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新番組!ポケットモンスターTHENo,(ナンバース)

1名無しのデデンネ:2015/04/28(火) 03:56:38 ID:7bCORgEk0
ポケモンと人間が平和に暮らす、「カルナダ地方」
今、ここで巨大な悪の陰謀が動き出そうとしていた。
記憶のない男「ツカサ」は自身に秘められた過去を紐解きながら、仲間たちとともに悪の陰謀と運命に立ち向かう!

人間がポケモンに変身する!?衝撃のNEWヒーローの誕生を見逃すな!

新番組「ポケットモンスターTHENo,」日曜朝8時から放送スタート!
誰も見たことのない冒険が、今、始まる。

193名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:31:37 ID:AjtPvAv60
一杯食わされた屈辱に震えるオルファ、怒りと共に再び光線を繰り出そうとするが…

ザシュッ!

そんな音と共に自身の腕に感じる痛み、彼女の腕には水で出来た手裏剣がいくつも刺さっていた

「いつの間に…?」

それに気を取られたオルファは一瞬コウタから目を離した、その一瞬を見逃さないコウタは瞬時に距離を詰める
再びコウタを見たオルファは、すぐ目の前にまで接近していたコウタに対して何の抵抗もできなかった

「はっ!」

「ううっ!」

「オルファ!」

素早い動きで繰り出された飛び蹴りを喰らい吹き飛ぶオルファ
その姿を見たグロンが彼女に向かって叫び、コウタに向かって攻撃を仕掛けようとする

194名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:32:05 ID:AjtPvAv60
「ねぇ、聞いてなかった?よそ見はしない方が良いってさ!」

「しまっ!」

そんな彼女に対して拳を繰り出すケンタ、不意を打たれた形になったグロンはなす術も無く攻撃を喰らう

「ぐ、うっ…」

胴に拳を撃ち込まれ後ずさるグロン、そんな彼女に対して、ケンタは静かに告げる

「本当は女の人を傷つけたくなんかないんだけどね…でも、みすみすやられるつもりも無いし、仕事は完遂するのがモットーだからさ」

「うううぅぅ…」

呻くグロンはケンタが変身したポケモンの正体を考えていた

今の技は格闘タイプの技「いわくだき」だろう、ここまでのダメージを与える威力…グロンはケンタが変身したのは格闘タイプのポケモンだと考えた

ポケモンは覚えられる技の中でも得意なものと不得意なものがある
得意な技とは基本的には自身のタイプと同じタイプの技であり、そういったものは攻撃の威力が上がるのだ

195名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:32:37 ID:AjtPvAv60
逆に不得意な技でも威力は下がる事は無い、多くのポケモンの弱点を突けるように様々なタイプの技を覚えるのはポケモンバトルにおいて非常に重要なことだった
そして無論、クリスタルを使ってポケモンに変身した時の戦いでも同じことが言える

防御面が薄い自分とはいえここまでのダメージを与える威力…それはタイプ一致の技を使ったから
グロンはそう考えたのである

(いける…相手が格闘タイプのポケモンなら私の方が断然有利!)

グロンがそう思う根拠は彼女が変身したポケモンにある
彼女が変身したのは氷・エスパータイプのポケモン「ルージュラ」である。格闘タイプの弱点を突けるエスパータイプのポケモンならばこちらが優位のはずだ

(待っていなさいオルファ、この男を倒してすぐに援護してあげるから!)

苦戦する妹への思いを胸に、彼女はケンタに対して攻撃を仕掛けるのであった

196名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:33:03 ID:AjtPvAv60
「何でよ!何で倒れないのよぉぉぉ!」

その頃、コウタと戦うオルファは完全にコウタに圧倒されていた

自身の放つ攻撃はことごとく回避され、距離を詰められて打撃を受ける
時に策を用いて攻撃を当てたかと思えばそれは身代り、気が付いたときには自分のすぐそばにいるコウタに強烈な一撃を受ける…
そんな戦いを続けていた彼女は屈辱と怒りで我を忘れて無謀な攻撃を繰り返していた

「死ね!死ね!死ねぇぇぇぇぇ!」

自分が負ける筈がない、下賤で頭の悪い、戦いと女をモノにする事しか考えない女を見下す男なんかに!
そう考える彼女こそが男を下に見ているのだが今はその事は置いておこう

「くらえぇぇぇぇぇ!!!」

光線を回避し続けるコウタ、そのコウタが自分の真正面で動きを止めたのを見てグロンは最大威力のサイケ光線を放つ

「これで終わりよ!」

197名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:33:38 ID:AjtPvAv60

コウタを覆い尽くすほどの大きさの光線が唸りを上げてコウタに迫る
オルファだけではない、グロンもアキもツカサも…その状況を見ていた人間がコウタの危機を感じたその時…

「ああ、めんどくさい」

コウタはそんな呟きと共にその手に水で出来た刀を手にして縦一閃に刀を振る、すると…
すぐ目の前まで来ていた光線が左右に分かれた。コウタに当たることの無くなった光線は両脇の小屋に当たると爆発と共に消え去った

「嘘よ…こんな…こんなこと…」

自身の最強の攻撃が破られたことに呆然とするオルファ、そんな彼女に向かって悠々と歩きながら近づくコウタ

「私に近づくな!」

後ろに下がりながらサイケ光線を放とうとするオルファだったが、その手から光が放たれる事は無かった。
力を使い過ぎたのだ、それでも必死に攻撃を仕掛けようとするオルファ
だが、もはや勝敗は明らかだった

「来るな!来るなぁぁぁ!」

やっと放たれたサイケ光線はコウタに向かって飛んで行った。だが…

「はぁ…まだ気が付かないんですか?」

コウタはそれを片手で弾き飛ばすと、近づきながらオルファに問いかけた

198名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:34:00 ID:AjtPvAv60
「貴方、エスパータイプのゴチルゼルですよね?じゃあ、俺は何に変身したと思います?」

