う。
聞いているモララーまでほっとしてしまう口調だった。
本心から楽しいことをやっているからこそできる話し方だ。
ハインをふと見ると、こちらも顔を緩めている。
从 ゚∀从「ボランティア、頑張って下さいね。
きっと子どもたちは楽しみにしてますので」
/ ゚、。 /「頑張るよ。
こればかりが生き甲斐なもので」
ダイオードは目を輝かせていた。
どこかから猫の声がする。
子どもの嬌声もする。
会話の最中も絶えることがなかった。
その明るい声がこの公園を包んで、さらには教会の雰囲気にも影響を与えていた。
641
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:11:23 ID:Yz9fwqUU0
しばらく涼んだ。
会話はちょくちょく続いたが、それよりも日陰が心地よいので、眠気を誘った。
静かに風の音に耳をすませることもできた。
時間が経ち、夕方が迫ってくる。
眠気をふりはらい、三人は別れることにした。
/ ゚、。 /「それではな、モララー、ハインさん。
また元気で会おう」
ダイオードは勢いよく手を振った。
年齢を感じさせない素振りだった。
ダイオードを見届けたのち、モララーはハインを見て気づいた。
ハインがまだ笑顔でいることに。
いつもいつも笑っているが、今日はもっと自然な顔だ。
モララーは少しの間、呼吸をするのさえ忘れていた。
从 ゚∀从「なんだよ」
モララーの視線に気づいたのだろう。
ハインは目をほそめて、モララーに言った。
642
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:14:25 ID:Yz9fwqUU0
モララーは熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
すでにそのような感情を自分が抱いていることは、十分にわかっていた。
でも、何も言わない。
思わず見とれていた、なんてとても言えなかった。
( ・∀・)「いや、別に……」
目線を反らして、ハインの追求を避ける。
ハインの不服そうな顔が、見ていなくても、思い浮かぶ。
モララーは、そこでふと思いついた。
今なら、言ってもいい気がした。
また、ハインを振り返る。
思った通り怪訝そうな顔があって、笑ってしまった。
( ・∀・)「なあ、ハイン」
夕暮れになりつつある。
陽光は赤みを帯びる。
( ・∀・)「ハインはどうして俺に会いにくるんだ?」
643
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:17:45 ID:Yz9fwqUU0
口に出したら、もうハインに会えなくなる。
そんな直感があったから切り出せないでいた。
从 ゚∀从「……」
ハインの顔から、自然さは消えていた。
いつの間にか笑顔は性質を変えていた。
もっと固く、無機質なものに。
ああ、そうか。まだ駄目だったのか。
前のハインに戻ってしまった。
モララーは悲しみを感じた。
(;・∀・)「あ、いや、ごめん」
元の、あの言いようのない距離間が出来上がっている。
決して自分の過去を語ろうとしないハインに。
644
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:21:00 ID:Yz9fwqUU0
モララーは急速に後悔した。
読み誤ってしまった。
いまさら謝罪しても何の効果もないだろう。
でも、そのときハインはまだ声をかけてくれた。
从 ゚∀从「モララー、あんたに会いに来ているんだ」
ハインはまず、そう答えた。
モララーはハインの顔を見つめた。
顔つきが真剣になっているのは、すぐにわかった。
でもそれが答えになっているとは、モララーには思えなかった。
从 ゚∀从「それしか言えない」
ハインは顔をうつ向かせた。
表情は伺い知ることができない。
645
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:23:54 ID:Yz9fwqUU0
从 ゚∀从「モララー、疑問はあると思うんだ。いろいろと。
でも今は言うことはできない。あんたのためでも、あたしのためでもあるんだ」
それから、ハインの溜息が聞えた。
顔は相変わらずわからない。髪が邪魔をしている。
感情も読み取れない。
「 私は酷いことをしているのかもしれない」
その言葉の指す意味は、わからなかった。
いったいハインが何をしているというのか。
誰に対してひどいというのか。
モララーはハインの横に立っていた。
人通りは少ない、道路の片隅。
影がどんどん延びていく。
カラスの鳴き声が聞えた。
静かだからこそ、耳に残る、不快な音だった。
646
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:26:55 ID:Yz9fwqUU0
急に、ハインは顔を上げた。
何かを決意したのだろうか、妙に弾みのついた動きだった。
从 ゚∀从「それなのに、おこがましいけど、一つだけ忠告することがある」
ハインはモララーと向き合った。
ぎらぎらした目。
その目に、なぜかモララーは言いようのしれない怖さを感じた。
この目は自分を見ていない、どこか遠くをにらみつけている。
それも決して良くない感情を纏わせて。
从 ゚∀从「もしかしたらもう少ししたら、私はあんたと会わなくなるかもしれない。
そうなったら、直接には、私を探そうとはしないでくれ」
ハインは目の力を変えず、モララーに告げた。
予言とも言える、はっきりした物言いだった。
言っていることはそれなりに衝撃的だったが、今のモララーはハインの目線を受け止めるので精いっぱいだった。
とても、ハインに対して何事か言及する余裕はなかった。
モララーは自分の頬を冷や汗が流れるのを感じた。
647
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:29:58 ID:Yz9fwqUU0
ハインの胸の銀のロザリオは、西日を受けて赤く輝いていた。
遠くで猫が鳴いた。
寂しそうに。
この光景を俺は見たくなかったんだ、モララーは後になってようやくわかった。
だからこの質問をしたくなかったんだ。
ハインが変わってしまうと思ったから。
その日、ハインとモララーはゆっくりと歩いて駅へ向かった。
道中ではいくつか話したが、決して会話は弾まなかった。
八月のある日のでき事であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
648
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:32:12 ID:Yz9fwqUU0
このときのハインの感情をお前はまだ知らない。
だからお前はこの先大変な目にあう。
でもな、実のところハインはこのときの話を良くするんだ。
あいつにとっては忘れられない日なんだろう。
このときのお前に、そのことを伝える術が無いのは、本当に、辛いことだと思う。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第五章 農学部棟① へ続く。
649
:
第四章 教会
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/21(日) 21:35:22 ID:Yz9fwqUU0
目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
>>540-562
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648
第四章 教会
本日の投下は以上です。
次の金土日で、第五章、第六章を投下し、前半が終了します。
そこからは少し休んでから、後半が始まります。
気長にお待ちください。
それでは。
650
:
名も無きAAのようです
:2013/07/21(日) 22:05:33 ID:EJVApB760
乙
投下量多くて読みごたえあるな
ハインの目的と過去が気になる
651
:
名も無きAAのようです
:2013/07/24(水) 11:38:10 ID:dcKrrEMQ0
おつ!待ってる
652
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:32:42 ID:jJqxqsR60
投下します。
653
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:34:32 ID:jJqxqsR60
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
交友関係は広い。モララーをよく世話している。
(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。
川 ゚ -゚)……素直クー
K大学農学部在籍中。三年生。料理サークルに所属し、相談事務所にも協力。
揚げ物ともやしと猫が好き。
/ ゚、。 /……鈴木ダイオード
K大学近くの古本屋の店長。おじいちゃん。足腰が気になる。
教会によく赴いて読み聞かせボランティアをしている。
654
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:38:11 ID:jJqxqsR60
農学部の伝統、というものがあった。
毎年の夏休み、数人のグループで泊まりがけで、酵素だとか菌の観察をする。
それがこの年のクーの代にも回ってきたというわけだ。
彼女が観察するのはもやしらしい。
モララーには果たしてもやしの何を観察するのか、皆目見当はつかなかった。
内容に興味があるわけではない。
夜にちょっと遊びに行く、それで十分なのだそうだ。
( ・∀・)「俺一応男なんだけどいいの?」
と、一度聴いてみたところ、クーはただ噴き出すだけだった。
もちろん不埒なことをするつもりはなかった。
しかし仮にも相手は女性である。
大学生なのだからひょっとしたらあらぬ間違いを犯してしまうかもしれない。
だから誰か別の人を誘いたいところではある。
655
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:41:10 ID:jJqxqsR60
しかし、残念ながら、今大学に通っていて親交のある人間はマスしかいなかった。
マスは、モララーがいまだに就職先を決定しないことを気に病んでいる。
気に病みすぎてそのうち強硬手段に出るかもしれない。あれでいて怒ると何をするかわからない。
もうすでに片鱗が表れている。
この前の口ぶりからして、アパートを本気で出なければならない。
もう一人で生きてくださいなどと言われれば、モララーには何も言えない。
路頭に迷いながら、その日暮らしで転々と生きていくしかないのだろうか。
いまだに悩んで、それでいて現実から逃げているモララーがほとんど悪いのだが、今は悔やんでも仕方ない。
今は農学部棟の方が現実に迫ってきている。協力者を見つける方が先だ。
从 ゚∀从「で、頼ってきたのが私と」
ハインはモララーの経緯をしっかりと聞いたうえで、これでもかというくらい口の端を釣り上げた。
モララーはその様子に不気味さを感じながらも、頭を下げる。
(;・∀・)「お願いします」
656
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:44:10 ID:jJqxqsR60
从 ゚∀从ニヤニヤ「ふふふ、飛んで火に入る夏の虫よ」
(;・∀・)「…………」
从 ゚∀从「何かつっこめよー」
ある夏の日の夕暮。
外には暗雲が立ち込めている。
大気がとても不安定だ。もうじき天気は崩れ、雨が降り出す。
昼間はいつものように散歩をしていた。
大学の裏のお寺から、軽い坂道を上って、小高い丘まで。
今となっては街の起伏の一部に過ぎない。
しかしそれでも街を眺めることができる場所をじっくり眺めることは新鮮でもあった。
それからお寺の保有している林をしげしげと眺めているうちに、天気が悪くなった。
それでいつもの、学生通りの喫茶店へと向かったわけである。
从 ゚∀从「協力者と言われてもな。私も仕事があるからな」
(;・∀・)「警察だしな、むしろよくここに来れているなと」
657
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:47:12 ID:jJqxqsR60
从 ゚∀从「いろいろと工夫を重ねているのさ。
これでも普段は働きたくて仕方ないくらいなんだ。
休みなんて、この用事以外はとりたくないくらいに」
ハインは目を閉じて、ホットモカの香りを楽しみ始める。
ハインの用事に関しては、もう答えが返ってこないのはわかっていた。
だからモララーはとりたてて質問しなかった。
( ・∀・)「働かないと不満?」
モララーは率直な気持ちで質問した。
从 -∀从「なんかな、別に休みなんて無くてもいいんだ。
私としてはただひたすらに、がむしゃらに働きたい。
働かないと生きていけないってのは、昔もう身についているんだよ」
やや早口にハインが捲し立てる。
その結果、真に迫る雰囲気が醸し出されていた。
658
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:50:11 ID:jJqxqsR60
( ・∀・)「…………」
从 ゚∀从「どうした?
