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SuperRobotWars AnotherStory〜DoLL〜

1勇希晶:2007/09/13(木) 23:30:41 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
これはロボットものと非ロボットものが競演する作品です。
詳しい設定などはBBSを御覧ください。

<参戦作品>
DoLL(オリジナル)
機動戦士ガンダム
機動戦士ガンダム第08MS小隊
機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争
機動戦士ガンダム外伝THE BLUE DESTINY
機動戦士ガンダム 戦場の絆
機動戦艦ナデシコ
マジンガーZ
新世紀エヴァンゲリオン
勇者ライディーン(巨大シャーキンまで)
超重神グラヴィオン
フルメタル・パニック!
聖戦士ダンバイン
戦国魔神ゴーショーグン
勇者王ガオガイガー
バンプレストオリジナル
それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ
とらいあんぐるハート3
その他オリジナル

3勇希晶:2007/09/13(木) 23:32:14 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
=新西暦0081年・地球近海宙域=

地球近海、スペースデブリなどが存在する宙域で、青いPT(パーソナル・トルーパー)のテストが行われようとしていた。
エルザム「月、シリウス、ロス128・・・現在中間座標、確認。」
操縦席に座る金髪の男が冷静に機体の位置を確認する。
エルザム「こちらエルザム=V=ブランシュタイン。これより第四段階のテストに移行する。」
一般兵A「T7、了解。」
ここまでPTを運んできた輸送機から通信が返される。
一般兵A「ところで、試作型ゲシュペンストmk−Ⅱの感じはいかがですか、少佐?」
エルザム「いい機体だ。mk−Ⅰでカーウァイ大佐が指摘された欠点も改良されているようだ。」
その問いに満足げに答える男――エルザム。
エルザム「そうだな・・・馬に例えるなら二歳馬のサラブレッドと言ったところか。」
一般兵A「は、はあ・・・そうですか。・・・では、モニターを開始します。」
カーク「少佐・・・教導隊、そして連邦軍トップの腕前に期待させてもらうぞ。」
硬い表情の男――ゲシュペンストmk−Ⅱの開発者のひとりであるカーク=ハミル――がそうエルザムに声をかける。
エルザム「了解。テストを開始する。・・・何だ?」
カークの言葉を軽く受け流し、テストを開始しようとした矢先に、
一般兵A「B−12−62の方向から未確認物体が接近中!」
エルザム「こちらでも確認した。デブリの類ではないようだな。」
冷静に対処するエルザムとは対照的に、予想外の出来事に慌てている様子の一般兵A。
一般兵A「該当するデータはありません!! 正真正銘の未確認物体です!」
エルザムは逡巡した後、驚くべき提案をした。
エルザム「・・・これより、未確認物体との接触を試みる。」
一般兵A「え!? い、今何と?」
エルザム「あの物体が、連邦軍の物でないとしたら、調査の必要がある。」
エルザムがそう言い終わらないうちに、未確認物体が急加速してエルザムの乗るゲシュペンストmk−Ⅱに接近してきた。
カーク「攻撃をしかけるつもりか?」
一般兵A「エルザム少佐、離脱を!」
焦った様子の兵を尻目に、
エルザム「こちらエルザム=V=ブランシュタイン。予定を変更し、テストモードから戦闘モードに切り換える。相手はこちらに狙いを定めたようだしな。」
一般兵A「しかし少佐! 戦闘は許可できません! そのゲシュペンストmk−Ⅱには、武装されていません!」
半ば半狂乱になりながらも、必死でエルザムに通告する一般兵A。だが、エルザムはそれを軽く流す。
エルザム「武装など、二本の腕があれば十分だ。」
一般兵A「ハ、ハミル博士! 少佐を止めて下さい!」
もう自分では制止しきれないと思った兵は、開発者でもあるカークに頼む。が、
カーク「少佐の好きにさせてやれ。EOTI機関の予測通り、相手が有関節型の機動兵器なら、PTの存在意義と必要性を軍のお偉方に知らしめる好機にもなる。」
一般兵A「は、博士まで・・・! 何をおっしゃるんですか!?」
兵の抗議もカークは耳を貸さない。
そんな輸送機内の会話を聞いていたエルザムは、許可が出された物と判断し、
エルザム「ではいくぞ、我が愛機トロンベよ!」
ゲシュペンストmk−Ⅱを未確認物体へと加速させた。

4勇希晶:2007/09/13(木) 23:33:37 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
直後、一機と接触する。
そして概要が確認できると、エルザムは呟く。
エルザム「やはり、この機体は地球の物ではないな。」
そしてそのまま擦れ違いざまに殴りつける。未確認物体の方も反撃でこちらに突進してくるが、
エルザム「私を甘く見るのは遠慮していただこう!」
エルザムは軽く躱す。
エルザム「T7、聞こえるか?」
一般兵A「は、はい。」
エルザム「未確認物体の形状は、虫・・・そう、バグスだ。」
一般兵A「虫、ですか?」
エルザム「そうだ。」
そしてそのまま数機を撃墜し、残る一体も大破寸前にまで追いつめる。
カーク「・・・連邦軍トップの名は伊達ではないようだな。」
カークは思わずそう漏らす。
一般兵A「・・・少佐? 何をするおつもりなのですか!?」
大破寸前にまで追いつめた未確認物体――後にAGX−01バグスと呼称される――に悠々と近づいていくエルザムに輸送機の兵は面食らっていた。
エルザム「この機体は破壊せずに捕獲する。」
一般兵A「な、何ですって!?」
エルザム「ビアン博士のEOTI機関にサンプルを回す必要があるからな。」
そう言って、衝撃波発生装置や衝角などを壊してからがっちりと捕まえ、輸送機に戻るエルザム。
その道中、彼は一つのことを考えていた。
エルザム(・・・この虫型の機体が、ビアン・ゾルダーク博士の言っていた異星からの『客』であるならば、人類のは大きな局面を迎えることになるだろう・・・)


―――新西暦0073年、地球は未曾有の事態に見舞われていた。
突如宇宙より飛来し、日本の横浜に落下した巨大隕石。そしてほぼ同じタイミングで紐育・モスクワ・太平洋のアイドネウス島に落下したメテオ1・2・3。さらにはそれから採取された「トロニウム」という米粒程の大きさをした超エネルギー結晶、現在の地球の技術力では到底不可能な超技術等々・・・・・・。
それらの事例を重く見た地球連邦政府は、秘密裏に何れ来るであろう異星人との戦いに備え、対異星人プロジェクトを開始。翌0074年、政府直属の特別諮問機関「EOT特別審議会(通称EOT特審会)」を設置。同年EOT特審会はEOT研究の為の特別機関「EOTI機関」をメテオ3が落着したアイドネウス島に設立。
連邦軍に於いては月のマオ・インダストリー社及び北米のテスラ・ライヒ研究所にて「H計画」及び「G計画」を0075年開始。極東基地に於いても「SRX計画」を0077年に開始。そして軍上層部の一握りしか知らない秘密諜報機関「ミスリル」、地球防衛組織「GGG」の設立・・・・・・。
しかし、それらの事が一般の民間人に伝えられることは一切無かった。
その後、新西暦0077の連邦軍テクネチウム基地爆破事件等を除いては平和な時間が続いていた。
しかし新西暦0079年、地球から一番離れたコロニー「サイド3」が「ジオン公国」を名乗り、サイド2のスペースコロニー「アイランド・イフィッシュ」を占拠し、内部の住民を毒ガスにより虐殺。
そして新西暦0079年1月4日、ジオン公国軍は「アイランド・イフィッシュ」をオーストラリア大陸のシドニーに落下させた。だれもがこれを機に地球規模の戦争が始まることを予感していた。
だがしかし同年1月15日のルウム戦役にて、ジオン公国軍の「黒い三連星」が連邦のレビル将軍を捕縛。戦況がジオン有利に傾いた時、突如正体不明の機動兵器群と遭遇。
地球上の昆虫に似たフォルムを持つそれらの圧倒的物量作戦によって、レビル将軍を捉えていた艦が沈み将軍は救出され、また連邦・ジオン双方とも甚大な被害を受けた為事実上痛み分けと言う形で戦闘を終了することになった。
地球連邦軍はルウム戦役中に乱入してきた謎の機動兵器群を「エアロゲイター」と呼び、ルウム戦役に現れた機動兵器群を「AGX−00ホッパー」と呼称した。「エアロゲイター」の存在により戦況は膠着状態に陥り、表面上は平穏な、しかし水面下では未だ予断を許さない状況に収まった。
そんな最中に確認された「使徒」や「ゼラバイア」と呼ばれる謎の敵生物、またルウム戦役から二年後に地球連邦軍のエルザム=V=ブランシュタイン少佐によって捕獲された「AGX−01バグス」と呼ばれるエアロゲイターの機動兵器と、それによりさらに強固に推し進められる様になった「地球圏防衛計画」。
メテオ3落着に前後して確認され始めた“囁かれし者(ウィスパード)”を巡る争い等々、地球上を瞬く間に争いの火花が覆っていった・・・・・・。
そして、物語は新西暦0082年、日本の東京から始まる・・・・・・。

5勇希晶:2007/09/13(木) 23:34:16 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
第一話「戦う少年少女達〜Boy Meets Girl?〜」





新西暦0082。ルウム戦役から続いている微妙な緊張状態の中、ここ東京の人々は他地区に比べ比較的平和な日々を送れていた。

=東京・綾瀬高校=
キーンコーンカーンコーン・・・・・・
英語教師「じゃあ、今日はここまで。キチンと予習しておきなさいよ〜? 明日バンバン当てるからね〜♪」
そんな言葉を残して教師が教室を出る。
女の子「ふぅ〜、やっと授業が終わった」
それを見届けて、思い切りのびをする長い金髪をサイドテールにした少女がひとり。
女の子2「お疲れ様。絵里香はこれからどうするの?」
絵里香「う〜ん、やっぱゲーセンかな? 今日こそはヨーコに勝ちたいし」
そう金髪の少女――獅堂絵里香は答える。
女の子2「ヨーコちゃん凄く強いもんね。リュウセイ君とどっちが強いのかな」
絵里香「う〜ん、バーニングPTだったらリュウセイの方が強いかもね」
女の子2「え、そうなの?」
絵里香「うん。ヨーコ曰く『アタシには水が合わない』らしいから」
女の子2「そんなものなのかなぁ・・・」

=綾瀬高校・校門=
絵里香「あ、そうだ。明日士朗達と出かけるつもりなんだけど、クスハも来る?」
クスハ「ごめん、明日はバーニングPTの大会があるとかで、リュウセイ君に誘われてるの」
絵里香「あ、そうなんだ。へぇ〜」
申し訳なさそうに断る女の子――名を水羽楠葉という――と、彼女に何やら意味深な表情を向ける絵里香。
クスハ「どうしたの?」
絵里香「リュウセイもああ見えて、きちんとやってるんだなって」
クスハ「ち、違うよ。多分、リュウセイ君には・・・」
絵里香の意味するところを悟り、慌てて否定するクスハ。
絵里香「ま、多分私の予想は外れてるだろうけどね。リュウセイかなりアレだから」
クスハ「否定はしないけど・・・」

6勇希晶:2007/09/13(木) 23:35:02 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
=綾瀬高校・剣道場=
一方、綾瀬高校の剣道場では、二人の剣士が互いに向かい合っていた。
男子生徒1「・・・・・・」
男子生徒2「・・・・・・」
そのままじりじりと摺足で間合いを計る。
周りの剣道部員も固唾を呑んでその対決を見守っている。
それもその筈、剣道部内でもどちらかが次期主将の座を射止めるかというほどの実力を持っていた、いうなればトップエース同士の対戦だったからである。
男子生徒2「!!」
ある程度まで間合いを計った時、片方の剣士がしかけた。
男子生徒2「メェェェェェン!」
大上段からの一撃。しかし、
男子生徒1「甘い!」
打ち込まれた剣士はそれを横にした竹刀で弾き、
男子生徒1「胴ォォォォッ!」
そのまま横薙ぎに胴を捕らえる。
バシィン、と音が響き、その場の時が止まる。そして、
顧問「一本!それまで!」
審判役の顧問の声で時が動き出した。
男子生徒2「くっ・・・」
抜き胴を決めた男子生徒が敗れた男子生徒の方を向く。
男子生徒1「相変わらず重い一撃だな、ブリット」
しかけた方の男子生徒が面を取り、手拭いを取ると染めた物ではない金髪が現れた。
ブリット「士朗こそ、相変わらず得意だよな、抜き胴」
士朗と呼ばれた生徒が面をとり、手拭いを取ると少し色が濃い銀の長髪が現れた。
士朗「別に得意という訳じゃないさ。ただ、抜き胴は反撃を受けにくいからな」
ブリット「けど俺もまだまだだな。せめて士朗に勝ち越さないと」
士朗「そう簡単に負ける気はないぞ?」
ブリット「そう言っていられるのも今の内さ」
士朗「よく言う。星はまだ俺の方が上だ。それに、簡単に負ける気はない」
そして二人して不敵な笑みを浮かべあう。
剣道部顧問「神崎、ラックフィールド。終われないから早く並べ。」
ブリット・士朗「「あ」」
既に並び終わっている他の部員達を見て、苦笑するしかない士朗とブリットだった。


=剣道場玄関=
ブリット「なぁ、これから士朗はどうするんだ?」
士朗「ああ、ナギサの所に行くつもりだ」
ブリット「そうか・・・・・・なぁ、お前の家の道場でさっきの続きやらないか?」
士朗「別にいいが、お前の方の都合は大丈夫なのか?」
ブリット「大丈夫。士朗の所なら外泊も許してくれてるし、伯父も剣道好きだからね」
士朗「じゃあ、やるか?」
ブリット「望むところだ」
士朗「じゃあ、ちょっと待っててくれ。ナギサ連れてくるから」
ブリット「なら、先に校門の所行っておくぞ」
士朗「わかった」
そしてブリットは校門の方へと向かった。

7勇希晶:2007/09/13(木) 23:35:48 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
=綾瀬高校・校門=
絵里香とクスハが他愛もない話をしていると、
ブリット「あれ、絵里香にクスハ。こんなところでなにやってるんだ?」
士朗に先行しているブリットが一足先に校門にやってきた。
絵里香「別に、ただの世間話。それよりも、士朗はどうしたの?」
ブリット「ナギサの所へ行ってる」
絵里香「なるほど。そういや今日は来てたわね。」
クスハ「え、ナギサちゃん来てたの?」
絵里香「うん。今朝士朗が相手してた」
と、そこへ、士朗がやってきた。
士朗「待たせたな、ブリット」
絵里香「プッ、あははははは!」
クスハ「わぁ、可愛い・・・」
ブリット「なあ、士朗。それは好きでやってるのか?」
士朗「仕方ないだろ。幾らやっても降りてくれなかったんだから」
士朗の姿を見るや、突如笑い出す三人といきなり笑われて少々憮然とした表情の士朗。
ブリット「だが士朗、それはないんじゃないか?」
ブリットが指さした先には、頭の上に子猫が乗っている士朗の姿だった。
しかも、気持ちよさそうに丸まっている。
絵里香「士朗、サイコー!」
クスハ「満足そうね、ナギサちゃん」
ブリット「けど、なんかシュールだな」
一頻り士朗の頭の猫をダシにした笑い声が響く。といっても、主に笑っているのは絵里香だったが。
余程ツボにはまったのか、目尻に涙の珠が浮かんでいる。
絵里香「あはは、はぁ。なんか久し振りに爆笑したわ」
クスハ「あの、もしかして家までずっとそのままなんですか?」
士朗「仕方ないだろ。降りてくれないんだから」
ナギサ「な〜♪」
ブリット「そのつもりみたいだな・・・」
士朗「まいったな・・・・・・」

8勇希晶:2007/09/19(水) 19:07:37 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
=商店街=

翌日、絵里香・士朗・ブリットの三人は休日を利用して『大日本武士博物館』なるところを訪れていた。
そしてその帰りに、近場の商店街の立ち寄っていた。
絵里香「そうなのよ・・・・・・あ、ところで知ってる?」
何かを思い出したかのように士朗とブリットに声をかける絵里香。
ブリット「何が?」
何に対して何を知っているのかという、問い掛けに問い掛けで返したブリットは、片眉を上げながら振り向いた。
絵里香「ほら、この辺りに出没するっていう例の・・・学生服着たミリタリーオタクの話」
士朗「・・・・・何の事だ?」
皆目見当がつかず、士朗は絵里香に尋ねた。
絵里香「この辺の高校生らしいんだけどね・・・・自分の通う高校の昇降口を爆破したりとか、『モデルガン』にしては精巧に出来た銃を所構わず撃ったりとか・・・・結構、噂になってるわよ?」
ブリット「・・・まぁ、俺は身体を鍛える事しか・・・」
乾いた笑い声で、頬を人差し指で掻きながらブリットは弱弱しく答えた。
士朗「・・・猫(こいつ)の事なら、大方の知識は持ち合わせてるが」
こちらは至ってさらりと答えた。それが何か、と言わんばかりの態度だからそれ以上の追求をする事を絵里香は止め、
絵里香「・・・はぁ。どっちも世間の情報に疎すぎ・・・」
溜息混じりに絵里香は肩を竦めた。
ブリット「悪かったな。けど・・本当に居るのか?」
顎に手をやりながら、ブリットは首をひねった。実際、そんな珍(?)人物がこの市内に居るのならば、見かけてもおかしくないからだ。
絵里香「何でもその生徒さんは、最近転校して来たから見かけない・・・らしいんだけどね」
ブリット「そんな珍しい高校生・・・居たら見てみたいけどな。って、ここにいるか」
士朗「・・・・・・悪かったな、珍しい高校生で」
ちらっと、ブリットは今日も今日とて「ナギサ」という愛称の子猫を連れた(今は肩に乗っている)士朗を見た。今時の高校生にしては、珍しいという点では彼もまた、そこらではお目にかかれないある意味珍しい若者だったからである。一同が、談笑したその時であった。
???「こぉらぁ〜〜!ソースケーッ!!」
一同の後方で、ハリセンの良い音と同時に女の子の声が辺りに木霊した。何事かと一同が振り返って見ると、書店の前でライフルに非常に良く似たモデルガン(?)を持ったまま床に突っ伏した少年と、ハリセンを片手に持った少女が肩で息を切らしながら獅子奮迅の勢いで怒っている光景が目に入った。

