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裏アンソロジースレ
1
:
藍三郎
:2006/09/04(月) 23:01:17 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
基本的には荒らし以外なら何でもありのアンソロジースレッド。
当然、リレーに出てない作品だろうと全然OK。
その時の気分で思いついたネタを書いたり、
オリキャラ学園にキャラを出すための中継地点としてみたり(ぉ
好きなように利用しちゃってください。
2
:
藍三郎
:2006/09/04(月) 23:14:39 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
※この話は「戦国BASARA2」の世界観に、
「SAMURAI DEEPER KYO」等、
他作品のキャラクターを加えたIFストーリーです。
○戦国BASARA外伝 「鬼眼」対「覇王」!! 其の壱○
時は戦国乱世・・・
数多の英雄豪傑が天下統一に乗りだし、世はまさに群雄割拠の時代を迎えていた。
尾張の織田信長、甲斐の武田信玄、越後の上杉謙信、三河の徳川家康・・・
世に名高き名将達が、天下の覇権を巡って骨肉相食む争いを続ける中・・・
また一つ、天の座を狙う巨星が、乱世へと名乗りを上げた。
豊臣軍・・・
総大将・「豊臣秀吉」率いるこの軍は、最近台頭し始めた新興勢力である。
新勢力である彼らは、他の勢力に対抗するため、
戦国最高の天才軍師・「竹中半兵衛」の主導の下、
いかなる手段も選ばず軍隊が強化されており、
他勢力の兵士も積極的に登用、引き抜きされているため、
全軍中最も多種多様な兵種が存在していた。
軍団の規模は日を追うごとに膨れ上がり、
その近代的な技術力と高い志気を持った軍勢は、新興勢力ながら脅威となっていた。
荒れ果てた大地・・・
この不毛の地では、豊臣軍本隊と遭遇した徳川の軍勢とが、
激戦を繰り広げている真っ最中だった。
「「「「「「ウォォォォォォォォォ!!!!!」」」」」」
無数の兵士たちの叫びが、あたかも暴風雨のように戦場に木霊する。
百を優に越える兵士達の群れは、各々武器を構えて、雪崩の如く押し寄せる。
その先には、一人の男が立っていた。
秀吉「・・・・・・」
数百の大群が押し寄せてくるにも関わらず、男は腕を組んだまま、無言で屹立していた。
六尺を越える巨体に、赤と黒の甲冑を身に纏っている。
その手には何の武器も携えておらず、ただ手甲が嵌められているのみだった。
太い眉毛の下に覗く双眸は、鬼のような威圧感を湛え、
また一方で一点の曇りも無いかの如く澄み切っていた。
この男こそ、「豊臣秀吉」。
乱世を平定し、日本を変えるため立ち上がった「覇王」である。
兵達の駆け足が地面を地響きの如く揺らしても、男は泰然自若として動かない。
やがて、兵達が構えた無数の槍の穂先が、秀吉が穿たんと向けられた時・・・
秀吉「むぅん!!!」
秀吉は気合一閃、その鬼の如き巨腕を無造作に振るった。
たったそれだけ。
ただそれだけの事で、圧倒的なまでの「力」の波動が生み出され、
並み居る百の兵達を、紙人形の如くあっさりと吹き散らす。
かすっただけで兵達は呆気なく吹き飛び、薙ぎ払われ、戦場に屍を晒した。
後方には、さらに数百の大軍が控えていた。
だが、兵達は百の兵を一瞬で屠った秀吉の力に戦慄し、二の足を踏んでいた。
秀吉「行くぞ・・・その命をもって、我が国の礎となれ!!」
秀吉は両腕を広げ、敵の軍勢に無防備に突撃した。
怒涛の如く突進してくる秀吉に、敵兵は慌てて弓に矢を番える。
まだ秀吉が接近するまでには距離がある。
一気に矢を放ち、あのバケモノを射殺すのだ―――!
多数の弦を引く音と共に、一斉に矢が放たれた。
天空に飛翔した数百の矢は、雨霰の如く秀吉に降り注ぐ。
その身に受ければ、無数の矢が突き刺さった血みどろの彫像が出来あがる事だろう。
だがそれも・・・覇王の前には無力だった。
秀吉「はぁっ!!!」
兵達を薙ぎ払った時と同様、腕を大きく振る秀吉。
まさに、雲をも消し飛ばす豪拳。
飛来した数百の矢は、拳圧で巻き起こった爆風によって吹き飛ばされた。
弾き飛ばされた矢は、逆に敵の軍勢に飛んで行き、矢を射った兵達の体に突き刺さる。
秀吉「見るがいい、この戦場に枯れし万骨を!!」
総崩れとなった敵軍を、秀吉は容赦なく蹂躙した。
その巨腕で敵を吹き飛ばし、体を掴んで握り潰す。
圧倒的な恐怖と力・・・
「裂界武帝」・・・三界を裂く帝王の前に、
兵たちは屍を晒すか、無様に逃げ惑うしか無かった。
3
:
藍三郎
:2006/09/04(月) 23:17:01 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
兵士「く、くそぉ・・・!」
生き残った兵達の中でも、まだ志気の残る者達は、捨て身の覚悟で秀吉に槍を向ける。
起死回生のチャンスに賭け、秀吉の背後から特攻をかけるが・・・
「愚かだね。君達は何故死にに行く?」
ヒュッ―――――!!
兵士「ぎえぇっ!?」
歪な断末魔と共に、彼らの顔の鼻から上がスパッ・・・と分かたれた。
鮮血に染まる眼で、彼は見た。宙を踊る、白蛇の如き刃の姿を・・・
秀吉「半兵衛・・・お前か・・・」
秀吉の傍に忽然と現われたのは、白衣に青い布を肩にかけた一人の青年だった。
秀吉とは正反対のすらりとした体つきに、端正な顔を紫色のマスクで隠している。
手に携えた武器は、一件普通の日本刀のようだが、刀身には縦列の割れ目が走っていた。
関節剣「凛刀・雫卦(しずか)」・・・刀身が複数のパーツに分かれており、
鋼線で接続され鞭のようにしならせる事の出来る特異な剣である。
半兵衛「余計な気遣いだったかな?秀吉」
透き通った声で話す青年の名は竹中半兵衛。
戦国最高の天才軍師と称され、その明晰な頭脳と卓越した智略で、
現在の豊臣の軍隊を築き上げた人物。
そして・・・総大将・豊臣秀吉の無二の親友である。
秀吉「見ろ半兵衛・・・何と情けない姿だ」
秀吉は地平線の先に目をやる。そこには、敗れて逃げ惑う兵達の姿が映っていた。
秀吉「だが、これがこの国の現実だ・・・半兵衛、やはりこの国は弱い!」
目に見える世界の、はるか先を見据えながら、秀吉は続ける。
秀吉「外の世界の脅威も知らず、小事に拘り争いを繰り返すばかり・・・
このままでは、いずれ国は腐り、より大きな力に呑みこまれる・・・!
国を富ませ、兵を強くせねばならぬ。そのために、この国を一つにする!」
「富国強兵」・・・
日本を世界に通じる強き国にする・・・その理想を掲げ、豊臣秀吉は決起した。
まず戦国乱世を終わらせ、天下を統一する。その後に、日本を強く生まれ変わらせる。
天下統一も、秀吉にとっては単なる通過点・・・彼の目指す世界は、天下のその先にあった。
半兵衛「秀吉・・・僕が君の軍を大きくしてみせる。
だから、君は己の理想に向かって突き進んでくれ」
竹中半兵衛は、そんな秀吉の理想に最も強く共鳴した者だった。
無二の親友のために、そして、彼の抱く理想のために。
半兵衛は、豊臣軍を最強の軍隊にすべく、命を削る覚悟を決めていた。
秀吉「うむ・・・頼りにしているぞ。半兵衛」
親友に、言葉だけで返事を返すと、秀吉は前に出て拳を天に突き上げた。
秀吉「我こそが時代の父!我が創るは、国の行く末!!」
「「「「「「ワァァァァァァァァァァァ・・・・・・!!!!」」」」」」
大歓声と共に、秀吉の周囲に豊臣の旗が立ち昇った。
半兵衛の手によって選りすぐられ、豊臣秀吉に絶対の忠誠を誓う精鋭達である。
秀吉「我が拳が、時代を変える!!」
秀吉の体から、眩いばかりの光の闘気があふれ出る。
「覇王」の風格を全身から放つ君主の姿に、豊臣の兵たちは昂揚した。
秀吉の威光をその目にし、半兵衛は微笑みを浮かべた。
他を凌駕する覇王・豊臣秀吉。理想に燃え、使命感に満ち溢れた兵士達。
そして、時代の先を行く豊臣の軍事力。
これらが揃えば、天下統一を必ず成し遂げられる。
半兵衛には、その揺るぎ無い確信があった。
半兵衛(だけど・・・唯一の不安材料は・・・)
半兵衛は黙って胸に手を当てる。
最近は収まってきているようだが・・またいつ牙を剥くかわからない。
彼の最大の懸念材料は・・・彼自身の中に眠っていた。
半兵衛(時間が・・・時間だけが僕をこうも駆りたてる・・・!)
今更命など惜しくは無い。
だが、秀吉の理想を叶える事なく朽ち果てるのは、死よりも恐ろしい事だった。
一分一秒でも時が惜しい。半兵衛は最後まで秀吉の下で戦い抜ける事を切に願った。
4
:
藍三郎
:2006/09/04(月) 23:19:20 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
○戦国BASARA外伝 「鬼眼」対「覇王」!! 其の弐○
=豊臣軍本陣=
豊臣軍兵士「伝令!伝令――――っ!!!」
敵の拠点を制圧し、次なる地に向かおうとしたその時・・・
一人の伝令兵が、息せき切って秀吉と半兵衛の前に現れた。
半兵衛「どうした?何かあったのか?」
豊臣軍兵士「はぁ・・・はぁ・・・ご、ご報告申し上げます!」
半兵衛の前に平伏し、震える声で状況を伝える伝令兵。
その態度と口調から、何か得体の知れないモノに怯えているのが、ありありとわかった。
半兵衛「君、少し落ち着いて話したまえ・・・」
豊臣軍兵士「は、はい・・・我が隊は、半兵衛様の指示に従い、
東方に離脱した徳川軍を追撃に向かいました。
ですが、そこに突如、何者かが強襲してきたのです・・・!」
半兵衛「奇襲だと・・・?」
豊臣軍兵士「は・・・我々も、直ちに応戦いたしましたが、
そいつらの強さは常軌を逸しておりました・・・
ものの半刻と持たず、我が隊は壊滅寸前に・・・
拙者も、何とか幸運に助けられ、命からがら逃げ延びた次第にございます・・・・」
半兵衛「君の部隊には百二十五の兵がいたはずだ。それを…半刻で?」
豊臣軍兵士「は・・・しかも、敵はたったの二人・・・
たった二人の侍に、成す術も無く壊滅させられてしまったのです・・・」
伝令兵の言葉に衝撃が走る。
たとえ百の兵でも、それを上回る数の軍勢に奇襲を受ければ、全滅するのも仕方が無い。
だが、相手はたったの二人だというのだ。普通に考えれば、有り得ない話である。
秀吉「・・・まさか、“奴”か・・・?」
黙して話に耳を傾けていた秀吉が、わずかに呟いた。
彼が指す“奴”とは、徳川軍の切り札たる“本多忠勝”の事に他ならなかった。
本多忠勝・・・
“戦国最強”の二つ名を持ち、“徳川に過ぎたる武将”とまで称される戦国武将。
天を突くような巨体に、堅牢な甲冑を纏っており、
その圧倒的な膂力と突進力は、数百の軍勢すらも軽々と薙ぎ払う。
まさに“戦国最強”に相応しい威容と実力を備えた名将である。
本多忠勝が相手ならば、別働隊が壊滅させられたのも無理は無い。だが・・・
半兵衛「いや、秀吉・・・それはありえない。
徳川家康率いる徳川軍本隊は、ここより遥か離れた甲斐の地で、
武田軍との戦の真っ最中のはずだ。
主である家康を捨て置いて、本多忠勝がこの地に来る事は考えにくいよ」
秀吉「ふむ・・・では、誰が?」
秀吉に問われ、兵士は“襲撃者”の姿を思い出し、身震いしながら答えた。
豊臣軍兵士「は。そやつは――――――」
「オラァッ!!!」
五尺を越える大太刀が、鎧を纏った兵士の体を斬り落とす。
豊臣軍兵士「グギャァァァァァァァッ!!!!」
鉄の甲冑はやすやすと切断され、兵士の体に真っ赤な鮮血の華が咲いた。
豊臣軍兵士「お・・・鬼・・・」
自分を屠った相手の姿を網膜に焼き付け、末期の言葉を吐いて兵士は絶命する。
その前に立っていたのは、言葉通りの“鬼”だった。
溢れるような漆黒の長髪。
返り血でさらに赤く染めあがった、鮮赤の甲冑。
獰猛な肉食獣を思わせる凶暴な貌(かお)。
そして・・・爛々と輝く、人にあらざる真紅の眼。
闇と死が支配する戦場に現われた“鬼”は、
大地を赤く染める無数の屍の上に君臨し、凶悪な笑みを浮かべていた。
“鬼眼の狂”・・・
千人斬りの鬼として恐れられる、どこの勢力にも所属しない謎のサムライ。
だが、“鬼眼”の二つ名は、恐怖と畏怖の象徴として天下に広く伝えられており、
彼が行くところ、殺戮と蹂躙が巻き起こり、戦場を血の色に染め上げると言う。
織田軍や徳川軍は、彼の首に百万両の賞金をかけており、最高の賞金首でもある。
“戦国最強”は、本多忠勝ではなく、彼こそ最強と言う呼び声も高い。
5
:
藍三郎
:2006/09/04(月) 23:19:50 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
狂「ククク・・・雑魚どもにしちゃあ、中々骨のある奴らだったぜ」
戦の歯ごたえを存分に感じつつ、
狂はその真紅の眼で自らが屠った兵たちの亡骸を見やる。
狂「そういやぁ、この鎧に旗印・・・見た事のねぇ連中だな。どこの軍の奴らだ?」
狂が抱いた疑問に答えたのは、彼の傍らに現われた一人の青年だった。
アキラ「こいつらは豊臣軍の者ですよ。狂・・・」
狂「アキラ・・・」
慇懃な口調で語りかけるこの青年の名は「アキラ」。
真ん中に分けた髪を短めに纏め、腰には二本の刀を差している。
盲目なのか、双眸はぴったりと閉じられていた。
荒荒しい気性の鬼眼の狂とは正反対の、穏やかな雰囲気を持っているアキラ。
しかし、彼もまた世にその名を轟かすサムライの一人だった。
彼の正体は、鬼眼の狂に付き従う最強の四武神・・・“四聖天”の一人で、
“双頭の龍”の異名を持つ凄腕の二刀流剣士なのである。
アキラ「豊臣軍は、近年になって規模を拡大してきた新興勢力です。
いつかぶつかる事になるとは思っていましたが・・・」
狂「ほう・・・で、こいつらの親玉はどんな野郎なんだ?」
アキラ「豊臣秀吉・・・天をも破る豪腕を持つと言われ、
その強さとカリスマ性から、戦国の“覇王”と称される豪傑です」
狂「覇王か・・・面白ぇ。よし、今からそいつと死合いに行くぞ」
狂は紅の眼を光らせ、口元を吊り上げた。
それは、倒しがいのある獲物を見つけた“鬼”の笑みだった。
アキラ「フフフ・・・そう言うと思っていましたよ」
アキラは顎に手を当てて、微笑みを浮かべる。
アキラ「新興とはいえ、豊臣軍の力は侮れない。
我々の天下獲りの障害となる者は、早めに排除しておかなければ・・・」
狂「覇王の首・・・この俺様が頂いてやるぜ・・・!」
闘志を燃やし、鬼眼の男と双頭の剣士は、新たな戦場へと歩を進め始めた。
=豊臣軍本陣=
秀吉「真紅の眼・・・間違い無い!“鬼眼の狂”・・・ヤツが現われたか・・・!!」
伝令兵の話から、秀吉は即座に“鬼眼の狂”の存在を思い起こした。
どこの勢力にも属さず、各地の戦場に突如出現し、
血みどろの殺戮を繰り広げる真紅の眼を持つサムライ・・・
天下統一を目指す秀吉にとって、“鬼眼の狂”は避けては通れぬ存在だと認識していた。
秀吉「フフフ・・・これも天の配剤か・・・
いいだろう、鬼眼の狂。この豊臣秀吉、直々に貴様の元へ出向いてやろう!!」
意気揚揚と、出陣を宣言する秀吉。
半兵衛「僕も一緒に行くよ。秀吉。
鬼眼の狂や四聖天には、僕も興味があるんだ」
秀吉「よかろう。ついて来るが良い、半兵衛!」
豊臣軍兵士「ひ、秀吉様!我らも・・・!」
主が危険な鬼眼の狂の元へ向かうと知り、一部の将兵が同行を申し出る。
そんな彼らに対し、半兵衛はやんわりとその要求を拒否した。
半兵衛「やめたまえ。これから始まるのは、鬼と武神の邂逅・・・
君達では、巻きこまれて無駄死にするだけだ」
冷静に事実を伝える半兵衛。だが、それだけでなく後にこうつけ足す。
半兵衛「君達には君達の出来ることがある。後の指示は伝えてあるから、
それに従って動いてくれ。豊臣の兵に相応しい働きを、期待しているよ」
豊臣軍兵士「半兵衛様・・・」
敬愛する主に信頼を受け、兵達は存分に働くことを誓ったのだった。
秀吉「行くぞ半兵衛!無頼の鬼を、我が手で鳴かせてみせようぞ!!」
黒紅の覇王と蒼白の軍師は、鬼を狩るべく出陣した。
6
:
藍三郎
:2006/09/06(水) 23:07:27 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
○戦国BASARA外伝 「鬼眼」対「覇王」!! 其の参○
アキラ「狂・・・」
狂「へっ、言われなくてもわかってるぜ。
ビリビリ感じやがる・・・覇王の闘気ってヤツをよ!」
静電気を帯びたような震える空気を、2人は肌で感じる。
まるで、未知の恐怖に大気そのものが震撼しているかのようだ。
やがて・・・地平線の先から“覇王”が現われた。
秀吉「貴様が・・・鬼眼の狂か・・・」
傍らに竹中半兵衛を伴い、辺りを睥睨するような視線で、狂とアキラを見やる秀吉。
その全身から、ただの兵士ならば竦みあがってしまうほどの
威厳と風格を漂わせていたが、狂は一切気にせずに、秀吉を真っ向から見据える。
狂「よぉ、豊臣秀吉っつー山猿は、てめーか?」
秀吉「いかにも。千人斬りの鬼・・・貴様の雷名、この我も聞き及んでおる。
かねがね、一度相対してみたいと思っていた・・・!」
狂「ククッ・・・親玉自ら出張ってくるたぁな・・・雑魚とやりあう手間が省けたぜ」
長刀を抜き放ち、秀吉に突きたてる狂。
狂「俺の狙いは、言うまでも無くてめぇの首だ。さぁ・・・死合おうぜ・・・!」
狂はただ一度見ただけで、秀吉の持つ驚異的なまでの強さに気づいた。
恐らく戦えば・・・命の保証は無い、生死を賭けた死闘になるのは間違い無い。
だからこそ・・・狂は秀吉との戦いを望んだ。
鬼眼の狂にとって、己の闘争心を充足できる戦こそ、最も欲するモノなのだ。
そんな狂を見て、秀吉は含み笑いを漏らす。
秀吉「フフフ・・・迸る殺気、溢れる闘争本能・・・
まさに“鬼”の名に相応しき男よ・・・」
秀吉は腕を組み合わせると、狂の殺気を真っ向から受け流し、こう続けた。
秀吉「それだけに惜しい。
貴様ほどの男が野に下り、その力を無駄に浪費しているのにはな・・・」
そして、秀吉は予想外の申し出を出す。
秀吉「鬼眼の狂・・・単刀直入に言う。その力、我が豊臣軍で生かしてみせよ!!」
アキラ「何っ!」
狂「・・・・・・」
全く予想外の秀吉の言葉を聞いて驚いたのは、狂ではなくアキラだった。
狂は刀を携えたまま、無言で秀吉を睨んでいる。
秀吉「この国は腐りつつある・・・
真に戦うべき敵の存在にも気づかず、
数多の権力者達が互いの覇権を巡り争いが起こり、国は荒廃の一途を辿っている・・・」
アキラ「真に戦うべき・・・敵?」
半兵衛「“世界”だよ」
アキラの問いに答えたのは、秀吉の隣に立つ半兵衛だった。
半兵衛「果てなく広がる世界に比べれば、日本はほんの小さな島国に過ぎない。
大海原を越えれば、今の日本など容易く呑みこめる強大な軍事力を誇る国が幾つもある。
いや、もうすでに幾つかの大国が、
この日本を手中に収めんと、虎視眈々と攻め込む機会を伺っているかもしれないんだ」
秀吉「今のままの弱い日本では、世界に食い潰される未来しかない・・・
閉ざされた未来を撃ち砕くには、この国を強くするしかない!
我はこの国を変える。日本を一つにし、その上で世界に通ずる強き国とする。
天下統一など、その足がかりに過ぎん・・・!」
狂とアキラに、己の大きすぎる理想を語る秀吉。
狂は黙して話を聞いていたが、「ケッ」と舌打ちする。
狂「猿面の分際で小難しい講釈を垂れやがって。
で、てめぇはこのオレに、何をさせようってんだ?」
秀吉「我は強き兵を欲している。
鬼眼の狂・・・何者をも寄せつけず、何者をも屠り去る鬼神のごとき強さ・・・
それこそ、国を変えるため、我が望む力よ・・・!
今の貴様のように、ただ血と争いのみを求めて剣を振るうなど、
餌を求めて流離う犬畜生と同じ。
我が、貴様の剣に大義という光を与えてやる。
我が大義のため、世界を相手に、その剣を振るってみせよ!!」
狂「・・・・・・」
狂の力を十分に認めた秀吉の誘いに、狂は黙したままだった。
だが、次に出した答えは・・・
7
:
藍三郎
:2006/09/06(水) 23:08:24 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
狂「ク・・・クハハハハハハ!!!くっだらねぇーなぁ!!!」
哄笑と共に、秀吉の申し出を一刀両断に斬って捨てた。
狂「日本の未来ぃ?この国がどーなろーが、オレ様の知った事かよ!
オレはオレの邪魔をする奴らをすべてぶっ殺し、
最強の称号(な)を手に入れる・・・ただ、そんだけだ!!」
唯我独尊・・・
自分さえ最強であれば、それでいい。
他のあらゆる現象を一切気に止めず、ただただ最強への修羅道を突き進む。
彼にとっては、天下獲りも単なる余興・・・
地上最強の称号・・・それこそが、鬼眼の狂を突き動かす唯一の信念だった。
半兵衛「な・・・何と言う旧時代的な狭き思想・・・
秀吉、やはりこんな男に君の理想は理解できないよ・・・!」
秀吉に理想を一蹴した狂に、侮蔑を露わにして、半兵衛は吐き捨てる。
狂「山猿とおしゃべりする趣味はねー。
つまんねー御託はそこらの犬でも食わせといて、
さっさと始めようぜ。殺し合いをよ・・・!」
溢れる殺気を、一気に高める狂。
狂「それとも何か・・・?オレ様にビビッたから、
何とか戦わずに味方に引き込もう・・・そういう腹か?」
半兵衛「貴様!!それ以上、秀吉を侮辱する事は許さない!」
いい加減我慢の限界を迎えた半兵衛が、狂に刃を向ける。
だが、攻撃を仕掛ける前に、秀吉が半兵衛の手に肩を置く。
半兵衛「秀吉・・・」
秀吉「『強さ』こそが唯一絶対の価値観か・・・その思想、我は決して嫌いではない。
よかろう、貴様の流儀で相手をしてやろう!」
前へと歩を進める秀吉。
その巨躯から、並々ならぬ闘志が発散させているのが、はっきりと分かる。
秀吉「貴様を圧倒的な力でねじ伏せ、
己の力量を思い知らせ、我が前に跪かせてくれようぞ!!
勝者は敗者を支配するのが、弱肉強食の理(ことわり)・・・
これならば、貴様も何の異論もあるまい!!」
狂「てめぇ・・・鬼を飼い慣らせると思ってるのか?」
秀吉「鬼の一匹、屈服できぬようでは、世界は狙えぬわ・・・!」
お互い絶対的な自信を胸に抱き、真っ向からにらみ合う。
見えない火花が散り、両者の闘志を、限界まで高めて行く。
狂「面白ぇ・・・オレが負けたら、てめぇの子分にでも何でもなってやる。
ただし・・・オレが勝ったら、オレ様の前で最高に笑える猿芸を披露しやがれ!!」
半兵衛「な・・・?」
狂の言葉に、一瞬呆れ返る半兵衛。
秀吉「好きにするがよい!」
秀吉は両の拳を打ちつけると、開戦の狼煙を上げる。
秀吉「器の違い、見せてくれるわ!!」
半兵衛「全く・・・秀吉、僕は君の考えが理解できないよ・・・
あんな最強に被れた時代遅れのサムライに、あそこまで拘るなんて・・・」
戦場を移した秀吉と狂を遠目に、半兵衛は一人ごちる。
だが、その発言に、黙っていられない男がいた。
アキラ「時代遅れとは・・・随分な言いようですね」
半兵衛「その二刀・・・君は、鬼眼の狂の配下・四聖天の一人、“双頭の龍”アキラだね?」
アキラ「ほう、私の事までご存知とは・・・
光栄ですよ。戦国最高の天才軍師・竹中半兵衛さん?」
冷静で、穏やかな気性を持つ者同士、微笑みながら言葉を交わす2人。
半兵衛「さて・・・お互い主が戦いを始めて、手持ち無沙汰になってしまったね。
僕は秀吉の邪魔をする気はない。君もそうだろう?」
アキラ「ええ・・・ですが・・・」
アキラはゆっくりと、腰の刀に手を当てる。
アキラ「私は、敵となる存在を前にして放っておくほど、甘くありません。
狂の天下獲りのため・・・障害の芽は、早めに摘んでおきます」
鞘から刀が抜き放たれ、凛とした輝きを放つ。
アキラの顔つきは穏やかなままだが、体中から冷たい殺気を発散していた。
半兵衛「へぇ・・・奇遇だね。僕もだよ・・・!」
凛刀・雫卦を一振りすると、刀身は分かれ、蛇のようにしなる。
半兵衛もまた、静かなる闘志をアキラに対し向けていた。
8
:
清涼
:2006/09/07(木) 22:48:03 HOST:usr177.g016.nabic.jp
無限ラジオ☆ハイパー・放送1回目
悠雅「というわけで無限ラジオ☆ハイパー、記念すべき放送第一回目だ」
ウォリア「どうでもいいけど、なんだこのコーナー?ラジオって何?」
悠雅「よくぞ聞いた。ここは清涼キャラが司会を務めるラジオ番組風コーナーだ。少しでもラジオっぽくするために『地の文』と呼ばれるものは一切使用していない」
ウォリア「道理で会話文しかないと思った」
悠雅「それと感情表現は(怒)とか(笑)とかで表されるから、構成がごちゃごちゃするかもしれんが我慢してくれ(怒)」
ウォリア「なぜそこで怒る!?」
悠雅「構成の乱れがどのくらいか試したかっただけだ、気にするな」
ウォリア「ああ、そう・・・」
悠雅「まあお前のつっこみリアクションが面白くないことに怒っていたと言えばそうだが・・・」
ウォリア「そんなことにかよ!!(怒)」
悠雅「というか、あんまりラジオっぽくないな」
ウォリア「書いてる奴がラジオ番組をよくわかってないからな、それに二人しかいねーし」
悠雅「この番組の司会進行は清涼の気分で変幻自在に変わるから注意してくれ」
ウォリア「無視!?しかもなんの脈絡もねえ!!」
悠雅「次回からは他の方々のオリキャラをゲストとして招いたりもするぞ」
ウォリア「思いっきり他力本願じゃねーか!!」
悠雅「BBSの方にゲスト募集用のスレッドが立ててあるから、詳しい事はそっちの方を見てくれ」
ウォリア「説明すんのめんどいだけだろ!!」
悠雅「ちなみに無限ラジオの無限はサイト名の∞から来ている」
ウォリア「どうでもいいよんなもん!!」
〜放送終了〜
ウォリア「放送時間短くねぇ!?」
悠雅「大丈夫だ、次からは長めにするから」
9
:
藍三郎
:2006/09/13(水) 22:48:15 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
○戦国BASARA外伝 「鬼眼」対「覇王」!! 其の肆○
鬼眼の片腕と豊臣の軍師が冷たい火花を散らす頃・・・
遠く離れた戦場に、二つの暴嵐が近づきつつあった。
豊臣軍兵士「う、うわぁぁぁぁ!!!」
狂「ハハハハハハハ!!!どけどけぇ!!!」
秀吉を追い、豊臣軍と徳川軍が合戦を行っている真っ只中に飛び込んだ狂は、
長刀を振るい障害となる人間の壁を次々と切り開いていく。
刀身が宙を舞うたび、腕がもげ、首が飛び、荒野に鮮血の風が吹きすさぶ。
狂「邪魔するヤツらは全員・・・叩っ斬ってやんぜぇぇぇっ!!!」
殺戮の歓喜に、紅の眼を爛々と輝かせて大笑する狂。
だが、次々と屍に変わっていく兵の姿は、狂の眼には映っていない。
真紅の眼は、倒すべきただ一人の“敵”を、しっかりと見据えていた。
秀吉「ぬぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
その巨大な両腕を広げて、猪突猛進とばかりに突進する秀吉。
徳川軍兵士「うわっ!!」「のわっ!!!」「がはぁっ!!」「ひぃっ!!!」
進路上にいた兵士達は、数百に及ぶ騎馬隊の突撃を受けたかのごとく、
呑みこまれ、弾き飛ばされ、押し潰されて行く。
まるで大海を己が腕で切り開くかのごとく、人の波は掻き分けながら驀進する。
虐殺の限りを尽くしながら、ただひたすらに邁進する狂と秀吉。
一直線に進む二人の猛者は、ついに激突の時を迎えた。
狂「シャァァァァァァッ!!!!」
最初の一太刀を加えたのは、狂からだった。
体中の高まる歓喜を感じつつ、長刀を秀吉の体に振り下ろす。
電光石火。並みの人間ならば知覚も出来ないであろう神速の剣閃を、
秀吉は事も無げに見切った。
手甲『剛掌・烈波』の嵌められた腕を上げ、狂の斬撃を受け止める。
狂「まだまだ行くぜぇぇぇぇっ!!!」
狂は特に気にした様子を見せず、さらなる連続斬撃に繋げて行く。
まさに剣戟の暴風雨。躍動する狂の太刀は、猛威を振るって秀吉に襲いかかった。
秀吉「・・・・・・」
だが、秀吉はこの目にも止まらぬ速さの連続攻撃を、
正確に見きり、双腕を機敏に動かして防御していた。
流星雨の如く降り注ぐ狂の太刀筋を、直立不動のままで凌ぎきって行く。
徳川軍兵士「な、何だ!?あいつらは!!」
徳川軍兵士「あの男・・・まさか、豊臣軍総大将・豊臣秀吉!?」
豊臣軍兵士「それに、あの紅い瞳のサムライ・・・あいつ、千人斬りの鬼眼の狂じゃ!?」
天下にその名を轟かす大物が現われた事に、戦場は騒然となる。
徳川軍兵士「よぉし!豊臣の大将首、俺達がいただいてやるぜ!!」
豊臣軍兵士「鬼眼の男を殺れぇ!!秀吉様を援護するのだ!!」
ある者は功名心から、ある者は主への忠誠心から、
狂と秀吉の下へと幾人かの兵士が割って入る。
だが、その蛮勇は無謀以外の何物でもなかった。
徳川軍兵士「のわぁっ!!!」
豊臣軍兵士「どへぇっ!!!」
激しい攻防を続ける狂と秀吉に、兵士達は近づく事も出来なかった。
狂の刃と秀吉の手甲(よろい)。二つがぶつかり合う度に衝撃波が発生し、
近寄る者を吹き飛ばして行ったのだ。
2人の男を中心に、巨大な力の渦が巻き起こる。
男の勝負に横槍は不要と言わんばかりに、2人の闘いは見えない障壁を構築する。
10
:
藍三郎
:2006/09/13(水) 22:50:58 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
秀吉「ぬるい・・・」
短く呟くと、これまで防御に徹していた秀吉が、初めて攻勢に出た。
狂の剣戟の間を縫って、巨腕を大きく振り払う。
その瞬間、力の波動が生じ、鬼眼の狂をその斬撃ごと呑み込んで一気に吹き飛ばした。
後方にいた兵士達を巻きこみながら、狂の体は数メートルの距離を舞う。
だが、倒れる前に受け身を取り、狂はすぐに起き上がる。
狂「グッ・・・馬鹿力め・・・」
秀吉「どうした?鬼眼の狂・・・貴様の力、よもやこの程度ではあるまいな?」
狂「ヘッ、いい気になっていられんのも、今の内だぜ。
お楽しみは・・・これからだ!!!」
ぺッ、と唾を吐くと、刀を構え闘気のボルテージを上げて行く。
狂のオーラに呼応してか、周囲の大気が渦を巻き始め、
荒荒しい突風が辺りを通りぬけた。
秀吉「ほう・・・それが世に聞く、鬼眼の狂の殺人剣・・・『無明神風流』か!!」
秀吉は一目見て直感した。
鬼眼の狂が使うとされる伝説の殺人剣・・・無明神風流。
その名の通り“神の風”を生み出し、あらゆる敵を屠り去るという、幻の流派。
分厚いヴェールに包まれたその秘剣が、今まさに秀吉の前で顕現しようとしている―――
狂「山猿・・・お前にも聴かせてやんぜ・・・
神風(かぜ)の清響(こえ)を――――!!」
逆巻く風から、甲高い音響が木霊する。
狂は荒れ狂う風の渦を纏ったまま、神の風を解き放った。
狂「無明神風流・みずちぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
驚異的な速度で振られた刀は、大気を切り裂き、いくつもの真空波を生み出す。
折り重なった大気の刃は、怒涛の波と化して標的に押し寄せる――――!
たまたま進路上にいた何人かの兵士が、蛟(みずち)の牙の餌食となった。
全身をバラバラに切断され、絶叫と血煙を残して消し飛んで行く。
秀吉「――――!」
やがて、押し寄せる刃の波は秀吉の喉下まで届き―――――
11
:
藍三郎
:2006/09/13(水) 22:51:56 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
半兵衛「はぁぁっ!!」
関節剣「凛刀・雫卦」を振るい、華麗なる剣舞を見せる半兵衛。
鞭のようにしなる刃が宙を縦横無尽に駆け抜け、不規則な動き標的を襲う。
もしこの戦いに観戦している者達がいれば、
誰もが関節剣を振るう半兵衛の姿に魅せられていたであろう。
半兵衛の手で踊る関節剣、そして、白装束を纏った半兵衛の姿は、
あたかも華麗な舞を舞う役者のようだった。
一方、到底肉眼では捕らえきれない動きで迫る関節剣を、
アキラはニ刀を構えて確実に凌ぎきっていた。
舞踊する剣と疾走する刀。交錯する刃と刃は、
空間を切り裂くような軌跡を描きつつ、激しい火花を散らしていた。
半兵衛「さすがは“双頭の龍”と呼ばれるだけの事はあるね。アキラ君。
二刀を巧みに振るい、左右からの攻撃を完全に防いでいる…!」
アキラ「あなたこそ。私が最初から二刀で戦う相手など、そうはいませんよ。
稀代の策略家、天才軍師と称されてはいますが、戦の腕前も只者ではありませんね」
華麗なる業と明晰なる頭脳。
天は二物を与えるというが、半兵衛こそそう呼ぶにふさわしい男だった。
半兵衛「荒事はあまり好きじゃないんだ。早めに切り上げさせてもらうよ」
これまでひたすらに攻め続けていた半兵衛だが、
その間にもアキラの弱点を見抜こうと、頭脳を高速回転させていた。
半兵衛(見えた――――!)
心の中で手首を捻り、関節剣にこれまでとは違った動きを与える。
半兵衛(二刀流は、両腕を同時に動かす事で、左右からの攻撃に完璧に対応できる…
だけど、僕の剣は、左右だけじゃない。
天地縦横、あらゆる方向から敵を撃つ事が可能なのさ)
半兵衛は、その端正な顔にかすかに笑みを浮かべる。
半兵衛(だが、いくら二刀の達人とは言え、
人間には、決して見る事の出来ない死角がある。
アキラ君、君の死角は、すでに見切らせてもらったよ―――!)
半兵衛の意思に従い、関節剣は蛇のように大地を這って、
アキラの背中の死角から襲いかかった。
半兵衛(よし、これで・・・)
アキラ「―――殺った、とお思いですか?」
アキラは冷ややかな声を掛けると、刀を背中に回す。
刀身は盾となり、アキラを貫かんと迫ってきた関節剣の先端を受け止めた。
半兵衛「な・・・!」
関節剣を振った体勢のまま、一瞬驚く半兵衛。
アキラは微笑を浮かべてこう続けた。
アキラ「クスクス・・・あの短時間で、私の死角を見切る頭脳と、
そこを正確に狙ってくる剣の腕前は評価しましょう。
ですが、残念ながら私には通用しませんよ?」
そう言って、アキラは自分の閉じられた眼に手を当てた。
アキラ「私は盲目・・・物を視覚で見ることはできません。
ですが、その代わりソレを補う他の感覚で、
あらゆる方向からの攻撃を、見切る事が出来るのです」
アキラは盲目ゆえ、視覚で物体を捕らえる事は不可能。
だが、一つの感覚が閉ざされた事で、他の感覚はより研ぎ澄まされ、敏感になる。
常人では到底反応できぬ死角からの一撃も、
その殺気と音を感じ取る事で容易に捕らえることができたのだ。
半兵衛「第六感・・・噂に聞く“心の眼”と言う代物かい?
実際にそんな使い手が存在するとはね・・・」
伝説視すらされる“心眼”・・・その使い手を実際に目の当たりにし、
半兵衛は内心驚く一方で、アキラに対する興味を深めていた。
半兵衛(四聖天・・・鬼眼の狂に使えし、最強の四武神か・・・)
アキラ「クス・・・さて、小手調べはこの辺りにしておきましょう・・・」
不適な笑みを浮かべると、二刀を交差して、構えを取るアキラ。
だがその瞬間、アキラの背中に悪寒が走った。
アキラ(狂・・・?)