今まで怒りで熱くなっていたオルファはそんなことを考えもしなかった
圧倒的実力を持って迫るコウタに対しての恐怖で冷静になった彼女は、今までのコウタの特徴からコウタの変身したポケモンの正体を考える

みがわり、忍者の様な身のこなし、そして水手裏剣…

そこまで考えた所でオルファはその答えにたどり着き、同時に絶望した
コウタが変身したのは、自分とは相性最悪の悪タイプを持つポケモン、そして、忍者の様な身のこなしと技が揃う水タイプのポケモン…

「ゲッコウガ…」

「正解ですけど…遅すぎましたね」

最初から分の悪い戦いだった、しかも完全な力量差がある上での戦い…
その事に気が付いた彼女は何とか逃げようとしたが、その背中には大きな壁が立ちはだかっていた

もう、逃げられない
その思いが今まで高圧的だった彼女をパニックに陥らせた

199名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:34:24 ID:AjtPvAv60
「こ、来ないで!来ないでぇ!」

震えながら懇願するオルファ、しかしコウタはその声に耳を貸さず、両手に黒い波動を作り出した

「最後行きますよ、覚悟はいいですか?」

「ま、待って!止めてぇぇぇぇ!」

オルファの絶叫に対して、コウタは冷やかに言葉を返した

「答えは聞いてない」

その言葉と共に放たれる攻撃、名を「悪の波動」
その攻撃が自分に向かって飛んで来るのを、オルファは絶望と共に見ることしかできなかった

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ドッカァァァァァン!

200名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:34:49 ID:AjtPvAv60
悲鳴と爆音が轟き、グロンは妹オルファの敗北を知る

「よそ見してる余裕があるのかい?」

ケンタに向かい合うと、妹の敵とばかりに技を繰り出す

「この技からは逃げられないわよ!」

そう言って念力を繰り出す彼女、するとケンタを中心にして、彼の周りに紫色の輪が出来上がった

「サイコウェーブ…この技であなたの胴と足をわかれさせてやる!」

宣言と共に再び念力を放とうとする彼女だったが…

ドゴォォォォォン!

轟音が響き、ケンタが爆風に包まれる
自分が何もしていないのに何が起こったのか?グロンはただ、爆風と共に巻き上げられた黒煙が晴れるのを待った。そして…

201名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:35:22 ID:AjtPvAv60

「最初に言ったよね?俺はかなり強いって」

煙が晴れたとき、ケンタは首筋のオレンジ色の模様が描かれた部分から炎を燃え上がらせながら立っていた。
周りを囲っていたサイコウエーブはその炎によって掻き消されたようだ

「炎?貴方、格闘タイプのポケモンじゃあ…?」

「俺がかい?残念だけど違うよ、俺が変身したのは炎タイプのポケモンさ」

その言葉に自身の考えが間違っていたことに気が付いたグロン
そして同時に恐ろしい事実に気が付く

さっきのいわくだきがタイプ一致技で無いのにあの威力をもっていたのなら、炎タイプの技の威力は一体…?

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」

そこまで考えたグロンは恐怖と共に後ろへ駆け出した
自分は氷タイプを持っている、弱点の炎タイプの技を受けて無事でいられるはずがない

202名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:35:46 ID:AjtPvAv60
「た、助けてぇぇぇぇ!!!」

妹同様情けない声をあげながら逃げるグロン、そんなグロンを見てケンタは呟く

「ゴメンね、俺も戦意を無くした相手、それも女の子を後ろから攻撃なんてしたくない、けど…」

そう言ったケンタは自分とアキによって倒され元の姿に戻ったアンノーン兵たち…この街の住人たちを見る
男性女性が入り混じったその中には、年端のいかない子供の姿もあった

「こんなにたくさんの人を苦しめた君を!許すつもりは毛頭無い!」

怒りの声と共にオレンジ色の炎が巻き上がる

「こいつで決まりだ…お熱いの、かましてやろうか!」

そう言って駆け出すケンタ、共に猛スピードで駆ける彼を回転する炎が包み込む!

「火炎車ッ!」

繰り出した技を喰らったグロンは動きを止める、そしてケンタの走った場所から火柱が吹き上がり、それに包まれたグロン
火柱が消え去った時にはグロンは人間の姿に戻り、クリスタルもひび割れていた

203名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:43:15 ID:AjtPvAv60
「ふぅ…終わり!」

「あーめんどくさかった!」

そう言ってこちらに近づく兄弟、呆然とするツカサはケンタに対して一言呟くのが精一杯だった

「バクフーン…か?」

「ん?正解!」

そう言って笑うケンタはツカサに手を差出してくる

「という訳で君たちの旅に同行させてもらうよ!よろしくね、ツカサ!」

しばしその手を見ていたツカサ、しかしケンタ同様笑顔を浮かべるとその手を取ってケンタに応える

「ああ!こっちこそよろしく頼む!」

「ま、仕事ですからね!」

そう言って肩をすくめるコウタは、町から出るルートを探し始める。
こうして頼もしい仲間を加えた一行は、再びオオタワシティに向かって歩き始めたのであった!

第4話完!

204名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:43:42 ID:AjtPvAv60
次回予告!
ケンタとコウタの護り屋兄弟という仲間を得た一行!
だがその前ににZ四天王の1人シンゲンが立ちはだかる!
強敵シンゲンを前に苦戦するツカサを運命が新たなステージへと導く!
次回「風林火山と蒼き狂獣!」

「この姿は…まさか!」

「ダメだツカサ!目を覚ませ!」

この物語に新たな1ページが刻まれる・・・

205名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 03:47:03 ID:AjtPvAv60
第4話投稿しました。お付き合いありがとうございます!
兄弟の紹介はまた今度します、兄の方は人によっては全く元となる人間が分からないでしょうからね(笑)

次回は中間フォーム登場回!早すぎやしませんか?とか思われるかもしれませんが、仲間の強化も合わせるとここしか無い!と思いました、見逃してください!

