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Vシネマ ポケットモンスターNo,外伝

1名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:46:30 ID:gZebox3c0
これは、どこにも記されなかった物語
救世主の周り、確かな光を放ち続けた彼らの、知られざる物語

ほんの少しだけ覗いてみよう

これは誰かを救うために戦う英雄達の物語だ

2名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:48:42 ID:gZebox3c0
ーーーーねぇ

楽しそうな彼女の声がする

ひまわり畑の中、車いすを押す俺は黙ってその声に耳を澄ます

ーーーーまた来年、ここに来ましょうね

もう季節は夏の終わり、秋が近づいてきている
車いすに座ったまま、彼女はそう言ってきた

ーーーーその頃にはきっと、私の病気も治っているはずだから…

彼女は自分と同じくらいの背丈のひまわりを手に取り笑った
そんな彼女を見ながら俺は頷く

そんな俺を見て、彼女…ヒヨリはまた楽しそうに笑った

ーーーー約束よ、兄さん

3名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:49:05 ID:gZebox3c0
そうヒヨリは…妹は笑いながら言った
でも、もうこの時ヒヨリは分かっていたのかもしれない、自分の命が長くない事を

結局、ヒヨリはその年の冬に亡くなった

俺と、両親と、もう一人。4人が見守る中、あいつは旅だってしまった

ーーーー兄さん…

約束を覚え続けた妹は、俺に向かって最後の一言を告げると息を引き取った

葬式では誰もが泣いた、家族も、友達も、恋人も
そして……俺もだ

それは俺がなんの力も無かった頃の話、妹を救おうと医者になろうとしていた時の話
今は…世界を救おうとしている俺の話だ

No,外伝 第1話 ソウジ編

「remenber promise」

4名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:49:32 ID:gZebox3c0
俺はとある村に足を運んでいた
何の変哲もない村、山の中腹にあるその村には若い人間は住んでおらず、老人たちだけが住む過疎村となっていた

俺がここに来たのはもちろん観光のためではない、任務だ
数か月前よりこの近辺で行方不明になる人間が多数報告されていた
警察の調べも甲斐なく進展が一切見られないこの事件にメビウス様は目をつけ、俺に調査を命じたという訳だ

(まったく…ハードスケジュールだな)

自嘲気味に笑う俺はここしばらくの任務を思い出そうとして…止めた
鮮明に思い出せるのはただ1つ、ここに来る前に出会ったとある男

『俺は、もうこれ以上目の前で人が死ぬのは見たくない!』

『目の前の命ひとつ救えないで、世界を救うなんて事できるかよ!』

自分にそう言い切った男を思い出す。世界の救世主…そう呼ばれたあいつをそこまでの男とは思えないが…

(今は任務に集中しよう)

俺はそう思い直し村の中へ足を進めた

5名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:49:46 ID:gZebox3c0
「あんれ?お客さんけ?」

「ほんに!?わぁ、こんな男前が来てくれるたぁうれしかねぇ!」

「お客さん、ここへはなしてきただ?仕事かね?」

村に入ってしばしすると住人と思わしき老夫婦が話しかけてきた

「ああ、俺は探偵だ。この近辺で行方不明になった依頼人の家族を探している。何か知っていることは無いか?」

俺は用意していた嘘をつき情報を求める振りをする
振りというのはもうすでにこの事件の情報は頭に叩き込んでいたからだ、目新しい情報など手に入らないだろう

「ごめんねぇ、私たちも警察の人たちに色々聞かれたけんどそれ以上の事は知らないんだよぉ」

「いや、仕方がないさ。時間を取らせてすまなかった」

「ちょっと待っとくれ!お客さん!」

立ち去ろうとした俺を引き留めた老夫婦、何かと思い振り返ると彼らは笑顔でこういった

「もし、今晩泊まるとこが無かったらうちにきてくんろ」

「んだ、こんなさびしい所だ。若い人と飯くいてぇっていう老いぼれの願い聞いてくんねか?」

「・・・構わないが」

「おお!あんがとな!上手いもん腹いっぱい用意しておくかんな!」

そう言って嬉しそうな老夫婦と別れた俺はこの村の調査を再開した……

6名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:50:03 ID:gZebox3c0
「やはり、ここは怪しいな…」

俺が出した結論はそれだった
情報が確かなら行方不明者の内数名はここで夜を明かした後消息を絶っている、その中には山を下りようとしていた人間もいた
山を下りるだけの人間がその道中で遭難するだろうか?あとは降りればいいだけだというのにだ

