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ダンゲロスSS5 雑談スレ

90井戸浪濠:2018/04/21(土) 20:01:53

――――

「ハァーッ! ハーッ! クソッ! どうしてだ!」

 店内に戻った真野は、机に両拳を叩きつけた。
 行動は“最適”だった。
 井戸浪濠は売ると決めたら必ず水を売るだろう。それも高額で。
 GO参加者の分析を行った際に真野が得た結論だ。
 ゆえにこちらが先手を取り適正価格で買ってしまう。
 何も間違ってはいない。
 だが。

「俺なら……真野金なら……できたはずだ! 買わないことが!」

 行動は“最高”ではなかった。
 井戸浪に勝利するというなら、何も買わないことこそが本当の勝利だ。
 それを狙えば確かに高額で売りつけられるリスクがある。
 怯えていたのだろうか。
 二回戦でたった一度の敗北を味わったばかりだから。
 いや、真野金はそうではなかったはずだ。

「見てろよ……どいつもこいつも……次、こそは!」

 彼の目に宿った光は、未だ消えていない。

――――

「この私が、定価を受け取ることになるとはな」

 店の前に立ち尽くしたまま、掌の百円玉を見つめ、井戸浪は呟いた。
 確かに、売ったは売った。
 そういう点では彼の行動もまた“最適”だったのだろう。
 しかし。

「もう少し、冒険するべきだったか」

 彼の行動もまた、“最高”ではなかった。
 別に拳銃に怯えたわけではない。それより怖かったのは売れないこと。
 彼はGOの舞台でもまた、ビジネスに成功を収めた。
 そうして積み上げてきた成功が、彼を保身に走らせた。
 真野金相手に、売れないリスクを取ってでも値段を釣り上げ、チャレンジするべきではなかっただろうか。

「私も、まだまだだな」

 受け取った百円玉をポケットにしまい込み、精進の心を胸に、彼はネオン街へと消えていった。

――――

 話を聞き終えた飯田秋音は、困惑した顔で質問した。

「それって結局、百円のものを百円で取引したってだけの話だよね?」

「そうだ」

 答えたのは宇津木秋秀。GO運営本部のエージェントである彼は、なにやら五賢臣が大会MVPを選出するということで、大会裏の逸話を集める命を受けていた。
 そのついでとして、“歳の離れた茶飲み友達”に会いに来た、といったところだ。

「どうして売った方も買った方も悔しがってるの?」

 秋音の問いに宇津木は笑って答える。

「ハハハハハハ! それが男ってものだ」

「……やっぱり男の人って全っ然理解できない」

 呆れた顔で紅茶に口をつける秋音の頭に一つの疑問が浮かんだ。
 今日は質問回数に余裕がある。
 フラガラッハに尋ねてみるのもいいだろう。

(Q4――真野金は本気で悔しがってた?)
「はい」

 いい気味、と秋音は意地悪に微笑んだ。

【ゼロサムゲーム】完


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