私そんな怖い顔してる?」
Σ( ・∀・)「あ、いや、怖いわけじゃなくて……」
触れがたいものを感じたのは事実だ。
ハインの目の奥底にある、ぎらぎらした感情。
以前それを垣間見た。
先ほどのセリフから、あの目に近いものを感じたのである。
だから怖かった、いや、それが怖いのかはわからない。
だいたい怖かったらまじまじと見たりしないんじゃないか、なんて一瞬モララーは思いついた。
でも恥ずかしいから言わない。
言い淀んだまま、モララーはコーヒーをすすって目線を反らした。
659
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:52:10 ID:jJqxqsR60
从 -∀从「ま、いいや。
悪いけど協力者は思いつかない。ごめんな」
ハインはあっさりと頭を下げた。
( ・∀・)「ああ。まあいいんだ。
それなら仕方ないし」
从 ゚∀从b「とりあえず、変なことしなきゃ大丈夫さ」
( ・∀・)「変なことって」
从 -∀从「若気の至りにならないようになー」
(;・∀・)「な、ならねえよ!」
从 ゚∀从「そんなむきにならなくてもいいだろうに」
それきりもう、ハインとは農学部棟の話はしなかった。
660
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:55:10 ID:jJqxqsR60
喫茶店での会話は、軽かった。
決して解決を求めているわけではないのだから。
会話を続けるための話題が出て、特に動きもなく消える。それが普通であった。
他愛ない話。
それが続くこと自体に安らぎを感じてきているのを、モララーは気付いていた。
ハインがどうして会いに来るのか、いまだにわかっていない。
彼女もそれを言いたがらない。
モララーもそれを聴きたがらない。
もし聴いてしまったら、他愛ない話がそうではなくなってしまうかもしれないから。
もう普通にハインと会うことができなくなってしまうかもしれない、それが怖かった。
ハインが同じことを考えているかはわからなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
661
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 19:58:17 ID:jJqxqsR60
それでも。
俺はお前に心の中で言う。
それでもお前は、そろそろ気付き始めていたんだ。
ハインの取り繕いはもう剥がれてきていることに。
それは、ハインの目の奥に潜む、言いようのないぎらつきに気付いた時からずっと。
俺はお前に言うし、わかってもいる。
あの目を見て何もできなかったのは、俺だって同じだったのだから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
662
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:00:41 ID:jJqxqsR60
夏休みのある日のこと。
マスが久しぶりにアパートに帰ってきた。
このところ彼は家を空ける。
どうも勤める予定の新興企業に顔を出しているらしい。
帰れないのは相当厳しい職場なんじゃないかとも思ったが、どうやら自分からその会社のシステムをチェックしているらしい。
( <●><●>)「サービス残業というより、サービス監査みたいなものです」
( ・∀・)「疲れないの?」
( <●><●>)「いえ、興味のあることをひたすらやっているだけです。
自分の理想を追い求める、それが就職で一番大事なんですよ」
就職という言葉に、漫画のようにびくっと反応してしまって、モララーは焦る。
むろん、モララーを追い詰めるつもりはマスには無かっただろう。
663
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:02:45 ID:jJqxqsR60
( <●><●>)「そんなに就職するのが怖いんですか? その年で」
(;・∀・)「歳は関係ないだろう。
ただ、まあ、そろそろ安定はしなきゃなんだよな……」
月日が経つごとに、得体のしれない不安が増えてくる。
記憶が無いにしても、その不安はおそらく過去最大のものであったはずだ。
( <●><●>)「じゃあ、やりたいことはどうなのですか?」
( ・∀・)「やりたいこと?」
( <●><●>)「ええ、そっちの方から考える方が君には合っているんじゃないですか?」
( ・∀・)「そりゃあ、お前」
664
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:04:43 ID:jJqxqsR60
マスとは高校二年のときから今までの付き合いだ。
モララーが分手家の養子になってから今まで、マスはずっとモララーの世話をしてくれていた。
だから、マスだってよくわかっているはずだ。
( ・∀・)「探偵」
そういうと、マスはにっこりと笑う。
( <●><●>)「僕もそれが合っていると思います」
( ・∀・)「でも、やっぱり自営業だし厳しいものがあるんじゃないか?」
モララー自身、探偵という仕事を調べたことがないわけではなかった。
ただ調べるうちにわかったのは、現実の探偵はかなり狭き門であることだ。
探偵になるには三つの方法がある。
665
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:07:10 ID:jJqxqsR60
まずは、探偵学校に入学して数か月の講習を受け、探偵社へと就職すること。
かなり多くの探偵がこのルートで夢をかなえる。
ただし、正直なことろ値段の割にはあまり評判が良くないのが現状だ。
モララーとしてはこのルートはあまり通りたくないと考えていた。
次に、直接探偵社へ入社すること。
このルートを通る多くの人が自分のつてを頼りに入社する。
探偵業は信頼が大事だし、知らない人にとってはほとんどチャンスが無い。
むろん、モララーもマスにもこのつてはなかった。
最後、自分が直接開業することだ。
探偵業には許認可が無い(2009年の法改正で必要となる)ので、開業するのに手続きも必要ない。
なので、モララーはとるとすればこの最後の方法を考えていた。
ただし、この場合評判が上がるかどうかは自分の腕次第だ。
評判が良くなければ仕事がまわってこない。逆に人気になれば大手から仕事が舞い込んでくる。
そのためのは何年も足腰をつかわなければならない。
そうして努力を重ねて、ようやく仕事として成り立つ。
なんにせよ、すでに知識を有している方が有利なのは確かだ。
実際探偵を営んでいる人も、元経営者であったり、元警察官などもいたりする。
何もない大学生が飛び込むには狭き門なのである。
666
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:09:43 ID:jJqxqsR60
( <●><●>)「ところが、今の時代はそうでもないんですよ」
( ・∀・)「それは、どういうことだ?」
( <●><●>)「情報のアクセスの方法に、バリエーションが増えたからです」
そういうと、マスは部屋の隅に置かれた大柄な箱をさす。
パソコンである。
( ・∀・)「情報化社会ってこと?」
( <●><●>)「そういうことです」
( ・∀・)「バリエーションが増えたって、具体的にいうと?」
( <●><●>)「今急速に、インターネット回線が普及しているところなんです。
この回線は、いわばここと世界をつなぐ回線、世界中のあらゆる情報を発着信することが可能なんです。
多くの人々が情報を欲する時代がくるんです」
667
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:11:43 ID:jJqxqsR60
( <●><●>)「ユーザーの立場としてみても、かつてはつてを使わなければならなかった情報収集を、
もっとコストを下げて行うことができるんです。
それにネットを使って新しい人脈づくりだって考えられるんです。
こちらからわざわざ赴かなくても、相手にアクセスできる機会が増えると考えてみるんです」
( <●><●>)「さらにいえば、探偵って言うのは、いわば情報そのものを扱うお仕事なんです。
顧客に対して情報に付加価値をつけて、提供する、その価値はこれから高くなるはずなんです。
ですのでこれからの時代、探偵業は一気に増えるだろうし、魅力も高まると思うんです」
( ・∀・)「価値が高くなる、ねえ。
まだちょっとわかんないな。パソコンが普及したら、探偵はいらなくなるんじゃないか?