つまり、ここの住人が何かを隠しているのは間違いない
問題は何を隠しているかだ

(それを確かめるためにさっきの誘いにも乗った、さぁ、鬼が出るか、蛇が出るか、だな)

そう思いながら顔を上げた俺は信じられないものを見た
視線の先、森の木々たちが生い茂るその場所、そこに人影がある、そしてそこに立っていたのは………

ーーーー兄さん…

数年前死んだはずの俺の妹、ヒヨリだった

ヒヨリは俺にむかって手招きしている、まるでこっちに来いと言うように
俺はその手に導かれるようにして足を進めようとして……止めた

7名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:50:21 ID:gZebox3c0
(馬鹿な!ヒヨリは死んだはずだ!ここに居るはずがない!)

そう考えた俺は装備の中から投げナイフを掴むと、(心苦しかったが)ヒヨリに向かって投げつけた

投げナイフはまっすぐ飛んでいき、その先にいたヒヨリはナイフがぶつかる寸前、急に掻き消えた

今起きたことに呆然としながら、俺は確認のためヒヨリのいた場所に向かう
慎重に、警戒しながら進んだ俺は途中で足を止めて納得した

「なるほどな…」

呟く俺の視線の先には草木に隠れ気づきにくいものの大きく深い谷があった
もしヒヨリに気を取られて進んでいたらまっさかさまに落ちていただろう

8名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:50:36 ID:gZebox3c0
「よーくわかった。誰かが俺を殺そうとしているという事がな」

殺意を持って俺を襲う人間がいる…俺を怒らせたのはそれよりもヒヨリを利用したことだった

(俺を殺すために死んだヒヨリの幻覚を見せるとはな…)

怒りを胸に村へと戻る俺、何者だろうと関係は無い、妹を利用した罰は受けてもらう。俺の中にある思いはそれだけだった

9名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:50:51 ID:gZebox3c0
「よく来てくれたのぉ!」

そう言って俺を出迎えた老人は笑顔のまま食卓へと俺を案内した

「ばあさん!とびきり上手い飯をたのむぞい!」

「おじいさんったら!任せてくださいな!」

そう言った老婆は台所へと向かう、俺と老人は食卓に座って話をしていた

「キノッコ!」

老人の質問に俺が答える、そんなやり取りをしていた俺の脚に何者かが乗っかってきた。
見ればポケモンのキノココだ、人懐っこい性格なのだろう、俺を怖がることなくじゃれついてくる

「おーおー、ごめんなぁお客人。こらキノ坊!迷惑かけんじゃないよ!」

「いや、構わない……このキノココはお二人のポケモンかな?」

「いいえ、息子のですよ」

料理を手にやってきた老婆が答えてくれた
そのまま食卓に料理を並べ食事を始めながら、老夫婦は自分たちの息子について話し始めた

10名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:51:16 ID:gZebox3c0
「息子はブリーダーになると言ってこの村を出て言ってのう…それ以来はたまに来る手紙が唯一の楽しみですじゃ」

「仕事はきっちりしておるようですが……便りがないのが寂しいんですよ」

「親ならば誰しもがそうでしょう、息子さんはここには帰ってくることは無いんですか?」

「滅多にのう…でも、近々帰ってくると手紙が来ましたじゃ!」

「それは良かった、楽しみでしょう?」

「ええ、そりゃあもう!ここ最近近所の人たちの子供たちも帰って来ててね・・・ほら、あれ!」

そう言って指差した方を見てみると向かいの家の住人が誰かを家の中に招き入れている所だった
暗くて顔は分からなかったが話を聞く限り向かいの家の息子か娘だろう

「羨ましいのう、ばあさんや」

「ええ、本当に…」

11名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:51:30 ID:gZebox3c0
「やはり、例の事件の事もあって心配になってるんでしょうかね?」

「え?あ、ああ!そうですのう……こんなことを言ってはならないんでしょうが、おかげで息子に会えるのは嬉しいですが…」

「ええ、いなくなった方々を思うと心が痛みますじゃ…」

「・・・一刻も早く事件が解決するといいな」

「ええ…さ、さぁお客さん!お風呂が沸いておるから入ってきなされ!その間にお布団を敷いておくからのう!」

「ありがとうございます、では、お言葉に甘えて…」

そう言ってふすまを開けて部屋を出たソウジ

彼のいなくなった居間は不気味に静かになっていた。そして…

「上手く…やれよ…そうすれば…お前たちの息子は…」

「はい…仰せのままに…」

怪しく光る巨大な目と会話する老夫婦の姿があった…

12名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:52:26 ID:gZebox3c0
深夜、ソウジが眠る部屋に入る老夫婦、その手には料理で使われるであろう包丁が握られていた
ゆっくりソウジに近づく2人、十分近づき手に持つ包丁を振り上げ、そして……

ザクッ!