半兵衛に意識を集中させつつも、
遥か彼方で、秀吉と死合っている狂に思いを馳せる。
アキラ(いや、万が一にも、狂が負ける事などあるはずがない・・・
しかし、この胸騒ぎは一体・・・)
アキラは狂の勝利を確信していながら、自らの研ぎ澄まされた第六感が告げる、
悪い予感に不安を覚えずにはいられなかった。
12
:
清涼
:2006/09/18(月) 21:29:42 HOST:usr177.g016.nabic.jp
無限ラジオ☆ハイパー 〜放送2回目〜 (前半)
ルジェーロ「やってきました無限ラジオ、念願の2回目!司会はこの俺ルジェーロ・レオンカバロと」
アシュレイ「アシュレイ・ジャドでお送り致します♪」
ルジェーロ「第一回目からだいぶ間が空いちまったが、今日は記念すべき最初のゲストを招いてるから許してくれ」
アシュレイ「それじゃあゲストの氷帝学園テニス部のみなさんです、どうぞ〜!」
跡部「ハァーーッハッハッハッハッ!!!!さぁ、行くぞ樺地!」
樺地「ウス・・・・・・」
ルジェーロ「3人4人5人・・・予想してたよりけっこう多いな・・・(汗)」
アシュレイ「ですね〜(汗)」
宍戸「まぁ、レギュラーメンバーは全員来てるからな」
鳳「ラジオ収録なんて、緊張しますね。宍戸さん」
跡部「ま、何人いようと、主役は俺様と樺地だけどな」
樺地「ウス・・・・・・」
ルジェーロ「まあ確かに・・・最初は跡部君だけの予定だったしな(苦笑)」
忍足「まぁまぁ、大勢で参加した方が盛り上がってええやないの」
向日「そうそう♪」
ルジェーロ「それもそうだな、それじゃあ早速質問に移るけどけど、とりあえず跡部君オンリーになるけどいいかい?」
忍足「おっしゃ、最初の質問は何や?」
宍戸「まぁ・・・変な事聞かれたくないしな・・・その点跡部なら、何聞かれても堂々と偉そうに答えるだろうし」
ルジェーロ「まずは1枚目『跡部様の普段の生活が気になります!噂では豪邸に住んでらっしゃるとか』豪邸ね・・・アニメじゃそんな感じだったけど」
跡部「おう、住んでるぜ。もち、プールつきのな。広すぎて、どの部屋がどこにあるのか迷うぐらいだ」
向日「地元の人間からは『アトベッキンガム宮殿』って言われてるぜ」
アシュレイ「どこかの国の王室みたいだね(汗)」
跡部「ま、スケールのでかい俺様のような男には、それ相応の住宅が必要ってこった」
ルジェーロ「将来有望そうではあるけどね(苦笑)さて次のおハガキ・・・うわっこれは・・・(汗)」
アシュレイ「どうしたんですかボス?ハガキがどうか・・・うわぁ(汗)」
忍足「ん?何や何や?」
ルジェーロ「え〜『氷の世界、すごい技だったわりにはあっさり破られましたね』・・・質問ですらないな・・・(汗)」
跡部「・・・・・・ほうら、凍れ」
ルジェーロ「うおわぁ!ハガキがツララに刺さった!?」
アシュレイ「ボス、それ逆です!ていうかなんで突然氷が!?」
ルジェーロ「何が起こったんだ一体?超能力?魔法?」
忍足「おいおい、何言うとるんや。テニスの技に決まっとるやろ」
向日「そうだぜ、こんぐらいフツーだっつーの」
ルジェーロ「あ〜・・・どうやら俺達と君達の間には超えられない壁があるみたいだね(汗)」
跡部「フッ・・・俺様の眼力(インサイト)は今も進化し続けている。次こそは、手塚ゾーンすら通用しない完全無欠・絶対零度の『氷の世界』を見せてやるぜ」
ルジェーロ「期待しとくよ(汗)じゃ、次のハガキ『最近のストーリー見ていて思ったのですが跡部さんは無我にならないのですか?全国クラスの選手はみんな使えるみたいですが・・・』だって」
跡部「フッ、わかってねーな。俺様は素で最強だから、無我なんぞのサルマネに頼る必要はねーんだよ」
アシュレイ「そのわりには青学戦負けてばっかなよーな・・・」
跡部「・・・『氷の世界』に跪いてろ」
アシュレイ「いやあああああ!凍る!凍る〜!」
ルジェーロ(あんま怒らせん方がいいな・・・)
13
:
清涼
:2006/09/18(月) 21:32:39 HOST:usr177.g016.nabic.jp
無限ラジオ☆ハイパー 〜放送2回目〜 (後半)
向日「そういや・・・氷帝(ウチ)にも一応いるよな。無我できる奴」
忍足「ああ・・・あいつやな」
ルジェーロ「え?跡部君でもできな・・・げふんげふん、しないのにする人いるのかい?」
跡部「樺地・・・見せてやんな」
樺地「ウス・・・・・・・・・・・!!」
ルジェーロ「テニスの技とは思えないな・・・なんかオーラ出てるし・・・(汗)」
日吉「さすがに俺たちもオーラは出せないな」
忍足「ああ、あれは、一部の上級テニスプレイヤーにのみできる業やな」
アシュレイ「じゃあ樺地君は氷帝でも上級プレイヤーなんだ」
跡部「あたりめーだろ。何たって俺様の樺地だぜ?」
樺地「ウス・・・・・・」
アシュレイ(一歩間違えると勘違いされかねないセリフだなぁ)
ルジェーロ「それじゃ最後のおハガキ『青学との試合で坊主にされたと聞きましたが本当ですか!?もしそうならショック〜!!』・・・またつっこみどころの多い質問だな・・・」
忍足「おおっ!ついにそこを突っ込んできはったなぁ・・・」
日吉「いつか来るとは思ってたけど・・・」
アシュレイ「じゃあホントの話なんだ・・・なんでそうなったの?(汗)」
宍戸「青学の越前に負けた後、立ったまま気絶してる間に頭刈られたんだよ」
鳳「し、宍戸さん・・・そんなハッキリ・・・(汗)」
ルジェーロ「テニスして気絶って・・・しかし、容赦ないな越前ってのは(汗)」
向日「ていうか、いつの間にバリカンを用意してたんだ・・・?あいつ・・・」
ルジェーロ「バリカン装備!?なんつー容易周到っぷりだ、敵に回したくねぇ(汗)」
忍足「おっと、この話題もほどほどにしとかんとな・・・あまり触れると、ワイら全員『氷の世界』で氷漬けにされかねんで」
宍戸「つーか、髪切ったぐらいでガタガタ抜かすんじゃねぇ!俺だってレギュラーに戻るために髪刈ったんだぞ!」
向日「いや、それは多分レギュラー復帰には関係なかったと思う」
ルジェーロ「ま今は普通の髪型だし、自然に伸びたってことでいいのかい?」
跡部「ま・・・そういうことだな」
ルジェーロ「おっと、そろそろ番組もお開きだな」
跡部「もうそんな時間か・・・それじゃ、最後の締めくくりとして、氷帝学園のテーマソングを生で披露してやるぜ!」
ルジェーロ「テーマソングまであんの!?どんな部活!?」
アシュレイ「まあ、せっかくですし聞かせていただきましょ〜(汗)」
日吉「部長、CDセットしました」
跡部「よし・・・全員マイクは持ったか?氷帝学園テーマソング、『氷のエンペラー』・・・行くぜ!」
跡部「俺様の美声に・・・酔いな・・・」
(CDプレイヤーよりイントロ)
氷帝's「「「俺達に 触るなよ 火傷をするぜ 氷の炎 冷たい灼熱 俺達に 近寄るな 息の根止めるぜ 氷の刃 気迫の一撃」」」
向日「跪け」宍戸「崇めろ」日吉「たてまつれ」跡部「強者は、弱者を支配できるのだ」
忍足「刃向かうな」鳳「ひれ伏せ」樺地「怯えてろ」跡部「勝者は、敗者を意のままに出来る〜〜」
氷帝's「「「そう 俺達 コートに君臨する氷帝 氷帝 氷のエンペラー」」」
アシュレイ「すばらしい歌声、ありがとうございました〜」
跡部「さて・・・全国の氷帝ファンが、今の歌を聞いて感動で凍りついたところで・・・幕としようや」
ルジェーロ「凍るのか(汗)まあ兎に角、今日は御苦労さま」
鳳「いえいえ、そちらこそ、お疲れ様」
忍足「ほんじゃ、帰るか・・・・・・ん?」
アシュレイ「へ?どうしたの?」
榊「跡部よ・・・・・・・・・番組が終わって尚、君臨するのか」
跡部「・・・・・・・・・・・・(カメラ目線)」
ルジェーロ「ちょ、跡部くん!これラジオだから!どっから出したんだそのカメラ!?」
アシュレイ「あ、あはは・・・今日のゲストは『テニスの王子様』より氷帝学園テニス部のみなさんでした〜」
この番組は、海馬コーポレーション、コルテッサファミリーの提供でお送りしました。
14
:
藍三郎
:2006/09/18(月) 22:55:10 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
○戦国BASARA外伝 「鬼眼」対「覇王」!! 其の伍○
鬼眼の狂が放った、無明神風流殺人剣・“みずち”。
神速の剣閃により生み出された真空波の群れは、
まさに、獰猛な蛟(みずち)のごとく、
風を斬り、地を裂き、獲物を食らいながら、豊臣秀吉に向かって驀進する。
秀吉「・・・・・・」
秀吉は腕を組み合わせたまま、泰山自若として動かない。
だが、みずちが目と鼻の先まで迫った瞬間・・・
秀吉「喝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
天地を震わすような咆哮と共に、秀吉は両腕を広げ、己の持つ闘気を解き放った。
光り輝く闘気の波は、“みずち”の風すらも呑み込み、
その威力を減衰させ、やがては完全に消滅させた。
秀吉「こんなモノが、神の風だと・・・?そよ風ほどにも感じぬわ!!」
かすり傷一つ負わぬまま、直立する秀吉は、失望を露わにして吐き捨てる。
狂「な・・・?」
そして、自らの必殺剣を“気合”だけでかき消されたことに、
さしもの狂も顔色を変えていた。
秀吉「鬼眼の狂・・・あまり、我を失望させるな・・・!」
厳つい顔に殺気を込めて、秀吉は己の闘争心を高ぶらせて行く。
押し寄せてくる闘気の波に、狂は圧迫感すら覚えていた。
半兵衛「フッ、鬼眼の狂のことが心配かな?アキラ君」
アキラの動揺を見透かしたように、半兵衛は薄ら笑いを浮かべて言い放つ。
アキラ「何をバカな・・・狂が負けるなど、有り得ません。
そんなことより、あなたは自分の命の心配をしていなさい・・・」
半兵衛「命の心配か・・・ご忠告、感謝するよ」
半兵衛は苦笑しつつ、鞭状にしたままの関節剣を元に戻そうとするが・・・
半兵衛「?」
半兵衛は怪訝な表情を浮かべる。
いつもは彼の手で自在に動くはずの関節剣が、妙に重いのだ。
異変を感じた半兵衛は、地面を一瞬見やる。
そこには地面に垂れた関節剣が、透き通った氷によって地に張りつけられていた。
半兵衛「氷・・・だと?」
半兵衛は再度アキラに視線を映す。
アキラの足下でも、凍てつく氷が地面を覆っているのが垣間見えた。
さらに、周囲の気温が異常なほど下がっている。
単なる殺気からの悪寒ではない。低温から来る本当の寒さを半兵衛は感じていた。
半兵衛「そうか・・・アキラ君、君の能力(ちから)は・・・」
アキラ「クス・・・今更気づいたところで遅いですよ?」
話している間にも、アキラと半兵衛を中心として、地面を覆う氷はその面積を広げて行く。
このままでは、この場が絶対零度の氷結世界と化すのも時間の問題だった。
半兵衛「あの“軍神”上杉謙信と同じ、氷を操る力・・・
アキラ君、君はただの盲目の二刀使いでは無かったようだね・・・」
アキラ「表面上は落ち着いているようですが・・・
“心眼”を持つ私ははっきりわかりますよ。あなたの心が揺れ動いているのがね」
アキラは二刀を構えたまま、口元に笑みを浮かべる。
それは、絶対の優位を確信した者の笑みだった。
アキラ「小手調べは終りと言ったはずです・・・
四聖天のアキラの真の力を知り・・・そして、消えなさい!」
アキラは二刀を振るい、半兵衛に斬りかかる。
半兵衛は、双方向からの攻撃を関節剣で斬り払うが、
アキラの刃に触れた剣は、部分的に凍り付いてしまった。
半兵衛「く・・・」
凍りついた関節剣は、重さで動きが鈍る。その隙を見逃さぬアキラではない。
アキラ「“夢氷月天”!!」
刀を交錯させ、澄み切った月光の如き斬撃を繰り出すアキラ。
アキラが放った“夢氷月天”は、半兵衛の関節剣を打ち払い、
さらに半兵衛の体を凍りつかせて行く。
半兵衛「な・・・!体が・・・凍っていく!」
半兵衛の体は見る見る内に透き通った氷にすっぽり呑みこまれ、
物言わぬ彫像(オブジェ)と化した。
アキラ「全てを無に・・・」
氷付けの軍師を一瞥し、背を向けるアキラ。
15
:
藍三郎
:2006/09/18(月) 22:56:27 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
アキラ「せめて安らかに眠りなさい。
これまで味わった事のない、暗く冷たい闇の中でね・・・」
その場から去ろうとするアキラだったが・・・
「ささやくように―――――」
アキラ「!!」
アキラの鋭敏な感覚が、危機を感じ取った時には、
一直線に伸びる鞭が、アキラの肩を背後から貫いていた。
肩口から真っ赤な血がほとばしる。
とっさに身をかわしたので、肩の負傷で済んだが、
もし気づくのが一秒でも遅ければ、心臓を抉られていたところである。
半兵衛「この世の闇なら、既に知ってるさ・・・
こんな氷の牢獄よりも、暗く果てしない、本物の闇をね・・・」
背後から声が聞こえる。
氷に閉ざされた半兵衛は、唇を動かしてこう続けた。
半兵衛「それに、僕には夢がある・・・こんなところで、眠っている暇など無いんだ」
次の瞬間、氷に亀裂が走り、瞬く間にそれは全体へと広がっていく。
氷は木っ端微塵に砕け散り、白衣の軍師は凛刀を構えたまま、腰に手を当てて立っていた。
半兵衛はアキラの肩に間接剣を突き刺したまま、
鞭をしならせ、アキラを宙に舞い上げた。
アキラ「ぐぅっ!!」
空中で鞭を引き抜き、手元に戻す。そして・・・
半兵衛「華やかに―――――」
微かにそう呟くと、半兵衛の手の関節剣が目にも止まらぬ速さで動く。
あたかも空間を切り刻むように舞い踊る鞭は、
紫色の光跡を描き、網の目のようにアキラを捕らえ、切り刻んでいく。
アキラも二刀で何とか凌ごうとするが、
光の速さで迫る鞭は、アキラの体を確実に切り裂いていった。
16
:
藍三郎
:2006/09/18(月) 22:57:27 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
秀吉「金剛破滅!!!」
拳を力の限り握り締め、秀吉はその巨腕を大地に叩きつけた。
次の瞬間、衝撃を受けた大地は裂け、いくつもの巨岩が隆起した。
秀吉の常識を超える驚異的な膂力が、天変地異すら起こして見せたのだ。
徳川軍兵士「うわぁぁぁぁぁ!!」
盛りあがった大地の顎に、その場にいた何人かの兵士が呑みこまれ、岩に挟まれて潰される。
狂「チッ・・・」
狂はとっさに飛びあがり、襲い来る大地の牙をかわす。
だが、一際巨大な岩が狂の眼前に現われた時・・・
巨岩が砕け散り、その中から、豊臣秀吉が猛然とこちらに向かって来た。
狂「!!!」
秀吉を見るや否や、刀を振り下ろす狂。
だが、刃が秀吉に到達するまえに、狂の腕は、秀吉の掌によってがっしりと捕まれていた。
秀吉「我が手に掴めぬもの無し!!」
狂の腕を握り締めたまま、その体を振るい、近くの岩に叩きつける秀吉。
狂「ごはぁ!!」
秀吉「猿舞豪把!!」
さらに狂の体を木の葉の如く振り回し、何度も岩にぶつけていく。
人間一人を・・・それも、甲冑で武装した侍を、掴み、軽々と振り回す・・・
人間離れした剛力を持つ秀吉ならではの、豪快な業である。
狂「テメェ・・・いつまでも人を、オモチャみてーにブン回してんじゃねー!!」
ひたすら振り回されていた狂だったが、
秀吉の体に蹴りを打ち、豪腕の束縛から脱出する。
狂「ぐはっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
しかし、何度も岩に叩きつけられたため、その傷は想像以上に深かった。
頭から流れる血が、地面を紅く染める。
刀を地面に突き刺し、何とか気力で持ちこたえている状態だ。
だが、“覇王”の猛攻は容赦無く続いた。
秀吉「千人斬りの伝説の鬼が・・・無様なものだな・・・!」
横薙ぎに振るわれた拳が、狂の即頭部に決まり、その身を大地に沈める。
秀吉は、狂が完全に倒れる前に、頭を掴んで持ち上げた。
秀吉「鬼眼の狂・・・我は貴様を買い被りすぎていたようだ・・・
貴様の力では、世界はおろか、この我の前ですら・・・無力!!」
狂「ヤ、ヤロウ・・・」
秀吉「我が築く王道楽土、天から拝むがいい!!」
秀吉は狂を掴んだまま、大地を蹴って空中高く飛び上がる。
秀吉の巨体がぐんぐん空中に上昇して行く。
やがて、地上から見えなくなるほどの高さまで到達すると、
狂の体を逆さにして捕らえ、体中に強烈な回転をかける。
そして、竜巻のように回転したまま、地面に向けて一気に墜落する―――!!
秀吉「天地葬送!!!」
天から降る流星となって、秀吉は狂を抱えたまま大地に落下した。
狂の頭が地面に叩きつけられた瞬間、巨大な圧力が生じ、
戦場全土を包むかのような土煙と衝撃波が巻き起こった。
そして―――
土煙が晴れた後・・・そこには、半径十米(メートル)以上はあろうかという
巨大な陥没(クレーター)が形成されていた。
その中央には男が二人・・・
血まみれになり、死んだように倒れている鬼眼の狂と・・・
腕を組み、骸同然の狂を見下ろす豊臣秀吉が君臨していた。
17
:
藍三郎
:2006/09/23(土) 20:05:12 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
○戦国BASARA外伝 「鬼眼」対「覇王」!! 其の陸○
アキラ「ぐっ!!」
蛇の如くしなる凛刀・雫卦が、アキラを追い詰める。
空間を縫うように踊る鞭は、二刀による防御を掻い潜り、アキラの体を切り裂いていく。
半兵衛「甘く柔らかに――――」
半兵衛の剣が、螺旋状に渦を巻いた。
アキラの体はそれに呑みこまれ、宙へと舞い上げられる。
空中でバランスを崩したアキラを、関節剣による追撃が見舞った。
半兵衛「もらったよ・・・」
高速でしなる鞭が、幾つもの輪を形成し、アキラを挟みこむ。
アキラの体に食い込んだ刃は、容赦なくその身を四つに引き裂いた――――
半兵衛「!!」
アキラを殺った・・・と思った次の瞬間、半兵衛は目を見開いて驚愕した。
輪切りにしたはずのアキラが巨大な氷の塊に代わったのだ。
半兵衛(氷・・・まさか!!)
半兵衛は、すぐさま周囲に感覚を向ける。
真横から、二刀を構えてアキラが突進してきた。
アキラ「たぁっ!!」
すぐさま関節剣を戻し、アキラの十文字斬りを受け止める。
半兵衛「氷を使った偽者とはね・・・やるじゃないか!」
アキラ「フ・・・完全に隙を取ったつもりでしたが・・・惜しい・・・!」
しばし鍔迫り合いが続いた後、互いに剣を弾き、大きく距離を空ける。
半兵衛は剣の背を手に数回打ちつけつつ、話を始める。
半兵衛「アキラ君・・・世に名高き四聖天の実力、見せてもらったよ。
二刀の凄まじき剣技や、氷を使う能力にも驚かされた・・・
けど、何より僕が興味を引かれたのは、その頭の回転の速さだね」
これまでの戦いを振り返り、賞賛の言葉を送る半兵衛。
半兵衛「君は精神の極限とも言える、命のやり取りにおいても、
常に思考を巡らせ、相手の隙を狙って戦っている。
君は侍の本能よりも、頭を使って戦う性質の剣士なのだろう。
そう、君と僕は、似た者同士と言えるかもね」
アキラ「随分と褒めちぎられたものですね・・・
で、結局何が言いたいのですか?貴方は?」
半兵衛「軍師としての僕の目から見れば、
戦場で役立つのは、ただ腕の立つだけの無頼漢じゃない。
君のような強さと知性と冷徹さを兼ね備えた、本物の将さ。
アキラ君、君の智と力・・・豊臣軍で生かして見る気は無いかい?」
狂に声をかけた秀吉と同様、
アキラに豊臣軍に入るよう促す半兵衛。
アキラ「フッ・・・予想通り、そう来ましたか。
狂の次は、この私を勧誘する気ですか?」
半兵衛「アキラ君、君は頭の悪い男じゃない。
だから、わかるはずだ。鬼眼の狂についていっても、未来など無いという事がね」
アキラ「!!」
半兵衛「鬼眼の狂・・・あの男は、腕は立つかもしれないが、考えが幼すぎる。
己の強さに溺れ、この戦国という遊び場で遊んでいるだけのただの子供さ。
そこにはただ破壊があるだけ・・・輝かしい光も、未来も無い」
侮蔑を込めて半兵衛は語る。
半兵衛「君の才能や知性は、未来を創造するにこそ役立つはずだ。
鬼眼の狂の下では、君の力は活かせない。
同志として、秀吉の下で、共に未来を築こうじゃないか!」
アキラ「・・・・・・」
半兵衛「思い悩む事なんて何も無いよ。
愚かしき破壊か、素晴らしき未来か・・・どちらを取るべきか、秤にかけるまでも無い」
しばしの沈黙の後・・・アキラは口を開いた。
アキラ「・・・竹中半兵衛さん。貴方はさっき言いましたね?
私と貴方は似た者同士だと・・・」
半兵衛「ああ・・・」
アキラ「ならば、わかるでしょう。
貴方が、あの豊臣秀吉に忠誠を尽くすのと同様に・・・
私は狂のために、この命を使うと決めているのです。
例えどれだけの地位を与えられようが・・・
狂以外の男の下で働く気など、毛頭ありませんね」
穏やかな口調で、半兵衛の申し出を断るアキラ。
アキラ「私の氷と双剣は・・・天下の為でも未来の為でもない・・・
狂の為だけに在るのですから・・・!!」
18
:
藍三郎
:2006/09/23(土) 20:06:36 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
半兵衛「ふぅ・・・」
アキラの答えに半兵衛は失望を露わにしてため息を吐いた。
半兵衛「残念だよ、アキラ君・・・
純白の衣といえど、朱に交われば赤くなる・・・
君ほどの才を持った男が、鬼眼の狂のような愚か者に、
すっかり毒されてしまっているとは・・・」
アキラ「・・・・・・」
半兵衛「もういいよ。秀吉に従わないなら、ここで朽ち果ててもらうしかないね――――」
その刹那、半兵衛の頬に、冷たい風が通りすぎた。
半兵衛「!!これは・・・!」
これまでとはケタ違いの、圧倒的な凍気が、周囲を包む。
大気は弛緩し、地面は瞬く間に白く凍り付いていく。
アキラ「テメェ・・・さっきから黙って聞いてりゃ、
狂のことを好き放題言いやがって・・・」
半兵衛(口調が変わった?それに、この凍気・・・)
アキラが放つ冷たいオーラは、これまでの比では無かった。
烈火の如き闘気の昂ぶりが、触れる物すべてを凍りつかせていく。
アキラ「テメェなんぞが、狂を語るんじゃねぇぇぇぇぇぇッ!!!」
アキラの絶叫と共に、吹雪が吹き荒れた。
凍てつく氷の粒が風に乗って、容赦無く半兵衛の体に吹きつけた。
アキラ「死ねえぇぇぇぇっ!!!」
双剣を大きく振るうアキラ。
それと同時に、多量の氷塊が生み出され、津波の如く半兵衛に押し寄せた。
半兵衛「ぐぅぅぅぅっ!!!」
鋭く尖った牙を剥き出しにしてくる氷塊を、
半兵衛は何とか一部を砕いて凌ぐのが精一杯だった。
必死に応戦している内に・・・
アキラ「だぁぁぁぁぁッ!!!」
急速で接近したアキラが、双剣を振るい怒涛の連続攻撃を仕掛ける。
半兵衛の関節剣による、剣の舞に勝るとも劣らぬ、全包囲からの猛攻撃である。
しかも、剣に乗せて放たれる凍気が、半兵衛の体を削って行く。
半兵衛「ぐっ・・・はぁ・・・!!!」
いくら変幻自在に動く関節剣とはいえ、今のアキラの猛攻を防ぎきるのは不可能だった。
渾身の一振りをまともに食らい、半兵衛は、全身を凍らされて吹っ飛んだ。
19
:
藍三郎
:2006/09/23(土) 20:09:33 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
半兵衛「ぜぇ・・・ぜぇ・・・がはっ・・・はっ!!」
関節剣を支えにし、何とか起き上がる半兵衛。
しかし、その身はすでに満身創痍。
全身を裂傷と凍傷とズタズタにされ、もはや立っているのがやっとの状態である。
アキラ「・・・・・・」
そんな半兵衛を見て、もう気が済んだのか、
アキラ「ふぅ・・・私とした事が、少々頭に血が昇ってしまいましたよ・・・
見苦しい姿をお目にかけましたね・・・」
アキラはいつもの冷静な口調に戻っていた。
アキラ「その体ではもう戦えないでしょう。
ひ弱な軍師さんには、四聖天(わたし)の本気は強過ぎたようですね」
半兵衛「はぁ・・・はぁ・・・」
もう反論する元気も無いのか、半兵衛は荒い息を吐くばかりである。
アキラ「さて・・・散々狂の事を悪く言ってくれましたが・・・
あなたの主、豊臣秀吉も、人の事は言えないんじゃないですか?」
半兵衛「な・・・何だと?」
アキラ「この国を変えるだの、世界に進出するだの、口では大げさな理想を語りますが、
今のところ、天下を統一するのにも苦戦している体たらく・・・」
この上ない残酷な微笑みを浮かべて、アキラは続ける。
アキラ「それに、いくら戦力が欲しいからと言って、
誰でも彼でも自分の軍に引き入れようとするとは・・・
よほど懐が貧しいのでしょうか?
男の意地とか、誇り(プライド)などと
言ったものは無いのでしょうかね・・・クスクス・・・」
半兵衛「貴様・・・」
半兵衛の体が、幽鬼のようにゆらり・・・と動いた。
半兵衛「今、何と言った!?」
これまで虚ろだった目が、殺気でギラギラと輝く。
アキラの秀吉への侮辱が、彼の心に火をつけたのだ。
アキラ「ご希望とあらば、何度でも。
大言壮語にして、恥知らずの無能な山猿・・・それがあの男の正体ですよ」
半兵衛「貴様・・・今すぐその発言を撤回しろ!!!」
激昂した半兵衛の腕が、ビュン・・・と唸る。
それと同時に、手に握られた関節剣が、
紫の光となって伸び、アキラの肩口を抉り取った。
アキラ「ぐぅっ・・・!」
反応できぬ程の迅さで放たれた一閃に、アキラは成す術なく傷口を広げる。
半兵衛「秀吉を悪く言う人間は・・・誰であろうと許さん!!」
半兵衛の全身から黒紫色の闘気が噴出する。
大切な、そして尊敬すべき親友を侮辱された怒りが、
半兵衛に眠る闇の力を目覚めさせたのだ。
アキラ「おやおや・・・ようやくあなたも本性を見せましたか。
取り澄ました仮面が剥がれてきてますよ」
豹変した半兵衛に、アキラはシンパシーを覚える。
アキラ「お互い・・・冷静なのは表だけのようですね・・・おっと!!」
再度、光速で動く鞭がアキラを見舞った。
今度は素早くかわしたが、顔にかすり傷を負ってしまう。
今の半兵衛の剣は、アキラの心眼を持ってしても見切るのが難しい速さに達していた。
半兵衛「もういい・・・豊臣の軍に・・・いや、秀吉が治めるこの国に、
“狂と四聖天(おまえたち)”など必要無い!!今すぐ消してやる!!」
漆黒に染まった関節剣を振るう半兵衛。
舞い踊る鞭は怒涛の狂嵐となって、アキラに襲いかかる。
アキラ「いいでしょう・・・お互い、仮面を外して・・・
存分に、潰し合おうぜぇ―――――!!!」
アキラも自らの闘争本能を解き放ち、絶対零度の凍気を乗せた刃を繰り出す。
アキラ「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
半兵衛「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
全霊を持って繰り出される無限の刃がぶつかり合い、
氷と闇が奏でる黒白の交響曲(シンフォニー)を戦場に響き渡らせた。
20
:
藍三郎
:2006/09/23(土) 20:11:14 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
秀吉「鬼眼の狂・・・伝説のサムライと呼ばれようと、
所詮は、小鬼であったか」
「天地葬送」を食らい、倒れ伏した狂に近づいていく秀吉。
狂は倒れたまま、ピクリとも動かない。
全身血まみれで、生きているのかどうかも不明である。
そんな狂に、秀吉は拳を差し出す。一思いに、頭蓋を握り潰すつもりなのだ。
秀吉「さらばだ、伝説よ。貴様の死も、我が天地創造の糧となろう!!」
“伝説”が“覇王”の手により潰えんとする、まさにその時…
秀吉「―――――!!!!」
秀吉は、突然動きを止めた。狂を殺す事を躊躇したからではない。
心臓を鷲掴みにする程の悪寒が、秀吉の体を無意識に止めたのだ。
次の瞬間・・・活火山が噴火するかのごとく、膨大な量の殺気が溢れ出た。
全てを焼き尽くす煉獄の業火の如き、暴力と邪悪さに満ちた殺気である。
その噴火地点は・・・他ならぬ、鬼眼の狂だった。
狂「ククク・・・クハハハハ・・・」
笑い声を響かせながら、鬼眼の身体がゆっくりと起き上がる。
その全身から発散される闘気は、瀕死の人間とは思えぬものだった。
狂「ハハハハハハハ!!!!!アーーッハッハッハッハ!!!!」
鬼眼の狂は完全に起き上がると、その名の通り“狂”ったように笑い続ける。
豊臣軍兵士「あ・・・うわぁぁ・・・」
周囲のわずかな生き残り兵士達は、その狂の姿に一様に怯える。
狂が放つ邪気を浴びた者は、魂が吸い取られそうな感覚を覚え、
息苦しさに心臓が止まりそうになる。
その中で、ただ一人豊臣秀吉だけは、不動のまま狂を睨みつけていた。
狂「クハハハハ・・・やってくれんじゃねぇか、山猿!!」
哄笑の後、真っ直ぐに秀吉を睨む狂。
その紅き眼からは、これまで以上の禍禍しい輝きが放出されている。
狂「山猿相手に、人間サマが本気を出すのも大人気ねーと思ってよぉ・・・
ちぃと力を抑えてやってたら調子に乗りやがって・・・」
これまでに受けた痛みなど、毛ほども感じない不遜ぶりで、狂は秀吉と相対する。
彼が持つ長刀“天狼”も、狂の闘気に呼応して鋭く輝く。
狂「いいぜ、見せてやるよ!!
鬼眼の狂の本気(マジ)ってヤツをな・・・!!」
人差し指を天に向け、狂は秀吉に上等を切った。
21
:
藍三郎
:2006/09/24(日) 16:46:13 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
○戦国BASARA外伝 「鬼眼」対「覇王」!! 其の漆○
アキラ「夢氷月天!!」
振り下ろした双刃から、粉雪が飛び散り、
生み出された氷塊が怒涛の如く押し寄せる。
半兵衛「華やかに――――!!」
一方の半兵衛も、光速で関節剣を振るい、迫り来る氷を跡形も無く砕き散らす。
アキラ「フフッ・・・やりますね・・・
文武両道に長けた天才軍師との評判は耳にしていましたが・・・
まさかこれほどとは・・・!」
ここまで来て、アキラは竹中半兵衛と言う男に、
底知れぬ強さがある事を認めぬわけにはいかなくなった。
そう、鬼眼の狂や、四聖天と同じ、
“侍を極めし者(サムライ・ディーパー)”の領域に、目の前の軍師は踏みこんでいた。
アキラ「ですが、あなた相手にこれ以上梃子摺るわけにはいきません・・・
私は止まるわけにはいかない・・・走り続けなければならない・・・
何故なら、私が目指す漢の背中は、遥か先にあるのですから・・・!」
半兵衛「なるほど・・・君は鬼眼の狂の強さに憧れ、
それを追いつきたい・・・だから彼の側にいるわけか・・・」
アキラ「そう・・・私はさらなる高みに上り詰める。
最強の漢をふりむかせ、そして闘いたい。
私がその漢の次に強い、この世で二番眼に強い漢になったことを証明するために―――!」
次の瞬間、凍えそうな程の冷気が、辺りを包んだ。
そして、二人の周囲から大きな氷柱が、幾つも立ち昇り出した。
地面を突き破って伸びる氷柱は、やがて幾重にも重なり合い、
巨大な氷の繭を造りだし、その胎内にアキラと半兵衛を捕らえる。
半兵衛「氷の・・・結界!」
全包囲を氷で閉ざされた結界の中にいるのは、
相対するアキラと半兵衛のみである。
アキラ「竹中半兵衛・・・あなたの実力に敬意を評してお見せしましょう・・・
この四聖天のアキラの・・・“氷繭星霜(ひょうけんせいそう)”を・・・!」
半兵衛「氷繭星霜・・・だって?」
アキラ「私の氷の結界に取り込まれた者は、
私が結界を解かない限り、中から抜け出す事はできない・・・
ただただ、ここでなぶり殺しにされるしかないんですよ・・・つまり・・・」
手にした一刀の切っ先を、半兵衛に向ける。
アキラ「・・・あなたはここで、死ぬということです」
自信に満ちた微笑を浮かべ、死刑宣告を下す。
半兵衛「フ・・・随分な自信だね。けど、ここから抜け出す方法はあるよ」
周囲を氷で覆われた異常な状況にも、表情を崩さず冷静に対処しようとする。
半兵衛「結界の創り手である君を排除すれば・・・それで終了さ!」
半兵衛の手で、関節剣が踊る。
唸りを上げて迫る鞭は、アキラの身体を袈裟懸けに両断した――――
半兵衛「!!!」
パリン・・・という音と共に、アキラの姿に真っ直ぐ亀裂が走る。
半兵衛が両断したのは、アキラ本人ではなくアキラの姿が映し出された氷だった。
氷は砕け散り、飛び散った破片が半兵衛の身体を襲う。
半兵衛「くっ・・・割れた氷の破片が、襲ってくるだって!?」
とっさに身をかわすが、幾つかの礫により体に傷を負ってしまう。
アキラ『どうしました・・・?』
半兵衛「!!」
後ろからアキラの囁き声が聞こえる。
半兵衛はとっさに鞭を振るい、背後のアキラを曲線を描いて切断する。
だが、これもアキラの姿を映しただけの氷像。
砕け散った氷が、またもや半兵衛の身体を傷つける。
半兵衛「ぐっ・・・!」
アキラ『どこを向いているんです?』
アキラ『私はここですよ?』
周囲から、アキラの声が重なって聞こえている。
まるで、複数のアキラがいるかのように・・・
アキラ『こっちです・・・どうしました?』
アキラ『私はこっちです・・・』
半兵衛「な――――!?」
半兵衛は驚愕した。
周囲を覆う氷柱には、無数のアキラの姿が映り、
不敵な笑みを浮かべて半兵衛を取り囲んでいたのだ。
半兵衛は、まるで万華鏡の中に放りこまれたかのような酩酊感を覚えた。
22
:
藍三郎
:2006/09/24(日) 16:47:12 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
アキラ『さぁ・・・死んでもらいましょうか!!』
氷に映ったアキラが刀を振るって仕掛けてくる。
半兵衛はとっさに反撃し、関節剣でアキラの幻影を切り裂く。
しかし、やはり砕けた氷が、半兵衛の身体を抉っていく。
アキラ『わかりましたか?あなたはここで死ぬと言う意味が・・・』
アキラ『この氷の結界・・・“氷繭星霜”の中では
私の実態をとらえるのはもちろんのこと、ここから抜け出す事も不可能――――』
アキラ『そして、自らが壊した氷片によって、
自らを傷つける無限地獄があなたの生命力を削り取っていくのです』
蜃気楼の如く立ち並ぶ無数のアキラが、穏やかな笑顔であざ笑う。
半兵衛(これが・・・これが・・・四聖天アキラの真の実力・・・!)
氷繭星霜・・・アキラが言った通り、アキラ本体を捕らえられない以上、
この氷の牢獄を抜け出す事はできない。
飛び散る氷の破片にじわじわ体力を削られ、死に至るしかない。
まさに、絶対無敵と呼ぶに相応しい技である。
アキラ『竹中半兵衛さん・・・あなたは確かに、文武双方に秀でた天才です・・・
狂に戦場で拾われたただの子供だった私などより、
侍として、軍師として、遥かに恵まれた才能を持っている・・・』
半兵衛「へえ・・・君にそんな生い立ちがね・・・」
アキラ『ですが、私は、真の侍である狂に少しでも近づくため、
数限りない努力を重ねてきました・・・
その努力の結晶こそが、四聖天たる今の私です。
恵まれた才能を振るうだけのあなたには・・・決して砕く事はできませんよ!!』
半兵衛「努力・・・か・・・・・・!!」
胸の奥で例え様も無い不快感が蠢くのを半兵衛は感じた。
半兵衛「がっ・・・!ごほっ!ごほっ!!」
激しく咳込むと、口から血を吐き出す半兵衛。
口元に翳した掌が赤く染まる。
アキラ『おや・・・随分弱っていらっしゃるようですね・・・まぁ、無理もありませんが』
アキラは半兵衛の吐血を、戦いにおける体力の消耗の為と判断した。
だが、実際は違っていた。
半兵衛(恵まれているのは・・・君の方だよアキラ君・・・
君は、鬼眼の狂に追いつくという目標に向かって、
数え切れない努力を続けられるだけの時間がある・・・)
胸の中の不快感を抑えながら、半兵衛は思考を続ける。
半兵衛(だけど・・・僕には時間(それ)が無い・・・
現在(いま)あるだけの才能(ちから)を削って闘うしか・・
夢を叶える道は残されていないんだ)
己が身体に巣くう病魔は、刻一刻と半兵衛を蝕んで行く。
半兵衛(僕には未来は無い・・・だからこそ、秀吉が創る輝かしい未来の為、
この命の灯火を燃やし尽くす事に・・・何の躊躇いも無い!!)
半兵衛「そう・・・僕も立ち止まっている暇なんてない・・・!」
半兵衛の瞳に生気の炎が灯った。
蹲っていた体を起こすと、ビュン・・・と関節剣を振るう。
アキラ『何をするつもりですか・・・?』
アキラ『悪あがきをしても無駄ですよ・・・
せめて、枯れる前に散りなさい・・・!』
一思いにとどめを刺さんと、氷柱に映る無数のアキラが一斉に斬りかかる。
半兵衛「この先には・・・僕の夢がある!!」
次の瞬間、半兵衛から膨大な量の黒い闘気が爆裂した。
輝く闇の闘気が、氷の繭を黒く染める。
半兵衛は宙に浮き上がると、限界を超えた速度で鞭を振るう。
ビュォォォォォォォォ―――――――――
鞭は縦横無尽に空間を切り裂き、全周囲を駆け巡って行く。
紫色の光を帯びて舞い踊る鞭は、半兵衛を中心として、
触れた物全てを破壊し尽くす漆黒の球体を作り出して行った。
アキラ『こ、これはっ・・・!?』
徐々に半径を増す鞭の空間は、アキラの姿が映った氷柱を砕いていく。
飛び散った氷の破片すらも、鞭の嵐に飲みこまれ、塵屑になるまで粉砕される。
やがて・・・
激しく荒れ狂う鞭の乱舞は、氷の繭を突き破り、
中に居るアキラもろとも、内側から“氷繭星霜”の結界を吹き飛ばした―――
23
:
ゲロロ軍曹(別パソ)
:2006/10/02(月) 10:36:29 HOST:150.55.133.214[pc3f055.std.ous.ac.jp]
=嘘予告=
とある日曜日、山本武(やまもと たけし)はいつもの如く野球部の練習をし終えて、家路についていた。だがその途中、チンピラに襲われかけてる女の子を発見した・・。
ほおっておくわけにもいかないので、チンピラを適当にのして、その女の子を助けてあげた・・。
山本「ふう〜・・。あ、だいじょぶか?どっか怪我とかは??」
?「あ・・、い、いえ・・、大丈夫です。特に問題はありませんです・・。」
山本「そっか。(笑み)まあ、ここいらは結構物騒らしいから、気をつけたほうがいいぜ。・・んじゃな。」
そういって山本はその場を立ち去ろうとする・・。しかし、少女は慌てて「ま、待ってくださいです!」と呼び止める・・。
山本「?」
?「あの・・、あなたの名前は・・??私は、『綾瀬夕映(あやせ ゆえ)』です・・。」
山本「ふ〜ん、「ゆえ」、か・・。変わった名前だなぁ〜・・。あ、俺は山本、山本武な。」
夕映「山本さん・・、ですか。・・助けていただいて、感謝してますです・・。(ぺこり)」
山本「気にすんなって。あ〜いうのは、正直見逃せなかったからさ・・。それじゃ、俺もう行くから。今度から気をつけろよ。」
そう言い終えて、彼は急ぎ足で帰っていく・・。その後姿を、夕映は黙って見るのだった・・。
それから少したって、彼女と彼はふとしたことで再会する・・。
夕映「あ・・、あなたは!?」
山本「ん?・・あ、あんた、あん時の!?」
再開した彼らはいい雰囲気で会話をし・・、彼らの周りの者たちも二人を見て、さまざまなリアクションを取る・・。
ツナ「へえ〜、山本とあの女の子って、知り合いだったんだぁ・・。」
獄寺「10代目・・なんつーか、あいつらのほわほわした雰囲気、はたから見てたらむかつくんで、ぶっ壊していいすか・・?(怒)」
ツナ「だ、だめだってば!?ほら、ダイナマイトしまってよ、獄寺君!!(大汗)」
リボーン「ほぉう・・、こいつは面白くなりそうだな・・(にやり)。」
ハルナ「な、なななななぁ!!し、信じられん!あの夕映からすさまじいラブ臭がぁ!?まさか、あの男の人に惚れちゃってるのかぁぁ、そうなのかぁぁぁ!??」
のどか「は、ハルナ、おちついてぇ〜〜、ほ、ほかの人が見てるよぉ〜(///)」
・・若干一名、暴走気味な同人女もいたりする・・(汗)
色々な騒動もあいまって、はたしてどうなる、この恋愛(?)!?
夕映「・・や、山本さん!」
山本「?どしたんだ??俺に何か相談事か??」
夕映「そ、そうではなくて!そ・・、その・・・、わ、わ、私は、あなたのことが・・!!」
家庭教師ヒットマンREBORN!番外編(×魔法先生ネギま!)
『山本、惚れられる?!』
公開予定・・・、今のところなし!!(をぃ!?)
24
:
藍三郎
:2006/10/09(月) 22:51:57 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
=嘘予告=
レクイエム・シティ・・・
それは、血と暴力、背徳と狂気、享楽と貧困が支配する暗黒の街・・・
マフィア同士の抗争が絶えないこの街に、あるウワサが流れた・・・
そして、それが街全土を巻きこむ、血と殺戮の宴の引き金となる―――
ガイ「なぁ、聞いたか?レイ。
ボンゴレ・ファミリーの隠し財産の噂をよ」
レイ「ああ・・・時価にして数千億は下らないらしいな・・・」
ガイ「ククククク・・・それだけの金があれば、一気にこの街の権力を握る事ができーる!!