206名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 15:34:20 ID:.RJHuuqk0
乙です!
ライコウ雷の伝説見てないから誰だかry

207名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 15:59:58 ID:w5oUWGOY0
やはりあなたとはいい友人になれそうですね(笑)
はい、ケンタのモチーフはアニポケ「ライコウ雷の伝説」の主人公ケンタとそのパートナーバクフーンです。
実はこのケンタ、設定では全然別の名前で変身ポケモンも違うものでした。
ツカサの設定変更に伴いキャラをいじくった結果、今のケンタが生まれたわけです。
因みに設定段階ではユウスケという名前で変身ポケモンはラグラージを予定していました。モチーフはお分かりだと思いますがね(笑)

208名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 16:03:38 ID:w5oUWGOY0
ケンタは優しい性格で本来は戦いを望む人間ではありません。しかし、一度覚悟を決めれば力を奮う事をためらわない、けど葛藤も抱えている。そんな男です。
護り屋という仕事も彼が興した会社で社員は彼の兄弟のみの会社とも呼べない代物ですが仲良くやっています
ツカサの善き相棒として活躍してもらう予定ですから、楽しみにしていてください

209名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 16:07:31 ID:w5oUWGOY0
次にコウタですが、彼も元々は登場しない予定でした。
変更の際ソウジが旅の仲間から外れたので一人くらい冷静なスピードタイプの戦闘ができるキャラを作りたいと思い産み出しました
モチーフは名前関係なく「仮面ライダー555」の主人公「乾巧」です。
何だかんだで困ってる人を見捨てられないたっくんの人の良さを持つコウタ。兄とは違い葛藤なんかはしませんがキャラがかなり立っているので動かしやすくて好きです(笑)

210名無しのデデンネ:2015/06/19(金) 16:11:24 ID:w5oUWGOY0
ゲッコウガにしたのは個人的に好きだからです(笑)でもスピードタイプということにしっかりあってくれたので結果オーライだったと思います

さて、お気づきの方もいらっしゃると思いますがケンタは長男、コウタは三男です。少なくとも間の次男がいることは確定しています、他にも下に弟はいるのでしょうか?それはこの先のお話で語らせていただきましょう

なお、全員決め台詞としてなにかを持っています、誰のか分かりやすいとは思いますが楽しみにしていてください‼

ここまでお付きあいいただきありがとうございました、また次回お会いしましょう!

211名無しのデデンネ:2015/07/06(月) 00:55:54 ID:5yEAZsFY0
「本当に行くつもりですか、親方様?」

「あたぼうよ!そいつがどこまでやるか試してみてぇしな!」

暗い道の中、話し声が聞こえた。
ずんずんと響く足音が話している男の巨大さを物語っている、その男に向かって話すのも男の声だ。
不意に、別の男の声が聞こえた。

「諦めろよフウ、親方様がこう言ったら変えるはずがないんだから」

「分かってるよサンゾウ。確認だけさ」

「お前ら、男だったらビシッとしてついて行きなよ!女のアタイでさえこんなに堂々としてるんだからさ!」

少女の様な声が聞こえたと同時に、大男の後ろの人間の声がぎゃいぎゃいと騒がしくなる
その様子をにまりと笑いながら見ていた男はしばらく後真剣な表情に戻ると全員に号令をかけた

「おう!行くぞ!」

「承知!」

男の号令に同時に返事を返した3人は大男に並んで歩き始めた

「さて…ツカサとやらがこのシンゲンと三本刀相手にどこまでやれるか試させてもらうぜ」

歩きながら楽しそうに、シンゲンは笑った



第5話 「風林火山と蒼き狂獣!」

212名無しのデデンネ:2015/07/06(月) 00:56:26 ID:5yEAZsFY0
「で?何なんだ護り屋ってのは?」

「守るのは人、ポケモン、生き物以外でも何でも有!ボディーガードから警備員まで何でもやる俺が始めた商売さ!」

ケンタとコウタの兄弟と合流したツカサとアキは、徒歩で首都オオタワシティを目指していた
途中、ツカサが聞いたのは自己紹介の時に言った「護り屋」についてだった

「俺たちの一族はクリスタルの力を使って何かすることが決まっててね、俺が始めたのがこの仕事って訳さ…弟たちと一緒にね!」

「…良いのか?それ」

「悪事に使ってるわけじゃないしね、基本はクリスタルの事は秘密だよ」

「なるほどなぁ、世の中は広いもんだ」

話に区切りをつけたケンタとツカサは地図を見て自分たちの居場所を確認した

「…あともう少しで小さな町がある。そこで休憩といこう」

「ああ」

ケンタの提案を受けたツカサ達一行は、その町に向かって歩き始めた

213名無しのデデンネ:2015/07/06(月) 00:56:49 ID:5yEAZsFY0
しばし後、たどり着いた町のレストランで状況を確認する4人と1匹

「…あともう少しで首都だ。ここまで追手がいない事を考えると順調な旅だと言えるね」

「逃げ切った、と考えても良いのか?」

「No、ですね。こういう時、相手は最終防衛ラインを作ってそこに戦力を集中させるのが定石です」

「やっぱりそうだよなぁ…」

「ぴちゅ?」

難しい顔をする面々を眺めるピチュー。ツカサはその状況をしばし考えた後発言した

「つまり、そこを抜けたら勝ちって事で良いのか?」

「概ねあってるよ、でもかなり厳しい戦いになるのは間違いないだろうね」

「分かってるよ。でも、やるしかないんだろ?」

「まぁ、避けられるものでもありませんしね…めんどくさいけど」

「ツカサの言う通りだな、このまま進むしかないんだ。結局は戦いになる、だったらそこを突破するしかない、そうだろ?」

アキの言葉に兄弟は顔を見合わせると笑いながら頷いた
行動方針が一応決まった所で、アキは水を取りに席を立った。

214名無しのデデンネ:2015/07/06(月) 00:57:13 ID:5yEAZsFY0
「ねぇ、ツカサとアキって恋人同士かい?」

「は…?」

いきなりの言葉にポカンとしたツカサだったが、笑いながら否定した

「違うさ、でもまあ、信用できる女ではあるな」

「…ふふふ、俺たちお邪魔虫だったかもねケンタ」

「かもね、凄くお似合いの二人だと思うよ。お世辞抜きにね」

楽しそうな兄弟にからかわれると少し気恥ずかしくなってきた
否定しながら顔を逸らしたツカサの耳に、女の物と思える怒鳴り声が聞こえてきた

気になったツカサは席を立つとその声の方向へ歩き出したのであった…

215名無しのデデンネ:2015/07/06(月) 00:57:33 ID:5yEAZsFY0
「だから!あんた、今この人を突き飛ばしたよな!謝れって言ってんだよ!」

