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改訂版投下用スレッド

83終焉のノクターン:2003/07/10(木) 19:59
 悶絶する志保を尻目に、晴香は弥生に向き直った。向き直った時には、胡椒噴射器を持たぬ方の手に、また新たな
得物を構えていた。――片腕でも扱えるネットランチャー。小型だが、人一人を捕獲するには充分な代物だ。
「――さ、次は貴女よ。胡椒で悶絶したくなければ、大人しくしてよね」
「………何故、こんな手荒な事を?」
「…あんたが言う、そんな事?」
 先程から床に片膝を着いてしゃがんだままの弥生を見やり、晴香は肩を竦めた。
「さっき、あの同人ジゴロをコロそうとしたじゃない」
「…そんな事はしません」
「……その気マンマンに見えたけど? ま、いいけどね。――じゃあ、潰れて貰うわよ」
「私は…足を挫いてしまいました。暫くまともに動く事は出来ません。それに、他の逃げ手に興味もありません」
「そう。でも、今はそうでも、後々気が変わるかも知れないでしょ?」
 別段、嗜虐的な感情等が沸き立つ事もなく、只淡々と、晴香はネットランチャーを動けない弥生に向けた。
 ――と、
 ばむ!ばむ!ばむっ!…――トリモチ銃が爆ぜる音。
 響子が、足元に落ちていたトリモチ銃わ拾い上げ、弥生の傍に立つ晴香に向けて撃ち放ったのだ。
 ――何故そんな事をしたのか、解らない。弥生の危機――結構じゃないか。これ以上振り回される事もなくなるだろう
し、ここで休みを摂る事だって出来るだろう。何も、無理をして彼女を救う必要など…
 だが、そう思いながらも、体は動いていた。――ここまで付き合って来た為に、ある種の情が生まれていたのかも
知れない。
 ――しかし、響子の友情は、報われなかった。
 撃ち放たれたトリモチは、晴香の体に命中する事無く、寸前で叩き落されたかの様に弾かれてしまったのだ。
「なっ……!?」
「気付いてなかったと思う?」
 響子がトリモチ銃を拾い、構える所を、晴香は視界の隅で認めていたのである。
 愕然とする響子に向け、晴香は無造作にネットランチャーを撃ち放つ。――襲い来る蜘蛛の巣の如き捕獲ネットに絡み
獲られ、響子は悲鳴を上げて倒れた。
 ネットランチャーは、便利な事に自動装填式らしい。何発入っているのかは解らないが、発射口を弥生に向け直した
時には既に、カコン…と軽い音を立てて次弾が装填されている。
「………勝ち進んでいる時が一番負け易いと言いますからね」
「そうね。油断大敵。勝って兜の緒を締めろってやつかしら?」
「――全くその通りだわね」
「――っ!?」
 背後から声――驚いた晴香が振り返った時には既に、岡田の握ったフライパンは振り下ろされていた。
 くぱああああぁぁんんっ…!
「んぐっ…!!」
 丈夫なガスマスクを被っていたお蔭で一撃での昏倒は避けられたものの、目の中に激しく星が飛び散り、衝撃が頭
の中を貫いた。
「も・いっちょおっ!!」
 くゎぱああんっ!!――今度は振り上げの一撃。晴香の顔からガスマスクが外れて吹き飛び、宙に舞う。
「こっ…このっ……!」
 フライパンアタックで脳を揺さ振られながらも、晴香は不屈の根性で崩れそうになる両脚を踏ん張り、岡田に掴み
掛かろうとした。だが、岡田はヒラリとその手をかわし――
「ちょオッッップ!」
 ごんっ…!――…垂直フライパン。その力は前のニ撃に較べればずっと弱い物ではあったが。
「……………………うぐぅ…――」
 ――そして、晴香は遂に倒れた。


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