誰でも自分で検索しちゃえば答えが出てくるわけなんだし」
( <●><●>)「そうとも限りませんよ。
だって、それが正しい情報だなんて、誰も証明できないんですから」
( ・∀・)「嘘の情報も混じっているということ?」
668
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:13:44 ID:jJqxqsR60
( <●><●>)「そうなんです。
それに加えて、情報が氾濫する社会が到来すればいずれ人々は受け身になってしまうんです。
正しい情報を得られるまでに時間と手間がかかる、それならば嘘の情報でも妥協してしまう
そんな人がこれから先増えてくるんです」
( <●><●>)「そうなれば正しい情報を直接見つけるために存在する探偵業は、これから先注目されるはずです。
だって、探偵の探した正しい情報により、その依頼者は正しい行動を取れるんですから」
( ・∀・)「ん、でも探偵が正しいかどうかも、結局は主観によるんじゃないの?」
( <●><●>)「はいなんです。
でも一つの指標になれるはずなんです。探偵が信じたことが、依頼者の指標となる。
いってみれば助けになる、これだけでもやりがいはあると感じませんか?」
( ・∀・)「ずいぶんと、聞えがいいな」
( <●><●>)♪「僕自身、探偵は好きですから」
669
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:15:43 ID:jJqxqsR60
自分もそうだ。
口には出さなかったが、モララーは笑みを浮かべていた。
マスにはそれで十分に伝わったようで、彼もまた頷く。
( <●><●>)σ「僕がこの前言おうとしていたのは、つまりこういうことです」
マスはパソコンを指した。
( <●><●>)σ「このパソコンを使って、探偵業をやる、それを僕は勧めているんです」
突飛な話、というわけでもなかった。
話の流れが探偵になったときから、そういう話題になるのではないかと思っていた。
( <●><●>)「探偵については、僕も調べました。
探偵になるためには、場所と広告さえあれば大丈夫なんです。
場所についてはどこか部屋を借りるとして、広告もネットを使えば安価で済むんです」
670
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:17:44 ID:jJqxqsR60
σ( ・∀・)「調べたって、俺のために?」
( <●><●>)「何をずうずうしいこと言ってるんですか。
自分のためにですよ。それをたまたま君に教えただけです」
( ・∀・)「自分のため?」
( <●><●>)「いろいろと実験している最中なんです。
ネットを使って、どんなことができるのか。
そのうち探偵のことも知る機会がありまして、その可能性を知って、君に教えているんです」
( ・∀・)「なるほど……」
正直なところ、イメージははっきりとはしていない。
でも、マスが言ったことは一つの行動指標になる気がした。
本来、人間は目的意識なんてほとんど持ち合わせずに行動している。
就職に際して突然その目的意識を聞かれ、動揺する人が大勢いるのもそのためだ。
そしてモララーはその意識を律儀にも欲していた。
嘘の中の真実を見つけ、人を助ける仕事。
671
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:20:43 ID:jJqxqsR60
モララーの描く探偵像は、抽象的にだが、目的意識を有したものとなってきた。
あとはこれをどう具体化させるか。
まだ、決め手となるには薄い気がした。
( ー∀ー)「ありがとう、マス。
俺はもう少し考えてみる」
( <●><●>)「そうですね、今はまだいろんな人と交流した方がいいんです。
まだ自由に動き回れる学生のうちに」
交流。
モララーは別に、そこまで大した交流があるわけではなかった。
この半年ほどで、新しくできた交流など、それこそ指で数えるほどしかない。
そして自由と言うのも疑問だ。
その交流のうちの一つに、モララーは今まさに心奪われているところなのだから。
でも、それをいってしまってはさすがにマスに申し訳ない。
だからモララーはそのことを伏せ、マスに礼を言うだけにとどめておいた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
672
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:23:43 ID:jJqxqsR60
その数日後の夜、モララーはK大学の農学部棟に来た。
結局彼一人である。
エレベーターを使って、のぼる。
ついたその階は高く、窓から大学を一望できた。
遠くの方では、都市の明かりが煌々としている。
時間と部屋は指定されている。
以前クーと出会ったときに、メモをしておいた。
通信機器の無い時代、いや、あっても高額で手が出せない時代である。
ポケベルははやりつつあったが、本格的に文字の送受信ができるようになるにはまだ数年かかる。
モララーは時間を確認して、廊下を進んでいった。
農学部棟は暗い。
外も暗いわけだが、それ以上に雰囲気が暗い。
そういえばお化けの噂があるんだったと、モララーは思い出していた。
今更のようだったが、実際に入ってみて思い知らされたというほうが正しい。
673
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:26:43 ID:jJqxqsR60
モララーはようやく教室にたどりついた。
実験室と書いてある。
廊下では物音はしない。防音がしっかりされているのだろう。
音と農業にどう関係があるのかはわからなかったが、やかましいより静かな方がいいものに育ちそうな気はした。
ただのイメージなのだけど。
モララーは実験室の扉をノックした。
「どうぞー」
クーの声がする。
入れということなのだろうか。
モララーはドアに手をかけて、あけた。
広い実験室だ。メタリックなコの字型の大きなテーブルがスペースを占めている。
コの内側に、クーはいた。一人である。
( ・∀・)「あれ」
674
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:28:43 ID:jJqxqsR60
モララーは部屋に入って、見回した。
独特のにおいがする、土の匂いだ。
照明は若干うす暗く、目に優しい。
植物にもあまり強い光はよくないのだろう。
そんなことより、
( ・∀・)「他に人はいないようだけど」
モララーはクーに確かめた。
ひょっとしたらもう寝てしまったのか。ずいぶん早く寝るとは聴いていたが、早すぎではないか。
それともどこかにいるのだろうか。
たまたま、この部屋にいないだけで、どこかに買い出しにでも出かけたり。
軽い気持ちで、モララーは首をかしげた。
ところが、クーは口元を緩めるだけ。
そそくさとコの字から出て、モララーのほうに近づいた。
川 ゚ -゚)「いませんよ」
675
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:30:44 ID:jJqxqsR60
クーは何事もないように、モララーの脇を通り、扉の前に立った。
( ・∀・)「…………ああ、ここにはいないな」
川 ゚ -゚)「ふふ、どこにも、いませんよ」
流れるように、クーは扉の鍵を閉めた。
(;・∀・)「何してんだ?」
川 ゚ -゚)「気付かれないように」
クーは相変わらずにやけている。
得体のしれないものを、モララーは感じた。
(;・∀・)「へ?」
クーはモララーを見つめた。
ぎらっと輝く、それは、どこかで見た輝きに似ていた。
『若気の至りにならないようになー』
冗談めいたその言葉が、急に現実味を帯びてくる。
676
:
第五章 農学部棟①
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:33:55 ID:jJqxqsR60
川 ゚ -゚)「モララーさん」
クーは急にかしこまった。
にやけたまま、両の手でモララーの腕をつかむ。
それが、夜の始まりだった。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第五章 農学部棟② へ続く。
677
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/26(金) 20:36:02 ID:jJqxqsR60
目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
>>540-562
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648
第四章 教会
>>653-676
第五章 農学部棟①
本日の投下は以上です。
また明日投下します。
それでは。
678
:
名も無きAAのようです
:2013/07/26(金) 21:10:54 ID:wAQCKda20
明日も楽しみにしてるよ!
