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川 ゚ 々゚)くるうは美味しくいただくようです
1
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:35:42 ID:WCCmjj5s0
閲覧注意
2
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:37:15 ID:WCCmjj5s0
( ^ω^)「分かりましたお、では火曜からお願いしますおね」
川 ゚ 々゚)「はい、こちらこそよろしくお願いします」
( ^ω^)「じゃあ、お疲れ様でしたおー」
川 ゚ 々゚)「はい、失礼します」
カラカラ、トン
ξ*゚ー゚)ξ「良い子だったわね〜」
( ^ω^)「いやー本当に助かったおね!
人が足りない所にちょうど入ってきてくれて」
ξ゚⊿゚)ξ「本当にもう、あなたがもう少しシフト管理をしっかりしてくれれば、
こんなに切羽詰まってから、採用だなんだって焦らなくても良かったのに」
(;^ω^)「おん、すまんお」
(*^ω^)「でもしかし、美府大医学部の子が来てくれるとは!
しかも美人さんだし、売上アップ間違いなしだお!」
ξ゚ー゚)ξ「だったら嬉しいんだけどね、しっかりした子だし……。
教育の方も手を抜かないでしっかりお願いね」
( ^ω^)「了解だお!」
3
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:38:10 ID:WCCmjj5s0
川 ゚ 々゚)「……」
ドアの向こうの会話をそこまで聞いてから、私はそのコンビニを出た。
学費と色々な経費を稼ぐために、ここの面接を受けて即採用。
本当にありがたい事だ。
川*゚ 々゚)「さあてと」
私は、ぺこぺこのお腹を抱えて家へと戻った。
……これからここで、もっとたくさんの人と出会い、
たくさんの楽しみを見つけることになるだろう。
まったく、楽しみで仕方がない。
私は内心でぺろりと舌なめずりをした。
バイトと「食事」に彩られた青春を謳歌しようではないか。
4
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:39:02 ID:WCCmjj5s0
第一話 「絶妙な歯ごたえ」
5
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:40:03 ID:WCCmjj5s0
川 ゚ 々゚)「いらさいませぇ」
( ^ω^)「うーん、もう少しはっきり『いらっしゃいませ!』と、
歯切れよく頼むお」
川;゚ 々゚)「んあ、ごめんなさい」
( ^ω^)「大丈夫だお!君ならすぐ慣れるお。
まずレジ周りのことを完璧にして……あとはニコニコしてればいいお」
(*^ω^)ニコヤカ
( ^ω^)「こんな感じで」
川;゚ 々゚)「う〜?あ、ううん」
( ^ω^)
川 (。) 々(゚))「むうう……」
(;^ω^)「?」
6
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:40:48 ID:WCCmjj5s0
(;^ω^)))))
(( 川 々 )))プルプル
(;^ω^)「あの……」
(((川;゙゚'々゚'))))カタカタ「うぐぐぐ……」
川*^ 々^)パッ
( ^ω^)「おっ」
川*゚ 々゚)「あっ!今のでどうですか!?」
(;^ω^)「良い感じだお!最初の顔がちょっと怖かったけど……。
そんな感じに可愛い子が笑うと、うちの売上も伸びるお。
頑張ってくれおね」
川*゚ 々゚)「はい!頑張ります!」
なかなか難しかったが、何とかなった。
彼の笑顔をなるべく再現しようとしたのだが、
即興ではなかなかうまく行かないものだ。
7
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:41:51 ID:WCCmjj5s0
( ^ω^)「トレーニング期間でだいたい仕事は覚えちゃったみたいだし、
僕が教えることももうあまりないお。
あとは、実地で経験を積んで慣れてくれれば完璧だお」
川*゚ 々゚)「はい!」
( ^ω^)「えっと、じゃあ今日一緒のシフトの人は……しいさんか。
彼女はベテランだから、分からないことがあったら僕か彼女に聞いてくれお。
じゃあ、初仕事頑張ってね」
川*゚ 々゚)「はぁい!」
店長はそう言うと事務所の方に下がった。
さあ、今日が初めてのバイトになる。
気合を入れて頑張ろう。
私は自分に発破をかけると、意気揚々とレジに向かった。
店内は、結構な混みようだ。
多分、これから忙しくなるのだろう。
ふと、横から私の肩が叩かれた。
みるとそこには、小柄な女性が立っている。
ふわりとした甘い笑みを浮かべた彼女は、私に言った
8
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:42:48 ID:WCCmjj5s0
(*゚ー゚)「はじめまして!椎名しいです。
あれ?もしかして今日が初めてですか?」
川;゚ 々゚)「あ、はい」
(*゚ー゚)「そっか、じゃあ、分からないことがあったらいつでも私に聞いてね!」
川 ゚ 々゚)「はい、ありがとうございます。
私、素直くるうっていいます。
よろしくお願いします」
(*^ー^)「はあい、よろしくね」
彼女はにっこりと私にそう言ってから、受け持ちのレジに立った。
よかった。良い人そうだ。
でも、良い人だと少し残念かもしれない。
いや、まあ、それも悪くはないかな。
9
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:44:10 ID:WCCmjj5s0
そう思って、自分のレジに向き直った時だった。
目の前に、男が立っている。
私の人生で初めてのお客様だ。
川*゚ 々゚)「あ、いらっしゃいませ!」
( ^Д^)「112番」
川;゚ 々゚)「え?」
(# ^Д^)「え、じゃねえよ。
煙草だよタ・バ・コ!」
川;゚ 々゚)「あ、すみません」
私はカウンターの裏に置いてある112番のタバコ(マルボロライトメンソール)
を手に取ると、スキャンして客に手渡した。440円。
彼は、私からひったくるようにしてそれを受け取った。
……。
……違う。
……これは、違うじゃないか。
10
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:44:51 ID:WCCmjj5s0
川 ^ 々^)「……ありがとうございました」
(;^Д^)「……」
ニコッとした私の顔を見た男の顔が、少し引き攣る。
ああ、少し顔に出てしまったか。
男は、そのまま無言で店を出ていく。
ありがとうの言葉はない。
おかしい。教育用のDVDではこんなシーンはではなかった。
あのDVDでは、客はニコニコと笑ってありがとう、と言ってから出ていった。
何もかもが違う。違ってはいけないのだ。
なぜ?私はちゃんと微笑んでみせたはずだ。
にも関わらず、あの客は怒ったのだ。
入力は正しかったのに、予想外の出力が返ってくる。
それが私にはひどく許しがたい。許せない。許さない。
ひどく、頭が痛んだ。
だから、横から声をかけてくれた椎名さんに気が付かなかった。
11
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:45:44 ID:WCCmjj5s0
(*゚ー゚)「あー、素直さん、気にしないほうがいいよ。
ああいう人は多いんだよ。この辺のパチンコ屋で負けた人が……」
川 ゚ 々゚)
(*;゚−゚)「……素直さん?」
川 ゚ 々゚)「あ、すみませんでした。
なんですか?」
(*;゚ー゚)「あのね、ああいうお客さんは多いから、あまり気にしないでって」
川 ゚ 々゚)「多いんですか」
(*゚ー゚)「うん、この辺は特に多いの。
だからさ、気にしてたら仕事にならないよ?
厳しいことを言うようなんだけど」
川 ゚ 々゚)「分かりました、気にしません」
川 ゚ 々゚)「……これからは」
私は、レシートを捨てる小箱に入っていたレシートを、
ぐいと握りつぶしてからゴミ箱に捨てる。
汚れた白いゴミ団子、一丁上がり。
ははは、不愉快だ。
12
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:46:33 ID:WCCmjj5s0
(*;゚ー゚)「……」
川 ゚ 々゚)「んふふ」
(*;゚ー゚)「あ、素直さん!
私、バックルームに中華まん取りに行くから、
レジの方お願いね!」
彼女は、それだけ言い残すとバックルームに向かって走り去っていった。
なぜだか、顔色がすごく悪かった。
どうかしたのだろうか?
