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【事前】応援スレ

1ふぁく@GK:2022/07/21(木) 17:50:10
キャンペーン開始前ですが、応援イラストやSS等がありましたらこちらに貼ってくれるとGKが泣きます。

2Range:2022/07/21(木) 22:56:01
ダンゲロス・オーバーランの時に描いたものですが、転校生5名のイラストをこちらにも掲載します。
ttps://twitter.com/dreamphoto_33/status/1427997640151556103
ttps://twitter.com/dreamphoto_33/status/1427997644442390536

3ふぁく@GK:2022/07/22(金) 20:05:14
>>2
・ウマイモン
プロポーションがマジでいい!
これは女子の嫉妬の的ですよ

・三羽
あ、アホっぽ〜〜!
アホ毛の自己主張が激しすぎる

・半崎
これは典型的なYankee
しかし悪そうだ。街中で絡まれたら絶対チビるより笑う

・ミーシャ
二郎系のカラーリング!あの黄色いやつ!
これの女が脂を血管注射してるのは絵柄的にマズいっすよ!

・ハスラー
これは……!
この凛々しい目は自分の字が下手なのを確実に恥じてますよ……!
サインを目の前で他の人たちに見せつけてえ……!

4ふぁく@GK:2022/07/22(金) 20:08:07
このように他のキャラの応援を投稿すると、

・投稿者:感想が貰えて嬉しい
・キャラの中の人:自キャラを書いてもらえて嬉しい
・GK:キャンペーンが盛り上がって嬉しい

……と三方良しが生まれます。
みなさん、どうぞ応援をたくさん作ってね。
感想も自由に書いていってね。
そのうちGKもなにかしら投稿するかもしれん!

5あんばー:2022/07/23(土) 01:12:54
 空は絶好調、透き通るような青空の下、俺は1人窓の外を眺めていた。いつも通りであればなんの変哲もない校庭が眼下にある。だが、現状は全く持っていつも通りとは乖離していた。
整備されたとは思えないほどに荒れ果てた校庭では、暴徒化した生徒たちが乱闘を繰り広げている。その横にあるちょっとした花壇の花たちに隠れて愛を紡ぎ合う生徒たちもいる。…まさに、地獄。その形容が相応しいのだろう。
「やれやれ、皆焦りすぎだろうに。諸行無常、盛者必衰、人間なんていつか死ぬ。それが今ってだけだろう?そも、確実性のない噂に踊らされるなんて馬鹿らしいね」
「…そういいつつも、"いじょうしゃ"さんはこんなところで籠城してるんですよね…や、やっぱり死ぬの、怖いんですよね…?」
微妙に引きつった笑みを浮かべながら目の前の女子生徒が小首をかしげる。目の下のくまさえなければかわいいだろうに。
「そりゃそうだろ。もし恐怖の大王サマとやらが来て人類滅ぼすってんなら甘んじて受け入れますがね。俺は同じガッコの生徒に殺されるなんてヤだよ?それがたとえ小競り合いしあってた奴らだとしてもさ」
「あたしは…よく、分かんないです…死ぬとか…殺されるとか…怖い、んですかね?痛いの、楽しいですけど…」
「君、俺のこと異常者って呼ぶ割に自分もそこそこヤベー奴ってことに気付こうか」
「あはっ…そうですあたしヤベー奴ですもんね、じゃあヤベー奴同志気が合いますね…!」
眼を輝かせる女子生徒。…彼女とここにいるのはもう3日目だ。プール隣接の男子更衣室でよかった。シャワールームがあるのはここくらいだし、女子生徒の着替えを見るのは流石に忍びない。
 彼女は俺がここを選んだ時に滑り込みで一緒に入ってきたのだ。追い出すのもかわいそう…という理由で一緒にいるが、正直ペースが乱される。女の子と一緒の部屋でよく平気でいられるな、とか言われるかもしれないがこんなに病んでそうな子相手に性欲が沸くほど俺は嗜虐思考ではない。
「いっ、"いじょうしゃ"さん!外凄いですよ、奇抜な人たちときっちりした人たちが殴り合ってます…!あ、あたしもいったら…」
「馬鹿なことは考えないでくれ頼む。ここで出てったら俺まで巻き添え喰らうんだからな?」
彼女の言う奇抜な人たちときっちりした人たちとは、恐らく番長グループと生徒会だろう。このまま行くと本当に全面戦争でも引き起こしそうだ。かくいう俺もその一員なわけだが。
「馬鹿なこと…っていってても、"いじょうしゃ"さんはやっぱり"いじょうしゃ"さんなんですね…もうナイフ握っちゃって…せ、せっかちさんです」
「おっと、俺としたことがついうっかり〜」
ベルトに差していたナイフに自然と手が伸びていた。危ない危ない。
「"いじょうしゃ"さんは、ひっ、人を殺したり…したいのです?」
「いや?全然。俺にそんな不良思考、ないよ。新しい程バグが出やすいが、俺はかなり古いからね」
「…?おじいちゃん、ってことですか?」
「齢17の思春期高校生になんてこと言うんだ君は…」
この年でおじいちゃんはきついものがある。俺だってまだ若いんだ。
「そ、そうですよね…"いじょうしゃ"さん、お身体も若いですし…鍛えられてますし…美味しそうですし…」
「…俺を食っても不味いだけだぜ?」
「わわ、分かってますよ〜…魔人さんは美味しい人と美味しくない人に分けられますからね…えっとどれどれ…"いじょうしゃ"さんは美味しくないタイプ、です。多分たべたらお腹、壊しちゃいます」
本気か冗談か、でも目はマジなんだよなあ…しかしそういった判別ができるってことはやっぱり彼女も魔人か。能力は分からんが。