ソウジ目がけて振り下ろす2人、だが手ごたえが妙なことに気が付き布団を捲りあげるとそこにはソウジの死体は無く、代わりに枕とソウジの荷物と思わしきバックが置いてあった

「やはりそうか」

後ろから聞こえた声に老夫婦が振り返ると壁にもたれかかったソウジがこちらを見ていた

「馬鹿な!なぜ起きていられる!?」

「生憎キノココの胞子は俺には効かない」

草ポケモンキノココの体から取れる胞子は非常に睡眠性が強いものだ
ポケモンがすえばたちまち夢に中にご招待されるその胞子だが、効かないポケモンも存在する
それはキノココと同じ草タイプのポケモン達だった。詳しいことは解っていないが、状態異常となじみの深い彼らの中には害のある粉を無効化する体質があるのかもしれない

そしてソウジの持つクリスタル、それは草ポケモン「ジュカイン」の力を持つものであった
その影響を人間の状態でも受けるソウジは、そういったものに強い抵抗力を持っていたのであった

13名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:53:07 ID:gZebox3c0
「ぐっ…」

「一体何故こんなことをした?今まで行方不明になった人間たちもこうやって殺してきたのか?」

「キエェェェェ!」

ソウジの質問に答えず、代わりに奇声を上げて襲い掛かる2人
ソウジは2人の持つ包丁目がけて蹴りを入れる、カツンッという気味の良い音がなり、2つの包丁が回転しながら飛んで部屋の畳に突き刺さった

「質問を変えよう…今から数年前、この村の近くで事故があった」

「!!!」

明らかに顔色の変わった夫婦を見てこの事件が自分の立てた予想通りの物であると確信したソウジはそのままかつてこの村の近くで起きたとある悲しい事件の話を続けるのであった…

「その事故とは当時この村にやってくる唯一のバスが近くの谷に落ちてしまったというものだ、結果運転手含めバスの乗客は全員死亡、バスの路線も廃止されこの村のさらなる過疎化が進んだ、だがしかし…」

「止めろ!止めてくれ!」

俺は老夫婦の叫びに耳を貸さず話を続ける、彼らも辛いだろう、しかし認めなければならない

どんなに目をつぶった所で、辛い現実は変わらないという事を…

14名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:53:40 ID:gZebox3c0
「その事故の真の不幸は……乗客のほとんどが、当時この村に里帰りしようとしていた若者だった所だ」

「………」

俺の言葉を聞き力なく項垂れる夫婦、どうやら俺の予想は完全に当たっていたらしい

「この事故の犠牲者にお前達2人の息子もいたんじゃないのか?」

「違う!あいつは…タイチは死んでなんかいない!」

そう言う老人だったがその目は完全に動揺していた、同時に涙も浮かべている
きっと事故当時の事を思い出しているのだろう、俺はそんな彼らに向かって叫ぶ

「現実を認めろ!お前たちの息子は死んだんだ!帰っては来ない!」

「違う!タイチは帰って来る!お前さえ殺せば…!」

「何……?」

老人の言葉と共に背後に感じた殺気、咄嗟に振り向いた俺はとんでもないものを目にした

2階で眠っていた俺が振り向いた時そこには窓があり外の様子も覗えた。
そして外には、この村の住人と思わしき年寄りたちが大量に集まっており、その手には松明と思い思いの武器が握られていた

15名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:54:10 ID:gZebox3c0
「この村の全員がグルか!」

どうりで事件が解決しないわけだ、村全体で事件を隠ぺいしていれば警察もお手上げだ
そんな考えを浮かべた俺は、近くの老夫婦に向き直る

「なぜ俺を狙う?俺がNo,の人間だからか?」

「No,…そんなもんは知らん!ただお前を殺して金目のものを奪い取れば…」

「息子が帰ってくる、という訳か……なるほどな、分かって来たぞ」

この事件はどうやら主犯となる男の金儲けが目的の様だ、だがこんな村でちまちまとこんなことをする理由はなんなのか?その理由についても心当たりがある俺は一気に勢いをつけると窓を破って外へと飛び出た

