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[SS]壊れた大学生の追憶

1ハイドンピー (ワッチョイ 9602-6259):2021/04/10(土) 21:00:23 ID:dTDZPd7A00
7作目です。
これまで同様、世界観は前作までと共通です。
かなり長編になると思いますが、どうかお付き合いください。
よろしくお願いします。

406ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:03:48 ID:oJYj8oY.00


???「そのバナナ…私も頂こう」


ベンベ「誰だべっ!?」

隠れ家の中にいつの間にか入り込んでいたのは、黒いドロドロの物体。

その物体は少しずつ形が変化していき、ディディーコングの姿になった。

???「私はドルボリドル。この世で唯一のディディー族だ」

黒猫「誰にゃ。知らん。バナナはやらん」

黒猫はバナナを抱え込んでムシャムシャと食べ続ける。

ベンベ「ていうか勝手にウチに入るな!」

怒るベンベ。

しかし二人のゴリラたちは、その光景に開いた口が塞がらなかった。

ベンベ「ん?どうしたべ?二人とも。ティーダ、コイツ追い出すべ!」

ティーダ「……ウホ…」

おしり「ディ…ディディー…まさか…」

ベンベ「ど、どうしたんだべ?」

ドルボ「驚くのも無理はない。ディディーコングはかつてドンキーコングと共に過ごしたサル…この世界では千年以上も前にその血は途絶えているのだから」

407ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:05:17 ID:oJYj8oY.00

おしり「ディディー!」

ティーダ「ウホォー!」

二人はドルボリドルに抱きついた。

ベンベ「えぇ!?」

おしり「お前と過ごした記憶…何度も見たぞ…!ディディー…お前はもういないと思っていたが…地上にいたのだな…!」

ティーダ「ウホホ!ウホホ!」

ドルボ「残念ながら私はこの世界の住人ではない。お前の言う通り、この世界にディディー族は存在しない」

ドルボリドルは二人の後ろに立っていた。

おしり「え…いつの間に…」

ドルボ「コンゴジャングル…かつて我々の祖が生きた場所。まだ残っていたとはな」

おしり「…あ、ああ…俺もそれには驚いた…」

ドルボ「かつて存在した土地の多くは名を変えていたり、天変地異などにより分裂、崩壊…そして消滅している。各地にその名残りはあるようだがな」

ドルボリドルはしゃべりながら黒猫のバナナを手に取る。

黒猫「あ!こら!取るにゃ!」

ドルボ「黙れ」

ギラッ!!

黒猫「!」

ドルボリドルが睨みつけると、黒猫は動かなくなった。

おしり「…?な、何をした…?」

ドルボ「さあな。私に恐れをなしたんじゃないか?」

そう言ってバナナを食べ始める。

408ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:06:30 ID:oJYj8oY.00

ベンベ「コ、コイツ…なんかおかしいべ…やっぱり早く追い出したほうがいいべ!ティーダ!」

ティーダ「ウホ…」

ティーダは頭が悪いため自分の親友と先祖の親友を前にどうすればよいか分からず、動けない。

ベンベ「くっ、ティーダがだめならオラがやるべ!うおおおっ!!」

ダッ!!

ベンベはドルボリドルに飛びかかる。

ドルボ「魔法も使えん奴が私に逆らおうとは片腹痛い」

ギラッ!!

ベンベ「!」

またもドルボリドルが睨みつけた途端、ベンベが動きを止めた。

おしり「ま、また…!魔法と言ったな…俺には感じられんが…魔力を使って何かしたのか…?」

ドルボ「フン…催眠魔法を使ったまでだ。視線による発動は初めてだがな。もうコツは掴んだ」

おしり「さ、催眠魔法…だと…?」

ドルボ「此奴らはもう私のしもべだ。お前たちもそうしてやるつもりだが、どうする?催眠によってしもべになるか、自らの意思でしもべとなるか」

ティーダ「ウホ…ウホーッ!!」

ダッ!!

ティーダは葛藤の末に、先祖よりも今の自分の親友を選び、殴りかかった。

409ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:07:36 ID:oJYj8oY.00

ドルボ「そうか」

ギラッ!!

ティーダ「!」

そしてティーダも催眠に落ち、動かなくなった。

おしり「……!」

ドルボ「やれやれ…催眠魔法は単純な命令しかできんのだ。戦闘時の細やかな判断ができなければ、その実力の半分も発揮できまい。できれば自ら私に従ってもらいたいのだがな」

おしり「な……なんという強さ…!こんなもの…誰も勝てるわけがない…!」

ドルボ「お前はどうする」

おしり「ぐ…」

おしりは恐れ慄き、後退りする。

ドルボ「早く決めろ。でなければ…」

おしり「わ、分かった…!お前に従う…ドルボリドル…」

おしりは跪いた。

ドルボ「フン…それで良い。さて、腹ごしらえも済んだことだ。まずはこの星を手中に収め、次は宇宙へと進出する」

おしり「う、宇宙だと…!?」

ドルボ「私にこの星は狭すぎるのだ。宇宙へ行くには宇宙船が必要だな。お前、宇宙船はどこで手に入る?」

おしり「し、知らん…俺は地上へ来たばかりだ…」

ドルボ「チッ、使えん奴だ…まあいい。私の耳をもってすれば情報など容易く集まる」

ドロッ…

ドルボリドルはまたスライム状に戻り、どこかへ飛んでいった。

おしり「お、おい…!どこへ行くんだ…!俺はどうすれば……!……消えた……」

410ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:08:58 ID:oJYj8oY.00



数分後。

ドロロッ…

ドルボリドルが隠れ家に戻り、またサルの姿に戻る。

おしり「なんだ…?忘れ物か…?」

ドルボ「フン、もう調べ終わったのだ。宇宙へはアーウィンとやらを使う。奪いに行くぞ」

おしり「ど、どこへ…?」

ドルボ「フォックス族という種族の村だ。奴らがアーウィンを操縦している」

おしり「フォックス…?というと、キツネか…?キツネの顔をした種族なら、つい昨日見たばかりだぞ…奴らこのジャングルに、飛行機に乗って来たのだ…」

ドルボ「何?クク、ならば丁度いい。其奴らのアーウィンを奪うまでだ」

おしり「ただ、目的の樹脂を手に入れるとすぐに帰った…また来るかどうかは分からん…」

ドルボ「…チッ、少しは使える奴かと思ったが、やはりゴミか。それでは意味がないだろう」

ドルボリドルが睨む。

おしり「ひっ!ま、待ってくれ…!たしか黒猫がその、アーウィン?というのを、いくつか破壊した筈だ…!それがまだ使えるかもしれん…!」

ドルボ「何処だ」

おしり「こっちだ…!」

おしりは昨日のところまで案内した。

しかし。

411ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:11:10 ID:oJYj8oY.00

おしり「え…?ば、馬鹿な…無くなっている…!?」

ドルボ「どういうことだ?」

おしり「たしかにここで奴らと戦闘になったのだ…!しかし痕跡すら残っていないなど…あ、あり得ん…!」

ドルボ「この私に嘘をついたのか?」

おしり「ち、違う…!信じてくれ…」

ギラッ!!

とうとうおしりも催眠にかけられ、動かなくなった。

ドルボ「フン、どちらせよこの無能は私の駒としては必要ない。奴らがここへ来ないのであれば、予定通りフォックス族の村へ行くまでだ」


キィィィィン…


ドルボ「…その必要もなさそうだな」

そこへ飛んできたのは数十機のアーウィンだった。

412ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:12:32 ID:oJYj8oY.00


ドドドドドドドド!!!!


アーウィンは一斉にドルボリドルを射撃する。

ドルボ「無駄だ。今の私に形はない。弾は全て通り抜けるだけだ」

???「お前は何者だ?」

アーウィンに乗っていた緑フォックスの一人が問う。

ドルボ「知って何になる」

ギンッ!!

ドルボリドルが睨むが。

ドルボ(催眠が効かぬ…大した魔力は感じられんが、基礎程度はできるか)

???「お前には生体反応がない。だが魔力反応は検知されている。通常ではあり得ない事だ」

ドルボ「当然だな。私は肉体を捨てた。この体は思念と魔力のみによって構成されているのだ」

???「生け捕りにする」


ドドドドドドドド!!!!


またアーウィンは集中砲火を始める。

が、やはりドルボリドルにダメージは通らない。

???「物理攻撃は完全に無効か。だが、魔力による攻撃ならどうだ?」

フォックスたちはアーウィンのコックピットを開き、立ち上がると。


ゴゴゴゴゴゴ…


全身から炎を放ち始める。

???「ファイヤーッ!!」


ドガガガガッ!!!!


そして一斉にファイアフォックスを放った。

413ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:13:38 ID:oJYj8oY.00

ドルボ「フン、正解だ。魔力による攻撃のみが私にダメージを与えられる。だが当たらなければ意味などない!」

ドルボリドルはジャンプしてファイアフォックスをかわしていた。

さらに。

パチンッ!

指を鳴らし、ピーナッツ・ポップガンを召喚。

ドルボ「従わぬなら消すまでだ!ハハハハハハハハハ!!」


ドドドドドドドド!!!!


ピーナッツ弾を撃ちまくり、フォックスたちを次々に吹き飛ばす。

ドルボ「残り三匹…催眠状態でどれ程の力を出せるか、試しておくか。やれ、しもべ共!」

ダッ!!!

今まで動かなかった黒猫、ベンベ、ティーダの三人が一斉に動き出し、フォックスたちに襲いかかった。


ドガガガッ!!

バキッ!!

ズドドッ!!


三人はフォックスたちと互角の戦いを繰り広げる。

ドルボ「…この程度の雑魚と互角か。やはり催眠状態で真の力を引き出すには、催眠魔法の改良が必要だな」

414ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:14:53 ID:oJYj8oY.00


昼間「魔法の改良?そんなことをする前に、自分の魔法の精度を上げてはどうです?」


ドルボ「!?」

ドルボリドルの後ろに、突如、昼間の召喚士が現れた。

???「無関係の人間に見られるのは面倒だ。退却するぞ」

???「ああ」

キィィィィン…

残ったフォックスたち三人はすぐにアーウィンに乗り込み、飛び去った。

昼間(あれは…フォックス族のアーウィン…?)

一瞬だけそっちに目をやったが、すぐにドルボリドルを視界に戻す。

ドルボ「クク…昼間の召喚士、よくここが分かったな」

昼間「君は無用心すぎます。どれだけ空間魔法を使おうと、どれだけ魔力を隠そうと、そんなドロドロの目立つ格好でいろんな場所に現れていては、目撃情報を照らし合わせて簡単に特定できますよ」


パチンッ!


ドルボ「なっ…!」

召喚士が指を鳴らすと、ドルボリドルは透明な箱の中に閉じ込められた。

昼間「申し訳ないですが、お喋りしに来たわけではないんですよ私は。速攻で君を捕えます」

召喚士は片手に分厚い魔法書を開き、そのページには魔法陣が描かれている。

415ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:16:14 ID:oJYj8oY.00

ドルボ「結界か…だが今の私にはこの程度!」

昼間「でしょうね。ですから更に重ね掛けさせてもらいます」

ドルボ「!」

パチンッ!

パチンッ!

パチンッ!

召喚士は何度も指パッチンし、そのたびにドルボリドルを囲む結界は分厚くなっていく。


ドンッ!!!!


ドルボリドルはピーナッツ・ポップガンを撃つが。

ドルボ「チッ、効かぬか」

結界は表面に少しヒビが入るだけだった。

昼間「このまま君を魔法学校へ連れて帰る、と言いたいところですが、結界を張ったままでは飛べません。ここで封印します」

ドルボ「阻止せよ、しもべ共!」

ダッ!!

フォックスたちに逃げられてボーっと突っ立っていた黒猫たちが、今度は召喚士を襲う。

パラパラパラパラ…

召喚士は魔法書の別のページを開き。

昼間「㌦くん!」


ボフンッ!


そこに描かれた魔法陣から、㌦ポッターが召喚された。

㌦「はっ!!」


ドガガッ!!


㌦ポッターはすぐさま足払いで三人を弾く。

昼間「ありがとうございます」

㌦「こっちは任せてください!それより先生は封印を!」

昼間「ええ」

召喚士はドルボリドルに向けて手をかざし、呪文をブツブツ唱え始める。

416ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:17:35 ID:oJYj8oY.00

ドルボ「フン、詠唱が終わる前にこの結界を破壊してくれるわ」


ドドドドドドドド!!!!


ドルボリドルはピーナッツを全方向に撃ちまくり、結界をヒビだらけにしていく。


ビキビキ…


パリィィン!!!


そして結界は砕かれた。

ドルボ「ハハハハハ!!残念だったな昼間の召喚士!!」

昼間「こちらの台詞です」


フュオオーッ!!


ドルボ「!?」

ドルボリドルは後ろから何かに吸い込まれた。

昼間「物理攻撃が効かないであろうことは予測していました。それならば、彼の出番だ」

おこめ「ン!!」

ドルボリドルを吸い込んだのはおこめだった。

昼間「さて、仕上げです」

パチンッ!

召喚士が指を鳴らすと、おこめの前に巨大なカプセルのようなものが召喚された。

昼間「はあああっ!!」

パカッ!

召喚士が手をかざして魔力を込めると、カプセルが開いた。

昼間「準備は整いました!おこめくん、ドルボリドルを吐き出してください!せーのッ!」

おこめ「オエッ!」

合図とともに、おこめがドルボリドルを勢いよく吐き出す。

ドルボ「くっ!!」

昼間「うおおおおおおお!!」


バシュウッ!!!!


完璧なタイミングでカプセルが閉じ、ドルボリドルを捕らえた。

おこめ「やった!?」

㌦「いや、まだだよ!」

417ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:18:28 ID:oJYj8oY.00

ガタガタガタガタ!!

カプセルが激しく揺れる。

㌦「ドルボリドルが中から抵抗しているんだっ!」

おこめ「セ、センセー!」

昼間「大丈夫!」

パチンッ!

召喚士は黒い封印布をいくつも召喚する。

ギュルルルル!!

そしてカプセルの上から封印布を巻きつけていった。

ガタガタガタッ!

ガタガタッ!

ガタッ!



