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夜桜学園強化合宿 Date et dabitur vobis

56後日談 ◆ovLCTgzg4s:2016/02/16(火) 01:44:46 ID:FZqbjWPA0

数日後、海馬市役所地下研究所。
セリエ=A=サラスフィールの城とでも言うべきここは、APOHの者であってもそうそう入りはしない。
何を触って何が起こるか分からないからだ。──例外は小黒博士だろうが、彼はセリエと研究思想を異にしている。

「……あー、疲れた。セリエさん、お茶とかないんですか、お茶。」
「お客様気分は、前の分の借金を払ってからにしろ。──次は10分30秒から45秒の再現だ。」
「暫くはビーム撃ってるだけですって。抜かせば──」
「それが重要なんだ。それとも、今からでも“今回”の金を払うか?」

そんな所に招かれたのは、佐倉斎。セリエの要請で一日休みを取ったのだが、時刻は既に昼に差し掛かっている。
そして、彼らの前で動いているのは──


「──。」


“鎧武者”。 正しくは、型番“BSW-29-b”の強化外骨格を纏った、“佐倉の式神”。
等身大の関節人形に操作型の符を張って、その上から強化外骨格を装備することで、“佐倉の意のままに動く鎧武者”となる。

早い話が、“鎧武者”を操作していたのは佐倉だった、ということだ。勿論、彼らには内緒にしている。これ以上嫌われたくない。
だが、実際、合宿を開く前から彼らをこれで“試す”ことは決めていた。──強化外骨格の製作は、セリエが引き受けてくれたので助かった。
ついでに、“妖刀に見える細工をした超合金の刀”までオマケにつけてくれた。“櫻殺”を左手に装備してくれ、という頼みも快諾。
セリエさんも丸くなったなぁ、と思っていれば、オチはこの、地獄のデータ採集なのだが。

「……まぁいい。少し休憩だ。動きが悪くなっても困る。」
「あ、じゃあ昼飯に──」
「そんな時間はない。どうせコンビニ飯だろう。体に悪いから食うな。」

凄い。優しいフリして此方のことは全く考えていない。しかもそれを隠そうともしない。
佐倉は息をつき、近くの椅子に身を預ける。それを横目で見ながら、セリエはモニターに眼を落とした。
彼の“感覚”を使って、それも退魔師を相手にテストできるのは、非常に貴重な機会だ。現に、実地データも、再現データも非常に良い。
だが──彼の身体が十全だった時代のデータと見比べると、見劣りする。

「……佐倉。貴様、手を抜いたな。」
「いや。式符の伝達でコンマ7秒、強化外骨格の反応が遅れるんですよ。
 ……ほら、“実地”の15分辺りとか、桜井への反応が遅れてるでしょ。」
「それを差し引いても、ここは比較値がおかしい。避けようと思えば避けられた筈だ。」
「……敵わないな。でも、その辺も分かってて、セリエさんも協力してくれたんでしょ。」

佐倉の目的は、彼らの実力を試すだけではなかった。──“死の寸前まで彼らを追い詰める”ことだ。
彼らに足りないのは、ヴァイオレットも言っていた通り“経験”。それも、“死地”での。
そこで逃げるような腰抜けなら、要らない。逃げずに戦うならよし。“課題”を達成し、協力して戦うなら更に良し。
こんな“無理やりな手法”が裏テーマだったと知れば、他の者は猛反対だったろう。セリエを除いては。

結果、彼らは想像以上の成果を上げてくれた訳だが──。もちろん、その過程で殺すわけにはいかない。
所々、手を抜いたことは認める。だが、最終的に式神を破壊するにまで至ったのは、確実に彼らの力だ。
強化外骨格の破壊までは見越していたが、形代ごと破壊されるとは思っていなかった。等身大関節人形、高かったのに。

「……? いや、私は貴様が本気で奴らを潰すものだと思って、協力したのだが。」
「えっ。」
「まぁ、どちらでもいい。なら最初からデータの採り直しだ。実地データとの比較はいらん。本気で動かしてみろ。」
「えっ。えっ。」
「私にも予定がある。休んでいる暇はない。明日の朝6時までに終わらせるぞ。」
「えっ。えっ。えっ。」

煙草ぐらい吸う時間をくれ、と。──悲痛な叫びが地下への階段に響いた。



◆ 後日談 “Cave quid dicis, quando, et cui.”(何を、いつ、そして誰にいうかに注意せよ)──了


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