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[SS]壊れた大学生の追憶

1ハイドンピー (ワッチョイ 9602-6259):2021/04/10(土) 21:00:23 ID:dTDZPd7A00
7作目です。
これまで同様、世界観は前作までと共通です。
かなり長編になると思いますが、どうかお付き合いください。
よろしくお願いします。

105ハイドンピー (ワッチョイ 3623-cf15):2021/06/01(火) 21:34:31 ID:E3lCn7m600


ドサァッ!!


そして宇宙生物は倒れた。

ドドン・ポルス「よっしゃあ!!」

リカエ「…ふぅ…よくやったぞお前たち。流石だな。もう来年にはギルティースたちと同じく任務に出られるかもしれんな」

ドドン・ポルス「ほんとか!」

リカエ「ああ。それじゃあお前たちは先に村に帰ってくれ。私は少し地下施設を調べ…」


ドドォォン!!!!


リカエ「なっ…!?」

地響きとともに、爆発音が鳴る。

ドドン「なんだ!?」

ポルス「さっきのやつは死んでるけど…」

リカエ「今の音は地下からだ…やはり何か起こっている…!」


ドドドォォォンッ!!!!


今度は音だけではなく、地下に繋がる穴から爆炎が噴き出した。

ドドン・ポルス「うわっ!?」

ズドドドド…!!

そして地下から、先程の宇宙生物が次々と姿を現した。

リカエ「くっ…!管理AIの故障か…?自己修復機能があるから点検は不要という話だったはずだが…」


ドガァァン!!


今度は遠くの方からも轟音が響いた。

リカエ「今のは第十訓練場か…!」


ドォォン!!

ズガァァン!!


更に山の各所から、何度も轟音が続いた。

ドドン「何が起きてるんだ!?」

ポルス「なんかやばそうだぞ!」

リカエ「ああ…まずいな」

リカエリスは端末を操作する。

リカエ「管理チップも作動していない…」

ドドン「管理チップ?」

リカエ「奴らの核に埋め込まれたチップだ。それを使って数を把握したり、動きをある程度コントロールできる。それが無いということは、奴らは最早野生と変わらん…!暴れ出すぞ!」

ドドン・ポルス「なんだってー!?」

リカエ「お前たちは村に戻れ!そして住民たちを避難させるんだ!此奴らは私が食い止めておく!」

ドドン・ポルス「わ、わかった!」


キィィィィィン…!!

そこにアーウィンが飛んでくる。

リカエ「とうっ!」

ダッ!!

ちょうど真上にアーウィンが来ると同時にリカエリスは跳び上がり、アーウィンに乗り込んだ。


ズドドドドドド…!!!!


アーウィンから宇宙生物を射撃するが。

リカエ「く…数が多すぎる…!応援が来るまでなんとか持ち堪えなければ…!」

106ハイドンピー (ワッチョイ 3623-cf15):2021/06/01(火) 21:38:24 ID:E3lCn7m600




ピコン!ピコン!ピコン!

ギル「わっ!?なに!?」

ギルティースとナザレンコの持つ端末からアラームが鳴った。

ナザ「救援信号…大佐からだ」

ギル「む、村で何かあったの!?」

ナザ「分からねえ…だがこれじゃ…」

二人は窓の外を見る。


ザアアアアアア…!!


そこはとてつもない嵐に見舞われていた。

ギル「飛行機も全部欠便だし、帰れないわね…この嵐、数日続くって言うし…どうしよう…」

ナザ「クソ…アーウィンならこれくらいの嵐無理やり突破できんのに…!」

村から遠く離れた国で危険武装集団の鎮圧を終えた二人は、空港で足止めを食らっていた。

ギル「仕方ないわよ…私たちまだライセンスすら持ってないんだから」

ナザ「だからってこんなところでじっとしてらんねえよ!」

ナザレンコは勢いよく立ち上がる。

パシッ…

ギルティースはその腕を掴んで引き止めた。

ギル「落ち着きなさい。きっと大丈夫よ。私たちなんかよりベテランのフォックスもたくさんいるんだから。先輩たちを信じましょう」

ナザ「……ああ…すまねえ」

ナザレンコは座り直す。

ナザ「しかし悔しいぜ…試験は来週だぜ?それをクリアしてりゃアーウィンに乗れてたのに…なんでこんなタイミングで…」

ギル「そうね…ついてないわね、私たち」

ナザ「ああ。初任務でもギル姐がいきなりズッコケて敵に見つかって、危うく任務失敗しかけたしな」

ギル「それは言わないでよ…」

ナザ「いやいや、割とマジに、呪われてんのかもしれんぜギル姐」

ギル「誰によ…」

ナザ「ホラ、あのタワーの妖狐サマの尻尾に乗ったろ」

ギル「そりゃアンタも同じでしょ…ていうかあの像、村を見守る守り神みたいなもんでしょ?呪ったりしないって」

ナザ「分かんねえぞ?アレのモデルになったっつう"1人目の天才"は性格悪かったらしいし」

ギル「そうなの?知りたくなかった…」

ナザ「あくまで噂だけどな」

ギル「まあ千年以上も前に死んでるもんね。その何人目の天才とかって、何人目までいるのかしら」

ナザ「確か十四だ」

ギル「姉さんやアンタほどの才能の持ち主でもそこに連ねられないとこ見ると、よっぽど凄いんでしょうね、その天才って…」

ナザ「らしいな。別次元の強さとしか伝わってねえし、想像つかねえや。俺らの生きてるうちに新たな天才が生まれねえもんかね」

107ハイドンピー (ワッチョイ 3623-cf15):2021/06/01(火) 21:39:30 ID:E3lCn7m600

ギル「そうねぇ。去年生まれたマクラウド家の子とか?マクラウド家は天才を沢山輩出してるって聞いたことあるわ」

ナザ「ああ。確か天才の半数以上はマクラウド家だとか」

ギル「ご先祖様の血を一番色濃く継いでるらしいし、そりゃ凄いわよね。憧れるわ…」

ナザ「それでも天才って呼ばれるのは何百年に一人っつう逸材だぜ?そうそう生まれるもんじゃねえだろ」

ギル「そうよねぇ…そういうとこも私たち運が無いわね。天才は千年生きて妖狐になるって、ただの伝説かもしれないけど、ホントにそれだけ長生きするなら今の時代にも一人くらい残ってたって不思議じゃないのに」

ナザ「でもその強すぎる力を制御できずに早死にするって話も聞くし、ぶっちゃけアイツらよく分からんけどな」

ギル「確かに。っていうかアイツらとか言わない」

ナザ「自分の力で死ぬって普通に考えてアホだぜ。馬鹿と天才は紙一重ってやつなのかね」

ギル「アンタが言うな。ファイアフォックスで何回崖から落ちたか…」

ナザ「いいんだよ生きてんだから。俺はそこらのフォックスとは体の出来が違うんだ。つうかギル姐だって何回かやらかしてんだろ」

ギル「う…そりゃそうだけど…」

ナザ「しっかし何だってこんなに俺らの行く先々に崖があるんだろうな。やっぱ呪われてるぜ絶対」

ギル「結局そこに行き着くのね…ていうかアンタがそういうオカルトとか信じてるの意外だわ」

ナザ「無いとは限らねえだろ。実際、魔界とかいうファンタジーでしかない別の世界があったんだろ?何があったっておかしくねえ」

ギル「まあねぇ…ホントにそんなのがあるとしたら、私にとっての呪いはアンタそのものかもね」

ナザ「はあ?」

ギル「だってアンタみたいな凄いのが同世代にいたら私なんか絶対目立てないじゃない。幻のギルティースを継いだっていうのにさ」

ナザ「そりゃねえぜギル姐…」

ギル「フフッ、冗談よ。でもね、私はアンタに負けたくないって思ってる。才能の差は歴然…それは分かってる。それでもアンタより強くて頼れるフォックスになりたい」

ナザ「何だよ、らしくねえな」

ギル「そう?最初から変わってないわよ。だって私はみんなを助けたいもの。だからもしアンタがピンチになったら、私が助けてあげられるくらいに強くならなきゃ!…でしょ?」

ナザ「ハハッ…凄えな。その実力で俺を助けたいなんて言えるなんて」

ギル「何よ!そんなこと言うなら助けてあげないわよ!」

ナザ「いやいや、頼りにしてるぜギル姐」

ギル「何なのよ…フフッ」

その後も二人はなんてことはない談笑を続け、この足止めを楽しく過ごした。

108ハイドンピー (ワッチョイ af6a-a582):2021/06/09(水) 05:30:53 ID:V9JuArjU00




一週間後。

ようやく飛行機が動き、二人は帰国。

そして、すぐに村へと向かった。

だが。

ギル「……何よ……これ……」

そこにはもう、村は無かった。

崩壊した家々から黒煙が立ち昇り、そこかしこに巨大な宇宙生物が闊歩していた。

そして上空から何機かのアーウィンが宇宙生物たちを攻撃している。

ナザ「応答しろ!誰でもいい!村はどうなってる!?」

…ザザ…ザザザ…

リカエ『…ナザ…ンコか…』

ナザ「大佐!」

ギル「い、一体何があったんですか!?」

リカエ『ギ…ティースもいるな。通…機が壊れ…聞き取りづ…いだろうが、落ち着…てよく聞け。山の実戦…練場地下施設の宇宙生…たちが暴走し、村…襲った。フォック…総出で討伐に当たっているが、多く…犠牲が出た』

ナザ「…な…」

リカエ『子供た…とフォックス族以外の…民はドドンとポ…スに任せてある。お前たちも二人を助けてやっ…くれ。東のシェルターにいるはず…』

ギル「わ、分かりました…!大佐は無事なんですか!?」

リカエ『大丈夫だ。よう…く山の周辺に溢れて…た奴らが片付いた。これから施設に入り原因を調…する』

ギル「はい…!気を付けてください!」

リカエ『ああ』

ブツン…

ナザ「行くぞ」

ギル「ええ!急ぎましょう!」

二人はすぐにシェルターへと駆け出した。


タタタタタ…


走りながら、そこら中に墜落したアーウィンと倒れたフォックス族たちが視界に入ってくる。

ギル「なんて数なの…どうしてこんな事に…」

ナザ「なっちまったもんはしょうがねえ…俺らにできることをやるしかねえ…」

ギル「ええ…」

109ハイドンピー (ワッチョイ af6a-a582):2021/06/09(水) 05:33:10 ID:V9JuArjU00


ズズズズ…!!


ギル「きゃっ!?」

突如、ギルティースの足元の地面が盛り上がる。


ドゴォォン!!


そして地面の下からモグラのような巨大生物が現れた。

ナザ「大丈夫かギル姐!」

ギル「ええ!」

ナザ「コイツ…!確か十五ラウンドくらいで戦ったヤツだ…!」

ギル「でもこんなに大きくなかったわよ!?」

ナザ「ああ…でも弱点が変わるわけじゃねえだろ。訓練と同じパターンでいくぞ」

ギル「分かった!」


ドドドドド…!!


ナザ「!!」

そこへ毛むくじゃらの巨大な猿人が、凄い勢いで横から転がってきた。

ダッ!!

ナザレンコは間一髪でかわす。

ギル「ア、アイツも訓練場にいたわよね!?」

ナザ「ああ…!どいつもこいつも育ち過ぎだ…!二体相手じゃキツい…一旦瓦礫に隠れてやり過ごすか…」

ギル「ええ」


ズシィン!!


ギル「なっ…!」

更にそこに第一ラウンドで戦った宇宙生物も出現し、二人の行く手を阻んだ。

ナザ「どけ!!ファイヤーッ!!」


ボォッ!!


ズドォォォン!!


ナザレンコは得意のファイアフォックスで宇宙生物の体を貫く。

ナザ「今だ!抜けるぞ!」

ギル「ええ!」

しかし宇宙生物はすぐに再生して二人を追いかけてきた。

ナザ「チッ…コアを破壊しきれてなかったか…!」

ギル「この大きさじゃ仕方ないわよ!二人でいきましょう!」

ナザ「だな!尻尾のコアは俺がやる!目の方は任せた!」


ヒュンッ!!

ドガガッ!!

ズドォッ!!


二人は完璧なコンビネーションで宇宙生物を瞬殺した。


ドガッ!!


ギル「かはっ…!」

しかし別の宇宙生物が横から巨大な尻尾を振り回し、ギルティースを吹っ飛ばす。

110ハイドンピー (ワッチョイ af6a-a582):2021/06/09(水) 05:35:09 ID:V9JuArjU00

ズザザザ…

ナザ「ギル姐っ!」

ギル「大丈夫!それより周り見て!」

気付けば更に宇宙生物たちが集まってきていた。

ナザ「クソッ…!こりゃ今までの訓練やら任務なんか比じゃねえくらいキツいな…!」

ギル「戦ってたらキリがないわ…!」

ナザ「だがこのままシェルターに行けばコイツらが付いてきちまう!倒せないにしても、なんとか引き離さねえと…!」

ギル「どうやってよ!」


???「ワーーーッハッハッハッハ!!我に任せろ愚民どもよ!!」


ナザ「…その声は…」

ギル「アルバロ!?」

アルバロ「その通り!!」

ダーン!

瓦礫の山の上に、緑フォックスが仁王立ちで立っていた。

ナザ「何してんだお前!ドドンたちと一緒に避難しろ!」

アルバロ「何だと!?貴様たちより少し遅れてしまったが、我も入隊試験をクリアしたのだぞ!避難などしていられるか!」

ナザ「だったら尚更だ!あんなチビ二人に任せねえでお前が先導しろよ!」

アルバロ「何ぃ!?今更帰ってきて偉そうに!!我はこの一週間戦い続けてきたのだ!!我の方が偉いぞ!!」

ナザ「偉いかどうかはどうでもいい!」

アルバロ「どうでもよくないわ!!」

ギル「うるっさーい!!今ケンカしてる場合じゃないでしょ!!」

ナザ「そういうことだ!」

アルバロ「ぐぬぬ…!」

ギル「アルバロ、ここで出てきたってことは何か作戦あるんじゃないの!?」

アルバロ「作戦?そんなものはないぞ!」

ギル「何しに来たのよ…」


ドガーン!!


ギル「きゃあっ!!」
ナザ「ぐおっ!!」

頭骨の異常発達した宇宙生物に頭突きをくらって二人は吹っ飛ばされる。

アルバロ「はあ、全く。油断しているからそうなるのだ。ここは戦場だぞ」

ナザ「誰のせいだよ!」

アルバロ「フン!我に任せておけ!」

ギル「何するつもり?」

アルバロ「見ておれば分かる。まあ、貴様たちの目で捉えられるかは分からんがな」

ナザ「あぁ?」

111ハイドンピー (ワッチョイ af6a-a582):2021/06/09(水) 05:37:36 ID:V9JuArjU00


ダンッ!!


アルバロが地面を蹴る。

その瞬間に、アルバロの姿は見えなくなった。

ギル「消えた!?」

ナザ「いや、めっちゃ速く移動してる!」

アルバロ「貴様たちが任務でイチャイチャしておった間に我はここまで鍛え上げたのだっ!!」

ナザ「イチャイチャしとらんわ」


ドガッ!!

バキッ!!


アルバロはちょこまかと攻撃をかわしながら、宇宙生物たちの脚部を破壊していく。

バランスを崩した宇宙生物たちはバタバタと倒れる。

ギル「すごい…!」

アルバロ「見よ!!超速ファイアフォックス!!」

ゴゴゴゴゴゴ…!!

アルバロ「ファイヤーッ!!」


ズドォォォン!!!!


アルバロは瓦礫の山に突っ込んだ。

ギル「…何やってんの!?」

ナザ「いや…!案外いいかもしれねえ…!」

ギル「え?…うわ!」

ブワァッ!!

その勢いで瓦礫や砂埃が舞い上がり、周囲一帯を覆った。

アルバロ「今のうちだ!ゆけ!」

ナザ「助かった!サンキューアルバロ!」

ギル「ありがとう!」

アルバロ「礼など良い!さっさとゆけ!弱者を守るのがフォックスの務めだからな!ワハハハハ!!」

ナザ「ボケ!お前も来んだよ」

ガシッ!

ナザレンコはアルバロのジャケットの裾を掴み引っ張る。

アルバロ「ぐおっ!な、何をするか!」

ナザ「何をするか!じゃねえよ!お前こそ一人で残って何する気だよ!」

アルバロ「フン!こんなもの我一人で殲滅してやるわ!」

ナザ「いくらお前が速くても、この数じゃ倒し切る前に体力が尽きんだろ!アイツらが見失ってるうちにここから離れるぞ!」

そして三人はシェルターへ向かった。

112ハイドンピー (ワッチョイ af6a-a582):2021/06/09(水) 05:40:10 ID:V9JuArjU00


タタタタタ…!


ギル「ていうかアンタ、パートナーは?」

アルバロ「…やられた。三日前にな」

アルバロは表情を変えずに言う。

ギル「…そっか…辛かったわね…」

アルバロ「フン、何を甘えたことを抜かしておる。我々は常に死と隣り合わせだ」

ギル「でも…」

アルバロ「弔いも後悔も、戦場では邪魔なだけだ。今は前だけ見ておれば良い」

ギル「……そうね…」

ナザ「…シェルターが見えて来たぜ」

アルバロ「ワハハハハ!あの餓鬼共もしっかり自分の仕事をこなしているようだな!なかなかやるではないか!」

ギル「ホント、小さいのに頼りになるわねあの子たち」

ナザ「…んな悠長なこと言ってる場合じゃなさそうだぜ」

ギル「!!」

シェルターの外壁に、巨大なナメクジのような宇宙生物が張り付いていた。

アルバロ「彼奴は確か溶解液を持っておる宇宙生物だな。火が弱点だったはずだ」

ナザ「俺の出番だな!」

ダッ!!

ナザレンコは跳び上がり。

ゴゴゴゴゴゴ…!!

ナザ「ファイヤーッ!!」


ボォッ!!!!


ナザレンコのファイアフォックスを受けたナメクジは炎に包まれ、やがて蒸発した。

スタッ…

ナザ「よし!」

ギル「ちょっと待って…溶けてない?」

ナザ「あ…」

シェルターの壁の一部がドロドロに溶け、大穴が開いていた。

ドドン「来るのが少し遅かったな!」

ポルス「遅かったな!」

穴の奥からドドンたちがひょっこりと顔を出す。

ギル「ドドン!ポルス!」

113ハイドンピー (ワッチョイ af6a-a582):2021/06/09(水) 05:44:27 ID:V9JuArjU00

ドドン「あのナメクジに壁が溶かされちまったぞ!」

ポルス「ちまったぞ!」

ナザ「ああ、見りゃ分かる」

ギル「このままじゃ危ないわね。ドドン、ポルス、安全なところまでみんなを誘導してくれる?」

ドドン・ポルス「わかった!」

アルバロ「隣の村に大勢入れる集会所がある筈だ。我が先に行って道を開けてやろう。貴様たちは後からのんびりついて来ればよい!ワハハハハ!」

ダンッ!!

アルバロは超スピードで走っていった。

ギル「アルバロ…ホントに頼もしくなっちゃって」

ドドン「成長したな!」

ポルス「まったくだ!」

ナザ「お前らなんで上からなんだ…まいいや。ギル姐もコイツらについていって守ってやってくれ」

ギル「ん?アンタはどうすんのよ」

ナザ「俺は他のフォックスたちの応援に行く」

ギル「何言ってんの!?ドドンたちを手伝えって大佐に言われたでしょ!?」

ナザ「悪いなギル姐。やっぱり俺は欲張りなんだ。今戦ってる奴らも見捨てられねえや」

ダッ!!

ナザレンコは戦場へと戻っていく。

ギル「…はぁ…まったく…死なないでよね!!ナザレンコ!!」

ブンッ!

ギルティースはその背中に向かって叫び、何かを投げつける。

パシッ!