財宝は、俺達クエスターがいただーく!!」
一方、街中では、正体不明の殺人鬼による大量虐殺事件が発生し、
マフィアに怯える一般人を、さらに恐怖のどん底に叩き落していた。
一角「ちっ・・・こりゃまた、ひでぇモンだな・・・」
三人組の前に広がるは、赤で染めあがった死体の山。
老若男女区別無く、平等に凄惨な死が与えられている。
弓親「フッ・・・何でも、殺人鬼はまだ幼い少女だそうだよ・・・
それも、月明かりの下で見るその顔は美しいとか・・・
是非、お目にかかってみたいものだね・・・」
剣八「はっ・・・くだらねぇな・・・
こんな雑魚ども殺して、何が愉しいんだか」
一角「ところで隊長・・・街中でウワサされてる例の隠し財産、マジなんすかね・・・」
剣八「金なんざどーでもいい・・・だが・・・」
顔中に傷の走る眼帯の剣士は口元を、残忍な笑みで歪める。
剣八「そいつが火種となって、
もうじきこの街で、でっけぇ祭(いくさ)が始まりそうだぜ・・・」
やちる「剣ちゃん、楽しそう・・・♪」
クローム「街中のマフィアの動きが慌しくなっているようです・・・」
骸「クフフフフ・・・隠し財産ですか・・・
浅ましいものですね・・・欲に憑かれた亡者どもは・・・」
クローム「いかがいたしますか?骸様」
骸「決まってますよ・・・僕の可愛いクローム。
今こそ、全てのマフィアを滅ぼす時・・・
そして、この腐りきった世界を、純粋で美しい血の海に変える・・・クフフフ・・・」
暗い路地に響く男と女の声。だが、小さな月光に照らされる姿はただ一人。
矢車「俺達はもう・・・表の世界も裏の世界でも居場所は無い・・・」
影山「なら、全て壊してやる。何もかも・・・!!」
矢車「この街の全てを・・・地獄に落とそう・・・」
剣「俺はマフィア界においても頂点に立つ男だ!!
悪しきマフィアを全て斬り捨て、
ディスカビル・ファミリーが、この黒い街を浄化する!!」
じいや「剣坊ちゃま¥・・・素晴らしい志にございます・・・!」
剣「見るがいい・・・名剣、ディスカリバーの輝きを!!」
一方、治安当局では・・・
白哉「本部より指令が下った・・・シティ内で局員は全員抜刀許可。
不穏な動きをする者は全て斬り捨てろ」
雲雀「いいね。街を汚すゴミは全員・・・咬み殺そう」
マーモン「予想外に、ウワサの流出が早かったね」
レヴィ・ア・タン「クッ、もう少し早く内通者を始末できていれば、こんな事には…」
ルッスーリア「まぁ、過ぎた事を悔いても仕方ないわよ。レヴィ」
ベルフェゴール「いいじゃん、俺らに刃向かうゴキブリを一掃する、いい機会じゃね?」
スクアーロ「う゛お゛ぉい!!面白くなりそうだなぉ!!」
ゴーラ・モスカ「・・・・・・(キュン、キュン・・・」
隠し財産を守護すべく、喪服を纏いし7人の殺戮者・・・
ボンゴレ最強暗殺部隊・ヴァリアーが動き出す。
XANXUS「・・・あれは俺の財産(モン)だ。
手ぇつける奴は誰だろうと―――――かっ消せ」
ラズロ「ククッ、明日は雨になりそうだぜ」
コルテッサ・ファミリーの若き首領は、暗雲立ちこめる窓の外を見やる。
バルデス「雨・・・ですか?」
ラズロ「そうだぜぇ。もうじき街にゃ血の雨が降る・・・
全てを赤く染めるまで止む事のない、真っ赤な雨がな・・・」
25
:
藍三郎
:2006/10/09(月) 22:53:47 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
そして、血で血を洗う死闘の幕が上がる―――
ルッスーリア「あ〜ら、中々可愛いボウヤね。私と遊ばな〜い?」
弓親「ふぅ・・・醜すぎる・・・僕の美的感覚を汚す存在だよ・・・」
レヴィ「俺達のボスのため・・・貴様には死んでもらう・・・!」
一角「親分のために命懸け・・・俺とアンタは似たもの同士かもな・・・」
レヴィ「来い・・・どちらのボスが格上か・・・部下の強さが証明する!」
一角「そうかよ。なら、絶対に負けるわけにはいかねぇなァ!!」
スクアーロ「う゛お゛ぉい!!貴様、何枚に下ろして欲しい?」
ラズロ「そうだなぁ・・・今日の晩飯は、魚の生け作りってのも悪くねぇ。
俺様がてめぇを刺身にしてやるよ、鮫野郎!!」
スクアーロ「ガキがぁ・・・ボスだからってイキがってると、死ぬぞぉ!!」
ラズロ「XANXUSの飼い犬だけあって、吼えるのだけは一丁前だな。
教えてやるよ。下っ端のパシリと、俺様の格の違いをな!!」
ベルフェゴール「へぇ〜〜アンタが噂の美少年殺人鬼?本当に女みたいだな」
マーモン「サーカスに売ったら、いい金になりそうだね」
彼らの前に広がるは、血と骸の海。
その上に、血まみれの少年が立っていた。
天使の美貌を持つ少年は、殺戮の快感に酔いしれている。
エイトヴィー「んふぅ・・・
君のその王冠、綺麗だね・・・僕にくれないかな?」
ベルフェゴール「やーだよ。だってこれ、王子の証だもん」
エイトヴィー「くれないの・・・じゃあ・・・首ごと貰っちゃおっと♪」
ベルフェゴール「うしししし。そんじゃ、俺はそのつぶらな瞳を抉るとすっか♪」
剣八「よぉ、俺は更木組の剣八ってモンだ。ザンザスって猿山の大将は、てめぇか?」
XANXUS「金に群がる野良犬が・・・俺の傍に近寄るな」
剣八「財産なんざ興味ねぇ。俺は、てめぇと喧嘩しに来ただけだ」
刀身が刃こぼれした日本刀を、肩に担ぐ。
XANXUS「狂犬が・・・噛みつく相手は選んだ方がいい・・・死ぬぞ?」
その拳に、全てを灼(や)き払う暴力的な輝きが灯る。
エイトヴィー「んふふふふ・・・ハハハハッ・・・アハハハハハハ・・・」
全身を鮮血に染め、殺戮の快感に、彼の精神は彼岸へと飛んでいた。
怯える犠牲者を容赦なく切り刻み、
苦痛と死の恐怖に歪む顔を眺める事こそ、彼の最高の快楽。
しかし、ひとときの快楽を得ても・・・それで彼が満たされる事は無かった。
そんな時・・・“赤い服の少年”が現われた。
ラズロ「はっ、そんな虫どもをプチプチ潰して、楽しいかよ?」
エイトヴィー「君は・・・」
ラズロ「どーよ。この俺様が、もっと気持ちイイこと、教えてやるぜぇ?」
エイトヴィー「いい匂いだ・・・僕と同じ、血の香りがする・・・」
即座に直感した。彼は、「自分と同じ」だと・・・
エイトヴィー「君なら・・・君なら僕に味わわせてくれるかな?
本当の“カイカン”を・・・」
体が疼く。こんな相手は初めてだ。
今すぐ切り刻んで肉塊にしたいと望む一方で、
逆に彼に殺められたいという欲望が芽生えている―――
ラズロ「クククク・・・いいぜぇ。たっぷり、ヨガらせてやる・・・
身も心も、俺様のモノにしてやるよ――――」
血の匂い立つこの街で、闇に魅入られた二人の少年は出逢う・・・
二人は、血塗られた赤い糸で結ばれていた・・・
背徳の街を舞台とした血と闇の抗争劇・・・
ノワール巨編「血染めの鎮魂曲(ブラッディ・レクイエム)」
公開時期・・・・・・・・・・未定(え
26
:
藍三郎
:2006/10/23(月) 21:40:31 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
○戦国BASARA外伝 「鬼眼」対「覇王」!! 其の捌○
死の淵より目覚めた鬼眼の狂は、長髪を幽鬼の如く靡かせ、
邪悪に満ちた闘気を振り撒きながら、秀吉と相対していた。
秀吉「鬼め・・・黄泉の淵から舞い戻ってきおったか・・・」
眼を合わせただけで死に至る程の殺気を、真っ向から受け止める秀吉。
しかし、きつく締めた顔の内側では、鬼眼の漢の鬼気をひしひしと感じていた。
秀吉(我が・・・この豊臣秀吉が、震えているだと・・・)
手甲で固めた両手が、じっとりと汗ばむ。
この感覚は、久しく味わった事が無い。
秀吉(恐れているのか・・・いや・・・これは昂ぶり。
一軍の将としてではない・・・
我の武人としての魂が、あの漢との闘いを望んでいるというのか・・・!)
象が蟻を踏み潰すが如く、秀吉はその圧倒的な力で戦場を蹂躙して来た。
それにより、何よりも欲する勝利は得られたが・・・
その分、戦いにおける昂揚感と言ったものは味わえなくなっていった。
だが・・・目の前の鬼・・・
最強と言われる伝説のサムライならば・・・
秀吉(久々に出来るかもしれぬ・・・
闘争の喜びに魂を焦がす事のできる、真の死合が・・・!)
狂「オラオラ!何ぼうっと突っ立ってんだぁ?
来ねぇなら・・・こっちから行くぜぇぇぇぇっ!!!」
血に染まった刃を紅く煌かせ、疾風となって狂は殺到する。
腕が躍動し、天狼が宙を舞う。
狂は一欠けらの怖れも無く間合いに踏みこむと、最初から致命の一撃を繰り出した。
秀吉「ぐっ・・・!!」
腕を振り上げ、手甲で防御する秀吉。
しかし、狂の一撃は先ほどとはケタが違っていた。
腕を痺れさせるほどの衝撃が、手甲を通して秀吉の身体に走る。
狂「シャァァァァァァァッ!!!!」
狂は高めた闘争本能を刃に乗せ、剣を振るう。
振り下ろされる刃の一撃一撃が、これまでとは比べ物にならないほど重い。
秀吉「ぐ・・・頭に乗るな!!」
狂の猛攻を、雲をも引き裂く拳の一振りで弾く秀吉。
秀吉「地獄こそが、鬼の居場所にふさわしい。おとなしく黄泉路へ逝くがよい!!」
まさしく突風の如き加速で、狂の元に接近すると、鋼をも撃ち砕く鉄拳を放つ。
狂「ハッ、オレは死なねぇよ」
狂は首を横に逸らして、頭蓋を叩き割られるのを避ける。
秀吉の拳圧を浴びた髪が、瞬く間に消し飛ぶ。
狂「地獄の閻魔も、
オレ様が来るのは嫌がるだろうからなァ!!!」
拳を打ち、無防備となった秀吉の脇腹に、狂は抜刀を繰り出す。
秀吉「ぐぅっ・・・!!」
初めて受けた剣の直撃に、秀吉はやや顔を歪める。
鋼鉄をも切り裂く狂の刃を受ければ、とうに胴が真っ二つになっているはずだが、
秀吉の驚異的な筋力が、刃を弾き返していた。
それでも、神経に響く激痛は相当なもの。
並の人間なら、ショック死していてもおかしくない。
狂「ホウ・・・刀でも斬れねぇたぁ、筋肉ダルマもここまで行けば大したモンだぜ」
天狼を肩に担ぎ、秀吉と対峙する狂。
狂「だが・・・“コイツ”ならどうかな?」
狂は刀を降ろし、闘気を高めて行く。
秀吉「無明神風流の業を放つつもりか・・・?
愚かな。貴様の“みずち”とやらが、我に通用せぬ事はわかっておろう!」
秀吉の言う通り、狂の“みずち”は、秀吉の気合一閃でかき消されてしまった。
狂「残念だが、“みずち”じゃねぇよ。山猿、てめぇに見せてやる・・・」
狂は不敵な笑みを浮かべた。
狂「無明神風流奥義・・・“朱雀”をな!!」
27
:
藍三郎
:2006/10/23(月) 21:41:19 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
秀吉「奥義だと・・・」
神の風を吹かすと言われる伝説の流派・無明神風流。
その中でも、奥義とまで称される業は、想像を絶するものであるはずだ。
秀吉は、得体の知れぬ奥義に対する興味と・・・期待感が高まっていくのを感じた。
秀吉「フッ・・・よかろう・・・我に吹かせてみせよ!!神の風を!!」
秀吉の挑発に、狂は笑みで応えた。
長刀・“天狼”をゆらりと上に上げ、水平に構える。
その刀身には、爛々と輝く紅き眼が映し出されていた。
狂「無明神風流奥義―――――」
狂の内で限界まで高められ、抑えられた闘気が、放出の一瞬(とき)を迎える。
狂「朱雀――――!!!」
瞬間、爆裂する闘気が紅き閃光となって、狂の体から溢れ出た――――
秀吉「!!!」
秀吉は一瞬、我が目を疑った。
彼の眼前に降臨したのは、ありうべからず存在だったからだ。
それは、炎の鳥だった。
燃え盛る灼熱の業火を身に宿す、巨大な神鳥。
煌く炎を全身から放ち、焔の両翼を広げて飛翔する様は、美しく荘厳でさえある。
その姿―――まさしく伝説のみに語られし神の鳥・・・“朱雀”そのものだった。
秀吉(否・・・これはまやかし・・・!)
たとえ神の名を持つ奥義とはいえ、本物の朱雀が降臨したわけではない。
鬼眼の狂が放つ圧倒的な闘気と大気の流れが、“朱雀”の姿を形作っているのだ。
秀吉(退くか・・・護るか・・・)
眼前に顕現した“朱雀”を見るだけで、狂の闘気がどれほどのものかわかる。
以前に放った“みずち”とは比較にさえならない。
あらゆる物をその爪で切り刻み、
焔の翼で吹き飛ばす紅蓮の神鳥が、秀吉を滅さんと押し寄せて来る―――!!
秀吉「否・・・我に後退は無い!ただ前進勝利あるのみ!!」
退かず、媚びず、武帝に敗走は許されない。
秀吉は一歩も退く事なく、迫り来る火の鳥へと己の体一つで突撃する。
秀吉「我が見据えるは未来!!斯様なまやかしに、惑わされはせぬ!!!」
秀吉の中には、一欠けらの怖れも無かった。
猛威を振るう“朱雀”に、真っ向から己の闘気を叩きつける。
狂に勝るとも劣らぬ闘気に当てられ、“朱雀”はその形を崩される。
もはや敵は“朱雀”ではない。
秀吉の双眸には、鬼眼の狂の太刀筋のみがはっきりと映っていた。
秀吉「朱雀!!見切ったり!!」
拳にあらん限りの闘気を溜め、紅く輝く掌を狂目掛けて撃ち出す。
妖刀と豪拳が激突し、互いの闘気が激しく反発する。
狂「シャァァァァァァァァッ!!!!」
秀吉「ぬぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
高めに高めた暴力(ちから)が、互いを呑みこまんと喰らいあう。
“朱雀”を降臨させるほどの狂の闘気は、やはり桁外れ。
だが・・・・・・
一発の拳に全精力を傾けた秀吉が・・・この時、わずかに勝った。
秀吉「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
均衡の壁を突き破り、秀吉の拳が、“朱雀”の頭部にめり込む。
拳に乗せられた闘気の渦は、“朱雀”の首をへし折り、焔の翼を消し飛ばして行く。
その圧倒的なまでの拳圧に押され・・・狂の体は地に叩き伏せられた。
秀吉「終わりだ!!鬼眼の狂!!!」
燃える最強の火の鳥は、神すら屠る覇王の拳により粉砕された。
奥義を破られた狂は血まみれになり、膝を突いたままぴくりとも動かない。
あれだけの闘気を放った以上、もはや鬼眼の狂は全ての力を使い果たしたはず。
もう一方の拳で、狂の脳天目掛け渾身の一撃を放つ。
28
:
藍三郎
:2006/10/23(月) 21:42:01 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
この一撃で、終止符が打たれると思われたが・・・
秀吉「――――――!!?」
秀吉は突然、振り下ろした拳をぴたりと止めた。
情けを掛ける気になったのではない・・・
秀吉の意思とは無関係に、拳を止めてしまったのだ。
秀吉(体が・・・動かぬ!?)
動かないのは腕だけではない。
秀吉の全身が、まるで金縛りにでもかかったように動かせないのだ。
秀吉(馬鹿な・・・!?)
いつの間にか、目の前で倒れていた鬼眼の狂が消えていた。
それでも、秀吉は指一本動かせず、呼吸すら出来ない。
そんな秀吉の視界に・・・紅の翼が通り過ぎた。
秀吉(鳥―――――)
大空に視線を移す秀吉。
そこには、巨大な火の鳥が、紅蓮の両翼を広げて飛んでいた。
己の拳によって、粉々に砕かれたはずの“朱雀”・・・
それが再び目の前に復活しているのを見て、秀吉は全てを理解した。
秀吉(そうか・・・“朱雀”とは・・・
不死鳥の如く死してなお再び甦るもの・・・
たとえ五体を引き裂かれようとも、死の淵から何度でも甦る――――)
狂「豊臣秀吉・・・お前も感じだたろう?
不死鳥(朱雀)の生命(いぶき)を――――――!!」
天空から襲い来る鬼眼の一閃。
全ての動きを封じられた今の秀吉に、それをかわす術は無かった。
秀吉「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
巨人の肉体に、稲妻のごとき一直線の亀裂が走る。
裂けた傷口から大量の鮮血が吹き出て、秀吉の体を紅く染めた。
29
:
藍三郎
:2006/10/23(月) 21:42:49 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
秀吉(これが・・・これが、“朱雀”か・・・!!)
ばっくりと開いた傷口から、凄まじい激痛が走る。
これほどの手傷を負わされたのは、戦に望んでから初めての経験である。
並みの剣では傷一つつけられぬ秀吉の鋼の肉体。
それにここまでの深手を負わせたのだから、
“朱雀”が如何に強大な破壊力を秘めているのかがわかる。
だが・・・“朱雀”の真価は、単純な業の破壊力ではない。
例え一度技がかわされたり、競り負けたとしても・・・
次の瞬間、相手の動きを止めてしまう二段構えの“絶対防御不可能技”なのだ。
相手に与えるダメージは計り知れない、一撃必殺の大技・・・
まさに、“奥義”と呼ぶに相応しい業である。
秀吉は既に満身創痍だった。
多量の出血に、意識は朦朧とし、肉体と精神の両面で秀吉の力を奪って行く。
即死していてもおかしく無いほどの傷。
脳が悲鳴を上げ、倒れるようにと指令を出す。
しかし・・・死の淵に立って尚・・・
秀吉「膝は・・・突かぬわ!!!」
狂「!!!」
豊臣秀吉は・・・“覇王”だった。
秀吉「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
巨体を翻すと、猛然と狂に襲いかかる秀吉。
狂は完全に虚を突かれた。
いや、決して油断していたわけではない。
だが、瀕死のはずの秀吉が放った、獰猛な闘気に、一瞬だが呑まれてしまったのだ。
秀吉は反撃の隙を与えず狂の腕を掴むと、膂力に任せて地面に叩きつけた。
狂「ゴハァッ!!!」
骨が数本折れる音が聞こえた。
その後も秀吉は、何かに憑り付かれたように
何度も何度も狂を固い地面に叩きつけていく。
今の秀吉は、己の内に眠る野性を解き放っていた。
もはや肉体は、“朱雀”のダメージで限界を迎えている。
それでもここまで体を動かせるのは、
決して倒れる事の許されぬ“覇王”としての誇りと信念が、
彼に肉体を凌駕する力を与えていた。
秀吉「我、改天換地せん!!!」
これでもかと狂を叩きつけた後、全身に紅いオーラを纏って飛翔する秀吉。
奥義、“朱雀”を使った事による負担、
そして、秀吉の猛反撃によって、狂の体はボロボロだった。
狂「――――――!!!」
狂は、その紅い眼にしかと捕えた。
赤き巨星となった秀吉が、自分の下へと舞い降りてくるのを―――――
戦場を揺るがすほどの轟音が、周囲を駆け巡る。
大地が裂け、膨大な土煙が中空へと舞いあがった――――
30
:
暗闇
:2006/10/28(土) 00:33:03 HOST:softbank220020057170.bbtec.net
※この話はSAMURAI DEEPER KYOとサムライスピリッツのクロスオーバーです。
SAMURAI DEEPER SPIRITS 序の章
光があれば闇がある。正があれば、死がある。
然るに、物事はすべからく表と裏が隣り合う。これを陰陽という。
しかし、陰陽もまたひとつの表でしかない。
陰陽とは即ち事の成り立つ理である。
では、成り立たぬこととは如何なるものか。
それ即ち、無。有と対なす、無である。
男の魂は無にあった。
光も闇もなく、正も邪もなく、生も死もない。時すらもないそこにあって、男はただ空であった。
……と、何かが触れた。
冷え切った男の魂は、ほんの僅かにだが揺れた。
―――なんだ、この心地は―――
そう思ったとたん、男の魂は声を聞いた。
―――お前の心、まだ死してはおらぬな―――
高くも低くも、また太くも細くも聞こえる声に言われ、彼はしかし戸惑った。
―――……死だと?―――
―――お前の肉は生きておらぬ。しかし、魂は死んでおらぬ―――
―――肉が、生きていない……―――
男の魂がかすかに震えた。
そして。
―――そうだ、オレの身体は―――
男は見た。
炎の中、己の身が深く切り裂かれるさまを。
焼け落ちる寺の中で炎に己の顔を灼かれゆくさまを。
―――どういうつもりだ?なぜオレにこの光景を見せる?―――
男の魂の揺れが激しくなった。
だが、答えはなかった。
代わりに、
―――お前に力を貸そう―――
―――……力、だと―――
そう問うてみると、さよう、と返された。
31
:
暗闇
:2006/10/28(土) 00:33:53 HOST:softbank220020057170.bbtec.net
―――何の為の力だ―――
―――お前には、討たねばならぬ者が居るであろう―――
そして、またも見た。
燃える寺の中、彼の目の前に立つ、一人の子供。
小さな身体から繰り出される剛剣と巨大な闘気で彼の力を弾き、自分を斬った血色の眼をした鬼子。
―――敗れたオレが、その時あいつに言った言葉―――
彼は小さく震えた。
確かに蘇ってくるあの時、鬼子に言った言葉が……
『キサマも天下人であるオレを引きずりおろしに参ったのか……まだ“無”ではないと……終わりではないということか……面白い、ならば……人の世のみならず、神の世界をも我がモノとしてくれよう!!』
――あの小僧――
――討たねばならぬ者が居り、夢という名の呪いをかけた者が居る――
言われて彼は、己の記憶の深淵に、その言葉をしかと見つけた。
『小僧、キサマは天下人<頂点>で見る景色がどんなものか考えたことはあるか……?
それは“無”……“虚無”なのだ……
あれほどまで欲していた天下<頂点>も昇りつめてしまえば、目指していた時の燃え立つ気持ちも魂を焦がしていた想いもすべて消え失せてしまう……
“夢”は手に入れ、“現”になったとたん儚く露と消えてなくなる……
……だが、今のオレは違う……オレはキサマとの闘いで昔を思い出すことができたのだ……
オレが本当に天下人になりたかった本当の理由……それはただただ強く……真の“強さ”を手にしたかっただけだったと……
……わかるか?小僧……
漢である以上、侍である以上、刀でしか語れぬものがある。
闘うことでしか見つけられぬ己がいる。
それだけが……闘いの本当の意味であるということを―――
だからオレは滅びぬぞ……
オレの魂は闘いの中にこそある。
キサマに勝ち、このオレの存在を証明し、再び“最強”という夢をつかむのだ……
そのためならば幾度でも蘇ろう
そして……ともに往こうぞ、闘いのはるか先へ―――』
腹を深く裂かれながらも、どうにか吐いたそれこそまさに、彼の今際の際の言葉。
男の魂は無言に震えた。冷えたはずのその魂が、次第に熱を取り戻す。
―――その後、お前は神の一族の力を借り、言った通り幾度も蘇りを果たし、あの鬼子と戦い、そして敗れ続けてきた―――
―――そうだった……オレは神に頭を垂れてでも、あの鬼子との決着を……野望<夢>を追い続けた……最後に死合った時は不覚にも当初のそれを忘れかけ、また敗れる結果になってしまったが―――
―――そう、だからお前はそのいくつもの死に様をさらしたにもかかわらず、ここにおるのだ―――
―――むっ……―――
―――即ち、お前は死んでも死にきれぬのよ―――
そう言う声には、心なしか嗤いが含まれているようにも思えた。だが男はそれに気づきはしなかった。
32
:
暗闇
:2006/10/28(土) 00:34:27 HOST:softbank220020057170.bbtec.net
―――力を貸す、と言ったな―――
―――確かに―――
―――何の為の力だ?―――
そう問いかけた男に、声は軽い笑みをかすかに混ぜながら答えた。
―――知れたこと。討つべき者を討ち、己がかけた呪い<夢>を成就する為―――
言われて男はふと―――判らん―――そう漏らした。
―――どうした?―――
―――オレの野望<夢>を成就させて、それがキサマに何を……―――
小さく独りごちる男に、声は―――何を迷うて居る―――と、いくらか調子を強めた。
―――お前はこのまま、ただの亡者と成り果てるのか?―――
その言葉に、男の魂は大きく震えた。
……そして。
―――キサマのその話に乗ろう。此度こそ奴を倒し、天を―――地を―――神を―――人を―――全てを我が手の内に入れ支配してくれる、天下布武の名の下に―――再び天下人となって森羅万象に君臨してくれよう―――
意を決した男に、声は満足そうな色を見せて―――ならば―――と言った。
―――ふたつ教えておこう、お前の死んだ肉の代わりに叶う器と我を崇めるお前の新たな同士のことをな……―――
声が男の魂にそれらのことを教えた途端。
男の魂の奥底から熱が吹き上げ、隅々まで広がった。
直後。
男の魂は、そこから消え去った。
そこにただ、先の声だけが響いた。
―――我が名はアンブロジァ。……いずれお前にも判るであろう―――
この言葉はしかし、彼には聞こえるはずもなかった。
光も闇もなく、正も邪もなく、生も死もない『無』において、男は既に無ではない。彼はいまや、光ではない闇。正ではない邪。死ではない、生。
その男、名を織田上総介信長。またの名を第六天魔王。享年天正10年。
有の世界においては、時は最初の享年から既に二百と四年を経ていた。
33
:
藍三郎
:2006/10/29(日) 10:48:01 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
○戦国BASARA外伝 「鬼眼」対「覇王」!! 其の玖○
アキラ「・・・・・・」
半兵衛「・・・・・・」
“氷繭星霜”が砕け散り、二人の姿が白日の下暴き出された。
両者とも、立ってはいるが、どちらも全身から血を流しボロボロの状態である。
アキラ「まさか・・・私の“氷繭星霜”を破るとは・・・」
そう呟くと、アキラは体をぐらつかせる。
半兵衛の驚異的な乱舞による、体へのダメージは計り知れない。
“氷繭星霜”が壁になっていなければ、とうに五体を引き裂かれていただろう。
半兵衛「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
一方、満身創痍なのは半兵衛も同じだった。
半兵衛(今のは・・・確実に、寿命を縮めたね・・・)
氷繭星霜で全身を切り裂かれた状態で、さらに命を削った鞭の乱舞を放ったのだ。
全身を襲う苦痛と疲労は、とうに限界を越えていた。
アキラ「・・・どうしますか・・・?半兵衛さん。まだやるつもりですか?」
アキラは半兵衛に刀の切っ先を向ける。
そう言いつつも、アキラ自身も体中から血を流し、満身創痍である。
半兵衛「いや・・・やめておくよ」
半兵衛は関節剣を地面に突きたてた。
半兵衛「このまま戦えば、どちらが勝っても命が危ない・・・
僕は、こんな場所で命を散らすわけにはいかないんだ・・・」
アキラ「勝敗よりも生存にこだわりますか・・・そんなに命が大事ですか?」
半兵衛「・・・今更命なんて惜しくない・・・
ただ、君に捧げる命が無いだけさ・・・」
半兵衛は誓った。
残り僅かな自分の命を使って、
秀吉(とも)の世界進出のために、最強の軍を作り上げる事を。
道はまだ途中。それを、得るものの無い決闘で無駄にするわけにはいかない――――
34
:
藍三郎
:2006/10/29(日) 10:49:07 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ―――――――
半兵衛が弱弱しい声で呟いた直後・・・
凄まじい地響きが、戦場に鳴り響いた。
半兵衛「この体中を駆け巡るような地響き・・・まさか・・・!!」
遥か地平線の彼方。
その先から、土煙に紛れて、巨大な人間の波が押し寄せてくるのが見える。
彼等が掲げるは『葵』の旗。それを掲げる軍勢はただ一つ・・・
半兵衛「あれは、徳川軍!!援軍を差し向けてきたのか・・・!」
軽く万を越える規模の軍勢だ。
この地に豊臣軍総大将・豊臣秀吉がいると聞きつけて、
これだけの圧倒的兵力を投入してきたのだろう。
しかし、半兵衛は驚かなかった。
徳川軍の増援は、戦う前から十分に予測できた事だったからだ。
兵の数も、10万の兵力を持つ徳川にしてみれば、多すぎる事は無い。
例え万の軍勢でも、自分と秀吉がいれば蹴散らせる。そう踏んでいたのだが・・・
半兵衛(唯一の誤算は・・・鬼眼の狂と四聖天のアキラ・・・
彼らが僕達の前に立ちはだかった事だ・・・)
四聖天・アキラとの戦いは、壮絶を極める物だった。
冷静沈着で知られる半兵衛も、戦いに熱が入りすぎ、
一瞬、周りが見えなくなったのは否定できない。
緊急事態に瀕して、半兵衛は“軍師”としての自分を取り戻す。
半兵衛(急ぎ、体勢を立て直さなければね・・・
まずは、秀吉に報告に向かわねば・・・)
すぐに頭を切り替えると、半兵衛はその場を立ち去ろうとする。
アキラ「待ちなさい!勝負を捨てて逃げる気ですか?」
半兵衛「生憎、僕は君達と違って、個々の戦いでの勝利に興味は無いんだ。
僕が望むのはただ一つ・・・豊臣軍を勝利に導く事さ。
それに比べれば、戦略的撤退など、恥じるに値しないね」
アキラの挑発を、“軍師”竹中半兵衛は冷静に受け流した。
半兵衛「ところで・・・アキラ君、君に一つ言っておきたい事があるんだ」
アキラ「何ですか?」
半兵衛は口元に微笑を浮かべ、こう続けた。
半兵衛「君は・・・ずっと、鬼眼の狂の背中“だけ”を見て、生きていくつもりかい?」
アキラ「!!」
半兵衛の言葉に、アキラは少なからず衝撃を受けた。
それが何故なのか、その時のアキラはわからなかったが・・・
半兵衛「僕は、秀吉の崇高な理想や気高き信念・・・その全てに共鳴して、彼の下にいる。
だが、君は、鬼眼の狂の出鱈目な強さに憧れ、
ただ考えも無く盲信しているだけだ・・・違うかい?」
アキラ「・・・知った風な口を・・・」
半兵衛「君のような心の眼が無くても、君の心は手に取るようにわかるさ。
君は、今までただ鬼眼の狂を追うことだけを求めてきた。
それ以外の生き方なんて、考えたことも無いんだろう」
アキラ「・・・・・・」
かつて、壊滅した農村で、狂に助けられた無力な自分。
その時から、自分は鬼眼の狂に近づきたい、強くなりたいと願い、
その一念で、必死に努力に重ねてきた。
だが、半兵衛の言った通り・・・追いついた後の事などは、考えた事も無かった。
半兵衛「僕と秀吉は、同じ場所に立ち、遥か先の未来を見つめている。
だけど、君は所詮鬼眼の狂の影でしかない」
アキラ「!!!」
半兵衛「君は永遠に、彼の背中より“先”を見る事はできないだろうね・・・
虚しくはないかい?他人の足跡を辿るだけの人生なんて・・・」
アキラ「・・・黙れッ!!!」
言いようの無い憤りを覚えたアキラは、刀を振るう。
氷の波が生じ、半兵衛に向かっていく。
しかし、負傷のためか威力は著しく減衰しており、半兵衛にひらりとかわされてしまう。
半兵衛「機嫌を損ねたかい?
だけど、一度自分の生き方を、見つめなおしてみるのもいいと思ってね・・・
ま、気にするもしないも、君の自由さ・・・」
言いたい事を言い終えたのか、半兵衛は間接剣を振るい地面に叩きつける。
それによって生じた土煙に紛れ、純白の軍師は姿を晦ました。
アキラ「・・・・・・」
アキラは無言のままその場に立ち尽くす。
彼の中では、半兵衛に告げられた言葉がしこりとなって胸に溜まっていた。
アキラ「狂に追いついた・・・その、“先”か・・・」
35
:
藍三郎
:2006/10/29(日) 10:51:33 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
一方その頃・・・
狂「グ・・・ハァッ!!」
口から血反吐を吐き、狂は天狼を支えにして起きあがる。
瀕死の秀吉が放った、最後の猛攻。
それは、鬼眼の狂に重傷を負わせていた。
体中の骨が軋み、全身から血が流れ、立つのもつらい。
秀吉「ぐ・・・・・・」
それは秀吉も同じである。
無明神風流奥義・朱雀によって、胸に大きな傷を刻まれ、いつ失血死してもおかしくない。
秀吉「むぅぅぅん!!!!」
秀吉は傷口から手を離すと、突然気合を込める。
すると、鎧越しに胸の筋肉が膨張し、無理矢理傷口を閉じて血を止めた。
超人的筋力を持つ秀吉ならではの、人間離れした芸当である。
だが、それでも、瀕死の重傷なのには変わりない。
互いに、戦う力など残っていないはず。
しかし、それでも・・・
秀吉「フフ・・・」
狂「クククク・・・」
二人の漢は、笑っていた。
秀吉「どうした?千人斬りの鬼よ・・・もう終わるつもりか?」
狂「ざけんじゃねぇ。くたばるのはてめぇだ・・・山猿!」
一方は相手を見下し、一方は相手に唾を吐く。
死の寸前に至っても、二人の闘争心が衰える事は無い。
鬼眼は血濡れの手で刀を握り締め、覇王は震える腕を振り上げる。
二人を突き動かすのは、誇りでも信念でもない。
ただ死力を尽くして戦いたいという、悲しき侍の本能(サガ)だった。
36
:
藍三郎
:2006/10/29(日) 10:52:25 HOST:softbank219060041115.bbtec.net
半兵衛「秀吉!!」
両者が再び激突する直前・・・
秀吉の下に、竹中半兵衛が現れた。
深手を負った秀吉の姿に、半兵衛は目を見開いて驚愕する。
半兵衛「・・・!秀吉!どうしたんだその傷は・・・!!」
半兵衛は信じがたい思いだった。
半兵衛の知る限り、秀吉はどんな敵に対しても、圧倒的な強さで勝利してきた。
それが、ここまでの重傷を負わされるなど、ありえない事である。
半兵衛「鬼眼の狂・・・貴様・・・!」
秀吉を傷つけた狂ヘの敵意を剥きだしにし、関節剣の切っ先を向ける半兵衛。
だが、その剣は横から手を出してきた秀吉によって掴まれる。
秀吉「半兵衛・・・戦いはまだ終わっておらん・・・手出しは無用だ」
半兵衛「何を言っているんだ秀吉!その傷でこれ以上戦えば、命に関わる!」
秀吉「我も・・・奴も・・・命を賭してでも、譲れぬ物があるのだ・・・!」
秀吉の目には、闘争心の焔が灯っている。
やはり、秀吉は一軍の将である前に、生粋の武人である。
武人たるもの、例え己の命が尽きようとも、己を貫く為に戦わなければならない。
古くからの友である半兵衛には、それが痛いほどわかる。
だが・・・
半兵衛「悪いけど、君の言う事は聞けないよ、秀吉・・・」
秀吉「何だと・・・」
半兵衛「君は、これからの日本に必要な人間・・・ここで散らすわけにはいかない。
それに秀吉・・・僕らの誓いを忘れたのかい?」
秀吉「・・・!」
秀吉の脳裏に、過去の光景が思い浮かぶ。
そう、まだ主も無く、軍も無く、たった2人で戦っていた頃・・・
天下を握り、やがては世界を掴もうと決めたあの日・・・
半兵衛「僕は、君を世界の頂点に押し上げるため、最強の軍を作る。
だから、君は己の理想に邁進し、頂点まで駆けあがってくれ・・・そう誓ったはずだ。
こんな所で、僕の・・・僕達の夢を・・・終わらせないでくれ・・・」
秀吉「・・・・・・」
荒れ果てた戦場で、たった二人から始まった壮大なる夢・・・
何としても叶えたい。枯れさせたくない。
半兵衛の強き想いを、秀吉は感じ取っていた。
狂「ククク・・・中々世話好きな下僕がいるじゃねぇか、猿」
沈黙を破ったのは、鬼眼の狂だった。天狼を肩に担ぎ、こう続ける。
狂「いいぜ。そいつに免じて、今日はここで仕舞いにしてやるよ」
秀吉「何・・・?」
あっさり引き下がる事に、秀吉は疑念を覚えた。
狂「単なる山猿をぶっ殺しても、何の足しにもなりゃしねぇ・・・
だが、天下を獲った“天下猿”なら・・・少しは斃し甲斐がありそうだ!」
秀吉「ほう・・・なるほど、そういう事か・・・」
狂「世界世界と偉そうにほざく前に、まずは天下を獲ってみせな!!
そん時こそてめぇをぶっ殺し、天下も最強の称号(な)も、オレ様がいただく!!」
天下獲りを果たした者は、名実ともに日本最強の漢となる。
その漢を斃して、最強の座を奪う。それが狂の野望だった。
秀吉「よかろう!我が天下を掌握した時にこそ・・・
鬼眼の狂、貴様との真の決着をつける!!」
秀吉も、武人として真っ向からその挑戦を受ける。
狂「ハハハハハハ!天下の座で、首を洗って待っていな!!!」
その後、二人は言葉を交わす事は無かった。
秀吉は狂に背を向けると、悠々とその場を去って行く。後ろには、沈黙の軍師が付き従う。
こうして・・・鬼眼と覇王の初の邂逅は終わりを告げた。
次に両者があいまみえる時は、豊臣秀吉が天下人となった時か・・・それとも・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ―――――――!!!!
大地を振動させるほどの地響きが、戦場に轟く。
万を越える徳川の軍勢が、ただ一人残った鬼眼の狂の下へと押し寄せてくる。
狂は、迫り来る大軍を睨みつけ・・・笑った。
狂「・・・織田信長も豊臣秀吉も徳川家康も・・・
邪魔する奴らは全員ぶっ殺して・・・」
万の軍勢を前にしても、真紅の眼に恐れの色は無い。
妖刀・天狼へと手をかけ、一気に抜き放つ。
狂「オレが――――最強だ!!!」
紅の煌きを放つ鬼の刃が、戦国乱世を斬り拓く―――!
(了)
37
:
暗闇
:2006/10/29(日) 22:57:44 HOST:softbank220020057170.bbtec.net
SAMURAI DEEPER SPIRITS 壱の章
木々の隙間から漏れる日の光。
それが、倒れて眠っていた男の目を刺激した。
男は漆黒の長髪をなびかせ起き上がり、背に刻まれる対極図の紋が光にさらされる。
そして何よりも、特徴的なのはその血のように深紅の眼だ。
「……何処だ、ここは―――」
最初に口から発せられた言葉はその率直な疑問だ。
その男は頭を抱え記憶を整理する。
神の一族と名乗る壬生一族の長、先代紅の王と闘い、勝利し、その最後を見届けて……その後、先代の死によって崩れ始めた紅の塔の崩壊に巻き込まれて……
ここまではいい。
それにしても自分はあの状況でどうやって助かったのか?
ここは何処なのか?
どうしてここにいるのか?
