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( ゚∀゚)スナイパーは幼女を見くびっていたようです

1名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:13:56 ID:6may6kLsO
いろんなあれを参考にしてるっす
この作品はあまり長くするつもりはないっす
では

2名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:15:08 ID:6may6kLsO
 


──


 1977年 6月3日 23時18分。
 ソビエト連邦西部、ニコーチュ山中。

  _
( ゚∀゚)「…スナイピングポイント到着、セッティングまで120秒」

( ´∀`)「まーた反アラマキ政権派の武装集団かモナ」
  _
( ゚∀゚)「文句言うな。暴力じゃねえと何も動かせない世の中なんだ」

 
 まあ、その暴力を今から暴力で制するのだが。
 そう心の中で呟きながら、観測手のモナーと狙撃の準備を続ける。

 狙撃ポイントからターゲットポイントの方向の確認、黒を基調にした迷彩服とカバーコートでのカムフラージュ。

  _
( ゚∀゚)「120秒、セッティング完了」

( ´∀`)「ターゲットポイントまでの距離、677m。風速、南南西に4m。気温21度。湿度10パーセント」

3名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:16:34 ID:6may6kLsO
 
 扱い慣れた狙撃用のライフルを構え、横でゴーグルを覗くモナーが状況を呟く。

 人情味溢れた性格なのに、常に冷静さを見失わないモナー。
 彼の観測手としての素質が、自分を政府直属のスナイパーにまで成長させてくれたのかもしれない。

 
 スコープの拡大値を挙げ、ターゲットポイントとなる議員宿舎前の門へと照準を合わせる。
 視界は良好だ。街明かりのおかげで、スコープをわざわざ暗視モードに切り替えないで済む。

 
( ´∀`)「そろそろ予定時間だモナ。23時21分、撮影開始」

 
 記録用のカメラのスイッチを入れ、またゴーグルを覗くモナー。
 直後、数台の4人乗りのジープが、議員宿舎前の道路の向こうに現れた。

 
( ´∀`)「ジョルジュ、アレだモナ」
  _
( ゚∀゚)「ああ」

( ´∀`)「ジープは6台、いずれも武装してあるモナ…でも縦一列に走るなんて馬鹿な奴らだモナ」

4名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:17:29 ID:6may6kLsO
 
( ´∀`)「狙いは先頭のジープの前輪。距離802m、風速南西3m」
  _
( ゚∀゚)「オーライ…」

 
 照準を先頭のジープの前輪に当て、引き金を弾く。
 直後、ジープは滑り込むように横転し、後続車を巻き込んでいった。

 一時的な足止めは成功した。
 ジープから議員宿舎までの距離は、およそ120m。

 どこからの攻撃か掴めていない故の警戒か、6台のジープからは誰一人出てこない。
 横転したジープへの救助にも走らないところを見ると、仲間の犠牲など取るに足らないほどの、反政権への確固な信念が伺える。
 そして、彼らが如何に意思統一のされた組織であるのかも。

 
( ´∀`)「次は2台目の運転手を撃つモナ。距離792m、風速南西3m」
  _
( ゚∀゚)「おう」

 
 指示通り、横転に巻き込まれた2台目の運転席のシルエットに照準を合わせる。
 次に放った銃弾は、綺麗にシルエットの頭部を貫いた。

5名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:18:54 ID:6may6kLsO
 
 しかし、それがマズかったらしい。
 今の狙撃によって、攻撃の方向を大方理解してしまったようだった。
 横転車の後続車である5台のジープから、何人かが飛び降りた。
 全員突撃銃のような武器を持ち、銃口を此方に向けている。