9勇希晶:2007/09/19(水) 19:08:13 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
宗介「む・・・千鳥、いきなり何を・・」
舗装された石のタイルに顔面を強打した宗介と呼ばれた少年は、ひりひりと痛む頬を押さえながら何ゆえ「ハリセン」でしばいたのかを尋ねた。
かなめ「それはこっちの台詞よ! 私がレジに並んでいただけで、何で銃を発砲しようとするわけ!?」
鬼気迫るとは正にこの事だと、一部始終を見ていた野次や通行人は少年の胸ぐらを両手で掴んで、高速で脳をシェイクするかなめを見ながら悟った。
宗介「だ、だが、あの男・・・千鳥が購入した雑誌を詰めた袋に、何かを混入したはずだ」
言われてみて、かなめは先程までのレジのお兄さんのやっていた行動を今一度、振り返って見た。かなめが雑誌と代金を一緒に渡し、その後、袋に入れてもらい・・・そして、この店のちらしを入れてもらったぐらいしか思い浮かばない。
かなめ「・・・・もしかして、ソースケ。この袋に入れてもらったビラの事を言ってるの?」
宗介「肯定だ(アーマファクティブ)。もし、その紙の間に高純度の爆発物が挟まってたり、極小単位の単分子カッターならばどうするつもりだったんだ。早くそれをこっちによこすんだ、ちど・・」
かなめ「んなもん入ってるわけ無いでしょう、がっ!!!」
今度は顎目掛けての打ち上げ式のハリセン打法が、宗介の顎部を捕えた。綺麗な放物線を描きながら、宗介は仰向けになって今度こそ沈黙した。
かなめ「全く・・・・」
ぶつぶつと文句を言いながらかなめは、士朗達とは反対方向へと歩みを進めていった。

士朗「・・何だったんだ、今のは?」
かなめの姿が視界に捉えられなくなってから、たっぷり10秒経ち、ようやく士朗が口を開いた。
一同「「さぁ〜?」」
一同は脳裏で、あの気絶している少年こそが噂していたミリタリーオタクであると理解したのだが、もう片方のハリセン少女は何者なんだろうと一同は顔を見合わせながら首を傾げた。少年よりも少女の方がインパクトが強く、記憶と印象に根強く残る事は間違い無かったと言えたのであった。

10勇希晶:2007/10/03(水) 22:42:01 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
=商店街=

翌日、絵里香・士朗・ブリットの三人は休日を利用して『大日本武士博物館』なるところを訪れていた。
そしてその帰りに、近場の商店街の立ち寄っていた。
絵里香「そうなのよ・・・・・・あ、ところで知ってる?」
何かを思い出したかのように士朗とブリットに声をかける絵里香。
ブリット「何が?」
何に対して何を知っているのかという、問い掛けに問い掛けで返したブリットは、片眉を上げながら振り向いた。
絵里香「ほら、この辺りに出没するっていう例の・・・学生服着たミリタリーオタクの話」
士朗「・・・・・何の事だ?」
皆目見当がつかず、士朗は絵里香に尋ねた。
絵里香「この辺の高校生らしいんだけどね・・・・自分の通う高校の昇降口を爆破したりとか、『モデルガン』にしては精巧に出来た銃を所構わず撃ったりとか・・・・結構、噂になってるわよ?」
ブリット「・・・まぁ、俺は身体を鍛える事しか・・・」
乾いた笑い声で、頬を人差し指で掻きながらブリットは弱弱しく答えた。
士朗「・・・猫(こいつ)の事なら、大方の知識は持ち合わせてるが」
こちらは至ってさらりと答えた。それが何か、と言わんばかりの態度だからそれ以上の追求をする事を絵里香は止め、
絵里香「・・・はぁ。どっちも世間の情報に疎すぎ・・・」
溜息混じりに絵里香は肩を竦めた。
ブリット「悪かったな。けど・・本当に居るのか?」
顎に手をやりながら、ブリットは首をひねった。実際、そんな珍(?)人物がこの市内に居るのならば、見かけてもおかしくないからだ。
絵里香「何でもその生徒さんは、最近転校して来たから見かけない・・・らしいんだけどね」
ブリット「そんな珍しい高校生・・・居たら見てみたいけどな。って、ここにいるか」
士朗「・・・・・・悪かったな、珍しい高校生で」
ちらっと、ブリットは今日も今日とて「ナギサ」という愛称の子猫を連れた(今は肩に乗っている)士朗を見た。今時の高校生にしては、珍しいという点では彼もまた、そこらではお目にかかれないある意味珍しい若者だったからである。一同が、談笑したその時であった。
???「こぉらぁ〜〜!ソースケーッ!!」
一同の後方で、ハリセンの良い音と同時に女の子の声が辺りに木霊した。何事かと一同が振り返って見ると、書店の前でライフルに非常に良く似たモデルガン(?)を持ったまま床に突っ伏した少年と、ハリセンを片手に持った少女が肩で息を切らしながら獅子奮迅の勢いで怒っている光景が目に入った。

11勇希晶:2007/10/03(水) 22:43:30 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
宗介「む・・・千鳥、いきなり何を・・」
舗装された石のタイルに顔面を強打した宗介と呼ばれた少年は、ひりひりと痛む頬を押さえながら何ゆえ「ハリセン」でしばいたのかを尋ねた。
かなめ「それはこっちの台詞よ! 私がレジに並んでいただけで、何で銃を発砲しようとするわけ!?」
鬼気迫るとは正にこの事だと、一部始終を見ていた野次や通行人は少年の胸ぐらを両手で掴んで、高速で脳をシェイクするかなめを見ながら悟った。
宗介「だ、だが、あの男・・・千鳥が購入した雑誌を詰めた袋に、何かを混入したはずだ」
言われてみて、かなめは先程までのレジのお兄さんのやっていた行動を今一度、振り返って見た。かなめが雑誌と代金を一緒に渡し、その後、袋に入れてもらい・・・そして、この店のちらしを入れてもらったぐらいしか思い浮かばない。
かなめ「・・・・もしかして、ソースケ。この袋に入れてもらったビラの事を言ってるの?」
宗介「肯定だ(アーマファクティブ)。もし、その紙の間に高純度の爆発物が挟まってたり、極小単位の単分子カッターならばどうするつもりだったんだ。早くそれをこっちによこすんだ、ちど・・」
かなめ「んなもん入ってるわけ無いでしょう、がっ!!!」
今度は顎目掛けての打ち上げ式のハリセン打法が、宗介の顎部を捕えた。綺麗な放物線を描きながら、宗介は仰向けになって今度こそ沈黙した。
かなめ「全く・・・・」
ぶつぶつと文句を言いながらかなめは、士朗達とは反対方向へと歩みを進めていった。

士朗「・・何だったんだ、今のは?」
かなめの姿が視界に捉えられなくなってから、たっぷり10秒経ち、ようやく士朗が口を開いた。
一同「「さぁ〜?」」
一同は脳裏で、あの気絶している少年こそが噂していたミリタリーオタクであると理解したのだが、もう片方のハリセン少女は何者なんだろうと一同は顔を見合わせながら首を傾げた。少年よりも少女の方がインパクトが強く、記憶と印象に根強く残る事は間違い無かったと言えたのであった。

12勇希晶:2007/10/03(水) 23:00:11 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
※すみません、>>10>>11はミスってダブり投稿してしまいました。



=交差点=
ブリット「・・・と、そろそろお別れだな」
絵里香「あ、そっか。私達こっちだもんね」
士朗「横断歩道を渡ったら、だけどな」
そして信号が青になる。
ブリット「それじゃあ、また明日・・・」
そう言ってブリットが横断歩道に一歩踏み出した時、突如爆発音が響いた。
士朗「なんだ?!」
絵里香「ブリット! 横!!」
ブリット「え?」
ブリットが絵里香の声に反応して横を見ると、一台のトラックが宙を飛んで突っ込んでくるところだった。
突然の出来事だったが、咄嗟に後ろへとびすさったブリットの数cm前をトラックが吹っ飛んでいった。
そして地面に激突し、爆発炎上するトラック。
士朗「ブリット、大丈夫か?!」
ブリット「あ、ああ。大丈夫だ。でも、何でいきなりトラックが飛んで来たんだ?」
士朗「さあ・・・?」
絵里香「事故なんじゃないの?」
安堵する士朗達。しかし、
士朗「おい、あれ・・・なんだ?」
絵里香「え?」
士朗がトラックが飛んできた方向を見ると、青いロボットがいた。
ブリット「な、なんだ・・・ロボット?」
聖がそこまで言うと、青いロボットが携行しているマシンガンの銃口をこちらに向けた。
一同「!!」
一同が息を呑むが、青いロボットは銃口をやや上に向け、マシンガンを発射した。
絵里香「きゃあっ!」
ブリット「うわっ!」
士朗「くっ!」
鳴り響く爆音に耳を塞ぐ士朗達。そして背後に響いた爆音に振り返ると・・・
一同「!!!」
爆炎に包まれた飛行機が落ちて来るところだった。
士朗「落ちてくる!?」
ブリット「士朗!」
士朗とブリットはアイコンタクトを交わす。
絵里香「きゃっ・・・!」
二人で絵里香を護る様にして思いっきりバックステップ。
直後、辺りを轟音が包み込んだ・・・・・・・・・

13勇希晶:2007/10/03(水) 23:00:47 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
士朗・ブリット「「うわぁぁ・・・・っ」」
絵里香「きゃぁぁ・・・・・っ」
轟音と爆風に巻き込まれながら、絵里香をしっかりと護ったまま必死に体勢を整え、着地しようとする士朗達だったが、上手くいかずに2,3回バウンドして地面を転がる。
ゴォォォォォォォォ・・・・・・・・・・
士朗「くぅ・・・・・・大丈夫か、絵里香?」
士朗は自分の腕の中に絵里香の体があるのを確かめると、無事かどうかを聞いた。
絵里香「あいたたた・・・・・・。私は大丈夫・・・・」
士朗「ブリット」
ブリット「な、何とか・・・・・・」
絵里香、ブリットが応え、最後に士朗の肩からいつの間にか士朗の上着の内側に移動していたナギサが「なぁ〜」と一声鳴いて、全員の無事が確認された。
絵里香「・・・ねぇ士朗、一体何が起こったの?」
士朗「飛行機が落ちてきた。」
絵里香「飛行機? 飛行機ってあの空を飛んでる奴よね」
士朗「それ以外に何がある。」
ブリット「けど、なんでいきなり飛行機が落ちてくるんだ・・・?」
ブリットがもっともな疑問を口に出す。
士朗「これは俺の推測だが、もしかしたらあのロボットが撃ち落としたのかも知れない」
絵里香「そんなのあり・・・?」
士朗「俺が知るか。」
ブリット「・・・俺達の他に助かった人は?」
周りに自分たちしかおらず、炎上している飛行機の残骸を眼前にして、ブリットが呟く。
士朗「・・・・・・わからない」
淡々とした士朗の言葉。
絵里香「ちょっと! わからないってどういう事よ!!」
ブリット「・・・・・・」
最悪の状況を想定し、口ごもるブリット。
絵里香「まさか、助かったのは・・・・・・」
そこまで絵里香が言いかけた時、突如頭上に影が差した。
士朗「危ない!」
咄嗟に士朗は絵里香を自分の後に突き飛ばし、身構える。
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン・・・・・・・・・・
重厚な音を響かせて落ちてきたそれは、
ブリット「なんだ・・・?」
輝くほどの白い色をした、
士朗「ロボ・・・ット・・・?」

14勇希晶:2007/10/17(水) 22:39:53 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
絵里香「ちょっと、士朗一体どういうつも・・・」
士朗の後から、埃を叩きながら出て来た絵里香は、目の前に横たわる白い大きなモノに目を丸くした。
絵里香「ねぇ、士朗・・・・何コレ?」
士朗「・・・・・・」
絵里香「士朗?」
士朗「あ、ああ。なんだ?」
絵里香「だから、コレってナニ?」
絵里香は白いモノを指さす。
士朗「俺に訊かれても困る。」
絵里香「それじゃ埒があかないでしょ。士朗はなんだと思う?」
士朗「・・・・・・ロボット、なんじゃないか? 何かこれ人間の手みたいだし」
士朗が示した方を見やり、絵里香は肯く。
絵里香「ホントだ」
ブリット「だが、こんなロボット見たことないぞ」
士朗「・・・・・・」
士朗は徐にロボット?の頭部があるであろう方向へと歩き始める。
ブリット「お、おい士朗!」
絵里香「ちょっと士朗、どこ行くのよ」
二人の問いかけを無視して士朗は歩く。
士朗「・・・ここか」
そして比較的なだらかになっている部分を見つけると、登り始めた。
絵里香「ちょっと、士朗?!」
士朗「心配はいらない。多分大丈夫だ。」
ブリット「危ないから降りろって! ・・・ったく、待てよ!」
ブリットも士朗に続いて登り始める。
絵里香「ちょ、ちょっと二人とも!! ・・・もうっ!!」
最後に絵里香も登り始めた。
やがて、士朗達は丘のようになっている所に辿り着いた。士朗はそこに立って辺りを見回す。
士朗「・・・・・・」
ブリット「これは・・・」
絵里香「っしょっと。ちょっと、二人とも・・・」
勝手な行動を詰問しようとした絵里香だったが、士朗の手で遮られる。
士朗「・・・どうやらそれどころじゃないみたいだ。」
絵里香「え、それってどういう・・・・・・?!」
士朗達が見たものは、街を無差別に破壊している数体の青いロボットの姿だった。
絵里香「あのロボット、なんで街を襲ってるの・・・・?」
呆然とした様子の絵里香。
士朗「俺にもわからない・・・・・」
士朗とブリットが応えられる訳が無く、ただ破壊されていく自分たちが住んでいる町の様子を見ているだけしかできなかった。
そしてロボットの内の一体がこちらを向いた。
絵里香「ひっ・・・・!」
先程銃口を向けられた恐怖が甦ったのか、絵里香は士朗の服をギュッと掴む。
そして銃口がこちらを向いた瞬間、
士朗「伏せろ!」
絵里香をかばうように倒した。
絵里香「きゃぁっ!」
突然倒された絵里香が、悲鳴を上げる。そしてその手は、何かのレバーの様なものを倒していた。
士朗・ブリット「「うわっ!!」」
絵里香「きゃっ!!」
ねこ「にゃぁっ!」
まとめて突如開いた孔の中に落ちる三人と一匹。
そしてその孔の頭上をマシンガンの弾が掠っていった。

15勇希晶:2007/10/17(水) 22:40:50 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
士朗「つつつ・・・・」
絵里香「いたた・・・今度は何よ?」
穴から落ちた先は二、三人がなんとか入れるような狭い空間だった。
士朗「絵里香・・・重い。」
絵里香「っ、私はそんなに太ってないわたっ!」
絵里香は下から聞こえてきた声に反論しようとして何かに頭をぶつけた。
士朗「・・・大丈夫か?」
絵里香「士朗が変なこと言うからでしょ! って、ブリット!! 変なトコさわるな!!」
ブリット「す、すまない!!」
どうやら、ブリットが何かやらかした様だ。
士朗「二人とも、落ち着け」


一分後。
士朗「・・・で、ここはあのロボットの中じゃないかと思うんだが」
士朗は辺りを見回すが暗くて何も見えない。自分の右に絵里香が、左にブリットがいるとわかっている士朗は、まず自分の状況を確認した。
ブリット「・・・・・もしかしてここは操縦席なのか?」
そのブリットの呟きを聞き、以前に読んだことがある漫画を思い出して、自分が椅子に座っていると仮定した上での肘掛けをさわってみる。
士朗「・・・・・・ん?」
と、指が何かを押す感覚がした。
瞬間、操縦席内のライトなどが一斉に灯る。
絵里香「きゃっ、何!?」
ブリット「落ち着け絵里香。多分、今電源を入れたんだと思う」
絵里香「え、じゃあこれ動くの?」
士朗「それはわからない」
そうこうしているうちに、正面に外の風景が映し出される。
映った風景は黒煙混じりの空。
???「システム・オールグリーン。これより稼働を開始します」
三人「「「!?」」」
???「認識媒体デバイス、始動。映像化。固定。」
突如聞こえてきた声に三人が目を見張る前で、一人の女性の姿がまるで立体映像のように映し出される。
???「私はDoLL−CW<Code:01>です」
金髪に銀の鎧、そして青い服を身にまとったそれは、凛とした声でそう言った。
女性「問おう。あなたが、私の操縦者(マスター)か?」

16勇希晶:2007/10/17(水) 22:41:23 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
三人「「「・・・操縦者(マスター)?」」」
聞き慣れない言葉に、鸚鵡返しに言葉を返す三人。
と、女性(?)はブリットを指し、
女性(?)「・・・あなたが私、つまりDoLL−CW<Code:01>を起動させたのではないのですか?」
絵里香「ねぇ、そのドールなんちゃらって、このロボットの名前?」
女性(?)「そうですが、あなたは・・・?」
警戒心を露わにした表情で絵里香に問いかける女性(?)。
絵里香「あ、私は獅堂絵里香。で、こっちが神崎士朗」
女性(?)「ではそちらは?」
ブリット「ブルックリン・ラックフィールドだ」
女性(?)「なるほど。・・・結局私を起動させたのは誰なのですか?」
士朗「・・・俺だ」
女性(?)「では、あなたが私の操縦者(マスター)と言うことですね」
女性(?)は一つ頷く。
女性(?)「では、あなたの所属と階級、氏名は何というのですか?」
士朗は聞き慣れない単語に一瞬困ったが、おそらく身分証明をしろと言っているのだろうと判断した。
士朗「都立綾瀬高校剣道部所属、都立綾瀬高校2年C組、神崎士朗だ」
女性(?)「高校・・・? 二年・・・? よもやとは思いますが、あなたがたは民間人なのですか?」
士朗「民間人・・・ああ、そうだ。もしかするとこのロボットは見たらヤバイものだったりするのか?」
女性(?)「その様なことはないと思いますが・・・・」
女性(?)は少し考え込んで、
女性(?)「了解しました。都立綾瀬高校剣道部所属、都立綾瀬高校2年C組、神崎士朗をDoLL−CW<Code:01>の操縦者(マスター)と認めます」
そして映像の女性(?)は腰に差した鞘から幅広の剣をとりだし、
女性(?)「これより我が身は貴方の為にあり、貴方の敵を屠る剣となり、貴方の命を守る盾となりましょう」
と誓いをあげた。
女性(?)「早速で恐縮なのですが、私に名前をいただけないでしょうか」
士朗「名前・・?」
女性(?)「はい。いつまでもDoLL−CW<Code:01>では言いづらいでしょう?」
士朗「・・・・・・」
士朗は少し考えたあと、
士朗「・・・“セイバー”というのはどうだ?」
女性(?)「Saber・・・・いい名です。ではありがたくその名前を頂戴します、操縦者(マスター)」
恭しく一礼をする女性――セイバー。
士朗「・・・士朗でいい」
セイバー「はい?」
士朗「だから、俺のことも士朗でいい。操縦者(マスター)ではなく。」
セイバー「なるほど・・・・ではシロウとお呼びしても宜しいでしょうか?」
士朗「ああ。かまわない」
セイバー「わかりました。それではこれよりDoLL−CW<Code:01>よりDoLL−CW<Code:Saber>に呼称を改めます」

17勇希晶:2007/10/28(日) 18:52:45 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
士朗「ところでセイバー。一ついいか?」
セイバー「はい、何でしょうシロウ?」
士朗「どうやって動かしたらいいんだ?」
セイバー「なるほど。操縦に関しては素人なのですね。わかりました。こちらの方でサポートします」
そうセイバーが言うと、操縦桿らしきものがせり上がってきた。
セイバー「まずは今せり上がってきたレバーをひいて下さい」
士朗「・・・こうか?」
言われたとおりにレバーを引くと振動が起き、モニターに映る視界が変化した。
セイバー「はい。これで立ち上がりました。では、次に操作説明をいたします。本来ならばD.M.T.Sが起動しているはずなのですが、何らかのトラブルでうまくリンクしていないようですので、操縦桿による操作の説明をいたします―――」
セイバーの操作説明を受け、その通りに動かしてみる士朗。
セイバー「・・・はい。それで大体の挙動は行えるはずです。次に武器ですが」
そうセイバーが言いかけた途端、衝撃が来た。
絵里香「きゃっ・・・!」
セイバー「どうやらこちらを敵と認識したようです」
士朗「どうすればいいんだ?」
セイバー「戦いましょう。武器は剣があるはずですので、それを使って下さい」
士朗は言われたとおりに、近くにあった野太刀のような柄のない剣を持たせる。
士朗「・・・これでいいんだな?」
セイバー「はい」
頷きあう士朗とセイバー。
絵里香「ねぇ、戦うってどういう事?」
士朗「知らん。だが、戦わないと死ぬだけらしい」
絵里香「ええっ!?」
セイバー「来ます!」
起動したばかりのDoLL−CW<Code:Saber>に青き幽霊(ゲシュペンスト)が迫る・・・・・・!

