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改訂版投下用スレッド

53クライム・ザ・ラダー/サウンド・ザ・ボイス(アナザー):2003/04/14(月) 01:21

「くそっ! ここもか!」
 焦燥感が募る。文字通り目と鼻の先に獲物は潜んでいるというのに――
「ということは、国崎さん」
「上だな…!」
 既に国崎は駆け出していた。
 長い長い廊下をつき抜け、階段の踊り場を通過し、
 17段目を踏み、手すりに左手をかけ、
 90度方向転換。
 
 ――下から四段目の廊下が、長く続いていた。


「……っ」
 限界まで開いた両足を僅かなとっかかりにつっぱね、クロウはエレベーターの扉を内側から閉
めた。次いでその扉に両手をあてがい、
「フッ!」
 思い切り押し出す。反動を利用して、彼は空中移動した。
 もはや常人の業ではない。
 先ほどとは別の感嘆の声を上げようとした二人だったが、しかし慌てて口を塞ぐ。
「(あぶないあぶない)」←郁美。
「(ここでヘマしたら太志に後で何言われるか……)」←瑞希。
 ――彼女は思った。
 でも、たかが鬼ごっこでこんなことやるハメになるなんて、ね。招待状が来た時は(彼女には事
前に鬼ごっこの内容が伝えられていた)せいぜい全力で走るくらいまでにしか考えていなかった
けど……
 でも、まあ楽しいからいいか。それにうまくすれば和樹のマンガのネタにも――って、なんで和樹
にわざわざ教えなきゃならないのよ!
「(クックック…)」
「(!?)」
 こういった瑞希の動揺に逐一反応するのが九品仏太志という人間である。暗くてよく見えなかった
が、たぶん心底嬉しそうな表情をしているんだと思う。
 そして、瑞希はある事に気付いた。
 九品仏太志は高瀬瑞希の、ちょうど足の下に位置している。

 ――つまり。
 とどのつまりは。
「………………………………どぉしたぁまぁいしすたぁぁぁx」

 ずがっ。


 ぼふむっ。

 ややあって、ものすごい衝撃が階下から響いた。
 音は4Fの三人の耳にも届く。
「下か!!」
「え? ちょっと国崎さ……」
 ウルトリィの制止も解さず、国崎は既に1Fに向かって走り出していた。


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