679
:
名も無きAAのようです
:2013/07/26(金) 23:11:18 ID:1lRuXH.UO
今日の分が明日投下だと思ってたよ、乙
680
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:25:01 ID:5G1hqGa60
投下します。
681
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:27:07 ID:5G1hqGa60
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
交友関係は広い。モララーをよく世話している。
(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。
川 ゚ -゚)……素直クー
K大学農学部在籍中。三年生。料理サークルに所属し、相談事務所にも協力。
揚げ物ともやしと猫が好き。お化けが嫌い。
/ ゚、。 /……鈴木ダイオード
K大学近くの古本屋の店長。おじいちゃん。足腰が気になる。
教会によく赴いて読み聞かせボランティアをしている。
682
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:29:09 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「お化け、見つけましょう」
モララーはクーの言葉を理解するのに時間がかかった。
(;・∀・)「……へ?」
川 ゚ -゚)「何を間抜けな声出しているんですか。
お化けですよ、お化け。この前話したでしょう」
あいかわらず、意味がわからない。
モララーは目を瞬かせる。
(;・∀・)「この前って、食事した時の?」
何をあたりまえなことを、とでもいうようにクーは大きくうなずいた。
川 ゚ -゚)「前にも言ったように、夜中になると突然ラップ現象が起こるんです。
ここにいればどういうことなのかわかりますよ」
683
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:31:09 ID:5G1hqGa60
気軽に話すクーの口ぶりを聴き、モララーは急に力が抜ける。
(;ー∀ー)「びっくりさせんなよ……」
川 ゚ -゚)「何がですか?」
(;・∀・)「いや……
急に鍵まで閉めるから何事かと思って」
川 ゚ -゚)「そりゃあ、人に邪魔されたくありませんからね。
それに、閉めた方が音が出るのわかりやすいですよ」
( ・∀・)「あー、待ってくれ」
ようやく落ち着いてきたので、モララーは状況を整理することにした。
( ・∀・)「つまり、お前は最初から嘘をついていた。
俺と一緒にお化けの正体を探るため、俺をここに呼び出したと」
684
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:33:09 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「その通りです」
( ・∀・)「なんで嘘をつく必要がある」
川 ゚ -゚)「逆に聞きますが、お化けの正体を知りたいから協力してくれーって言って、協力しましたか?」
( ・∀・)「まあ、しないだろうな」
川 ゚ -゚)「ですよね。なんもメリットがありませんものね。
そこで、怖がる私を助けるためという話にすり替えちゃいました」
( ・∀・)「ふむ」
川 ゚ -゚)「そうすれば、メリットは無いにしろ、仮にも後輩であり親交もある私を助けられない理由を述べる必要が出てくる。
でもモララーさんには碌な理由は無いはず。だって、どうせ就職もしてなくて暇ですし。
あとは、そこでしどろもどろしている時にあの女性の話をして、マスさんの話ちらつかせれば約束成立です」
あまりにしっかりした話ぶりに、モララーはくらくらとした。
つまり、話の重点をすり替えることにより、クーは自分をはめたらしい。
685
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:35:13 ID:5G1hqGa60
(;・∀・)「…………お前どこでそんな交渉術覚えたんだ」
川 ゚ -゚)「いやあ、マスさんがいろいろお詳しいので。
それに元々話すことは得意ですしね」
(;・∀・)「にしたって……恐ろしい奴だ」
川 ゚ -゚)「ふふふ」
( ・∀・)「他の、実験を一緒にするって言ってた人は?」
川 ゚ -゚)「後日ちゃんと行いますよ。
むしろ、そのために今のうちに正体を突き止めておきたいんです」
( ・∀・)「後日怖くならないために?」
川 ゚ -゚)「その通りです」
686
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:37:35 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「はー、手の込んだことをするね」
川 ゚ -゚)「恐怖には打ち勝たないと気が済まない性分なんです」
( ・∀・)「そりゃまた、立派なもんで」
川 ゚ -゚)「だいたい、モララーさんが来たところで怖いもんは怖いでしょうに。
むしろ普段いろんな相談うけて、いろいろ調べる能力を身につけているでしょう。
それをここで活かしてくださいよ。期待してますよ」
( ・∀・)「淡々と言うけど、なかなかひどいこと言ってない?」
川 ゚ -゚)「良い暇つぶしでしょう?」
( ・∀・)「だからそれも皮肉だって。
まあ、否定できない」
687
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:39:40 ID:5G1hqGa60
実験室は今のところ静かである。
窓の外はK大学を囲む森が見えているはずで、今ではただの真っ暗闇だ。
ときどき虫や、夜行性の猛禽類の声が聞こえてくる。
クーとモララーは実験室の椅子に座っていた。
今夜はこの部屋には誰も来ないらしい。
実験室の張り紙には、意味ありげな農作物の写真が飾られている。
畑に植えられたものや、実験用に比較されているもの。
( ・∀・)「前から思っていたのだけど、なんでもやしばっかり研究してるんだ?」
川 ゚ -゚)「……前提として、もやしは成長がものすごくはやいんですよ。
それこそ誰がやっても失敗しないといわれるくらい、育てやすいんです」
( ・∀・)「そんなに早いの?」
川 ゚ -゚)「今の時期なら種を買って三日もすれば生えますよ」
( ・∀・)「ほんと早いな」
688
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:41:36 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「ちなみに市販のものより、手前の方がおいしくなります」
( ・∀・)「なんで?」
川 ゚ -゚)「市販のは大量に作る上で、ものすごい蒸すんです。
そこで雑菌ができてしまうので、それを殺す処理をしなきゃならないんです。
だから手前のとは味が違ってくるんです」
( ・∀・)「へえー」
川 ゚ -゚)「心底興味が無さそうですね」
( ・∀・)「いやあ、もやしで盛り上がるのは厳しいと思うよ」
川 ゚ -゚)「ええ、だって。
先輩どうせ就職の話とかするとしょげてしまうし」
( ・∀・)「しょげるって、そこまで情けない表現するなよ」
689
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:43:52 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「オブラートに包んだと言ってください」
( ・∀・)「包まないで表現したら?」
川 ゚ -゚)「先輩の心に刺さる、先輩の生きる意欲が消える、先輩の」
( ・∀・)「はい、もういいです」
川 ゚ -゚)「マスさんからききましたよ」
( ・∀・)「何を?」
川 ゚ -゚)「探偵事務所の話」
(;・∀・)「ああ、あいつ話してたのか」
川 ゚ -゚)「今でもたまに学校で会うので。
よく物理学棟にいますしね」
690
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:45:45 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「仲のいい教授のとこに行ってるんだろうな」
おそらくは、アパートの部屋の隅にあるパソコンの元の持ち主だ。
川 ゚ -゚)「農学部棟とは近いですし、そこでたまに会って話しました。
で、探偵事務所やるんですか?」
( ・∀・)「ううん、どうだろう。
形式的には、確かに就職はうまくいってないし、
マスが用意してくれているなら、それに乗っかるのも手なんだけど」
川 ゚ -゚)「けど?」
( ・∀・)「実感がわかないというか」
川 ゚ -゚)「実感、ですか」
( ・∀・)「やりたいことってのが、いまいち見えてこない」
691
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:48:36 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「ははあ、繊細ですねえ」
( ー∀ー)「まいったね」
川 ゚ -゚)「でも、正直甘い考えな気もしますよ」
( ・∀・)「甘い?」
川 ゚ -゚)「ええ、だってそんな、みんながみんなやりたいことに向けて邁進しているわけでもないでしょう。
とりあえず働く人だっていたはずです。特に数年前までは、簡単に就職できたわけですし」
( ・∀・)「とりあえず働く、か」
川 ゚ -゚)「まあ、私もこれからなんで、人のこといってる場合じゃないですけどね」
夜は少しずつ更けていく。
692
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:50:33 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「農学部だと、就職先はどうなるんだ?」
川 ゚ -゚)「案外普通ですよ。もちろん食品に興味ある人は多いですから、そちらに向かう人も多いですが
もっとスケールを大きく見て商社だとか、お金に興味があれば銀行にも行くし、それこそ公務員もいます」
( ・∀・)「結構バラエティに富むんだな」
川 ゚ -゚)「結局本人の興味しだいですからね。
もやしの研究のことを言うかどうかも本人次第です」
( ・∀・)「クーは?」
川 ゚ -゚)「実はまだ定まってなくて」
( ・∀・)「そうか、まあ、そうだよなあ」
川 ゚ -゚)「逆にモララーさんは」
( ・∀・)「ん?」
川 ゚ -゚)「似合ってると思いますけどね、探偵」
693
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:52:51 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「そう?」