18勇希晶:2007/10/28(日) 18:54:15 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
絵里香「士朗!!」
士朗「ええい、こうか!」
士朗は先程教えられたとおりに操縦桿を操作し、ゲシュペンストの蹴りを受け止める。
士朗「このっ!」
そしてそのまま投げ飛ばすが、ゲシュペンストは危なげなく着地した後、マシンガンを乱射しながら突っ込んできた。
咄嗟に両腕をクロスさせて耐えるSaber。
士朗「肉を切らせて・・・・・」
そしてある一定まで距離が縮まった時、
士朗「骨を断つ!!」
クロスしていた腕を斜めに振り抜き、マシンガンを持った手を切り落とした。
ゲシュペンスト「!!」
士朗「返す!」
そしてそのまま返す刀で逆袈裟に剣を振る。
剣はゲシュペンストの右肩から左腰上部までを一気に切り裂いた。
ゲシュペンスト「!?!?!?」
そのまま火花を吹き、倒れ沈黙するゲシュペンスト。
ブリット「・・・・・・勝ったのか?」
士朗「・・・多分、な」
完全に動かなくなったゲシュペンストを見て、士朗はあることに気が付く。
士朗「・・・なあセイバー。あのロボット、中に人乗ってたんだよな?」
セイバー「ロボット・・・RPT−007Mゲシュペンストのことですね?」
士朗「そうだ。ロボットだったら、人が乗っているんじゃないのか」
セイバー「大丈夫です。先程接触した際にコクピット内部の映像を見ましたが、人が乗っている形跡はありませんでした」
士朗「そうか・・・・・・」
士朗はどっと安堵する。
セイバー「シロウ、ほっとしている暇はないようです」
絵里香「え?」
セイバー「右手方向から新たな敵機が迫っています。識別はRPT−007Mゲシュペンストです」
士朗「またか・・・!」
士朗はセイバーに示された方向に向き直る。
士朗「セイバー、パイロットは?」
セイバー「・・・無人です。」
士朗「了解。なら、今度はやられる前に・・・」
士朗は操縦桿を操作して一気にゲシュペンストとの距離を詰める。
ゲシュペンスト「!?」
士朗「やるだけだ!!」
そのまま体勢を低くしながら剣を横に構え、抜ける。
多少抵抗があったものの、剣はゲシュペンストの横腹を大きく切り裂き、そのままゲシュペンストは倒れ込むようにして地面に激突して活動を停止する。
士朗「ふぅ・・・・」
セイバー「お見事です」
士朗「セイバー」
セイバー「はい。周囲に先程のゲシュペンストと見られる機影はありません」
言いかけた士朗の先の言葉を遮るように、セイバーが事実上の戦闘終了を告げる。
士朗「そうか・・・」
絵里香「・・・ねえ、終わったの?」
今まで必死でシートにしがみついていた絵里香が訊ねる。
操縦していた士朗より、絵里香達の方がGを強烈に感じたらしい。それでも嘔吐などをしていないのは女の意地がなせる技か、それとも意外に鍛えられているからなのか。
士朗「らしい」
ブリット「だったら、早く安全なところへ行こう」
士朗「そうだな」
一も二もなく賛成する士朗。
セイバー「待って下さい。安心するのは早いようです」
士朗「どういうことだ?」
セイバー「未確認機動兵器が接近中です。これは・・・・・・!」


=???=
少年?「ちょっとイレギュラーが入ったみたいだケド・・・・・・」
その時、Saberの様子を見ていた少年――と言っていいのかわからないくらい中性な顔立ちをした子供――が呟いた。
少年?「まあ、これでお膳立ては整ったよネ。」
そして少年?は映像の上で指を滑らせる。
少年?「さあ、行っておいで。ボクの可愛い虫(バグ)達・・・」

=東京=
映し出された映像には、
ブリット「なんだ・・・? 甲虫・・・・?」
セイバー「いえ、これはAGX−01バグス!!」
その間にも、士朗達の前には十数体ものバグスが集まってくる。
ブリット「多勢に無勢か・・・!」
さらに蜘蛛の様な姿をしたものまで現われた。
セイバー「AGX−02スパイダーまで・・・?!」
そして士朗達を挟むようにバグスとスパイダーが対峙する・・・・・・

19勇希晶:2007/10/28(日) 18:54:56 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
士朗「囲まれたか・・・!」
四方八方から出でる虫型ロボット等に、絵里香は思わず身を引き、ブリットは額に汗を滲ませている。
士朗「・・・セイバー、俺達を囲んでいる敵の大体の数は?」
セイバー「・・・1時の方向に3機、4時の方向に2機・・・」
セイバーが言い終える前に、士朗が止めに入った。〜時の方向と言われても、さっぱり判らないからである。
士朗「待った。・・・すまないが、『前』とか『後ろ』という風に言いなおしてくれないか?」
セイバー「失礼致しました・・・前方に7機、後方に5機、右に2機AGX−01バグスが。左後方及び左前方に系9機AGX−02スパイダーがいます」
士郎「・・・計、21機か・・・」
そうやってこの危機を乗りきるか士朗が思案する間もなく、前方に控えているバグスらが先にしかけてきた。士郎の駆るDoLL目掛けて3〜4機が一斉に体当たりをしかけてきたのである。
それと連動するかのように、こちらを包囲していたスパイダーなどもこちらに撃ち込みはじめる。
士朗「問答無用か・・・! 二人とも、しっかり掴まってろ!!」
士朗はやや覚束無いながらも操縦桿を操作する。
バグス「・・・・・・・・・」
攻勢に出ては、この包囲網を抜けることは出来ない。
そう判断した士朗は守勢に回ってチャンスを待つことにした。
しかし、数の不利は如何ともしがたく。
士朗「しまっ・・・・ぐっ!!」
絵里香「きゃっ・・・!」
ブリット「くっ・・・!」
一体の攻撃を受け大きく機体が揺れる。
士朗「この・・・っ!」
横に剣を振るってバグスを切り捨てるが焼け石に水。
逆に攻撃の隙にさらなる攻撃を喰らってしまう。
士朗「セイバー!」
セイバー「ダメージ蓄積率、30%を突破。このままだと確実に破壊されます」
絵里香「ちょっと! 助けとか呼べな痛っ!?」
士朗「喋るな! 舌噛むぞ!」
セイバー「救援要請ならば既に出しています。しかし、応えてくれる部隊があるかどうか・・・」
士朗「どちらにしろ、今は耐えるしかないという訳か・・・!」

20勇希晶:2007/10/28(日) 18:56:41 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
かなめ「あ〜っ、もう! なんなのよ一体!?」
宗介「(AGX−01バグスにAGX−02スパイダーだと? 何故こんな所に奴らが出現する?)」
かなめ「ちょっとソースケ、なにぼーっとしてんのよ!」
宗介「(いや、それ以前に突如破壊活動をはじめたゲシュペンストの方も気になる。どうやらあの白い機動兵器が倒したようだが・・・)」
かなめ「ソースケ! 人の話を聞け!!」
すぱーん、と小気味いい音がして宗介の頭が揺れる。
宗介「千鳥、痛いぞ」
かなめ「この非常時に呆けてるんじゃないわよ。全く、兵器オタクはこれだから・・・」
宗介「千鳥。何度も言っているが俺は素人では」
かなめ「はいはい。わかったから早く逃げるわよ!」
宗介「いや、しかし――ッ、伏せろ千鳥!!」
かなめ「え?」
宗介がかなめを押し倒すのと、背後で爆発が起きるのはほぼ同時だった。
かなめ「ちょっ、ソースケ! アンタ一体何考えて」
宗介「無事か、千鳥。どうやら非常事態が発生したようだ。ここは危険だ、早く安全なところへ」
かなめ「んなもん見れば分かるでしょうが! それよりも今はアンタの方が! 危険よ!!」
宗介「何を・・・ぐふっ!?」
押し倒された状態から、宗介の下腹部に膝を入れ、巴投げの要領で投げ飛ばすかなめ。
宗介は近くにあったゴミ箱に頭から突っ込んでいた。
かなめ「全く、どうしようもない馬鹿ね、アンタ」
宗介からの返事はない。まるで屍のようだ。
かなめ「もうアンタのことなんて知らないから!」
そう言い捨てると、かなめは大股にその場を去っていった。


???「お〜い、ソースケ。生きてるか?」
かなめが去ってから15秒後。宗介の背後の空中から声が響く。
宗介「・・・クルツか。問題ない、とは言いがたいが、大丈夫だ」
ずぽっとゴミ箱から頭を抜く宗介。
すると、背後に無骨なシルエットのASがまるで水面から顔を出すように現れた。
宗介「それよりも、どう思う?」
クルツ「ゲシュペンストの方、ありゃ多分無人機だ。で、バグスの方だがこっちはさっぱりわからねぇ。カナメを狙ったってわけでもなさそうだしな」
宗介「そちらもか。ダナンからの指示は?」
クルツ「なしだ。だがあっちの白い奴に乗ってるのは素人っぽいし、このままだと被害拡大は確実だな」
宗介「そうか。・・・クルツ」
クルツ「ちょっと待った。ダナンから指示が来たぜ」
宗介「少佐はなんと?」
クルツ「“全力を持ってチドリ・カナメの保護および機動兵器の援護にあたれ”だとさ」
宗介「了解した。クルツ、お前はあの白い機動兵器の援護を頼む」
クルツ「了解。お前はどうすんの、って聞くまでもないか」
宗介「肯定だ」
返事を返し、宗介はカナメが消えた方向へと急ぐ。


クルツ「んじゃ、いっちょカッコよく決めてみようか!」
携行している狙撃用ライフルを構え、白い機動兵器と交戦しているバグスに狙いを定める。
クルツ「墜ちやがれ!!」
放たれた弾丸は、違わずスパイダーの一体に命中した。

21勇希晶:2007/11/04(日) 20:43:50 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
士朗「せいっ・・・!」
バグスやスパイダーの集団に囲まれながらも、なんとか切り抜けてきた士朗だったが、流石に疲労の色が濃くなってきていた。
士朗「セイバー、まだか?」
セイバー『熱源反応はバグスが8、スパイダーが5・・・』
言いかけたセイバーが言葉を止める。
こちらを狙っていたスパイダーの一体が、遠方からの狙撃と見られる攻撃によって破壊されたからだ。
セイバー『これは・・・どうやら友軍のようです』
ブリット「ってことは、援軍か?」
セイバー『いえ、連邦の識別信号は出していません』
士朗「なんにせよ味方なら大歓迎だ。通信できるか?」
セイバー『待って下さい。先方から通信が入ってきています。繋ぎますか?』
士朗は黙って首肯し、操縦と迎撃で手一杯の為ブリットに通信にでるよう促す。
クルツ『パイロット、無事か?』
通信用モニターに映し出されたのは、ヘッドギアを付けた金髪碧眼の美男子だった。
ブリット「五体満足かって言うのならそうですが」
クルツ『そりゃ結構。乗ってるのはお前だけか?』
ブリット「いや、俺の他に二人乗ってます。コイツを動かしてるのは俺の友達です」
クルツ『都合三名か・・・。聞くけどよ、お前達は連邦軍所属か・・・・・・って聞くのは無駄だな』
こちらの服装が普段着であることに気が付いたのだろう、金髪男は軽く溜息をつく。
クルツ『上官の指示で貴君達の援護につくことになった、クルツ・ウェーバー軍曹だ』
言うが早いか、的確な狙撃で空中のバグスを落とすクルツ。
ブリット「あ、俺はブルックリン・ラックフィールドです。一緒に乗っているのは神崎士朗と、獅堂絵里香」
絵里香の名を聞いた途端、クルツと名乗った男の目の色が変わる。
クルツ『エリカ? もしかして、女の子も乗ってんの?』
ブリット「え、ええ」
クルツ『馬っ鹿野郎! それを早く言え!』
ブリット「す、すみません!!」
いきなり怒鳴られ、反射的に謝るブリット。
事情はどうあれ、結果的に勝手にロボットに乗り込んだのは動かしようのない事実だ。
てっきりその事について怒られるかと覚悟したブリットだったが、返ってきたのは意外な返答だった。
クルツ『待ってろよカワイコちゃん! 今すぐ俺が助けてやるからな!』
ブリット「な・・・・・・」
絵里香「・・・・・・カワイコちゃん、なんて初めて聞いた」
セイバー『・・・・・・破廉恥な』
士朗「・・・・・・・・・」
クルツの発言に三人は呆れ、操縦している士朗はそれどころではない為沈黙を守った。

22勇希晶:2007/11/04(日) 21:00:36 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
クルツが援軍に加わってから数分後。
士朗「これで、最後だ!!」
銀光が閃き、最後に残っていたスパイダーを両断する。
士朗「セイバー、反応は?」
セイバー『ありません』
絵里香「終わった・・・の?」
ブリット「・・・みたいだな」
残敵がいないことを確認し、どっと力が抜ける士朗達。
クルツ『お疲れさん。初めてにしてはやるじゃねぇか』
対してクルツはさほど疲労してはいないらしく、ASの手を使ってグーサインを返してくる。
士朗「・・・ありがとうございます。それと、」
クルツ『スト〜ップ! それは、そこのカワイコちゃんに言って貰いたいな♪』
士朗「・・・・・・」
しばし沈黙した士朗だったが、窮地を救われた命の恩人の希望であるため、絵里香を促した。
絵里香「え、わ、私? えっと、あ、ありがとうございました」
クルツ『No problem! 君みたいな娘を助けないとあっちゃ男が廃るってもんだ♪』
絵里香「は、はぁ・・・」
爽やかな笑顔のクルツに、やや呆れ気味の絵里香だった。


=???=
少年「ふぅん。結構やるネ。だったら、もう少しイジワルしちゃおうかナ?」
そう言い、また少年は指を滑らせる。
少年「借り物じゃなく、ボク達の力で、ネ♪」


セイバー『・・・!』
不意に表情をこわばらせるセイバー。
士朗「どうした、セイバー」
セイバー『クルツ、といいましたか。弾の残りはありますか?』
クルツ『ああ、まだあるぜ』
溜息をつきながら、手にした狙撃用ライフルを構え直すクルツのM9。
セイバー『それは重畳だ。・・・来ます』
ブリット「来るって、何が」
士朗「!!」
ブリットが言い終わるか否かのタイミングで、士朗は強引に機体を旋回させて背後を薙ぎ払ったが手応えはなかった。
クルツ『くらいやがれ!』
背後で着弾音がする。クルツが今現れた敵に対して威嚇射撃を行っているようだ。
すぐさま振り返ると、クルツが狙撃出来ないように建物の陰に隠れている黒い狗がいた。
クルツ『ちっ、これじゃとどかねぇな・・・』
忌々しげに呟くクルツ。いかな優れた狙撃手でも遮蔽物越しの標的を撃ち抜くには特殊な弾丸を必要とする。
街中でのサポートをメインにしていたクルツのM9にはそう言う弾丸は装備されていなかった。
士朗「なんだ、コイツ・・・犬?」
セイバー『シロウ、油断しないで下さい』
士朗「ああ、わかってる」
黒犬『grrrrrrrr・・・・・・』

23勇希晶:2007/11/04(日) 21:01:42 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
対峙するSaberと黒犬。
Saberは剣を下段に構え、黒犬は四肢を踏みしめている。
クルツは狙撃に適した位置へ移動している為狙撃による援護は期待できない。
つまり、一対一。
士朗・黒犬「『!!』」
ほぼ同時、否、黒犬のほうが若干早く動いた。
黒犬『ガァァァッ!!』
黒く鋭い牙を剥き出し、こちらに飛びかかってくる黒犬。
士朗「はぁぁぁっ!!」
Saberは素早く剣を上段に構え直し、身を屈めつつ叩きつけるような一撃を放つ。
士朗(とった――!)
操縦桿越しとは言え確かな手応えを感じ、ゆっくりと振り返るSaber。
そこには違わず開きにされ、中の機械が見えている黒犬の残骸があった。
士朗「ふぅ・・・・・・」
セイバー『見事でした、シロウ』
ブリット「流石だな、士朗。やっぱりおまえは・・・ッ!?」
言葉を途中で止め、急に背後を振り返るブリット。が、そこには何も無かった・・・有るとすれば、無機質な操縦席の内壁。
Saberも振り向かせてみるが、その外にはこの市街の憩いの場所的存在な自然公園があるぐらいなものだ。
士朗「どうしたんだ、ブリット」
ブリット「何か・・・来る・・・・・・」
ぽつりとブリットが呟いた途端、セイバーの表情が変わった。
セイバー『シロウ、大変です! 次元測定値、及び全ての計器に異常を感知しました!』
士朗「どういう事だ・・・何が起きているんだ?」
セイバー『それが私にも・・・クルツ、そちらはどうですか』
クルツ『こっちも似たような状況だよ! なんだってんだ、いきなり!?』
そうクルツがぼやいた瞬間、ブリットが振り向いた先にある自然公園から眩い閃光が現れ、反射的に士朗らは眼を瞑ってしまった。
絵里香「きゃっ・・・」
クルツ『うおっまぶしっ!!』
やがて、光りが収まると同時に、M9やセイバーの機器も通常のそれへと収まっていった。
士朗「いったい・・・・何が?」
セイバー『・・・! シロウ。あの林の中から、熱源反応を感知しました』
士朗「・・・先程の虫みたいな奴等の仲間か?」
セイバー『少々、お待ちを・・・・私のメモリーデータの中で照合する物では無い事が判明しました。未知の機体と言う事が判明。M9シリーズとは、形状が似ているものの骨格が全くの別物・・・・試作型かもしれません。クルツ』
クルツ『・・・いや、違うみたいだぜ。こっちにも試作型を含めデータは入ってねぇ』
士朗「・・・とにかく、行ってみよう・・・・敵なら打ち倒すまでだ」

