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ダンゲロスSSエーデルワイス 応援スレ

8仙道ソウスケ:2022/02/06(日) 22:38:47
―――――
 

英コトミに二度と会う事はない。コトミと袂を分かった時、仙道ソウスケはそう考えており、そう望んでいた。
だから、この再会はソウスケにとって喜ばしいものではなかった。
決して、あり得ないと思っていたわけではない。可能性として考えてはいたが、できれば起こってほしく無い事象だった。
 
ソウスケの目の前に横たわるコトミは、誰が見ても助かると思えるような状態ではなかった。
まず、地面を覆うかのような多量の出血が見えた。コトミの顔面は蒼白で、唇は震えていた。
腹部外傷はないものの、出血の状態から恐らく内臓が破裂している。四肢は全て複雑骨折しており、人の形をかろうじて保っている状態だ。頭部外傷は重症ではないが、出血が目にかかっており、それを拭おうとしているのか、コトミの体がびくびくと痙攣していた。
ソウスケは、コトミの傍に座り、耳元に声をかけながら肩を叩いた。

「コトミ。僕の声が聞こえるかい。返事ができなければ、体のどこかを動かすのでもいいよ」

コトミの体を注意深く観察するが、反応はない。
意識が混濁しているのか、耳を損傷しているのか。或いは、その両方か。
どちらにしろ、確実なことがある。
コトミはもう、長くない。
それは、過去に生きたまま人間を解剖した経験のあるソウスケだから、分かることであった。
人間がどのように損傷すれば死ぬかを、ソウスケはよく知っている。
再度、ソウスケはコトミの耳元に口を近づけた。

「ねえ、コトミ。返事ができないと思うから、僕の考えを言うよ」

話しながら、ソウスケは注射器と麻酔の入った小瓶を取り出した。
コトミの腕に針を刺したが、もはやこの程度の痛みでは身動ぎもできないようだった。
そのままコトミの腕に薬液が入りきるのを確認したソウスケは、注射器を回収して、手早く専用のケースにしまう。
これで、少なくとも痛みは消える。ソウスケは、言葉をつづけた。
 
「コトミはほどなく死ぬよ。その気になれば延命はできるけど、脳や体に後遺症が残るし、これから先凄く不自由な生活になるから、ちょっとねえ?」

ソウスケは、はは、といつもの調子で笑う。その表情に、大切な人を亡くす悲壮感はない。
まるで親しい友人に話しかけるように、ソウスケの声は明るかった。

「だから、僕は君を生き返らせようと思う。方法はこれから考えるけどね」

ソウスケは、事もなげに言った。

「なあに、死はただの現象さ。だったら、死を覆す現象を起こせばいいだけだ。そもそも、僕も前の大会で死んでから生き返っているしね。どうにでもなると思うよ。まあ、今は安心して死を堪能すると……」
 
コトミの指先が、何かを探るように意思を持った動き方をした。それを見て、ソウスケはコトミの手を握る。
コトミの血の気の引いた唇が、音も無く微かに揺れるのをソウスケは見た。
 
――――アタシの人生って、こんなもんか。
 
コトミの唇は確かにそう動いた後に、焦点の合わない瞳は光を喪った。
コトミは自分の人生に、世界に、明日に希望を抱いて足掻く人間だ。そんな彼女が、最期に諦めの言葉を吐いた。

ソウスケにとって、それは最も望ましくない言葉だった。

ソウスケは、後悔をしない。過去の事に思いを囚われるのは無駄だ。
過去から現在には、事実があるだけだ。必要なのは、事実に基づいて未来を作ることだ。
まずは、イグニッション・ユニオンと接触する。特に、鷹岡修一郎はかつてDSSバトルを運営していた重要人物だ。確実に手に入れる必要があるだろう。
同時並行して、人間を生き返らせることができる魔人を探す。大勢の魔人を集めて探すならば、ハルマゲドンを起こすのが手早いだろう。その時に、願いを叶える系の大会が開催されれば、こしたことは無い。
ハルマゲドンを起こす方法はいくつかあるが、一番手早い方法は一つだ。

(山乃端一人と言う魔人を殺す)

ソウスケはそっとコトミの顔に手を置いて、目蓋を閉じさせる。完全に支えを無くした彼女の手を、もう一度握り直す。
 
「Don't worry.」

死んだ人間の意思はわからない。コトミが、生き返ることを望むかなど、ソウスケにわかりはしない。
だが、コトミは死にたくないと言った。ならば、ソウスケはそれに基づいて行動をするだけだ。
過去は事実であり、それに基づいて行動することが肝要だ。

「コトミの人生が“こんなもの”で終わるなんて、僕はイヤだからね」

ソウスケは、コトミの手を握り続けた。


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