そしてカプセルは動かなくなった。

昼間「……封印成功」

㌦「やった!!」

おこめ「ドルボリドル…安らかにねむれ。おまえと過ごした日々は忘れない」

418ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:19:57 ID:oJYj8oY.00

ベンベ「はっ…!?」

黒猫「ん?あれ、オイラにゃにしてたんだっけ?」

ティーダ「ウホ…」

おしり「…一体何が…」

ドルボリドルが封印されたことにより、操られていた四人が目を覚ます。

昼間「初めまして。私たちはドルボリドルを封印するべく、遠く離れた国の魔法学校から来ました」

黒猫「まほーがっこー?にゃんだそれ?うまいのか?」

ベンベ「学校っていうのは人間の子どもが勉強するために通うとこだべ」

おしり「つまり魔法を学ぶ場所か…ドルボリドルも魔法というのを使っていた…まさかお前たちも奴の仲間なのか…」

昼間「仲間…まあそうとも言えますね。彼は私たちの施設から逃走したのです」

㌦「先生、いいんですか?そんなにいろいろ喋っちゃって。無関係の人に魔法学校のこと話しちゃダメなんじゃ…」

昼間「ドルボリドルに操られていたんですよ。無関係とは言えません。それにそこのファルコン族の魔力は、間違いなく魔族のものです」

黒猫「ん?オイラ?そうだけど」

おしり「俺も一応魔の一族だ…弱いが…」

ベンベ「そういえばマカイとか言ってたな。なんだべ?そのマノイチゾクとかいうのは」

おこめ「魔界にすんでるコワイやつらだよ。ぼくもはじめて見るけど」

419ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:21:22 ID:oJYj8oY.00

昼間「あなたたちはなぜ地上に?」

おしり「来るつもりはなかった…なぜか知らんが、ここに繋がる穴が開いていたのだ…そして気づいたらその穴が閉じていてな…帰ることもできん…」

昼間「あなたたちが開けたのではなく?」

おしり「そうだ…そもそも俺たちは魔力の操作が下手だからな…」

昼間「だとしたら…」

㌦「もしかしたら他にも魔族が来ているかもしれませんね」

昼間「ええ。お二人はこの辺で他に誰か見かけませんでしたか?」

ベンベとティーダのほうに問いかける。

ベンベ「へんなキツネのヤツらなら何度も来たけども…」

昼間「先程のフォックス族ですか?そういえば私が来た途端すぐいなくなりましたが…」

おしり「何に使うのかは知らんが、ジャングル固有種の樹脂が欲しかったらしい…昨日俺たちも襲われた…黒猫の怪我もその時のものだ…」

昼間「樹脂…?魔族である君たちや、ドルボリドルを討伐するために来たわけではないのですか?」

ベンベ「コイツらが来る前から、ヤツらは来てたべよ。縄張り荒らされるのイヤだったから追い返してたけど、すぐ仲間を呼んできて、ホント面倒なヤツらだったべ」

昼間「そうですか…フォックス族がそんな強引な手段を取るとは思えませんが…」

㌦「フォックス族の村は宇宙生物に壊滅させられたってニュースもありましたし、なんかおかしくないですか?」

昼間「ええ。少し調べてみますか…二人とも、帰りますよ」

おこめ「ハーイ」

召喚士は魔法書を開き、おこめと㌦ポッターはそこへ集まる。

420ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:22:29 ID:oJYj8oY.00


ドッ…


突如、三人は倒れた。

黒猫「アレ?にゃんだ?急に眠ったぞコイツら」

ベンベ「よく見るべ!頭になんか跡がついてるべ!」

おしり「そ、狙撃されたということか…?だが銃声などしなかったぞ…」

ティーダ「ウホ…」

黒猫「どういうことにゃ?」

おしり「少なくともジャングルのどこかに…まだ敵が潜んでいる…」

次の瞬間。


ドッ…


四人も倒れる。


???「…我々の記憶を持つ七名の記憶消去完了。魔法使いにも感知されなかった。魔力遮断着の性能実験も成功と言っていいだろう」

スナイパーライフルのような形状をしたブラスターを持ち、黒いローブを纏ったフォックス族が、ジャングルの中に潜んでいた。

???『そうか。目覚めないうちに離脱しろ』

???「了解」

黒猫「にゃにしてんだ?オマエ」

???「!!」

黒猫がフォックス族の目の前まで近づいていた。

ベンベたち三人は倒れたが、黒猫だけは、姿勢を低くして狙撃をかわしていたのだ。

421ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:23:13 ID:oJYj8oY.00


ドゴォ!!


黒猫「にゃにすんだ」

フォックス族は咄嗟に蹴りを放つも、黒猫はそれを片手で受け止める。

???「訂正する…一人、記憶消去に失敗した」

黒猫「誰としゃべってんだ!」


バキィッ!!


???「がはっ!」

黒猫に蹴り返され、フォックス族は吹っ飛んで木に激突した。

???「く…貴様…どうやって…」

黒猫「鼻!オイラは犬みたいに鼻が効くんだ!昨日のアイツらと同じニオイがした!」

???「…そういうことか…」

???『簡易式次元分離システムを起動しろ』

???「しかしそれでは魔力遮断着の完成品が…」

???『問題無い。データは取れた』

???「…了解」

黒猫「にゃに一人でブツブツしゃべってんだっ!!」

ダッ!!

黒猫がさらに攻撃を仕掛けようと踏み込む。


カチッ


フォックス族がローブの内部に仕込まれたスイッチを起動。

黒猫「にゃっ!?」


ゴォォォ…


球状に拡がる黒い閃光が、フォックス族もろとも黒猫を呑み込んだ。

422ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:24:39 ID:oJYj8oY.00



数十分後。

おこめ「おーい、㌦ー?」

ぺしぺし

おこめは眠っている㌦ポッターの頬をぺしぺしする。

㌦「はっ…ここは…」

昼間「コンゴジャングルですよ。何者かに私たちは眠らされていたようです」

と、召喚士は自分の額についた何かがぶつかったような跡を指差す。

㌦「眠らされていたって…誰に…?」

おこめ「ドルボリドル?」

昼間「分かりません。ただドルボリドルの封印に成功した時点で催眠は解ける筈ですから、その後で他の手駒を操って我々を攻撃したとは考えにくいでしょう」

㌦「でもだとしたら…」

おしり「…いつの間に寝ていたんだ……ん…?黒猫は…?」

おしりが目を覚まし、周りをキョロキョロ見回す。

昼間「そう、不可解なのは、あのファルコン族が消えていること」

おしり「き、消えている…!?」

㌦「ホントだ…じゃあ…」

おこめ「それが犯人じゃん!」

昼間「そうと決まったわけではありませんが、可能性は高いでしょうね。彼は魔の一族です。我々を魔力によって眠らせるような手段を持っていても不思議ではありません」

423ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:25:53 ID:oJYj8oY.00

おしり「ま、待て…勘違いだ…」

昼間「どういうことです?」

おしり「言っただろう…俺たちは魔力の操作が下手なのだ…黒猫がそんな技を使える訳がない…」

昼間「あなたにも隠していたというだけでは?あなたは彼と違って魔力が弱い。初めから利用するだけ利用して捨てるつもりだったのかもしれない」

おしり「そんな馬鹿な…奴はそこまで頭の良い奴ではない…」

おこめ「おまえもだまされてたんだよ。魔の一族って、めちゃくちゃ狡猾らしいぜ」

㌦「懐いてたのに裏切られる気持ち、よく分かるよ。信じられないよね。僕たちもドルボリドルで味わったから…」

おこめ「㌦には別になついてなかったけどな。ていうか全然世話してなかったじゃん」

㌦「いやしてたよ!おこめくんとは時間が被らなかっただけで、結構顔出してたから!」

おこめ「えー?ほんとかよー」

㌦「ホントだよ!」

おしり「…魔の一族に信用などないか…それが正常なのかもな…」

ベンベ「オラは信じるべよ!」

ティーダ「ウホ!」

おしり「ベンベ…ティーダ…」

ベンベ「黒猫はオラたちを助けてくれたしな。それにオラも、アイツにそんな頭良さそうことできないと思うべ」

おしり「ありがとう…」

昼間「ふむ…彼を庇いますか」

ベンベ「なんだべ?やんのか?」

ティーダ「ウホ!」

ベンベとティーダはヤンキーのごとくガンを飛ばす。

昼間「いえ。もう一つの可能性について考えていました」

おしり「もう一つの可能性…?」

424ハイドンピー (ワッチョイ 95cf-3257):2022/06/28(火) 21:28:47 ID:oJYj8oY.00

昼間「あれを見てください」

召喚士が指した先には、直径五メートル程の空間が丸く抉り取られたような跡が残っていた。

ベンベ「な、なんだべ?アレ…」

昼間「分かりませんが、恐らく空間魔法を使用した跡です。この場所で黒猫さんの魔力の痕跡が途絶えていますから、ここでゲートを開き、魔界かどこかへ移動したと考えるのが普通でしょう」

おしり「だから奴にそんなことができる訳が…」

昼間「しかしゲートを開いたという痕跡がないのです。本来空間魔法を使った際に生じる空間の歪みがない…つまり、魔力を使わずに空間を移動したと考えられます」

おしり「…??」

おこめ「どゆこと?」

㌦「おかしいですよ先生。魔力を使わずにどうやって…?」

昼間「それは分かりませんが、天界に住むという神や天使は、魔力以外の力を持っているとされています。そういった我々の知らない方法でゲートを開いたとしたら…」

おしり「つまり…黒猫は何者かによって、連れ去られたと…?」

昼間「そういうことになりますかね」

㌦「そ、それこそおかしいですよ!魔の一族を連れ去るなんて、何の意味があるんですか?」

昼間「そうですね…ですからあくまで可能性の話です。私も黒猫さん自身の意思で逃走した説が濃厚だと思っています。魔力の痕跡を隠す方法も存在しないわけではありませんしね」

おしり「……」

ベンベ「おしり!オラたちで黒猫を助けるべ!」

おしり「え…?」

ベンベ「黒猫が誰かにさらわれたなら、きっと腹を空かせてるに違いないべ。オラたちで見つけて、たらふくバナナ食わせてやるべよ!」

ティーダ「ウホホ!」

おしり「ベンベ…!ティーダ…!ありがとう…!」

珍獣たちによる新たな冒険が始まろうとしていた。

昼間「さて、私たちはもう帰りましょう」

㌦「アレ放っといていいんですか?」

昼間「ベンベさんとティーダさんは民間人に危害を加えるような人たちには見えませんし、おしりさんは危害を加えられるほど強くもないでしょう。魔の一族にもあんな人がいるとは驚きですが…まあ旅に出るくらい自由にさせてもいいんじゃないですか」

㌦「そうですけど…」

おこめ「なにが心配?」

㌦「いや、別の空間に行ったんならこの世界をどれだけ旅しても見つからないんじゃないかなって…」

おこめ「なるほど。かしこいな、㌦」

昼間「しかし私たちにはどうしようもないですよ。空間の歪みが消えている以上、私たちにも見つけ出すのは困難です」

おこめ「空間探査魔法は?」

昼間「教えても彼らでは使いこなせないかと。それとも君たちが彼らの旅についていきますか?どれだけの時間がかかるか分かりませんが」

おこめ「それは…ムリだ。ぼくにもやらなきゃいけないことあるし」

㌦「…………まあ…帰りましょうか…」

昼間「はい」

三人は魔法書の魔法陣に魔力を込め、空間魔法を使って魔法学校へ帰った。

425ハイドンピー (ワッチョイ 0b9e-024d):2022/07/17(日) 21:18:22 ID:D75EisdA00





とある町の一軒家では。

???「晩ご飯よ。戻っておいで」

???『了解。この敵を倒したら帰還します』

???「堅苦しいわね相変わらず」

狼の顔を持つ女が誰かと通信で話している。

???『私は居候の身…貴女に失礼な態度は取れませんので』

???「ハハ!アタシはアナタが気に入ったから匿ってあげただけって言ってるでしょ?まあいいわ。冷めないうちに帰りなさい、リカエリス」

リカエ『ありがとうございます、村田さん』

プツッ…


村田「さてと、リカエリスが帰ってくる前に…表の掃除をしないとね」

ガチャリ

村田と呼ばれる狼女は、家の外に出る。

???「ヒャッホーゥ!!遊びに来たぜウルフ村田ァ!!」

いきなりピンクのイカが飛びかかってきた。

426ハイドンピー (ワッチョイ 0b9e-024d):2022/07/17(日) 21:19:07 ID:D75EisdA00


ドガァッ!!


村田はそれを蹴り返す。

村田「何度も何度もウチに押しかけて来ないでって言ってるでしょう?陛下」

ズザザザザ…!

陛下「やっぱやるねェ村田!こうでなくちゃ面白くない!」

陛下と呼ばれるイカは、学生服を着た幼女へと姿を変えた。

村田「アナタは気軽に出歩いていい人じゃないのよ?わかる?」

陛下「わかんない!」


ドババババババ!!


今度は持っていた水鉄砲のようなブキでインクを大量に発射。

村田「あーもう!汚れるでしょ!だからヤなのよアナタと戦うの!」

陛下「ヒャッホー!!楽しーっ!!」

村田「掃除するこっちの身にもなりなさい!」


ズバッ!!


陛下「ぎゃーっ!!」

村田は一瞬で陛下に近寄りひっかき攻撃をくらわせた。

427ハイドンピー (ワッチョイ 0b9e-024d):2022/07/17(日) 21:20:07 ID:D75EisdA00

村田「痛い目に遭いたくなかったら早く帰んなさい!」

陛下「やだよーだ!!」

ガシッ

アッカンベーをする陛下の手を、後ろから来た何者かが掴む。

???「見つけましたよ陛下」

陛下「げぇっ!!エンコード!!」

エンコード「村田さん、ご無沙汰している」

エンコードと呼ばれる赤髪褐色肌の屈強な男が、村田に頭を下げる。

村田「エンコードさん、もっとしっかり見張っとかないとダメよ。この子すぐ飛び出すんだから」

エンコード「おっしゃる通りだ。以後気をつける。済まなかった」

陛下「クソッ!!離しやがれテメー!!」

エンコード「ところであの妙なフォックス族はいないのか?」

エンコードは陛下を無視して話を進める。

村田「今はちょっと出てるわ」

エンコード「そうか。様子を見ておきたかったが」

村田「もうすぐ帰ってくると思うけど、上がってく?」

エンコード「いや、いい。これ以上迷惑は掛けられん。村田さんが見張ってくれているなら問題ないだろう」

村田「見張ってるってわけじゃないけどね。リカエリスはそんな悪いヤツじゃないわよ?」

エンコード「それは分かっているが、謎が多いのも事実だ」

村田「まあねぇ…不思議な存在ではあるかも」

エンコード「新たに何か分かればすぐに連絡をくれ。今日のところは失礼する。さあ帰りますよ陛下。お勉強の続きです」

陛下「オイッ!!助けろ村田ァ!!」

陛下はそのまま引きずられていった。

村田「ふぅ、まったく。困ったものね、あの悪ガキには」

428ハイドンピー (ワッチョイ 0b9e-024d):2022/07/17(日) 21:21:47 ID:D75EisdA00


それから村田がインクを掃除していると。

キィィィィン…

ゴゴゴゴゴ…

ガシィン…

アーウィンが着陸。

リカエ「ただ今帰りました」

村田「おかえり。どうだった?こっちでの任務は」

リカエ「やはりこの世界の生物はどれもこれもレベルが高いですが、その分こちらも得るものがあります」

村田「そっか。ま、話はご飯食べながらでも…」

リカエ「すみません。その前に一ついいでしょうか村田さん」

村田「ん?何?」

リカエ「これを…」

ドサッ…

リカエリスはアーウィンの中から、一人の黒ファルコンを持ってきた。

犬のような黒猫である。

村田「え…?」

リカエ「倒れていたのを見つけ、拾いました」

429ハイドンピー (ワッチョイ 0b9e-024d):2022/07/17(日) 21:22:31 ID:D75EisdA00

村田「こ、これって…」

リカエ「はい。この世界の住人と比べて少しカクカクとしたフォルム…恐らく、私と同じ世界の住人かと」

村田「えぇぇ…?」

430はいどうも名無しです (ワッチョイ 3749-78b2):2022/07/17(日) 22:12:22 ID:kf8iRFYk00
カクカク言っちゃうのかw

431ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:47:01 ID:SqW6gzFU00



数十分後。

黒猫「にゃにゃっ!?」

黒猫はベッドで目を覚ました。

リカエ「目覚めたか」

黒猫「にゃっ!?オマエ!!にゃにしたんだ!!」

バフォッ!!