24勇希晶:2007/11/04(日) 21:03:48 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
士朗「セイバー、この辺りか? 熱源反応があるのは?」
セイバー『はい、シロウ。この先を真っ直ぐ行けば見つかります。ですが、妙ですね』
絵里香「何が?」
訝しげな表情で、絵里香はセイバーに尋ねた。
セイバー『この未確認機は全く動いていないのです。偵察して我々の戦闘の様子を覗っているにしては、転倒したままの状態を先程から維持しているのはおかしい』
クルツ『ただ単に気絶してるだけじゃないの? ・・・と、あれか?』
苦笑しながらクルツが声を上げる。クルツの乗るM9には狙撃用のカスタマイズが施されている為、レーダー範囲及び視認範囲が広いのだ。
そのため、士朗より先に『未確認機』を肉眼で確認出来たのである。続いて、士朗も肉眼で確認出来た。
士朗「あれだろうな・・・」
そこにあったのは、緑藻や葦草に包まれ、迷彩色にカラーリングされている重武装された人型機動兵器であった。
クルツ『驚きだな。よくもまあこんなに似せて作ったモンだ。モデルは姐さんのM9か?』
感嘆の声を漏らすクルツ。
セイバー『シロウ。微弱ながら、あの機体から生体反応が一つ・・・こちらも倒置状態のまま動いていません。おそらく、クルツの推測する通り気絶しているものかと。如何なさいますか、シロウ?』
士朗「・・・とりあえず、搭乗している人を病院に運ぼう。話はそれからだ」
クルツ「だな。事情を聞かないことにはどうしようもねぇし」
クルツもその意見には賛成した。が、約一名だけ・・その意見に反対した。他ならぬ、セイバーその人であった。
セイバー『シロウ。ですが、敵かもしれない以上、即刻殲滅すべきかと・・』
戦略家としては、その意見は間違いでは無かった。自分達の身を危険に晒す可能性が増えるならば、ここでその芽を摘むべきだと判断したのだ。
士朗「悪いが、そんなの願い下げだ。少なくとも、俺は無抵抗の人間を撃つような人間じゃないんでね」
だが、士朗は戦略家ではない。故に一人の人間としての選択をした。
どちらが悪く、どちらが正しい・・・この場合、どちらも『悪く』どちらも『正しい』意見であった。故に、2人は押し黙ったまま微動だにしなかった。
何時間、時が止まったであろうか。実際の所、2,3秒ぐらいだったのであろうが・・・・・・沈黙を破ったのは、クルツとブリットであった。
クルツ『悪いが、俺も反対だな。どっちにしろ、コイツは俺達の知らねえASに乗ってる。だったら色々と事情を聞かなくちゃならねぇ』
ブリット「セイバーさん。なんとなくなんですが、俺にはその機体に乗ってる人は、悪意を持ってる人には思えません」
第6勘から来たものと言うべきか、ブリットは口を開いた。科学的根拠から来る物では無いので、無論セイバーは反対した。
セイバー『それは・・・・何を根拠にして仰られているのですか。ブルックリン』
ブリット「いや・・その・・・・俺の勘d」
セイバー『当てずっぽうで物事を分別しないで下さい、ブリックリン』
ブリット「う・・・・・・」
冷静且つ手厳しい言葉をブリットにぶつけた。それは、即答だったため、ブリットは返すに返せなかった。
士朗「とにかく、何と言われようが俺はこの機体に乗っている奴を運ぶからな」
そう言って、士朗がその機体の太腿に左手を、頭を右手で抱きかかえる――世に言うお姫様抱っこをして、立ち上がろうとしたその刹那。
???『あー、悪ぃけどそこまでだ。その白いヤツこっちに引き渡してくれねえかな?』
声がした方向に振り返ると、全長40mはあろうかという巨大なトレーラーがこちらへやってきているところだった。

25勇希晶:2007/11/04(日) 21:05:09 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
やがてトレーラーは士朗達の目前まで来ると繰り返し告げた。
???『一応繰り返すな。速やかにその機体から降りてこちらに引き渡してくれ。従ってくれたら悪いようにはしない』
何か無理矢理言わされているような口調の声が響く。
ブリット「士朗・・・」
セイバー『・・・シロウ、どうするのですか?』
士朗「・・・・・」
士朗は考える。
今、この機体を渡せば少なくとも自分たちの命は助かるだろう。
しかし、この機体に乗っているパイロットの命運はどうなるかわからない。
士朗「・・・幾つか聞きたいことがある。返答はそれからでもいいか?」
???『・・・オーケー、構わない。というかこっちはそうしてくれればそれに越したことはない。でもとりあえず、これにに乗ってくれるか? 降りろ、なんて言わないから』
士朗「分かった」
???『それとそこのM9、少佐から上司経由で伝言を預かってる。“エンジェルの護衛に戻れ”だそうだ』
クルツ『アンタの上司、少佐と知り合いなのか?』
???『んー、どっちかというと艦長さんの方みたいだけど。とにかくよろしく』
クルツ『了解。んじゃ、また会おうぜ。エリカちゃん♪』
ASの手を振りながら、クルツのM9はまるで大気に溶けるように消えていった。


=コンテナ内=
Saber達を巨大なコンテナに格納した後、トレーラーははそそくさと出発する。
ちなみに、謎のASは抱えたままだ。
絵里香「ブリット・・・私達、これからどうなるのかな?」
ブリット「分からないな。だけど、事情を話せばきっと分かってくれるさ」
絵里香「そうだといいんだけどね。ほら、こういうのってドラマじゃ『機密を知られたからには生かしておけない。バーン!』とか」
ブリット「考えすぎだ。大体、俺達は何も悪いことしてないんだから。なあ、士朗」
士朗「ああ。だが、最悪の事態は念頭に置いておいた方がいいかも知れない」
セイバー『僭越ですが、私もシロウの意見に賛成します。如何なる理由があれ、あなた方は機動兵器を動かしたのです』
一気にネガティブな雰囲気に包まれるコクピット内。だが、そんな空気を吹き飛ばすかの様な明るい声が響く。
???『あ〜、テステス。只今マイクのテスト中〜! そこの三人、いきなりネガティブな空気にならな〜い!』
やがて、映像が映る。映像には極々普通の、言い換えれば何の変哲もない少年が映し出されていた。心なしか年下に見える。
士朗「君は誰だ・・・いえ、あなたは誰ですか」
慎重に言葉を選びながら、士朗は目の前の少年に問いかける。
少年『・・・そういや挨拶がまだだったな。俺は如月天。君達は?』
少年――テンに聞かれ、3人は自分たちの素性を明かす。
テン『・・・おでれーた。もしかして全員民間人ってことなのか?』
士朗「そういうことになります」
テン『あ、別にタメ口でいいぜ。そういう堅ッ苦しいの苦手だし、多分俺君達より年下だし』
士朗達が頷くのを見てテンは続ける。
テン『で、まあぶっちゃけると士朗さん達のとる道は2つ。俺の上司、メルディアナ・バンディっていう科学者さんなんだけど、その人に機体を渡して貝のように口を噤むか。もう一つは・・・』
もう一つの条件を口に出そうとした時、ガクンと衝撃を与えてトレーラーが止まる。
テン『・・・と、ついたか。まあ、あとはメルさんに任せてるんで、わからないことがあったらメルさんに聞いてくれ。OK?』
どうやら自分たちがとれる選択肢は少ないと悟り、士朗達はテンの言葉に頷く。
テン『あ、メルさんっていうのはさっき話した俺の上司で、銀色の髪で白衣来てぬいぐるみ持ってるおばさんな?』

26勇希晶:2007/11/04(日) 21:42:37 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
そうテンが言った直後、テンの頭が何者かに捕まれる。
テン『い゛っ?!』
???『テ〜ン? 誰がおばさんですって?』
テン『げ、聞こえてたんですがぁぁぁっ?!』
どうやら後ろからアイアンクローをかけられているようである。
気のせいか、テンの背後に某奇妙な冒険でお馴染みの擬音が現れている。
???『え〜と、聞こえてる? 今そっちに行くからちょっと待っててね」』
『ちょ、龍○乱舞はヤバイですってdrftgyふじk!?』などと言ったテンの悲鳴をバックグラウンドに、映像が途切れる。
絵里香「・・・えーと、今のがメルディアナさん?」
ブリット「さ、さあ・・・」
士朗「・・・・・・」
目の前(?)で繰り広げられた寸劇に言葉を失う士朗達であった。


=トレーラー内・Saber付近=
数分後、通信機越しに先程の女性の声がコクピット内に響く。
???『はーい♪ とりあえず、そこから降りようか』
言われたとおりに機体を動かし、コンテナの外に出る。
中からは外の様子がわからなかったが、どうやら格納庫のようだ。
???『じゃあ、そのASをそこのトラックに乗せてくれる?』
抱えているASが乗せられる大きさのトラックが近くに止まっていたので、指示通りに乗せる。
???『次はそろそろ顔を見せてもらおうかな?』
メルディアナ・バンディと黙される女性がが、通信機ごしに問いかける。
士朗「・・・セイバー、空けるにはどうしたらいいんだ?」
セイバー『そちらのExとあるスイッチを入れ、その後赤いスイッチを入れて下さい』
士朗がいわれたとおりに操作すると、斜め上の辺りが開き、まばゆい光が飛び込んできた。
思わず手をかざす士朗達。
士朗・ブリット「「・・・・っ」」
絵里香「眩しぃ・・・」
大体光になれたところで、二人はリフトのようなものが下からあがってくるのに気が付いた。
そして、長い銀髪に白衣を来た女性が現れた。・・・何故か可愛らしいぬいぐるみが背後に浮いている。
???「あら、そんなに乗っていたの。それで、操縦していたのは誰かしら?」
士朗「・・・俺ですが。あなたは?」
???「ああ、ゴメンナサイね。私はメルディアナ・バンディ。手っ取り早く言えばその機体の開発者、というところかしら」
メルディアナ(あら、結構格好良いわね。・・・“あの人”には遠く及ばないけど♪)
自己紹介をしながら内心で惚気るメルディアナ。なかなかの女傑である。
士朗「俺達は」
メルディアナ「大丈夫。テンから報告は聞いてるわ。神崎士朗君、獅堂絵里香さん、ブルックリン・ラックフィールド君。とりあえず、そこから降りてくれないかしら?」
メルディアナに従い、ブリット、絵里香、士朗の順でセイバーから降りる。
そしてそのままリフトは士朗達が見つけたASの方へと移動する。
メルディアナ「一つ聞くけど、あなた達はこのASに見覚えがある?」
士朗「AS・・・?」
絵里香「・・・知りません」
ブリット「俺も・・・」
ついさっきまで普通の高校生だった士朗達が、ASのことを知っている訳がない。
納得し、ハッチの外部操作を行っていた白衣の少女に問いかける。
メルディアナ「そう。董白(ドゥンバイ)、ハッチの開閉作業の方はどう?」
董白「強い衝撃で開閉装置が故障してる。後三十秒ほどかかるね」
妙なイントネーションで問われた少女は答える。
メルディアナ「了解。さあて、こっちのパイロットは誰なのかしら?」

27勇希晶:2007/11/05(月) 23:28:12 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
やがて、董白と呼ばれた少女が工具を置き、ASのハッチに手をかける。
ギィ、ギギギ、ゴゴゴゴォ・・・・・・
重そうな音をたてて開いたハッチの中には、
???「・・・・・・・・・・」
長い髪をバラバラにしてぐったりとしている女性の姿があった。
メルディアナ「!?」
絵里香「女の人・・・?」
士朗「・・・・・・」
ブリット「・・・綺麗だ」
四者四様の反応を見せる。
董白「メルさん、作業完了したよ」
メルディアナ「な、何で“彼女”がここに・・・?」
董白「メルさん? どうしたね?」
何かショックを受けたのか驚愕としているメルディアナに再び声を掛ける董白。
メルディアナ「あ、ええ・・・お疲れ様。」
董白「どうしたね、メルさんらしくないよ? まあ、やることはやったし、失礼するね」
そう言って、董白は格納庫を横切って通路の奥へと歩いていった。
それを最後まで見ずに、メルディアナはパイロットの方に手を伸ばす。
士朗「・・・何をする気だ?」
メルディアナ「なにって、とりあえずはこのパイロットを運びださない事には話にならないでしょう。もしかしたら怪我してるかも知れないし」
そう言って肩に手を置き、抱き起こそうとするが、
メルディアナ「う〜ん・・・この髪が邪魔っぽいわね。絵里香さん、ちょっち手伝ってくれる?」
絵里香「え? あ、はい。何をですか?」
メルディアナ「彼女の髪解くの」
二人はコクピットの中をのぞき込み、丁寧に素早く絡まっている髪をほどいていく。
メルディアナ「ちょっと、士朗君」
髪をほどきながら、メルディアナは士朗を指さす。
士朗「・・・俺ですか?」
メルディアナ「そう。悪いけど、彼女支えててくれない?」
そう言ってメルディアナが指さしのは、気絶している女性パイロットだった。
士朗「・・・俺がですか?」
メルディアナ「他に誰が居るっていうのよ。いいから、早く」
士朗「わかりました」
仕方なく、士朗は女性パイロットを支える。
メルディアナ「・・・よしっと。そのまま抱き上げてもらえる?」
髪を解き終わったメルディアナが、唐突にそんなことを告げる。
士朗「何故俺が?」
メルディアナ「その方が早いから。それに、ここで下ろしてまた絡まったら面倒でしょう?」
士朗「・・・わかりました。」
再び渋々ながらも了解して、士朗は女性の太腿に右手を、頭を左手で抱きかかえる・・世に言うお姫様抱っこをして立ち上がる。
メルディアナ「ふぅん。やっぱり絵になるわね・・・・」
士朗「あの・・・・」
メルディアナ「ん、冗談よ。悪いけど、そのまま付いてきてくれる?」
士朗「・・・・・・何処に行くつもりですか?」
メルディアナ「何処って、医務室に決まってるでしょ?」
ブリット「あの、その前に俺達の処遇はどうなるんですか?」
今までなかなか会話に参加出来なかったブリットが一番の問題点を問うが、
メルディアナ「それも纏めて医務室で話すわ。さて、話は付いたことだし、お願いできるかしら? あ、くれぐれも髪の毛を踏まないようにね?」
先程の数回のやりとりで、逆らうだけ無駄だと知った士朗達は黙ってメルディアナについて行くことにした。

28勇希晶:2007/11/05(月) 23:29:21 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
=通路=
メルディアナ「そうそう。貴方が動かしたのってDoLL−CW<Code:01>よね?」
唐突にそんなことを聞いてくるメルディアナに若干きょとんとしながらも士朗は答える。
士朗「はい。ですけど、今はセイバーって名前です」
メルディアナ「あちゃ〜・・・貴方名付けちゃったんだ。」
士朗の返答を聞き、メルディアナは自分の額に掌をあてる。。
士朗「・・・・・名付けちゃいけなかったのか?」
メルディアナ「そう言う訳じゃないけど、DoLLは基本的に一度自分の操縦者を決めると後は滅多な事じゃ操縦者を変えたりしないの。そして、それは名を与える事によって成立する。これが意味する所、分かるわよね?」
士朗「・・・つまり、俺はこれからもあれ・・・セイバーに載って戦わなくちゃいけないってことですか?」
メルディアナ「それをあなたが望むのならばね・・・はい。ここが医務室よ。」
話している間に目的の医務室についたようで、メルディアナは扉を開く。
そこは、ベッドとテレビなどいくつかの娯楽品と、医師用の机だけがある質素な空間だった。
メルディアナ「ベッドはあそこよ。気を付けておろしてね?」
士朗は言われたとおりにベッドに向かい、そっとおろす。
???「・・・・・・・・・・・・」
女性はまだ目を覚まさない。
メルディアナ「さて、と。悪いけど貴方達は出て行ってくれる?」
士朗「・・・何故だ?」
思わず脱力する女性陣とブリット。
ブリット「あのな、士朗。わざとかそれ?」
絵里香「そうよ。診察するんだから服とか脱がさなきゃいけないでしょ」
ジト目攻撃にも士朗は動じた様子はない。
士朗「・・ああ、そうか。」
メルディアナ「士朗君、だっけ? もしかして、そういう趣味があるの?」
士朗「は?」
メルディアナ「いや、やっぱり男の子な訳でしょ? だったらそういうコトに興味あるかなと思ってね。どうなの?」
ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべるメルディアナ。
ブリット「べ、別に」
士朗「興味がない訳じゃないです」
絵里香「し、士朗?!」
思いっきり士朗から身を離す絵里香。
士朗「・・・、興味がない訳じゃないですけど、TPOは弁えます」
そう言って士朗はブリットを促してひとまず部屋の外へ出る。すると、
ナギサ「にゃ〜ん・・・」
士朗「ナギサ・・・?」
士朗の服の中から、ナギサが顔を出し、士朗の鼻をぺろっと舐めた。

29勇希晶:2007/11/07(水) 00:30:59 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
五分後。
メルディアナ「二人とも、もう入ってきてもいいわよ」
メルディアナの声を聞き、士朗達は再び医務室の中へ入る。
メルディアナ「二人も疲れてるでしょ? そこにお水おいといたから」
士朗「・・・・どうも」
ブリット「ありがとうございます」
メルディアナ「毒なんて入ってないわよ?」
用心深く水の入ったグラスを観察する士朗にメルディアナは少々機嫌を損ねたようだ。
絵里香「あの、私ももらっていいですか?」
メルディアナ「どうぞw」
絵里香「ありがとうございます」
絵里香も水を一口飲む。
メルディアナ「それで“彼女”の事だけど」
そう言って女性の寝ているベッドの方を見る。
メルディアナ「とりあえず、外傷及び致命的なものはないみたいね。軽い打撲程度って所かしら」
???「・・・・・・」
女性は、緩やかな寝息を立て眠っているようだ。
メルディアナ「あと二、三日もすれば快復するとおもうわ。よかったわね」
最後の一言は、士朗に向けられていた。
士朗「・・・何故俺に?」
士朗のもっともな疑問。それに、メルディアナはこう答えた。

