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ダンゲロスSSエーデルワイス 応援スレ

11典礼(強敵NPC):2022/02/07(月) 11:43:21
都内でも有数の広い敷地を持ったM自然公園。
その入り口で一人の青年がチカプシと周辺に何度も視線を往復させている。
時刻は午前9時を少し回った頃で、空は年中通してもここまで綺麗には澄み渡らないほどの快晴だ。

「ああ、まだかな、まだだよな。待ち合わせは午前10時だもんなあ」

小春日和に誘われてなのか、子供の用なテンションでそわそわしながら独り言まで呟いてしまっていた。
その顔に影が差す。
雲など出ていなかったはずだと日を遮るものを確認しようと振り返った青年は、背後に身長3メートルはあるのではないかという巨大な老人を目にしたのである。
くすんだスーツの老人は、青年を上から見下ろしていた。

「な、何か御用でしょうか」

話しかける気でも無ければありえない距離間に老人は立っているのだ。

「随分楽しそうにしているな、と思ってね」

老人は笑って見せたようだが逆光で表情が見えにくい。
しかし気難しい相手ではないことは読み取れたので、青年も警戒を緩めた。

「これから彼女とデートなんですよ。午前中はここでピクニックをして午後はショッピング。夜には一緒に夜景を見ながら…」
「待ち合わせは何時に?」
「本当は10時なんですけども、楽しみすぎてこんな時間に来ちゃったんです」
「なんと!まだイベントが始まるまでに一時間近くあるというのに、既にそこまで楽しそうにできるものなのか!君は人生を楽しむ最高の素質を持っているのだね!」
「あはは、そんな大層なことですかね」

大仰に驚く老人に逆に吃驚した青年だったが、この人と話をしていれば待ち合わせの時間まですぐに経ってしまう気がする。

「おじいさんは今日何かご予定があるんですか?」
「ああ、今日はマリネ記念日だ」
「なんですか、それ」
「君がマリネを美味しいね、と言ったから今日はマリネ記念日なんだよ」
「君って誰なんですか」
「君だよ」

青年は自分を見つめる老人の瞳に急に恐怖を感じた。
危ない人だったのか、と会話に乗ったことを後悔していると、老人は彼が表情を硬化させたことを気にもかけず言葉を続けた。

「去年の今日のことだ。君は親戚がスポーツ競技で優秀な賞を取った記念パーティに参加しただろう」
「確かにそんなこともあったと思いますが…」
「そこで君は会場に用意されたマリネに手を付けると、美味しいねという言葉を口にしたのだ」
「言ったかもしれませんけど…」
「あのパーティを用意して演出したのは我輩の会社なのさ」

老人は名刺を差し出した。
金や銀の箔押しがされた豪奢な紙片には、『TENREIグループ会長 典礼』と書かれている。

「そういえばTENREIに依頼したっておばさんが言ってたなあ。いやそれにしたって僕の発言をいちいち覚えてるのはおかしくないですか。というかどこで聞いていたんです」
「そんなことはどうでもいい。今日は君のためにマリネ記念日のセレモニーを用意したんだ。会場は公園のアスレチック広場だ。さあ!」
「さあ!じゃないでしょう。それに今日僕はデートがあるって言いましたよね」
「待ち合わせまでに時間があると言ったのは君だろう。それに小娘如きがこの我輩以上に君を楽しませることができるとは到底思えない!」
「何言ってんですかやめて下さい!うわあ誰か助けてッ…!」


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