川 ゚ -゚)「だって、なんだかいろんなものを調べたがってそうですし」
( ・∀・)「そう見えるのか。
そりゃあ、自分の過去を知りたいとかはあるが」
川 ゚ -゚)「それ以外にも、です」
( ・∀・)「それ以外って、他人もってこと?」
川 ゚ -゚)「そうですよ。だってそうでなきゃ相談なんて受けないでしょう?」
( ・∀・)「言われてみれば……」
川 ゚ -゚)「モララーさん、覚えてます? 私の相談」
694
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:54:33 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「初めに話した時の?」
川 ゚ -゚)「そう、あのサークルで、相談を受けてもらったときの」
( ・∀・)「ああ、猫探しの。
結局いまだに見つからなくて申し訳ないな」
川 ゚ -゚)「いえいえ。最近猫が減っているので、ちょっと不安ですが」
( ・∀・)「減っている?」
川 ゚ -゚)「なんか、街全体から猫がいなくなっている気がします」
( ・∀・)「そうなのか」
川 ゚ -゚)「猫好きですからね、気になるんですよ。
まあ、今はそんなことより、あの時は真剣に調べてくれましたよね」
( ・∀・)「一応受け持ったからな。
学校中、街中、住宅街、関係ありそうなところはあらかた調べた」
695
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:56:33 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「そうそう。
まさかそこまでしてくれるなんて思っていなくて
私、なんだかおかしくなって噴き出しちゃいましたよ」
( ・∀・)「ああ、覚えている。
せっかく人が調査結果まとめてやったのに、ずっと笑い転げてるんだものな」
川 ゚ -゚)「……ハンカチ、あのときあげたんですよね」
( ・∀・)「え? あ、あのピンクの」
川 ゚ -゚)「今も持ってるんですか?」
( ・∀・)「いや、たぶん今日はアパートの方」
川 ゚ -゚)「なんだ、残念」
( ・∀・)「使っていたら使っていたで、お前どうせまた笑ったろ」
川 ゚ -゚)「おそらくは」
696
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 19:58:33 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「ハンカチ、返しそびれたままだったな」
川 ゚ -゚)「え? 何言ってるんですか、あげたんですよ」
( ・∀・)「いやでも、あのとき何も言わなかったし」
すると、クーはため息をつく。
川 ゚ -゚)「モララーさん、突然汗だくの男が現れたとして、私が何も感じなかったと思うんですか?」
( ・∀・)「え?」
川 ゚ -゚)「ハンカチくらい、あげますよ。そんなの見たら」
クーは目線をモララーから反らした。
川 ゚ -゚)「モララーさん、もっと自分を大事にしなきゃだめですって」
697
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:00:33 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「大事にって」
川 ゚ -゚)「もっと自分のやりたいことやってくださいってことですよ。
ハンカチのことなんか、忘れてくださいよ、もう」
何か遠回りに指摘されている気がする。
でもモララーは正直よくわからなかった。
「まあでも」と、クーは切り返し、またモララーを見る。
川 ゚ -゚)「でもあのとき汗だくになって私の猫探してくれたときは、本当にうれしかったんですよ」
( ・∀・)「嬉しがりながら、笑っていたの?」
川 ゚ -゚)「まあ、当時は、楽しさの方が上だったかなー。
でもそれがあったから、私その相談事務所好きになったんですよ」
( ・∀・)「そんなに気に入ってもらえて光栄ですね」
川 ゚ -゚)「お世辞じゃないですからね。
でなきゃ今まで協力してこないですよ」
( ・∀・)「そうかそうか。確かに今でも――」
言葉が途切れた。
698
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:02:33 ID:5G1hqGa60
聞こえたからだ。
モララーとクーは顔を見合わせる。
お互い確かめる言葉を掛け合う前に、再び
壁の奥で何かがきしむ音がする。
空気が張り詰める。
じっと動かないまま。
また、きしむ。
ただし、本当に小さな音だ。
耳を澄まさなければ、そして怪しい現象が起きているという意識がなければ
きっと無視されてしまうくらいの音だ。
699
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:04:33 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「…………これです」
クーが怯えがちに言う。
モララーは腕時計を確認する。
夜の10時だ。
( ・∀・)「……今、なりだしたよな」
川 ゚ -゚)「た、たぶん」
さっきまでの威勢は無い。
どうも本当に怖がっている。そこは嘘ではなかったようだ。
きしむ音は何度も聞こえてくる。
( ・∀・)「これが、噂の心霊現象か」
700
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:06:34 ID:5G1hqGa60
大きすぎず、小さすぎず
耳に一番残るトーン。
川 ゚ -゚)「本当にあったんですね。噂でなく」
また、きしむ。
( ・∀・)「…………等間隔、だな」
モララーは時計を確認する。
( ・∀・)「30秒置き」
川 ゚ -゚)「よく聴いてますね」
( ・∀・)「それに、時間がぴったりだ」
川 ゚ -゚)「何かわかります?」
( ・∀・)「うーん、この建物が原因かなあ」
701
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:08:34 ID:5G1hqGa60
川 ゚ -゚)「どういうことです?」
( ・∀・)「この建物の中で何かの装置が作動して、それで共鳴している。
そう考えるのが自然かなと思うんだ」
川 ゚ -゚)「装置、でも建物全体に反応が行き渡るような装置なんて」
( ・∀・)「いや、別に大きく無くてもいいんだ。継続的に、一定の周期で動いてくれていれば」
川 ゚ -゚)「……だったら、装置を動かせそうな人を探したほうが早い気がします」
( ・∀・)「誰かいるんだっけ?」
川 ゚ -゚)「研究室はここにしか人がいないはずなんです。
私とモララーさんしか。
それ以外でしたら、警備員の方々とか、あるいは……教授」
702
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:11:03 ID:5G1hqGa60
教授のときだけ、クーの声に翳りがあった。
気になったが、モララーは質問を続ける。
( ・∀・)「教授いたのか?」
川 ゚ -゚)「お泊りで研究するときは、教授もここに泊っているんですよ。
研究室には昼間しか来ないんですけどね。生徒の自主性を重んじるとかで。
今日は、私は友達と一緒に研究をじっくり取り組みたいので泊まるって、言ってありますが」
( ・∀・)「まるで宿泊施設みたいな使い方するなあ」
川 ゚ -゚)「泊まり込みで研究することはわかってましたしね。そのあたりは寛容だったんです」
( ・∀・)「で、だ。教授か」
川 ゚ -゚)「怪しいってことですか」
703
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:13:57 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「なんとなく、警備員ってのはちょっとずつ人が変わるけど。教授は変わらない。
何らかの装置を稼働し続けていることも、噂の方向性を修正することもできる」
川 ゚ -゚)「修正?」
( ・∀・)「ひょっとしたら、ラップ音以外にもよくないものが最初は広まっていたり」
川 ゚ -゚)「そんなの……あったんですかね」
( ・∀・)「憶測だけど。よし、調べてみるか」
川 ゚ -゚)「え?」
( ・∀・)「教授のところへだよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
704
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:16:11 ID:5G1hqGa60
二人は研究室の外に出た。
教授室があるのは一回、そこまでエレベーターで向かうことにする。
上ってくるのを待ちながら、モララーはクーに質問した。
( ・∀・)「この棟、結構古いんだっけ?」
川 ゚ -゚)「はい、老朽化も進んでいるし、最近は地震も怖いので
もうじき建てなおすときいています」
( ・∀・)「勝手なイメージだけど、古い建物ほどよくきしみそうな気がする」
川 ゚ -゚)「建て替えたら、音はならなくなるんですかね」
( ・∀・)「そうかもしれないな。
そうしたら変な噂も立たなくなるだろう」
川 ゚ -゚)「そうだと良いんですが」
705
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:18:18 ID:5G1hqGa60
エレベーターが一階がら上って到着して、二人は乗り込んだ。
そのまま一階に降り、クーの誘導で研究室へ向かう。
川 ゚ -゚)「モララーさん、実は私言ってなかったことがあるんです」
歩きだして間もなく、クーが切り出す。
川 ゚ -゚)「最近の教授、少し近寄りづらかったんです」
モララーはクーを見る。
少しだけ、青い顔をしている。
何かに脅えているように。
( ・∀・)「どうして?」
川 ゚ -゚)「教授、最近怖かったんです。
雰囲気といいますか、思いつめているといいますか」
706
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:22:56 ID:5G1hqGa60
( ・∀・)「思いつめているって……」
川 ゚ -゚)「すごく辛そうな、感じです」
( ・∀・)「それで、あんまり会いたくなかったと」
モララーは、食堂でクーが何か言おうとしていたことを思い出す。
もしかしてそのとき、クーは教授の話をしようとしていたのだろうか。
川 ゚ -゚)「ええ。
でも、できることなら、教授が何に悩んでいたのか知りたいんです」
( ・∀・)「……」
教授は何かをしているのだろうか。
ここに来る前は、大した事件ではないと思っていた。
707
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:24:58 ID:5G1hqGa60
ラップ現象についても事前に軽く調べていたし、そのほとんどが自然現象として説明が付されていた。
先ほど説明した共鳴も、その原因の一つだ。