窓の外を見ようとして、顔をそちらに向ける。
外は、夜であったこともあり真っ暗で何も見えない。
光の加減なのか、青ざめたような色の私の顔が代わりに見えた。
その無表情な鏡像に向かって、私はにやりと笑いかける。
13
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:47:13 ID:WCCmjj5s0
川*゚ ∀゚)
ああ、私は……こんな顔で笑っているのか。
次の瞬間に、胸の底からうずうずと笑いが込み上げてくる。
必死にこらえたが、こらえればこらえるほど全身に毒のように笑いが回っていく。
私の中で、笑いは膨れあがっていく。
私を食い破って、外へ出ていこうとしているかのようだった。
お前が悪いんだぞ、そう、あいつのせいだ。
……そのようにして、私はさっきの客を殺すことに決めた。
まずは、一人目。
14
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:49:24 ID:WCCmjj5s0
*――――――――――*
( ^Д^)「……」
川 ^ 々^)「ありがとうございました」
(*゚ー゚)「ありがとうございました、またお越しくださいませー」
その日も、男はこの店でタバコを買って帰っていった。
いつもどおり、一週間前に出会ったときと同じように。
そして、これから彼は平均して23:30頃まで飲んだ後で、
美府市 大茂名 コーポ大耳205まで、バイクに乗って帰宅するはずだった。
飲酒運転する奴に、人権など無いって思わない?
私は心のなかで、男の背中に向かってそう声をかけた。
そして、そのシフトのあがり際、私はしいさんに声をかけられた。
(*゚ー゚)「どお?仕事慣れたかな?」
川 ゚ 々゚)「はい、もう完璧です」
(*;゚ー゚)「え……すごい自信ね」
15
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:50:05 ID:WCCmjj5s0
川 ゚ 々゚)「いい先輩と店長の指導があったからですよ」
(*゚ー゚)「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない……あ、そうだ」
(*゚ー゚)「今日あたりどう?飲みにでも行かない?
可愛い後輩のためにおごってあげても良くてよ」
川 ゚ 々゚)(……しいさん)
あまりこういうことに誘われたことのない私は、すこし嬉しかった。
だけど、今日ばかりはその誘いに応じることはできない。
川 ゚ 々゚)「そんな、悪いですよ……。
それに今日は先約があって……」
(*゚ー゚)「あら、そう。……もしかして」
(*^ー^)「カレシ?」
いたずらっぽい声で彼女が聞く。
……でも、教えてあげることはできない。
いくらなんでもこれは教えられない。
16
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:50:57 ID:WCCmjj5s0
川*゚ 々゚)「そんなんじゃないですよ……ふふ」
(*゚3゚)「あー!なによ!あたしをそうやって煙にまいて!
後で怖いわよ!」
川*゚ 々゚)「埋め合わせはいつか必ずします。
じゃあ、そろそろあがりますね」
(*゚ー゚)「しょうがないわね、じゃ、また次のシフトでね」
川*゚ 々゚)ノシ「はーい!お疲れ様でした!」
(*゚ー゚)「お疲れー!」
しいさんの声を背に、私はその場を去った。
そして車で十分ほどの距離にある林まで向かった。
その林に沿うようにして走っている道路の脇に、私は停車する。
ここは営業途中のサラリーマンなどが、車を止めて居眠りをしている事が多い。
だからここに車を置いておいてあっても、それは特別なことではない。
路傍の糞のようにありふれ、車に轢かれたイヌのように関心を惹かないものだ。
……午後九時くらいから始めれば間に合うだろうか。
17
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:51:48 ID:WCCmjj5s0
川* 々 )「んふふ……」
私は、しばらく待たなければならなかった。
だが、それも苦ではない。
料理と同じだ。
時間が味に深みを与えることもある。
パン種のように、冷燻したハムのように。
時間がかかればかかるほど私の興奮は高まり、そして。
18
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:52:33 ID:WCCmjj5s0
*――――――――*
(*^Д^)「……ふいー」
ヘルメットの中に吐いた呼気は、
本来なら耐え難いほどの酒臭さだった。
だが、それも今の本人にとっては甘美な香りであった。
男はいつも通りにバイクを走らせ、とある林道に差し掛かった。
男の家まではそう遠くない。
警察の目を避けて通るのに、この道は最適だった。
くねくねと曲がりくねり、脇道も多いここは地元民でさえあまり近寄らない。
男は今日打って稼いだ額を、酔った頭で勘定しながら悦に入っていた。
今日に限って、ありえないくらいの大勝ちをしていたのだ。
男は、全人生の運を使い果たしたのではないかと内心疑っていた。
その男の視界に、赤く光るものが飛び込んでくる。
(;^Д^)(しまった、ネズミ捕りか!?)
19
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:53:23 ID:WCCmjj5s0
パトランプの赤色灯のようなものが100m先に見えた。
だが、近寄ってから男は安心する。
工事現場でよく見かける、あの赤く光る棒を振る板人形だ。
(;^Д^)(ちっ、おどかしやがって!)
男は、その手前で減速する。
よく見ると黄色と黒の縞模様の障害物で、道は封鎖されている。
これでは、横道に入って迂回するほかない。
( ^Д^)「年末でもねえのに……」
男はそうつぶやくと、板人形に向かって舌打ちをする。
それから不本意ながらも、舗装もろくにされていない脇道に入った。
周囲は暗く、バイクのライトだけが頼りだ。
(;^Д^)「う、お、よっと」
その道は非常な悪路だった。
なにかの思いつきのように、ボコボコと大きな石が土の下から顔を出し、
泥濘がタイヤを捕まえそうになる。
20
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:54:13 ID:WCCmjj5s0
バイクの上で中腰になってなんとかバランスを取ろうとするが、
酒に浸った三半規管には、それも難しかった。
さらには道の両側に隙間なく立ち並ぶ木々が、男に圧迫感を与えていた。
だから、男は気がつけなかったのだ。
( ^Д^)「?」
道の真中に、なにか大きなゴミのようなものが転がっていた。
何かのおもちゃのように見えたが、近くに寄った男はそれがなにかすぐに分かった。
昔、暴走族にいた男が、実際に何回か引っかかったトラップだ。
(;^Д^)「なあぁ!?」
ストップスタック。
暴走車などをスパイクでパンクさせて動きを止める罠だ。
でも、なんでこんなものがここに?
その一瞬の逡巡が、男の明暗を分けた。
(; Д )「うおっ!ああああぁああ!!」
前輪がストップスタックをもろに踏みつけた。
ハンドルが、90度近くカクンと右に曲がった。
そして慌ててブレーキをかけてしまった男は、空中に投げ出される。
21
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:56:02 ID:WCCmjj5s0
ガツン、と男の背中に大きな衝撃が走った。
それから少し遅れて、背中に激痛が走る。
背骨が折れているのではないか、と男は思う。
とっさに前に出した右腕は、肘から先が妙な方向に曲がっている。
それを、男は信じられない思いで見ていた。
(; Д )「ぐっ……かはっ……」
痛みのあまりに、声も出なかった。
代わりに、声にならない叫びが腹の底からこみ上げてきていた。
しかしその絶叫は、ささやかな息としてしか外に出すことはできない。
視界が、涙に滲む。暗い色をした樹皮が無慈悲に男を見下ろしていた。
男の後方で倒れたバイクのライトが、それを照らしている。
そのライトの先に、何かが現れたのを男は見た気がした。
川 々 )「……」
22
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:57:16 ID:WCCmjj5s0
*――――――――*
セッティングを終えた私は、男を叩き起こすことにした。
その辺りに落ちていた木の枝が唸りをあげて男の頬を叩く。
三回までは回数を数えていたが、止めた。
私はこういう種類のゲスのために、精神的労力を使うのが非常に嫌いなのだ。
何十回目かで、男は腫れ上がった目を薄く開けた。
朦朧とした意識の中で木に縛りつけられていることだけは分かったらしい。
男は逃げ出そうとその場で激しく身悶えした。
だが、無駄な努力というものだ。
持ってきた道具で、主な骨はあらかたへし折ってある。
万が一逃げられたとしても、始末は手負いの猫を追って殺すより容易い。
(;^三^)「むぐっ!」
川 ゚ 々゚)「おっ、おはよう」
(# ^三^)「むぐがっ!むがが!」
私の顔を見て、男は目を剥いた。
そして、口を塞がれたままで私に何か抗議しているようだったが、
あいにく何を言っているのか全く私には分からない。
理解してやる気もない。
だけど、自分の置かれている状況を知らないのはあまりにも哀れだ。
とりあえず、私は少し教えてやることにする。
23
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:58:13 ID:WCCmjj5s0
川*゚ 々゚)「私よりも、自分のことを気にかけたほうがいいよぉ?