黒猫は飛び起きていきなりリカエリスに殴りかかる。

リカエ「むっ!」


ドガァッ!!


リカエリスも咄嗟に蹴りを繰り出して相殺した。

432ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:48:38 ID:SqW6gzFU00

村田「うるさいわね。何の騒ぎ?」

部屋の外からウルフ村田も駆けつける。

黒猫「にゃぁ!?ぐちゃぐちゃだっ!!」

村田を見た途端、黒猫は飛びのく。

リカエ「落ち着け。ここは我々の世界よりも解像度の高い世界だ」

黒猫「カ…カイゾード…?」

リカエ「ああ。より高次元の世界と言った方が分かりやすいか。目に映る全てが我々の世界よりも鮮明で微細…ゆえに、脳の処理が追いつかないのだろう。しばらくすれば慣れる」

黒猫「にゃに言ってんだオマエ…」

村田「人の顔見て"ぐちゃぐちゃ"は酷いと思わない?」

リカエ「仕方ありませんよ…私も最初は驚いたものです。お前、名は何と言う?」

黒猫「い…犬のような黒猫…」

村田「何よその名前」

リカエ「では黒猫、聞きたいことがある」

村田「スルーなんだ…」

黒猫「聞きたいのはコッチだ!」

リカエ「ああ、すまない。分からないことだらけだろうが、後で教える。お前、私を見てすぐに殴りかかっただろう。何故だ?」

黒猫「当たり前だ!オマエがへんなワザ使ってオイラをここに連れてきたんだろ!」

リカエ「……やはりそうか」

黒猫「はあ!?」

433ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:50:03 ID:SqW6gzFU00

リカエ「それは私ではない。別人だ」

黒猫「そんなわけにゃいだろ!おんなじカオしてるじゃにゃいか!」

リカエ「それは同じ種族だからだ。お前をこの世界へ飛ばしたのは、私と同じフォックス族…ロハスだ」

黒猫「ロハス?…クンクン……言われてみればたしかにニオイが違う…」

村田「鼻が良いのね。見た目人間なのにホントに犬みたい」

リカエ「私もロハスとの戦闘中に次元分離システムを起動され、ここへ来た」

黒猫「!!そのジゲンにゃんとかって…聞いた気がするぞ!」

リカエ「そうだろうな。ロハスは恐らくこの現象に気づいていない。不完全なまま実用化してしまっているのだ」

村田「次元を粉々に分離して殺した気でいるのね。でも実際には、次元分離システムはこの世界への穴をこじ開けて、範囲内のものを移動させただけだった」

リカエ「はい。我々も、そして我々を道連れにしたロハスたちも。黒猫、お前もロハスと共にこの世界へ来たはずだ」

黒猫「一緒に来たかはわからにゃいけど、道連れにはされたにゃ」

リカエ「だがお前が倒れていた場所に奴はいなかった。つまりお前より先に目を覚まし、どこかに身を潜めているということだ。私と共にこの世界へ来たはずのロハスたちも、まだ全ては見つかっていない」

村田「ロハスがもう一度次元分離システムを使って元の世界に戻ったとは考えられない?」

リカエ「可能性はありますが…そんな簡単なものでもないでしょう。実際私をこの世界へ飛ばしたシステムは、次元を超えた影響か、完全に壊れていました」

村田「そういえばそうだったわね」

リカエ「そうでなくとも、もう一度使ったからと言って元の世界へ戻れる保証もないでしょう」

村田「そうね」

434ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:51:35 ID:SqW6gzFU00

リカエ「黒猫、お前をここへ飛ばしたロハスは、次元分離システムをどうやって起動していた?」

黒猫「んー…服ん中でカチッてにゃんか押したら、そっからぐわーって黒い光が出たぞ」

リカエ「そうか」

村田「リカエリスのとは違うわね」

リカエ「はい。私の時は遠隔操作によって起動し、基地全体を包み込む程の大きさの光が発生した。しかし黒猫の場合はかなり規模が小さい上、その場で光を発生させている。つまり奴等はシステムの小型化に成功しているのです」

村田「だとしたら、前のより丈夫になってる可能性もあるわよね。もう一度起動できるくらい」

リカエ「はい。とは言えやはり元の世界へ戻れる保証がない以上は、もう一度起動したという可能性は低いと思われます」

村田「うーん…でも、また別の次元分離システムを作ってる可能性はあるわよね」

リカエ「…なるほど…あのシステムを作ったのもロハスなら、元の世界へ戻れるシステムを新たに作れても不思議ではないか…」

村田「現状この世界からアナタたちの世界へ行く方法はないけど、ロハスがそれを作ってるとしたら…ラッキーよね」

リカエ「ラ、ラッキー…ですか?」

村田「だってそれ奪えばアナタたちも帰れるわよ」

リカエ「なっ…たしかにそうですが、そう簡単には…」

村田「まあアナタ一人じゃね。でも黒猫くんもいるし、私だって協力するわよ?」

リカエ「村田さんも…!?それは心強いですが、いいんですか?」

村田「何よ、私がそんな薄情な人に見える?」

リカエ「いえ、そういうわけでは…しかし住まわせてもらっているだけでもありがたいので、そこまで手伝ってもらうのは…」

村田「気にしなくていいの!私がやりたいのよ。それにアナタが元の世界に帰れないと、ずっと住まわせ続けなきゃならないんだからね」

リカエ「たしかに……分かりました。ではお言葉に甘えさせてもらいます、村田さん」

村田「ええ。兎にも角にも、まずはロハスたちの居場所を突き止めないとね!」

リカエ「はい!」

435ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:52:34 ID:SqW6gzFU00

ぐうううううううう…

と退屈そうに聞いていた黒猫のお腹が鳴った。

黒猫「にゃー、ゴハンにゃいの?」

村田「あ、そうね。すぐ用意するわ。ここで待ってなさい。アナタ全身ボロボロなんだから、動いちゃダメよ!」

黒猫「おー!ありがとう!」

村田は部屋から出て行った。

リカエ「…時に黒猫、もう一つ聞きたいことがある」

黒猫「ん?にゃんだ?」

リカエ「お前の出身はどこだ?」

黒猫「腐敗」

リカエ「フハイ…そんな国あったか…?」

黒猫「クニ?よくわかんにゃいけど、魔界だぞ!」

リカエ「!!」

リカエリスはそれを聞いた瞬間大きく目を見開き、次の瞬間。


ドガァッ!!


黒猫「にゃぁ!?」

リカエリスは黒猫の顔面を掴んで押さえつけた。

リカエ「…ハァ…ハァ…そうか…貴様か…!」

黒猫「は!?にゃにすんだ!?」

436ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:54:08 ID:SqW6gzFU00

リカエ「魔界…黒いファルコン族…そして特徴的な喋り方…!貴様が……貴様がギルティースを殺したんだな…!!」

黒猫「誰だよ!」

リカエ「ハァ…なんという運命の悪戯か…こんなところで出会えるとは思いもよらなかった……ギルティースが死んだあの日…私は誓ったのだ。必ず仇を討つと…!!」

黒猫「ひっ…!」

豹変したリカエリスの目に篭る殺意を感じ取り、黒猫はバタバタと暴れる。

リカエ「無駄だ。獣風情が私から逃れられると思うな」

リカエリスはブラスターの銃口を黒猫の腹に押し当て。


チュンッ!チュンッ!チュンッ!


黒猫「ぎゃああっ…!」

そのまま何度も弾を撃った。

村田「ちょっと何してるの!?」

リカエ「村田さん、止めないでいただきたい。此奴は私の友を殺した…」

村田「外でやってくれる!?家の中が壊れるでしょ!」

リカエ「すみません」

437ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:55:18 ID:SqW6gzFU00

ガシッ!

黒猫「グエッ!」

リカエリスは黒猫の首根っこを掴み上げると。


ドガッ!!

パリィン!!


黒猫「ぎゃっ!!」

窓の外へと蹴り飛ばした。

村田「窓も壊すな!」

リカエ「後で弁償します」

リカエリスはぺこりと頭を下げ、割れた窓から外へ出た。

村田「まったく…ご飯までには終わらせなさいよー」

438ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:56:11 ID:SqW6gzFU00


黒猫「ゲホッ、ゲホッ…もう怒ったぞ!!いきにゃり怒りやがって!!」

リカエ「貴様だけはこの手で殺す…」


ダンッ!!


両者ともに地面を蹴る。


ドガァッ!!!


リカエリスの蹴りと黒猫のパンチがぶつかり合う。

ダンッ!

黒猫は高く跳び上がり。

黒猫「ファルコン・キック!!」

リカエ「はっ!!」


ドゴォ!!!


黒猫のキックとリカエリスの蹴り上げがまたもぶつかり合う。

村田「んー、実力は互角ってとこね。黒猫くんあんなボロボロなのにあそこまで動けるなんてすごいわ。リカエリスは冷静さを欠いてるわねぇ。これは黒猫くんの勝ちかしら」

と割れた窓から少し戦いを眺めた後、ウルフ村田はまたご飯の準備に戻った。

439ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:57:12 ID:SqW6gzFU00



数分後。

黒猫「ハァ…こんにゃにオイラと戦えるヤツ…久しぶりだぞ…!」

リカエ「…くそっ…!」

戦況は村田の予想通り、黒猫の優勢になっていた。

リカエ(重い攻撃に圧倒的なスピード…そして獣のように読めない動き……ギルティースの言っていた通りだ…!)

黒猫「ととととととと!!」


ズガガガガガガガ!!


連続パンチでリカエリスを弾く。

リカエ「くっ…」

ダンッ!!

黒猫はすかさず跳び上がり、リカエリスの真上へ行くと。

黒猫「とおっ!」


バゴッ!!!


両脚で蹴り落とし、リカエリスを地面に叩きつける。

リカエ「ぐ…!」

黒猫「ファルコン・パ…」

村田「はいそこまでー」

ビシッ!

黒猫「うにゃ!?」

村田が黒猫の拳を片手で払い落とし、パンチを止めた。

リカエ「む、村田さん…」

440ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/20(水) 20:57:48 ID:SqW6gzFU00

村田「ご飯できたわよ。食べなさい」

黒猫「やったー!!ごっはん!ごっはん!」

黒猫は今まで殺し合っていたのが嘘のように、すぐに家の中へ入った。

村田「ほら何してるの。アナタも食べなさい。新しい仲間ができたことだし、今日は腕によりをかけて作ったんだからね!」

リカエ「…彼奴を仲間だなどとは思えません…そんな相手と食卓を囲むなど…」

村田「ふーん。でもアナタ、私が黒猫くん止めなかったら負けてたわよ」

リカエ「…はい」

村田「というわけで負け犬は大人しく言うこと聞きなさい。ご飯食べなさい」

リカエ「…手厳しいですね」

村田「まあここ私んちだし。私がルールよ」

リカエ「はい…」

村田「頭に血が昇りすぎ。あんなんじゃ勝てるものも勝てないわよ」

リカエ「え…」

村田「因縁のある相手じゃしょうがないかもしれないけどね。冷静沈着はアナタの武器なんだから、生かさなきゃ」

リカエ「…ありがとうございます。少し頭が冷えました」

村田「そう、よかったわ」

リカエ「でも諦めたわけではありません。黒猫はこの手で必ず倒します」

村田「ふふっ、はいはい」

441ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/22(金) 20:50:51 ID:Ylq.mX5200





ヨシオ族の里。

その門の前に、謎の黒服たちが集まっていた。

黒服「撃て!撃てー!」

ドドドドドドドド!!

???「くそっ!数多すぎ!一人じゃキツイよこれ!」

黒服たちが、一人の青リボンのヨシオ族に向かって銃を撃ちまくる。


ミカ「デガワァ!!」


ビシャァン!!!!