6あんばー:2022/07/23(土) 01:13:55
「しかしなあ、いつまで続くのかねこれ」
「どうでしょうか…皆死ねば終わりますよね…?」
「君、物騒なこと言うなあ」
だがそれもまた解決法の一つだな。まあ、ここにいる奴ら全員仕留めるとかムリゲーにもほどがあるのだが。何せ魔人ばっかだ。こっちが返り討ちに合う可能性のほうが高い。
『キエエエエイ‼』
『イヤーッ!』
『グワーッ!』
『アイエエエ!??』
外から断末魔のような叫び声が聞こえてきた。大変賑やかだ。ばしゃっとかぐちゃっとか水っぽい音がたまに瑕だが。
 そんな叫び声たちを肴に、俺と女子生徒は缶詰を食っていた。保存食を数個持ち込んでおいて助かった。だが、既に残り少なく頼りない。
「明日明後日で食料尽きるから、俺外にでていろいろ補充してくるよ。君はどうする?」
「あ、あたしも行きますかね…へへへ、危ないからついていかないほうがいいですかね…?」
「別に俺は君を守るつもりは毛頭ないからついてきても構わないよ」
「おおうっ…じ、自分くらい守れるので、大丈夫ですよお…」
本当だろうか。少々心配だ。…ま、死んだら目覚め悪いし少しは守ってやるかな。そう思った直後、それは鳴り響いた。
 厳かで、それでいて畏れを抱かずにはいられない轟くような声に俺も女子生徒も耳を傾けていた。
『殺し合いをするならば、しかるべき『時』と『場』を定めよ……』
『さすれば闘いは次の段階へと進み、神々はそなたらを認めるであろう』
木霊した声は直接脳内に語り掛けるような、そんなものだった。頭に響く不快感に襲われ、俺は思わず倒れかけた。
「だ、大丈夫ですか…?」
「ああ…てか、殺し合いって…俺たちゃ安全圏でガクブルしてただけなんだけどなあ」
まあ声が聞こえただけだし、何にもないだろう。そう思った俺は浅はかだった。
 校舎の窓から見える光景が、光に染まっていた。何も見えない。…どうやら、俺たちも対象になってしまったようだ。―ああ、そうか。俺は小競り合い…ひいては殺し合いに発展しかけていたあの2大巨頭に一応所属してたな。
「あ、あれ…ここ、どこなんですかね…?」
「…君もか。ここがどこなのか、それは俺が聞きたいなあ」
女子生徒も来ている。彼女もまた、あの2大巨頭に所属していたのだろう。全く想像がつかないが。
「…えっと、"いじょうしゃ"さんはどちらに―」
「それは言わないでおこうぜ〜。ここで敵同士って分かっちゃったら、俺君を殺すしかないからさー。一応3日寝食を共にした仲じゃないか」
「…そうですねっ、友達…えへへ」
…解釈は違えど理解はしてもらえたようで何よりだ。
「とにかく、一旦ここから出ようか。もう外もうるさくないし、情報も欲しいし」
「じゃあ、あたしはちょっと休んでから行きますね…」
「おーけー、気を付けなよ」
俺は重い腰を上げ、板の打ち付けられた扉に手をかけた。
「じゃ、またあとでな」
「はい"いじょうしゃ"さん。願わくば、味方で会いたいですね…うふ」
こちらとしても、そうしてもらいたい。俺は板を引きはがし、更衣室の扉を開け放った。

ながすぎって言われたのでわけまみた

7ふぁく@GK:2022/07/23(土) 08:10:50
>>5
おっ、長編SS一番乗りの投稿だ!やったぜ!
"いじょうしゃ"さんと女子生徒の交流、外で緊迫感が漂いつつもなんだか甘酸っぱい匂いがするね。
ただ、女の子の方は平気な顔をして人を喰いそうな危うさがあるんだよなー。
こっちの女の子か"いじょうしゃ"さんのどっちかがキャラとして投稿されるのか?備えよう。

なおここだけの話ですが、ダンゲロス本戦のSSなんてものはそこまで肩肘張って書かなくても、10行くらいの文量でも十分嬉しいです。
なので今回投下してもらった作品は、ダンゲロス本戦的には巌窟王並みの長さとクオリティということになります。すげえな。
コピペ改変SSとかでも全然いいのでたくさん投下してもらえたらいいなあーと思っています。
もちろん長くてしっかり書かれてるのも読みたいけどね!

8あんばー:2022/07/23(土) 09:28:46
感想うめ…うめ…
長文失礼しゃっしたッ

9名無しのダンゲロスプレイヤー:2022/07/31(日) 23:32:51
さすらいのハスラーは、さすらいの賞金稼ぎである。
さすらいの末に、今や時空を超越した『転校生』だ。
さらには―『転校生』の領域すらも踏み越えようとしている。

♪〜 ♪〜

「スナッカ〜。その曲流すのやめてよ。流石にキショい。」

そう言いつつ脂を血管に注射するお前は輪をかけてキショいぞ、という言葉をハスラーは呑みこんだ。

「え〜っと?何だっけ?」
「ダボッ!ダボダボ!」

こいつらはキショいを通り越して痴呆だな。ハスラーは腐っても仲間である男子二人に早々に見切りをつけた。

(マトモなのは、私だけか…)

そう思いつつ、キューをしごく。そのハスラーも、気付いていない。気付いていないことそのものが、彼女がマトモであることを否定している。

「…………………………………」

沈黙したスナッカーの背後に、巨大なそれは立っている。明らかにそこにいるにも関わらず、超常の『転校生』の誰もがそれに気付いていない。あるいは目を逸らしているのか。

ソレは睥睨し、宣言する。
「殺し合いをするならば、しかるべき『時』と『場』を定めよ……」
「さすれば闘いは次の段階へと進み、■■はそなたらを認めるであろう」

ソレは、逆再生された曲によって召喚された悪魔。
―あるいは、『恐怖の大王』。

この先、DANGEROUS。■■の保証なし。

10HDあき:2022/07/31(日) 23:34:03
上の奴出したの当方です。暇に飽かせて書いた転校生SSのような何か。
それっぽいだけなので何も考えていません