 そして、銃弾の雨がニコーチュの山を襲った。
 反射的に銃弾の死角になるよう身を隠す。

 
(;´∀`)「くっ…狙撃ポイントを変えるモナ!B地点まで走るモナ!」
  _
(;゚∀゚)「Bつったって、同じニコーチュの山中だ!動くほうが危険だぞ!」

(;´∀`)「でも、このままやり過ごすのは至難だモナ!」

 
 チッ!と大きな舌打ちを漏らし、そのまま狙撃銃を装填する。
 
  _
(;゚∀゚)「…とにかく、少しでも奴らの攻撃力を下げるんだ!その後にB地点に走って攻撃を続ける!」

( ´∀`)「了解だモナ!」

6名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:20:06 ID:6may6kLsO
 
 大雨のような銃声と、迫りくる何百もの火線。
 だが、まだ此方の位置を細かいところまで把握していないのだろう。その着弾点には多少のばらつきがある。

 
( ´∀`)「手前の奴から撃っていくモナ!距離791m、風速南西4m!」
  _
( ゚∀゚)「ああ!」

 
 手前で片膝をついて銃を撃っている男に、スコープの照準を合わせる。
 引き金を引いた直後、男は飛び上がるように仰向けに倒れた。
 銃弾は、男の眉間を貫いていた。

 
( ´∀`)「次はその後ろ、開けたドアに隠れて撃ちまくってる奴だモナ!距離792m、風速南西4m!」
  _
( ゚∀゚)「オーケイ!」

 
 開けっ放しの車のドアに隠れ、銃と顔だけ出している男に銃口を向け、銃弾を放つ。
 銃弾は見事に男の側頭部を削ぎ取っていった。

7名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:21:29 ID:6may6kLsO
 
 狙撃のペースは非常に速い。
 だが、それをものとも言わせないほど、相手の数が多い。
 相手は残り17人。もうほとんど此方の位置は把握されてきている。

 
( ´∀`)「…やっぱりこれ以上は危険だモナ!B地点まで走るモナ!」
  _
( ゚∀゚)「了解!」

 
 カバーコートを投げ捨て、ニコーチュの山中を横切りに走る。
 狙撃ポイントB地点まであと僅かというところで、前を走るモナーが急に立ち止まった。
 少しだけ、体を震わせている。

  _
( ゚∀゚)「おいモナー!突っ立ってる暇はねえだろ!」

(; ∀ )「……」
  _
( ゚∀゚)「モナー!……?」

 
 ゆっくりと、モナーが此方を振り向く。
 その額からは、大量の血が流れていた。
 直後、モナーは白目を剥きながら崩れ落ちた。

  _
(;゚∀゚)「モナー!!」

 
 想定外のダメージ。恐らく、モナーは頭部に銃弾を喰らっている。

 滑り込むようにB地点まで走り、死角に身を隠して無線機を取った。

8名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:24:11 ID:6may6kLsO
  _
(;゚∀゚)「此方"ボストーク"20番!HQ、応答願う!」

『こちらHQ。ボストーク20、どうぞ』
  _
(;゚∀゚)「作戦"ヤオイ"にて観測手が被弾!狙撃がバレている!大至急、応援を要請する!」

『許可を問い合わせる。その間にそちらの状況を細かに報告せよ』
  _
(;゚∀゚)「状況…」

 
 死角から顔を出し、ゴーグルでターゲットポイントを見る。
 相手は前進はしていない。だが、相変わらず銃弾の雨を此方に向けている。
 素早く身を隠し、無線機を構え直した。

  _
(;゚∀゚)「敵は2ドア4人乗りのジープ6台、6台全てに4人ずつ乗車していたもよう」
  _
(;゚∀゚)「うち1台を無力化、2台目の運転手を撃ったところで狙撃がバレた。その後2人を狙撃」
  _
(;゚∀゚)「位置が特定されてきたため、B地点に移動していたところ、観測手が被弾。現在B地点で隠れている」

『敵の詳細は?』
  _
(;゚∀゚)「反アラマキ政権派の武装集団に間違いない。武器はカラシニコフ系の突撃銃。全員が所持している」

9名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:25:32 ID:6may6kLsO
  _
(;゚∀゚)「それと…」