黒服たち「ぐああああっ!!」

そこに味方殺しが現れ、かみなりで黒服たちを一気に吹っ飛ばした。

黒服「な、なんだアイツは!」
黒服「ピカチュウ族がなぜここに!」
黒服「退散!退散だー!」

黒服たちは逃げていった。

442ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/22(金) 20:51:39 ID:Ylq.mX5200

???「た、助けてくれてありがとう!君は…」

ミカ「初めまして、オレはミカ。困ってる人を放っておけない性格でね」

???「そうかミカ。僕は勇気のヨシオだよ。よろしく!」

ミカ「よろしく。さっきの奴らは一体何者だ?」

勇気「さあ…最近よく来てたみたいなんだよね。でもここ一ヶ月くらいは来てなくて、安心した矢先にこれだよ…」

ミカ「やっぱり、この里に隠されてる何かを狙ってるんだろうか」

勇気「隠されてるって…何が?」

勇気のヨシオは首を傾げる。

ミカ「さあ?それは知らないが、噂になってるよ。ヨシオ族は絶対よそ者を里の中に入れないから、きっと何かを隠してるってな」

勇気「そんなことになってたんだ…ただヨシオ族は弱いから自衛してるだけなんだけどな…」

ミカ「はは、そんなことだろうと思ったよ。じゃあオレはもう行くよ」

勇気「あ、待って!」

ミカ「ん?」

勇気「お礼がしたいんだ。里には入れられないけど、少し待っててくれないか」

ミカ「礼なんかいいよ。オレはやりたくてやっただけだ」

勇気「そういうわけにはいかないよ。僕一人じゃ本当に危なかった。すぐ戻るから少しだけ時間をくれ」

ミカ「…しょうがないな。少しだけだぞ」

勇気「ああ!ありがとう!」

勇気のヨシオは里の中へ入っていった。

ミカ(さて、ここまでは計画通りだ。組織のカスどもを定期的に送り込んで里の番兵を調査し、週ごとに交代している当番制だと分かった。その中で最も弱い当番の時を狙って襲撃させ、オレが助けに入ることで信頼を得る。あとは時間を掛けてさらに深い信頼を築き、里へ潜入する)

443ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/22(金) 20:52:23 ID:Ylq.mX5200


数分後。

勇気「ごめんなさい!お待たせしちゃって!」

勇気のヨシオが走ってきた。

その手には丸いものを持っている。

ミカ「なんだ?それは」

勇気「爆弾だよ!」

ミカ「は!?」

思わず飛び退き、体中の毛を逆立て、電気をバチバチと鳴らす。

勇気「わっ、ち、違うよ!プレゼント!ミカはすごく強いけど、一人旅じゃもしかしたらピンチになることもあるかもしれない。そんな時に使ってほしいんだ」

ミカ「…しかしなんで爆弾なんだ?」

勇気「うちは爆弾使いの家系なんだ」

ミカ「そうか。じゃあありがたくもらっていく。またな、勇気のヨシオ」

勇気「うん!お元気で!」

そうして味方殺しはヨシオ族の里から離れていった。

444ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/22(金) 20:53:01 ID:Ylq.mX5200



里が見えなくなるくらい離れたところで。

黒服「これで本当に上手くいくのか?」

黒服の中で一番偉そうな男が、味方殺しと話す。

ミカ「恐らくな」

黒服「あとは明日また襲撃すればいいんだな?」

ミカ「ああ」

黒服「しかし今日あれだけピンチになったんだ。人員が補強される可能性もあるんじゃないか?」

ミカ「問題ない。今までの襲撃後も一向に人員を増やす気配はなかっただろ。アイツらは馬鹿だ」

黒服「こっちは何人も病院送りにされてる上、お前にはとんでもない額の依頼料を払ってるんだ。絶対にミスは許されないぞ」

ミカ「当然だ。報酬金も忘れるなよ」

黒服「…勿論」

黒服「本当に大丈夫かよ…」
黒服「ファイターとはいえあんな子供、信用できるのか?」
黒服「馬鹿、聞こえるぞ…」

部下の黒服たちは不安そうに味方殺しを見る。

ミカ「ハッ、信用なんざしなくていい」

黒服たち「!」

ミカ「オレも誰一人信用してない。ただ金を貰ってるんなら仕事はきっちりこなせ」

黒服「あ、ああ…」

黒服たちは目線を逸らす。

ミカ(…しかし…勇気のヨシオの口振りには微塵も違和感がなかった。奴は何も知らないだろう。まあ末端の兵士が重要機密なんざ知ってる筈もないが…そもそも存在するかも分からないモンを調べなきゃならないってのが、今回の一番の問題点だな…)

445ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/23(土) 20:24:02 ID:3Gza5VhY00




翌日。

勇気「むっ!また来たな!」

里の入り口で勇気のヨシオが待ち構える。

黒服「やれ!ぶち殺せ!」

勇気「さらに人数を増やしてきたか…でも今日は爆弾を持ってきたんだ!そう簡単にはやられないぞ!」

勇気は袋から爆弾を取り出す。


バンッ!バンッ!バンッ!


勇気「えっ!?」

黒服たちの放った銃弾が、勇気の持った爆弾を貫く。


ドドォォォン!!!


そして手に持ったまま爆発した。

勇気「…ケホッ…」

勇気は黒コゲになった。

黒服「やっぱバカだコイツ!!」

446ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/23(土) 20:26:30 ID:3Gza5VhY00


ドババババババ!!


黒服たちは勢いづいてさらに銃を撃ちまくる。

勇気「くっ…!」

黒服「いけるぞ!このまま潰せ!!」


ドドドドドドドド!!!


勇気は必死に弾をかわすが、どんどん傷だらけになっていく。

勇気「ぐあっ…!」

ガクッ…

勇気はとうとう膝をついた。

黒服「トドメだ!!脳天をブチ抜け!!」

そこへ。


ドガガガガガ!!!


味方殺しが現れ、黒服数人を一気に吹っ飛ばした。

ミカ「大丈夫か!勇気!」

勇気「ミ、ミカ…!」

黒服「ま…またアイツだ!逃げろ!」

黒服たちは去っていった。

ミカ「まったくアイツら、懲りないな…」

447ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/23(土) 20:28:07 ID:3Gza5VhY00

勇気「どうしてここに…」

ミカ「爆発音を聞いて駆けつけたんだ」

勇気「そっか…はは、爆弾も無駄じゃなかったな…」

ミカ「立てるか?」

勇気「ああ、大丈夫さ…」

ガクッ…

勇気は立ち上がろうとするが、すぐにコケた。

ミカ「無理するな勇気。肩を貸すよ」

勇気「ごめん、ありがとうミカ…」

ミカ「さあ、行くぞ」

勇気「えっ、ちょっと待って…!里の中に入るのはマズいよ…!いくらミカでも…」

ミカ「だからって放っておけるか。里の中に病院くらいあるだろ?そこまで連れていったらすぐに出るからさ」

勇気「わ、分かったよ。皆には僕から説明しよう…」

ミカ「まったく、自分がボロボロなのに人のことばかりだなお前は」

勇気「ははは、たしかに…でもお人好しはお互い様でしょ?」

ミカ「ふっ、まあな」

そして二人は里の中へ入った。

ミカ(潜入成功…まずは第一関門突破ってところだな)

448ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/23(土) 20:29:32 ID:3Gza5VhY00


???「おい、誰だ?お前」


ミカ「!!」

二人の前に立ちはだかったのは、赤いリボンのヨシオ族。

ミカ(コイツ…里で最強のヨシオ族…一番面倒なのに見つかったな…)

勇気「殺意くん。彼はミカ…僕を二度も助けてくれた」

殺意「助けられたってことはお前、負けたのか。使えないな」

勇気「う…ごめん…」

ミカ「よせ。仲間同士で何を争ってるんだ」

殺意「余所者は黙ってろ。殺すぞ」

ミカ「なっ…」

殺意は味方殺しを睨む。

勇気「待ってよ殺意くん…!彼は本当に良い人なんだ。彼がいなければもっと多くの人間がこの里に侵入してきたかもしれない…」

殺意「それはお前が弱いからだろ」

勇気「そ、そうだけど…」

???「なんだなんだ。随分揉めてんな」

???「きゃは☆奇跡ちゃんの可愛さに免じて許してあげてほしいな、殺意クン♪」

そこへ緑と青のヨシオ族が現れた。

勇気「鳴りやまぬくん、奇跡ちゃん」

殺意「雑魚は黙ってろ。お前らから殺されたいのか?」

鳴りやま「雑魚とは聞き捨てならねえな!俺だって里の中じゃけっこう才能あるほうだって言われてるんだぜ?つうか殺意だって一人で二十四時間三百六十五日、年中無休で里を守れるわけじゃねえだろ!だから当番制でやってんだからよ!全員がお前みたいにすごいわけじゃないんだ!つまり何が言いたいかというとだな、もうちょっと心を広く持てよ!誰にでもミスくらいあるだろ!」

殺意「黙れ」

鳴りやま「はい…」

449ハイドンピー (ワッチョイ 2354-c73c):2022/07/23(土) 20:30:17 ID:3Gza5VhY00

奇跡「きゃははっ☆鳴りやんじゃった♪でも一理あると思うなぁ♪」

殺意「お前もだ奇跡」

奇跡「やだこわぁい☆でも奇跡ちゃん知ってるよ♪殺意クンホントはすっごく仲間思いで、だからこそ外から来た人を警戒してるんだよねぇ♪」

ボゴッ!!

殺意のキックが奇跡の顔面にめり込んだ。

殺意「黙れって言っただろ…」

???「そこまでじゃ、殺意」

年老いたヨシオ族が現れた。

殺意「…里長」

勇気「里長、ごめんなさい、勝手に部外者を里に入れてしまって…ですが彼は…」

里長「分かっておる。お主が信じておるということは、そやつは信用できるということじゃ」

殺意「はぁ?」

里長「勇気は昔から賢い子じゃったからのぅ。殺意も見習うんじゃぞ〜」

殺意「ダメだこのジジイ、完全ボケてる」

鳴りやま「ま、里長が言うならしょうがないだろ。諦めろ殺意」

奇跡「そうそう♪とりあえず矛を収めよっか♪」

殺意「チッ」

ボゴゴッ!!

殺意は二人の顔面を凹ませてから去っていった。

ミカ(…助かったか。最悪ヤツと戦うことも考えたが…戦わずに済むなら都合がいい。いきなり里長に会えたのもかなりツイてるな)

450ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/29(金) 21:51:33 ID:ySe14y8Y00



そして味方殺しは里の中にある病院へと勇気を運んだ。

勇気「ありがとうミカ」

ミカ「気にするな。それじゃあオレはもう行くよ。部外者があまり長居してもみんな戸惑うだろう」

奇跡「えっ!もう行っちゃうのぉ?」

鳴りやま「オイオイ殺意にビビっちまったのか?もうちょっといりゃあいいじゃねえか!里長の許しも出たことだしな!俺たちはまだ里の外に出たことないんだわ!外の話聞かせてくれよ!」

勇気「そうだね。僕からもお願いしたい」

ミカ「しかし…」

勇気「見てよ、この子たちのキラキラした目。この目を裏切るわけにはいかないだろ?人助けだと思ってさ」

ミカ「…はは、仕方ないな。分かったよ」

それから勇気が治療を受けている間、病院前のベンチに座り込み、ミカはヨシオ族の子供たちに里の外での話をした。

451ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/29(金) 21:52:44 ID:ySe14y8Y00



数十分後。

ミカの話すベンチには人だかり、もといヨシオだかりができていた。

ミカ「ははは!だから違うって。ドンキーは雑魚!一番ヤバいのはリンクだ。アイツらただでさえ強いのに武器まで使うんだ。しかも武器使いが上手いのなんのって…」

勇気「盛り上がってるね。何の話?」

鳴りやま「おっ、勇気さん治療終わったのか!いやあ聞いてくれよ!ミカさんすげえんだ!これまで三十ヶ国以上も旅していろんな人たちを救ってきたんだと!その中でとんでもなく強いヤツらと出会ったらしくて、その話をしてたんだよ!」

奇跡「ほんとワクワクするよねぇ♪まるで本の中の物語みたい♪」

勇気「へぇ、僕にも聞かせてよ」

ミカ「ああ。じゃあ今までで一番ピンチになった時の話でもしようか」

奇跡「ミカさんでもピンチになるの?」

ミカ「オレだってただの一匹のネズミだ。ネズミ取りにかかることもあるさ」

鳴りやま「ネズミ取りってまさか罠にでもかかったのかよ!?ミカさんがそんなモンにかかるなんて思えねえけどな!一体どんなヤツが相手だったんだ!?」

ミカ「ある国の資産家だ。ヤツは金で雇ったファイターたちを使って町を支配していたんだ。住民を使ってオレを誘き出し、ファイター百人ぐらいでオレを囲んだ」

勇気「百人!?」

奇跡「凄いね☆そんな数でも返り討ちにしちゃうんだぁ♪」

ミカ「はは、まさか。さすがのオレでも百人相手に真っ正面からやり合うのは無理だよ」

鳴りやま「てことは何かスゴい戦略を使ってそれを乗り切ったんだな!?それはそれでかっけえ!」

ミカ「かっこよくなんかないさ。オレの作戦は人質を取ることだった」

鳴りやま「ぬぇ!?」

452ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/29(金) 21:53:41 ID:ySe14y8Y00

ミカ「ファイターたちの一人を倒して、ソイツを盾にしたんだ。と言っても向こうは金で雇われたヤツらだから、仲間意識なんかありゃしない。普通に攻撃された」

鳴りやま「じゃあどうやって乗り切ったんだよ!?」

ミカ「盾を増やした。オレの周りに四人ぐらい並べて、鉄壁の防御ってな」

勇気「それじゃあジリ貧じゃないか。敵は百人もいたんでしょ?視界も狭まるし、盾ごと押し潰されたり、かえって邪魔になると思うけど…」

ミカ「いや、盾はすぐに離した。そしてこう言ったんだよ。"作戦通りに頼むぞ"ってな」

奇跡「どういうこと?仲間がいたの?」

ミカ「いや?」

勇気「そうか!集まったファイターたちの中に、仲間が潜んでいると思わせたんだ!」

鳴りやま「おおお!!仲間割れさせたんだな!仲間にも平気で攻撃できるようなヤツらだし、疑心暗鬼にさせるのもカンタンってわけだ!さっすがミカさんだ!それでその後はどうなったんだ!?」

ミカ「まあもちろんそれだけで全員倒せるほどファイターも甘くはないからな。残ったヤツらは力技で倒した。それから資産家の屋敷に突入し、悪事を暴いて捕まえた。完全に元通りとはいかないが、町もある程度は平和に戻ったよ」

鳴りやま「くぅーっ!!かっけえぜ!!俺も早く里を出てミカさんみてえなヒーローになりてえ!!」

ミカ「はは、オレはヒーローなんかじゃないよ。ただ人が困ってたら見捨てられないだけだ」

鳴りやま「それをヒーローって言うんじゃねえか!分かってねえなぁミカさんは!自分がどんなにピンチになろうとも悪に立ち向かう!一本筋の通った自己犠牲の精神ってのがアツイ!!俺も鳴りやまないっつう筋を生涯貫く所存ではあるけどよ、口では簡単に言えてもやっぱなかなか実践できるモンじゃねえよな!」

奇跡「すぐ鳴りやむしねぇ♪きゃは☆」

鳴りやま「うるせぇっ!」

ミカ「そんな大したモンじゃないんだけどな…」

453ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/29(金) 21:54:23 ID:ySe14y8Y00

勇気「謙遜しなくていいさ。僕もミカには助けられた。改めて礼を言うよ。ありがとう」

ミカ「はは、大袈裟な…」

鳴りやま「ヒーローと言えば、勇気さんちの子もたしか勇者って名前だったよな!」

勇気「うん。ヒーローみたいに勇敢で強い人になってほしいっていう願いを込めてるんだ」

ミカ「子供がいたのか」

勇気「うん。いつか大きくなったらミカにヒーローの何たるかをご教授願いたいな」

ミカ「やめてくれよ。オレに教えられることなんかない。本人が困ってる人を助けたいと思うならそうすればいいし、思わないならしなくていいんだ。変な使命感に取り憑かれて無茶して、もし取り返しのつかないことになってもオレは責任取れないぞ」