メルディアナ「だって、貴方の彼女じゃないの」

士朗「んぐっ?!」
絵里香「ンンッ?!」
ブリット「ごふっ?!」
ほぼ同時のタイミングで喉を詰まらせる3人。
メルディアナ「あら、違うの?」
士朗「ごほっ、がはっ・・・・・違う」
咽せつつも何とかそう答える士朗。
メルディアナ「そう? にしては上手く運べてたわよね。それに、なかなかお似合いだったわよ。お世辞抜きで」
そう。士朗は女性パイロットを運ぶ時に一度も髪を踏まなかったのだ。
士朗「あれは、アンタが踏むなって言ったんだろ・・・・」
メルディアナ「でも、まさか本当に踏まないとは思わなかったわ」
士朗「・・・・・・」
メルディアナ「・・・あ、そうそう。ブルックリン・ラックフィールド君と獅堂絵里香さん。ちょっと時間いいかしら?」
ブリット「え、俺達ですか?」
メルディアナ「そう。ちょっち調べたいことがあるの。気になることがあるしね」
ブリット「俺は構わないですけど・・・俺達に一体何があるんです?」
メルディアナ「・・・ごめんなさい。今それを話す訳にはいかないの」
絵里香「・・・拒否権はあるんですか?」
メルディアナは黙って首を振る。
ブリット「・・・わかりました。行こう、絵里香」
部屋を出ようとするメルディアナ達に、
士朗「あの、看ておかなくていいんですか?」
メルディアナ「大丈夫よ。たいしたことはないって言ったでしょ? それとも、士朗君が看ておく?」
士朗「いや、俺は」
士朗は否定しようとしたが、
メルディアナ「あ、それナイスアイデアかも♪ じゃ、士朗君看病よろしく〜♪ ・・・襲ったりしちゃ駄目よ?」
士朗「・・・・誰が」
そんな言葉を残してメルディアナはブリット達を連れて医務室を立ち去り、
士朗「・・・・・・」
結局、士朗は眠っている女性の側に行くのだった。

30勇希晶&飛燕:2007/11/12(月) 21:30:28 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
=伊豆基地・医務室=
士朗「・・・・・・」
女性「・・・・・・」
眠っている女性と側でじっとしている士朗。
そして周りを沈黙という名の空間が支配する。
士朗「・・・・・」
ふと、士朗は女性の顔を見る。
魘される事もなく、リズミカルに呼吸を繰り返す女性。
腰まであろうかという長い髪は今は布団の中に入らないように広げられており、時折窓からはいる夕日に照らされて赤く輝いている。
そして、そのもとにある整った顔。
その様子は、とても綺麗で―――
士朗「・・・・何考えてるんだ俺は。」
士朗は頭を振り、窓の外を眺める。
先程から差し込んできている夕日に、目を細める。
士朗「―――」

一体何分そうしていただろうか。
女性「・・・ぅ・・・・・・」
士朗「?」
女性の上げたうめき声を聞き、士朗は女性の方へ目をやる。
女性「・・ぅぅ・・・・もう・・嫌ぁ・・・・ぁぅ・・・・」
女性は苦しそうに悶え、かけられた毛布をぎゅっと握り締めている。
その様子は明らかに彼女が悪夢を見ている事は一目瞭然だった。
女性「・・・・もう・・・ぉ・・・やぁめ・・てぇ・・」
頬を赤らめ、吐息を漏らし、全身で苦悶という言葉を表してる彼女は何処か「艶」を彩っていた。
士朗「魘されてるのか・・・?」
士朗は手近にあったタオルで女性の顔を拭こうと手を伸ばす。
手を伸ばした瞬間、彼女の口からか細く、だが確かに士朗の耳に届くだけの声量の呻き声が聞こえた。
女性「か・・・・か・・・・るは・・・」
士朗「?」
何を言っているかよく聞き取れなかったため、士朗は無防備にも自分の顔を近づける。
後から思ってみれば、何故そんな行動をとったのか意味不明であったが、何故かその時はそれが最良の行動のように思えた。
女性「ジャイアントネコメガエルが夕食なんて・・嫌ぁああああ!!」
なんとも意味不明な事をわめきながら、彼女は無意識の世界から覚醒した。
が、大きく目を見開いたところまでは良かったのだが、慌てて上体を起こしてしまったので咄嗟に目の前の誰かにぶつかりそうになった。
女性「えっ!?」
意識がまだ混濁していたので、それが何なのか認識する前に起こしかけた身体にブレーキをかけた。
が、余りにもそれは遅く、結局その何かに軽く衝突してしまった。
士朗「!!」
対する士朗も不意に勢いよく身を起こされたため、刹那の判断を怠り、その格好で硬直してしまった。
結果―――――――――――

31勇希晶&飛燕:2007/12/10(月) 22:42:21 HOST:softbank220063219079.bbtec.net



















一瞬の静寂の後・・・。
女性――“彼女”は目を瞑っていた。何かに顔からぶつかろうとしたのだから仕方がない。
咄嗟の判断で目をつむってしまったから何が起こったのか分からない。
分からないけど・・・何だろう。
唇に妙な感触の物が当たっている気がする。
だが、それを確認するのが怖くて目を開けられないでいる。
逆に士朗は何を言っているのか確認しようとしたこともあってか目を開いていた。
が、実際に起きていることに意識がついていっていなかった。
わかることと言えば、数mmもない距離に女性の顔があるという事実だけ。
更に言えば、何か唇に柔らかいものが触れている感触も感じていた。
一方、目を瞑ってばかりでは何も解決しないので恐る恐る・・・“彼女”はそっと目を開けた。
そして、後悔してしまった。
いや、後の話しでは精神的には嬉しかったそうだが・・・状況に困惑していた。
女性(イケメンな男性・・・)
あどけなさの残る顔だが、その瞳には猛禽類のような鋭さを秘めた少年が自分と口付けしてるからだ。
女性(WHY? 何故? 何でこんな嬉しい・・・否、ややこしい状況になってる?)

士朗の方もようやく意識が覚醒しはじめ、自分の置かれている状況を理解し出してきていた。
まず自分は目の前の女性と口づけ・・・、つまりはキスしているという事実・・・・・・自分の記憶が確かならばファーストキスを体験していること確認。
そして何故そういう状況になったのかも経緯だてて確認。
しかるのちにキスという行為の意味する所を思い出し、女性の表情を見るにあちらも予測出来ていなかった事態であることを類推。
そこでとるべき行動――女性の肩を軽く掴み、押す。無論不測の事態が起きた時に支えられるように力は抜いていない。
そうしてゆっくりとキスしている状態から女性の顔を引き離す。
ちゅ、と離れる際に互いの唇が小さな音を立てるのを聞いたとき、訳もわからず凄まじい羞恥が襲ってきたが、根性でねじ伏せ自分からも身を退く。
・・・後になって、この時はよく行動出来たものだ、と士朗は語ったという。

粘液と粘液が擦れ、離れる音が妙に“彼女”の耳にこびりついている。
今、頭の中では大量のやかんが沸騰してる事だろう。
湯気が立ち上らんばかりに顔は火照り、真っ赤になっている。
自分でも熱気を帯びている事は理解しているのだが、それを沈静したくても出来ないでいる。
単純に頭が熱処理限界(オーバーヒート)しきってしまい、混乱しているからだ。
その証拠に、
女性「あぁ・・・ぇ・・・んぁ・・・」
と、両方の頬を両手で覆いながら、呂律が回っていない自分をなんとか宥めようと
無意味な抵抗を士朗の目の前で延々と続けている。
しばらく、それを無言で見守る士朗と口をパクパクしている女性であったが、唐突に事態は風雲急を告げた。

ガタン!

大きな音がして二人は凄まじい瞬発力で一斉に医務室の入り口を見る。
そこには、

絵里香「えーと・・・」
ブリット「あー、その、ごゆっくり〜?」

検査から戻ってきたらしい二人の姿があった。

32勇希晶&飛燕:2008/04/08(火) 23:16:45 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
そして更なる闖入者がその存在を顕した。
???「ちょっとぉ・・・・今、いいとこなんだから邪魔しないの。めっ♪」
四人「「「「!?」」」」
思わず一斉に、部屋に居た2人の男女と入室してきた2人の男女は声のした方に振り向いた。
明らかに聞き覚えの無い第5の声がしたからだ。
尤も、ベッドの上の女性は怒ったような顔で振り向いたのだが。
???「ほら、真も・・・折角の良い男なんだから、キスしたついでに押し倒すくらいしなって! ××××するなり、○○○○を奪うなり、そのナイチチを使って■■■■するとか・・色々あるじゃない?」
何とまぁ、過激な発言だろうか。
天啓か神の悪戯か、伏字が入る程である。
その発言に、
士朗「・・・・・・・・」
士朗はただ呆け、
絵里香「だ、誰?!」
絵里香は突然の闖入者に驚きを隠せず、
ブリット「な、ななななな!?」
ブリットに至っては卑猥な単語の連発に顔を真っ赤にしてどもっている。
だが女性の様子は少し・・・いやかなり違っていた。
女性「・・あ・・ああああんたぁはぁ・・・・」

貧乳と言外にコンプレックスを指摘され怒りで顔を真っ赤にするのと、淫らな単語で羞恥させられるのと、さっきから顔が赤くなってばかりだが、幸か不幸かその時には既に士朗とのキスの事は頭の隅の方に追いやられていた。
歯を食い縛って、殴り掛かろうと“彼女”は立ち上がったつもり・・だったのだが、身体に力が入らず力余って仰け反って、ベッドに倒れてしまった。
女性「・・・く、ちから・・が・・・」
???「・・・病み上がりなんだから、大人しく寝てなさいよ。”我ながら”情けな〜い」
奇妙な言い回しを捨て台詞に、彼女は煙のようにその場からふっと消えてしまった。
これには3人共に、唖然としてしまった。
と、そこに更にその場を混乱させる人物が現れてしまった。
メルディアナ「ごめんなさい、待たせちゃった?」

33勇希晶&飛燕:2008/04/08(火) 23:17:39 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
女性「っ!・・う、動くな!」
未だに急に現れ、消えるように去った存在・・・いわゆる幽霊のような物に困惑していたので不意を突かれていた。
傍らの机上に置かれていた果物ナイフを素早く取ると、今し方接吻をした少年の頭を掴んで自分の方に引き寄せて、ブリット、絵里香、そしてメルディアナに対する
人質を取ったのである。
困惑した頭ではあるが、見知らぬ人間達に囲まれていては誰だって警戒はする。
そして、兵器に乗っていた兵士ともなれば尚更にである。

女性「妙な真似したら、こいつの首を切る!脅しじゃないよ!」

“彼女”は今にも噛み付かんばかりの勢いで捲くし立てたつもりだったが、どうも様子がおかしい。
というか、予想外の反応を示している。
先ず、金髪の男・・・ブリットは鼻血を噴き出しながら仰向けに倒れた。
次に、口元を押さえた少女・・・絵里香は顔を真っ赤にしてこっちを見てる。
最後に、遅れて入室してきた女医・・・メルディアナは、「大胆ねぇ」とこぼしてる。
ふと、何やら胸元が妙に温かい気がする。
と、いうか規則正しく、生温い微風が右胸・・・直に当たっているような感覚がある。
というか、バレーボール大ほどの大きさの暖かいものが、当たってるような気が・・・。


女性「・・・・・・・・・・・・・・・」


無言で、ナイフをそっとまだ周囲を牽制出来るレベルまで上に押しやりつつ、視線を降ろした。
軽くはだけた衣服の隙間から、銀色の髪が良く見える。というか、真下にある。
無論、頭をつかまれ不条理な理由で引き寄せられた士朗の頭部である。
付け加えるならば、彼にこんな度胸はないし、こんな方法を取る程に欲情していない。
不条理に引っ張った“彼女”自身が原因である。
段々と顔色は怒りの”赤”から羞恥の”紅”へと変わっていき、そして遂に爆発した。

女性「い・・いやぁあああああああああっ!!!!」

力いっぱい“彼女”は彼の頭を引っぺがした。
不条理に引っ張られ、不条理に突き飛ばされた彼の運命はこれだけに終わらず、不条理に抛られたものだから頭をしこたま床にぶつけてしまった。
ゴォン、と痛そうな音を立てて士朗の頭が床に落ちる。
絵里香「し、士朗?!」
咄嗟の出来事であったためか、ろくに受け身もとれないまま士朗の体は床に倒れる。
その光景をみて血相を変える絵里香と、
メルディアナ「・・・・・・なるほど」
何故か納得しているような興味深いような表情をしているメルディアナ。
そして、
女性「うあっ!? わ、わざとじゃないんだよ! だ、大丈夫かぃ!? あ、で・・・ででも、あああんたが悪いんだよ! 抵抗すりゃいいのに、じっとしてるのが・・・あわわ・・・」
回っていない呂律で混乱しながらそんな事を言う女性。
“そんな事を言われても、それを理解する前に頭を抛られて気絶したのだが”と意識があったら士朗はツッコムだろう。
が、生憎と理不尽な送られ方で無意識の世界へ招待されてるので、それは無理だった。

34勇希晶&飛燕:2008/04/08(火) 23:18:33 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
十分後、医務室にて。
メルディアナ「・・・事情は大体わかったわ。つまり気が動転していたのね? だからああ言う大胆な行動をとってしまったと」
半ば呆れた表情で簡潔に纏めるメルディアナ。
女性「・・・・ああ、そう・・・って。大胆な行動って・・それじゃまるで、わざとしたみたいじゃないか!?・・・・ああ、いい。何かまた余計に話しがこじれるから、それでいいよ」

一瞬、頷きかけたが、はぁっ!?と乱暴に聞き返さんばかりの勢いで、ベッドの上から身を乗り出した。
が、今の自分の状況を考慮すると、余り軽挙に事を起こすのは本意では無いので口を慎んだ。
そして高校生3人組はと言うと・・・。

絵里香「し、士朗・・・大丈夫?」
士朗「・・・正直にいうと辛い」
ブリット「見事な“ガッショウヒネリ”だったからなぁ・・・」
投げ飛ばされた士朗を心配する絵里香と、痛みが持続しているのか頭と首を押さえている士朗。
そしてブリットはマニアックな技の名前を出して感心していた。
・・・どうやら気絶から回復した際に遭遇していたらしい。

結果、五者五様の様子が展開されていてまさに混沌としていた。

メルディアナ「・・・で、話を戻すけど。あなたは自分がミスリルの所属で、乗っていたMSはM10と言うことを記憶している、でいいのね?」
女性「・・・・本来なら口にすべき事ではないとは思うんだけど・・・状況が状況・・・・だからね・・」

苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべつつ、女性は頷いた。
同時に、両方の二の腕を掴むような腕組みをしていたのだが、その掴む力が一段と強くなっている事から、話してしまった事を後悔しているのが窺える。
だが、彼女がこれから聞かされる答えは、苦々しくも話した彼女にとって、全く予想だにしない答えだった。
メルディアナ「ふぅん。でもそれっておかしくないかしら?」
真の所持品であったIDカードを指先で弄びながらメルディアナが問う。
メルディアナ「だって、今現在ミスリルの主力になってるのはM9<ブッシュネル>、そして今日士朗君達を助けた兵士が使ってたのはM9<ガーンズバック>。今のところこの二機が現在最新鋭のASなんだけど。その辺はどう説明してくれるのかしら?」
女性「・・・・・は?」

35勇希晶&飛燕:2008/04/08(火) 23:19:19 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
いったい何を寝ぼけた事を言っているのだろうか。
ガーンズバックはともかく、ブッシュネルは既に性能面から倉庫行きとされてるような骨董品である。
それが最新鋭アームスレイブ?・・・・今現在の最新鋭機は、自分が搭乗している機体・・・まぁ、少々改造はしているものの、それでも原型は残してる。
だから見間違えされる筈も無いハズ、だが。
彼女の口ぶりからして、”ハッパ”をかけてる・・・ブラフかもしれぬが、果たして現状況下において、自分に嘘などついて何か得する事があるだろうか。
しばらく考え込むように口元に手をあてていた彼女は、じろりとメルディアナを一瞥してから尋ねた。

女性「・・・妙な事を聞くけど・・・それ、何年前の話しだい?」
その一言を聞いて、メルディアナはある一つの結論を確信した。
他でもない、自分自身にも似たような経験があったからだ。
だが、今それを出す訳には行かない。
メルディアナ「何年前って、今現在リアルにナウな話よ?」
そして、その確信を真に認識させるために言葉を紡ぐ。
メルディアナ「ついでに言えば、M10なんて機体形式は“どこにも存在していない”わ。それに、“ミスリルに所属する泰山真”なんて人物もね。」
真「っ!?・・・・・」

途端、彼女もまた理解をした。
かつて、平行世界から来訪してきたペルソナ使いの”先輩”が同じ事をした。
その先輩は世界を破滅に陥れるために現れた邪神とその計画を潰すために自分達の世界に来たと・・・。
そして、彼は似たようで似ていない世界だと自分達の世界を言っていた。
さて・・・それが頭に浮かぶほどにデジャブを感じた点、更にメルディアナの言葉からつむぎ出された点、それらを繋ぐとある一つの結論に至る。
だが、果たしてそんな可能性あるのだろうか?・・・いや過去、既に自分は異世界からの来訪者達と共闘したではないか・・・その世界に向かう事もあったし、此方の世界に着て貰う事もあった。
前例が必要以上にある以上、否定要素が見当たらないのなら大人しく結論を受け入れるべきだ。
だが・・・問題は、だ。
真「・・・・・・・・・・・」

周囲を見回してみて、改めて真は考える。
果たして、今この状況で口にして信じてくれるだろうか。
そこが問題点だ。普通に考えて、そんな突拍子も無い話しを信じてくれるだろうか。
存在しないASだけでも証拠に足り得るかもしれないが、自力で作ったとでも言われたらオシマイだ。ならば、ペルソナ能力・・・いや、こちらの世界にもペルソナ使いは居るかもしれないからこれも没だ。
但し・・・何も否定要素ばかりではない。
ちらり、と真はメルディアナに視線を奔らせた。
メルディアナ「?」
しかしメルディアナはこちらの出方をうかがっているようだ。
真「・・・・・・」

36勇希晶&飛燕:2008/04/08(火) 23:19:57 HOST:softbank220063219079.bbtec.net

何故、このタイミングで彼女はそんな事を述べた?
視線を自分の膝元に戻すと、考え直す。
嘘つくならもっとマシなのを言え、とでも言えばいいのに何故に、あんな回りくどい言い方をした。
それではまるで、彼女が同じ体験をした事に・・・。
ハッと、弾かれたかのようにメルディアナの方へと振り向くのにさしたる時間もかからなかった。
彼女もまた、”気付いた”のである。
メルディアナ「どうしたの? 何も言い返せないのかしら」
だがメルディアナは、それに気付くような素振りを一切見せず、真に先を促してくる。
真「・・・・そういう・・・事かい?」