ナザレンコは振り返らずにそれを受け取った。

114ハイドンピー (ワッチョイ af6a-a582):2021/06/12(土) 01:45:20 ID:14ObnNBU00




その頃、リカエリスは。

リカエ「これが…正体だと言うのか…地下施設の…」

地下に降り、眼前に広がる光景に愕然とする。

中心部には巨大なコンピュータがあり、恐らく宇宙生物によって破壊されていた。

そしてそのコンピュータから伸びる大量のケーブルやパイプが天井や床を通って、いくつもの大きな水槽に繋がる。

分厚い水槽は全て割れ、緑色の液体が漏れ出している。

長老「これは…」

リカエ「長老、何かご存じなのですか?」

リカエリスと共に地下へ降りた老フォックスは、伸びた顎髭を触りながら話し始める。

長老「いや…ロハス殿の言っていた事と違う…それに戸惑っておるのだ…」

リカエ「ロハス…!?大戦の時代の英雄の…?」

長老「ああ…我は彼の後輩だった」

リカエ「そうだったのですか…」

長老「ロハス殿は戦闘は勿論…頭脳明晰で科学の分野にも長けていた。アーウィンの修理でよく世話になったものだ…」

リカエ「まさか、この施設も…?」

長老「ああ…彼が造ったものだ。後進のためにと、我に託した…だがこれはまるで実験施設だ…」

リカエ「…確かに、とても飼育施設だとは思えませんね。一体どういう事なのでしょう」

長老「分からん…」

リカエ「…この液体は…」

リカエリスは指で緑の液体を掬い取り観察する。

リカエ「……うぅむ……分からん…」

長老「…何も…分からんな…」

リカエ「はい…こういったものには疎く…」

ヴァティ「いや二人してそんなマジメな顔でボケなくていいですから」

眼鏡を掛けた白衣の女フォックスが冷静にツッコミを入れる。

リカエ「いや、ボケたわけでは。ヴァティさん、何か分かるのですか?」

115ハイドンピー (ワッチョイ af6a-a582):2021/06/12(土) 01:47:21 ID:14ObnNBU00

ヴァティ「たぶん、これは培養液だね。このデッカい水槽の中で宇宙生物たちを成長させていたんだ」

リカエ「…なるほど…」

ヴァティ「それもかなり特殊だね。成長速度を高めるためか、異常な栄養濃度を示してるよ」

水槽の下部に付いているメーターの数値を見ながらヴァティは言う。

リカエ「…そうか…管理AIの故障によって、奴らの成長速度が上がり巨大化し…それによって回転率も上がり、数が急激に増えたのか…!」

ヴァティ「うん。そう考えるのが自然だ」

長老「…しかし…ロハス殿はなぜこれを隠しておったのだ…?正直に話しておけばここまでの事態にはならなかったやもしれんのに…」

リカエ「確かに…ですがそれを考えるのは後にしましょう」

ヴァティ「あ!ちょっとこっち来てください!」

ヴァティはコンピュータのところへ二人を呼ぶ。

リカエ「どうしました?」

ヴァティ「このコンピュータ、一台だけだけど生きてる。施設の情報が見れるかも」

リカエ「お願いします」

ヴァティ「おっけ。かなり古いタイプだから時間掛かるかもしれないけど」

ヴァティは自前のコンピュータと接続し、データを確認していく。


カタカタカタカタカタ…

ヴァティ「!」

数分間休まずキーボードを叩き続けたところで、ヴァティの手が止まった。

長老「何か分かるか…?」

ヴァティ「これは……クローン…?」

リカエ「クローン!?」

ヴァティ「この施設、宇宙生物のDNAデータから細胞を分裂させて、全く同じ能力を持った宇宙生物を複製してるんだ…!」

長老「古くからクローン研究は倫理的観念から、禁忌とされてきた筈だ…まさか、それで隠しておったのか…?」

ヴァティ「ロハスさんについても何か情報がないか調べてますけど…ダメっぽいです」

リカエ「まあ隠しているのなら、情報を残しているはずもありませんね…」

ヴァティ「だね。ん?これは…!」

カタカタカタ……ッターン!

リカエ「…何をしたのですか?」

ヴァティ「管理チップのプログラムを再起動したんだ。端末で見てみて、リカエリス」

リカエ「了解」

ピッ、ピッ、ピッ…

リカエリスは携帯端末を操作する。

リカエ「反応あり!宇宙生物たちの位置情報を確認…!正常にチップが作動しています…!」

ヴァティ「やった!じゃあすぐに停止命令を!」

リカエ「はい。全てのチップに停止命令を送りました。これで奴らも大人しくなればよいのですが…」

ヴァティ「…今までより効き目は薄いだろうね…あそこまで巨大化しちゃうと」

長老「だが…よくやってくれたヴァティ…これで村に蔓延る宇宙生物の駆除も、かなり楽になる筈だ」

ヴァティ「はい!」

リカエ「この近くにはチップの反応はない…私は村へ援護に戻ります。二人はここで調査を続行してください」

長老「ああ。頼んだぞ」

そしてリカエリスは地上へ出ると、すぐにアーウィンで村へ飛んだ。

116ハイドンピー (ワッチョイ af6a-a582):2021/06/12(土) 01:48:25 ID:14ObnNBU00




ドガァン!!

口から放った火の球がリフレクターによって弾き返され、宇宙生物の一体が倒れる。

ナザ「ハァ…ハァ…何だ…?コイツら急に動きが鈍くなった…」

ザザ…

リカエ『皆、聞こえ…か。リカエリスだ』

ナザ「大佐!」

リカエ『管理…ップを再起動し、宇宙生物た…に停止命令を送った。完全と…いかなくとも、暴走は落ち着…はずだ。今、宇宙…物の位置情報を皆の端…に送った。これを元に、速やかに掃討する…だ!』

ナザ「了解!」

ナザレンコはすぐに携帯端末で位置情報を確認すると、近くの宇宙生物の元へと向かう。


タタタタタ…

ナザ「お、見えてきた!」

その時。

キィィィン…

一機のアーウィンがナザレンコの上を通り過ぎる。

ナザ「ん?今のアーウィン…」


ドドドドド…!!


そのままアーウィンはナザレンコが倒そうとしていた宇宙生物を先に倒した。

ナザ「…やっぱアーウィン便利だな…スピードが全然違え」

するとそのアーウィンが引き返し、ナザレンコの上空に止まった。

ナザ父『ナザレンコ!戻ったか!』

ナザ「やっぱり父ちゃんか!無事だったんだな…!」

ナザ父『ああ、なんとかな。リカエリス大佐からの通信は聞いたな?』

ナザ「ああ」

ナザ父『今アーウィンの陣形で村の中心部までヤツらを追い込んでる。そこを一気に叩くぞ。ナザレンコも向かってくれ』

ナザ「分かった!」

通信を終えると、ナザレンコの父はすぐにアーウィンを発進する。

グゥゥゥ…

ナザ「…ハハ…安心したら腹減った」

ナザレンコはギルティースから受け取ったものをポケットから取り出した。

ベリベリと包みを剥がすと、中にはチョコ菓子が入っていた。

ナザ「ありがとなギル姐…いただきます」

それをムシャリムシャリと頬張りながら、村の中心部へと駆け出した。

117ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/17(木) 21:55:05 ID:Xzlxh6.200



キィィィン…

ドドドドドドド…!!

ドドォン!!


村の中心部では既にフォックスたちが一斉に宇宙生物の討伐を始めていた。

タダヒト「モーブ!右から来るぞ!」

モーブ「オッケー、タダヒト」

ドガァ!!

オジィ「ヘイボン、こっちはワシに任せろ!」

ヘイボン「助かりますオジィさん!フトゥ、頭のコアを頼む!」

ズドォッ!!

フトゥ「ああ!ムメイ、三時の方向にブラスターを!」

ムメイ「任せな!」

チュンッ!!

ドドドド…!!

アーウィンによる上空からの射撃と、地上のフォックスたちの一糸乱れぬ連携により、宇宙生物たちは次々に倒されていく。

タダヒト「ははっ!こうなっちまえば楽勝だな!」

モーブ「油断するなタダヒト。大人しくなってるとはいえ、奴らは訓練で戦ったのとはレベルが違う」

タダヒト「分かってるよ!」

オジィ「ヒー…ワシゃ少々疲れてきたわい!」

ムメイ「アタシらに任せて休んでなよ!アンタもう引退してんだから!」

オジィ「長老も戦っておられるのだ!ワシもこれくらいで休んでられんわい!」

フトゥ「だったら弱音吐かないでくださいよ!士気が下がる!」

ヘイボン「大先輩に向かってなんてこと言うんだフトゥ!」

フトゥ「うるせえ兄貴!俺あんま余裕ねえんだよ、みんなと違って弱いから!」

ヘイボン「俺だって弱いわ!」

モーブ「戦場でケンカするなバカ兄弟。そんなんだからいつまでも弱いままなんだ」

ムメイ「いや煽るな煽るな!アンタまでケンカに参加してどうする!」

モーブ「あ、ごめん」

オジィ「がはははは!若者は元気があっていいのう!だがお喋りはそこまで!目の前の敵に集中…」


ゴキッ!!


オジィは背後から姿を消して忍び寄ってきたカメレオンのような宇宙生物に首を折られ。

ドサッ…

絶命した。

ヘイボン「オジィさん!!」

118ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/17(木) 21:56:03 ID:Xzlxh6.200

フトゥ「兄貴!!右!!」

ヘイボン「っ!!」


ドゴォッ!!


オジィに気を取られたヘイボンは、右から来たサイのような宇宙生物の突進を受け。

キラーン…

ブッ飛ばされて星になった。

フトゥ「あ、兄貴ぃぃぃっ!!」

タダヒト「くっ…!!全員、気を引き締めろ!!」

モーブ「停止命令が全く効いてないヤツもいるみたいだな」

ムメイ「チッ…!厄介な…!」

フトゥ「…はっ…はっ…あ…兄貴が…や…やられるなんて…」

タダヒト「深呼吸しろフトゥ!気をしっかり持て!」

フトゥ「あ、ああ…!悪い…」

モーブ「ムメイ、五時の方向」

ムメイ「はいよ!」

チュン!チュン!


ピュゥゥン…


ムメイ「なっ!?」

ムメイの撃ったブラスターの弾は、そこにいたクジャクのような宇宙生物の羽に吸い取られた。

モーブ「しまった…!エネルギー吸収タイプだ…!」

ガブッ!!

ムメイ「ぎゃあああっ!!」

鋭いクチバシで右腕を食いちぎられ、ムメイは地面を転げ回る。

タダヒト「ムメイっ!!モーブ、俺が食い止めるからすぐに止血を!!」

モーブ「わ、分かった!」

その瞬間。


バゴォォン!!


タダヒトはゴリラのような宇宙生物に巨大な拳を振り下ろされ、即死。

モーブ「なっ…!?」

フトゥ「ああ…タ…タダヒトまで…!」

モーブ「くそっ…!油断するなって言ったのに…!」

119ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/17(木) 21:57:02 ID:Xzlxh6.200

フトゥ「…お…終わりだ…も…もう…俺たちは…ここで滅ぼされる運命なんだ…」

フトゥは膝をついて頭を抱える。

モーブ「ふざけるなッ!!諦めるな!!フトゥ!!立てッ!!最後まで戦え!!」


ズドォッ!!


モーブは宇宙ゴリラの腹部を蹴り飛ばし、ひっくり返らせる。

ゴゴゴゴゴ…

モーブ「はあああっ!!ファイヤーッ!!」


ボォッ!!


更にファイアフォックスを繰り出し、ゴリラの頭部を粉砕、とどめを刺した。

モーブ「はあっ…はあっ…冷静になれ…俺は強い…こんなところで死んでたまるか…」

自分に言い聞かせるようにモーブはブツブツと呟く。


ザンッ!!


モーブ「見えてんだよカマキリ野郎!!」

背後から襲ってきた宇宙カマキリの一撃もかわし。


バキィッ!!


反撃の蹴りでその鎌をへし折る。

が。


ニュルルルッ!


モーブ「ぐっ…!?」

先程の宇宙カメレオンが舌でモーブを捕らえ。

パクッ

モーブは食われた。

フトゥ「…あ…あああ…!やっぱり…無駄だ…!抵抗なんて…無意味…」


ダダダダダダダダ…!!


フトゥ「……?」

そこへ、遠くから誰かが走ってくる。


ゴゴゴゴゴゴ…!!


ナザ「ファイヤーーッ!!」


ズドドドドッッ!!!!


ファイアフォックスで宇宙生物を四体まとめて一気に貫きながら、ナザレンコは現れた。

120ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/17(木) 21:58:19 ID:Xzlxh6.200

ナザ「すんません!遅くなりました!」

ドサッ…

脇に抱えたモーブを降ろす。

宇宙カメレオンを貫くと同時に、モーブも救出したのだ。

モーブ「お…お前…ナザレンコ…か…?」

ナザ「はい」

モーブ「…そうか…逞しくなったな…」

ナザ「そうすか?まあ身長はちょい伸びましたけど。それよりモーブさん、早くムメイさんの止血を」

モーブ「あ、ああ!」

ナザ「フトゥさん、立てますか?」

フトゥ「…いや…」

ナザ「どっか怪我してるんすか?じゃあモーブさんに…」

フトゥ「違う…!いくらお前が天才だろうと…もう無駄だ…無駄な足掻きだ…!」

ナザ「…じゃあ、戦わなくてもいいんで、隠れててください」

ナザレンコはフトゥの肩に手を置いて言う。

フトゥ「何…?」

ナザ「流石に守りながらじゃこの数はキツいんで」

フトゥ「よせ!お前みたいな子供が戦っても…」


ズドォン!!


ナザレンコは真後ろから放たれた宇宙生物の攻撃を。


ピキンッ!!


見ずにリフレクターで跳ね返した。

フトゥ「なっ…!」


ドゴァン!!


宇宙生物は自らの攻撃で爆発して倒れる。

121ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/17(木) 21:58:58 ID:Xzlxh6.200

ナザ「周り、見てくださいよ。横にも上にもまだ戦ってるフォックスがいる」

フトゥ「…!」

ナザ「確かにもう何十人も死んでる…けど…まだ諦めるのは早すぎます。生き残ってる人たちを俺は失いたくねえんすよ、誰一人」

フトゥ「…くっ…」

その強い眼差しを直視できず、フトゥは視線を落とした。

そこへ。


キィィィン…!


ドドドドドドドド!!!!


明らかに動きが別次元のアーウィンが到着し、周りにいた五体の宇宙生物を一気に倒した。

リカエ『すまない!道中の宇宙生物も倒しながら来たので遅くなった!』

ナザ「大佐!」

リカエ『皆、もう終わりは近い!少なくともこれ以上敵が増える事はない!ここで確実に決めるぞ!』

ナザ「はい!」

ムメイ「はぁ…はぁ…アタシもやってやる…!即死のヤツもいるってのに、腕の一本持ってかれたくらいで、アタシはラッキーだったよ…!」

止血の終わったムメイはそう言って、ふらつきながら立ち上がる。

モーブ「おい!ムメイ!」

ナザ「さ、流石にその体じゃ無茶っすよ…」

ムメイ「あぁ!?アタシに逆らうとは偉くなったなナザ坊!」

ナザ「いやいや…汗だくじゃないっすか…」

ガシッ!

ムメイ「あ…?」

フトゥ「落ち着け、ムメイ…」

ムメイの肩を掴んで抑えたのはフトゥだった。

ナザ「フトゥさん…」

フトゥ「コイツは俺に任せろ…行ってこい二人とも」

ムメイ「テメエ!自分が戦いたくねえだけだろ!」

フトゥ「すまない…怖いんだ…!俺が死ぬのはいい…でも仲間をこれ以上失うのは…もっと怖いんだ…!」

ムメイ「…チッ…腰抜けめ!」

フトゥ「ああ…すまない…」

ナザレンコとモーブは顔を見合わせ。

ナザ「じゃあよろしくお願いします!」

モーブ「任せる」

そして二人は暴れる宇宙生物の方へと走っていった。

122ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 21:59:00 ID:Wqi..c/U00



タタタタタ…

ナザ「はあっ!!」


バキィッ!!


ナザレンコが宇宙生物の脚部を蹴りで破壊し。

モーブ「はっ!」


ズドッ!!


バランスを崩した隙にモーブは顎を蹴り上げる。

ドサァッ!


ドゴォ!!


そして脳を揺らされ倒れた宇宙生物の急所を確実に破壊する。

ナザ「よし!次ィ!」


ドガァン!!

ズダァン!!


ナザレンコ、モーブの他にも生き残っている数十人のフォックスたちが連携し戦う。


ドドドドド…!!


さらに上空からの援護も加わり、新たな犠牲はほとんど増やさぬまま順調に討伐は進んでいく。

123ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 22:00:19 ID:Wqi..c/U00



ナザ父「強くなったな、ナザレンコ…リカエリス大佐、アイツを鍛えてくれてありがとう」

その光景を上空から見るナザレンコの父は、僅かに嬉しそうに言う。

リカエ『いえ、彼奴は元々天才でしたよ。私が教えたことなどほとんどありません』

ナザ父「ハハ、ま、俺の息子だからね。でもその才能のせいで、アイツは昔から何でも一人でやろうとしてた。仲間とあれだけ連携が取れるようになったのは、紛れもなくお前さんのお陰だよ」

リカエ『…礼なら、私ではなくギルティースたちに言ってやって下さい。ナザレンコをいつも一番近くで支えていたのは、彼奴らですから』

ナザ父「そうか…そうだな…それじゃあさっさと終わらせて、礼を言いに行くとするか!」




そして数十分後。

リカエ『よし…反応はあと十体だ。皆最後まで気を抜かずにかかれ!』

ナザ「はい!」

モーブ「地上には九体…一体は地下に潜伏してるな」

ナザ「あのモグラみたいなヤツっすね」


ヒュゥゥ…


ドガァン!!


ナザ「おっと」

二人は大砲のような口を持つ宇宙タコの砲撃をかわす。


チュン!チュン!


ナザレンコは反撃のブラスターで怯ませ。

モーブ「はあっ!」


ズドンッ!!


モーブはその間に距離を詰め、弱点となる頭部を蹴って破壊した。

124ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 22:01:17 ID:Wqi..c/U00

ナザ「モーブさん後ろ!」

モーブ「!!」

タッ!

モーブは地面を蹴り。


ドゴォン!!


背後から忍び寄った宇宙マンモスの踏み付けをかわした。

そして。

ゴゴゴゴゴゴ…

ナザ「ファイヤーッ!!」


ボォッ!!


ナザレンコはファイアフォックスを放ち、巨大なマンモスの鼻を焼き切る。

ナザ「ありゃ…アタマ貫くつもりだったんだが…」

モーブ「コイツは鋼鉄の骨の持ち主だぞ」

ナザ「訓練所のヤツはいけたんすけどね…デカくなって骨も頑丈になってるらしい」

モーブ「訓練所のヤツも十分硬いはずなんだけど…な!」


バゴッ!!


モーブは飛び蹴りで左前脚を攻撃し、バランスを崩させ。

ナザ「だったら…正攻法でっ!!」


バキィッ!!


倒れてきたマンモスの喉元を、ナザレンコが蹴り上げた。

ナザ「いってぇ!!けどこれで倒れ…てねえ!?」

モーブ「な…!」


ドスドスドス…!!!


マンモスは暴れ出し、二人はすぐに距離を取る。

ナザ「喉が弱点じゃなかったんすか?コイツ」

モーブ「そのはずだ。皮膚も分厚くなってダメージが入り切れてないんだろう」

ナザ「んじゃモーブさん上から叩いて下さい」

モーブ「分かった」

125ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 22:02:09 ID:Wqi..c/U00

ダッ!!

モーブはマンモスの上に飛び乗る。

そこから更にジャンプし。

ゴゴゴゴゴ…

モーブ「ファイヤーッ!!」


ズドォッ!!


マンモスの後頭部にファイアフォックスで突っ込んだ。

ナザ「とぉっ!!」


バゴッ!!!!


上からの攻撃によって勢いよく落ちてくる喉元を、ナザレンコは再び蹴り上げた。

ドサァァ!!

宇宙マンモスは倒れた。

ナザ「っしゃあ!上下挟み撃ち作戦成功!」

モーブ「脚は無事か?」

ナザ「ハハ、誰の脚だと思ってんすか」

その間に他のフォックスたちも六体の宇宙生物を倒し、残るは二体。

モーブ「地下のヤツはまだ出てこないか」

ナザ「まあ、ともかくまずはアイツを……あ」


ドサァッ!


地上でうねっていたコブラのような宇宙生物は、他のフォックスたちの攻撃とアーウィンの射撃で、あっさりと倒された。

モーブ「…もう片付いたみたいだな。これでラス一か」

ナザ「しっかし全然出てきませんね…どうするんすか?これ」

モーブ「放置する訳にもいかないし、監視を続けるしかないな。この星の地下じゃアイツが生きていけるほどのエサはない。しばらくすれば顔を出すはずだ」

ナザ「マジすか…長い戦いになりそうだ…」

モーブ「ああ…?は…?」

ナザ「ん?どうしたんすか?」

モーブ「は…反応が消えてる…!」

ナザ「え…?」

モーブ「位置はここから動いてなかった…つまりこの真下にいたはずなんだ…!なんで…いつの間に…!?」

ナザ「し、死んだってことっすか…?」

モーブ「分からない…何が起きた…!?」

周りのフォックスたちもざわつき始める。

126ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 22:02:54 ID:Wqi..c/U00



その時。


ドガァッ!!!


ヴァティ「なっ…!?」

長老「ごはっ…!」

地下施設に宇宙モグラが現れ、長老の体を爪で貫いた。

ヴァティ「長老!!」


ドゴッ!!


ヴァティはモグラの手を蹴るが。

ヴァティ「ぐっ…!実戦から離れてたせいで…」

逆にヴァティの脚が捻挫を起こし、跪く。

長老「逃げろ…ヴァティ…!がふっ…!」

ブンッ!

ドシャァ!!

長老は投げ飛ばされ、壁に叩きつけられた。

ヴァティ「く…!そんな…どうして…!?反応は無かったのに…!」


ザンッ!!


ヴァティ「が…っ」

モグラは爪を振り下ろしヴァティの体を切り裂く。

ヴァティ「はっ…はっ…く…」

ヴァティは死にかけながらもモグラを観察する。

ヴァティ(あの頭のキズ…)


ドガァ!!


モグラは更に手で上から叩きつけた。

ヴァティ「うぐっ…!!」

ヴァティは体で受け止めるが。

ミシミシ…

徐々に潰されていく。

ヴァティ「…みんな…あとは任せる…」


グシャッ!!

127ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 22:04:26 ID:Wqi..c/U00



ピコンッ!

リカエ「何だ?ヴァティさんからか」

リカエリスの端末にメッセージが届く。

リカエ「…これは…!」

それを読み、リカエリスはすぐに通信を入れる。

リカエ「皆、聞いてくれ!最後の一体は、自ら頭を切り開いて管理チップを取り除いたのだ!奴は地下を通り訓練場の地下施設へ移動した!今からすぐに向かう!アーウィンに乗っている者はついてきてくれ!」

フォックスたち『了解!』


キィィィィン…!!