勇気「たしかにそうだね。やっぱりミカはしっかりしてるなぁ」

鳴りやま「そういやミカさんって今何歳なんだ?」

ミカ「十七だ」

勇気「えぇっ!?若っ!てっきり僕と同い年くらいかと…」

ミカ「老けてるって言いたいのか」

勇気「いやいやいや!すごいしっかりしてるからさ!」

鳴りやま「種族違うと全然分かんねえよなー!ホント外の世界はいろんな種族がいて面白そうだ!もっといろんなヤツらに会ってみてえ!さっきの話に出たリンク族とかドンキー族とか!」

奇跡「きっと鳴りやまぬクンは弱いから外出許可出ないよぉ♪」

鳴りやま「なにィ!?お前も人のこと言えねえだろがっ!つうかこれから超鍛えまくって殺意にも負けねえ戦士になるんだよ俺は!楽しみにしとけよな!」

奇跡「気長に待ってるよぉ♪きゃはっ☆」

その後もしばらく談笑は続いた。

454ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/29(金) 21:55:00 ID:ySe14y8Y00



ミカ「もう暗くなってきたな。そろそろ行くよ」

奇跡「えぇ〜!」

鳴りやま「ミカさん一日くらい泊まってけよ!」

ミカ「泊まると言っても、この里に宿屋なんかないんじゃないのか?」

勇気「じゃあ僕の家に泊まる?子供が大きくなった時のために空けてる部屋が一つあるんだ」

鳴りやま「勇気さんナイス!!それでいいだろミカさん!」

ミカ「やれやれ、分かったよ」

そしてヨシオ族たちは病院前のベンチから解散し、ミカは勇気の家に招かれた。

455ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/29(金) 21:57:11 ID:ySe14y8Y00



勇気「ただいまー!」

勇気たちが家に着くと、勇気と同じ青のヨシオ族が出迎えた。

勇気妻「おかえりー…ってどうしたのその怪我!」

勇気「例の変なヤツらにやられてね…」

勇気妻「またなの!?しつこいねー…あれ、その人は?」

勇気「この前話したミカだよ。今日も彼に救われてね。今日はウチに泊めることになったんだよ」

勇気妻「あなたがミカさん!?夫を救っていただきありがとうございます!!」

勇気の妻はミカの両手を握り、何度も頭を下げた。

ミカ「気にするな。それより本当にこの家に世話になってもいいのか?」

勇気妻「どうぞどうぞ!何日でも泊まっていってください!」

勇気「ほらね、言ったでしょ。ウチの妻は恩人を無碍にしたりしないさ」

ミカ「ああ、それじゃあよろしく頼む」

勇気「うん。勇者にも紹介しなきゃね」

勇気妻「勇者ー!ちょっと来てー!」

妻が家の中に向かって叫ぶと、トタトタと軽い足音を立てて小さなヨシオが出てきた。

勇者「なに?おかあさん。あ、おとうさん!おかえりなさい!」

勇気「ただいま勇者。いい子にしてた?」

勇者「うん!」

ミカ「へえ、この子が勇者か。勇気によく似てるな」

勇者「…だれ?」

ミカ「ミカだ。よろしくな」

ミカは勇者の頭をポンポンと叩く。

勇者はミカの顔を不思議そうに見つめていた。

それから勇気一家と雑談を交えながら、ご飯を食べ風呂に入って就寝した。

456ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:29:43 ID:BcgIpGnM00



翌朝。

ミカ(さて…信頼はかなり得ているが…長居はできない。今日にでも里長に近づき、真相を確かめる)

ミカは布団から出て居間へ。

勇気妻「ミカさん、おはようございます」

ミカ「ああ、おはよう」

勇気「おはよう。よく眠れた?」

ミカ「ああ、ありがとう。勇気は今日も見張りか?」

勇気「うん。当番だからね」

ミカ「そんな怪我してるのに大丈夫か?」

勇気「大丈夫大丈夫!今日はふやけるさんも手伝ってくれるみたいだし」

ミカ「ふやける?」

勇気「ご近所さんだよ。強さは僕と同じくらいだけど、二人がかりならもし昨日のヤツらが来てもきっと勝てる」

勇気妻「ミカさんもいるしね!」

勇気「ダメだよミカに頼っちゃ。いつまでも里に居続けるわけにはいかないんだから。僕たちだけでしっかり里を守れるようにしなくちゃ!」

ミカ「ああ。お前たちならきっと大丈夫だ」

勇気「ありがとうミカ」

457ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:30:29 ID:BcgIpGnM00

ミカ「…そう言えば、昨日の子供は当番に入ってないのか?」

勇気「昨日のって…ああ、殺意くんのこと?もちろん入ってるよ。たしか来週が殺意くんの当番かな。あの若さにして里で一番の強者だよ」

ミカ「へえ。オレも手合わせしてみたいな」

勇気「えっ!?いや、いくら殺意くんが強いって言っても、さすがにミカには敵わないんじゃないかなぁ」

ミカ「勝ち負けはどうでもいいさ。ただ里一番のその強さを見てみたい」

勇気「ふぅん。じゃあ頼んでみよう。殺意くんも戦うのは好きみたいだし、たぶん承諾してくれると思うよ」

ミカ「そうか、ありがとう勇気」

それから勇気は殺意に電話を掛け、手合わせすることが決まった。

458ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:31:12 ID:BcgIpGnM00



それから数時間後の昼過ぎ。

殺意とミカは里の中央にある広場で対峙する。

ざわざわ…

その周りに数十人のヨシオ族が集まり、二人の戦いを見守る。

殺意「僕に挑んでくるとはね。昨日はビビってたように見えたけど…どういう風の吹き回しだ?」

ミカ「ただの力試しさ。さあ、始めようか」

殺意「手加減はしないぞ」

ミカ「勿論」


ドドドドドドドド…


そして二人は戦い始めた。

鳴りやま「うおお!!すげえな二人とも!」

奇跡「奇跡ちゃん、レベル高すぎて何やってるのかわかんない☆」

鳴りやま「俺も」

459ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:32:50 ID:BcgIpGnM00



そして十数分後。

殺意「はぁ……はぁ……」

ミカ「ふぅ……やるな…」

殺意「お前こそ…」

ドサッ…

二人は同時に力尽きて倒れた。

モブオ「さ、殺意と引き分けただと!?」
モブオ「すごかった…」
モブオ「二人とも化け物すぎ…」

鳴りやま「わははは!やっぱすげえや!殺意と引き分けるミカさんもすげえし、ミカさんと引き分ける殺意もすげえ!」

奇跡「奇跡ちゃんもすごい?」

鳴りやま「なんでだよ!すごくねえよ!それより二人をベッドに運ぶぞ!」

奇跡「そうだね♪」

鳴りやまぬと奇跡は倒れた二人の元へ駆け寄る。

鳴りやま「大丈夫かー?殺意」

バチンッ!

倒れた殺意の顔を覗き込んだ鳴り止まぬの頬を、強烈なビンタが襲った。

鳴りやま「な、何すんじゃーい!!」

殺意「大丈夫に決まってるだろ。僕を誰だと思ってるんだ」

ミカ「まったく、本当に血気盛んだなお前」

ミカと殺意はけろっとした顔で起き上がる。

460ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:34:16 ID:BcgIpGnM00

奇跡「二人とも平気なの?」

ミカ「ああ。ちょっと休んでただけさ。殺意はまだ全力を隠してるみたいだしな」

殺意「それはお前も同じだろ」

ミカ「はは、本気でやり合ったらどっちか死ぬんじゃないかと思ったんでな」

殺意「フン、死ぬのはお前だ」

殺意はそう言い残して去っていった。

鳴りやま「か、かっけぇー…!!俺もいつか言いてえぜ!俺たちが全力でやり合えば、どちらかが死ぬことになるだろう…的な!」

ミカ「はは、茶化すなよ」

鳴りやま「いやいやマジだって!それにしてもあれで本気じゃなかったなら二人ともどんだけ強いんだよ!俺たちまったくついていけなかったぜ!」

奇跡「ホントすごいねぇミカさん♪どうしたらそこまで強くなれるのぉ?」

ミカ「そりゃあ特訓するしかないだろうな。うちは結構厳しい家庭で育ったから、チビの頃から英才教育を施されてな。お前たちぐらいの歳の頃にはもう戦闘の基礎は大体できてた」

鳴りやま「マジかよ!?」

ミカ「ああ。旅の出たのもその頃だからな。そこらのファイターじゃ相手にならないレベルではあっただろう。まあ、殺意に比べれば可愛いもんだ」

鳴りやま「たしかに…俺らと同世代で今のミカさんと互角ってやっぱヤベーなアイツ…逆らわないようにしないと…」

奇跡「それはいつものことだけどねぇ♪」

???「ミカ殿、お初にお目にかかる」

そこへリボン無しのヨシオが近づいてきた。

ミカ「お前は?」

461ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:35:15 ID:BcgIpGnM00

???「私は㍑ヨシオ。この里の平和を保つため日々見廻りをしている、聖騎士の一族だ」

ミカ「聖騎士…」

㍑「ああ。そうは言っても実力はダメダメなのだ。里の見廻りを任されるということは、外からの敵とは戦わせてもらえないということでもある。ヨシオ同士の喧嘩を止めに入ったり、迷子を親元に届けたりするのが関の山だ」

ミカ「いいじゃないか。立派な仕事だ」

㍑「だが私はもっと強くなりたいのだ。最近は将来有望な若いヨシオ族も増えてきている。今のままではろくに見廻りすらこなせなくなるだろう…」

鳴りやま「そりゃずるいぜ㍑さん!俺にも教えてくれよミカさん!強くなる特訓の方法!」

奇跡「奇跡ちゃんはパスかなぁ♪だって奇跡ちゃんは可愛さっていう最強のチカラを持ってるから☆」

ミカ「…まあいいが、一朝一夕で強くなれるとは思うなよ?特訓は毎日コツコツ続けてようやく形になるんだ」

鳴りやま「はははは!分かってるよ!」

㍑「望むところだ」

ミカ「分かった。他に教わりたいヤツはいるか?オレは今日中にはここを発つ。チャンスは今だけだぞ」

ミカが周りのヨシオたちに言うと、ゾロゾロと集まってきた。

鳴りやま「ははは!まるで学校の先生みたいだな!ミカ先生!」

ミカ「よし、じゃあ始めるぞ」

そしてミカは特訓方法をヨシオたちに伝えた。

462ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:35:59 ID:BcgIpGnM00



数十分後。

鳴りやま「こ…こんなことミカさんは毎日やってんのか…すごすぎる…」

ミカ「いや、オレの特訓はこんなもんじゃないぞ。いきなり厳しすぎる特訓は危険だからな。お前たちに合わせた内容を教えた」

㍑「ありがとうミカ殿。早速今日からこの特訓を試させていただく」

ミカ「ああ」

モブオ「ミカさん、ちょっといいですか?」

一人のヨシオ族がミカの前に現れた。

ミカ「なんだ?」

モブオ「わたくし、里長の世話をしている者です。あなたに里長から話があるとのことで、里長の家まで来ていただきたいのです」

鳴りやま「なんだなんだ、里長から呼び出し?ミカさん一体何やらかしたんだ?里長、ああ見えても怒ると結構怖いぞ!俺も昔里長の頭のクルクルを引っ張ってめちゃくちゃ怒られたんだよなぁ!いやぁ、あん時はマジで里を追い出されるかと思ったぜ!」

奇跡「奇跡ちゃんは怒られたことないけどなぁ♪鳴り止まぬクンが嫌われてるだけじゃないかな?」

鳴りやま「ひでぇ事言うな!」

463ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:39:56 ID:BcgIpGnM00



数分後。

ミカは里長の家に来た。

里長「ふぉっふぉっふぉ、ずいぶんと里の者たちが世話になったようじゃのう」

ミカ「何、ちょっと世間話をしただけだ。世話になったのはこっちの方だよ」

二人は机を挟んで向かい合って座っている。

ミカ「で、話ってのは?」

里長「ああ。勇気から詳しい話を聞いたのじゃ。お主がいなければ里に大きな被害が出ていたかもしれんとな」

ミカ「大袈裟な…あの殺意って子供がいれば大抵の敵はなんとかなると思うぞ」

里長「ふぉふぉふぉ、たしかにのう。じゃが礼はさせてくれ」

ミカ「礼?」

里長「礼と言ったらもちろんこれじゃ!」

どんっ!!

里長は机の上に紙の束を置いた。

紙には不思議な模様が描かれている。

ミカ「なんだこれは?」

里長「見れば分かろう、金じゃ。百五十万ある」

ミカ「…この里の通貨か?……悪いが、これは里の外じゃ紙切れだぞ」

里長「…なぬ!?」

モブオ「だから言ったじゃないですか!」

里長の後ろで待機していた側近のヨシオが言う。

里長「だってワシも里の外に出たことないんじゃもん!」

モブオ「ないのかよ!?昔は外出許可とか必要なくて普通に出歩いてたって聞きましたけど!?アンタよく里長になれたな!?」

里長「それでヨシオ族は外で危険な目にあったんじゃもん!だからワシがこのルール作ったんじゃもん!偉いんじゃもん!」

ミカ(なるほど…ある程度強いヨシオ族しか外に出れないのに"ヨシオ族は弱い"と広く知られてるのはそういうカラクリか)

464ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:41:00 ID:BcgIpGnM00

モブオ「はぁ…すみませんミカさん、何か他にできることはないでしょうか」

ミカ「いいよ礼なんて。もし何か渡されても初めから断るつもりだった」

モブオ「しかしそれでは示しがつきません」

ミカ「言っただろ、世話になったのはこっちだってな。一晩泊めてもらって飯も食わせてもらった。それでチャラだ」

里長「なんと良い人なんじゃ…感動した…」

モブオ「感動してる場合かジジイ」

里長「…そうじゃ、ならば一つとっておきの話をしよう!」

ミカ「話?」

モブオ「ちょっと里長、それは…」

里長「よいのじゃ。こやつならば里の外に情報を洩らすこともあるまい。よいか、ミカ殿。これは里の秘密の話じゃ」

ミカ(来たか…)