11ふぁく@GK:2022/07/31(日) 23:45:10
>>9
キバヤシ「そ、そうか……!わかったぞ!『逆再生の悪魔』は『恐怖の大王』だったんだ!」
MMR隊員ズ「な、なんだってー!?」

なんと……。これはたしかに盲点!確かに悪魔は恐怖の大王っぽい!
これが創作の醍醐味よ……。点と点を繋げて線にしていく楽しみが味わえるのが、ダンゲロスの良いところ!

そして、さすらいのハスラーさん、かなりクールぶっていていいね……。
男性陣は完全にアホだし、ウマイモンとミーシャは食に狂ってるしで統率が大変そうだ。
こいつらが本戦でどのように暴れてくれるのか、今から楽しみでなりません。

12あんばー:2022/08/01(月) 00:46:44
注意・正直気持ち悪いかもなのでカニバるの嫌な人はオヌヌメできぬ
   ちょっと戦闘があった後のお話。戦闘内容は3pくらいあるのでまた後日
   うちの子のことしか書いてねえのは許して…

 目が覚めるとそこは保健室だった。どうやらベッドに寝かされているらしい。扉に目をやると、板が打ち付けてあった。
「…目が、覚めたみたいでよかったです…おはようございます」
「おはよう…助けてくれたのか。悪いね」
「い、いえ…もとはあたしの不注意でしたし…ごめんなさい」
正直あのまま倒れてても死ぬことはなかった。敵方にとらわれる可能性も限りなく低かった。…まあ、現状が俺にとっての最善であることは理解している。
「そ、それにしても"いじょうしゃ"さんはお身体の回復が早いんですね…!」
「まあね〜。これでも一応魔人だからな」
「じゃ、じゃあ…その…」
何故か女子生徒は言いづらそうにうつむいている。だがその顔が異常なまでににやけている。…というか息が荒い。
「少しくらい食べても…いいですよね?」
「―――は?え、いや俺不味いんじゃ…」
「ごめんなさい…今はまずくても食べないとちょっと…あたし、おかしくなりそうで…というかこのままだと爆発しそうで…えへへ」
十分おかしいぞ、という言葉を飲み込み。まあ、助けてもらった恩義もあるしで俺は渋々承諾した。爆発されても困るし。
「で、どこ喰いたいんだ?」
「い、いいんですね!それじゃあ…いただきます…」
話を聞け、というよりも早く。彼女の口が俺の腹にかみついた。
「いっ――?!」
ぐさり。犬歯が突き刺さる。ぷつり。皮が破け肉に刺さる。瑞々しいまでの朱、迸る鮮やかな赫。痛みのあまりに呻きそうになるのを俺は必死にこらえた。―ああ、確かに腹部は肉が多く集まるとこだよな…腕とか顔とかくっても不味そうだしな…うん、妥当か。
 そんなことで気がまぎれるわけもなく。彼女の咀嚼音と俺の荒い息遣いが部屋の中に木霊した。
「はっ…あ、ご馳走様でした…やっぱり、あんまり美味しくない、です」
「君ねえ…折角、食わせたんだから、お世辞でもうまいって言ってくれよ…」
「ご、ごめんなさい…あ、血が垂れちゃいます」
どうやら食べ終わったみたいだ。ふっと一息…つこうとしたその時。なにかざらざらとした感触が俺の脇腹に走った。
「ひっ…ぁ」
「あ…血が、もったいないので…お行儀、悪いですけど…」
再び走る感触。…もしかして、なめてるのか?
「んっ…ぅあッ…」
ヤバイ。普通に声抑えられない。抉れた腹に舌が這うのも痛いが、それ以上に…
「はっ…あくっ…」
ぐっと歯を食いしばって何とか耐え抜こうとしたが逆に変な声が出た。
「あ…もう、大丈夫、です…ありがとうございました…えへへ」
「そいつぁ…よかったな…」
「あ、抉れたところは私の力で埋め合わせておきました…最初は赤くて気持ち悪いかもだけど…そのうち見た目は大差なくなるので…」
何埋めたんだよ…まあいい。とにかく。
「悪い、ちょっと出てくる」
「お、お身体に障らない程度にしてくださいね…?」
「出るっつっても、すぐそこだから大丈夫だよ」
さっきので、思いっきり体が熱くなってしまった。少し冷まさないと、だ。

13ふぁく@GK:2022/08/01(月) 12:55:20
>>12
人喰いだァ〜〜〜〜〜〜!!もうこれエロじゃん。
描写が生々しい!飯食ってる時に読んだけど、なかなか来るものがあるね……。
後編(?)の戦闘編も楽しみにしてまっせ!

