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('A`)ドクオと飛竜と時々オトモのようです

1名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 00:08:51 ID:88pYr5WMO
小説板から引っ越してきました。蕎麦は後程ご馳走します。

前スレ http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/sports/37256/1300286882/1-

100名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 22:58:51 ID:88pYr5WMO


( ΦωΦ)「イヨゥ!あちらのディアブロスが近付いて来たら、すぐに知らせるのである!!」

(=゚ω゚)ノ「はいですよぅ!」


もう一匹のオトモであるイヨゥは、ロマネスクに張りついたまま二頭のディアブロスを注意深く見つめている。

イヨゥは、オトモアイルー達の中で力のある方ではない。寧ろ、飛び抜けて力が弱い。昔はアイルーらしからぬ語尾と、そのひ弱さが原因でアイルーの間では虐められていた程だ。


だが、その点を補って余るほど彼は優秀な頭脳を持っていた。


(=゚ω゚)ノ「ツーちゃん!ディアブロスを斬るなら尻尾を狙うんだよぅ!!首にはツーちゃんじゃ届かないけど、気を逸らすのが目的なら尻尾で充分なはずだよぅ!!!」


全体を見渡し、的確に今出来る最善の選択肢を伝える。こんな芸当が普通のオトモに出来るだろうか。否、出来るはずがないのだ。

101名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:07:33 ID:88pYr5WMO

ディアブロスを、単独で引き付けるオトモ、ツー。
そして、主人とオトモを万全の構えで補佐するイヨゥ。


この二匹の力が、【ユクモの英雄】ロマネスク=フェイトを今まで支え続けてきた。

102名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:08:15 ID:88pYr5WMO

( ΦωΦ)「ふう、流石はディアブロスなのである。しかし我らとて、負ける訳にはいかぬ。負けられない理由を抱き、お前達と戦う事を決意したのだから」


片角のディアブロスは、ロマネスクの言葉を最後まで聞く事なく、突進した。


( ΦωΦ)「全く、せっかちな王であるな」


しかし、これをロマネスクは難なく躱す。軽くステップを踏んでディアブロスの正面へ。ここで再び腹部へと刃を走らせる。
的確に、先程から傷付ている“その一点”へとウルクスレイを突き刺す。今までよりも一段と深く突き刺さる。


( ΦωΦ)(あと少し……あと少しなのである)


ツーの方は一見問題無い様だ。これが狡猾な【迅竜】ナルガクルガであったり、ずば抜けて知性の高い【火竜】リオレウスであったなら、すぐに見抜かれていただろう。

【角竜】ディアブロスだからこそ、戦い始めてからずっとツーはディアブロスを騙せているのである。加えて怒ったディアブロスの動きは速い。だが、如何せん真っ直ぐ過ぎるのだ。


以上の理由から、ツーはディアブロスから逃げ続ける事が出来ている。

103名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:08:45 ID:88pYr5WMO

これだけ聞くと、狩りは順調だと思えるだろう。だが本当のところ彼等に余裕などは存在しない。というより、寧ろロマネスク達は窮地に立たされているのだ。


オトモの弱点、それは体力に尽きる。


(;* ∀ )「ハァ……ハァ……。こっ、れは……きっついニャー」

104名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:09:21 ID:88pYr5WMO
















その限界は、唐突に訪れた。

105名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:11:17 ID:88pYr5WMO

(;=゚ω゚)ノ「ツーちゃん!!!!!」

(;ΦωΦ)「!?」

イヨゥの悲痛な叫びが、砂漠に木霊する。ツーの動きが不意に止まったのだ。
あれではディアブロスの格好の的、しかも意図した動きだとも思えない。


(* ∀ )「―――」


恐れていた事態が起こってしまった。砂漠に大の字に俯せるツーは、自らの限界まで逃げ続けた。だがアイルーの小さな体で、飛竜と根比べをすればこうなる事は当り前。
やっと動きを止めた標的に、雄叫びを上げ嬉々として突っ込んでいくディアブロス。


(#=゚ω゚)ノ「させないよぅ!!」


イヨゥは全速力でツーを抱え込み、地中に潜った。確かにディアブロスの突進は猛烈だが、不幸中の幸い距離は彼の方が近かった。

106名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:12:06 ID:88pYr5WMO

寸での所で、ツーを助けだしたイヨゥ。


それを見てロマネスクは“安堵の息”を吐いた。


そう、ユクモの英雄は一番してはいけない事をしてしまったのだ。


それは“安心”油断と言っても良い。


(メ;ΦωΦ)「グフゥ……!!」


片角のディアブロスが、ニヤリと嗤っていた。

深々と貫かれたロマネスクの脇腹からは、ドクドクと赤い液体が溢れていた。

1076―4:2011/12/18(日) 23:15:53 ID:88pYr5WMO

地中から出てきてイヨゥは、目の前の光景を見て絶句する。脇腹に大きな風穴を作った主人。その大きさからディアブロスの角に刺し貫かれたのだと分かった。

(;=゚ω゚)ノ「ごっ、ご主人様ッ!!」

イヨゥは、狩人を仕留め喜び狂う二頭のディアブロスを無視して駆け寄った。


(メΦωΦ)「イヨゥ……ツーは無事であるか?」

(=;ω;)ノ「はい、ツーちゃんは無事ですよぅ!ご主人様、すいませんよぅ!僕が勝手に離れちゃったから……僕のせいですよぅ!」

咄嗟に、起き上がろうとするロマネスクへ支えようとするが、手で制された。


(メΦωΦ)「戦いは、まだ終わっていないので、ある。我が輩は、まだ戦える」

(;=゚ω゚)ノ「無理ですよぅ!その傷じゃ、満足に動ける訳ないですよぅ!!」


誰が見ても満身創痍。死に体と言っても過言ではない。見ればロマネスクの脇腹からは大量の血液、顔色も青白くなっている。


だが、そうであっても


ロマネスクは己の足で立ち、こう言い切った。

108名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:16:49 ID:88pYr5WMO





(メΦωΦ)「我が輩は狩人である!この身は、ユクモを護る盾!!この身朽ちようとも、我が輩は逃げる事を是としない!!!」







_

109名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:17:54 ID:88pYr5WMO

これが、今なおユクモで英雄と呼ばれるロマネスク=フェイト。その本質。
身体を刺し貫かれようとも、彼は退く事を是としない。誇り高きユクモを護る盾。


『Galaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』


―――だからこそ


ディアブロスの突進を受けて尚、彼は一歩も下がらなかった。
ずっと待っていた瞬間。片角のディアブロスが、無防備に慢心した突進を繰り出すのを。


(メΦωΦ)「待って、いたのである……この時を……」


ロマネスクの愛槍【雹砲】ウルクスレイ。それが突き刺さる。
いや“突き刺さる”という言葉では足りない。“突き抜けた”のだ。

110名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:21:27 ID:/KaCdXl.O
引っ越しキター!