里長「絶対に里の外で話してはならんぞ…」

そう前置きしてから、里長は話し始めた。

465ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:42:15 ID:BcgIpGnM00




ミカ「……本気で言ってるのか…?」

里長「そうじゃ。この事実は里の中でも一部の選ばれしヨシオにしか伝えられておらん」

ミカ「なんでそれをオレに…?」

里長「ふぉっふぉっふぉ、お主が世界の平和を守るヒーローならば、この事を知っておいた方がよいと思ってのう」

ミカ「そんな大したもんじゃないが……そうか…確かにそれが事実ならオレのこれからの活動もいろいろと考えていかなきゃならないかもな…」

里長「どうするかはお主自身が決めるのじゃ。来たるべき時に備えるもよし、ただの鎖された里の言い伝えと切り捨てるもよし」

ミカ「切り捨てやしない。だが、しばらく考えることにするよ」

里長「ああ。それでよい」

ミカ「ありがとう。この里に来れて良かった」

そう言ってミカは立ち上がる。

里長「もうゆくのか?それならば皆を集めて見送ろう」

ミカ「ハハ、だからいちいち大袈裟なんだよ。今日も勇気が見張りやってるんだろ?見送りならアイツだけで十分さ」

里長「そうか。お主らしいのう。それもよかろう。それとその金はやはりお主が持っておれ」

ミカ「ん?いや、だがこれは…」

里長「ふぉっふぉっふぉ、外では使えずとも里では使えるじゃろう。またいつでも遊びに来てよいからの」

ミカ「そういうことか。フッ、じゃあありがたく貰っておくよ」

里長「お主ならいつでも大歓迎じゃ」

ミカ「ああ、じゃあ、元気でな」

そしてミカは里長の家を去った。

466ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:43:40 ID:BcgIpGnM00



里の門にて。

勇気「あ、ミカ!もう行くの?」

ミカ「ああ。世話になったな、勇気」

勇気「こっちのセリフさ!あ、そうそう、彼がふやけるさんだ」

ふやける「どうも」

勇気の隣に立っていた緑のヨシオ族が軽く会釈した。

ミカ「オレはミカ。よろしくな、つってももう出るんだが」

ふやける「うん。またいつか来た時はゆっくり話を聞きたいものだねぇ」

ミカ「ああ、そうだな。それじゃあ二人ともまた会おう」

勇気「ああ!またいつか!」

ミカは里を去った。

467ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:46:38 ID:BcgIpGnM00




翌日。

同国内都市部の路地裏で、ミカと黒服は話していた。

黒服「何だと!?」

ミカ「報酬金はいらねえ。じゃあな」

黒服「ふざけるな貴様!!こちらに何人の犠牲が出たと思っている!?」

ミカ「犠牲って…死者は出てないだろ。浮いた報酬金分を治療費に充ててやれ」

黒服「そういう話ではない!!貴様、我々を裏切るつもりか!!」

ミカ「元々仲間でもなんでもねえ。報酬金取らねえだけありがたく思えよ」

黒服「失敗しておいて何を上から…!!」

ミカ「失敗?オレがいつ失敗した?」

黒服「とぼけるな!ヨシオ族を皆殺しにするという契約だろう!!それを貴様は一人も殺さずにノコノコと…!」

ミカ「だから…その契約を破棄するっつったろ」

黒服「そんな勝手が許されるわけ…」

ミカ「最初からそういう契約だった筈だ。里が隠している秘密なんてのはお前らの勝手な妄想だ。こういう類の依頼は珍しくもないが、その目的自体が存在しなかった場合、契約は破棄される。味方殺しの鉄則だ。別にオレは快楽殺人者じゃあない。無駄に殺しはしねえ」

黒服「じゃああの里には何も存在しなかったとでも言うのか!?」

ミカ「しつこいな。そう言ってるんだ」

468ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:47:32 ID:BcgIpGnM00

黒服「……!!…フ…フハハ!そうか…どうやらこちらのミスだったらしい…」

ミカ「やっと分かったか」

黒服「ああ…こちらの人選ミスだ…!」

ミカ「あ?」

黒服「あんな小さな里の秘密一つ持って来れない馬鹿だとは、見抜けなかったよ!!」

バッ!!

黒服が突然手を上げる。

ミカ「!」

同時にその路地を囲む建物のあらゆる窓から、銃口が突き出し、ミカへと向けられた。

さらに逃げ道を塞ぐように、大量の黒服たちが現れた。

黒服「やれ!!」

バッ!!

黒服が上げた手を下ろすと同時に。


ドドドドドドドド!!!!


一斉射撃が始まる。

ミカ「ったく、随分手荒い真似をしやがる」

ミカは当然のように銃撃をかわしながらぼやく。

黒服「ろくに仕事もできない裏社会のゴミなど、消されて当然!!」

ミカ「オレに勝てると思ってるのか?」

黒服「フン!貴様の力は二度も見ている!今貴様を囲んでいるのは、あの時の三倍の戦力だ!」

ミカ「…正気か?殺さないよう手加減してたに決まってるだろ…」

それからミカは黒服を全員戦闘不能にし、都市を発った。

469ハイドンピー (ワッチョイ 7239-a139):2022/07/30(土) 21:49:42 ID:BcgIpGnM00



ミカ(…しかしまさか、あんなものが里の秘密だったとはな。くだらねえ話だ)

ミカは歩きながら、里長との話を回想する。



里長「あれを持ってきてくれ」

モブオ「は、はい…」

すると側近は少し厚みのある黒い板のようなものを持ってきた。

その上部には更に小さな灰色の板が刺さっている。

ミカ「なんだそりゃ?何の機械だ?」

里長「ゲーム機だ。"ニンテンドウ64"と言う」

ミカ「…はあ?」

里長「そしてここに刺さっているカセット…これこそが、"大乱闘スマッシュブラザーズ"じゃ」

ミカ「待て待て、なんで急にゲーム機を?」

里長「実はこれはこの世界にたったの一台しか存在しないのじゃよ」

ミカ「…自慢のコレクションでも見せてくれたのか…?」

里長「そうではない。信じろという方が無理やもしれんが…」



回想を終えたミカは。

ミカ(…本当に馬鹿げた言い伝えだ。誰があんなもん信じる?それが事実だとしても、知ったところでどうすりゃいいってんだ?)

ハッ、と思わず笑いをこぼす。


ミカ("この世界がゲームの中の世界"だなんてな…)

470はいどうも名無しです (アウアウ 1c71-3fbb):2022/07/30(土) 22:16:21 ID:wU3FdC7wSa
さらっととんでもない爆弾残しやがった!?

471ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:08:05 ID:ciPArYfsSd





極道の町。


???「さあ…ショータイムだよ!お前たち!」


「ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


ドドドドドドドドドドドドドドドド!!


リーダーと思しき人物の号令とともに、謎の軍団が闇夜の町に散らばっていく。

472ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:10:16 ID:ciPArYfsSd



須磨武羅組事務所では。

人間「あ!?町じゅうで不良どもが暴れてる!?」

須磨組員1「はい!やべえっすよ!一人一人はただのガキっすけど、問題は数っす!こりゃウチだけじゃとても対処しきれねえ!」

人間「対処しきれねえっつったって、ウチはどこの組からも敵視されてんだ!協力は仰げねえぞ!」

須磨組員2「じゃ、じゃあどうしますか!?」

人間「どうってお前、とにかく行くしかねえだろ!須磨武羅組総動員で馬鹿どもを止めるぞ!」

須磨組員たち「はい!」


ダッ!

人間たちは外へ出る。


「ぎゃはははははは!」
「やっちまえー!」
「こんな町潰れちまえばいいんだ!」
「うぇーい!壊すの気持ちいいーっ!」


人間「な…!地獄絵図じゃねえか…!」

凶器を持った若者たちが、人を襲い、建物や車を破壊し、物を盗んでいた。

住民「いやぁぁっ!」

不良「ぎゃははは!泣き叫べー!」

人間「やめろボケ!」


ドガッ!!


人間は不良を殴り飛ばす。

人間「何が起こってやがるんだ…!!」

473ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:11:18 ID:ciPArYfsSd

須磨組員1「人間さん…じゃなくて親分!」

人間「別に人間でいいっていつも言ってんだろ!どうした!」

須磨組員1「奴らが暴れてる原因が分かりました!」

人間「何!?」

須磨組員1「これ見てください!」

組員は持っていたノートパソコンの画面を見せる。

人間「これは…」

須磨組員1「匿名掲示板の書き込みっす…!なんかネット上で盛り上がってるグループがあって、ソイツらが今日この町でオフ会で集まったらしいんですけど…」

須磨組員2「聞いたことあるな…しかしこの書き込みは一体なんだ?くせぇだの、煙たいだの…」

人間「煙…コイツらのブッ飛んだ行動…それにあのキマッた顔…」

須磨組員1「ええ…おそらく会場でクスリを撒きやがったんですよ…!!」

須磨組員2「なっ!?な、なんてことしやがる!」

人間「だとしたら…おそらく犯人はそのオフ会を仕込んだ奴か!」

ダッ!!

人間はその会場の方向へ走り出す。

組員もそれを追う。

人間「てめえらは暴れてるヤツらを抑えてくれ!少しでも被害を止めるんだ!」

須磨組員2「ウス!!」

474ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:11:54 ID:ciPArYfsSd

須磨組員1「あ!待ってください親分!仕込んだのはこの"古の八羽鴉"ってヤツっす!」

組員はそう言ってパソコンの画面を見せる。

須磨組員2「八羽鴉!?八人もいやがるのか!?」

人間「チッ、たしかにこれだけの人数にクスリ吸わせたんなら、数人がグルになってる可能性も高えな…!」

須磨組員1「ファイターもいるかもしれません!片割れを呼びましょう!」

人間「ああ。本当は頼りたくねえが…こりゃそんな悠長なことも言ってられねえ!」

須磨組員1「すぐに連絡します!」

そして組員たちは暴徒の対処に当たり、人間はそのオフ会会場へと走った。

475ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:13:21 ID:ciPArYfsSd



数分後。

人間「おう片割れ!」

会場へ向かう途中、片割れと合流。

片割れ「何が起きてんねんコレ?」

人間「かくかくしかじかでな。一応犯人の目星は付いちゃいるが、まだ会場にいるかどうか…とにかくとっとと調べるぞ!」

と片割れに説明している間に、二人は会場前まで来た。


バンッ!!!


人間は走ってきた勢いのままに会場の扉を開ける。

人間「出てこいクソ野郎!!」

???「クク…そう怒鳴るなよ人間。あたしは逃げも隠れもしねえさ」

そこには一人の緑サムスが立っていた。

片割れ「何や、普通におるやんけ」

人間「サムス族…俺を知ってるってこたあ、須磨武羅組に何か恨みでも持ってんのか!?」

???「さあ?どうだろうね」

人間「チッ、めんどくせえ。これだけのことをやらかしたテメェは問答無用でムショ行きだぜ」

???「ククク…」

人間「何を笑ってやがる。言っておくがテメェが一人じゃねえことぐらい分かってんだ、古の八羽鴉!!不意打ちしようったって無駄だぜ!」

???「…一人さ。あたしにゃもう仲間なんざいねえ」

人間「何?」

???「お前も見ただろ?あん時の、アイツらがあたしを見る目…ひでえモンだったぜ…クク…」

人間「テメェ…一体誰なんだ…!?」

???「寂しいねえ。まだわかんねえか?」

カランッ…

緑サムスは頭部装甲を脱ぎ捨てた。

476ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:14:41 ID:ciPArYfsSd

人間「…テメェは……フルパワー…!?」

フルパワー「その通り!覚えててくれたのか!嬉しいね!!ククク…」

片割れ「おお、古(ふる)八(ぱ)羽(わ)鴉(あ)って、そういうことか!…ところでコイツ誰やねん」

人間「レディースの元総長だ…昔クスリと強盗やって、俺が捕まえたんだが…テメェいつの間にムショから出てやがったんだ?」

フルパワー「つい先月さ。そしてムショの中でずっと考えてた計画をすぐに実行した」

人間「チッ…何の反省もしてませんってか」

フルパワー「会場のセッティング、大変だったんだぜ?クク…まあその甲斐あって町は大混乱、そしてお前たちはここに来た!何もかもあたしの思惑通りに事が進んでる!!クククク、最高の気分だよ!」

人間「ケッ、気分が良いのはクスリのせいだろ!」

フルパワー「そうかもなァ!!」


ドウッ!!!


フルパワーはいきなりチャージショットをぶっ放した。

人間「うおっ!」

人間は素早くかわす。

フルパワー「クク、さすが"使える人間"だな!」

人間「俺がここへ来るのも予想済みだったってこたぁ、復讐が目的なんだろうが…タイマン張ってやる筋合いはねえ。片割れ、速攻で潰すぞ!」

片割れ「誰に命令しとんねん!」


ドガガガッ!!!!

バチバチバチ!!!!

ズドォーン!!!!


そして二人は瞬く間にフルパワーを戦闘不能にし、地面に押さえつけた。

477ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:16:17 ID:ciPArYfsSd

フルパワー「はぁ…はぁ…さすがに二人相手じゃ歯が立たねえか…ククク…」

片割れ「何わろてんねん」

人間「クスリでイカれてるだけだ。そろそろサツも来る頃だぜ。今度はしっかり反省してこい」

フルパワー「…お前ほどのモンが…おかしいとは思わなかったのか?クク…」

人間「何…?」

フルパワー「上を見てみな」

人間と片割れは罠かと警戒しながらも、ちらっと見て確認する。

人間「なっ!?」

片割れ「ナイフ!!」

そこにはナイフと、人間の息子、そして元親分の息子の三人が眠らされ、縛られていた。

そしてその足元には爆弾のようなものが設置されている。

人間「テ…テメェ!!」

人間は激昂し拳を振り上げる。

フルパワー「おっと…いいのか?人間。あたしの指先一つでアイツらは木っ端微塵になるんだぜ?クク…」

人間「クソッ!!」

478ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:17:46 ID:ciPArYfsSd

片割れ「…なんで今更言うねん。脅しならワシらと戦う前からやっときゃええやろ」

フルパワー「なぁに、念のための足止めさ…本当のテストを始める前に速攻で潰される可能性もあったからな…」

片割れ「テスト?」

フルパワー「事実、歯が立たなかったワケだ…用意しておいて正解だった…クク…」

片割れ「いやちょい待てや。テストて何やねん」

フルパワー「すぐに分かるさ。お前たちがコイツの力を試すに相応しいかどうかのテストは終わった…申し分ねえ強さだ…!そしてここからが…本当のテストだ…!!」

その瞬間、フルパワーの体がビクンと跳ねた。

片割れ「何や…!?」

二人は咄嗟にフルパワーから離れる。

フルパワー「う…あああああ…!!」

フルパワーはもがき始め、その顔には血管が浮き出る。

人間「な…なんかヤベェクスリ打ちやがったのか!?スーツん中に仕込んでたのか!」

片割れ「クスリの性能テストっちゅう訳かい…」

フルパワー「フゥゥ……クク…その通り…お前たちのような、ファイターの中でも最上位の連中を超えるために作った、最強の薬…その名も"フルパワー薬"さ!!」


ダンッ!!!!


フルパワーは倒れた状態のまま、両手足を使って人間に飛びかかった。


ドゴォ!!!


人間「ぐはっ…!!」

そのタックルを受けて人間は吹っ飛ばされ、壁に激突。

片割れ「人間!」

479ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:18:58 ID:ciPArYfsSd

フルパワー「ウオオオォ!!」


ブンッ!!!