アキの視線の先には小さな女性がいかにもガラの悪そうな男に向かって怒鳴っている姿があった
よく見れば、女性の隣にはお腹の大きな妊婦と思わしき女の人が尻もちをついていた、どうやら男に突き飛ばされたらしい、肝心の男はガムを噛みながら小さな女性を見下していた

「ウゼーんだけど?邪魔だから退かしただけじゃん」

「お腹の赤ちゃんに何かあったらどうするんだい!」

「シラネーよ、バーカ」

「なっ!」

舐め腐った態度の男に怒り心頭の女性、その背後からまたしてもガラの悪そうな男たちが現れた

「なに?どしたの?」

「この女ウゼーんだよ。ちょっとしたことでギャーギャー騒いでさ」

「マジか。じゃ、攫っちゃいますかね?」

「OK!身の程を教えてやろうぜ!」

216名無しのデデンネ:2015/07/06(月) 00:58:37 ID:5yEAZsFY0

なんだかよくない流れだ、さすがに見ていられなくなったアキは男たちを止めるべく声をかける

「お前達いい加減にしろ!悪ふざけにも程があるぞ!」

「ん?おお!新しい女はっけーん!」

「しかも断然いい女!」

どうやら効果は無かったらしい、それどころかさらに興奮した男たちはアキと女性を囲んできた

「なぁ、怪我したくなけりゃ黙って着いてきな」

「イイコトしようよ…一緒にさぁ!」

そう言って笑う男達に溜息をついたアキはもう実力行使で黙らせようかと思いながら行動を決めかねていた。その時

「どうしたフウカ?揉め事か?」

「サンゾウ、引っ込んでな。これはあたいの問題さ」

フウカと呼ばれた女性の知り合いと思わしき男がやってきたのだ、男はそうか。と言って引き上げようとしたが、ガラの悪い男たちはその男を取り囲んだ

217名無しのデデンネ:2015/07/06(月) 00:59:50 ID:qSAtZuY20

「人を呼ばれちゃ困るんでな……大人しく寝とけや!」

「…フウカ、俺も巻き込まれちまったみたいだ。良いか?」

「好きにしなよ、あんたの肩慣らしくらいにはなりゃあ良いけどさ」

「ごちゃごちゃうるせえぞ!」

余裕を崩さないサンゾウと呼ばれた男に苛立ったのか、ガラの悪い男が急に殴り掛かる!だが……

拳の先のサンゾウはそのパンチを紙一重で躱すと、お返しと言わんばかりに男の顎に拳を突き入れた
ガクンと震えた男はそのまま動かなくなり……数秒後倒れた。

他の男たちと一緒に

「ああ、だめだ!弱すぎる」

「だと思ったよ」

サンゾウの動きを見ていたアキはその目を疑った。
速く鋭い動きでものの数秒の間に4人もの男をKOしたその動きは、まさに神業だった

218名無しのデデンネ:2015/07/06(月) 01:00:17 ID:5yEAZsFY0

「あ、ああ…いや…」

フウカという女性に謝られたアキ、先ほどのサンゾウの動きに驚いていたため空返事だったが、フウカは満足したようだった。

「じゃ、親方様の所へ…ん?」

言葉を区切ったフウカの視線の先を見れば、こちらに向かって歩いてくるツカサの姿が見えた
きっと騒ぎを聞きつけてきてくれたのだろう。手を振ろうとしたアキだったが、その前にサンゾウが溜息と共に吐き捨てるのが先だった

「やれやれ…まだ仲間がいたのか」

ファイトスタイルを取ってツカサへと駆け出したサンゾウに対して否定の言葉をかける間もなく、ツカサはサンゾウにパンチを繰り出されていた……

219名無しのデデンネ:2015/07/06(月) 01:01:57 ID:5yEAZsFY0
「諦めろよフウ、親方様がこう言ったら変えるはずがないんだから」誤
訂正↓

「諦めろよリン、親方様がこう言ったら変えるはずがないんだから」正

220名無しのデデンネ:2015/07/07(火) 19:55:16 ID:1nhlFH4.0


続き気になるな。

221名無しのデデンネ:2015/07/15(水) 00:06:41 ID:Uhk4lUKI0
生存報告
畜生、書く時間がなくて投稿できない!しばし時間をくれ!

222名無しのデデンネ:2015/09/02(水) 01:59:50 ID:1BgllLmA0
「お、おい!ちょっと待て!」

「へっ!その手は食わねぇよ!」

ツカサの制止の言葉も聞かずにサンゾウはその鋭い拳を繰り出してきた
右、左、また右……さすがのツカサも躱すことが難しいパンチの連打に、苦しさを感じ始めた

「へぇ…さっきの奴らとは違うじゃねぇか!なかなかやるな」

相変わらずパンチを出し続けながら話を続けるサンゾウ、ツカサもさすがにこの状況に苛立ちを感じ始めた

「…話を聞かないお前が悪いんだからな」

そう宣言し拳を握る
狙うは左のストレートが来るその一瞬、ツカサはタイミングを計りながら待った
そして………

「おらっ!」

左ストレートが繰り出された瞬間、ツカサも拳を突きだそうとした……その時!