14あんばー:2022/08/02(火) 10:59:31
「時空の狭間ねえ…」
さっきからいくつかの扉を開けたりしているが、同じ扉を複数回開いても違う場所につながることが多々ある。空間の繋がり方が混沌としたこの世界、まともに視ていては正気を失いかねないな。
 そんな狂気の空間を破る様に、風斬る一矢が目前に突き刺さった。殺気はない。矢羽根に括り付けられた白い紙、どうやらこれは矢文のようだ。味方の伝令だろう。
「伝え方が旧式だなぁ―うおっ」
殺気がぞわりと背筋を駆け巡る。俺は瞬時に飛び退いた。
 暴力的な固い音が響き、俺の立っていた場所に箒が叩き付けられた。リノリウムの床と接触した箒は、接触部から可愛らしい星がばらまかれている。―問題は、持ち手部分が叩き付けられているという殺意マシマシの攻撃であったということで。
「誰かと思ったら…めてお☆じゃないか」
「冥帝王だッ!…ごほん、よお富戸《ふと》3日ぶりだな?テメーがこっちに来てるって聞いていてもたってもいられなくなっちまってよお」
とんとんと箒を肩に打ち付けながらめてお☆…もとい冥帝王龍驤《りゅうじょう》は口角を吊り上げる。3日ぶり、というのは3日前彼が俺に喧嘩を吹っ掛けてきたのだ。まあ、弄りまくってたし勢力的にも敵対関係だし妥当と言えば妥当だろう。当然ながら、私闘に付き合うほど俺は暇じゃない。
「そいつは随分熱烈な歓迎だね。俺にフラれたからってまた再突撃か?ったく見苦しいなあ、しつこい男は嫌われるぜ?」
「誰がフラれただっ、ザッケンなオレぁテメーなんぞ好きじゃねー!何回も何回も逃げやがって、今日こそ決着だ!テメーのスカした顔泣きっ面に変えてやんよ。ここなら邪魔は入らねえからな」
ぶん、と振るわれた箒が俺の顔面を指し示す。ちなみに彼が箒を握っているのはお遊びでも何でもなく、アレが彼の武器なのだ。廊下は一本道、今回は逃げられそうにない。
「オレが勝ったら、テメーをオレの犬にしてやる。殺さないだけ恩情と思うんだな」
その手温さに肩をすくめながら、俺は憐れみを顔に浮かべてやる。
「そりゃあありがたいね。じゃあこっちが勝ったら…別に何でもいいや。俺が君に望むことはない」
「はっ、負けたときのための保険か?自分は何も望まねえから優しくしろってか?」
「まさか」
合図もなく、彼は手にした箒にまたがった。瞬間、とんでもない速度でこちらにすっとんできた。少し体を傾け、彼の突進を躱す。俺を掴むために伸ばされた手が空を切った。
 龍驤の能力『星空魔法のめてお☆』は彼が思う『魔法少女がやりそうなこと』を再現してくる。世界に存在する創作物から内容を引っ張ってくる必要はあるが、その再現度たるや驚異の物で、変身シーンまでちゃんとご丁寧にあったりする。箒から飛び散った星もそれだ。当然の如く、当たれば痛いしあの突進スピードは脅威だ。
 再び迫る突進と散らばる星を回避し、俺は力を解放した。全力を出すまでもない。彼と俺では、あまりにも相性が悪い。

15あんばー:2022/08/02(火) 11:01:31
「展開開始――□界葬送・盲鬼」
俺の言葉に呼応して、周囲の空間が変容する。紡がれた言葉はその力を解放し、龍驤に襲い掛かる。物理的な衝撃も、威力も一切ない。だが。
「あ…れ…?テメー、何をした!」
困惑したような彼の声。心なしか足取りがふらついている。まるで、目が見えていないかのようだ。
「何って…君と同じように能力を使っただけさ」
彼は何度も箒を振るうが、星は一切飛ばない。またがれど、飛行することもできない。
 それもそうだ。この空間には、彼の思う魔法少女の創作物など存在しないのだから。否、空間というよりはこの"世界"というべきか。
「目が見えねえくらい、わけねえよッ!」
龍驤は箒を手に殴りかかってきた。…単調、単純、無暗な突撃程避けやすいものはない。余裕をもってその一撃を躱し、すれ違いざまに龍驤の鳩尾へ膝を叩き込んだ。
「う…がぁッ」
潰れた呻き声をあげて龍驤の身体が吹き飛ぶ。まずったな、強く蹴りすぎた。
「ま、終わりにしようか」
ベルトに差したナイフを抜き、俺はうずくまる龍驤へと歩み寄ろうとして…彼女に呼び止められた。
「…あっ、いっ、"いじょうしゃ"さんじゃないですか…!こんなところできぐう…あれ?なんですかあ、ここ…気持ち悪い…」
気持ち悪いって…ひどいな。彼女は十字架のようなものを手に後ずさった。
「俺の力だよ…あーあ、君に見られるとは思わなかった。まあいいや、とりあえず見なかったことにしてくれない?」
「いい、いいですよ〜。あ、"あのいじょうしゃ"さん…一つ、お願いが―」
「これでも…くらえええっ!」
空気を読まない龍驤の声が、彼女の声を遮った。彼が放ったのは手に持った箒。恐らく、目が見えないから音のする方向に投げたのだろう。その魔人ならではの腕力により放たれる豪速箒が、迫りくる。―彼女めがけて。
「っ?!」
彼女は変容した世界から一歩外にいる。そこからは龍驤のよく知る世界であり…魔法少女という概念の存在する世界だ。つまり、箒を振ると威力のある星が飛び散るという彼のイメージがそのまま反映される。箒本体事態も立派な凶器だ。当たり所が悪いと死にかねない。
「君!口を閉じてろ!」
今思えばなんで動いたんだろうな、俺。正直理屈じゃ説明できない。そりゃあ、鍛えてるし頑丈だけどさ。3日間過ごしただけの女の子守るかよ普通。俺は彼女を必要な因子であると認識しているのか…
 彼女を突き飛ばし、真正面から俺は星を振り撒きながら迫る箒と激突した。箒本体は叩き落としたが、飛び散った星が俺の目の前で炸裂する。
窓ガラスに叩き付けられ、割れた破片が俺の身体に降り注ぐ。ざくざくと体を抉るガラス片。ああ、とんでもなく痛いな。彼女は…無事なようだ。瞼が重くなる。ガラス片の痛みは俺の許容限界を超えているらしい。
「庇ってくれたんですかあ…あ、ありがとうございます…えへへ、とりあえず、あの人がまともになる前に逃げちゃいましょう。あのひと、"いじょうしゃ"さんより美味しくないです」
彼女が俺に近寄ってくる。手を取られ、引きずられる俺。どこへ連れていかれるのだろう。そもそも、彼女は俺の味方なのか?それとも…

→12
また長文ダラ書きして申し訳ない!反省はしているのです…

16ふぁく@GK:2022/08/02(火) 17:46:12
>>14-15
謎の新キャラが出た!
なんか領域展開っぽいのもしてるし、全員に能力が設定されているということか……。
一体どのキャラが投稿されるんだ!?(一体どのキャラが投稿されるんだ!?)