 
 もう一度、ターゲットを覗き見る。

 そして、気付いてしまった。

 相手は全員私服だが、あるマークのついた帽子を着けていることに。
 それは、同じソビエト内の政党のマークであることに。

  _
(;゚∀゚)「…それと、奴らはギコ率いる自由党のマークを身に付けている。自由党の武装勢力だ」

『それは本当か?』
  _
(;゚∀゚)「ああ、間違いない。アラマキ政権を崩壊させて、ギコ政権を確立させる気だ」

『ボストーク20。今お前がそれを話しても、恐らく誰も信用しない。証拠はあるのか?』
  _
(;゚∀゚)「証拠…」

 
 そうだ。こんな一狙撃手の証言など、誰も信用するはずがない。
 ましてや、アラマキ政権を破壊するために他の政党が武装したなんて話、一体誰が真面目に聞くだろうか。

 証拠はないのか。
 これを裏付ける、決定的な証拠は。

  _
(;゚∀゚)「…ある」

『何?』
  _
(;゚∀゚)「記録用のビデオテープだ!A地点に置いてある!」

『わかった。安全を確保してからテープを回収しろ』
  _
(;゚∀゚)「了解!」

10名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:28:35 ID:6may6kLsO
 
 無線機を戻し、うつ伏せのまま狙撃銃を構える。
 相手は変わらず17人、全員が車から降りて銃を撃ち続けている。

 そのうちの1人を撃った一瞬後、9人が議員宿舎へと走っていった。

  _
(;゚∀゚)「クソッ!!」

 
 此方の任務がバレたのか、本来の目的を思い出したのか。
 アラマキ率いる社会党の議員宿舎に、武器を持ったまま9人が走り出したのだ。

 そう、此方の任務は「社会党議員の襲撃を防ぐこと」。
 これを実行できなければ、ソビエト政府は大きく揺らいでしまう。

 下手をすれば、冷戦の相手であるアメリカに火が付いてしまう。

 
 なんとしても止めなければならない。
 武装勢力なんかに政権を握らせてはいけない。

 議員宿舎まで走る男の1人を撃ち、更にもう1人を撃ち倒す。
 3人目に向けた銃弾は、僅かに外れてしまった。

11名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:30:02 ID:6may6kLsO
  _
(;゚∀゚)「チッ!!」

 
 観測手さえ居れば。モナーさえ居れば。

 死角に隠れる暇をも惜しみ、そのまま銃の弾倉を交換する。
 銃を構え直したところで、無線機から音が鳴り響いた。

  _
(;゚∀゚)「こちらボストーク20!時間が無い、簡潔に言ってくれ!」

『ボストーク20。応援の許可は下りなかった。現状の戦力で対応せよ』

 
 一瞬、何を言っているのか理解できなかった。

 どういうことだ。確実に潰さなければならない相手のはずだ。

  _
(;゚∀゚)「…ふざけんじゃねえ!平気で武器を持つギコなんかに政権を握らせていいのかよ!」

『こちらも、お前という"武器"を使っている。これ以上事を大きくして、アラマキ政権の反撃であることを悟られるわけにはいかない』
  _
(;゚∀゚)「クソッタレ!」

 
 無線機を投げ捨て、再度狙撃の体勢に入る。
 敵の襲撃グループから議員宿舎まで、残り100mも無い。

  _
(;゚∀゚)「行かせるかよ!」

12名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:31:15 ID:6may6kLsO
 
 1人、また1人、宿舎へと走る相手を撃っていく。

 時間がない。
 ジープの横から撃ってくる、待機グループの7人は無視してもいい。
 とにかく、宿舎に誰も入れてはいけない。

  _
(;゚∀゚)「クソ、止まりやがれ!」

 
 走る襲撃グループは残り6人。
 5人。
 4人。

 確実に撃ち倒していくが、それでも止まらない。
 もう、距離がない。

  _
(;゚∀゚)「止まれ!」

 
 先頭を走る男の脇腹を撃ち、残り3人。
 その後ろの男の胸を貫き、残り2人。
 走りっ放しの右足を吹き飛ばし、残り1人。

  _
(;゚∀゚)「止まりやがれェェッ!!」

 
 次に放った銃弾は、門を飛び越えた男の首を貫いた。

13名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:32:27 ID:6may6kLsO
  _
(;゚∀゚)「ハァ…ハァ…」


 危なかった。
 どうにか、襲撃を塞ぐことができた。

 少しだけ気を緩めた、その直後。
 小さな銃弾が、自分の脇腹を貫いた。

  _
(;゚∀゚)「あ……?」

 
 しまった。
 襲撃グループに夢中で、待機グループの存在を頭から消してしまっていた。

 熱さに似た痛みが、全身を駆け巡る。

  _
(; ∀ )「う、あ…」

 
 震える手で銃を構え、スコープを覗く。

 しかし、スコープに相手の姿が映ることは無かった。
 暗闇の世界に足を踏み入れてしまったような、あまり味わいたくない気分だった。

 そのまま、意識は徐々に薄れていった。

 

──

14名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:33:30 ID:6may6kLsO
 

  _
( ゚∀゚)スナイパーは幼女を見くびっていたようです

 
.