今から読むしえ

111名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:22:08 ID:88pYr5WMO

ずっと狙い続けた腹部の傷。少しずつ、傷口を広げていった。そこに、ディアブロスの突進の勢いを利用し突き刺した。


時速80kmで疾走するディアブロス、その胸を正確に突く。間違いなくロマネスクにしか出来ない技である。


『Galaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!』


しかし暴君は止まらない。今ディアブロスを突き動かしているのは、生物としての本能だ。


ディアブロスは、前腕を振り上げ忌々しい狩人の身体を押し潰そうとする。

112名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:23:03 ID:88pYr5WMO


―――だが





『ユクモの狩人を舐めるなあぁぁぁああああ!!!!!!!!』

113名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:24:18 ID:88pYr5WMO

太刀にも、大剣にも、他のどんな武器にもない、ガンランスだけの固有兵装。強靭な飛竜の肉質ですら無視する、問答無用の一撃。


(#ΦωΦ)「オオオォォォオオ!!!!!!」


―――対竜種用 竜撃砲


圧倒的火力も以て、ディアブロスを体内から焼き尽くす。

114名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:25:26 ID:88pYr5WMO

『Guohooooo………』


今までの雄叫びとは、全く質の違う悲鳴。そのままディアブロスは、倒れ臥した。


(メΦωΦ)「……まずは一頭、なのである」


ロマネスクに油断は無い。

だがディアブロスは、まだ一頭残っている。ロマネスクの身体は既に満身創痍。状況は言うまでもなく最悪である。

115名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:26:08 ID:88pYr5WMO

(メΦωΦ)「イヨゥ、ツーは?」

(*゚-゚)「ここにいるのニャー」

ロマネスクに呼ばれ、すぐに地中から出てきたツー。体力は、まだ完全に戻っていないのか、時折肩で息をしている。


同胞が倒され、動揺を隠せないディアブロスが動かないのを見て、ロマネスクは言った。


(メΦωΦ)「ツー、イヨゥ、お前達は逃げろ」

ピク、とツーの猫耳が揺れる。

116名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:26:59 ID:88pYr5WMO

(* ∀ )「……なんでニャ?もうツーはいらない子なのかニャ?」

予想外の言葉に、ツーは身体を震わせて尋ねる。

(メΦωΦ)「ツー、お前は充分にやったのである。あのディアブロス相手に、何時間も、逃げ続けたのである。その活躍、見事としか言い様がない。充分、我が輩のオトモとして尽くしてくれたのである」


主人の労りの言葉。しかしツーが今聞きたいのは、こんな言葉ではなかった。


オトモとは主人と共に生き、主人の為に死ぬ。


(* ∀ )「イヤニャー!ツーは、ご主人様と一緒に死にたいのニャー!!」


普段からお転婆だの、口が悪いだの、敬意が足りないと口酸っぱく嗜められていた彼女。


だが彼女は、心から自分の主人を愛していたのだ。それはオトモ特有の刷り込みによる敬愛だったかもしれない。苦楽を共にした情なのかもしれない。


だが、それは紛れもなく彼女だけの、ツー自身の想いであった。

117名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:27:51 ID:88pYr5WMO

(メ#ΦωΦ)「聞き分けよッ!!!!」


だがロマネスクは、ここに来てその想いを否定した。


(* ∀ )��


怒鳴るのも辛いのか、ロマネスクは大きな血の塊を吐いた。だが、それでも喋るのを止めない。

(=゚ω゚)ノ「ご主人!」

なんとかイヨゥも出血を止めようと、出血元を強く押えているのだが、効果は見られない。

(メΦωΦ)「イヨゥもツーも、今まで良く我が輩を支えてくれた。だが、それも此処までなのである。今日も以てお前達との契約を切る」

(;=゚ω゚)ノ「ご主人様!」

『Ualaaaaaaaaaa!!!!!!』


主従の繋がりを断ち切る様に、残されていたディアブロスか吠えた。
そして、その巨体を地面へと潜らせる。


ロマネスク達に緊張が奔った。

118名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:28:42 ID:88pYr5WMO

(メΦωΦ)「……お前達は、これからのユクモを支えていく若者達の導き手となって欲しいのである」

(* ∀ )「……」

(= ω )ノ「……」


―――これが、不甲斐ない主人からの、最期のお願い、なのである






( ΦωΦ)『ツー、お前が無事で良かったのである』

119名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:29:01 ID:zgUJIP.U0
待ってた

待ってた!!!

120名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:29:35 ID:88pYr5WMO


(*;∀;)「ごしゅじ……」

ツーは、最後までその言葉を発する事が出来なかった。ツーの小さな身体が、大きく投げ飛ばされたからだ。これには“ロマネスク”も驚きを隠せなかった。





(=;ω;)ノ「ハァ……ハァ……」





ツーをあそこまで遠くに投げ飛ばしたのが、あの“非力な”イヨゥだったからだ。

121名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:30:29 ID:88pYr5WMO

暫しの放心状態を経て、我に返ったツーは叫ぶ。

(*;∀;)「ニャ、イヨゥ!なんでツーを投げたのニャ!?」

それに、イヨゥは裂けんばかりに叫び返した。


(=;ω;)ノ「ツーちゃんは生きるよぅ!!生まれてきたしぃちゃんの為にも!ご主人様の為にも!!」


小さな身体で、精一杯の大声。しかし、そこには確かにイヨゥの魂が込められていた。

(メΦωΦ)「……イヨゥ」

この小さなアイルーの精一杯の主張、ロマネスクは否定する事が出来なかった。いや、誰にも否定させはしない。いつも臆病で、自分を隠してきたイヨゥが、やっと自分の意志を主張したのだ。

(メΦωΦ)(誰にも、それを否定させはせぬ)


イヨゥは続けて、こうも叫んだ。

(= ω )ノ「変な口癖で、いつもイジメられてきた僕を助けてくれたのはご主人様だよぅ。いつか恩返しがしたい、そう思っていたんだよぅ。力が弱くて、不器用で、本当にどうしようもなかった僕を救ってくれたご主人様に……僕はここで報いたいよぅ!」

122名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:31:05 ID:88pYr5WMO

ディアブロスが地中に潜った時は、決して大きな物音を立ててはならない。視界も利かない地中な中で、奴は耳を頼りに獲物を狙うからだ。ディアブロスと戦うなら絶対に忘れてはいけないルール。

それを頭の良いイヨゥが、忘れているはずがなかった。


波紋の様に広がる地響き。そして、それが収まった瞬間【角竜】ディアブロスは、再び地中からその巨躯を躍らせ顕現した。


狙いは言うまでもなく、イヨゥ。


(#=゚ω゚)ノ「イヨォォォオオオ!!!!」


しかしイヨゥは、軽やかな跳躍でそれを躱す。その動きに速さはない。ただ巧さだけがあった。


(=゚ω゚)ノ「ご主人様、僕の初めての我が儘を許して下さいよぅ。ツーちゃん、僕の初めてのお願いを聞いて欲しいよぅ」




―――僕はただ、君を護りたいんだよぅ

123名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:32:01 ID:88pYr5WMO

(メΦωΦ)「行け、ツー。主人と仲間のお願い聞き届けてくれ」


(* ∀ )「ツーは……ツーは……」


『にゃあああああああああああああああああ………!!!!!』


ツーは、駆け出した。ユクモに向かって。どうしようもなく、ここで一緒に死にたい自分を、自らの意志で押し殺し、何度も転げ、心臓が警笛を鳴らそうとも、ツーは逃げ出したのだった。

124名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:32:56 ID:88pYr5WMO
(メΦωΦ)「……全く、最後まで手のかかる娘だったのである」

視界から小さくなっていくツーを見て、そっと微笑んだ。
傍らには、イヨゥ。

(=゚ω゚)ノ「全くですよぅ」

(メΦωΦ)「イヨゥは、本当に良かったのであるか。ここに残って」

オトモは、軽く首を振って努めて明るく言い放った。

(=゚ω゚)ノ「勿論ですよぅ!!主人の命令を聞くのがオトモの生き甲斐なら、主人の為に最期まで戦うのもオトモの生き甲斐ですよぅ!!