17団子:2022/08/13(土) 20:26:59
権田原金満(ごんだわら・かねみつ)は我が身に降りかかった不運を呪うほかなかった。

──なぜインテリジェンスの権化たる儂がこのような最期を迎えねばならんのだ。

埠頭の倉庫の外壁に両手足を杭のようなもので串刺しにされたまま金満は苦痛に呻く。
東京湾の一角を密やかに占める密輸港は絶対君主金満の城であった筈。
それが今や世紀末の現代東京に蘇りしゴルゴタの丘である。
眼前には光化学スモッグが分厚く垂れ込める茶褐色の空。眼下には赤潮に喘ぐ白波。
資本主義と成果主義がひり出す糞山の腐臭に包まれ、金満の命の灯は消えかかっていた。
ちら──と。
自らを磔にした襲撃者の姿を横目に窺い、金満は嘆息する。
豊満な胸と艷やかな黒髪のあいだに埋もれた襲撃者の顔から汲み取れる感情はない。
大方、損得勘定もできなければ世の中の仕組みも理解していない狂人なのだろう。

──結局のところ優れた君主を殺すのはいつの世も無知蒙昧の愚者ということか。

この世で最も優れた力は知性であり、次に優れているのはその知性が産む金である。
その信念の元、金満は巨大麻薬密売組織の長にまで成り上がった。
己の知性を十全に発揮し、政府も警察も、敵対組織にすら便宜を図ってきた。
無用な争いなど莫迦のすること。
あらゆる相手にとって己が欠かせぬ価値を持つ存在であるよう立ち回ってきた。
理屈で云えば誰かに命を狙われることなどない──筈であった。
それが御覧の様とは、げに恐ろしきは理屈の通じぬ輩である。

「おうい、お嬢ちゃん。今からでも考え直しちゃあみんかね?」

貫かれた手足の激痛を奥歯で噛み締め、金満は嗄声を絞り出した。最後の賭けである。
死神めいて傍に立つこの女が、狂人であれ、愚者であれ、俗物でさえあれば。
そこに交渉の余地がある。

「金なら幾らでもある。儂が死ねば喪われる金だ。そいつを工面してやっても良いぞ」

女の代わりに東京湾で砕ける白波の音が応えた。遠く汽笛が響く。
茶褐色の毒霧に包まれた昼なお昏き魔都東京の潮風に、金満最後のチップは呑まれた。

「……駄目か。やはりお嬢ちゃんは物事の道理を弁えておらんと見える」

諦観した金満は腹を括ると、首を伸ばし女の顔を覗き込む。
女は手元で火を熾し、なにやら金属の板を熱している。用途は考えたくもない。
拷問か、苦痛の大きな処刑方法か、いずれにせよ至る末路は同じ。
己が死ぬのは最早致し方ない。だが無抵抗のまま死ぬのも業腹である。
ならば嫌がらせのひとつでもして、相手の心に瑕でも遺さば万々歳と云うもの。

「おうい、なあ、お嬢ちゃん。あんた、儂を殺せば世の中が良くなると思っとるのか」

金満は返事を期待せず女に声をかけ──。

「正義の味方気取りか。正義に酔いしれとるのか。だがそりゃあ──あァがッ!?」

直後、左手を焼く痛みに喉を痙攣させた。掌に焼けた鉄を押し付けられたのだ。
指紋や掌紋を潰す気か。この女、素人ではなく裏渡世の住人──金満の思考が加速する。

「……なあ、お嬢ちゃん」

息も切れ切れに、それでも金満は言葉を続けた。
暗殺者を雇って自分を狙う可能性のある者を記憶の中から探り、空振りに終わる。
であるならば、この女の正体は。

「あんた、『掃除』を請け負ううち、自分が正義だと信じ込んじまったのか」

右手に焼けた鉄板が押し付けられる。ジュウと皮が縮れ肉が焼ける音がする。
痛みは既に感じなくなっていた。捨て台詞を遺すには都合が良い。

「愚かだな、あんた。仕事人が依頼主もなく仕事をするなんて勿体無い」

ヒョウと風切り音が走り、左耳が削がれた。耳紋も残さぬ気らしい。

「そんなに正義を振り回したいなら、警察官になれば良かったろうに。
 世の中を変えたきゃ、官僚でも目指せばよかったろうに。無理だったか。
 そりゃあそうだ。あんたじゃオツムが足らん。正義の成り損ないめが」

ヒョウ。右耳が落ちる。潮騒が遠退いた気がする。目の前が霞む。霧も濃くなってきた。

「所詮、愚かなあんたにゃ、誰に見向きもされん狂った正義しか振り回せんよ。
 否定するなら、警察でも国会でも、この国の本物の正義の前で同じことをやって──」

両目を抉られ、不意に視界が黒く塗り潰された。血涙が頬を濡らす。
次は当然、個人識別に欠かせぬ歯型の除去に取り掛かるだろう。お喋りもここまでだ。
だが、言いたいことは言い切れた。
あとは自分の居ない世界で、少しでもこの女が煩悶してくれれば願ったりである。