15名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:34:10 ID:6may6kLsO
──

 

 議員宿舎襲撃を、マスコミが取り上げることはなかった。
 事を知られたくなかったアラマキの指示で、この事件も、任務も、無かったことにされたのだ。

 だが、それは同時に「社会党議員宿舎襲撃」の作戦に失敗した、自由党のギコを救ってしまう結果にもなる。

 上官のショボンからその話を聞かされたのは、それから二日後の朝、病室の天井を眺めていた時だった。


(´・ω・`)「お前を攻撃していた連中は、お前からの攻撃が止んだことを知って、仲間達の死体を集めて逃げたようだ」

(´・ω・`)「…ジョルジュ、お前はよく働いた。最高のスナイパーだ。お前でなければ、この事件は最悪の展開を迎えていた」
  _
( ゚∀゚)「……」

(´・ω・`)「だが、ビデオテープの回収だけが達成できていない」
  _
( ゚∀゚)「…そっちで回収できなかったのかよ」

(´・ω・`)「A地点でビデオテープの確認は取れなかった。恐らく、向こうの攻撃の際にどこかに吹き飛ばされたんだ」
  _
( ゚∀゚)「襲撃の証拠も消えて平和になりました、ってか?」

16名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:35:32 ID:6may6kLsO
 
 ショボンの顔を見れず、反対側の窓へと目を向ける。

 納得できるわけがない。
 自由党の武装蜂起を抑えることができたというのに。
 自由党が襲ったという証拠も掴めたのに。

 相棒を犠牲にしてまでやり遂げた、重要な任務だったのに。

 
(´・ω・`)「…気持ちはわかる。だからこそ、お前にビデオテープの捜索を託したい」
  _
( ゚∀゚)「銃で吹き飛ばされたテープが何になるんだよ」

(´・ω・`)「中のフィルムが破壊されたとは限らない。そして、相手も撮影されていた可能性を無視してはいないはずだ」
  _
( ゚∀゚)「……!」


 思わず、ショボンに顔を向ける。

 ようやくショボンの言いたいことが理解できた。
 戦いは、まだ終わってはいないのだ。

17名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:36:56 ID:6may6kLsO
 
(´・ω・`)「真実を暴きたいのなら…モナーの無念を晴らしたいのなら」

 
 被弾した脇腹に手を当てる。
 痛みは大分薄れている。臓器への支障もないらしい。

 
(´・ω・`)「奴らより先に、ビデオテープを回収してくれ」
  _
( ゚∀゚)「…いいのか?アラマキからの命令ではないだろ?」

(´・ω・`)「気にするな。俺はお前の証言を信用している。今のうちに自由党に釘を打たなければな」

 
 ショボンが立ち上がり、病室の出口へと歩き出した。
 病室から出る間際、ショボンは立ち止まり、真っ直ぐに此方を向いた。
 

(´・ω・`)「…誰もモナーのことをお前に責めたりはしない。襲撃を食い止めたことは誇りに思うんだ」

18名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:37:52 ID:6may6kLsO
 
 病室のドアを閉める音が、寂しく響いた。

 違う、違うんだと、そう言いたかった。
 狙撃の腕が上がったのは、モナーという最高の相棒がいたからだった。
 モナーという観測手がいなければ、自分には何も無かった。

 褒めるなら、モナーを褒めてほしかった。
 「誇りに思え」という言葉は、モナーにかけてほしかった。

  _
( ゚∀゚)「…なんでだよ……」


 死ぬべきは、モナーではなかった。
 モナーを失ってはならなかったのだ。


 もう一度、窓の外へと目を向ける。

 晴れ晴れとした真っ青な空を、綺麗だと思えるわけがなかった。

 