リカエリスと十数機のアーウィンはすぐに訓練場のある山奥へと飛んだ。



そして僅か数十秒後。


ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!!!


リカエ「何だ…!?」

今まで聞いたこともないような地響きが鳴り、フォックスたちは山の手前でアーウィンを止めた。

ナザ父『リカエリス大佐、あれ…!』

リカエ「馬鹿な…」

一つの山が割れ、下から超巨大化した宇宙モグラが現れていた。

下半身は地下に隠れたままにもかかわらず、見える部分だけでその大きさは数百メートルにも及ぶ。

ナザ父『なんだあのデカさは…!?』

リカエ「…そうか…培養液…!あの地下施設からエネルギーを吸収したのか…!」

ナザ父『培養液…?』

リカエ「地下施設には宇宙生物たちの成長を早める培養液があったのです…しかしこれ程の効力があるとは…!…詳しくは後にしましょう。あんなものが暴れ出せば、村が危ないどころの騒ぎではありません…!」

ナザ父『ああ!』

128ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 22:05:53 ID:Wqi..c/U00


キィィィン…!


アーウィンたちはモグラを囲むようにして近づき。


ドドドドドドド…!!


一斉に射撃を始める。

だが。

リカエ「…急所の鼻と腹部にすら、ほぼダメージは入っていない…となれば」

パシュゥッ!

リカエリスはアーウィンのコックピットを開き。

ダッ!!

飛び降りた。

ナザ父『リカエリス大佐!?』

リカエ「私が直接急所を破壊する!皆は援護を!」

スタッ!

リカエリスはモグラの頭上に着地。

ダダダダダダダ…!!

そして鼻先まで一気に駆け下りる。

ゴゴゴゴゴゴ…

リカエ「ファイヤーッ!!」


ズダァン!!!!


そして鼻の正面から渾身のファイアフォックスを発動した。


ズドドドドド…!!!!


モグラは急所を攻撃されてのたうち回る。

その動作一つ一つで辺りの地形が変わっていく。

リカエ「くっ…!」

ダッ!!

リカエリスはすぐさま鼻の上から跳び上がり。

スタッ!

アーウィンに再び乗り込む。


キィィィィィン…


そしてモグラの周りを飛びながら、次は腹部への攻撃のためのチャンスを窺う。


ドガァァァン!!


リカエ「ソノタッ!!」

暴れるモグラの腕に当たり、リカエリスの同期であったソノタのアーウィンが撃墜された。

リカエ「く…少し腕に当たっただけでとてつもない破壊力だ…早く決着をつけなければ…!」


ズオオッ!!!!


リカエ「!!」

モグラの周囲を爆風が渦巻き、アーウィンはバランスを崩すが。

ギュルルンッ!

キィィィン!

横に何度かローリングする事でリカエリスは体勢を立て直した。

が。

129ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 22:06:51 ID:Wqi..c/U00


ズゴゴゴゴ!!


リカエ「メサヌーブ!!ラクツィ!!」

リカエリスの後輩二人が受け身を取れず、回転しながら凄い勢いで落ちていく。

ラクツィ『んぐぉおお!!せ、制御不能ォォォ!!』


ドゴォォン!!


二機のアーウィンは無情にも墜落。

メサヌーブ「あ、危ねぇ…」

メサヌーブはギリギリのところで緊急脱出し、パラシュートで宙を舞っていた。


バクッ!!!!


モグラはそれを丸呑みにした。

リカエ「くそっ!」

ナザ父『近くにいるとまずいな!みんな一旦距離を取ろう!』

リカエ「しかし遠距離射撃では此奴に通用しません!」

ナザ父『焦り過ぎだ。アイツがあそこから動く様子はないし、しっかり作戦を練ってから…』

リカエ「我々が周りにいるから動かないだけでしょう!少し離れた隙に地中に潜られたら、もう戦う手立てはない!」

ナザ父『わあああああああああああああ!!』

リカエ「ラ、ラヴレンチさん!?」

ナザ父『落ち着けリカエリス大佐』

リカエ「えっ…」

ナザ父『リーダーがそんなに取り乱すもんじゃないよ。仲間がやられて動転する気持ちは分かるけどね』

リカエ「…!」

ナザ父『訓練生の時にみんな言われたはずだ。目の前で味方が墜とされても冷静でいられるようになれってね』

リカエ「…すみません…」

ナザ父『観察してる限りじゃ、アイツはたぶん自重でほとんど動けない。時間はある』

リカエ「はい…皆すまない。一度距離を取るぞ」

そしてアーウィンはモグラの周りから離れる。

130ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 22:08:48 ID:Wqi..c/U00


リカエ「…ラヴレンチさん、ありがとうございます。お陰で冷静になれました」

ナザ父『ハハ、ヒラフォックスにしちゃあなかなか頼れるだろ?これでも一家の大黒柱だからな。マクラウド、お前も父親になったんだから、俺みたいに頼れる男にならなきゃダメだぞ?』

マクラウド『えぇ!?そこで俺に振るんですか!?…いや無理ですよ…なんでラヴさんそんなマイペースでいられるんですか?』

ナザ父『"どんな時でも楽しく自由に"がラヴレンチ家のモットーだ。自由に生きれば余裕が生まれる』

リカエ「素晴らしい考え方です。心の余裕…か…」

マクラウド『そういうもんですかね』

ナザ父『そういうもんさ。話せるようになったら子供にも教えてやるといい。ナザレンコのように優秀なフォックスに育てたいならな』

マクラウド『ウチの子は天才なのでわざわざ俺が何かしなくても優秀になりますけど?』

ナザ父『おま、親バカだな…つうかそれは父親としてどうなんだ…?まあ無駄話はまた今度にして、作戦何か思いついたか?』

リカエ「はい。彼奴に射撃はほとんど効かない。ならばやはり生身で攻撃するしかないでしょう」

ナザ父『そうだな』

リカエ「しかし先程の鼻への攻撃も少し怯ませた程度で大ダメージとはいかず、私一人の技で倒し切るのは難しい。皆の協力が必要だ」

マクラウド『ああ、もちろん』

リカエ「遠距離射撃で彼奴の気を引く陽動部隊と、地上から近づき弱点を攻撃する近接部隊に分かれる。近接部隊は私と、ラヴレンチさん、マクラウドさん…それから…」

リカエリスは部隊のメンバーを選出していく。

そして二つの部隊に分かれると、リカエリス率いる近接部隊はアーウィンから降り、地上から巨大モグラの元へと向かった。


タタタタタ…


リカエ「陽動部隊は上手くやってくれているな…急ごう」

上空ではアーウィンがモグラの弱点に集中射撃し、モグラは鬱陶しそうに腕を振り回している。

ナザ父「今なら腹まで近づけそうだな」

マクラウド「俺が運びます」

マクラウドはクラウチングスタートのような構えを取る。

そしてフォックスたちはその前に並び、マクラウドに向かって走っていく。

マクラウド「とりゃぁっ!」


バゴッ!!


走ってきたフォックスたちを、マクラウドは高く蹴り上げる。

バゴッ!!

バゴッ!!

バゴッ!!

次々と蹴り上げていき、フォックスたちがモグラの腹部まで接近した。

リカエ「今だ!!」


ズドドドドドッッ!!!!


フォックスたちは一斉に腹部を蹴り上げた。


ゴバァッ!!!


モグラは口から青い血液を滝のように吹き出す。

ナザ父「やったか!?」

131ハイドンピー (ワッチョイ 20c3-7e75):2021/06/27(日) 22:16:24 ID:Wqi..c/U00


ゴオォォォォッ!!


リカエ「いや…!」

モグラがフォックスたちに向かって腕を振り下ろし。


ドゴォォン!!!!


腹部の周囲に集まっていたフォックスたちは一気に地面に叩き落とされた。

リカエ「ぐ…!!何という…パワー…!皆無事か…!?」

リカエリスはなんとか立ち上がり、周りを見る。

リカエ「…な…っ」

そこは血の海になっていた。

上手く受け身を取れたのはリカエリスだけだった。

リカエ「…アビーさん…!シードさん…返事をしろ…イフジーチ…!アイジャック…!エルムノップさん!ラヴレンチさん…!誰か…生きていないのか…!」

返事はない。

がくり、とリカエリスは膝から崩れ落ちる。

タタタタ…

マクラウド「リカエリス!」

リカエ「マクラウドさん…すみません…作戦は…失敗です…」

マクラウド「これは…くっ…!そうか…」

マクラウドもその光景を見て愕然とする。

そして更に絶望は続く。


ゴゴゴゴゴゴゴ…!!!!


マクラウド「何だ…!?」

地面が激しく揺れ、モグラを中心にひび割れていく。

リカエ「まさか…」


ズオォォォォ!!!!


そしてその下から巨大な脚が現れた。

マクラウド「う…動き出したのか…!!」

リカエ「まずい…このままでは…」


ズシィィン!!!!


モグラは巨大な一歩を踏み出す。

リカエ「我々は滅ぼされる…」

132ハイドンピー (ワッチョイ a081-9036):2021/07/07(水) 21:05:16 ID:kl3C8vqE00

マクラウド「ボーッとするな!止めるぞ!何としてでも!」

リカエ「しかし一体どうすれば…!」

マクラウド「とにかく弱点を狙うんだ!さっきの攻撃も、血を吐いたってことはノーダメージじゃない!」

リカエ「了解…!」

タタタタタ…!

二人は腹部への攻撃のため、モグラの前へと走るが。


ズシィィン!!!!


マクラウド「くっ…一歩がデカすぎる…!」

リカエ「追いつけない…!」


ブンッッ!!!!


モグラは再び腕を振り回す。

それにより気流が乱れ、アーウィンたちがコントロールを失い。


ドゴォォン!!!!


二機のアーウィンがぶつかり合い、大破。

リカエ「キューさん!アールス!」


ドガァァン!!!!


更に二機のアーウィンが地面に叩きつけられ、爆発した。

マクラウド「テューヴ!ウィクシィーズ!!」

リカエ「クソッ…!」

マクラウド「…ん?動きが…止まった…?」

リカエ「爆発に気を取られているのか!今なら追いつける…!」

マクラウド「ああ!」


ダダダダダダダ…!


そして二人はモグラの前に回り込み。

マクラウド「リカエリス!」

リカエ「はい!」

マクラウド「行けぇぇぇ!!」


バゴッ!!


先程と同じ要領でマクラウドがリカエリスを蹴り上げる。

133ハイドンピー (ワッチョイ a081-9036):2021/07/07(水) 21:06:17 ID:kl3C8vqE00

リカエ「はああああっ!!」

ゴゴゴゴゴゴ…!

空中でリカエリスは炎を纏う。

リカエ「ファイヤーッ!!」


ズドォッッ!!!!


そしてモグラの腹をファイアフォックスで打ち抜いた。

グラァッ…

モグラは僅かに仰反る。

マクラウド「き…効いてるぞ…!リカエリス!」

ガシッ!

その瞬間リカエリスはモグラの毛に掴まり。

リカエ「まだだ…!」

ガガガガガッ!

モグラの体をよじ登っていく。

そして鼻の上まで登ると。

リカエ「はあっ!!」


ズドッ!!

ドガッ!!

バキッ!!


鼻に何度も蹴りを浴びせる。

と。

グラァッ…


ズシィィン!!!!


モグラは白目を剥いて倒れた。

スタッ…

空中に投げ出されたリカエリスは綺麗に着地し、倒れたモグラを見上げる。

リカエ「ハァ…や……やった…のか…?」

マクラウド「リカエリス!やったぞ!」

マクラウドが駆けつける。

リカエ「ハァ…ハァ…本当に…倒し切れているか…確認を…」

マクラウド「ああ…と言ってもこんなデカイの、どうすりゃいいんだ…」

リカエ「確かに…」

134ハイドンピー (ワッチョイ a081-9036):2021/07/07(水) 21:07:19 ID:kl3C8vqE00


タタタタタ…


そこへ村で待機していたフォックスたちが走ってきた。

ナザ「大佐!」

リカエ「お前たち…!」

モーブ「遅くなりました…すみません。もう終わったんですね」

マクラウド「ああ…だがまだ息があるかもしれない。みんな、確認に協力してくれ」

みんな「了解!」

フォックスたちはモグラの方へと走る。

リカエ「…ナザレンコ」

ナザ「はい?」

呼び止められたナザレンコは振り返る。

リカエ「すまない…お前の親父さんは…」

ナザ「…ああ、そうなんすね。分かりました」

リカエ「ナザレンコ…」

ナザ「大丈夫ですよ。フォックスとして戦ってんだから、こういうこともあるでしょ。つうか村もブッ壊されて、こんだけ死にまくってて、父ちゃん一人死んだくらいで悲しんでらんねえっすよ」

リカエ「…そうだな…」

ナザ「どうしたんすか。らしくないですね、大佐」

リカエ「…いや…私は元々こんな情けない男だったよ。見せないようにしていただけさ」

ナザ「情けないって…仲間が死んで落ち込むことがですか?別に普通じゃないですかね。俺は天才だから割と冷静でいられますけど」

リカエ「…フッ…やはり私はダメダメだ。先輩どころか新人にまで励まされているようでは」

自嘲するようにリカエリスは笑う。

ナザ「気にしないでくださいよ。みんな大佐を信頼してるからこそ、ほっとけないんだと思いますよ」

リカエ「ありがとう…すまないな。…さあ、皆を手伝おう」

ナザ「うっす」

そして二人もモグラの方へと歩み始める。

と。


パキパキ…


リカエ「…何だ…?」

135ハイドンピー (ワッチョイ a081-9036):2021/07/07(水) 21:08:03 ID:kl3C8vqE00

モグラの体にいくつも亀裂が入り、中から光が漏れ出す。

モーブ「な、何が起きてる!?」

マクラウド「よく分からないが、全員、離れろ!」

その瞬間。



ドドォォォォォォォォォォォォン!!!!



モグラは爆発した。

近くにいたフォックスたちは一瞬で巻き込まれる。

リカエ「ナザレンコ!!」

ナザ「はい!!」

少し離れていたリカエリスとナザレンコの二人だけは、すぐに爆発から逃げた。

136ハイドンピー (ワッチョイ a081-9036):2021/07/07(水) 21:09:05 ID:kl3C8vqE00



ギル「な…何なの、今の…」

アルバロ「何か…向こうの空が明るくなったな…」

住民たちを誘導中のフォックス四人は、その爆発の衝撃に足を止めていた。

ポルス「ねえ!こっからなんか見えるよ!」

瓦礫の上からポルスが三人を呼ぶ。

ドドン「なんかってなんだ?」

ドドンも軽い身のこなしで瓦礫の上に飛び乗る。

ギルティース、アルバロもそれに続く。

ポルス「なんかキノコみたい。何あれ?」

ギル「…キノコ雲ってやつかしら…たぶん、凄い大きな爆発があったんだわ…」

ポルス「あれ、山の訓練場の方じゃない?」

アルバロ「訓練場…」

ギル「どしたの?」

アルバロ「あそこには爺様が調査に向かっていた筈だ…ヴァティ殿も…」

ギル「母さんが!?」

アルバロ「いや、まあリカエリス大佐も同行しておるから、大丈夫だとは思うがな…フン!そんな事より我らはとっとと一般人どもを送り届けるぞ!時間を無駄にするな貴様たち!」

ギル「そ…そうね…」

ポルス「そ…そうね…」

ギルティースたちは瓦礫から降り、住民たちのところに戻るが。

アルバロ「…む?」

アルバロが振り返ると、ドドンは一人、爆発の方から目を離せずにいた。

ギル「ドドン、どうしたの?もう行くわよ!」

ポルス「もう行くわよ!」

そしてドドンはぽつりと溢す。

ドドン「…美しい…」

ボカッ!

その後ろからギルティースがゲンコツを振り下ろす。

ドドン「いたっ!何するんだギルティース!」

ギル「美しい…じゃないわよ!行くわよ!」

ドドン「お、おお!すまんすまん!」

これがドドンと爆発との出会いだった。

137ハイドンピー (ワッチョイ a081-9036):2021/07/07(水) 21:09:50 ID:kl3C8vqE00



リカエ「ナザレンコ、無事か?」

ナザ「ゲホッゲホッ…なんとか…」

僅かに爆風を受け全身の毛がチリチリになりながらも、二人はなんとか逃げ延びた。

リカエ「…この規模の爆発では…逃げられなかった者達はもう…生きてはいまいな…」

ナザ「確かめてみなきゃ分かんないですよ」

リカエ「そうだな…煙が収まったらすぐに確認に行こう」

ナザ「はい」

リカエ「しかし…奴は何故爆発した…?」

ナザ「アイツに自爆するような能力とか無かったっすよね」

リカエ「ああ。巨大化による影響か…?」

ナザ「巨大化…そういや地下施設には何があったんですか?」

リカエ「クローンの培養施設のようなものだ。宇宙生物の巨大化はその培養液による遺伝子異常だと考えられる」

ナザ「なるほど…モグラの巨大化も…」

リカエ「恐らくな。ヴァティさんと長老に詳しく調べてもらっていたのだが…巨大化したモグラの下敷きになってしまった…施設を制御していたコンピュータも、これでは跡形もあるまい…」

ナザ「そう…ですか…」



爆発を中心として、リカエリスたちとは反対方向に、男が佇んでいた。

???「魔力による自爆…これ程の巨大さでも大した威力は出ないか。やはり重要なのは肉体の大きさではなく、魔力量…この程度では足りぬ。奴を倒すには…」

車椅子に乗った緑フォックスの老人。

その体のあちこちが機械化されている。

???「さて…あの男の記憶も消しておかねばな…」

フォン…

車椅子は浮き上がり、老人はどこかへ飛び去った。

138ハイドンピー (ワッチョイ a081-9036):2021/07/07(水) 21:10:34 ID:kl3C8vqE00




数十分後。

二人は生存者がいないか確認して回ったが。

リカエ「…やはり、駄目だったか…」

ナザ「…でもモグラのヤツは木っ端微塵…つうか、塵一つ残ってないっすね」

リカエ「ああ。どうやったのかは分からないが、自らの体そのものを爆発エネルギーに変化させたのだろう。調査する必要があるな」

ナザ「ですね……ふぅ…」

ナザレンコは虚な目で、ため息をつく。

表面上は冷静に見せていても、度重なる戦いや仲間たちが死んでいく悲しみから、心身共に疲弊し、とっくに限界を迎えていた。

リカエ「村へ帰るか、ナザレンコ」

ナザ「そうですね」

二人はリカエリスのアーウィンに乗って村まで帰った。

139ハイドンピー (ワッチョイ a081-9036):2021/07/07(水) 21:12:12 ID:kl3C8vqE00



フトゥ「大佐!ナザレンコ!」

壊滅した村の中で、残っていた数人のフォックスがリカエリスたちを出迎える。

ムメイ「さっきの爆発、何だったんだ?」

リカエ「宇宙生物による自爆だ。それに巻き込まれて、我々以外は全滅した」

フトゥ「そんな…」

リカエ「この戦いでお前たちの友人や家族も、何人も命を落とした事だろう…皆…すまなかった。私の力不足だ」

リカエリスは深く頭を下げる。

ムメイ「謝んねえでくれよ大佐。アンタの指示のお陰でアタシらは生きてるし、村の住民への被害も最小限に抑えたんだ」

フトゥ「ああ…感謝こそすれ、誰もあなたを責めたりなんてしません」

他のフォックスたちもそれに頷く。

リカエ「すまない…」

それからリカエリスは、これからどうするかフォックスたちに指示を出していった。




それから少し後、リカエリスたちは隣の村に避難したギルティースたちと合流した。

ギル「そんな…母さんが…」

ギルティースは涙を零しながら、がくりと膝をつく。

アルバロ「そうか…爺様…最後まで役目を全うしたのだな…爺様から引いた血は、我が誇りだ…」

アルバロは胸に手を当て、遠くの空を見上げる。

リカエ「ギルティース、アルバロ、すまなかった。私が地下施設に二人を残して行かなければ、結果は違ったやもしれん…」

アルバロ「しかし大佐がすぐ駆けつけたからこそ、村の宇宙生物たちの掃討が迅速に終わったのだろう。気にするな」

ギル「…よくそんな…冷静でいられるわね…ぐすっ…」

アルバロ「ギルティース…フォックスとして戦うというのはそういう事だ。いつ命を落とすか分からぬ危険な仕事なのだ。だが、それによって救われる命も沢山ある」

ギル「分かってるわよ…でも…違うもん…」

アルバロ「違う?」

ギル「母さんは一線を退いてたもん…何年も戦ってなかった…だけど緊急事態だから、調査に駆り出された…そうでしょ?リカエリス大佐…」

リカエ「ああ」

ギル「母さんも他の人と一緒に避難してれば…こんなことにならなかったのに…!」

リカエ「すまない…ギルティース」

リカエリスは頭を下げることしかできなかった。

140ハイドンピー (ワッチョイ a081-9036):2021/07/07(水) 21:13:48 ID:kl3C8vqE00

アルバロ「甘えるなギルティース。それは爺様とて変わらぬ。他にも引退したフォックスたちは何人も死んでおる。貴様の母上だけではない」

ギル「は…?」

ギルティースはアルバロを睨む。

アルバロ「誰も強制などしておらん。大佐は戦えるフォックスだけを招集したのだ。当然だろう」

ギル「だったらどうして!」

アルバロ「言わねば分からんか、馬鹿者がッ!!」

ギル「…!」

アルバロ「フォックスとして…そしてこの村の…この星の…この宇宙の一員として、皆、自らの正義によって動いたのだ!!命を賭して戦ったのだ!!それを否定するというのかッ!!」

ギル「……!」

どさっ…

かつてないほどに本気の表情を見せたアルバロに、ギルティースは気圧されて尻餅をついた。

ギル「ご……ごめんなさい…」

アルバロ「…怒鳴って悪かった。分かればよい。この戦いで年長の者たちが多く命を落とした。これからは我々の世代がしっかりせねばならんからな」

アルバロはギルティースの肩に手を置く。

ギル「うん…」

リカエ「アルバロ…お前も随分と頼もしくなったものだな…」

アルバロ「我は偉大なる長老の孫だぞ!これくらい当然である!」

アルバロは偉そうに腕を組んで言う。

ギル「…でも…どうしたらいいの…?母さんも姉さんも死んで……私…もう…一人ぼっちになっちゃったよぉ……」

ギルティースの涙は次々と溢れ出す。

ドドン・ポルス「何言ってるんだ?」

ギル「え…」

ナザ「まったくだ。誰が一人ぼっちだって?」

ギル「みんな…」

アルバロ「我々は家族だろう。貴様を一人にはさせん」

ギル「家族…」

アルバロ「ああ。遠い先祖ではあれどフォックスという一人の男から、我々は続いておる。大なり小なり、全てのフォックス族にはその血が流れておるのだ。そして何よりもその精神に、我々はフォックスという男の正義を宿している筈だ。つまり…」

ナザ「長えよ。んな小難しいことじゃねえだろ」

アルバロ「何ぃ!?」

ナザ「俺らは仲間に命を預けて戦うんだ。その絆は簡単に壊れるもんじゃねえ。それこそ家族と同じくらいに…ってハズいこと言わせてんじゃねえよアルバロ!」

アルバロ「人の話遮っておいて!?」

ドドン「やっぱこいつらバカだな」

ポルス「うん。バカすぎる」

ナザ「んだとガキども!」

アルバロ「貴様たちには一度痛い目を見せておく必要がありそうだな…」

コキコキと拳を鳴らすナザバロ。

ドドン「いや、絆はどーした!」

ポルス「き…絆…!ブフォッ!恥ずかしい!」

ナザ「ブッ飛ばすッ!」

ドドン「うわあ!怒った!バカが怒った!」

ポルス「逃げろ!バカが怒った!」

ナザ「あ!待てテメエら!」

アルバロ「ワーハッハッハ!!我から逃げられるとでも思っておるのか!!」

ドドン・ポルス「ぎゃー!!」

ドタバタドタバタ…


リカエ「やれやれ…これでは家族というより、小学校の教室だな」

ギル「…フフ……そうですね。…ありがとう…みんな…」

涙は止まらなかったが、その表情は少しだけ穏やかになっていた。

141はいどうも名無しです (アウアウ a7dc-4252):2021/07/08(木) 12:19:32 ID:KKeIedm2Sa
アルバロの株がどんどん上がっていく

142ハイドンピー (ワッチョイ 7f82-d7fa):2021/08/09(月) 20:58:36 ID:x9k8dMII00





真夜中のとある町。

バンッ!バンッ!

