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川 ゚ 々゚)くるうは美味しくいただくようです

1名も無きAAのようです:2012/01/04(水) 23:35:42 ID:WCCmjj5s0


       閲覧注意

28名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:03:20 ID:wopkdb420

川 ゚ 々゚)「んしょっと」

私はサイドバックに入れておいたクーパーを取り出すと、
痙攣している男の胸をはだけさせて、大体の目星を付けた。
そこを目掛けて、クーパーを突き刺す。

川 ゚ 々゚)ドスッ

男の体が大きく跳ねる。
大当たりだ。
そして、トドメのためにクーパーをチョキチョキした。

私はこのハサミが大好きだ。
だから、家には学校からくすねてきたクーパーがたくさんある。
机の上に転がしておいても便利だし、簡易のキッチンバサミにも使える。

医療現場でのハードユースに応える信頼性は伊達ではない。

と、気がつけば男がおとなしくなっている。
ていうか死んだ。

29名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:04:02 ID:wopkdb420

(  Д )

川 ゚ 々゚)

川*゚ 々゚)

本番はここからだ。

私はクーパーを引き抜くと、それをそのまま男の顔の所に持っていく。
だが、思い直して他に何種類かの刃物を取り出して思案した。
どれが一番キレイに、余分な傷を付けずに取れるだろうか?

結局、クーパーで何とかすることにした。
断面は汚くなるが、帰ってからいくらでも処理できる。

……さあ、貰うものはもらっていくからね。

ちょきん、と音がなくなった林の中にハサミの音が響いた。

30名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:04:44 ID:wopkdb420

*――――――――*

(*゚ー゚)「―――でね―――その殺された人って―――――――。
     うちの店からも監視カメラのビデオを提供して―――――――。
     死体には―ほっ―たが無かったんですって!」

川 ゚ 々゚)「……」

(*゚ー゚)「ちょっと!くるうちゃん聞いてる?」

川;゚ 々゚)「あ!すみません!なんの話でしたっけ」

(*゚−゚)「んもう!何も聞いてなかったの?
     この辺で殺人事件が起きたのよ!」

川;゚ 々゚)「えー!なにそれ怖い!」

(*゚ー゚)「その人ってウチの防犯ビデオにも写ってて、
     殺された日にも来てたんだって!
     でね、もしかすると犯人もってことで警察がビデオを持ってったのよ!」

川 ゚ 々゚)「へええ、大変だったんですね」

(*゚−゚)「この辺一帯が大騒ぎよ!ホントにびっくりよね〜」

川 ゚ 々゚)「ですねー」

なかなかに話題になっているようだ。
でもそんなことにはあまり関心が持てない。
私の、今の、最大の、関心事は、うちの冷蔵庫の中身だった。

31名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:06:13 ID:wopkdb420

川 ゚ 々゚)「じゃあ、そろそろ失礼しますね」

(*゚ー゚)「あっ!くるうちゃん!さっきデザートがなんか廃棄になってたよ!
     ちょっと持って行ったら?」

川 ゚ 々゚)「あー……なんですか?デザートって」

(*゚ー゚)「えっとね、確かイチゴのジュレだったかな」

イチゴ!私の大好物だ!

川*゚ 々゚)「おぉぉお!すごい嬉しい!いただいてきます!」

私は、そうして意気揚々と自宅に戻った。
危うく、道中はスキップして進んでしまいそうになった。
これでは不審者だと思われてしまう。だが私は違う。不審者ではない。

だけど仕方のないことだった。今日はアレの仕込みと仕上げがあるんだから。
今にもお腹が減って死んでしまいそうだった。

そして、料理を食べ終えたら、デザートにイチゴのゼリーをゆっくり味わうのだ。
素晴らしいひとときになりそうだった。

32名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:07:03 ID:wopkdb420

川*゚ 々゚)「でっきったっかなー」

冷蔵庫には、金属製のバットが入っている。
主に人を撲殺するためのバットではない。
食材を乗せたりするトレーのことだ。

その上に、二枚の肉が乗っている。
一昨日から血抜きをしていたものだった。

川*゚ 々゚)「ふんふんふーん」

キッチンペーパーで、出た汁を拭きとる。
さらに新しいキッチンペーパーで包んで、また冷蔵庫にしまった。
あまりにも肉に水気が残っていると、ソースがだめになってしまう。

川*゚ 々゚)「トントントン、にんにく刻んでトントントン」

川*゚ 々゚)「刻んでー丸めてー」

川 ゙゚'々゚')クワッ「川 に 落 と す ぞ !」

川*゚ 々゚)「ふんふん、ふふふーん」

33名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:09:42 ID:wopkdb420

にんにくを刻み終えたら、フライパンにオリーブオイルを敷く。
だけど火をつけてはいけない。火を止めた状態からにんにくを入れるのがミソだ。
そこからじっくりと時間をかけて弱火でにんにくをローストする。

川*゚ 々゚)「んふー……んふふふふ……」

にんにくの香りが立ち始めたら、一旦にんにくを取り出してしまう。
これは私の好みだ。好きな人はきつね色になるまでローストする。

ここで、満を持してお肉の出番である。

川 ゚ 々゚)「うむ、よし」

川*゚ 々゚)「良い感じだぁ……」

表面はもうあまり濡れていない。
触っても濡れるか濡れないか、というところだ。

これに胡椒を少し摺り込んでおく。
この加減というのが実に難しい。

34名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:10:24 ID:wopkdb420

川*゚ 々゚)「……」

一旦フライパンを強火にし、十分に温まった所で肉をソテーする。
ここが勝負どころだ。一気に焼き色がつくまで強火で焼き上げる。
じゅう、という音が収まってきた所で肉をひっくり返した。

完璧だ。

川*゚ 々゚)「よっし!」

私は火を中火にする。
それから、さっきのにんにくとケッパー、白ワインを取り出した。

ケッパーは酢漬けより、塩漬けが好きだ。
料理によっては塩抜きが必要だが、酢漬けのケッパーと味がぜんぜん違う。
この料理に使うときは、少し潰してから入れるのが私の好みだ。

白ワインは、辛めのものを使う。
甘みは、肉の脂だけで十分だ。

これらを、フライパンに投入して蓋をする。
少しだけ蒸し焼きにするのだ。

35名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:11:10 ID:wopkdb420

川 ゚ 々゚)「もういいかな」

私が蓋を取ると、肉汁とオリーブオイル、
そして肉の脂が混じり合い、ソースが白く濁っていた。
私はソースに塩を少々加えてから、肉の様子を見た。

……肉にも火が通ったようだ。

私はここで肉を皿に盛った。
だが、まだまだ待たなくてはならない。
ソースを、煮詰めなくてはならないのだ。

川;゚ 々゚)「うーうー」

皿に盛った肉にかぶりつきたい衝動にかられつつ、私はさらに待った。
人をいらいらさせる男は大嫌いだ。もう一度殺してやりたい。

きりきりと歯ぎしりをしながら、フライパンと睨めっこをすることおよそ三分。
ソースがだんだんと透き通ってきた。

よし。

私は万感の思いを込め、ソースを肉にかけた。


川*゚ 々゚)「……できた!」

36名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:12:03 ID:wopkdb420

肉の照り、ソースの味。
我ながら惚れ惚れする出来だ。

……ただ、残念なのは肉が少し臭く、
その匂いが手を尽くしてもなかなか取れなかったことだった。
だが、にんにくと胡椒をふんだんに使ったので何とかなったはずだ。

川*゚ 々゚)ドキドキ「おいしく……できたかな?」

ナイフを頬肉に入れると、程よい弾力がナイフ越しに返ってくる。
なかなかの肉質だ。
一口サイズにして、ようやく私はその肉を口にした。

川*゚ 々゚)モグモグ

川*>々<)「……んんぅん、美味しいぃ……」


ケッパーの香味と、じっくりローストしたニンニクの香りが、
白ワインのもとで実に良く調和していた。
脂身の少ないこの頬肉には最善の調理だった。
と、私は確信した。

そしてなによりも、そう……絶妙な歯ごたえだ。

37名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:13:58 ID:wopkdb420

*――――――――――*

(´・ω・`)「ひでえな」

(‘_L’)「……ええ、私もこんなのを見たのは久々です」

林道の死体発見現場で、二人の刑事が死体を前に話し込んでいた。
死体にはすでに覆いが掛けられていたが、周囲の地面には薄く血痕が残ったままだ。
少し離れたところには、故障したバイクが放置されている。