──

19名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:38:52 ID:6may6kLsO
──

 

 同日夕方、ニコーチュ山麓の道路脇。

 
*('')*「あーあ、また国語の宿題出されちゃった…」

 
 小学校に上がったばかりのヘリカルは、一人で家路を歩いていた。

 一緒に帰る友達なんていない。
 片親であることをからかわれて、いわゆるイジメの対象になってしまったからだった。

 
*('')*「…つまんない」

 
 球体に近い石を見つけ、それを蹴りながら歩く。
 二回目に蹴ったところで、石はアスファルトの道路を逸れてしまった。

 
*('')*「あっ…」

 
 あれほど丸い石を失いたくない。
 道路脇をくまなく探していると、ヘリカルは妙な物体を見つけた。

20名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:39:37 ID:6may6kLsO
 
*('')*「…あ、ビデオのやつだ!」

 
 穴の空いたビデオカメラ。
 そこから、まだ無傷のフィルムが転がり出ていた。

 
*('')*「持ってかえろーと!宝物〜!」

 
 フィルムを両手で持ち、スキップで家路を進む。

 その直後にすれ違った数台のジープを、ヘリカルが疑問に思うことはなかった。

 

──

21名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 01:40:23 ID:6may6kLsO
今回はここで区切らせていただきっす

22名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 07:52:04 ID:9KOhwsOM0
うっすうっす

23名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 08:22:00 ID:nZegVM1gO
面白くなっていきそう 
これからの展開に期待

24名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 10:16:26 ID:0owJqsrMO
*(‘‘)*おつおつ

25名も無きAAのようです:2012/02/22(水) 10:23:41 ID:qhx7hHzwO
乙。期待してる

ダメだヘリカルが圧縮されてるのがどうしても気になるw

26名も無きAAのようです:2012/02/23(木) 06:09:52 ID:LwIIX9do0
乙。このままシリアスでいくのかハートフルに転向するのか全く予想がつかない

27名も無きAAのようです:2012/02/23(木) 14:04:05 ID:ff0mqCBw0
なんでヘリカルは圧縮されるんだろう?

28名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:24:24 ID:eFvbzJjoO
コメントありがとうっす
ヘリカルはAAがわからなくて、ググってみたら圧縮されたやつがあったのでそれをそのままコピって使っているという深いワケがあるっす

では続きいきます

29名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:27:41 ID:eFvbzJjoO
 
──


 「社会党議員宿舎への襲撃に失敗した」という報告を受けて三日後。
 次の報告は、自由党党首のギコの表情をより険しくさせた。


(,,゚Д゚)「フィルムが見つからないだと?」

( ゚∋゚)「…はい。ビデオカメラは発見しましたが、フィルムが抜かれていまして…」


 これだけは避けたかった。
 相手が撮影したビデオカメラには、間違いなく自分達の襲撃の様子が映っているはずだからだ。

 襲撃に失敗しただけならまだ良い。
 ただ、自分達の正体を公開されるのは最悪だ。
 それだけで、自由党は崩壊してしまう。
 政権を握るチャンスを失ってしまう。

30名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:28:47 ID:eFvbzJjoO
 
 その想いが表情に出てしまったか。
 ビデオカメラの捜索隊として派遣した部隊長のクックルは、その巨体に似合わず顔を伏せた。

 
(,,゚Д゚)「例の狙撃相手に回収されたのか?」

( ゚∋゚)「わかりません…が、もし回収されているなら既に何らかの動きがあるかと」

(,,゚Д゚)「そうだな…」


 正直、狙撃してきた相手の目処はついている。

 恐らく社会党側が雇っている暗殺要員の一人だろう。
 そうでなければ、襲撃を先読みした上で待ち伏せするなど不可能だ。

 だが、社会党側が回収したとなれば、今すぐにでもフィルムの中身を公開して自由党を潰すはずだ。
 そうなると、第三者がただ拾ってしまった可能性も考えなければならない。

