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改訂版投下用スレッド

87M.G.D.:2003/10/28(火) 14:31
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 御堂の断末魔をBGMに、しかし岩切とディーの刹那の決戦は続いていた。

「逃さん女! お前は私が捕まえる!」
 目の前を走る岩切に向かい、ディーが叫ぶ。
「やれるものならやってみるがいい! 私とて大人しく捕まるつもりは毛頭ない!」
 真後ろを追ってくるディーに向かい、岩切が答える。

 確かに仙命樹は日光に弱い。水戦試挑躰である岩切ならば尚更だ。
 が、それを差し引いても今回の追激戦、岩切に分があった。
 仙命樹の効果が薄れようとも、岩切は歴戦の勇士。対するディーは現在並みの人間以下。
 身体能力の差は歴然だ。その差は見る間に開いていく。

「フッ! なんやかんやと大きな口を叩いておいて、所詮この程度か!」
 後ろを振り向いて挑発をかます余裕すらある。
「おのれ……おのれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
 悔しそうに歯噛みするディー。
「けっぱれ! でぃー!」
 さらに背後からまいかの声。
「言われなくとも!」
 元気付けられ、さらに膝に力を込める。だが悲しいかな、決定的な彼我戦力差は埋まらない。無情にも彼の目の前で、岩切は森の入り口に佇む大きな木の枝に足をかけた。
「作戦やタイミングは悪くなかった……だが肝心の実力が伴わなければ獲物を捕らえることはできないな。では、さらば……」
 そして茂みの間に消えようとする。

 ……だがしかし。

「Don't miss it!」

「なッ!?」
 空間にレミィの甲高い声が響き渡った。同時に岩切の体が何かに引っ張られたかのように木の上から転げ落ちる。
「こ……これは! しまった!」
 引っ張られる水着の襟を必死に押さえる岩切。そう、まだ彼女の首には針が引っかかったままだった。
 遥か後ろの水辺では竿を拾い上げたレミィが全力でリールを巻いている。
「D! 今だヨ! 捕まえて!」
「よくやった! レミィ!」
 見えた勝機。疲れた体に鞭打ち、ラストスパートをかけるディー。
「……おのれェ!!!」
 だが岩切も大人しく捕まる性格ではない。すぐさま起き上がると、森の奥へと向かい、再度駆け出す。
 一対一で岩切の力にかなうはずもなく、再度引き戻されていくリール。レミィがいくら力を込めようとも、それはあがないきれるものではなかった。
 しかし……
「速度は確実に落ちている! 女! その首もらった!」
 彼我の戦力差は逆転した。どんどん二人の間の距離は縮まっていく。

「……フッ」
 そんな最中、ふと岩切が唇を綻ばせた。
「……何がおかしい」
「正直驚いた。御堂がいたとはいえ……ここまで私が一般人に追い詰められるとは……はっきり言おう。私に残された手はあと一つ、それが正真正銘の切り札だ。……お前はどうだ?」
 ギリギリの戦いに似合わぬほど、落ち着き払った岩切の言葉。それにつられたのか、ディーも素直に答える。
「切り札も何も。私は常に全力だ。一つ一つに全てを賭している。言わば、我が挙動全てが奥の手よ!」
「フフフ……常に全力、全てが奥の手か……愚かだな。そんな素直な奴は……戦場では真っ先に死ぬ」
 首を後ろに曲げ、ディーと目線を合わせる。
「だが、嫌いではない。……お前、名前は?」
「……Dだ。それが今の我が名だ」
「……Dか。私は岩切花枝。では……いくぞ! 最後に勝つのは……私だ! ハァァァァァァァァッ!!!!」

 一際高い鬨の声。気合一閃、岩切は腰の短刀を抜き放つ。

「なに!?」
「私は水戦試挑躰岩切花枝! 勝利のためなら……この程度!」


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