ほらっ!首のところ」
(;^三^)「!?」
男は、そこでようやく自分の首に巻き付いているワイヤーに気がついた。
イヌに使うチョークチェーンと同じ巻き方をした、処刑用のワイヤーだ。
だが、それでも状況がよく分かっていないようだったので補足してやった。
川*゚ 々゚)「いーい?よく見て。
向こうにあなたのバイクがあるよね?横倒しの」
川*゚ 々゚)「あの車輪の軸にそのワイヤーの端が巻きつけてあるの!
でね、でね、アクセルをかけるとどうなるかな!?」
(;^三^)「ぬぅ!うぐあ!」
(;^Д^)「ぶはっ!」
川 ゚ 々゚)「あ、取っちゃった」
(# ^Д^)「テメーこのくそアマぁ!!」
男が猿轡を外してしまう。
あーあ、汚いの我慢してせっかく付けたのに。
24
:
名も無きAAのようです
:2012/01/04(水) 23:59:07 ID:WCCmjj5s0
川 ゚ 々゚)「ねぇねえ、バイクって、このハンドルをひねればアクセルなんだよね?」
(# ^Д^)「ぶっ殺してやる!ぜっってーぶっ殺してやるよ!!
散々ヤッたあと豚の餌にしてな!!!!」
_,
川 ゚ 々゚)「んー?何言ってるかくるうちゃんわかんない」
川*゚ 々゚)「でも!適当にやればなんとかなるよね!」
川*゚ 々゚)「みてみてみて!地面にワイヤーがとぐろ巻いてるよね!?
あれが、いわゆる、ひとつの、猶予なんだよ!」
(# ^Д^)「わけわかんねぇよ!何なんだよお前は!」
川 々 )「……なんだかんだと聞かれれば」
川 ^ 々^)「答えてやるのが世の情け!」
私は、バイクのところまでスキップで向かった。
そして、少し細工したバイクのエンジンをスタートさせた。
ぶるん、と地面の上に横倒しになったバイクが震えた。
車輪が、少しづつワイヤーを巻き取り始める。
それを見た男は、初めて自分の状況を理解したようだった。
25
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:00:01 ID:wopkdb420
(;^Д^)「おい!おいおいおいおい!マジかよ!なんだよこれ!」
川*゚ 々゚)「すごいでしょ−!毎日見てたあなたのバイクを見て思いついたんだよ!
ねえ!すごくない?この発想!」
(;^Д^)「ざけんな!おい!これ以上やったら……」
川 ゚ 々゚)「やめないよ」
(;^Д^)「……っ!」
川 ^ 々^)「ドルンドルン!ぶううぅううん!」
バイクの音を口真似しながら、私はアクセルを全開にした。
たちまち、男に残された「猶予」が巻き取られていく。
男の首に巻きつけたワイヤーは、ホームセンターにあった物の中でも強度のあるものだ。
たぶん期待通りの、いや、それ以上の成果を出してくれるに違いない。
(; Д )「ぐっ……ごぁ」
運命の車輪は、猶予を巻き取り切った。がくんと男の首がバイクに向かって引かれた。
ぴいんと張ったワイヤーは、後輪と男の首を結ぶ直線となる。
後輪が、強い負荷のせいで動かなくなった。
だが、男の首は絞まり続けていた。
男の顔が切羽詰っているのがその証拠だ。
しかし面白い顔をしてるな、こいつ。
26
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:01:24 ID:wopkdb420
(; Д )「――――――――!」
川 ゚ 々゚)
ワイヤーが、男の喉を完全に押しつぶす。
ワイヤーの巻き付いているところから血が吹き出し、噴水のように周囲に飛び散る。
そしてごきっと、男の喉の骨が砕ける音を聞いた気がした。
その時、男の目が大きく見開かれる。
哀れなほどに充血したその目は、もうほとんど何も見えていまい。
しかし、それでも周りに視線を走らせているのは滑稽だった。
この状況を脱するための、解決手段がその辺にあるとでも言うのだろうか。
そんなものがあるのは、くだらない冒険小説の中だけだ。
ましてやお前になど、そんなものを与えてたまるものか。
今日は、あらゆる手を尽くして人払いをしてある。
せいぜい、自分の創りだしたまやかしにしがみついたまま死ぬがいいよ。
(;゚Д゚)「―――――――!――――――――っ!」
目玉が、眼窩から零れそうなほどに飛び出ている。
口の端から、紅い泡がつぶつぶと漏れてきていた。
それが、ライトに反射して綺麗だった。
興奮した私は、アクセルを握る手に更に力を入れた。
でも、それがいけなかった。
27
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:02:31 ID:wopkdb420
川 ゚ 々゚)「あら」
ぷすん、とバイクが音をあげた。
ガス欠か、強い負荷がかかったせいで壊れたのか。
詳しくないからよく分からない。
でもまあ、まずまずの成果だ。
( Д )
川 ゚ 々゚)「んーまあ、小説通りには行かないねぇー」
騾馬ほどの馬力がなかったためか、想像通りにはいかなかったが、
そこそこ面白いものが見られた。さて、哀れな役者には退場してもらおう。
28
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:03:20 ID:wopkdb420
川 ゚ 々゚)「んしょっと」
私はサイドバックに入れておいたクーパーを取り出すと、
痙攣している男の胸をはだけさせて、大体の目星を付けた。
そこを目掛けて、クーパーを突き刺す。
川 ゚ 々゚)ドスッ
男の体が大きく跳ねる。
大当たりだ。
そして、トドメのためにクーパーをチョキチョキした。
私はこのハサミが大好きだ。
だから、家には学校からくすねてきたクーパーがたくさんある。
机の上に転がしておいても便利だし、簡易のキッチンバサミにも使える。
医療現場でのハードユースに応える信頼性は伊達ではない。
と、気がつけば男がおとなしくなっている。
ていうか死んだ。
29
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:04:02 ID:wopkdb420
( Д )
川 ゚ 々゚)
川*゚ 々゚)
本番はここからだ。
私はクーパーを引き抜くと、それをそのまま男の顔の所に持っていく。
だが、思い直して他に何種類かの刃物を取り出して思案した。
どれが一番キレイに、余分な傷を付けずに取れるだろうか?
結局、クーパーで何とかすることにした。
断面は汚くなるが、帰ってからいくらでも処理できる。
……さあ、貰うものはもらっていくからね。
ちょきん、と音がなくなった林の中にハサミの音が響いた。
30
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:04:44 ID:wopkdb420
*――――――――*
(*゚ー゚)「―――でね―――その殺された人って―――――――。
うちの店からも監視カメラのビデオを提供して―――――――。
死体には―ほっ―たが無かったんですって!」
川 ゚ 々゚)「……」
(*゚ー゚)「ちょっと!くるうちゃん聞いてる?」
川;゚ 々゚)「あ!すみません!なんの話でしたっけ」
(*゚−゚)「んもう!何も聞いてなかったの?
この辺で殺人事件が起きたのよ!」
川;゚ 々゚)「えー!なにそれ怖い!」
(*゚ー゚)「その人ってウチの防犯ビデオにも写ってて、
殺された日にも来てたんだって!
でね、もしかすると犯人もってことで警察がビデオを持ってったのよ!」
川 ゚ 々゚)「へええ、大変だったんですね」
(*゚−゚)「この辺一帯が大騒ぎよ!ホントにびっくりよね〜」
川 ゚ 々゚)「ですねー」
なかなかに話題になっているようだ。
でもそんなことにはあまり関心が持てない。
私の、今の、最大の、関心事は、うちの冷蔵庫の中身だった。
31
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:06:13 ID:wopkdb420
川 ゚ 々゚)「じゃあ、そろそろ失礼しますね」
(*゚ー゚)「あっ!くるうちゃん!さっきデザートがなんか廃棄になってたよ!
ちょっと持って行ったら?」
川 ゚ 々゚)「あー……なんですか?デザートって」
(*゚ー゚)「えっとね、確かイチゴのジュレだったかな」
イチゴ!私の大好物だ!