31名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:30:47 ID:eFvbzJjoO
 
( ゚∋゚)「…回収した人間に関しては、少し気になる情報があります」

(,,゚Д゚)「気になる情報?」

( ゚∋゚)「はい。フィルムのような物を持って歩く、ある人物の姿が近隣で目撃されています」

( ゚∋゚)「私達の部隊でも、何人かがその人物を見たかもしれないと証言しているのです」

(,,゚Д゚)「ほう、誰だ?」


 有力な情報だ。
 もし、その証言が本物であった場合、フィルム回収はすぐにでも取りかかれる。

 期待の目を向けるギコに、クックルは少し言いづらそうに答えた。


( ゚∋゚)「それが……幼女です。7歳くらいの」

(,,゚Д゚)「……幼女?」

 

──

32名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:31:54 ID:eFvbzJjoO
 
──


 一週間後。
 社会党側の捜索隊がいくら見回っても、ビデオカメラもフィルムも見つかることはなかった。

  _
( ゚∀゚)「……やっぱり、自由党側が回収しちまったのか?」


 病院から出て、そのままショボンと共に捜索に向かった、その帰り。
 ショボンが運転する車内で、思わず口からこぼれ落ちた台詞だった。

 悔しかった。
 モナーを失ってまで手に入れた事実なのに、それすら守りきれなかった自分が憎たらしかった。

 慰めの言葉なんて、かけてほしくない。
 ショボンが口を閉ざしたままでいてくれるのが、何よりもありがたかった。

 だが、ショボンに洩らしたかった悩みはもう一つあった。

  _
( ゚∀゚)「……なあ、ショボン大佐」

(´・ω・`)「なんだ」

33名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:32:43 ID:eFvbzJjoO
  _
( ゚∀゚)「俺、これからどうなるんだ?」


 ショボンの瞳が、何かを察したように揺れる。

  _
( ゚∀゚)「新しい観測手でも探して、俺にスナイパーを続けさせるのか?」
  _
( ゚∀゚)「それともKGBの職でも紹介してくれるのか?」


 ショボンは感づいてくれているのだろうか。
 もう、スナイパーなど続ける気がないということに。

 だが、この世界から抜け出すことは許されない。
 これからも暗殺の命令が下り、口を閉ざされ、堅気の社会からは切り離されていくのだろう。


(´・ω・`)「…少なくとも、フィルムの回収まではお前の仕事だ。そこから先はわからない」
  _
( ゚∀゚)「……」

34名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:33:59 ID:eFvbzJjoO
 
 もう限界なのだ。
 人を殺すのも、殺されるのも。

 世界が「平和」に注目している中で、どうして血を流さなければならないのか。

  _
( ゚∀゚)「……戦争はもう終わったはずだ…」

(´・ω・`)「?何か言ったか?」
  _
( ゚∀゚)「…なんでもねえ。近くをもう一度探すから降ろしてくれ」


 荷物を持ち、半ば飛び降りるように車から出る。
 少し、一人になりたかった。

  _
( ゚∀゚)「……」


 ニコーチュ山麓を歩き、小さな町に入る。

 戦争はもう終わったはずだ。
 先程の自分の呟きをふと頭の中で繰り返してみると、自嘲とも言える笑いが込み上げてきた。

35名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:35:41 ID:eFvbzJjoO
 
 忘れていた。今は「冷戦」の最中なのだ。

 世界中を巻き込む兵器開発競争、宇宙開発競争。
 西側と東側による、子供のケンカのような主義陣営拡大競争。

 どれを見ても、血を流すためにやっているようなものではないか。
 戦争はなくならない、という結論を模索しているような動きじゃないか。


 人間はバカだ。
 社会とは、どうしようもないバカ達の形式的な動きだ。
 戦争とは、そんなバカ達が唯一輝ける好機なのだ。


 もう少しだけ、考えてくれれば。
 誰も死なずに済んだのに。
 誰も殺さずに済んだのに。

  _
( ゚∀゚)「……」


 小さな町の中を、ただ足に任せて進んでいく。

 ふと、聞き覚えのある音が微かに聞こえ、顔を上げた時だった。

36名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:36:37 ID:eFvbzJjoO
  _
(;゚∀゚)「……!!!」