多くの謎が頭に押し寄せる中、彼は今一度周囲を見回すと、
「なるほどな、またテメェの仕業ってわけか」
男が気怠げな態度で睨み据えるその先には一本の長刀が淡い光を放っていた。
「またいらねえ、お節介しやがって……」
男の言葉に反応した刀の光が鼓動するように明滅し、男の頭の中に直接語りかけてきた。
―――命の恩人に対して聞く口はそれか?全く可愛い奴だ―――
「うっせぇ、ここは前に連れてこられた場所とは違うようだが、一体何処だ?」
―――知らん―――
「はぁ?」
―――知らんと言ったのだ、おまえ寝ぼけて頭がハッキリしないの―――
突然その刀が男の手に握りつぶさんが如く掴まれて、ギロリと殺気に満ちた血色の眼で睨み付けた。
「そりゃどういうことだ、説明してもらおうか?ああ?」
―――怒るな、怒るな……短気な奴め、順を追って説明するが、塔が崩れる中、ボロボロでヨレヨレだったお前に私が咄嗟に力を使って刻を越えさせたのだよ、そこまでは良かったんだが、そこでちょっとした事故が起きてな―――
「ちょっとした事故だぁ?」
―――刻越えの最中に、“ひずみ”が生じてしまってな……お前のいた元いた刻とは違う刻に飛んでしまったようなのだ、つまりここはお前のいた時代ではない―――
「何だと」
―――元々あれはそう頻繁に使えるものではないのだ、稀に“ひずみ”が生じて巻き込まれると元いた時代に帰れなくなる危険が付いていてな、故に使えるのは真の壬生一族の中でも限られた者だけなのだよ―――
「……ちょっと待て、ということはなにか?俺は元の時代に帰れねえってことになるってのか?」
―――そうだな―――
38
:
暗闇
:2006/10/29(日) 22:58:16 HOST:softbank220020057170.bbtec.net
沈黙が辺りを支配する……やがて男の方から怒声が一帯を破壊しかねんが如く響き渡った。
「ざっけんじゃねえぞ、コラァ!!!何がかつては絶対的な力で全てを手に入れただぁ!?肝心なとこで約ただずってことか!!」
―――落ち着け、まだ帰る方法が無くなったというわけではない―――
「あぁん?」
―――聞け、今回の“ひずみ”妙なトコがあってな……おそらく何者かが故意に起こしたものである可能性がある―――
「……どういうことだ?」
―――何の目的かは詳しくはわからん……だが、その“ひずみ”を起こした者はおそらく別次元とこの世界を繋げようとしているのであろう……その際に、こちらがやった刻越えとも干渉してしまった結果、我々はこの時代に引き寄せられてしまったのだろう―――
「それで?」
―――今、この世界と別の次元との融合が始まり、この世界に影響が出始めている……この影響で時空間歪曲のバランスが乱れ、正常な刻越えを行うことは不可能だ。もし、元の時代に戻りたいのであれば、このバランスを元に戻さなければいけない……もうわかるな?―――
「なるほど、つまりその“ひずみ”を起こした野郎をぶった斬ればいいってことか」
―――その通りだ。しかし―――
「あぁ?」
―――おそらく、この“ひずみ”を起こした奴も我々に気付いている。術同士の干渉は相手にも伝わってしまったはずだ。近い内に何らかの手を討ってくるだろう。相手方も時空を越えるほどの影響力を持つ相手……おそらく真の壬生一族に匹敵するかそれ以上の存在に違いないそれを容易く退けられるのか?―――
「何を今更言ってやがる」
男は刀に余裕の笑みを向けると、こう言った。
「俺は最強を目指し、それを邪魔する奴らは全員ぶった斬る……そして」
―――ん?―――
「仲間<あいつら>の所へ必ず帰る……それだけだ」
―――……フッ、ハハハハハハハ!!それでこそ鬼神の血を乗り越えた男よ、せっかく紅の王の御印まで与えてやったんだからな、そうでなくては―――
男が言い返そうとしたその瞬間、刀の光が弱まり、語られる声が段々小さくなっていく……
―――そろそろ、時間か……私は少し休まなければ……後のことはおまえがやれ―――
「あぁ?んだと?」
―――こうやって話していると相手にこちらの居場所等も気取られてしまう、それはまずいだろ、だから一旦こっちはしばらく引きこもらなければいけない、なぁにちゃんと力は貸すべき時には貸してやる、それまではお前はこの時代に剣客とでも死合うなりして、暇を潰しながら相手方の元へ乗り込んでいけばいい……ではな―――
「ま、待ちやがれぇ!!」
男の呼びかけも虚しく、刀の光は消え失せ、声も聞こえなくなってしまった。
「ちっ……野郎」
男は刀を腰に下げると、森を出るべく歩き出す。
まずは道端か近くの村で人を捕まえて、ここがいつの時代なのかどうかを調べるべきだろう、話はまずそれからだ。
それに
「帰る前にこの時代の強ぇ奴と死合っておくってのも悪くねえ……」
現状での唯一の楽しみに男は胸を高鳴らせ、森を出て行った。
その男の名は、鬼眼の狂。戦国の世で千人斬りの鬼と呼ばれた伝説の侍。
愛刀の天狼を携え、最強の称号を求め、闘う伝説の鬼がこの天明の世に降臨した。
39
:
藍三郎
:2006/11/05(日) 12:14:17 HOST:65.101.231.222.megaegg.ne.jp
ILLUSION FANTASIA外伝
○からすま幻戯譚 序章『金色の鴉』 其の壱○
=帝華京=
真円を描いた美しい満月が、夜空で晧晧と輝いている。
雲の隙間から零れる月明かりの光が、下界を妖しく照らし出す。
月下に広がるは、地面をびっしり埋め尽くすほどの広大な街並みだった。
瓦の屋根を乗せた純和風の建築物が、規則正しく碁盤目上に並べられている。
夜が訪れて、長い時間が過ぎていた。
住民達の大半は床に入り、街を徘徊する人影はほとんどなかった。
野良犬や昆虫、草木でさえも眠りについている。
だが、全てが寝静まったこの街で、激しく動き回る二つの影法師がいた。
綺麗に並んだ建物の屋根から屋根へと走り回っている。
猫かイタチかと思いきや、その大きさは明らかに人間のものである。
一方がもう一方に迫れば、もう一方はたまらず距離を取って逃げ去る。
どうやら、影の一方がもう一方を追いかけている状況らしい。
玉鬘「くぉらぁぁぁぁ!!!待ちなさぁぁぁい!!!」
甲高い叫び声を上げるのは、追っている側の影だった。
眉と耳元で綺麗に揃えられたおかっぱ頭、それなりに整った白い顔。
月明かりに照らされた萌黄(もえぎ)色の振袖が、風を受けて翻る。
女は、焦りと怒りを顔中に浮かべて、目前の白い影を追っていた。
玉鬘「あいつ・・・逃がしゃしないんだからね!!」
彼女・・・玉鬘清女(たまかずら・きよめ)は、
相手を追跡する足を緩めずに、懐から円盤状の物体を取り出した。
まるでルーレット板の如く、放射状に様々な記号や文字が刻まれている。
彼女はそれを前にかざすと、持っていた手を離す。
だが、円盤は地面に落ちることなく、彼女の手から数センチ先で浮遊したままだった。
玉鬘「大気密度計測・・・気流速度算出・・・五行回路、起動・・・」
円盤に刻まれた複雑な漢字が、ぼんやりと輝き始めた。
玉鬘「火之壱拾伍行・・・『火霊礫(かりょうのつぶて)』!!」
円盤が赤く輝く。それと同時に、彼女の周囲の空にぼっと炎が灯った。
それも、一つだけでなく二つ、三つと増えていく。
玉鬘「行っけぇ!!!」
合計六つにまで増えた火球は、
玉鬘が指をぱちんと弾くと、弓矢の如く猛然とはじき出される。
それらは前方の白い人影に飛んでいった。
「ひぃ・・・・・・」
ドゴォ!!
数回、屋根の上で鈍い爆音が起こる。
火球は敵手に命中することなく、屋根に命中して小さな爆炎を上げた。
狙いを外した事に、玉鬘は立腹する。
玉鬘「ちぃ!!あたしの術を避けるなんて・・・生意気よ!!」
今の爆音を聞いて、眠っていた人々も何事かと起き出す。
窓から外を見る者、灯を点ける者、一度家の外へ出てみる者と様々である。
玉鬘「あらあら・・・観客も出てきたし・・・
そろそろ鬼ごっこも終わりにしたげるわ・・・!」
再び手にした円盤に、気を流しこむ。今度は、円盤がぼんやり水色に輝き出した。
玉鬘「荒れ狂う海神(わだつみ)の怒り・・・
怒涛の瀑布となりて、全てを呑みこめ!!」
詠唱を終えると、手にした円盤にさらなる力を込める。
玉鬘「水之肆拾陸行・・・『瀑流湊葬(ばくりゅうそうそう)』!!」
次の瞬間、彼女の後方で巨大な蛇口をひねったかの如く、
溢れんばかりの水流が生み出された。
それはあたかも水で出来た蛇のように体をくねらせ、
凄まじい勢いで屋根を抉り取りながら、相手に向かっていく。
「う、うわああああああああっ!!!!」
迸る瀑流の顎を避ける術も無く、一瞬で男は怒涛の顎に呑みこまれた。
玉鬘「やりぃ!!」
敵を仕留めたのを確認し、女はガッツポーズを取る。
だが・・・
玉鬘「あら?」
ゴォォォォォォォォォォ・・・
敵を呑みこんで尚、流水はその動きを止める事無く、屋根の上を駆けずり回っていた。
荒れ狂う怒涛は、家屋の屋根を抉り取り、無残な亀裂を刻んでいく。
玉鬘「あー、やばいやばいやばい!!止まれ止まれ止まりなさーーーい!!!」
彼女は円盤に手を当て、何とかコントロールしようとする。
この大騒ぎに、眠っていた街中の人々は、その大半が起き出していた。
皆、屋根の上で暴れ狂う水の龍を見て、一様に驚倒するのだった・・・
そして、喧騒の一夜が明け―――――
40
:
藍三郎
:2006/11/05(日) 12:27:02 HOST:65.101.231.222.megaegg.ne.jp
鳳仙境・・・
スクウェア大陸の近海に位置する、この巨大な島は、
他の大陸とは大きく異なる自然環境に置かれていた。
自然豊かで風光明媚な環境は、まるで仙人が住むような桃源郷を思わせ、
街も瓦葺きの木造建築が大半を占めており、その点も他大陸とは異なっている。
また、他の大陸とは異なり、道術・符術・陰陽道・風水学などの、
他ではあまり見られない学問が発展しており、
それらの力を利用し、自然と調和した特殊な文明を築いていた。
その鳳仙境の、ちょうど中心部にある巨大な都こそ、鳳仙境最大の都・帝華京だった。
鳳仙境を統治者である“鳳帝(おおとりのみかど)”のお膝元であるこの街は、
帝の善き治世を象徴するように、四季の花々が街を彩り、
昼間は住民たちの賑やかな声が絶えぬ華やかな街だった。
しかし、この帝都といえど永遠に陽の光に照らされている訳では無く、
人知れず、世の平穏を脅かす暗い影が忍び寄っていた。
闇に乗じて徘徊する物怪(もののけ)、悪霊、魑魅魍魎・・・
さらに、身につけた術を悪行に使う道術師たち・・・
帝都の平和を乱す者達は、決して少なくない。
無論、帝華京もそれらに手を打たずにいるわけでは無かった。
帝都退魔寮・・・
其れは、厳しい修行の末、神秘の奥義“道術”を修得した、
対妖魔退治の専門家、“浄滅師(じょうめつし)”たちを集めた、帝都が誇る特殊機関である。
=帝都退魔寮=
蒼鷹「・・・命令違反による単独行動・・・
および、風水術の発動による家屋損壊数合計二十八件・・・」
葵蒼鷹(あおい・そうよう)は、淡々とした口調で手にした書類を読み上げた。
蒼鷹「何か申し開きはあるか?帝都退魔寮第壱班上級風水博士、玉鬘清女」
どこまでも冷徹な口調で糾弾の言葉を投げかける。
垂らした前髪を額の中心で左右に分け、長い黒髪を後ろで結っている。
頭には冠という貴族用の帽子を被り、
蒼より深い縹(はなだ)色の束帯(そくたい)で身を包んでいる。
その真白き顔から覗く二つの瞳は、一切の光を放たぬほど暗い色をしていたが、
そこからは絶えず冷たい威圧感に満ちた視線を放ち続けていた。
玉鬘「あのぅ・・・それがですねぇ・・・」
玉鬘は、目の前の“上司”におずおずと進言する。
玉鬘「私も、最初はもっと穏便に済ませるつもりだったんですよ〜〜
けど、あの凶悪犯を追っている内に、ついつい熱くなっちゃって・・・」
蒼鷹「凶悪犯?ほう・・・」
蒼鷹は口元を吊り上げた。微かな表情の変化だが、そこには確かに侮蔑の色が込められていた。
蒼鷹「チャチな道術を使えるだけの“下着泥棒”を捕まえるのに、
あれほどの騒ぎを起こす必要があったというわけか」
彼の言った事は事実だった。
昨晩、玉鬘が怒涛の追跡と街への被害の末に捕らえた賊は、
近頃帝都で下着泥棒を働いていた者だったのだ。
玉鬘「何を言っているんですか!!
相手はかよわい女性の下着を盗もうとする不届き者でですよ!!
そんな恥知らずの下司野郎には、相応の罰を与えなくては!!
正直、あれでも温いぐらいだわ!!」
蒼鷹「・・・・・・それは言い訳のつもりで言っているのか?」
玉鬘の抗議を、ばっさりと切って捨てる蒼鷹。
そして、しばし溜めた後、こう言い放つ。
蒼鷹「・・・・・・使えん女だ」
心底呆れ果てたという風に、微かに息を吐く。
それを見た彼女は、心中で怒りの炎が吹き上がって来るのを抑えられなかった。
玉鬘(ム、ムカツクぅ〜〜〜〜!!!)
玉鬘は、この葵蒼鷹という上司が大嫌いだった。
帝都退魔寮総寮長にして第壱班班長である、玉鬘の直属の上司。
帝都最大の権力を誇る大貴族・『葵氏(きし)一族』の一員で、
朝廷での官位は従三位、中納言の席に列せられる、まさに絵に描いたようなエリート貴族である。
しかし、性格ははっきり言って最悪。
済ました顔で常に相手を見下したような態度を取り、
気に入らない部下を遠慮無く貶める。“理想の上司”の対極に居る人物と言ってもいいだろう。
はっきり言って、自分のみならず知り合った人間の大半は、この男に反感を抱くだろう。
今回の一件にしても、確かに自分に落ち度があったかもしれないが、
それをこうもネチネチと陰険に責められては、素直に反省する気にはなれない。
41
:
藍三郎
:2006/11/05(日) 12:29:44 HOST:65.101.231.222.megaegg.ne.jp
玉鬘「は、はは・・・でもまぁ、一応都の住民には、被害は出なかったわけですし・・・」
弁明を図ろうとするも、蒼鷹は冷たい声で押しこめる。
蒼鷹「当たり前だ。万が一、人的被害を出してみろ。即刻貴様は刑部省(裁判所)送りだ」
蒼鷹は、さらに続けて衝撃の一言を放った。
蒼鷹「なお、損壊させた家屋の修繕代金は、貴様の給料から引いておく」
玉鬘「な!?そんな殺生な!!」
自分で壊しておいて何だが、あれだけの損壊を修復するにはかなりの資金が必要なはず。
引かれる額を考えただけで、玉鬘は眩暈を起こしそうだった。
何とか抗議を続けるが・・・
蒼鷹「帝都には、貴様の尻拭いをしてやる金などない」
一切の抗議も受けつけぬ口調で、蒼鷹は止めを刺した。
玉鬘「あう・・・」
がくりとうなだれる玉鬘だった。
蒼鷹「さて、この話はここまでだ。貴様には、すぐに次の任務に取りかかってもらおう」
玉鬘「あのう・・・傷ついた私の心を癒す時間は、もらえませんか?」
よよよ、と泣き崩れる(フリをする)玉鬘だったが、蒼鷹は一秒と待たずにこう答える。
蒼鷹「そうか・・・そんなに独房で反省するのが望みか・・・ならば・・・」
玉鬘「い、いえいえ!!今のは冗談です!!
帝都の平和を護る浄滅師たるこの私に、休んでいる時間などありません!!
是非とも、次の指令を!!」
冗談に聞こえない台詞に(この男は言った事は100%本気でやる)玉鬘は慌てて言いなおす。
蒼鷹「フン。変わり身の早い事だ」
蒼鷹は、懐から一枚の札を取り出す。それを空中に飛ばすと、
符はたちまち姿を変え、宙に浮揚する一枚の大きな紙となる。
紙に描かれているのは、鳥の翼のような形をした大きな島・・・この鳳仙境の地図だった。
蒼鷹「帝都から西に数十里程離れた地点に、多賀目(たがめ)村という小さな村落がある。
ちょうどこのあたりだな・・・」
蒼鷹は宙に浮いた地図を用いて、村の位置を指し示す。
蒼鷹「近頃、この村付近の林道で、毎晩凶悪な物怪が出没し、
道行く人々を襲っているという情報が入った。
このまま放置しておけば、いずれは村にも獲物を求めて現われるだろう・・・
そうなる前に、この物怪を沈静化・・・あるいは“浄滅”せねばならん」
玉鬘「はぁ・・・」
蒼鷹「玉鬘清女。貴様はただちにこの村に向かい、物怪を処理するのだ。
“牛車”はすでに手配してある」
玉鬘「わかりまし・・・ちょ、ちょっと待ってください!!」
蒼鷹「?何だ」
玉鬘「勘弁してくださいよ!!
あたしは天下の帝都退魔寮第壱班所属の浄滅師なんですよ!!
それが、何が悲しくてこんなド田舎の村に妖怪退治に行かなきゃならないんですか!!」
帝都退魔寮には、複数の班が存在するが、それら全てが対等というわけでは無い。
第壱班、第弐班、第参班・・・と、数字が小さいほど位が高いとされている。
中でも第壱班、第弐班は、帝都とその周辺地域を管轄とする、退魔寮きっての花形部隊である。
知名度も他班とは比べるべくも無く、退魔寮の顔と呼んで差し支えない。
玉鬘は、この第壱班所属の浄滅師である。
それが何ゆえこんな田舎の村へ“都落ち”しなければならないのか。
彼女は激しい憤りを覚えていた。
蒼鷹「現在、帝都周辺はかなり不穏な状態になっている・・・
第壱班および第参班以下も、今は大半が何らかの任務で出払っているのだ。
この件について動かせる適当な“駒”は貴様しかおらん」
玉鬘「ぐぬぅぅぅぅ・・・」
蒼鷹「冬眠中のクマみたいな唸り声を出すな。わかったら、とっとと行け」
玉鬘「はい・・・わかりました・・・不肖、玉鬘清女。
帝のため、お國のため、そして民草の平和と安寧のため、粉骨砕身、働いてまいります・・・」
全く熱意のこもっていない口調で立ちあがる玉鬘。だが・・・
42
:
藍三郎
:2006/11/05(日) 12:31:37 HOST:65.101.231.222.megaegg.ne.jp
蒼鷹「おっと、そうだ・・・一つ言い忘れていた」
玉鬘「え?」
蒼鷹「今回の任務に当たって、貴様ともう一人、流れ(フリー)の浄滅師に依頼を頼んでおいた。
現地で合流する形になるだろうが、貴様はそいつと協力して物怪退治にあたるのだ。いいな」
玉鬘「流れの浄滅師ぃ〜〜〜・・・
ちょっとぉ、それはいくら何でもあたしを馬鹿にしすぎってもんでしょう。
こんなちんけな任務、あたし一人で・・・」
そこまで言って、玉鬘はふと思い当たる。
玉鬘(待てよ・・・流れの浄滅師って事は、
帝都退魔寮第壱班所属のあたしに比べれば全然格(ランク)下の存在だわ・・・
なぁ〜〜んだ、体のいい雑用が増えたと思えばいいじゃない。物は考えようね)
玉鬘はむふふ・・・と笑みを浮かべる。
玉鬘「コホン、部下に対する総寮長の思いやり、ありがたく頂戴致します」
わざとらしく、ぺこりと頭を下げる玉鬘。
そんな彼女を、蒼鷹は興味無さげな視線で見ていた・・・
玉鬘「ふぅ〜〜〜それにしても・・・
やっぱり“都落ち”ってのは結構誇り(プライド)傷つけられたわね・・・」
蒼鷹のいる部屋を後にした玉鬘は、吹きぬけの回廊を歩きながら愚痴をこぼしていた。
帝都退魔寮第壱班所属風水博士である彼女は、優れた素質を持つ“風水師”だった。
気脈の波動を読み、風水の流れをコントロールする風水師は、
予め術式を編みこんだ“符”に力を込めることで術を発動する“陰陽師”と違い、
元々特殊な素質が無ければなれない、特別な存在だった。
事実、帝都に所属する浄滅師の大半は、符を扱う陰陽師であり、
彼女のような風水師の数は一握りにも満たなかった。
そんな数少ない風水師の中でも、彼女の才は群を抜いていた。
生まれ持った強烈な才で、同期の術師をぐんぐんと抜き去り、
やがて、帝都中の浄滅師たちの誰もがうらやむ帝都第壱班に所属する事ができたのだ。
決して後ろを振り向く事無く、ただ上を目指してひた走る彼女。
彼女には、その原動力となる大きな“夢”があった。
玉鬘「帝都所属の風水師として、妖怪どもをばったばったと薙ぎ払い、
天才浄滅師たる『玉鬘清女』の名を帝都中に響き渡らせるのよ!!
そうすれば、富も官位も名声も思いのまま・・・うふふふふ・・・ふふふふふふふ」
彼女の夢・・・それは、大多数の人間と同様、富と名声という極めて俗っぽい代物であった。
しかし、彼女のその“夢”の進み具合は、非常に芳しく無い。
先走りすぎな性格が祟ってか、無駄に強力な術を使ってしまう事が多く、
昨夜のように余計な被害を出してしまう事も少なくない。
そのせいか、上司である葵蒼鷹からは徹底的に白い目で見られ、
退魔寮からは『お転婆浄滅師』として、ある意味厄介がられている。
このままではいけない・・・そう思いつつも、もって生まれた性格は変わらない。
その鬱憤を、心の中であの憎い上司を罵る事で晴らす彼女だった。
玉鬘「全くぅ・・・ちょぉ〜っと美形だからって調子に乗って・・・
待ってなさいよ・・・もうじき、あっと驚く大手柄を立てて、
あたしがあんたの地位にとって変わってやるんだから・・・」
???「おやおや・・・そんな顰めっ面をして・・・何がそんなに気に入らないのかな?」
不満を爆発させる玉鬘に、何者かが声をかける。彼女は構わずに、心に思う事をぶちまけ続けた。
玉鬘「そりゃ決まってるわ、あの陰険・根暗・傲慢の三拍子が揃ったクソッタレ上司、葵蒼鷹よ!
あ〜〜あ、思い出してだけで腹立ってきた!!」
???「なるほど・・・また蒼鷹に、こってりいびられたと見えるね」
玉鬘「そうなのよ!あの人を人も思わぬ奴は、“上司”じゃ無くて“下司(げす)”野郎よ!!
この恨みつらみ晴らさでおくべきか。いずれ、あたしが奴の地位を追い越したら、
鼻の穴に茄子を詰めて、頭に植木鉢を乗っけて盆踊りをさせて・・・」
???「クスクス・・・それは何とも、面白い話だな」
玉鬘はここでようやく、目の前にいる人物に気づいた。
この物腰柔らかな語り口、そして、帝都退魔寮の総寮長である葵蒼鷹を、
平然と呼び捨てに出来る人物と言えば、退魔寮の中でも“彼”しかいない。
43
:
藍三郎
:2006/11/05(日) 12:34:33 HOST:65.101.231.222.megaegg.ne.jp
玉鬘「は!?と、と、と、杜若様!」
その姿を見て、玉鬘は顔面を凍りつかせ、しどろもどろな態度で喋る。
背中にまで伸びた流麗な黒髪に、袖口の広い若葉色の衣を身に纏った、
痩身の青年がそこに立っていた。
その容姿は、眉目秀麗と呼ぶに相応しく、
おでこの大きく開いた白面には、美しい曲線を描いた細く長い眉、
女性的とも言える切れ長の瞳、そして、微笑みを浮かべる薄い唇が張りついている。
八千草杜若(やちぐさ・とじゃく)・・・
帝都退魔寮第弐班班長にして、葵蒼鷹に次ぐ地位を持つ、退魔寮のナンバー2である。
彼は、葵氏一門と同じ、帝都の大貴族・八千草家の出身で、
次期当主の噂も名高い正真正銘の貴公子だった。
第壱班に次ぐ第弐班の班長であるが、
その実力は退魔寮総長・葵蒼鷹と肩を並べるほどと称され、
また、その優秀にして明晰な頭脳により、退魔寮の参謀格を務め、その才腕を振るっている。
(玉鬘が忌み嫌っている)葵蒼鷹とは正反対の性格で、
その丁寧な物腰と、人当たりの良い態度から、皆に好かれる存在であり、
帝都の女性陣からは憧れと羨望の視線を向けられていた。
ちなみに、玉鬘もその一人である。
玉鬘「あは・・・あはははは・・・と、杜若様・・・今の話ですが・・・
つい口がすべったというか・・・ぶっちゃけ全然心にも無い事が、
何故か勝手に出てきたのでして・・・」
玉鬘は顔中からだらだら汗を流し、カチコチに固まった声で弁明を図る。
そんな彼女を見て、杜若はいたずらっぽくくすりと笑う。
杜若「ふふふ・・・わかっているさ。今の話は、聞かなかったことにするよ」
杜若の優しい言葉に、玉鬘はほっと息を吐く。
玉鬘「杜若様ぁ〜〜〜ありがとうございますぅ〜〜〜〜・・・」
杜若「蒼鷹はあの性格だからね。君が文句を言いたくなるのもわかるよ」
またも蒼鷹の事を名前で呼ぶ杜若。
その口調には、一向に性格を改善しようとしない
“友人”への呆れがこもっているように思えた。
葵蒼鷹と八千草杜若。
名家の血を引くエリートにして、都を守護せし帝都退魔寮の最前線で活躍する二人の貴公子。
帝都中の注目と評判の的であるこの二人は、お互い無二の親友同士であった。
玉鬘にはそこが多いに謎であり、何故こんなに温厚で善い人な杜若が、
あの性根の曲がり腐った葵蒼鷹と友人をやってられるのか、まるで信じられなかった。
玉鬘(この美貌!この知性!そして、この優しさ!
どっからどう見ても非のうちどころの無い本物の貴公子様だわ・・・
蒼鷹みたいにやたら偉ぶる似非(エセ)貴族とは、次元が違うわ!次元が!!)
玉鬘の評価はこんな感じだが、蒼鷹は蒼鷹で、女性陣からの人気は杜若に負けぬほど高い。
友人の一人が言うには、あの冷たく素っ気無い態度が、女心をくすぐるというのだが・・・
少なくとも玉鬘には全く理解できぬ感情だった。
杜若「ところで、一体何がそんなに不満なんだい?一つ話してみてくれないか?」
玉鬘「え?いいんですか?何か愚痴っぽくなりそうですけど・・・」
杜若「構わないよ。部下の悩みを理解するのも、上に立つ者には大事な事だからね」
玉鬘「杜若様ぁ〜〜〜〜〜」
玉鬘は思わず感涙しそうになる。この部下に対する思いやりと来たらどうだ。
蒼鷹などとは、格が違う、役者が違う、ブランドが違う(ぉ
玉鬘「それがですねぇ・・・話せば長くなるんですが・・・」
そう言う割には、玉鬘は早口でわりと短く纏めて話した。
玉鬘「かくかくしかじか、たまたまけろけろ・・・
とまぁ、こういう具合なんですよ〜〜〜どう思います?」
それに対する杜若の返答は、あっさりとした物だった。
杜若「ふーん、流れの浄滅師・・・ねぇ」
自分の苦境と不満を一気にぶちまけた玉鬘だったが、
杜若が興味を示したのは、“流れの浄滅師”というキーワード一点だった。
心の篭ったねぎらいの言葉をかけてくれるのかと期待していた玉鬘は少なからず落胆する。
杜若「もしかして・・・いや、“彼”以外考えられないな・・・だとすると・・・」
杜若は顎に手を当てて思考を巡らす。
玉鬘には、彼が何を考えているのかさっぱり分からなかった。
44
:
藍三郎
:2006/11/05(日) 12:36:04 HOST:65.101.231.222.megaegg.ne.jp
玉鬘「杜若様、心当たりがあるんですか?その、流れの浄滅師に・・・」
杜若「ああ、多分、私の良く知っている男だ。
まぁ、かなり優秀な男だから、君の足を引っ張る事は・・・
いや、これも違う意味でありうるかな」
一体どう言う人物なのだろう。玉鬘はこの後も質問を続けるが、
言いたくないのか杜若は妙に言葉を濁すばかりで明言を避けている。
杜若「ま・・・彼の人柄なら、直接会えばすぐにわかるよ。
気が合うかどうかは・・・君次第だろうけど」
玉鬘「はぁ・・・」
杜若「じゃ、私はこの辺で・・・玉鬘くん、今回の任務“色々”大変だろうけど、頑張りなよ」
玉鬘「は、はい!!」
励ましの言葉に、慌てて返事を返す玉鬘。
杜若は微かに微笑むと(プリンス・スマイルだ)玉鬘の傍を通って回廊を進んでいった。
その先には、先ほど玉鬘が出た部屋・・・葵蒼鷹の執務室がある。
杜若「やぁ、蒼鷹。お邪魔するよ」
杜若は朗らかに挨拶をすると、蒼鷹のいる執務室へと入る。
蒼鷹は玉鬘が退室した後、ずっと机に向かって筆を動かし続けていた。
大量に積まれた書類に署名(サイン)を記しているのだ。
蒼鷹「貴公か。何の用だ?」
杜若「いや、特にこれといった用は無い。
ただ、わずかながら出来た休息の刻を、友との語らいで過ごそうと思ったまでのことだ」
蒼鷹「そうか・・・」
蒼鷹はそれだけ言うと、休まずに筆を動かす。
素っ気無い態度のようであるが、
杜若以外の者ならば怠惰をなじる毒舌と共に追い出しているところである。
杜若「そうそう、先ほど、玉鬘くんと会ってきたよ。
彼女に多賀目村に行くよう、命を発したそうだな」
蒼鷹「ああ、他に動かせる適当な駒がいなかったのだ。
それに、しばし都を離れて頭を冷やさせるのも良い機会だと思ってな」
杜若「多賀目村か・・・あまり良い噂は聞かないな・・・」
杜若はかすかに目を瞑ると、頭の中から多賀目村に関する情報を引き出そうとする。
帝都退魔寮の優秀なる頭脳(ブレーン)である杜若は、
帝都はおろか鳳仙境中の様々な怪事件の情報を全て記憶していた。
杜若「・・・最初、多賀目村で妖怪の出現が確認された時、
当然、村民は近辺に中流している浄滅師に出動の依頼を出した。
が、その浄滅師は物の怪退治に向かうも、返り討ちに遭い、帰らぬ人となった。
その後も、帝都退魔寮から数名の浄滅師が派遣されたが、
誰一人帰って来る者はおらず、これまでに合計三名の浄滅師が犠牲になっている・・・」
玉鬘は『田舎の小さな事件』と軽んじたが、
実は退魔寮を苦戦させている案件の一つだったのだ。
杜若「犠牲になった浄滅師はそれぞれ第漆班、第伍班、第参班の所属・・・
ここまで来れば、第壱班の者を差し向けなければならないのも納得が行く」
下位班の浄滅師を向かわせても、また新たな犠牲者が出る可能性が強いからだ。
杜若「これは、かなり危険度の高い任務だな・・・彼女にその事は話したのか?」
蒼鷹「いや・・・多賀目村に向かえという指令以外は何も伝えていない。
自らが携わる事件の情報を、自分で調べるのは帝都の浄滅師として当然の事だ」
杜若「そうか・・・まぁ、現地で村人に話を聞けばわかる事だしね・・・」
杜若はここで、先ほども気にしていた“流れの浄滅師”に話を移す。
杜若「ところで・・・とある“流れの浄滅師”を、彼女につけてあげたそうだな。
まぁ、間違い無く“彼”の事だろうけど・・・やっぱり、彼女が心配なのか?」
蒼鷹「フン・・・」
蒼鷹は「馬鹿げた事を・・・」と言う風に鼻を鳴らした。
蒼鷹「“奴ら”はどちらも半人前だ。
半人前は、二人揃ってようやく一人分の戦力として数える事が出来る。それだけの事だ」
杜若「相変わらず、手厳しい事だな・・・」
杜若はここで、今回の事件に思いを馳せる。
杜若「それにしても、三人もの浄滅師が次々に消されるとは・・・
その物の怪が、恐ろしく強いと言ってしまえばそれまでだが・・・
どこか、きな臭い物を感じるな・・・」
事件の裏に、不穏な影を感じる杜若だった・・・
45
:
藍三郎
:2006/11/05(日) 12:40:14 HOST:65.101.231.222.megaegg.ne.jp
=多賀目村=
そして、この日の夕刻に差しかかる時刻・・・
玉鬘清女は、牛車(ぎっしゃ)で帝都から鳳仙境の僻地にある村落、『多賀目村』を訪れていた。
「牛車」と言っても、多くの者が思い浮かべるような、牛に引かせる御車の事ではない。
帝都が保有する、浮遊して推進する術式を編んだ符を御車に張りつけた、
低空を飛行して移動する乗り物である。
その速さはただの御車とは比べ物にならず、事実彼女は遠方のこの村に約二時間ほどで到着できた。
玉鬘「・・・わかっちゃいたけど、えらくボロっちい村ね〜〜」
玉鬘は自身が抱いた感想を率直に述べる。
確かに、帝都の建物とは違う藁葺きの貧相な建物群は、ここがド田舎である事を思い知らされる。
玉鬘「やっぱり・・・あたしみたいな超一流の浄滅師には、
もっとこう華やかな場所が似合うと思うのよね〜〜
こんな寂れた村、『世紀の天才美女風水師・玉鬘清女』には、ふさわしい舞台じゃないわ」
正直、こんな下らない任務は放棄してとっとと都に帰りたかったが、そうはいかない。
任務である以上、従わなければ、あの冷徹この上ない上司に首を切られてしまう。
玉鬘「さて・・・連絡係の報告じゃあ、“助手”の浄滅師が来るはずだけど・・・」
玉鬘は“流れの浄滅師”を探してきょろきょろと辺りを見まわす。
しかし、それらしき人物はどこにもいない。そんな事をしていると、
どこからか子供たちの歓声が聞こえてきた。
子供「おーーい!!こっちこっち!!」
子供「ぱす、ぱ〜〜す!!」
声の聞こえた方に視線を送ると、村の広場と思しき場所で、
数人の子供たちが“蹴鞠”に興じているのが見えた。
蹴鞠(けまり)とは、鳳仙境にいる人間なら誰でも知っているポピュラーな遊戯の一つだ。
二つの陣営に分かれ、丈夫な鞠を蹴って、互いの陣地に鞠を入れる事で点数を獲得し、
最終的にその点数の大小で勝敗を決める競技である。
基本的に足を使い、手を使う事を禁じられている所など、
大陸で言うところの、蹴球(サッカー)というスポーツに近い。
元々は、貴族の間での遊びだったが、それが次第に市井に普及し、
今では都会・田舎、子供からお年寄りまで幅広く楽しめる遊戯となっている。
玉鬘「はっ・・・賑やかでいい事ねぇ・・・」
玉鬘はそんな子供達を微笑ましげな視線で見ていた。
そんな中、ふと子供達の中に、一人の異分子がいる事に気づいた。
???「よ〜〜し!僕に回せ!一発で決めてやるよ!!」
小柄な体躯をしたその人物は、背は低くとも子供という大きさではなかった。
背中辺りまで伸ばした、長く広いもみの木のような緑色の髪が風になびく。
白い着物の上に羽織った、袖口の広い銀杏(いちょう)色の衣が、動くにつれて揺らいで行く。
子供と言うには成長した体つきに、大人とはかけ離れた無邪気さ。
ちょっと変わった“子供っぽい大人”・・・玉鬘が抱いた印象は、大体そんなものだった。
玉鬘「何あいつ・・・ダッサい格好ねぇ・・・」
腰に手を当てて、ぽつりとそう漏らす玉鬘。
一方、青年は鞠を蹴ろうとしている所だった。
???「そ〜〜れっ!!」
青年が蹴った鞠は、見事相手の陣地に・・・飛ばなかった。
ありえない軌道を描いて、強烈な回転を駆けられた鞠は玉鬘の元へと飛んでいき・・・
玉鬘「ぶほぉっ!!」
寸分の狂いも無く、玉鬘の顔面に直撃した。
玉鬘「・・・・・・」
玉鬘は顔に鞠をめり込ませたまま、
しばし立ち尽くしていたが・・・やがて仰向けになって倒れる。
???「あ♪ごめんごめーん」
口だけは謝っているが、どこか楽しそうな声で青年が駆け寄ってくる。
その足音を聞いて、玉鬘はお化け屋敷で棺桶から出てくる死体のように、バッと起きあがった。
玉鬘「お、おみゃあ!!なんばしよっとかーーー!!!」
そして、名古屋弁と九州弁が混ざった言葉で一喝する。
近くにいた子供達はあまりの迫力に怯える。
しかし、青年は玉鬘の一喝にも微動だにせずにこう続けた。
???「いやぁ、ついつい脚が滑ってねぇ。どこかで“僕の悪口が聞こえた”もんだからさ♪」
46
:
藍三郎
:2006/11/05(日) 12:41:35 HOST:65.101.231.222.megaegg.ne.jp
青年の言葉に、玉鬘はぴたりと動きを止める。
玉鬘(え?もしかして、さっきの“ダサい格好”ての聞こえてたの?)
だとすれば、地獄耳とかいうレベルを超越した聴覚である。
???「ふふふ・・・どんな小さな囁きも、僕には丸聞こえさ。風が教えてくれるからね」
笑顔でよくわからない事をいう青年。
ただ、玉鬘にはその笑顔が非常に腹立たしいものに思えた。
いくら悪口が聞こえたからって、
いきなり淑女(レディ)の顔面に鞠をぶつけるとは、礼儀知らずにも程がある。
葵蒼鷹とは別の意味で、気に食わないヤツ・・・玉鬘はそう決めつけた。
玉鬘の苛立ちもどこ吹く風、青年は後ろの子供たちに振り向いてこう告げる。
???「さて、みんな、僕はこの辺で抜けるよ。
このオカッパの人と話があるからね。後は君達で遊んでいなよ」
子供「うん、わかった!」
青年の一言で子供達はまた蹴鞠場に戻り、再び遊び始める。
???「さて・・・と。それじゃ、本題に移ろうか」
青年は手を後ろで組むと、歩きながら彼女に話しかける。
???「あんた、帝都から送られてきた浄滅師でしょ?」
玉鬘「え?ど、どうしてその事を・・・」
目の前の男は、何故自分の素性を知っていたのか?
脳裏に疑問符が浮かぶ中で、彼女は一つの考えに思い至った。それは・・・
玉鬘「そっか〜〜〜♪帝都きってのエリート浄滅師であるあたしの顔と名声は、
こんなド田舎にまで響いていたのね!!
まぁ、あたしの実力と美貌からすれば、当然のことだけど〜〜〜♪」
勝手に決めつけてのぼせあがる玉鬘。それに対し、青年はあくまで冷淡に否定した。
???「違うよ。何勘違いしてんの?馬鹿みたい」
冷静にそう言われ、玉鬘はぴたりと動きを止めた。
そして、こめかみに青筋を浮かべてピクピクと震える。
玉鬘「・・・ゴメン、一発殴っていい?さっきの鞠の分と合わせて」
拳を強く握り締め、今にも殴りかかろうとする玉鬘。
一方の青年は、相変わらずの飄々とした態度でこう言い放った。
???「あのさぁ、蒼鷹のヤツから何も聞いてないの?」
玉鬘「え・・・?」
その言葉で、玉鬘はようやく目の前の人物の正体に気づいた。
玉鬘「も、もしかしてアンタ・・・」
夢夜「そ。僕こそ、鳳仙境にその人ありと謳われた、
稀代の天才浄滅師・黄泉津夢夜(よもつ・ゆめや)とは、僕の事さ♪」
長すぎる袖を翻し、夢夜と名乗る青年は大仰な挨拶をした。
玉鬘(黄泉津・・・夢夜・・・コイツが、蒼鷹が手配したって言うフリーの浄滅師?)
未だに信じられないといった視線で夢夜を見やる玉鬘。
目の前の男は、未だ子供っぽさの残る容姿で、態度もどこかちゃらんぽらんだ。
おまけに性格も悪いときている。
これからコイツと仕事をしなければならないと思うと、かなり嫌気が差してきた。
玉鬘(蒼鷹のヤツぅ〜〜〜もっとマシなのを呼びなさいよ〜〜〜!!)
夢夜「しっかし、蒼鷹のヤツも気が利かないよな〜〜
もっと使えそうな“助手”を送ってくれればいいのに」
玉鬘「ハァ!?」
夢夜がぼそりと呟いた言葉に、玉鬘は敏感に反応した。
玉鬘「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!