誰に聞かせるでもなく、ぼそりと真は呟いた。

真「・・・ああ、言い返せないね。あたしが”この世界に存在しない”と言われたのならね?」

肩をすくめつつも、わざとその部分を強調しながらメルディアナの出方を待った。
メルディアナ「・・・気付いたみたいね。つまりは」
メルディアナがそう言いかけた時、第6の人物がその場に現れた。
テン「あー、メルさん、今ちょっといい?」
メルディアナ「・・・どうしたのよ?」
テン「や、テッサから連絡が入ってるだけど。しかも至急で」
瞬間、メルディアナと真、二人の雰囲気が変わる。
真「・・・・あたしも同席・・・してもいいかね?」

メルディアナに訊ねるその声色は、明らかに嫌でもついていくと言わんばかりの鬼気迫るものがある。
入室早々、彼女の気に当てられたテンが小さく悲鳴を上げたり、ブリットや士朗の顔付きが険しくなったが、向けられてる当人であるメルディアナは到って平然としている。
ちなみに、絵里香はこれに気付いていないらしく皆の雰囲気に小首を傾げるばかりである。
メルディアナ「駄目だ、と言っても聞いてくれそうにないわね?」
真の様子に、軽く溜息をつくメルディアナ。
メルディアナ「一応聞いてみるけど、駄目だって言われたら許可する訳にはいかないから」

真「その時は、監視つけるなり脳天に銃口つきつけるなり、何時でも”始末”出来るようにすりゃいいさ・・・・見たところそれくらいの権限くらいはあるだろ?自分の部下も持ってるようだしさ?」

かなり物騒な事を言ってるが、決して彼女が自殺志願に目覚めたからではない。
そこまですれば、別についていって問題も無いだろう。むしろ、存在しない人間なのだから消しても問題は無い。
残るは最新技術を導入したM9正式後継機が1体だけ・・・逆らえば、差し出すよ、と口にしたも同然である。
そこまでの覚悟があるのならば、何と言っても無駄だと相手に悟らせる必要がある。
真自身が事の真偽を確かめるためにも、ここは退けない。
尤も、目の前の女性にそこまで手札を切る必要も無いと、真は踏んでいるが。

メルディアナ「冗談よ。そんな怖い顔をしないで、ね?」
思い詰めたような表情で物騒なことを口走る真に苦笑するメルディアナ。
メルディアナ「心配しなくてもあなたも同席させるわよ。無論、監視とかは無しで。それでいいのよね?」

真「・・何だい。話しがわかるじゃないか・・・・思ったよりも、柔らかい頭みたいだね?」

砕けた言い方からして、少しだけ真がメルディアナに心を許したようである。
また、結果的にだが、これで双方共に納得のいく「正解」が拝めるようである。
尤も、それが果たして良い結果に転ぶかその逆かは当人達もまだ知る由も無かった。

37勇希晶:2008/07/15(火) 23:04:20 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
=通信室=
真がメルディアナに案内されて通された場所は、予想していたのとは違い通信用の機械と送受像器が置かれただけの簡素な一室だった。
テッサから至急の連絡がくるほどだから、ご大層なものが備え付けられているだろうと思っていたから、真は正直拍子抜けしていた。
メルディアナ「はぁい、テッサ♪」
画面に写る銀髪を片編みにしたの少女に、メルディアナは軽く挨拶をする。
テッサ「こんにちは、メルディアナさん。わざわざすみません」
幾分硬い表情ながらも微笑むテッサと呼ばれた少女。
メルディアナ「いいのよ。こっちも渡りに舟だったし。で、どうしたの。至急なんて何かあった?」
テッサ「ええ。・・・≪剣≫が奪われました」
簡潔だが厳しい表情で告げられた事実に、メルディアナの顔色が変わる。
メルディアナ「どういう・・・こと?」
テッサ「迂闊でした。完全にこちらの作戦ミスです」
癖なのか、編んだ髪を口元に持っていくテッサ。
テッサ「奇襲に対する備えも万全を期していたはずなのに・・・」
メルディアナ「・・・後悔はいつでもできるわ、テッサ。それよりも被害はどうなの?」
テッサ「輸送機が3機、ヘリが2機、護衛用のM6<ブッシュネル>5機。それと移動用車両が10台。全て破壊されました」
メルディアナ「・・・、あの子達は?」
テッサ「かろうじて“弓”と“魔女”だけは」
メルディアナ「てことは、“槍”“死神”“蛇”“狂戦士”“双子”が奪われたのね?」
テッサ「・・・すみません。信頼に応えることができなくて・・・」
メルディアナ「気にしない気にしない。奪われたものはまた取り返せばいいだけの話でしょう? それよりも“弓”と“魔女”の移送を急いで頂戴」
目に見えて落ち込むテッサに激励の言葉をかけるメルディアナ。
テッサ「もちろんです。“弓”と“魔女”は必ず其方に送り届けます」
メルディアナ「期待してるわ。ところで、こっちからもいいかしら? ちょっと厄介なコトが起きてるみたいなのよ」
テッサ「厄介なことですか?」
メルディアナ「ええ。ちょっと調べて欲しい人がいるの。今私の後ろにいる彼女のことなんだけど」
メルディアナに促されて真は口を開く。
真「初めまして、でいいのかい? あたしはミスリル作戦部西太平洋戦隊陸戦コマンドBRT(戦闘対応班)所属泰山真軍曹。コールサインは「FF(フリーダム・フォックス)」。実は頼みたいことがあるんだ」
テッサ「ミスリル作戦部西太平洋戦隊陸戦コマンドBRT所属・・・ですか?」
真「ああ。さっきから後ろにいる女があたしがミスリルに存在しないっていうんだよ。おかしいだろ? だって宗介や少佐と一緒に」
テッサ「ちょっと待って下さい」

38勇希晶:2008/07/15(火) 23:05:58 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
文句を言いつのろうとした真を制し、真面目な顔でテッサが問う。
テッサ「あなたはミスリル作戦部西太平洋戦隊陸戦コマンドBRT所属、といいましたね?」
真「ああ、そうだけど」
テッサ「その名が付く部隊は存在してませんよ?」

は・・・?

真は一瞬頭が真っ白になったが、すぐさま状況を整理する。
真「ま、待ってくれよ。確かにあたしは」
テッサ「確かに、西太平洋戦隊陸戦コマンド部隊は存在していますが、その人員に女性は一人しか存在していません」
今度こそ言葉を失う真。
テッサ「あなたは誰ですか。場合によってはしかるべき措置をとらせて頂きます」
真剣な表情で問いをぶつけるテッサ。仕方のないことだろう。ミスリルとは表に出ることのない裏の組織である。
そのミスリルの所属だと言われ、更には存在しない部隊名もあげられたのだ。
荒唐無稽で支離滅裂な部隊名ならば笑い飛ばすこともできたであろう。
しかし、実際に存在する部隊名を挙げられ、そこに所属する人員の名まで言われたのだ。
真「ちょっと待っておくれよ。確かにあたしは」
文句を言いつのろうとして、真は自分の置かれた状況に気がつく。
先程のメルディアナとの会話、その内容から察するにおそらくここは自分が居た世界とは違う世界なのだろう。
見知っている顔に再会したからかその事を忘れかけていたが、不用意な発言や行動は徒に自分の立場を危うくさせるだけだ。
真「・・・いや、すまないね。ちぃと混乱してたみたいだよ」
テッサ「では、改めて私の問いに答えてこれますか。あなたは何者で、何故私の前でミスリルの名を騙ったのですか」
さて、どうしたものかと真は考える。
ここで失敗すれば次はないだろう。従って適当な答えを返す訳にはいかない。
だからといって有効な答えがある訳でもなく――――いや、あった。
おそらく彼女が、というか世界中の全女性が個人的に秘匿しているであろう情報が。人のプライヴェートを暴露するのは気が進まないが・・・。
しかしいきなり核心をつく訳にも行かないので、まずは外堀から埋めていく。
真「幾つか質問がある。今、ダ・・・いや、トイ・ボックスの中かい?」
テッサ「その質問に答える義務はありません」
真「冷たいねぇ。まあ、状況が状況だしそういいたくなるのもわかるけどさ。ここは答えてくれないかい?」
答えてくれなければ答えない、と言外に含ませる。こういった芸当はどちらかといえば苦手だがやるしかない。
テッサ「・・・・・・いいでしょう。そうしないとあなたは答えてくれそうもありませんから」
真「ありがと。じゃあ、改めて。今トイ・ボックスの中にいる。これは間違いないね?」
テッサ「・・・ええ」
真「あんたはテレサ・テスタロッサ。階級は大佐。トイ・ボックスの艦長でミスリル作戦部西太平洋戦隊のトップ。間違いはないかい?」
テッサ「・・・・・・」
真「沈黙はYESと受け取らせてもらうよ。あんたがあたしの知ってるテッサと同じだとするなら、スリーサイズは上から―――」

39勇希晶:2008/07/15(火) 23:07:24 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
=医務室=
ところ変わって、医務室。
大分痛みや諸々が収まってきた士朗は、軽く首を振ると、
士朗「お・・・っと」
立ち上がりかけてそのままベッドに腰掛けた。
結構鍛えてきたつもりだったが、まだまだらしい。
ブリット「おい士朗、大丈夫か?」
士朗「ああ、なんとかな・・・と言いたいがまだ修行が足りないみたいだ」
不意に投げられた(?)とはいえ、受け身の一つもとれなかったのは確かに拙い。
現に、二人が検査に出かけてから目覚めるまでの記憶がない。これが当たり障りのない記憶だったらいいが、万が一重要な記憶だったら目も当てられない。
士朗「ところで、何故俺はこんなことになってるんだ?」
絵里香「何故って・・・士朗覚えてないの?」
士朗「床にたたきつけられたのは覚えているんだが・・・」
士朗には珍しく歯切れの悪い口調で頷く。
絵里香「あ〜・・・うん。どうしよう、ブリット?」
ブリット「俺に聞かないでくれ」
何故か困ったような顔でブリットにふる絵里香と、同じく困ったように嘆息するブリット。
結局、黙っていてもいずれわかることだろうと言うことで二人は士朗に顛末を話すことにした。
と言っても、行為そのものを目撃した訳ではないので、肝心要のところは推測に止めておかざるを得なかったのだが。
そして大方話しあった所で、メルディアナ達が戻ってきた。
メルディアナ「さて、みんな揃ってるわよね。真は一応ベッドに戻って頂戴」
そう言ってメルディアナは真をベッドに座らせ、話し始める。
メルディアナ「単刀直入に結論から言うわね。神崎士朗君。獅堂絵里香さん。ブルックリン・ラックフィールド君。貴方達三人は『ミスリル』の監視下におかれることが決まったわ」
その決断に、三人が息を呑む。
メルディアナ「泰山真さん。もう既に彼女は知ってるだろうけど、彼女は『ミスリル』に所属することを認められたわ」
当然、といった感じの真。
メルディアナ「そして、彼女が貴方達の監視係に決まったわ」
そこでメルディアナは一旦言葉を切る。
メルディアナ「最後に貴方達の処遇だけど、基本的には今まで通りの生活に戻れるわ。ただし、三人のうち誰かの家に彼女をおいてくれない? 
           一応監視係って名目上、誰かと行動を共にしていた方がいいのよ。」
確かに、監視係と言っておいて近くにいないのはおかしい。
だからといって新たに部屋を取るには色々な問題が起きてきてややこしくなる。
現実問題、真はこの世界の人間ではない。
パラレルワールド、いわゆる平行世界の住人だ。
それ故、この世界に戸籍など有る訳もなく、彼女名義で部屋を借りるのは無理だ。
メルディアナの名義で借りてもいいが、そうなると他人にいらぬ好奇心を与えてしまい、真の戸籍がないことがばれるとも限らない。
結局、誰かの家に間借りしておいた方が都合がいいのだ。色々と。
女性である絵里香のところに居候できるのが最善だが、そう上手く行くかはわからない。
二人がそういう類で無いことは薄々感じ取れるが、用心するに越したことはない。
メルディアナ「私としては、絵里香さんのところに居候してくれると助かるんだけど・・・」
ちらりと絵里香の方に視線をやるメルディアナ。
絵里香は少し悩んでいたようだが、やはり男と女が一つ屋根の下というのに抵抗があったのか、了承した。
真にも確認をとり、了承を得た。年下とはいえ、やはり男とは遠慮したかったようだ。
・・・最も、片方に対しては別の意味もあったようだが。

40勇希晶:2008/07/15(火) 23:08:34 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
メルディアナ「それじゃ、話も纏まった所で改めて自己紹介でもしましょうか。私はメルディアナ・バンディ。科学者兼開発者兼医者よ」
ここにいたって、お互いがお互いの素性を知らぬまま会話していたことに気付く高校生三人組。
巻き込まれた状況の整理に一杯だったのと、あまりにメルディアナが自然に話す為、気付くことがなかったのだ。
士朗「・・・そういえば、何故俺達の名前を知っているんだ」
メルディアナ「テンから聞いたのよ」
所在なさげに斜め後ろに立っていたテンを指すメルディアナ。
一瞬、誰だかわからないといった表情をする絵里香。
絵里香「・・・誰?」
テン「酷ぇ?! ほら一応自己紹介したじゃん、俺!」
ブリット「・・・ああ! あのばかデカイトラックの運転手さん!」
ポン、と手を付き納得するブリットと、まるで今そこにいるのに気付いたと言わんばかりの士朗の態度に、テンは項垂れる
テン「JTO」
メルディアナ「テンは既に紹介済みだったのね。じゃあ無視するとして」
無視するなよ!? というツッコミが聞こえてきたが、総員無視して自己紹介を終わらせる。
メルディアナ「ふぅん。本当に高校生みたいね・・・」
士朗「まさか疑ってたのか・・・いえ、疑ってたんですか」
メルディアナ「あ、そういう訳じゃないのよ。ただ、お約束すぎるってね」
絵里香「確かに、漫画とかに有るような展開ですね。テンプレ・・・でしたっけ?」
メルディアナ「そうそう。ところで、士朗君。あなたその無愛想どうにかならない?」
士朗「・・・どうしろと?」
メルディアナ「・・・ごめんね。いい案が思いつかないわ」
強い口調の士朗に対し、軽く頬を書きつつ謝罪するメルディアナ。
士朗「いえ」
メルディアナ「この後だけど、どうするの。もし帰るのなら、テンに送らせるけど」
ちら、と見やった時計は既に午後8時を回っていた。
士朗「俺のところは断りさえいれれば外泊OKです」
ブリット「俺のところも大体同じです」
絵里香「私は一人暮らしなんで、特に問題はないです」
メルディアナ「そう、じゃあ、泊まっていく? お世辞にも広いとは言えないけど」
士朗「お世話になります」
こうして、波乱の一日は幕を閉じる―――筈がなかった。

41勇希晶:2008/07/15(火) 23:11:10 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
テン「なあ、士朗って言ったっけ。ちょっと聞きたいんだけど、いいか?」
士朗「構わないが・・・」
唐突なテンの物言いにやや戸惑いながらも士朗は返す。
そして、本日2発目の爆弾が投下されました。


テン「士朗と真さんってさ、付き合ってるとかそういう訳じゃないよな?」


真「は?」
何を言ってるんだこいつは、と言う視線を向ける真と、またその質問かと微妙に沈む士朗。


テン「や、さっきとか結構お似合いだったから。王子様とお姫様って感じで」
真「・・・ちょっと待った。“王子様とお姫様”ってどういう事だい?」
テンの言い回しに、嫌なようなそうでもないような不思議な予感を感じた真。
テン「どういう事って、そのままの意味だけど」
テンの言おうとしていることを感じ取り、メルディアナが笑みを浮かべる。
メルディアナ「そうね。真だったっけ? 貴女気絶してからここに運ばれるまでの記憶はある?」
真「んなもんあるわけないだろ。」
メルディアナ「あら。それは残念ね。」
真「何がなんだよ。」
イライラとした様子の真。
メルディアナ「そうよね。アレはある意味女性の夢だものね。それを憶えてないなんて、本当に残念。」
だが、メルディアナはそれに気付く様子もない。
真「ああもう! 一体何だって言うんだい! はっきりと言いな!」
真がついにキレた。
メルディアナ「じゃあ、はっきりと言うわよ。」
真「ああ、はっきりと言って貰おうじゃないか!」
なぜかそこでニッコリするメルディアナ。
メルディアナ「貴女をここまで運んだのは士朗君よ。」
真「それがどうしたって言うんだい!」
メルディアナ「その時、どうやって運んだか分かる?」
真「そんなの、簡単にわかる・・・・・」
そこまで言って、何故か語尾が急速に勢いを失う真。
メルディアナ「ズバリ、士朗君が貴女を抱きかかえて運んだのよ。」
真「・・・・・ど、どういう風に・・・?」
最初の勢いは何処に行ったのか、蚊の鳴くような声で呟く真。
その様子を見て、メルディアナは何かを確信したような笑顔になり、
メルディアナ「お姫様抱っこ♪」
メルディアナガそう告げた瞬間、
真「(ボフッ!)」
まるで擬音が聞こえてきそうな勢いで真の顔が真っ赤に染まった。
メルディアナ「あら、どうしたの? 顔が赤いみたいだけど、熱でもある?」
真「っ、な、なんでもないよ!」
そう言って、真は掛け布団を勢いよく被り、布団の中に潜り込んでしまう。
メルディアナ「本当に大丈夫? きちんと熱を計った方が」
真「大丈夫だって言ってるだろ!!」
メルディアナ「そう、ならいいんだけど・・・」
心配そうな口調だが、顔は笑っており、完全に笑いを殺し切れてない為説得力がない。
真「・・・っ、あたしは少し寝る!」
そう強く言い放ち、メルディアナや士朗達に背を向ける真。
後には、
テン「・・・え、マジ?」
そうあっけにとられた様子で呟くテンと、
メルディアナ「ウフフ・・・・♪」
格好の遊び道具を見つけた子供のような笑顔で微笑むメルディアナ、
絵里香「・・・真さん、可愛い♪」
年上の女性の初な一面を見せられて好感を抱いた絵里香、
士朗「・・・・・・・?」
そして、士朗は真の行動に理解が出来ていなかった。

42勇希晶:2008/08/23(土) 11:40:13 HOST:p2141-ipbfp905fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
〜次回予告(に見せかけたフリースペース?)〜