「そこまでだ!」

野太い、威厳を感じさせる大声が響いた
ツカサも、サンゾウも、フウカとアキも、その場にいた全員が動きを止め、声のした方向に顔を向けると

「お、親方様!」

そこにいたのは熊の様な大男だった
歳は30歳くらいだろうか?身長は2メートルは超えているだろう、腕も丸太のように太く、顔はその姿にふさわしく厳つい顔立ちであった

223名無しのデデンネ:2015/09/02(水) 02:00:07 ID:1BgllLmA0
「兄ちゃん、悪かったな。……サンゾウ、お前の思い過ごしだ。この兄ちゃんは、彼女が心配でやってきた恋人思いの良い男さ」

「なっ!?」

冗談交じりの言葉をサンゾウとツカサに向けた大男は、そのままアキとフウカに向き直った

「フウカ、自分の行動は自分でケツ拭けって言ってるよな?サンゾウはまだしも、この姉ちゃん兄ちゃんに迷惑かけたらいかんだろうが」

「すいません…」

体格差もあるが小さく見える体をさらに小さくしてフウカが反省しているようだ
サンゾウもばつの悪そうな顔でこちらを見ていた

「悪かったな、勘違いしてよ」

「いや…わかればいいさ。こっちも連れを助けてくれてありがとうな……それじゃ」

ツカサはアキを連れてその場から去った
その後ろ姿を見ながら、大男は呟く

「骨がある男だな……出来れば部下に欲しい所だ」

「ええ……あいつ、俺の拳に向かって怯みもしなかった。それどころか逆に向かってくるだけの気概がありましたね」

「女の方も良い奴でしたよ、まっすぐで、凛としてるっていうか……名前、聞いといたほうが良かったですかね?」

「いいさ、何かよくわかんねぇが、あいつとはまた会う気がするんだ。なんとなく、な………」

そう言って踵を返しながら残る最後の部下の所に大男………Z四天王『シンゲン』は向かった

224名無しのデデンネ:2015/09/04(金) 23:39:37 ID:3s0PlWkM0
おお……いずれ戦いそうだな。


久々の更新嬉しい

225名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:29:52 ID:hWvNrf9I0
「もう少し……もう少しで安全圏内だ」

ケンタは地図を見ながら周囲を警戒しつつ先へと足を進める
続いてツカサ、アキ、コウタの順で歩く彼らは、Zの手が及ばないであろう町をめざし徒歩で進んでいた

その安全圏内まであと少しというところまで来ている一行、だがしかし、こういう時こそ危険なのだ
防衛ラインはギリギリに敷いてある……その言葉が示す通り、Zはツカサたちの動きを止めるために後ろから追うのを諦め、待ち構える構えを取ったのだろう
文字通り、オオタワシティを目指す旅の最終決戦は刻一刻と待ち構えている。その思いが、彼らを張りつめらせていた


そして………その時はやってきた

「よう、兄ちゃん………早かったじゃねぇか、こりゃ急いで正解だな」

「え!?あ、あんたは………」

護り屋兄弟が示した安全地帯を超えるライン、そのギリギリの場所で待ち構えていた男を見てツカサは驚きの声を上げる
そこにいたのは先ほど揉め事の仲介に入った大男……つまり、シンゲンだったのだ

226名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:30:10 ID:hWvNrf9I0
「まさか、あんたがZの……」

「ああ、そういや自己紹介をしてなかったな。俺はシンゲン、Z四天王の一人に数えられる男だ」

「シンゲンだって!?」

シンゲンの言葉にツカサ以上の驚きを見せるアキ、ツカサたちはアキに視線を送り、その情報を求める

「アキ、シンゲンってのは強いのか?」

「……噂だけだ、だが、かつてNo,が総勢20名のクリスタル持ちの能力者で奴を倒そうとした時、配下の3人と合わせてたった4人で返り討ちにしたと聞く…」

「じゃ、あそこにいるのがご自慢の手下ってわけですか」

コウタが指差した先には先ほど町であったサンゾウ、フウカの他にもう一人……眼鏡をかけた男が立っていた

「まったく……町であった時に君たちが顔を覚えていればこんなに急ぐ必要も無かったのに…」

「そうブツブツ言うなよリン、男がすたるぜ?」

「そうそう!」

楽しげに会話を交わす三人とシンゲン、合わせて4人
ツカサ達と同じ人数だった

227名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:30:27 ID:hWvNrf9I0
「さて……虹色のクリスタルを持つ男ツカサ、ここから先に行きたきゃこの俺シンゲンとその配下……風林火山を倒していきな!」

「っっっ!」

堂々と構えるシンゲンから放たれる威圧感に気圧されるツカサ、しかし思い直すと懐から自身のクリスタルを手に取った

(終われない……まだ俺は自分について何もわかっちゃいない、全てを知るまで、止まるわけにはいかない!)

強い眼差しを見せるツカサに対して満足そうに微笑みながら、シンゲンも自身の黒いクリスタルを手に取る
配下の風林火山の3人とアキたちもそれに続く、そして……

「変身!」

ツカサの声に続いて放たれる光、白、黒、そして虹色……明るくとも暗くとも取れる光を放った8人は光が消えたときには既に相手に向かって駆け出していたのであった………

228名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:31:01 ID:hWvNrf9I0

「はぁっ!」

「てぇい!」

アキは自身に向かってきたフウカと戦っていた
奇しくも女性同士の戦いとなったこの組み合わせ、そして戦闘スタイルも接近戦と女性らしからぬ戦いを得意とするところも似ていた

激しい肉弾戦を繰り広げる2人、その実力は拮抗していた

(このままじゃ決着がつかない!)