男「ウッ…!」

ドサッ…

ヤクザA「フン…俺らに舐めた真似したらどうなるか、これで分かったろ…クズが」

ヤクザB「流石っす兄貴!」

ヤクザA「こいつは海に沈めとけ。あともう一人、俺はカタァ付けなきゃならんヤツがおる」

ヤクザB「うす!了解っす!」

そしてヤクザの兄貴分は、裏路地を通ってどこかへ向かう。

ヤクザA「俺らから逃げられると思うなよ…ドブネズミが…」

ザッ…

???「誰が逃げるかい!」

ヤクザA「あぁ?」

その前に現れたのは、緑の帽子のピカチュウだった。

???「へへっ!ワシゃヤクザ王目指しとんねん!お前ごとき相手に逃げてられるかい!」

ヤクザA「ヤクザ王って何だよ」


バンッ!!


ヤクザはピカチュウに向かって容赦なく引き金を引いた。

???「遅いんじゃボケェ」

ヤクザA「はっ!?」

銃弾をかわして瞬時に接近し。


バチバチバチバチッ!!


ヤクザA「ぎゃああああああ!!」

電撃をお見舞いした。

143ハイドンピー (ワッチョイ 7f82-d7fa):2021/08/09(月) 21:00:27 ID:x9k8dMII00

???「…ワシも知らんわ。何やねんヤクザ王て」

ヤクザA「て……てめぇが…言ったんだろう…が…」

ガクッ…

最後にツッコんで、ヤクザは気絶した。

???「ふいー、今日は五人か。いやー、大漁やな」

???「テメエが最近ウワサになってる"極道狩り"か」

そこに緑のルイージ族が現れた。

???「おうおう、六人目が自分から来よったわ」

???「残念ながら俺はヤクザじゃねえよ」

???「あァ?ほんなら何やねん」

???「俺はチェマ。地上最強になる男だ」

???「ち!地上最強てお前!ブハハハハ!本気で言っとるんか!?」

チェマ「何がおかしい?」

???「いやいや笑うやろそんなもん。よう見たらお前まだ中学高校ぐらいのガキやろ?ケンカ売る相手は選んだ方がええで」

チェマ「テメエこそヤクザ相手にケンカ売ってんだろうが」

???「そらあんな弱え奴らにワシが負けるハズあれへんからな」

チェマ「つうかよ…相手選んでたら最強になんざなれねえだろうがよ!!」

ダンッ!!

チェマが飛びかかる。


ドガッ!!


ズザザザザ…

チェマの拳をピカチュウは尻尾で弾いた。

チェマ「チッ!」

???「ほぉ、まあたしかにスジはええな。せやけどワシには敵わん」

チェマ「何様のつもりだよ!」

ダンッ!!

再びチェマが飛びかかる。

???「動きが単調やなあ。デガワァ!!」


ドシャァン!!!!


チェマ「ぐあっ!」

ピカチュウのかみなりでチェマは吹っ飛ばされた。

ババッ!

ズダダダダ…!

チェマはすぐに立ち上がって再びピカチュウに向かって突撃する。

144ハイドンピー (ワッチョイ 7f82-d7fa):2021/08/09(月) 21:01:46 ID:x9k8dMII00

???「ピカチュゥ!」


バチッ!!


チェマ「ぐっ…!」

電撃をくらい、怯んだ隙に。

ガシッ!

グルグル

ズダンッ!!

ピカチュウはチェマを投げ飛ばした。

チェマ「ぐはっ…!」

???「無駄や。今のお前じゃ何回やったってワシには勝てん。もうちょい強くなったらまた相手したるわ」

チェマ「ぐ…クソッ…!テメエ、名前教えろ!」

???「ワシは片割れや」

チェマ「片割れか…覚えたぞ!たしかにテメエの言う通り、今は勝てねえ…だがすぐに強くなってまた来る!覚えとけ!」

チェマは去っていった。

片割れ「なかなか将来有望なガキやったな…」

ヤクザC「よお片割れぇ…見つけたぜぇ」

片割れ「!」

そこへガタイのいいヤクザが現れた。

片割れ「今度こそマジの六人目か」

ヤクザC「クックック…六人目だぁ?残念だったなぁ!もう逃げ場はねえぞ!」

片割れ「あん?」

周りを見ると、武器を持ったヤクザが大量に集まって片割れを囲んでいた。

片割れ「ケッ、よってたかって…まあええわ。お前らが何人で来ようが相手んならん。それを教えたるわ」

ヤクザC「やっちまえお前ら!!」

ヤクザたち「うおおおお!!」

ドンッ!!バンッ!!

ドガッ!!バキッ!!

ヤクザたちは一斉に片割れに向かって攻撃を仕掛ける。


そして数分後。

片割れ「ふぅ。えーっと…一、二、三、四…何人や?まあええわ。とりあえずめっちゃ狩ったわ」

ヤクザは全員転がっていた。

ヤクザC「…クソ……て…てめぇ……なんで極道狩りなんざ…しやがるんだ…!」

片割れ「なんでやって?逆に聞くわ。なんでお前らはヤクザなんかやっとんねん。みんな怖がってるで?」

ヤクザC「それは…」

片割れ「あーウソウソ、答えんでええで。お前らがヤクザんなった理由なんかどうでもええ。とにかくな、迷惑やねんお前ら。ワシはこの町が好きでな、少しでも町が平和になればいいと思っとる。せやからお前らは邪魔やねん」

ドガッ!

ヤクザC「ウッ…」

ガクッ…

最後の一人も気絶させ、片割れは去った。

145ハイドンピー (ワッチョイ 80ac-f22a):2021/08/16(月) 20:26:26 ID:BviEfudE00




翌朝。

片割れ「おうナイフ、まだ生きとったか」

ナイフ「はぁ?当たり前だろ!」

小さな病院のベッドで、点滴をつけ、痩せ細っている赤ピカチュウは寝ていた。

片割れ「がはははは!そんなカッコしてよう言えるな!」

ナイフ「俺はどんな時でもキレてるからな!切れたナイフだからな!」

片割れ「意味分からんわ」

ナイフ「ゲホェーッ!!」

ナイフはめちゃくちゃ血を吐いた。

片割れ「ボケ、言わんこっちゃない」

ナイフ「は、ははは…これくらいどうってことないぜ…グフッ…」

片割れ「あーもうええから寝とけ」

ナイフ「…ん?お前その傷…」

片割れ「あ?あー、ちょっとかすっとったか。まあ別に大した傷やないわ。気づかんかったくらいやし」

ナイフ「…またヤクザと戦ったのか?いい加減にしとけよ」

片割れ「なんも問題ないわ。昨日みたいに囲まれることなんか滅多にあらへんし。あんなクズども、ワシが全部この町から追い出したる」

ナイフ「まあお前の気持ちも分かるけどさ…気をつけた方がいいぞマジで。どこの組か忘れたけど、メチャクチャに強えヤバい奴がいるらしいしな」

片割れ「ああ、そのウワサはワシも聞いたことあるわ。せやけどそんなヤツ今まで会ったことあらへん。あるいは会ったけどワシからしたら他の有象無象と変わらんかったか。何にせよ所詮ウワサはウワサや」

ナイフ「そうかなぁ…なんか嫌な予感するんだよなぁ」

片割れ「お前の予感なんかアテにならんわ」

ナイフ「まったく…とにかく、程々にしとけよ」

片割れ「へーへー。頭の片隅のまた片隅辺りにゃ置いとくわ」

そうして片割れは病院を後にした。

146ハイドンピー (ワッチョイ 80ac-f22a):2021/08/16(月) 20:27:16 ID:BviEfudE00


バチバチッ!!


男「ぐはっ!?」

病院のすぐ近くにいた男に片割れは電撃を浴びせた。

片割れ「お前もどっかの組の差し金やろ。尾けとるのに気付いとらんとでも思ったか?」

男「な、何の話だ!」

片割れ「言うとくけどな、アイツに手ぇ出しよったら、お前ら全員殺すで」

バチチチチチ…

片割れは頬の電気袋から音を鳴らして脅す。

男「ヒィィッ!」

男は逃げていった。

片割れ「ケッ、情けない悲鳴あげよって…けどまァ、あれだけビビらせりゃもう近寄らんやろ」

147ハイドンピー (ワッチョイ 80ac-f22a):2021/08/16(月) 20:28:23 ID:BviEfudE00




その頃とある組の事務所では。

ヤクザA「すんません親分…!」

ヤクザC「すんません…!俺たちじゃ力不足で…!」

昨晩片割れに倒されたヤクザの二人が、組長らしき人物に頭を下げていた。

組長「フン。気にするな。頭上げろお前ら」

ヤクザA「はっ、はい!」


バンッ!!


ヤクザAが頭を上げると同時に、その頭は横から撃ち抜かれた。

ヤクザB「とんだ甘ちゃんっすねぇ兄貴。あんな失態晒しといて、頭下げて許して貰おうなんざ、そんな甘い話があるわけねえでしょ。この世界によ」

ヤクザC「てめえ!!何の真似だ…!!」

ヤクザB「言葉にゃ気を付けてくだせぇ」

ガッ!

ヤクザC「あがっ…」

ヤクザBは、ヤクザCの口に銃口を突っ込んだ。

ヤクザB「あんたは親分に断りもなく勝手な行動でうちの兄弟たちを大勢引き連れて、挙げ句全員病院送りにされ、何の成果もなく帰ってきた。大方、巷で話題の極道狩りを仕留めりゃ若頭候補に名乗り挙げられるとでも考えたんでしょうが…」

組長「その辺にしとけ、B」

ヤクザB「うす」

ヤクザBは銃を引いた。

ヤクザC「げほっげほっ…!す…すんませんでした…!!」

ヤクザCはすぐさま土下座し、額を血が滲むほど床に擦り付ける。

組長「よせ。床が汚れる。そこに転がってる馬鹿は裏で何年もウチの金を好き勝手使ってやがったから、粛清したんだ。だがてめえの失敗は今回だけだ。タマ取るほどのモンじゃぁねえよ」

ヤクザC「せ、責任取ってエンコ詰めさせて頂きやす…!!」

組長「てめえの指なんざいらねえよアホンダラ」

ヤクザC「す、すんません!!じゃあどうすれば…!」

ヤクザB「こいつを須磨武羅組の事務所に仕掛けてきてくだせぇ」

そう言ってヤクザBが持ってきたのは、トランクケース。

ヤクザC「なんだ…?」

ガチャッ

Bはトランクケースを開く。

148ハイドンピー (ワッチョイ 80ac-f22a):2021/08/16(月) 20:29:28 ID:BviEfudE00

ヤクザC「な、なんだこいつは…!?」

その中には目と足のついたいくつかの爆弾が眠っていた。

ヤクザB「ボム兵っつう爆弾っすよ。もう職人がいねえんでほとんど手に入らねえ代物っす。火力はそこらの爆弾なんかとは比べモンにならねぇ」

ヤクザC「ボム兵……ん?つうか今、須磨武羅組って言ったか…?」

組長「ああ。奴らさえ消えりゃぁウチがこの町のトップだ」

ヤクザC「む、無理ですよ!あそこにだきゃあ手ェ出すなって、親分だって言ってたじゃねぇっすか!」

組長「フン、ボム兵さえ手に入りゃぁ関係ねぇ。事務所ごと全員まとめてお陀仏よ」

ヤクザC「しかし…!」

ヤクザB「うだうだうるせぇな!黙って漢見せんかい!」

ズドッ!!

ヤクザC「がはっ!!」

BはCの腹を殴りつける。

組長「ま、そういうことだ。何も特攻しろっつってるわけじゃねぇんだ。こいつを仕掛けてくりゃそれで今回のミスがチャラだぜ。安いモンだろう」

組長は跪いたCの肩にポンと手を置いた。

ヤクザC「は…はい…行かせて…いただきやす…」

ヨロヨロとヤクザCは起き上がり、ボム兵を懐にしまって出て行った。

149ハイドンピー (ワッチョイ cc27-0d6e):2021/08/24(火) 20:06:04 ID:ZjzJF1FQ00




数十分後…片割れは。

片割れ「らっしゃーせー」

コンビニでバイトしていた。

そこへ。

チェマ「よう。こんなとこで何してんだてめえ」

片割れ「あぁ?なんや、昨日のクソガキかい。見たらわかるやろ。働いてんねん」

チェマ「お前みたいなヤツでも働くんだな…」

片割れ「ワシが働いたらあかんのか?」

チェマ「いや、意外だろ…つうかその短え手足でコンビニバイトなんかできるのかよ…」

片割れ「フン、ワシゃ意外と器用なんや。少なくともガサツそうなお前よりは何倍もな」

チェマ「そうかい。ま、頑張れやオッサン」

片割れ「いや、つうかお前学校は!?」

チェマ「チッ…っせーな」

片割れ「お前なぁ、親御さんはお前育てるために必死で働いてんねんぞ!わかっとんのか!?働くのって結構大変なんやぞ!?」

チェマ「てめえにゃ関係ねえし、てめえに言われたかねえ。じゃあな」

片割れ「おい待てや!」

客「あの…レジいいすか…」

片割れ「ああ!すんまへん!どうぞどうぞ!…ったくあの馬鹿ガキは…」

カチャ…

片割れ「あ?」

客?「死にたくなけりゃ金を出せ」

その客は片割れの額に拳銃を突きつけていた。

片割れ「…はあ?」


バチバチッ!!


客?「ぐあっ!?」

片割れ「ケンカ売る相手間違えたなぁお客さん。すぐにケーサツ呼ぶからな」

150ハイドンピー (ワッチョイ cc27-0d6e):2021/08/24(火) 20:07:10 ID:ZjzJF1FQ00

男「動くな!!」

片割れ「あ?」

男「動けばコイツの頭が吹き飛ぶぜ!」

店員「ひいいっ!!」

後ろにいたマスクの男は、拳銃を他の店員に突きつけていた。

片割れ「チッ、仲間がおったか。めんどくさいのぉ…」

男「とっととそのバッグにありったけ金を詰めろ!コイツがどうなってもいいのか!」

片割れ「へーへー、分かりましたよ」

片割れはレジの中から金を出して、バッグに詰めていく。

ドサッ…

片割れ「ほれ、全部詰めたで。もってけ泥棒」

男の前にバッグを投げる。

男「最初からそうすりゃいいんだよ!」

男が拾おうとした瞬間。

片割れ「ピカチュゥ!」


バチバチッ!


男「ぎゃあっ!」

片割れ「えーっと、テープはっと…お、あったあった」

片割れはガムテープで強盗二人の手足を縛った。

店員「はあ、はあ…た、助かりましたよ片割れさん…ありがとうございます」

片割れ「なーに気にすんなや。こんなんいつも相手しとる奴らに比べりゃ虫みたいなモンや」

店員「いつも…?」

片割れ「あー、いや、アレや、実はちょっと格闘技をな…」

店員「そうなんですね!」

片割れ「…で、お前らどっからこんなモン手に入れたんや?」

男「う…な、なんだと?」

片割れ「この拳銃、マジモンやろ。この町じゃ銃の売買は禁止されとるからなぁ。まあどうせヤクザ絡みやろうけど」

男「い、言うと思うか…?」

片割れ「別に言わんでもええけど…ヤクザとワシと、どっちが怖いんやろなぁ」

バチチチチチチ…

片割れは電気袋から火花を散らして脅す。

男「わ、分かった!言う、言うよ!昨日、変なデケぇ男から買ったんだ!」

片割れ「デケぇ男?なんやそれ。はっきり言えや」

男「夜だったし、全身黒ずくめで、顔はよく見えなかったんだよ…コイツと歩いてたらいきなり路地裏から声かけられて、拳銃見せられて…めちゃくちゃ安かったし、俺もコイツも借金まみれで人生終わってたから…もうこれに賭けるしかなかったんだ…」

片割れ「どこの路地や?」

男「ひ、東の駅の近くだよ…」

片割れ「東っつーと…アイツらのシマか…」

店員「何か知ってるんですか…?」

片割れ「ああ、そこそこデカイヤクザの事務所があんねん。あの辺はクスリの売人も多いし、あんま近寄らんほうがええで」

店員「へ、へー…」

片割れ(最近アイツら妙に活発になっとるらしいからな…今夜辺り潰しに行くか)

それから程なくして警察が到着し、強盗たちは引き渡された。

151ハイドンピー (ワッチョイ cc27-0d6e):2021/08/24(火) 20:08:22 ID:ZjzJF1FQ00




そしてその夜。

片割れ「この辺が怪しいな」

片割れは路地裏へと入っていく。

片割れ「…ビンゴや」

ダッ!!

片割れは何かの取引をしている二人の男を見つけ飛びかかる。

男1「なんだ!?」


バチバチッ!!


男1「ぐぁぁっ!!」

片割れ「まずは一人」

男2「てめえ…!極道狩りか!!」

片割れ「正解」


ドゴォッ!


男2「ぐはぁっ!」

ガシャ!

突き飛ばされた男の懐から拳銃が零れ落ちた。

片割れ「お前、なんで拳銃なんか売っとんねん。それも激安で」

男2「は…?な、何を言ってやがる…」

片割れ「とぼけても無駄やボケ!この辺で銃売っとる奴がおるのは分かっとんねん!」

男2「知るかよ!そりゃ俺のチャカだ!返しやがれネズミ野郎!」

男は片割れに飛びかかる。

片割れ「あぁ?」

バキッ!!

男2「ぐほぉ!」

片割れ「…そういや売人は大男やって言うとったな…コイツもそこそこ背は高いが、大男ってほどのモンやない…人違いか…?」

男2「だ…だから…違うっつってんだろ…俺はただクスリを…」

片割れ「クスリのほうやったか」

バチバチッ!!

ドサッ

片割れは男を気絶させた後、その懐にしまっていた麻薬を電撃で焼き尽くし、拳銃も尻尾で叩きつけて粉砕した。

そしてまた路地裏を捜索する。

片割れ「しかしでかいってんならすぐに見つかりそうなもんやけどな…」


バンッ!!


片割れ「銃声…!あっちか!」

片割れは銃声のしたほうへ走る。

152ハイドンピー (ワッチョイ cc27-0d6e):2021/08/24(火) 20:10:00 ID:ZjzJF1FQ00

片割れ「誰や!!」

???「…見つかってしまったか」

そこには車椅子に乗った老フォックスがいた。

片割れ「あ!?」

???「まあいい。幸い、弾はもう一発残っている」

片割れ「!!」


バンッ!!