片割れ「うおっ!?」

フルパワーはアームキャノンを振り回し、今度は片割れを襲う。


ズドォッ!!!!


片割れ「ごはっ…」

そして片割れも簡単に吹っ飛ばされる。

フルパワー「クク…クククク…遅い…!全てが止まって見えるぜ…!最強だ…!!人間も片割れも…あたしには敵わない!!」

片割れ「待て待て…ワシはまだやられとらんぞ…」

片割れはフラつきながらも立ち上がる。

人間「…く…俺も…まだ…やれる…!」

人間も意地を見せて立ち上がる。

片割れ「ハハハ!死にそうやんけ!」

人間「うっせぇな…」

フルパワー「ククク…一撃だぜ!?たった一撃でそのダメージだ!!」

人間「テメェはもっとうっせぇ…!」

片割れ「あのボケ、パワーは一丁前やが、動きは単調や。冷静に立ち回りゃあワシらの敵やない」

人間「へへ……俺もちょうど…そう思ってたとこだ…」

フルパワー「何ブツブツ言ってやがる!!」


ダンッ!!


フルパワーはまた人間に向かって突撃する。

人間「くっ!」

人間はギリギリでかわす。

片割れ「ピカチュゥ!」


バチッ!!


フルパワー「ぐぅッ!」

人間「ほっ!」


ボフッ!!


フルパワー「あっつ!!クソッ!ちょこまかと…!!」

電撃とファイアボールを駆使して二人は慎重に反撃していく。

480ハイドンピー (スプー a59e-f886):2022/08/16(火) 19:19:45 ID:ciPArYfsSd



そして数十分間の攻防が続いた末。

フルパワー「がはっ…!?」

ガクッ!

フルパワーは膝をつき、苦しそうに胸を押さえる。

人間「はぁ……はぁ……ようやくくたばりやがったか…」

片割れ「…ワシらが倒したっつうより、クスリ切れって感じに見えるけどな…」

人間「どっちでもいいだろ…戦闘不能にゃ変わりねえ…」

フルパワー「…はぁっ…はぁっ……くそっ……クソッ!…これでも足りねえってのか…!!なら……!!」

片割れ「オイオイさらに打つ気か!?やめとけやめとけ!意味ない!死ぬで!」

人間「スピードやパワーの問題じゃねえことくらい…分かるだろ…」

フルパワー「うるせぇぇェェェェ!!」


ビクンッ!!


フルパワーの体が跳ねる。

片割れ「う、打ちよった…!!」

人間「お…おい…大丈夫か…」

フルパワー「…ぉあぁぁ……あ……」

人間「ダメだ、トんでやがる…」

フルパワーは意識を完全に失い、全身から汗を流しビクビクと震えていた。

片割れ「ったく…とっととアイツら解放して帰るで」

人間「ああ」

481ハイドンピー (ワッチョイ 4373-f886):2022/08/16(火) 19:21:33 ID:yr/mznqA00


それから二人は会場の上部に捕らわれていたナイフたちを助け出し、人間の手によって爆弾も解除した。

片割れ「ハハ、さすが"使える人間"サマやなぁ。爆弾解除もお手のもんや」

人間「ま、これくらいはな…」

片割れ「そろそろサツも来るやろ。ワシはずらかるで。ナイフ頼むわ」

人間「おう…って俺も休んでる場合じゃねえよ!町の暴徒を止めねえと…!」

片割れ「ボケ、そんな体で無茶すなや。ワシに任しとけ」

人間「…ったく、分かったよ…組のモンでもねえのに偉そうに命令しやがって」

片割れ「組に入ったらお前の子分やぞ。むしろ命令できんやろ」

人間「はは、確かにな…」

そんな軽口を叩いて、片割れは町へと向かった。

ナイフ「ウンン…?」

人間「お、ナイフ、目が覚めたか」

ナイフ「あれ…?親分…俺は一体…」

人間「ちょっと事件に巻き込まれてな。眠らされてた」

ナイフ「……ハッ!?そうだ…若たちと出掛けてたら後ろからいきなり…!す、すまねえ親分!!俺がついていながら…!!」

人間「大丈夫だ。もう終わったよ。若もウチのせがれも無事だ。横見てみろ」

そこには子供たちが眠っていた。

ナイフ「よ、良かった…」

人間「あとは町で暴れてる奴らが正気に戻ってくれりゃあ一件落着…とはいかねえか。これだけ被害が出ちまったら」

482ハイドンピー (ワッチョイ 4373-f886):2022/08/16(火) 19:23:01 ID:yr/mznqA00


ファンファンファンファン…


そこへパトカーのサイレンが近づいてきた。

人間「お、ようやく来たみてえだな…」


ダダダダダダ…


警察「警察だっ!フルパワー、ここにいることは分かっている!薬物を散布した容疑により逮捕する!」

十数人の警察が駆けつけた。

人間「遅えぞ。フルパワーなら捕まえといたぜ。とっとと持って帰んな」

人間はパワードスーツを脱がして縄で縛ったフルパワーを指差す。

警察「…に、人間か…ってどうしたその怪我は…!?いくらフルパワーがファイターとはいえ、お前がボロボロになるほどの強さじゃあないはずだろう!?」

人間「さっきてめえで言ってたろ…クスリだ。身体能力を大幅アップしやがった」

警察「クスリ…!?そ、そうか…しかしこいつどうやって釈放から一ヶ月でここまで…」

人間「どっかの組と繋がってんじゃねえか?クスリなんて再犯率めちゃくちゃ高えんだから、ちゃんと見張っとけよ」

警察「面目ない…」

それから数人の警察はフルパワーをちゃんとした拘束具で拘束し、収容所へと連行した。

残った警察たちは会場に他に危険物がないかや、フルパワーに協力者がいなかったかなどの捜査を始めた。

483ハイドンピー (ワッチョイ 4373-f886):2022/08/16(火) 19:23:58 ID:yr/mznqA00

ナイフ「…クスリ吸わされちまったヤツらはどうなるんだ?」

人間「故意に吸ったわけじゃねえし、病院で一旦様子見して解放されんじゃねえか?モノとか人に加えた危害がデカすぎるヤツはそう簡単にはいかねえだろうがな」

ナイフ「そうか…なんか可哀想だな。やりたくてやったわけじゃねえのにさ」

ピピピピピピ…

人間「まあな。元々アイツらは世間に不満があって集まった連中だ。ただでさえイベントで舞い上がってるとこにクスリなんか吸わされたら、ああなっちまうのも無理はねえ」

ナイフ「ホントひでえことしやがって…許せねえよ…」

人間「…ところでなんか変な音しねえか…?」

ナイフ「…うん。俺も思ってたとこ」

ピピピピピピ…

人間「どっから聞こえてんだこれ」

ナイフ「すげえ近い気がするんだけど…」

ナイフがなんとなく頭を触ると。

ポロッ

ナイフ「え?」

人間「え?」

いつも被っている赤い帽子が落ち、その中から小さな丸い機械が転がり出てきた。


ピピピピピピピピピピピピピピピピピピ


人間「伏せろっ!!」


ドガッ!!


人間はすぐにその機械を人のいない方へ蹴り飛ばした。

その瞬間。


カッ!!!!


機械から黒い閃光が放たれた。

人間「!!」


ドガッ!!


ナイフ「あだっ!?な、何すん…」

人間はナイフを突き飛ばし、一人、閃光に呑み込まれた。

ナイフ「お、親分ーーっ!!」

484ハイドンピー (ワッチョイ 4373-f886):2022/08/16(火) 19:24:46 ID:yr/mznqA00



片割れ「ふうっ、こんなモンか」

その頃片割れは、警察や須磨武羅組と協力し、町の暴徒たちを捕らえていた。

須磨組員1「助かったぜ片割れ」

片割れ「ケッ、役に立たんのォお前ら」

須磨組員2「うるせえよ!てめえが人間さんの応援に行ってる間は俺らがコイツら止めてたんだぞ!」

片割れ「そらごくろーさん。ほなワシは帰るで」

須磨組員2「ちょっと待て!話はまだ…」

プルルルル…

須磨組員1「おう、どうしたナイフ……何!?」

片割れ「なんや、どうした?」

須磨組員1「に、人間さんが…消えたって…」

須磨組員2「消えた!?」

片割れ「どういうこっちゃ…」

ナイフ『お、俺もわかんねえよ!Y!いきなり俺の帽子から変なボールが出てきたと思ったら、ピカッて光って消えたんだよ!』

片割れ「フルパワーのヤツ、まだ何か仕込んどったんか…!」

ナイフ『くそっ…!本当に情けねえっ…!!目の前にいたのに俺は…ただ親分に助けられることしかできなかった…!』

485ハイドンピー (ワッチョイ 4373-f886):2022/08/16(火) 19:25:35 ID:yr/mznqA00




そして後日、人間の葬儀が執り行われた。

警察によってフルパワーへの取り調べが行われるも、心神喪失により受け答えもままならず、人間を消した球状の機械は、新たに開発された爆弾ということで処理された。

ナイフ「クソッ…なんで親分があんな目に遭わなきゃならねえんだ…!俺が親分の代わりに死ねばよかったんだ…!」

片割れ「何言うてんねんボケ。所詮ヤクザなんかそんなモンやろ」

須磨組員2「ああ!?」

片割れ「ヤクザは簡単に命奪ったり奪われたり、そういう世界やろ。くだらん。ワシはずっとそう言っとったハズやぞ」

須磨組員2「てめぇ…!」

須磨組員1「よせ…まあ人間さんは最初ッから覚悟できてたんだろうな…足りてねえのは俺たちの方だった…この世界に足踏み入れた時点で、命なんてあってないようなもんだ。人間さんもそう言ってた」

ナイフ「くっ…」

迫力「人間は最後まで自分の意志を貫いた。守りてえと思ったモンをしっかり守って死ねたんだ。本望だろうぜ」

須磨組員1「そうっすね…」

須磨組員2「く…だからってそんなすぐ飲み込めねえっすよ…!」

迫力「ま、時間が解決するだろうよ。で、片割れ、そろそろ決心がついたか?」

片割れ「あ?」

迫力「組で開いた葬儀に参列したんだ。そのつもりなんだろう?」

片割れ「……ああ」

486ハイドンピー (ワッチョイ 4373-f886):2022/08/16(火) 19:26:07 ID:yr/mznqA00

ナイフ「決心って…お前、まさか…」

片割れ「フン、人間も消えて、もはや須磨武羅組は最強のヤクザなんて言えるレベルやないやろ。そんなトコにナイフを一人で入れとくわけにゃいかん」

ナイフ「お、俺なんかのためにお前が入る必要は…」

迫力「くくっ、馬鹿野郎、ただ理由が欲しいのさコイツは」

片割れ「うっさいのぉジジイ。分かった気になっとんちゃうぞ」

須磨組員1「か、片割れ…」

片割れ「安心せえ、お前らを憐れんどるんやない。全部ワシの意思や」

迫力「いい目だ。だったらこの場で交わしちまおう」

片割れ「ああ」

迫力は酒と盃を取り出し、片割れは盃を受け取る。

そして迫力はそこへ酒を注いだ。

迫力「コイツを呑めばてめえはウチの子分として極道に入る」

片割れ「おう」

ゴクッ…

組員たちが見守る中、片割れはあっさりと酒を飲み干した。

片割れ「この数年間、人間とはそこそこ仲ようさせてもらった!須磨武羅組は他の腐った組織とは違うっちゅうことも分かっとる!はっきり言う!ワシは須磨武羅組が好きや!」

ナイフ「片割れ…!」

片割れ「この盃をもって、ワシはこれより、"極道の片割れ"を名乗らせていただく!!よろしくお願い申し上げるッ!!」

こうして片割れは極道の世界へ足を踏み入れた。

487ハイドンピー (ワッチョイ 4373-f886):2022/08/16(火) 19:27:06 ID:yr/mznqA00





どこかの基地。

いくつも並んだコンピュータを緑フォックスたちが操作している。

???「オリジナル、あのサムス族に渡した新型次元分離システムは上手く作動したようだ」

???『そうか』

???「こちらの基地で開発した肉体強化薬の方も成功と言っていいだろう。限界量を超えて摂取したことにより結果的には自滅していたが、薬の効力そのものは問題なく発揮されていた」

???『分かった。ではその薬をCR-250以降に投与して経過を見ろ』

???「了解」

488ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:02:51 ID:lUDSdzGA00






月日は流れ。

魔法学校では。

昼間「本当に高等部へ上がらなくていいんですか?おこめくん」

おこめ「うん!ぼくの夢は達成したから!中等部卒業したらぼくも魔法学校出て、表の空間でたくさんの人におこめを届けたい!」

昼間「そうですか。寂しいですが、君が選んだ道なら止めはしません。頑張ってください」

おこめ「うん!」

昼間「そう言えば決まったんですか?あの米のブランド名は」

おこめ「もちろん!おこめブランドのおこめ、その名も"おこめ"!!」

昼間「そのまんま…」

おこめ「変か?」

昼間「いえ、まあ、いいと思います。自分の名前を付けるくらいに愛情を注いでいたのは私も知っていますからね。ただ商標に通るかどうか…」

おこめ「あーたのしみだ!きっとバクウレ間違いなしだ!」

昼間「…やれやれ…」

おこめ「ふっふっふー!どうだ、ぼくはもう夢を叶えつつあるぞ!このままじゃ勝負はぼくの勝ちだな!」

おこめは空に向かって叫ぶ。

489ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:04:10 ID:lUDSdzGA00





中学生「ふぇっくしょん!!」

その頃、中学生はとある国で旅を続けていた。

中学生「なんだぁ?誰かウワサでもしてんのか?ってこんなベタなセリフ言う日が来るとは…いや俺結構ベタなセリフ言ってるかも…」

と一人でツッコミをしていると。


ドガァァァン!!!!


中学生「な、なんだぁ!?」

いきなり目の前に、十メートル程度のクレーターができた。

目撃者や野次馬によって街がざわつき始める。

中学生「!!…この魔力…魔物か!?…いや、違う…!魔力がデカすぎる…まさか…」

???「フン…地上に出るのも千余年ぶりか…随分と様変わりしたものだな」

クレーターの中心には、西洋風の赤い鎧を纏った人物が立っていた。

中学生「おいてめー!まさか魔の一族か!?」

???「…リンク族か。フン、最初の相手としては悪くない」

中学生「質問に答えろや!」

???「そうとも言えるし、そうでないとも言える」

中学生「はぁ?」

???「フン…敵を前に、随分と余裕だな」

ギッ…

赤鎧はしゃがみ込むと、

ダンッ!!

一気に踏み込み、中学生に近づいた。

中学生「!!」


ドゴォッ!!!

490ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:04:53 ID:lUDSdzGA00


???「…ほう、よく反応した」

中学生はそのパンチを盾でガードしていた。

中学生「たりめーだ!舐めんな!つーか…」

???「フンッ!」


ドガガガガガッ!!