―――それに何より」


(=^ω^)ノ「ツーちゃんを護りたかったんですよぅ」

125名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:34:15 ID:88pYr5WMO

ロマネスクは、ふっと微笑んだ。種族の違いはあろうと、やはりイヨゥも“男”だという事か。


( ΦωΦ)「―――イヨゥ“秘薬”を渡せ」

(;=゚ω゚)ノ「えっ!?でも、あれは……」

(メΦωΦ)「分かっておる。だが、このままでは奴を倒す事は叶わぬ。それならば、ここで使うしかあるまい」


ロマネスクの言う秘薬。この世界に飲むだけで、傷付いた身体が治るような便利な物は存在しない。
滋養を高めたり、疲れを感じさせにくくする程度のものだ。
秘薬とて同じ。飲めば傷が癒える訳ではない。


ただ痛みをぼかす。痛点を鈍くする。


現在でいう“モルヒネ”の様な役割を持っているだけだ。

それは死を待つ者だけに許される一種の麻薬である。

126名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:35:06 ID:88pYr5WMO

(メΦωΦ)「ふぅ……イヨゥ。では、参ろうか」

ロマネスクは、左手に持っていた盾を捨て、槍を両手で構えた。

(=゚ω゚)ノ「はいですよぅ」

二人の視線の先には、【角竜】ディアブロス。今尚猛り狂う飛竜は、その獰猛な牙を剥き出しにし、二人に襲いかからんと身を沈めている。


ロマネスクとイヨゥ、最期の戦いがどの様な物だったのか、誰も知らない。
知ってる者は、誰一人として居ない。


ただユクモの狩人達が、全身を傷だらけにして帰ってきたツーを見て、慌てて砂漠に向かった所
尻尾を斬られ、片角を折られて絶命していたディアブロスと、それと折り重なる様にして立ったまま冷たくなっていたロマネスク。


そして、少し離れた所に小さなオトモが倒れていた。その表情には、小さな笑みが浮かんでいたという。

127名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:35:53 ID:88pYr5WMO

ユクモに帰ったツーだが、辿り着いた瞬間にその場で倒れ三日三晩眠り続けた。人々は、ロマネスクの狩りが成功したからこそツーが帰ってきたのだと思った。主人の為に生きるオトモが、主人を置いて帰ってくるなど、誰も想像していなかったからだ。


ツーは、村の英雄のオトモとして皆に称えられた。主人と共に“最後まで”戦い、生きて帰ってきたオトモとして。


三日後、目を覚ましたツーが見たのは、ユクモの平穏無事を祝い喜ぶ、村の者達の姿だ。

128名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:36:20 ID:88pYr5WMO





その時、彼女は何を想ったのだろうか。


主人と大切な仲間を失った彼女に、その煌びやかな祭りは、どう映ったのだろうか。


それは、彼女にしか分からない。

129幕間:2011/12/18(日) 23:37:41 ID:88pYr5WMO

ユクモの村から少し離れた場所。そこに一際目を引く大理石造りの大きな建物があった。

(゚、゚トソン「キュート様、Gの狩人二人に正式な依頼を受領して頂きました」

そこに二人の女性の姿があった。一人は、トソン。背中に大きな楽器の様な物を背負っている。

そしてもう一人。綺麗な純白の絹織物を来て、髪に大きな装飾を付けた少女。齢は二十歳弱くらいだろう。少女と女性の境目、その曖昧な境界線にいる彼女は、文句なく美しく、可憐であった。


o川*゚―゚)o「ご苦労様、トソン」

130名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:38:34 ID:88pYr5WMO

キュートは、疲れた顔をした侍女トソンを労るように柔らかく微笑んだ。

(゚、゚トソン「私に気遣いは無用です。キュート様こそ、大丈夫なのですか?彼のユクモ神が現れてから、ろくに睡眠も取らず、騎士様方の説得を試みておられると聞いておりますが」

キュートは、トソンの言葉に首を振り、私よりも今は狩人様達の心配をするべきてず、と言った。


o川*゚―゚)o「フォックス様と貴方が出られれば、状況も変わったでしょうに。私の無能故に狩人達に危険を強いる事になってしまいました」

(゚、゚トソン「……大丈夫です。ギコも理解している様でしたから」

余り感情を表に出さないトソンだが、長年傍にいるキュートには、今のトソンの気持ちが痛い程伝わってきた。

o川*゚―゚)o「ごめんね、トソン。貴方がギコ様を大切に想っているのは、私もよく知っているわ」

(゚、゚;トソン「べっ、別に私はギコを好きだなんて言った事なんてありませんよっ!!それにギコは弟の様なものですし……」


ふふっ、キュートは本当にギコ様の事が大切なのね、と微笑んだ。

131名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:39:37 ID:88pYr5WMO

o川*゚ー゚)o「そういえば、もう一人。ドンドルマより来られたGの方はどうでしたか?」

(゚、゚トソン「あの時の狩人ですか?……正直、間近で見た時は少し拍子抜けでした。実際、姫様と洞窟で彼の戦いを見ていなければ、Gの称号も嘘なのでは、と疑っていたと思います」

トソンの余りにも率直な意見を聞いて、キュートに笑みが零れた。

o川*゚ー゚)o「ふふっ、確かにあまり大きな方ではなかったものね」


キュートは、掛けられていた上着を羽織ると、大きなテラスへと続く硝子造りの扉を開け放った。

強く吹き込む冷たい風。

o川*゚ー゚)o「でも、何故か私はあの方を信じられる。そう思うのです。理由は分からないのですが、この身に流れる血でしょうか。それが“彼を信じろ”と私に囁くのです」

不思議ですね、彼女は楽しげに呟きながら片膝をついた。それに習いトソンも慌てて同じように片膝をつく。

132名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:40:18 ID:88pYr5WMO

o川*ーーー)o「……父様、母様、ユクモをお守り下さい」

願いは、自らの両親へ。キュートと、その姉を護り、死んだ二人へ。


o川*ーーー)o「姉様、生きていて下さい」


トソンは、この祈りを毎朝キュートが行っているのを知っていた。亡き両親へ、そして存命かも分からぬ自らの姉。

133名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:41:02 ID:88pYr5WMO






o川*^ー^)o「……参りましょう、トソン。今日も、私達の歌を届けに」

(-、-トソン「はい。ご一緒致します」


吹き込む風が、優しく二人を包み込んだ。

134名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:41:06 ID:ebud7yhkO
ロマネスク、天晴れな漢よ

135名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:42:20 ID:bp9T8mCE0


136 ◆.WtyGIaY4.:2011/12/18(日) 23:47:30 ID:88pYr5WMO
お疲れ様でした。本日の投下はこれで終了です。


また明日、投下しに参りますので宜しくお願いします。


今回は(*゚∀゚)過去編という構成です。ロマネスク達の最期の戦いは、書かない事にしました。別にネタ切れしたとか、そんなんじゃないんだからねっ!