片割れの眉間を一発の弾丸が貫いた。



数分後。

片割れ「…うん?」

???「大丈夫かい?ピカチュウ族の人」

片割れ「うおっ!?ゴリラ!?」

片割れが目を覚ますと、そこには赤毛のゴリラがいた。

???「すまない、驚かせてしまったか」

片割れ「あーいや気にすんなや、いきなりでビビったけども。…ってなんでワシはこんなとこで寝とんねん」

???「さあ…私も目が覚めたらここにいて困惑していたところさ」

片割れ「あんた、何モンや?」

???「私はこの近くでバーをやっている者だよ。女性のお客さんによくセクハラまがいのことをしてしまうので、エロ過ぎるマスター、通称エロマスと呼ばれている」

片割れ「最低やな…」

エロマス「も、勿論ちょっと下ネタが多いだけで、直接触ったりなんかはしてないぞ!本当だぞ!」

片割れ「そーかい。ワシは片割れっつーもんや。しかしほんまに何があったんや?何も覚えてへんねん…」

エロマス「ああ、私もだ。まるで何者かによって記憶が抜き取られたかのように…」

片割れ「んなアホな。映画の見過ぎとちゃうか」

エロマス「フ、まあそうだな…状況から考えると、我々はこの路地で前方不注意で走っていて、正面衝突して頭でも打ったのだろう」

エロマスはそう言って眉間の辺りをさする。

片割れ「あ、ホンマや。なんかぶつかったような痕があるわ」

エロマス「だだ何の用があって私はこんなところを走っていたのか…」

片割れ「…そういやワシも何の用で……ってせや!売人捜しとったんや!」

エロマス「売人?たしかにこの辺りでは麻薬の取引が横行していると聞くね。君も麻薬をやってるのか?やめた方がいいよ」

片割れ「ちゃうわ!むしろ逆や!ワシはそう言うの許せんねん!」

エロマス「なるほど…自警団みたいなことをしているのか。団ではないみたいだが」

片割れ「まあそんなとこや…つっても今捜しとるのはもっとヤバい奴やけど」

エロマス「ヤバい奴?」

片割れ「この辺で銃の取引がされとるらしいんや」

エロマス「ほう、それは初耳だな。ん?そう言えば昼に強盗事件があったというニュースがあったが…まさかあれも売人から買ったのか…?」

片割れ「ああ。そうらしい」

エロマス「そうらしいって……なるほど、強盗を撃退したアルバイトのピカチュウ族というのは君か」

片割れ「ま、まあな…なんやハズいな」

エロマス「フ、立派なことじゃないか」

153ハイドンピー (ワッチョイ cc27-0d6e):2021/08/24(火) 20:11:43 ID:ZjzJF1FQ00

片割れ「…ワシはただ嫌いなモン叩き潰しとるだけや。正義感とかそんなんやない」

エロマス「いいんじゃないか?それが人のためになるのなら」

片割れ「いいわけあるかい…たまたまその相手がヤクザやら悪人ってだけで、気に入らんから叩き潰すなんてやっとることはそこらの不良と変わらん」

エロマス「フ、真面目だな。そんなに思い詰めるな」

片割れ「思い詰めてはないけどな。ワシは別に人のためにやっとるわけやないってことや」

エロマス「強い信念を持っているんだな、君は」

片割れ「せやからそんな大したモンやないて…」

エロマス「謙遜はよしてくれ。私には信念も野望も何もないんだ。だから君のようなギラギラとしたものを心に秘めた人を見ると、とても眩しく映るんだよ。どうか私にも君を応援させてくれないか?何か困ったことがあれば力になるよ」

片割れ「…なんや、エロ過ぎるマスターとか名乗っとるけど、お前結構優しい奴やな?」

エロマス「フ、私は打算的な男でね。ファイターと呼ばれる種族とは仲良くしておいたほうが今後のために都合が良いというだけさ」

片割れ「ケッ、まあそんなこったろうと思ったが。さっきも言うたけどワシゃ自分の嫌いなモン叩き潰すだけやからな。お前に何か頼まれたところで、助けてやるとは限らんぞ?」

エロマス「いいさ。ただ私は大きな敵は作りたくないんだ。平穏な毎日を送りたいからね」

片割れ「そーかい。ほんならワシはそろそろ行くわ。じゃあな」

エロマス「おっと、待ってくれ。これを渡しておくよ」

片割れ「ん?」

エロマスは名刺を手渡す。

片割れ「…情報屋…?」

エロマス「ああ。バーの片手間にね。何か知りたいことがあればうちに立ち寄るといいよ、極道狩りさん」

片割れ「!!お前、分かっとったんか…」

エロマス「いや、顔までは知らなかったさ。ただ極道狩りの噂は勿論知っていたからね。君の話を聞いてすぐにピンと来たよ」

片割れ「そういうことか。まさかお前、ワシの情報をヤクザどもに売ったりせんやろな?」

エロマス「それはどうかな?客として対価を払ってくれるなら私は誰が相手でも気にしないスタンスだからね。まあでも自分から売りに行くようなことはしないよ。私が売るのは自ら訪ねてきた人にだけだ」

片割れ「ちなみに今までにヤクザが訪ねてきたことは?」

エロマス「フ…それ以上問い詰められると、情報料が発生するが構わないか?商売なのでね」

片割れ「チッ…まあええわ」

154ハイドンピー (ワッチョイ cc27-0d6e):2021/08/24(火) 20:13:15 ID:ZjzJF1FQ00

片割れは名刺を帽子の中にしまうと、踵を返した。

エロマス「もう行くのか?」

片割れ「ああ」

エロマス「そうか。それじゃあ気をつけて。私はいつもバーで待っているよ」

片割れ「おう。行くか分からんけどな」

エロマス「それと、これからはお互い前を見て歩くよう注意しよう」

片割れ「ハッ、それはそうやな」

そうして二人は別れる。


片割れ「!!」

片割れは何かの視線を感じ、咄嗟にビルの上を見た。

片割れ「…気のせいか」



???「記憶の消去は成功したようだな。奴の研究室にあった私に関する情報も全て削除した。さて、拠点へ帰るとしよう」

キィィィン…

そこへ一機のアーウィンが飛んでくる。

???「お迎えに上がりました、オリジナル」

???「ああ」

老フォックスはアーウィンに乗り込むと、空へと消えていった。

155ハイドンピー (ワッチョイ 3f68-f48d):2021/08/28(土) 21:51:37 ID:dBVAsxFk00



数時間後。

片割れ「どうしたもんかね。クスリの売人はもう五人もブッ倒したのに、拳銃の奴はどこにもおらん。今日は来てへんのか?」

ヤクザB「誰を捜してるんだ?」

片割れ「!」

ヤクザBが片割れの背後に姿を見せた。

ヤクザB「拳銃の売人ってのは俺のことだ。てめえは極道狩りだな」

片割れ「ほぉ、自分から出てくるとはいい度胸やな。なるほどたしかにデカいが…それだけじゃワシには勝てんぞ」

ヤクザB「デカいだけ?誰に向かって言ってる」

バサッ!!

ヤクザBは、纏っていた黒服を脱ぎ捨てた。

片割れ「ゴ…ゴリラ…!?」

その正体は、茶色いゴリラだった。

ヤクザB「そうさ。俺はこの町じゃ珍しい、ドンキー族というファイターの一族なのさ」

片割れ「珍しいて…ついさっき他の奴に会ったばっかやけども…」

ヤクザB「何!?…そうか、そういやこの辺はあのエロマスの拠点だったな」

片割れ「なんや、知っとるんか?やっぱりあの野郎、ヤクザと繋がりが…ってんなこたぁ今はどうでもええねん。なんで銃なんざ安く売り捌いとるんや?お前らにメリットがあるとは思えへんな」

ヤクザB「教えると思うか?」

片割れ「さあな。答えたくなきゃ答えんでええ。どうせお前はここでブッ潰すからな」

ヤクザB「フン、こっちのセリフだ。俺もてめえを捜してたんだ」

片割れ「は?」

ヤクザB「昨日はウチのモンが世話になったようだな」

片割れ「なんや、敵討ちっちゅうわけかい。くだらん…クズ共が一丁前に仲間意識なんか持ちよって…」

ヤクザB「お喋りはこの辺でいいだろう。死ぬ覚悟はできたか?」

片割れ「コッチのセリフじゃボケ!」

二人は睨み合う。

156ハイドンピー (ワッチョイ 3f68-f48d):2021/08/28(土) 21:52:30 ID:dBVAsxFk00


ダンッ!!


そして同時に飛びかかる。


ドガガガガガ!!


ヤクザB「ごあっ…!」

片割れ「どうした!?遅えな!!そんなんでワシに勝てると…」


バキィ!!


片割れ「ぶっ!!」

ヤクザB「やかましいんだよ…!戦い方ってもんがあんだろうが…重量級との戦いは初めてか?」

片割れ「チッ…」

ヤクザB「オラァ!!」


ブンブンブンブン!!


ヤクザBは両手を広げて回転しながら片割れに突撃。

片割れ「ピカチュゥ!」


バチィ!


ヤクザB「効かねえよ!」

片割れ「は、弾いたやとぉ!?」


ドガァッ!!


片割れ「ぐあっ!」

ヤクザB「ふんっ!」


ガシッ!!


ヤクザBは巨大な両手で片割れを捕まえる。

片割れ「くっ!放せ!」

ヤクザB「お望み通り…放してやるよ!!」


ブンッ!!


ドゴォ!!!


片割れ「ぐああっ!」

片割れはビルの壁面に投げつけられ。


ズドォッ!!!!


更に顔面にパンチを叩き込まれた。

157ハイドンピー (ワッチョイ 3f68-f48d):2021/08/28(土) 21:54:10 ID:dBVAsxFk00


ガラガラガラ…!!


ズシィィン…!!


その衝撃で崩れた壁が片割れにのしかかる。

ヤクザB「フン、他愛ねえ。俺にはてめえみてえな調子づいた馬鹿を相手にしてる暇はねえんだよ」

カチャ…

ヤクザBは片割れの頭部に拳銃を突きつける。

片割れ「く…そ…ッ…」


???「そこで何してる」


ヤクザB「あ?」

ヤクザBが振り向くと、そこには赤いカービィ族がいた。

片割れ「な……なん…や……アイツ…」

???「何やら騒がしいと思って来てみれば、こんなところで抗争か?馬鹿どもが。建物も壊しやがって…」

ヤクザB「誰だよてめえ。カタギが首突っ込んできてんじゃねえぞ」

???「カタギじゃねえよ」

ヤクザB「何?どこの組のモンだてめえ」

ヤクザBは拳銃をカービィに向ける。

???「須磨武羅組だ」

ヤクザB「何だと…?」

片割れ(須磨武羅組…!この町最強のヤクザ…!)

ヤクザB「…フン、それがどうした。てめえのようなチビに何ができる!」

ヤクザBが引き金に指を掛ける。


バチッ!!


ヤクザB「ぐっ…!?」

横から飛んできた電撃により、ヤクザBは拳銃を落とした。

片割れ「どこ…見とんねん…お前の相手は…ワシや…ボケが…!」

ヤクザB「ク……クックック…そんなボロボロでよく言えたモンだな!」

片割れ「ざけんな…ワシはまだまだ…元気やっつーの!!」


ドガァ!!


のしかかった瓦礫を尻尾で払い除け、片割れは立ち上がった。

ヤクザB「ケッ…根性だけは一丁前だが…根性だけでどうにかなるほど甘かねえぞ、この世界はな」

片割れ「言っとけ…ワシゃヤクザの世界になんざ興味ないんじゃボケ」

158ハイドンピー (ワッチョイ 3f68-f48d):2021/08/28(土) 21:56:15 ID:dBVAsxFk00

ザッ…

睨み合う二人の間に、赤カービィが立ちはだかった。

???「やめろ」

ヤクザB「どけチビ。潰すぞ」

片割れ「関係ねえ奴は引っ込んどけや…それとも…お前からやられたいんか…?」

???「やめろと言っているのが分からないか?」

ギロリ、と、カービィは二人を睨む。

途端に二人の動きが止まった。

片割れ(なんや…?コイツのこの迫力は…!)

ヤクザB(う…動けねえ…!?)

???「フン、俺もまだ小童に遅れを取るほど衰えちゃいない」

片割れ「お、お前…何モンなんや…!?」

???「須磨武羅組大親分、名は迫力」

片割れ「お…大…親分…!?」

ヤクザB「馬鹿な…須磨武羅組のトップはガタイのいいオッサンの筈だ!お前のようなチビじゃぁねえ!」

迫力「そりゃ俺のひ孫よ」

ヤクザB「ひ孫だぁ!?ふざけるな!てめえ一体何歳だってんだ!?」

迫力「百二十六歳だが…?」

ヤクザB「あぁ!?」

片割れ「滅茶苦茶言いよるなコイツ…」

迫力「何もおかしいことはねえだろう。寿命なんざ種族によっていくらでも変わってくる。てめえの価値観こそが世界の常識だと思い込んじまう、若え奴の悪い癖だ」

ヤクザB「…チッ…主語のでけえジジイだ。だがまあ、てめえが須磨武羅組のモンだってんなら話が早え。ジジイだろうが何だろうが、敵に容赦はしねえ」

カチャ…

ヤクザBは迫力に銃を向ける。

ヤクザB「てめえのその威圧感も長くは続かねえらしいな。もう問題なく動けるぜ」

迫力「おいおい、こんな老人にチャカ使う気か?」

ヤクザB「大親分ともあろう者が命を乞うのか?」

迫力「そりゃあ嘘だ」

ヤクザB「あぁ?」

迫力「そう言やビビって戦いをやめると踏んだんだが、思ったよりてめえは大物だったらしい。須磨武羅組に大親分なんていう役職はねえ。とうの昔に俺は引退したのさ」

ヤクザB「何だと…?」

迫力「早え話が今の俺はただの隠居したジジイだ。カタギに手ぇ出すつもりか?」

ヤクザB「何だそりゃ。知るか。死ね」


バンッ!!

159ハイドンピー (ワッチョイ 3f68-f48d):2021/08/28(土) 21:58:58 ID:dBVAsxFk00

ヤクザB「ぐっ…!」

撃った瞬間、片割れがヤクザBの腕を尻尾で叩き、拳銃を弾き飛ばした。

片割れ「ほんならさっさと帰って寝とけやジジイ!」

迫力「そういうわけにはいかんだろう。こんなとこで戦いおっぱじめようって輩を見て見ぬ振りしろってのか?この俺に」

片割れ「力がないなら出しゃばっても意味ないねん!サツでも呼べばよかったやろうが!」

迫力「見縊んな。てめえらがサツ程度で止められるタマじゃねえことぐらい一目で分かる」

ヤクザB「解せねえな…それはてめえが出てきたとて同じことだろ。それともてめえなら止められるとでも思ったのか?」

迫力「だから見縊んなと言ってんだろうが。時間さえ稼げりゃ良かったのさ」

ヤクザB「何…?」


ザッ!


片割れ「!!」

気付けば三人の周囲に、数十人の屈強な男たちが集っていた。

中にはファイターの種族も数人混じっている。

ヤクザB「な…!」

片割れ「仲間を呼んどったんか…!」

迫力「おう。こんな夜中に呼び出して悪いなお前たち」

???「滅相もございません」

と、黒スーツのルイージ族が頭を下げる。

???「大親分の呼び出しとあらば俺たちはいつでも駆けつけますよ」

迫力「大親分はよせと言ってるだろう。もう俺は引退した身だ」

???「はっ!すみません、ついクセで……それで、迫力さんの言っていた厄介そうな奴というのは…」

迫力「ああ、アイツらだ」

ヤクザB「よう…久しぶりだな人間」

人間と呼ばれたルイージ族は、ヤクザBの顔を見るやいなや一瞬で人相が悪くなる。

人間「チッ…てめえか。迫力さんに迷惑掛けてんじゃねえぞクズが」

ヤクザB「あ?てめえ程の漢がそんなジジイ相手にヘコヘコしやがって。介護も楽じゃねえな。俺が楽にしてやろうか?」

人間「何…?」

一段と人間は睨む。

周りのヤクザたちも同様に殺気立つ。

160ハイドンピー (ワッチョイ 3f68-f48d):2021/08/28(土) 22:01:36 ID:dBVAsxFk00
ヤクザB「…なんてな。須磨武羅組相手に一人で挑む程俺は馬鹿じゃねえ。ここは退かせてもらう」

人間「てめえ…迫力さんを侮辱しといて逃げられると思ってんのか?」

須磨組員たち「そうだそうだー!」「舐めてんじゃねえぞコラ!」

迫力「よせてめえら。この場を収めりゃそれでいい。だがな、見逃してやるのは今回限りだ。この町でまた暴れようとしやがったら容赦はしねえ。分かったな坊主」

ヤクザB「…肝に銘じとくよ」

ヤクザBは去っていった。

すると。

フラ…フラ…

ドサッ…

迫力「!」

片割れは倒れた。

迫力「こっちの方はとうに立ってられる体じゃなかったか。大した根性だよ全く」

人間「迫力さん、コイツはどうしますか?」

迫力「ソイツぁ悪い奴じゃねえ。手当てしてやれ」

人間「分かりました」

161はいどうも名無しです (ワッチョイ 6b9f-4fa8):2021/08/29(日) 00:01:27 ID:KvaKGq9s00
意外なキャラが意外な登場をするのでいつもワクワクしながら読んでます
続きも楽しみです!

162はいどうも名無しです (ワッチョイ d410-19bd):2021/08/29(日) 00:05:11 ID:LvPjniUw00
この人間は使えそう

163ハイドンピー (ワッチョイ df86-2a3e):2021/09/03(金) 21:20:26 ID:Zq6JSe8g00




片割れ「はっ!」

片割れは目を覚ます。

片割れ(知らん天井や…ここは一体…)

迫力「お、目が覚めたか」

片割れ「お前は…っ!」

立ち上がろうとしたところで片割れは全身に激痛が走った。

人間「無理するな。四箇所の骨折に全身打撲、血もかなり失ってる。処置は済んだがまだ絶対安静だ」

片割れ「くっ…」

迫力「流石だな人間。相変わらず優秀な奴だぜ」

人間「恐れ入ります、大親分」

迫力「コイツに感謝するんだな。あのまま放っときゃお前は死んでただろう」

片割れ「ぐ…ふ…ふざけんな…ヤクザに救われたって嬉しないわ…!」

迫力「死んだ方がマシってか?くだらねえ。てめえみてえな若造が命投げ出すなんざ百年早え。一つしかねえ命だ、大事にしろ馬鹿タレ」

片割れ「ヤクザが命語んなや…吐き気がするわ」

人間「お前、最近巷を騒がせてる極道狩りだろ?」

片割れ「…それがなんや…」

164ハイドンピー (ワッチョイ df86-2a3e):2021/09/03(金) 21:21:33 ID:Zq6JSe8g00

人間「カタギからしてみりゃ俺らは害でしかねえだろうしな。気持ちは分かるぜ」

片割れ「何やと…?」

人間「俺も昔は極道なんざクズしかいねえと思ってた。そして今のてめえみてえに痛い目を見た。そんな時、迫力さんに救われたんだ。俺だけじゃねえ。須磨武羅組の奴の多くは、迫力さんに救われてここにいる」

片割れ「ケッ…それで自分もヤクザになっとったら世話ないわ」

人間「ウチを他の組と一緒にすんじゃねえよ。須磨武羅組ではカタギに手ぇ出さないのは勿論、ヤクの取引や闇金も禁止してる」

片割れ「…それでどうやって組織保てるんや…?」

人間「それは…」

迫力「賄賂さ」

片割れ「あぁ…?まさかサツと繋がっとるんか、お前ら…」

迫力「サツだけじゃねえ。町の大企業やら宗教団体やら、色々とな」

片割れ「腐っとるな…」

迫力「この世にゃ法律だけじゃどうしようもねえ奴らもいる。サツだけじゃ手に負えねえ奴らもいる。そういうのを俺たちはこの町から追っ払ってんだ」

片割れ「……」

片割れは目を逸らす。

迫力「はっ、思い当たる節があるようだな。そうだ。俺らのやってることはてめえと大して変わらねえ。だから他の組から目の敵にされる訳だが」

人間「別に良いことしてるとか正義だとか言えるほど思い上がっちゃいねえ。だが少なくともカタギから汚い手使って搾り取ってる連中とは一緒にされたくねえな」

片割れ「…そうかい…」

迫力「要は俺たちゃ同志って訳だ。てめえもウチに入らねえか?」

片割れ「…は?」

???「おいジジイ、また事務所に入り浸ってんのか」

ガチャリ

部屋に入ってきたのは、強面のスーツの男。

165ハイドンピー (ワッチョイ df86-2a3e):2021/09/03(金) 21:22:58 ID:Zq6JSe8g00

迫力「お〜、戻ったか」

人間「お疲れ様です親分!」

親分「親分はやめろ人間。お前と俺の仲だろうが」

人間「ははっ、んなこと言ったって親分は親分だからなぁ」

親分「…まあいい。そいつが極道狩りか」

人間「ああ」

片割れ「お前が須磨武羅組のトップか…」

親分「そうだ。お前の噂は聞いている。ウチのモンはまだやられてないが、随分とやんちゃしてるらしいじゃねえか」

片割れ「チッ…」

親分「もうジジイから聞いただろうが、俺もお前に興味がある」

片割れ「何やと…?」

親分「ウチに入れ、片割れ」

片割れ「な…なんでワシの名前知っとんのや…名乗っとらんはずやぞ」

親分「少し調べりゃ分かることだ。お前の友人…ナイフとか言ったか?そいつが重病を患って入院していることも知っている」

片割れ「な…!!」

親分「俺には腕の良い医師の知人がいてな…ウチのモンが抗争なんかで死にかけた時に何度も世話になってるんだが、そいつに手術を頼んだ。手術代は既に払ってある」

片割れ「は!?な、何を勝手に…!!」

親分「勝手な訳ねえだろう。当然本人の同意の上だ」

片割れ「あんの馬鹿…!ワシに何の相談もせずに決めよって…!」

166ハイドンピー (ワッチョイ df86-2a3e):2021/09/03(金) 21:24:41 ID:Zq6JSe8g00

親分「保護者かよ。あいつももう良い大人だろう。自分のことくらい自分で決めさせてやれ。何、心配はいらねえ。俺を信用しろ」

片割れ「できる訳ないやろ!何やねんその自信…信用要素ゼロやろ…怪しすぎるわ」

親分「お前、気付いてねえだろう」

片割れ「…あ?何がや…」

親分「昼間、あいつんとこに刺客が来てたんだよ。お前にやられた報復のつもりだろうな」

片割れ「何やと!?まさかあん時追っ払った奴が…」

親分「極道の世界を舐めねえ方がいい。多少脅したくらいで引き下がるような奴はいない。まあウチのモンに守らせたから、被害はないがな。むしろあちらさんの方がダメージを負ってるだろう」