 自分の体が、一瞬で凍りつくのを感じた。

 視線の先は、一軒の民家の、窓から見える室内。
 室内のテレビには、あの社会党議員宿舎襲撃の記録映像。
 そして。


*('')*


 それを呆けて見つめる、一人の幼女。

  _
(;゚∀゚)「まじかよ…!!」


 フィルムは第三者に見つかった。中身も見られてしまった。
 だが、幸か不幸か、それを見ているのは幼女一人。

 急いで回収しなければ。
 自由党の闇を暴ける、最高のチャンスが訪れているのだ。

37名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:37:58 ID:eFvbzJjoO
 
 全速力で玄関に向かい、嵐のようにノックする。
 中から出てきたのは、怪訝な顔のあの幼女だった。

 都合がいい。親と話をすると変に長引いてしまうはずだからだ。


*('')*「おにいちゃん誰?」
  _
( ゚∀゚)「俺は…ビデオ屋さんだよ。実はね、このあいだ、大事なビデオを無くしちゃったんだ」

*('')*「あ!もしかして、男の人がいっぱい倒れたりするやつ?」
  _
( ゚∀゚)「そう!君がさっき見てたやつ!あれを返してほしいんだ」

*('')*「いいよ〜つまんなかったし。ちょっと待ってて!」


 最高のガッツポーズを、心の中で決める。

 話のわかる幼女だ。やはり子供は利口に越したことはない。

38名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:38:50 ID:eFvbzJjoO
 
*('')*「はい、これ!」


 幼女が差し出したフィルムを、確かに受け取った。

 良かった。
 これで、自由党の悪事を公開することができる。
 モナーの無念を晴らせられる。

  _
( ゚∀゚)「これ、誰にも見せてないかな?」

*('')*「見せてないよ!」
  _
( ゚∀゚)「そっか、ありが……」


 突如、体が何かを感じ取った。
 言葉を切り、辺りを見渡す。

 その直後、目の前のドアに風穴が空いた。

  _
(;゚∀゚)「──中に入れ!早く!」

*(;'')*「!?」

39名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:39:51 ID:eFvbzJjoO
 
 幼女を押し込み、自らも家の中に飛び込む。
 その一瞬後、またしてもドアに風穴が空いた。

  _
(;゚∀゚)「狙撃だ!クソっ!」

*(;'')*「…?」
  _
(;゚∀゚)「なるべく奥で隠れてろ!」


 間違いなく、狙撃されている。恐らく自由党の連中だ。
 一足だけ先にフィルムを手に入れたが、それがいけなかったようだ。

 奴らは死に物狂いにフィルムを手に入れるつもりだ。
 このジョルジュを殺してでも。

  _
(;゚∀゚)「クソ、武器が…」


 現在持っている武器は、32口径の拳銃が一丁。
 あまり距離があると力を発揮しない武器だ。

40名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:41:02 ID:eFvbzJjoO
 
 狙撃の銃声が全く聞こえないあたり、相手はかなり距離を取って狙撃している。
 拳銃一つで切り抜けられるかは運次第だ。

  _
(;゚∀゚)(ここは…玄関が山向きだったな)


 思い出せ。
 ニコーチュ山からほぼ直線を歩き、道路沿いの民家の窓からフィルムを発見した。
 その窓から向かって左側面、つまりニコーチュ山に向いているほうに玄関があるのだ。

 弾痕を見る限り、その山中から狙撃しているのは間違いない。

  _
(;゚∀゚)(反対側から逃げるか…)


 ニコーチュの麓からでも、この家は1kmは離れているはず。
 死角を使い、走って逃げることは可能だ。

 だが、問題はこの幼女だ。

41名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:42:18 ID:eFvbzJjoO
  _
(;゚∀゚)(置いて行っちまうと、殺されるだろうしな…)

*('')*「おにいちゃん、まだー?」
  _
(;゚∀゚)「あーごめん、もうちょい待って」
  _
(;゚∀゚)「…いや隠れてろって!!」


 この幼女、話がわかるのかわからないのか判断に困る。
 隠れていると思っていたが、実は横にいたのか。

  _
( ゚∀゚)「……!」


 だが、おかげで活路が見えてきた。

  _
( ゚∀゚)「…なあ、この家に双眼鏡はあるか?」

*('')*「え?」



──

42名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:43:15 ID:eFvbzJjoO
 
──


( ゚∋゚)(…立てこもったか)