川*゚ 々゚)「おぉぉお!すごい嬉しい!いただいてきます!」
私は、そうして意気揚々と自宅に戻った。
危うく、道中はスキップして進んでしまいそうになった。
これでは不審者だと思われてしまう。だが私は違う。不審者ではない。
だけど仕方のないことだった。今日はアレの仕込みと仕上げがあるんだから。
今にもお腹が減って死んでしまいそうだった。
そして、料理を食べ終えたら、デザートにイチゴのゼリーをゆっくり味わうのだ。
素晴らしいひとときになりそうだった。
32
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:07:03 ID:wopkdb420
川*゚ 々゚)「でっきったっかなー」
冷蔵庫には、金属製のバットが入っている。
主に人を撲殺するためのバットではない。
食材を乗せたりするトレーのことだ。
その上に、二枚の肉が乗っている。
一昨日から血抜きをしていたものだった。
川*゚ 々゚)「ふんふんふーん」
キッチンペーパーで、出た汁を拭きとる。
さらに新しいキッチンペーパーで包んで、また冷蔵庫にしまった。
あまりにも肉に水気が残っていると、ソースがだめになってしまう。
川*゚ 々゚)「トントントン、にんにく刻んでトントントン」
川*゚ 々゚)「刻んでー丸めてー」
川 ゙゚'々゚')クワッ「川 に 落 と す ぞ !」
川*゚ 々゚)「ふんふん、ふふふーん」
33
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:09:42 ID:wopkdb420
にんにくを刻み終えたら、フライパンにオリーブオイルを敷く。
だけど火をつけてはいけない。火を止めた状態からにんにくを入れるのがミソだ。
そこからじっくりと時間をかけて弱火でにんにくをローストする。
川*゚ 々゚)「んふー……んふふふふ……」
にんにくの香りが立ち始めたら、一旦にんにくを取り出してしまう。
これは私の好みだ。好きな人はきつね色になるまでローストする。
ここで、満を持してお肉の出番である。
川 ゚ 々゚)「うむ、よし」
川*゚ 々゚)「良い感じだぁ……」
表面はもうあまり濡れていない。
触っても濡れるか濡れないか、というところだ。
これに胡椒を少し摺り込んでおく。
この加減というのが実に難しい。
34
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:10:24 ID:wopkdb420
川*゚ 々゚)「……」
一旦フライパンを強火にし、十分に温まった所で肉をソテーする。
ここが勝負どころだ。一気に焼き色がつくまで強火で焼き上げる。
じゅう、という音が収まってきた所で肉をひっくり返した。
完璧だ。
川*゚ 々゚)「よっし!」
私は火を中火にする。
それから、さっきのにんにくとケッパー、白ワインを取り出した。
ケッパーは酢漬けより、塩漬けが好きだ。
料理によっては塩抜きが必要だが、酢漬けのケッパーと味がぜんぜん違う。
この料理に使うときは、少し潰してから入れるのが私の好みだ。
白ワインは、辛めのものを使う。
甘みは、肉の脂だけで十分だ。
これらを、フライパンに投入して蓋をする。
少しだけ蒸し焼きにするのだ。
35
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:11:10 ID:wopkdb420
川 ゚ 々゚)「もういいかな」
私が蓋を取ると、肉汁とオリーブオイル、
そして肉の脂が混じり合い、ソースが白く濁っていた。
私はソースに塩を少々加えてから、肉の様子を見た。
……肉にも火が通ったようだ。
私はここで肉を皿に盛った。
だが、まだまだ待たなくてはならない。
ソースを、煮詰めなくてはならないのだ。
川;゚ 々゚)「うーうー」
皿に盛った肉にかぶりつきたい衝動にかられつつ、私はさらに待った。
人をいらいらさせる男は大嫌いだ。もう一度殺してやりたい。
きりきりと歯ぎしりをしながら、フライパンと睨めっこをすることおよそ三分。
ソースがだんだんと透き通ってきた。
よし。
私は万感の思いを込め、ソースを肉にかけた。
川*゚ 々゚)「……できた!」
36
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:12:03 ID:wopkdb420
肉の照り、ソースの味。
我ながら惚れ惚れする出来だ。
……ただ、残念なのは肉が少し臭く、
その匂いが手を尽くしてもなかなか取れなかったことだった。
だが、にんにくと胡椒をふんだんに使ったので何とかなったはずだ。
川*゚ 々゚)ドキドキ「おいしく……できたかな?」
ナイフを頬肉に入れると、程よい弾力がナイフ越しに返ってくる。
なかなかの肉質だ。
一口サイズにして、ようやく私はその肉を口にした。
川*゚ 々゚)モグモグ
川*>々<)「……んんぅん、美味しいぃ……」
ケッパーの香味と、じっくりローストしたニンニクの香りが、
白ワインのもとで実に良く調和していた。
脂身の少ないこの頬肉には最善の調理だった。
と、私は確信した。
そしてなによりも、そう……絶妙な歯ごたえだ。
37
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:13:58 ID:wopkdb420
*――――――――――*
(´・ω・`)「ひでえな」
(‘_L’)「……ええ、私もこんなのを見たのは久々です」
林道の死体発見現場で、二人の刑事が死体を前に話し込んでいた。
死体にはすでに覆いが掛けられていたが、周囲の地面には薄く血痕が残ったままだ。
少し離れたところには、故障したバイクが放置されている。
(´・ω・`)「ワイヤで喉をぶっ潰して心臓をめちゃめちゃにした挙句……。
その上で顔の肉を削ぐとはな」
(‘_L’)「おっそろしいことです。
この土地でこんな害者を見るとは夢にも思いませんでしたよ」
(´・ω・`)「俺もだ、ありえないよ、こんなの」
(‘_L’)「あれですかね、最近ここいらに移ってきたっていう、
中国系の奴らの仕業ですかね。
あいつらは見せしめにそういうことをするそうですし」
(´・ω・`)「……そうかもしれん。
だがまあ、鑑識の結果待ちだな。
何か出てくればいいんだが」
38
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:14:15 ID:cIOySmLM0
美味しくというのは、そういうことだったか
39
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:14:38 ID:wopkdb420
(‘_L’)「……出ないと思います。
もしあいつらなら痕跡はキレイに消してきますから」
(;´-ω-`)「まったく、参ったもんだよ。
なんでまた、ウチの管内でこういうのが……」
(‘_L’)「マスコミも騒ぎ始める頃です。忙しくなりますよ」
(´・ω・`)「勘弁してくれ……」
そう言った刑事は着ていたコートの襟を整えて、車に戻っていく。
降ったばかりの雨に、地面はすっかりぬかるんでしまっている。
こんなんじゃあ、証拠もクソもでやしねえ。
……その足取りは、どうしようもなく重かった。
40
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:15:34 ID:wopkdb420
一人目 完食 「DQN男の頬肉ソテー、シチリア島風」
41
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:22:39 ID:wopkdb420
川*゚ 々゚)「ここでお料理のワンポイントアドバイス!」
川*゚ 々゚)「今回はにんにくを使ったけど、
肉が臭くなかったらニンニクはなくても大丈夫」
川*゚ 々゚)「むしろ、ケッパーをやや目立たなくしちゃうから、
普通の豚肉とかはにんにくを入れないのがベターかも」
川*゚ 々゚)「私はにんにくを入れて食べるの好きだけどね」
川*゚ 々゚)「じゃあ、みんなも試してみてね!」
川*゚ 々゚)「次に美味しい肉が入ったら、また会えるかも!」
川*^ 々^)ノシ「それじゃあ、ばいばーい!」
42
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:23:43 ID:lgQYsA4U0
乙!引き込まれる文章だった
次回も期待
43
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 00:34:35 ID:Osne5HaYO
乙
思った通りの展開が逆に面白かった
44
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 01:06:42 ID:CUmD3eP.O
面白かった!!
残虐系苦手なのに引き込まれた!!非常に読みやすい!!
乙!!
45
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 08:08:47 ID:/MVzKOcAO
くるうちゃんかわいい
続き楽しみ乙
46
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 08:49:09 ID:Y.e/xcPwO
サスペンスっていいよね
47
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 14:09:17 ID:q8d5OK/o0
おつくるう!続き期待
48
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 14:24:36 ID:XH24NCJ2O
カニバ キター!
乙です!期待してますよ!