前編が終了した時点で番外編でもやろうかと思っていますが、全く何も書いていない状態なので、リクエストなどがあれば是非教えてください。


ディアブロスとの戦いは、6話の主軸ではないので、いつもより淡々とした感じになってしまったと絶賛後悔中です。

137名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:49:29 ID:fX5CwgEk0
>>136
おつ!
今回も面白かったよ

138名も無きAAのようです:2011/12/18(日) 23:49:52 ID:bp9T8mCE0

ドクオの過去も読みたいですね

139 ◆.WtyGIaY4.:2011/12/18(日) 23:51:03 ID:88pYr5WMO
では感想・指摘募集中といういつもの言葉で締めさせて頂きます。ありがとうございました。
















カプコン、お前は絶対に許さない。絶対にだ。

140名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 00:50:04 ID:eROeq6TE0
お疲れ。まさかの3DSだもんな。

ロマネスクの最期か・・・

秘薬は原作のチート具合を引き継がなくてよかった

141名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 00:51:52 ID:eROeq6TE0
お疲れ。まさかの3DSだもんな。

ロマネスクの最期か・・・
秘薬は原作のチート具合を引き継がなくてよかった

ギコとモララーの昔がみたいです

142 ◆.WtyGIaY4.:2011/12/19(月) 06:57:45 ID:rv3b0BHg0
>>138>>141

ドクオの過去はこれから後編で嫌と言うほど語られる事になると思います。

未だ登場していないクーや影の薄いキュート、名前だけのフォックスも。

ギコとモララーに関しては少し番外編として書こうかと思います。ブーンの親父についても。

143名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 08:38:49 ID:/Eaiq6f2o


確かに今までPSPだったのに3DSとはな…予想しなかった
おかげで未だに買うか迷うわ…

144名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 10:30:08 ID:GV2dN8ko0
今さらだけど乙です
可愛いデレたんはもう本編には出ないのかい!?

145 ◆.WtyGIaY4.:2011/12/19(月) 18:53:09 ID:rv3b0BHg0
本日22:00頃、投下に参ります。お時間、都合が合いましたら、またお会いしましょう。

あと三回に分けて投下します(キリッみたいな事を言っている馬鹿が居ましたが、今日で終われなさそうです。

恐らく明日も来る事になると思います。

146名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 19:25:36 ID:W8WyBSVg0
OK.寒いが服は脱ぐ

147名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:09:41 ID:ctg3onNo0
まだかな…この季節に全裸は辛いせま…

148 ◆.WtyGIaY4.:2011/12/19(月) 22:39:11 ID:f.54VduIO
こんばんは。では、再開でありんす。

後、今日ではやっぱり終わりません。明日にもつれ込む予定です。

1496―4:2011/12/19(月) 22:43:14 ID:f.54VduIO

アイルーの体毛は非常に敏感である。特に、電気という物に対しては顕著にそれが表れる。

(*゚∀゚)「ニャっ!」

(;*゚ー゚)「みゃっ!?」

二人と二匹。まだ山頂には遠いが、ツーとしぃの敏感な毛は、ジンオウガの発する電気を受けてパチパチと音を立てている。

(,,゚Д゚)「ドクオ、何か心構えみたいなもんはあるか?」

('A`)「G級と対するに当たってか?」

ギコとドクオ、そしてツーとしぃは、ゆったりとした足並みで山を登る。


('A`)「そうだな。G級というのは、言われている様に“災害指定”だ。それをモンスターと考えるのはナンセンス。名の通り一種の災害と考えろ。それにこれから戦うのは未知の相手。何の予測も立たない。だからこそ、今までの知識を捨て、柔軟に対応する事が必要となる」

(,,゚Д゚)「なるほど」

('A`)「加えて知識を捨てろと言ったが、経験を捨てる訳じゃない。そのモンスターを見れば、骨格や、体付きから、ある程度予想がつく。それは、今までの自分の経験から導かれる物だからな」

ギコは、その言葉に頷く。ドクオとは先のリオレウス討伐戦以来、狩りには出ていない。しかし、ドクオの実力は充分に理解しているし、彼が話してくれる事は、G級に成ったばかりのギコにとっては有益な事ばかりだ。

150名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:43:40 ID:Wejlxllk0
待ってたよ

151名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:45:22 ID:f.54VduIO

(,,゚Д゚)「………」


ギコは少しブーンを羨ましく思った。最近ではドクオに師事し、その腕をメキメキと上げているらしい。出来る事ならギコもドクオに教えてもらいたい事が一杯あった。
だが、ギコが狩りに出なければユクモのギルドの運営に支障を来す。HR2の新米であるブーンだからこそ許されるのだ。


デレも事ある毎にドクオに付き纏っているようで、遠くないうちにHR5に昇格するだろう、と言われている。


('A`)「………」


他人と積極的に関わろうとしないドクオだが、相手から話し掛けられると意外と熱心に話していた。
良い事だと思う。狩人発祥の地、ドンドルマでの経験はぬるま湯に浸かっていたユクモの狩人達には、良いカンフル剤になっている事だろう。

152名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:46:57 ID:f.54VduIO

ドクオが来てから、ユクモの狩人の質は確実に上がっている。ブーンしかり、ツンしかり、デレしかり、そしてギコもだ。加えて他の狩人達もドクオと狩猟に行く事が増えた。


(,,゚Д゚)(楽しみだゴルァ)


これから、ユクモの狩人達は強くなる。未だHR6となるとギコしかいないが、HR5にはビロード、ワカッテマスというギルド生え抜きの若手がいる。そこにデレが加わるのも、そう遠い話ではないだろう。


それにブーンとツン。彼らには何より、強き血と恵まれた環境があった。ベーンさんから受け継いだ血、狩人の姉と鍛冶屋の父を持つツン。それを指導するドクオ。


(,,゚Д゚)(俺もうかうかしてらんねぇぞゴルァ)


あの二人ならばHR4くらいまでならば、一足飛びでなってしまいそうだ。


それに【騎士派】ではあるが、モララーもいる。


ロマネスク、ベーンがユクモから居なくなり、フォックスが引退して以来、世代交代に失敗したユクモに、黄金時代が到来する。


そんな予感が、ギコにはしていた。

153名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:50:21 ID:f.54VduIO

(*゚∀゚)「ドクオ」

('A`)「ん、どうした?」

山頂までは、まだ遠い。ツーは足を止め、ドクオに呼び掛けた。

(*゚∀゚)「なんでドクオは、この狩りにオレっちを連れていこうとしなかったんだニャ?」

('A`)「あぁ、その事か」


そう、ドクオは今回の狩りにツーを伴うつもりはなかった。ツーにそれを伝えれば、確実にゴネるだろうと予測したドクオは、ツーには何も伝えずユクモを出た。


しかし、村人からも狩人からも慕われているツーに隠し切れるはずもなく、ユクモから全速力で追ってきた彼女に捕まり、連れていく事になってしまった。

154名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:51:15 ID:f.54VduIO

('A`)「いや、G級のモンスターは荷が重いと思っただけだ」

(*゚∀゚)「そんじょそこらのヒヨッコよりは使えるニャ」

(*゚ -゚)「ツーは誰の事を言ってるのかにゃ?」


すぐさま喧嘩を始める二匹。溜息を吐いて、ドクオとギコが間に入った。

('A`)「全く、こうなると分かっていたから連れてきたくなかったんだが」

(,,゚Д゚)「お前ら、仲良くしろゴルァ!」


頬を膨らまし不満そうな二匹。


('A`)「足手まといだと思えば、置いていく。忘れるなよ、皆」

(*゚∀゚)「……ニャー」

(*゚ー゚)「ふんっ、しぃの御主人はギコ様なのにゃっ!」

155幕間:2011/12/19(月) 22:52:36 ID:f.54VduIO
ドクオとギコが出発した後、ギルドは未だ静寂に包まれていた。
集まっているのは、ざっと数えて五十人程。殆んどのユクモの狩人が集まっている。

