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ダンゲロスSSエーデルワイス 応援スレ

3仙道ソウスケ:2022/02/06(日) 22:35:57
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「ソウスケは、死んだ後の事って考えたことはあるの」

コトミがソウスケにそんなことを聞いたのは、イグニッション・ユニオンの2回戦が終わった後のことだった。
リッターバイクを運転するソウスケと、タンデムシートに腰を下ろしてソウスケにしがみつくコトミ。
雨混じりの風音が耳にうるさいが、幸い二人が被っているヘルメットには通信機が付いていたから、会話に支障はなかった。

「Of Course! 何しろ僕は死んだことがないからね。とても興味があるよ」

ソウスケは、声に喜色をにじませる。
二人の会話が長く続くことは少ない。ソウスケからコトミへの問い掛けの多くは、「うざ」等の一言でスルーされるからだ。
会話のラリーが続くとしたら、それはコトミからの問い掛けが主である。
そして、コトミがソウスケに興味を持つことなど、滅多にあることではない。
ソウスケは、コトミのことをもっと知りたいと常に思っているからこそ、これは実に楽しいイベントであった。

「……アンタらしいな」
「コトミは、死後の世界に興味があるのかい」
「そうじゃない。ただ、アンタが何の躊躇も無く死んだから」

そうだろうね。その言葉を、ソウスケは口には出さなかった。
ソウスケは2回戦の終盤、対戦相手からの負傷により、コトミの腕の中で死んだ。
幸い、先に死んだのは対戦相手だったので勝利はしたが、コトミにとって人が目の前で死んでいくというのは初めてのことだ。
人が死ぬ場面を目にしたコトミに、大きなショックが加わることと、それを乗り越えることはソウスケの想定内だった。コトミは、最も信頼していた祖父を亡くしている。死に対する忌避感が強いのは、想像がつくからだ。
だが、“ソウスケ”という一個人の死に対しても、コトミが哀憐の情を持っているのは、いささか想定を超えた。
コトミにとって、ソウスケは嫌悪感すら抱く相手だ。
そのソウスケが死んでも悲しむことができるというのは、コトミの優しさに他ならない。
ソウスケは、コトミへの尊敬をさらに強くした。

「死後の世界ではなく、僕が死をどうとらえているかに興味があるってことだね。コトミが僕に興味を持ってくれるなんて、こんなに嬉しいことはないよ!」
「聞かなきゃよかった」
「まあ、そう言わずに」

ソウスケが努めて明るく声を出すのは、コトミにこれ以上悲しみを引きずってほしくないからだ。
コトミの負担感を解消するには、心配すらばかばかしく思わせるのが最適解だと、これまでの付き合いで分かっている。
それは、ソウスケ自身それほど意識していないものの、間違いなくソウスケなりの優しさだった。

いつもなら、ここで話は終わりだ。
だが、ソウスケはもう一歩踏み込んでみたいと思った。
何故ならば、ソウスケはこの後、コトミと精神的に永遠の別離をする可能性があるからだ。
それは、コトミがソウスケを信じられなかったときに、コトミを幸せにするための一つの手段だ。
その手段を使えば、ソウスケにとって至福ともいえるこの時間は、二度と帰ってこなくなるだろう。
ソウスケは、少しでもコトミとの会話を長引かせたいと思っていた。

「コトミは、死んだ後のことをどう思っているんだい」

コトミが、少し黙る。
無視をされる可能性も高いな。ソウスケがそう思った時、コトミが絞り出すように、ぽつりと言った。

「……考えたことも無いな。そうだなあ。痛くないといいなあ、って思ってる」
「流石コトミだ。実に率直で人間の根源的な欲求に基づく言葉だね」
「バカにしてるだろ」
「命を賭けてもいいよ。僕が、コトミを馬鹿にするなんて未来永劫あり得ない」

コトミが、ふんと鼻を鳴らした。
コトミにとって、ソウスケの言葉は信用に足りない。だから、その言葉はコトミの芯に届くことは無い。
だが、ソウスケの言葉は真実だ。ソウスケはコトミにウソをつかない。
ソウスケにとってコトミは、新しい自分を教えてくれる人で、最上の幸せをくれる人だ。
ソウスケが、コトミと向き合うことなく嘘をつけば、新しい自分を見る事はできなくなるだろう。
だから、ソウスケが“ウソをつかない”と決めたならば、たとえ自分が死ぬことになったとしても、決してウソをつくことは無い。
ソウスケには、自分にウソをつくという発想が無いのだ。

「アタシがアンタを信じられなかったら、殺してもいいってこと?」

コトミは、吐き捨てるように言った。
ソウスケは、内心ほくそ笑んだ。そう言われれば、返す言葉は決まっているからだ。

「さすがコトミ。実にCriticalな返答だね。もちろん。僕は抵抗しない。それをコトミが望むなら、喜んで心臓を差し出すよ」
「はあ……。アンタなら、それはそれで楽しみそうだけどね。初めて死ねるとか言って」
「はは。コトミがそこまで僕のことをわかってくれるなんて、嬉しいなあ」
「命は大事にしろよ」


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