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ダンゲロスSS上海 応援スレ
96
:
シンフォニア伊吹
:2026/01/04(日) 23:32:10
微動だにせず、ソファで寛ぐ藺烏黒がいた。
異常である。
その身に傷ひとつ、存在しない。
シンフォニア伊吹。
老境に入って久しくも、その肉体は現役以上!!
まさしく、東アジアにおけるトップクラスのファイターだと言っていい。
その猛攻を受けて、傷ひとつ無いなど、あり得ない!!
あり得るのだ。この藺烏黒の前では!
「硬気功……まあ平たく言うと中国四千年の神秘ってやつ……」
そう言って、藺烏黒は立ち上がる。
「ほれ、どうした砂利よ。逃げんのか??」
「逃げるったって……」
狭い室内、逃げ場はない。
「逃げんのか。なら——」
次の瞬間、藺の掌底がシンフォニアの顔面を覆っていた。
「儂の武は、ちとズルいぞ」
炸裂——
そのように形容するほか無いだろう。
掌底を受けたシンフォニアの肉体は軽々と宙を舞い、壁に激突して床に倒れる。
まさに、爆発のような一撃。
「さあ起きんかい、砂利よ。立ち上がってみい」
「ぐ……クク……こんなもん」
シンフォニアは立ちあがろうとするが、膝が震えている。顔面からは血が吹き出し、ダメージの深さを思わせた。
その姿は負けに向かう無様なレスラー、そのものだ。
「グッ……俺がこんなもんで……」
滑って倒れるシンフォニア。
床を這いつくばりながら、尚も立ちあがろうとする。
その姿を、藺烏黒と道明寺晴満はただ見守るばかり。
「どうした……」
「ググ……グググ………」
「立たんかいッッッ!シンフォニア伊吹!」
藺が一括する。
「そうですよ!立ってくださいよ、シンフォニア!」
道明寺もまた。いつの間にか叫んでいた。
「あのシンフォニア伊吹がこんなところで負けちゃあいけないじゃないですか!?さあ立つのですよ!」
「ググ……観客にそうまで言われちゃ、立たねぇ訳にはいかねぇな!」
藺と道明寺は、シンフォニア伊吹が一流のプロレスラーであることをこの瞬間思い出した。
いつのまにか——シンフォニアを応援させられていた。
いつのまにか——彼が立ち上がる様子を見守っていた。
そしていつのまにか——彼の立つ姿を見て、心がこれほどまでに高揚している!
「立ちおった……!」
プロレスは全ての攻撃を受ける。
受けにおいてプロレスの右に出る格闘は存在しない。必然、シンフォニアは立つ。
だが、一流のレスラーは——
立ち上がる行為に、万雷の拍手と応援を齎らす!
それこそが、シンフォニア・プロレスの老獪なる心理誘導の真骨頂!
「伊吹!シンフォニア!」
いつのまにか、藺と道明寺はコールしていた。
伝説の、シンフォニア・コールを。
立ち上がったシンフォニアは、タキシードのまま、両手を広げる。
その姿は、世界的クラシックコンサートの指揮者にもヒケを取らぬ、堂々たる佇まいだ。
「伊吹!シンフォニア!」
シンフォニア・コールが鳴り響く。
場は沸く。
プロレスラー、実業家、政治家、音楽家。
シンフォニア伊吹、その人である。
夜空を駆ける 流れ星を いま
——この道を行けばどうなるものか。
見つけられたら 何を祈るだろう
——危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。
旅立つ君と交わした 約束
——踏み出せばその一足がみちとなり、その一足が道となる。
心の中に いつもある
——迷わず行けよ、行けばわかるさ。
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