( ^ω^)「……」

ζ(゚、゚*ζ「……」

そこにはブーンやデレの姿もあった。
皆、一様に無言。彼らの心にのしかかっているのは、『ジンオウガを相手に、彼ら二人だけで送り出してしまった』という、罪悪感にも似た事実だ。

156名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:53:39 ID:f.54VduIO

ζ(゚、゚*ζ「そういえば、ブーン君。ツンちゃんはどうしてるの?」

( ^ω^)「……帰ってから眠ったきりですお。本当に起きてなくて良かったですお」


こんな時、ツンならばどうするのだろうか。
きっと彼女は激怒するだろう。
彼女にとっては、G級だろうがギルドの掟だろうが、そんな小さな柵など関係ない。

『何故二人だけで行かせたのか』

『どうして誰も付いていこうとしなかったのか』


先程のブーンやデレの様に「私が行く」と言うだろう。

そして『自分では、まだ足手まとい』という事実に、何より自分を責める。


( ><)「……ボクも付いていきたかったんです」


そう呟くのは、ビロードだ。HR5の彼は、ギコが猟団長を勤める【荒鷲団】に所属している。ユクモの狩人達の中では、一番ギコと一緒に狩りをこなしてきた。
現に、彼も「ボクを連れていって下さい」と願い出ていた。しかしギコは優しく笑うだけで、頷く事はなかった。

157名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:55:25 ID:f.54VduIO

( ^ω^)「……ビロードさん」

( ><)「でも仕方ないんです。ボクが行ってもギコさんの足を引っ張るのは事実ですから……」

ビロードの拳が、ギュッと硬く握られた。



狩人の寿命というのは、蝉の様に短い。勿論狩りで命を落とす、という理由もあるのだが、どんな凄腕の狩人でも30歳辺りで引退するのだ。
ドンドルマには40歳になっても現役という化け物もいるのだが。


今、このギルドに集まっている顔ぶれを見れば、殆どが20代前半だ。

158名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:56:31 ID:f.54VduIO

これには、一つ原因がある。


以前語った【騎士派】の興り。狩人という存在に疑念が湧いた時、狩人にならず騎士になるという人間が増えた。
今となってはギコの活躍により狩人になる若者が増えたが、ギコの世代の時は殆どが騎士になった。


空白の世代、そう呼ばれている。今、25〜28までの年齢の者達だ。


( ><)「……」

( ^ω^)「……」

ζ(゚、゚*ζ「……」


新たなる芽は、確かに芽生えていた。だが、未だに新芽。その花を咲かせるには至っていない。


ζ(゚、゚*ζ「そういえば、ビロード君。ワカッテマス君はどうしてるの?」

( ><)「……ワカ君も、ギコさんに付いていきたいって言ったんですけど。やっぱり断られちゃって」

159名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:57:06 ID:f.54VduIO




















( <●><●>)『私には、まだまだ力が足りないのは分かってます』









_

160名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 22:58:23 ID:f.54VduIO







( ><)「多分、外で素振りをしてるんだと思います」

ζ(゚、゚*ζ「そっか……」

それきり会話は途切れ、再びギルドを沈黙が支配した。

1616―5:2011/12/19(月) 23:00:29 ID:f.54VduIO


ドクオ達が山に入って四時間が経った。大体山の中腹辺りまで来ていた。そこから、風景が一変する。

('A`)「どう思う、ギコ」

(,,゚Д゚)「分からんが、これは多過ぎるぞ」

(*゚∀゚)「こんな数、今まで見た事ないのニャー」

(*゚ー゚)「異常発生ですかにゃ?」


そこには異様な数の雷光虫がいた。虫の習性からか数ヶ所に集まるように浮遊しているが、数が数だけに一つの大きな塊に見える。

(,,゚Д゚)「これが【雷狼竜】ジンオウガの影響だとすれば、近いぞゴルァ」

その言葉にドクオも同意する。

('A`)「雷狼竜に雷光虫、お誂え向きだな。この山に登る最中感じていた小型種達の気配も消え失せているし、居るな。この近くに」

一番最初に武器を構えたのは、しぃだった。

162名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:01:52 ID:f.54VduIO

(*゚∀゚)「でも不思議だニャー。いつも大型が近くに居るなら威圧感を感じるのに、今は全然感じないのニャ」

(*゚―゚)「ジンオウガは未知のモンスターですにゃ。何があってもおかしくないですにゃ」


しぃが言うのも最もだ。それにドクオは、この感覚に覚えがある。

('A`)「自分の強さ故に、俺達に警戒すら払っていないか。相変わらず、竜種というのはナメてくれるな」
(,,゚Д゚)「ここでやるのか、ドクオ」

ギコが尋ねたのは、観察に回るか戦闘に入るか、という事だ。

('A`)「勿論様子見だ。先に見つけて気配を殺し観察する。……だがこういう奴は得てして」

ドクオの言葉は、最後まで紡がれなかった。ユクモ山の頂から少し下がった場所。その岩場から、ヤツが遂に顔を出したのだ。


('A`)「自分から現れちまうもんなんだよな」

163名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:04:05 ID:f.54VduIO

【雷狼竜】ジンオウガが威風堂々、遂にドクオ達の前に姿を見せた。金色の角を持ち、周りに無数の雷光虫を引きつれるその姿は、まさにユクモの神。長い尻尾の先は鎚の様になっており、堅そうな甲殻が備わっている。

また見た目は竜というより狼、獣に近い。翼は見たところ生えておらず、代わりに恐らく翼が退化したのであろう強靭な前脚が備わっていた。
のそりと、住みかと思われる洞窟から顔を出すと


『Waohooooooooo!!!!!!』


吠えた。


('A`)「!!」

(,,゚Д゚)「!!」

164名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:07:24 ID:f.54VduIO

唐突の遠吠えに、思わずドクオとギコは耳を押さえる。だがこの距離から、あの声量。翼こそないので、飛竜ではないが、間違いなく飛竜に比肩するバインドボイスだ。
そこから一跳。助走を付けたわけでもないのに、奴はドクオ達の目の前まで跳んだ。


(;,,゚Д゚)「……コイツが【雷狼竜】ジンオウガ」

(;*゚ー゚)「………おっきいのにゃ」

165名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:08:44 ID:f.54VduIO

実際の所、ジンオウガはそれ程大きなモンスターではない。比べるまでもなく飛竜種の方が大きい。だがジンオウガの持つ神々しさ、威圧感がジンオウガを大きく感じさせる。
ジンオウガは、見定めるようにドクオとギコに視線を向けた。