長丁場の戦いになることを危惧するアキ、時間が掛かればその分援軍が来る可能性は上がってしまう、自分たちは逃げる側なのだ、時間を割くわけにはいかない
そして何より、ツカサの援護に行かなくてはという気持ちがあった。相手はZ四天王と呼ばれる男、今までの奴らとは強さが違うだろう

一刻も早くフウカを倒して協力して戦わなくては………そう考えたアキは一計を案じる、次のフウカの鋭い突きを上空に跳んで躱し、そのまま相手の背後に着地した

「てやぁぁっ!」

ジャンプの勢いをそのままに反転して飛び蹴りを繰り出すアキ、その一撃はフウカの無防備な背中に直撃……すると思われた
しかし……

「なっ!?」

フウカの髪、長く黒い美しい髪が一瞬揺らめいたかと思うと鉄の様な硬さを持ってアキの蹴りを防ぎに来た
ガキン!という音と共に止められたアキの飛び蹴り、更に髪の毛はアキの脚に絡みついて……いや、噛みついてきた

「あぐっ!?」

理解不能の事態に驚きながらもアキは急ぎ距離を取る、幸い脚はそう大したダメージを負ったわけではないが、今の一撃を止められたことに対する精神的動揺がアキの冷静さを失わせていた

229名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:31:17 ID:hWvNrf9I0
「まさか……このアタシをさっさと倒してあの男の援護に行こうだなんて考えてないだろうねぇ?」

振り向きながらアキに問いかけるフウカ、その横顔を見ながらアキは今までの戦いから導き出されたフウカが変身したポケモンの名を口に出していた

「クチート……っ!」

「ご名答、クチートの力を使う風林火山筆頭、『力のフウカ』舐めんじゃないよ!」

怒号と剣幕に押されるアキ、自分の浅はかな考えを後悔する

(何が一刻も早く倒さなくてはだ!この相手も十分強敵、私だって勝てるかわからないんだぞ!)

甘えた考えを吹き飛ばすかのように自身の頬を強くはたき気合を入れる
再び目を開いた彼女はいつもの冷静さと、力強さを持ってフウカと相対していた

「そう、それでいいんだよ……じゃ、再開といこうか!」

その声と共に一気に距離を詰める両者、お互いに考えているのはただ一つ
「目の前の敵を全力を持って倒す!」それのみだった

下手な男の戦いよりも熱く激しい肉弾戦を続ける両者の戦いは、まだまだ終わる気配を見せなかった………

230名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:31:56 ID:hWvNrf9I0
「……で?来ないんですか?」

「お前こそ、かかって来いよ」

お互いに動きを見せないコウタとサンゾウ、挑発を続けるように見える二人は互いに相手の脅威を理解していた

(………隙がない、その上こっちの動きを待ってる……これは、厄介な相手と当たったな)

(この小僧、本当にガキか?下手に動いたらそこを突いてくる、そんなヤバさを感じさせるとはな!)

にらみ合う2人、このまま何の動きも無いまま時間だけが過ぎゆくと思われたが、サンゾウが不意に口を開いた

「……お前、ゲッコウガだろ?俺はキノガッサだ、見てくれの通りボクシングが主体の戦い方だぜ」

「……なんでそんなこと伝えるんですか?」

コウタの疑問は当然だった、自分にとって不利になる情報を伝えることが何の得になるのか?
その疑問に対してサンゾウはニヤリと笑いながら答えた

「ボクシングってのは紳士の格闘技だ、俺だけがアドバンテージを持ってるってのは不公平だろ?紳士的に、平等な戦いがしたいんだよ俺は」

「悪の組織の人間が紳士的、ねぇ……」

「まぁ、笑っちまうわな!……さて、行くか!」

言うが早いがボクシングの構えを見せるサンゾウ、コウタもゆっくりと身構える、そして……

「シュッッ!」

ほんの一瞬、されど二人の間では無数の攻防が繰り広げられた一瞬、瞬き一つの間にお互いの位置をかえた二人は背中越しに会話をしていた

231名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:32:30 ID:hWvNrf9I0
「おい……お前、自分より速い奴はいないと思ってただろ?」

「………」

コウタはゆっくりと振り返りながら打たれた肩をさする
さほどダメージは無かったがサンゾウが繰り出した技、マッハパンチの速度はコウタの予測を超えたものであった

今は芯をずらして受けたがまともに喰らった場合悪タイプをもち、決して打たれ強いとは言えない自分はどれほどのダメージを受けるのか……?

コウタの表情に戦いに対する真剣さがにじみ出てきたことを確認し満足するサンゾウ

「さて……お次は避けることが出来るかな?っと………っっ!?」

余裕を見せながら振り返ろうとしたサンゾウだったが、その脚に走った痛みに顔を歪める
何事かと見てみれば、そこには水で出来た手裏剣が3つ刺さっていた

「……あんた、自分より速い奴はいないと思ってただろ?」

「っっっ!」

先ほど自分が言った言葉をそのまま返すコウタ
先ほどの攻防の中、攻撃を仕掛けていたのは自分だけではなかったのだ

「……なるほど、舐めてかかったら痛い目を見るな、これは…」

「ここからは本気で行きますよ、いいですよね?」

「上等だ!風林火山『技のサンゾウ』全力で相手になってやらぁ!」

先ほどよりもスピードを上げて向かってくるサンゾウを見据えながら、コウタは呟いた

「……答えは聞いてない」

232名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:32:56 ID:hWvNrf9I0
「最初に言っておく、俺はかーなーり、強い!」

びしっ!と指を立てながら決め台詞を口にするケンタ、対して前に立つリンは冷やかな視線を向けるだけだ

「……随分と余裕がありますね」

「ん?そうでもないよ」

そう言って笑顔で返すケンタに向かってリンが言う

「……風林火山、『知のリン』……僕の勝利の方程式は完成している」

「………」

そう言ったリンを見つめるケンタ、リンの表情からは過剰な自信も、虚勢を張っている様子も見えなかった

強いて言うならそう……問題を解いた後の学生だろうか?
検討に検討を重ね答えを導き出した後の表情、それによく似ていた

「………ん?」

そうしてリンを観察していたケンタが、不意に何かに気が付いた
自身の目の前、本当に目を凝らさないと見えないような小さな粒が浮いている、良く見てみようと思ったケンタだったが、次の瞬間にはその正体に気が付いていた

「キノコの胞子……吸えば一瞬であなたを深い眠りに誘うポケモンの技、あなたが無駄口を叩いている間に発動させて貰いました」

233名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:33:25 ID:hWvNrf9I0
再び冷やかに視線を向けるリン、自信の変身したポケモン『パラセクト』の十八番を発動した今、彼の勝利はゆるぎないものに思えた
確かに計算上、この状況ならば相手は眠りに就くだけだ、その後他の面々も眠らせてしまえば自分たちの勝ちである
リンの計算は完璧だった………ある一点を除けば

ドゴォォン!

