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改訂版投下用スレッド

72「友情」 「犠牲」 ――そして「誇り」(改訂版):2003/05/29(木) 20:45
「ほっ…解けないっ……!」
 泣きそうな顔になりながら郁美が木に結ばれたウォプタルの手綱を解こうとするものの、堅く結ばれているそれは、
解ける気配を見せなかった。クロウが力を込めて結んでしまった事に加え、郁美自身が非力である所為であった。
「あーっもう! 何やってんのよ、どきなさい!」
 もたつく郁美を強引にどかせ、岡田が手綱の結び目に取り付く。
 ――鬼の様な形相で岡田が手綱を木から解くのと、クロウが彼女達の元へ辿り着いたのは、ほぼ同時だった。
「大ポカしちまったぜ!」
 来るや否やウォプタルに飛び乗り、間を置かずに郁美の腕を掴んで騎上へ引き上げる。
「どーせ思い切り目が合っちゃったりしたんでしょ!? どぢっ!!」
 見事に真相を言い当てる岡田に、クロウは返す言葉も無い。バツの悪そうな苦笑を浮かべる彼に、岡田は更に
畳み掛ける様に言い放った。
「二手に分かれるわよ!」
「言われるまでもねぇ! ――巧く逃げてくれよ、嬢ちゃん達!」
「そっちこそ、その子をしっかり守ってやんなさいよね!」
 クロウは手綱を握り直し、ウォプタルを走らせた。――同時に、疲れた体に鞭を打ち、岡田軍団も走り出す。
 束の間、行動を共にした両者は、再会の約束さえ取り交わす事無く、別々の方向へと散開した。

 男の逃げた先に、一匹の恐竜の如き生物と、四人の少女が佇んでいるのが見えた。そして、合流するなり何か
言い合った後、別々の方向へと逃げ出した。恐竜+男と少女、そして、残る少女三人組とに。
「二手に分かれた…!?」
「見て、あの三人組…!」
 祐一と並走する郁未が、三人組の少女達の後姿を見やり、声を上げた。
「この前、せっかく取り囲んだのに逃げられちゃった人達ですね…!」
 そう言ってから由依は、はっとして、舞を横目見る。…が、舞は表情を変える事無く、前を見据えて走っていた。
「…恐竜さんは、足が速い」
「なら、追うのは――」
「――三人組の方よ!」
「雪辱戦ですね!」
「はちみつくまさん。…今度こそ捕まえる……!」
 祐一達四人は、恐竜に乗った二人ではなく、自前の足で走る三人組の方を追跡し始めた。
 ――その三人組の後姿は、体力を大分消耗しているのか、以前追い駆けた時より早くはなかった。
 追い着ける…!――勝利を確信し、祐一と郁未の口元が笑みに歪んだ。


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