「じゃあな、『御手洗団子』」

金満は闇に向かい、思考の果てに導き出した女の正体を口にして、己が死を待ち構えた。

18団子:2022/08/13(土) 20:27:27
>>17 の続き

だが、次の瞬間に訪れたのは前歯をへし折る不快感ではなく──。

「竹串から当たりをつけましたか。『インテリジェンス金満』の渾名通りです」

最早ただの穴となった耳元で囁かれる女の声であった。

「ほおう、やっと口を利いてくれたか」

金満は安堵した。自らの才覚を最期まで発揮できたことは称賛に値するだろう。
手足を貫く杭のようなものが肌触り──否、肉触りから竹製であること。
人を磔にするには細身であることから、杭の正体に思い至ったのだ。
京都嵐山にて自生するバイオバンブーから作られた竹串。それを置いて他にない。
ライフル弾をも跳ね返す彼の竹の頑丈さは知る人ぞ知る驚異である。

戦国時代、二丁のライフル銃で獲物を過たず仕留める伝説のスナイパーが居た。
その名をゼンジュボ=スギタニ。
彼が生涯唯一狙撃に失敗した獲物こそ天下の大名、ノブナガ=オダだったと云うが。
ゼンジュボのツインスナイプを弾き返し、ノブナガの身を守ったものこそが──。
そう、嵐山のバイオバンブーだったのである。
金満は溢れるインテリジェンスの導きにより、この故事を記憶から掘り起こしたのだ。

そして──。
そんな物を使う裏渡世の者を絞り込んだのだ。
そんな者は当世、亡き江戸幕府の公儀隠密「たまより」の「御手洗団子」だけだろう。

「幕府の亡霊が今更、坂東くんだりまで来て何をするかと思えば……。
 お嬢ちゃん。あんたのやることには大義も、正義もありゃせんよ……」

当代の「たまより」の伝承者は理を心得ぬ猪武者だと噂には聞いていたが。
まさか運悪く麻薬の取引現場をその狂人に見られてしまうとは。
そしてその狂人が聞きしに勝る猪振りであろうとは。
万事完璧とはいかないものである。
金満は苦々しく嗤った。
折角、敵の正体を見破ったというのに。
その正体が最も「そうであって欲しくない」相手だったともなると。
才覚を発揮できた充足感だけでは、死出の旅路の六文銭にはちと足りないものだ。
金満の意識は薄れ逝き──。

「向後の仕事の改善点を教えてもらった御礼に。
 餞別に。私からも一言、贈ります」

虚空の闇のずっと奥。吐息が触れるほどの肌近く。
今際の際の金満に囁きかけられたのは、ほんの短い詩であった。

「お日いさんに照らされる正道をうちは歩いているんとちゃう。
 うちの前に正義はない。
 うちの後ろに正義はできる。
 正義はうちの踏みしだいてきた足跡や」

なんということか、それは平安時代の詩人にして哲学者、コタロ=タカムラの詩。
それを金満の捨て台詞──云わば辞世の句への返歌に仕立てた本歌取りである。
迸るインテリジェンス。
これには金満も認めるほかなかった。

「なんだ……少しは話が分かるだけの知性が……あったか」

見事なインテリジェンス。いやさ美事なインテリジェンス。
足りないと思っていた六文銭だが、寧ろ少々貰い過ぎたらしい。

「なら『御手洗団子』……希望崎学園に行け。あの魔人学園に」

既に誰かに届いているかも怪しい、掠れた声で。
金満は命の灯を最期に燃え上がらせ──。

「あそこじゃ今……若いもんが世界の終わりだなんだ騒いで殺し合いしとる……。
 そいつら助けて……未来ある若人助けて……あんたの正義を……押し通し……」

そう言い遺して、事切れた。
果たして彼の遺言は何処かへ届いたのか否か。

「はあ……いややわあ……」

東京湾の埠頭の突端で、繰り返す潮騒に歯を砕く音と女の溜息とが混じって消えた。

〜おわり〜

19ふぁく@GK:2022/08/13(土) 23:03:58
>>17-18
ククク……このSSは戦闘・残虐・胡乱、そして因縁が含まれている完全食だァ……!
8割が権田原金満とかいうデスノートで殺されてそうな暗黒金持ちの一人称視点なのになんか詩文的……!
最後の方に「御手洗団子」という京都弁の女の子が希望崎へと向かったが、投稿キャラなのか!?
それは、このGKと団子さんのみ知るということで、みなさんお楽しみに!!

20団子:2022/08/16(火) 12:25:03
『ビハインド・ザ・ビヨンド』

「御手洗団子」は我が身に降りかかった災難と己の未熟さを呪った。
江戸幕府公儀隠密の末裔として荒事の心得も持ち合わせている御手洗団子だが──。

「オオオオオオオ!!!」

眼前で獰猛な肉食獣めいた咆哮をあげるこの男を正面から相手取るのは無謀というもの。
電柱、ブロック塀、郵便ポスト──あらゆるものを盾として後退の一手を採る。
そして退がりながらも、観る。夜闇の奥から迫る敵の情報を精確に計る。

「オッオオッオッ!!!」

大柄で屈強な体躯。反して丸みの残る面立ち。歳の頃は十六、七。高校生だろう。
振るう拳は電柱をひしゃげ、ブロック塀に穴を穿ち、郵便ポストを薙ぎ倒す。魔人だ。
まず間違いなく、近隣にあると聞く希望崎学園の生徒だろう。
男は御手洗団子と遭遇した時点で肩を怒らせ鼻息荒く、極度の興奮状態であった。
現在、学園が紛争状態にあるという噂は真実だったのだろう、と御手洗団子は頷く。
だが、だからといって──。