いきなり家から飛び出してきた俺を見て村の住人達は驚き、俺を取り囲んだまま動けないでいた
それを確認した俺は声の限りに叫ぶ

「出てこいZの人間!…いや、元Zと言うべきかな!」

「ククク……よくわかってるじゃないか…」

そんな声がしたかと思うと、老人たちの後ろから巨大な目が怪しく光りながら姿を現した
その姿は完全に人の物ではない、おそらくはクリスタルを使ってポケモンの力を得ているのだろう
幻覚を見せる、巨大な目、ここまでで得た少ない情報をつなぎ合わせればそのポケモンがいったい何なのかすぐに答えが出た

16名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:54:34 ID:gZebox3c0
「オドシシ、幻覚を見せる能力か!」

「ご明察だな、最も姿を現している時点で気づくとは思っていたけどね」

そう言って笑う男はその全身を俺に見せる、今まで目だと思っていた部分はオドシシの角であり、そこがこの幻覚を見せる要でもある
男が角を光らせると、周囲にいる老人たちの周りに若い男女の姿が現れた

「おお、ヒカリ…」

「ケンジ!ケンジ!」

「マサトや…よくぞ…」

口々に彼らの名前を呼ぶ彼らを見るにこいつらは彼らの子供たちなのだろう、皆嬉しそうに話かけている

それが幻覚であってもだ

17名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:55:00 ID:gZebox3c0

「お前はそうやって老人相手に金稼ぎをしているという訳か…クリスタルはZからの退職金代わりか?」

「そんなところだな…まぁ、こいつらの財産なんて受け継ぐ奴はいねぇからな、俺がぜーんぶ頂いてやったよ!」

「彼らの子供たちの幻を見せてか…そして財産を失いながらもまだ子供たちに会いたい彼らは…」

「お前の予想通りだよ、ここに来た人間を殺してそいつの持つ金目のものを奪って俺に献上してきたんだよ!その量に合わせて俺もこいつらの子供たちの幻を見せてやった…WinWinな関係だろ?」

「ふざけるな!一体何人の人間を殺してきたと思っている!お前たちに罪悪感は無いのか!?」

「もう止めてよ、兄さん」

その声に反応した俺が見たのはオドシシ男と肩を並べてこっちを見るヒヨリの姿だった

「兄さん、ここの人たちは辛い現実に耐えて必死に生きてきたの…少しくらいの罪は見逃してあげても良いでしょう?」

「幻が何を言う!人殺しは少しの罪どころではない!」

「目の前に愛する子供の姿が現れたら誰だって嬉しいものよ!それが死んでしまった者ならばなおさらじゃない!」

「………」

18名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:55:25 ID:gZebox3c0
「兄さんは私が現れて嬉しくないの?兄さんだって本当は……」

「黙れ、幻!」

「正直になってよ兄さん、兄さんの返事次第では私たちはこれから楽しく暮らせるのよ!」

そう言って笑いながら近づくヒヨリの幻、それを手で制すると俺は残った手で自分の最大の武器を握り締めた

「…お前はヒヨリではない、ヒヨリは死んだ!俺の目の前で、俺に願いを託して!」

「ここでならいつまでも…」

「そんな事望んじゃいない!俺の願いはただ一つ…この世界の平和だけだ!」

思い出すのはヒヨリが死ぬ間際に俺にむかって呟いた言葉

ーーーー兄さん、どうか…

「『私の分までたくさんの人を幸せにしてね』お前が本物のヒヨリならそんな自己中心的な事を言うはずがない!だから消えろ幻!お前は…ヒヨリじゃない!」

19名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:56:06 ID:gZebox3c0
「…無意味、なようだな」

男の言葉と同時に消えるヒヨリ、その奥にいる男を睨みながら俺はクリスタルをその手に掴む

「ほう、俺と同じ力を持つのか…ふふふ、それを手に入れれば俺はまた強くなれるな…」

もう何の反応もしない、俺が決意したのはただ一つこいつはここで俺が裁くという事だけだ

だが、何か叫びたい気分だった。無意味なことでもいい、だが理性を保つためにできたら意味のある言葉が良い……

(ああ、そういえば…)

あの男は叫んでいたっけか、戦う前、力を行使する前に…

(…あいつなりの戦いへの覚悟を表したものなのだろう)

少し、ほんの少しだけ納得した俺はクリスタルを手に奴と同じ言葉を口にした。
決して憧れた訳じゃない、ただ何となく……叫びたかっただけだ

20名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:56:17 ID:gZebox3c0
「変身…!」