片割れ「……貸し作ったつもりか…そんなもん、証拠もないやろ。お前が勝手に言っとるだけかもしれん」

親分「流石に強情だな。やはり両親を殺された恨みはそう簡単に覆るもんじゃねえか」

片割れ「!!…お前…そこまで調べたんか…」

親分「当たり前だろう。これから仲間になる奴の事だ」

片割れ「ならんわ!…フン、この際はっきり言ったる。たしかにワシは十年前、お前らヤクザに両親を殺された。それをきっかけに戦い方学んで、死ぬほど鍛えてきたんや。ヤクザをブッ潰すためにな。お前らが何しようが、あん時のヤクザとは関係なかろうが…ヤクザはヤクザや!ワシはお前らを許すことなんかできん!」

親分「だが、復讐に取り憑かれているって訳じゃねえだろう?お前にやられた連中は皆大した怪我も負っていない。ファイターの力がありゃあ一般人なんざ簡単に殺せるにもかかわらずだ」

片割れ「当たり前や。お前らと一緒にされんのはごめんやからな。ワシはただワシの同類を作らんように、この町を平和な町にしたいだけや」

親分「俺たちとて殺しは滅多にやらねえよ。余程手強い相手に、殺らなきゃ殺られるっつう時くらいのもんだ」

片割れ「そんなモン言い訳にもなっとらんわボケ」

親分「大体お前がどう思おうがやってる事は俺たちと変わりねえ。俺たちにゃサツと組んでる暗黙の特権てのがあるが、お前にはそれもねえ。このまま続けてりゃお前は捕まってそこで終わりだ」

片割れ「別に構わん。ワシは初めから覚悟の上や」

親分「捕まったらもう極道狩りはできねえぞ。お前の目指す平和な町は実現できねえ。いいのか?それで」

片割れ「お前らがワシと同じことしとるんなら、お前らが成し遂げてくれるやろ」

親分「俺たちは信用ならねえんじゃなかったのか?内部に入り込めりゃあ近くで監視するには持ってこいだろう」

片割れ「チッ…ああ言えばこう言う…無駄や。ワシには話術も脅しも効かん。帰らしてもらうわ」

バッ…

片割れはベッドから立ち上がり、窓を開けた。

167ハイドンピー (ワッチョイ df86-2a3e):2021/09/03(金) 21:25:45 ID:Zq6JSe8g00

人間「おい!まだ歩けるような体じゃねえぞ!」

片割れ「知るかボケが」

親分「…仕方ねえ。無理にとは言わねえよ。だがこれだけは覚えておけ」

片割れ「あ?」

親分「俺たちはお前の味方だ」

片割れ「勝手に言っとけ。ワシはお前らの敵や」

タンッ!

片割れは窓から去っていった。

人間「止めなくて良かったのか?」

親分「人間、あいつを守れ。他の組の連中は今の弱ってるあいつを確実に狙ってくる」

人間「敵を誘き出すエサに使うってことか」

親分「ああ。あいつがウチに入らねえなら、利用するまでだ」

人間「ったく、人使いの荒い親分だ」

親分「信頼してんだよ」

人間「へいへい。行ってきますよ」


ガチャリ

人間も片割れを追って事務所から出た。

人間「…うん?おい、お前そこで何してんだ?」

事務所の裏でコソコソと動いている男を見つけ、詰め寄る。

ヤクザC「はっ!?」

人間「てめえそのカオ見覚えあんな…何の用だ?その荷物は何だ」

ヤクザC「な、なんでもねえよ!」

ダッ!

ヤクザCは逃げ出すが。

ザッ!!

ヤクザC「ひっ!」

人間は一瞬でその前に回り込む。

人間「中身見せろ。見せねえならブッ飛ばす」

ヤクザC「…くっ…俺はこんなとこでやられる訳にゃいかねえんだああっ!!」

ガチャッ!

ヤクザCはトランクを開け、中のボム兵を取り出そうとする。


ドゴォッ!!


ヤクザC「ぶへぁ」

ドサッ…

その寸前で人間がブン殴り、ヤクザCは気絶した。

人間「ったく…なんだよこりゃ…爆弾…?なんか見覚えあるようなないような……まあいい、とにかく危険物に違いねえな。後で調べてみるか」

168ハイドンピー (ワッチョイ 6475-6102):2021/09/09(木) 07:02:29 ID:AslOVJ1Y00




片割れ「イタタタタッ!クソッ…あんのゴリラ…今度見つけたら絶対ブッ飛ばしたる…」

足を引きずりながら片割れは自宅を目指していた。

そこへ。

ざざざっ!!

チンピラI「よお極道狩り!この間はよくもやってくれたな!」

片割れの周りを囲むように大量のチンピラが現れた。

片割れ「ケッ、来ると思ったわバカが…お前ら程度、今のワシでも余裕やっちゅうねん」

チンピラII「ぎゃははは!バカはてめえだぜ!よく見やがれ!」

片割れ「あぁ…?」

チンピラI「てめえの電撃対策にゴム手袋とゴム長靴を装備してきたんだぜ!電撃さえなけりゃてめえなんかただのネズミだ!」

チンピラII「いくぞお前ら!やっちまえ!」

チンピラたち「うおおおお!!」

片割れ「…ほんまにアホやな…」


ドドドドドガーン!!!

169ハイドンピー (ワッチョイ 6475-6102):2021/09/09(木) 07:03:50 ID:AslOVJ1Y00



数分後。

チンピラI「く、くそっ…コイツなんでこんなに動けるんだ…!?」

片割れ「ファイターやからな」

立っているチンピラはもう三人だけになっていた。

チンピラII「で、電撃無しでも強え…」

チンピラIII「いや、つうか普通に電撃食らってんぞ!?何でだ!?」

片割れ「そらそうやろ…ゴム以外んとこに当てりゃいいだけやんけ…」

チンピラIII「そ、その手があったか…!!」

片割れ「はあ…付き合いきれんわ…」

???「なーにぐだぐだやってんの?こんだけ人数いて負けるって、やばくね?」

片割れ「あ?」

チンピラII「そ、その声は…!」

チンピラIII「鼻ちんさん!」

鼻ちん「チッス」

そこに現れたのは緑ヨッシーだった。

片割れ「なんやこのトカゲ…」

鼻ちん「俺は鼻ちん!しくよろ!」

片割れ「またふざけた奴が来よったな…」

鼻ちん「ふざけてるかどうかは、戦ってから決めるもんだぜべいべー!」


ドゴッ!!


片割れ「!?」

鼻ちんのキックは片割れに届く前に弾かれた。

鼻ちん「…なんだチミは」

人間「須磨武羅組の人間だ」

鼻ちん「エ?まじ?」

チンピラI「鼻ちんさん!誰だか知らねえけどやっちまってください!」

鼻ちん「いや、やばいやばい。須磨武羅組はやばい」

チンピラII「何ビビってんすか!」

鼻ちん「むり、人間こわい」

チンピラIII「だめだ!もう心がぱきっと折れてる!」

170ハイドンピー (ワッチョイ 6475-6102):2021/09/09(木) 07:04:52 ID:AslOVJ1Y00

人間「心弱すぎるだろ。名乗っただけだぞ」

鼻ちん「なんだとぉ!?誰の心が弱いだとぉ!?」

人間「てめえ以外誰がいんだよ」

鼻ちん「はい。弱いです。すみませんでした」

チンピラI「ええ!?」

チンピラII「どうしちまったんすか!」

人間「…戦う気がねえんならさっさと帰れ」

鼻ちん「よし、帰るぞ!」

チンピラIII「ちょ!いいんすか!?」

鼻ちん「いい」

鼻ちんとチンピラたちは去っていった。

人間「大丈夫か?片割れ」

片割れ「チッ…余計なことしよって…逃げられたやないか…」

人間「もう十分痛めつけたろ。戦意喪失した奴まで追いかける必要はねえ」

片割れ「あのトカゲはまだ無傷やろ…」

人間「トカゲ…ああ、たしか鼻ちんとかいう、そこそこ有名なチンピラだな。万全ならともかく、今のてめえじゃ勝ち目は薄いだろうぜ」

片割れ「…チッ…つうか何やねん、尾けてきとったんか」

人間「まあな。てめえは親分たちのお気に入りらしい。何が何でもウチに引き込みたいようだぜ」

片割れ「無理や言うとるやろ。これ以上ワシに付き纏うんなら、お前らにも容赦はせんで」

人間「悪事をやらねえ俺たちに攻撃するのか?そりゃあお前の芯がブレるんじゃねえか?」

片割れ「勘違いすな。ワシはただ気に入らんモンを倒すだけや。そもそもお前ら賄賂やっとるやろうが」

人間「じゃあサツや企業さんにも喧嘩売るのかよ?」

片割れ「ケッ、また始まった、得意の屁理屈タイム。ヤクザとのお喋りはもううんざりや」

片割れは人間の横を素通りして帰っていく。

人間「ったく…一筋縄じゃいかねえな…そりゃそうか、親殺されてんだもんなぁ…こりゃ根っこが深すぎるぜ、親分…」

171ハイドンピー (ワッチョイ 6475-6102):2021/09/13(月) 20:26:09 ID:6PSuHRYo00




翌日、病院。

片割れ「おいボケ」

ナイフ「お、片割れか。って誰がボケだよボケ!」

片割れ「お前や。昨日ここに誰か来たか?」

ナイフ「ん?いや来てねえけど。それより聞いてくれよ!手術が決まったんだよ!」

片割れ「はあ?」

ナイフ「無料で受けさせてくれるらしいんだよ!なんか難病の人を助けたいって活動してる団体が寄付してくれたんだと!ありがてえよなマジで!」

片割れ(アイツら、直接来たわけやないんか。ヤクザやってバレたら断られるかもしれんから裏で根回ししたっちゅうとこやろな…)

ナイフ「何だよ神妙なカオして。なんかあったのか?…よく見たらめちゃくちゃケガしてるし」

片割れ「気付くの遅いな!だいぶボロボロやぞ?」

ナイフ「またヤクザ狩りか?」

片割れ「…まあな」

ナイフ「こっぴどくやられてんじゃねえか。だからやめとけっつってんのによぉ…」

片割れ「やめんわ。ちょっと油断しただけや。こんくらいすぐ治る」

ナイフ「んなわけあるか!」

片割れ「それより、手術はいつや?」

ナイフ「ああ、来週だよ。なんでもめちゃくちゃ腕の良い天才ドクターらしい。治ったらなんか旨いモン食わしてくれよな!」

片割れ「ケッ、しゃーないな」

ナイフ「言ったな!?約束だぞ!?」

片割れ「おう」

ナイフ「マジか?破んなよ!?」

片割れ「分かっとるっちゅうねんしつこいな!ワシどんだけ器小さいと思われとんねん!退院祝いくらい普通にするわ!」

ナイフ「ワハハハハ!良いダチを持ったわ!愛してるぜ!」

片割れ「キショいわボケ!」

看護師「ちょっとお二人、院内ではお静かにお願いしますね」

ナイフ「あっはい…」

片割れ「サーセン」

それからしばらく談笑し、片割れは病院を後にした。

172ハイドンピー (ワッチョイ 6475-6102):2021/09/13(月) 20:27:01 ID:6PSuHRYo00



片割れ「クソ…あんなカオされたらやめとけなんか言えへんわ…調べた限りそのドクターっちゅうんもガチモンの有能らしいし…断る理由があらへん…ほんま卑怯な奴らや…」

人間「さすがに心外だそれは」

病院の外に人間が立っていた。

片割れ「またお前かストーカーめ」

人間「仕方ねえだろ、親分の命令だ。てめえとアイツを守れってな」

片割れ「チッ…お前らに守ってもらわなあかんほど弱くないわ」

人間「でもアイツは違うだろ?てめえも常に付きっきりって訳にもいかんだろ」

片割れ「…」

人間「まあ安心しろ。常にファイター含む三人以上を護衛につけてるから、安全は保証するぜ。他の組じゃファイターなんていても一人二人程度。十人以上もファイターがいんのは須磨武羅組だけだ」

片割れ「そうかい」

人間「感謝しろとは言わねえ。こっちもアイツの手術に関しちゃあお前を引き入れたいっつう打算ありきだ。だが、ちょっとは考え直してほしいもんだな」

片割れ「考え直す?何をや。ヤクザ狩りならやめへんし仲間になる気もないぞ」

人間「極道の中にも色んな奴がいるってことをだよ。平気でカタギから金騙し取ったりクスリ売ってるクズどももいれば、それを許さねえ奴だっている」

片割れ「……フン、分かっとるわ。もうお前らにゃ手ぇ出さん。町とグルになって賄賂とか貰っとんのは許せんが…見んかったことにしたるわ」

人間「…はは…ありがとう」

片割れ「は?何やねん気色悪い」

人間「いや、意外だったもんでな。また突っぱねられて終わりかと」

片割れ「馬鹿にすな。ワシかてそのくらいの筋は通すわ」

人間「そうか」

片割れ「もうええか?行くで」

人間「ああ。それから一つ忠告だ」

片割れ「何や」

人間「昨日のアイツにゃあ気を付けろ。ウチと対立してる組の参謀みてえな立ち位置にいる奴だ。俺が昔戦った時は五分だったが、更に腕を上げてやがるみてえだった」

片割れ「ああ…戦ったワシが一番分かっとる。間違いなく相当な手練れや。でも次は負けん」

人間「油断するなよ。勿論てめえがピンチになったら俺らが加勢するつもりではあるがな」

片割れ「いらんわボケ」

173ハイドンピー (ワッチョイ 6475-6102):2021/09/13(月) 20:30:01 ID:6PSuHRYo00



数十分後、バイト先。

店員「どうしたんですかその怪我!?」

片割れ「いやあ、ちょっと階段で転んでもうてな…」

店員「大丈夫なんですか!?」

片割れ「まあな。仕事に支障はないで」

店員「ま、まあ片割れさんがいいんだったらいいんですけど…休んだ方がよくないですか…?」

片割れ「ハハハ、気にすなや。こんくらい全然問題ないわ」



さらに数分後。

ウィーン…

片割れ「いらっしゃいま…何や、お前か」

チェマ「うお!?お前どうしたんだその怪我!?」

片割れ「うっせえわ。学校行けクソガキ」

チェマ「何なんだよその怪我は」

片割れ「…転んだだけや」

チェマ「嘘つけぇ!んな訳ねえ…」

バチッ!

チェマ「いだっ!?」

片割れ「アホか…こんなとこで話してクビんなったらどうすんねん…ちったあ考えろや」

チェマ「お、おう、すまん…」

片割れ「…まあええわ。今誰も見てへんし、ちょい耳貸せ」

片割れは小声で昨日のことを話した。

チェマ「…なるほどな」

片割れ「お前、誰でも彼でも喧嘩売っとるみたいやが、ヤクザに手ぇ出すんはやめとけよ。ワシですら返り討ちに遭うようなファイターがおるんや。他の奴とは訳が違う。負けたら命取られるかもしれんのや」

チェマ「お前が言うか。だが俺は地上最強を目指してんだ。誰だろうと倒す!」

片割れ「死んだらそこで終わりやぞ。歳上の言うことは聞いとけ」

チェマ「知るかよ、親でもあるめえし。自分がボコボコにされてビビっちまったか?」

片割れ「はあ?ワシはお前みたいなガキが死ぬのを黙って見とるほど間抜けやないねん。大体な、ワシに負けたんやからまずお前が目指すべきはワシやろ。ワシに勝てんまま関係ないとこで死んでもええんか?」

チェマ「……チッ…確かにな…わーったよ…だがてめえを倒すまでだぜ。その後は俺の勝手だ」

片割れ「ああ、それでええわ」

店員「あ、あのー…」

片割れ「ん?」

店員「レジの応援いいですか…」

片割れ「おお!すまんすまん!チェマ、お前はさっさと学校行けや」

チェマ「だからてめえにゃ関係ねえだろ。…つうか今日日曜日だぞ」

片割れ「…ほんまや!」

174ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/20(月) 22:40:06 ID:PyKTCmEo00




そして翌週。

片割れ「……はぁ……」

手術室の前のソファーに片割れは座っていた。

パチッ…

"手術中"のランプが消える。

片割れ「!!」

ウィーン…

そしてドクターが手術室の中から現れた。

片割れ「先生!!手術は上手くいったんか!?」

医者「まあそうですね」

片割れ「…ふぅ…そうか…ありがとう…」

医者「お気になさらず。それじゃあ私はこれで」

スタスタスタスタスタ…

ドクターは早足で去っていく。

片割れ「ほんまにありがとうございます!!」

去っていくドクターが見えなくなるまで、片割れは深く頭を下げ続けた。

175ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/20(月) 22:41:02 ID:PyKTCmEo00



それからしばらくして。

ぱちくり

ナイフ「……」

片割れ「ナイフ!目ぇ覚めたか!」

ナイフ「…ああ…え…?もう終わったのか?」

片割れ「おう、大成功や!」

ナイフ「マジか。一瞬だったな」

片割れ「まあ寝とっただけやしな。体調はどうや?」

ナイフ「うーん…なんつうか、めちゃくちゃ体が軽い感じだな。今すぐにでも走り回れそうな気がするわ。手術が完璧すぎたのかな」

片割れ「マジか」

ナイフ「手術してくれた先生は?」

片割れ「もう行ってもうた。お礼はワシから言っておいたわ」

ナイフ「そうか…俺からも直接礼がしたかったんだけど…」

片割れ「しゃあない。めちゃくちゃ忙しそうやったしな。この前調べたんやが、いろんな国渡り歩いて今まで何万人っちゅう重病患者を救っとる、医療界の神様みたいな人らしいわ」

ナイフ「そ、そんな凄い人だったのかよ…」

片割れ「ああ、運が良かったな。そんな人の手術タダで受けれるなんて」

ナイフ「そうだな…寄付してくれた団体の人にも感謝しないと」

片割れ「ん?ああ…せやな…」

ナイフ「何だよその反応」

片割れ「いや、なんでもないで」

片割れは目を逸らす。

ナイフ「いや絶対なんかあるだろ!」

片割れ「なんでもない言うとるやろ!」

ナイフ「隠し事下手すぎるだろ!」

片割れ「うっさいわボケ!」

ナイフ「…で?何隠してんだ?」

片割れ「言われへん」

ナイフ「なんでだよ…」

片割れ「なんでもや」

人間「言ってやれよ」

ナイフ「そうだそうだ…ってどちらさま?」

人間が病室ににょっこりと顔を覗かせた。

176ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/20(月) 22:42:07 ID:PyKTCmEo00

片割れ「お、お前…っ!何しに来てん!」

ガッ!