そんな激しい爆発音にリンはつい耳を塞ぐ、そしてその音の発信源を……ケンタを再び見る

「……確かに吸ったら不味いね、じゃあ、吸う前に焼き尽くしたらどうなるのかな?」

爆炎の中から笑みを浮かべながら出てきたケンタを見ながらリンは計算を再開する。今度は、戦っている相手がかなりの強敵で、修羅場に慣れている人物だという事も含めて、だ

ケンタも笑みを浮かべているが決してリンを舐めているわけではない、その冷静な思考を乱すための策、余裕を見せ、手の内を悟られない様にしているに過ぎないのだ

ケンタを倒すための策を練り繰り出すリン
リンの策を打ち破るために自身の力を繰り出すケンタ

この二人の戦いはまるで将棋か囲碁の様な頭脳戦でありながら、この場の誰よりも疲労を伴う物であった………

234名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:33:47 ID:hWvNrf9I0
「はははははっ!やるじゃねぇか!」

「あんたこそっ!」

お互いに相手の実力を認めながら肉弾戦を続けるツカサとシンゲン
時に遠距離からの攻撃を仕掛け、時に接近して拳をぶつけ合う…
この二人の戦いは正に真っ向勝負と呼ぶに相応しいものであった

「オラァッ!」

「ぐあっっ!」

シンゲンの渾身の一撃がツカサに炸裂し、ツカサは大きく吹き飛ばされる
好機とみて追撃を繰り出そうとするシンゲンだったが、ツカサの両手に青い光弾があるのを見てその動きを回避へと切り替える

「くらえっ!」

ルカリオの、そしてツカサの必殺の波動弾がシンゲンへと向かう
回避しきれないと踏んだシンゲンは腕を前に組み防御の構えを取る、そこに、波動弾が命中した

ドォォォン!

激しい音と爆風、砂煙が舞い上がり、その威力を物語る
着地したツカサはシンゲンの方向を見やり、相手の反応を待つ

(やったか?)

ツカサのそんな甘い考えは、次の瞬間吹き飛ばされることになる

235名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:34:08 ID:hWvNrf9I0
激しい炎が吹き上がったかと思うと、自分の体に衝撃が走った
まるで巨大な鉄の塊がぶつかって来たような衝撃にたまらず吹っ飛ぶツカサ、ダメージは深刻ですぐに起き上がることは出来なかった

「くっ…うっ…」

「ツカサ!」

近くにいたアキが助けようとするもフウカに遮られ近づくことは出来ない
そんなツカサに向かって歩み寄りながら、体から激しい炎を巻き上げるシンゲン、その炎は、ケンタの物と比べても勝るとも劣る事は無かった

「結構効いたぜお前の攻撃……今度はこっちの番だ、受けきってみやがれ!」

シンゲンが自身の最大の技を繰り出す
炎を纏い、その巨体には似つかわしくない速度でグングンツカサとの距離を詰めていく!

「フレアドライブッ!」

ツカサは目の前に迫るシンゲンをみて、彼の変身したポケモン……『エンブオー』がフレアドライブを繰り出すところを思い出していた
その威力、衝撃、火力……それを考え、防御の構えを取ろうとした時………ツカサの体は宙を舞っていた

「ツカサァァッ!」

悲鳴に似たアキの声が響く、スローモーションのようにゆっくりと地面に向かって落ちてきたツカサは、そのまま2、3回バウンドした後、倒れたまま動かなかった

「……ふぅ、きついっちゃきつい相手だったな」

フレアドライブの反動を受け顔を歪ませるシンゲン、自分の勝利を確認し、後は部下の戦いの結果を待つだけとなった

236名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:34:31 ID:hWvNrf9I0
「…ゴメンよ」

「何?」

ツカサとシンゲンの戦いの決着を見たケンタは、小さくリンに向かって呟いた

「少しばかり……決着を急がなきゃならなくなった」

そう言ったケンタは次の瞬間、リンの目の前にまで接近していた
咄嗟に防御しようとしたリンだったが、無防備な胴にケンタの拳が繰り出された

「ぐえっ!」

くの字に折れ曲がった体、ケンタはそのまま肘をリンの顔面にめり込ませ、折れ曲がった体をもう一度伸ばさせる

「ふんっ!」

最後に……その姿勢のまま後ろを向いた状態で炎を纏い、ほんの数センチの距離を、全力を持って移動する
それはもちろん、リンの方向に向かってであり……ケンタの背中がぶち当たったリンは大きく吹き飛ばされていった

中国拳法、八極拳の技の一つ『鉄山こう』それを彼なりにアレンジしたこの技はいうなれば八極拳風火炎車だろうか?
自身の決め技を撃ちリンを撃破したケンタはゆっくりとシンゲンに近づいて行く

「……お次はお前さんか、なかなかやるようだな」

「最初に言っとく、俺は今回……本気だ!」

互いに炎タイプ、御三家のポケモンの戦い……激しい炎を巻き上げながらにらみ合う2人
今まさに戦いが始まろうという時に、近くで倒れこんだツカサは失った意識の中でもがいていた

237名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:34:53 ID:hWvNrf9I0
(ここで……終わるのか?俺は、何も知らないまま……終わってしまうのか?)