だから、適当にどこかの装置の振動の結果引き起こされているのではないかと目算していた。
でも、その原因については深く考えていなかった。
クーが言うことには、教授は最近思いつめていたという。
もし教授が何かをしていたならば、夜中にひそひそと何をしていたというのか。
そしてどうして思いつめているのか。
その理由が知りたくなった。
Σ( ・∀・)「!!」
ふと、気配を感じて、モララーは振り返った。
708
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:26:57 ID:5G1hqGa60
(;・∀・)「誰だ!」
思わず、叫んだ。
声が反響する。
川 ゚ -゚)「どうしたんですか、急に」
おびえた声で、クーが言う。
何か人影が見えた気がした。
でも、反応は無い、足音もない。
( ・∀・)「何もいないか」
川 ゚ -゚)「どうしたんです、お化けでも見ました?」
( ・∀・)「いや……とりあえず研究室へ向かおう」
709
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:29:50 ID:5G1hqGa60
歩きだして、ようやく研究室の扉が見えてきたときだった。
川;゚ -゚)「モララーさん」
クーは歩きながら、言う。
川;゚ -゚)「私、ちょっと気付いちゃったんですけど」
クーの声は、震えており、か細いものだった。
( ・∀・)「……言ってみろよ」
川;゚ -゚)「怖いんですけど」
(;・∀・)「いいから、言えって」
川;゚ -゚)「……はい」
二人はゆっくりと、扉に近づきつつあった。
川;゚ -゚)「この棟には、私たちと、教授と、警備員しかいないんです。
警備員は入口のところで見張っているし、教授は一階にいるはずなんです」
710
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:33:10 ID:5G1hqGa60
扉の前に立つ。
川;゚ -゚)「そしてモララーさんはエレベーターに乗って、上ってきた。
じゃあどうしてエレベーターは、さっき上ってきたんですか。
私たち以外、誰も一階に向かうことのできる人はいなかったのに」
クーの言おうとしていることがようやくわかった。
同時に寒気が襲ってくる。
モララーとクーは顔を見合わせる。
クーはすっかり青い顔をして、モララーにしがみついていた。
こんなに感情をはっきり出す彼女を見るのは初めてだった。
モララーは顔をひきつらせ、目を扉に向ける。
とにかく、教授と会おう。
そうすれば何かわかるかもしれない。
711
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:37:03 ID:5G1hqGa60
ドアノブに手をかけて、押す。
目の前に飛び込んできたのは、人の体だった。
入口から見てすぐわかるように、これ見よがしに、その体はぶらさがっている。
横でクーが悲鳴を上げる。
耳をつんざくその音は、モララーの耳に嫌というほど届いていた。
そのぶらさがった死体は、まぎれもなく教授のものだった。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第六章 公園 へ続く。
712
:
第五章 農学部棟②
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/27(土) 20:41:58 ID:5G1hqGa60
目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
>>540-562
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648
第四章 教会
>>653-676
第五章 農学部棟①
>>681-711
第五章 農学部棟②
本日の投下は以上。
明日投下して、一区切りです。
最後まで書きためてみて、スレが足らない可能性が出てきたので、
しばらくしたら後半用のスレを立てようと思います。
それでは。
713
:
名も無きAAのようです
:2013/07/28(日) 01:11:30 ID:.KZcD4MQ0
乙
すげー展開!ゾクゾクした
714
:
名も無きAAのようです
:2013/07/28(日) 02:06:29 ID:fLhtfuHwO
ちょっと盛り上がってきたな、ここから前作っぽくなっていくのかな、期待
715
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:13:37 ID:jLJ4g5vE0
投下始めます。
716
:
第六話 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:16:14 ID:jLJ4g5vE0
〜主な登場人物(随時追加予定)〜
( ・∀・)……分手モララー
K大学在籍中。就職し損ねて六年生。
从 ゚∀从……高岡ハイン
某県警捜査第四課(組織犯罪対策)巡査部長。
(´・ω・`)……所部ショボン
某県警捜査第四課警部補。そろそろ昇進したい。
( <●><●>)……分手マス
K大学院在籍中。法学を専攻。情報工学、物理学、経営学にも傾倒。
交友関係は広い。モララーをよく世話している。
(-@∀@)……文屋アサピー
就留一年目。癖っ毛で厚い眼鏡。
モララーの知人。話すことに苦手意識あり。
川 ゚ -゚)……素直クー
K大学農学部在籍中。三年生。料理サークルに所属し、相談事務所にも協力。
揚げ物ともやしと猫が好き。お化けが嫌い。
/ ゚、。 /……鈴木ダイオード
K大学近くの古本屋の店長。おじいちゃん。足腰が気になる。
教会によく赴いて読み聞かせボランティアをしている。
717
:
第六話 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:18:17 ID:jLJ4g5vE0
あの日、モララーは急いで警備員室へと向かった。
教授の死体が見つかったことを報告するためだ。
喚いているクーを置いておいたのは気の毒だった。
しかしどのみちクーはあのときとても動けそうな状態ではなかった。
人が錯乱する姿を見るのは、めったにない経験である。
ましてあの表情の薄いクーならば、なおさら衝撃があった。
それから警備員室の人たちがきて、モララーとクーは別室へ移動させられた。
クーはずっと教授の名前を叫びながら、半ば強制的に連行されていった。
こうして農学部棟での夜は終わった。
でも、事件はむしろここから始まった。
718
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:20:20 ID:jLJ4g5vE0
農学部の某教授の首吊り死体が見つかってから、モララーの周囲はにわかに騒がしくなった。
警察が彼の事情聴取を綿密に行い、二回、三回と署に呼び出された。
その度にモララーは、なんで農学部棟にいたのか、どんな状況だったのか話さざるをえなかった。
クーに呼び出されたこと、ラップ現象の正体を探ろうとしていたこと。
エレベーターの話もした。
誰かがあの農学部棟に潜んでいた可能性があったからだ。
ちらっと見かけた黒い服の話もした。
隠すべきではないと思ったからだ。
事件は事件なのだから、しっかり知っていることを伝えるべきだと感じていた。
義務感もあるし、クーのことも頭に入っていた。
取り乱したクーが、下手に警察の追求にあうのはどうしても避けたかった。
クーが警察の取り調べに慣れているとは思えなかったからだ。
ただでさえ、混乱した人は嫌疑をかけられやすい。精神的ショックを負ったクーにそれは重い。
まして自分がちょっと変なことを言って、クーに疑いでもかけられたらたまったものではない。
719
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:22:17 ID:jLJ4g5vE0
( ・∀・)「クーは無事なのか?」
死体発見から二日ほど経って、モララーはようやく警察から解放された。
アパートに帰ってきてモララーはマスに質問した。
( <●><●>)「まだ家で休んでいるときいています」
マスからより詳細に聞いた。
結局クーはまともに事情聴取ができないほどに発狂してしまったらしい。
警察は、本件について自殺が濃厚ということもあり
クーを必要以上に追求することはやめたそうだ。
マスはこれらの話をクー本人ではなく、その両親から聞いたらしい。
ずっと身近にいた人が、亡くなるというのは、どういう気持ちになるのか。
モララーはその答えを目の当たりにしていた。
720
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:24:18 ID:jLJ4g5vE0
( <●><●>)「クーさんは、教授のことをまるで親のようにしたっていたそうなんです」
( ・∀・)「……そうなのか」
教授室に向かったときの、クーの様子が思い浮かぶ。
あの態度は、本当に教授を心配していたのだと、今さらながら思い付く。
( ・∀・)「あの日な、クーにラップ現象の正体を突き詰めるように頼まれていたんだ」
( <●><●>)「ええ、そうらしいですね」
( ・∀・)「そのときは、ただ興味本位でそんなことを調べているんだと思っていた。
でもひょっとしたら、クーは教授のためにも現象を止めたかったのかもな。
自分は怖いくせして」
721
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:26:17 ID:jLJ4g5vE0
( <●><●>)「彼女に聞くことができれはわかりますね。
そのうち、元気になってくれたら」
三年半、一緒にいたつもりだった。
でも、意外とクーのことはなにも知らない。
割りと身近にいてもそうなのだ。
人は人のことがわからない。
そのはっきりとした事実に、今更ながら気付かされた。
( <●><●>)「そういえば、あのあとも軽い騒ぎがあったみたいですよ」
( ・∀・)「騒ぎ?」
( <●><●>)「あの死体が発見されて、騒いでいた日の夜のことです。
学校の林でボヤがあったらしいんですよ。
それで農学部棟の温室の一つが完全に焼失してしまったとか」
( <●><●>)「それが自殺した教授のものだったので、関係性もあるのではとちょっと気になりましてね。
とはいえ君がこうして解放されているんだし、警察はほぼ自殺と断定したようですが」
マスはそういいつつも、どこか釈然としていない様子だった。
722
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:28:17 ID:jLJ4g5vE0
事件から二週間ほどたち、気持ちの整理もついたころだ。
そこで、モララーにとってはっきりとした事実が突き付けられた。
ハインと連絡が取れなくなっていたのである。
連絡先も、繋がらない。
モララーにかかってくることもない。
だから農学部棟での事件の話をすることはできなかった。
モララーとしては、ハインの意見も聞きたかったのに、それがかなわなくて残念だった。
ただしこの頃はまだ、きっとしばらくしたら会えるようになる、とモララーは楽観視していた。