49
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 17:28:59 ID:q0F/nh/A0
プギャーも美味そうだしくるうちゃん可愛いすぎるし最高だわこれ
50
:
名も無きAAのようです
:2012/01/05(木) 19:56:28 ID:ndxQfj220
これ思い出した
( ^ω^)美味しいお肉の勧め!のようです
http://mesimarja.blog74.fc2.com/blog-entry-570.html
51
:
名も無きAAのようです
:2012/01/20(金) 22:32:50 ID:ttx4atmg0
川 ゚ 々゚) こんばんにちわ
川 ゚ 々゚) ……この作品はかなりの不定期更新になるんだって
川 ゚ 々゚) ごめんね
川 ゚ 々゚) 話数も少なめかなと思う
あと2月中にはまた投下したいってさ
川 ゚ 々゚) ここに引っ越したばかりの現行も、他に抱えてるものも行き詰まった挙句、
いらいらして立てたスレだから、こうなるんだね……反省
川;- 々-) お腹すいた……
52
:
名も無きAAのようです
:2012/01/20(金) 22:36:11 ID:nmjU0FMM0
待ってるよ
53
:
名も無きAAのようです
:2012/01/24(火) 07:27:17 ID:/nvSu8LkO
待つ
54
:
名も無きAAのようです
:2012/02/28(火) 21:49:22 ID:WRywAjm20
お腹が空いたよ
55
:
名も無きAAのようです
:2012/03/02(金) 00:12:56 ID:PTkuceCM0
三月やで
56
:
名も無きAAのようです
:2012/03/02(金) 13:03:26 ID:YHndKOEk0
川 ゚ 々゚)「三月になっちゃった……二月は忙しかったの」
川*^ 々^)「テヘッ☆」
川 ゚ 々゚)「……まじですみませんでした」
川 ゚ 々゚)「でもあとちょいちょいで行けるから、ちょっと待ってね」
川 ゚ 々゚)「ちなみに、次はカレーだよ」
川 々 )「……あと、今は三月だから、五月よりも狂ってるからね」
57
:
名も無きAAのようです
:2012/03/02(金) 17:56:30 ID:nwyJiX.EO
春だもんな
58
:
名も無きAAのようです
:2012/03/02(金) 23:13:25 ID:TBep.kZ60
おいしそうだな、って思ってしまった
面白かった
59
:
名も無きAAのようです
:2012/03/03(土) 01:48:26 ID:sBtfcaO.O
カレーwktk
待ってる!
60
:
名も無きAAのようです
:2012/03/03(土) 21:33:46 ID:wri.s4AQ0
美味しくしてね
待ってるよ
61
:
名も無きAAのようです
:2012/03/10(土) 01:12:04 ID:HTPNdc3YO
>>59
今更だがSBww
62
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:45:23 ID:r6CHnP3M0
閲覧注意
*今回、閲覧注意なシーンの前と後に空レスを用意しました。
こうしたものに抵抗がある場合、空レスと空レスの間は読み飛ばし、
その次のシーンからご覧下さい。やや表現がマイルドになります
川 ゚ 々゚)
63
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:46:07 ID:r6CHnP3M0
第二話「箱の裏のレシピ通りに、それがおいしいカレーの秘訣」
64
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:47:51 ID:r6CHnP3M0
ドンッ キャー イイカゲンニシナサイヨ
オカーサンヤメテー イヤー
_, ,_
川 ゚ 々゚)「……うるさいなぁあ」
私がうららかな午後の日差しを浴びつつ包丁を研いでいると、
その静寂をぶち壊すように子供とその母の声が聞こえてきた。
どうやら娘のいたずらを叱る母娘の図のようだ。
せっかくの日曜日なのに、上の住人は私の大切な時間をぶち壊すのに使いたいらしい。
……しつけっていうのは、他人様に迷惑をかけないのが前提条件なんじゃないの?
馬鹿なの?死ぬの?食べちゃうよ?
川#゚ 々゚)プンスカ「ったく、最近はガキがガキを育ててるから始末におえないんだ!」
川;゚ 々゚)「……あ、そうだ、洗濯機!」
イライラしながらも、お洗濯はしなくちゃいけない。
何度も洗濯すれば、どんな頑固な痕跡だって大抵は洗い落とせる。
それでも駄目なら塩素消毒が有効だ。血液反応をごまかせるかもしれない。
私は、床の上に降り積もったプリントやら、
服やら完全自殺マニュアルやらを踏み越えて玄関の戸に手をかけた。
65
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:49:29 ID:r6CHnP3M0
川 ゚ 々゚)「ふいー」ガチャ
(*;∀;)エグッエグッ
川 ゚ 々゚)「……あ?」
女の子が、外置きの洗濯機に寄りかかって泣いている。
彼女は12、3歳くらいの年に見える。
伸びきったキャラ物のシャツはだいぶ色あせていた。
だが世の中のクソみたいなロリコン野郎共なら、
矢も盾もたまらず部屋の中に引きずり込んだだろう。
なかなかの美人さんではないか。
ほっぺなんてむちむちしてて美味しそうだ。
……それはもう、いろいろな意味で。
川 ゚ 々゚)「……大丈夫?」
(*;∀;)「……あ、ご、ごめ……」
川 ゚ 々゚)「ああ……」
66
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:50:56 ID:65c3yfnsO
きたー支援
67
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:51:53 ID:r6CHnP3M0
なるほど、さっきまで叱られてた上の子か。
視線を向けただけで女の子はビクッと体を震わせる。
その過敏な反応は、私の嗜虐性をムラムラと刺激してくる。
やわらかい産毛の下にある、泣き濡れて赤く上気した顔。
それを撫でくりまわしてみたいという、願望を押し殺して私は聞いた。
川 ゚ 々゚)「あなた、どこの子?」
(*;∀;)「えと、あ、205の……」
川 ゚ 々゚)「ああ、上の階の人か。
どうしたの?何かあったの?」
(*つ∀)「……すみませんでした」
(*つ―゚)「……少し、辛くなっただけです。
それより、うるさかったでしょう?私達。
ごめんなさい」
68
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:52:50 ID:r6CHnP3M0
川 ゚ 々゚)「……そう、じゃあお母さんに言っておいて。
全然気にしていませんからって」
(*゚―゚)「はい、分かりました……じゃあ」
川 ゚ 々゚)「……じゃあ、またね」
(*゚―゚)「はい」
女の子は拳を固く握りしめたまま、二階へ続く階段をトコトコと上がっていった。
なんというか少し虐めるつもりでいたのだけど、気が削がれてしまってやめた。
あの子、なんだかとても追い詰められた感じがする。
そんな人間に止めをを刺すのには、かなりの危険が伴う。
私はこんな穏やかな、あるいは穏やかだった日にそんな危険を冒したくはなかった。
69
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:54:28 ID:r6CHnP3M0
それに全然気にしてないと言っておけば、
まともな神経をしている人ならば謝りに来るだろう。
その時に、母親の方を虐めればいいのである。
とにかく今は、放っておくのがいい。
川 ゚ 々゚)「ううむ、くるうちゃん困惑」
重くなった頭と洗濯物を抱えて私は部屋に戻った。
洗濯カゴの中から、濡れた洗濯物の匂いがする。
そういえばあの子の服、最近洗濯された様子がなかった。
食べものの、多分カレーか何かの古い跳ね跡が残っていた。
川 ゚ 々゚)「……カレーかぁ」
久々に、カレーが食べたくなってきた。
70
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:55:54 ID:r6CHnP3M0
*―――――*
(*゚ー゚)「へえ、女の子が家の前でねえ」
川 ゚ 々゚)「なんかそれから気になっちゃって。
しかもそれから、上の人も何も言ってこないし。
うるさいのもそれから毎晩変わらないんですよ」
(*゚ー゚)「やーな感じよねー。
でもくるうちゃんそういうのって、
下手に首突っ込んだりするとやばいかもよ?」
川 ゚ 々゚)「やばいって?」
(;゚ー゚)「あー、例えばさ、刺されちゃうとか」
川 ゚ 々゚)「うあー、怖いですねー」
(*゚ー゚)「なんで棒読みなの?」
暇な午後勤のレジで、すっかり私たちは話し込んでしまっていた。
本当にこのコンビニは客数が少なくて、ガールズトークに花が咲いてしまう。
こういう諍いの話題は、私も彼女も大好物である。
71
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:57:33 ID:r6CHnP3M0
(*゚ー゚)「これさ、やっぱ虐待じゃないの?
ドーンとか、そういう音しない?」
川;゚ 々゚)「あー、結構しますね。
母親の絶叫の後とかに、しょっちゅう聞こえます」
(;゚ー゚)「うわあ、やばいね……。
そういえば、上の会の家族の父親は?