('A`)「ギコ、流石にこの状況だと様子見は無理だな。コイツ、なかなか気配に敏感らしい」

(,,゚Д゚)「おう。覚悟は出来てるぞゴルァ!」


距離は凡そ50m。ジンオウガの脚力を持ってすれば二秒と掛からず詰められる距離だろう。

166名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:09:25 ID:f.54VduIO







('A`)「良いだろう。なら戦おう、ジンオウガ。互いの存在を賭けて」


今ここに、後のユクモに大きく名を残したジンオウガとの戦い。その序章が幕を開けた。

167幕間:2011/12/19(月) 23:11:53 ID:f.54VduIO

もう一度、場面をユクモギルドへと戻そう。

心配そうにウロウロと立ち歩く者や、目を瞑り何かを考える者、様々だが共通して言えるのは皆狩りに出た二人を心配しているという事だ。


( ^ω^)「……」

ζ(゚、゚*ζ「……」


嫌な沈黙が包むギルド。


( ^ω^)「!?」


そこに突如として響き渡った大声。


『ブゥゥウウウーーーーン!!!!!!!』


(;^ω^)「おっ!?」

余りの大声にブーンは、反射的に立ち上がって、直立不動の体勢をとった。

168名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:13:04 ID:f.54VduIO

声の主は

ξ#゚⊿゚)ξ「……ふぅ」

ツンだ。

(;^ω^)「ツン!もう起きて平気なのかおっ!?」

余りにも予想外の登場に、ブーンは驚くが、ナルガクルガの討伐から帰ったばかりのツンの体調を心配する。

ξ゚⊿゚)ξ「なに言ってんの?アンタ、バカァ?あー、バカだったわね」


だが、ツンはそんなブーンの心配を一蹴する。


ξ#゚⊿゚)ξ「なんでアンタがここに居るのよッ!!ドクオに付いていってると思ったのにッ!!」


見ればツンは完全武装。先程まで眠っていたとは思えない。具足を身に付けるだけでも相当時間が掛かるというのに。

169名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:13:52 ID:f.54VduIO

ξ#゚⊿゚)ξ「アンタ!なにバカの癖に、こんな時だけ賢くなってるのよッ!こっちはアンタを追いかけようと思って、速攻で準備してきたのよッ!!!
そしたら、ギルドに居るって言うじゃない!!なんでドクオとギコだけで行かせたのよっ!!!」


これにはブーンもカチンと来た。自分の気持ちも知らないで、何を勝手な事を。



―――ボクだって




(#^ω^)「ボクだってドクオに付いていきたかったおッ!!!でも『お前にはまだ早い』って!!!そう言われたんだおっ!!!!!」

170名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:15:16 ID:f.54VduIO

二人の興奮したやり取りを聞きながら、一番心揺さ振られたのはデレだった。


ζ( 、 *ζ「………わ」

ξ#゚⊿゚)ξ「だからッ!!アンタは、一体どうしたいのよッ!!!力が足りないのだって、そんなの初めから分かり切ってる話よッ!!!」

(#^ω^)「だからッ!!!そんな状態のボクが行ったって足しか引っ張らないお!!!」

ζ(゚、゚*ζ「私、追い掛ける……」

ξ#゚⊿゚)ξ「だからぁ!頭悪いくせに、なんで今だけ賢くなってんのよッ!!いつもみたいに………え?」

(#^ω^)「余計なお世話だおっ!!ボクも考えて、考えて、考えたんだおっ!!!それでも、やっぱり……え?」






ξ゚⊿゚)ξ「あるぇ?」(^ω^ )

171名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:16:28 ID:f.54VduIO

ζ(゚、゚*ζ「そうよね。ドクオさんには、ああ言われてしまったけれど、やっぱり彼に付いていたいし。確かに、私はまだHR4の中堅だけど、そんなの関係ないわ。いっそのこと、ギルドマスターを脅して、私のHRを上げて貰えば解決だわ。というか【雷狼竜】とか、所詮オオカミ。言ってしまえば、ただの犬だわ。うん、決めた!私、やっぱり追いかけるね!」

172名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:17:49 ID:f.54VduIO

じゃ、と手を上げて軽く挨拶し、デレは風のように去っていった。


取り残された面々は口を開ける他ない。


( ^ω^)「……ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「なによ」


大きく息を吸い、ブーンは静かに話始めた。

( ^ω^)「ボクには、まだ全然経験が足りないお。飛竜となんて戦った事ないお」

ξ゚⊿゚)ξ「私だって昨日初めて戦ったわ」

ツンは、何も問題ないというように気軽に言う。


(  ω )「ツン、ボクバカだから。やっぱり、こんなの納得出来ないお」

ξ゚⊿゚)ξ「ふんっ。知ってるわよ、そんな事」

ブーンの自虐を、ツンは鼻で笑った。

173名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:18:54 ID:f.54VduIO










―――でも、そんなバカなブーンの事が、私は好きなんだから














_

174名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:19:37 ID:eysBSFG.0
ニヤニヤするな俺!

175名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:21:41 ID:ctg3onNo0
あらあら、うふふ

176名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:21:57 ID:f.54VduIO


( ^ω^)「行くお」

ξ゚ー゚)ξ「うん!」


ユクモの新芽は、開花の時を迎えられるのか。

ドクオとギコの知らない所で、もう一つの物語が始まろうとしていた。

1776―6:2011/12/19(月) 23:23:55 ID:f.54VduIO

開戦の狼煙を上げたのは、意外にもしぃだった。

(*゚ー゚)「にゃー、狩りの基本はコレですにゃ」

真っ赤なペイントボールが、ジンオウガに命中する。モンスターの習性を充分に理解しているベテランになればなるほど忘れがちなペイントボールだが、未知とのモンスターと戦う時には必須な道具だ。
ペイントは、【彩鳥】クルペッコ戦でも登場したが、あの時とは状況も意義も全く違う。クルペッコの時は的として使われたが、今回はジンオウガが大きく移動した時に、見失わないようにする為の物だ。


ペイントボールは、弾けると三日は洗っても取れない特殊な染料がモンスターを赤く染め、そこから強烈な臭いを発する。これにより、少し遠く離れた位でモンスターを見失う事は無くなる。


(,,゚Д゚)「まずは一撃だぞゴルァ!!」


ギコが振りかぶった一撃。狙いは頭部。ギコの新たな相棒【焔剣】リオレウスが、唸るようにジンオウガへと襲い掛かる。

178名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:25:16 ID:f.54VduIO


だが、その一撃を


(,,゚Д゚)「んなっ!?」


ジンオウガはバク転の要領で躱した。ジンオウガを捉える事なく大地に突き刺さるギコの大剣。飛竜種には見られない獣特有のトリッキーな動きだ。
ジンオウガは、大剣を引き抜こうとしているギコに透かさず襲い掛かる。

179名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:26:38 ID:f.54VduIO

しかし、これをドクオもまた読んでいた。
背後から取り出したるは、彼の【鋼竜】クシャルダオラ。その最上位種を討伐せし者にのみぞ与えられる双剣【鋼龍双】ラファール=ダオラ。