赤鎧は更に連続攻撃を叩き込む。

???「…全て防いだか。面白い」

中学生「いや、つーか!!お前そんな鎧着てんのに肉弾戦すんのかよ!?」

???「些細なことに拘るんだな」

中学生「まあまあ衝撃的だよ!!」

???「ならば受けてみよ」


ボッ!!


中学生「熱っ!」

赤鎧は右掌から緑色の火球を放った。

???「フン、あえてこの技は封印していたまでだ。簡単に決着が着いては面白くないからな」

中学生「今の…ファイアボールか…!?マリオ族の…」

???「マリオではない!!!!ルイージだ!!!!」

中学生「うお!?すまん!なんか地雷踏んだ!?」

491ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:05:59 ID:lUDSdzGA00

???「……まあいい。もう終わらせるとしよう。貴様の力も大体分かった」

中学生「え、まだ俺攻撃すらしてないんだけど…」

???「問答無用!どの道貴様の剣など私の鎧には通じぬ!」


ドガァッ!!


中学生「だから遅いんだってば」

???「何…!?」

中学生は普通に赤鎧のパンチをかわした。

中学生「そんな鎧着てるからだろ。めちゃくちゃ動きにくそうだもん」

???「き、貴様…!我が鎧を愚弄するか!」

中学生「いや鎧じゃなくてお前に言ってるんだよ…肉弾戦すんなら絶対もっと動きやすい格好したほうがいいって…」

中学生はひらりひらりと攻撃をかわしながら言う。

???「クソッ…ちょこまかと…!ならばファイアボールを受けよ!」

ボボボッ!!

中学生「とうっ!」


ブンッ!!


中学生はブーメランを投げ、ファイアボールをかき消す。

???「なっ!?馬鹿な…!」

ダンッ!

赤鎧が驚いている隙に距離を詰める。

そして。

中学生「でやぁっ!!」

渾身の回転斬りを放つ。


ズギャァッ!!!!


???「ぐあああっ…!!」

ドサッ…

赤鎧は粉々に砕け散り、倒れた。

492ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:07:11 ID:lUDSdzGA00

中学生「ふぅ…魔の一族、意外と大したことなかったな。召喚士先生のほうが断然つえーや」

???「き…貴様…!」

中学生「!まだ意識があったか」

???「わ…我が鎧を…よくも…!」

中学生「着てんのが悪いだろ。そんなに大事ならどっかにしまっとけ」

???「くっ…」

中学生「しっかしルイージ族かー。パジャマのヤツに似てんなー。あと湖のヤツも…あ、あれは言っちゃマズイんだったっけ」

鎧が壊れたことであらわになった素顔を見て、中学生は今までに出会ったルイージ族たちを思い出す。

???「み…湖……だと…?」

中学生「え?」

???「そいつは…ま、まさか…水色の帽子のルイージか…!?」

中学生「え、うん。そうだけど…」

???「まだ…生きていたのか…湖…!」

中学生「何?知り合い…?」

???「…かつて…地上にいた頃…私は…奴に育てられたのだ…」

中学生「かつて地上にいたって…何言ってんだ?お前は魔の一族だろ?」

???「言っただろう…魔の一族かと問われれば…そうともそうでないとも言える…私は元々…この世界で生まれたのだ…」

中学生「どういうことだ?」

493ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:09:05 ID:lUDSdzGA00

???「我が名は…Lancelot…紅き鎧を持つことから、魔界では"紅のLancelot"と呼ばれるが…かつては"湖の騎士"という異名を持っていた…」

中学生「ちょ、ちょっと待て!なんか聞いたことある気がするぞ!?」

Lance「フン…だろうな…私は…Arthur王に仕えた騎士だったのだ…」

中学生「あの伝説の…!?マジで…!?」

Lance「事実だ」

中学生「マジかよ…!でもなんで魔界に?」

Lance「…色々あってな…私はArthurと決別し…Arthurと戦う力を求め…魔の力に手を染めた…そして最後の戦いに挑んだ日…突如、私の体に天から光が降り注いだ…それは神による裁きだったのかもしれない…気づけば私は…魔界の奥地に立っていた…」

中学生「神…そういや魔法学校で言ってたな。天界には天使とか神様がいるって」

Lance「魔法学校…地上にはそんなものがあるのか…?」

中学生「ああ。地上っつっても裏の空間だけどな。湖の精霊もそこにいる」

Lance「何…!?どこだ…どうすれば会える…?」

中学生「…そんなに会いたいのか?」

Lance「当たり前だ…!奴は私の…唯一の家族だ…だが…別れの言葉も…何も言えないまま…私は魔界に堕ちた…千年以上…ずっと後悔していた…」

中学生「そうか…もう暴れないって約束できるか?できるなら教えてやる」

Lance「約束する」

494ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:09:39 ID:lUDSdzGA00

中学生「…分かった。嘘はついてなさそうだ」

そして中学生は魔法学校への行き方を教えた。

Lance「恩に着る…」

中学生「そうだ、魔法学校に着いたらたぶん、てか確実に、昼間の召喚士っていうめちゃくちゃ強い人が攻撃してくると思うから注意しろ。俺の名前出せばなんとか説得できると思う」

Lance「分かった…しかしお前ほどの男が強いというそいつは…一体何者だ?」

中学生「先生だよ。最強の魔法使いで、マリオ族…ってそういや、お前なんであんなにマリオにキレたんだ?」

Lance「…Arthurがマリオ族だったからだ」

中学生「あー、なるほど…」

Lance「…すまなかったな…もう行ってくれ。私は回復するまで休みたい」

中学生「そうか。んじゃ、ちょっと運ぶわ」

Lance「は…?」

中学生「野次馬が集まってきたしな。これじゃ魔法学校行く前に捕まっちまうだろ?」

中学生はLancelotを肩に担ぎ、その場を離れた。

495ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:11:32 ID:lUDSdzGA00



数分後。

中学生「ここまで来りゃ大丈夫だろ」

中学生はLancelotを下ろす。

Lance「すまない…それと運ばれている間に一つ…思い出したよ…」

中学生「何を?」

Lance「フン…あの鎧を…大事にしていた理由…すっかり忘れていたが…あれは私がArthurに仕えた時に貰ったのだ…」

中学生「ふーん。じゃあいつか仲直りできるといいな」

Lance「フン…できる訳あるまい…奴はとっくの昔に死んでいる…」

中学生「わかんねーだろ。もしかしたらお前みたいに長生きしてるかもしんねーぜ」

Lance「……フッ…そうだな…」

中学生「んじゃ達者でな。先生によろしく言っといてくれ」

Lance「ああ」

そして中学生は再び歩き始める。

歩き出した途端。


ダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!


???「★気持ちいいいいいいいい!!」


良い感じな雰囲気をかき消すかのように、赤い帽子の少年が叫びながらすごいスピードで通り過ぎた。

中学生「こ、今度はなんだぁ…?」


ドゴォォン!!


少年はそのままゴミ捨て場のゴミ袋の山に突っ込んだ。

中学生「……マジで何なんだ…」

496ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:12:14 ID:lUDSdzGA00

中学生は駆け寄る。

中学生「おーい!大丈夫かー?」

ゴミ袋に埋もれた少年に手を差し伸べる。

???「★いてて…ありがとう。ところで君は誰?」

中学生「こっちのセリフだよ!街中ですげえ速度で爆走しやがって!」

???「★ごめんよ。生まれて初めて外を走り回れるから、舞い上がっちゃって」

中学生「え…病気か何かで入院してたとかか…?」

???「★いや、別に」

中学生「…まあなんか事情があんだな。でももうちょっと周り見ろよな。ゴミ捨て場だったからよかったけど、もし人にぶつかったら大変だぞ」

???「★そうだね、気をつけるよ」

中学生「おう。んじゃな」

そして二人は別れた。

中学生「…変なヤツだったな。あんな速さ普通の人じゃありえないし、アイツもファイターなのかもな」

497ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:14:29 ID:lUDSdzGA00



その様子を、街に設置された防犯カメラが捉えていた。


そしてそのカメラを通して、赤い帽子の少年の正体に気づいた者がいた。

エロマス「…これはまさか……ネスか……?」

エロ過ぎるマスターである。

バーのマスターをやりながら情報屋もしているエロマスは、世界各地のカメラをハッキングし、日々情報を集めているのだ。

エロマス「フッ…存在するはずのない種族…非常に興味深いな…」

エロマスはニヤリと笑った。





第二章 完

498ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 21:18:22 ID:lUDSdzGA00
ここまで読んでくださった方ありがとうございました!!
以上、第二章・中学生編でした
また書き溜めたいのでしばらく更新を休みます

499はいどうも名無しです (ワッチョイ 23ed-5e3d):2022/08/22(月) 21:38:22 ID:l/opKTFM00
更新お疲れ様です!!波乱の展開が続いてハラハラしながらよんでました!続きも楽しみに待ってます!!

500ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 22:56:57 ID:lUDSdzGA00
>>499
ありがとうございます!頑張ります!

501はいどうも名無しです (ワッチョイ e02f-d9d6):2022/08/23(火) 23:14:52 ID:6PPswkU200
お疲れ様です。
次も楽しみにしてます。

502ハイドンピー (スプー 587f-e066):2022/08/26(金) 13:57:17 ID:4wqCEPcYSd
>>501
ありがとうございます!

503ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:03:02 ID:4B4Kcy/I00
第一章のあらすじ>>348

〜ここまでのあらすじ2〜

中学生(大学生)は、途中、"熱望ブラザーズ"やムッコロズ・ムッコロスなどとすれ違いながら、旅を続けていた。
パジャマの革命家と一悶着あり、少女の情報を手に入れ、王国へ。
王国では、少女を知るヒーローの母と会い、少女を連れ戻すと約束した。

魔法学校では、中学生たちが名付けたサル"ドルボリドル"が覚醒。
魔物たちを操るドルボリドルと召喚士たちが戦う。
封印一歩手前まで追い詰めたものの、ドルボリドルは肉体を捨て、魔物と化して逃亡。

魔界では犬のような黒猫と腫れたおしりが食べ物を求めて、謎の穴に突入。
穴の奥はなぜか地上のコンゴジャングルと繋がっており、バナナをめぐってモケーレムベンベ、ティーダと戦闘。
さらにジャングルの素材を狙って現れた謎のフォックスや、魔法学校から逃げてきたドルボリドルも現れ、黒猫たちは大ピンチに。
召喚士たちがそこに駆けつけ、ドルボリドルの封印は成功した。
しかし潜んでいた謎のフォックスは記憶を消す弾を使って、その場のファイターたちから、フォックスたちに関する記憶を消去。
唯一その弾をかわした黒猫だったが、次元分離システムによって消滅した…

かに思われたが、黒猫は次に目覚めると別の世界にいた。
かつて謎のフォックスたちと戦い、同じく次元分離によって消滅したリカエリスもこの世界に来ており、ウルフ村田という女性と暮らし、元の世界に帰る方法を模索していた。
リカエリスは倒れていた黒猫を村田家へ運んでくれた。
が、黒猫はかつて<魔炎師ヤミノツルギ†の叛逆>にてリカエリスの親友であった初代"幻のギルティース"を死に追いやった張本人だった。
リカエリスは攻撃を仕掛けるも実力で上回る黒猫に上手く捌かれ、ウルフ村田に制止される。
その場では矛を収めたが、リカエリスはこの手で必ず黒猫を倒すと誓う。

その頃味方殺しは、国の暗部の依頼によってヨシオ族の里に侵入。
ヨシオ族たちと交流を深める。
そしてその目的である"里の秘密"をゲット。
その秘密とは"この世界がゲームである"という馬鹿げた話だった。

極道の街では、フルパワーという前科者が薬物を撒いて町中で大パニックを起こし、須磨武羅組や警察が対処にあたった。
薬物で肉体を強化し文字通りフルパワーとなったフルパワーだったが、片割れと人間の協力により鎮圧。
しかしフルパワーが仕込んでいた次元分離により、人間はナイフをかばって消滅させられた。
片割れはそれを受けて、ついに極道の世界に足を踏み入れる決心をする。

月日が経ち、おこめは夢であった最高のおこめ魔法をついに完成させる。

一方中学生は未だ少女の手掛かりはなく、アテのない旅をしていたところ、魔界から紅のLancelotが出現。
中学生はそれを難なく撃破。
かつて魔法学校で会った湖の精霊の関係者であることを知り、魔法学校を紹介してあげた。
直後、爆走する少年がゴミ捨て場に突っ込んだので助けてあげた。
特に前進もなく、中学生の旅は続いていく。

504ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:10:35 ID:4B4Kcy/I00
第三章



中学生は高校生となっていた。

ただ勿論、高校に通っている訳ではない。

少女を探す旅を続けながら、時々、通信制の授業を受けている。

高校生「父ちゃんと母ちゃんには感謝しねーとな…この旅でアイツを見つけた後の事も、ちゃんと考えてくれてる。俺は目の前のことしか見えねーから…」

講師『ちょっと!?ちゃんと聞いてますかっ!?』

高校生「あっ、すんません!」

それから数十分。

授業を受け終わり、宿のベッドで眠りにつこうとしたが。


ピンポーン


高校生「あれ?誰だよこんな時間に……はーい」

ガチャッ

505ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:12:10 ID:4B4Kcy/I00

おこめ「よ!」

高校生「おこめ!?お前、なんでこんなとこに…!」

おこめ「ふっふっふ、バカな奴め。ぼくはもう夢を叶えたのだよ」

高校生「何!?」

おこめ「ジャーン!みろ!これがおこめ魔法によって作り上げた、最強のおこめ、その名も"おこめ印のおこめ"だ!」

おこめは袋に詰まった米を自慢げに見せつけた。

高校生「すげえじゃん!!おめでとうおこめ!!」

おこめ「エッヘン!夢バトルはぼくの勝ちだな!」

高校生「夢バトル?ああ、どっちが先に叶えるかってヤツか。そういやそんなんあったな…」

おこめ「オイ!!!」

高校生「いや、正直俺のは夢っつーか、アレだからな…」

おこめ「アレってなんだよ!てか結局やらなきゃいけねーコトってなんだよ!」

高校生「そりゃ…まだ言えねーよ。…んで、何でこんなとこにいるんだ?」

おこめ「…ま、エーギョーってやつだ。ぼくのおこめがいくら史上最強にうまいとは言っても、知ってもらわなきゃイミないからな。各地を巡って宣伝してるのだ」

高校生「なるほど」

おこめ「そんでたまたまこの辺に来たらオマエの魔力を感じたから、勝ち誇りにきたってワケだ!なのにオマエときたら…」

高校生「それは本当スマン。悔しがるどころか勝負自体忘れててスマン」


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