やっぱり、あれなの?シングルマザーが、
単調でストレスフルな日常に倦んで作った男ってやつ?」
川;゚ 々゚)「なんですか、そのへたくそな恋愛小説みたいな設定」
(*゚ー゚)「……下手かな」
川;゚ 々゚)「とにかく、そうじゃないっぽいですね。
単身赴任中だとかで、今はいないみたいです」
こういう時、私は周囲の人からの情報は集めておく。
情報を持っているものが、この世界では常に強者だ。
ニコニコ笑って井戸端会議に持ち込めば、
近所の暇な主婦は簡単に他人の秘密を、まったく意味のない耳打ちで教えてくれる。
難しいように見えて、案外こういうのは簡単なものである。
72
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 22:58:36 ID:r6CHnP3M0
近所のアラさんによると、母親は水商売をやりだして深夜まで家に帰らない生活が続いているとか。
どうもかなり前に、いわゆる一つの「心の風邪」を引いてしまったらしい。
母親がホステスまがいのことをし始めたのは、その頃のことらしい。
私には、その神経がよくわからない。
初めから理解してやろうなどという気はないが。
ここで私の心の深いところから、貴方はあの母親に厳しすぎるという声が微かに聞こえ始める。
だが、私はその囁きに対してこう反論した。
「だって、しょうがないじゃない。お腹が減ってしまったんだもの」と。
(;゚ー゚)「じゃああれ?夫のいないストレスを子供にぶつけてるのかな?」
川 ゚ 々゚)「そう、なんですかね」
私は、そういう構図が一番嫌いだ。
強く美しいものが醜いものを踏み潰すのはある意味正当だが、
美しくか弱いものが、強く醜いものに蹂躙されるのは反吐が出る。
73
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:00:14 ID:r6CHnP3M0
上の階の家族はまさにそうだ。
年をとって心も体もねじ曲がった母親が、
美しく若い娘を追い詰めている。
しかも、娘はその母をかばおうと気丈に振る舞う。
塵芥のように無価値でなんの意味もない屑を、
母親だという理由だけでその身を犠牲にして守ろうというのだ。
そうして娘の心が押しつぶされていく様子は、震えが来るほど美しい。
だが、それでは駄目なのだ。
美しいものは、より美しいものに塗りつぶされて絶望しなくてはならない。
(;゚ー゚)「あ、くるうちゃん!レジお願い」
川 ゚ 々゚)「あ、はい」
いつの間にか、レジにはかなりの人が溜まっていた。
あぶない、妄想の世界に行ってしまって気が付かないところだった。
お客様をお待たせしてはいけない。
今の私は、それが仕事だ。
仕事でお金を稼いで学費にあて、
余ったお金は「お料理」のために使う。
74
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:01:01 ID:r6CHnP3M0
新しいお肉も欲しくなって来たところだ。
ミルナ君も呼んで、ちょいちょいっとヤッちゃおう。
ミルナ君に任せると、色々とヤだけど。
まあ、処理の方はミルナ君に任せられるから楽でいい。
そのための下準備は必要だけど……。
川 ゚ 々゚)(さあて、ホムセン通いが始まるお……)
貯金がやばそうだけど、ミルナくんも援助してくれると思う。
さあ、準備も含めてお料理だ。
いまから張り切っていってみよう。
75
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:02:18 ID:r6CHnP3M0
*―――――*
勤務が終わって、店長さんから廃棄のお弁当をもらって帰る。
このチェーンの味付けはかなり濃いけど、まあ他よりましだ。
スイーツ系(笑)はなかなか美味しいし、こういう日は結構得した気分になる。
アパートの近くになって、ふと私は足を止めた。
目の前を、あの母娘が歩いている。
母親の方は、久しぶりに見る。
そして、どういうわけだか娘のほうは楽しそうだ。
彼女はつーちゃんというらしい。今は小学校の六年生。
近所の奥様情報では、ろくに服も買ってもらえないらしい。
というのも、数着程度の服をずっと着回しているらしいのだ。
それが、小学四年頃からずっとつづいているのだという。
川 ゚ 々゚)「……」
爪'ー`)y‐~
(*゚∀゚)
子供を脇において、歩きタバコとは恐れ入る。
……やはり煙草呑みか。ふうむ、なるほど。
脂身は期待できない。脂は特にタバコの匂いが付きやすいのだ。
……となると、モツもなかなか使いにくい。
なんとも悩ましいものだ。
76
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:03:42 ID:r6CHnP3M0
爪'ー`)「ん?」
母娘がこちらに気がつく。
というか、母親の方はつーちゃんの声でなんとなく振り向いただけだった。
その薄汚れた目で私を見てくれるな。くり抜いてむしゃむしゃしてやろうか。
川 ゚ 々゚)(……面倒だけど)
仕方が無いので、挨拶だけはしておく。
ニコニコ笑っていれば、相手も嫌な気はしないだろうし。
川 ^ 々^)「こんにちは!」
爪'ー`)「……」
川#^ 々^)(……無視か?ババア……)
(*;゚∀゚)「う、あの」
つーちゃんが、母親の方と私の両方を見てあたふたしている。
かわいい。でも可哀想なので、私はもう一度母親に声をかける。
77
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:05:25 ID:r6CHnP3M0
川*> 々<)「アレキコエナカッタノカナ……こんにちは!」
私は、大きく、よりあざとい感じに言った。
ああ、結構これは恥ずかしいぞ。
爪'ー`)「ふん」
川*> 々<)「……」
川#> 々<)(よーし、黒縄地獄の刑だ)
(*;゚∀゚)「あ、おかー……」
爪'ー`)「行くよ」
爪'ー`)「変な人に関わると、めんどくさいからね」
(*;゚∀゚)「う……」
川 ゚ 々゚)「……」
私はキメ顔を解除すると、その場で彼女たちが行くのを見送った。
母親はいかにもな、くねくねした歩き方で階段を登っていく。
腰の動きを強調した、あの尻を大きく振る感じの……お?
78
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:06:17 ID:r6CHnP3M0
川 ゚ 々゚)(……きーめた)
川*゚ 々゚)
さっきまでのいらいらがふっと掻き消えるくらいの妙案だ。
さて、そうと決まれば部屋に戻ってゆっくりと策を練ろう。
……今日のスイーツは、大好きなピーチのケーキだ。
かなり楽しみ。
79
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:07:18 ID:r6CHnP3M0
*―――――*
(*;゚∀゚)「あっ」
ζ(゚ー゚*ζ「どしたのつーちゃん」
(*;゚∀゚)「雨、降ってきちゃったね」
ζ(゚ー゚;ζ「あー本当だー。
うわっ、けっこう降ってきたね」
(*;゚∀゚)「テレビで台風がくるから荒れるって言ってたけど、
今日の夜からじゃないの……?やだなぁ」
学校のお掃除の時間。
私は図書室の棚を拭いているとき、
すごい勢いで雨が降ってくるのを近くの窓越しに見た。
わーっと乾いた校庭から土埃が舞って、
あっという間に校庭の土の明るい茶色がねずみ色になっていく。
80
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:08:15 ID:r6CHnP3M0
(*;゚∀゚)(私、かさなんて持ってないのに)
ζ(゚ー゚*ζ「やだなぁ、髪が大変なことになっちゃう……」
かさは、一年生の時に買ってもらったのが誰かに盗られてから買ってもらえてない。
でも学校から借りようとすると、お母さんがすごく怒る。
他人に迷惑をかけるな、とか。そんなボロ傘さして来やがってとか。
世間体を気にしているなら、下のお姉さんに優しくしてあげたらいいのに。
うるさくして申し訳ない、とかなんで言えないんだろう?
結局、帰りの会になっても何も思い浮かばなくて、
そのまま走って帰ることになってしまった。
(*;゚∀゚)(やばいよ!教科書がぐちゃぐちゃになっちゃう!)