むしろ今まで継続的に会っていたのが不思議だったのだ。
相手は社会人なのだから、そうモララーは自分に言い聞かせる日々を送った。
しかし悪い予感は的中した。
十月になり、学期が新しくなっても、もう待ち伏せしていることはなくなっていた。
723
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:30:20 ID:jLJ4g5vE0
何もわからないまま、時が過ぎていく。
モララーは日々、魂の抜けたように暮らしていた。
ハインはいったいどうしたのだろう。
なぜ何も連絡をよこさないのだろう。
不安ばかりが募る。
そして、新たに疑問が浮かんだ。
農学部棟のその事件と、ハインの失踪は、はたして無関係なのだろうか。
モララーは農学部棟で見かけた影をときどき思い返した。
今にして思えば、あれはハインだったのではないか。
理由と呼べる大したものはないが
ハインと会わなくなりはじめた時期とぴったり一致するのは、偶然とは思えなかった。
しかしハインがもしあのとき農学部棟にいたとして、何をしたというのか。
そこから先の思考はまだ不明瞭だった。
情報が少なすぎた。
724
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:32:18 ID:jLJ4g5vE0
ぼーっとすることが多くなった。
暇さえあればあの日のことを考えてしまう。
教授の死そのものにも疑問があった。
おそらくあの日マスの釈然としない顔もこのためだ。
聞いたところによると、教授が死ぬ理由がまったく見当たらないそうだ。
教授の仕事仲間にしても、むしろあの教授は最近羽振りがよくなったという話だけしていた。
それと自殺だけを無理やり結びつければ、教授が勝手に危ないお金に手を出して
その責任を感じて自殺した、などというストーリーさえ組み立てられそうではあった。
しかし実際にはそのような証拠はまったく見当たらなかった。
誰かが消した可能性も無くはない。
むしろモララーの証言もあり、警察はその線でわずかだが捜査を続けていると聞く。
人が死ぬときには、必ず理由が無ければならない。理由も無く命を絶つはずがない。
モララーはそのことを感じつつも、実際に何か自分なりに捜査をすることはなかった。
すべてが億劫に感じていた。
725
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:34:18 ID:jLJ4g5vE0
十月が半ばになった。
学校が始まってしばらくたつ。
ハインはもちろんだが、クーもまだ顔を見せてこなかった。
元々勉強は出来ていたので、単位には余裕があるはずだ。
亡くなった人のゼミに所属していたはずだが、そのあたりの処理がどうなっているのかはわからない。
クーのことならば、また無事に大学に通えばなんとかなる。
問題は通うまでだ。心が落ち着かなければ、農学部棟にも近づけないのではないか。
モララーはまだクーに会う気にはなれなかった。
もし自分が会ってしまったら、クーはあの日のことを思い出してしまう気がした。
だから、会わない方がいいと思ったのである。
ただその気持ちの裏で、気だるさが蔓延していることも隠しようが無かった。
就職活動の方も身が入らず、アサピーとも連絡を取っていない。
そうしていつのまにか月日は経つ。恐ろしいほどにあっという間に。
ある休みの日。
モララーはふらっと、外に出た。
家の中には誰もいない。マスはこの頃休みの日もどこかへ出かけていた。
726
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:36:18 ID:jLJ4g5vE0
教会にきた。
いつの日かその前に、ハインと歩いたことを思い出す。
あのときはダイオードとも会った。
そこでモララーは、ハインの自然な笑顔と、ぎらぎらした目を見た。
もう、ずいぶん遠い日のことにきこえてくる。
実際は三か月ほどしかたっていないのに。
その日はダイオードと会わなかった。
教会の事務室に、読み聞かせのことについて聞いてみた。
ハソ ゚−゚リ「ダイオードさんですか?」
( ・∀・)「ええ、毎週こちらで読み聞かせをしていると伺ったので」
ハソ ゚−゚リ「ええ、そうでした」
( ・∀・)「でした?」
727
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:38:21 ID:jLJ4g5vE0
教会の事務室で、その職員はどうも言い方を考えている様子だった。
何をそんなに思慮する必要があるのだろうとモララーは首をかしげた。
ハソ ゚−゚リ「どうも九月頃から体調が思わしくなかったらしくて、来られてないんですよ」
ショックを受けた、といったら大げさだろうか。
でも、モララーはあの書店の店長が床に伏す様子が想像できなかった。
確かに健康そうな人ではなかったが。
六年書店に通いつめた。その間ずっとあの人は教会でボランティアをしていた。
それがモララーの思う書店の日常だった。
ずっと変わらないものだと思っていた。
(;・∀・)「そう、なんですか」
そういって、モララーは頭を下げた。
職員さんはどことなく申し訳なさそうな顔をしていた。
モララーはなんだか、みんなが遠くなるのを感じた。
728
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:41:34 ID:jLJ4g5vE0
何も知らなかった。
人は人がわかりきれない。
公園についた。
空は曇っている。
子どもはいない。今が平日だからだろう。
猫は、聞こえる。
ただ、確かにクーがいっていたように少なくなったのかもしれない。
前に来た時よりも明らかに声が小さい。
前に、そう、前にきたときはハインがいた。
あの頃はまだハインに会っていた。
あの初夏の日。
729
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:43:33 ID:jLJ4g5vE0
頭の中では、ハインがいた。
にやにや楽しそうな顔をしている。
その顔しかモララーは覚えていない。
今にしておもえば、笑顔が崩れそうになるたびに彼女は顔をうつ向かせていた。
そしてハインの笑顔が消えそうになるたびに、モララーは合いの手を入れていた。
全てはその笑顔を崩さないために。そしてそれをずっと見ているために。
モララーは自分の行いを想起する。それが全て無駄に終わったとは考えたくなかった。
でも、ハインのどことなく隠された、あのぎらぎらした目が、モララーをしばしば苛んだ。
続いてクーを想起する。取り乱してたのは見た。
でもすぐにモララーは警備員を呼びに行ってしまった。
死体の横に置かせてしまい、今更のように後悔していた。
もしかしたらあのとき、クーは自分の心に深い傷をおったかもしれない。
クーは言いたいことをはぐらかす癖があった。
目線を反らして、それから遠回しに何かを言う。
モララーはそこまではよくわかっていた。
でもそこから先のクーの言いたいことは、結局よくわからないままだった。
730
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:45:33 ID:jLJ4g5vE0
知らないところで人が変わっていく。
マスは、いつも難しいことに取り組んでいる。
ダイオードが体調を崩した。
なんともいえない寂しさがある。
それはそれで仕方のないこと。
それはよくわかっている。当たり前のことだ。
人間は移り変わる生き物なのだから。
だけど……
「邪魔するよ」
声がする。
中年というには、まだ若い。男の声だ。
731
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:47:34 ID:jLJ4g5vE0
モララーはいつかの木のテーブルに突っ伏していた。
いつの間にか眠っていたのだ。
目を擦って、顔をあげる。
(;ー∀・)「……あんたは」
(´・ω・`)「久しぶりだな」
(;・∀・)「あのときの事件の、警部補さん」
(´・ω・`)「そう、ショボンという。
ちなみに、来年には警部になる」
モララーは顔をぼんやりさせていた。
目を細める。笑顔を向ける気はしない。
ショボンの方も、あまり好ましい顔つきではなかった。
(´・ω・`)「酷い顔をしている」
732
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:49:34 ID:jLJ4g5vE0
モララーは鼻で笑った。
(;・∀・)「……ずいぶんな言い様ですね。
確かに寝てたから、痕がついてるかもしれないですが」
(´・ω・`)「それだけじゃないよ」
にこりともせずに、ショボンは言う。
( ・∀・)「わかってますよ」
自分でもわかるくらい、イライラしていた。
ショボンの嫌みについ食ってかかってしまった。
( ・∀・)「もう話すことはなんもないと思います」
(´・ω・`)「事情聴取は終わったよ。
事件のこと以外の話をききたい」
( ・∀・)「話したい気分じゃないんです」
733
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:51:33 ID:jLJ4g5vE0
モララーはもうショボンに目を向けていなかった。
関心もない。はやく一人になりたい。
それだけだった。
(´・ω・`)「ハインのことでもか?」
耳の中で、その名前が反響される。
音の響きと、その顔が結び付くまで、時間がかかった。
(;・∀・)「え?」
(´・ω・`)「会っていたんだろう、彼女と」
ショボンは木のテーブルの向かいに腰かけた。
モララーは、ショボンの真意がわからなかった。
どこまで話していいのか、ハインにとって不都合は無いのか。
734
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:53:33 ID:jLJ4g5vE0
しばらく黙っていたが、嘘をついてもすぐばれると思い、肩の力を抜いた。
ただ、モララーの表情は冷めたままだ。
(;・∀・)「春頃から、夏まで会ってた」
(´・ω・`)「そうか……」
(;・∀・)「でも、それがどうしたんだよ。
あいつはちゃんと休みをとって来てるって」
(´・ω・`)「とってないよ」
唐突に、否定するショボン。
(´・ω・`)「とってない」
735
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:55:33 ID:jLJ4g5vE0
(#・∀・)「じゃあなんですか。
ハインは無断で仕事サボって俺に会いに来ていたって」
(´・ω・`)「いや、そうじゃないんだ」
ショボンはずいっとモララーを見つめる。
重要な話をするときの、彼なりの行動なのだろう。
(´・ω・`)「彼女は警察をやめていたんだ。
春にはもう、な」
一瞬、理解ができなかった。
思考が追い付かない。
これまでの常識が崩れる。
(;・∀・)「どういう、ことだよ」
(´・ω・`)「ハインは君と会っていた。
どうやら、君に、素性を隠してな」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