「オオオオオッオオッオオッオッパイ見せろオオオオ!!!」

その緊張と不安の捌け口に自分が使われるのは御免である。
ドレスの裾を翻し、猫のように塀の上を駆けながら御手洗団子は嘆息した。
迂闊だった。不注意だった。不用心だった。
「地味」とは程遠い目にも鮮やかなドレス姿で御手洗団子は路地へ飛び降りる。
そもそも御手洗団子が東京に出向いた理由は、表稼業の和菓子屋の仕事である。
格式ある御屋敷の晩餐に招かれたのだ。
無論、招かれた場所が場所だけに、普段着で御屋敷の門を潜るわけにもいかない。
ゆえに御手洗団子は着物ドレス──和服用の反物で仕立てられた衣装で晩餐に参加した。
そう、参加したのは晩餐である。
晩餐のドレスコードといえば正礼装たるローブ・デコルテ。
つまり──肩も、背中も、豊満な胸元も露出させたドレスなのである。

「オッパイぷるーーーんぷるん!!!」

つまり、有体に云って今の御手洗団子の装いは──。
健康で多感な年頃の男子の情緒を粉砕するに十二分の視覚的破壊力を有していたのだ。

──なんや、うちにのぼせるもんなんやなあ。

御手洗団子は速度を落とさず幾度も路地を曲がり、敵の間合・死圏から逃れる。
幸い、ドレスとは云っても裏稼業を考慮して作ったもの。
裾には糊が利いており、足運びの邪魔にはならない。
きつく締めて尚胸元でモルンモルンと跳ねる脂肪の塊に比べれば何をか云わんやである。

「どこいったアアア!!! オレのオッパイイイ!!!」

敵の視線が切れた。
刹那、御手洗団子は意識を切り替える。即ち専守から攻勢へ。

──ようやっと、うちの手番やな。

気配を断ち、男の索敵範囲を予測し、音もなく死角へと回り込む。
御手洗団子が修める殺人術は総て公儀隠密由来の忍の技。
不意打ち、闇討ち、騙し討ち。それが御手洗団子の拠り所である。
正面切っていざ尋常に、と云った試合や敵に先手を取られた死合には向いていない。
だが、こちらが先手を取れるのならば──。
それこそ「転校生」のような規格外が相手でもなければ必ず殺れる自信があった。
男が明後日の方角を窺った、瞬後。
御手洗団子の足が無音で大地を蹴った。

「はぁい、つかまえた♪」

次の瞬間に待っていた光景は血飛沫煙る凄惨な絵図──ではなく。
熱り立つ男の視界を後ろから両手で覆い隠し、甘く囁きかける御手洗団子の姿であった。

「オッ!? パッ!?!?」

突然の事態に、男が困惑の声を漏らした。
いつの間にか脚の力を抜かれ両膝を突いた状態で居竦んでいる自分に、遅れて気付く。
両目が優しく温かく、女の柔らかな手で揉まれ、包まれ、塞がれている。
まるで愛撫でもされているかのような官能が眼球から脳へ直接注ぎ込まれる。
同時に、いつでも両目を潰せるぞと云わんばかりの殺気が脳髄に流れ込む。

「オ、オオオ……おぉ……」

男──揉山文実雄(もみやま・もみお)は泣く子も黙る希望崎学園の荒くれである。
生徒会と番長グループの諍いやら魔人同士の小競り合いに関わるなど日常茶飯事。
そこそこの修羅場を潜り抜けてきた自負を持つ男である。
単純な暴力には屈さぬ矜持があった。
女は己の腕力で奪ってこそと考える野生的な価値観の男である。
純粋な色仕掛けには惑わぬ嗜好があった。
しかし、予想外に高濃度・暴力的な官能と殺意を同時摂取させられた結果──。
文実雄の脳は混乱をきたし、思考停止状態に陥ったのである。

「落ち着いた?」

進むも退くも判断付かず、身動きの利かない文実雄の耳を女の吐息が撫でる。
ついでに背中には圧倒的肉感がふたつ押し当てられている。

「くっ……! オレの負けだ!」

観念。
乱れ切った思考がその二文字に帰結し、文実雄は胸囲の圧力に屈したのであった。

21団子:2022/08/16(火) 12:25:40
>>20 の続き

「ウス。恐怖の大王? って噂ッス。希望崎の中は皆やけっぱちッスね」
「やけっぱちで私を襲わないでください」
「……ッス。でもお姉さん、めちゃくちゃオレ好みで。オッパイデッカイし」
「そないなこと……いえ、そんな風に言われたこと、ありませんよ」
「あ、お姉さん関西の人ッスか、喋り方カワイイッスね」
「はあ……」

御手洗団子は思わず呆れと安堵から大仰な溜息を吐いた。
実戦で玉依流の淫技を使うのは初めてであったが、思った以上の効果を発揮したらしい。
先程まで荒れ狂っていた男が、今やすっかり首輪をつけられた大型犬である。

玉依流二十二揉熟手外法淫技『泡流し』。顔の一撫でがこれほどまでに効果的だとは。

実家が日本有数の古社の参詣道にあり、神聖な森の木陰で育った御手洗団子。
和菓子屋で客商売をして大勢の人と触れ合ってきた身、とはいえ。
酔客の酔いも覚め、悪漢の毒気も抜ける清浄の地を訪れる者は羽目を外すことも少ない。
これまで自分の容姿に誑し込まれる客もいなかったものだから、