カバーなんて持ってないから、ランドセルはビシャビシャになってしまう。
濡れて帰っても怒られるし、かさをさしてきても怒られる。最低だ。
81
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:09:10 ID:r6CHnP3M0
(*;゚∀゚)「ふああ、やばかった……」
家までは近かったから、思ったほどは濡れなかった。
タンタンとアパート横の鉄の階段を駆け登って、ようやく部屋の前についた。
それで、鍵の隠し場所を開けた時の事だった。
(*;゚∀゚)「あれ?」
いつもは、洗濯機のホコリ取りの中に入っている鍵が見当たらない。
一度、私が鍵をなくしてしまって以来、私は鍵を持たせてもらっていない。
だからここに鍵がないということは、私はお母さんが帰ってくるまでここで待たなきゃいけないということだ。
(*;゚∀゚)「どう、しよう」
10月になって、雨も気温も冷たく寒くなっている。
このままここにいると、ただでさえ薄着の私は……。
お母さんはお仕事で、いつも夜まで帰ってこない。
そうだ、コンビニに行けば。
82
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:10:25 ID:r6CHnP3M0
そう思った時だった。
部屋の前で立ち尽くす私のところに、足音が近づいてくる。
(*;゚∀゚)「……」
こんなびしょびしょのところを見られたくない。
でもどうしようもなかった。
多分洗濯機の中に入れるくらいのことをしないと、隠れられない。
上がってきたのは、下のお姉さんだった。
川 ゚ 々゚)
(*;゚∀゚)「あ、こんにちは……」
川 ゚ 々゚)「やっぱり、あなただったのね」
(*゚∀゚)「え?」
川 ゚ 々゚)「階段を上がるときは、
もう少し静かに上がってきて欲しいんだけど」
83
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:11:19 ID:r6CHnP3M0
(*;゚∀゚)「すみません……」
川;゚ 々゚)「それよりも、あなた大丈夫?
びしょびしょじゃない。
はやく部屋の中に入らないと寒いでしょう?」
(*;゚∀゚)「あの、実は締め出されちゃって」
川;゚ 々゚)「……どういうこと?」
(*゚∀゚)「いつもの場所に鍵が置いてなくって」
川 ゚ 々゚)「ふうん、お母さんが置き忘れたのかしら?」
(*;゚∀゚)「そう、なのかな?」
さすがにお母さんでも、そんなミスしないと思うんだけど。
84
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:13:40 ID:r6CHnP3M0
川 ゚ 々゚)「……そのままだと、風邪引いちゃうよ。
ねえ……良かったらウチで服、乾かしていかない?」
(*;゚∀゚)「……いいんですか?
あ、いや、やっぱり……」
川 ゚ 々゚)「でもお母さんってだいたい帰ってくるのは、
いつも夜の11時から12時の間でしょ?
そんな時間までここにいるつもり?頼れる友達とかはいるの?」
(*;゚∀゚)「この辺りにはいない……です」
川*゚ 々゚)「だったら、上がっていってよ!
ほら、手もこんなに冷たい……」
(*゚∀゚)「あっ」
お姉さんの手はすごく暖かかった。
その暖かさを感じると、自分の体が冷え切っているのを改めて感じる。
間近で見ると、すごくきれいな手だ。
指がすごく長くて、曇り空の下の光で見ると肌が真っ白に見える。
(*゚∀゚)「……」
それだけじゃない、この人自体がとってもきれいだ。
着ているものも、まあ黒ばっかりなんだけどカッコよくて。髪も長くて、さらさらで。
それに比べて、いつもお母さんにぶつぶつ切られてる私の髪なんか、酷い。
85
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:14:28 ID:r6CHnP3M0
そうだ。この前、この人の部屋の前で見た時からだっただろうか。
この人に、すごく憧れてしまっている。
でも同時に、どうしようもなく垢抜けない自分が涙がでるくらいに恥ずかしかった。
……そんなことを考えた日の夜は、いつも考える。
お父さんがいつも家にいてくれて、お母さんの心が病気じゃなかったら。
私も、将来はこんなお姉さんになれたのかな?と。
それが駄目なら、そもそもお母さんがいなければ……。
川 ゚ 々゚)「さ、行きましょ」
(*゚∀゚)「あ、はい!」
押し切られるような感じで、私はお姉さんの部屋に上げてもらうことになった。
入った瞬間、柑橘系の果物のような良い香りがしてくる。
86
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:15:58 ID:r6CHnP3M0
でも部屋の中はいろいろなプリントとか、本とかですごく散らかっている。
私は、そんな部屋の隅にあるテーブルの椅子に座らされた。
濡れるから駄目だって断ってるのに。
しかし……大学生と聞いていたんだけど、大学生もこんなにプリントを貰うんだ。
そんなことを考えていると、お姉さんがお茶を持ってきてくれた。
(*゚∀゚)「すごくいい匂い……なんですかこのお茶?」
川 ゚ 々゚)「ああ、これ?
これは普通に紅茶よ?」
(*゚∀゚)「えっ?でも普通はこんないい匂いは……」
川 ゚ 々゚)「ああ、アールグレイだから」
(*;゚∀゚)「えっと、あーる……。
ごめんなさい、午後ティーとかそういうのしか飲んだことなくて」
川 ゚ 々゚)「……そうなの。でもなんで謝るの?」
(*;゚∀゚)「あ、すみません」
_,
川 ゚ 々゚)「だーかーらー、謝らないでいいの!
つぎ謝ったら怒るからね!」
(*;゚∀゚)「あ、う」
87
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:16:56 ID:r6CHnP3M0
川 ゚ 々゚)「……」
(*;゚∀゚)「……」
川*゚ 々゚)
(*;゚∀゚)「?」
川*^ 々^)「……冗談よ」
(*゚д゚)「あっ……ひどーい!」
お姉さんがぱっと表情を変えておどけてみせる。
思わず、立場を忘れてやり返してしまったけど、
やっちゃったとは思わなかった。
お姉さんの笑顔が、子供の私よりも可愛らしいというか、屈託がなかったから。
88
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:18:04 ID:r6CHnP3M0
川*゚ 々゚)「そうそう、その調子よ。
あと敬語ももうやめて?怒るからね?」
(*゚∀゚)「うん、分かりました」
川 ゚ 々゚)「……わざとね?」
(*゚∀゚)「……バレた?」
川*゚ 々゚)「こいつぅ!すんきざみにしてやるぞ!」
(*^∀^)「あはははっ!なにそれ!」
それからのお姉さんはよく笑った。
お姉さんから借りたタオルで頭を拭きながら、
私はいろんな話をした。
お姉さんは、大学に通うために東京からこの美府市に越してきて、
今は大学一年生なんだそうだ。その割に大人っぽいですって私は言った。
川 ゚ 々゚)「あー、みんなからもそう言われるんだよ。
ま、そりゃあそうなんだけどね。
私、いま21だから」
(*;゚∀゚)「あ、もしかして……浪人した、とか?」
89
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:19:12 ID:r6CHnP3M0
川 ゚ 々゚)「そうそう……遊びすぎちゃって」
(*゚∀゚)「そんな風には見えないけどなー」
川 ゚ 々゚)「……私はどう見えるの?」
(*;゚∀゚)「え、その……」
川 ゚ 々゚)「……」
(*゚∀゚)「なんというか、お姉さんはすごくかっこいいです!」
私は、少し勇気を出してそう言った。
正面から人を褒める時って、勇気がいる時がある。
今がその時だ。
90
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:20:44 ID:r6CHnP3M0
川*゚ 々゚)「……ありがと」
(*゚∀゚)「……こちらこそ」
そう言って、私はお姉さんに微笑み返した。
川*゚ 々゚)「名前まだだったよね?私、素直くるうっていうの。
……これから、何かあったらすぐ来てくれていいからね」
(*゚∀゚)「つーです。よろしくね。」
(*゚∀゚)「……いろいろ、ありがとうございます」
川*゚ 々゚)「こらっ!敬語に戻ってるよ!」
(*゚∀゚)「……ごめん」
それから、夜になって。私の家での晩ご飯の時間になった。
かっこ悪いから、お腹が鳴らないようにたまにお腹をパンチしてみたけど駄目だった。
なんか、異様に耳が良いくるうさんはすぐにこっちを向いて意地悪く笑った。
川*゚ 々゚)「んーっ?なんか変な音が聞こえたなあ?」
(*//∀//)「……うう」
わざとらしく、いろいろなところを見るフリをする。
お風呂場、食器棚。いろんなところを覗き込んでは、チラチラとこっちを向く。
よく分かんないけど、この人ヒドいかも。
91
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:21:35 ID:r6CHnP3M0
川*゚ 々゚)「ここかな?」パカッ
_,
(*;゚∀゚)「くるうさん、そこお鍋なんですけど」
川*゚ 々゚)「……アッー!こんな所に昨日の残りの野菜ポトフが!」
(*゚∀゚)「!」
川*゚ 々゚)「おおっとお!冷蔵庫を開けたら賞味期限ギリの鶏肉がぁ!」
川*> 々<)「さらにさらに!卵と人参も、それに玉ねぎもそろそろ使わないと!」
川*゙゚'々゚')「はぅあ"!それにケチャップもそろそろ封を開けて一週間!