(´・ω・`)「ワイヤで喉をぶっ潰して心臓をめちゃめちゃにした挙句……。
       その上で顔の肉を削ぐとはな」

(‘_L’)「おっそろしいことです。
      この土地でこんな害者を見るとは夢にも思いませんでしたよ」

(´・ω・`)「俺もだ、ありえないよ、こんなの」

(‘_L’)「あれですかね、最近ここいらに移ってきたっていう、
      中国系の奴らの仕業ですかね。
      あいつらは見せしめにそういうことをするそうですし」

(´・ω・`)「……そうかもしれん。
       だがまあ、鑑識の結果待ちだな。
       何か出てくればいいんだが」

38名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:14:15 ID:cIOySmLM0
美味しくというのは、そういうことだったか

39名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:14:38 ID:wopkdb420

(‘_L’)「……出ないと思います。
     もしあいつらなら痕跡はキレイに消してきますから」

(;´-ω-`)「まったく、参ったもんだよ。
      なんでまた、ウチの管内でこういうのが……」

(‘_L’)「マスコミも騒ぎ始める頃です。忙しくなりますよ」

(´・ω・`)「勘弁してくれ……」

そう言った刑事は着ていたコートの襟を整えて、車に戻っていく。
降ったばかりの雨に、地面はすっかりぬかるんでしまっている。
こんなんじゃあ、証拠もクソもでやしねえ。

……その足取りは、どうしようもなく重かった。

40名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:15:34 ID:wopkdb420

一人目 完食 「DQN男の頬肉ソテー、シチリア島風」

41名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:22:39 ID:wopkdb420

川*゚ 々゚)「ここでお料理のワンポイントアドバイス!」

川*゚ 々゚)「今回はにんにくを使ったけど、
       肉が臭くなかったらニンニクはなくても大丈夫」

川*゚ 々゚)「むしろ、ケッパーをやや目立たなくしちゃうから、
       普通の豚肉とかはにんにくを入れないのがベターかも」

川*゚ 々゚)「私はにんにくを入れて食べるの好きだけどね」

川*゚ 々゚)「じゃあ、みんなも試してみてね!」

川*゚ 々゚)「次に美味しい肉が入ったら、また会えるかも!」
       
川*^ 々^)ノシ「それじゃあ、ばいばーい!」

42名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:23:43 ID:lgQYsA4U0
乙!引き込まれる文章だった
次回も期待

43名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 00:34:35 ID:Osne5HaYO

思った通りの展開が逆に面白かった

44名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 01:06:42 ID:CUmD3eP.O
面白かった!!

残虐系苦手なのに引き込まれた!!非常に読みやすい!!

乙!!

45名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 08:08:47 ID:/MVzKOcAO
くるうちゃんかわいい
続き楽しみ乙

46名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 08:49:09 ID:Y.e/xcPwO
サスペンスっていいよね

47名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 14:09:17 ID:q8d5OK/o0
おつくるう!続き期待

48名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 14:24:36 ID:XH24NCJ2O

カニバ キター!

乙です!期待してますよ!

49名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 17:28:59 ID:q0F/nh/A0
プギャーも美味そうだしくるうちゃん可愛いすぎるし最高だわこれ

50名も無きAAのようです:2012/01/05(木) 19:56:28 ID:ndxQfj220
これ思い出した

( ^ω^)美味しいお肉の勧め!のようです
http://mesimarja.blog74.fc2.com/blog-entry-570.html

51名も無きAAのようです:2012/01/20(金) 22:32:50 ID:ttx4atmg0
川 ゚ 々゚) こんばんにちわ

川 ゚ 々゚) ……この作品はかなりの不定期更新になるんだって

川 ゚ 々゚) ごめんね


川 ゚ 々゚) 話数も少なめかなと思う 
       あと2月中にはまた投下したいってさ

川 ゚ 々゚) ここに引っ越したばかりの現行も、他に抱えてるものも行き詰まった挙句、
       いらいらして立てたスレだから、こうなるんだね……反省



川;- 々-) お腹すいた……

52名も無きAAのようです:2012/01/20(金) 22:36:11 ID:nmjU0FMM0
待ってるよ

53名も無きAAのようです:2012/01/24(火) 07:27:17 ID:/nvSu8LkO
待つ

54名も無きAAのようです:2012/02/28(火) 21:49:22 ID:WRywAjm20
お腹が空いたよ

55名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 00:12:56 ID:PTkuceCM0
三月やで

56名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 13:03:26 ID:YHndKOEk0

川 ゚ 々゚)「三月になっちゃった……二月は忙しかったの」

川*^ 々^)「テヘッ☆」


川 ゚ 々゚)「……まじですみませんでした」

川 ゚ 々゚)「でもあとちょいちょいで行けるから、ちょっと待ってね」

川 ゚ 々゚)「ちなみに、次はカレーだよ」


川  々 )「……あと、今は三月だから、五月よりも狂ってるからね」

57名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 17:56:30 ID:nwyJiX.EO
春だもんな

58名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:13:25 ID:TBep.kZ60
おいしそうだな、って思ってしまった
面白かった

59名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 01:48:26 ID:sBtfcaO.O
カレーwktk
待ってる!

60名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 21:33:46 ID:wri.s4AQ0
美味しくしてね

待ってるよ

61名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 01:12:04 ID:HTPNdc3YO
>>59
今更だがSBww

62名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:45:23 ID:r6CHnP3M0
閲覧注意

*今回、閲覧注意なシーンの前と後に空レスを用意しました。
 こうしたものに抵抗がある場合、空レスと空レスの間は読み飛ばし、
 その次のシーンからご覧下さい。やや表現がマイルドになります
                                    川 ゚ 々゚)

63名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:46:07 ID:r6CHnP3M0

第二話「箱の裏のレシピ通りに、それがおいしいカレーの秘訣」

64名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:47:51 ID:r6CHnP3M0

ドンッ キャー イイカゲンニシナサイヨ
オカーサンヤメテー イヤー
  _, ,_
川 ゚ 々゚)「……うるさいなぁあ」

私がうららかな午後の日差しを浴びつつ包丁を研いでいると、
その静寂をぶち壊すように子供とその母の声が聞こえてきた。
どうやら娘のいたずらを叱る母娘の図のようだ。

せっかくの日曜日なのに、上の住人は私の大切な時間をぶち壊すのに使いたいらしい。
……しつけっていうのは、他人様に迷惑をかけないのが前提条件なんじゃないの?
馬鹿なの?死ぬの?食べちゃうよ?

川#゚ 々゚)プンスカ「ったく、最近はガキがガキを育ててるから始末におえないんだ!」

川;゚ 々゚)「……あ、そうだ、洗濯機!」

イライラしながらも、お洗濯はしなくちゃいけない。
何度も洗濯すれば、どんな頑固な痕跡だって大抵は洗い落とせる。
それでも駄目なら塩素消毒が有効だ。血液反応をごまかせるかもしれない。

私は、床の上に降り積もったプリントやら、
服やら完全自殺マニュアルやらを踏み越えて玄関の戸に手をかけた。

65名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:49:29 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「ふいー」ガチャ

(*;∀;)エグッエグッ

川 ゚ 々゚)「……あ?」

女の子が、外置きの洗濯機に寄りかかって泣いている。
彼女は12、3歳くらいの年に見える。
伸びきったキャラ物のシャツはだいぶ色あせていた。

だが世の中のクソみたいなロリコン野郎共なら、
矢も盾もたまらず部屋の中に引きずり込んだだろう。
なかなかの美人さんではないか。

ほっぺなんてむちむちしてて美味しそうだ。
……それはもう、いろいろな意味で。

川 ゚ 々゚)「……大丈夫?」

(*;∀;)「……あ、ご、ごめ……」

川 ゚ 々゚)「ああ……」

66名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:50:56 ID:65c3yfnsO
きたー支援

67名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:51:53 ID:r6CHnP3M0

なるほど、さっきまで叱られてた上の子か。
視線を向けただけで女の子はビクッと体を震わせる。
その過敏な反応は、私の嗜虐性をムラムラと刺激してくる。

やわらかい産毛の下にある、泣き濡れて赤く上気した顔。
それを撫でくりまわしてみたいという、願望を押し殺して私は聞いた。

川 ゚ 々゚)「あなた、どこの子?」

(*;∀;)「えと、あ、205の……」

川 ゚ 々゚)「ああ、上の階の人か。
      どうしたの?何かあったの?」

(*つ∀)「……すみませんでした」

(*つ―゚)「……少し、辛くなっただけです。
      それより、うるさかったでしょう?私達。
      ごめんなさい」

68名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:52:50 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「……そう、じゃあお母さんに言っておいて。
      全然気にしていませんからって」

