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中二ダンゲロス生徒会応援スレ

8ROXA:2019/05/19(日) 03:23:27
【アゲルさんのSS】

「ニホンの揚げ物、低レベルデース!」

いつものように部活動に勤しんでいた唐理都アゲルの耳に、にわかには信じられないような言葉が飛び込んできた。
アゲルが卵を溶くのを止めそちらを見やると、そこにはチャイナドレスを着た、いかにも中国生まれのような風貌をした少女が腕を組んで立っていた。

「おい、今、なんて……!」

挑発を繰り返す闖入者に対して、普段は温厚なアゲルも流石に怒気を滲ませる。日本が誇る最高の文化であり、己がアイデンティティである揚げ物を馬鹿にされたのだから当然だ。

「おやおや、聞こえませんでしたかァ〜?ではもう一度言ってあげマース。ニホンの揚げ物、低レベルデース!」

「貴様……ッ!」

怒りに任せて立ち上がったのはアゲルではなかった。お料理研究会の部員にしてアゲルの心の友、”揚王(ようおう)”の異名を持つ、厚皮スナックだ。

「よせ、スナック。女、さてはお前、WFO(世界揚げ物協会)の協会員だな?」

厚皮が怒りを見せたことで、かえってアゲルの興奮は揚げて数十分経った天ぷらのように冷めたようだ。

「ふふふ、だと言ったらどうしマスか?」

「名を名乗れ。日本の揚げ物を侮辱したことは許せない。お前をお料理対決で完膚なきまでに叩きのめす」

「……『ラーユ』。言っておくけどこれはコードネーム。私はカッツォのようにヘルシーではないわよ?」

ラーユと名乗った女はおちょくるような口調を止め、目を細めた。
水に油を垂らしたかのような緊張が、調理室に走る。

「明日、同じ時間、同じ場所でだ。お題はそっちが決めてくれて構わない」

アゲルはそう言って、再び黙々と卵を溶き始めるのだった。

――翌日、同時刻。

希望崎学園の調理室には生徒や教師、部外者までもが大勢詰めかけていた。
あのお料理研究会期待の新星、”地獄の窯”唐理都アゲルがWFOからの二度目の挑戦を受けたというのだから当然だ。

チャイナ服に身を包んだラーユは、アゲルを見て不敵な笑みを浮かべた。

「揚げすぎたエビフライのように尻尾を巻いて逃げなかったことは評価に値しマース! ですが、悲しいことに知恵が足りませんネ〜〜」

「……」

「WFOに逆らったこと、貴方の父、『唐理都オイル』のように悔いて死になサーイ」

アゲルは言葉を返さない。これは勝利を確信した故の余裕か、それとも……。

「時間になりましたので、お料理対決を始めたいと思います。お題は『揚げ餃子』です。
 なお、調理はそれぞれ別室で行われ、試食は先に出来た方からとなります」

チーンとタイマーの鐘が鳴り、アゲルとラーユの両者はそれぞれの部屋へと移動していった。

三十分後。
先に部屋から出てきたのはラーユだった。やや遅れてアゲルがそれに続く。

ラーユの調理した揚げ餃子は消し炭のようにどす黒い色をしていた。
油の温度調節を間違えて焦がしたのか? いや、そうではない。もし読者諸兄が辺りに漂う匂いを嗅ぐことが出来たなら一瞬で理解するだろう。
そう、これは『石油』の香りだ!

「ふふ、私の揚げ餃子は石油で揚げてあるわ。高級感とコクを感じさせる、最高級油田から採れた石油のトロ味をどうぞご賞味あれ……」

審査員たちはラーユの揚げ餃子を口にすることもなく、機械的に最高点である百点をクリップボードに書いていく。
なぜ審査員たちは食べずに採点ができるのか。それは、このお料理対決の審査員は全員WFOから派遣された、いわばサクラだからである。

(『石油揚げ餃子』は私の最も得意とする料理の一つ……。その上審査員は全員こちら側の人間なのだから負ける訳がない!)

ラーユは心の中で勝利を確信し、ほくそ笑んだ。

「次は俺の揚げ餃子だな」

「勝てると思って? もう勝負はついたようなものよ?」

「ふん、やってみなきゃ分からん。さ、審査員たち。俺の揚げ餃子はこれだ。食ってくれ」

アゲルが出したのは、どこにでもあるような、色も形も至って普通の揚げ餃子だ。

「『やってみなきゃ分かんない』!? ちゃんちゃらおかしいデース!
 さあ、審査員の皆さん、ちゃっちゃと食べてこの『二度揚げ野郎(はいぼくしゃ)』を人間天ぷらの刑に処してくだサーイ!」


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