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改訂版投下用スレッド

75「友情」 「犠牲」 ――そして「誇り」(改訂版):2003/05/29(木) 20:50
 暴発した不可視の力は、逃げてゆく二人の背後の地面や木の枝を吹き飛ばし、そして一際大きな力が、トドメとばかりに
太目の木の幹を爆発させて打ち倒してしまった。
 倒れた木によって遮られてしまった向こう側へ消えてゆく、二人の影を見送りながら、舞がやや呆然としつつ口を開く。
「……また逃げられた」
「――でも、一人ゲットしたわ」
 ちょっと疲れた様な声で答えるのは、相変わらず吉井に馬乗りにされた郁未であった。
「もうどいてくれない?」
「あ、ごめん」
 郁未と苦笑し合いながら、吉井は彼女の上から体を退かせた。そして、立ち上がろうとする郁未に手を貸してやる。
「……こんな捨て身の反撃で仲間を逃がすなんてね」
「…いいのかい? これで優勝は無くなっちゃったけど?」
 追い詰めたはずだったのに逆にしてやられた悔しさからか、少しからかう様な口振りで祐一が言った。
「捕まえようとしておいて、そんな事言うの?」
 逆に咎める様に反問され、祐一は肩を竦めて苦笑する。――それを横目に見やりつつ、吉井は投げた靴を履き直し、
痛そうに蹲っている由依の頭を撫でてやっていた。
「…私達はね、そう簡単に捕まる訳にはいかないのよ。三人が唯の一人になっても、逃げ続ける――…そう決めたの」
「……自分を、犠牲にしても?」
「そう」
 静かに訊ねて来る舞に、吉井は静謐な笑みを以て答える。
「私達はチームだもの。最後の最後で、私達の誰かが残っていれば、勝ちなのよ」
「…大したガッツだわ」
 吉井に組み付かれて地面を転がった所為で、吉井と同じく郁未もびしょ濡れ泥だらけであったが、その顔に不快の色は
無い。寧ろ、賞賛する色さえ浮かべていた。
「――ね、もし良かったら、私達と組まない?」
「…おーい、天沢さん?」
 祐一が困った風に声を掛けて来るが、黙殺。郁未は、何やら吉井の事を気に入ってしまった様である。
 …しかし、吉井はそんな郁未に、申し訳無さそうに首を振って見せた。
「………ううん、遠慮しておく。ゴメンね」
「そっか…。…じゃあ、これからどうするの?」
「そーね。あの二人を追うわ。付き合い長いから、大体の行動パターンとか行き先が解るし。――で、影からサポートする」
 ――…そう答え、吉井は襷を受け取った後、祐一チームから離れて行った。


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