(*゚―゚)「はい、分かりました……じゃあ」

川 ゚ 々゚)「……じゃあ、またね」

(*゚―゚)「はい」

女の子は拳を固く握りしめたまま、二階へ続く階段をトコトコと上がっていった。
なんというか少し虐めるつもりでいたのだけど、気が削がれてしまってやめた。
あの子、なんだかとても追い詰められた感じがする。

そんな人間に止めをを刺すのには、かなりの危険が伴う。
私はこんな穏やかな、あるいは穏やかだった日にそんな危険を冒したくはなかった。

69名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:54:28 ID:r6CHnP3M0
それに全然気にしてないと言っておけば、
まともな神経をしている人ならば謝りに来るだろう。
その時に、母親の方を虐めればいいのである。

とにかく今は、放っておくのがいい。

川 ゚ 々゚)「ううむ、くるうちゃん困惑」

重くなった頭と洗濯物を抱えて私は部屋に戻った。
洗濯カゴの中から、濡れた洗濯物の匂いがする。
そういえばあの子の服、最近洗濯された様子がなかった。

食べものの、多分カレーか何かの古い跳ね跡が残っていた。

川 ゚ 々゚)「……カレーかぁ」

久々に、カレーが食べたくなってきた。

70名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:55:54 ID:r6CHnP3M0

*―――――*


(*゚ー゚)「へえ、女の子が家の前でねえ」

川 ゚ 々゚)「なんかそれから気になっちゃって。
      しかもそれから、上の人も何も言ってこないし。
      うるさいのもそれから毎晩変わらないんですよ」

(*゚ー゚)「やーな感じよねー。
    でもくるうちゃんそういうのって、
    下手に首突っ込んだりするとやばいかもよ?」

川 ゚ 々゚)「やばいって?」

(;゚ー゚)「あー、例えばさ、刺されちゃうとか」


川 ゚ 々゚)「うあー、怖いですねー」

(*゚ー゚)「なんで棒読みなの?」

暇な午後勤のレジで、すっかり私たちは話し込んでしまっていた。
本当にこのコンビニは客数が少なくて、ガールズトークに花が咲いてしまう。
こういう諍いの話題は、私も彼女も大好物である。

71名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:57:33 ID:r6CHnP3M0

(*゚ー゚)「これさ、やっぱ虐待じゃないの?
     ドーンとか、そういう音しない?」

川;゚ 々゚)「あー、結構しますね。
      母親の絶叫の後とかに、しょっちゅう聞こえます」

(;゚ー゚)「うわあ、やばいね……。
     そういえば、上の会の家族の父親は?
     やっぱり、あれなの?シングルマザーが、
     単調でストレスフルな日常に倦んで作った男ってやつ?」

川;゚ 々゚)「なんですか、そのへたくそな恋愛小説みたいな設定」

(*゚ー゚)「……下手かな」

川;゚ 々゚)「とにかく、そうじゃないっぽいですね。
      単身赴任中だとかで、今はいないみたいです」

こういう時、私は周囲の人からの情報は集めておく。
情報を持っているものが、この世界では常に強者だ。

ニコニコ笑って井戸端会議に持ち込めば、
近所の暇な主婦は簡単に他人の秘密を、まったく意味のない耳打ちで教えてくれる。
難しいように見えて、案外こういうのは簡単なものである。

72名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:58:36 ID:r6CHnP3M0

近所のアラさんによると、母親は水商売をやりだして深夜まで家に帰らない生活が続いているとか。
どうもかなり前に、いわゆる一つの「心の風邪」を引いてしまったらしい。
母親がホステスまがいのことをし始めたのは、その頃のことらしい。

私には、その神経がよくわからない。
初めから理解してやろうなどという気はないが。

ここで私の心の深いところから、貴方はあの母親に厳しすぎるという声が微かに聞こえ始める。
だが、私はその囁きに対してこう反論した。
「だって、しょうがないじゃない。お腹が減ってしまったんだもの」と。

(;゚ー゚)「じゃああれ?夫のいないストレスを子供にぶつけてるのかな?」

川 ゚ 々゚)「そう、なんですかね」

私は、そういう構図が一番嫌いだ。
強く美しいものが醜いものを踏み潰すのはある意味正当だが、
美しくか弱いものが、強く醜いものに蹂躙されるのは反吐が出る。

73名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:00:14 ID:r6CHnP3M0

上の階の家族はまさにそうだ。
年をとって心も体もねじ曲がった母親が、
美しく若い娘を追い詰めている。

しかも、娘はその母をかばおうと気丈に振る舞う。
塵芥のように無価値でなんの意味もない屑を、
母親だという理由だけでその身を犠牲にして守ろうというのだ。

そうして娘の心が押しつぶされていく様子は、震えが来るほど美しい。

だが、それでは駄目なのだ。
美しいものは、より美しいものに塗りつぶされて絶望しなくてはならない。

(;゚ー゚)「あ、くるうちゃん!レジお願い」

川 ゚ 々゚)「あ、はい」

いつの間にか、レジにはかなりの人が溜まっていた。
あぶない、妄想の世界に行ってしまって気が付かないところだった。
お客様をお待たせしてはいけない。

今の私は、それが仕事だ。
仕事でお金を稼いで学費にあて、
余ったお金は「お料理」のために使う。

74名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:01:01 ID:r6CHnP3M0

新しいお肉も欲しくなって来たところだ。
ミルナ君も呼んで、ちょいちょいっとヤッちゃおう。

ミルナ君に任せると、色々とヤだけど。
まあ、処理の方はミルナ君に任せられるから楽でいい。
そのための下準備は必要だけど……。

川 ゚ 々゚)(さあて、ホムセン通いが始まるお……)

貯金がやばそうだけど、ミルナくんも援助してくれると思う。
さあ、準備も含めてお料理だ。
いまから張り切っていってみよう。

75名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:02:18 ID:r6CHnP3M0

*―――――*

勤務が終わって、店長さんから廃棄のお弁当をもらって帰る。
このチェーンの味付けはかなり濃いけど、まあ他よりましだ。
スイーツ系(笑)はなかなか美味しいし、こういう日は結構得した気分になる。

アパートの近くになって、ふと私は足を止めた。
目の前を、あの母娘が歩いている。
母親の方は、久しぶりに見る。

そして、どういうわけだか娘のほうは楽しそうだ。
彼女はつーちゃんというらしい。今は小学校の六年生。
近所の奥様情報では、ろくに服も買ってもらえないらしい。

というのも、数着程度の服をずっと着回しているらしいのだ。
それが、小学四年頃からずっとつづいているのだという。

川 ゚ 々゚)「……」

爪'ー`)y‐~

(*゚∀゚)

子供を脇において、歩きタバコとは恐れ入る。
……やはり煙草呑みか。ふうむ、なるほど。
脂身は期待できない。脂は特にタバコの匂いが付きやすいのだ。

……となると、モツもなかなか使いにくい。
なんとも悩ましいものだ。

76名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:03:42 ID:r6CHnP3M0

爪'ー`)「ん?」

母娘がこちらに気がつく。
というか、母親の方はつーちゃんの声でなんとなく振り向いただけだった。
その薄汚れた目で私を見てくれるな。くり抜いてむしゃむしゃしてやろうか。

川 ゚ 々゚)(……面倒だけど)

仕方が無いので、挨拶だけはしておく。
ニコニコ笑っていれば、相手も嫌な気はしないだろうし。

川 ^ 々^)「こんにちは!」

爪'ー`)「……」

川#^ 々^)(……無視か?ババア……)

(*;゚∀゚)「う、あの」

つーちゃんが、母親の方と私の両方を見てあたふたしている。
かわいい。でも可哀想なので、私はもう一度母親に声をかける。

77名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:05:25 ID:r6CHnP3M0

川*> 々<)「アレキコエナカッタノカナ……こんにちは!」

私は、大きく、よりあざとい感じに言った。
ああ、結構これは恥ずかしいぞ。

爪'ー`)「ふん」

川*> 々<)「……」

川#> 々<)(よーし、黒縄地獄の刑だ)

(*;゚∀゚)「あ、おかー……」

爪'ー`)「行くよ」

爪'ー`)「変な人に関わると、めんどくさいからね」

(*;゚∀゚)「う……」

川 ゚ 々゚)「……」

私はキメ顔を解除すると、その場で彼女たちが行くのを見送った。
母親はいかにもな、くねくねした歩き方で階段を登っていく。
腰の動きを強調した、あの尻を大きく振る感じの……お?