もうそろそろ鮮度が切れちゃうよ!」
川*゚ д゚)「やべえええ!しかもたっぷり二人分はあるぞう!
こりゃあ大変だ!今すぐオムライスでも作らないと!」
(*;-∀-)「なんとなく分かったけど、なにもそこまでしなくても……」
92
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:22:29 ID:r6CHnP3M0
川*゚ 々゚)「ごみんごみん、つい楽しくてね」
(*゚∀゚)「でも、いいの?
ご馳走までしてもらっちゃ、流石にちょっと」
川 ゚ 々゚)「んーそうねぇ……じゃあ、手伝ってくれる?」
(*;゚∀゚)「え?」
川 ゚ 々゚)「それだったら、あなたも食べやすいんじゃない?」
(*゚∀゚)「……たしかに、そうだけど」
川*^ 々^)「じゃあ、一緒に作りましょ!」
(*;゚∀゚)「でも、私あんまり料理したことなくて」
川 ゚ 々゚)「んー、じゃあ簡単なことでいいからお願いできるかな?
ポトフが二人分には少ないから、お湯とコンソメを足しておいて」
93
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:23:15 ID:r6CHnP3M0
(*゚∀゚)「そのくらいなら……」
川 ゚ 々゚)「ん、じゃあおわったらオムライスの方に呼ぶからねー」
(*;゚∀゚)「あ、はいっ」
なんか、緊張してきた。
よその家でなんか成り行きでオムライスを作ることになってる。
なんか、夢見てるみたいな感じだ。
いままで、満足に友達の家に遊びに行ったこともなかったから。
とにかく、私は家と同じ2つ口のガスコンロのスイッチをひねった。
ぽっと暖かい音がして、青い火が可愛いミルクパンの下で揺れる。
私の家でヤカンにお湯をわかす時と違って、なんだか心がはずむ。
川 ゚ 々゚)「……」
くるうさんはその間、玉ねぎと人参を手早くみじん切りにしている。
包丁がすごくよく切れるのと、機械みたいに均一に切れているのには感心した。
それをざっとボウルに移し、一口大ほどに切った鶏肉を出した。
そこでくるうさんは、馬鹿みたいにミルクパンを何度も覗いている私に声をかけた。
94
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:24:47 ID:r6CHnP3M0
川 ゚ 々゚)「本当に料理したこと無いの?」
(*゚∀゚)「……うん、家庭科の時間ぐらい」
川 ゚ 々゚)「そうだな、じゃあ今日は作り方を覚えて帰ってもらおうかな。
まずは、野菜をみじん切りにしておくの。人参はあってもなくてもいいよ。
でも、私は甘みが出るのが好きだから入れたほうが好き」
(*゚∀゚)「ふうん」
川 ゚ 々゚)「それで、じゃあ鶏肉を焼く時なんだけど。あ、これはもも肉ね。
皮を下にして焼いていくの。まずはちょっと強火でね」
(*゚∀゚)「皮を先に?なんでなの?」
川 ゚ 々゚)「こうするとぱりっと仕上がるの。
じゃあ、実際に焼いてみようか」
そう言うと、くるうさんはフライパンに油も敷かずに鶏肉を入れる。
いいのかな、と思ったけど口を挟むのも、と思ったので黙っている。
いつもは誰かさんに口を挟むと、ろくでもない事になるから癖になっているんだろう。
じゅうという気持ちのいい音と、そこからすぐに鶏肉の香りがふあっと上がってくる。
95
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:25:29 ID:r6CHnP3M0
川 ゚ 々゚)「ほら、油が出てきたのが分かる?」
(*゚∀゚)「うん、けっこう出てきたね」
川 ゚ 々゚)「皮って本当に油が多いの。
この油ってサラダ油より全然香りがいいし、
こういう料理だと断然美味しく出来るんだ」
川 ゚ 々゚)「……それに、油の節約になるからね」
(*;゚∀゚)「けち……?」
川 ゚ 々゚)「いいじゃない、それで美味しく出来るんですから」
それからちょっとして肉をひっくり返すと、
皮にはすごく美味しそうな焼き目がついている。
それを確認してから、くるうさんはフライパンに蓋をする。
川 ゚ 々゚)「ここで弱火にして、中まで火を通すの……と。
そろそろスープのお湯が沸くんじゃない?」
(*゚∀゚)「あ」
くるうさんの手元に注目していたから気が付かなかった。
私はあわてて火を弱くして、そこにコンソメの素を入れた。
よく見ると、少しジャガイモが煮崩れている。
96
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:26:17 ID:r6CHnP3M0
(*;゚∀゚)「あちゃー」
川 ゚ 々゚)「んー?ちょっと煮過ぎちゃったかな?」
(*゚∀゚)「ごめん、ちょっとだけ」
川 ゚ 々゚)「まあ、私はそういうのが好きだからいいけどね。
底に溜まった、ジャガイモの残骸をもそっと食べるのっていいよね」
(*゚∀゚)「あ、それ分かる!」
川*^ 々^)「……あなたが分かる人でよかった」
彼女はそう言いながらスープの味を見て、
軽く塩コショウを加えて味を整える。
私も味を見てみたが、やっぱり美味しかった。
くるうさんはその後で、すぐ野菜をフライパンに放り込んだ。
玉ねぎの焦げる匂いがして、だんだん空腹感がひどくなってきてしまう。
お腹すいた。でもまあ、これからちゃんとしたご飯が食べられるんだからいいか。
97
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:27:05 ID:r6CHnP3M0
川 ゚ 々゚)「フン〜フンフン♪」
(*゚∀゚)「なんですか?それ?」
川*゚ 々゚)「暗い日曜日って歌よ。いい曲なのよこれが」
(*;゚∀゚)「なんか、楽しそうな曲じゃないんだけどなぁ」
川 ゚ 々゚)「でも楽しい曲ばっかり聞いてると逆に気が滅入ってこない?
たまーに暗い曲を流してると逆に気分が盛り上がってくるものよ」
_, ,_
(*゚∀゚)「そーかなー?」
なかなか独特なセンスをした人だ。
なんか、喋っていてもなんか変な人だなあとは思ってたけど。
まあ、私みたいなのにこんなに優しくしてくれるんだから、とっても変な人なんだろう。
炒め終わったものに、彼女は白ワインをふりかける。
お酒臭かったけど、それはすぐに消えて甘い匂いが立ち始める。
そこに、ようやくケチャップが入る。
くるうさんはしばらくケチャップと具材を馴染ませていたけど、
お茶碗に四杯分のご飯を(炊きたてだった)量りとって、フライパンにどさっと入れる。
そこで、彼女はコンロの脇においてある台の上を見てはっとした顔をした。
98
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:27:48 ID:r6CHnP3M0
川;゚ 々゚)「あ、ごめんつーちゃん。
コンソメの素を溶いておいてくれる?
このちっちゃい器に素を入れてさ、ポトフのスープで溶かすの」
(*;゚∀゚)「あ、はい」
どうやら、くるうさんはこの部分を忘れていたみたいで、
突然私にそうやって指示した。今まで私の見る限りでは完璧に進んできたのに。
カッコよく見えるこの人も、こんなふうに失敗するんだと思うとなんだかおかしかった。
私はスープの上澄みで素を溶いて、台の上に置いた。
くるうさんはそれをすぐに取って、半分出来かかっているチキンライスの上にかける。
また、じゅわっといういい音が鳴った。
川*゚ 々゚)「ありがと、じゃあもうすぐだからね」
(*゚∀゚)「やった!」
私はもう待ちきれなかった。
美味しそうなものがあるのに食べられないのって半分拷問だと思う。
しかもくるうさんの手際が良いせいか、彼女がコックさんみたいに見えてる。
そのせいで余計に、期待感みたいなのが否が応にも高まってしまう。
99
:
名も無きAAのようです
:2012/03/11(日) 23:27:52 ID:hPMtsvXkO
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