片割れは人間の胸ぐらを掴み、病室の外に連れ出した。

人間「おいおい何だこの手は。ウチには手ぇ出さねえんじゃなかったのか?」

片割れ「知るか。何しに来たんや」

人間「何って、いつも通りの護衛だよ。そんでちょっと術後の様子が気になったから覗きに来てみれば、何やら修羅場っぽい感じになってるじゃねえか」

片割れ「ああ?修羅場でもなんでもないわ」

人間「そこまで隠すほどのことか?」

片割れ「当たり前や。自分の体治ったのがヤクザのお陰なんて知って、素直に喜べると思うか?」

人間「さあな。だがアイツ自身が知りたがってんだ。何も知らずにモヤモヤしながら生きていくってのも可哀想だと思わねえか?」

片割れ「思わんな。そんなもんすぐ忘れるやろ。アイツアホやし」

人間「ひでえな。でもだったら尚のこと教えても問題ねえだろ?」

片割れ「チッ…何やねん。手術が終わってもうたら後戻りはできんからバラしてもええってことか。手術前に知ったら断るやろうしなぁ。既成事実作りゃ後は都合良く利用できるって魂胆やな?結局お前らも他のヤクザと同じか」

人間「待て待て、んなわけねえだろ!」

片割れ「何が違うんや。なんで教える必要ないもんを教えたがる」

人間「言ったろ、アイツ自身が知りたがってんだ。子供じゃねえんだ」

片割れ「子供とか大人とか関係あらへんやろ」

人間「あるさ。うちには息子がいてな。まだチビなんだが」

片割れ「ヤクザがガキなんぞこしらえよって…ガキもこんな親の元に生まれて可哀想に」

人間「そりゃおめえ…否定はできねえがよ…ガキってのはな、何でもかんでも首突っ込んで、知りたがんのさ。それも隠せば隠すほどそのパワーが増しやがる。知的好奇心の塊みてえな奴らさ。まあ勉強は別みてえだが。誰にでも子供時代はあるしてめえにも心当たりくらいあんだろ?」

片割れ「それが何やねん。アイツは大人やって話やろ?矛盾しとんぞ」

人間「まあ聞け。その知的好奇心ってのはよ、だんだん薄れていくもんさ。他にやるべきことが増えたり余裕がなくなったりしてな。大人の間じゃ隠し事なんざ誰もが持ってて当たり前で、それに突っ込まないのも当たり前。そういうもんだろ?それでも知りたがるってのは相当さ。それを知って傷付いてもいいっつう覚悟ができてんだよアイツは」

片割れ「んな深いこと考えとらんやろ」

人間「考えてなくてもだ」

177ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/20(月) 22:43:28 ID:PyKTCmEo00

片割れ「…チッ……分かった」

人間「え?」

片割れ「分かった言うとんねん馬鹿タレが」

人間「マジか」

片割れ「…ワシもな…感謝しとんねん。アイツにゃもう助かる道はないと思っとったからな」

人間「なんだ、急に素直だな」

片割れ「…お前らは他のヤクザとは違う…ワシのヤクザ狩りよりよっぽど社会に貢献しとるのも分かった。大体お前らの資金源が賄賂っちゅうなら、アイツの手術代もヤクザやのうてこの町が出しとるようなもんや」

人間「はは、確かにな」

片割れ「そういうの全部教えてやりゃあ、アイツだって納得するやろ。アホやし」

人間「そうだな」



それから二人はナイフに全てを打ち明けた。

ナイフ「…マジかよ」

片割れ「マジや」

ナイフ「ま、片割れが認めるくらいだから大丈夫だろ。人間だっけ?ありがとな」

人間「礼なら親分に言うこったな」

ナイフ「そうだな。退院したら礼に行くよ。呼びつけるわけにもいかないしな」

人間「ああ」

片割れ「…ケッ、ヤクザなんぞに気ぃ使うことあらへん。所詮ワシを引き入れるためにやった事や」

ナイフ「目的が何であれ俺の病気が治った事に変わりないだろ」

片割れ「お人好しすぎんねんボケ」

ナイフ「ハハハハハ!大怪我負っててもヤクザ軍団を返り討ちにできるお前にゃ分かんないだろうよ、寝たきりになる辛さは!」

片割れ「うっさいわ!さっさとリハビリして出てこいや!」

ナイフ「おうよ!メシ奢るって約束忘れてねえだろうな!?」

片割れ「…なんやそれ?」

ナイフ「オイ!」

片割れ「たははは、冗談や」

178ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/20(月) 22:44:28 ID:PyKTCmEo00

人間「はは、ホント仲良いなてめえら。積もる話もあるだろうし俺はここらで帰るとするぜ。そろそろ護衛交代の時間だ」

片割れ「ああ、お疲れさん」

ナイフ「いつもありがとな」

人間「へっ、よせよ、気持ちわりいな」

人間は病室を出る。

プルルルルルル…

ピッ

人間「親分か、どうした?」

親分『…人間…すまねえ…』

人間「…え?」

親分『…襲撃を受けた……お…俺はもう死ぬ…」

人間「なっ…」

親分『…ウチの…息子を…頼む…たとえ俺が死んでも…須磨武羅組は…不滅だ………』

人間「ちょ、ちょっと親分!?おい!返事しろ!馬鹿野郎!」

電話は繋がったまま、返事は返ってこない。

人間「畜生っ!!」

ドガンッ!!

人間はどうしていいか分からず、思わず壁を殴った。

片割れ「何しとんねんお前!病院やぞ!」

人間「…す、すまん…」

片割れ「なんや、そのカオ…なんかあったんか…?」

人間「分からねえ…親分がやられたみてえだ…」

片割れ「やられた…?ヤクザにか?」

人間「分からねえっつってんだろ!なんでこんな…いきなり…!クソッ!!」

片割れ「落ち着け!こんなとこで暴れて何になんねん!」

人間「…すまん…」

片割れ「とにかく一旦事務所戻って確認してこい」

人間「ああ…」

人間は去っていった。

片割れ「大丈夫か?アイツ…」

179ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/20(月) 22:45:17 ID:PyKTCmEo00

ナイフ「どうしたんだ?」

片割れ「よう分からんがなんか親分がやられたとかで、人間の奴、めちゃくちゃ焦っとったわ」

ナイフ「親分…?」

片割れ「須磨武羅組の親玉や。風格は一端やったが、ただの人間やったからな…ファイターに襲われたらひとたまりもないやろ」

ナイフ「なっ…!くそ、こうしちゃいられねえ!」

バターン!!

立ち上がろうとしたナイフは一歩目で倒れた。

片割れ「ボケ!何やっとんねん!?」

ナイフ「俺の恩人がやられたって事じゃねーか…!礼言いに行くってさっき約束したばっかなのに…!」

片割れ「んなモン今お前が行ったって何もできんやろ!」

ナイフ「じゃあお前が代わりに行ってくれ!」

片割れ「はあ!?何でやねん!」

ナイフ「頼む!退院祝いなんかしなくていいからよ!俺を助けると思って!」

片割れ「…ったく、しゃあないのぉ」

片割れは人間を追った。

180ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/26(日) 01:05:57 ID:1Yq5JkL200




数分後、須磨武羅組事務所。

人間「はあ…はあ…親分!!」

須磨組員1「おわっ!?何すか人間さん、いきなり」

人間「親分は!?」

須磨組員1「いないっすよ。一時間前くらいっすかね、ほら、今日はサツのお偉方と会食っつってたじゃないすか」

人間「そうか…!クソッ!」

須磨組員1「どうしたんすか…?」

人間「説明してる暇はねえ!会食の場所は!?」

須磨組員1「に、人間さんが知らないのに俺が知ってるわけないじゃないすか…超極秘のやつでしょこれ」

人間「…!!そりゃそうか…すまん…フゥー…」

人間は冷静さを取り戻すため一息つき。

人間「…親分からさっき連絡があった。襲撃を受けたらしい」

須磨組員1「襲撃!?」

人間「ああ。もう死ぬとか言ってやがった。相当ピンチなのは間違いねえ…最悪もう…」

須磨組員1「そ、そんな…!」

人間「クソ…心当たりのある場所を片っ端から捜すしかねえか…」

ファンファンファンファン…

人間「サイレン!?もうサツが動いてんのか!?追うぞ!」

須磨組員1「あ!待ってください!」

人間「何言ってる!親分の場所が…」

須磨組員1「違います!テレビ見てください!」

人間「あぁ!?」

事務所の奥で流れていたテレビに目を向ける。

181ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/26(日) 01:07:15 ID:1Yq5JkL200

アナ『こちらが立てこもり現場の様子です。犯人は拳銃を所持しており…』

人間「なんだこりゃ…近所じゃねえか」

須磨組員1「人間さんこの頃ずっと忙しくしてたんで知らないかもしれないっすけど、立て続けにチャカ使った事件が起きてるんすよ…」

人間「何!?…そうか、この間のBが売り捌いてやがったチャカか…!まさか初めから俺らの目を撹乱する目的で…?だとしたら親分を襲った犯人は……とにかく場所を特定する…!動ける奴を総動員して捜せ!」

須磨組員1「了解っす!」

組員はすぐに他の組員に連絡を取り、捜索に当たらせる。

人間「だがそれだけじゃ時間が掛かり過ぎる…何か方法は…」

と考えていると、組員が電話しているのが目に止まる。

人間「…そうだ…!電話…!親分が電話してきた時の発信源を調べれば…!」

人間はすぐにパソコンをつけ、携帯をコードで接続する。

カタカタカタカタカタカタカタカタ…

そして物凄いスピードでキーボードを叩き、データを解析していく。

須磨組員1「す、すごいっすね…そんなんで何か分かるもんなんすか?」

人間「分からん。だがやってみる価値はある」

須磨組員1「そういうのどこで習ったんすか…?」

人間「習ってねえよ。今調べながらやってる。ぶっつけ本番だ」

須磨組員1「ええ!?そんな事出来るんすか!?」

人間「俺は"使える人間"の異名を持つ男だぜ?それくらい出来ねえ訳ねえだろうが。つうか俺に構ってねえでお前も手ぇ動かせ」

須磨組員1「は、はいっ!」

182ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/26(日) 01:08:40 ID:1Yq5JkL200



それから数分後。

カタカタカタカタカタカタ…

ッターーン!!

人間「出たぞ!発信源は東の料亭だ!俺はこのまま向かう!お前は他の奴らに伝えろ!」

須磨組員1「了解!」

ダッ!!

人間は事務所から飛び出し、東へ向かう。

ダダダダダダ…!!

片割れ「どこ行くんや?」

片割れが後ろから現れ、人間に並走する。

人間「片割れ…てめえ何で…」

片割れ「ワシはお前らがどうなろうと知ったこっちゃないけど、ナイフに頼まれて仕方なくな」

人間「…そうか。悪いな。だが緊急事態だろうとカタギの力借りる訳にゃあいかねえよ」

片割れ「言っとけ。ワシは勝手にやらせてもらうで」

人間「チッ…言って訊くような奴じゃあねえか」

183ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/26(日) 01:10:11 ID:1Yq5JkL200



さらに数分後、二人は料亭の前に到着。

片割れ「ここでお前らのボスが殺されたんか」

人間「まだ死んだかどうか…」

???「クク…死んだよ、奴は」

人間「なっ!!」

二人の背後に何者かが現れた。

片割れ「誰や!」

人間「…っ、て、てめえはっ…!」

組長「クク…久しぶりだな、"使える人間"。てめえらの負けだ」

片割れ「知り合いか?」

人間「この前話したろ…ウチと対立してる組…その組長だ」

片割れ「ケッ、そういう事かい。くだらん抗争に巻き込みよってからに」

人間「勝手についてきたんだろうが」

組長「この俺を前にベラベラと…余裕のつもりか?言ってんだぜ、てめえらのトップはもういねえとな」

人間「片割れのお陰で冷静になれた。元々極道に足を踏み入れた時点で覚悟はしてたはずだったんだ。今までも仲間の死は何度か見てきた。それが今回は親分だった…それだけの事だ」

組長「分かってねえようだな。トップが死んだ今、てめえらはもう負けてんだよ」

人間「トップならいるさ。俺が親分に託されたんだからな」

組長「何だと…?ああ、アイツのガキの事か。フン、くだらねえ。そんなモンにてめえら須磨武羅組の長が務まるとでも思ってんのか?冷静に考えろよ人間…俺の下に付け」

人間「てめえの下に?何の冗談だ」

組長「冗談に聞こえるのか?」

人間「冗談にしか聞こえねえな」

組長「……クク…ならば死ね!!やれ、てめえら!!」

組長が手を挙げると同時に、周りから十数人のヤクザたちが現れて二人を取り囲んだ。

片割れ「はぁ…まーたこれかい…馬鹿の一つ覚えやな。囲もうが何しようがただの人間がワシらファイターに勝てる訳あるかい」

組長「…あん?誰かと思えば、そうか…てめえが極道狩りか…クク…丁度いい!諸共やっちまえ!」

ヤクザたち「オオオオオ!!」

ヤクザたちが一斉に襲いかかる。

片割れ「無駄や言うてんねんボケが…」

184ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/26(日) 01:12:16 ID:1Yq5JkL200


ドゴォッ!!


片割れ「ぐあっ…!?」

人間「片割れ!」

片割れは殴られて吹っ飛ばされた。

片割れ「な、なんや…!?」

人間「よく見ろ…!コイツら…全員ファイターだ!」

片割れ「なッ…!!」

鼻ちん「チッス」

片割れ「お前はあん時の…!」

人間「どうなってやがる…何で別の組の奴まで…!」

組長「フハハハハ!!連合を組んだのさ!この町の極道にとって、てめえら須磨武羅組は共通の敵だからな!共闘を持ちかけりゃすぐにファイターを派遣してくれたぜ!」

人間「連合だと…!?」


ボゴッ!!


人間「ぐあっ!!」

ヤクザB「そういう事だ」

人間「くっ…B…!!」


ドガガガガッ!!


人間「グゥッ…!!」

Bは殴りまくり、人間はガードしかできない。

ヤクザB「てめえと直接やり合うのは久しぶりだな!人間!」

人間「く…!」

ヤクザB「どうした!喋る余裕もねえか!?どこでこんなに差がついたんだろうな!?あぁ?!」

人間「…っせぇなっ!」


タンッ!


ズドドドドッ!!


人間は跳び上がり、ドリルのように回転しながら連続キックを繰り出す。

ヤクザB「鬱陶しい!」


バチィン!!


人間「ぐあっ…!!」

Bは巨大な両腕を振り上げて挟み込むようにして攻撃し、人間を弾き飛ばした。

ヤクザB「俺はもう、てめえじゃ届かねえ高みにいるんだよ!」

ドサァッ!

高く舞い上がった人間が背中から落下する。

人間「かはっ…」

ヤクザB「…他愛ねえな。さて、トドメはてめえらに任せるぜ」

ヤクザたち「オオオオオオ!!」「そいつにゃ何度も邪魔されたんだ!!」「この焼け爛れた右腕の恨み、晴らさせてもらうゼェ!!」「死ねぇ!!人間ン!!」

人間「くっ…!」

185ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/26(日) 01:14:38 ID:1Yq5JkL200


片割れ「デガワァ!!」


ドシャァン!!!


ヤクザたち「ぐあああぁっ!!?」

ヤクザB「何…!」

片割れ「ったく世話の焼けるヤクザやな!」

人間「か…片割れ…!」

組長「馬鹿な…!これだけのファイター相手になぜ戦えていやがる!?」

片割れ「はぁ…はぁ…ボケが!…はぁ…ファイターにもピンキリあるやろ!コイツら…ファイターやからって適当に集めてきたんやろうが…ワシからしたら一般人と大して変わらんな!」

組長「な、何だと…!?」

鼻ちん「つよ…」

片割れの前には鼻ちんすらも跪いていた。

ヤクザB「落ち着いてくだせえ親分。俺がいる限りこちらに負けはない」

組長「B…てめえ本当に大丈夫なんだろうな?」

ヤクザB「ええ、負ける要素がありませんね。俺は一度奴に勝ってますし…強がっちゃいるがアイツはもう限界が近い…この前のダメージも完治はしてねえ筈です」

片割れ「ケッ、ワシの回復力舐めんな!とっくに治っとるわ!」

ダッ!


ズダァン!!


片割れの尻尾攻撃をBはガードして受け止める。

ヤクザB「…チッ…お前も"こちら側"だったか」

片割れ「あァ?」

ヤクザB「ファイターの種族に生まれた、ただそれだけでファイターを名乗る愚図も多い…俺たちのように真にその力を使いこなせる者だけがファイターを名乗るべきだ…そうは思わねえか?」

片割れ「何やお前いきなり。どうでもええわキッショ」


バチバチッ!!


ヤクザB「ぐっ…!ファイターの名前だけ使った雑魚共に名を傷付けられる…不愉快だと思わねえのか!?」

片割れ「知るかいな!何を気にしてんねん、ちっさい男やな!」

ヤクザB「…そうか…理解できねえなら構わねえさ。ようやくこの悲しみを共有できる相手に出会えたと思ったんだがな」

片割れ「勝手に悲しんどけ!ボケ!」


ズガガガガッ!!


片割れは怒涛の連続電撃でBを仰け反らせる。


ブンッ!!


Bは腕を振り回すが、片割れはそれをかわした。

片割れ「カウンターはもう見切った!ワシに二度も同じ戦法が通用すると思うなや!」

ヤクザB「一回かわしたぐれえで調子に乗るな!」


ズドガガガガッ!!


そして二人は激しい戦いを始める。

186ハイドンピー (ワッチョイ c1f9-c679):2021/09/26(日) 01:17:00 ID:1Yq5JkL200

人間「な…何ちゅうレベルで…やりあってやがる…とても…俺らの入れる次元じゃねえ…」

ヤクザたち「クククッ、何を呑気な事言ってやがる?」「極道狩りをヤツが抑えてる間にてめえにトドメを刺すゼェ!!」「いくぜてめえらぁ!!」

人間「し、しまっ…」


ドガッ!!


ヤクザ「ごばあ!!」

横からヤクザは殴られて吹っ飛んだ。

須磨組員2「すんません人間さん!遅くなりやした!」

人間が顔を上げると、須磨武羅組に所属するファイターたちが集まっていた。

人間「て、てめえら……フッ…まったくよ…後は頼む…」

須磨組員3「押忍!!」

須磨組員4「っしゃ行くぞォォ!!一網打尽にしてやれ!!」

須磨組員たち「ウオオオオオオ!!!!」

こうして須磨武羅組とヤクザ連合のファイターたちによる大乱闘が巻き起こった。



その頃、料亭の中では。

須磨組員1「親分!!」

組員は倒れている親分を見つけ駆け寄る。

だが。

須磨組員1「そ…そんな…」

心臓に刀が突き刺さり、その部屋は真っ赤に染まっていた。

ガクッ…

組員は膝から崩れ落ちる。

須磨組員1「…許せない…絶対に…」

そして親分の胸に突き刺された刀を掴み、引き抜く。

須磨組員1「待っててください親分…!カタキは俺が必ず討ちます……あのクズめ…殺してやる…!!」

187はいどうも名無しです (ワッチョイ 58c0-daf8):2021/09/27(月) 02:57:21 ID:PqgWgugM00
久々にしたらばを覗いたら面白くて一気見してしまった
他の話の繋がりが良く出来てて凄いわ
片割れも良いキャラしてんなあ

188ハイドンピー (ワッチョイ 1fb1-9d20):2021/10/03(日) 07:35:19 ID:jKmiDD5w00



それからおよそ一時間後。

片割れ「はぁ……はぁ……」

ヤクザB「はぁ……はぁ……チッ…小せえくせにしぶてえ野郎だ…」

片割れ「ふん…お前の攻撃が弱すぎるだけや…そもそもほとんど当たっとらんしな…単調すぎんねん…カウンターなんざ、来るん分かっとったら簡単に避けれる」

ヤクザB「…クソ…はぁ…反論…できねえな…たしかにそうだ…はぁ……てめえは間違いなく…今この町で一番…強え……A級の漢だ……はぁ…だからこそ…てめえの力が……欲しかったんだがな……」

片割れ「あぁ?」

ヤクザB「…悔しいぜ…俺は所詮……B級か……」


ドサァッ!


Bは体力が限界を迎えて糸が切れたように倒れた。

片割れ「……フゥ……ようやく倒れよったか…」

人間「片割れ…」

片割れ「!」

片割れが振り返ると、人間は両脇を組員に支えられながら立っていた。

人間「そっちも…終わったようだな…」

片割れ「ケッ、早々に潰された奴が何を偉そうに言っとんねん」

人間「ハハ、言えてるな…やっぱすげえよ、てめえは…あのBに勝っちまうとは…」

片割れ「敵の親玉は?」

人間「劣勢になるやいなや、早々に逃げやがったよ…今ウチの弟分が追ってるはずだ…」

須磨組員2「それが…アイツと連絡が取れません…!」

人間「何…!?どういうことだ…アイツに何かあったのか…?」

須磨組員2「分かりません…」

須磨組員3「たしかあっちの方に向かったはずです。俺たちも追いましょう!」

人間「ああ…そうだな…!」

片割れ「先行っとくぞ」

人間「ああ」

片割れは組員の指した方向へと走った。

189ハイドンピー (ワッチョイ 1fb1-9d20):2021/10/03(日) 07:38:11 ID:jKmiDD5w00


それから少し進んだところで。


ドドォォォォン!!!!


片割れ「何や!?爆発!?」

タタタタタ…

片割れは音の方へ駆けつける。

ヤクザ「ごは…」

ドサッ!

そこには黒焦げになって倒れるヤクザがいた。

片割れ「し…死んどる…」

組長「くっ…!ウチの精鋭が…!」

須磨組員1「てめえだろ?この爆弾をウチの事務所に仕掛けようとした奴ぁ…だったらこれで吹き飛ばされても文句は言えねえだろ」

その片手にはボム兵があった。

組長「や、やめろ!ソイツはファイター用の武器だ!ただの人間が食らえば本当に粉微塵になっちまう!」

須磨組員1「そのつもりだ。灰も遺さねえ」

組長「…っ!!」

ブンッ!

組員はボム兵を投げる。


ドガァッ!!


組長「ぐはぁっ!」

横から片割れが組長を尻尾で叩き飛ばし。


ドドォォォン!!!!


ボム兵は地面にぶつかって爆発した。

須磨組員1「なっ…!極道狩り…!なんで邪魔しやがる!!」

片割れ「アホか。目の前に人殺そうとしとる奴おったら止めるわ」

須磨組員1「てめえにゃ関係ねえだろ!!」

片割れ「関係なくても止めるっちゅうねん」

須磨組員1「クソッ…!邪魔するんなら…てめえもこのボム兵の餌食にしてやる!!」

ブンッ!

片割れ「そんなヘボボール当たるかい!」

片割れは緊急回避しボム兵を避ける。

190ハイドンピー (ワッチョイ 1fb1-9d20):2021/10/03(日) 07:39:28 ID:jKmiDD5w00


ドドォォォン!!!!