736
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:57:33 ID:jLJ4g5vE0
お前は何も知らなかった。
お前が一番知りたかった人のことを、最初から、お前は何も知らなかったんだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
737
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 21:59:36 ID:jLJ4g5vE0
(´・ω・`)「彼女は唐突に警察をやめた。
その理由が知りたかったが、私にはわからなかった」
(´・ω・`)「たまたまこの前の首吊り事件でこのあたりに来たとき、K大学の傍を調べた。
そこで、ハインを最近見かけたという話をきいたんだ。
大学に入ってきていた不思議な女性の話として」
(´・ω・`)「やがてその女性、ハインが誰かと会っていたこともわかった。
それが君だ。モララー。
だから、君に会えば事情がわかるかと思ったが、その様子だと無駄足だったようだ」
一気に事情を説明されて、モララーは目をしろくろさせた。
(;・∀・)「ハインは、なんでそんなことを」
(´・ω・`)「君こそ、何かきかなかったのか」
738
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:01:33 ID:jLJ4g5vE0
(;・∀・)「俺はただ……何も……」
思考が巡る。
そうか、ハインは
会っていることにしてほしいのか。
今、気づいてしまった。
教会の帰り道で、ハインが告げた、モララーに会いに来る理由。
『お前に会いにきているんだ、モララー』
あれはつまり、モララーに会っていたことにしたいという意味だったのだろうか。
そんな、そうだとしたら、俺は……
(´・ω・`)「君は、彼女に騙されていたのか」
(; ∀ )「…………」
739
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:03:39 ID:jLJ4g5vE0
モララーは言い返せなかった。
それがくやしくて、ショボンを睨み付けた。
あまりにも、情けない対抗策だった。
ショボンはもう興味を無くしたように、姿勢を正して顎を引いた。
俯き加減で、目をつぶり、小さく唸るように話しだした。
(´・ω・`)「彼女はな、高卒で警察官になった。
それまで随分荒れた経験をしたらしくてな、ときどき話をきいた。
そしてな、昔の話をするとき、彼女は決まって目を輝かせていた
いい意味ではなくてな」
ショボンの言わんとしていることが、モララーにもわかった。
(; ∀ )「ぎらぎらした目、ですか」
ほう、とでも言うようにショボンは息をはいた。
740
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:05:34 ID:jLJ4g5vE0
(´・ω・`)「なかなか上手い表現だ。
あの目は確かにぎらぎら、野心に溢れていた」
猫の声が聞こえない。
弱すぎるのだろうか、もう元気もないのだろうか。
(´・ω・`)「彼女には何か目的があった。
警察をやめ、君をだまし、それでも遂げたい目的が」
(# ∀ )「騙されていたわけじゃない!」
思わずモララーが言う。
ほとんど叫んだに近い形となった。
唐突に話の腰を折られたショボンだったが、その目はすぐに好奇のものとなった。
(´・ω・`)「ほう」
興味があるというふうだ。
モララーはその態度が気に食わなかった。
でも、話すしかなかった。
741
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:08:54 ID:jLJ4g5vE0
( ∀ )「俺はただ、知るのが怖かった」
モララーはどうしても、否定したくなった。
だから声を出した。多少、大きくなったが、気にしない。
( ∀ )「騙されているかもって、もちろんわかってたさ。それくらい。
明らかに、おかしいさ。知らない女が突然会うようになるなんて。
でも、たとえ俺を利用していても、俺は別にそれでも構わないと思ったよ」
モララーの頭の中に、ハインが浮かぶ。
わかっていた、そうとも。
彼女の目が、自分よりもっとずっと遠いところを見ていたことくらいわかっていた。
それでもモララーは、彼女を想い、求めていた。
( ∀ )「俺はさ、暇で、それでいて不安なんだ。
記憶はねえし、親や兄弟や友達は、この数年で急にできた関係なんだ。
それが慣れないうちに、将来のことまで考えなきゃならなくなった。
自分の正体すら不明確なのに、何がしたいかなんて、わかるかっての」
742
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:10:54 ID:jLJ4g5vE0
目頭が熱くなる。
自分の感情を口に出すなんて、なかなかあることではない。
思っていたことを口にだしてしまえば、誰かを傷つけてしまうかもしれない。
記憶が新しくできた今のうちは、そればかり気にして、生きてきた。
せっかくできた関係を壊してしまいたくは無かったからだ。
人は感情を晒せば傷つけあう。
モララーはそれを心の奥で理解していた。
そしてまた何もない状態に戻るのが怖かった。
( ∀ )「アイデンティティっていうんだろ、こういうの。
それが見当たらない不安さ。
そんなときに、俺のことを必要としてくれている人が現れた」
ずっと会っていたかった。
だから何も言わなかった。
自分の感情を出せば、何らかの形で彼女を傷つけてしまうかもしれないから。
743
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:12:55 ID:jLJ4g5vE0
( ∀ )「会っていたら、不思議と寂しさが紛れたんだ。
それが楽しかった、それを、ぶち壊す気分には慣れなかった。
好きとか愛してるとかじゃない、そんな立派なもんじゃない。
一緒にいて、関わっていたい、ただそれだけだったんだ」
特にショボンに向けて話していたわけではない。
それは独白というほうが相応しかった。
沈黙が流れた。
鉛色の空が、モララーとショボンを包む。
(´・ω・`)「雨が降りそうだ」
切り出したのはショボンだった。
もう帰る、そういうことだろう。
(´・ω・`)「モララー、はっきり言おう」
744
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:14:54 ID:jLJ4g5vE0
(´・ω・`)「私は君の過去は知らないし、君の考えにそれほど興味があるわけではない。
だから同情の言葉をかけるつもりはない」
随分と丁寧に説明してくれるものだ。
モララーはもう思ったことを口には出さなかった。
(´・ω・`)「ただ、ハインは私の大事な部下だった。
だから本意を知りたがっている。
その点については君も同じだと思っている」
モララーは俯いた。
もうショボンと顔を合わせるのも疲れていた。
(´・ω・`)「僕は警部になってね、来年度から数年間本庁の方へいかなければならないんだ。
だからハインのことを探るならいまのうちなんだ。
つまり、なんとか彼女の行方を探りたいと思っている」
ショボンは何も言わず、ずいっと何かをモララーに見えるように突き出した。
白い紙、名刺である。
(´・ω・`)「何かあったらここへ連絡してくれ」
745
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:16:54 ID:jLJ4g5vE0
モララーはショボンの名刺を受け取った。
名前と連絡先を見せるためだけの簡素なものだ。
そういえば警察って名刺を持つ印象はないな、まあ、配る必要ないものな、
なんて思いながら、しげしげと眺めていた。
(´・ω・`)「それじゃあな」
ショボンは帰っていった。
モララーは返事をしなかった。
木のテーブルの上に、白い名刺だけ置かれていた。
ややあって、その名刺をポケットにしまった。
そのとき、ぽつぽつと、テーブルに斑点ができ始めた。
雨が降り始めた。
それを防ぐ手立ては無い。
モララーはよける気さえ起きなかった。
746
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:19:04 ID:jLJ4g5vE0
雨は一気に勢いを増す。
公園で、モララーは一人、震えていた。
猫の声も聞こえない。
子どもたちもいない。
クーも、マスも、ダイオードも、変わってしまった。
そしてハインはいない。
みんなどこへいっちまったんだ。
開いた口から何かを叫んでも、全ては雨音に飲み込まれてしまった。
747
:
第六章 公園
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:21:20 ID:jLJ4g5vE0
それから、何もなかった。
いや、何をする気も起きなかった。
ハインとの連絡が取れないまま。
『( ・∀・)探偵モララーは信じているようです』 第七章 球場 へ続く。
748
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/07/28(日) 22:27:39 ID:jLJ4g5vE0
目次
>>454-460
序章
>>473-496
第一章 邂逅
>>502-534
第二章 再会
>>540-562
第三章 図書館、パソコン、カツカレー①
>>565-585
第三章 図書館、パソコン、カツカレー②
>>593-621
第三章 図書館、パソコン、カツカレー③
>>625-648
第四章 教会
>>653-676
第五章 農学部棟①
>>681-711
第五章 農学部棟②
>>716-747
第六章 公園
本日の投下は以上。
前半が終わり、必要な描写はすべて書き終えました。
一週間お休みして、次回の投下は8月10日(土)を予定。
土日で第七、八、九章を投下します。
いつも支援ありがとうございます。
今しばらくお付き合いください。
それでは。
749
:
名も無きAAのようです
:2013/07/29(月) 12:38:53 ID:D/6Tl8kcO
ハインにも謎の影の部分か、後半に期待
750
:
名も無きAAのようです
:2013/08/04(日) 19:37:43 ID:.OrIwGoI0
乙!
751
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:06:12 ID:aJzsIbacO
そろそろだな
752
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/10(土) 21:59:35 ID:zY0bf3Qg0
スレが足らないので新スレにて投下します。
( ・∀・)探偵モララーは信じているようです
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1376135025/
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