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改訂版投下用スレッド
85
:
終焉のノクターン
:2003/07/10(木) 20:01
「…いいんですか? 法的手段に訴えて吊るし上げる事も出来たのに」
傍でやり取りを見ていた響子が、弥生に尋ねる。――弥生は、怒れる志保にドヤされながら晴香を介抱する和樹を見やり
つつ、静かに首を振って見せた。
「…同人誌という物の雑多性、或いは多様性は、ある程度は知っています。恐らく、森川を題材にした件の本と類似
する物は、他にも数多存在するでしょう。彼一人を叩いた所で焼け石に水……実際、本格的に対処するとなれば、
それを決定するのは私ではありません。それに――」
「それに?」
「――悪意を以て作られたのではないと確認しましたし、件の本について法的制裁を与えた場合、それが逆に森川への
マイナスイメージに大きく繋がってしまう可能性もあります。ですので、これで充分です。…今は、まだ。
それと、相田さんには、彼と私の約束の第三者的後見人となって貰いますので」
「………なる程」
響子、感服。キレていた様に見えて、頭の奥は冷静なままであったらしい。…いや、『至極冷静なまま、キレていた』
とでも言うべきか。この弥生という女性、敵に回すべき人物ではないと、響子は改めて思い知った。
「……所で…今日はここで休む事にしますか、相田さん?」
「え…? 本当?」
弥生の口からその様な提案が出て来るとは。響子は思わず目を見開いてしまっていた。
「私は足を挫いてしまいましたし…、相田さんもお疲れでしょう?」
「…そう……ですね」
弥生が休みを摂ると聞いて、緊張が解けたか、響子の体にどっと疲れが圧し掛かって来る。
弥生は、離れた所からこちらの様子を窺っていた岡田に目をやり、その視線だけで問い掛けた。
「――いいわよ、別に。私達にタッチしてこなければね」
「そのつもりは全くありません。ご安心を」
「そ。ならいいけど。――シャワー使う? タオルとか、管理側が用意してくれた下着とかも置いてあるわよ」
シャワールームの方を親指で指し示し、岡田は、ニッと笑って見せた。
…こうして、戦慄の刻は静かに終焉を迎えたのである。
後日談として…
本来日の目を見るはずであった“アイドル萌え本”の原稿を詠美ちゃんさまから力ずくで奪回した和樹は、それを
加筆修正し、弥生との約束通りに制作完成させた。
その本は、和樹の不安と予想に反して、件の本…『…2大アイドルが監禁、陵辱で奴隷化〜』に迫る売れ行きと好評
を博した。――その所為であるかは解らないが、森川・緒方の両アイドルの人気は更にヒートアップ。
…加えて、そのアイドル本に加筆された『美人マネージャー』の話に食いついた人々が、熱烈な“美人マネージャー
萌え”として濃ゆく萌え上がったとか。
それはまた、別のお話――
【【和樹】【晴香】 襲撃失敗。ミイラ取りがミイラに。岡田のフライパンアタックで晴香は気絶】
【【和樹】 同人誌について弥生と約束。取り敢えず一命を取り留める。戦意消失】
【【弥生】 同人誌について和樹と約束。取り敢えずその件については終了。軽く足を挫く】
【【響子】 ようやくちゃんとした休みが摂れるとあって、一安心】
【三日目。日没後〜夜にかけた辺り。場所は別荘】
登場逃げ手:岡田メグミ 松本リカ
登場鬼:【篠塚弥生】 【相田響子】 【巳間晴香】 【千堂和樹】
【藤田浩之】 【長岡志保】 【吉井ユカリ】
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