片割れ「くっ…なんちゅう威力や…!こりゃマジで当たったらまずいな…」

須磨組員1「まだボム兵は残ってんだよ!」

ブンッ!

片割れ「くっ!」

再び片割れは避ける。


ドドォォォン!!!!


須磨組員1「おらぁっ!!」

ブンッ!ブンッ!

片割れ「うおっ!?何個あんねん!」


ドドォォォン!!!!

ドドォォォン!!!!


と、しばらく投げ続けて、組員の手が止まった。

須磨組員1「はぁ…はぁ…クソッ!あと一つしかねえ…アイツ殺るために残しとかなきゃいけねえのに…」

片割れ「…ふぅ…弾切れか…もうやめえや。ファイター倒せる爆弾言うても当たらな意味ない」

人間「片割れ!!足元を見ろ!!」

片割れ「あ?」

てくてくてく…

ボム兵は自立して片割れの方へ歩いてきていた。

人間「触れたら爆発するぞ!」

片割れ「あぶな!」

タンッ!

片割れはジャンプしてボム兵をかわした。

てくてくてく…


ドドォォォン!!!!


少し進んだ先でボム兵は爆発した。

191ハイドンピー (ワッチョイ 1fb1-9d20):2021/10/03(日) 07:40:05 ID:jKmiDD5w00

須磨組員1「な…なんでっすか…!!人間さん!!アイツは親分を…」

人間「いや片割れがやった訳じゃねえだろ。それにお前はこのままじゃ奴らと同じだ。怒りに任せた復讐なんてのは親分は望まねえ筈だ」

須磨組員1「…でも…!」

人間「ああ、気持ちはよく分かる…俺だってブッ殺してやりてえよ…だが、堪えろ。俺たちがやらなきゃならねえのは、この町の平和を守ることだけだ」

須磨組員1「くっ……くそぉぉっ!!」

組員は膝をつき、地面に向かってやり場のない怒りを叫びに変えてぶつけた。

組長「ひ、ひぃぃいっ!」

片割れ「うっさい!」

ドゴォ!!

組長「オゥフ…」

ドサッ…

逃げようとする連合軍の組長を片割れは尻尾で叩きつけて気絶させた。

人間「…さあ、戦いは終わった。帰ろうぜ」

人間は手を差し伸べる。

須磨組員1「…………はい…」

組員1は人間の手を取り立ち上がった。

片割れ「…ったく、世話の焼けるヤクザどもや…」


その後ヤクザ連合軍は全員拘束され、ファイター専用の収容所へ連行された。

192ハイドンピー (ワッチョイ 1fb1-9d20):2021/10/03(日) 07:41:35 ID:jKmiDD5w00




数日後。

須磨武羅組事務所では、数十人の組員が集会を開いていた。

人間「次の組長は親分の息子に託されてる。だが知っての通り、若はまだ小せえ。しばらくは俺が組を仕切る。何か異論はあるか?」

組員たち「ありません」

人間「…本当に?」

組員たち「はい」

人間「…マジか…荷が重えなぁ…」

須磨組員1「親分の代わりができるのは人間さんくらいでしょう」

須磨組員2「貴方なら誰も文句はねえっすよ」

人間「…そうか。分かった。みんな、よろしく頼む!」

組員たち「はい!」

193ハイドンピー (ワッチョイ 1fb1-9d20):2021/10/03(日) 07:42:48 ID:jKmiDD5w00




更に数日後。

コンコンコンコン

須磨組員1「はいはい、今開けますよっと」

ガチャリ

片割れ「よう」

須磨組員1「ご、極道狩り!何しに来やがった!?まさか俺たちをターゲットにするつもりじゃないだろうな!」

片割れ「アホか。ちっと挨拶にな」

須磨組員1「挨拶?」

片割れ「ああ。ワシやないで。コイツや」

ナイフ「どうも」

須磨組員1「!!…アンタたしかこないだ手術受けた…」

ナイフ「切れたナイフだよ」

須磨組員1「もう歩けるようになったんだな」

ナイフ「おかげさまでな。今日は礼を言いに来た」

須磨組員1「そうか、まあ上がれよ」

そして二人は事務所内へ招かれる。


人間「よう片割れ、ナイフ」

片割れ「おう」

ナイフ「どうも」

人間「もう体は良いのか?」

ナイフ「まあ、ちょっと出歩くくらいなら全然大丈夫だよ。人間さん、早速だけど組長さんはどこに?」

人間「こっちだ」

人間は奥の部屋へ案内する。

そこには仏壇があった。

ナイフ「…まさか直接挨拶する前に亡くなっちまうなんてな…」

人間「ああ。唐突すぎるよな」

チーーーーン

ナイフは鈴を鳴らし、合掌。

片割れもその後ろで合掌。

人間「ありがとよ。親分も喜んでるだろうぜ」

ナイフ「礼を言うのはこっちだ。組長さんだけじゃなくアンタらにも、感謝してもしきれない。本当に、ありがとう!」

ナイフは深々と頭を下げた。

片割れ「ケッ、ワシ引き入れるためにやっただけやで」

人間「まあそういうこった。頭上げろ」

ナイフ「それでもいいよ。アンタたちの目的が何であれ、俺の病気が治ったことには変わりないからな」

人間「ハハ、お前も片割れに負けず強情だな」

194ハイドンピー (ワッチョイ 1fb1-9d20):2021/10/03(日) 07:43:21 ID:jKmiDD5w00

ガチャリ

迫力「ようお前ら、どうした揃いも揃って」

人間「大親分!」

迫力「だからその呼び方はよせっつってんだろ」

人間「あ、すんません」

ナイフ「大親分…てことは、アンタが迫力さんか?」

迫力「ああ、そうだが」

ナイフ「ありがとう!アンタがいなきゃ、片割れはBとかいう奴に殺されてたかもしれない!」

片割れ「はあ?」

迫力「フッ、あん時ゃたまたま通りかかっただけだ。ま、巡り合わせっつう奴だな」

ナイフ「巡り合わせか…ハハ、たしかに片割れもアンタたちも似たもの同士だ。極道狩りと極道、本来いがみ合ってる筈の奴らがこうやって同じ部屋で笑ってられるのも、きっとそういう運命だったのかもな」

片割れ「ワシは笑っとらんぞ」

片割れはむすっとした顔でそっぽを向く。

人間「ひねくれた奴だぜ」

迫力「どうだ片割れ。ひねくれついでにウチに入ってみねえか?」

片割れ「ひねくれついでって何やねん。入るわけないやろ」

迫力「…お前はどうだ?ナイフとやら。長え入院生活で仕事もねえんだろ?」

ナイフ「そうだな…いいかもしれないな。入ってみんのも」

片割れ「は!?正気かお前!?」

ナイフ「ああ、大マジよ。須磨武羅組は他とは違うし、命の恩人だ」

迫力「はっはっは!決まりだな!」

人間「よろしく頼むぜ、ナイフ!」

ナイフ「おす!」

人間とナイフは固い握手を交わす。

片割れ「ったく…どうなっても知らんぞワシは」

人間「んなこと言わずにこれからも力を貸してくれよ。入れとは言わねえからよ」

片割れ「ケッ、お断りや。ワシはこれからも自由にやらせてもらう」

そう言うと片割れは事務所から去った。

人間「ほんっと頑固だなぁ」

ナイフ「でもアイツがヤクザとこうして普通に話す日が来るなんて、昔のアイツを知ってる俺からしたら考えられないよ。それだけアイツも須磨武羅組を信頼し始めてる」

人間「ハハ、そりゃ良かった」


こうして極道の町の騒動は幕を閉じた。

195ハイドンピー (ワッチョイ 2db3-c4c1):2021/10/10(日) 19:20:20 ID:eeOlezMI00





数ヶ月後。

キィィィン…

ゴゴゴゴ…

ガシィン…

どこかの山奥の小さな白い建物の前に、三機のアーウィンが着陸した。

???「被験体はどうなっている?」

降りてきた緑フォックスが言う。

???「問題ない。胎児は順調に成長している」

そう答えたのは別の緑フォックス。

ピピピピピ…

ガコンッ!

フォックスの1人が建物の扉の前に立つと何らかの認証が行われたのか、一人でに扉が開いた。

扉の奥には地下へ続く階段があった。

カツ、カツ、カツ…

三人は地下へ降りていく。

???「煙草マスターから採取したDNAを分裂したモルダー細胞に移植し、そこから精子を作り出してリンク族に受精させる…オリジナルはよくぞこんな事を思いつくな」

???「我々クローンは確かにオリジナルより高い能力を持って成長するよう設定されている。頭脳も含めてな。だが唯一我々に無いのは、経験だ」

???「ああ。㍍アルザークに同胞たちが遅れを取っているのもそのせいだろう」

196ハイドンピー (ワッチョイ 2db3-c4c1):2021/10/10(日) 19:20:52 ID:eeOlezMI00

???「この実験が成功すれば、いよいよクローンネス無限生成実験も最終フェーズへ移行できる。ひいては、我々クローンロハスも完成に近づくだろう」

ウィーン

階段を降り切り、自動ドアを抜けると。

そこには広大な研究施設があった。

そこかしこに白衣のフォックスが点在して何らかの研究を行なっている。

その一番奥にまた別の部屋があり、緑フォックスたちはそこへ入っていった。

女リンク「…アンタたちか。本当に大丈夫なんだろうね?」

白いベッドに寝て三人を睨むのは、リンク族の女。

???「ああ。このまま行けばあと七ヶ月で産まれる筈だ」

フォックスの一人がコンピュータを操作しながら言う。

女リンクの下腹部には機械が取り付けられ、胎内の映像をモニターに映している。

女リンク「私は偉大なる英雄の末裔…この血を絶やしてはならないのよ…!最強の子を残さねば、存在価値はない…!」

???「案ずるな。煙草マスターはファイターの一族でこそないものの、あの玄酔楼ですら倒し切れず封印という形を取るしかなかった四闘士の一角…実験が成功すれば間違いなく最強のリンク族となるだろう」

197ハイドンピー (ワッチョイ 2db3-c4c1):2021/10/10(日) 19:22:00 ID:eeOlezMI00





そして月日は流れ。

赤子「オギャー!!オギャー!!」

女リンク「はぁ…はぁ…やった…やったわ…!」

???「無事産まれたか。後は成長を待つだけだな。煙草マスターの持つ煙の力に覚醒した時、その子供は究極の力を手に入れるだろう」

女リンク「絶対に…最強の戦士に育て上げてやるわ…!!」

???「オリジナルに報告する」

カタカタカタカタ…

フォックスの一人がコンピュータを操作すると、モニターに老フォックスが映し出された。

???「こちら第二基地。煙草マスターの子供の出産を確認した。見た目、体調、共に問題は見当たらない。取り敢えずは成功と見て良いだろう」

???『そうか…では今後常に監視を続けろ』

???「了解」

???『モルダー細胞の方はどうなっている?』

???「そちらも順調だ。新たに分裂した細胞にはこちらでウォーカーと名付けた」

???『そうか。ではまずエルバンを素体として実験を進めろ。ウォーカーに新たに細胞分裂が始まる様子は?』

???「僅かだが可能性はありそうだ。モルダー細胞と近づけることで反応を示す様子が確認されている」

???『ならばそのまましばらく様子見だな。進展があり次第私に伝えろ』

???「了解」

プツッ

???「そういうわけだ。お前にはこれから普通の日常を送ってもらう。家はこちらで用意してある」

女リンク「何?私の家では駄目なの?」

???「力の覚醒にはまず良好な環境下で健康に成長することが最も重要なのだ。仮に力に目覚めても肉体が伴わなければ持て余す事になる」

ピッ

フォックスがモニターに家の写真を映した。

女リンク「…そこに住めと?」

???「ああ。快適な空間だ。不満はあるまい」

198ハイドンピー (ワッチョイ 2db3-c4c1):2021/10/10(日) 19:22:43 ID:eeOlezMI00

女リンク「ふざけないで!そんな生温い環境では真の強さは手に入らない!」

???「古い考えだ。この家にはトレーニングルームや戦闘シミュレーターも完備してある」

女リンク「シミュレーションなど実戦には遥かに劣る!私は三歳の頃から親と実戦訓練を行なってきたけれど、大人になって初めて体験したシミュレーターとやらの下らなさには愕然としたものよ!こんなものをやって何の意味があるのだとね!」

???「喚くな。頭を冷やせ」

女リンク「なんだ…と…」

ガクッ…

女リンクは突然うなだれる。

???「鎮静剤を投入した。お前は今我々の支配下にあるという事を忘れるな。そしてお前には拒否権などないという事もな。そういう契約をした筈だ」

女リンク「…くっ…」

???「研究において我々の指示に必ず従う事。常に我々の監視下に置かれる事。我々の存在について一切口外しない事。そして従えないならば、お前を消す事。我々にとってお前一人の存在を抹消するなど造作も無い」

女リンク「…分かった…従うわ…」

???「それでいい」


ビーーッ!!ビーーッ!!ビーーッ!!


???「何だ!?」

突如警報が鳴り響いた。

???「アーウィンだ!登録されていないアーウィンが敷地内上空に侵入した!」

???「偶然通過しただけではないのか!?」

???「いや…確実にこちらへ向かってきている!」

???「何だと!?」

199ハイドンピー (ワッチョイ 2db3-c4c1):2021/10/10(日) 19:24:31 ID:eeOlezMI00

???「CR-103、104、105!ただちに迎撃しろ!」

???「了解!」

三人のフォックスが研究室を飛び出し、アーウィンの駐めてある格納庫へ。

そして乗り込もうとしたが。


ドォォン!!


???「くっ!?」

格納庫のシャッターが破壊された。


キィィィィィン…

ゴゴゴゴ… ズシィン…


そして一機のアーウィンが侵入してきた。

???「な…何者だ…」

リカエ『こちらの台詞だ。アーウィンの目撃情報を聞いて来てみたが…まさか本当にこんなところに基地があるとはな…お前たちどこの所属だ?』

パイロットはリカエリスだった。

リカエ『そのアーウィンは見たことがないな…それにお前たちのその顔…三つ子か…?』

???「…そうだ…我々の一族は…かつて村から独立し、ここで静かに暮らしているだけだ」

リカエ『中を調べさせてもらう』

パシュッ

スタッ

リカエリスはコックピットを開き、アーウィンから降りる。

???「…悪いがよそ者は入れられない」

リカエ「…何の真似だ?」

三人はリカエリスにブラスターを向けた。

???「お前には消えてもらう」


チュンッ!チュンッ!チュンッ!


放たれた弾をリカエリスは全てかわし、一人のフォックスの懐に潜ると。


ドガッ!!


???「くっ!」

腹を蹴って壁に叩きつけた。

リカエ「余程隠したいものがあるらしいな」

???「ああ…その通りだ」


ザザザザッ!!


奥の扉から新たに数十人のフォックスが現れる。

リカエ「…!!な…何だ…!?全員同じ姿…クローンか…!?だとすれば…写真で見た姿より少し若いが…まさかお前は…」

???「何かに気付いたか?だが意味は無い。お前はここで消えるのだ」


ドガガガガッ!!!!


リカエ「ぐあぁっ…!!」

フォックスたちの一斉攻撃が始まった。

リカエ(くっ…一人一人がなかなかの実力…しかもこの数とは…!)

200ハイドンピー (ワッチョイ 2db3-c4c1):2021/10/10(日) 19:25:26 ID:eeOlezMI00

ゴゴゴゴゴ…

リカエ「ファイヤーッ!!」


ドガァッ!!


???「ぐっ…!」

ファイアフォックスでフォックスたちを弾き飛ばす。

リカエ(応援を呼ばなければ…!)

ピッ

そしてリカエリスはジャケットの内側にある端末を使い、救援信号を出した。

???「応援を呼んだのか?」

???「無駄な事を」

リカエ「我々を舐めるな…お前たち程度の実力では村で訓練を積んだフォックスたちには到底…」

???「そうではない」

リカエ「何?」

???「この基地の半径三キロメートルには我々の使う特殊な電波以外を完全に遮断する防壁が備わっている」

???「信号は届かない」

リカエ「なっ…!」

タッ!


ドガガガガガ…!!


リカエ「く…!」

再びフォックスたちはリカエリスを囲みタコ殴りにする。

リカエ(ならば…!)

ポチッ

今度はジャケットの内側のスイッチを押した。

キィィィィン…

???「!!」

するとアーウィンのエンジンがついた。

???「自動操縦か!」


ドドドドドドドド!!!


???「くっ!」

アーウィンから放たれた弾にフォックスたちはリカエリスから引き剥がされる。

???「面倒だな」

???「アーウィンを破壊しろ」

リカエ「そうはさせん!」

ダンッ!

リカエリスはアーウィンに飛び乗る。


ゴゴゴゴ… キィィィィン…!!


そして格納庫から脱出した。

リカエ「防壁があるというのなら、その外へ出ればいい!」

201ハイドンピー (ワッチョイ a010-3f06):2021/10/18(月) 20:18:18 ID:hK6XWgDE00

???「逃がすな!」


キィィィィィィィィン!!!!


リカエリスを追って、格納庫から数十機のアーウィン群が飛び立つ。

リカエ「なっ…速い…!エンジンを改造しているのか…!」


ドドドドドドドド!!!!


リカエ「くっ!」

リカエリスは後方からの射撃を巧みな操縦技術でかわす。


キィィィィン!


リカエ「なっ!?」

今度は機体の速さを利用してアーウィンごと突っ込んできた。


ギュルッ!


リカエリスは機体をローリングさせてかわす。

リカエ「クローンは使い捨てという訳か…!」


キィィィィン!!


アーウィンは次々にリカエリスの機体へと特攻を仕掛ける。

リカエ「だがこの程度ならば…かわせる!」


ギュインッ!!


リカエリスは機体を急上昇させる。


ドガァァァン!!!!


四方から来たアーウィンはその動きに対応できずにぶつかり合い、大破した。

202ハイドンピー (ワッチョイ a010-3f06):2021/10/18(月) 20:19:25 ID:hK6XWgDE00

リカエ「それ程の速度を出せば当然操縦の精度は落ちる。速ければいいというものではない…とは言え」


ドガァァァン!!!


再び特攻をかわし、アーウィンたちが大破。

リカエ「…この数は流石に多過ぎるな…」


ドガァァァン!!!!

ドガァァァン!!!!

ドガァァァン!!!!


更に大破、大破、大破。

それでもまだ十数機のアーウィンがリカエリスの機体を取り囲む。

リカエ「このままではいずれ…」

その時。


ドガァァァン!!!!


リカエリスの機体にアーウィンが激突した。

???『やったか?』

???『いや、脱出された』


スタッ!

リカエリスはぶつかる寸前にアーウィンから逃れ、着地した。

リカエ「やられたか…!どうする…生身であの数のアーウィンを相手取るのは不可能!」


ドドドドドドドド!!!


リカエ「くっ!」

タタタタタ…!

リカエリスはなんとか射撃をかわしながら、走る。

203ハイドンピー (ワッチョイ a010-3f06):2021/10/18(月) 20:20:31 ID:hK6XWgDE00


???『逃がすな!確実にここで仕留めろ!』

???『待て!』

???『何?』

???『奴め…再び基地へ向かっている…』

???『これでは迂闊に撃てん…』

???『だがそれならば生身で戦えばいいだけの事。奴のアーウィンも既に墜とした。もう逃げ場はない』


リカエ「やはり基地の方向へは撃てないか。あの中は精密機械の並ぶ研究施設と見て間違いなさそうだな…」

リカエリスはそのまま破壊した格納庫のシャッターの所まで走り抜ける。

???「基地を盾にするとは良い発想だと褒めてやりたいところだが、甘い」

???「袋の鼠だ」

???「狐だがな」

格納庫の前には生身のフォックスたちが待ち構えていた。

リカエ「前門の虎、後門の狼…か。どちらも狐だが…」

後ろからはアーウィンが迫ってくる。

???「かかれ!」

ダダダダダダダ…!

前方のフォックスたちが雪崩のごとくリカエリスへ飛び掛かる。

リカエ「フ…私がただ空中で逃げ回っているだけだと思ったのか」

204ハイドンピー (ワッチョイ a010-3f06):2021/10/18(月) 20:21:30 ID:hK6XWgDE00


ボンッ!!!!


???「…?」

???「何の音だ…?」

???『せ、制御不能!!エンジンに何か工作されている!!』

追ってきていた一番後ろのアーウィンが、エンジンから火を吹いていた。

???「何っ!?」


ギィィィィイィィイイィ!!!!


ドドォォォォォン!!!!


アーウィンはそのままフォックスたちを巻き込みながら格納庫に突っ込み、爆発した。

リカエ「上手くいったようだな…だが逃げ場がないことに変わりはないか…」

ゴゴゴゴゴ… ズシィン…

追ってきていた十数機のアーウィンが着陸し、フォックスたちが降りてきた。

リカエ「ならばこのまま中へ入り、真相を確める!」

タタタタタ…

炎上する格納庫を通り抜け、基地の内部へと侵入する。

???「待て!」

リカエ「待てと言われて待てるほど私は芸達者ではないぞ」

チュンッ!チュンッ!

リカエリスは天井を撃つ。


ガラガラガラガラ…!!


天井が崩れ、通路が塞がれた。

リカエ「こんなものすぐに突破されるだろうが、時間稼ぎにはなるだろう…」

そしてリカエリスは進んでいく。


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