 ニコーチュ山中。
 うつ伏せで狙撃銃を構えたまま、クックルは1km先の民家を見据えていた。

 スコープ越しに見ると、手の届きそうな位置にそれは見える。
 社会党側のスナイパーであるジョルジュと、問題の幼女が籠もっている家だ。

 恐らく、奴は反対側の死角から逃げるはずだ。
 だが、家の反対側は直線の路地になっており、いずれにしても狙撃には絶好の位置に入る。


 容易い。
 フィルムはもう目の前と言ってもいい。

43名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:44:14 ID:eFvbzJjoO
 
( ゚∋゚)(スタミナ勝負のつもりか?)


 一向に動きのない民家。それを見ながら、見下すように笑みを浮かべる。

 その直後。
 クックルから3メートルほど離れた木に、銃弾が接触する音がした。


(;゚∋゚)「──え?」


 スコープから顔を逸らし、音のした木を見る。
 間違いない。着弾の痕がある。

 狙撃されているのか。だが、武器を持っているようには見えなかった。


( ゚∋゚)(…そうか、わかったぞ)


 これは「狙撃」ではない。ただの「銃撃」だ。
 恐らく市販の双眼鏡か何かを使いながら、護身用の銃で当てずっぽうに撃っているのだろう。

44名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:45:41 ID:eFvbzJjoO
 
 その証拠に、弾痕はかなり小さかった。使っているのは32口径かそこらの拳銃だろう。

 そして、此方が驚いた隙に逃げ出すつもりなのだ。

 考えが甘い。
 遠距離狙撃に拳銃で応戦するのには確かに驚いたが、驚き続けるほど馬鹿じゃない。


 スコープを覗きながら、家から出てくるその時を待つ。

 出てきたら、すぐにその体を貫いてやる。
 自由党政権の時代を見せてやる。


( ゚∋゚)「……」


 だが、出てこない。


( ゚∋゚)(…まさか、銃だけ撃って立てこもりを続けているのか?)


 そんな馬鹿な。まるで意味がない。

 スコープを覗き、家の周りを観察する。
 ジョルジュが逃げていることに気付いたのは、それからすぐだった。

45名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:48:42 ID:eFvbzJjoO
 
(;゚∋゚)「──クソッ!!」


 どうして逃げられたかなんて、すぐにわかった。
 簡単なことだ。ジョルジュは此方からの死角である家の反対側ではなく、敢えて玄関側から逃げ出したのだ。

 双眼鏡を使って、拳銃で当てずっぽうな銃撃をして、此方の目を一時的に逸らした。
 玄関から飛び出したのはその時だ。
 ジョルジュは、此方が目を逸らした後に反対側の路地を見ることを読んでいたのだ。


 それもそうだ。普通の人間は、逃げる場合は死角を選ぶ。
 追う人間はそれを読んで死角を狙う。

 だからこそ、ジョルジュはその発想と逆のコースを選んだのだ。


 ジョルジュは知っていたからだ。
 「隠れているようで実は此方側に向かってきている」というのが、スナイパーが一番嫌がる事だということを。

46名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:50:16 ID:eFvbzJjoO
 
(;゚∋゚)「……」


 そのまま、スコープで町の中を探る。

 逃げ回るジョルジュの姿は、すぐに見つかった。
 だが、狙撃するにはもう遠過ぎる。

 そして、またも予想外なものがそこにはあった。

    _
≡≡(;゚∀゚);'')*


(;゚∋゚)「……」


 何故か、ジョルジュは幼女を持ち上げながら走っている。


 とにかく、まだフィルムを逃したわけではない。
 急いで狙撃銃を片付け、町へと走り出した。



──

47名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 00:51:07 ID:eFvbzJjoO
今回はここまでっす
うっす

48名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 01:36:55 ID:tfaaylLY0
乙っす

49名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 11:04:06 ID:ZtlwuPps0
乙乙ー!

50名も無きAAのようです:2012/03/15(木) 20:20:42 ID:gDwJADPQO
乙、次回も期待!

51名も無きAAのようです:2012/06/30(土) 21:49:47 ID:1CS1ZGy20
まだ


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