78名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:06:17 ID:r6CHnP3M0


川 ゚ 々゚)(……きーめた)

川*゚ 々゚)

さっきまでのいらいらがふっと掻き消えるくらいの妙案だ。
さて、そうと決まれば部屋に戻ってゆっくりと策を練ろう。
……今日のスイーツは、大好きなピーチのケーキだ。

かなり楽しみ。

79名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:07:18 ID:r6CHnP3M0

*―――――*

(*;゚∀゚)「あっ」

ζ(゚ー゚*ζ「どしたのつーちゃん」

(*;゚∀゚)「雨、降ってきちゃったね」

ζ(゚ー゚;ζ「あー本当だー。
      うわっ、けっこう降ってきたね」

(*;゚∀゚)「テレビで台風がくるから荒れるって言ってたけど、
     今日の夜からじゃないの……?やだなぁ」

学校のお掃除の時間。
私は図書室の棚を拭いているとき、
すごい勢いで雨が降ってくるのを近くの窓越しに見た。

わーっと乾いた校庭から土埃が舞って、
あっという間に校庭の土の明るい茶色がねずみ色になっていく。

80名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:08:15 ID:r6CHnP3M0

(*;゚∀゚)(私、かさなんて持ってないのに)

ζ(゚ー゚*ζ「やだなぁ、髪が大変なことになっちゃう……」

かさは、一年生の時に買ってもらったのが誰かに盗られてから買ってもらえてない。
でも学校から借りようとすると、お母さんがすごく怒る。
他人に迷惑をかけるな、とか。そんなボロ傘さして来やがってとか。

世間体を気にしているなら、下のお姉さんに優しくしてあげたらいいのに。
うるさくして申し訳ない、とかなんで言えないんだろう?

結局、帰りの会になっても何も思い浮かばなくて、
そのまま走って帰ることになってしまった。

(*;゚∀゚)(やばいよ!教科書がぐちゃぐちゃになっちゃう!)

カバーなんて持ってないから、ランドセルはビシャビシャになってしまう。
濡れて帰っても怒られるし、かさをさしてきても怒られる。最低だ。

81名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:09:10 ID:r6CHnP3M0

(*;゚∀゚)「ふああ、やばかった……」

家までは近かったから、思ったほどは濡れなかった。
タンタンとアパート横の鉄の階段を駆け登って、ようやく部屋の前についた。
それで、鍵の隠し場所を開けた時の事だった。

(*;゚∀゚)「あれ?」

いつもは、洗濯機のホコリ取りの中に入っている鍵が見当たらない。
一度、私が鍵をなくしてしまって以来、私は鍵を持たせてもらっていない。
だからここに鍵がないということは、私はお母さんが帰ってくるまでここで待たなきゃいけないということだ。

(*;゚∀゚)「どう、しよう」

10月になって、雨も気温も冷たく寒くなっている。
このままここにいると、ただでさえ薄着の私は……。
お母さんはお仕事で、いつも夜まで帰ってこない。

そうだ、コンビニに行けば。

82名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:10:25 ID:r6CHnP3M0

そう思った時だった。
部屋の前で立ち尽くす私のところに、足音が近づいてくる。

(*;゚∀゚)「……」

こんなびしょびしょのところを見られたくない。
でもどうしようもなかった。
多分洗濯機の中に入れるくらいのことをしないと、隠れられない。

上がってきたのは、下のお姉さんだった。

川 ゚ 々゚)

(*;゚∀゚)「あ、こんにちは……」

川 ゚ 々゚)「やっぱり、あなただったのね」

(*゚∀゚)「え?」

川 ゚ 々゚)「階段を上がるときは、
      もう少し静かに上がってきて欲しいんだけど」

83名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:11:19 ID:r6CHnP3M0

(*;゚∀゚)「すみません……」

川;゚ 々゚)「それよりも、あなた大丈夫?
       びしょびしょじゃない。
       はやく部屋の中に入らないと寒いでしょう?」

(*;゚∀゚)「あの、実は締め出されちゃって」

川;゚ 々゚)「……どういうこと?」

(*゚∀゚)「いつもの場所に鍵が置いてなくって」

川 ゚ 々゚)「ふうん、お母さんが置き忘れたのかしら?」

(*;゚∀゚)「そう、なのかな?」

さすがにお母さんでも、そんなミスしないと思うんだけど。

84名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:13:40 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「……そのままだと、風邪引いちゃうよ。
      ねえ……良かったらウチで服、乾かしていかない?」

(*;゚∀゚)「……いいんですか?
     あ、いや、やっぱり……」

川 ゚ 々゚)「でもお母さんってだいたい帰ってくるのは、
      いつも夜の11時から12時の間でしょ?
      そんな時間までここにいるつもり?頼れる友達とかはいるの?」

(*;゚∀゚)「この辺りにはいない……です」

川*゚ 々゚)「だったら、上がっていってよ!
      ほら、手もこんなに冷たい……」

(*゚∀゚)「あっ」

お姉さんの手はすごく暖かかった。
その暖かさを感じると、自分の体が冷え切っているのを改めて感じる。
間近で見ると、すごくきれいな手だ。

指がすごく長くて、曇り空の下の光で見ると肌が真っ白に見える。

(*゚∀゚)「……」

それだけじゃない、この人自体がとってもきれいだ。
着ているものも、まあ黒ばっかりなんだけどカッコよくて。髪も長くて、さらさらで。
それに比べて、いつもお母さんにぶつぶつ切られてる私の髪なんか、酷い。

85名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:14:28 ID:r6CHnP3M0

そうだ。この前、この人の部屋の前で見た時からだっただろうか。
この人に、すごく憧れてしまっている。
でも同時に、どうしようもなく垢抜けない自分が涙がでるくらいに恥ずかしかった。

……そんなことを考えた日の夜は、いつも考える。
お父さんがいつも家にいてくれて、お母さんの心が病気じゃなかったら。
私も、将来はこんなお姉さんになれたのかな?と。

それが駄目なら、そもそもお母さんがいなければ……。

川 ゚ 々゚)「さ、行きましょ」

(*゚∀゚)「あ、はい!」

押し切られるような感じで、私はお姉さんの部屋に上げてもらうことになった。
入った瞬間、柑橘系の果物のような良い香りがしてくる。

86名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:15:58 ID:r6CHnP3M0

でも部屋の中はいろいろなプリントとか、本とかですごく散らかっている。
私は、そんな部屋の隅にあるテーブルの椅子に座らされた。
濡れるから駄目だって断ってるのに。

しかし……大学生と聞いていたんだけど、大学生もこんなにプリントを貰うんだ。

そんなことを考えていると、お姉さんがお茶を持ってきてくれた。

(*゚∀゚)「すごくいい匂い……なんですかこのお茶?」

川 ゚ 々゚)「ああ、これ?
      これは普通に紅茶よ?」

(*゚∀゚)「えっ?でも普通はこんないい匂いは……」

川 ゚ 々゚)「ああ、アールグレイだから」

(*;゚∀゚)「えっと、あーる……。
     ごめんなさい、午後ティーとかそういうのしか飲んだことなくて」

川 ゚ 々゚)「……そうなの。でもなんで謝るの?」

(*;゚∀゚)「あ、すみません」
  _,
川 ゚ 々゚)「だーかーらー、謝らないでいいの!
      つぎ謝ったら怒るからね!」

(*;゚∀゚)「あ、う」

87名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:16:56 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「……」

(*;゚∀゚)「……」

川*゚ 々゚)

(*;゚∀゚)「?」

川*^ 々^)「……冗談よ」

(*゚д゚)「あっ……ひどーい!」

お姉さんがぱっと表情を変えておどけてみせる。
思わず、立場を忘れてやり返してしまったけど、
やっちゃったとは思わなかった。

お姉さんの笑顔が、子供の私よりも可愛らしいというか、屈託がなかったから。

88名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:18:04 ID:r6CHnP3M0

川*゚ 々゚)「そうそう、その調子よ。
      あと敬語ももうやめて?怒るからね?」

(*゚∀゚)「うん、分かりました」

川 ゚ 々゚)「……わざとね?」

(*゚∀゚)「……バレた?」

川*゚ 々゚)「こいつぅ!すんきざみにしてやるぞ!」

(*^∀^)「あはははっ!なにそれ!」

それからのお姉さんはよく笑った。
お姉さんから借りたタオルで頭を拭きながら、
私はいろんな話をした。

お姉さんは、大学に通うために東京からこの美府市に越してきて、
今は大学一年生なんだそうだ。その割に大人っぽいですって私は言った。

川 ゚ 々゚)「あー、みんなからもそう言われるんだよ。
      ま、そりゃあそうなんだけどね。
      私、いま21だから」

(*;゚∀゚)「あ、もしかして……浪人した、とか?」

89名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:19:12 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「そうそう……遊びすぎちゃって」