士朗「とりあえず・・・・なんとか、無事に終了したな」
真「士朗、済まないけどちょいと用事を思い出したよ。なに、すぐ戻ってくるつもりだから気にしないでおくれ」
絵里香「あれ、真さん?」
メルディアナ「放っておきなさい。それよりもとっとと進めるわよ」
テン「・・・なんか背後でものすごい打撃音と悲鳴が聞こえるんですけど・・・」
士朗「・・・察しろ。今は邪魔をしないほうがいい」
テン「・・・ういっす」(汗

メルディアナ「さて、ようやく一話が終わったわけだけど、感想とかある?」
士朗「特にはないです」
絵里香「私もです」
テン「俺は出れただけでいいっす。むやみに厄介事に巻き込まれるよりはずっと平和なんで」
(一同、沈黙。)
テン「・・・あれ、どうしたんすか?」
士朗「・・・頑張れ」
絵里香「あ、あはは・・・」
メルディアナ「流石ね・・・自分からなんて・・・」
テン「おーい、なんかものすっげぇいやな予感がするんですけどー?」

メルディアナ「まあ、感想はこれくらいで。次回『Super Robot Wars Another Story〜DoLL〜』略して『DoLL』!」
士朗「俺たちがセイバー達と出会っているそのとき、宇宙ではもう一つの事件が起きていた」
絵里香「月より新型PTを輸送していたマオ社の輸送機と、テスラ・ライヒ研究所から飛び立った輸送機が何者かの襲撃を受ける」
テン「ええっと・・・。“蜉蝣”と“修羅の双星”を相手に、はたして彼らは生き延びられるのか?!」
メルディアナ「そして“赤い彗星”と“白い悪魔”までもが邂逅を果たす・・・」
真「次回『DoLL』第二話、『Vanishing Trooper』! 乞う(?)ご期待!」

43勇希晶:2008/08/27(水) 23:23:30 HOST:p2141-ipbfp905fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
=地球近海・タウゼントフェスラー操縦室=
地球近海、月と地球の丁度中間辺りの宙域に、月のマオ社から発進したタウゼントフェスラーがあった。
少年「こちらタウンゼントフェスラー9。L5コロニー宙域到達まであと0100。順調に航行中です」
操縦席に座っている少年がスイッチを切り、定時連絡を終える。
少年「・・・どうしてこんなに定時連絡の回数が多いのかな・・・?
     やっぱり、僕じゃ頼りないのかな・・・」
自信なさげに呟く少年に、隣席の少女がハッパをかける。
少女「何言ってるの。あなたはこの輸送機の機長なのよ。もっと自信持たなきゃ!」
少年「う、うん・・・」
少女の語気に些か気圧されながら、
少年「でも、1年ちょっとの訓練で輸送機のパイロットになれただけでも良かったかも・・・」
と弱気な返事を返す少年。その心中では、様々な思いが渦巻いていた。
(でも、よく考えてみれば変だな。実家の道場を継ぐのが嫌でマオ・インダストリーに入社したけど、たった1年で輸送機とはいえ、正規のパイロットに任命されるなんて・・・。
 それに、訓練生同然の僕達をいきなり輸送機のパイロットにした理由もわからない・・・)
決して偶然などではなく、かといって特に目をかけられるようなことをした覚えもない。
考えられるとすれば、誰かが故意に手をまわしたことになるが・・・。
少女「どうしたの? 難しい顔で黙り込んで・・・」
覗き込んでくる少女の顔に、少年は思考の渦から脱出する。
少年「どうして僕達が今回の仕事に選ばれたのか考えていたんだ」
少女「そうね…いくら私が重役の娘だからって、こんな重要な仕事をどうして私達が・・・?」
少年(・・・・・・・・・)
それも疑問のひとつ。彼女――リオ・メイロンは、少年――氷川諒斗(ひかわ りょうと)が所属する月の企業、マオ・インダストリー常務ユアン・メイロンの娘なのだ。
いくら彼女が特別扱いを嫌うからとはいえ、入社一年ほどの新米と一緒に地球のテスラ・ライヒ研究所へのパーソナルトルーパー(略してPT)の輸送業務を任せるだろうか?
リョウト(やっぱり、誰かが・・・)
再び思考の渦に落ち込みかけた諒斗だったが、リオの楽しそうな声を聞いて我に帰った
リオ「そうだ、この仕事が終わったら、“2人で”どこかへ旅行へ行かない?」
彼女からの思わぬ提案。それに対し少年は特に予定もないので了承した。
・・・彼女があえて強調した部分には気づかずに。
リョウト「それはいい考えだと思うけど・・・」
リオ「じゃ、私行き先を考えておくわ」
リョウト「駄目だよ。まだ仕事中だし、気を抜くのは早いよ。今回の積荷は色々と曰くありげだから」
リオ「・・・そうね。あなたの言うとおりだわ」
気が早いと諌める諒斗と、少し残念そうなリオ。
リョウト「とりあえず、念のために積み荷の確認をしてくるよ。話をしてたら何か気になってきた」
そう言い、操縦室を出て行こうとするリョウトに、リオは不安げに話しかける。
リオ「リョウト君、私、聞いたの・・・。今回の積み荷の噂を・・・」
リョウト「ああ、バニシング・トルーパーのことだね」
リオ女「形式番号にRがつくパーソナルトルーパーには謎の技術が組み込まれていて、不吉な事件がよく起こるって・・・」
リョウト「R・・・? そういえば、積み荷の形式番号はRTX−010だったね」
リオ「テクネチウム基地の消滅事件・・・1号機のブラックホールエンジンの暴走が原因だって父様から聞いたわ・・・」
リョウト「そんな噂、一々気にしていたらしていたらしょうがないよ。じゃあ、格納庫に行って来るよ」
リオ「わかったわ・・・気をつけてね」
リョウトはリオの心配そうな視線を受けて、操縦室を出て行った。
リオ(リョウト君・・・)
リョウトの身を案じながら、リオはしばらく計器類と睨めっこしていたが、ふと計器類がいつもと違う様子を示していることに気付く。
リオ「・・・・・・おかしいわ。どうしてこんなところで通信妨害のジャミング電波が・・・・・・?」

44勇希晶:2008/08/27(水) 23:24:45 HOST:p2141-ipbfp905fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
=地球近海・タウゼントフェスラー格納庫=
格納庫に到着したリョウトは、目的であるPTX−010――機体名ヒュッケバインmk−Ⅱに向かいながら独りごちる。
リョウト「バニシング・トルーパー、ヒュッケバインの2号機か・・・。リオが言うとおり厄介な積み荷だな。・・・けど、どうして本社はこんなものを僕達だけで輸送するような命令を出したんだろう?
     新型の人型機動兵器なのに行き先は軍じゃなく、北米のテスラ・ライヒ研究所だし。一体何が目的で・・・」
思索を巡らせるリョウトだったが、ふと個人的な問題が頭をよぎる。
リョウト「それよりも、テスラ研って事は彼女もいるんだろうな・・・・。」
緩やかなウェーブを描く金髪を持つ科学者。
何かと彼にちょっかいを掛けてくる彼女が、彼は苦手だった。
リョウト「はあ・・・・・・」
苦労を思うと、知らず溜息が出る。
リョウト「あれ?」
PTX−010のところまで辿り着いたリョウトは、ちょっとした異変に気がついた。
リョウト「コクピットハッチが開いてる。出航時に確かめたのにな・・・」
怪訝に思い、コクピットハッチをのぞき込もうとした時。タウゼントフェスラーが強い衝撃を受けた。
リョウト「うわあっ! な、何なの?!」
リョウトはすぐさま操縦室と通信をとろうとする。
リョウト「どうしたの、リオ!! 何があったの?!」
振動音から爆発、つまり攻撃を受けたと判断したリョウトだったが、通信機からはノイズが聞こえてくるだけ。
リョウト「・・・っ、そうだ! ヒュッケバインmk−Ⅱの通信機なら・・・!」
リョウトはすぐさまヒュッケバインmk−Ⅱのコクピットに飛び降りる。
リョウト「え・・・? 何で機体がアイドリング状態なんだ? 勝手に起動した・・・?」
不可解な点は多々あれど、先ずは当初の目的を果たすべく通信装置に手を伸ばし、起動させる。
リョウト「リオ! 応答して!! 何があったの!?」
しかし、
リオ「・・・ジ・・・MS・・・・・・輸送機を・・・・・・・脱出・・・・・・」
リョウト「雑音が酷くて聞き取れないよ! もう一度言ってくれないか?!」
そう答えた瞬間、一際大きい爆発音が響いた。
リョウト「うあっ!! 直撃!?」




第二話「Vanishing Trooper」





=地球近海・暗礁宙域=
タウゼントフェスラーから弾き飛ばされるようにヒュッケバインmk−Ⅱが宇宙に飛び出した。
リョウト「ううっ・・・・・」
衝撃と放出によるGで、一瞬気絶していたリョウトだったが、直ぐに気がついた。
リョウト「くっ・・・・タウゼントフェスラーは、輸送機は無事なの?!」
すぐさまコクピットの計器類を操作してタウゼントフェスラーの反応を確かめる。
しかし・・・
リョウト「反応がない・・・・? まさか、そんな馬鹿な・・・・・・!!」
何度も確かめるが、計器類は全て同じ結果を示すだけだった。
リョウト「リオ、返事してよっ! 返事してくれよぉっ!!」
先程まで普通に話していた少女・・・その存在が消え去ったことに、激しく動揺するリョウト。
そんな彼の視界の端に、見慣れぬ機影が映った。
リョウト「何だ・・・? 識別は・・・不可能?!」
連邦軍はおろか、エアロゲイターの識別コードでもない機体。
???「テメェか・・・!」
リョウト「え?!」
不意に通信が開かれたことにうろたえるリョウト。
???「テメェが輸送機をっ・・・・・・!!」
リョウト「輸送機・・・・・?」
???2「しらばっくれても無駄や!」
???「ああ、そうだ! 行くぜ、アーチャー!」
???3『ふん、了解だ』
左手のマシンガンを此方に向ける謎の機動兵器。
見たところこちらよりも若干大型で複座型のようだが、それはこの際問題ではない。
口調からして、どうやらこちらを敵と認識しているようだ。
リョウト「・・・っ、仕掛けてくる?! やるしかないの?!
     まだPTを動かしたことはないのに・・・・・! マニュアルは何処?!」
必死でマニュアルを探すリョウトの頭の中に、突然何かが閃いた。
リョウト「な、何?! 頭の中に・・・操縦方法の情報が流れてくる!?」
驚いている間にも、まるで真綿が水を吸い込むようにリョウトの頭の中に情報が流れ込んでくる。
リョウト「よ、よし! 行けるぞ! こんな所でやられてたまるもんか!!」
かくて、ヒュッケバインmk−Ⅱと謎の機動兵器との戦いが始まった・・・・・・

45勇希晶:2008/08/27(水) 23:26:25 HOST:p2141-ipbfp905fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
時は少しさかのぼる・・・・・

=地球近海・タウゼントフェスラー内=
地球近海、月と地球の丁度中間辺りの宙域に、地球のテスラ・ライヒ研究所から発進したタウゼントフェスラーがあった。
女性「・・・よし、航路設定終わりっと。そちらはどうですか?」
女性B「こちらも問題ないです。周囲にデブリ、機影などは見あたりません」
テキパキとした仕草で計器を弄っていた女性達がそう呟く。
少年「お、もう終わったんスか?」
その様子を後ろから見ていた少年から声がかかる。
女性「ええ。後は自動操縦でマオ社まで行けます」
少年「流石ですね。科学者は伊達じゃない、ですか?」
そう言う少年に対して、
女性「驕るつもりはありませんよ」
と自信満々の様子で答える金髪の女性。
女性B「・・・そうだ、エレキ。これが終わったら久しぶりに出かけない?」
少年「出かけるって、何処へ?」
今度はオレンジ色の髪をした女性から問いかけられる。
女性B「ん〜、映画館とかどう?」
折角の女性からの誘いだったが、
少年「あ〜パス。俺みたい映画とかねぇから」
と少年は無碍に断る。
女性B「何よ、つれないわね」
少し膨れる女性だったが、少年は淡々と返す。
女性「そうですよ。折角のお誘いなんですから、受ければいいじゃないですか」
もう一人のほうの女性も非難の声を上げる。
少年「映画見たきゃ勇希さんと行けばいいじゃん」
女性B「それじゃ駄目なんよ。ウチは・・・」
と唐突に口ごもる女性B。
少年「なんだよ」
女性B「な、なんでもあらへん」
慌てた様子で手を振り誤魔化す彼女に少年――神崎影二は?マークを浮かべたが、すぐに何かを思いついたように手を打った。
影二「なあ彩葉(いろは)、後は何もすることねぇんだろ?」
彩葉「ええ。周囲に異常もないし計器類も順調。考えられるのはデブリの接近かニアミスくらい」
勇希「つまり、後は寝てるだけで自動的につくということです。誘導も向こうでしてくれるでしょうし」
そう微笑みながら返す彩葉と勇希。
影二「ならさ、ゲームしねぇ?」
彩葉「ゲーム?」
影二「そ。実は俺トランプ持ってきてるんだ♪」
そう言いながら少年は何処から取り出したのか、器用にトランプを扇状に広げてみせる。
勇希「あらあら。影二君、そんな物持ち込んでたんですか?」
彩葉「全く、遠足か何かと勘違いしてるんじゃないでしょうね?」
影二「いいじゃんいいじゃん。で、どうする?」
苦笑を返す勇希と呆れ顔の笑みを返す彩葉に対し、人懐っこい笑みを浮かべるエレキ。
彩葉「もちろん!」
勇希「私も同意したいところですけど、一応格納庫の方見てきてくれますか?」
影二「どうしてです?」
勇希「なんか、嫌な予感がするんです」
微妙に表情を曇らせる勇希。
影二「嫌な予感って?」
勇希「わかりません。でも、状況からして不自然じゃないでしょうか。
   いくら私がDoLLに近い人間だって言っても、護衛が実質一人だけなんて・・・」
影二「俺じゃ不満ッスか?」
勇希「そんなことはありませんよ。ですが、結局ジオンとの戦争も有耶無耶になり、いまだ緊迫した状況は続いています。
   そんな状況だったら、護衛は多いに越したことはないですしね」
彩葉「確かに。いくら武装がついてるって言っても殆どお飾りだし・・・・・」
一応、タウゼントフェスラーにも機銃やミサイルは装備されている。
しかし、それは本当に申し訳程度の武装でしかないのだ。

46勇希晶:2008/08/27(水) 23:28:11 HOST:p2141-ipbfp905fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
影二「・・・やっぱり確認しておいた方がいいよな」
彩葉「うん。私もそう思う」
影二「いざって時に動かなかったりしたら命取りだし。」
ふと何気なくこぼした一言。しかし、勇希はその一言が気に入らなかったらしい。
勇希「心外ですね。私が設計してジョナサン・カザハラ博士以下テスラ研の総力を挙げて組み立てたんですよ?
   それがいざって言う時に動かない訳ないじゃありませんか。
   整備だって念入りにしましたし、実際に今だって半稼働状態なんですから」
彩葉「え!? 半稼働状態って火ぃ入ってるんですか!?」
勇希「ええ。だから、今敵が襲ってきても対処は可能ですよ」
自信満々に言ってのける勇希。二人はあっけにとられている。
彩葉「そんなこと言って実際に敵が襲ってきたらどうしはるんやろ・・・」
勇希「大丈夫ですよ。備えあれば憂いなしというじゃありませんか」
影二「だからってなぁ・・・。こういうのって所謂フラg」
台詞を最後まで言い終える前に、強い衝撃が輸送機を襲った。
彩葉「きゃぁっ!?」
影二「何だ?!」
三人は咄嗟に近くにあるもの―――エレキは申し訳程度に作られたテーブル、彩葉はエレキ、勇希はシート―――につかまり、衝撃をやり過ごす。
暫くして輸送機内に攻撃を受けたことを知らせるエマージェンシーコールが鳴り響く。
影二「攻撃?!」
彩葉「一体何処から?!
勇希「・・・そんな、レンジ外?!」
揺れる機内で、勇希はレーダーを確認するが攻撃を仕掛けてきたらしい熱源反応は周囲に見当たらなかった。
彩葉「彩葉さん! 影二君!」
影二「了解! 先に格納庫行ってるぜ!」
言うが早いか、エレキは格納庫の方へと向かっていき、彩葉もそのあとを追っていく。
勇希「私も直ぐ行きますから!」
そう言って、すぐさま計器類に目をやる勇希。
勇希「そんな、自動操縦できない?! 仕方ありませんね・・・・・!」
影二が向かってから数秒後、勇希も格納庫へと向かった。




=タウゼントフェスラー内格納庫=
影二「到着っと!」
一足早く格納庫に到着したエレキは、すぐさま黄色・金色に塗装された機体に乗り込む。
影二「半稼働状態から、通常稼働状態へセットアップ!」
的確に装置を動かしていき、瞬く間に操縦室内に灯りがともる。それと同時に、
???『・・・何用だ、マスター。我(オレ)を起こすのだから、もう到着したと言うことなのか?』
黄金のフルプレートを纏ったいかにも偉そうな金髪の男が立体映像として現れた。
影二「残念だけど、緊急事態発生だ、アーチャー。何者かに攻撃を受けた。」
アーチャー『何だと?』
影二「もう少しで彩葉も来るから、彩葉もつれて脱出するぞ。」
そう。輸送機という関係・構造上、まともに攻撃を受けると、脆い。
影二は衝撃の度合いから直撃を受けたと判断したのだ。
彩葉「エレキ!」
影二「彩葉! こっちだ!!」
一足遅れて到着した彩葉を機体のコクピットに引きずり込む。
影二「ちょいと狭いけど我慢しろよ。アーチャー、確証は取れてないけど、多分やったのはジオンの連中だ。」
アーチャー『ジオンということは宇宙の負け犬連中か。ふん・・・・どうやら、余程死にたいと見える。』
そう言ってほくそ笑むアーチャー。
影二「言っとくけど、脱出及び現宙域からの離脱が最優先だからな?」
アーチャー『フッ、我(オレ)の辞書にやられっぱなしという文字はない。』
影二「・・・誰だよ、こんなAI組んだやつ・・・」
彩葉「それはウチに対する厭味?」
アーチャー『む、それはどういう意味だ。』
ちょっと不機嫌そうに顔を顰める彩葉とアーチャーだったが、影二は無視した。
視界に勇希の姿が入ったからだ。
勇希「影二君! 私のゲシュペンストは!?」
影二「勇希さん! あっちだ!」
思いっきり床を蹴り、周りで小爆発が次々と起こっている中、ちょうどDoLLの隣にあるゲシュペンストへと向かう勇希。
そして、あと数cmで手が届く所まで着た瞬間、一際強い爆発が起こり、爆風が格納庫内を吹き荒れる。
勇希「!?」
その爆風にまるで木の葉のように振り回され、爆風の中に巻き込まれていく勇希の身体。
影二・彩葉「「勇希さん!?」」
アーチャー『マスター、いやエイジ!!』
影二・彩葉「「!?」」
アーチャーの声と共に、先程よりもかなり強い爆発音が響き、二人の意識は一気に刈り取られた。