('A`)「先手は譲ってやれんな」

後ろ脚に斬り込む。ドクオの一振りで、ジンオウガの周りをたゆたう雷光虫達が散る。後ろ脚の爪を抉る様に斬撃を繰り出す。ドクオの繊細な双剣捌きが成せる技だが


('A`)「ふむ。やはり堅いな」


ジンオウガの爪が、剥がれる事はなかった。それどころか、ジンオウガはその体勢から一歩も動かずに反撃を繰り出したのだ。

('A`)「!?」

鞭の様にしなるジンオウガの尻尾。身体は全く動いていないのに、尻尾だけが意思を持っているかの様に激しくドクオを打ち抜かんと動いた。

180名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:27:42 ID:f.54VduIO

(#*゚∀゚)「ニャーアアアア!!!!」

それを防いだのはツーだ。【旗元】ネコ合戦旗でジンオウガの尻尾を、ねじ伏せる様に叩き付けた。だが、大型種の力に勝てる訳もなく、尻尾の軌道をずらすだけに留まる。

(;*゚∀゚)「ニャッ!?」

吹き飛ばされるツー、それを受け止めたのは、しぃだ。

(*゚ー゚)「まったく、しっかりするのにゃ」

(*゚∀゚)「すまんニャー」

ここまでツーの攻撃を入れれば計三回。まともに入ったのはドクオの一撃だけだ。

('A`)「戦い辛い奴だな」

181名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:28:54 ID:f.54VduIO

ギコの攻撃をバク転で躱した様に【雷狼竜】ジンオウガは、飛竜種とは違い、どちらかと言えば牙獣種に近い動きを見せる。ドクオもギコも、やりづらさを感じていた。
特にギコは、牙獣種と戦った経験が少なかった。


ユクモの牙獣種と言えば、ドクオがユクモに来て初めて遭遇した【青熊獣】アオアシラ、凍土の洞窟に縄張りを持つ【白兎獣】ウスクスス、砂漠や火山という暑い場所を縄張りとする【赤甲獣】ラングロトラの三種だ。加えてドスファンゴも数えられるが、この場合は違いが大きいので考えない。
この三種に共通して言える事は、比較的低レベルの狩人に任せられるモンスターだという事だ。確かにどのモンスターも一癖あるモンスターだが、飛竜種に比べれば力不足なのだ。
飛竜種が自分の縄張りに現れれば、この三匹達は身を潜める。それは種としての差であり、なによりも長年の食うか食われるかの関係が今尚色濃く受け継がれているからだ。

182名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:29:41 ID:f.54VduIO

しかしドンドルマの牙獣種は、これに当て嵌まらない。勿論【桃毛獣】ババコンガや【雪獅子】ドドブランコと言ったユクモの牙獣種に近いモンスターもいるが、ドンドルマには例外がいるのだ。


【金獅子】ラージャン、【響狼】カム・オルガロン、【雌響狼】ノノ・オルガロンという飛竜種に比肩する三獣がいる。


この三匹と戦った事があるからこそ、ドクオはある程度【雷狼竜】ジンオウガの動きを予測出来ている。


だがユクモから出た事のないギコには【雷狼竜】ジンオウガが、とんでもない化け物に思えた。


未だ悠然と座し、尻尾だけを振り回すジンオウガ。まるで『お前達に興味はない』という様に。放っておけば、毛繕いでも始めそうだ。

183名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:31:52 ID:f.54VduIO

ギコは折れそうな心に必死で活を入れる。そんなギコの背中を押したのは、やはりドクオだった。


('A`)「ギコ、先に俺が仕掛ける。チャンスがあればお前も来い」

(,,゚Д゚)「お、おう」

ゆっくりとした動きでジンオウガへと近づくドクオ。一歩、二歩、ドクオは歩幅を変えることなく、一定のリズムで歩を刻む。
そしてジンオウガまで、あと五歩の距離まで近付いた時、今まで威嚇する様に激しく動くだけだった尻尾がドクオへと襲い掛かる。
しかしドクオの体勢は万全。ジンオウガの尻尾を、一歩下がる事でなんなく躱す。


('A`)「ふむ。ここまでがお前の間合いか」


数秒でジンオウガの間合いを測ったドクオ。そのギリギリの距離、そこにドクオは立つ。ジンオウガは動かない、尻尾もドクオに攻撃をしていない。
そこからドクオは、円を描く様にジンオウガの周りを歩いた。距離を崩さない様にゆっくりと。
後ろ脚辺りまでドクオが回り込んだ時、ジンオウガの尻尾の動きに変化があった。そこでドクオは、再び一歩“前に”踏み出した。





尻尾は襲ってこなかった。

184名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:33:59 ID:f.54VduIO

ドクオはニヤリと笑みを浮かべて言った。

('A`)「なるほど。そして、ここがお前の視野の限界か」

更に分かった事がある。ジンオウガは触覚でも聴覚でもなく“視覚”で敵を捉えているという事だ。この事実は、かなりのアドバンテージとなる。

(,,゚Д゚)「………」

(;*゚―゚)「………」

それを見ていたギコとしぃは、言葉を失う。
確かに理屈は理解出来る。だが、それを実行する気にはならない。確かにドクオの動きは、ゆっくりだ。万全の体勢で敵の攻撃を躱す事になる。しかし、だからと言って確実に躱せるかと言われればNOだ。


(;*゚―゚)「ご主人様、あの人少しおかしいですにゃー」

185名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:37:01 ID:f.54VduIO

この中でドクオの戦いを初めて見るのは、しぃだけだ。以前に酒場でドクオを目にしていたが、しぃは正直ドクオの実力を疑っていた。確かに己の主人であるギコとドクオを見比べれば、体付きには大きな差がある。
それにドクオの目。


しぃは『生きているのか、死んでいるのか分からない』と思った。少なくとも、しぃが見てきた狩人達は、もっと生き生きとした、生に貪欲な目をしていた。


それを理解したしぃが感じたのは恐怖だった。


どうして今の状況で平然としていられるのか、自分の理解出来ない事に恐怖を抱く。それはヒトもアイルーも同じだった。

186名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:38:08 ID:f.54VduIO

(,,゚Д゚)「……」

(*゚ -゚)「……」

ギコとしぃが、ドクオの存在に戦慄する中、ツーだけは彼をサポートすべくジンオウガへと向かって行った。

(*゚∀゚)「ニャー!」

嵐の様な尻尾に突っ込むのは下策。だからと言って、未だジンオウガが使っていない前脚等に攻撃を加えるのも予想外の反撃を食らうリスクを考えれば避けたい。
やはり、一番無難なのは先程ドクオが死角と見抜いた後ろ脚付近だ。


ドクオのゆったりとしたステップとはちがう、四足歩行生物独特の細かく刻まれた動き。


剣斧が唸りをあげた。突き刺さりはしないが、ジンオウガの後ろ脚に、傷を付ける事に成功したのだ。

(*゚∀゚)「まだまだ行くのニャー!!!」


透かさずツーは前脚と後脚の隙間を縫うように走り、ジンオウガの顔面を抉る様に斬撃を放った。

187名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:39:00 ID:f.54VduIO

(;*゚∀゚)「ニャッ!?」


今度の攻撃は当たらず。先程ギコの攻撃を避けた時と同じように、ジンオウガはバク転でツーの斬撃を躱した。
余りにもトリッキーな動きにツーも一瞬惚けるが、直ぐに持直しジンオウガを見据える。
追撃の気配は無いようだ。