21名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:56:40 ID:gZebox3c0
光が俺を包む、暖かく、優しい光、そして…

「覚悟はいいか?お前はここで終わりだ」

剣を持ち、切っ先を相手に向ける。
男は動揺も無く俺にむかって走ってくる、それを迎え撃つ俺

ヒヨリの名誉と願いを守るために…決して負けられない戦いが始まった

22名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:57:05 ID:gZebox3c0
「はぁぁぁ!」

「遅いっ!」

接近と共にオドシシの技、思念の頭突きを繰り出す男。俺はそれを跳び上がって回避しながら男の背中を切りつける

「ぐわっ!」

情けない悲鳴を上げて倒れる男
思った通り、こいつは戦闘は得意ではないようだ

「一気に畳み掛けさせてもらう!」

そう言って剣の連撃を繰り出す俺、男も自らの角で応戦するが隙は多い。俺はその隙をついて男の胴に深い斬撃を与える

「ぐっ!」

そう言って後ずさる男に更なる攻撃を加えようとした俺だったが突如男の角から発せられた光を浴びて目を瞑る
光が消え、目を開けた俺が目にしたのは俺を取り囲むオドシシ男の姿だった

23名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:57:28 ID:gZebox3c0
「くっ…怪しい光か!」

「正解…ククク、どれが本物だかわかるかな?」

取り囲む男達は俺目がけて突っ込んできた
それを回避し続け、隙あらば剣を振るう俺だったが…

「残念!それは幻だ!」

「ぐっ!」

その背後からの攻撃を受けバランスを崩す、何とか包囲を抜け出そうと跳んでみたが、それも読まれ跳び上がった男たちに叩き落された

「どうした?形勢逆転だな!」

このままではまずい、何とかしなくては…
俺は深く息を吸い、吐いた。心を落ち着け冷静さを取り戻した俺は目を瞑る

24名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:57:46 ID:gZebox3c0
(目で判断するから翻弄される…視覚以外の感覚で奴を捉える!)

神経を集中し相手の正体を見切る、徐々に近づく気配を感じ俺は攻撃の準備を整える…そして

「これで終わりだ!死ね!」

そう言って飛び掛かる男たちを無視して、俺は剣を抜き自分の信じて攻撃を放つ
振るった剣から放たれる緑の旋風、「リーフストーム」は何もない夜闇を切り裂き進み、何かにぶつかった

「ば、馬鹿な…なぜ俺の居場所が分かった…?」

リーフストームを喰らった男はそのまま後ろに倒れた。と、同時に消える男たちの幻影

「どうやら、姿を隠して念力で俺を攻撃していたらしいな」

男との距離を詰め剣を振り上げる

「終わりだ」

そう言って止めを刺そうとした俺だったが、後ろからかけられた声に動きを止めた

25名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:58:17 ID:gZebox3c0
「待ってください!わしらの、わしらの希望を奪わんでくだされ!」

「息子に会えるのはわしらの希望なんです!」

「どうか、どうか見逃してくだされ!」

口々に俺に懇願する老人たち、それを見たオドシシ男は勝ち誇った様に俺に言った

「さぁ、どうする正義の味方?俺を倒せばこいつらは生きる希望を無くす。お前にそんなことでき…」

そこまで言った所で、男は口を閉じた。正確には何も喋れなくなっただが
なぜなら……俺がその角を真っ二つに切り裂いたからだ

「あああ!」

「切らないでくれ!頼む!」

老人たちの声を無視して、俺は剣を縦に振る。オドシシ男は後ろに倒れ気絶し…クリスタルが真っ二つに割れた

「あ、ああああああああああ…」

26名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:59:03 ID:gZebox3c0
泣く老人たちは俺を恨むように睨んできた、そんな彼らに向かって俺は懐からとある物を取り出しながら話す

「この人間たちに見覚えはないか?」

「…!」

「ある、に決まってるな。お前たちが殺した人間たちだ!」

そう言って手に持った写真を投げつける俺、写真は宙を舞い老人たちの元へと落ちて行った
写真に写る人々は皆笑顔だ、幸せを噛みしめ、精一杯生きている

この後の自分の運命も知らないで…

「見ろ、この男には婚約者がいた。警察に届け出たのはその婚約者だ!」

「うぅ…」

「こっちの男には妻と子供がいる!家で父の帰りを待っているそうだ。こっちの女性はこの村で消えた親友を探しにここに来た!」

「や、止めてくれ…」

「そしてこの男には…この男には年老いた親がいる。一人身ながらも両親の世話をする心優しい男だったそうだ」

「止めてくれ!よしてくれ!」

「ふざけるな!お前たちは知らなければならない、この人間たちがどんな人生を生きていたのか…お前たちは何を奪ったのかを!」

「………」

27名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:59:26 ID:gZebox3c0
「人間には誰しも大切な者がいる。家族、友人、恋人……そんな存在が急に消える悲しみはお前達は良くわかっているだろう!」