(*゚∀゚)「そんな風には見えないけどなー」

川 ゚ 々゚)「……私はどう見えるの?」

(*;゚∀゚)「え、その……」

川 ゚ 々゚)「……」

(*゚∀゚)「なんというか、お姉さんはすごくかっこいいです!」

私は、少し勇気を出してそう言った。
正面から人を褒める時って、勇気がいる時がある。
今がその時だ。

90名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:20:44 ID:r6CHnP3M0

川*゚ 々゚)「……ありがと」

(*゚∀゚)「……こちらこそ」

そう言って、私はお姉さんに微笑み返した。

川*゚ 々゚)「名前まだだったよね?私、素直くるうっていうの。
      ……これから、何かあったらすぐ来てくれていいからね」

(*゚∀゚)「つーです。よろしくね。」

(*゚∀゚)「……いろいろ、ありがとうございます」

川*゚ 々゚)「こらっ!敬語に戻ってるよ!」

(*゚∀゚)「……ごめん」

それから、夜になって。私の家での晩ご飯の時間になった。
かっこ悪いから、お腹が鳴らないようにたまにお腹をパンチしてみたけど駄目だった。
なんか、異様に耳が良いくるうさんはすぐにこっちを向いて意地悪く笑った。

川*゚ 々゚)「んーっ?なんか変な音が聞こえたなあ?」

(*//∀//)「……うう」

わざとらしく、いろいろなところを見るフリをする。
お風呂場、食器棚。いろんなところを覗き込んでは、チラチラとこっちを向く。
よく分かんないけど、この人ヒドいかも。

91名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:21:35 ID:r6CHnP3M0

川*゚ 々゚)「ここかな?」パカッ
 _,
(*;゚∀゚)「くるうさん、そこお鍋なんですけど」

川*゚ 々゚)「……アッー!こんな所に昨日の残りの野菜ポトフが!」

(*゚∀゚)「!」


川*゚ 々゚)「おおっとお!冷蔵庫を開けたら賞味期限ギリの鶏肉がぁ!」

川*> 々<)「さらにさらに!卵と人参も、それに玉ねぎもそろそろ使わないと!」

川*゙゚'々゚')「はぅあ"!それにケチャップもそろそろ封を開けて一週間!
       もうそろそろ鮮度が切れちゃうよ!」

川*゚ д゚)「やべえええ!しかもたっぷり二人分はあるぞう!
      こりゃあ大変だ!今すぐオムライスでも作らないと!」

(*;-∀-)「なんとなく分かったけど、なにもそこまでしなくても……」

92名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:22:29 ID:r6CHnP3M0

川*゚ 々゚)「ごみんごみん、つい楽しくてね」

(*゚∀゚)「でも、いいの?
     ご馳走までしてもらっちゃ、流石にちょっと」

川 ゚ 々゚)「んーそうねぇ……じゃあ、手伝ってくれる?」

(*;゚∀゚)「え?」

川 ゚ 々゚)「それだったら、あなたも食べやすいんじゃない?」

(*゚∀゚)「……たしかに、そうだけど」

川*^ 々^)「じゃあ、一緒に作りましょ!」

(*;゚∀゚)「でも、私あんまり料理したことなくて」

川 ゚ 々゚)「んー、じゃあ簡単なことでいいからお願いできるかな?
      ポトフが二人分には少ないから、お湯とコンソメを足しておいて」

93名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:23:15 ID:r6CHnP3M0

(*゚∀゚)「そのくらいなら……」

川 ゚ 々゚)「ん、じゃあおわったらオムライスの方に呼ぶからねー」

(*;゚∀゚)「あ、はいっ」

なんか、緊張してきた。
よその家でなんか成り行きでオムライスを作ることになってる。
なんか、夢見てるみたいな感じだ。

いままで、満足に友達の家に遊びに行ったこともなかったから。

とにかく、私は家と同じ2つ口のガスコンロのスイッチをひねった。
ぽっと暖かい音がして、青い火が可愛いミルクパンの下で揺れる。
私の家でヤカンにお湯をわかす時と違って、なんだか心がはずむ。

川 ゚ 々゚)「……」

くるうさんはその間、玉ねぎと人参を手早くみじん切りにしている。
包丁がすごくよく切れるのと、機械みたいに均一に切れているのには感心した。
それをざっとボウルに移し、一口大ほどに切った鶏肉を出した。

そこでくるうさんは、馬鹿みたいにミルクパンを何度も覗いている私に声をかけた。

94名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:24:47 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「本当に料理したこと無いの?」

(*゚∀゚)「……うん、家庭科の時間ぐらい」

川 ゚ 々゚)「そうだな、じゃあ今日は作り方を覚えて帰ってもらおうかな。
      まずは、野菜をみじん切りにしておくの。人参はあってもなくてもいいよ。
      でも、私は甘みが出るのが好きだから入れたほうが好き」

(*゚∀゚)「ふうん」

川 ゚ 々゚)「それで、じゃあ鶏肉を焼く時なんだけど。あ、これはもも肉ね。
      皮を下にして焼いていくの。まずはちょっと強火でね」

(*゚∀゚)「皮を先に?なんでなの?」

川 ゚ 々゚)「こうするとぱりっと仕上がるの。
       じゃあ、実際に焼いてみようか」

そう言うと、くるうさんはフライパンに油も敷かずに鶏肉を入れる。
いいのかな、と思ったけど口を挟むのも、と思ったので黙っている。
いつもは誰かさんに口を挟むと、ろくでもない事になるから癖になっているんだろう。

じゅうという気持ちのいい音と、そこからすぐに鶏肉の香りがふあっと上がってくる。

95名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:25:29 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「ほら、油が出てきたのが分かる?」

(*゚∀゚)「うん、けっこう出てきたね」

川 ゚ 々゚)「皮って本当に油が多いの。
      この油ってサラダ油より全然香りがいいし、
      こういう料理だと断然美味しく出来るんだ」

川 ゚ 々゚)「……それに、油の節約になるからね」

(*;゚∀゚)「けち……?」

川 ゚ 々゚)「いいじゃない、それで美味しく出来るんですから」

それからちょっとして肉をひっくり返すと、
皮にはすごく美味しそうな焼き目がついている。
それを確認してから、くるうさんはフライパンに蓋をする。

川 ゚ 々゚)「ここで弱火にして、中まで火を通すの……と。
      そろそろスープのお湯が沸くんじゃない?」

(*゚∀゚)「あ」

くるうさんの手元に注目していたから気が付かなかった。
私はあわてて火を弱くして、そこにコンソメの素を入れた。
よく見ると、少しジャガイモが煮崩れている。

96名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:26:17 ID:r6CHnP3M0

(*;゚∀゚)「あちゃー」

川 ゚ 々゚)「んー?ちょっと煮過ぎちゃったかな?」

(*゚∀゚)「ごめん、ちょっとだけ」

川 ゚ 々゚)「まあ、私はそういうのが好きだからいいけどね。
      底に溜まった、ジャガイモの残骸をもそっと食べるのっていいよね」

(*゚∀゚)「あ、それ分かる!」

川*^ 々^)「……あなたが分かる人でよかった」

彼女はそう言いながらスープの味を見て、
軽く塩コショウを加えて味を整える。
私も味を見てみたが、やっぱり美味しかった。

くるうさんはその後で、すぐ野菜をフライパンに放り込んだ。
玉ねぎの焦げる匂いがして、だんだん空腹感がひどくなってきてしまう。

お腹すいた。でもまあ、これからちゃんとしたご飯が食べられるんだからいいか。

97名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:27:05 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「フン〜フンフン♪」

(*゚∀゚)「なんですか?それ?」

川*゚ 々゚)「暗い日曜日って歌よ。いい曲なのよこれが」

(*;゚∀゚)「なんか、楽しそうな曲じゃないんだけどなぁ」

川 ゚ 々゚)「でも楽しい曲ばっかり聞いてると逆に気が滅入ってこない?
      たまーに暗い曲を流してると逆に気分が盛り上がってくるものよ」
_, ,_
(*゚∀゚)「そーかなー?」

