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改訂版投下用スレッド

90M.G.D.:2003/10/28(火) 14:35
 シュラッ……!

 切っ先の煌めきが糸状に走り、次の瞬間、

 パッ!

 ……岩切の上半身を覆っていた水着が宙に舞った。
「きゃうっ!」
 突然手ごたえを無くしたレミィが尻餅をつく。が、ディーにしてみりゃそれどころではない。

「お、お、お、お、お……お前……」
「うるさい! ジロジロ見るな!」
 二つのたわわなメロンを腕で抱えつつ、必死で逃げる岩切さん。

 首に引っかかっていた針ごと、自らの水着を切り裂いたのだ。

「お前……正気か!? そこまでして勝ちたいか!?」
「う、うるさい! 何か文句があんのかコラ!? お前だって上半身裸だろう! お前と同じ格好になっただけだろうが!」
「た、確かに……それはそうだが。……いや、だがそれにしても……男と女で同じに考えるわけにもいかんだろう!」
「うるさい! 戦場において男とか女とか関係あるかっ! 私が恥をしのんでここまでやってるんだ! お前も真面目に追いかけないか!」
「異議あり! 岩切花枝、今のお前の発言は矛盾している! 本当にお前が男も女も関係ないと思っているのなら、胸を覆い隠す必要はないはずだ!
 その腕を開け! 二本の腕を振り、一目散に走って逃げてみろ! そんな体勢では走りにくかろう!」
「そ、そんなことは私の勝手だろう! 私の走り方に文句をつける権利がお前にあるのか!? あぁん!? 大体今重要なのは私とお前の戦いだろう! 話をそらすな!」
「異議あり! お前の今の発言は詭弁だ! 詭弁のガイドライン第十八条、『自分で話をずらしておいて、「話をずらすな」と相手を批難する』に該当する! お前の発言は認められない!」
「黙れぃこのムッツリスケベが! ンなこた今どうでもいいことだろーーーーーがぁっ!!!!」
「むっつ……!?」

 ぐさっ。

 突き刺さった。
 抉り取った。
 岩切の発言が、ディーの心の中の、一番ピュアな部分にクリティカルした。

 誰もが思いつつしかし言わなかったその台詞を、無遠慮な強化兵は微塵もオブラードに包まず、叩きつけてしまったのだ。

「だ……だぁれがムッツリスケベだこの淫乱めが! 上半身裸で密林を駆けずり回る女に言われたくはない!」
「その淫乱をジロジロとスケベな目で舐め回すように見ているのはどこのどいつだ!? あぁ!? 私だって裸で女を追い回す鶏ガラチックな男にそんな台詞を言われたくはないな!」
「ああもうああもう! なぜこんな事態になってしまったのだ! つい先ほどまでは近年稀に見るほどにシリアスチックでロマンチックでアクロバチックでヴァイオレンスチックな戦いが繰り広げられていたというのに!
 超久々に私のまともな見せ場が来たと思っていたのに! 敵と熱い刹那の会話なんかしちゃったりしたのに! なんなんだこの空気は! 返せ! 返せ岩切! 先ほどまでの緊張感あふれる張り詰めた空気を返せ! 責任はお前にある!」
「逆ギレとは見苦しいぞD!」
「知った……ことかァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 お互いをひたすら罵ることにのみ集中していた二人は気づかなかった。いや、気づけなかった。

「でぃー! でぃー!」
「それとそっちのお姉サーーーン!!」
 後ろから聞こえてくる二人の警告の声に。
「あぶないあぶない! あーーーぶーーーなーーーいーーー!」
「その先は……その先は……!」

「なんだ!? よく聞こえんぞ!」


「……崖だよーーーーーー!!!!」


「……あ?」
「ん?」

 岩切とディー、二人は同時に気づく。
 不意に、足元の地面が消えうせたことに。


 森の中、藪を一枚抜けた先に広がるは果てしなき急勾配。下へ下へとまっ逆さま。


「おぉぉぉあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!? ああああ!!」
「なんだとぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 レミィとまいかが最後に見たのは二人の後姿が崖下に消え行く光景。
 まぁ崖と言っても多少の斜面はある。上手い具合に転がっていってくれれば、下に岩場でもない限り……

「……ダイジョーブ……だよね?」
「たぶんね。でぃーだし」
「ウン。Dだし」

 確かに。ディーだし。


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