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異伝スレッド

8自治北域ヴァルシャウ:2016/05/15(日) 05:28:51
「カナン王国が陥落しました。これで大陸南方におけるサフラヴィー朝の覇権が確定します」

 情勢を報告した外交官が退出した後、会議室に降りる沈黙。
 瞑目し、座して黙す4人。4人はヴァルシャウの航路図を描く者。立法、行政、司法の三権を司り、この三権を調整する者。
 その中にあって、アミーカ・ヴィシンスキーは冷静さを失わなかった。

「仮に。ヴァルシャウが再び、独立を脅かされることがあっても、私達は耐え忍べばいい。屈辱に塗れても、ヴァルシャウの根を絶やさないことが私達の使命。
 そうでしょう? イェジ・グンドラフ主席行政官」

「その通りだが、一度勝ち取った独立を捨てるのか。戦いもせずに」

「そうは言っていない。ヴァルシャウの根を根こそぎ刈られてはいけないということ。私達には、英雄が不在なのだから」

 英雄。独立戦争の英雄であるリトヴィノフ・シンウェルの両名を、未だにヴァルシャウは忘れられずにいた。
 ヴァルシャウに再び試練が訪れた時、英雄は再び現れるだろう――そんな幻想を、民衆は未だに抱いている。
 それでは駄目だというのに。英雄に頼らずとも、民衆の手によって国を護らなければならないというのに。

 それは、この場の四人全てが理解していること。
 だがそれでも、民衆だけで国を護るにはヴァルシャウという国は弱すぎた。
 都市を除いて荒れるに任せた国土、脆弱な防衛体制、未成熟な産業。

 どれ一つとっても、ヤーディシアの列強植民地には劣っているのだ。これでは戦いようがない。
 だからこそ――今は、英雄の登場を、待っている。

「英雄、か。英雄が顕れないなら、いっそ呼び出すか、あるいは、作り出してはどうだ」

 そう語るのはユゼフ・ナストゥラ――英雄の称号は授からずとも英雄を支えた一人。

「どういうこと?」

「別の世界から呼ぶのさ。英雄をな。ヴィヤウィの民は、それでヤーディシアを追われたんだろう? 悪魔――異界人を呼び込んだことで」

「――そうね。けど、それには――」

「数百、数千万人の生贄を捧げなければならない。なら、戦争するしかあるまい」


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