なかなか独特なセンスをした人だ。
なんか、喋っていてもなんか変な人だなあとは思ってたけど。
まあ、私みたいなのにこんなに優しくしてくれるんだから、とっても変な人なんだろう。

炒め終わったものに、彼女は白ワインをふりかける。
お酒臭かったけど、それはすぐに消えて甘い匂いが立ち始める。
そこに、ようやくケチャップが入る。

くるうさんはしばらくケチャップと具材を馴染ませていたけど、
お茶碗に四杯分のご飯を(炊きたてだった)量りとって、フライパンにどさっと入れる。
そこで、彼女はコンロの脇においてある台の上を見てはっとした顔をした。

98名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:27:48 ID:r6CHnP3M0


川;゚ 々゚)「あ、ごめんつーちゃん。
      コンソメの素を溶いておいてくれる?
      このちっちゃい器に素を入れてさ、ポトフのスープで溶かすの」

(*;゚∀゚)「あ、はい」

どうやら、くるうさんはこの部分を忘れていたみたいで、
突然私にそうやって指示した。今まで私の見る限りでは完璧に進んできたのに。
カッコよく見えるこの人も、こんなふうに失敗するんだと思うとなんだかおかしかった。

私はスープの上澄みで素を溶いて、台の上に置いた。
くるうさんはそれをすぐに取って、半分出来かかっているチキンライスの上にかける。
また、じゅわっといういい音が鳴った。

川*゚ 々゚)「ありがと、じゃあもうすぐだからね」

(*゚∀゚)「やった!」

私はもう待ちきれなかった。
美味しそうなものがあるのに食べられないのって半分拷問だと思う。

しかもくるうさんの手際が良いせいか、彼女がコックさんみたいに見えてる。
そのせいで余計に、期待感みたいなのが否が応にも高まってしまう。

99名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:27:52 ID:hPMtsvXkO
見てる
支援

100名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:28:41 ID:r6CHnP3M0

くるうさんは最後にぱらぱらっと塩と胡椒を上からかけて、
チキンライスをお皿に盛り付ける。

川*゚ 々゚)「よーし、ここからが本題ね」

(*゚∀゚)「オムレツだね」

川*゚ 々゚)「それも、あの悪名高いタンポポオムだよ!」

(*゚∀゚)「なにそれ?」

川 ゚ 々゚)「あれよ、ご飯の上に乗っけてスプーンで割るやつ」

(*゚∀゚)「ああ!あのテレビでよくやってる奴かぁ!」

くるうさんはバターと卵、それと牛乳を冷蔵庫から出す。
軽くといた卵に牛乳をほんの少し入れて、さらに混ぜる。
それから、よく拭いたフライパンにバターを敷く。

川 ゚ 々゚)「最初から最後まで強火でガッと行くのがコツよ。
      最初にババっと全体を混ぜて、あ、ちょっと固まったかな。
      と、思った瞬間にざあっとフライパンの端に寄せて表面だけ焼き固めるの」

101名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:30:08 ID:r6CHnP3M0

(*;゚∀゚)「……なんか、長嶋監督みたいな説明だね」

川 ゚ 々゚)「そうなるのも仕方ないよ。
      こればっかりは感覚勝負だからね。
      私もこれが出来るようになるまで半年かかったから」

(*;゚∀゚)「半年!」

川 ゚ 々゚)「……それまで数えきれないくらいの、
      卵焼き乗せチキンライスを食べてきたの。
      カチカチに固まったオムレツを噛むたびに涙がこぼれた」

(*;゚∀゚)(そこまで悔しがらなくても)

川 ゚ 々゚)「でも、最近は九割くらいの確率で出来るようになったから大丈夫。
       ……そしてたぶん今日は行ける日だと思う」

(*゚∀゚)「ならいいんだけど」

川 ゚ 々゚)「つーちゃんも、覚悟して。
      これから長く厳しいオムレツ道を極めるのなら、
      フライパンは3つでは足りないからね」

102名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:31:41 ID:r6CHnP3M0

(*;゚∀゚)「……」

川 ゚ 々゚)「さて、フライパンもいい感じに温まったね。
      いくか……」

くるうさんは、かっと目を見開くと卵をフライパンに流し込んだ。

川;゚ 々゚)ババッ「よっ、ほっ!」

川;゚ 々゚)ザアッ「おりゃあ!」

川;゚ 々゚)「ほっ!やっ!はぁっ!」

(*゚∀゚)(掛け声はすごいけど、やってることは普通だ……)

川;゚ 々゚)「よし、盛るから台から離れて!」

(*;゚∀゚)「うぇえ!?あ、はい!」

くるうさんが切羽詰まった声でそう言って、
オムレツをチキンライスの上に乗せた。
チキンライスの上の部分は、乗せやすいように成形済みだ。

……この間三十秒ぐらいだ。

くるうさんは同じ事をもう一度繰り返して、
私のお皿にもオムライスを乗っけてくれた。

これで。

103名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:32:24 ID:r6CHnP3M0

川*゚ 々゚)「はい!できたよ!」

(*^∀^)「あーもう私お腹ペコペコだよ!」

川*゚ 々゚)「じゃあ、割ってみようか!」

(*゚∀゚)「うん!」

私はくるうさんにスプーンをもらって、
テレビでよくやるみたいにオムレツの真ん中を縦に裂いた。

そこから金色の半熟卵が顔を出して、
お花が咲いたみたいにふわっとチキンライスの方に広がった。

(*゚∀゚)「うわぁ、すごくキレイ」

それで、くるうさんの方を見たんだけど……。

川ll; 々 )「……」

彼女のオムレツは、上手く広がっていなかった。
くるうさんは必死にスプーンで広げようとしていたけど、
無理して広げようとした部分がポロポロ崩れて余計にひどいことになっていた。

104名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:33:16 ID:r6CHnP3M0

川;゙゚'々゚')「馬鹿な!この私が……この期に及んで失敗だと!」

(*゚∀゚)ボソッ「……長く厳しいオムレツ道」

川;゚ 々゚)「あ……」

川;>々<)「……もー、ひどいよつーちゃん!」

(*゚∀゚)「覚悟して(笑)フライパン三本じゃ足りないよ(爆笑)」

川;゚ 々゚)「……あなた、案外Sなの?」

(*゚∀゚)「?」

そんなことを言い合いながら、リビングのこたつの上にお皿を持っていく。
ポトフも小さな陶製のお椀に盛ってみると、そんなに煮崩れした感じではなかった。
なんか、こういうことが久しぶり過ぎてなんか新鮮だ。

105名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:34:36 ID:r6CHnP3M0

川*^ 々^)「さて、遠慮なく食べてね!あなたの料理だからね!」

(*゚∀゚)「……じゃあ」

川*^ 々^)「「いただきます!」」(゚∀゚*)

川*^ 々^)「……ん、久しぶりだけどよく出来た」

(*゚∀゚)「これ、すごく美味しいよ!
     ご飯もふんわりしてるし、お肉もやらかい!」

川*^ 々^)「あなたのポトフも美味しいよ、愛情入れた?」

(*゚∀゚)「いや……それはまだ」

川;^ 々^)「あら、そう?」

(*゚∀゚)「ま、でもちょっとくらいは入ってるかな」

川*゚ 々゚)「本当に!?どのぐらい入ってるの?
      指一本分ぐらい?」

(*;-∀-)「だから、なんか例えがわかんないよ……」

106名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:35:29 ID:r6CHnP3M0

でも、冗談抜きでオムライスは美味しかった。
いや、味自体は普通だったかもしれない。
なんだか今は何でも美味しく感じる気がする。

お腹も空いていたから、私はあっという間にお皿を空にしてしまった。

川 ゚ 々゚)「いい食いっぷりだね〜」

(*゚∀゚)=3ケプッ

川*゚ 々゚)「あらあら」

(*//∀//)「あ……ごめんなさい」

ついついリラックスしてしまって、家と同じ感じになってしまう。
そこで私はギクッとして時計を見た。
そろそろ、午後8時になろうとしている。

ここに来たのが四時くらいだから……。
いくら何でも、甘え過ぎだ。

107名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:36:18 ID:r6CHnP3M0

(*゚∀゚)「じゃあ、お皿の片付けしたらお暇します。
     オムライス、すごく美味しかった!ごちそうさま!」

川 ゚ 々゚)「いや、こんな適当な料理でごめん。
      ……もっといてくれてもいいんだよ?」

(*;゚∀゚)「でも、お母さんのご飯も炊かなくちゃいけないから」

川  々 )「……そう」

(*゚∀゚)「……くるうさん?」

川 ゚ 々゚)「あ、ごめんちょっとトイレしてくる。
      まだゆっくりしてていいからね〜」

(*゚∀゚)「うん」

108名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:37:42 ID:r6CHnP3M0

くるうさんはそう言ってトイレに立った。一瞬表情がかげったけど、どうしたんだろう。
そもそも部屋に私が一人残された形になったが、これはさすがに無用心じゃないだろうか。
ほとんど見ず知らずの子供を部屋にあげて、放置してどこかに行くなんて。

(*゚∀゚)(信用してくれてるってことなのかなぁ?)