何で私がアンタの助手なのよ!!立場が逆じゃない!?」
帝都お抱えのエリートと流れ者。常識的に考えれば、どちらが上の立場になるのかは明白である。
しかし、玉鬘の抗議に対し、夢夜はぽけっとした顔になる。
まるで、何でそんな事を言われなければならないのか、本気で分かっていないようである。
夢夜「なぁ〜に言っちゃってんの。僕と君の格(レベル)の違いなんて、明々白々じゃないか。
格上と格下、どちらが助手につくのか、そんなもん(浄滅師)業界の常識でしょ?」
夢夜は悪びれもせずに言い放つと、軽快なステップでその場を去ろうとする。
玉鬘「あ、どこ行くつもりよ!話はまだ終わって・・・」
夢夜「は?どこへ行くって・・・物の怪が出るっていう森に決まってるじゃん。
僕らは別に観光にきた訳じゃないんだからね。仕事はちゃっちゃと済ませないと♪」
玉鬘「む・・・そりゃそうだけど・・・」
不満を顔中に露わにする玉鬘。この生意気な小僧にはまだまだ言う事が沢山あるのだ。
夢夜「ぐずぐずするな〜〜!置いてくぞ〜〜〜!!!」
そうこうしている内に、夢夜の姿は親指大ぐらいまで小さくなっていた。
玉鬘「あ、こら!待ちなさぁ〜〜い!!」
慌てて荷物を抱え、夢夜の後を追いかける玉鬘だった。
47
:
藍三郎
:2006/11/11(土) 20:25:15 HOST:124.200.12.221.megaegg.ne.jp
=多賀目村付近 森林地帯=
物の怪討伐のため、夢夜と玉鬘は、多賀目村周辺の森に足を踏み入れていた。
既に日は落ち、漆黒の帳(とばり)が辺りを包んでいる。
二人の行く先には、無数の樹木が亡者の群れのように並んでいた。
玉鬘「はぁ・・・暗い〜熱い〜ジメジメするぅ〜〜〜・・・もう最悪〜〜〜〜」
湿気の多く、蒸し暑い森の環境に、玉鬘は不平を漏らす。
都暮らしが長い彼女は、こう言った自然溢れる獣道を歩く事に慣れていない。
足首に当たる草の感触や、鼻先を飛び交う虫が、たまらなく鬱陶しかった。
玉鬘「本当なら・・・今頃は帝都のエリート浄滅師を称える、
村人たちの歓迎の宴を受けてるトコだったのにぃ〜〜〜」
こういう辺鄙な田舎の住民達にとって、帝都で活躍する浄滅師とは、
雲の上の住民、神様のような存在である。
こんな田舎に来る唯一の楽しみが、村人達の接待だったのだが・・・
あの黄泉津夢夜という助っ人は、ろくに休ませもせず、
さっさと森へと連れ出してしまった。
夢夜「何ちんたら歩いてるんだこのノロマ!
これじゃ蝸牛(かたつむり)の方がまだマシだ!!」
既に視界の遥か先にいる同行者が、大声で呼びかけてくる。
汗だくになりながら歩いている玉鬘とは対照的に、
青年は息一つ切らさず、悪路にも関わらず足取りも軽やかだ。
玉鬘「うっさいわねぇ・・・少しは休ませなさいよぉ・・・」
かれこれ1時間近く歩き続けて、彼女の疲労は早くもピークに達していた。
夢夜「何だぁ、もうヘタレたの?体力無いなぁ・・・それでよく帝都の浄滅師が勤まるね」
玉鬘「いいのよ!私は風水術士!!
帝都に攻めてきた強大な妖魔相手に、部下を引き連れ華々しく登場し、
華麗な風水術で蹴散らすのが、私の役目なのよ!
本来、こんなド田舎の気色悪い森の中で、足を棒にして歩く身分じゃないはずなのよ!!」
夢夜「でも、実際そういう目に遭ってるじゃん」
玉鬘「う”っ・・・」
夢夜の遠慮ないつっこみにあっさり虚勢を崩される。
夢夜は心底馬鹿にしたようにため息を吐くと、こう続けた。
夢夜「まぁいいや。
悪い物怪は、僕がさっさと片付けるから、どの道君の出番は無いのさ。
ずっとそこでシャクトリムシみたいにヘバってるといいよ♪」
笑顔でそう告げると、夢夜は背を向けて悠々と歩き出す。
玉鬘「ちょ、ちょっと待ちなさい!!」
夢夜の台詞に彼女は始めて危機感を覚えた。
この男の生意気な態度は何とか我慢してこられたが、手柄を横取りされるのだけは本当に困る。
どんなにチンケな田舎の任務とはいえ、これは上司直々の指令。
それをどこの馬の骨とも知れぬ素人に掻っ攫われでもしたら、
どれだけ自分の評価は下がるだろうか。
あの葵蒼鷹ならば、これを期に自分を本気で地方へ左遷する腹かもしれない。
何としても、手柄を自分のものとしなければ・・・
疲れた体に鞭打って、彼女は急ぎ夢夜の後を追った。
48
:
藍三郎
:2006/11/11(土) 20:26:03 HOST:124.200.12.221.megaegg.ne.jp
玉鬘が、やっとの思いで夢夜に追いついた時・・・
夢夜は駆け足で進みながら、後ろを振り返ってこんな事を言い出した。
夢夜「ところでさぁ、君、名前は何て言ったっけ?」
玉鬘「え?」
いきなり名前を聞かれ、玉鬘は自分がまだ名乗っていなかった事を思い出した。
玉鬘「いいわよ。教えてあげるわ。耳の穴かっぽじって良く聞きなさい!
あたしの名前は玉鬘清女!!
帝都退魔寮第壱班所属の浄滅師にして風水博士!未来の――――」
夢夜「あ、そっから先はいいや。のぼせ上りの妄想なんか聞きたくないから」
玉鬘「なぬ!?」
夢夜に台詞を途中で打ち切られ、玉鬘はこめかみに青筋を浮かべる。
夢夜「ふ〜〜ん・・・タマカズラなら・・・」
夢夜は顎に手を当てて、何事かを考えていた。
夢夜「よし、カッパがいいな。君の渾名はカッパで決まりだ!」
玉鬘「ちょ・・・何で河童なのよ!!」
当然の如く反発する玉鬘。
夢夜「オカッパだからカッパだ!わかりやすいだろう!
着ている服も緑色だしね!!」
玉鬘「全然良くないっ!バカらしいし、名前と全然関係無いじゃない!!」
夢夜「わがままだなぁ・・・え〜と・・・それじゃ・・・」
夢夜は数秒ほど(自分としては)よく考えてみた。
夢夜「カッパが駄目なら玉子でいいや。
タマコなんて可愛らしいのじゃないぞ!タマゴだ!!」
玉鬘「何よそれぇ!てか、寿司ネタつながり?」
夢夜「そうそう、どちらも地味で目立たないタネだね。君みたいに♪」
玉鬘「やかましい!!」
歩き疲れている上に、こいつの毒舌を食らってますます苛立ちが強くなる。
玉鬘(世間知らずで田舎者!おまけにバカの上に性格が悪いと来た!
こんなムカつく奴に会ったのは、あの葵蒼鷹以来だわ!!)
冷静に、針で刺すように嫌味を垂れる蒼鷹とは違い、
この夢夜は口を開けば洪水の如く毒舌を流してくる。
陰性と陽性の違いこそあれ、どちらも気に入らないタイプに違いなかった。
夢夜「む・・・?」
それからしばし歩いた後・・・
駆け足で森の中を進んでいた夢夜が、突然足を止めた。
玉鬘「何よ、いきなり止まったりなんかして・・・!?」
辺りに流れる尋常でない気配を、玉鬘も感じ取った。
急いで懐から記号の刻まれた円盤を取り出し、目の前に翳す。
この円盤こそ、風水師・玉鬘清女の扱う霊具『太極羅盤』である。
玉鬘は、この霊具を媒介とする事で、大地の“氣”と同調し、風水術の発動を可能とする。
また、その他にも仕入れた情報(データ)を保存したり、
周囲の霊力・妖力を計測するなどの、様々な機能が付属している。
彼女は、羅盤に手を当てて、索敵を開始する。
羅盤を媒体として、周辺の気脈を読み取り、
その中の乱れ・・・つまり、霊力や妖力の反応を探っていく。
予想通り、すぐに反応は現れた。
玉鬘「この近くに妖力反応が・・・妖力量からすると、かなりの大物のようね・・・」
玉鬘はごくりと生唾を飲み込んだ。
夢夜「あのさ。そんな面倒な事しなくても・・・もう、すぐそこまで来てるみたいだよ」
玉鬘「え?」
夢夜に指摘され、玉鬘は彼が指差す方向を見る。
その先には草が生い茂り、先の見えない暗闇が広がっていた。
だが・・・
「グォォォォォォォォォォン!!!!!」
玉鬘「!!!」
大気を震わす咆哮が、夜空に轟く。
玉鬘が思わず身構えた直後・・・草叢を突き破り、“それ”は姿を現した。
全長およそ三米ほどはあるだろうか。
全身灰色の毛で覆われた鉄板の如く分厚い胸板を持ち、
異常に発達した丸太のように太い二の腕は、地面まで届くほど伸びている。
頭頂から伸びる尖った角、口一杯に並んだ鋭い牙。
熊に似た姿を持つこの怪物は、『火愚魔(ひぐま)』と称される物の怪だった。
49
:
藍三郎
:2006/11/11(土) 20:26:38 HOST:124.200.12.221.megaegg.ne.jp
夢夜「へぇ〜〜こいつが村のみんなが言ってた物の怪かぁ。
随分とやる気満々みたいだねぇ・・・」
夢夜の言う通り、火愚魔は今にも二人を食い殺さんばかりの殺気に漲っていた。
血走った双眸には狂気の色が宿り、噛み合わせた口の間から、荒い息と歯軋りが漏れて来る。
夢夜「で・・・どーすんの。帝都の浄滅師サン?」
玉鬘「・・・ハッ、決まってるじゃない!
化け物なんざ、この玉鬘清女様が、さくっと退治してやるわ!!」
一瞬巨体に圧倒されたが、腐っても帝都退魔寮の浄滅師。
これぐらいの物の怪なら、何度も戦ったことはあるし、退治する自信もあった。
玉鬘「いいこと!あのクマは私がやっつけるんだからね!手ェ出すんじゃないわよ!!」
夢夜「何をそんなに焦ってるんだか・・・あ、来るよ」
火愚魔「グォオオオォォォォォッ!!!!」
夢夜がそう言った直後、物の怪は長い腕を振りまわし、二人に叩きつけてくる。
その圧倒的な膂力は、巨人の金鎚の如し。
地面は裂き砕け、砂岩と粉塵が宙へと舞う。
玉鬘「馬鹿力だけが取り柄?いいカモね!」
二人は左右双方に飛びすさり、化け物の攻撃をかわしていた。
玉鬘「火之壱拾伍行・・・火霊礫!!」
太極羅盤を通じて、火の“氣”を大気から抽出する。
周囲に数個の火の玉が浮かび、玉鬘が指を鳴らすと同時に火愚魔へと向かっていく。
火愚魔「グォアァァァアァァァッ!!!!」
炎弾に身を焼かれ、物の怪の苦悶の叫びが森に轟く。
確かな手応えを感じると、玉鬘は次なる術式を読み上げる。
玉鬘「木之壱拾捌行・・・樹縛(じゅばく)!!」
今度は羅盤の文字が、うっすらと緑色に輝く。
それに呼応するかのように、周囲の木々が、ざわざわと蠢動する。
そして、木の枝が突如蛇のように伸び、火愚魔の全身に絡みついた。
火愚魔「グォォォォォォォッ!!!!」
物の怪は巨体を揺すって枝の呪縛を振りほどこうとする。
だが、いつしか枝は岩のように硬くなっており、
物の怪の怪力を持ってしても、ビクともしなかった。
並みの術士ではここまで強固に拘束する事は出来ない。
玉鬘の持つ霊力が並外れているからこそ、出来る芸当である。
玉鬘「もうこれで動けないでしょ。チョロいもんよ!」
これで、怪物の動きは完全に封じられた。後はトドメを刺すだけだ。
玉鬘「どうよ!私の実力は!あんたみたいな田舎者が、
私の華麗な秘術の数々を拝めるんだから、感謝しなさいよね!!」
別方向へと逃れた夢夜の方を見て、勝ち誇ったように言う玉鬘。
夢夜「・・・・・・」
一方の夢夜は、返事を返す事無く、
顎に手を当てて、無言でじっと物の怪を見つめるのみだった。
玉鬘「ふふふ・・・驚いて声も出ないようね・・・
そんな様じゃ、次の術を見たら腰を抜かすんじゃないかしら」
あの鋼鉄のような胸板には、並みの術では歯が立たない。
それだけの威力を持った、上位道術の詠唱を開始する。
玉鬘「森閑に聳えたつ雄々しき大樹よ。鋼の豪槍へと変じ、岩をも穿て!」
太極羅盤の緑色の輝きが、さらに増していく。
霊力の波動を浴びて、近くに伸びる一本の大樹が、
その幹ごと変質し、鋭く尖った巨大な槍へと変じていく。
大樹豪槍(だいじゅごうそう)・・・
木属性の上級道術で、“木”の気脈を活性化させ、
聳える樹に膨大な生命力を与えることで、樹を巨大な穂先に変えて敵を貫く術である。
玉鬘「行くわよ・・・木之肆拾漆行・・・『大樹―――――」
今まさに、必殺の術が発動されんとする・・・その時。
夢夜「ちょいとターーーーンマっ!!!」
詠唱途中の玉鬘の体に、強い衝撃が与えられた。
玉鬘「が――――――――――」
何が起こったのかわからなかった。
いきなり音も無く近寄ってきた夢夜が、脇腹に掌底を叩きこんだ事に気づく頃には・・・。
玉鬘の体は数米先まで吹っ飛ばされていた。
玉鬘「ごへぇっ!!?」
妙齢の女性には相応しくないうめき声をあげ、玉鬘は背中から樹に激突した。
50
:
ゲロロ軍曹(別パソ)
:2006/11/13(月) 18:01:34 HOST:proxy02.std.ous.ac.jp[pc3f060.std.ous.ac.jp]
〜ILLUSION FANTASIA 番外編〜
仮面ライダーカブト・アナザーストーリー
<優雅なる、カマキリの戦士>
これは、『天道総司』と呼ばれる男が『仮面ライダーカブト』へと変身し、『ワーム』とよばれる未知の生命体を見事撃退した日の、数日ほど後に起こった物語である・・。
<???・とある部屋>
?「・・、失礼します・・。」
メガネをかけた男性が、何やら気まずいような雰囲気で部屋に入る。部屋の奥には、一人の中年男性が椅子に座っていた・・。
?2「ふむ・・、どうしたのかね?どうやら『悪い知らせ』、の様に見えるが・・?」
?「はい・・。・・申し訳ありません、例の『試作型ゼクター』を乗せて輸送していた車がワームに襲われたらしく・・、その際、ゼクターが『ディサイスリスト』共々行方知れずになった、とのことです・・。」
?2「・・なるほど、ね。」
中年男性は落ち着いた口調だが、内心は怒っているというより、少し呆れているという感じのオーラが出ていた・・。
?「・・ですが、ご安心を。必ず2日、いえ、今日にでも発見させてみせますので・・!」
?2「そうか。・・ところで君は、『運命(うんめい)』というものを、信じた事があるかね・・?」
?「・・・・・、は?」
唐突な中年男性の発言に、思わずあっけにとられる男性・・。
?2「古来より、『この世のすべての出来事は、既に神により必然的に決められている』・・という説がある。だとすれば、カブトゼクターが何処ぞの誰かを資格者に選んだのも・・、『あのゼクター』が行方知れずになったのも・・、総て必然的な物なのかも、知れないねえ・・。・・君は、どう思うかね?」
中年男性が微笑を浮かべて聞く・・。すると、メガネの男性は別段表情を変えずに答えるのだった・・。
?「・・お言葉ですが、私は運命などという馬鹿げた物を信じるつもりはありません。今の私はあくまで、<ZECT(ゼクト)>の勝利の為に動いてる、それだけです・・。」
?2「ふっ・・、そうか・・。すまなかったね、余計な時間をとらせて・・。」
?「・・失礼しました。」
軽く頭を下げて、メガネの男性は部屋を退出するのであった・・。
一方、中年男性は、何か思案するようなポーズをとり始めた・・。
?2「はてさて・・、あのゼクターは、いったい「誰」を主人に選ぶのかな・・?」
(続く・・・)
51
:
藍三郎
:2006/11/14(火) 00:56:29 HOST:124.200.12.221.megaegg.ne.jp
○からすま幻戯譚 序章『金色の鴉』 其の弐○
玉鬘「な、な、な・・・何しやがるんじゃあてめぇぇぇぇぇっ!!!!」
打ちつけられた背中がズキズキ痛む。
いきなりの意味不明の狼藉に、玉鬘は言葉遣いも忘れて絶叫する。
夢夜は、そんな玉鬘の抗議も無視して、物の怪の方を指差す。
夢夜「・・・見ろよ。あいつの額」
玉鬘「ちょ、話を聞きなさ・・・額?」
火愚魔「グゥ・・・グゥルルルルル・・・・・・」
樹木に絡み取られたまま、火愚魔は苦しそうに喘いでいる。
その額には、赤く輝く文字の刻まれた、長方形の紙切れが張り付いていた。
玉鬘「何アレ・・・符印?」
夢夜「そう。あの禍々しい気から察するに・・・多分、こいつは・・・」
夢夜はゆっくりと動けない火愚魔の元へと近づいていく。
夢夜「ちょっと痛むけど、我慢しろよ?」
そして、飛びあがると、呪符に手を当てて剥ぎ取った。
火愚魔「グオオオオオ!!!!・・・・・・クゥ・・・・・・」
夢夜が札を剥いだ直後、火愚魔は喚き声を止め、
だらりと首を下げてぐったりと動かなくなった。
玉鬘「ど、どーなってんの?」
夢夜「あのさぁ・・・君、仮にも浄滅師なのに、まだ分からないわけ?」
玉鬘「う、うるさいわね!!」
いきなり突き飛ばされたお陰で、思考が混乱しているのだ。
夢夜「僕の推測だけど、この札は張りつけた生き物を狂暴化させ、
自由に操る呪符みたいだね・・・
このクマちゃんは、どこかの誰かが仕掛けたチンケな符術で、
無理矢理暴れさせられてたってことさ」
玉鬘「じゃ、この物の怪は、精神操作系の符術を・・・」
夢夜「そゆこと。おかしいとは思ってたんだ。
火愚魔は本来、人里離れた奥地に棲み、
必要以上の狩りをしない大人しい物の怪のはず・・・
それが、どうしてこんな村に近い森に出てきて、人を襲うのか謎だったけど・・・
こういうカラクリだったわけだね」
火愚魔「ハァ・・・ハァ・・・」
札は、火愚魔の額に釘で直接打ちつけられていた。
額からは血が流れ、大変痛々しい。
それだけでなく、符術で操られた事で、肉体的・精神的の両面で激しく消耗していた。
夢夜「全く・・・酷い事をしてくれるね。
お〜い、そこにコソコソ隠れてる卑怯者。いるのはわかってるんだ。出てきなよ!」
玉鬘「!!」
???「クククク・・・気づいていたか・・・」
擦れた声と共に、夢夜達の背後の草叢から、一人の男が姿を現す。
散切りにした黄土色の髪に、色白のこけた頬。
斑点のついた装束で、痩せぎすの体躯を包んだ、陰気な雰囲気を漂わす男だった。
???「せっかく化け物とやり合ってるスキをついて、片付けるつもりだったのによぉ・・・
もう気づかれるとはな・・・余計な手間が増えちまったぜ・・・」
玉鬘「あんた・・・人間・・・なの?」
見た目は物の怪には見えない、普通の人間である。
しかし、男が振り撒く殺気と瘴気は、ただの人間とは違った異質なものだった。
???「見りゃわかるだろ?帝都の浄滅師。オレは、お前らと敵対する側の“人間”さ」
玉鬘「・・・!業人(なりうど)!!」
班猫「ご名答。オレ様は業人の一人で、班猫(はんみょう)ってモンだ」
業人とは・・・
道術・符術などの超常の力を納めながら、その力を己の欲のためだけに使い、
罪を重ね続けた結果、邪悪へと堕ちた道士たちの総称である。
彼らは、大陸の各地でその秘術を使い、悪逆・非道の限りを尽くしており、
帝都も彼らへの対策には手を焼いていた。
玉鬘「この事件に業人が関わっていたなんて・・・
もしかして、この森に派遣された浄滅師達を消して行ったのは・・・」
班猫「そ♪全部オレ様の仕業さ」
そう言って、班猫は一枚の札を取りだし、手で弄う。
班猫「そこの化け物を符術で操って、のこのこやって来た浄滅師どもに襲わせる。
そんで、さっきのお前みたいに倒して油断しているところを突いてやれば・・・
ククッ、楽ぅ〜〜に仕留められたぜぇ!!」
べろりと舌を出して、卑屈な笑いを浮かべる班猫。
52
:
藍三郎
:2006/11/14(火) 00:59:15 HOST:124.200.12.221.megaegg.ne.jp
玉鬘「くっ・・・この卑怯者!!」
しゃがんだまま、班猫に叫ぶ玉鬘。
夢夜「そうだ!君は悪党だ!外道だ!!」
夢夜も玉鬘に続いて、相手をなじる。
初めて、この男と意見があった気がする。
玉鬘「そうよ!もっと言ってやりなさい!!」
夢夜「全くもって悪逆非道にも程がある!!
操られているだけの罪も無い獣に、
名誉欲から容赦無くトドメを刺そうとするなんて・・・何て酷い女なんだ!!」
夢夜の言葉に、玉鬘は思わずずっこける。
玉鬘「ちょ、あたしのことかい!?」
班猫「はっ・・・そこの長髪、全然緊張感ねーなぁ・・・」
夢夜「ははっ、君ごときに緊張する必要は無いからね♪」
両袖を合わせたまま、朗らかな笑顔で応える夢夜。
班猫「フン・・・まぁいい・・・いい気になっていられるのも今のうちだ。
貴様らにはここで死んでもらうぜ。
帝都の浄滅師を4人も片付ければ、
オレ様の罪業(カルマ)も跳ね上がり、さらに上の位に昇る事ができる・・・
こんな絶好の機会を、逃がすわけにはいかねぇよなぁ!!」
胸に野心を抱き、業人は目の前の獲物へと狙いを定めた。
男の翳した右腕が歪に変質し、カニのハサミのように変わる。
殺意を漲らせ、今にも飛びかかってきそうな体勢だ。
玉鬘「ハッ、あんたの好きなようにはさせないわ!!」
玉鬘はすくと起きあがると、班猫の前に立ちはだかる。
玉鬘「帝都浄滅師の名において、業人!
浄滅師殺害の罪で、貴様を処断する!覚悟なさい!!」
太極羅盤に力を与え、火系の道術を発動する玉鬘。
玉鬘「火之壱拾伍行・・・『火霊礫』!!」
幾つもの火球が玉鬘の周囲に生じ、一斉に襲いかかる。
だが、班猫は体を左右に動かしただけで、あっさり交わしてしまった。
班猫「ヒャァッハァーーー!!」
強く地面を蹴り、低い体勢のままで風の如く肉迫する班猫。
玉鬘は、とっさに次の術を発動し、迫り来る敵手を迎撃する。
玉鬘「木之壱拾捌行・・・『穿突樹槍』!!」
周囲の木々の枝が、槍のように尖り、班猫目掛けて四方八方から伸びてくる。
逃げ場は無く、一気に串刺しになるかと思われたが・・・
班猫「ハッハッハ!!!ちょせぇんだよぉ!!」
班猫はあざ笑うと、体を回転させ、右腕のハサミで飛んでくる枝槍を尽く切り払った。
班猫「無駄だ。オレのこの『鋏腕』の属性は“金”。
“木”の属性の術は通用しねぇよ!!」
玉鬘「くぅ・・・それなら・・・!」
より威力の高い、炎系の道術を放とうと、羅盤に気力をこめていく。
だが、その瞬間、班猫の姿が掻き消えた。
玉鬘「なっ・・・!!」
気づいた時には、班猫は玉鬘の背後へと回っていた。
班猫「ククク・・・術の発動に時間がかかる道術士なんざ、
オレのスピードの前じゃ赤子同然だぜ!!」
玉鬘「しまっ・・・!!」
班猫「さぁ・・・てめぇも死んでオレの罪業の糧となれ!!」
殺られる―――――――
振り下ろされる兇刃に、玉鬘は死を覚悟した・・・
53
:
藍三郎
:2006/11/14(火) 01:00:21 HOST:124.200.12.221.megaegg.ne.jp
玉鬘「がっ・・・!!?」
その刹那・・・玉鬘の体に強い痛みが走った。
だがそれは、班猫の一撃で脳髄をかち割られたものではなく・・・
横方向から、吹き荒ぶ突風と共に蹴りを叩きこまれた痛みだった。
疾風の如く突っ込んできた夢夜が、玉鬘に回し蹴りを食らわしたのだ。
玉鬘「あぁれえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
夢夜の小柄な体躯からは想像もできぬ、
蹴りの衝撃と風圧に、駒のように回転しながら吹っ飛ぶ玉鬘。
そして、先ほどと同じように、再び樹木に激突するのだった。
班猫「な・・・てめぇ・・・」
突如乱入した夢夜に、班猫は思わず身構える。
先ほど見せたこの男の速度(スピード)・・・
班猫の目を持ってしても、正確に捉えることができなかったのだ。
夢夜「やれやれ・・・こんな女でも、目の前で脳漿ぶち撒けるとこ見せられたら、
寝覚めが悪くなっちゃうからね。しょうがないから、助けてやったよ」
肩を竦める夢夜。
玉鬘「痛たたたた・・・ちょっとぉ!!!助けるなら助けるで、
何であいつじゃなくて、あたしの方を蹴っ飛ばすのよぉ!!」
再び樹に叩きつけられ、背中の痛みをこらえつつ、クレームを飛ばす。
夢夜「おやおや、助けてやったのに感謝の言葉も無いのかね」
玉鬘「こんな助けられ方で、誰が喜ぶかぁ!!」
夢夜「全く五月蝿い女だなぁ。
あ・・・今思えば、脳天カチ割られても大丈夫だったよね。
どうせ、中身の無いスッカラカンの脳みそなんだから♪わはははは」
玉鬘「こ、こいつ・・・#」
どこまでも人をおちょくり続ける夢夜に、玉鬘は何度目かの沸点を迎えていた。
夢夜「さて・・・と・・・」
夢夜は班猫の方をへと振り返る。
夢夜「君ごとき、僕が手を下すまでも無いと思っていたが、
そこで無様に転がっている助手が、あまりにもふがいなくて見るに耐えない!!
よって・・・」
ビュォォォォォォォォォ――――――
乾いた風が、辺りを薙いだ。
地面に落ちた木の葉が、逆巻く風によって宙へ舞い上げられていく。
闇に包まれた森をすり抜けていく風は・・・
確かに、夢夜を中心にして旋(まわ)っていた。
夢夜「この黄泉津夢夜様が、直々に相手をしてあげよう!!
君のチンケな人生最高の幸運に、感謝感激して泣いて喜ぶがいい!!」
自信満々に言い放つ夢夜。
銀杏色の着物の袖が、風に吹かれてたなびく。
54
:
ゲロロ軍曹(別パソ)
:2006/11/15(水) 16:18:31 HOST:pc51.edu.ice.ous.ac.jp
仮面ライダーカブト・アナザーストーリー
<優雅なる、カマキリの戦士>(2)
多次元連結世界『クロスディア』。この世界において、それぞれに独自の発展を遂げている大陸の中でも、少し特殊な大陸が存在した・・。
『サーガ大陸』。この大陸は他の大陸と違って普段は不可思議な霧に覆い尽くされており、3ヶ月に一度のみ、7日間だけ霧が晴れる間が存在し、その時に出入りが可能となっている・・。
それ以外の方法で出入りする場合は、他の大陸に一つずつある転送装置を使うか、空間を飛び越える時空跳躍系統の能力を用いるしかない・・。
なお、この大陸は『ハイ・プレーン』、『ベルト・プレーン』、『アンダー・プレーン』の三階層に分けられており、それぞれの階層においても、時空跳躍、又は階層を行き来する為の転送装置を用いなければそれぞれの階層を行き来することは不可能である・・。
また、一部の者達を除いて、それぞれの階層の住人たちは、他の階層が存在することを知らずに生活している・・・。
その中の上位層である階層、『ハイ・プレーン』。この階層では現代社会と近未来文明の中間ほどのレベルまで文明が発達している。
そしてこの階層の国の一つ『ジャパニウス』は、地球の現代日本とほとんど大差がない国であり、同じ名前の都市も幾つも存在していた。
だが現在この国には、ある一つの『影』が暗躍していた・・・。
その名は、『ワーム』。虫をモデルとした体が特徴の未知の生命体である。彼らは幾つか、やっかいな特殊能力を所有している・・。
一つは、人間に自由に『擬態』する事ができる能力。身体的特徴はもちろん、その人物が今まで築き上げてきた『記憶』ですらコピー可能となってる・・。
もう一つは、サナギから成体に『脱皮』したワームが使用できる超高速の移動手段、『クロックアップ』。このクロックアップ時のワームの動きは、普通の人間では視認不可能となっている・・。
現在、ZECT(ゼクト)と呼ばれる秘密組織がこのワームに対抗しており、一般の人々は、そのような恐ろしい敵が存在することをしらずに、普通に生活しているのであった・・。
=風炎寺(ふうえんじ)ブランド本社・社長室=
風炎寺(ふうえんじ)ブランド。ジャパニウスでも結構名が知れ渡っているファッションデザイン会社である。
そしてこの会社では、20歳の女性が社長を勤めていることでも、色々と有名になっていた・・。
?「(サラサラ・・・)うーん、もう少し、ふんわりとした感じにしたほうがいいですわね♪」
「社長室」というプレートがドアに取り付けられている部屋の中、一人の女性が、何やら服のデザインを描いてるようだった・・。
その女性は少しウェーブのかかった黒髪のロングヘアで、顔の方も街角の男性が10人中10人とも「美人!」と即座に答えそうであり、どことなく、温かく、それでいて優しい雰囲気を出していた・・。
?2「(コンコン!)失礼します、『社長』。お茶の御用意ができましたので、お持ち致しました。」
?「あ、どうもすみません。どうぞ、お入りになってください♪」
黒髪の女性が答えると、部屋の外の人物はドアを開けた。それは眼鏡をかけた凛凛しい顔つきの秘書らしき女性で、緑茶が入った湯のみと、数切れの芋羊羹が置かれてる皿を載せているトレイを運んできた・・。
そして湯のみと芋羊羹のお皿を黒髪の女性に渡すと、彼女が描いていたデザイン画を見つける・・・。
秘書「これは・・、今度ショーに出す予定の新作ですか??」
?「はい♪テーマは『さわやかな風』とのことですので、ふんわりとしたイメージの服にしてみようと思いまして。」
緑茶の入った湯のみを両手でもちながら、にっこりとした表情で答える黒髪の女性。その様子に、秘書らしき女性は、少し苦笑いした・・・。
秘書「『蘭』社長、仕事熱心なのは結構ですが、あまり無理はしないでください?あなたが倒れたら、社員たちが心配するでしょうし・・。」
?「ふふっ・・、分かっております。体調管理には気をつかってますから、御安心ください♪」
少しウインクして答え、芋羊羹を一口食べる黒髪の女性だった・・・。
彼女の名前は「風炎寺 蘭(ふうえんじ らん)」。この会社「風炎寺ブランド」の若き女社長であり、彼女自身も大変優れたファッションデザイナーであった。
55
:
暗闇
:2006/11/17(金) 22:44:11 HOST:softbank220020057170.bbtec.net
SAMURAI DEEPER SPIRITS 弐の章
「うおぅりゃあ!」
剛刀一閃。
気合いとともに刀は大気を裂いて唸る。鉄も和紙と大差なし――尋常ならざるその太刀筋は腰を抜かした物盗りの眼前、寸でのところで止められた。
「ま、待ってくれ! 俺の負けだ!」
その言葉を待っていれば、物盗りは血肉を散らして事切れていたであろう。
みすぼらしい身形の、如何にも堅気の商いを営んではなさそうな男は、恐る恐る目を開き、鼻面に添えられた巨大な太刀に息を呑む。今さらながら身体が震えて、恐怖というものを意識が理解する。
ざんばらの髪をした屈強そうな男は、物盗りの目を見て、にやり、と快活な笑みを浮かべた。
「俺の勝ち、だな。行きな。次からはもう少し相手を選びな」
ああ、あ、ああ――と、うまく呂律の回らないまま、物盗りは逃げ出そうとして足がもつれて転んだ。腰が抜けていることにそこでようやく気付いた。手で土を掻きながら、這ってでも逃げ出そうとする。
滑稽な姿を揶揄するように口元を緩めた。
「お前さんが何もしなけりゃ俺だって何もしねぇよ。しかし、何だな、箱根の関所も程近い天下の往来で随分と思い切ったことをするもんだ」
常人では振るうこともままならぬ剛刀を鞘に収め、ざんばらの髪の男は唸った。
箱根関所は物々しく、殆どの通行人が足止めをくらっている。理由はお上の都合以外には有り得ないので知る由もない。その影響で天下の箱根と言えども、往来に人がまるで見当たらない。もっとも、それが追剥ぎを容認する理由には成り得ないが。
首を左右に大きく振ると、ごきごきと鈍い音がした。右肩を回して唸るその様は、暴れ足りないと主張しているようだった。
どこにでもある話で、旅人を襲う物盗りと、それを返り討ちにする剣客という構図。
言葉では表現し辛い珍妙な悲鳴を残して、物盗りは街道から姿を消した。
男は名を覇王丸と名乗っている。武蔵国の旗本の生まれなので、本名は別にあるのだろう。ただ、剣の道を極めんと家族と故郷に別離を告げてより、名を捨てたのであろうか、何人もこの男の本名を知る者はいない。
見渡せば見事な桜並木が街道に彩りを添えている。
風流を愛する歌人などでないだけに、覇王丸は桜吹雪に身を置いて、素直に「綺麗だ」
とそれだけを思った。
そこに、
狂「いきなり、派手な業を見してくれんじゃねえか」
荒々しい気性を伺わせる声が覇王丸の耳に届いた。
56
:
暗闇
:2006/11/17(金) 22:44:45 HOST:softbank220020057170.bbtec.net
あれから狂はしばらく街道をまっすぐ進んでいた。
今のところ自分以外に通る人間はいない、それはそうだろう。ここまで通る途中、いくつかの集落らしかった所を見つけたが、全て死に絶えていたのだから。
白骨が散乱し、田畑と井戸も枯れ果て、辛うじてここに人が住んでいたということが分かるぐらいだ。
狂も戦国の世でもいくつも似たような光景を見たが、その時と比べるとこの村はまだ原形が残っているくらいマシな状態だ―――彼のいた時代では戦に巻き込まれて、村その物が完全に抹消されてしまう場合が多かった―――おそらく、自然災害による飢饉の仕業だろう。
狂は村にはそれ以上の感情を持つことなく、先に進んでいた。
いつの世でも強い奴は生き残り、弱い奴から死んでいく……その理はこの時代でも変わらない。
そして、歩き続けた矢先、彼は誰から見ても解るほどの樹齢の長く大きい桜を見つけた。
街道にも桜は並んでいるが、これと比べるといささか霞んで見えてしまう美しさだ。
狂「そういや、あん時も確か……」
かつて、自分を打ち負かした男と未来見<さきよみ>の巫女と出会ったのもこんな桜の木の下だった。
神の一族と称される壬生一族……その長である先代紅の王の直属の部下であったその男は、桜の木の下で、身を休めていた自分に襲いかかってきた。
最初勝負自体は死合で桜の木が傷つくのを避けようとした男が桜を庇ったことをきっかけに狂が気に入り、引き分けに。以来、『追うものと追われるもの』同士という不自然な関係であれど、狂と彼は友人となった。
しかしその後、先代紅の王の策略により再び刃を交えることになってしまう2人。
その勝負で自分は彼に敗れ、体を奪われ、魂も封印されてしまう。
その数年後、再び彼と狂は死合うが最後は彼の方から勝ちを譲られたに等しい結果に終わってしまった。
―――決着<ケリ>はまだついてない―――
早い所元凶をぶっ殺して、元の時代で……
その時、
―――ゾクリ―――
“何か”を狂が感じ取った。
それがどのような感情なのか、常人に説明するのは難しい。
だが、長年も剣の道に携わり、剣に生きた者のみが感じ取れる超感覚が、狂の意識に伝達される。
感じ取ったそれを視線の先に、一人の男の姿が捉えられる。
その男の身の丈は六尺あまり、黒白のだんだら模様に染めなした衣を纏い、ざっと束ねただけの蓬髪は尻のあたりまで届いている。緋色の帯には大きな酒徳利をぶら下げ、肩にはたった一本、ずしりと重そうな黒鞘の刀。旅の途中であるらしいが、これといった荷もなく、その薄汚れた風体からして侍崩れの流れ者といったところだろうか。
しかし、それから発せられる闘気はその男が相当の強者であることを狂に伝えてくる。
そしてそれは、遅れることなくすぐに証明された。
男の先に明らかに魂胆が見え見えの物盗りらしき成人男性が、侍崩れの男めがけ走ってきた。
物盗りは刀を構えてそれを振りかぶらんとする。対する男の刀はまだ大した気を張っていない。これでは男の刀が届く前に呆気なく斬り殺されてしまう……はずだった。
???「うおぅりゃあ!」
スバッ!!
気合いと強烈な斬音が、辺りに響いていた。
物盗り「!」
いつの間にかに振り下ろされていた、尋常ならざるその太刀筋……それは腰を抜かした物盗りの眼前、寸でのところで止められた。
その後、物盗りはすっかり怖じ気づいたようで、転げるように逃げていく……
男は鞘に刀を収めて、先に進もうとするのを見逃す鬼眼の狂ではなかった。
狂「いきなり、派手な業を見してくれんじゃねえか」
57
:
ゲロロ軍曹(別パソ)
:2006/11/21(火) 17:29:26 HOST:proxy02.std.ous.ac.jp[pc3f055.std.ous.ac.jp]
仮面ライダーカブト・アナザーストーリー
<優雅なる、カマキリの戦士>(3)
蘭「(ズズッ・・、コトッ・・。)・・そういえば、もうそろそろ、『お墓参り』に向かっても、よい頃ですわね・・。」
湯飲みの中ににある緑茶を一口ほど飲んで湯飲みを机にゆっくり置くと、蘭は少し、悲しげな表情でつぶやいた・・。
そんな彼女の表情を見て、秘書の女性は彼女の心中を察してるのか、同じように悲しげな表情になる・・。
秘書「・・そうですね。・・しかし、時間とは早いものです・・。・・『あの出来事』から、もう7年とは・・。」
蘭「ええ・・。」
秘書の女性の言葉に相槌を打った後、彼女の脳裏に、7年前に起こった「ある事件」の記憶が、ふと蘇った・・。
=回想・7年前・渋谷=
少女「・・さまぁ、お母様ぁ・・!!」
周りの建物や道路などが見るも無残なほどにぼろぼろになっている光景の中、一人の少女が、涙を流しながら、瓦礫の山・・、いや、その中に閉じ込められている、一人の女性に向かって叫び続けていた・・。
この少女こそ、7年前の蘭本人であった・・。
女性は泣きながら必死に自分に呼びかける幼い蘭に対し、優しい微笑みを浮かべていた・・。
女性「蘭・・、もう、いいのよ・・。危ないから、ここを、離れなさい・・。」
蘭(7年前)「!い、いやです!!わたくし、お母様のそばを離れたくないです!!」
女性「・・気持ちは、とってもうれしいわ。・・でも、だめよ。・・あなたには、私の分まで、生きてほしいの・・・・。」
蘭(7年前)「お・・かあ・・、さま・・・!」
女性「・・あなたのような、自慢できる娘がいて、幸せだったわ・・。・・ありがとう、蘭・・。これからも、精一杯、いき、つづ・・け、て・・ね・・・・。」
その言葉を述べた瞬間、女性は瞳を閉じ、ぴくりとも動かなくなってしまって・・。
蘭(7年前)「ああ・・、あああああ・・・・、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!おかぁぁさまぁぁぁぁぁ〜〜!!!(号泣)」
母親が死んだという現実を目の当たりにし、ただただ、泣き叫び続ける蘭であった・・・・。
=現実=
秘書「・・長!社長!!」
蘭「!?は、はい!??」
回想にふけっていたためか、秘書の女性の大きな声に慌てて反応する蘭・・。
秘書「・・また、あの時の事を、思い出されていたのですか・・。」
蘭「・・・・、わたくしにとっては、忘れられない、記憶ですから・・。・・すみません、少し、一人にさせてください・・。」
秘書「はい・・、了解しました・・。」
蘭のお願いを素直に聞いて、部屋をあとにする秘書の女性・・。
蘭「・・えぐっ、ひっく・・、お母、様・・。(涙)」
そして、堪え切れなかった涙を流し出し、自分の最愛の母のことを思い浮かべる、蘭であった・・。
(続く・・)
58
:
鳳来
:2006/11/23(木) 12:17:39 HOST:menet70.rcn.ne.jp
BB外伝<デストロイ・オブ・デザート>予告編
新暦163年・・・・ジオンの残党を率いて、テラーズフリートの反乱が勃発。
同時期に、イシュヴァール地区にいて、地球連邦将校によるイシュバール人(故5歳)を射殺事件が勃発。
イシュヴァール人の積もり積もった地球連邦に対する不満が一気に爆発・・・・独立戦争へと発展した。
これに対し、地球連邦は、キング=ブラットレイ指揮の元、鎮圧戦を開始。
岩と砂の厳しい大地に、砲火と爆音、そして、悲鳴、憎悪が吹き荒れた。
守るべき民を傷つけることに嘆くもの
アームストロング「なぜ・・・ですの!!なぜ、こんな戦いを続けなければならいのですか!!!」
リザ「どうして、こんなことになってしまったんでしょうか。」
ヒューズ「死にたくない・・・それだけよ。」
己が信念のために戦う者・・・・
斉藤「確かに同情の余地は有る・・・・だが、俺は俺の信念<悪・即・斬>を貫くだけだ。」
玲子「私は国に体を、魂を奉げた。国への忠を尽くすことが私の存在意義だ。」
稜「・・・・殺すこと。それが私に出来る唯一のことだから。」
嬉々としてこの戦争を駆け抜ける者・・・
キンブリー「死から目を背けるな。前を見ろ。あなたが殺す人々のその姿を正面から見ろ。」
正人「どうしていざとなると、誰も彼もが地獄へ望んで進撃したがるのだ?」
鷺人「あははははは!!馬鹿みたいに突っ込んで来るよ、あいつら。」
深緒「ほんとねvじゃあ、殺してあげようかv」
最前線を駆け抜ける若者たち・・・・
元親「ふざけんじゃねぇ!!!!俺達はこんな意味もねぇ戦にくれてやる命は、味方にも、敵にもねぇ!!!」
コウジ「まったく・・・・こういうのを四面楚歌というんだろうな!!」
そして、全ての思いを飲み込み続ける戦火に終止符は突然打たれた。
ブラッドレイ「イシュヴァール殲滅戦を開始する・・・内乱はすぐに終わる。」
BB外伝<デストロイ・オブ・デザート>近日開始!!!