('A`)「やはり後脚だな。それにコイツ、向こうから攻撃する様子が見られない」

(*゚∀゚)「ニャー、今の内に出来るだけ弱らせたいニャー」

ドクオとツーは、再び攻勢をかける。今度は左右に別れて同時にだ。
ここでのツーの攻撃は目を見張る物がある。ユクモ合戦旗で三連撃を食らわせる。透かさずジンオウガの尻尾が飛んでくると見るやいなや、後に跳び退きブーメランをぶつける。
流れる様な攻撃が、確実にジンオウガにダメージを与えていく。


だがドクオは更に上を行った。ツーと同じように攻撃をしているが、手数が段違い。凡そ、ツーの四倍から五倍は攻撃しているだろう。
それに加えてジンオウガの尻尾攻撃。


('A`)「尻尾だけは、活きが良いな」


それを自らの双剣で挟み込む様に防いだ。
圧倒的な冷気がジンオウガの尻尾を襲う。【夫婦剣】コウリュウノツガイが、火を司る火竜と雌火竜の双剣ならば【鋼龍双】ラファール=ダオラは、低気圧を司る【鋼龍】クシャルダオラの双剣だ。その属性は氷。

188名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:39:51 ID:f.54VduIO

堪らずジンオウガが後脚で地団駄を踏むと、ドクオは先程のツーと同じようにジンオウガの頭部へと身を滑り込ませた。


しかし二番煎じ。いくらドクオが速かろうと、ジンオウガは再び軽々と巨体を躍らせた。


('A`)「ふむ。確かに俺の今の攻撃は二番煎じだ」

189名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:40:41 ID:f.54VduIO










―――だが お前のソレは三番煎じだ







着地地点。先程までと変わらずキッチリ8m。その着地地点には


(#,,゚Д゚)「ゴルァアアアアアアアア!!!!」


【焔剣】リオレウスを全開まで振りかぶったギコ。

190名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:42:16 ID:kgc9ZLp60
おお

191名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:42:49 ID:f.54VduIO

地震が起こった。そう勘違いしてしまうような一撃だった。
ギコの一撃は、ジンオウガの頭部を的確に捉えていた。


(,,゚Д゚)「どうだゴルァ!!」

狩人の武器の中でもトップクラスの重量を誇る大剣。その一撃は、如何な【雷狼竜】ジンオウガと言えども目を回した。

(#*゚ -゚)「にゃああああ!!!!!」

しぃも鎚を振りかぶり、ジンオウガの頭部へと追撃を加えた。

しぃのネコ轟鎚は、オトモの持つ武器としては規格外の重量を誇る武器だ。それがジンオウガの頭を上から叩きつける。


(*゚ -゚)「やったのかにゃ?」

動きを止めたジンオウガにゆっくり近付く。先程のギコの一撃に、自分の追撃、頭部がカチ割れていてもおかしくない重さの攻撃だった。

192名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:43:25 ID:f.54VduIO


―――しかし


(;*゚ο゚)「ふにゃああああ!!!!!」

しぃは、吹き飛ばされた。何が起きたか理解出来なかった。


しぃを吹き飛ばしたのは、ジンオウガではなくドクオだったからだ。
先程まで彼女がいた場所には、ジンオウガの前脚が突き刺さっていた。少しでも回避が遅れていれば、今頃しぃは串刺しになっていた事だろう。

193名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:44:03 ID:f.54VduIO

('A`)「……」

(,,゚Д゚)「やっと敵さんもやる気を出したみたいだぞゴルァ」

今まで尻尾でしか攻撃していなかったジンオウガが、遂に前脚で攻撃してきたのだ。

『Waohooooooooo!!!!!!』

ユクモの神と崇められる【雷狼竜】ジンオウガ。その力の片鱗が、遂に明らかになる。


『………』


ジンオウガは一吠えすると、ゆっくりとドクオ達へと視線を向ける。

('A`)「……」

(;,,゚Д゚)「……」


この時、初めて二人はジンオウガと見つめ合った。今までの一方的な観察とは違い、初めて睨み合ったのだ。
ギコは、それだけでさっきまでの勢いが雲散していくのを感じた。
今までに感じた事のない威圧感だ。


以前戦ったリオレウスも【空の王】足る威圧感があった。だが今回の相手は神である。全てを見透かされる様な視線にギコは怯んだ。

194名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:45:59 ID:f.54VduIO


変化はそれだけではない。

(*゚ -゚)「ご主人!雷光虫がっ!!」

先程の攻防で散った雷光虫が、再びジンオウガを包む様に集まっている。


そして


『Waohooooooooo!!!!!!』


今までの咆哮よりも、もう一段上の雄叫び。ドクオとギコは耳を押さえた。


するとジンオウガ身体に、またもや変化。


('A`)「蓄電……か?」


雷光虫から電力を借りる様に、ジンオウガと雷光虫の間に回線が出来ていた。光の線は、バチバチと歪んだ音を立て光となってジンオウガへと吸い寄せられていく。

195名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:46:00 ID:VblEz69oO
しえん!

196名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:50:14 ID:f.54VduIO

幻想的な光景。ジンオウガと雷光虫、雷を司る二種による光の嵐。


だが今のジンオウガは全くの無防備。攻撃の絶好のチャンス、とも思えた。
しかし、あの光の奔流の中に突っ込む事は、やはり躊躇われる。


(,,゚Д゚)「……今度は俺が行くぞゴルァ」


ギコは、躊躇う自分の心を押さえつけ駆け出した。ここまでの攻撃は、全てドクオが好機を作りだして成功してきた。
自分も、Gの狩人として後れを取る訳にはいかない。そんなプライドからの行動だった。


(,,゚Д゚)「行くぞっ!」


ドクオが示した様に狙いは後脚だ。【焔剣】リオレウスのリーチならば、ジンオウガの尻尾の完全に射程外から攻撃を与える事が出来る。

(#,,゚Д゚)「うおぉぉおお!!!!」

しかし、それは今までの話だ。動く事を躊躇わなくなったジンオウガにとって、今まで死角だったその場所は、首を少し捻るだけで途端に視認出来るようになる。


横薙に飛んできた尻尾。ギコは攻撃を慌てて止め、前転で躱した。

197名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:51:26 ID:f.54VduIO

(;,,゚Д゚)「………」


この前転一回分、距離にすれば1m強。それがギコに絶望をもたらす。
そこから見る【雷狼竜】ジンオウガの大きさ。今までよりも桁違いに大きく見えた。

静かにギコを見つめるジンオウガは、さながら断罪人の様であった。


(;,,゚Д゚)「……」


前脚が、後脚が、尻尾が、全てがギコを狙っている。


――――避けられない


そう内心思いつつも、身体が動いたのは、今まで何体もの飛竜種と戦ってきたギコだからだ。
己の身体を守るように、大剣を眼前に突き立て姿勢を低くした。


次の瞬間、ギコの目は光に包まれた。

198名も無きAAのようです:2011/12/19(月) 23:52:54 ID:f.54VduIO
当初は、ここで一旦切る予定でありましたが、もう少し進めようと思います。

199 ◆.WtyGIaY4.:2011/12/19(月) 23:54:17 ID:f.54VduIO
一旦休憩です。お花摘みに行ってきます。


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