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改訂版投下用スレッド

54クライム・ザ・ラダー/サウンド・ザ・ボイス(アナザー):2003/04/14(月) 01:21


「………………っ、」
 信じられないほどの衝撃が全身を襲ったが、しかし瑞希の身体は殆ど無傷だった。
「――なにここ?」
 太志に蹴りをくれるはずが誤って梯子を踏み外してしまい、そのまま落下してしまった一連の
事実に彼女は気付かない。
「な、なにこれ?」
 床が柔らかい。
 立ち上がってみるも、殆ど歩けなかった。
 この謎物体のお陰で無傷で済んだ事にも、やはり気付かなかった。


 国崎は1Fに辿り着くと3基あるエレベーターを片っ端から調べ始める。
 厭な予感が的中しつつあった。
 ――さっきの声は囮だったのだろうか?
「っ!」
 考えが至らなかった事に改めて憤慨する国崎。やはりエレベーターのドアは開けておくべき
だったのだろうか――いや、それだと逃走路を増やすことになりかねないだろう……。
「国崎さんっ…!」
 やや遅れて二人が到着した。
 息をあげながら国崎に近寄り、事情を問いただす。
 国崎はかいつまんで説明した。
「――なんにせよ出口を抑えてれば最悪の事態は免れるはずだ」
 それが彼の出した結論である。消極的ではあったが二人は理に適っていると合意し、彼と共に
エレベーター箱の再点検にかかった。


「(株)来栖川化学…?」
 謎物体にはこう書いていた。ご丁寧に豆電球の光が当てられている。こんなところで商品宣伝
してどうするのだ、と瑞希は思った。
 と、上の方から金属音がする。豆電球を強引に向けてみると、それはどうやら大志たちらしい。
「あ、あ、アンタ」
 瑞希の咆哮が再度響き渡ろうとした時。
 クロウは豪快にジャンプ、瑞希の口に掌をあてがう。
「んぐぐぐぐぐぐ」
「大きな声はまずいぞ、嬢ちゃん」
 ややあって大志、そして郁美が降りてきた。
 大志は足元で反射しているボールペンを拾い上げた。
「やはり吾輩の推理は的中したようだ。ホテルを会場として使うとなれば吾輩らのような輩がい
つ出てくるとも限らんからな」
 豆電球の光がメガネに反射した。ちょっとブキミだが、見ようによってはかっこよくなくもない。郁
美は無言で拍手をし、クロウは微笑をたたえていた。
「……」
 そして一人不満げな瑞希。


「――いや、1F全部を探す必要はない」
「にゃぁ、どういうことですか?」
 千紗の疑問にはウルトリィが言葉を継ぐ。
「ここまで到達してしまえば、後は逃げてしまえば良い。そういうことですよね?」
「そうだ」
「じゃ、やっぱり鬼さんは上ですか?」
「かもしれん。さっきの音こそ囮なのかも知れないが――いや、まてよ」
 ちょっと来い、と国崎は千紗を引きつれて3基あるエレベーターのうちの1基に入った。つっぱね
てあった椅子を引き出し、代わりに千紗にドアを抑えてもらう。
「さっき、竪穴があるって言ったよな?」
「ええ……それが何か?」
「この箱がその穴を移動するんだ」
 国崎は椅子の上に立ち、気合いを入れて天井の一点に一撃をくれた。
「にゃっ…!」
 結構な音が響き、千紗は思わず身を縮める。
 構わず天井にあいた隙間に忍む。

「ハズレか」
 ややあって、舌打ちと共に国崎が出てきた。


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