しばらくして彼女は帰ってきたけど、顔にはさっきまでの笑みが戻っていた。

川*゚ 々゚)「ふいー、すっきりんぐだぜい」

(*;゚∀゚)「ぶっ!なにそれ!」

川*゚ 々゚)「んあ?いや、おしっこ我慢してたからさ。ついね」

(*;゚∀゚)「くるうさん、せっかく美人なのに人前でそんな事言わないでよ!」

川*゚ 々゚)「おう、もっと褒めてもいいのよ」

(*;゚∀゚)「だから……」

109名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:38:25 ID:r6CHnP3M0

この人、なんかすごおく変な人だけど。
でも。

川*^ 々^)「じゃあ、ちゃちゃっと片付けちゃおうか」

(*゚∀゚)「はーい」

なんだか憎めないし、どういう訳だか見た目はかっこいい。
この人とお友達になれて……友達になれたのかな?
とにかく、今日は楽しかった。

だれかと一緒にご飯を作って食べるのって、こんなに楽しいことだったんだ。
今日は、お母さんを笑顔で出迎えられる気がする。

私は雑に腕をまくってお皿を洗うくるうさんの横で、
自分でも止めようがなくニコニコと笑ってしまっていた。

110名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:39:25 ID:r6CHnP3M0

*―――――*

川*^ 々^)「じゃあ、気をつけてね」

(*゚∀゚)「はあい!今日はありがとうございました!」

川*^ 々^)「うん!またいつでも来てね!」

(*^∀^)「はい!おやすみなさい!」

川*゚ 々゚)「おやすみー」

川*゚ 々゚)「って、鍵閉まってるんじゃないの?」

(*;゚∀゚)「あ」

川 ゚ 々゚)「そういえばだけど、ほんとに無いの?鍵?
      もう一度よく探してみたら?」

111名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:40:05 ID:r6CHnP3M0

(*゚∀゚)「うーん、けっこう探したんだけど……」

川 ゚ 々゚)「良ければ私も探すの手伝おうか?」

(*;゚∀゚)「でも、悪いよ」

川 ゚ 々゚)「ちょっとじゃない、別に構わないから」

(*;゚∀゚)「……うん」

つーちゃんの部屋の前で、二人で鍵を探す。
私のスマホを明かりにして、たどたどしく。
私は、たどたどしい演技をしながらだが。

川 ゚ 々゚)「えっと、どのへんにいつも置いてあるの?」

(*゚∀゚)「んー、教えるのはホントは危ないかもだけど。
     ……いつもは洗濯機の中に入れてあるんだよね」

川 ゚ 々゚)「へえ、なんか独創的な隠し場所ね」

112名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:40:56 ID:r6CHnP3M0

(*;゚∀゚)「やっぱり変だよね」

私は、洗濯機の中を覗き込む。
まあ、使い込まれた洗濯機の少し汚れた内槽があるだけだ。
ここの鍵が入れてあったホコリ取りの中には、ゴミしか入っていない。

川;゚ 々゚)「ん?」

(*゚∀゚)「どうしたの?」

川 ゚ 々゚)「裏に、なんか落ちてるよ?」

(*゚∀゚)「え?」

洗濯機の裏に手を入れて、私は鍵を引っ張り出す。
薄汚れた人形がくっついたアパートの鍵だ。
私が午前中のうちに抜き取って、さっきトイレに行く振りをして戻したものである。

川*゚ 々゚)「えっ、もしかしてこれじゃないの」

(*;゚∀゚)「ええっ!なんでそんなところに!?」

113名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:42:44 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「よかったね、すぐ見つかって」

(*;゚∀゚)「うわー、本当にごめんなさい……」

川*゚ 々゚)「気にしないでよ。
       私もひとりメシで、もそもそ食べなくて済んだし。
       なによりあなたと仲良くなれたしね!」

(*;゚∀゚)「今度、お母さんの体調の良い時にお礼しに行くから……。
     今日はほんとにありがとう」

川 ゚ 々゚)ノシ「うん、じゃあ今度こそおやすみなさい!」

(*゚∀゚)ノシ「はい!じゃあなにかあったらまた!」

川 ゚ 々゚)「あいよー」

バタン

川 ゚ 々゚)「……いい子やでぇ、ほんまに」

114名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:46:08 ID:r6CHnP3M0

最近では珍しいほどに、素直でいい子だ。
あの子とゆっくり話ができて楽しかったのが半分。
彼女を食べられなくて残念な気持ちが半分。

何かしらの理由がないと、流石に私も手を出しづらい。

川 ゚ 々゚)「……」

ぶっちゃけた話、理由なんてどうでもいいじゃんと思うこともある。
悪人だろうが善人だろうが、みんなまとめてバラバラにして食べてしまいたい。
だけど、それをしたらきりがないのだ。人間は星の数ほどいる。

だから、私はルールを作った。私の中だけにある特別なルールだ。
そのルールの線引きを超えた人間は、食べてもいい。
それ以外はだめ。

川 ゚ 々゚)「ふぅ」

……私は、お祭りの終わった後みたいな気分で短い家路に着く。
少し話しただけだけど、自分はつーちゃんに惹かれているらしい。
多分、彼女を食べることは出来ない。少なくとも今の私には絶対に無理だ。

川 - 々-)「はぁあ……」

私は大きくその場でため息をついた。
出来立てでまだほんの少しバリの残った合鍵を、ポケットのなかで弄びながら。

115名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:47:30 ID:r6CHnP3M0




























.

116名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:49:28 ID:r6CHnP3M0

*―――――*

あの女をやるチャンスは、案外すぐにやってきた。
つーちゃんにバレないようにするには、
彼女が家を空けるというような状態が必要だった。

そう、10月も半ばを過ぎるとあのイベントがやってくる頃である。
修学旅行だ。

まったく、あの母親が修学旅行の費用を払っていたとは驚きだった。
廊下で偶然出会ったつーちゃんとの会話で、このことを知ったときは小躍りして喜んだものだ。

川 ゚ 々゚)「……」

( ゚д゚)「……そろそろだな?」

川 ゚ 々゚)「そーね」

私は、ミルナくんのライトバンの運転席にいた。
場所は、つーちゃんの通う小学校の近くにある飲み屋街の路地裏だ。
ここであの母親は働いている。そして時刻は午前2時。

娘が家にいないことをいいことに、夜勤でシフトに入っているようだ。
だが、そろそろ店から出てこの辺りに通りかかる頃だ。
ここで人気がほとんど無くなる。

117名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:51:05 ID:r6CHnP3M0

( ゚д゚)「お、来たぞ」

川 ゚ 々゚)「よーし、一気に行くよ」

( ゚д゚)「おk」

スモーク越しにあの女の姿を確認した私は、
女の進路を塞ぐように道路に飛び出した。
轢いてやりたかったが、轢くと車にも道路にも痕跡が残る。

(# ゚д゚)

爪;д )

川 ゚ 々゚)(何あの顔、笑えるんだけど)

私は後部座席から飛び出したミルナ君が、
目にも止まらない速さで女に腹パンを食らわすのをミラー越しに見ていた。
悲鳴を上げる暇もなかったようで、一瞬で車の中に引きずり込まれる。

(# ゚д゚)「よいしょお!」

爪メメ;'д#)「ぎゃあっ!う……」

川;゚ 々゚)(ちょっ……あ、いやでも……)

川 ゚ 々゚)(……肉は叩けば叩くほど柔らかくなるからね)

118名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:52:00 ID:r6CHnP3M0

車に引きこまれた後も、女は殴られ続けた。
それも顔面を執拗に狙われていた。
もう、ミルナ君ったらお下品。

まあ、手っ取り早く心を折るにはこれが一番なのは分かるが。

川 ゚ 々゚)「女のバッグは?」

( ゚д゚)「大丈夫、手に持ったままだ」

川 ゚ 々゚)「電池を抜いておいて、後で私が処分するから」

( ゚д゚)「おうよ」

爪メメ;'―#)「……」

女はショック状態にあるのか、目の前で携帯が奪われるのを呆然と見ていた。
顔の左側が真っ赤に腫れあがり、少し切れていた。
こんなとき、車を汚さないためにもビニールシートは必須だ。