47勇希晶:2008/08/27(水) 23:30:27 HOST:p2141-ipbfp905fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
=地球近海・暗礁宙域=
爆発するタウゼントフェスラーからスラスターをふかして飛び出してきた影二の機体―――DoLL−CY<Code:Archer>。
アーチャー『おい! しっかりせんか馬鹿者が!!』
爆風によって一時的な気絶状態にあるエレキに呼びかけるアーチャー。
アーチャー『我(オレ)はこんな所で朽ち果てる気など毛頭無い! さっさと起きろ!!』
影二「・・・・・・ぅうっ」
アーチャー『気がついたか?』
影二「アー・・・・チャー・・・・・?」
気絶から目覚めたばかりでまだ意識がはっきりしていない影二だったが、
影二「っ、そうだ! 輸送機は・・・彩葉は・・・!!」
アーチャーの姿を見ると、すぐさま周囲の状況を確認。隣で頭を押さえながら呻いている彩葉を見つけ安堵する。
しかし、レーダーを探っても先ほどまでいた輸送機の姿は見当たらない。
アーチャー『無駄だ。反応は既に無い』
影二「そんなこと、わかるもんかよ!」
アーチャー『お前らが気絶している間に確認した。タウゼントフェスラーの残骸しかないことをな』
彩葉「う、嘘だッッ!! 絶っ対どこかにおるはずや・・・!」
先程まで会談していた勇希の姿を――例えどんな姿になっていようとも――確認すべく操縦桿を握る影二だったが、一向に機体が動く気配はなかった。
影二「・・・・っ、何でだよ! 何で動かねぇんだよ?!」
アーチャー『死者に魂を引きずられてどうする! もうあの女は、我(オレ)の体を作った女は死んだ!!』
影二・彩葉「「!!」」
聞きたくもない事実を、彼女が生み出したアーチャーより断言されて息を呑む二人。
アーチャー『死者に魂を引きずられるなど、愚者のすること。我(オレ)はそんな者をマスターにした憶えはない!!』
影二「・・・・・・・・・」
彩葉「う、うぅ・・・」
失って、初めてわかる人の価値。
エレキ「くそっ・・・・・畜生・・・・・・・・ちっくしょぉぉぉっ!!」
目の前の命を救えなかった事に絶叫し、途方もない後悔に彩られているであろう自分の操縦者(マスター)を。
そして慕っていた存在を失ってしまいうなだれるもう一人の創造主(マスター)を、アーチャーは黙ってみていた。
しかし、
アーチャー『・・・エイジ、イロハ』
彩葉「・・・・なんだよ。」
アーチャー『今、レーダーに未登録の機動兵器の姿が映ったのだが、どうする?』
影二「何だって・・・・・!」
慌ててレーダーを確認すると、確かに未登録の機影があった。
影二「(まさか・・・・!!)アーチャー、今は動かせるよな?」
アーチャー『ああ、無論だが? よもや、輸送機の残骸に行くとは言いまいな?』
影二「・・・・・ああ。」
アーチャー『ならば許そう。』
影二の元に、操縦権利が戻ってくる。
影二「・・・・・・・・」
彩葉「エレキ・・・?」
やがて、未登録の機体が視認できるところまで距離を詰める。
影二「アーチャー、他に機影は?」
アーチャー『ない。』
彩葉「なら・・・・・!」
ぎり、と奥歯をかみしめ、影二は通常回線をONにする。
影二「テメェか・・・。」
???「え?!」
相手は突然通信が開かれたことに動揺しているようだ。
それで二人は確信した。
影二「テメェが輸送機をっ・・・・・・!!」
???「輸送機・・・・・?」
彩葉「しらばっくれてもむだや! 
影二「ああ、そうだ! 行くぜ、アーチャー!」
アーチャー『ふん、了解だ』
そこで影二は通信を切り、左手の五連マシンガンを構える。
影二「なめたことしてくれた借り・・・・・・利子付けて返してやるぜ!!!」
かくて、時は動き出す・・・・・・

48勇希晶:2009/05/22(金) 23:51:02 HOST:p6254-ipbfp505fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
激しい戦闘を繰り拡げるヒュッケバインmk−ⅡとArcher。
Archerはその豊富な武装を生かして遠距離から牽制を繰り返し、mk−Ⅱはその機動力を生かして接近しようとするが、弾幕の厚さの前になかなか接近できない。
「くっ、弾幕が厚い・・・! 接近すればなんとかなるんだろうけど・・・!!」
タウゼントフェスラーの残骸を盾に接近することも考えたが、輸送船の装甲というのは意外と薄い。
巨大な物資を運ぶ時に素早く対応できるようにするため、大きめにスペースをとり、装甲は必要最低限にしてあることが往々なのだ。
だから仮に盾にしたとて大した効果は望めない。
一方のArcher側も、決定打が打てずにいた。
「ちっ、ちょこまかうごきやがって・・・!」
『落ち着け。煩いハエなどたたき落とせばいい』
「あのなぁ、それができんからイラついてるんじゃない?」
いくら豊富な武装を誇っているとはいえ、弾薬には限りがある。
接近戦用の武装もあるにはあるが、機動性に利がある相手では心もとない。
もともと、Archerは遠距離での射撃戦を主眼に置かれて開発された機体であり、接近戦などは弾薬を使い切ったときの最終手段である。
さらに機動性もあまり高くないため、接近されることは死を意味すると同意でもあるのだ。
図らずも双方の思惑がかみあった、なんとも奇妙な千日手―――



一方・・・
「大気圏突入まであとどれくらいだ?」
「あと1時間ほどです」
「そうか・・・」
突如としてジオン公国の攻撃を受けたコロニー、サイド7。
秘密裏にV作戦の試作機を製造・テストを行っていたのだが、連邦の新造艦「ホワイトベース」が入港した際、ジオン公国軍の「シャア・アズナブル」少佐率いる部隊と接敵、戦闘を余儀なくされた。
結果、試作機はRX−78−2、RX−77−2、RX−75の三機のみ受け取り、残りを焼却処分にすることとなった。
またその際起動したRX−78−2、通称「ガンダム」がジオン公国軍のMS(モビルスーツ)「MS−06ザクⅡ」と交戦、これを撃破。
ジオンの追撃を恐れたホワイトベースは、早々にサイド7より脱出。
連邦軍の宇宙唯一ともいえる基地であるルナツーでの補給を終え、地上へ降りるための準備をしていた。

49勇希晶:2009/06/08(月) 23:03:34 HOST:p6254-ipbfp505fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
「ところで、自信はあるのか?」
軍服を来た18,9歳ほどの青年が、操舵席に座る女性に声をかける。
青年の名はブライト・ノア。サイド7にホワイトベースとともに入った士官候補生であり、現在このホワイトベースの官庁の任に就いている。
本来ならば同乗していた最高階級者パオロ・カシアス大佐がその任に就くべきであるのだが、大佐はサイド7脱出の際の負傷が原因で死亡、他の上官もサイド7にてジオンの襲撃を受けた際に死亡してしまっているため、彼がホワイトベース館長の座に収まったのだ。
「スペースグライダーで一度だけ大気圏に突入したことはあるわ。けど・・・」
ブライトに問われた女性が口ごもりながら答える。
女性の名はミライ・ヤシマ。サイド7の住人だったが、故パオロ・カシアス大佐の戦時徴集により、ホワイトベースの操舵席に収まっている。
「けど、なんだ?」
「あの時は地上通信網がきちんとしていたし、船の形も違うから」
「基本航法は同じだし、わからなくなったらサラミスの指示に従えばいい」
「は、はぁ・・・了解しました」
自信はないが、いざとなれば指示に従えとのことで、ミライは納得することにした。



一方、奇妙な千日手が続いていた戦闘宙域では、いよいよ事態が動こうとしていた。
「このまま待っているわけにはいかない・・・。早くなんとかしてリオを助けないと・・・!」
そう、リョウトが搭乗していた輸送機には、彼のパートナーである少女も登場していたのだ。
リョウトは何とかヒュッケバインmk−Ⅱのコクピットへもぐりこみ難を逃れることができたが、リオの方はどうかわからない。
最悪の想像がリョウトの脳裏をよぎったが、すぐにそれを振り払う。
「分の悪い賭けはあまり好きじゃないけど・・・・・・!」

・・・一か八か、かけに出るしかない。

そう判断し、リョウトは降りそそぐ弾幕の中に機体を躍らせる。
「うわっ、特攻してきた?!」
「焦んな。迎撃すればいいだけの話じゃねぇか」
影二はこちらへ近づいてくるヒュッケバインmk−Ⅱに対して、ショットガンの銃口を向け、発射。
しかし、ヒュッケバインmk−Ⅱの前面に展開されたバリアのようなものではじかれる。
グラビティ・ウォール――通称『G・ウォール』。
ヒュッケバインmk−Ⅱに搭載されているグラビティ・コントロールシステムにより、重力場の障壁を作り出し主に実弾兵器などを遮断するバリアシステムである。
リョウトは着弾前にG・ウォールを展開し、ショットガンの弾を防いだのだ。
「とった・・・!」
サイドアーマーからビームソードを抜き、袈裟斬りに切りかかるが、Archerも右下腕に収納されている高周波ナイフを展開し刃を受け止める。
「くっ・・・」
すぐさま身をひるがえしたヒュッケバインmk−Ⅱがいた空間を、ガトリングガンの弾が通り過ぎる。
「あぶねぇあぶねぇ・・・」
『油断しすぎだ、愚か者』
なんとか凌いだ形になる影二達だが、状況は不利になってしまった。
距離を取っての撃ち合いならばまだ分があったが、接近されてしまった今では採れる手段が限られてしまっている。
(この距離だと使えるのはガトリングとショットガンくらいか・・・)
ヒュッケバインの方もそのことは察知しているようで、なかなか離れてくれない。
どうすべきか思案していると、
『影二、新手のようだぞ。上だ!』
アーチャーの言葉に、とっさに機体を後退させると、先ほどまでArcherがいた場所を、上から下へ火花が通り過ぎて行った。
位置的にヒュッケバインから狙えるような位置ではない。
ヒュッケバインの方も同様だったらしく、こちらに注意を払いつつも周囲をうかがっていた。
「機種判別・・・。こりゃジオンのザクが二機おるな」
『どうやら、招かれざる客のようだな』
「ちっ・・・」
見据えた先の暗闇に、赤いモノアイが光る。

50勇希晶:2009/07/23(木) 23:17:29 HOST:p6254-ipbfp505fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
「ちっ、外したか・・・」
二機のザクのうち、二本角の青い髑髏のマーキングをしたザクのパイロットが舌打ちをする。
短く立てた金髪に同色の顎髭が特徴の、野性味のある顔立ち。
「初撃を外したのは痛いな・・・。確実にこちらに気づくぞ」
続いて答えるのは一本角の赤い髑髏がマーキングされているザクのパイロット。
こちらはのばした黒髪に精悍な顔つき。
金髪の方はロビン・ブラッドジョー中尉。黒髪のほうはカート・ラズウェル中尉。
ともにジオン公国軍のパイロットであり、後に実行されることとなるジオンの北米降下作戦における戦績から、「修羅の双星」の二つ名を賜ることになるのだが・・・それはまた別の話。
「試作機が二機か。パイロットの腕はわからないが、とりあえず仕掛けるぜ!」
気づかれた以上、その場にとどまっているのは得策ではない。
ロビンのザクは付近に漂ってきたデブリを蹴って、一気に迫る。
同じくらいの大きさ且つ暗色であるヒュッケバインではなく、大きめで暗闇に映えるカラーリングのArcherに狙いを定めたらしく、どんどんと近づいてくる。
Archerも得意レンジに持ち込もうと移動するが、ザクが蹴ったデブリが邪魔をして思うように動けない。
その間にもザクは距離を詰めてくる。
「ロックオン! 狙い撃つぜ!!」
十分な距離まで接近し、ザク・バズーカを撃ち、Archerの右肩部に着弾する。
「きゃあっ!?」
その衝撃で揺れるArcherのコクピット。
『ちっ・・・。だが損傷は軽微!』
「にゃろうっ!!」
ザク・バズーカの直撃を受けたはずであるが、Archerの肩部装甲にはわずかな傷しか付いていなかった。
「何だと!?」
驚く暇もあればこそ、すぐさま体制を立て直し、ショットガンを乱射してくるArcher。
なんとか弾幕をかいくぐり、大きめのデブリに身を隠すロビン機。
すぐさま僚機であるカート機へと通信をつなぐ。
「まいったまいった、なんだよあの装甲は?」
「確かに堅牢な装甲のようだ。だが雨垂れ石を穿つという諺もある。集中して仕掛けるぞ」
「オーケー。それじゃ、行きますか!」
身を隠したデブリがArcherの攻撃で破壊される直前、ロビン機はデブリを離れ、カート機と合流。連携攻撃を仕掛ける。
まず、ロビン機がバズーカを数発発射。弾はそれぞれ違う弾道を描きながらArcherに迫る。
対するArcherも誘導弾はお手の物と言わんばかりにホーミングミサイルで迎撃、漆黒の宇宙に大輪の花火が咲く。
だがそれはフェイク。本命の攻撃は別角度から迫っていた。
『下だ!』
「なに・・・ぐっ!?」
突如脚部に衝撃が走る。ロビン機のバズーカを相殺した火花を隠れ蓑に、カート機が死角である機体下部から迫り、ヒートホークで斬りつけてきたのだ。
「にゃろうっ!」
すぐさま二機から距離を取るべく後退するArcher。
しかし、宙間戦闘に不慣れなこともあってか、複数相手ではうまく距離を離せない。
もちろん、その間に牽制などが絶えることはなく、徐々に、微々にではあるがダメージは蓄積していく。
「しつけぇんだよっ!」
「影二・・・」
影二の顔に、だんだんと焦りが募っていく。
最初こそは怒りこそすれ比較的冷静だったが、さすがに連携の取れた熟練パイロット達と、訓練を積んだとはいえ実戦経験に乏しい影二の技量の差は明らかであり、2対1という数的不利な状況を覆すことは難しい。
だが……それが数的同位になればどうなるだろうか?

51勇希晶:2009/12/30(水) 22:23:18 HOST:p6254-ipbfp505fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
「どうしたどうした!」
「っ! ロビン、とまれ!」
「なに…うぉっと!?」
急制動をかけたザクの鼻先を、光弾が疾り抜ける。
光弾の軌跡の元には、フォトンライフルを構えたヒュッケバインmk−Ⅱの姿があった。
「いけっ! チャクラム・シューター!!」
さらにヨーヨーの様な武器を腕から発射し、それがバズーカに絡みつきヨーヨー部分についた刃がバズーカを切断する。
「くっ!!」
たまらずバズーカを手放すロビンのザク。
ヒュッケバインmk−Ⅱはそのまま、先ほどのすきを逃さず距離をとったArcherへ接近し、接触回線を開く。
「通信?」
訝しむ影二達をよそに、通信画面に現れたヒュッケバインmk−Ⅱのパイロット―――氷川諒斗は口を開く。
「聞こえますか。こちらはマオ・インダストリー所属のテストパイロット、リョウト・ヒカワです。こちらにそちらとの交戦の意思はありません」
「なっ、あんた何様のつもりや!?」
あまりにも都合のいい言葉。自分たちが乗っていた輸送機を撃墜しておいて、こちらと交戦する意思はないという。
当然、影二達はその言葉を信じるつもりはなかった。
「お断りだぜ。なんで俺らがお前と手を組まなきゃならないんだ」
だが、なおもリョウトは食い下がる。
可能性はないに等しいが、1%でも生きている可能性がある。
リョウトとしては早くリオを助けたい一心だった。たとえ、それが甘い考えだとしても。
「時間がないんです! 早く奴らを倒さないと、リオが・・・!」
焦る心が、ついうっかり漏らしてしまった本音。
しかし、それがこの事態を打開する光明となった。
「リオ?」
「は、はい。僕の仲間で、一緒の輸送機に乗ってたんですけど」
そこまでリョウトが言ったところで、ザクがこちらに気づく。
「ちっ、舐めた真似してくれるじゃねぇか、素人が」
「ああ。だが所詮は素人だ。一気にたたみかけるぞ」
ロビンが毒づきながらマシンガンを構え、カートも同様にヒート・ホークを構えなおす。
「了解!」
そして同時にヒュッケバインmk−ⅡとArcherに仕掛ける。
「ちっ」
軽く舌打ちし、影二はある決断を下す。
「おい、リョウトって言ったな」
「う、うん」
「色々聞きたいことはあるが、現状協力したほうがいいみたいだな」
「それじゃあ」
「ああ、とりあえずやつらをぶっ倒すぞ!」

52勇希晶:2010/01/04(月) 22:33:46 HOST:p6254-ipbfp505fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp
=地球近海・暗唱宙域=
戦闘宙域よりすこし離れた宙域、そこにカートとロビンの所属する艦隊があった。
艦隊といっても大規模なものではなく、中型の戦艦と護衛の艦が二隻ほどの小規模なものである。
それもそのはず、この艦隊は単なる輸送艦隊にすぎないからだ。
しかし、この輸送艦隊はある重要人物を運んでいた。
「大佐、申し訳ありません」
旗艦の責任者であるガーネット・オランジェロ中佐は、同道している男性士官に向けて深々と頭を下げる。
ガーネット・オランジェロ中佐は、黒髪にオレンジの瞳が特徴的な女性士官であり、どちらかといえば美女に分類される顔立ちである。
「いや、構わない。正直、退屈していたからな。まあ」
そう言い、男性士官は右手で前髪をいじりながら答える。
「ぜひとも鹵獲したいところだが・・・」
そう言い、男性はモニターに目をやる。
そこには、戦闘を続ける四機の機動兵器が映っていた。
どうやら、見慣れぬ機動兵器が連携を取り始めたらしく、形勢が均衡状態に陥りかけていた。
「ふむ。少々手間取っているようだな。もう一人出せないか?」
ガーネットの指示にクルーが答え、一機のザクが、戦闘宙域へと向かう。
そのザクは、いわゆる高機動型仕様というやつで、ルウム戦役で得られたデータをもとに改修された、宇宙などでの空間戦闘に向いた機体だ。
そして、搭乗しているパイロットの名は、アナベル・ガトーと言った。
「ガトー中尉、わかっているな?」
ガーネットが改めて確認をとる。
「はっ。ブラッドジョーとラッセルの援護並びに未確認機体の鹵獲と聞き及んでおります」
「そうだ。だが、無理はするな。貴官の様なパイロットを失うのは惜しい」
「了解です!」


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