全てが葬られた戦火に残るのは・・・
ロイ「何があっても生き、意地汚く生き延びろ。生きて皆でこの国を変えてみせよう。」
己の理想を叶えるという希望の種か・・・・
スカー「・・・・・復讐だ!!!この身一つただ復讐のために・・・生き延びてやる!!」
或いは膨大な憎悪を糧にする復讐という種か・・・
59
:
藍三郎
:2006/11/23(木) 18:55:00 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
○からすま幻戯譚 序章『金色の鴉』 其の参○
班猫「黄泉津・・・夢夜だと!?」
夢夜の名を聞いた瞬間、班猫は表情を強張らせる。
班猫「ま、まさか・・・てめぇがあの“金色天狗(こんじきてんぐ)”だってのか!!」
玉鬘「金色天狗・・・?」
聞いた事の無い異名に首を傾ける玉鬘。
夢夜「そのとーりだ!
自分がどれだけ凄い男と相対してるか、ようやくわかったかい?」
夢夜は腕を組み合わせたまま、自信に満ちた笑みを浮かべている。
玉鬘「な、何?こいつそんなに有名人なの?」
玉鬘がこの男について知っている事は、帝都に属さぬ流れの浄滅師である一点だ。
それなのに、この業人は黄泉津夢夜と言う名を聞いた途端、顔色を変えた。
玉鬘(あたしが名乗った時は、ちっとも反応が無かったのに・・・)
玉鬘は軽く凹んだ。
班猫「ハッ、闇の世界に生きる業人の間で、奴の名を聞いた事の無い者はいねぇ・・・
帝都退魔寮に属さぬ身でありながら、
風のように各地を渡り歩いては、業人を次々と葬って行く凄腕の浄滅師・・・
黄金の衣を身に纏う事から、“金色天狗”と呼ばれ、
多くの業人達を震えあがられている男・・・!」
夢夜「それが、この僕ってわけさ♪」
玉鬘「え?で、でも、帝都じゃアンタの噂なんて・・・」
夢夜「あはははは。そりゃ、帝都の連中が僕の才能に嫉妬してるからさ。
帝都の人間でもない僕が、退魔寮の(自称)エリート達より凄いと知れたら、
面目丸つぶれだもんね〜。全く、度量の無い連中だよ」
夢夜は小バカにしたように笑う。
夢夜「で、どーすんの?
こんな山奥で一人チマチマ動いてるって事は、“組織”にも属していない下っ端の業人だろ?
まさか、僕に勝てると本気で思っているわけないよね?
命ごいして土下座して謝れば、鼻に唐辛子を突っ込むだけで許してあげるけど?」
完全に舐めきった口調で話す夢夜。
話を聞いていた班猫は、肩を震わせて怒気を露わにする。
班猫「ククク・・・随分とイキがってくれるじゃねぇか・・・餓鬼が!」
夢夜「強がっても無駄だよ。そっちのダメダメ風水師ならいざしらず、
僕が相手じゃ勝ち目は無い。とっとと逃げた方が身のためだと思うけどね」
班猫「冗談じゃねぇ・・・帝都の浄滅師だけでも十分な戦果だったのに・・・
これであの“金色天狗”を仕留めたとなりゃあ・・・二段飛び越し昇進も夢じゃないぜ!!」
思わぬ獲物の出現に、班猫は興奮して目をギラつかせている。
そして、手を振り上げ指をパチンと鳴らした。
グルルルルルルル・・・―――――――
獣の唸り声が、森の奥から響いてくる。
ほどなくして、暗闇から産み出されるように、
数体の異形の怪物達が班猫の周りに舞い降りた。
鱗を纏った怪鳥、尾が蛇の虎、双頭の魔犬、蜘蛛の足を持った獣・・・
いずれも、凶悪な面構えと獰猛な気配を醸し出している。
そして、その額には火愚魔を操ったものと同じ呪符が貼り付けられていた。
玉鬘「も、物の怪どもがこんなに・・・!」
班猫「クカカカカカ!!オレ様の属性は物の怪使い!
こいつらも、あの化け熊と同じように操り人形にした奴らだ!
オレ様の命令で一斉に襲いかかり、貴様の体をバラバラに引き裂くぞ!!」
帝都の浄滅師として、玉鬘はそれなりに物の怪の知識を持っている。
目の前にいるのは、どれも帝都の浄滅師を梃子摺らせてきた強い魔物ばかりだ。
夢夜「ははっ!物の怪の力を借りないと戦えない卑怯者が、何を偉そうに。
だから君は五流なんだよ。班猫なんてカッコつけた名前は改名しろ!
君なんぞは、下っ端のナメクジあたりがお似合いさ♪」
夢夜の挑発によって、班猫の怒りは沸点に達した。
班猫「・・・いい気になるのもこれまでだ!金色天狗!
今その高慢ちきな鼻をへし折ってやる!!!殺れ――――――!!!」
班猫が鋏になった腕を前に突き出すと、彼の背後にいた物の怪どもが一斉に動き出す。
「「「「「グォォォォォォォォォッ!!!!!」」」」」
物の怪どもは、各々牙を剥き、爪を立て、咆哮を上げながら、夢夜へと驀進する。
60
:
藍三郎
:2006/11/23(木) 18:57:16 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
雪崩の如く押し寄せてくる魔物に対し、夢夜は・・・
夢夜「・・・・・・」
相変わらず腕を組み合わせたまま、ぽつねんと突っ立っている。
玉鬘「あ、あんた!何やってんのよ!早く避けないと・・・!」
夢夜「いや・・・あいつがナメクジなら、そのナメクジに負けた君は何なのかと思ってね・・・
アリ、ダニ、ミジンコ、ボウフラ・・・そうだ、ゾウリムシ辺りが適当かな?」
玉鬘「こんな時にまであたしの悪口を考えてんの――――!!!」
班猫「バカが!」
夢夜がよそ見をした時、物の怪どもは既に夢夜の眼前まで迫っていた。
その爪が、牙が、嘴が、獲物に死を与えんと襲いかかる。
肉体を引き裂かれ、銀杏色の衣が鮮血に染まるかと思われた刹那・・・
班猫「!!?」
次の瞬間、忽然と夢夜は姿を消していた。
玉鬘「・・・!」
緑色の長髪と銀杏色の衣が、夜空に靡く。
夢夜は、物の怪どもの攻撃をかわし、遥か上空へと飛び上がっていた。
身を翻し、まるで体重が無いかのようにふわりと空を舞う。
袖を風にはためかせて飛ぶ様は、あたかも飛翔する鴉のごとし。
「キェェェェェェェッ!!!!」
一匹の怪鳥が奇声を上げ、翼を広げて殺到する。
空中をテリトリーとする鳥にとって、宙に浮かんだ獲物ほど仕留め易いものはない。
しかし・・・俊足で放たれた怪鳥の爪は、呆気なく虚空を切り裂いた。
夢夜はほんのわずかに身を反らし、致命の一撃を躱す。
風に吹かれてたまたま爪が避けていったかのような、自然な動きだった。
夢夜「よっと!!」
くるりと回転し、怪鳥のそっと撫でるように優しく払う。
怪鳥の身を傀儡に落としていた呪符は剥ぎ取られ、
意識を失った鳥はそのまま地面に落下する。
「ギャオォォォォォォォッ!!!!!」
ふわりと地面に着地した夢夜に、数体の獣が殺到する。
夢夜は再度地面を蹴って跳躍する。
そして、一体の獣の上に飛び乗ると、額の呪符を剥ぎ取って行く。
玉鬘(何・・・あいつの動き・・・あんなに遅いのに・・・)
夢夜の動きは、決してずば抜けて速いわけではない。
むしろ、子供のお遊戯のような、緩慢とした動きだ。
にもかかわらず、夢夜は多数の物の怪の猛攻を受けながら、かすり傷一つ負う事ない。
秋風に吹かれる銀杏の葉――――
玉鬘は夢夜にそんなイメージを抱いた。
気ままに吹く風に舞う木の葉は、
捕えようとすれば逃げ、掴もうとすれば手からすり抜けて行く。
袖をはためかせて舞う夢夜はまさにそれと同じ。
緩急自在・・・全くリズムの掴めぬ動きで相手を翻弄する様は、
あの業人が例えた通り、風と戯れる“天狗”のようであった。
61
:
藍三郎
:2006/11/23(木) 18:58:20 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
夢夜「これで・・・終わりっと!」
最後に残った物の怪の呪符も、難なく剥がすと、
夢夜はゆっくりと地上へ舞い降りる。
班猫「お、オレが集めた屈強の物の怪どもが、全滅だと!?」
夢夜「人聞きの悪い事言うなよ。僕はこいつらに傷一つつけてない。
君の悪趣味なお札を剥がしてやっただけさ。動物虐待は嫌いだからね」
班猫「こ、こうなったらオレ自ら・・・」
鋏腕を構える班猫。そんな彼を見て、夢夜は呆れたように「はぁ…」とため息をつく。
夢夜「わかんないかな・・・勝負はもうついてるよ」
班猫「フザけ・・・!」
班猫が吼えようとした、次の瞬間だった。
班猫「―――――!!!」
班猫の体の至るところが裂け、十箇所近い痣が浮かび上がった。
それは、夢夜が掌低を叩き込んだと言う証だった。
夢夜「僕がその気になれば・・・君は今頃十回倒されていた、ってことさ♪」
玉鬘「嘘―――!!」
班猫と同様に、玉鬘も驚愕した。
舞を思わせる緩慢な動きで、物の怪を翻弄していた夢夜。
その一方で、目にも止まらぬスピードで動き、
班猫に十を越える連撃を叩きこんでいたとは・・・
玉鬘(あ、あいつ・・・こんなに強かったの――――!)
班猫「―――――――」
班猫は顔中にびっしょりと汗をかき、口をあけて呆然となっている。
力が強いだとか、速さが優れているだとか、そういう細かい問題ではない。
反撃は愚か、“認識”することさえ許されない。
“強さ”の次元が違う―――――
班猫(こ、これが・・・“金色天狗”黄泉津夢夜・・・)
班猫は、悠々と佇む眼前の男に初めて戦慄を覚えていた。
夢夜「わはははは!!何だそのマヌケ面は!!!
実力の差がわかったかい?それじゃそろそろ・・・覚悟を決めなよ♪」
62
:
藍三郎
:2006/11/23(木) 19:11:27 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
班猫「こうなったら・・・ッ!!」
進退極まった班猫は衣服をはだいて、胸の肌を晒す。
そこには、禍禍しい輝きを放つ奇怪な章印が刻まれていた。
玉鬘「そ、それは・・・!」
班猫「こいつは、『罪業印(ザイゴウイン)』!
一定の罪業(カルマ)を積む事で、符印の妖力が増幅されるっつー符印さ。
業人は罪を犯す事で、この符印に妖力を蓄え、それに応じた階級が与えられる・・・」
班猫の胸の符印・・・『罪業印』は、あたかも生きているかのように脈打っている。
玉鬘の太極羅盤でも、高い妖力値が計測できた。
班猫「こいつを剥がせば、
オレ様の積み上げた罪業は全て失われ、最下級の位まで落ちてしまうが・・・
その代わり、符印に蓄えられた膨大な妖力をオレのものとする事が出来る――――!!」
強大な力と引き換えに全ての地位を失う・・・まさに最後の手段である。
班猫「見るがいい!!罪業を解き放った業人の真の姿を―――!!!」
班猫は胸に指を食いこませ、力任せに符印を剥ぎ取った――――
班猫の体が、いびつに歪んで行く。
まるで沸騰した水のように、体中のあちこちが泡立ち、膨張する。
体長は二倍以上になり、さらには黄土色の鎧のような皮膚が全身を覆って行く。
そして・・・
瞳は赤紫色の大きな複眼に―――
手足は硬質化した触脚に―――
胴体は強靭な鎧に―――
班猫<フゥーー・・・フゥーー・・・これが・・・
オレの罪業を解放した姿・・・『業魔』形態だ!!>
変態を遂げた班猫の姿は、
黄土色の甲冑を持つ巨大な昆虫のバケモノとなった!
玉鬘「な―――――!」
玉鬘はこの日何度目かの驚愕を覚えた。
話には聞いた事がある。業人は、その罪深さ故に異形の身へと変じる事があると・・・
だが、実際にこの目で見るまでは半信半疑だった。
それが、玉鬘の目の前に出現している・・・!
班猫<罪業を解放した業人は、業魔となる・・・!
これぞ、業人がこの世の魔人たる所以よ・・・!!>
巨大なハサミムシを思わせる姿となった班猫は、両腕の鋏をカチカチ鳴らしながら言う。
夢夜「おやおや、何だいその姿は。
物の怪を操るだけでなく、自分も物の怪になっちゃって・・・
そんなに物の怪が好きなら、田舎で動物王国でも造ったら?」
班猫<フン・・・のん気な軽口もここまでだ!!>
班猫は、両腕を大きく上げて猛る。そして次の瞬間、その巨体が姿を消した。
玉鬘「!!!」
瞬く間に夢夜の頭上に現われた班猫は、鋏腕を勢いよく振り下ろす。
その一撃は、地面を砕き、岩石と土煙を舞いあがらせた。
班猫<業魔となったオレの力は人間だった頃の数倍に増している・・・
もはや人間であるキサマなど敵ではない!!>
鋏のような牙の生えた口から、「ギチ・・・ギチ・・・」という音が鳴る。
班猫<この姿になれば、業人としての全ての地位を失ってしまうが・・・構うものか!!
金色天狗・・・キサマを仕留めて名声を得れば・・・
失った地位を埋め合わせて尚お釣りがくるわ!!ヒャハハハハハ!!!!>
班猫は、解き放った力の快楽に酔いしれていた。
夢夜「たく・・・調子に乗っちゃって・・・」
夢夜は班猫の一撃を躱し、高く聳える樹の上に立っていた。
班猫<フン、逃げ足だけは早いやつめ。だが・・・!!>
班猫は両腕の鋏を夢夜の方に向ける。
班猫<紅刃波!!>
鋏の中央から、紅く輝く閃光が撃ち出される。
夜空を切り裂く光の線は、夢夜の立つ樹木をあっさり輪切りにした。
夢夜「おっと!」
素早く次の樹へと飛び移る夢夜。
だが、班猫はそれを逃がさず妖力の刃・・・『紅刃波』を放ち、樹を切り倒して行く。
班猫<いつまでも逃げきれるものではない・・・!
金色天狗などと呼ばれても、所詮はちょっと足が速いだけのひ弱な人間・・・
キサマの一撃など、オレ様の鋼の皮膚には通じん!!キサマにオレを倒す術は無い!!
ネズミのように無様に逃げ回り、最後はオレ様に嬲り殺される・・・それがキサマの末路だ!!>
63
:
藍三郎
:2006/11/23(木) 19:14:17 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
玉鬘「な、何て奴・・・」
強大な力を解き放った業魔に、玉鬘は戦慄を覚えていた。
玉鬘(このままじゃ、いくらあいつでも勝ち目ないんじゃ・・・)
夢夜が斃されれば、次の標的は当然自分になる。
ならば、今の内に何か手を打っておかねば・・・
玉鬘(こうなったら、あの業人があいつに気を取られている隙に、
一撃必殺の上級道術を叩きこむしか・・・)
太極羅盤を手に取り、霊力を込めようとする。
夢夜「よけーな事はしなくでいい」
玉鬘「ほげっ!!」
突然、夢夜の姿が頭上に現われ、玉鬘の頭を踏みつけた。
夢夜は彼女の頭を踏み台にして飛び跳ね、班猫の前に着地する。
玉鬘「くっ・・・!なぁ〜にすんのよ!!」
夢夜「君なんぞの手助けがいるほど、僕ぁ落ちぶれちゃあいない。
君は黙ってそこで見物してりゃいいんだよ」
夢夜は「さて・・・」と呟き、袖を払って班猫と対峙する。
夢夜「随分いきがってるようだけど、
ナメクジがカタツムリになったところで、大して変わりゃしない。
まして、この僕に勝とうなんざ百億万年早い」
班猫<何ぃ・・・>
夢夜「本当は、君ごときにここまでやる必要はないけど・・・
雑魚はどこまで行っても雑魚だって事を、わからせてあげるよ♪」
ビュオオオオォォォォォォォ―――――――――
強風が周囲を凪いだ。
樹木がざわめき、無数の木の葉が風に吹かれて飛んでいく。
強い大気の流れは、夢夜を中心にして渦巻いている。
旋回する木の葉が夢夜の周囲を取り囲んだ時・・・
眩いばかりの金色の輝きが、夜の森を照らし出した――――
班猫<!!!>
玉鬘「な、何・・・?」
夢夜の銀杏色の装束が、金色の輝きを放つ。
鳥の翼のように、着物から羽毛が生え、風に揺られて逆立っている。
その彼を取り巻くは、眩い金色の風。
闇夜が辺りを包む中、彼の周囲だけは炎でも炊いたように眩しい輝きに包まれていた。
玉鬘「この道力値は・・・!」
玉鬘の太極羅盤が、夢夜がいる場所に凄まじい道(タオ)の波動を感知している。
あれはただの風ではない。芳醇な道力を含んだ、金色のオーラを放つ風・・・
それが、夢夜の周辺で渦巻いている。
班猫<こ、これが金色天狗・・・!!>
班猫は理解した。
天狗とは、風を共に生き、風を自在に操る魔物。
霊気に満ちた金色の風を操るゆえに、この男は“金色天狗”と称されるのだと・・・
64
:
藍三郎
:2006/11/23(木) 19:14:57 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
夢夜「さぁ、かかってこいよナメクジ。
今更怖気づいたんじゃないだろうね?」
班猫<グ・・・人間風情がぁ!!舐めるなぁぁぁあぁぁっ!!!!>
猛り狂う班猫は、鋏となった巨腕を横薙ぎに払う。
夢夜「・・・・・・」
夢夜の顔は、絶対の自信に満ちていた。
風を薙いで襲ってくる“死”の塊を・・・夢夜はそっと・・・『撫でて』やる。
班猫<!!!??>
信じられぬ事が起こった。
夢夜の参倍近い巨体を誇る班猫の体が、
周囲を舞う木の葉のように空高く吹っ飛ばされたのだ。
舞いあがった班猫は、錐揉み回転をかけられ、地面に激突する。
班猫<ゴハァッ!!!>
玉鬘「え・・・!?」
玉鬘にも信じられなかった。
あの小柄な夢夜が、自分より遥かに巨大な業魔を、軽々と投げ飛ばしたのだから・・・
班猫<な、何しやがったぁ・・・!!!>
班猫は起きあがると、再度夢夜に突進する。
夢夜はゆっくりと掌を翳し・・・
班猫が、己の領域に踏みこんだ刹那・・・
その皮膚を、目にも止まらぬ速さで『払って』やった。
その瞬間、班猫の全身に強烈な回転がかけられる。
まるで、竜巻に飲み込まれたように、その巨体は宙を舞い、今度は近くの樹に激突した。
班猫<バ、バカなぁ!!!>
夢夜「あはははは!!
君のように、ただ力任せに突っ込んでくるだけじゃ、何億何兆回やったって同じ事さ!」
玉鬘「・・・・・・」
玉鬘はポカンと口を開けて戦いを見つめていた。
まるで子供が玩具と戯れるが如き戦いぶりだ。
いかなる道術か、班猫の巨体は夢夜によって木の葉のように翻弄されている。
玉鬘「もしかして・・・合気道・・・?」
昔、話に聞いた事がある。
こちらからは強い力を使わず、相手の力をそのまま相手に返す事で、
敵を叩き伏せる武術が存在すると・・・
夢夜の戦い方は、それと良く似ている。
夢夜「おー、珍しく察しがいいね」
玉鬘「“珍しい”は余計じゃ!!」
夢夜「ま、それとはちょっと違うんだけど・・・まぁ、原理は結構似てるよね。
あらゆるモノには、“風”の流れがある。
風の動きを読み、その流れを完璧に掌握してやれば・・・
相手の風向きを変えることなんて、指一本で事足りる。
あとは、風向きを曲げられた敵が、自分の力で勝手に吹っ飛んで行くって寸法さ」
吹き荒ぶ風の中に、夢夜は笑みを浮かべて佇んでいる。
夢夜「それこそが・・・僕の・・・『風曲舞天流』の理さ♪」
65
:
藍三郎
:2006/11/23(木) 19:15:44 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
班猫<ふ、ふざけやがってぇぇぇ・・・!!>
夢夜「とはいえ・・・いつまでも君と遊んでいる暇はない。さっさと終わらせるとしようか」
夢夜はたっと地面を蹴り、ふわりと中空を舞う。
そして、そのまま翼を広げた鴉のごとく、班猫へと滑空する。
彼はこの時、初めて業魔に対し攻撃に打って出た。
班猫<野郎!!!>
班猫は両腕から必殺の“紅刃波”を乱れ打ちする。
夢夜「風は変幻自在。或る時は軽やかなそよ風となり・・・」
夢夜は見事な体裁きで、光の刃をかわしていく。
あたかも風に揺られているような、軽やかな動きだった。
夢夜「そして或る時は・・・」
風の勢いが強くなる。夢夜を後押しするように、彼の背後から猛烈な突風が吹き荒んだ。
班猫<グ・・・!!>
夢夜「全てを吹き飛ばす、暴風となる!!」
掌を翳し、風の勢いに乗せて、一気に突き出す!!
班猫<ゴハァァァァァッ!!!!!>
掌底が、班猫の腹部に決まった。
業魔の巨体は、強烈な突風に押され、後方の木々を薙ぎ倒して吹っ飛んで行く。
班猫<ガ・・・ハァッ!!!>
たったの一撃で、班猫は瀕死のダメージを負っていた。
体を守るはずの鎧は砕け散り、腹部には夢夜の掌の後がくっきりと残っている。
桁違いの攻撃力・・・内臓もいくつか潰されたようだ。
それでも・・・班猫の“業人”としての執念は、消える事が無かった。
班猫<こ、こんなところで終われるかよ・・・!!
オレは、これまで何百という人間から略奪し、嬲り殺しにしてきたんだ!!
ここで負けたら、必死に積み上げた罪業が、全ておじゃんになっちまう!!!>
これまで繰り返してきた悪行三昧を喚き散らす班猫。
班猫<このままじゃ・・・終われねぇんだよォォォォォォォッ!!!!!>
どす黒い執着心を胸に、班猫は最後の力を振り絞って突撃する。
夢夜「うんうん、よーくわかった。君はナメクジ以下のゴミクズだ!
生きる価値もなんて一寸もない!ここで・・・終わるといいよ♪」
夢夜は笑顔で即断すると、掌を横に翳す。
すると、唸りを上げて吹く金色の風が、夢夜の掌に集まり始めた。
金の輝きを持つ風の流れは、やがて一つの形を成していく。
それは、天狗が使う葉っぱの団扇のようだった。
班猫<シャァァァァァァァァァァァッ!!!!!!>
夢夜「風曲舞天流・・・『天狗扇舞(てんこうせんぶ)』―――――」
夢夜は、相手とすれ違い様に、暴風の如く渦巻く金色の扇を振るった。
風の扇は、閃光の軌跡を刻み、班猫の体を切り裂く!!
班猫<シギャアアァァアァァァァアアァァアァァッ!!!!!!>
断末魔の絶叫が、闇夜に轟く。
班猫の体には、数条の斬痕が刻まれ、そこから勢い良く体液が吹き出す。
やがて、班猫は全ての力を失い、地に倒れ伏した。
夢夜「浄滅完了・・・ってね!」
輝く金色の風が、班猫の体を薙いでいく。
巨体は瞬く間に縮んで行き、禍禍しい業魔の鎧は剥がれ落ちる。
そして・・・後には、人間体に戻り、ミイラのように干からびた班猫が残っていた・・・
66
:
藍三郎
:2006/11/26(日) 14:49:31 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
玉鬘「や、やった・・・!」
業魔と化した班猫を、圧倒的強さで捻じ伏せた男・・・黄泉津夢夜。
金色天狗・・・業人達の間で恐れられる、その強さは本物だった。
夢夜は朽ち果てた業人を前に、余裕の笑みを浮かべて佇んでいる。
夢夜「わははははは!!まぁ、君ごときが全てを捨てて挑んでも、所詮その程度ってことさ!!
この僕に比べれば、鳳凰とナメクジほどの差があったようだね!!」
高笑いを上げて、勝ち誇る夢夜。
やがて、彼の金色の衣は、元の銀杏色へと戻って行った。
玉鬘「こ、殺したの・・・?」
夢夜「うんにゃ。ま〜だ生きてるとは思うよ。虫の息だけど。
あ、元々虫だったか」
夢夜は倒れた班猫に近づき、頭をこつんと蹴ってやる。
夢夜「それに、僕も慈善事業で業人退治してるわけじゃないからね〜〜
こいつを帝都に引き渡して、がっぽり報奨金をふんだくらなきゃ」
夢夜はよいしょ、と班猫を肩に担ぎ上げる。
夢夜「それにしても・・・君は本当に役立たずだったなぁ♪」
玉鬘「う、うるさい!!」
夢夜「まぁ、君の無能っぷりは、蒼鷹相手の笑い話にさせてもらうよ。
あ、君にとっちゃ笑い事じゃないよね♪」
玉鬘「うぐ・・・」
全くその通りである。
今回の事件では、業人相手に手も足も出ず、この男にいい所を全て掻っ攫われてしまった。
あの葵蒼鷹がこの事を聴けば、降格の口実にする事間違い無いだろう。
夢夜「ま、僕にゃ関係無いか。それじゃ、まったね〜〜〜〜」
夢夜は班猫を担いだまま、ふわりと跳び上がると、そのまま風の如き勢いで去って行った。
玉鬘「何が“また”よ!二度と会うか!!」
そう叫んでみても、すでに夢夜の姿は陰も形もない。
玉鬘「あああ〜〜〜〜〜っ!!ムカつく!超ムカつくぅ!!
あんなのに助けられた自分に腹が立つぅーーー!!!」
抑えきれない苛立ちを発散させようと、玉鬘はひたすら地団駄を踏む。
数分ぐらいそうしていた後・・・ふと冷静になると・・・
玉鬘「・・・あれ?もしかして私・・・置いてきぼり?」
人気の一切無い、静寂に包まれた暗闇の森。
周囲には、夢夜によって呪縛を解かれた物の怪どもが・・・
玉鬘「じょ、冗談じゃないわよ!!さっさと出ないと・・・って、
帰り道、どっちだっけ〜〜〜〜!!!」
森の中に一人取り残され、軽くパニックを起こす玉鬘だった・・・
67
:
藍三郎
:2006/11/26(日) 14:50:20 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
=帝華京=
翌日・・・
玉鬘清女は、ひどくやつれた顔で帝都の往来をとぼとぼと歩いていた。
玉鬘「あのヤロー・・・よくもこの私を森に置き去りにしやがって〜〜・・・」
あの後、彼女は森をさまよい続け、
太極羅盤の力を使って何とか脱出できた時には、既に朝日が昇っていた。
玉鬘「その上、私の牛車をかっぱらって行きやがって〜〜
そのせいで、あれから半日近く村で立ち往生しちゃったじゃないの〜〜!!」
そんな訳で、彼女が都に戻って来られたのは既に昼過ぎだった。
ほうほうの体で退魔寮に戻ってきた彼女を待っていたのは、
葵蒼鷹による陰険極まる嫌味の嵐だった。
流れの浄滅師に手柄を攫われるとは何事かと、
千本の針で刺されるようにネチネチと嫌味を垂れられ、
彼女は身体面・精神面の双方で、すっかり疲弊しきってしまった・・・
玉鬘「黄泉津夢夜に葵蒼鷹・・・覚えてなさい・・・
いつか必ず、この超(スーパー)風水術士・玉鬘清女様の偉大さを
思い知らせてやるから・・・ふふふふ・・・うふふふふ・・・」
にっくき仇敵に復讐を誓う玉鬘。
しかし、往来で一人笑う姿は、かなり不気味だった。
玉鬘「?何かしら・・・いい匂い・・・」
そんな中・・・彼女の鼻に甘いいい匂いが香ってきた。
その匂いにつられて、源を探してみると・・・
『甘味処「からすま屋」』
と書かれた看板が掲げられた店から、匂いは漂ってきた。
玉鬘「からすま屋・・・そういえば、同僚の子が言ってたわ・・・
この辺りにとっても美味しい甘味処があるって・・・」
今は夕刻。おやつを食べるにはちょうどいい時間である。
甘いものでも食べてストレスを発散させよう・・・
そう考え、玉鬘は「からすま屋」の暖簾をくぐった。
紫髪の少女「いらっしゃいませーー♪」
店内に入ると、店員らしき若い女の子の、眩しい笑顔と朗らかな挨拶が待っていた。
割烹着を着用し、紫色の髪をポニーテールにした、可愛らしい女の子だ。
紫髪の少女「どうぞ、こちらのお席に♪」
店員の娘に案内され、椅子に腰掛ける。
少女は自然な笑顔を見ると、とても爽やかな気分にさせられる。
また、その物腰には雑っぽさが無く、洗練されていた。
玉鬘(ふ〜〜ん。中々いい子ね)
玉鬘は初対面なのに、この少女に好感を抱いた。
紫髪の少女「さて、ご注文は何に致しましょうか?」
お茶を玉鬘の机に置き、注文を聞く。
玉鬘「そうねぇ・・・それじゃ、『店主特製の名物みたらし団子』にしようかしら」
紫髪の少女「はい!かしこまりました!
おにいさーん!!みたらし団子一つ、お願いしまーす!」
少女はカウンターの方面に声をかける。
玉鬘(お兄さん?兄妹でやってる店なのかしら)
「あいよっと!!」
どこかで聞こえたような声が店の奥から返って来る。
やがて、どたどたと足音がして、一人の男がカウンターに顔を出した。
玉鬘「あーー!!あんたは!!」
玉鬘は思わず声を上げる。
みたらし団子を持って現われたのは、つい先日行動を共にした
流れの浄滅師・黄泉津夢夜その人だったのだ。
68
:
藍三郎
:2006/11/26(日) 14:50:50 HOST:196.46.183.58.megaegg.ne.jp
夢夜「おや、君はいつぞやの無能三流風水術士じゃないか」
玉鬘「じゃかあしい!!何であんたがここにいんのよ!!」
夢夜「頭の悪い質問をするなぁ・・・
僕がこの店の店主だからに決まってるじゃないか」
玉鬘「店主・・・?この甘味処の?」
夢夜「そうだよ。浄滅師はあくまで副業。僕の本業は、和菓子職人なんだよ♪」
玉鬘はバタンと椅子から立ちあがる。
玉鬘「あー、アンタが居るとわかってりゃ、
こんな店入らなかったわ!邪魔したわね!!」
これ以上顔も見たくないので、さっさと立ち去ろうとするが・・・
夢夜「ま、そう言わずに。注文した以上は、食べていきなよ♪」
そう言って、夢夜は団子を投げつけた。
玉鬘「はむ!?」
団子が、正確に玉鬘の口の中へと放りこまれる。
吐き出すのも何なので、そのままもぐもぐと食べてみると・・・
甘すぎずしつこすぎず。絶妙なバランスの味付けが心地よい。
柔らかい団子と甘いタレが混ざり合い、味のハーモニーを奏で、
美味さが口の中へと広がって行く。
ここまで美味しい団子・・・いや、お菓子を玉鬘は食べた事がなかった。
玉鬘「お、美味しいじゃない・・・」
気づけば、自然な感想が口から漏れていた。
食べた後でも、口の中に美味さの余韻が残っている。
もっと食べてみたい・・・そう思わせる味だった。
夢夜「だろ?何たって僕は、天下一の浄滅師にして、
不世出の天才和菓子職人だからねぇ!!わははははは!!!」
高笑いを上げる夢夜。それにつられてか、
常連らしき他のお客から、「よっ!夢ちゃん」「世界一〜〜〜」といった囃し声が上がる。
紫髪の少女「もう・・・兄さんったら・・・」
割烹着の娘は困った顔つきになる。
夢夜「ああ、紹介するよ。この子は黄泉津紫音。
僕の妹で、このからすま屋の看板娘さ♪」
紫音「ああ、兄の浄滅師関連のお知り合いの方ですね?
始めまして、黄泉津紫音といいます♪」
玉鬘に向き直ると、ぺこりとお辞儀をする紫音。
玉鬘「ええ、始めまして・・・帝都退魔寮に勤めている、玉鬘清女よ。よろしくね」
紫音「玉鬘さんですね。こちらこそよろしくです!」
眩しい笑顔を向けてくる紫音。玉鬘は荒んだ心が洗われる気がした。
玉鬘(ホント、いい娘だわ〜〜〜あのボケガラスの妹とは思えないわね)
紫音「あの・・・事情はよくわからないんですけど・・・
兄が大変ご迷惑をおかけたしたようで・・・ごめんなさい!」
紫音は事態を察したのか、兄に代わって頭を上げる。
玉鬘「と、とんでもないわ!紫音ちゃんは関係無いんだから、
謝る必要なんてこれっぽっちもないわよ!」
紫音「は、はぁ・・・」
夢夜「そうだぞ紫音。むしろ、散々足を引っ張られて、
迷惑かけられたのは、僕の方なんだからね♪」
玉鬘「(キッ・・・!)」
いけしゃあしゃあと言ってのける夢夜に、玉鬘は怒りの視線を向けた。
玉鬘「やっぱ、あんたとはキッチリ決着をつけなきゃいけないみたいね…!!」
夢夜「決着って何の?言っとくけど、
君が僕に勝てそうなのは、前髪の揃い具合ぐらいだと思うよ?
僕にはそこまでピッチリ纏めるのは無理だわ」
玉鬘(あ〜〜〜今すぐ塞ぎたい!
あの黄色い嘴を縄か何かでぐるぐる巻きにしてやりたい・・!!!)
のほほんとした夢夜に対し、怒りの炎が燻っている。
夢夜「まぁまぁ、ここは店の中だし、荒事はやめてもらうよ。
ほれ、どうせならもう一個食ってけ♪」
そう言って、夢夜はさらにもう一つ団子を投げる。
玉鬘「何ですって・・・はむ・・・・・・もぐもぐ・・・・・・美味しい・・・」
悔しいが、味だけは認めざるを得なかった。
夢夜「せっかくだ。おはぎや黄な粉餅もあるよ♪そぉ〜〜〜れ!!」
次々とお菓子を投げてくる夢夜。
玉鬘「ちょっと待ちな・・・もぐもぐ・・・う、やっぱり美味い・・・」
美味の誘惑には逆らえず・・・
結局、玉鬘は10個近くお菓子を食べさせられ、
代金もきっちり支払わされたのだった・・・
<了>
69
:
ゲロロ軍曹(別パソ)
:2006/11/28(火) 14:03:23 HOST:proxy02.std.ous.ac.jp[pc3f055.std.ous.ac.jp]
仮面ライダーカブト・アナザーストーリー
<優雅なる、カマキリの戦士>(4)
その翌日・・・
秘書「(コンコン!)社長、来週の会議用の資料をお持ちしました。・・、社長?」
いつもならすぐに帰ってくるはずの返事がないことに、彼女はふと疑問に思った。
秘書(・・・!まさか!!)