「それでも…わしらは息子たちに会いたかったんじゃ!」

「その行動が!一体何人のお前たちを作り出したと思っている!」

「っ!」

「確かに俺はお前達の希望を奪った、だがな、お前たちも俺と同じ…いや、俺以上の人間の希望を奪ったんだ!」

「う、ううぅ、うわぁぁぁぁぁ……」

俺の言葉にこの村の住人達は俯いて涙を流し始めた。俺はそんな彼らに背を向けて歩き出す

「待ってくれ!わしらはどうなる?警察に捕まるのか?」

「警察がこんな事件を認める訳がない、お前たちはこの村で生きていくだけだ…これからも変わらずにな」

「……そうか」

28名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 17:59:51 ID:gZebox3c0
「1つだけ言っておく、自ら命を絶つような真似はするな」

「お見通しか…」

「それがお前たちにできる唯一の罪滅ぼしだ、お前達のせいで人生が変わってしまった人間はごまんと居る。もしその人々に申し訳ないと思うのなら生き続けろ、お前たちが死ぬその日までな…」

「………」

返事を聞かず、俺は村の出口へと足を勧めた、途中振り返ることはしなかった。
これから彼らがどうするかは彼らの自由だ、俺が口出しする事は無い…だが

「生きろ…」

そんな呟きが勝手に俺の口から出ていたことに気が付いたのは、村を出てしばらくしてからだった……

29名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 18:00:25 ID:gZebox3c0
俺は決して褒められるような立派な人間じゃない、だが、一つだけ決めていることがある
それは、ヒヨリの愛したこの世界を命を賭けて守り続ける、という事だ

(それが、きっと俺にできる皆を幸せにする方法なんだ…)

思いを噛みしめ、自分のポケナビを手に取ると着信が着ていた、電話にでる

「・・・ソウジか?すまん、お前に頼みたいことがある。俺は別地方から戻っている最中だ、俺にはできそうにない」

「わかった。内容は?」

長年の親友からの頼みを聞き、新たな任務に向かう俺

「いつもすまないな、ソウジ…」

「気にするな、それが俺の使命だ」

その言葉を最後に電話を切る。
行かなくてはならない、どこかで誰かの希望が消える前に…

30名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 18:00:58 ID:gZebox3c0
俺は歩き出す、自分の進むべき道を
誰かの進むべき人生という道を照らし、守るための道を

俺は戦い続けよう、これからもずっと…

それが俺のそして妹の…願いだから

ヒヨリ…俺は誓うよ、いつかこの世界を平和にする。
俺の誇りと、あのひまわり畑に賭けて、絶対に…

No,外伝 ソウジ編 完

31名無しのデデンネ:2015/06/24(水) 18:03:29 ID:gZebox3c0
外伝ストーリーソウジ編いかがだったでしょうか?これからもちょくちょく更新していきたいと思います

サブキャラはこれからもどんどん出していきます。もしその中でこのキャラの活躍が見たい!っていう物があればご一報をできる限り優先しますので

読んで下さりありがとうございました。本編共々、これからもよろしくお願いします

32名無しのデデンネ:2015/06/25(木) 00:21:31 ID:n89yLdOs0
ひよりのせいでボクっ娘に目覚めてしまった絶対に許さない

33名無しのデデンネ:2015/06/25(木) 04:51:24 ID:RFGct0e60
ひより可愛かったですよね…
話は変わりますが最後ソウジに電話をしてきたのは誰だったのでしょうかね?ヒントはひよりの恋人…おや、誰か来たようだ

34名無しのデデンネ:2015/06/25(木) 08:08:10 ID:n89yLdOs0
ウンメイノー
ネタ曲扱いされてるけど結構好き

35名無しのデデンネ:2015/06/25(木) 08:13:40 ID:RFGct0e60
本編登場はまだまだ先ですが、カッコ良くて好きなキャラなので力入れていきますよ!
次は多分兄弟どちらか編ですね、もう少し先で書けると思います


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