──うちに淫技は向かんのやろなあ。

そう考えて生きてきたのだが。
これなら積極的に活用すれば裏の仕事がもっと楽になるか、と自らの評価を改める。

「お姉さんコッチには観光ッスか? あのオレ、東京案内できるッスよ」

それにしても今回の遠出は緊急事態の連続で気が抜けない。御手洗団子は溜息を重ねた。
乗り物が苦手な御手洗団子は此度の東京遠征、五日がかりの徒歩行でやってきている。
電車にしろ自動車にしろ運転──他人の手に自分の命を預けるのが苦手なのだ。
だから表稼業も裏稼業も京都以外で仕事をすることはなかった。
それを先方たっての希望により、例外的にやってきてみればどうだ。
以前より「機会があれば」と依頼されていた「掃除」の標的、権田原金満と鉢合わせ。
奇跡的に標的が無防備な状態だったゆえに仕掛けられたが、薄氷を踏み渡る仕事だった。

──これで依頼主さんも「終い」やな。

しかも掃除の依頼主は濃溝空道(のうみぞ・そらみち)。悪評高い政治家である。
失言王。失笑王。公約達成率0%の男。国会をサーカスと勘違いしているピエロ。等々。
衆愚政治の象徴と云える存在であり、金満の援助がなければ即日失脚する間抜けだ。
それが主従関係を見誤ったのか狂ったのか、自分の命綱を斬る依頼をしてきたのだ。
それも普通郵便の封筒で。莫迦である。郵便局員に見られたらどうする気だったのか。
だが、莫迦も突き抜ければ賢者の裏を掻く。
あらゆる奇跡が作用し、金満の情報網・防衛網を掻い潜り、仕事は成ってしまった。
事実上依頼主を「殺す」ことになる仕事を遂げるのはあまり気分が良いものでもない。
この胸のつかえを取るためには──。

「どうッスか? 迷惑かけたんで、缶ジュースくらい奢るッスよ?」
「ん……なら、君の学校に案内してもらえますか?」
「希望崎に? いいけど、ヤバいッスよ? どいつもこいつも殺気立ってて」
「大騒ぎなら、立て籠もりで食べ物に困っている子もいるのでしょう?」
「ハァ、教室とか、いくつかバリケード張ってるとこもあるッスけど」
「私は和菓子屋だから、ちょっとだけ差し入れをしようと思って、ね?」

文実雄と名乗った男の腕を取り、胸で押し撫で、甘やかな声で囁く。
この一期一会の縁に、ひとつ乗っかってしまおうか。

「アッハイ、ヨロコンデー!」

ごめんお母ちゃんオレやっぱり色仕掛けに弱かったわ、と文実雄が従順に声を張った。

22団子:2022/08/16(火) 12:26:18
>>21 の続き

先導を始めた文実雄の背を追いながら、御手洗団子はもう一度考える。
京都に歩いて帰るだけの元気を取り戻すには、やはりこれしかない。
和菓子で笑顔になる子供を見ること。
それが御手洗団子の趣味であり、生き甲斐であった。
先の仕掛けの際、金満は御手洗団子に対し好き勝手なことを並べ立てていたが──。
実のところ。
御手洗団子は自分の裏稼業で人々を幸せにしようなどとは考えていなかった。
むしろ、依頼主が依頼達成の報に喜んだり、笑顔になられるのが好きではなかった。
人々を笑顔にするのは美味しい和菓子の役目である──と。
表稼業の和菓子屋のほうに強い思い入れがあるのだ。
苦労して工夫して努力して、研いで磨いて揉み込んで、ようやく人の笑顔を引き出せる。
それが和菓子だというのに。
ヒョイと人を「掃除」して、同じような笑顔をされるのは甚だ不服なのである。
結局のところ。
色仕掛けでもなんでも使えるものは使うし、必要とあらば菓子に毒だって盛る。
そんな割り切りができる価値観を持つあたりは、間違いなく裏渡世の住人だが。
「掃除」が「菓子」に勝つ世界は許せない。
難しい乙女心、あるいは単純な職人気質。それが御手洗団子の「芯」なのであった。
ゆえにこそ──。

「もしなんかあったら、オレが自慢の魔人能力でお姉さんを守るッスよ」
「自分の身は自分で守ります」
「オレが助けたら一発ヤらせてくれないッスか?」
「……考えときます」
「オレの能力、揉霧戦苦(モンロー・ウォーク)っていうんスけど見ます?」
「なにかあったときのために取っておいてください」

少しでも明るく振る舞おうと、軽口を叩き合いながらふたりは歩を進めた。
目指すは眼前、街灯に照らされ浮き上がる希望崎大橋の、その向こう。
夜の帳が降りて尚妖気漂う魔人の園、希望崎学園。

己が正義のためでなく。
闘争を望むためでなく。
ただ菓子を振る舞うため。
それとほんの少しのお節介に、騒動が早期終結することを願い──。

ひとりのニンジャが、第3/4次ダンゲロス・ハルマゲドンに参戦した。

〜終わり〜



p.s.即興だったので >>17-18 に題字を付け忘れましたが、
『インテリジェンス・マスト・ダイ』と後付させていただきます。

23ふぁく@GK:2022/08/16(火) 14:57:54
>>20-22
ニンジャで……和菓子屋!団子に串が通っているように、暗殺者にも一本芯が通っていた!
完全に舎弟と化した(能力を見せられずに圧死しそうな)文実雄を連れ、ハルマゲドンに殴り込みやぁーッ!

24minion@一×零:2022/08/16(火) 21:57:21
一×零
tps://twitter.com/minion_strife/status/1559514008776224770

25ふぁく@GK:2022/08/16(火) 23:36:21
>>24
こ、これは……!
パンツに食い込んだハミ肉がエッチすぎる……!
このイタコ、エロすぎるだろ!クソックソッ!
しめ縄?で髪を結んでてちゃんと神に仕えるものっぽいですね。
しかしエロすぎるだろ!クソックソッ!


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