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改訂版投下用スレッド

73「友情」 「犠牲」 ――そして「誇り」(改訂版):2003/05/29(木) 20:48
「っ…、ヤバッ…! こっちの方に来た!」
「うぇ〜んっ! 前に苦労して逃げたのに、何でまた同じ人達に追い駆けられるのよぅ〜っ!」
「ううっ…、シャワーと着替えが出来ると思ったのに…」
 苦々しくボヤきながら疾走する、岡田軍団三人娘。だが、今一スピードが上がらない。――体力がそろそろ限界なのだ。
「このままじゃ…追い着かれる――…?」
 再度、チラと背後に迫る追跡者へ目をやる吉井。――追跡者の影は四つあったはずだが…今は、三つ。
 一人、少ない…!?――そう認めた吉井の背筋に、悪寒が奔った。
「岡田っ、松本っ…――ストップ!!」
「なっ、何よ…!?」
 両手を広げて急制動を掛ける吉井に、岡田と松本も、目を丸くしつつ急ブレーキ。
 ガサァっ…!――
 と、急停止した三人の進む先にあった茂みの影から、人影が飛び出して来る。
「ここ迄ね…!」
 不敵に笑う郁未だった。
 三人娘の消耗した体力を見て取り、そして自らの脚力を全開にして脇から追い越し、先回りを果たしたのだ。後続の
祐一達も、三人娘を必要以上に追い立てぬ様、追跡のペースをセーブしていたらしい。
「くっ…! やられた……!」
 程なくして追い着いた祐一達と前を塞ぐ郁未を睨みやり、岡田が呻いた。
「貴女達を取り囲むのは、これで二度目ね」
 ちょっぴり愉悦を表にしながら、郁未。
「一気に3ポイントもゲットですねっ!」
 チャキッ…と、唐辛子噴霧器を構えながら、嬉しそうに由依が微笑む。
「今度は油断しない」
 言葉通り、一切の油断も示さぬ気迫を双眸に込めながら、舞が静かに構えた。
「――さ、天沢。早くタッチしてくれ」
「解ってるわ」
 祐一に促され、郁未が三人娘の方へと近付いて来る。
 ――それを見やった吉井が、微かに目を輝かせた。
「……チームでは、貴女が主にポイントをゲットしてるんだ?」
「そうよ。それがどうかした?」
「天沢っ…!」
 吉井の問い掛けに応える郁未に、祐一がやや咎める様な声を上げる。――以前、そういう風に問い掛ける事で心理的に
揺さ振られ、逃げ手に出し抜かれた事があったからだ。その所為で一時的にチーム内に亀裂が入った。…結局は団結を
深める事になった事件であったが、注意しておくべき事であるには変わりない。
 大丈夫よ――不敵に微笑みながら、郁未はアイ・サインを祐一に送る。…実際、今自分に問い掛けて来ている少女は、
あの時の女性より話術やシビアな心理戦に長けている様には見えなかった。
 …郁未のその認識は、確かに間違ってはいなかった。――だが、それは同時に大きな誤解でもあった事を、彼女は身を
以て知る事となる…
「………岡田、松本。…まだ走れる?」
「…キツイけど、何とか」
「逃げられるの…?」
 苦しげに顔を歪める岡田と不安げな松本に、吉井は、フ…と微笑んだ。
「吉井…?」
 その微笑に松本は何か、ゾっとする物を感じた。不気味であったからではない。――余りにも透明であったからだ。


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