119名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:54:02 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「じゃあ、いつも通り身ぐるみはいだら僧合山に捨てるよ。
      ……おい、持ってる金を全部出せばヤラないどいてやるってよ?おばさん」

( ゚д゚)「……」

爪メメ;'―#)「……分かった」

とにかく、目的地までおとなしくしてもらわなければならない。
こう言っておけば、とりあえずは静かになる。
後部のドアは片側しか無い、そしてそっちはミルナ君が塞いでいる。

ミルナ君はうすらでかくて筋肉だけはついているので、よもや逃げられまい。

人気のない道路をひた走ること一時間。

私たちは隣県の僧合山へとやってきた。
ここには、ミルナ君の父が住んでいた家がある。
今は誰も住んでいない。

そしてここは山深くにあって、悲鳴がどこにも届かない場所だ。

周囲一キロの圏内には、他の民家すら無い。
ダム計画さまさまだ。

120名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:55:49 ID:r6CHnP3M0

( ゚д゚)「じゃあ、降りるぞ」

川 ゚ 々゚)「あいよ」

( ゚д゚)「おい、お前」

爪メメ;'―#)「……なに?」

ミルナ君は、女が声を出した瞬間にまた顔面にパンチを喰らわせる。

爪メメ;д#)「あがぁ!いだ……」

( ゚д゚)「敬語」

爪メメ;'―#)「あ"……はい」

( ゚д゚)「じゃあ、ここで服を脱げ」

爪メメ;'―#)「えっ……はい」

女は言われたとおりにする。
何かの拍子で指が折れていたのか、ひどく時間がかかった。
でもミルナ君はもう女を殴らなかった。

その様子を薄ら笑いを浮かべてみていただけだ。
ま、そういう趣味なのだろう。気持ちはわからないでもない。
……女は、剥いてみるとそこそこに綺麗な体型を保っていた。

121名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:57:24 ID:r6CHnP3M0

三十半ばにしては上々だろう。
だけど下っ腹と腿にセルライトが浮いているのは大きく減点だ。

爪メメ;'ー#)「ここで、おろしていただけるんですか?」

私たちは顔を見合わせる。
飲み込みの悪い女だった。

( ゚д゚)「いや、まだだね。
     お前の財布の中身を検分する。
     それで……あの家の中についてきて欲しいんだがね」

川 ゚ 々゚)「それが終わったら、帰してあげるから」

爪メメ;'―#)「……あ、お前下の階のメスガキか!」

私の顔を見て、ようやく思い出したらしい。
やはり愚鈍な女だ。こんな家畜以下の人間と、数分でも吸う息を共有していたくない。
そろそろ限界だった。

122名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:58:20 ID:r6CHnP3M0

川 ゚ 々゚)「だったらどうしたの?いつもみたいに床ドンしてみる?」

爪メメ;'―#)「っ糞ガキ!!!

( ゚д゚)「おい」

爪メメ;'―#)「……」

( ゚д゚)「いいから行こう。
     時間をかけ過ぎたくない」

川 ゚ 々゚)「うん」

ミルナ君は、女の脱いだシャツで彼女の手をグリグリと縛り上げる。
口にパンツを押しこむのはお約束だ。女が、低い獣のような声で呻く。
ミルナくんが女に吐いたら殺すと脅しながら、家の中に入っていく。

私は、荷物を持ってその後を追った。
カバンの中で金属の擦れる心地よい音がする。
その音を聞いたのか、女が息を呑む。

123名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 23:59:45 ID:r6CHnP3M0

(*゚д゚)「いやあ、ここに来るのも久しぶりだな」

川 ゚ 々゚)「一年ぶりくらい?」

( ゚д゚)「ああ、もう溜まっちまってしょうがねえよ」

川 ゚ 々゚)「そういうのがやだったら定期的に抜きなさいよ」

( ゚д゚)「そういう問題じゃねえんだ、新鮮なのがないと駄目なんだよ」

川 ゚ 々゚)「ふうん?」

( ゚д゚)「夏場はまあいいんだけど、冬になるとすぐに冷えてさ。
     ムスコまでコチコチに冷えてやんなるんだ。
     だから、やりたての暖かいのがないと困るんだよね」

川 ゚ 々゚)「へー」

爪メメ;'―#)「何の話なの?」

川 ゚ 々゚)「ん?ああ、かき氷の話よ」

爪メメ;'―#)「……」

124名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 00:00:29 ID:lCxLhY4U0

すでに、二人でセッティングは整えてある。
女を、この家の元の応接間に二人して押し込んだ。
応接室といっても、椅子やソファーの類はない。

あるのは天井から吊り下がった一本の鈎と、一面のビニールシートだけだ。

爪メメ;'―#)「何よこれ……」

( ゚д゚)「あ、悪いけどひとりにしてくれ。
     道具は、扉の前にでも置いておいてくれ」

川 ゚ 々゚)「あいあい、じゃあどのぐらいで終わる?」

( ゚д゚)カチャカチャ「うーん、三時間ぐらいは欲しいな。いいか?」

川 ゚ 々゚)「ま、許容範囲ではあるね。
      了解、ここで本でも読んでるから」

爪メメ;'д#)「あ、ああっ」

125名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 00:03:02 ID:lCxLhY4U0

ミルナ君が下を脱ぐと、女は部屋の隅ににじっていった。
目は、ミルナくんの陰茎に釘付けになっている。
やー、相変わらず大きい。

久しぶりに見たけど、気持ち悪いくらいに大きい。
あんなの、まともに入る女なんているのかね。

( ゚д゚)「じゃあ、とりあえず一発イッとこうかな」

爪メメ;д#)「やだぁ!くるなぁ!」

ミルナ君が、女を床に転がして覆いかぶさった。

女は意味もなく、背後の床を叩いていた。
人間、もうどうしようもなくなるとこうなる。
特に女は大抵こうなる。

珍説の域を出ないが、女性のほうが生存本能が強いようだ。要は諦めが悪いのだ。
確かに女という生き物はは自分の生存を優先するために、
周囲の親しい人間をもたやすく犠牲にすることもある。

だが、それは極限状態の話だ。

日常生活の上で、誰かを踏みつけ、犠牲にする必要などほとんど無い。
ましてや自分の娘を無視し、虐げる必要などあろうはずもない。

126名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 00:04:18 ID:lCxLhY4U0

爪メメ;д#)「なんでよぉ!なんであたしにこんなことするんだよ!」

川 ゚ 々゚)「あ、ミルナ君ちょいストップ」

(;゚д゚)「なんだよ」

川 ゚ 々゚)「どうしてか知りたい?」

爪メメ;д#)「……ウグッ」

川 ゚ 々゚)「それはね、あなたの生活態度が悪かったからよ。
      つーちゃんをほったらかしにして、夜中まで働くなんてどうかしてる。
      でもって、家にいるときは娘をぶん殴るわけだ」

爪メメ;д#)「そ、そんなことでここまでするの!?」

川 ゚ 々゚)「ふむ、なにか申し開きはあるのかな?」

爪メメ;д#)「え、あ、わ、わたしは心の病気で、主人がいなくて寂しくて!
       今の仕事は、人と触れ合う唯一の機会なのよ!心の拠り所なの!」

川 ゚ 々゚)「へえ、だからなに?」

爪メメ;д#)「!」

127名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 00:05:47 ID:lCxLhY4U0

川 ゚ 々゚)「心の病気、ご主人の単身赴任。
       で、それがどうしたの?
       だからって、あなたが何をしてもいいわけじゃないの」

川 ゚ 々゚)「その報いで、あなたは今から死ぬ」

爪メメ;д#)「そんな……」

川 ゚ 々゚)「でも安心して、あなたのしたことはもう少しで許される」



川 ^ 々^)「……美味しく食べてあげるからね」

爪メメ;д#)「何言ってるの……ああ"っ」

(;゚д゚)「おーい、もういいよな?」

川 ゚ 々゚)「あ、待たせたね。どうぞ」

爪メメ;д#)「いやあ"!ぎゃあああああ!あああああああああ!!!」

女の絶叫がその場に響き渡った。
ミルナ君は半分も入っていないけど、すでにひどく出血が始まっている。
私は、その光景を尻目に部屋を出た。


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