と、ある一つの「可能性」に至り、秘書の女性は少し乱暴に社長室のドアを開けた。すると、そこには社長である蘭の姿はどこにもなく、その変わりに、何やら「置き手紙」のような感じの紙が机に置かれていた。それには、こう書かれていた・・。
『申し訳ありません。とりあえず大体のお仕事は済ませておきましたので、少しばかり外の空気を吸いに参ります♪あ、2、3時間くらいしたらきちんと戻りますので、ご安心ください♪ 蘭より』
秘書「・・はあ、やっぱり・・。また社長の『悪い癖』が・・。」
そう言って、あきれるようにため息をつく秘書・・。
実は蘭には、時々黙って勝手に会社を抜け出して息抜きする癖(ようはサボタージュ)があった・・。最近はそういう傾向がなかったため、秘書の女性もすっかり油断していたようだ・・。
秘書の女性は、すぐにでも蘭を探しに出かけ、見つけ次第仕事させようと考えるが、ふと昨日のことを思い出し、思い止まった・・。
秘書(・・もしかして社長は、昨日の事をまだ・・。・・だとすればこれは、彼女にあの事を思い出させた、私の責任、ね・・。)
そう思うと、何だか申し訳ない事をした気分になる秘書の女性・・。
秘書(仕方ない・・、今日ぐらいは大目にみましょう・・。社長もこの所、頑張って仕事している事だし・・。)
苦笑いしながら、置き手紙が書かれた紙の裏面の方に大まかな連絡事項などを書いて、持ってきた会議用の資料と共に机に置いておき、秘書の女性は社長室から静かに退出するのだった・・。
70
:
シシン
:2006/12/16(土) 13:47:01 HOST:softbank218112188016.bbtec.net
〜ILLUSION FANTASIA 番外編〜
<雪上の誓い>≪1≫
多次元連結世界『クロスディア』。
この世界は独自の技術や文化が発展しているのである。
【エシェントアース】。この大陸は自然が多く大昔の植物や遺跡が残っている、
また二つの帝国によりこの大陸の平和が保たれているのである。
=ミッドキングダム・城外街=
悪魔の国として有名であるミッドキングダム。
周りは城壁に囲まれており余所者の侵入を防いでいるのである。
しかし、全てが悪魔達が住んでいるのではない人間たちも住んでおり共に生活をしていたのである。
空き地で子供達がワイワイっと集まっている
その中に体が大きい男と赤い眼の子供との決闘であった。
原因はここで遊んでいた子供達が突然、ガキ大将率いるものたちに乗っ取られそうになったが、
赤い眼の子供は大将戦での決着をつけようとしたのである
ガキ大将「ここは俺様たちの空き地だぜ?他の場所で遊んだらどうよ?」
???「へっ、空き地はなみんなの為に使う場所なんだぜ。
それが何処も知らないデブアホに使われるのははた迷惑なんだよ」
ガキ大将「こ、このやろう・・・ブッ飛ばす!!」
太っちょの子供は殴ろうとしたが赤い眼の子供はしゃがみこんで
脚で男を転ばして地面につく前に右頬を殴り飛ばした。
ガキ大将は放置されてた木箱に激突しのびていたのであった
ガキ大将の部下達は急いで大将を運んで逃げたのである
子供A「わぁー凄い!!」
子供B「ざあまみろ!!猛の兄貴に勝てる奴なんていないもんなっ!!」
猛「当ったり前だぜ。あんなデブにやられるほど弱くは無いぜ」
子供達は歓声に溢れていたのであった
へヘッと笑うのは出雲猛。当時は10歳。
このミッドキングダムで母親と生活しているのである
71
:
シシン
:2006/12/16(土) 14:15:01 HOST:softbank218112188016.bbtec.net
〜ILLUSION FANTASIA 番外編〜
<雪上の誓い>≪2≫
やがて夕方になり子供達がそろそろ家に帰る時間となっていたのである
猛も急いで自分の家に帰宅したのである。
赤い屋根である自分の家に辿り着いてドアを勢いよく開けたのである。
猛「ただいま!!」
元気よく言って靴を脱ぎ捨てリビングルームに行ったのである
台所から包丁と鍋を煮ている音が聞こえたのである。
理恵「お帰りなさい。」
優しい声と微笑んで返答したのである
女性の名は出雲理恵。猛の母親で人間だ。
この家には猛と理恵しかすんでいない父親は猛を生んだあと行方不明となっていたのである。
収入は理恵が研究している遺跡の調査レポートと花を栽培しているのである。
理恵「今日の献立はシチューよ。手を洗ってうがいをしてね」
猛「はーい」
そう返答し猛は洗面所へ行ったのである。
やがて夕食を終えて二人仲良く座ってテレビを見ていたのである。
猛「母さん。俺はアルバイトでもしようかと思っているんだ」
理恵「あらっ?どうしてバイトを」
説明しよう。ミッドキングダムは10歳以上の子はアルバイトができるのである。
とは言っても簡単な力仕事や作業であるため安心してバイトをしているのである
ちなみに店によって給料は違うがだいたいは500尤(「尤(マッカ)」はこの国のお金)〜700尤くらいある。
猛「だって・・・母さんばかり苦労をかけて俺はのんびりしているのはどうも
申し訳たた無いと言うか・・・」
理恵「でもね、≪遊ぶ≫事は子供の仕事なのよ。
母さんは大丈夫だから無理をしないで」
猛「俺は母さんを楽させたいんだ。
仕事の一つでもやって収入稼がないといけないと思って・・・」
理恵「ありがとう。気持ちだけでも貰っておくわ。
貴方は父さんに似てきたわ・・・強くたくましくなっているもの」
後ろから猛をそっと抱きしめてそういったのである
猛もいつまでもこんな時が続くと思っていた。
・・・・あの悲愴が起きる事も知らずに
72
:
鳳来
:2006/12/23(土) 21:55:46 HOST:menet70.rcn.ne.jp
新暦163年・・・・ジオンの残党を率いて、テラーズフリートの反乱が勃発した。
反乱終結後、イシュヴァール地区にいて、地球連邦将校がイシュバール人(故5歳)を射殺する事件が発生した。
これによりイシュヴァール人の積もり積もった地球連邦に対する不満が一気に爆発・・・・独立戦争へと発展した。
スーパーロボット大戦BB外伝<デストロイ・オブ・デザート>
=イシュヴァール・カダン地区=
活気に溢れる街の中を人ごみを避けつつ、ある場所へ歩みを進める女性・・・・辿り着いたのは、彼女の兄の研究所。
スカー「兄さん!いるか?兄さん・・・・また!」
研究所の中に入ったスカーは、中の様子を見て顔をしかめた。
スカー兄「おお、見つかってしまったか。」
悪戯が親にばれてしまった子供のように罰悪そうな顔をしつつ苦笑する兄。
兄の研究はイシュヴァラ教の教義に背くとされる元ある物を異形のものへと変える禁忌の術・・・・錬金術だった。
スカー「錬金術なんて・・・この時世にまだ、そんなものを!!」
スカー兄「<そんなもの>呼ばわりはないだろう。それにこれは、練丹術というもので、錬金術とは、異なる・・・」
スカー「私が言ってるのは、そういう事じゃないの!!錬金術はもう止めて・・・あれは、元ある物を異形へと変成する・・・」
スカー兄「すなわち万物の創造主たるイシュヴァラ神への冒涜か・・・イシュヴァラに背くつもりはない。人々を幸福へと導く技術として錬金術を学んでいるだけだ。」
スカー「でも・・・!!」
スカー兄「本当にこれは研究しがいがあるんだ。練丹術は地中の「龍の脈」なる力の存在を重く見ている。この地上に存在する大いなる力だとも言う。」
スカー「・・・・・・っ」
スカー兄「地神イシュヴァラの存在と近しいものがあると思わないか?不思議な縁だ。折角、縁があるなら知る努力をし、互いに理解すべきだ。」
スカー「え?」
スカー兄「<一は全 全は一>といってな。我々は世界の大きな流れの小さな一でしかないと言う思想だ。小さな一が世界という大きな流れを作る。だから、負の感情が集まれば、世界は負の流れになってしまう。逆に正の感情を集めて、世界を正の流れにすることもできる・・・と私は解釈している。」
そう言うと兄は笑顔でこう答えた。
スカー兄「世界の大いなる流れを知り、正しい知識を得たい。私はそのために錬金術を学んでいる。」
諦めの表情を交えつつ、研究所から出て行く・・・・目や耳を向ければ、ゲリラ達や家族を失った者達の風景や声が見聞きできる。
スカー「こんな世の中で本当に理解し合えるというの・・・・兄さん・・・」
73
:
鳳来
:2006/12/26(火) 19:35:17 HOST:menet70.rcn.ne.jp
=地球連合軍・第901部隊本部・ブラッドレイ執務室=
アルフレッド「今・・・なんと・・・」
イシュヴァールでのゲリラ達の活動について報告を終えたアルフレッドは、思わず聞き返した。
数々の戦場を駆け抜け、肉体は衰えても、年老いてますます盛んという女傑・クイーン・ブラッドレイの一言が切っ掛けだった。
ブラッドレイ「言葉通りさね、中佐。本日の会議で、地球連合軍令<三〇六六号>が可決されたのさ。」
アルフレッド「そんな・・・・」
地球連合軍令<三〇六六号>ーーーーそれは第901部隊の保有する武装錬金術師を含めた、連合内の特殊部隊の総動員を許可するものであり・・・・
そして、イシュヴァールに対し殲滅戦を展開するという意味も含まれていた。
ブラッドレイ「すでに、武装錬金術師達にもすでに通達した。まあ、5日後には、現地に到着・・・・」
アルフレッド「待ってください!!ゲリラの殲滅とはいえ、それだけの戦力を投入すれば、非戦闘員の被害も・・・」
ブラッドレイ「・・・・誰が、ゲリラのみを殲滅するといったかね。」
アルフレッド「なーーーーっ」
つまり、殲滅の対象はイシュヴァールに住む全ての住民・・・イシュヴァール人という一つの民族を殲滅するというのだ。
ブラッドレイ「残念だねぇ・・・・あんた、確か、イシュヴァールの復興支援を計画していたねぇ。」
アルフレッド「今すぐ、命令の撤回をお願いします。彼らとはまだ分かり合える余地があります!!」
ブラッドレイ「・・・テラーズの反乱からまだ日がたっていない以上、これ以上の長期化は避けたいところだからねぇ・・・兵の消耗も避けたいのもあるがね。」
アルフレッド「−−−−−っ!!!」
ブラッドレイ「話はいじょうさね。今日よりイシュヴァール殲滅戦を開始する・・・内乱はすぐに終わるだろうさ。」
74
:
ゲロロ軍曹(別パソ)
:2006/12/30(土) 22:07:52 HOST:host162.ip106.stnet.ne.jp
=嘘予告=
皇暦2010年8月10日・・、強大な国「神聖ブリタニア帝国」が、中立国である日本に宣戦布告した。
日本も善戦をしたものの、ブリタニア帝国が密かに開発した人型起動兵器『KMF(ナイトメア・フレーム)』を投入したことにより、ブリタニアの圧勝という結果に終わる・・。
それにより、日本はブリタニア帝国の領土と化し、名前をも剥奪され、代わりに『エリア11』という名を与えられてしまう・・。
そして日本人たちは「名誉ブリタニア人」と呼ばれる者たち以外は「イレブン」と呼ばれるようになり、人間としてすら扱われないような差別をしいられていた・・。
・・その後、世界は混沌へと包まれる。外宇宙からの侵略者・・、別次元からやってきた未知の敵など・・。
それらとの戦いが膠着状態に陥りながら、日本・・、いや、エリア11とブリタニア帝国との戦争の終戦から、7年の月日がたった。
そしてある日・・、ある少年は、かつての友と再会した。・・そして、人が持つには大きすぎる程の、絶大なる「力」を得た・・。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命ずる。貴様たちは・・、『死ね』!」
元ブリタニア帝国王位継承者にして、公式では死亡扱いを受けている元第十一皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアこと・・、『黒の皇子』、『ルルーシュ・ランペルージ』。
彼は絶対尊守の『王の力』、『ギアス』の力を手に入れた事により、自分の祖国でありながらも、憎きブリタニア帝国に革命をもたらそうとする・・。
「力有る者よ、我を恐れよ。力無い者よ、我を求めよ!世界は、我々『黒の騎士団』が、裁く!」
彼の目的が果たされるか否か・・、それはまだ、誰にもわからない・・。
〜スーパーロボット大戦 反逆のルルーシュ〜
公開予定・・、今のところなし。(を)
75
:
スペリオン
:2007/01/03(水) 04:08:24 HOST:p29e978.chibac00.ap.so-net.ne.jp
便乗して=嘘予告=
STORY
15年前の戦争……「第七次宇宙戦争」と「早乙女の反乱」により、地球連邦政府の消滅した地球は戦火に包まれていた…
地球各地に蔓延る巨大宇宙生命体「インベーダー」の群れ
世界の三分の一を支配し、なおも支配エリア拡大の為に各地を侵略する「神聖ブリタニア帝国」
宇宙からの侵略者「ザール帝国」の脅威に人々は脅える日々を送っていた
また、宇宙ではスペースコロニーが其々国家を築き、「宇宙戦国時代」の幕が上がっていた
中でも「マリア主義」と「ギロチン」の二つの絶対的力を持ってサイド2に建国された「ザンスカール帝国」は軍事組織「べスパ」を結成
べスパは地球へと侵攻しヨーロッパ地区を中心に、支配エリアを広げていった
だが、人々は脅えるだけではなかった
脅威に立ち向かおうとする人々は集まり、企業と結びつき遂に巨大レジスタンス「リガ・ミリティア」が結成される
同じ頃、ブリタニアに制圧され嘗ての名を名乗る事を許されず、「エリア11」と呼ばれる日本で二人の少年が再会するその時、「黒の復讐」と「白い革命」の幕が上がる
そして、15年前の惨劇の引き金となった「ガンダム」と「ゲッターロボ」が、ヨーロッパと日本
二つの場所で蘇り、黒の復讐劇と白の革命劇を彩る……
参戦作品
機動戦士Vガンダム
機動新世紀ガンダムX
機動武闘伝Gガンダム
コードギアス反逆のルルーシュ
未来ロボダルタニアス
チェンジ!真ゲッターロボ−世界最後の日−
公開予定無し(核爆)
76
:
鳳来
:2007/01/03(水) 21:53:50 HOST:menet70.rcn.ne.jp
スーパーロボット大戦BB外伝<デストロイ・オブ・デザート>
=イシュヴァール=
銃声、砲火、悲鳴、断末魔ーーーー太陽が照りつける砂漠地帯にそれは広がっていた。
ゲリラ兵士1「退け、退け!!女子供が先だ!!」
市民1「東だ!!街を出ろ!!!」
ゲリラ達は逃げ惑う市民を誘導し、街の外へと逃がそうとするが、突然、先頭にいた一団が立ち往生していた。
市民2「どうしたの!!早く、逃げ・・・・・」
言葉を失った。そこには、街を取り囲むように巨大な壁が立ちはだかり、逃げ出そうにも逃げられなかった。
市民1「な、何だ・・・・こんな壁、さっきはなかったのに・・!!」
アームストロング「・・・・・」
その壁の向こうには、アームストロング少佐が錬金術を使用し、壁を作った後だった。
彼女のいる壁の向こう側からは、市民らを追い込んだ連合の兵士達による虐殺の音が聞こえる。
神に救いを求める声・・・・母にすがりつく子供の声・・・・命乞いをする声・・・
それらは、銃声が鳴るたびに次々と消えていった。
そして、その状況を自ら作り出した彼女は・・・ただ、その結果を聞くしかなかった。
それから、しばらくして・・・・・
アームストロング「はぁ・・・はぁ・・・」
生き残った市民を掃討するため、虐殺の現場を歩くアームストロング少佐。
彼女の足元には、もはや動かぬ人の形をした肉の塊が転がっている。
ジャリ・・・
アームストロング「っーーー!!!」
物音がした方向を見れば、物影に隠れた老婆とその娘とみられる二人のイシュヴァール人がいた。
イシュヴァール人特有のその赤い瞳は、強い憎しみを込めて、アームストロングをにらみつける。
殲滅の命令が出ている以上、彼女らを見逃すことは出来ない。それが、守るべき民であろうとも。
軍務と信念・・・・・二つの思いに葛藤するアームストロングが選択したのは・・・・
アームストロング「・・・・・あぁああああああああ!!!!」
市民3・4「「!!!!」」
彼女の拳は・・・・立ちはだかる壁に振り下ろされ、人が通れる穴を作った。
アームストロング「逃げなさい!!早く!!ひたすら東に逃げなさい!!まだ、脱出するチャンスはあるわ!!」
アームストロングの言葉を理解したのか、老婆とその娘は、その場から逃げるように立ち去った。
アームストロング「・・・・・・」
二人を見送るアームストロング・・・・とここで、二人がアームストロングに振り返った瞬間ーーーー轟音と共に二人の上半身は消し飛んだ。
77
:
ゲロロ軍曹(別パソ)
:2007/01/12(金) 17:59:24 HOST:proxy02.std.ous.ac.jp[pc3f058.std.ous.ac.jp]
仮面ライダーカブト・アナザーストーリー
<優雅なる、カマキリの戦士>(5)
その頃・・・
=公園=
蘭「ふぁ・・。いいお天気ですね・・。なんだか、思わず眠くなってしまいそうですわ・・。」
ベンチで一休みをしているらしき蘭・・。しかし、先ほどいった台詞とは対照的に、今の彼女の様子はどこか暗いものがあった・・。
蘭(・・お母様。わたくしは・・、わたくしのせいで、あなたを・・。)
7年前のあの事件の後・・、母親の葬儀が終わってから、蘭は幾度か『自殺』を図ろうとしたことがあった・・。
あの事件の時、蘭の母は幼かった蘭を落ちてくるガレキからかばうため、彼女をその場から突き飛ばし、自分が身代わりにガレキの犠牲となった・・。そしてその結果、彼女の目の前で死んでしまった・・。
それゆえに、幼かった蘭はこう考えた。「お母様を殺してしまったのは、わたくしなんだ・・」・・と。
その頃の彼女にとって、その事実は耐えられるものではなかった。何よりも大好きで、尊敬の対象でもあった母が、自分が殺したも同然という事実が・・。
ある時はロープをつかって、首を吊ろうとしてみた・・。高い場所から飛び降りようともしてみた・・。カッターナイフでのどを切ろうともした・・。
・・だが、どれも失敗に終わった。やろうとする直前、彼女の脳裏に、母親の最後の言葉が浮かんだから・・。
<これからも、精一杯いき続けてね・・>
それが脳裏に浮かんだ瞬間、彼女は自殺を実行しようにも、どうしてもすることができず、その場で泣き崩れるしかなかった・・。
そして現在・・、今でこそ自殺を図ろうとはしないものの、やはり「母が死んだのは自分のせいだ」・・という気持ちは変わっていなかった・・。
蘭(お母様・・。お母様のおっしゃられた通り、わたくしは今を精一杯生きてるつもりです・・。でも、本当に今の状態で「精一杯」なのか・・、わたくしには、わかりません・・。)
暗い表情で、顔を下に向け続ける蘭・・。と、その時だった・・。
?「ひ、ひぃぃ!!た、助けてくれぇ!!」
蘭「!?」
突如、どこからか悲鳴が聞こえてきたのだ・・。
突然の悲鳴に少々戸惑った蘭だが、彼女の選択肢はすでに決まっており、急いで悲鳴が聞こえた方向へと向かった・・。(続く)
78
:
ゲロロ軍曹(別パソ)
:2007/01/22(月) 10:41:42 HOST:proxy02.std.ous.ac.jp[pc3f055.std.ous.ac.jp]
仮面ライダーカブト・アナザーストーリー
<優雅なる、カマキリの戦士>(6)
男性「ひぃ・・!な、何なんだよ、お前・・?!」
?「・・・」
悲鳴を上げた本人であるサラリーマンらしき男性は、ある人物に追い詰められていた・・。そして男性にとって、その人物は『ありえない姿』をしていた・・。
男性「なんで・・、なんで『俺の姿』をしてるんだよぃ!??」
そう、目の前にいる人物は、彼とまったく同じ姿をしていたのだ・・。もちろん、男性には双子に兄や弟など存在しないし、そっくりさんというにはあまりに似すぎていた・・。
と、そんな中、謎の人物は突如その左腕を鋭利な爪の生えた異形の物に変える・・。
?「安心しろ・・、これからは俺が『お前』として生きてやるよ・・。」
その言葉を言い放つと、異形の爪のある左腕を振り下ろす・・!
男性「(ザシュ!!)ぐぎゃああ!?」
男性は致命傷を負い、すぐにあの世に行くことになる・・。そして、右手に握っていた『もの』を、ゆっくりと落とした・・。
それはなにやら緑色のリストバンドのようなもので、男性を殺した人物は「ふん・・」と鼻を鳴らし、それを拾い上げた・・。
?「・・馬鹿な奴め。こいつを拾ったりしなければ、少しは長生きできたものを・・」
そういって、その場をとっとと立ち去ろうとした・・。しかし、その時・・
蘭「(タッタッタ・・)確か、このあたりから・・!?」
悲鳴を聞いて駆けつけた蘭が、タイミング悪くその場に到着してしまったのだ・・。
79
:
鳳来
:2007/01/22(月) 13:08:21 HOST:menet70.rcn.ne.jp
仮面ライダーカブト外伝
<喰らうもの、喰われるもの>
自然界に置いて、大抵の生物は大よそ二種類に分けられるーーーーすなわち、喰うものと喰われるもの。
弱肉強食・・・・力あるものが、力無き者の捕食を許される世界・・・・
だが、例外も存在するーーーー人間という生き物である。
=刑務所=
章介(・・・・・イライラするぜ。)
看守に監視され、全身を拘束具で固定された凶暴な猛獣の瞳を宿す青年ーーーー麻倉章介はそう思った。
もうすぐ自分が絞首台で立たされると知っていながら・・・・
=監視室=
看守1「随分とおとなしいもんだぜ・・・ま、あれだけやれば、当然か。」
看守2「それにしても、随分とまあ、厳重ですけど・・・あいつ、そんなに有名なんですか?」
看守1「ああ、そういえば、今日、配属されたばかりだから、知らないか。」
看守2「麻倉章介でしたっけ?確か、殺人罪で捕まったのは、新聞で知ってますけど。」
現在、モニターに映るこの男ーーーー麻倉章介は五件の連続殺人を起こしていた。
被害者の総数は、12名・・・・・それだけでも、充分な凶悪犯だったのだが・・・・
看守1「これは、噂なんだがな・・・・あいつ、喰ったみたいなんだよ。」
看守2「食べた?」
看守1「殺した相手をだよ。しかも、被害者全員、髪の毛一つ残さず。」
そう、麻倉章介が犯した最大の罪ーーーーそれは、人間が人間を食べたことであった。
しかも、体格が倍の被害者ですら、2時間で全身を食べつくしている。
そして、検察や裁判官達を驚かしたのは、それらの凶行を己の口と歯でなしたと言うことであった。
看守1「なんで、そんな真似をしたのか、刑事が問いただしたんだが・・・・<どんな生物も殺したら、食べる。当たり前の事だろ。>って言ったようだぜ。」
看守2「げぇ・・・まともじゃねぇぞ・・・」
看守1「ま、もうすぐ、この世とおさらばするんだ。それまでの辛抱だ」
そう呟いた看守1・・・・・だが、刑務所の外では、人間を食うモンスター・・・・ワーム達が刑務所に集まっていた。
80
:
シシン
:2007/02/07(水) 23:29:26 HOST:softbank218112188016.bbtec.net
〜ILLUSION FANTASIA 番外編〜
<雪上の誓い>≪3≫
それから2年の月日が流れ猛は12歳となったのである。
冬が訪れ町の子供達が好きな行事のクリスマスである。
猛「じゃあ、今日も仕事してくる」
理恵「ええっ気をつけてね」
今日も仕事に行く猛を見守る理恵は御馳走を作る準備に急いだのである。
時が刻々と刻み時刻は夕方のなり夕食の準備ができたのである
理恵「・・・あの子が大人になったら父さんの事を話さないとね」
微笑んでいたがどこか悲しい雰囲気でもあった。
その時、ドアが突然壊れる音がした。
理恵が見たものは血のように赤い鎧の者であった。理恵はキッと睨みつけたのである。
猛「すっかり遅くなったな・・・」
仕事が終わり雪道を走る。母にプレゼントする為おそくなったのである
もうすぐ自分の住んでいる丘に着こうとしたが煙が上がっていた。
嫌な予感がし急いで走ったのである。
彼が見たものは自分の家が焼かれていた・・・・
こうしてはいられない、母さんを探したのである。
少し離れた所に誰かいる。
先程の赤い鎧の男と倒れていたのは母さんであった・・・
猛「・・お前、母さんに何をしたんだ!!?」
状況も力もわからない相手に突撃した。しかし母さんを傷つけた相手を逃がすわけにはいかない。
???「・・・フン」
赤鎧の男は猛を容赦なく弾き返したのである。
身体に痛みが走り雪面にはいつくばっていた相手は大人、自分は子供・・・
力量が違いすぎたのである。
???「あの女に子供がいたとはな・・
だが【例の資料】は手に入った。もうじきあの女は死ぬ」
・・・母さんが、死ぬだと?
何かの聞き間違いだと思っただが赤鎧の男は追い討ちをかけるように言い放った。
???「あの女には私の呪の呪文を唱えたからな私にはむかった者の末路だよ・・・」
猛「・・・きさまぁぁぁ!!!」
立ち上がり猛の怒号が響いた。
すると彼のまわりから魔力が溢れ出し地面が割れかけたのである
これには赤鎧の男も動揺したのである
???「なっ・・!?」
猛「ウオオオォォォォォ!!!」
魔力がこもった拳で鎧の男に目がけて飛ばしたのである。
彼の居た場所に大爆発が起こったのである。
???「・・・一瞬とはいえ私に動揺を与えるとはこの屈辱忘れん」
彼はあの爆発で何とか逃れていたのである。
やがて呪文を唱えると消えてしまったのである
81
:
藍三郎
:2007/02/12(月) 17:04:01 HOST:161.73.183.58.megaegg.ne.jp
スーパーロボット大戦BB外伝<デストロイ・オブ・デザート>
=イシュヴァール地区 地球連合軍キャンプ=
眩蔵「あっちぃなぁ・・・たくよ・・・」
照りつける日差しに顔を歪め、蝦蟇渕眩蔵(がまぶち・げんぞう)は一人ごちた。
年齢は30代後半。角刈りにした頭に、同じく角型の顔、
伸ばした髭に金縁の眼鏡と、いかにも悪人らしい野卑な風貌の男である。
丸々と太った体躯の大男で、その身を派手な柄のアロハシャツで包んでいる。
恐らくLLサイズ以上だが、今にもボタンが外れそうだ。
男はまるで海水浴に来た観光客のように、
ビーチチェアーに寝そべって暢気に日光浴などをしている。
男と、その付近の様子だけ切り取れば・・・
到底、ここがイシュヴァール軍と戦争中の、地球連合軍のキャンプであるとは思えない。
眩蔵「あむ・・・ムシャムシャ・・・」
脇に設置されたテーブルから、ハンバーガーを一つ取り、口の中へ放り込む。
テーブルの上には、十個以上のハンバーガーが山積みになって置かれていた。
他にもフライドポテトやストロベリーシェイクもある。
元々この倍の量があったのだが、短時間で男が平らげてしまった。
彼の周囲では、連合の軍服を着た兵士達が、忙しそうに立ち回っている。
しかし、悠々自適な眩蔵の振る舞いを咎める者は誰もいない。
まるで、最初からこの場にいないと認識しているように・・・
眩蔵も、周りの状況を気にした風も無く、次なるハンバーガーへと手を伸ばす。
眩蔵「ふぅ〜〜日光浴でもしてりゃ、汗かいて腹が減るから、
メシが旨くなると思ったが・・・駄目だこりゃ、暑いだけだ。
クーラー効いた部屋に戻るかなァ・・・けど起き上がるのもたりぃよなぁ・・・」
どうでもいい愚痴を垂れながら、眩蔵はハンバーガーを口に含む。
大きな口と歯で咀嚼し、肉汁を存分に味わった後、呑み込む。
その時、彼の真上を、黒い影が覆った。
眩蔵「あぁん?」
???「相ッ変わらず・・・くつろいでやがんなぁ・・・“ガマグチ”」
彼の知人がよく使う“あだ名”を聞き、首を横へと傾ける眩蔵。
そこに立っていたのは、背中まで伸びた白髪の男だった。
年齢は眩蔵と同じぐらい。
しかし、眩蔵と違ってその体はやや痩せ気味で、背もかなり高い。
伸び放題にした白髪から覗く顔つきは、飢えた猛獣に似た雰囲気を醸し出しており、
その濁った瞳からは、獲物を狙う鷹のごとき眼光が放たれていた。
上着のボタンを全開にして、軍服をだらしなく気崩している。
その襟には、“連合軍少佐”の階級章が嵌められていた。
眩蔵「蝋骸か・・・何しに来やがった。ハンバーガー欲しいのか?ん?」
男は眩蔵のよく知る者だった。悪友・・・いや、腐れ縁と言っていい。
男・・・不知火蝋骸(しらぬい・ろうが)は、
ハッ、と鼻で笑うと、耳に残る太く粘ついた声でこう続ける。
蝋骸「誰がてめぇの油ぎった匂いの付いた食い物なんているかよ。
ちっと物資が足りなくなってよぉ・・・補給に来ただけだ。
一応、お前がここの最高責任者だろうが」
眩蔵「一応、な。そーゆー話は司令室の代理に通してくれ。
俺はほとんどお飾りみてーなもんだ」
諸手をあげて、『本当のこと』を語る眩蔵。
この基地内では、一番階級が上のため、名目上自分が最高責任者という事になっている。
ちなみに、眩蔵の階級は蝋骸より一つ上の“中佐”である。
蝋骸「そーかい・・・」
眩蔵「後・・・また派手にやってきたみてーだな?血の匂いが、べっとり染み付いているぜ・・・」
眩蔵にそう言われ、蝋骸はニヤリと笑みを浮かべた。
朗らかさなど全く無い、怖気しか与えないような、獣の笑顔だった。
蝋骸は腰に下げた日本刀に手を当てる。
ライフルと日本刀が結合された銃剣・・・愛刀『南蛮黒鉄(なんばんくろがね)』だ。
彼は銃剣を片手に、今日も熱砂の戦場を駆け抜けた。
そう・・・今日もたくさん殺した。
逃げ惑う兵士、武器を捨てて命乞いする兵士、5歳にも満たない子供、
恋人の名を叫ぶ若者、赤子を庇う母親、足が不自由で逃げ遅れた老人、
全て殺して殺して殺し尽くした。
自ら最前線に赴き、手にした銃剣で、ある者は頭を撃ちぬき、
ある者は頭から真っ二つに、ある者は腹を掻っ捌き、
ある者は脳天を串刺しにし、中をくり貫いて脳漿をぶち撒けてやった。
82
:
藍三郎
:2007/02/12(月) 17:05:29 HOST:161.73.183.58.megaegg.ne.jp
蝋骸の笑みに対し、眩蔵もまた、下卑た笑みで応える。
眩蔵「おめぇも物好きだねぇ。俺ら“上”の人間が、いちいち最前線に出てどーするよ?
一般兵や民間人の駆逐ぐれぇ、下っ端に任せときゃいいだろが」
実際眩蔵は、戦闘はおろか、指揮すらも直属の部下に預けている。
この戦争はもはや“戦い”ですらない。物量と機体性能において、すでに勝敗は決しているのだ。
高等な策や強力な兵士を繰り出す必要など無い。
多少の犠牲を無視すれば、容易に敵を殲滅できる戦いだ。
眩蔵のように、何もかも放り出すのは行き過ぎとは言え、
大半の連合士官は基地に留まったまま動かないのが普通だった。
その中で、不知火蝋骸は異質な男だった。
部下すら随伴させず、己の身と刀一本で戦場に斬り込むような士官は
錬金術師のような“異能者”を除けばまずいない。
野の放たれた猛獣の如き蝋骸の戦いぶりは、国家錬金術師らと比較しても十分脅威に値する。
彼一人の手によって壊滅させられた街や村の数は、両の指を軽く上回る。
その鬼神のごとき強さゆえ、イシュヴァール軍はもちろん、
味方すらも恐れられている狂犬・・・それが、不知火蝋骸だった。
眩蔵「ある程度掃除が終わって、
最後に美味しいとこ掻っ攫えば“点数”は十分稼げんだよ。
大将首と一般人の首とじゃ、億と一の差があらぁ」
眩蔵はテーブル上のフライドポテトの箱を掴むと、袋ごと中身を口の中へと押し込む。
蝋骸「フン、戦場にいるってのに、ダラダラ机でのんびりすんのは性に合わねぇ。
同じ戦うなら、俺は頭使うより“コレ”がいい」
腰に下げた刃を少し抜き、刀身に己の瞳を映す蝋骸。
刀身は今日殺した人間の血で、薄い赤色に曇っていた。
常に自分の中で燻っている、殺人破壊衝動。
戦場は、それらの感情を一気に解放する。
蝋骸にとって戦場とは、己の殺人欲を存分に満たせる“安息の地”であった。
眩蔵「んま・・・やり方は人それぞれだし・・・勝手にすりゃいいさ」
そう言ってストロベリーシェイクを一気に呷り、
咀嚼したポテトを一気に喉の奥へと流し込む。
眩蔵「ただ、お前さんのやり方じゃ出世はできねぇな。
偉くなるには、ほどほどに目立って、
きっちり点数稼いで、“上”にゴマを擦るのがコツだぜ?」
蝋骸「くだらねぇ・・・」
眩蔵の口舌を一言で切って捨てると、砂へ唾を吐く蝋骸。
その時・・・
連合兵「失礼いたします!」
一人の連合兵士が、眩蔵の前に現れた。
寝そべってハンバーガーを貪っている眩蔵に対し、きちんと軍隊式の挨拶をする。
眩蔵「あん?どした?」
連合兵「蝦蟇渕眩蔵中佐に申し上げます!
ただいま、イシュヴァール南東区画第16基地を、完全に包囲いたしました!
各部隊待機して、中佐の指示を待っております!」
眩蔵配下の部隊が、目標とする征圧拠点の包囲を完了したのだ。
周辺の街や村の“掃討”は既に終わっている。
後は、こちらの司令である眩蔵が出撃し、一番大きい“手柄”を取る・・・
これで、全てが予定通りに達成される。ところが・・・
眩蔵「もう終わったか・・・たく、もうちっと粘ってくれなきゃ、のんびりできねーじゃねーかよ・・・」
この期に及んで、なお面倒くさがる眩蔵。
残ったハンバーガーを、名残惜しそうに見つめている。
蝋骸「・・・面倒くさいなら、俺がやってやろうか?」
眩蔵「ああ?」
蝋骸「手柄はてめぇが取った事にすりゃいい。そんなもん、別に欲しくもねぇ」
蝋骸の提案に、眩蔵は金縁眼鏡の奥の瞳を輝かせた。
眩蔵「おお!そいつはありがてぇな!やっぱ持つべき者は親友だよな!」
蝋骸「気色悪い事言うんじゃねぇ・・・
俺はただ、少しでも暴れたいだけだ・・・」
またしても、獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべる蝋骸。
そして、銃剣を肩に担ぐと、崩した軍服を翻し、砂道を進んで行った。
目指すは戦場・・・彼がその飢えを満たせるオアシスへ向かって・・・
眩蔵「頼んだぜぇ、蝋骸ちゃ〜ん。俺の手柄のためによぉ」
残った眩蔵は、テーブルの上のハンバーガーを一気に口に押し込む。
ただでさえ大きな口をリスのように膨らませ、グチャグチャに噛み砕いて呑み込んだ。
心なしか、さらに拡張したように見える丸い腹を、ぽんぽんと叩く。
眩蔵「さてと・・・俺は部屋に戻って、『ケロロ軍曹』の再放送でも見るとすっかな・・・」
重い体をゆっくりとチェアから浮かして、眩蔵はボリボリと頭を掻いた。
83
:
勇希晶
:2007/02/14(水) 22:19:49 HOST:softbank220063219079.bbtec.net
○Happy Valentine?○
2月14日。
言わずと知れたヴァレンタイン・デーである。
一般には女性が男性に思いを込めたチョコレートを渡す日として知られているが、元々は古の聖人が殉教した日であり、チョコレートを上げるといった風習は、19世紀にイギリスの食品メーカーが始めたのが切欠であると言われている。
由来はともかく、世の恋人達にとっては大事な日であることにかわりはない。
そして、所謂「もてるヤツ」と「もてないヤツ」の差が歴然とする日でもある。
テン「・・・今日はいい天気だよなぁ・・・」
と、晴れ渡った空を見上げて呟く青年が一人。
彼の名は如月天。ひょんなことから居候兼従業員として小さな医院で働くことになった何の変哲もない普通の青年である。
顔立ちも普通。運動能力は人より少しいい程度。頭も悪くはない。だと言うのに、
テン「ん・・・?」
ふと、テンが前を見ると、ずんずんずんずんという擬音がつきそうな勢いで歩み寄ってくる一人の少女。
テン「・・・ご、吾恭屋さん?」
鬼気迫るというか、某奇妙な冒険の効果音を背負っているような感じでこちらへ歩いてきて、目の前で止まる。
多由音「・・・・・・・・・・」
テン「・・・・・・・・・・」
そのまま、奇妙な沈黙。
やがて、ずいっと掌サイズの箱が一つ突き出された。
テン「・・・えっと、これは?」
恐る恐る、尋ねてみるテン。一瞬、多由音は呆れた表情をするが、直後に怒声を上げた。
多由音「っ、いいから受け取れ!」
テン「わ、わかった。」
勢いに押され、反射的に受け取ってしまうテン。と、箱から仄かに漂う甘い香りを察知する。
テン「これって・・・もしかしてty」
多由音「か、勘違いするなよ!? 義理だからな、義・理!! 大体お前なんて誰からも貰えないだろうから、心優しいボクが上げるんだ。感謝しろよ!?」
テンが言い終わる前に多由音は捲し立て、来た時の勢い以上のスピードでテンの元を去っていった。
テン「・・・一体、何だったんだ・・・?」
まさに嵐のように現れて嵐のように去っていった多由音に呆れるテンなのであった。
To be Continued...(ぇ
84
:
鳳来
:2007/02/20(火) 22:21:10 HOST:menet70.rcn.ne.jp
スーパーロボット大戦BB外伝<デストロイ・オブ・デザート>
アームストロング「あ、あ・・・・」
???「危なかったですね、アームストロング少佐。敵を見逃すなんて、軍法会議ものですよ。」
突如奪われた命に思わず、膝をつけ、呆けるアームストロングに親しげに近寄り、手を差し出す女性ーーー<紅蓮の錬金術師>:ゾルフ・J・キャリー。
キャリー「・・・・・・立てますか?」
アームストロング「なぜ・・・・彼らを殺したのですか?」
キャリー「はっ?」
アームストロング「彼らはあきらかに民間人でした!!!武器を持たない、我々が守るべきはずの民なのですよ!!!」
キャリー「ええ、そうでしょうね。」
アームストロング「なら!!?」
キャリー「でも、イシュヴァール人の殲滅が任務。彼らも例外ではありません。それにこれが軍務ですから。」
顔をこわばわせるアームストロングを残し、キャリーは次の地区へと向かった。
=とある地区=
イシュヴァール地区で繰り広げられる殲滅戦だったが、この地区では様子が違っていた。
連合兵士1「くっ・・・!!どうなってんだ!!」
連合兵士2「知るかっ!!奴ラが、MSを所持しているなんて、聞いてなーーーー」
その言葉を最後に、肉体がはじけ飛ぶ二人の兵士・・・・そして、マシンガン銃を構えた陸戦型ザクⅡが3体現れる。
イシュヴァールのゲリラには基本的には、MSを所持できる資金は持ち合わせていない。
だが、幸運(イシュヴァール人にとってだが)にも、先の一年戦争でジオン軍が残した秘密工場の在り処を知っていた。
パイロットは、元連合のイシュヴァール人たちが買って出たため、問題は解決された。
歩兵のみで進撃したこの部隊にとって、このMSの存在は驚異となっていたーーーこの瞬間までは。
ゲリラ1『・・・・・攻撃がやんだぞ?』
ゲリラ2『撤退したのか?』
突然の静けさに戸惑っていた瞬間ーーーーーー後方の確保に努めていた一機が炎に包まれた。
ゲリラ1『な、連合の新兵器か!?』
ゲリラ2『まずいぞ・・・・一時撤退を・・・!!』
突然の時点に戸惑う二機のMSを襲う爆炎ーーーーー生きながら焼き殺されるゲリラ達を燃え上がる炎と同じように紅いその機体は静かに見ていた。
85
:
きつぐ
:2007/04/14(土) 22:34:33 HOST:AH1cc-09p58.ppp.odn.ad.jp
※この話は、とある人物の空白の時間を埋めるものです(名前伏せてもバレバレですが・・・)。
尚、書いていく途中で本編との矛盾点が多々出てくると思いますが、そこは寛大な御心で華麗にスルーしてください。よろしくお願いいたします。<(_ _)>
“俺”は平穏の真っ只中にいた。
目に付くような問題も無く、心を悩ませることも無い。
そう―――
目の前で、微笑んでいる“あの女”に声をかけられるまでは―――
『剣の翼と幻想の少女』
――???――
“ひゅんっ”という音と共に繰り出される漆黒の槍を、通常の“5倍に加速された知覚”の中で視認、ギリギリのところで手にした剣で切り払う。片手で振るうには、少々大きい剣はなんとか意図した通りの軌跡を描き、自分を貫こうとした“槍”を逸らすことに成功する。
少女「頑張りますわね?でも・・・・・・安心するのはまだ早いですわよ?」
“ニコニコ”と微笑む少女がそう言いながら、指先を躍らせるように動かすと同時、背筋に悪寒が走り、咄嗟に視線を背後に向けると―――
先程、逸らしたはずの“槍”が“ぐにょーん”と弧を描きながら曲がり、先端をこちらに向けていた。
少年「そんなんありかぁあああああっ!?」
絶叫とともに、しゃがみこんで回避。その際、身体の下から「ふぎゅっ!?」という声が聞こえた気もするが、気にしている場合ではない。その姿勢のまま、再度背後から迫る“槍”を、剣の腹で受け止め、流す。
少年(何が・・・『容姿も居場所もわかっている“女の子”を保護するだけですから・・・簡単な仕事ですね♪』・・・だ!あんなのが出てくるなんて聞いてねぇぞっ!!!!)
心の中で悪態をつきながら、目の前の“それ”を睨みつける。“ニコニコ”と微笑みながら宙に浮かぶ少女の脇に控える“漆黒の球体”。それに、少年を執拗に追い続けていた“槍”が巻き取られるように、消えていく。
少女「で?いい加減観念して“それ”を渡してもらえないかしら?」
最後通告―――
そんな単語が、少年の頭に思い浮かぶ。
久方振りのピンチに、冷や汗を流す少年の腕の中―――
もぞもぞと動く“それ”。
少年「・・・・・・・・・全く・・・一体、“この子”にどんな秘密があるってんだ?」
溜息と共に吐き出されたのは、今更ながらの疑問。
しかし、疑問の答えを探す暇も無く―――
再度、“漆黒の槍”が少年に襲い掛かった。
事の発端は・・・・・・少年――如月天――が滅多に無い休日を謳歌していた時まで遡る。
86
:
きつぐ
:2007/04/14(土) 22:35:12 HOST:AH1cc-09p58.ppp.odn.ad.jp
――テンの部屋――
窓から差し込む光は、それなりの高さを持ち、そろそろごろごろと惰眠を貪るのも辛くなってくる頃・・・まどろみの中で耳に入るのは“チュンチュン”と小鳥が囀る声と“カチャカチャ”と何かを運ぶ音。
テン(―――ん?カチャカチャ?なんのお・・・・・・ま、いいか・・・・・・・・・ぐぅ・・・)
一度、浮上しかけた意識はしかし、案外疲れがたまっていたのか、簡単に眠りの国へ帰っていこうとする。じりじりと陽の光に焼かれているが、これくらいなら気持ちいい―――
テン(って、ちょっと待て?俺、昨日ちゃんと窓閉めたよな・・・?)
