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改訂版投下用スレッド
71
:
名無しさんだよもん
:2003/05/24(土) 01:20
一口茶を啜ったところで、祐介が言葉を繋げる。
「あ、もしかして……あの時溺れてた方が、あなたですか?」
「うーん、そんなような、違うような……」
が、何やらひかりは困った様子だ。
「……? どういうことですか?」
困惑顔の祐介。
「私には違いないんだけどぉ……」
「?」
「……溺れてたわけじゃ、ないのよね」
「へ?」
「実はね。あの直前、私鬼に追われてて。逃げるために川に飛び込んだのよ」
「……………………」
祐介の顔が、青ざめる。
「こう見えても私、泳ぎにはけっこう自信があって、何とか無事に逃げられたみたいだったのよね」
「……………………」
そして徐々に紫になっていく。
「つ、つ、つまり……僕は……」
ひかりの説明の先を読んでしまい、とうとう真っ白に。
「やらなくてもいい救助をやろうとしたあげくすっ転んで自分から遭難しさらに助けようとした相手に助けられてその上その上その人を鬼にしてしまった、と……」
「……そういうこと、になっちゃうのかしら?」
「す、す、す、すみませんっ! ごめんなさいっ!」
祐介はガタッと椅子をのけると後ろに下がり、深々と頭を下げた。
「僕が余計なことをしたばっかりに……ご迷惑をおかけした上、鬼にまでしてしまったなんて……!」
何度も何度も頭を下げる。
「ああああ、いいのよいいのよ。気にしないで」
そんな祐介にひかりは笑顔でフォローを入れる。
「私だって、勘違いとはいえ自分を助けようとした子を放っておくことなんてできないもの。あなたが私を助けてくれようとしたこと。それは素晴らしいことだわ。
私の方からお礼を言いたいくらいよ。ありがとう」
「そんな……」
恐縮しきりの祐介。
……と、そこで祐介は一つ、おかしなことに気付く。
「……ところで、どうして僕の名前を?」
「あらごめんなさい。上着に刺繍が入っていたものだから」
指をさすひかり。その先には、部屋の隅にまとめて紐にかけられてあるひかりと祐介の服があった。
そこで、ようやく祐介が自分の服装が変わっていることに気付く。彼にはちょっと大きいTシャツと、逆に少々キツめのスパッツだ。
「それに、あなたのことはいろいろと聞いていたからね」
「へ?」
続いて出たひかりの言葉に、祐介は困惑する。
「改めてこんにちは。私の名前は神岸ひかり。神岸あかりの母親です。よろしくね、長瀬祐介君」
「…………………」
もう一度、祐介の顔が白くなった。
一方その頃、戦乙女とその部下はというと。
「ああああーーーーーーーーーっ! あのおばさん! どこに消えたのよっ! もうっ!」
河原の一角で絶叫していた。そりゃもう、狼の遠吠えのごとく。
「あ、姉さん……暗くなってきたし、もうこれ以上は……」
半ば泣きの入った矢島の言葉も気にせず、七瀬はさらに叫ぶ。
「私はねぇ! この島に来て! もう何度も何度も目の前で獲物かっさらわれてきてんのよっ! いくらなんでもこれ以上獲物を逃すのは遠慮したいのよっ!」
「い、いや、そのお気持ちはわかりますがね……」
すでに矢島、マジで部下と化している。
いや、本人にしてみてももう部下でも手下でもしたぼくでも何でもよかった。
この状況さえ、何とかできれば。
「探すわよ。何としても探すわよ! 草の根分けても探し出すわよ! というわけで出発! そらそら行くわよ矢島君!」
川下の方向にビシィと竹刀を突き付け、出発した。
……後に続く矢島はと言うと。
(……もう、どうにでもなれ)
覚悟を、決めた。
【神岸ひかり 鬼になる。現在は長瀬祐介と一緒に川の近くの小屋の中】
【長瀬祐介 ひかりに謝罪。許してもらう。ついでに洗濯もしてもらう。ポイント+1】
【七瀬留美 草の根分けても探し出す!】
【矢島 もう、いいッス。どこまでもついていきます、姉さん】
【3日目夜】
【登場 神岸ひかり・【長瀬祐介】・【七瀬留美】・【矢島】】
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