やってくる恐怖、それは自分が何者かわからないままその糸口が消えてしまう事への恐怖
ツカサは必死に抗う、逃げるように、そして戦うように……

(嫌だ……終われない、こんなところで……まだ俺は、何もわかっちゃいない!)

突如、目の前にルカリオが現れる、まるで初めて変身した時の様な状況で、ただ1つ違うのは放たれる光が優しいものではなく……激しく、刺々しい物であることであった

(終われない……負けられない……俺は……俺は!)

強い思い、勝利に対する渇望……それが、ツカサの中のルカリオに眠る更なる力を引き出すことになる………
同時に、制御しきれない野生も伴ってだが

「っ!この……光は!?」

「何が起きていやがる…?」

ツカサから放たれる光を見て顔を強張らせるケンタと、状況が理解できないシンゲン
光が収まった後そこに立っていたツカサは顔を上げると……目にもとまらぬスピードでシンゲンに向かって突進していた

「なっ!?」

先ほどと比べて数段上がったその速度、まさに神速と呼ぶにふさわしいスピードで自身に向かってきたツカサに対して何の行動も起こすことが出来なかった

238名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:35:19 ID:hWvNrf9I0
「があっ!」

凄まじい勢いで吹き飛ばされるシンゲン、まさに一瞬の出来事に驚きを隠せない一同

「お、親方様っ!」

危機を迎えたシンゲンに駆け寄るサンゾウとフウカ、しかし……

「なんだとっ!?」

そのサンゾウの目の前に、驚異の速度で接近したツカサが迫る!

「馬鹿なっ!?」

ありえない、動体視力に自信のある自分に気付かれずここまで接近するとは……
半ば狂気をはらんでいるように見えるツカサに対して恐れを感じたサンゾウは思いっきり身を捻りやってくるであろうツカサの攻撃を回避することに全力を注ぐ

その判断は正しかった。繰り出されたツカサの拳はアッパーカットの要領で下から上に繰り出されたものであったが、そこから巻き上げられる風圧でサンゾウの体は宙に浮きあがったのである

「う、うおぉぉぉっ!!!」

ダメージは無いものの大きく吹き飛ぶサンゾウ、ツカサは彼を追う事もせずただその場に立ち尽くしていた

「ケンタ、もしかして……」

「ああ、多分そうだろう」

兄弟が顔を見合わせ意見が合っている事を確認する、そうした後ケンタが前に出て、ツカサと向き合う形を取る

「……グ、オ……グオォォォォォッ!!!」

空気が振動するようなツカサの咆哮、それはまるきり凶暴な野獣そのものであった

239名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:35:42 ID:hWvNrf9I0
「ツカサ……まさかお前、『メガシンカ』を……」

心当たりを口にしたアキが自我を失った彼を止めるべく近づこうとしたが、コウタによってその行動は止められる

「アキ、悪いけど今のツカサの相手を君にしてもらう訳にはいかないね」

ケンタの言葉の意味を理解するアキ
格闘・鋼タイプのルカリオに対して、ノーマルタイプのミミロップ、そして悪タイプのゲッコウガの力を持つ自分とコウタは相性的に不利だ
逆に、ケンタは炎タイプ、有利に戦うことが出来る

故にここは自分に任せろと言っているのだ、しかし危険な事には変わりない
コウタも不安を隠しきれない様子で兄の様子を見守っていた

「グォォ……オォォ……」

獣のような唸り声を上げるツカサ、完全に自我を失っているのだろう
メガシンカの力は強大だ、故に、ポケモンも本来の凶暴な野性を解放する。ツカサはそれに飲まれてしまったのだ

「グルルルル……グオォォォッ!!!」

雄たけびを上げたツカサはシンゲンを吹き飛ばした技……神速を使う姿勢を取る、ケンタも迎え撃つべく今まで以上の炎を巻き上げ、身に纏う

「……ツカサ、必ず君を止めて見せる!」

「グラァァァァァッ!!!」

ケンタに向かって駆け出すツカサ、迎え撃つケンタ
2人はぶつかり合い、一瞬、静寂が場を支配した。そして……

激しい爆発音が、その場を包み込んだのであった………


第5話 完

240名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:35:55 ID:hWvNrf9I0
次回予告

ケンタの尽力により自我を取り戻したツカサはメガシンカによる暴走の恐怖に苛まれる
傷を癒すためにシンゲンと一時休戦を結んだ一行は、シンゲンと風林火山の3人の絆を知り、戦う理由を知る
自身にない「誰かの為に戦う」という思いを持った彼らを見て、ツカサは思い悩む
彼らが決して悪人で無い事を知ったツカサ達だったが、運命は虚しく彼らとの再戦の時を迎えることになる

ツカサはシンゲンに勝てるのか?メガシンカの暴走を抑えられるのか?そしてツカサは戦う理由を見つけられるのか?

次回「守るための力、メガルカリオ!」

「来い!ツカサァァッ!」

「ケンタ、コウタ、アキ……皆を守るために俺は戦う!」

ーーーーこの物語に新たな1ページが刻まれる……

241名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 03:42:43 ID:hWvNrf9I0
大分時間が掛かってしまいましたが6話投稿しました
この掲示板も過疎化が進んでいますがこの作品は最後まで書き上げます!絶対に!時間は係るかもしれませんけど………

気になった方は本当にちょくちょくで良いので見て言って下さい!この作品以外にも面白いssはあります。書き手さんも頑張ってます!
終わってなんかいない!って言えるように頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!

ついでに宣伝ですが、そろそろ外伝の第二回が完成しそうです
第二回の主役は運び屋兄弟の兄「ケンタ」、彼が本編の1年前に請け負った仕事とその中で出会った少女との物語が語られます
外伝から本編に出す予定のキャラも居ますので、こちらも併せてお読みください!ではまた次回!

242名無しのデデンネ:2015/10/09(金) 13:39:59 ID:0dSlz4cY0
乙です。外伝の更新も楽しみにしてます。


私も努力せねば。


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