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ダンゲロス冥王星祭応援投稿スレ

57霜月 柊花:2017/01/14(土) 10:25:20



参加の経緯を回想した柊花は、少しだけ元気を取り戻していた。
結局は自分で選んだ道なのだ。
ならば、やる他はない。

そして彼女はふと、友人がこの舞台を見に来ていることを思い出した。
そんな大事なことを忘れるほどに追いつめられていたのかと自嘲した後、
舞台袖からそっと観客席の様子を覗いた

昨日友人は「絶対一番前の席をとって、絶対一番大きな声で応援するから!」と言っていた。
果たして、それは叶ったのだろうか。

会場の前列端から順に、小柄な友人を見落とさないよう観客の姿を一人一人認めていく。
そして、会場中央に慣れ親しんだ姿を見つけた柊花は、

「……あの子。……ばか。」

そうぽつりと呟き、俯いてくつくつと笑った。

彼女の友人は可哀想なくらい疲弊し、狼狽えていたのだ。
その瞳は舞台上の演目を捕らえておらず、左にうろうろ、右にちょろちょろと忙しなく動いている。
よく見れば体も小刻みに震えているし、頬が心なしかほっそりとしている。
また、トレードマークのリボンは心情に呼応するようにくたびれてしまっている。
アイメイクも少しぼやけている。また泣きそうになったに違いない。

柊花には、友人の気持ちが手に取るようにわかった。
彼女も自分と同じようにこの数十分を苦しみ抜いてきたのだろう。

このコンテストのレベルの高さは友人にとっても想定外のもので、
そこへ軽率に柊花を送り込んでしまったことを悔いていたに違いなかった。

ハァと、柊花は微笑を浮かべながら溜息をついた。
“外気に冷やされた温かな息が、白く染まる。”

もう羞恥に身を強張らせ、身体を冷たくしていた柊花はそこにはいなかった。
彼女の覚悟は決まっていた。

このコンテストが終わったら、友人と学祭をまわる予定だ。
その時にきっと友人はコンテストのことを気に病み、
ぐずぐずになりながら己が不明を謝ってくることだろう。

そんな友人に対する特効薬はひとつ。
「別に、大したことなかったけど」と、さらりと流してあげることだ。

その言葉が虚勢に見えないよう、まずはこの場で成功を収めておく必要があった。

“マジCOOLな柊花ちゃん”なら、きっとそうするし、それができる。
友人が信じた虚像を演じるべく、柊花は大きくのびをした。

気持ちは軽く、身体も軽かった。


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