感覚を研ぎ澄ませると、爽やかな風が吹き込むのを感じる。ということは、窓は全開というわけで―――
テン「(ガバッ)誰だっ!?」
咄嗟に跳ね起きる。すると―――
???「おはようございます。如月さん。今日はいい天気ですね?」
人の部屋に不法侵入して、勝手にお茶会の準備を完全に整えた“律神乃翼”リザベート<厄介事の根源>が目の前で微笑んでいた。
テン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
リズ「・・・・・・如月さん?」
テン「何の用だ?」
不機嫌そうな表情のまま、リズを睨むテン。しかし、リズの方はそんなことはお構いなしに話を続ける。
リズ「まぁまぁ・・・ほらお茶でも飲んで・・・・・・安い茶葉ですね・・・これ・・・」
テン「元々、俺のだよっ!?つか、文句があるなら飲むなよっ!!」
リズ「ま、そんなことは置いといて・・・仕事の話です」
“ニコニコ”と笑顔を浮かべながら、世間話でもするかのように話を続ける。
テン「嫌だ」(←即答
リズ「まぁ、そう言わずに話だけでも・・・・・・」
テン「絶対嫌だっ!!聞いたが最後、どうあっても関わることになるようにもっていくつもりだろっ!!」
リズ「・・・さて、今回の仕事はこの子の保護なんですけど・・・・・・」
テン「俺は聞かないからなっ!!あ〜〜あ〜〜あ〜〜聞〜こ〜え〜な〜い〜」
子供のように両耳を塞ぎ、完全拒否体制のテン。しかし、そんなことでリズの猛攻は止められない。
リズ「因みに、敵の手に落ちると世界が滅びます」
テン「聞〜こ〜え〜・・・・・・は?」
リズ「ですから、この娘が敵の手に落ちると―――」
そこで“タメ”を作るリズ。よせばいいのに、“ゴクリ”と緊張した面持ちでそれを見るテン。そして―――
リズ「世界が滅びます♪」
と満面の笑みで言った。
テン「んなことを、明るく言うなぁああああっ!!!!」
どうやら、予想通りの展開が待っているらしい。
87
:
鳳来
:2007/04/24(火) 21:36:34 HOST:menet70.rcn.ne.jp
スーパーロボット大戦BB外伝<デストロイ・オブ・デザート>
???『こちら、ロディ・マスタング大尉・・・この地区の制圧を完了しました。』
既に周りは、フレイムヘイズにより練成された炎に埋め尽くされている。
モニターや音声マイクからは、生きながらに焼かれる人間の姿と悲鳴が目や耳に飛び込んでくる。
だが、すでに何も案じない・・・・哀しみも後悔も。
ロディにとってもう見慣れた風景の一つになっていたからだ。
とその時、先ほど焼いたうちの一機が尚も立ち上がり、ヒートホークを構えていた
ゲリラ兵『錬金術師か・・・・これが・・・お前達の望む錬金術の使い方か・・・人々の為の技術で・・・』
言葉を終わらない内に、機体が炎に包まれる・・・装甲がどろどろに溶けるほどに。
ロディはそれを無言で見届け、その場を後にした。
=東部地区=
そして、この地区では、一人の幼い死神が死を振りまいていた。
ゲリラ2「ちっ・・・化け物が・・・!!!」
路地裏の行き止まりに追い詰められた一人のゲリラ。
すでに仲間は、殺されたーーーーあの四角い箱の死神に。
立ち往生する彼だったが、背後から死神の足音が聞こえ、そして、立ち止まった。
ゲリラ2「くっ・・・なぜだ・・・なぜ、俺達を、殺すんだーーーー!!!」
僅かな望みを掛け、手にした銃を乱射するゲリラ・・・・
その望みも虚しく、死神は銃弾を難なく回避し、ゲリラの前に立ちーーー手にした三叉のナイフを振るう。
ゲリラ「あ、あぁ・・・・・」
その数秒後、突然動けなくなったゲリラの体は、17つに分割された。
残るは帰り血を浴びた四角い箱・・・・段ボール箱を被った一人の少女<七夜稜>だけだった。
稜「殺すこと・・・それが任務だから。」
88
:
きつぐ
:2007/04/30(月) 22:21:52 HOST:AH1cc-09p201.ppp.odn.ad.jp
『剣の翼と幻想の少女』2
――???――
迫る漆黒の槍の軌道を、瞬時に把握。槍と槍の隙を予測し、掻い潜る道を導きだそうとして―――
【警告:回避不能】
絶望的な結果が返ってきた。
――テンの部屋 回想――
リズ「まぁ、今となってはパンピーに毛に生えた程度の力しか持たない貴方には、少し荷が重過ぎますね・・・そこで―――」
“ぜはーぜはー”と度重なる絶叫のせいで息継ぎに忙しいテンを悪戯っぽい微笑みで見ながらリズが言う。
テン「・・・・・・・・・お前さ・・・たまに言動が“俗っぽく”なるよな・・・」
リズ「ほっといてください。そこで、心優しい私がある一品を用意しました」
リズが“パチリ”と指を鳴らすと、どこからともなく布のかぶせられた台が運ばれてくる。運んできた黒ずくめの人(?)は、物を運び終わるとすぐさま退場していく。
テン「・・・・・・・・・つか、あれ誰?」
リズ「これは、私が知り合いに開発を頼んで―――」
リズは、力強い笑みを口元に浮かべ・・・・・・その布をはぎ取る。
テン「人の話を聞けよ」
リズ「ようやく、試作品が完成した演算補助デバイス―――」
すると、そこに現れたのは―――いままでに見たこともない“剣”らしき物。
テン「だから、人の話を・・・・・・って、演算補助デバイス?」
リズの言った、その単語――演算補助デバイス――は、テンにとって無視できるはずも無く、
テン「つーことは・・・・・・もしかして、それがあると使えなくなった“あれ”が使えたりするのか?つか、剣か?これ?」
リズ「ま、簡単に言うとそうですね・・・ですが、試作品なので効果は低いですし、安定もしません・・・精々、能力の単一起動・・・それも限定的な起動が限界でしょうね・・・」
テン「それでどーしろと・・・普通に振り回すのにも力要りそうだし・・・」
期待を裏切られた感じがして、溜息と共にそんな台詞を吐いてしまう。
リズ「ま、無いよりはマシという程度ですね・・・」
テン「ま、元々無しで戦ってた時期もあるわけだし・・・お守りとでも思っておけば―――」
自分の中で妥協点を見つけ、納得しようとするテン。しかし、そんな努力すら無に返す言葉が綺麗に微笑んだリズの口から、
リズ「しかし、実戦に投入しないとデータも取れませんし・・・・・・」
テン「体の良い、人体実験じゃねーかっ!!それはっ!!」
語られた。
リズ「あ、後・・・切り札として―――」
テン「どうせ、大したことねーんだろ?」
ついでという感じで付け足された言葉に、もう騙されないぞと言わんばかりの、ジト目でリズを睨むテン。
リズ「3分間だけ、『天眼』の全力起動が可能です」
テン「マジかっ!?」
リズ「しかし、全力起動後は云とも寸とも動かなくなりますので・・・気をつけてください」
物凄い勢いで食いついてきたテンを珍しく真面目な顔で見つめるリズが印象に残った。
――???――
テン(・・・・・・っ!!なろぉっ!!一か八かっ!!)
【起動:演算補助デバイス制限解除、呼出:《伍式/熱量制御》全力起動】
迫る漆黒の槍の進路を防ぐように、空気が煌めく。空気中に存在する水分子がその内にある熱量を奪われ、固体化した水分は、“氷の盾”となり漆黒の槍を受け止める。
少女「あら?」
テン(・・・・・・次の手は・・・)
【呼出:《壱式/運動制御》並列起動、演算容量不足:《伍式/熱量制御》限定起動移行】
漆黒の槍が“氷の盾”に阻まれている間に、“タンッ”と地面を蹴る。そして、更に自分の足元の熱量を奪い、氷を発生させ、運動量を制御し空中に固定し足場とする。それを更に蹴り、再度足元に足場を形成、それを繰り返し完全に相手の上空をとる。
【終了:《壱式/運動制御》演算容量確保、再起動:《伍式/熱量制御》全力起動、潜熱開放】
相手の真上で、大きく剣を振りかぶる。それと同時、氷を発生させる際に奪った熱量を開放するために“演算”を開始、それに伴い、剣が“啼く”―――
少女「っ!?」
???「わわっ!?」
テン「これで終いだぁあああっ!!“アーマイカっ”!!!」
“轟っ”と、凝縮された“熱”が、上空から真下へ撃ち下ろされた。
89
:
鳳来
:2007/04/30(月) 23:36:31 HOST:menet70.rcn.ne.jp
=Fate/ZERO嘘予告1=
それは、救いようの無い残酷な物語に現れた小さな希望・・・・
だけど、それは誰も救われない悲劇を誰もが望んだ喜劇へと物語を変える。
アーチャー「すまない・・・・君が私のマスターか?」
目の前に現れた小さな少女に、マスターであるか確認するアーチャー。
凛「マスター?それより、あなた誰なの?」
首をかしげる幼女:凛・・・・その左手には、マスターの証であり、聖杯戦争の参加券となる令呪が刻まれていた。
凛の後ろでは、何てこったと頭を抱える父:時臣とこれからの事を思案する兄弟子言峰がいたりする。
ーーーーーこれが、少女と弓兵の出会い。本来はありえない出会い。そして、悲劇を喜劇に変える始まりだった。
聖杯戦争序盤ーーーーセイバーとランサーの一騎打ちに乱入したライダー。
ライダー「聖杯に導かれし、英霊は今!ここに集うがいい。なをも顔を見せぬ臆病者は征服王イスカンダルの侮蔑を逃れぬものと知れ!!」
ライダーがひとしきりに咆えたあと、紅い閃光がここに舞い降りた。
ライダー「ほう、早速、現れたーーーーか?」
ランサー「は?」
セイバー「なーーーー!?」
その姿を見た一同は、現れたアーチャーの姿に、思わず絶句した。
アーチャーに肩車される少女、凛ーーー令呪で連れていけと命令ーーーもそうだが、何よりエプロン+三角巾という明らかに場違いな姿だった。
これで、凛がマスターだと知ったなら、一同はさらに驚くであろう・・・・
ライダー「はっはあははははははーーー!!!中々、面白い奴がきたではないか。」
アーチャーのそのこっけいな姿に大笑いするライダー。
ランサー「・・・・・アーチャー、悪ふざけもすぎるぞ。」
セイバー「かような姿で、この闘いを汚すとは、恥を知れ!!」
んで、悪ふざけと受け取って、マジ切れするランサーとセイバー。
ウェイバー・アイリス・切嗣・ケイネス((((いつから、サーヴァントは子守をするようになったんだ?))))
とりあえず、首をかしげるマスター一同。
アーチャー「ああ、言いたい事は分かる!!誰が好き好んで、連れてくるか!!」
凛「何よ!!私は、あなたのマスターなんだから、一緒に闘うのが当たり前でしょ!!」
アーチャー「ええい・・・!!聞き訳の無い子供だ・・・・」
何やら言い争いを始めるアーチャーとそのマスター・・・・・周りが何だか微笑ましく見ているのは気のせいだろうか?
これが、幼い凛の聖杯戦争初デビューとなった・・・
絶望を希望に、悲劇を喜劇に変えろ!!!
遠坂凛とアーチャー・・・・この二人が辿り着く先は、誰もが望んだ極上なハッピーエンドか!?
ーーーーFate/ZERO・IF、ここに開幕!!!
90
:
清涼
:2007/06/09(土) 22:46:20 HOST:usr177.g016.nabic.jp
〜予告〜
世界は、一時破滅を迎えた。
行き過ぎた力と、人の業、それが起こした争いによって。
人々が生み出したのは、人型超戦闘兵器『スーパーロボット』。
それによる争いを『スーパーロボット大戦』と呼ぶ。
そして、大戦が終結してから幾百年。
滅びた世界の上には新たな世界が建ち、過去の戦乱は忘れ去られた。
だが、尚も人の業は止まることはなく―――
「こいつには神にも悪魔にもなれる力がある・・・でも俺はどちらにもならない!マジンガーは、正義の使者なんだ!」
マジンガーZ、参戦。
「俺には戦うことしかできやしない。だがそれは、平和のための戦いだ。」
グレートマジンガー、参戦。
「どんな敵だろうと、俺は逃げも隠れもしねえ。例えそれが運命(ゲッター)だろうとな!」
新ゲッターロボ、参戦。
「雨の日に、傘を差さず踊る人間が居てもいい・・・それが自由というものさ。」
THEビッグオー、参戦。
「世のため人のため!メガノイドの野望を打ち砕くダイターン3!この日輪の輝きを怖れぬのならば・・・かかって来い!」
無敵鋼人ダイターン3、参戦。
「人に人を裁く権利なんてない!俺達に出来るのは、過去を乗り越えて進むことだけだ!」
機動戦士ガンダム逆襲のシャア、参戦。
「僕にとって地球はずっと憧れでした。だから守ってみせる、命を賭けて!」
蒼き流星SPTレイズナー、参戦。
「この世界に強者などいない、俺もお前も弱者なんだ!」
新機動戦記ガンダムW、参戦。
世界の命運は戦士達に託された。
人類は再び破滅へと向かうのか、それとも・・・
スーパーロボット大戦 NeoCentury
公開・・・未定。
「私は戦い続けます。それが“ヤクソク”ですから。」
オリジナル作品 『Machinery Desire』・・・参戦。
91
:
きつぐ
:2007/06/10(日) 16:37:25 HOST:SSJfa-05p3-64.ppp11.odn.ad.jp
『剣の翼と幻想の少女』3
テン「ふぅ・・・・・・いっちょあがり・・・っと」
“スタッ”と、地面に着地し、深々と溜息を吐く。
【全力起動終了:残時間120秒】
どうやら、一分でなんとかなったらしい。しかし―――
テン「やっぱ、自分の武器じゃないと・・・・・・しんどいなぁ・・・・・・」
再度、溜息。確かに、使えない武器じゃないが試作品というだけあって、あんまり無茶も―――
???「あ・・・・・・」
油断していたと言えばそうなのだろう。
確かに、その可能性も考えなかったわけではない。
だが、一応全力だったのだ。
まさか―――全くの無傷なんてこと・・・・・・。
テン「・・・・・・・・・そーいや、お前もあのいけ好かない女と同格だったっけ・・・?」
遠くに弾き飛ばされた“剣”を呆然の見送りながら、恐る恐る背後を振り返る。
アーマイカ「不本意ながらね・・・・・・」
漆黒の球体が割れる。その中から、無傷で現れる少女――“欲神乃翼”アーマイカ。割れた球体は、形状を変えアーマイカの背に翼として宿る。
アーマイカ「矮小な存在で、私にこの“翼”を使わせたことは褒めてあげる・・・わっ!」
その言葉と同時、“ヴンッ”と言う音が聞こえた刹那、
テン「やばっ!?」
【簡易常駐:《四式/知覚加速》定義10b―――】
感覚を10倍まで引き上げようとしたところで、全身に衝撃。
ゴッ!!バキッ!!ドゴッ!!ガンッ!!ドシャッ!!
咄嗟に抱えていた娘を、手放して逃がしたのは褒めて欲しい。
テン(ぐはっ・・・・・・10倍如きじゃどーにもならん速さだな・・・・・・)
壁に叩きつけられた時に、打ち所が悪かったのか意識も朦朧としてきて―――
あの娘の無事を確認する前に、意識が闇に落ちた。
アーマイカ「全くてこずらせてくれる・・・・・・さて、目的の―――」
テンが放り出した、襤褸を纏った娘を探す。そして、“それ”はすぐに見つかった。しかし、“それ”は―――
アーマイカ「何のつもりかしら?」
その手にテンから弾き飛ばした“剣”を構えていたが。
???「“相棒”を・・・・・・大切な人を護るのに・・・理由はいらないよ?」
“それ”が“黒い瞳”を閉じる。
アーマイカ「何を考えているのか知りませんが・・・素人が持ったところで怪我をす―――」
???「情報取得、顕在化プロセス移行―――顕在化完了」
“黒髪”と襤褸がマントのように舞い上がり、その下には歳相応の服。
アーマイカ(え・・・?あの娘先程までは確か・・・・・・)
???「流石に裸じゃ・・・・・・恥ずかしいもんね・・・」
そして、開いた瞳は―――“金色”。
アーマイカ「貴方っ!?まさかっ!?そういうことですかっ!!“律神乃翼”!!」
“ヴンッ”と、現状のテンが捉えられなかった速度で襲い掛かる。しかし―――
あくまで、“現状の”と注釈が付く。
ならば、元々あったはずのものは何処に行ったのか?
答えは目の前にあった。
92
:
きつぐ
:2007/06/10(日) 16:38:37 HOST:SSJfa-05p3-64.ppp11.odn.ad.jp
???「全力起動開始、簡易常駐:《四式/知覚加速》定義120倍、並列処理:《壱式/運動制御》身体能力60倍定義」
【残時間:120秒】
自分の身長ほどある“剣”を軽々と振り回しながら、迫り来る“黒翼”を全て斬り払う。
アーマイカ「ちっ・・・・・・ならばっ!!」
倒れたまま、ぴくりとも動かないテンに攻撃を向ける。
【残時間:90秒】
???「あ、ずるいっ!?」
互いに人知を超えた速度の中、攻撃を相殺し続ける。
【残時間:60秒】
この勝負、制限時間がある以上、アーマイカの方が断然有利。しかし、“それ”もそこは理解しているので―――
???「そろそろかな?」
“トンッ”とテンの前に着地。そのまま、“剣”を振り上げ―――
【残時間:30秒】
アーマイカ「何を―――」
???「演算切替:《六式/領域破砕》・・・・・・せぇーのぉっ!!」
床に突き立てる。突き刺した瞬間、床が円形に“消失”した。
【残時間:15秒】
アーマイカ「はぁっ!?一体何考え―――」
重力という、枷に囚われた2人はそのまま自由落下に入り、
【残時間:10秒】
???「(ニコニコ)演算切替:《七式/時空跳躍》・・・・・・じゃあね〜♪バイバイ〜♪」
“それ”を中心に“ゴゥッ”と光の柱が噴出、それはテンをも巻き込み―――
【残時間:5秒】
呆然とそれを見送った“欲神乃翼”アーマイカの目の前で―――
【残時間:1秒】
この世界から、2人は消失した。
【残時間:0秒】
――“律神乃翼”リザベートの居城――
その城は、次元の狭間にあった。そして、そこの主たる少女は、今日も世界を見守っていた。
リズ「(パリポリ)・・・・・・ふぅ・・・あら、今日のラッキーアイテムは―――」
せ、世界を見守っていたっ!!(汗
バタンっ!!!
そこで突如、勢い良く開かれる扉。
リズ「ノックも無しに部屋に入ってくるとは・・・・・・少々常識が無いんじゃありませんか?フィーネ・ルーンライト」
フィー「御託はいい・・・・・・如月は何処ですか?」
リズ「さぁ?知っていたとして私が貴方に教えると―――」
“ゴリッ”と銃口が額に突きつけられる。
リズ「物騒ですね・・・・・・」
フィー「・・・・・・ヒメが如月の位置を把握できなくなりました。こんなこといままで・・・・・・」
そこで、フィーの言葉を遮るように、人差し指一つで銃口を逸らし―――
リズ「全く・・・・・・あの方はいつも私の予想の斜め上を行く・・・・・・今回ばかりは高みの見物を決め込むわけにもいかないようです・・・」
フィー「それは一体―――」
リズ「何、唯の独り言ですよ・・・・・・さて、役者も揃ったことですし・・・行きますか」
その言葉に、リズの視線を追い振り返ると全力疾走の後遺症か完全に脱力したヒメが・・・。
ヒメ「フィー・・・・・・・・・置いてくな〜・・・・・・(ガクッ)」
床に突っ伏していた。
――???――
パラパラと手の中で役目を終えた“剣”が崩れていく。そんな映像を見た気がした。
テン「――――っ!?」
“ガバッ”と体を起こす。そこで飛び込んでくるのは、何の変哲も無い公園(らしき)風景。一瞬、自分のいる場所を理解できずにキョロキョロと周囲を見渡してしまう。
テン「あ、あれ?俺、なんでこんなところに・・・・・・?」
そこで、自分を見上げる視線に気付く。
???「(ニコニコ)・・・・・・・・・」
テン「え・・・っと・・・・・・」
???「これから、よろしくねっ♪“お兄ちゃん”♪」
それは、ここから始まる少女が望んだ幻想。
そして、既定の枠から外れた―――剣の翼の物語。
To Be Continued...Super Robot WARS Brave of Blaze...
93
:
清涼(別PC)
:2007/08/07(火) 23:07:54 HOST:usr177.g016.nabic.jp
〜予告〜
地球にまだ、人間という種が住んでいたころの話。
星から溢れるほどにまでその数を増やした人類は、宇宙空間に巨大居住施設『コロニー』を建造し、そこに移り住んでいった。
だが、それが長く続くうちに地球とコロニーの間には確執が生まれていった。
コロニーに対して強硬的な姿勢を取る地球連邦政府に対し、月の裏側にあるコロニー群サイド3は『ジオン公国』を名乗り独立戦争を挑む。
一年間にも及ぶ戦いの末、ジオン軍は敗北。
地球連邦はさらに増長するが、それが新たな戦乱を呼ぶこととなる。
ジオン独立戦争より15年、その間にも数多の戦乱が勃発したが、人類はこれを乗り越え地球は平穏を取り戻した。
しかしそれも束の間、一年戦争において名を馳せた伝説のエース、シャア・アズナブルを総帥に置いた『ネオジオン』が地球連邦に牙を剥いた。
ネオジオンは地球寒冷化作戦を実行し、資源小惑星『5thルナ』を地球に落とす。
その混乱に乗じ、地球を蹂躙せんと狙っていた者達が動き出した。
過去の栄光を取り戻さんとする、かつての地上の覇者『ミケーネ帝国』。
絶えず戦いを起こす人類に絶望し、反旗を翻したサイボーグ軍団『メガノイド』。
地球文明を破壊せんとする未知の敵『宇宙怪獣』。
遥か銀河の彼方より襲来した侵略者『エアロゲイター』。
幾つもの星を支配する征服国家『ベガ星連合軍』。
宇宙からの侵略に備え、世界の武力統一を目指す『ディバイン・クルセイダース』。
これに立ち向かうは鋼の魂を持つ戦士達。
結集した力は人類最後の砦、『ラスト・フォート』として動き出す。
そして、戦いはさらに加速する――
参戦作品
新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
マジンガーZ
グレートマジンガー
UFOロボグレンダイザー
新ゲッターロボ
無敵鋼人ダイターン3
トップをねらえ!
バンプレストオリジナル(OG1)
今夏、始動するかも?
94
:
鳳来
:2007/08/16(木) 20:56:27 HOST:menet70.rcn.ne.jp
<キャッチコピー>オリ学生徒(OB)がやられたら、全員がリベンジに来ると思え!!!
ジェイル・スカリエッティの手により復活した最終兵器<聖王のゆりかご>。
迎え撃つは、囚われたヴィヴィオを奪還せんとするなのはら起動六課の面々。
だが、「戦闘機人」ナンバーズ、ルーテシア、ゼスト、アギトらがなのはらの行く手を阻む・・・・
援軍のクロノの部隊も、苦戦を強いられる中、すべては絶望へと向かっていく・・・
はやて「皆!!このままじゃ、このままやと・・・・」
追い詰められる友と後輩の姿に、悲痛な表情を浮かべるはやて・・・その肩を・・・
サスケ「何やってんだよ、はやて。」
はやて「サスケ君!?」
優しく触れたのは、あの学園で誓いを立てた少年・・・・否、今は、たくましく成長した一人の漢だった。
サスケ「さて、そろそろ、あいつらも、駆けつけてくれるころかな・・・・」
=ナンバーズ戦=
スバル「えっと・・・・・」
ティア「味方なの?」
ナンバーズとの交戦を繰り広げていたスバルとティア・・・その危機に駆けつけたのは、9人の男女だった。
彼らこそ、学園の中でも一騎当千と言われた豪傑・・・
アイオリア「まず一番手は光となり!!」
憐「姿はあれど音は無し!!」
ルナ「静かなれども振り向かば!!」
辰伶「十重に二重に舞い上がる!!」
蛍「黒き炎!!」
コウジ「浮世の湖面に映り散る!! 」
リーチェ「望みとあらば目にもの見せよう!!」
良治(覚醒)「我ら命の大あばれ!!」
セイバー「九の刃が天を貫く!!」
セイバーら9人『オリキャラ学園OB九大天王、ここに参上!!!』
=ルーテシア戦=
ルーテシアらの戦闘するキャロとエリオ・・・・・彼らの前にも、援軍が現れた。
紅の般若面で顔を隠し、純白の翼を持つ女剣士と双刀使いの女侍、癒しの力を持つ巫女を傍らに・・・・・
ゼスト「その紅の般若面・・・そして、その従者・・・・」
エリオ「あなたが、現太四老の長でありながら、ミリオンズ・マスターの二つ名を持つ・・・」
キャロ「ネギ・スプリングフィールドさん・・・・」
ネギ「そんな堅苦しくしないでください。ネギで良いです。」
見るものを畏怖させる仮面とは裏はらに声音は、優しさに満ちた声・・・だが、すぐに戦闘態勢に変る。
ネギ「では、はじまめましょう。」
アギト「私達の、ルーテシアの幸せの邪魔はさせない!!」
ネギ「甘えないで下さい。誰かの幸せを踏みにじって、幸せになる権利なんて誰にもありません。」
拳を構えるネギ・・・・・そして、戦闘前の決め台詞
ネギ「さあ、講義を始めます。」
=聖王のゆりかご戦=
そして、スカリエッティのいる<聖王のゆりかご>では・・・・・
????「YAHAAAAAAAAA!!!!!!」
縦横無尽に空中を駆け回る黒い物体・・・・それが駆け抜けるたびに、次々と小規模な爆発がおきていく。
スカリエッティ「ちぃ!!!たった一人に、たった一人になぜこんな遅れを・・・・しかも・・・」
・・・・・全裸の相手に!!!
???「天が呼び、地が咆える!!!!天網恢恢色々もらす世の中だが、このオリキャラ学園生徒会長:黒サガがてめぇら外道の野望を打ち砕いてやるぜェ!!!(全裸で」
=聖王のゆりかご内部=
トレス「内部への侵入完了。これより制圧に向かう。」
幸村「さて、表舞台は若い人たちに任せて・・・僕ら裏方はおいしいところを奪いますかv」
さあ、これより舞台が始まる。
囚われのお姫様を助けるために、用意された最高のシュチェーションで・・・・
演じる役者は超一流の曲者ぞろい。
目指すは悲劇を力技でねじ伏せる問答無用のハッピーエンド!!
サスケ「さぁ・・・・どはでなリベンジ、かますぞ!!!」
リリカルなのはストライカーズ:IF、堂々開幕!!!!
95
:
元ツカサ
:2007/08/17(金) 19:31:11 HOST:i60-47-199-95.s02.a002.ap.plala.or.jp
恒例の嘘予告♪
ハイパーカブト「ハイパークロックアップ」
ハイパーゼクター「Hyper Clock Up」
ハイパークロックアップ、それは時間の流れを巻き戻すほどの力を秘めた力・・・
しかし、それが『時の流れ』に干渉し、『ある存在』を呼び出してしまったのを、誰も知る由もなかった・・・・・・
「お前の願いを1つ言え」
「お前の払う代償は1つ・・・」
体の上半身と下半身が分離し、位置が逆にある砂の怪物『イマジン』はそう言っていた
良太郎「・・・ここ、何処だろう?」
レイナ「ここはクロスディアって言う世界よ」
ハナ「クロス、ディア?」
『ある事情』によりクロスディアで迷子になった野上良太郎とハナ
侑斗「まさか異世界に来るなんてな・・・」
デネブ「侑斗!いいからここから早く出よう!!」
ドラゴン「キシャーーー!!」
ドラゴンらしき生物に追われる桜井侑斗とデネブ
天道「お前・・・何者だ」
???「感謝するぞ。お前のおかげでオレはこの世界に来れたんだからな」
『目的』のために異世界で活動する『なにか』
ミルク「ええ!!人から怪物が出てきた〜!!」
蘭「ワーム!?でもそれとは・・・」
イマジン「『契約者』の願いだ。邪魔するやつは消えてもらうぞ!!」
クロスディアで契約者の願いを叶えるために活動する『イマジン』
そして、
良太郎「そんな事はさせないよ。例え異世界でも・・・僕が護ってみせる!」
右手に持つはそのための力・・・DEN-Oベルト
良太郎「いくよ!」
ベルトを装着し、ボタンを押し、汽笛がなる
その声に答え、4つの仲間が声をあげる
モモタロス「よっしゃー!」
ウラタロス「釣りがいがありそうだね♪」
キンタロス「いったるか!」
リュウタロス「楽しみだね〜♪」
良太郎「変身!」
ライダーパスをベルトに通し、現れたのは『時の運行』を護る仮面の戦士
電王「オレ、参上!!」
空の彼方から現れるは『時の列車デンライナー』
電王「異世界だろうがリレー小説だろうが関係ねぇ!オレは何時でも何処でもクライマックスだぜぇ!!」
IF side story
仮面ライダー電王外伝 クロスディアクライマックス!
近日公開!!
オーナー「言っておきますが〜、嘘予告ですよ」
ナオミ「とか言って、本当にやったりして〜」
ジーク「私も出演してみたいものだな」
96
:
勇希晶@NPC
:2007/08/18(土) 21:38:49 HOST:aa2007051639d2f97e0e.userreverse.dion.ne.jp
=新作(?)予告(本物)=
新西暦0073年、地球は未曾有の事態に見舞われていた。
突如宇宙より飛来し、日本の横浜に落下した巨大隕石。そしてほぼ同じタイミングで紐育・モスクワ・太平洋のアイドネウス島に落下したメテオ1・2・3。さらにはそれから採取された「トロニウム」という米粒程の大きさをした超エネルギー結晶、現在の地球の技術力では到底不可能な超技術等々・・・・・・。
それらの事例を重く見た地球連邦政府は、秘密裏に何れ来るであろう異星人との戦いに備え、対異星人プロジェクトを開始。翌0074年、政府直属の特別諮問機関「EOT特別審議会(通称EOT特審会)」を設置。同年EOT特審会はEOT研究の為の特別機関「EOTI機関」をメテオ3が落着したアイドネウス島に設立。連邦軍に於いては月のマオ・インダストリー社及び北米のテスラ・ライヒ研究所にて「H計画」及び「G計画」を0075年開始。極東基地に於いても「SRX計画」を0077年に開始。そして軍上層部の一握りしか知らない秘密諜報機関「ミスリル」、地球防衛組織「GGG」の設立・・・・・・。
しかし、それらの事が一般の民間人に伝えられることは一切無かった。
その後、新西暦0077の連邦軍テクネチウム基地爆破事件等を除いては平和な時間が続いていた。
しかし新西暦0079年、地球から一番離れたコロニー「サイド3」が「ジオン公国」を名乗り、サイド2のスペースコロニー「アイランド・イフィッシュ」を占拠し、内部の住民を毒ガスにより虐殺。そして新西暦0079年1月4日、ジオン公国軍は「アイランド・イフィッシュ」をオーストラリア大陸のシドニーに落下させた。そして同年1月15日のルウム戦役を経て、ジオン公国軍と地球連邦軍による戦争が始まった・・・。
そんな最中に確認された「使徒」や「ゼラバイア」と呼ばれる謎の敵生物、「木星トカゲ」と呼ばれる謎の自動兵器群、更にはメテオ3落着に前後して確認され始めた“囁かれし者(ウィスパード)”を巡る争い等々、地球上を瞬く間に争いの火花が覆っていった・・・・・・。
そして、物語は日本の東京から始まる・・・・・・。
97
:
勇希晶@NPC
:2007/08/18(土) 21:39:20 HOST:aa2007051639d2f97e0e.userreverse.dion.ne.jp
漆黒の宇宙(そら)で対峙する白と赤。
「速い!?」
「当たらなければどうと言うことはない。スレンダー、援護しろ。」
疾駆する蒼き鬼神。
「怯えろ、竦め! MSの性能を生かせぬまま、死んで行け!!」
「俺は生きる! 生きてアイナと添い遂げるっ!!」
跋扈する蒼き死神。
「・・・・・・・・・・・・」
避けられたかも知れない悲しき宿命。
「もう戦わなくてもいいんだよ、二人ともーっ!!」
世界を股にかけた企業戦争。
「マドモアゼルレミー。これも運命というものだ。」
「そんな運命ならノーサンキューよ。」
遥かなる地に残された人を救う為、旅出つ白き方舟。
「目標、敵ぜ〜んぶ!グラビティブラスト、発射ぁ!!」
突如として現れた、異世界からの侵略者。
「貴様はっ! その怨念で何を手に入れた!?」
「力と、狡猾さとだ! さすれば、勝つ!!」
二万年の時を越え、目覚める勇者。
「ライディーーーン! フェーーード、イン!!」
降臨する超重神。
「グランナイツの諸君、合神せよ!!」
悪を砕くべく目覚める、鉄の城。
「マジーーーン! ゴオーーーッ!!」
“囁かれし者”を巡る、歴史には残らない戦争。
「ガウルンッ! 貴様は殺す!!」
「愛してるぜぇ、カシムゥゥゥッ!!」
混乱の世界に、大切なモノを守るべく煌めく銀光
「永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術継承者、高町恭也。行くぞ!!」
軽やかに翻る鮮やかなる女神達。
「誰にケンカ売ったか教えてあげるわ! TA−29、打撃戦艦(スーパーストライク)ヤマモト・ヨーコ! ゲットレディ、GO!!」
全てを無に帰さんとする漆黒の堕天使。
「時の流れを垣間見よ・・・! アキシオンバスター、デッド・エンド・シュート!!」
疾風と共に現れし、白銀の魔神。
「シュウ! てめぇの好きにはさせねぇぜ!!」
「あなたも懲りない人ですね、マサキ。」
黒き月に集う神の名を冠したモノタチ
「裏切ったな!? 父さんと同じで、僕の気持ちを裏切ったんだ!!」
「さあ、僕を消してくれ。そうしないと、君達が消えることになる。」
戦乱の世に、生まれ出でし人形達。
「俺は、俺の大切な人が生きるこの世界を、守り抜いてみせる!」
「ま、世界を守るなんて大層なことは言えねぇが、身の回りの人々くらいは守ってみせるさ。」
「“約束”したからね・・・。その約束を果たすまで、私は死ねないのよ!!」
そして、降臨する金色の破壊神
「ゴルディオンハンマー、発動、承認!」
「了解!ゴルディオンハンマー、セーフティデバイス、リリーヴッ!!」
「ハンマーコネクト!! ゴルディオンハンマー!!」
「ハンマーヘル!! ハンマーヘブン!! EI−01よ、光になぁれぇぇぇっ!」
今、ここに遥かなる戦いの幕が開かれる・・・。
「Super Robot Wars DoLL」・・・coming soon
98
:
勇希晶@NPC
:2007/08/18(土) 21:40:54 HOST:aa2007051639d2f97e0e.userreverse.dion.ne.jp
「Who's he Marry for the future?」
結婚。それは人生で尤も輝ける瞬間。
Marriage.それは多くの女性が夢見る幸せの証明。
結納。それは一部の男性にとって人生の終わりを意味する悪夢の証明。
そんな瞬間を、某所にて今一人の男が迎えようとしていた。
???「ほら、お兄ちゃん! もっとちゃんとして!」
???2「お、おう」
某所にある結婚式場の控え室。
そこに、一組の男女が居た。
男の方は白いタキシードに身を包み、少女の方はその流れる様な黒髪が生える様に純白のドレスを着ていた。
男「しかしなぁ・・・本当に俺でいいのか?」
少女「今更何言ってるの。お兄ちゃんじゃなきゃ駄目だって言ってもらったんでしょ?」
男「う・・・いや、まあ、そうだけど・・・・・・」
プロポーズの瞬間を思い出したのか、僅かに頬を上気させる男。
少女「それに、お兄ちゃんが選んだ女(ひと)だもん。私は大丈夫だよ?」
男「いや、でもなぁ・・・・・・」
なおも言い渋る男。と、その時ドアが開き一人の人物が入ってきた。
???「テン、そろそろ・・・」
入ってきたのは眼鏡をかけ、普段は纏めている長い髪をストレートにし、何故か男物の礼服を着ている凛々しい女性。
テン「あ、ししょー。もうそんな時間なんですか?」
女性「まだ時間はあるけど、一応式の前に見ておいた方がいいんじゃないかと思ってね」
テン「えーと、予想はつきますけど、何を見るんです?」
女性「無論、あなたの生涯の伴侶となる人の花嫁姿よ」
そう言い、女性は軽く片目をつぶる。
テン「いや、大丈夫ですよ。実際に式で初めて見たh」
少女「あ、それ私も見たーい! きっと凄く綺麗なんだろうなぁ」
女性「ええ。先程一足先に見てきたけど、普段とは見違えるくらいに綺麗だったわよ」
テンが喋っている途中に割り込み目を輝かせる少女ににこやかに微笑む女性。
少女「詩紀さんずるい〜」
詩紀「ごめんね由愛。やっぱり、興味を抑えきれなくて。」
むぅ〜、と頬をふくらませる由愛と、悪戯がバレた子供の様な笑みを漏らす女性。
実に微笑ましい光景である。
テン「・・・・・・つーか、俺ガン無視されてませんかー・・・?」
ボソッと呟くテンだったが、二人は今し方詩紀が見てきた花嫁のことで盛り上がり最早聞いてはいなかった。
テン(逃げるなら、今の内かなー・・・)
99
:
勇希晶@NPC
:2007/08/18(土) 21:41:58 HOST:aa2007051639d2f97e0e.userreverse.dion.ne.jp
三分後。
詩紀「・・・さてと。それでは行きましょうか。・・・・・・テン?」
由愛「そうだねー。・・・・・・ってお兄ちゃん?」
一頻り盛り上がったあと、いざ新郎を新婦のもとへ連行(誤字に非ず)しようとした二人だったが、そもそもの新郎の姿がないことに気付く。
詩紀「・・・まさか、逃げた?」
由愛「あ、あはは・・・流石のお兄ちゃんでもそれはない・・・・・・と言いきれないかも。」
ヘ○○キ○グだし、と物凄く小さな声で付け加える。
詩紀「全く、世話が焼ける弟子ね。連れてくるから由愛はここで待ってなさい。」
由愛「・・・・・・・・・」
一つ溜息をつき、詩紀は不肖の弟子を捜し始めた。
一方。
テン「・・・しまった。ここは・・・」
適当にうろついていたテンは、4つの扉が並んだ廊下の前に立っていた。
テン「・・・・・・・・・・・・・・・どうしよっかなー」
廊下の前に立ちながら、テンは考える。
出来れば式前に覗くのは遠慮したいところだったが、ここまで来てしまった以上覗かないと言うのも微妙にヘタレすぎる気がする
記憶が確かならば、4つの扉のどれかが“アイツ”の控え室になっているはずだ。
だが、何故かそれに関する記憶が欠如していた。
テン「・・・・・・・・・・・・・・・どれだったっけ?」
記憶の糸をたぐるが、やはり思い出せない。
テン「・・・・・・・・・確率は1/4、か」
さて、テンが取った行動とは―――
1.折角だから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!
2.確か、この茶色の扉だった気がする・・・。
3.銀の縁取りがされてる扉、だったっけ?
4.オレンジ色の扉、って事はないよなぁ・・・
5.分の悪い賭けは嫌いなので逃走、否、戦略的撤退。
100
:
きつぐ
:2007/08/20(月) 23:42:32 HOST:SSJfa-02p5-10.ppp11.odn.ad.jp
「1. 折角だから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!」の場合―――
テン(何が折角なんだろう・・・・・・というか、同じ建物内なのに扉の装飾が違うのは何故?)
それに選択肢が5つあるってことは確率は1/5ってことなんじゃないのか?とか思いつつ、
赤の扉に手を掛け、開ける。
―――ノックもせずに・・・・・・。
???「え・・・・・・・・・・・・?」
テン「――――――――うん、確かに綺麗だな・・・・・・・・・」
飛び込んできた“あいつ”を見て、“うんうん”と頷いてみる。
???「え・・・・・・ちょ・・・・・・あれ?」
テン「ただ、一点だけ気になってるのが・・・・・・」
まぁ、こっちがノックしなかったのが原因なんだろうけど、
テン「その格好で出るの?」
???「―――――っ!?(////)」
お色直しの練習なのか・・・着替え中っぽい彼女がいた。つか、周囲の人の目が痛いなー・・・。
テン「はは、ははは、なわけないよな・・・・・・」
???「―――――――(プルプルッ)」
テン「え、えーと、何故震えてらっしゃるのでしょう・・・?フィーネさん」
フィーネ「・・・・・・・・・如月・・・言い残すことがあれば、お聞きしますが?」
あれ?なんか、すごい拳を握ってらっしゃる?射撃キャラのはずなのに近接戦闘もこなすなんてすごいね、お嬢。なるほど、言い残すことか。あ、いつもと髪型違うんだ。雰囲気変わると結構くるものがあるね。驚きだよ。あは、あはははは、何を言っても事態は好転しないよね・・・でも、一応言っておこう。
テン「・・・・・・んーと、今日くらいは大目に見てくれない?」
やっぱりダメでした。
――数年後――
テン「―――――はっ��(゚ロ゚〃)」
どうやら、うとうとしていたらしい。最近、ハードな仕事が多かったから、疲れが溜まっているのかもしれない。まぁ、現在進行形なのだが・・・・・・。
テン「つか、こんなデータ取って来いって・・・・・・お偉方の考えることはよくわからないなぁ・・・・・・」
目的の――何か、意味のある数字の羅列なのだろうが、テンにはさっぱりわからない――データの書き込みが終わりPCから吐き出されたメディアを懐に入れ、さっさとトンズラここうとして―――
ふと、背後に殺気。
テン「しまっ―――!?」
迫る凶刃。絶体絶命の危機。というか、名無しキャラに殺されようとする主人公。いや、前代未聞ですよ。ゲームオーバー画面まで一直線。しかし―――
???2「どろっぷきっく〜♪」
そんな間抜けな声と共に、窓ガラスを砕き、乱入する新キャラ。そして、諸に喰らい吹き飛ぶ名無しキャラ。
テン「・・・・・・・・・・・・は?いや、待て、脳の処理が追いついてない」
テンの思考を置いてけぼりにして、その凶悪な攻撃を放った娘がニコニコと振り返る。
???2「お父さ〜ん、大丈夫だった?」
テン「あぁ、助かったよ」
その愛娘の笑顔を見て、ホッとする。しかし同時に心配になった。
テン「けどなぁ、一姫(かずき)。父さんの仕事は危ないからついて来ちゃ駄目だって、あれほど言っていただろ?」
一姫「え、えへへ〜・・・・・・」
テン「まったく、いつの間にそんなに気配の消し方うまくなった・・・・・・」
一姫「・・・・・・え〜と」
テン「・・・・・・おい、まさか」
一姫「その、まさか」
一姫がいたずらっぽい表情をする。
テン「双葉(ふたば)ぁっ!!」
すると、一姫と瓜二つの顔をした娘が闇の中から現れた。一姫の妹、双葉だ。しかし、その性格は正反対。一姫がニコニコ笑いながら嬉しそうに率先して攻撃するのに対し、双葉は静かに忍び寄ったり、援護したりするのを得意とする。
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